『八調経』第六調

土曜日(スボタ)

 「スボタ」の小晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に四句を立てて本調の主日の讚頌スティヒラ三章を歌ふ、其第一は二次。第六調。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

地ぢ獄ごくに勝かつハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに上のぼれり、死し者しやの中うちに自じ由いうなる者もの、己おのれの光ひかりより生命いのちを流ながす者ものとして、死しの幽暗くらやみに坐ざする者ものを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめん爲ためなり。全能ぜんのうの救世主きうせいしゆよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

今いまハリストスは死しを滅ほろぼして、嘗かつて言いひし如ごとく復ふく活くわつし、世せ界かいに歡喜よろこびを賜たまへり、我われ等ら皆みな籲よびて斯かく歌うたはん爲ためなり、生命いのちの泉いづみ、近ちかづき難がたき光ひかり、全能ぜんのうの救世主きうせいしゆよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

主しゆよ、我われ等ら罪人ざいにん何處いづこに爾なんぢ悉ことごとくの造物ざうぶつに居をる者ものを避さけん、天てんには爾なんぢ親みづから住すむ、地ぢ獄ごくには爾なんぢ死しを滅ほろぼせり、海うみの深處ふかみに入いらんか、主宰しゆさいよ、彼處かしこには爾なんぢの手てあり。我われ等ら爾なんぢに趨はしり附つき、爾なんぢに伏拜ふくはいして禱いのる、死しより復ふく活くわつせし主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞、定理歌ドグマティク。

爾なんぢ生しやう神女しんぢよを讚さん美びするは實じつに宜よろしきに合かなへり、蓋けだし萬ばん衆しゆうの造成主ざうせいしゆは爾なんぢの至し淨じやうなる腹はらに入いり、本性ほんせいを易かへずして肉體にくたいと成なれり。此この定制ていせいは想像さうざうなるにあらずして、實在じつざいの神性しんせいが爾なんぢより受うけたる靈たましひある肉體にくたいに合あはせられしなり。此これに因よりて我われ等らは敬虔けいけんにして二ふたつの現あらはれたる性せいを區く別べつす。至し尊そん至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、我われ等らに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを降くださんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。其後提綱ポロキメン、「主は王たり」、三次。

句 主は能力を衣、又之を帶にせり。

次に「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。司祭聯禱を誦せず。我等直に次の讚頌スティヒラを歌ふ。

挿句くづけに主日の讚頌スティヒラ、第六調。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、諸天しよてん使しは天てんに於おいて爾なんぢの復ふく活くわつを歌うたふ。我われ等らにも地ちに於おいて潔いさぎよき心こゝろを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいするに堪たへさせ給たまへ。

又至聖なる生神女の讚頌スティヒラ。

句 我われ爾なんぢの名なを萬世ばんせいに誌しるさしめん。

至し淨じやうなる者ものよ、永久えいきうの神かみは昔むかし爾なんぢの太たい祖そに誓ちかひを以もつて約やくせし如ごとく末すゑの年としに行おこなひて、爾なんぢの神聖しんせいなる腹はらより出いでたり、蓋けだし實じつに手てに四し極きよくを保たもつ主しゆは爾なんぢより輝かゞやき給たまへり。童貞女どうていぢよマリヤよ、審判しんぱんの時ときに於おいて彼かれを我われの爲ためにも寬くわん容ようなる主しゆと爲なし、諸德しよとくを修をさめ、諸慾しよよくを殺ころすに因よりて、我われに其國そのくにを受うけしめ給たまへ。

句 女ぢよよ、之これを聽きき、之これを觀み、爾なんぢの耳みゝを傾かたぶけよ。

至し尊そん至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、イサイヤは淸きよき智慧ちゑを以もつて遠とほくより爾なんぢが萬物ばんぶつの造成主ざうせいしゆを生うまんとするを預よ言げんせり、蓋けだし爾なんぢは獨ひとり世世よよの中うちに至いたりて無む玷てんなる者ものと現あらはれたり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、我わが汚けがれたる靈たましひを潔きよめて、我われを神聖しんせいなる光くわう照せうに與あづかる者ものと爲なして、爾なんぢの神聖しんせいなる子こが、錄しるされし如ごとく、全ぜん世せ界かいを審判しんぱんせん爲ために坐ざする時とき、其その右みぎに立たつを得えしめ給たまへ。

句 民みん中ちゆうの富とめる者ものは爾なんぢの顏かんばせを拜をがまん。

少女せうぢよよ、爾なんぢの產さんに因よりて死しの滅亾ほろびは現あらはれたり、爾なんぢは不ふ朽きうなる生命いのちの居處すまひなればなり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、童貞女どうていぢよよ、我われ諸慾しよよくの地ぢ獄ごくの墓はかに臥ふす者ものを復ふく活くわつせしめて、生命せいめいと福樂ふくらくの報むくいとに導みちびき、永在えいざいなる甘かん味みのある處ところ、暮くれざる光ひかりの輝かゞやく處ところに於おいて我われに盡つきざる神聖しんせいなる喜悅よろこびを獲えしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞。

萬民ばんみん來きたりて、歡よろこびの聲こゑを以もつて至し聖せいなる童貞どうてい生しやう神女しんぢよを崇あがめ讚ほめん、彼かれは人ひとの性せいの坩堝るつぼ、言いひ難がたき諸しよ奇き跡せきの行おこなはるる處ところなり、蓋けだし彼かれに由よりて新あらたなる事ことは成なりて、始はじめなき者ものは始はじめられ、言ことばは形かたちづくられ、神かみは人ひとを神かみと爲なさん爲ために人ひとと爲なれり、是これ性せいを易かふるを以もつてするにあらずして、實じつ性せいを合あはすを以もつてなり。蓋けだし二ふたつの異ことなる者ものより一ひとつの者ものは出いでて、二ふたつの完くわん全ぜんなる性せいの内うちに分わかれざる者ものとして知しらる、各おのおのの性せいに其その旨むね及および行動はたらきあるなり。是これ實じつに救すくひを施ほどこす定制ていせいに因よりて現あらはれたるハリストス我われ等らの神かみ、世せ界かいに潔淨きよめと平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを賜たまふ主しゆなり。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に主日の讚詞トロパリ。光榮、今も、其生神女讚詞。幷に發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 「スボタ」の大晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十句を立てて主日の次の讚頌スティヒラを歌ふ、第六調。

句 我わが靈たましひを獄ひとやより引ひき出いだして、我われに爾なんぢの名なを讚榮さんえいせしめ給たまへ。

地ぢ獄ごくに勝かつハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに上のぼれり、死し者しやの中うちに自じ由いうなる者もの、己おのれの光ひかりより生命いのちを流ながす者ものとして、死しの幽暗くらやみに坐ざする者ものを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめん爲ためなり。全能ぜんのうの救世主きうせいしゆよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 爾なんぢ恩おんを我われに賜たまはん時とき、義ぎ人じんは我われを環めぐらん。

今いまハリストスは死しを滅ほろぼして、嘗かつて言いひし如ごとく復ふく活くわつし、世せ界かいに歡喜よろこびを賜たまへり、我われ等ら皆みな籲よびて斯かく歌うたはん爲ためなり、生命いのちの泉いづみ、近ちかづき難がたき光ひかり、全能ぜんのうの救世主きうせいしゆよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ深ふかき處ところより爾なんぢに呼よぶ。主しゆよ、我わが聲こゑを聽きき給たまへ。

主しゆよ、我われ等ら罪人ざいにん何處いづこに爾なんぢ悉ことごとくの造物ざうぶつに居をる者ものを避さけん、天てんには爾なんぢ親みづから住すむ、地ぢ獄ごくには爾なんぢ死しを滅ほろぼせり、海うみの深處ふかみに入いらんか、主宰しゆさいよ、彼處かしこには爾なんぢの手てあり。我われ等ら爾なんぢに趨はしり附つき、爾なんぢに伏拜ふくはいして禱いのる、死しより復ふく活くわつせし主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

又讚頌スティヒラ、アナトリイの作。同調。

句 願ねがはくは爾なんぢの耳みゝは我わが禱いのりの聲こゑを聽きき納いれん。

ハリストスよ、我われ等ら爾なんぢの十じふ字架じかを以もつて誇ほこりと爲なし、爾なんぢの復ふく活くわつを歌うたひて崇あがめ讚ほむ、爾なんぢは我われ等らの神かみにして、我われ等ら爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

我われ等ら常つねに主しゆを崇あがめ讚ほめて、彼かれの復ふく活くわつを歌うたふ、其その十じふ字架じかを忍しのびて死しを以もつて死しを滅ほろぼししに因よる。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす、蓋けだし爾なんぢは死しの權けんを有たもつ者ものを空むなしくし、爾なんぢの十じふ字架じかを以もつて我われ等らを新あらたにして、我われ等らに生命いのちと不ふ朽きうとを賜たまへり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

主しゆよ、爾なんぢの葬はうむりは地ぢ獄ごくの桎梏かせを壞やぶり、死しよりの復ふく活くわつは世せ界かいを照てらせり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

又生神女の讚頌スティヒラ、アモレイのパワェルの作。第三調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、我わが體からだの劣弱よわみ、靈たましひの苦惱くるしみ、心こゝろの憂愁うれひを見みて、我われに神聖しんせいなる眷顧かへりみを得えしめ給たまへ。祈いのる、爾なんぢの熱切ねつせつなる祈き禱たうを以もつて我われを救すくひ給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

女宰ぢよさいよ、我われ諸罪しよざいを以もつて衆しゆう人じんに超こえたり。祈いのる、潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、其その多おほきを潔きよめて、爾なんぢの子こ及および神かみの將しやう來らいの審判しんぱんに於おいて我われに慈じ憐れんを蒙かうむるを得えしめ給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

潔いさぎよき者ものよ、我われ爾なんぢを呼よぶ者ものの諸罪しよざいの多おほきを潔きよめて、爾なんぢの祈き禱たうの劍つるぎを以もつて我わが慾よくの厲はげしき動搖うごきを斷たち給たまへ、我わが信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢの種たねなき產さんを歌うたはん爲ためなり。

光榮、今も、生神女讚詞

至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、誰たれか爾なんぢを讚さん美びせざらん、誰たれか爾なんぢの至いたりて淨きよき產さんを歌うたはざらん。世よの無なき先さきに父ちゝより光ひかる獨生どくせいの子こは爾なんぢ淨きよき者ものより言いひ難がたく身みを取とりて出いで、本性ほんせいの神かみは我われ等らの爲ために本性ほんせいの人ひとと爲なれり、其その位くらゐ一ひとつにして相分あひわかれず、其その性せい二ふたつにして相あひ失うしなはず。淨きよくして至いたりて福さいはひなる者ものよ、我わが靈たましひの憐あはれみを蒙かうむらんことを彼かれに禱いのり給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。提綱ポロキメン、「主は王たり」。其他常例の如し。

挿句くづけに主日の讚頌スティヒラ、第六調。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、諸天しよてん使しは天てんに於おいて爾なんぢの復ふく活くわつを歌うたふ。我われ等らにも地ちに於おいて潔いさぎよき心こゝろを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいするに堪たへさせ給たまへ。

他の讚頌スティヒラ

句 主しゆは王わうたり、彼かれは威ゐ嚴げんを衣きたり。

爾なんぢは全能ぜんのうの神かみたるに因よりて、銅あかゞねの門もんを破やぶり、地ぢ獄ごくの柱はしらを折くじきて、陷おちいりたる人ひとの族やからを復ふく活くわつせしめ給たまへり。故ゆゑに我われ等らも同心どうしんに呼よぶ、死しより復ふく活くわつせし主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 故ゆゑに世せ界かいは堅けん固ごにして動うごかざらん。

ハリストスは我われ等らの古いにしへの朽壞やぶれを改あらためんと欲ほつして、十じふ字架じかに釘ていせられ、墓はかに置おかれたり。攜香女けいかうぢよは淚なみだと共ともに彼かれを尋たづねて、泣なきて曰いへり、哀かなしい哉かな衆しゆう人じんの救世主きうせいしゆよ、如何いかに爾なんぢは墓はかに居をるを甘あまんじたる、居をるを甘あまんじて如何いかに盜ぬすまれたる、如何いかに移うつされたる、何なんの處ところか爾なんぢの生命いのちを施ほどこす肉體にくたいを匿かくしたる、然しかれども主宰しゆさいよ、爾なんぢが約やくせし如ごとく、我われ等らに現あらはれて、我われ等らの涕泣ていきふを慰なぐさめ給たまへ。斯かく泣なける時とき天てん使し彼かれ等らに呼よべり、淚なみだを止とゞめて使徒しとに告つげよ、主しゆは復ふく活くわつして、世せ界かいに潔淨きよめと大おほいなる憐あはれみとを賜たまへり。

句 主しゆよ、聖德せいとくは爾なんぢの家いへに屬ぞくして永遠えいゑんに至いたらん。

ハリストスよ、爾なんぢは欲ほつせし如ごとく十じふ字架じかに釘ていせられ、爾なんぢの葬はうむりにて死しを虜とりこにし、神かみとして三日みつか目めに光くわう榮えいを以もつて復ふく活くわつして、世せ界かいに終をはりなき生命いのちと大おほいなる憐あはれみとを賜たまへり。

光榮、今も、生神女讚詞

至し淨じやうなる者ものよ、我われの造成者ざうせいしや及および贖しよく罪ざい者しやハリストス主しゆは、我われを衣きて、爾なんぢの胎たいより出いでて、アダムを初はじめの詛のろひより解とき給たまへり。故ゆゑに無む玷てんの者ものよ、我われ等ら爾なんぢ、實じつに神かみの母はゝ及および童貞女どうていぢよたる者ものに默もださずして天てん使しの如ごとくに呼よぶ、慶よろこべ、女宰ぢよさい、我われ等らの靈たましひの轉達てんたつ、帲幪おほひ、及および拯救すくひよ、慶よろこべ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に、

主日の讚詞トロパリ、第六調。

天てん使しの軍ぐん爾なんぢの墓はかに現あらはれしに、番兵ばんぺい死しせし者ものの如ごとし、マリヤ墓はかに立たちて、爾なんぢの潔いさぎよき體からだを尋たづねたり。爾なんぢは地ぢ獄ごくに誘いざなはれずして、地ぢ獄ごくを虜とりこにし、生命いのちを賜たまふ者ものとして、處女しよぢよに逢あひ給たまへり。死しより復ふく活くわつせし主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、生神女讚詞

爾なんぢは恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものを己おのれの母はゝと名なづけて、自じ由いうの望のぞみを以もつて苦くるしみの爲ために來きたり、アダムを尋たづねんと欲ほつして、十じふ字架じかの上うへに輝かゞやきて、天てん使等しらに謂いへり、我われと共ともに喜よろこべ、蓋けだし失うしなはれし金錢ドラフマは獲えられたりと。智慧ちゑを以もつて萬ばん事じを治をさめし我われ等らの神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

次に發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 「スボタ」の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第六調。

第一歌頌

イルモス イズライリは陸くがの如ごとく淵ふちを蹈ふみ渡わたり、追おひ詰つめしファラオンの溺おぼるるを見みて呼よべり、凱歌かちうたを神かみに奉たてまつらん。

附唱 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

神かみの盡つくされぬ恩おん寵ちようを有たもち給たまふ母はゝ、聘女よめならぬ聘女よめよ、爾なんぢに趨はしり附つく者ものを棄すてずして、常つねに災禍わざはひ及および憂患うれひより救すくひ給たまへ。

視みよ、憂悶もだえは我われに及およべり、至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、起たちて、我われに援助たすけの手てを授さづけ給たまへ、爾なんぢは世せ界かいを神聖しんせいなる樂たのしみに滿みてたればなり。

光榮 神かみの母はゝよ、保護ほご者しやとして、爾なんぢの權能けんのうの帲幪おほひを我われ艱難かんなんに圍かこまるる者ものに亟すみやかに予あたへて、我われを其害そのがいより護まもり給たまへ。

今も 我わが靈たましひは死しに瀕ひんせり、我われを憎にくむ者ものは蝮まむしの如ごとく我われを繞めぐりて、誘惑いざなひを以もつて滅ほろぼさんと欲ほつす。生しやう神女しんぢよよ、親みづから我われを救すくひ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 我わが口くちは我わが敵てきに向むかひて開ひらけたり、我わが心こゝろ主しゆに緣よりて固かためられたればなり。

生しやう神女しんぢよよ、生命いのちを生うみし者ものとして、諸罪しよざいに殺ころされし我わが靈たましひを活いかし給たまへ。

生しやう神女しんぢよ、我われ等らの恃賴たのみよ、爾なんぢに趨はしり附つく者ものを諸もろもろの誘惑いざなひより護まもり給たまへ。

光榮 我わが主しゆの至いたりて無む玷てんなる母はゝよ、我われに及およぶ種種しゆじゆの患くわん難なんより我われを救すくひ給たまへ。

今も 爾なんぢの神聖しんせいなる產さんを以もつて世せ界かいに救すくひを賜たまふ者ものよ、我われを苦く難なんより脫のがれしめ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、預よ言者げんしやは爾なんぢが降臨かうりんの事ことを聞きき、爾なんぢが童貞女どうていぢよより生うまれ、人人ひとびとに顯あらはれんと欲ほつするを懼おそれて曰いへり、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

吾わが靈たましひの力ちからは大いたく弱よわり、我わが諸罪しよざいに因よりて甚はなはだしき暗昧くらみは我われに及およべり。神かみの母はゝよ、祈いのる、光ひかりを施ほどこす神聖しんせいなる雲くもとして、顧かへりみて我われを照てらし給たまへ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、港みなととして、我わが惡あくの暴風あらしと諸罪しよざいの擾亂みだれとを救すくひの穩靜をんせいに變へんじ給たまへ。諸敵しよてきは吼ほゆる獅しゝの如ごとく我われを囓かまんと欲ほつす、祈いのる、其その滅亾ほろびより我われを救すくひ給たまへ。

光榮 晝ひるに夜よるに、陸くがに海うみに、何いづれの處ところに於おいても確たしかなる救すくひ及および勝かたれぬ帲幪おほひたる生しやう神女しんぢよよ、我われを救すくひ給たまへ、我われ等らハリスティアニンは實じつに爾なんぢを神かみに亞つぎて恃賴たのみとすればなり。

今も 爾なんぢは常つねに我われを大おほいなる諸罪しよざい及および禍わざはひより救すくふ者ものなり。故ゆゑに我われ爾なんぢ主しゆを生うみし者ものに祈いのりて、爾なんぢ憂うれふる者ものの確たしかなる援助たすけに趨はしり附つく、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを苦く難なんより脫のがれしめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを世せ界かいに輝かゞやかししハリストスよ、我われ夜や中ちゆうより爾なんぢに呼よぶ者ものの心こゝろを照てらして、我われを救すくひ給たまへ。

言ことばの純じゆん潔けつなる母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを救すくひの帲幪おほひとして讚榮さんえいして、人ひとの惡謀あくぼうを懼おそれず。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ等ら爾なんぢを壞やぶられぬ垣墻かきとして有たもちて、諸もろもろの誘惑いざなひ及および憂愁うれひより救すくはる。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、我われを惡あしき人ひとの舌したより救すくひ給たまへ、剃刀かみそりの如ごとく磨とがれて、我わが靈たましひを滅ほろぼさんと謀はかればなり。

今も 我われ熱切ねつせつに爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくして祈いのる、我わが造成主ざうせいしゆの母はゝとして、我われを圍かこめる患くわん難なんより釋とき給たまへ。

第六歌頌

イルモス ハリストスよ、我われ罪つみの鯨くぢらに呑のまれて、爾なんぢに呼よぶ、預よ言者げんしやの如ごとく我われを淪滅ほろびより脫のがれしめ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ苦にがみの味あぢを得えて、神聖しんせいなる甘あまみを厭いとへり。故ゆゑに爾なんぢに呼よぶ、我われに援助たすけを與あたへ給たまへ。

諸慾しよよくの昏昧くらみは我われを朽きう壞くわいの奴ど隷れいと爲なせり。祈いのる、光ひかりを生うみし女宰ぢよさいよ、我われを釋とき給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、我われ爾なんぢに依よりて憂うれひを免まぬかれて、信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを讚さん榮えいして、爾なんぢに祭まつりを捧さゝげん。

今も 不義ふぎなる口くちは我われに向むかひて開ひらきたり。女宰ぢよさいよ、保護ほご者しやとして我われを亟すみやかに之これより釋とき給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第六調。

ハリスティアニン等らの辱はぢを得えざる轉達てんたつ、造物主ざうぶつしゆの前まへに變かはらざる中ちゆう保はうよ、罪つみなる者ものの禱いのりの聲こゑを退しりぞくる勿なかれ、仁じん慈じなるに因よりて速すみやかに我われ等らを助たすけ給たまへ。蓋けだし我われ等ら切せつに爾なんぢに呼よぶ、生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢを尊たふとむ者ものに常つねに代かはりて急いそぎて禱いのり、切せつに求もとめ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 天てん使しは敬虔けいけんなる少者せうしやの爲ために爐ゐろりに露つゆを出いださしめ、ハルデヤ人じんを燒やく神かみの命めいは苦くるしむる者ものに呼よばしめたり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、吾わが靈たましひを誘いざなふ者ものは肥こえたる牡を牛うしの如ごとく我われを圍かこめり、親みづから我われを此これ等らより脫のがれしめ給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは禍わざはひ及および憂愁うれひに居をる者ものを熱心ねつしんに助たすけて、常つねに喜悅よろこびを與あたへ給たまふ。

光榮 童貞女どうていぢよよ、衆しゆう人じんの壞やぶられぬ帲幪おほひとして、我われ惡あく事じに因よりて失望しつばうと悲哀かなしみとに勝かたるる者ものを護まもり給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよよ、我われ等らは爾なんぢの轉達てんたつを以もつて患くわん難なん憂愁いうしうより救すくはれて、大おほいなる盡つくされぬ富とみを獲うるなり。

第八歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢは敬虔けいけんなる者ものの爲ために焰ほのほより露つゆを注そゝぎ、義ぎ人じんの祭まつりの爲ために水みづより火ひを出いだせり、爾なんぢは一ひとつの望のぞみにて萬ばん事じを行おこなひ給たまへばなり、我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

生しやう神女しんぢよよ、我われ人人ひとびとの侵害しんがいに惱なやまされて祈いのる、我われを彼かれ等らの空むなしき謀はかりごとより脫のがれしめ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、我われ悲哀かなしみと誘惑いざなひとに勝かたれて祈いのる、此これ等らの害がいより我われを救すくひ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、我われを詭き譎けつなる人ひと、其その舌した其その口くち、及および暴ばう虐ぎやく幷ならびに凡およその危き難なんより救すくひ給たまへ。

今も 我われ惡あしき風習ならはしに誘いざなはれて、答こたふべき所ところなくして生しやう神女しんぢよに呼よぶ、凡およその惡あくより我われを脫のがれしめ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 天てん使しより慶よろこべよを受うけて、己おのれの造成主ざうせいしゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢを讚ほめ揚あぐる者ものを救すくひ給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、度ど生せいの憂愁うれひの中うちに我われに慈じ憐れんを垂たれて、爾なんぢに趨はしり附つく者ものを諸難しよなんより救すくひ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、疑うたがはざる靈たましひを以もつて爾なんぢに趨はしり附つく者ものの爲ために、爾なんぢは獨ひとり陸くがに海うみに實じつに破やぶられざる帲幪おほひと現あらはれたり。

光榮 讚さん美びたる者ものよ、我われ無知むちに甚はなはだしき墮だ落らくを以もつて己おのれを罪つみの奴ど隷れいと爲なしし者ものに、爾なんぢの祈き禱たうに由よりて自じ由いうを得えしめ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、我われ爾なんぢを堅けん固ごなる恃賴たのみ及および轉達てんたつとして獲えて、熱信ねつしんに爾なんぢを生しやう神女しんぢよと崇あがめ讚ほめて、歌か頌しようを終をふ。

次ぎて「常に福にして」。聖三祝文。「天に在す」の後に本調の小讚詞コンダク。其他常例の如し、幷に發放詞。

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日曜日(主日)

 主日の朝、夜半課

生命を施す至聖なる三者の規程カノン、其冠詞は、神よ、第六の歌頌を爾に捧ぐ。ミトロファンの作。第六調。

第一歌頌

イルモス イズライリは陸くがの如ごとく淵ふちを蹈ふみ渡わたり、追おい詰つめしファラオンの溺おぼるるを見みて呼よべり、凱歌かちうたを神かみに奉たてまつらん。

附唱 至し聖せいなる三者さんしや我われ等らの神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

惟一ゆゐいちなる性せいの變易へんえきせざる神體しんたい、仁じん慈じにして人ひとを愛あいする神かみの三さん位ゐ、我われ等らに諸罪しよざいの潔淨きよめを賜たまふ主しゆを我われ等ら歌うたふ。

實在じつざいなる惟一者ゆゐいちしや、位ゐに於おいて三さん光くわうなる主しゆ、獨一性どくいつせいの神かみよ、我われ等らを悟さとらせて、爾なんぢの神聖しんせいなる光くわう照せうを獲えしめ給たまへ。

光榮 パワェルは異い邦民はうみんより生うみたる敎けう會くわいを新婦はなよめの如ごとく飾かざりて、爾なんぢ惟一ゆゐいちにして三さん位ゐなる神かみに伏拜ふくはいするを敎をしへたり、萬物ばんぶつは爾なんぢに造つくられ、爾なんぢに依よりて爾なんぢの中うちに存在そんざいすればなり。

今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、靈れい智ちなる日ひは爾なんぢの腹はらより出いでて、我われ等らを三さん光くわうの神性しんせいの光くわう線せんにて照てらせり、我われ等ら彼かれを歌うたひて、敬虔けいけんに爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢが信者しんじやの角つのを高たかうし、我われ等らを爾なんぢが承認うけとめの石いしに堅かためし仁じん慈じの主しゆ、吾わが神かみよ、爾なんぢと均ひとしく聖せいなるはなし。

三さん光くわうの神かみよ、爾なんぢは天てんの品ひん位ゐを飾かざりて、聖三せいさんの聲こゑを以もつて爾なんぢを歌うたふを致いたせり。彼かれ等らと偕ともに我われ等ら爾なんぢの仁じん慈じを歌か頌しようする者ものをも受うけ給たまへ。

我われ等らは惟一ゆゐいちの變易へんえきせざる同どう性せい三さん位ゐの神元しんげんを歌うたひて、熱切ねつせつに爾なんぢに多おほくの罪つみの赦ゆるしを我われ等らに降くださんことを祈いのる。

光榮 無む原げんの智慧ちゑたる父ちゝ、同どう性せいの神かみの言ことば、及および仁じん善ぜんにして義ぎなる聖神せいしんよ、熱切ねつせつに爾なんぢの權柄けんぺいを歌か頌しようする者ものを護まもり給たまへ、爾なんぢは慈じ憐れんなればなり。

今も、生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、我わが神かみは爾なんぢの腹はらの内うちに實じつ性せいの人ひとと爲なりて、朽きう壞くわいの草くさ場ばを空むなしくし、獨ひとり原げん祖そを先さきの定罪ていざいより釋とき給たまへり。

次ぎて主憐めよ、三次。

坐誦讚詞セダレン、第六調。

主宰しゆさい神かみ、至し仁じんにして人ひとを愛あいする主しゆよ、天てんより臨のぞみ、我われ等らの卑微ひびなるを視みて、宏くわう恩おんなるに因よりて慈じ憐れんを垂たれ給たまへ、蓋けだし我われ等らが犯おかしし罪惡ざいあくの赦ゆるしを受うけん爲ために他たに賴たのむ所ところなし。祈いのる、我われ等らと偕ともに居をり給たまへ、然しからば孰たれも我われ等らに敵てきせざらん。

光榮、今も、生神女讚詞 潔いさぎよき女宰ぢよさい、至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、臨のぞみて我われ等らの傷創きずの痛いたみを視みて、我われ等らを憐あはれみ、爾なんぢの慈じ憐れんを注そゝぎて、我わが良りやう心しんの苦く熱ねつを醫いやして、爾なんぢの諸僕しよぼくに呼よび給たまへ、我われ爾なんぢ等らと偕ともにす、然しからば孰たれも爾なんぢ等らに敵てきせざらん。

第四歌頌

イルモス 尊たふとき敎けう會くわいは淨きよき心こゝろより主しゆの爲ために祝いはひ、神かみに適かなひて呼よび歌うたふ、ハリストスは吾わが力ちからと神かみと主しゆなり。

三さん光くわうの惟一者ゆゐいちしやよ、爾なんぢを歌うたふ者ものの思念おもひを高たかくし、靈たましひと心こゝろとを上のぼせて、爾なんぢの光くわう照せうと光くわう輝きとを獲えしめ給たまへ。

惟一ゆゐいちの形かたどられぬ變易へんえきせざる三者さんしやよ、我われを化くわして、凡およその惡あくより德とくに轉てんぜしめて、爾なんぢの光くわう線せんにて照てらし給たまへ。

光榮 三さん位ゐなる惟一者ゆゐいちしやよ、爾なんぢは先さきに意旨いしを以もつて睿えい智ちにして天てん使しの品ひん位ゐ、爾なんぢの仁じん慈じに奉ほう事じする者ものを造つくり給たまへり。彼かれ等らと偕ともに我われの讚さん美びを受うけ給たまへ。

今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ永貞えいてい童女どうぢよよ、性せいの造つくられざる永在えいざいなる神かみは爾なんぢの聖せいなる腹はらの内うちに造つくられたる人ひとの性せいを受うけて、之これを新あらたにし給たまへり。

第五歌頌

イルモス 至し仁じんなる神かみの言ことばよ、切せつに祈いのる、爾なんぢに朝あさの祈き禱たうを奉たてまつる者ものの靈たましひを爾なんぢが神かみの光ひかりにて照てらして、爾なんぢ罪つみの暗やみより呼よび出いだす眞まことの神かみを知しらしめ給たまへ。

主宰しゆさいよ、我われ等らは神元しんげんの性せい、衆しゆう人じんの爲ために慮おもんぱかりて救すくひを施ほどこす、三さん光くわうにして惟一ゆゐいちなる者ものを思おもひて、爾なんぢに朝あさの祈き禱たうを奉たてまつりて、罪過ざいくわの赦ゆるしを求もとむ。

無む原げんなる神父かみちゝ、同どう永在えいざいなる子こ、及および聖神せいしん、一いち元げんの三者さんしやよ、爾なんぢを歌うたふ者ものを堅かためて、凡およその災難わざはひ及および憂患うれひより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 光くわう榮えいの日ひよ、常つねに我われを照てらして、爾なんぢの三さん位ゐなる神性しんせいの悅よろこびを爲なす行おこなひに導みちびきて、天てんの國くにに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

今も、生神女讚詞 爾なんぢの全能ぜんのうの手てにて萬物ばんぶつを保たもちて之これを護まもる變易へんえきせざる神かみの言ことばよ、爾なんぢを生うみし生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに由よりて、爾なんぢを讚榮さんえいする者ものを保たもちて護まもり給たまへ。

第六歌頌

イルモス 誘惑いざなひの猛風あらしにて浪なみの立たち揚あがる世よの海うみを觀みて、爾なんぢの穩おだやかなる港みなとに著つきて呼よぶ、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

三さん光くわうの神元しんげんよ、爾なんぢを歌うたふ者ものに智慧ちゑと知ち識しきとを賜たまひて、仁じん慈じを以もつて衆しゆうに爾なんぢの光ひかりを施ほどこす華麗くわれいの光くわう線せんにて輝かゞやかさるるを得えしめ給たまへ。二次。

光榮 本性ほんせいに於おいて分わかれざる光ひかり、三さん光くわう、全能ぜんのうにして、近ちかづかれぬ者ものよ、忠ちゆう信しんに爾なんぢの權柄けんぺいを讚ほめ揚あぐる者ものの心こゝろを照てらして、其内そのうちに神かみを愛あいする愛あいを燃もやし給たまへ。

今も、生神女讚詞 永貞えいてい童女どうぢよよ、全能者ぜんのうしや及および萬有ばんいうの主しゆは爾なんぢの内うちに入いりて、人人ひとびとに三さん光くわうなる神性しんせいの一體いつたいに叩拜こうはいするを敎をしへ給たまへり。

主憐めよ、三次。

坐誦讚詞セダレン、第六調。

仁じん慈じなる父ちゝ、子こ、及および聖神せいしんよ、我われ等らを眷かへりみ給たまへ。我われ等ら塵ちりの者ものは火焰くわえんの者ものと偕ともに信しんを以もつて爾なんぢに伏拜ふくはいして、爾なんぢの權柄けんぺいを讚榮さんえいす、爾なんぢの外ほかに他たの神かみを知しらざればなり。求もとむ、爾なんぢを歌うたふ者ものに呼よび給たまへ、我われ爾なんぢ等らと偕ともにす、然しからば孰たれも爾なんぢ等らに敵てきせざらん。

光榮、今も、生神女讚詞 讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら眷かへりみて、昏くらみたる心こゝろに光くわう照せうを輝かゞやかし給たまへ。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの牧群ぼくぐんを照てらし給たまへ、爾なんぢは造成主ざうせいしゆの母はゝとして、欲ほつする所ところ能よくせざるなければなり。求もとむ、爾なんぢに祈いのる者ものに呼よび給たまへ、我われ爾なんぢ等らと偕ともにす、然しからば孰たれも爾なんぢ等らに敵てきせざらん。

第七歌頌

イルモス 天てん使しは敬虔けいけんなる少者せうしやの爲ために爐ゐろりに露つゆを出いださしめ、ハルデヤ人じんを燒やく神かみの命めいは苦くるしむる者ものに呼よばしめたり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

位ゐに於おいて三さん光くわうなる惟一者ゆゐいちしやよ、爾なんぢの神聖しんせいなる誡いましめを守まもりて行おこなはん爲ために我われに堅かたき志こゝろざしを與あたへて、常つねに熱信ねつしんに爾なんぢに歌うたはしめ給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

本性ほんせいの同一どういつなる者ものとして歌うたはるる、言いひ難がたく惟一ゆゐいちなる神かみ、位ゐに於おいて三さん數すうを有たもつ主しゆよ、我われ等ら衆しゆうを諸もろもろの誘惑いざなひ及および災禍わざはひより護まもり給たまへ。

光榮 我われ等らは同どう永在えいざいにして性せいに於おいて同一どういつなる神かみ、各かく位ゐに於おいて混淆こんかうせずして其その本ほん質しつを有たもつ三者さんしやの單一たんいつなる變易へんえきなき體たいを讚榮さんえいす。

今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、永在えいざいの神かみは人ひとを愛あいするに因よりて爾なんぢの潔いさぎよき腹はらより我われ等ら人類じんるゐの合成がふせいを受うけて、衆しゆうに呼よばしめ給たまふ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

第八歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢは敬虔けいけんなる者ものの爲ために焰ほのほより露つゆを注そゝぎ、義ぎ人じんの祭まつりの爲ために水みづより火ひを出いだせり、爾なんぢは一ひとつの望のぞみにて萬ばん事じを行おこなひ給たまへばなり、我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

同どう一性いつせいの三者さんしや、三さん位ゐの惟一者ゆゐいちしやよ、我われに速すみやかに諸罪しよざいの潔けつ淨じやうと多た種しゆの慾よくの消滅せうめつとを與あたへ給たまへ、我わが萬世ばんせいに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

三さん光くわうの惟一者ゆゐいちしや、至し仁じんなる三者さんしやよ、慈じ憐れん仁じん慈じなる神かみとして、凡およそ爾なんぢの至し大だいなるを讚榮さんえいする者ものを憐あはれみ給たまへ。

光榮 我われ等らは永在えいざいの光ひかりたる父ちゝより生うまれし永在えいざいの光ひかりたる言ことばを出いづる光ひかりたる聖神せいしんと偕ともに熱信ねつしんに讚榮さんえいして、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは人人ひとびとの爲ために全能ぜんのうの醫師いしたる言ことばハリストス、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あぐる衆しゆう人じんを原げん祖その傷創きずより醫いやし給たまふ主しゆを生うみ給たまへり。

第九歌頌

イルモス 天てん使しの品ひん位ゐすら見みるを得えざる神かみは、人ひと見みる能あたはず、唯たゞ爾なんぢ至し淨じやうの者ものに藉よりて人體じんたいを取とりし言ことばは人人ひとびとに現あらはれ給たまへり。我われ等ら彼かれを崇あがめて、天軍てんぐんと偕ともに爾なんぢを讚ほめ揚あぐ。

主宰しゆさいよ、ヘルワィムの品ひん位ゐは爾なんぢの華くわ美びの光くわう榮えいを見みる能あたはずして、翼つばさに蔽おほはれて、絕たえず聖三せいさんの歌うたを奉たてまつりて、爾なんぢの惟一ゆゐいちなる神元しんげんの三さん位ゐの權柄けんぺいを讚榮さんえいす。

暮くれざる日ひ、大仁だいじん慈じにして三さん位ゐなる惟一者ゆゐいちしやよ、我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくの心こゝろに光くわう照せうを賜たまひて、靈たましひを照てらし、多おほくの罪つみより脫のがれしめて、爾なんぢの不ふ朽きうなる生命いのちに與あづからしめ給たまへ。

光榮 同一尊どういつそんなる三日さんじつの光ひかり、光明くわうみやうを施ほどこす實在じつざいの神性しんせいよ、信しんを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものを照てらして、暗くらき惡あく事じより脫のがれしめ、至し仁じんの主しゆとして、爾なんぢの至いたりて光くわう明めいなる居處すまひを獲えしめ給たまへ。

今も、生神女讚詞 讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの子こは先さきに睿えい智ちを以もつて人ひとを造つくり、後のちに朽くちたる者ものを爾なんぢに因よりて新あらたにして、凡およそ信しんを以もつて爾なんぢを眞まことの生しやう神女しんぢよと讚榮さんえいする者ものを神聖しんせいなる光ひかりの滅きえざる煇煌かゞやきに滿みて給たまへり。

次にグリゴリイ シナイトの聖三讚歌、「爾神言を讚榮するは」、及び其他夜半課の式。本書の末に載す。

横線 - 『八調経』第六調

 主日の早課

六段の聖詠畢りて「主は神なり」、第六調に依りて歌ひ、後主日の讚詞トロパリ、「天使の軍爾の墓に現れしに」、二次。光榮、今も、生神女讚詞、「爾は恩寵を蒙れる者を」。次に聖詠經の常例の誦讀。

第一の誦文の後に主日の坐誦讚詞セダレン、第六調。

墓はかは啓ひらかれ、地ぢ獄ごくは哭なくに、マリヤは隱かくれたる使徒等しとらに呼よべり、葡ぶ萄園だうゑんの工作者こうさくしやよ、出いでて、復ふく活くわつの詞ことばを傳つたへよ、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまふ主しゆは復ふく活くわつし給たまへり。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる毋なかれ。

主しゆよ、マリヤ「マグダリナ」は爾なんぢが墓はかの前まへに立たちて哭なき、爾なんぢを園丁にはづくりなりと意おもひて、呼よびて曰いへり、何處いづこに永遠えいゑんの生命いのちを置おきたる、何處いづこにヘルワィムの寶はう座ざに坐ざする者ものを隱かくしたる、蓋けだし彼かれを守まもる者ものは恐懼おそれに由よりて死しせし如ごとくなれり。或あるひは我わが主しゆを我われに予あたへよ、或あるひは我われと偕ともに呼よべ、死し者しやの中うちに在ありて死し者しやを復ふく活くわつせしめし主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、ゲデオンは爾なんぢの胎孕はらみを預よ象しやうし、ダワィドは爾なんぢの產さんを述のぶ。蓋けだし雨あめが羊ひつじの毛けに於おける如ごとく、言ことばは爾なんぢの腹はらに降くだりしに、爾なんぢは、恩おん寵ちようを蒙かうむれる聖せいなる地ちよ、種たねなくして世せ界かいの爲ために拯救すくひなるハリストス、我われ等らの神かみを生しやうじ給たまへり。

第二の誦文の後に主日の坐誦讚詞セダレン、第六調。

生命いのちは墓はかの内うちに臥ふし、印いんは石いしの上うへに貼つけられ、兵卒へいそつは寢いぬる王わうの如ごとくハリストスを守まもれり。主しゆは見みえずして己おのれの敵てきを敗やぶりて、復ふく活くわつし給たまへり。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き跡せきを傳つたへん。

不死ふしの主しゆよ、イオナは爾なんぢの墓はかを預よ象しやうし、シメオンは神聖しんせいなる復ふく活くわつを述のぶ。蓋けだし爾なんぢは、ハリストス我われ等らの神かみよ、死し者しやとして墓はかに降くだりて、地ぢ獄ごくの門もんを破やぶり、暗昧くらやみに居をる者ものを照てらし、朽きう壞くわいに與あづからざる主宰しゆさいとして復ふく活くわつして、世せ界かいに救すくひを賜たまへり。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの子こ、甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせられ、死しより復ふく活くわつせしハリストス我われ等らの神かみに、我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

ネポロチニの後に應答歌イパコイ、第六調。

ハリストスよ、爾なんぢは神かみなるにより、生命いのちを施ほどこす自じ由いうの死しにて地ぢ獄ごくの門もんを破やぶりて、我われ等らの爲ために古いにしへの樂園らくゑんを開ひらき、死しより復ふく活くわつして、我われ等らの生命いのちを朽きう壞くわいより救すくひ給たまへり。

品第詞ステペンナ、第六調。第一倡和詞。每句復唱す。

言ことばよ、我われ目めを天てんに爾なんぢに擧あぐ、我われを惠めぐみて、爾なんぢの爲ために生いくるを賜たまへ。

言ことばよ、我われ等ら賤いやしき者ものを憐あはれみて、爾なんぢの用ように適てきする器うつはと爲なし給たまへ。

光榮 聖神せいしんには救すくひの基もとゐ備そなはれり、彼かれ堪たふる者ものに噓ふけば、速すみやかに之これを地ちより擧あげ、之これを飛とばしめ、之これを長ちやうぜしめて、上かみに升のぼらせ給たまふ。

今も、同上。

第二倡和詞

若もし主しゆ我われ等らの中うちにあらずば、我われ等ら誰たれも敵てきの攻擊こうげきに勝かつこと能あたはざらん、蓋けだし勝かつ者ものは此處こゝより擧あげらる。

言ことばよ、願ねがはくは我われの靈たましひは小禽ことりの如ごとく彼かれ等らの齒はにて捕とらはれざらん、嗚呼あゝ哀かなしい哉かな、我われ罪つみを嗜たしむ者ものは如何いかにして敵てきより脫のがるるを得えん。

光榮 聖神せいしんより衆しゆう人じんに成聖せいせい、慈じ惠けい、知ち識しき、平安へいあん、幷ならびに降福かうふくは賜たまはる、蓋けだし彼かれは父ちゝ及および言ことばと等ひとしく行動かうどうする者ものなり。

今も、同上。

第三倡和詞

主しゆを賴たのむ者ものは敵てき彼かれ等らを懼おそれ、衆しゆう人じんは奇きとす、蓋けだし彼かれ等らは上うへを仰あふぎ見みる。

救世主きうせいしゆよ、義ぎなる嗣し業げふは爾なんぢを扶ふ助者じよしやと有たもちて、己おのれの手てを不ふ法はふに伸のべず。

光榮 聖神せいしんの權柄けんぺいは萬有ばんいうにあり、上かみなる軍ぐんは下しもなる凡およその呼吸いきある者ものと偕ともに彼かれに伏拜ふくはいす。

今も、同上。

提綱ポロキメン、第六調。

主しゆよ、爾なんぢの力ちからを興おこし、來きたりて我われ等らを救すくひ給たまへ。

句 イズライリの牧者ぼくしやよ、耳みゝを傾かたぶけよ、イオシフを羊ひつじの如ごとく導みちびく者ものよ、己おのれを顯あらはせ。

「凡そ呼吸ある者」。句、「神を其聖所に讚め揚げよ」。

主日の福音經。「ハリストスの復活を見て」。第五十聖詠。及び其他次第に循ふ。

主日の規程カノン、第六調。

第一歌頌

イルモス イズライリは陸くがの如ごとく淵ふちを蹈ふみ渡わたり、追おひ詰つめしファラオンの溺おぼるるを見みて呼よべり、凱歌かちうたを神かみに奉たてまつらん。

附唱 主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの聖せいなる復ふく活くわつに歸きす。

仁じん慈じなるイイススよ、爾なんぢは十じふ字架じかに伸のべたる手てを以もつて、父ちゝの惠めぐみを萬有ばんいうに滿みたし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな凱歌かちうたを爾なんぢに奉たてまつる。

死しは命めいを受うけし婢しもめの如ごとく恐おそれて、爾なんぢ生命いのちの主宰しゆさいに就つきたり、爾なんぢは是これを以もつて我われ等らに死しせざる生命いのちと復ふく活くわつとを與あたへ給たまふ。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは己おのれの造物主ざうぶつしゆを受うけて、彼かれが其その自みづから欲ほつせし如ごとく、爾なんぢの種たねなき腹はらより量はかり難がたく人じん性せいを取とり給たまふによりて、實じつに造物ざうぶつの女宰ぢよさいと顯あらはれたり。

又 十字架復活の規程カノン

第一歌頌

イルモス 「昔逐ひつめし窘迫者を」。

審判者しんぱんしやは審判しんぱんせらるる者ものとして、甘あまんじてピラトの不ふ法はふなる審判しんぱん座ざの前まへに立たち、地ちと天てんの者ものとの戰をのゝく神かみは不義ふぎなる手てにて面おもてを批うたる。

主宰しゆさい救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは己おのれの神聖しんせいなる手てを爾なんぢの生いのちを施ほどこす至し淨じやうなる十じふ字架じかに伸のべて、異い邦民はうみんを集あつめて爾なんぢを知しらしめ、爾なんぢの光くわう榮えいなる釘てい刑けいに伏拜ふくはいせしむ。

十字架生神女讚詞 ハリストス救世主きうせいしゆよ、至いたりて無む玷てんなる者ものは淚なみだを流ながして、爾なんぢの十じふ字架じかの側かたはらに立たち、爾なんぢの脅わきより滴したゝる血ちを見みて、爾なんぢの無む量りやうなる慈じ憐れんを讚榮さんえいせり。

又 至聖なる生神女の規程カノン、其冠詞は、神の母よ、我に豐なる恩寵を賜へ。

第一歌頌

イルモス 「イズライリは陸の如く淵を蹈み渡り」。

エワは禁きんぜられたる樹きの食しよくを食くらひて、咒詛のろひを入いれたり、潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは祝しゆく福ふくの原因げんいんたるハリストスを生うみて、之これを釋とき給たまへり。

神聖しんせいなる電いなづまに因よりて珍珠ちんじゆとしてハリストスを生うみし潔いさぎよき者ものよ、我わが諸慾しよよくの昏昧くらみと諸罪しよざいの紛擾みだれとを爾なんぢの光ひかりの煇煌かゞやきを以もつて散さんじ給たまへ。

イアコフは靈れい智ちなる目めを以もつて異い邦民はうみんの恃賴たのみなる神かみ、爾なんぢより身みを取とりて、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われ等らを救すくふ者ものを奧密あうみつに預よ見けんせり。

至し淨じやうなる者ものよ、イウダの族ぞくよりする率ひきゐる者もの盡つきたるに、爾なんぢの子こ及および神かみは率ひきゐる者ものとして出いでて、今いま實じつに地ちの四し極きよくに王わうと爲なり給たまへり。

共頌カタワシヤ「我が口を開きて」。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢが信者しんじやの角つのを高たかうし、我われ等らを爾なんぢが承認うけとめの石いしに堅かためし仁じん慈じの主しゆ、吾わが神かみよ、爾なんぢと均ひとしく聖せいなるはなし。

造物ざうぶつは神かみが身みにて釘ていせらるるを見み、畏おそれて崩くづれんとせり、然しかれども我われ等らの爲ために釘ていせられし者ものの全能ぜんのうの手てにて堅かたく保たもたれたり。

詛のろはれたる死しは死しを以もつて壞やぶられ、息いきなくして偃ふす、蓋けだし神聖しんせいなる生命いのちの之これに著つくに堪たへずして、强つよき者ものは殺ころされ、復ふく活くわつは衆しゆう人じんに賜たまはる。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢが神妙しんめうなる產さんの奇き跡せきは悉ことごとくの天然てんねんの法のりに超こゆ、蓋けだし爾なんぢは性せいに超こえて神かみを胎内たいないに孕はらみ、生うみて後のち恒つねに童貞女どうていぢよに止とゞまり給たまふ。

又 イルモス 「造物は爾、全地を寄する所なくして」。

三日さんじつ墓はかの中なかに在ありし主しゆよ、爾なんぢは生いのちを施ほどこす爾なんぢの復ふく活くわつを以もつて先さきに殺ころされし者ものを復ふく活くわつせしめ給たまへり。彼かれ等らは定罪ていざいを釋とかれて、喜よろこび樂たのしみて呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢは拯救すくひとして來きたり給たまへり。

我わが救世主きうせいしゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの復ふく活くわつに歸きす、蓋けだし爾なんぢは全能者ぜんのうしやとして我われ等らを地ぢ獄ごくの朽きう壞くわい及および死しより救すくひ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら歌うたひて云いふ、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなるはなし。

生神女讚詞 至し聖せい至し潔けつなる者ものよ、爾なんぢは爾なんぢより生うまれし者ものが戈ほこを以もつて傷きずつけられしを見みて、心こゝろに傷きずつけられて、驚おどろきて云いへり、子こよ、至いたりて不ふ法はふなる民たみは何なにをか爾なんぢに報むくいたる。

又 イルモス 「爾が信者の角を高うし」。

至いたりて潔いさぎよき神かみの母はゝよ、仁じん慈じなる主しゆは朽きう壞くわいと死しとに屬ぞくする我わが身みを言いひ難がたく爾なんぢの腹はらより取とりて、之これを不ふ朽きうの者ものと爲なして、永遠えいゑんに己おのれに合あはせ給たまへり。

童貞女どうていぢよよ、天てん使しの品ひん位ゐは神かみが爾なんぢより身みを取とり給たまふを見みて、驚おどろき懼おそれて、爾なんぢを神かみの母はゝとして默もださざる歌うたを以もつて尊たふとむ。

神かみの母はゝよ、預よ言者げんしやダニイルは爾なんぢを靈れい智ちなる山やまと見みて驚おどろきたり、蓋けだし此これより石いしは手てに由よらずして斫きられて、其その力ちからを以もつて惡あく鬼きの宮みやを碎くだきたり。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、人ひとの言ことば及および舌したは宜よろしきに合かなひて爾なんぢを讚さん美びする能あたはず、蓋けだし生いのちを施ほどこすハリストスは種たねなくして爾なんぢより身みを取とるを喜よろこび給たまへり。

第四歌頌

イルモス 尊たふとき敎けう會くわいは淨きよき心こゝろより主しゆの爲ために祝いはひ、神かみに適かなひて呼よび歌うたふ、ハリストスは吾わが力ちからと神かみと主しゆなり。

ハリストスよ、眞まことの生命いのちの木きは華はなさけり、蓋けだし十じふ字架じかは樹たてられて、爾なんぢの朽くちざる脅腹わきばらより流ながるる血ちと水みづとに潤うるほされて、我われ等らの爲ために生命いのちを生しやうじたり。

旣すでに蛇へびは僞いつはりて我われに神かみと爲ならんことを勸すゝめず、人ひとの性せいを神かみの性せいに合あはせしハリストスは今いま我わが爲ために障礙さまたげなき生命いのちの道みちを開ひらきたればなり。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ・永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢが神妙しんめうなる產さんの奧あう義ぎは地ちに在ある者ものにも天てんに在ある者ものにも實じつに言いひ難がたく悟さとり難がたし。

又 イルモス 「アウワクムは爾が十字架に於ける」。

ハリストスよ、我われ等らは爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じか及および釘くぎと聖せいなる戈ほこ、葦あしと棘いばらの冠かんむりを尊たふとむ、此これ等らに由よりて地ぢ獄ごくの朽きう壞くわいより脫のがるるを得えたればなり。

救世主きうせいしゆ言ことばよ、墓はかは爾なんぢ甘あまんじて我われ等らの爲ために死し者しやと爲なりし者ものを受うけたれども、敢あへて爾なんぢを留とゞむること能あたはざりき、蓋けだし爾なんぢは神かみとして復ふく活くわつして、我われ等ら人類じんるゐを救すくひ給たまへり。

十字架生神女讚詞 神かみの母はゝ、救世主きうせいしゆハリストスを人人ひとびとの爲ために生うみし永貞えいてい童女どうぢよよ、我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢの神聖しんせいなる帲幪おほひに趨はしり附つく者ものを災禍わざはひ及および苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

又 イルモス 「尊き敎會は淨き心より」。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ等ら爾なんぢに因よりて救すくはれし者ものは爾なんぢ至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよを歌うたひて、敬虔けいけんに呼よぶ、祝しゆく讚さんせらるる哉かな神かみを生うみし永貞えいてい童女どうぢよや。

至し福ふくなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは生命いのちの暗昧くらやみに居をる者ものの爲ために暮くれざる光ひかり、身みにて輝かゞやく者ものを生うみて、爾なんぢ永貞えいてい童女どうぢよを歌うたふ者ものの爲ために歡喜よろこびを流ながし給たまへり。

至し聖せいなる永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢに依よりて恩おん寵ちようは華はなさき、律法りつぱふは絕たえたり、爾なんぢ潔いさぎよき者ものが我われ等らに赦罪しやざいを賜たまふ主しゆを生うみたればなり。

至いたりて潔いさぎよき者ものよ、木きの果みを味あぢはふことは我われを死し者しやと爲なし、爾なんぢより現あらはれし生命いのちの木きは我われを復ふく活くわつせしめて、樂園らくゑんの福ふくの嗣し業げふ者しやと爲なせり。

第五歌頌

イルモス 至し仁じんなる神かみの言ことばよ、切せつに祈いのる、爾なんぢに朝あさの祈き禱たうを奉たてまつる者ものの靈たましひを爾なんぢが神かみの光ひかりにて照てらして、爾なんぢ罪つみの暗やみより呼よび出いだす眞まことの神かみを知しらしめ給たまへ。

主宰しゆさい神かみの言ことばよ、ヘルワィムは今いま我われに道みちを許ゆるし、焰ほのほの劍つるぎは我わが前まへより退しりぞく、爾なんぢ眞まことの神かみが盜賊たうぞくの爲ために樂園らくゑんの道みちを開ひらき給たまひしを見みたればなり。

主宰しゆさいハリストスよ、我われは旣すでに地ちに歸かへるを畏おそれず、蓋けだし爾なんぢは大仁だいじん慈じに因よりて、爾なんぢの復ふく活くわつを以もつて、我われ忘わすれられし者ものを地ちより不ふ朽きうの高たか處きに升のぼせ給たまへり。

生神女讚詞 仁じん慈じなる世せ界かいの女宰ぢよさいよ、中ちゆう心しんより爾なんぢを生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものを救すくひ給たまへ、我われ等ら爾なんぢ神かみの眞まことの母はゝを勝かたれぬ轉達てんたつとして有たもてばなり。

又 イルモス 「ハリストスよ、イサイヤは我等の爲に」。

至し仁じんなる主しゆよ、原げん祖そはエデムの中うちに木きの食しよくに誘いざなはれ、爾なんぢの戒いましめに背そむきて、朽きう壞くわいに陷おちいりたり。然しかれども爾なんぢは、救世主きうせいしゆよ、父ちゝに順したがふ者ものとして、十じふ字架じかを以もつて復また彼かれを始はじめの華くわ美びに升のぼせ給たまへり。

仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢの死しに由よりて死しの權けんは滅ほろぼされ、我われ等らに生命せいめいの泉いづみは注そゝがれ、不死ふしは賜たまはりたり。故ゆゑに我われ等ら熱信ねつしんに爾なんぢの葬はうむり及および復ふく活くわつに伏拜ふくはいす、是これを以もつて爾なんぢは神かみとして全ぜん世せ界かいを照てらし給たまへり。

十字架生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、天てんに居をる主しゆ、萬有ばんいうの造成者ざうせいしやは言いひ難がたく爾なんぢの腹はらに入いりて、爾なんぢを天てんより最高いとたかく、無む形けいの品ひん位ゐより最いと聖せいなる者ものとして榮えいし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら地ちに在ある者ものは今いま爾なんぢを讚揚さんやうす。

又 イルモス 「至仁なる神の言よ、切に祈る」。

讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢは潔けつ淨じやうを以もつて明あきらかに輝かゞやきて、主宰しゆさいの神聖しんせいなる居處すまひと爲なれり、蓋けだし爾なんぢは獨ひとり神かみの母はゝと現あらはれて、彼かれを嬰兒をさなごとして抱いだき給たまへり。

貞潔ていけつに封印ふういんせられたる潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは至いたりて美うるはしき爾なんぢの靈たましひの靈れい智ちなる華くわ美びを有たもち、神かみの聘女よめと爲なりて、潔けつ淨じやうの光ひかりを以もつて世せ界かいを照てらし給たまへり。

爾なんぢ潔いさぎよき神かみの母はゝを承うけ認とめざる不ふ虔者けんしやの群むれは泣なくべし、蓋けだし爾なんぢは我われ等らの爲ために神かみの光ひかりの門もんと現あらはれて、諸罪しよざいの暗やみを散さんじ給たまへり。

第六歌頌

イルモス 誘惑いざなひの猛風あらしにて浪なみの立たち揚あがる世よの海うみを觀みて、爾なんぢの穩おだやかなる港みなとに着つきて呼よぶ、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢ釘くぎうたるる時とき、釘くぎにて我われ等らが蒙かうむれる詛のろひを滅ほろぼし、戈ほこにて脅わきを刺ささるる時とき、アダムの書券かきつけを破やぶりて、世せ界かいを釋とき給たまへり。

アダムは欺あざむき倒たふされて、地ぢ獄ごくの淵ふちに落おとされしに、爾なんぢ本性ほんせいの神かみは、憐あはれみに因よりて、之これを尋たづねんが爲ために降くだり、肩かたに荷になひて、共ともに復ふく活くわつせしめ給たまへり。

生神女讚詞 人人ひとびとの爲ために舵師かぢとり及および主しゆを生うみし至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、我わが慾よくの波なみたつ烈はげしき煩亂みだれを鎭しづめて、我わが心こゝろに穩おだやかなるを得えしめ給たまへ。

又 イルモス 「イオナは鯨の腹に包まれたれども」。

エウレイの民たみはハリストスを殺ころし及および預よ言者げんしやを殺ころす者ものと爲なれり。蓋けだし昔むかし眞實しんじつの奧密あうみつなる光くわう線せんたる預よ言者げんしやを殺ころすを懼おそれざりし如ごとく、斯かく今いまも彼かれ等らが其時そのときに傳つたへし主しゆを妬ねたみに因よりて殺ころせり。然しかれども彼かれの殺ころさるるは我われ等らの爲ために生命いのちと爲なれり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは執とらはれたれども、墓はかの中なかに留とゞめられざりき。蓋けだし爾なんぢは、言ことばよ、甘あまんじて死しを嘗なめたれども、不死ふしなる神かみとして復ふく活くわつして、地ぢ獄ごくにある俘囚めしうどを己おのれと共ともに起おこし、女等をんなたちに先さきの哀かなしみに易かへて喜よろこびを賜たまへり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものは言いへり、鳴呼あゝ吾わが子こよ、爾なんぢは神性しんせいを以もつてダワィドに人ひとの子こより美うるはしき者ものと現あらはれたれども、苦くるしみの時ときに爾なんぢの身みの狀さまは人人ひとびとより卑いやしくして貧まづしき者ものと爲なれり。嗚呼あゝ吾わが神かみよ、爾なんぢの國くにの權柄けんぺいを以もつて諸敵しよてきの力ちからを破やぶりて、墓はかより起おき給たまへ。

又 イルモス 「誘惑の猛風にて」。

母はゝ童貞女どうていぢよよ、預よ言者げんしやの中うちに大おほいなるモイセイは爾なんぢを匱ひつと案あん、燈臺とうだい及および「マンナ」の壺つぼと預よ象しやうして、形かたちを以もつて至し上じやう者しやが爾なんぢより身みを取とることを徵しるせり。

嗚呼あゝ女宰ぢよさいよ、爾なんぢの果みに觸ふれて死しは死ころされ、アダムの定罪ていざいの朽きう壞くわいは空むなしくなれり、蓋けだし爾なんぢは朽きう壞くわいより爾なんぢを歌うたふ者ものを救すくふ生命いのちを生うみ給たまへり。

讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、智慧ちゑと明悟さとりとに超こえて爾なんぢより生うまれし神かみ及および救世主きうせいしゆの恩おん寵ちようの我われに現あらはれしに、律法りつぱふは弱よわり、影かげは過すぎ去されり。

小讚詞コンダク、第六調。

生命いのちの原因げんいんたるハリストス神かみは生命いのちを施ほどこす手てを以もつて死しせし者ものを暗くらき谷たにより出いだして、復ふく活くわつを人類じんるゐに賜たまへり、衆しゆう人じんの救世主きうせいしゆ、復ふく活くわつと生命いのち、及および衆しゆう人じんの神かみなればなり。

同讚詞イコス 生命いのちを賜たまふ主しゆよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢの十じふ字架じかと葬はうむりとを歌うたひて伏拜ふくはいす。蓋けだし爾なんぢは、不死ふしなる者ものよ、全能ぜんのうの神かみとして、地ぢ獄ごくを縛しばり、死し者しやを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめ、死しの門もんを破やぶり、地ぢ獄ごくの權けんを滅ほろぼし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら地ちに生うまるる者ものは愛あいを以もつて爾なんぢ復ふく活くわつして、滅亾ほろびを爲なす敵てきの權けんを空むなしくし、爾なんぢを信しんずる衆しゆうを復ふく活くわつせしめ、世せ界かいを蛇へびの毒どく及および敵てきの誘惑いざなひより救すくひ給たまひし主しゆを讚榮さんえいす、爾なんぢは衆しゆう人じんの神かみなればなり。

第七歌頌

イルモス 天てん使しは敬虔けいけんなる少者せうしやの爲ために爐ゐろりに露つゆを出いださしめ、ハルデヤ人じんを燒やく神かみの命めいは苦くるしむる者ものに呼よばしめたり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

主宰しゆさいよ、日ひは爾なんぢの苦くるしみを嘆なげきて晦冥くらやみを衣き、全ぜん地ちは晝ひるに光ひかりを失うしなひて呼よべり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

ハリストスよ、地ぢ獄ごくは爾なんぢの降臨かうりんに因よりて光ひかりを衣き、原げん祖そは樂たのしみに滿みたされて祝いはひ、喜よろこびて呼よべり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 母はゝ童貞女どうていぢよよ、爾なんぢに依よりて明あきらかなる光ひかりは全ぜん世せ界かいに輝かゞやけり、蓋けだし爾なんぢは萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ神かみを生うみ給たまへり。純じゆん潔けつなる者ものよ、彼かれに大おほいなる憐あはれみを我われ等ら信者しんじやに降くださんことを求もとめ給たまへ。

又 イルモス 「言ひ盡されぬ哉奇蹟や」。

鳴呼あゝ驚おどろくべき現象あらはれや、イズライリをファラオンの奴ど隷れいより救すくひし主しゆは彼かれより甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせられて、諸罪しよざいの桎梏かせを解とき給たまふ。我われ等ら信しんを以もつて彼かれに歌うたふ、贖しよく罪主ざいしゆ神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

至いたりて不ふ法はふなる者ものの不ふ虔けんの諸しよ子しが爾なんぢ救世主きうせいしゆを髑髏されかうべの處ところに十じふ字架じかに釘ていせしに、爾なんぢは銅あかゞねの門もんと柱はしらとを壞やぶり給たまへり、我われ等ら、贖しよく罪主ざいしゆ神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものの救すくひの爲ためなり。

生神女讚詞 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの產さんはエワを古いにしへの詛のろひより自じ由いうにし、アダムを釋とき給たまへり。故ゆゑに我われ等らは諸天しよてん使しと偕ともに爾なんぢを尊たふとみ、爾なんぢの子こに歌うたひて呼よぶ、贖しよく罪主ざいしゆ神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

又 イルモス 「天使は敬虔なる少者の爲に」。

爾なんぢの產さんを前兆ぜんてうする三人みたりの少者せうしやを爐ゐろりは焚やかざりき。蓋けだし神聖しんせいなる火ひは爾なんぢを焚やかずして、爾なんぢの内うちに入いりて、衆しゆうに呼よばんことを敎をしへたり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

純じゆん潔けつなる母はゝよ、爾なんぢが預よ言げんせし如ごとく、四し極きよくは爾なんぢを讚さん頌しようし、且かつ爾なんぢの光ひかりの光くわう線せんに照てらされて、恩おん寵ちように依よりて歌うたひて呼よぶ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

神かみの母はゝよ、至いたりて凶きよう惡あくなる蛇へびは滅ほろびを致いたす齒はを我われの内うちに刺させり。然しかれども爾なんぢの子こは之これを折くじきて、我われに力ちからを與あたへて呼よばしむ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

神福しんぷくなる者ものよ、爾なんぢは獨ひとり人じん性せいの潔淨きよめなり、蓋けだしヘルワィムの肩かたに坐ざする神かみを爾なんぢの手てに抱いだきて呼よぶ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

第八歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢは敬虔けいけんなる者ものの爲ために焰ほのほより露つゆを注そゝぎ、義ぎ人じんの祭まつりの爲ために水みづより火ひを出いだせり、爾なんぢは一ひとつの望のぞみにて萬ばん事じを行おこなひ給たまへばなり、我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

神かみの言ことばよ、昔むかし諸しよ預よ言者げんしやを殺ころししイウデヤ民みんは、今いま猜そねみによりて、爾なんぢを十じふ字架じかに擧あげて、神かみを殺ころす者ものとなれり。我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

ハリストスよ、爾なんぢは天てんを遺すてずして地ぢ獄ごくに降くだりて、膿汁のうじふに溺おぼれ臥ふす人ひとを己おのれと偕ともに興おこし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

生神女讚詞 童女どうぢよよ、爾なんぢは光ひかりに因よりて光ひかりを施ほどこす言ことばを孕はらみ、量はかり難がたく之これを生うみて、讚榮さんえいを得えたり、聖神せいしん爾なんぢの内うちに入いりたればなり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ歌うたふ。

又 イルモス 「天よ、畏れて戰け」。

聽きく者ものは驚おどろかざるなし、如何いかんぞ至し上やう者しやは甘あまんじて地ちに降くだり、十じふ字架じかと葬はうむりとを以もつて地ぢ獄ごくの力ちからを破やぶりて、衆しゆうを起おこして呼よばしむる、童子わらべよ、崇あがめ讚ほめよ、司し祭さいよ、讚ほめ歌うたへ、民たみよ、萬世ばんせいに尊たふとみ崇あがめよ。

地ぢ獄ごくの苛虐くるしめは熄やみ、其國そのくには亾ほろびたり、蓋けだし萬有ばんいうの神かみは地ちに十じふ字架じかの上うへに擧あげられて、其その權けん力りよくを空むなしくし給たまへり。童子わらべよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ、司し祭さいよ、讚ほめ歌うたへ、民たみよ、萬世ばんせいに尊たふとみ崇あがめよ。

嗚呼あゝハリストスよ、爾なんぢの仁愛じんあいは言いひ難がたく、恩惠おんけいは悟さとり難がたし、蓋けだし爾なんぢは我わが地ぢ獄ごくの囹圄ひとやに滅ほろぶるを見みて、苦くるしみを受うけて我われを救すくひ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ萬有ばんいうの主宰しゆさいを讚ほめ揚あげて、萬世ばんせいに尊たふとみ崇あがむ。

又 イルモス 「ハリストスよ、爾は敬虔なる者の爲に」。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの子こは爾なんぢを金繍きんしうの衣ころもを以もつて妝よそほはれたる女王によわうとして、聖神せいしんの光ひかりに輝かゞやかして、己おのれの右みぎに立たて給たまへり。我われ等ら彼かれを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

一ひとつの望のぞみにて世せ界かいを造つくりし主しゆは上うへより人じん性せいを改あらため造つくらんと望のぞみて、之これを爾なんぢの至し淨じやうなる胎たいより取とり給たまへり。我われ等ら彼かれを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

童貞どうていの光ひかりにて輝かゞやける至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは言ことばの我われ人ひとに結合けつがふするに因よりて神かみの居處すまひと爲なり給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ歌うたふ。

潔いさぎよき者ものよ、金こがねの燈臺とうだいは爾なんぢを前兆ぜんてうせり、蓋けだし爾なんぢは己おのれの睿えい智ちにて萬有ばんいうを照てらす近ちかづかれぬ光ひかりを言いひ難がたく受うけ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを世世よよに讚ほめ歌うたふ。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、附唱と共に、「ヘルワィムより尊く」。

第九歌頌

イルモス 天てん使しの品ひん位ゐすら見みるを得えざる神かみは、人ひと見みる能あたはず、唯たゞ爾なんぢ至し淨じやうの者ものに藉よりて人體じんたいを取とりし言ことばは人人ひとびとに現あらはれ給たまへり。我われ等ら彼かれを崇あがめて、天軍てんぐんと偕ともに爾なんぢを讚ほめ揚あぐ。

神かみの言ことば、吾わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは苦くるしみに與あづからざる者ものにして、身みにて苦くるしみに與あづかりて、人ひとを苦くるしみより釋とき給たまへり、爾なんぢは獨ひとり無む慾よくにして全能ぜんのうなればなり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは死しの傷いたみを受うけて、爾なんぢの體からだを朽きう壞くわいに與あづからざる者ものとして護まもれり、爾なんぢが生命いのちを施ほどこす神聖しんせいなる靈たましひは地ぢ獄ごくに遺のこされずして、爾なんぢは寢ねむりより興おくるが如ごとく復ふく活くわつし、我われ等らを共ともに興おこし給たまへり。

聖三者讚詞 我われ等ら衆しゆう人じん淨きよき口くちを以もつて神父かみちゝ、同どう無む原げんの子こを讚ほめ揚あげ、至し聖神せいしんの言いひ難がたき至し榮えいなる能のう力りよくを尊たふとみ崇あがむ、爾なんぢ全能ぜんのうの三者さんしやは惟一ゆゐいちにして分わかれざる者ものなればなり。

又 イルモス 「母よ、我爾が種なくして孕みし子」。

生命いのちを賜たまふハリストスよ、爾なんぢは死し者しやとして墓はかに下くだりたれども、地ぢ獄ごくの力ちからを破やぶり、其その呑のみたる死し者しやを己おのれと偕ともに起おこして、神かみとして凡およそ信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを讚揚さんやうする者ものに復ふく活くわつを賜たまへり。

造物ざうぶつは歡よろこぶべし、百合ゆりの花はなの如ごとく榮さかゆべし、蓋けだしハリストスは神かみとして死しより起おき給たまへり。我われ等ら今いま呼よばん、死しよ、爾なんぢの刺はりは安いづこにか在ある、地ぢ獄ごくよ、爾なんぢの勝かちは安いづこにか在ある、我われ等らの角つのを高たかくせし主しゆは爾なんぢを地ちに倒たふせり、慈じ憐れんの主しゆなればなり。

十字架生神女讚詞 至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢは萬有ばんいうを保たもつ主しゆを保たもち、我われ等らを戰たゝかふ敵てきの手てより救すくふ主しゆを嬰兒をさなごとして手てに抱いだき、我われ等らを惡あくの阱おとしあなより引ひき上あげし主しゆを十じふ字架じかの木きに擧あげらるる者ものとして見みる。

又 イルモス 「天使の品位すら」。

イアコフより出いでたる星ほしは神性しんせいの光くわう線せんを輝かゞやかして、幽暗くらやみの中うちに居をる者ものを照てらせり。純じゆん潔けつなる者ものよ、此これ爾なんぢより人體じんたいを取とりしハリストス神かみ言ことばなり。我われ等らは彼かれに照てらされて、天軍てんぐんと偕ともに爾なんぢを讚ほめ揚あぐ。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ爾なんぢの能力ちからと恩おん寵ちようとに堅かためられて、中ちゆう心しんより熱切ねつせつに爾なんぢに歌うたを捧さゝげたり。神福しんぷくなる者ものよ、之これを納いれて、不ふ朽きうの寶藏はうざうより爾なんぢの光くわう明めいなる恩おん寵ちようを報むくい給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは神聖しんせいなる機はたと現あらはれ、言ことばは此これを以もつて肉體にくたいの衣ころもを織おり、我わが像すがたを造つくりて、之これを衣きて、凡およそ淸きよき心こゝろを以もつて爾なんぢを讚ほめ揚あげる者ものを救すくひ給たまへり。

純じゆん潔けつなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの言いひ難がたく悟さとり難がたき產さんに由よりて今いま死し者しやに復ふく活くわつは賜たまはりたり、蓋けだし生命せいめいは爾なんぢに藉よりて身みを衣きて、衆しゆうに輝かゞやきて、顯あらはに死しを滅ほろぼせり。

共頌カタワシヤの後に小聯禱。次ぎて主我等の神は聖なり、三次。早課の差遣詞エクサポスティラリイ。

「凡そ呼吸ある者」に主日の讚頌スティヒラ、第六調。

句 彼かれ等らの爲ために記しるされし審判しんぱんを行おこなはん爲ためなり、斯この榮さかえは其その悉ことごとくの聖人せいじんに在あり。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかは爾なんぢの人人ひとびとの爲ために生命せいめいと復ふく活くわつなり、我われ等ら之これを賴たのみて、爾なんぢ復ふく活くわつせし吾わが神かみを歌うたふ。我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 神かみを其その聖所せいしよに讚ほめ揚あげよ、彼かれを其その有いう力りよくの穹蒼おほぞらに讚ほめ揚あげよ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢの葬はうむりは人類じんるゐの爲ために樂園らくゑんを開ひらけり、我われ等ら朽きう壞くわいより逃のがれて、爾なんぢ復ふく活くわつせし吾わが神かみを歌うたふ。我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 其その權能けんのうに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ、其その至いと嚴おごそかなるに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

死しより復ふく活くわつせしハリストスを父ちゝ及および聖神せいしんと偕ともに歌うたひて、彼かれに呼よばん、爾なんぢは我われ等らの生命せいめいと復ふく活くわつなり。我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 角らつぱの聲こゑを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、琴きんと瑟しつとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

ハリストスよ、爾なんぢは錄しるされし如ごとく、三日みつか目めに墓はかより復ふく活くわつして、我われ等らの原げん祖そを己おのれと偕ともに興おこし給たまへり。故ゆゑに人類じんるゐは爾なんぢを讚榮さんえいして、爾なんぢの復ふく活くわつを崇あがめ歌うたふ。

又讚頌スティヒラ、アナトリイの作。

句 鼓つゞみと舞まひとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、絃いとと簫せうとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

主しゆよ、爾なんぢの復ふく活くわつの祕ひ密みつは大おほいにして畏おそるべし、蓋けだし新郞はなむこが宮みやより出いづる如ごとく、爾なんぢは墓はかより出いでて、死しを以もつて死しを滅ほろぼし給たまへり、アダムを釋とかん爲ためなり。故ゆゑに人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ等らに施ほどこす爾なんぢの慈じ憐れんを、天てんに於おいて諸天しよてん使しは慶けい賀がし、地ちに於おいて人人ひとびとは讚榮さんえいす。

句 和くわ聲せいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、大聲たいせいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。凡およそ呼吸いきある者ものは主しゆを讚ほめ揚あげよ。

鳴呼あゝ至いたりて不ふ法はふなるイウデヤ人じんよ、封印ふういんと兵卒へいそつに給あたへし銀ぎんとは安いづこにか在ある。寶たからは竊ぬすまれしにあらず、彼かれは權能けんのう者しやとして復ふく活くわつせり。爾なんぢ等らはハリストス、苦くるしみを受うけ、葬はうむられて、死しより復ふく活くわつせし光くわう榮えいの主しゆを諱いみて、自みづから耻はぢを得えたり。我われ等らは彼かれに伏拜ふくはいす。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる毋なかれ。

イウデヤ人じんよ、墓はかは閉とざされ、爾なんぢ等らは番兵ばんぺいを置おき、封印ふういんを貼つけしに、如何いかんぞ竊ぬすまれたる。戸との閉とざされたるに、王わうは出いでたり。爾なんぢ等らは彼かれを或あるひは死し者しやとして出いだせ、或あるひは神かみとして伏拜ふくはいして、我われ等らと偕ともに歌うたへ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの十じふ字架じか及および爾なんぢの復ふく活くわつに歸きす。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き跡せきを傳つたへん。

主しゆよ、攜香女けいかうぢよは泣なきて、爾なんぢの生命いのちを藴こむる墓はかに至いたり、香料かうれうを攜たづさへて、爾なんぢの至し淨じやうなる體たいに釁ぬらんと欲ほつせしに、光ひかる天てん使し、石いしの上うへに坐ざする者ものに遇あへり。彼かれは之これに述のべて曰いふ、何なんぞ脅わきより世せ界かいに生命いのちを流ながしし者ものの爲ために泣なける、何なんぞ不死ふしの者ものを死し者しやの如ごとく墓はかに尋たづぬる。速すみやかに往ゆきて其その門もん徒とに彼かれの光くわう榮えいなる復ふく活くわつの全ぜん世せ界かいの歡喜よろこびを告つげよ。救世主きうせいしゆよ、此これを以もつて我われ等らをも照てらして、潔淨きよめと大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

光榮、早課の福音の讚頌スティヒラ。今も、「生神童貞女よ、爾は至りて讚美たる者なり」。大詠頌。

次ぎて復活の讚詞トロパリ。

主しゆよ、爾なんぢは墓はかより復ふく活くわつして、地ぢ獄ごくの鎻くさりを壞やぶり、死しの定罪ていざいを滅ほろぼし、衆しゆう人じんを敵てきの網あみより救すくへり。獨ひとり大だい慈じ憐れんなる者ものよ、爾なんぢは使徒しとに現あらはれて、彼かれ等らを傳敎でんけうに遣つかはし、彼かれ等らに因よりて爾なんぢの平安へいあんを世せ界かいに賜たまへり。

次ぎて聯禱、及び發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 主日の聖体礼儀に

聖體禮儀リトゥルギヤの眞福詞、第六調。

神かみ我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを憶おもひて、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 心こゝろの淸きよき者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみを見みんとすればなり。

木きに緣よりて誘いざなはれしアダムを爾なんぢは亦また十じふ字架じかの木きに緣よりて救すくひ、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへと呼よぶ盜賊たうぞくをも救すくひ給たまへり。

句 和わ平へいを行おこなふ者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみの子こと名なづけられんとすればなり。

地ぢ獄ごくの門もんと柱はしらとを壞こぼちし生命いのちを賜たまふ救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは凡およそ光くわう榮えいは爾なんぢの復ふく活くわつに歸きすと呼よぶ者ものを復ふく活くわつせしめ給たまへり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

己おのれの葬はうむりにて死しを虜とりこにし、己おのれの復ふく活くわつにて萬有ばんいうを喜よろこびに滿みたしし主しゆよ、我われを憶おもひ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

攜香女けいかうぢよは墓はかに來きたりて、天てん使しの呼よぶを聽きけり、ハリストスは復ふく活くわつして、萬有ばんいうを照てらし給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

我われ等ら衆しゆう同心どうしんにハリストス、十じふ字架じかの木きに釘ていせられて、世せ界かいを迷まよひより救すくひし主しゆを歌うたはん。

光榮、聖三者讚詞 我われ等ら父ちゝと子こと聖神せいしんを讚揚さんやうして曰いふ、聖三者せいさんしやよ、我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

今も、生神女讚詞 末すゑの日ひに言いひ難がたく孕はらみて己おのれの造成主ざうせいしゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢを讚ほめ揚あぐる者ものを救すくひ給たまへ。

提綱ポロキメン、第六調。

主しゆよ、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの業わざに福ふくを降くだし給たまへ。

句 主しゆよ、我われ爾なんぢに呼よぶ、我われの防固かためよ、我わが爲ために默もだす毋なかれ。

「アリルイヤ」、至し上じやう者しやの覆おほひの下したに居をる者ものは、全能者ぜんのうしやの蔭かげの下したに安やすんず。

句 主しゆに謂いふ、爾なんぢは我われの避所かくれが、我われの防禦ふせぎ、我わが賴たのむ所ところの我われの神かみなりと。

横線 - 『八調経』第六調

 主日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に痛悔の讚頌スティヒラ。イオシフの作。第六調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢを生うみし者もの及および天てん使しの品ひん位ゐの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢの仁愛じんあいを以もつて、我われに痛つう悔くわいの淚なみだと傷しやう感かんの思おもひとを與あたへ給たまへ、我わが時とき每ごとに不義ふぎの行おこなひを以もつて甚はなはだしく汚けがしたる吾わが靈たましひの不ふ潔けつを滌あらはん爲ためなり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

嗚呼あゝ靈たましひよ、來きたりて、度ど生せいの時ときに行おこなひし多おほくの罪つみを痛つう悔くわいし、嘆息たんそくと淚なみだとを以もつて天てん上じやうの軍ぐんに祈いのれ、爾なんぢ慾よくに耽ふける者ものに痛つう悔くわいの時ときは與あたへられて、爾なんぢが果みを結むすばざる無花果樹いちじくの如ごとく「ゲエンナ」の火ひに投とうぜられざらん爲ためなり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

我わがハリストスよ、我われ地ちに在ありて爾なんぢの戒いましめの一ひとつをも行おこなはざりき、如何いかんぞ爾なんぢ寶はう座ざに坐ざする者ものの前まへに現あらはれて、凡およそ我わが知しると知しらずして行おこなひし事ことの爲ために對こたへを爲なして、審判しんぱんを受うけん。故ゆゑに爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの奉ほう事じ者しやの祈き禱たうに因よりて、我われ放蕩はうたうの者ものを救すくひ給たまへ。

次に月課經の聖人の讚頌スティヒラ。若し月課經なくば、又聖なる無形天軍の讚頌スティヒラ。第六調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

ハリストスよ、天てん使しの軍ぐんは爾なんぢの寶はう座ざの前まへに立たちて、人類じんるゐの爲ために祈いのる。彼かれ等らの祈き禱たうに藉よりて衆しゆうに平安へいあんを與あたへ、異い邦民はうみんの强きやう暴ばうを制せいし給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

萬有ばんいうの王わうの寶はう座ざを環めぐりて恒つねに歡よろこぶ衆しゆう天てん使しの品ひん位ゐよ、我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢ等らを呼よぶ者ものを護まもりて、諸もろもろの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

萬有ばんいうの神父かみちゝ、惟一ゆゐいちの言ことば、及および聖神せいしんは己おのれの三日さんにち光くわうの榮えいを歌うたふ者ものとして無む形けいなる靈れい智ちの天軍てんぐんを造つくり給たまへり。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは天てん使し首しゆの聲こゑに因よりて父ちゝ及および聖神せいしんと同どう無む原げんなる言ことばを胎内たいないに孕はらみて、ヘルワィム セラフィム及および寶はう座ざより上うへなる者ものと現あらはれたり。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第六調。

ハリストスよ、願ねがはくは我われ等らは爾なんぢの畏おそるべき降臨かうりんの時ときに、我われ爾なんぢ等らを識しらずと言いふを聞きかざらん。救世主きうせいしゆよ、我われ等らは怠惰おこたりに因よりて爾なんぢの命めいを守まもらざりきと雖いへども、恃賴たのみを爾なんぢに負おはせたり。祈いのる、我われ等らの靈たましひを宥なだめ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

ハリストス神かみよ、我われ痛つう悔くわいをも淚なみだをも得えざりき、故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、終をはりの至いたらざる先さきに我われを轉てんぜしめて、我われに傷しやう感かんを與あたへ給たまへ、我わが苦くるしみより脫のがれん爲ためなり。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり。我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

主しゆよ、爾なんぢの致ち命者めいしやは爾なんぢを諱いまざりき、爾なんぢの戒いましめより離はなれざりき。彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 信者しんじやよ、我われ等らは天てん使し首しゆの如ごとく天てんの宮みやと實じつに封印ふういんせられたる門もんとを歌か頌しようせん。我われ等らの爲ために衆しゆう人じんの救主きうしゆハリストス、生命いのちを賜たまふ主しゆ及および神かみを生うみし者ものよ、慶よろこべ。至し淨じやうなる女宰ぢよさい、ハリスティアニン等らの慿恃たのみよ、爾なんぢの手てを以もつて神かみに逆さかふ暴ばう虐ぎやく者しやなる我わが諸敵しよてきを斃たふし給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、及び發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 主日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第六調。

第一歌頌

イルモス イズライリは陸くがの如ごとく淵ふちを蹈ふみ渡わたり、追おひ詰つめしファラオンの溺おぼるるを見みて呼よべり、凱歌かちうたを神かみに奉たてまつらん。

父ちゝの煇煌かゞやきなる子こを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、我わが心こゝろの諸慾しよよくの雲くもを拂はらひて、我われに光ひかりを輝かゞやかし給たまへ、我わが爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

信者しんじやよ、來きたりて、我われ等らもガウリイルの如ごとく、靈たましひの敬虔けいけんを以もつて童貞女どうていぢよに呼よばん、歡喜よろこびを生うみし潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは實じつに祝しゆく福ふくせられたり、至し淨じやうなる者ものよ、慶よろこべ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、世世よよの先さきに無む形けいに父ちゝより生うまれたる子こを爾なんぢは末すゑの日ひに於おいて胎内たいないに孕はらみて、二に性せいの者ものとして神かみ及および人ひとを生うみ給たまへり。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは潔いさぎよく獨一どくいつの神かみを生うみて、產さんの前まへの如ごとく、生うみし後のちにも童貞女どうていぢよに止とゞまれり。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは爾なんぢに呼よぶ、慶よろこべ。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢが信者しんじやの角つのを高たかうし、我われ等らを爾なんぢが承認うけとめの石いしに堅かためし仁じん慈じの主しゆ、吾わが神かみよ、爾なんぢと均ひとしく聖せいなるはなし。

萬有ばんいうの造成者ざうせいしや及および主宰しゆさいを生うみし至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの如ごとく無む玷てんなる者ものなし。故ゆゑに我われ等ら衆しゆう信者しんじやは感謝かんしやの心こゝろを抱いだきて爾なんぢに呼よぶ、慶よろこべ。

潔いさぎよき者ものよ、諸慾しよよくの甚はなはだしき激浪あらなみは我われを擾みだし、我わが多おほくの墮だ落らくの憂うれひは我われを失望しつばうの深處ふかみに引ひく。至し淨じやうなる者ものよ、我われに手てを授さづけて、我われを救すくひ給たまへ。

光榮 言ことばに超こえて觸ふれ難がたき日ひを生うみし潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我わが諸罪しよざいの暗昧くらやみを拂はらひて、無む慾よくの光ひかりを以もつて我わが生命いのちを照てらし給たまへ。

今も 少女せうぢよよ、我われに神かみを畏おそるる畏おそれの火ひを起おこして、我わが諸罪しよざいと汚穢けがれとを潔きよめ、我われに諸德しよとくの光ひかる衣ころもを衣きせて、我われを聖人せいじんの會くわいに合あはせ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 尊たふとき敎けう會くわいは淨きよき心こゝろより主しゆの爲ために祝いはひ、神かみに適かなひて呼よび歌うたふ、ハリストスは吾わが力ちからと神かみと主しゆなり。

光ひかりを生うみし至いたりて無む玷てんなる女宰ぢよさいよ、我わが多おほくの罪つみの暗昧くらやみを爾なんぢの光くわう線せんを以もつて散さんじ給たまへ、爾なんぢは信者しんじやの爲ために義ぎの日ひを輝かゞやかしたればなり。

至し淨じやうなる者ものよ、我わが柔にう弱じやくに於おいて我われ今いま爾なんぢを恃賴たのみと爲なす、願ねがはくは爾なんぢの佑助たすけに因よりて救すくひを獲えて、喜よろこびを以もつて爾なんぢを歌うたはん。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、我われ等ら信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢの殿でんに趨はしり附つく者ものに爾なんぢの饒ゆたかなる慈じ憐れんを賜たまひて、我われ等らを諸もろもろの誘惑いざなひ及および憂愁うれひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、言ことばは爾なんぢの内うちに入いりて、世せ界かいを無知むちの諸慾しよよくより援たすけて、爾なんぢを歌うたふ者ものに天てんの國くにを得えしめ給たまふ。

第五歌頌

イルモス 至し仁じんなる神かみの言ことばよ、切せつに祈いのる、爾なんぢに朝あさの祈き禱たうを奉たてまつる者ものの靈たましひを爾なんぢが神かみの光ひかりにて照てらして、爾なんぢ罪つみの暗やみより呼よび出いだす眞まことの神かみを知しらしめ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの胎内たいないより輝かゞやき出いでし者ものの神聖しんせいなる光くわう線せんにて暗昧くらやみに寢いぬる我わが靈たましひを輝かゞやかし、罪つみの暗やみを退しりぞけて、爾なんぢの光ひかりを以もつて我われを照てらし給たまへ。

仁じん慈じなる者ものよ、盜賊たうぞくに遇あひし吾わが靈たましひに爾なんぢの慈じ憐れんの油あぶらと愛憐あいれんの酒さけとを沃そゝぎて、之これを醫いやし、豐ゆたかに我われに智慧ちゑを與あたへ給たまへ。

光榮 讚さん美びたる神かみの母はゝよ、我われ等ら爾なんぢに趨はしり附つく者ものの靈體れいたいの諸しよ病びやうを醫いやし給たまへ、爾なんぢの祈き禱たうの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく者ものの爲ために爾なんぢは能力ちからなればなり。

今も 至し聖せい至し潔けつなる者ものよ、神聖しんせいなる神しん゜は爾なんぢの腹はらに入いり、爾なんぢを蔭おほひて、聖三者せいさんしやの居所すまひと爲なせり、蓋けだし爾なんぢは父ちゝの善ぜん旨しに由よりて、言ことばを孕はらみて、之これを生うみ給たまへり。

第六歌頌

イルモス 誘惑いざなひの猛風あらしにて浪なみの立たち揚あがる世よの海うみを觀みて、爾なんぢの穩おだやかなる港みなとに著つきて呼よぶ、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我わが不ふ當たうなる靈たましひの暗昧くらやみを散さんじて、爾なんぢの胎内たいないより輝かゞやき出いでて、悉ことごとくの人じん性せいを輝かゞやかしし光ひかりを以もつて我われを照てらし給たまへ。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われを見みゆると見みえざるとの敵てきの惡謀あくぼうより救すくひて、我われに爾なんぢの保護ほごの有能いうのうなる帲幪おほひを與あたへ給たまへ、我われ今いま爾なんぢに趨はしり附つきたればなり。

光榮 萬有ばんいうを造つくりし主しゆは末すゑの日ひに於おいて爾なんぢの聖せいなる腹はらより身みを取とりて、アダムに因よりて甚はなはだしく墮だ落らくせし人ひとの性せいを建たてて、世せ界かいを改あらため給たまへり。

今も 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、聖せいなる天てん使しの美うるはしき會くわいは爾なんぢを歌うたふ。我われも祈いのる、我われより惡あく鬼きの醜みにくき想像さうざうを退しりぞけて、我わが心こゝろを安靜あんせいに護まもり給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第六調。

女宰ぢよさいよ、諸敵しよてきは攻擊こうげきして爾なんぢの嗣し業げふと戰たゝかふ。潔いさぎよき者ものよ、其その謀はかりごとを破やぶり、其その驕おごりを斃たふし給たまへ、爾なんぢは忠ちゆう信しんに爾なんぢに祈いのる者ものの守しゆ護ご者しやなればなり。

第七歌頌

イルモス 天てん使しは敬虔けいけんなる少者せうしやの爲ために爐ゐろりに露つゆを出いださしめ、ハルデヤ人じんを燒やく神かみの命めいは苦くるしむる者ものに呼よばしめたり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

至し淨じやうなる者ものよ、無智むちの暗昧くらやみに在ある我われを近ちかづき難がたき光ひかりを以もつて照てらして、我われに光ひかりの中うちに敬虔けいけんの心こゝろを抱いだきて忠ちゆう信しんに爾なんぢの子こに呼よばしめ給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

神かみの母はゝよ、暗くらき雲くもを我わが靈たましひより散さんじて、萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆの光ひかりを以もつて照てらし給たまへ、爾なんぢは父ちゝより無む形けいに輝かゞやき出いでたる永遠えいゑんの光ひかりの器うつはなればなり。

光榮 純じゆん潔けつにして慈じ愛あいなる神かみの母はゝよ、我われ等らの祈き禱たうに耳みゝを傾かたぶけて、慈じ憐れんを以もつて神かみに祈いのりて、彼かれを我われ等ら常つねに爾なんぢを恃たのむ者ものの爲ために寬くわん容ようなる者ものと爲なし給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、我われ罪惡ざいあくに汚けがされたる者ものに潔淨きよめの淚なみだを與あたへて、其その流ながれを以もつて汚けがれの泉いづみなる耻はづべき諸慾しよよくを滌あらひ給たまへ。

第八歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢは敬虔けいけんなる者ものの爲ために焰ほのほより露つゆを注そゝぎ、義ぎ人じんの祭まつりの爲ために水みづより火ひを出いだせり、爾なんぢは一ひとつの望のぞみにて萬ばん事じを行おこなひ給たまへばなり、我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

萬有ばんいうの主宰しゆさいを身みにて生うみし少女せうぢよよ、我われを諸慾しよよくの强きやう迫はくより脫のがれしめ、愛あいを以もつて萬ばん衆しゆうの造成主ざうせいしゆに屬ぞくせしめて、萬世ばんせいに彼かれを歌うたはしめ給たまへ。

少女せうぢよよ、我われ病やまひの牀とこに臥ふす者ものを爾なんぢの降臨かうりんを以もつて起おこして、靈たましひと體からだとの壯健さうけんを我われに與あたへて、ハリストスを世世よよに歌うたはしめ給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、爾なんぢの祈き禱たうの露つゆを以もつて我わが諸慾しよよくの燄ほのほを滅けして、嘗かつて爾なんぢの子こが世世よよに彼かれを讚ほめ揚あぐる少者せうしやを救すくひし如ごとく、我われを救すくひ給たまへ。

今も 仁じん慈じなる者ものよ、我われ恃賴たのみを爾なんぢに負おはしめて、敵てきの强きやう暴ばうを懼おそれず、爾なんぢは常つねに爾なんぢを讚ほめ揚あぐる者ものを護まもりて、諸難しよなんより救すくひ給たまへばなり。

第九歌頌

イルモス 天てん使しの品ひん位ゐすら見みるを得えざる神かみは、人ひと見みる能あたはず、唯たゞ爾なんぢ至し淨じやうの者ものに藉よりて人體じんたいを取とりし言ことばは人人ひとびとに現あらはれ給たまへり。我われ等ら彼かれを崇あがめて、天軍てんぐんと偕ともに爾なんぢを讚ほめ揚あぐ。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、信しんを以もつて爾なんぢに趨はしり附つく者ものを諸もろもろの惡あくより脫のがれしめ給たまへ。少女せうぢよよ、爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきたる我われに壯健さうけんと赦罪しやざいとを與あたへ給たまへ、我わが感謝かんしやの心こゝろを抱いだきて聲こゑを揚あげて常つねに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

祝しゆく福ふくの泉いづみを生うみし潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは悲哀かなしみの詛のろひを破やぶりて、爾なんぢの產さんを以もつて世せ界かいに歡喜よろこびを流ながし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら衆しゆう信者しんじやは爾なんぢ讚さん美びたる者ものを歌うたひて、感謝かんしやの心こゝろを抱いだきて常つねに讚ほめ揚あぐ。

光榮 讚さん美びたる神かみの母はゝよ、爾なんぢの腹はらは萬世ばんせいの先さきに父ちゝより輝かゞやき出いでたる光ひかりの器うつはと爲なれり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢ生しやう神女しんぢよを讚榮さんえいして、此この光ひかりを爾なんぢの子こ及および神かみとして崇あがめ讚ほむ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、父ちゝより輝かゞやきし年としに由よらざる子こを爾なんぢ獨ひとり潔いさぎよき者ものは年としの内うちに聖神せいしんの庇蔭おほひに由よりて生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら衆しゆう信者しんじやは爾なんぢ婚姻こんいんに與あづからざる者ものを舌したと心こゝろとを以もつて生しやう神女しんぢよとして崇あがめ讚ほむ。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、幷に發放詞。

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月曜日

 月曜日の早課

第一の誦文の後に痛悔の坐誦讚詞セダレン、第六調。

我われ畏おそるべき日ひを思おもひて、我わが惡あしき行おこなひの爲ために泣なく。如何いかんぞ我われ不死ふしなる王わうに對こたへを爲なさん、如何いかんぞ我われ放蕩はうたうなる者ものは敢あへて審判者しんぱんしやに目めを注そゝぐを得えん。慈じ憐れんなる父ちゝ、獨生どくせいの子こ、及および聖神せいしんよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

仁じん慈じなる主しゆよ、悲哀かなしみの谷たにに、爾なんぢが定さだめんとする處ところに、爾なんぢが義ぎなる審判しんぱんを行おこなはん爲ために坐ざする時とき、我わが隱ひそかなる事ことを責せむる毋なかれ、我われを天てん使等しらの前まへに辱はづかしむる毋なかれ。求もとむ、神かみよ、我われを宥なだめ、我われを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞

我われ等ら默もださず、心こゝろと口くちにて聖せいなる天てん使しよりも聖せいにして、至いたりて光くわう榮えいなる神かみの母はゝを歌うたひ、之これを承うけ認とめて生しやう神女しんぢよと爲なす、其その實じつに人體じんたいを取とりし神かみを生うみて、恒つねに我われ等らの靈たましひの爲ために禱いのり給たまへばなり。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第六調。

主しゆよ、我われ等らを憐あはれめ、我われ等らを憐あはれめよ、我われ等ら罪人ざいにん何なにを言いふべきを知しらず、唯たゞ此この祈き禱たうを爾なんぢ主宰しゆさいに獻さゝげて曰いふ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

主しゆよ、我われ等らを憐あはれめよ、我われ等ら爾なんぢを恃たのめばなり。我われ等らを痛いたく怒いかる勿なかれ、我われ等らの不ふ法はふを憶おもふ勿なかれ、今いまも仁じん慈じなるに因よりて憐あはれみを垂たれ、我われ等らを諸もろもろの敵てきより救すくひ給たまへ。爾なんぢは我われ等らの神かみにして、我われ等らは爾なんぢの民たみなり、皆みな爾なんぢの手ての作つくれる者ものにて、爾なんぢの名なを籲よぶに因よる。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

主しゆよ、爾なんぢは常つねに諸しよ義ぎ人じんの爲ために光ひかりなり、蓋けだし聖せいなる者ものは爾なんぢに照てらされ、絕たえず光くわう體たいの如ごとく輝かゞやきて、不ふ虔者けんしやの燈ともしびを滅けす。我わが救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我わが燈ともしびを輝かゞやかして、我われを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ、天てんの門もんよ、我われ等ら爾なんぢが光くわう榮えいの堂だうに立たつに、意こゝろは天てんに立たつが如ごとし。祈いのる、我われ等らの爲ために爾なんぢが憐あはれみの門もんを開ひらき給たまへ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第六調。

ハリストスよ、我われ爾なんぢの降臨かうりんの畏おそるべき日ひに畏おそれて、威ゐ嚴げんなる審判しんぱんに戰ふるひ慄をのゝく、我われに多おほくの罪つみあればなり。慈じ憐れんなる救世主きうせいしゆ、獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆよ、祈いのる、終をはりに至いたらざる先さきに、仁じん慈じなる神かみとして、爾なんぢの諸天しよてん使しの祈き禱たうに因よりて、我われを轉てんぜしめて救すくひ給たまへ。

靈たましひよ、一いつ生しやうを怠惰おこたりの中うちに送おくりて、爾なんぢは審判しんぱんの畏おそるべき日ひを思念おもひの中うちに置おかず。是これより起おきて痛つう悔くわいを爲なし、轉てんじてハリストスに呼よべ、洪恩こうおんなる主しゆよ、審判しんぱんの時ときに我われ等らの多おほくの罪つみを憶おもふ毋なかれ。

光榮、今も、生神女讚詞 仁じん慈じなる神かみの母はゝ、世せ界かいの轉達者てんたつしや、爾なんぢを賴たのむ者ものの援助たすけと、帲幪おほひと、避所かくれが、獨ひとり祝しゆく讚さんせらるる者ものよ、爾なんぢが生うみし仁愛じんあいなる神かみに無む形けい軍ぐんと偕ともに熱切ねつせつに祈いのりて、我われ等らの靈たましひの凡およその怒いかりより救すくはれんことを求もとめ給たまへ。

我が主イイススハリストス及び彼の聖致命者に奉る痛悔の規程カノン、其冠詞は、ハリストスよ、我が目の淚を受け給へ。イオシフの作。第六調。

第一歌頌

イルモス 見みるべきファラオンは全軍ぜんぐんと共ともに溺おぼらされ、イズライリは海うみの中なかを過とほりて呼よべり、主しゆ吾わが神かみに謳うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

ハリストスよ、我われ凶きよう惡あくなる盜賊たうぞくの手てに陷おちいりて、靈たましひを害がいする傷きずに由よりて半はん死しと爲なりし者ものを慈じ憐れんの油あぶらを以もつて醫いやして宥なだめ給たまへ、我わが爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

我われ多おほく罪つみを行おこなひしに由よりて盜賊たうぞくの巢窟さうくつと爲なれり。洞窟ほらあなに生うまれしハリストスよ、我われに淚なみだの雨あめを與あたへて潔きよめ給たまへ、我わが爾なんぢの聖神せいしんの殿でんと爲ならん爲ためなり。

致命者讚詞 勇敢ゆうかんにして敵てきに勝かちたる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは實じつに神かみの編あみたる榮えい冠くわんに飾かざられ、光くわう榮えいに滿みてられて、至いと高たかきに諸天しよてん使しと偕ともに神かみの前まへに立たち給たまふ。

致命者讚詞 尊たふとき大だい致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは昔むかし無む形けいなるファラオンを血ちの深處ふかみに溺おぼらして、天てんの約やく地ちに移うつりて、ハリストスを讚榮さんえいす。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、聖せい致ち命者めいしや、神聖しんせいなる預よ言者げんしや、及および衆しゆう天てん使しと偕ともに、萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆに、信しんを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいして讚ほめ揚あぐる者ものを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

又無形なる聖天軍の規程カノン、其冠詞は、靈智者に第六の歌。フェオファンの作。第六調。

第一歌頌

イルモス イズライリは陸くがの如ごとく淵ふちを蹈ふみ渡わたり、追おい詰つめしファラオンの溺おぼるるを見みて呼よべり、凱歌かちうたを神かみに奉たてまつらん。

我われ天軍てんぐんの品ひん位ゐの奇き妙めうなる華くわ美びを讚さん頌しようして、其その輝かゞやける光くわう線せんに照てらされんことを願ねがふ。ハリストスよ、我われ爾なんぢ獨ひとり慈じ憐れんなる主しゆに之これを祈いのる。二次。

全能ぜんのうの神かみよ、爾なんぢは言ことばを以もつて萬物ばんぶつを飾かざり、爾なんぢより出いづる至し聖神せいしんを以もつて天てん使しの品ひん位ゐに爾なんぢ萬有ばんいうの原因げんいんたる主しゆを歌うたはんことを敎をしへ給たまへり。

生神女讚詞 爾なんぢの造成主ざうせいしゆを受うけて、彼かれが親みづから欲ほつせし如ごとく、爾なんぢの種たねなき胎たいより智慧ちゑに超こえて身みを備そなへし所ところの潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは實じつに諸造物しよざうぶつの女宰ぢよさいと現あらはれたり。

第三歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢを信しんずる信しんの堅かたき石いしに我わが意思おもひを堅かため給たまへ、我われ爾なんぢ仁じん慈じの主しゆを避所かくれが及および防固かためとして有たもてばなり。

我われハリストスに痛つう悔くわいせんことを約やくしたれども、聊いさゝかも惡あくより離はなれず、甚はなはだしく昧くらまされたる我われは何なにをか爲なさん。神かみの子こよ、爾なんぢ我われを宥なだめ給たまへ。

我われ不ふ當たうの者ものは神かみの恒忍ごうにんを思おもひて、怠惰おこたりの中うちに生いのちを費つひやせり。我われ懼おそる、死しの斷絕だんぜつは遽にはかに我われに及およばん。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは窘逐きんちくと苦く痛つうと艱難かんなんとを糧かての如ごとくに望のぞみて喜よろこべり、靈れい智ちの目めを以もつて永遠えいゑんの樂たのしみを見みたればなり。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは睿えい智ちにして思おもひを敬虔けいけんの堅けん固ごなる石いしの上うへに堅かたく建たてて、多た種しゆの苦くるしみを畏おそれざりき。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために新あらたなる樂園らくゑんと現あらはれて、中なかに生命せいめいの樹きを有たもてり、凶きよう惡者あくしやに殺ころされたるアダムは其その果みを食くらひて復また生いく。

又

イルモス 爾なんぢが信者しんじやの角つのを高たかうし、我われ等らを爾なんぢが承認うけとめの石いしに堅かためし仁じん慈じの主しゆ、我わが神かみよ、爾なんぢと均ひとしく聖せいなるはなし。

凡およその靈れい智ちなる性せいを望のぞみを以もつて無むより造つくりし神かみは三さん位ゐに於おいて三聖さんせいの聲こゑを以もつて歌うたはれて、忠ちゆう信しんに讚榮さんえいせらる。二次。

仁愛じんあいなる萬有ばんいうの主宰しゆさいよ、爾なんぢは福ふくを流ながし、饒ゆたかに之これを漲みなぎらせて、無む形けいなる天てん使しの品ひん位ゐを福樂ふくらくに與あづかる者ものと爲なし給たまへり。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢに因よりて我われ等らに赦罪しやざいは賜たまはりたり、蓋けだし律法りつぱふの主宰しゆさいは爾なんぢより身みを取とり、我われ等らの爲ために苦くるしみを受うけて、衆しゆうを贖あがなひ給たまへり。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢの光くわう榮えいは天てんを蔽おほひ、主しゆよ、萬有ばんいうは爾なんぢの讚さん美びに盈みてられたり。

主宰しゆさいよ、多おほく爾なんぢの前まへに罪つみを犯おかしし我われ等らを定罪ていざいする毋なかれ、求もとむ、爾なんぢの常つねの慈じ憐れんを以もつて我われ等らを宥なだめ給たまへ。

生命いのちの途みちなる救世主きうせいしゆよ、我われに死しに至いたらしむる罪つみの道みちを常つねに避さくるを得えしめ給たまへ。

致命者讚詞 苦くるしみを受うけし致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは神聖しんせいなる神しん゜の露つゆを以もつて燬やける傷きずの火ひを滅けして、燬やかれずして止とゞまりたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは天てん上じやうに神聖しんせいなる歡喜よろこびの流ながれを樂たのしみて、血ちの流ながれを以もつて饒ゆたかに之これを嗣つぎ給たまへり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、我われ生命いのちを怠惰おこたりの中うちに費つひやして、爾なんぢの轉達てんたつに趨はしり附つく、我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

又

イルモス 尊たふとき敎けう會くわいは淨きよき心こゝろより主しゆの爲ために祝いはひ、神かみに適かなひて呼よび歌うたふ、ハリストスは吾わが力ちからと神かみと主しゆなり。

仁愛じんあいの主しゆよ、不ふ朽きうなる性せいを有たもつ爾なんぢの神聖しんせい尊そん貴きなる靈れい智ち者しや、爾なんぢの寶はう座ざを環めぐる者ものは爾なんぢを不死ふしの泉いづみとして嗣つぎたり。二次。

聖神せいしんより聖せいにせらるる天てん使しの會くわいは善ぜんの本原ほんげんと極きはめて親したしくなりて、惡あくに動うごかされぬ者ものとして止とゞまる。

生神女讚詞 至いたりて無む玷てんなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢに依よりて原げん母ぼの詛のろひは解とかれたり、蓋けだし爾なんぢ至し淨じやうなる者ものは我われ等らの爲ために祝しゆく福ふくの絕たえず流ながるる泉いづみを生うみ給たまへり。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを世せ界かいに輝かゞやかししハリストスよ、我われ夜中よはより爾なんぢに呼よぶ者ものの心こゝろを照てらして、我われを救すくひ給たまへ。

イエッセイの根ねより生しやうじたるハリストスよ、我わが諸慾しよよくの芽めを枯からして、爾なんぢを畏おそるる畏おそれを我われの内うちに植うゑ給たまへ。

我われ等らは稅ぜい吏りの如ごとく歎息たんそくを爲なして、惡あくを離はなるべし、永遠えいゑんの歎息たんそくを免まぬかれん爲ためなり。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの致ち命者めいしやは爾なんぢを慕したふ神聖しんせいなる愛あいに傷きずつけられて、苦くるしみの傷きずを悅よろこべり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは身みを以もつて苦くるしみて四し極きよくより呼よびしに、ハリストスは爾なんぢ等らの聲こゑを聽きき給たまへり。

生神女讚詞 我われ等らは天てんの門もんたる生しやう神女しんぢよを歌うたはん、之これに因よりて凡およそ罪つみある者ものは赦罪しやざいの門もんに入いる。

又

イルモス 至し仁じんなる神かみの言ことばよ、切せつに祈いのる、爾なんぢに朝あさの祈き禱たうを奉たてまつる者ものの靈たましひを爾なんぢが神かみの光ひかりにて照てらして、爾なんぢ罪つみの暗やみより呼よび出いだす眞まことの神かみを知しらしめ給たまへ。

見みざる所ところなき主しゆよ、預よ言者げんしやは爾なんぢ造物主ざうぶつしゆ及および神かみがヘルワィムの寶はう座ざに坐ざするを見みて、形けい象しやうを以もつて爾なんぢが主宰しゆさいたることを敎をしへらる。二次。

主宰しゆさいよ、ダニイルは爾なんぢ人ひとの形かたちに合あはせられし者ものが天てん使しの萬まん萬まん千せん千せんに繞めぐらるるを見みて、奧密あうみつに爾なんぢの權柄けんぺいの光くわう榮えいを敎をしへらる。

生神女讚詞 至いたりて無む玷てんなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの子こは地ちに生うまるる諸しよ子しより美うるはしき者ものと顯あらはれたり、爾なんぢより人ひとの性せいを受うけたれども、萬有ばんいうの上うへなる神かみ言ことばなればなり。

第六歌頌

イルモス ハリストスよ、我われ罪つみの鯨くぢらに呑のまれて、爾なんぢに呼よぶ、預よ言者げんしやの如ごとく我われを淪滅ほろびより脫のがれしめ給たまへ。

瞽者めしひの目めを啓ひらきたるハリストスよ、我わが靈たましひの目めを啓ひらき給たまへ、我わが爾なんぢの光ひかりを見みて、諸慾しよよくの暗やみを逃のがれん爲ためなり。

洪恩こうおんなる主しゆよ、痛つう悔くわいの生せい活くわつせしむる水みづを我わが靈たましひに滿みたして、淚なみだの川かはを我われに與あたへ給たまへ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやの谷たには醫治いやしの花はなを生しやうじて、凡およその敬虔けいけんなる者ものの心こゝろを薰かをらす。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは苦くるしみを以もつて朽くつる體からだより解とかれて、愛あいの心こゝろを以もつて主宰しゆさいに繫つながれたり。

生神女讚詞 聖せいなる神かみの母はゝよ、不ふ潔けつの行おこなひにて汚けがれたる我わが心こゝろを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて潔きよめ給たまへ。

又

イルモス 誘惑いざなひの猛風あらしにて浪なみの立たち揚あがる世よの海うみを觀みて、爾なんぢの穩おだやかなる港みなとに著つきて呼よぶ、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

主宰しゆさいよ、イアコフは淸きよき智慧ちゑにて諸天しよてん使しが梯かけはしに由よりて降くだるを見みて、遠とほくより最いと明あきらかに爾なんぢが人體じんたいを以もつて來きたることを敎をしへられたり。二次。

主宰しゆさいよ、爾なんぢの悅よろこびを爲なししイズライリは天てん使しの神聖しんせいなる軍ぐんの愼つゝしみ祝いはひて、爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいを繞めぐれるを曉さとりて喜よろこべり。

生神女讚詞 少女せうぢよ・女宰ぢよさいは實じつに天てんの山やまたる天てん使しの軍ぐんより上うへなる山やまと顯あらはれたり、爾なんぢの神性しんせいの光ひかりを容いれたればなり。

第七歌頌

イルモス 爾なんぢの敬虔けいけんなる少者せうしやの歌うたを聞ききて、燃もゆる爐ゐろりに露つゆを灑そゝぎし主しゆ、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我われ甚はなはだしき惡あくに因よりて智慧ちゑは昧くらまされて、痛つう悔くわいの光ひかりを見みざりき。ハリストス我わが救世主きうせいしゆよ、我われを救すくひ給たまへ。

洪恩こうおんなる主しゆよ、我われ爾なんぢの慈じ憐れんを賴たのみ、爾なんぢに俯ふ伏ふくして、我わが諸惡しよあくの解とかれんことを求もとむ。我われを退しりぞくる勿なかれ。

致命者讚詞 世よの中なかに苦くるしみを受うけし爾なんぢの聖者せいしやに世よより上うへなる光くわう榮えいを衣きせたる吾わがハリストスよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われを救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは義ぎなる法はふを守まもる者ものとして、不義ふぎなる法はふを忌いみて、熱信ねつしんに法はふに遵したがひて苦くるしみを受うけ給たまへり。

生神女讚詞 少女せうぢよよ、爾なんぢは僕ぼくの形かたちを受うけし主宰しゆさいを生うみ給たまへり。潔いさぎよき者ものよ、彼かれに我われを諸慾しよよくの奴ど隷れいより釋とかんことを祈いのり給たまへ。

又

イルモス 天てん使しは敬虔けいけんなる少者せうしやの爲ために爐ゐろりに露つゆを出いださしめ、ハルデヤ人じんを燒やく神かみの命めいは苦くるしむる者ものに呼よばしめたり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

全能者ぜんのうしやの聖せいなる衆しゆう天てん使しよ、爾なんぢ等らは華麗くわれいに輝かゞやき、ハリストスの言いひ難がたき光くわう榮えいに近ちかづきて、愛あいを以もつて常つねに彼かれに歌うたふ、神かみよ、爾なんぢは世世よよに崇あがめ讚ほめらる。二次。

主宰しゆさいよ、諸天しよてん使しは無む形けいに爾なんぢを繞めぐり、測はかり難がたく爾なんぢの永在えいざいなる光ひかりを受うけて、常つねに歌うたひて言いふ、神かみよ、爾なんぢは世世よよに崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 身みにて神かみを生うみし祝しゆく讚さんせらるる童貞女どうていぢよよ、無む形けいなる天てん使し首しゆは言いへり、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、主しゆは爾なんぢと偕ともにす、蓋けだし彼かれは朽きう壞くわいしたる性せいを新あらたにせんと欲ほつして、爾なんぢの潔いさぎよき腹はらに入いり給たまへり。

第八歌頌

イルモス 爾なんぢの敬虔けいけんなる少者せうしやは爐ゐろりの中うちにヘルワィムに效ならひて、三聖さんせいの歌うたを歌うたへり、崇あがめよ、歌うたへよ、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

我われは習慣ならはしを以もつて富とめる者ものの無慈悲むじひに效ならひて、我わが貧まづしくなりたる智慧ちゑを輕かろんじたり。ハリストスよ、痛つう悔くわいの門もんの前まへに臥ふして、惡あくの腫しゆ物もつを病やめる者ものを憐あはれみて、滅きえざる火ひに遣つかはす毋なかれ。

罪つみの冬ふゆを解ときたる洪恩こうおんの主しゆよ、善ぜん事じを行おこなはざる安息日スボタ、備そなへを爲なさざる冬ふゆに我われを斯この生いのちより取とる勿なかれ。求もとむ、神聖しんせいなる痛つう悔くわいを我われに與あたへ給たまへ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは僞いつはりなき信しんを以もつて僞いつはりを踐ふみ、凡およその苦くるしみの暴風あらしを忍しのびて、ハリストスを崇あがめ、歌うたひ、世世よよに讚ほめ揚あぐ。

致命者讚詞 勝しよう利りを獲えたる聖せい致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは忍耐にんたいの露つゆを以もつて苦くるしみの燒やく火焰ほのほを滅けし、神聖しんせいなる愛あいに燃もえて、無む神しんの邪敎じやけうを燒やきたり。

生神女讚詞 諸天しよてん使しよりも尊たふとき生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは至し聖せいなる神かみを生うみて、更さらに聖せいにせられたり。求もとむ、吾わが靈たましひを聖せいにし給たまへ。

又

イルモス ハリストスよ、爾なんぢは敬虔けいけんなる者ものの爲ために焰ほのほより露つゆを注そゝぎ、義ぎ人じんの祭まつりの爲ために水みづより火ひを出いだせり、爾なんぢは一ひとつの望のぞみにて萬ばん事じを行おこなひ給たまへばなり、我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

ハリストスよ、昔むかし爾なんぢの悅よろこびを獲えたるエリセイを無む形けいの軍ぐんを以もつて環めぐりて衞まもりし如ごとく、斯かく今いまも世世よよに爾なんぢを讚ほめ揚あぐる爾なんぢの敎けう會くわいを環めぐりて衞まもり給たまへ。二次。

威ゐ嚴げんなる寶はう座ざの前まへに立たてる神聖しんせいなる天軍首てんぐんしゆよ、愛あいを以もつてハリストスを歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐる者ものの諸罪しよざいより救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我われ等らは神聖しんせいなるガウリイルと偕ともに爾なんぢ母はゝ及および童貞女どうていぢよに慶よろこべよと呼よぶ、爾なんぢは我われ等らの爲ために我わが萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐる神かみの言ことばを身みにて生うみたればなり。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」及び其他の句。

第九歌頌

イルモス 天てん使しより慶よろこべよを受うけて、己おのれの造成主ざうせいしゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢを讚ほめ揚あぐる者ものを救すくひ給たまへ。

イオシフは貞潔ていけつを守まもりしに因よりて、麥むぎを與あたふる者ものと知しられたり、我われは放蕩はうたうなるに因よりて、德行とくかうの饑き饉きんに困くるしむ。

ハリストスよ、我われはペトルの如ごとく痛つう悔くわいして淚なみだを捧さゝげ、稅ぜい吏りの如ごとく歎息たんそくし、蕩たう子しの如ごとく心こゝろの底そこより呼よぶ、我われ罪つみを犯おかせり、我われを赦ゆるし給たまへ。

致命者讚詞 睿えい智ち者しやよ、爾なんぢ等らはハリストスの助たすけに因よりて敵てきの强きやう暴ばうを倒たふして、上うへより勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやの聖せいなる記き憶おくは凡およそ正せい敎けうの心こゝろを以もつて之これを聖せいにする者ものを聖神せいしんを以もつて聖せいにす。

生神女讚詞 無む慾よくの光ひかりを生うみし潔いさぎよき永貞えいてい童女どうぢよよ、我われ罪つみに昧くらまされたる者ものを照てらし給たまへ、我わが爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

又

イルモス 天てん使しの品ひん位ゐすら見みるを得えざる神かみは、人ひと見みる能あたはず、唯たゞ爾なんぢ至し淨じやうの者ものに藉よりて人體じんたいを取とりし言ことばは人人ひとびとに現あらはれ給たまへり。我われ等ら彼かれを崇あがめて、天軍てんぐんと偕ともに爾なんぢを讚ほめ揚あぐ。

ハリストスよ、爾なんぢは劍つるぎを以もつて爾なんぢの民たみを殺ころす天てん使しを爾なんぢの預よ言者げんしやダワィドの爲ために止とゞめし如ごとく、斯かく洪恩こうおん多た憐れんの主しゆなるに因よりて、凡およその敎けう會くわいに平安へいあんを與あたへて、今いま此これ等らに及およぶ誘惑いざなひを制せいし給たまへ。二次。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢの人人ひとびとの痛苦いたみを見みて、靈體れいたいの醫師いしとして之これを醫いやし給たまへ、爾なんぢの奉ほう事じ者しや、今いま爾なんぢ萬有ばんいうの王わうの周圍まはりに立たちて、斷たえざる聲こゑを以もつて爾なんぢを神かみとして讚榮さんえいする者ものの祈き禱たうに因よりてなり。

生神女讚詞 母はゝ童貞女どうていぢよよ、首しゆ領りやうと天てん使し首しゆ、主しゆ制せいとセラフィム、能のう力りよくと權柄けんぺいと差さ役えき、寶はう座ざとヘルワィム等らは今いま爾なんぢの至し榮えいなる產さんを尊たふとみて、敬虔けいけんにして常つねに爾なんぢを讚榮さんえいす。

次に「常に福にして」、及び叩拜。聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第六調。

敵てきは我われを德行とくかうに裸ら體たいなる者ものと見みて、罪つみの矢やにて傷きずつけたり。神かみよ、靈體れいたいの醫師いしとして、吾わが靈たましひの傷きずを醫いやして、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

多おほくの罪つみに由よりて吾わが心こゝろの傷きずは益ますます加くははる、救世主きうせいしゆよ、靈體れいたいの醫師いしとして之これを醫いやし給たまへ。求もとむる者ものに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたふる主しゆよ、常つねに我われに痛つう悔くわいの淚なみだと罪債おひめの赦ゆるしとを與あたへて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの聖者せいしやの記き憶おくに於おいて悉ことごとくの造物ざうぶつは祭まつる、天てんは天てん使等しらと偕ともに喜よろこび、地ちは人人ひとびとと偕ともに樂たのしむ。彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは天てん使し首しゆの言ことばを受うけて、ヘルワィムの寶はう座ざと現あらはれ、爾なんぢの手てに我わが靈たましひの倚賴たのみを抱いだき給たまへり。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、及び其他、幷に發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 月曜日の聖体礼儀に

月曜日の眞福詞、第六調。

神かみ我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを憶おもひて、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

人ひとを愛あいする主しゆイイススよ、我わが知しると知しらずして行おこなひし事ことを顧かへりみずして、我われに救すくはるる者ものの分ぶんを獲えしめ給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

天てん使しの品ひん位ゐを照てらししハリストスよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて吾わが心こゝろの暗やみを照てらし給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは苦くるしみの凡およその試誘こゝろみを受うけて、信しんずる人人ひとびとの苦くるしみと傷きずとを常つねに醫いやし給たまふ。

光榮 我われ等らは天てん使しの軍ぐんに歌うたはるる聖三者せいさんしやに伏拜ふくはいして、之これに呼よばん、我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

今も 神かみの母はゝよ、我われの前まへにある永遠えいゑんの火ひと苦くるしみより我われを脫のがれしめ給たまへ、我わが爾なんぢを讚さん美びせん爲ためなり。

横線 - 『八調経』第六調

 月曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に痛悔の讚頌スティヒラ、第六調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

誰たれか我われ不ふ節制せつせいに因よりて至し上じやう者しやの戒いましめに背そむきし者ものの爲ために泣なかざらん。我われは目めに美うるはしき食しよくの爲ために樂園らくゑんに易かへて地ぢ獄ごくに入いりたり、此この食しよくは我われを死しに服ふくせしめたり、此これに緣よりて我われは神かみの光くわう榮えいと生命いのちとに遠とほざかれり。祈いのる、主しゆよ、爾なんぢが仁じん慈じにして人ひとを愛あいするに因よりて、爾なんぢの大おほいなる慈じ憐れんを以もつて我われ痛つう悔くわいする者ものを容いれ給たまへ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

主しゆよ、我わが憂愁うれひと疾痛いたみと諸罪しよざいの無む量りやうの數かず、我わが靈たましひの苦惱なやみと智慧ちゑの迷惑まよひとを視み、失望しつばうして定罪ていざいせられし者ものの聲こゑを聽きき、我われに痛つう悔くわいの神しん゜と謙けん卑ぴの心こゝろと淚なみだの泉いづみとを與あたへて、爾なんぢの大おほいなる慈じ憐れんに由よりて、我われに多おほくの罪つみの赦ゆるしを賜たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

衆しゆう人じんに救すくひを得えしめんと欲ほつする神かみよ、我われを眷かへりみ、我わが禱いのりを聞ききて、我わが淚なみだを空むなしき者ものとして斥しりぞくる毋なかれ。蓋けだし誰たれか泣なきて爾なんぢに來きたりて、直たゞちに救すくはれざらん、誰たれか熱切ねつせつに爾なんぢに呼よびて、直たゞちに聽きかれざらん。嗚呼あゝ主宰しゆさいよ、爾なんぢは凡およそ爾なんぢに祈いのる者ものに速すみやかに救すくひを以もつて應こたふ、爾なんぢは慈じ憐れんに於おいて勝かたれぬ主しゆなればなり。

次に月課經の聖人の讚頌スティヒラ。若し月課經なくば、又聖大前驅イオアンの讚頌スティヒラ。同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

救世主きうせいしゆの前ぜん驅くよ、我われ生命いのちの道みちに迷まよひし者ものを棄すつる毋なかれ。我われ心こゝろの目めを爾なんぢに注そゝぐ、吾わが靈たましひの足あしを痛つう悔くわいの石いしの上うへに立たて、我われに救すくひの門もんに入いらしむる直なほき路みちを行ゆくを敎をしへ給たまへ。凡およそ婦をんなの生うみし者ものの中うちに至し大だいなる者ものよ、我わが哀かなしめる心こゝろの歎息たんそくを退しりぞくる勿なかれ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

救世主きうせいしゆの福ふくたる授洗じゆせん及および前ぜん驅くよ、我われに助たすくる者ものと爲なりて、不ふ潔けつなる思おもひの泥どろに溺おぼれたる我われに不ふ朽きうの頂いたゞきに觸ふれたる手てを授さづけ、爾なんぢが傳つたへし悔くわい改かいの業わざを勇いさましく行おこなはん爲ために我われを堅かため、爾なんぢが始はじめて示しめしし國くにの中うちに我われ爾なんぢの僕ぼくに入いるを得えしめ給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

爾なんぢの生うまるるを以もつて母はゝの無む結果けつくわと父ちゝの無む言ごんとを解ときたるハリストスの授洗者じゆせんしやよ、我わが荒あれたる心こゝろの無む結果けつくわを解とき、靈たましひの種種しゆじゆの無知むちを速すみやかに除のぞき給たまへ。悔くわい改かいを唱となふる言ことばの聲こゑとして、我われ怠惰おこたりに由よりて神かみに離はなれたる者ものに常つねに悔くわい改かいを爲なすを得えしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの仁愛じんあいの淵ふち、爾なんぢの慈じ憐れんの深處ふかみ、仁じん慈じの數かぞへ難がたき恩おんを我われ不ふ當たうなる者ものの上うへに顯あらはし給たまへ。救世主きうせいしゆを生うみし者ものよ、我わが罪つみの叢くさむらを枯からして、我われに貞潔ていけつを與あたへ、吾わが靈たましひと體からだとを汚けがれなき者ものとして護まもり給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第六調。

ハリストスよ、願ねがはくは我われ等らは爾なんぢの畏おそるべき降臨かうりんの時ときに、我われ爾なんぢ等らを識しらずと言いふを聞きかざらん。救世主きうせいしゆよ、我われ等らは怠惰おこたりに因よりて爾なんぢの命めいを守まもらざりきと雖いへども、恃賴たのみを爾なんぢに負おはせたり。祈いのる、我われ等らの靈たましひを宥なだめ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

ハリストス神かみよ、我われ痛つう悔くわいをも淚なみだをも得えざりき、故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、終をはりの至いたらざる先さきに我われを轉てんぜしめて、我われに傷しやう感かんを與あたへ給たまへ、我わが苦くるしみより脫のがれん爲ためなり。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり。我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしや致ち命者めいしや、天てんの住ぢゆう民みんたる者ものは地ち上じやうに苦くるしみて、多おほくの苦く難なんを忍しのびたり。主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たう冀き願ぐわんに因よりて我われ等ら衆しゆうを護まもり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢに趨はしり附つく者ものは一ひとりも耻はぢを得えて爾なんぢより出いづるなし、卽すなはち恩おん寵ちようを求もとめて、益えきある求もとめに適かなふ賜たまものを受うく。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、及び發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 月曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第六調。

第一歌頌

イルモス イズライリは陸くがの如ごとく淵ふちを蹈ふみ渡わたり、追おい詰つめしファラオンの溺おぼるるを見みて呼よべり、凱歌かちうたを神かみに奉たてまつらん。

潔いさぎよき者ものよ、我われ多おほくの誘惑いざなひと惡あしき行おこなひとに傴かゞめられて、靈たましひと體からだとの首くびを爾なんぢの前まへに傴かゞめて、熱切ねつせつに爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢ我われを直なほくし給たまへ。

嗚呼あゝ純じゆん潔けつなる少女せうぢよ、信者しんじやの堅けん固ごなる援助たすけ、ハリスティアニン等らの恃賴たのみよ、我われと戰たゝかふ肉體にくたいの逸樂いつらく及および諸慾しよよくより我われを救すくひ給たまへ。

光榮 神しん靈れいの光ひかりを生うみし至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ、幽暗くらやみにある人人ひとびとを光ひかりに導みちびく者ものよ、吾わが靈たましひを照てらし、智慧ちゑを聖せいにし、諸慾しよよく諸罪しよざいの暗やみを散さんじ給たまへ。

今も 女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、不ふ當たうなる思念おもひの來襲らいしふに昧くらまされたる吾わが靈たましひの暗やみを爾なんぢより身みを取とりし主しゆの聖せいなる戒いましめの光ひかりにて散さんじ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢが信者しんじやの角つのを高たかうし、我われ等らを爾なんぢが承認うけとめの石いしに堅かためし仁じん慈じの主しゆ、吾わが神かみよ、爾なんぢと均ひとしく聖せいなるはなし。

純じゆん潔けつ至し淨じやうなる者ものよ、我われ恃賴たのみを爾なんぢに負おはしめて、願ねがはくは望のぞみを失うしなはざらん、人ひとを愛あいする仁じん慈じなる神かみの母はゝとして、我われを敵てきの網あみより脫のがれしめ給たまへ。

至し淨じやうなるマリヤ、神かみの母はゝ、救すくひの門もん、獨ひとり萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆの過とほりし者ものよ、我わが爲ために神聖しんせいなる痛つう悔くわいの門もんを啓ひらき給たまへ。

光榮 獨ひとり潔いさぎよき永貞えいてい童女どうぢよよ、我われ生命いのちの海うみに於おいて常つねに諸慾しよよくの烈はげしき激浪あらなみに打うたるる者ものの爲ために港みなと及および守護まもりと爲なり給たまへ。

今も マリヤ神かみの母はゝよ、多おほくの罪つみにて甚はなはだしく昧くらまされたる吾わが靈たましひを照てらし、凶きよう惡者あくしやの矢やに傷きずつけられて弱よわりたる者ものを醫いやし給たまへ。

第四歌頌

イルモス 尊たふとき敎けう會くわいは淨きよき心こゝろより主しゆの爲ために祝いはひ、神かみに適かなひて呼よび歌うたふ、ハリストスは吾わが力ちからと神かみと主しゆなり。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ、我わが保固かためと、避所かくれがと、壞やぶられぬ垣墻かき、及および神かみの前まへに祈き禱者たうしやなる者ものよ、我われを永遠えいゑんの焰ほのほ及および「ゲエンナ」より救すくひ給たまへ。

純じゆん潔けつなるマリヤ、無む慾よくの泉いづみを生うみし母はゝ、永貞えいてい童女どうぢよよ、我わが心こゝろの諸慾しよよくの紛擾みだれと誘惑いざなひの暴風あらしとを鎭しづめ給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつ無む玷てんなる童貞女どうていぢよ、神かみの至いたりて潔いさぎよき居所すまひと爲なりし者ものよ、我わが靈たましひの不ふ潔けつ不ふ淨じやうを潔きよめ給たまへ。

今も 少女せうぢよよ、我われ爾なんぢ獨ひとり至し淨じやう、獨ひとり無む玷てんなる者ものに祈いのる、我われ逸樂いつらくの諸慾しよよくに昧くらまされて靈たましひを汚けがしし者ものを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて潔きよめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 至し仁じんなる神かみの言ことばよ、切せつに祈いのる、爾なんぢに朝あさの祈き禱たうを奉たてまつる者ものの靈たましひを爾なんぢが神かみの光ひかりにて照てらして、爾なんぢ罪つみの暗やみより呼よび出いだす眞まことの神かみを知しらしめ給たまへ。

神かみの母はゝよ、我われ意念おもひにて汚けがされ、多おほくの墮だ落らくにて昧くらまされたる者ものは爾なんぢ獨ひとり無む玷てんなる童貞女どうていぢよに祈いのる、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。

獨ひとり救世主きうせいしゆハリストスを生うみし仁じん慈じなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの神聖しんせいなる光ひかりを以もつて我わが逸樂いつらくに昧くらまされたる靈たましひを照てらして、救すくひの道みちに向むかはしめ給たまへ。

光榮 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの轉達てんたつと保護ほごとを以もつて我わが罪つみの桎梏かせを壞やぶりて、我わが不ふ當たうなる靈たましひを神聖しんせいなる安靜あんせいの喜悅よろこびに滿みてて、幽昧くらやみより脫のがれしめ給たまへ。

今も 仁じん慈じなる童貞女どうていぢよよ、我われ獨ひとり爾なんぢを神聖しんせいなる避所かくれがとして獲えて、今いま忠ちゆう信しんに俯ふ伏ふくして爾なんぢに呼よぶ、世せ界かいの女宰ぢよさいよ、爾なんぢ我わが爲ために轉達てんたつ及および救すくひの帲幪おほひと爲なりて、我われを救すくひ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 誘惑いざなひの猛風あらしにて浪なみの立たち揚あがる世よの海うみを觀みて、爾なんぢの穩おだやかなる港みなとに著つきて呼よぶ、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

我われ不ふ當たうなる者ものは諸罪しよざいに陷おちいり、甚はなはだしく傷きずつけられて、爾なんぢ慈じ憐れんなる神かみの母はゝに趨はしり附つきて祈いのる、我わが諸罪しよざいより我われを解とき給たまへ。

恩おん寵ちようの門もんたる女宰ぢよさい、信者しんじやの爲ために天てんの門もんを啓ひらきし者ものよ、我わが爲ために痛つう悔くわいの光くわう明めいなる門もんを啓ひらきて、死しの門もんより救すくひ給たまへ。

光榮 神かみの母はゝ、無む慾よくの泉いづみを生うみし者ものよ、我われ諸慾しよよくと敵てきの攻擊こうげきとに由よりて傴かゞみたる者ものを堅かため給たまへ、我われは爾なんぢ我わが不ふ當たうなる靈たましひの慰藉なぐさめなる者ものに趨はしり附つきたればなり。

今も 女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我われ卑微ひびなる者ものを顧かへりみ、望のぞみなき者ものを救すくひ給たまへ、爾なんぢは我わが恃賴たのみと帲幪おほひ、我わが心こゝろの生命いのちと光ひかり及および保固かためなればなり。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第六調。

至し聖せいなる童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢは實じつに助たすけなき者ものの保固かためなり、故ゆゑに我われ等ら卑微ひびなる者ものは爾なんぢを以もつて擧あがり、爾なんぢに依よりて高たかく立たつ。爾なんぢは衆しゆう人じんの爲ために帲幪おほひ、及および神かみの前まへに轉達者てんたつしやなり。

第七歌頌

イルモス 天てん使しは敬虔けいけんなる少者せうしやの爲ために爐ゐろりに露つゆを出いださしめ、ハルデヤ人じんを燒やく神かみの命めいは苦くるしむる者ものに呼よばしめたり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら常つねに爾なんぢを神かみの前まへに潔淨きよめとして有たもつ。故ゆゑに祈いのる、至し淨じやうなる者ものよ、凡およそ爾なんぢを誠まことに生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものを彼處かしこに於おいて畏おそるべき苦くるしみより脫のがれしめんことを求もとめ給たまへ。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ怠惰おこたりに耽ふける者ものを起おこして、神聖しんせいなる業わざを行おこなはしめ、常つねに甚はなはだしく我われを攻せめて惡あしき念おもひにて誘いざなふ諸敵しよてきに對たいして我われを堅かため給たまへ。

光榮 童貞女どうていぢよよ、我われを滅亾ほろびに委ゆだぬる毋なかれ、我われを遺すてて殘忍ざんにんなる蛇へび、恒つねに我われを殺ころさんと欲ほつする者ものの糧かてと爲なるを許ゆるす毋なかれ。求もとむ、我われに爾なんぢの豐ゆたかなる慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、我われ等らの仁愛じんあいなる神かみに絕たえず祈いのりて、我われ等らが全まつたき赦罪しやざいを受うけて、天てんに備そなへられたる福ふくと奪うばはれざる喜よろこびとを得えんことを求もとめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢは敬虔けいけんなる者ものの爲ために焰ほのほより露つゆを注そゝぎ、義ぎ人じんの祭まつりの爲ために水みづより火ひを出いだせり、爾なんぢは一ひとつの望のぞみにて萬ばん事じを行おこなひ給たまへばなり、我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、神かみに祈いのりて、爾なんぢの產さんに由よりて、我わが無む結果けつくわの心こゝろを豐ゆたかに善行ぜんかうの果みを結むすぶ者ものと爲なし給たまへ。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよよ、神かみに禱いのりを奉たてまつりて、我われ等らを諸慾しよよくと惡あく鬼きの誘惑いざなひより脫のがれしめて、我われ等らの靈たましひを救すくはんことを求もとめ給たまへ。

光榮 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われ今いま爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきて、爾なんぢが吾わが生命いのちの轉達者てんたつしやと爲ならんことを求もとむ。少女せうぢよよ、我われを畏おそるべき審判しんぱんと詰問きつもんと永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、惡敵あくてきの攻擊こうげきに因よりて動うごける吾わが靈たましひを堅かためて、我われを山羊やぎの疾やましき分ぶんと火ひの苦くるしみより援たすけ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 天てん使しの品ひん位ゐすら見みるを得えざる神かみは、人ひと見みる能あたはず、唯たゞ爾なんぢ至し淨じやうの者ものに藉よりて人體じんたいを取とりし言ことばは人人ひとびとに現あらはれ給たまへり。我われ等ら彼かれを崇あがめて、天軍てんぐんと偕ともに爾なんぢを讚ほめ揚あぐ。

諸慾しよよくの激浪あらなみは我われを擾みだして、我われを逸樂いつらくに沈しづむ。舵師かぢとりなるハリストスを生うみし至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよ、獨ひとり信しんを以もつて爾なんぢを讚さん美びする者ものの救拯すくひなる者ものよ、我われに援助たすけの手てを伸のべて、我われを救すくひ給たまへ。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよ、萬有ばんいうの王わうの宮みや及および寶はう座ざ、神かみの山やま、選えらばれたる城邑まち、輝かゞやける天堂てんだう、至いたりて光くわう明めいなる雲くもよ、吾わが靈たましひを照てらして、我わが多おほくの罪つみの雲くもを斥しりぞけ給たまへ。

光榮 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる潔いさぎよき童貞女どうていぢよ、光ひかりの門もんよ、我わが靈たましひの門もんを善行ぜんかうの爲ために啓ひらきて、罪つみの之これに入いるを禁きんじ給たまへ、凶きよう惡者あくしやの手てが我われを執とりて、滅亾ほろびと畏おそるべき苦くるしみとに引ひかざらん爲ためなり。

今も 靈たましひよ、起おきて、祈き禱たうと善行ぜんかうとに警醒けいせいし、憂悶もだえの眠ねむりを遠とほざけよ、至いたりて慈じ憐れんなる潔いさぎよき神かみの母はゝを恒つねに警醒けいせいする轉達者てんたつしやとして有たもてばなり。

次ぎて「常に福にして」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第六調

火曜日

 火曜日の早課

第一の誦文の後に痛悔の坐誦讚詞セダレン、第六調。

我われ畏おそるべき日ひを思おもひて、我わが惡あしき行おこなひの爲ために泣なく。如何いかんぞ我われ不死ふしなる王わうに對こたへを爲なさん、如何いかんぞ我われ放蕩はうたうなる者ものは敢あへて審判者しんぱんしやに目めを注そゝぐを得えん、慈じ憐れんなる父ちゝ、獨生どくせいの子こ、及および聖神せいしんよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

仁じん慈じなる主しゆよ、悲哀かなしみの谷たにに、爾なんぢが定さだめんとする處ところに、爾なんぢが義ぎなる審判しんぱんを行おこなはん爲ために坐ざする時とき、我わが隱ひそかなる事ことを責せむる毋なかれ、我われを天てん使等しらの前まへに辱はづかしむる毋なかれ。求もとむ、神かみよ、我われを宥なだめ、我われを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らの爲ために憐あはれみの門もんを開ひらけ、爾なんぢを恃たのむ者ものに亾ほろぶることなく、爾なんぢに依よりて禍わざはひを逭のがるるを得えしめ給たまへ、爾なんぢはハリストスの民たみの救すくひなればなり。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第六調。

吾わが靈たましひよ、何なんぞ憂悶もだえの中うちに罪つみに役えきする、何なんぞ病やみて醫師いしに至いたらざる。今いまより行おこなひし諸惡しよあくより起おきて、救世主きうせいしゆに呼よびて言いへ、冀望のぞみなき者ものの冀望のぞみ、失望しつばうせし者ものの生命いのちたる救世主きうせいしゆよ、我われを起おこして救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて、我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

主しゆよ、我われに智さとき處女しよぢよの警醒けいせいを賜たまひて、吾わが靈たましひの燈ともしびを爾なんぢの洪恩こうおんの油あぶらにて燃もやし給たまへ、我わが天てん使しの歌うた「アリルイヤ」を爾なんぢに歌うたはん爲ためなり。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

神かみよ、聖せいなる者ものは受難じゆなんの勤勞きんらうを終をへて、爾なんぢより勝しよう利りの尊そん貴きを受うけ、不ふ法者はふしやの謀はかりごとを空むなしくして、不ふ朽きうの榮えい冠くわんを獲えたり。彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 世せ界かいの恃賴たのみ、慈じ憐れんなる生しやう神しん童貞女どうていぢよ、獨ひとり祝しゆく讚さんせらるる者ものよ、我われ等らは獨ひとり爾なんぢの威ゐ嚴げんなる轉達てんたつを求もとむ。助たすけなき人人ひとびとを憐あはれみて、仁じん慈じなる神かみに我われ等らの靈たましひを凡およその苦く難なんより脫のがれしめんことを祈いのり給たまへ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第六調。

救世主きうせいしゆの前ぜん驅くイオアンよ、爾なんぢは人人ひとびとに生命せいめいの道みちを示しめして呼よべり、爾なんぢ等らの心こゝろを主しゆの前まへに直なほくせよと。求もとむ、我わが多た罪ざいなる靈たましひを助たすけ、頑かたくななる心こゝろを傷しやう感かんに導みちびきて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを將しやう來らいの苦くるしみより救すくひ給たまへ。

言ことばよ、諸慾しよよくの颶ぐ風ふう、諸罪しよざいの甚はなはだしき激浪あらなみは我われを失望しつばうの深處ふかみに溺おぼらせり。祈いのる、爾なんぢの權能けんのうの手てを伸のべて、ペトルを救すくひし如ごとく、爾なんぢの前ぜん驅くの聖せいなる祈き禱たうに因よりて、我われを甚はなはだしき不ふ法はふの深處ふかみより救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 世世よよの先さきより母はゝなく父ちゝより生うまれし子こ、神かみの言ことばを末すゑの時ときに於おいて夫をつとなく爾なんぢの淨きよき血ちより身みを取とりし者ものとして生うみたる神かみの母はゝよ、彼かれに祈いのりて、我われ等らに終をはりの至いたらざる先さきに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

我が主イイススハリストス及び聖致命者に奉る痛悔の規程カノン。イオシフの作。第六調。

第一歌頌

イルモス 佑たすけ護まもる者もの顯あらはれて、我わが救すくひと爲なれり、彼かれは吾わが神かみなり、我われ彼かれを讚ほめ揚あげん、彼かれは我わが父ちゝの神かみなり、我われ彼かれを尊たふとみ歌うたはん、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

吾わが救世主きうせいしゆイイススよ、爾なんぢに祈いのる、昔むかし善よく痛つう悔くわいせし罪女ざいぢよを多おほくの罪つみより救すくひし如ごとく、斯かく仁じん慈じなる主しゆとして、我われをも我わが無む數すうの惡あくより救すくひ給たまへ。

イイススよ、我われ此この生命いのちの激はげしき海うみを渡わたりて、空むなしき想おもひに由よりて多おほくの罪つみに沈しづみたり、此これ等らより我われを援たすけて救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 勇敢ゆうかんなる受難者じゆなんしや、苦くるしみを忍しのびて敵てきを滅ほろぼし、神かみより勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけたる者ものを我われ等ら喜よろこびを以もつて尊たふとむべし。

致命者讚詞 睿えい智ちなる者ものよ、爾なんぢ等らは神かみ言ことばに因よりて勇いさましく辯べん論ろんして、惡あくなる雄辯ゆうべん家かに勝かち、多た種しゆの苦くるしみを受うけて、大おほいに光くわう榮えいを獲えたり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの產さんに因よりて爾なんぢは生命いのちの門もんと現あらはれて、死しの門もんを閉とざし、選えらばれたる地ちと現あらはれて、人ひとの合成がふせいを地ちより天てんに升のぼせ給たまへり。

又聖大前驅イオアンの規程カノン。イオシフの作。第六調。

第一歌頌

イルモス 見みるべきファラオンは全軍ぜんぐんと共ともに溺おぼらされ、イズライリは海うみの中なかを過とほりて呼よべり、主しゆ吾わが神かみに謳うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

神かみの使つかひたる聖せいなる前ぜん驅くよ、神聖しんせいなる使つかひは爾なんぢの產さんを豫あらかじめ父ちゝに告つぐ。彼かれと偕ともに我われ等らを記き憶おくして、審判しんぱんの日ひに於おいて我われ等らが憐あはれみを蒙かうむらんことを祈いのり給たまへ。

野のの美うるはしき出しゆつ生せいたるハリストスの前ぜん驅くよ、我われの中うちに絕たえず出しゆつ生せいする怠惰おこたりを根ねより絕たちて、我われに痛つう悔くわいの果みを結むすぶを得えしめ給たまへ。

子こなき腹はらは爾なんぢ至し榮えいなる果み、先さきの無む結果けつくわの心こゝろをして豐ゆたかに結果けつくわせしむる者ものを生うむ。我われ信しんを以もつて爾なんぢに呼よぶ、授洗者じゆせんしやよ、我わが無む結果けつくわの念おもひを絕たち給たまへ。

生神女讚詞 凶きよう惡あくなる敵てきは常つねに誘惑いざなひを以もつて我われを執とらふ。至いたりて無む玷てんなる生しやう神女しんぢよよ、我われを其その網あみより出いだして、主宰しゆさいの神聖しんせいなる旨むねを行おこなふを習ならはしめ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢの誡いましめの石いしに我わが動うごける心こゝろを固かため給たまへ、爾なんぢ獨ひとり聖せいにして主しゆなればなり。

獨ひとり寬くわん容ようなる主しゆよ、我わが爾なんぢの前まへに立たちて審判しんぱんせられん時とき、爾なんぢの慈じ憐れんなる目めを以もつて我われを眷かへりみ給たまへ。

救世主きうせいしゆよ、我われ靈たましひの深處ふかみより歎息たんそくする者ものを稅ぜい吏りの如ごとく受うけて、我われに痛つう悔くわいを賜たまひて、凡およその罪つみより救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは己おのれの至し聖せいなる血ちの流ながれを以もつて昔むかし偶像ぐうざうの前まへに惡あく鬼きに捧さゝぐる汚けがらはしき血ちの流ながれを止とゞめ給たまへり。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは至し聖神せいしんに堅かためられて、滅ほろびを爲なす偶像ぐうざうの宮みやを毁こぼちて、衆しゆう人じんを信しんに堅かため給たまへり。

生神女讚詞 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは全ぜん世せ界かいを持たもつ者ものを生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、凡およそ我われを持たもつ罪過ざいくわより我われを脫のがれしめ給たまへ。

又

イルモス 主しゆよ、爾なんぢを信しんずる信しんの堅かたき石いしに我わが意思おもひを堅かため給たまへ、我われ爾なんぢ仁じん慈じの主しゆを避所かくれが及および防固かためとして有たもてばなり。

福ふくたる前ぜん驅くよ、我われ途みちに迷まよひし者ものを今いま正たゞしきに轉てんぜしめ、我われ常つねに罪つみの淵ふちに漾たゞよふ者ものに手てを伸のべ給たまへ。

我われ怠惰おこたりの中うちに生いのちを度わたれるに、斫きらるる時とき邇ちかづく。常つねに尊榮そんえいなる前ぜん驅くよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われに興おくるを與あたへ給たまへ、我わが無む結果けつくわの者ものとして滅きえざる火ひに投なげられざらん爲ためなり。

畏おそるべき日ひは門もんの側かたはらにあるに、我われは罪つみの重任おもにを負おふ。主しゆの授洗者じゆせんしやよ、爾なんぢの淸きよき祈き禱たうを以もつて之これを我われより卸おろし給たまへ。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは神かみの寶はう座ざと現あらはれたり、ハリストスは身みにて此この上うへに坐ざし、人人ひとびとを初はじめの墮だ落らくより起おこして、歡よろこびの聲こゑを以もつて爾なんぢを歌うたはしむ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、預よ言者げんしやは爾なんぢの降臨かうりんの事ことを聞きき、爾なんぢが童貞女どうていぢよより生うまれ、人人ひとびとに顯あらはれんと欲ほつするを懼おそれて曰いへり、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

大仁だいじん慈じにして洪恩こうおんなる主しゆよ、我われに淚なみだの流ながれを與あたへて、我われに此これを以もつて慾よくの流ながれを涸からし、凡およその罪つみの汚けがれを洗あらひ、「ゲエンナ」の永遠えいゑんの滅きえざる焰ほのほを滅けすを得えしめ給たまへ。

我われ常つねに逸樂いつらくを以もつて我わが靈たましひの傷きずを搔かき、醫いやされぬ者ものと止とゞまりて、自みづから如何いかにならん、何なにを爲なさんと感覺かんかくするを欲ほつせず。洪恩こうおんなるハリストスよ、我われを醫いやして救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 常つねに福さいはひなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは神聖しんせいなる操舵かぢとりに由よりて、信しんを以もつて、此この生いのちの激浪あらなみと惡あくの颶ぐ風ふうとを度わたりて、天てんの國くにの無ぶ難なんにして穩靜をんせいなる港みなとに到いたり給たまへり。

致命者讚詞 敬虔けいけんの燈ともしび、眞實しんじつの光くわう體たいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは功勞こうらうの光ひかりを以もつて無む神しんの疾やましき暗昧くらやみを拂はらへり、奇き跡せきの光くわう線せんを以もつて諸慾しよよくの暗やみを散さんじ給たまふ。

生神女讚詞 至いたりて無む玷てんなる少女せうぢよよ、預よ言者げんしやは昔むかし爾なんぢを七しち光くわうの燈臺とうだい、神しん智ちの火ひを載のせて、無知むちの暗やみに苦くるしむ人人ひとびとを照てらす者ものと預よ見けんせり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのりて呼よぶ、我われを照てらし給たまへ。

又

イルモス 我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、爾なんぢの作爲しわざを悟さとりて驚おどろけり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

前ぜん驅くよ、爾なんぢに祈いのる、生命いのちの途みちに於おいて盜賊たうぞくに傷きずつけられたる吾わが心こゝろを爾なんぢの神聖しんせいなる祈き禱たうの效かう力りよくある治ち療れうを以もつて醫いやし給たまへ。

前ぜん驅くよ、我わが靈たましひの中うちに棲すむ罪つみを滅ほろぼして、我われ逸樂いつらくに躓つまづく者ものに今いま興おくるを得えしめ給たまへ。

恩おん寵ちように至いたりて富とめる者ものよ、我われ等ら生命いのちの海うみに於おいて颶ぐ風ふうに荒あらさるる者ものの爲ために港みなとと爲なりて、衆しゆうに穩靜をんせいを與あたへ給たまへ。

生神女讚詞 至いたりて洪恩こうおんなる主しゆよ、我わが行おこなひに循したがひて我われを定罪ていざいせずして、慈じ憐れんを我われに垂たれ給たまへ、爾なんぢを生うみし者ものは授洗者じゆせんしやと偕ともに爾なんぢに祈いのる。

第五歌頌

イルモス 人ひとを愛あいいる主しゆよ、祈いのる、夜よより寤さむる者ものを照てらし、我われをも爾なんぢの誡いましめに導みちびき、救世主きうせいしゆよ、我われに爾なんぢの旨むねを行おこなふを訓をしへ給たまへ。

ハリストスよ、視みよ、爾なんぢの銀タラントを藏かくしし惰おこたれる爾なんぢの僕ぼく、諸慾しよよくの惡あしき行おこなひに由よりて空むなしくなりたる者ものは我われなり。祈いのる、我われを火ひに遣つかはす勿なかれ。

慈じ憐れんなるハリストスよ、我われ恩おん寵ちように因よりて爾なんぢの子こと爲なりて、敵てきに服役ふくえきし、放蕩はうたうに生せい活くわつして爾なんぢより離はなれたり。祈いのる、我われを反かへして救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは信しんの盾たてを執とりて審判しんぱん座ざの前まへに立たてり。故ゆゑに殘酷ざんこくなる暴ばう虐ぎやく者しやは誘惑いうわくの矢やを以もつて彼かれ等らに傷きずつくること能あたはざりき。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは肉體にくたい殺ころされて、敵てきの悉ことごとくの惡謀あくぼうを斃たふし、歡喜よろこびを以もつて老おいざる生命いのちに移うつりて、勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけ給たまへり。

生神女讚詞 通とほられぬ門もんたる潔いさぎよき童貞女どうていぢよ、衆しゆう人じんの嚮きやう導だう者しやよ、祈いのる、我わが爲ために眞まことの痛つう悔くわいの門もんを啓ひらきて、我われに痛つう悔くわいの途みちを示しめし給たまへ。

又

イルモス 神かみの言ことばよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつる、蓋けだし爾なんぢは仁じん慈じに因よりて、變かはらざる者ものにして己おのれを罄つくし、苦くるしまざる者ものにして苦くるしみを受うくるに至いたれり。人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ陷おちいりし者ものに平安へいあんを與あたへ給たまへ。

聖せいなる三者さんしやの殿でんと爲なりし讚さん美びたる前ぜん驅くよ、我われ等ら此この爾なんぢの聖せい殿でんに集あつまりし者ものは篤あつき信しんを以もつて爾なんぢに祈いのる、諸もろもろの誘惑いざなひ及および憂患うれひより我われ等らを救すくひ給たまへ。

度ど生せいの時ときに異い常じやうなる途みちを步あゆみし福ふくたる者ものよ、今いま祈いのる、我われ凡およその德とくに遠とほざかりし者ものを萬有ばんいうの神かみに屬ぞくせしめて、其その聖せいなる旨むねを行おこなふを敎をしへ給たまへ。

イオルダンの流りゆう水すゐに慈じ憐れんの淵ふちを沈しづめし預よ言者げんしやよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて今いま我わが諸慾しよよくの流ながれを涸からして、淚なみだの泉いづみを我われに與あたへ給たまへ。

生神女讚詞 神聖しんせいなる光くわう線せんにて美うるはしく飾かざられたる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは人ひとの子こより美うるはしき者ものを生うみ給たまへり。常つねに彼かれに祈いのりて、我われ等ら信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいする者ものを朽きう壞くわいより救すくはんことを求もとめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ心こゝろを盡つくして仁じん慈じなる神かみに籲よべり、彼かれは我わが最いと深ふかき地ぢ獄ごくより呼よぶを聆きき、我わが生命いのちを淪滅ほろびより援たすけ給たまへり。

ハリストス イイススよ、畏おそるべき日ひに於おいて我われを惡あく鬼きの悅よろこびと爲なす勿なかれ、願ねがはくは其時そのとき我われは「ゲエンナ」の火ひに遣つかはす爾なんぢの聲こゑを聞きかざらん。

義ぎ者しやの敵てきは我われを諸罪しよざいの深處ふかみに沈しづめたり。イイススよ、我われ爾なんぢの洪恩こうおんの海うみに趨はしり附つく、今いま我われを生命いのちの港みなとに向むかはしめ給たまへ。

致命者讚詞 睿えい智ちなる者ものよ、爾なんぢ等らは多おほくの苦く難なんの耡すきを以もつて靈たましひの隴うねを新あらたにし、信しんの神聖しんせいなる種たねを播まきて、苦くるしみの繁しげく實みのりたる穗ほを生せい長ちやうせしめたり。

致命者讚詞 敬虔けいけんなる軍ぐん士しよ、爾なんぢ等らは己おのれの傷きずを以もつて爾なんぢ等らに傷きずつけし者ものに傷きずつけられたり。故ゆゑに生命いのちに移うつりて、今いま人人ひとびとの苦くるしみを醫いやし給たまふ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは神かみの爲ために殿でんと現あらはれたり。彼かれは奧密あうみつに此これに入いりて、人ひとの性せいを神成しんせいして、信者しんじやを己おのれの殿でんと爲なし給たまへり。

又

イルモス 今いまを限かぎりの罪つみの淵ふちは我われを圍かこめり、我われ復また暴浪あらなみに耐たへずして、イオナの如ごとく爾なんぢ主宰しゆさいに籲よぶ、淪滅ほろびより我われを引ひき上あげ給たまへ。

預よ言者げんしやよ、爾なんぢは曾かつて芽めを出いださざりし根ねより生しやうじて、凡およその善ぜん智ちの果みなき人人ひとびとの心こゝろを善よき果みを結むすび、神かみの光くわう榮えいを顯あらはす者ものと爲なし給たまへり。

前ぜん驅くよ、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて速すみやかに凶きよう惡者あくしやを我わが足そく下かに斃たふして、我われ等らの靈れい智ちの步あゆみを平安へいあんの途みちに向むかはしめ給たまへ。

預よ言者げんしやよ、義ぎを以もつて爾なんぢの牧群ぼくぐんを防ふせぎ護まもりて、我われ等らを凡およその惡あく鬼きの謀はかりごと及および永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、我われ等ら今いま感謝かんしやの歌うたを爾なんぢに奉たてまつる。潔いさぎよき者ものよ、我われ等らは爾なんぢに由よりて古いにしへの詛のろひより救すくはれて、凡およその祝しゆく福ふくの果みを結むすぶ。

第七歌頌

イルモス 列れつ祖その神かみよ、我われ等ら罪つみを犯おかし、不ふ法はふを行おこなひ、不義ふぎを爾なんぢの前まへに爲なし、爾なんぢが我われ等らに誡いましめしことを守まもらざりき、行おこなはざりき、然しかれども終をはりに至いたるまで我われ等らを棄すつる毋なかれ。

洪恩こうおんなるハリストスよ、我われ無む量りやうに罪つみを犯おかしし者ものは爾なんぢの無む量りやうなる仁じん慈じを仰あふぐ。我われ爾なんぢの慈じ憐れんを知しり、爾なんぢの恒忍ごうにんと寬くわん容ようとを知しる、我われに痛つう悔くわいの果みを賜たまひて、我われを救すくひ給たまへ。

洪恩こうおんなる主しゆよ、吾わが心こゝろの醫いやし難がたき慾よくを醫いやし、我われに罪債おひめの赦ゆるしを賜たまへ、重おもき任にを輕かろくし給たまへ、我わが傷しやう感かんを以もつて常つねに爾なんぢ列れつ祖その神かみを讚榮さんえいせん爲ためなり。

致命者讚詞 神聖しんせいなる受難者じゆなんしやは縛しばられ、斬きられ、物質ぶつしつの火ひに囓かまれ、獅子ししに食しよくとして畀あたへられ、刃は輪ぐるまに舒のべられて、爾なんぢ吾わが活いける神かみを諱いまざりき。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは體からだより離はなさるれども、神聖しんせいなる合成がふせいを以もつて己おのれを我われ等らに合あはせし神かみより離はなされざる者ものと現あらはれたり。常つねに彼かれに我われ等らが凡およその危き難なんより脫のがれんことを祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、父ちゝが永遠えいゑんに生うみし子こを爾なんぢは種たねなく生うみて、產さんの前まへの如ごとく、產さんの後のちにも童貞女どうていぢよに止とゞまり給たまへり。故ゆゑに爾なんぢは讚さん美びせられて、常つねに神かみの眞まことの母はゝとして讚榮さんえいせらる。

又

イルモス 少者せうしやはワワィロンに於おいて爐ゐろりの焰ほのほを懼おそれざりき、乃すなはち火ひの中うちに投なげられて、霑うるほされて歌うたへり、主しゆ吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

言ことばの聲こゑたる授洗者じゆせんしやよ、今いま我われ等らの聲こゑを納いれて、爾なんぢの民たみを諸慾しよよく諸難しよなん、多おほくの誘惑いざなひ及および永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

預よ言者げんしやよ、爾なんぢは世よの罪つみを任になふ神かみの羔こひつじを手てを以もつて指さし示しめす。彼かれに常つねに祈いのりて、我わが甚はなはだしき多た年ねんの諸罪しよざいを除のぞきて、我われに生命いのちを獲えしめんことを求もとめ給たまへ。

吾わが靈たましひよ、急いそぎて無知むちなる行おこなひの暗やみを棄すてて呼よべ、イイススよ、授洗者じゆせんしやの祈き禱たうに由よりて我われを憐あはれみて、我わが行おこなひの泥ひぢより我われを引ひき出いだし給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは天てんの品ひん位ゐの戰をのゝきて前まへに立たつ主しゆ、仁じん慈じに因よりて人人ひとびとに合あはせられし者ものを生うみ給たまへり。彼かれに熱切ねつせつに爾なんぢの諸僕しよぼくを宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

第八歌頌

イルモス 凡およそ呼吸いきある者ものと造物ざうぶつは、天軍てんぐんの讚榮さんえいし、ヘルワィムとセラフィムの戰をのゝく者ものを歌うたひ、崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

ハリストスよ、我われダワィドの如ごとく爾なんぢの大仁だいじん慈じの惠めぐみを仰あふぎて、彼かれより多おほく罪つみを行おこなひし者ものとして、彼かれと偕ともに呼よぶ、獨ひとり慈じ憐れんなる主しゆよ、速すみやかに我われを憐あはれみ給たまへ。

我われは善よき終をはりの我われに賜たまはらんことを祈いのれども、頑かたくななる心こゝろを有たもちて、惡あしき行おこなひに終をはりを置おかんことを勉つとめず。神かみの言ことばよ、我われを宥なだめ給たまへ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは選えらばれたる無む玷てんの祭まつりとして、我われ等らの爲ために祭まつりと爲なりし獨生どくせいの言ことばに甘あまんじて捧さゝげられて、惡あく魔まの悉ことごとくの祭まつりを空むなしくし給たまへり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは筋すぢを切きられ、齒はを折くじかれ、手てを斷たたれ、百ひやく體たいを寸斷すんだんせられ、及および其その他たの悉ことごとくの苦くるしみを勇いさましく忍しのびて、ハリストス獨ひとり受難じゆなんの首かしらなる主しゆを歌うたへり。

生神女讚詞 聘女よめならぬ聘女よめ、祝しゆく讚さんせらるる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために日ひの老おいたる者ものを新あらたなる嬰兒をさなごとして生うみ給たまへり。彼かれは老おいたる人ひとの性せいを新あらたにして、地ち上じやうに新あらたなる道みちを示しめし給たまへり。

又

イルモス 福ふくたる少者せうしやはワワィロンに於おいて先せん祖ぞの律おきての爲ために危あやふきを顧かへりみずして、君きみの無知むちなる命めいを輕かろんじ、火ひに擲なげうたれて其中そのうちに焚やかれずして、全能者ぜんのうしやに適かなふ歌うたを歌うたへり、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

福ふくたる者ものよ、爾なんぢは洗せんを受うくる言ことばの上うへに鴿はとの形かたちを以もつて聖神せいしんの降くだるを見み、父ちゝの聲こゑの、此これは我われの同どう座ざの子こなりと云いふを聞きくを得えたり。我われ等らは彼かれを歌か頌しようして呼よぶ、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

預よ言者げんしやよ、爾なんぢの祈き禱たうの火ひを以もつて我わが思おもひの枯草かれくさの如ごとき慾よくを焚やき、我わが心こゝろの滅きえたる燈ともしびを復また燃もやし給たまへ、我わが明あきらかに見みて、誡いましめの光ひかりを造つくりし者ものを歌か頌しようせん爲ためなり、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

爾なんぢより用もちゐん爲ために受うけし銀タラントを藏かくしたる僕ぼくは我われ不ふ當たうの者ものなり。爾なんぢが審判しんぱんの爲ために來きたりて、各人かくじんの行爲わざを糺たゞさん時とき、我われ何なにをか爲なさん。然しかれども爾なんぢの前ぜん驅くの祈き禱たうに因よりて我われを憐あはれみて、火ひに遣つかはす勿なかれ、蓋けだし我われ呼よぶ、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる少女せうぢよ、爾なんぢの產さんを以もつて惡あく魔まの驕おごりを仆たふしし者ものよ、我わが思おもひを謙遜けんそんに護まもり、我われを諸慾しよよくの泥ひぢより起おこし、我われ飢ううる者ものを爾なんぢの恩おん寵ちように飽あかしめ給たまへ、蓋けだし我われ歌うたふ、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

次に生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」。及び躬拜。

第九歌頌

イルモス 種たねなき胎はらごもりの產さんは言いひ難がたし、夫をつとを知しらざる母はゝの果みは朽くちず、神かみを生うむ產さんは天性てんせいを改あらたむればなり。故ゆゑに我われ等ら萬族ばんぞく爾なんぢを神かみの聘女よめなる母はゝとして、正たゞしく崇あがめ讚ほむ。

人ひとを愛あいするイイススよ、爾なんぢ獨ひとり我われ等らの劣れつ弱じやくを知しりて、慈じ憐れんに因よりて之これを潔きよめんと欲ほつして、之これを衣き給たまへり。故ゆゑに祈いのる、我わが汚けがれ、我わが惡あくの膿汁のうじふを潔きよめて、我われを救すくひ給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ罪女ざいぢよの如ごとく爾なんぢに淚なみだを捧さゝぐ、稅ぜい吏りの如ごとく歎息たんそくして爾なんぢに呼よぶ、我われを潔きよめて救すくひ給たまへ、ハナアンの婦をんなの如ごとく呼よぶ、我われを憐あはれみ給たまへ、痛つう悔くわいせしペトルの如ごとく我われに赦ゆるしを得えしめ給たまへ。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは形體けいたいを以もつて無む形けいなる世よの君きみと鬪たゝかひて、苦くるしみの功勞こうらうを以もつて之これを斃たふし、宜よろしきに合かなひて勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけたり。故ゆゑに信しんを以もつて爾なんぢを讚ほめ揚あぐる衆しゆう人じんの爲ために熱切ねつせつに祈いのり給たまへ。

致命者讚詞 至し聖せいなる主しゆよ、爾なんぢは己おのれの聖者せいしやの聖せいなる血ちを以もつて地ちを聖せいにし、彼かれ等らの神しん゜を以もつて聖せいなる天軍てんぐんの神しん゜に合あはせ給たまへり、且かつ常つねに彼かれ等らに由よりて眞まことの信しんを以もつて爾なんぢに奉ほう事じする者ものを聖せいにし給たまふ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつにして祝しゆく福ふくせられし者ものよ、我われ等らは天てん使し首しゆの聲こゑを以もつて爾なんぢに捧さゝぐ、容いれられぬ神かみを容いれし者ものよ、慶よろこべ、詛のろひを釋ときて祝しゆく福ふくを降くだしし者ものよ、慶よろこべ、獨ひとり樂園らくゑんの門もんを啓ひらきし者ものよ、慶よろこべ。

又

イルモス 信者しんじやよ、來きたりて、高たかきを仰あふぐ智慧ちゑを以もつて、高たかき處ところに設まうけられたる主宰しゆさいの優款もてなしと不死ふしの宴えんとを樂たのしみ、我わが讚ほめ揚あぐる言ことばに敎をしへられて、來きたりし言ことばを悟さとらん。

主しゆの前ぜん驅くよ、度ど生せいの逸樂いつらくに甚はなはだしく傷きずつけられたる我わが心こゝろを醫いやし、劇はげしく我われを擾みだす暴風あらしを鎭しづめ、我われに痛つう悔くわいの直なほき途みちを示しめし給たまへ。

預よ言者げんしやよ、爾なんぢは舊きうと新しんとの間あひだに立たてる者ものと見みられて、彼かれの息やむを致いたし、此これの光ひかりを現あらはせり。我われ等らに此この光ひかりの中うちに淸きよき良りやう心しんを以もつて行ゆくを敎をしへ給たまへ、我わが永遠えいゑんの幽暗くらやみを免まぬかれん爲ためなり。

神しん智ちなる授洗者じゆせんしやイオアン、主しゆの前ぜん驅くよ、爾なんぢは天てんの軍ぐんに合あはせられたり。彼かれ等らと偕ともにハリストスに祈いのりて、我われ等ら地ちに在ありて此この爾なんぢの尊たふとき殿でんに於おいて爾なんぢを尊たふとむ者ものを救すくはんことを求もとめ給たまへ。

畏おそるべき審判しんぱんは幽暗くらやみの業わざを有たもつ者ものの爲ために怒いかりに充みちたる日ひ、幽暗くらやみの日ひなり。ハリストスの授洗者じゆせんしや及および前ぜん驅くよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて其時そのとき我われ等ら爾なんぢを尊たふとむ者ものを凡およその定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは至し聖せいなる神かみを生うみし者ものとして、ヘルワィムよりも聖せいなる者ものと現あらはれたり。祈いのる、我われ等ら衆しゆう聖せいなる聲こゑを以もつて夜よるに晝ひるに熱信ねつしんに爾なんぢを讚さん美びする者ものを聖せいにし給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。小聯禱。光耀歌、及び常例の聖詠。其他。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第六調。

敵てきは我われを德行とくかうに裸ら體たいなる者ものと見みて、罪つみの矢やにて傷きずつけたり。神かみよ、靈體れいたいの醫師いしとして、吾わが靈たましひの傷きずを醫いやして、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

多おほくの罪つみに由よりて吾わが心こゝろの傷きずは益ますます加くははる、救世主きうせいしゆよ、靈體れいたいの醫師いしとして之これを醫いやし給たまへ。求もとむる者ものに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたふる主しゆよ、常つねに我われに痛つう悔くわいの淚なみだと罪債おひめの赦ゆるしとを與あたへて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 主しゆよ、若もし我われ等らの爲ために祈いのる爾なんぢの聖者せいしやと、我われ等らを憐あはれむ爾なんぢの慈じ憐れんあらずば、我われ等ら如何いかで爾なんぢ諸天しよてん使しより恒つねに讚榮さんえいせらるる主しゆを讚ほめ歌うたふを得えん。心こゝろを知しる者ものよ、我われ等らの靈たましひを宥なだめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 潔いさぎよき童貞女どうていぢよ、神かみの母はゝよ、爾なんぢは大おほいなる恩おん賜しを蒙かうむれり、蓋けだし身みにて聖三者せいさんしやの一いつなる者もの、ハリストス、生命いのちを賜たまふ主しゆを我わが靈たましひの救すくひの爲ために生うみ給たまへり。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ及び聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、其他、幷びに發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 火曜日の聖体礼儀に

火曜日の眞福詞、第六調。

神かみ我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを憶おもひて、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

ペトルの涕泣ていきふを受うけしハリストスよ、我わが痛つう悔くわいをも受うけて、我われに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

人人ひとびとに悔くわい改かいを傳つたへし主しゆの授洗者じゆせんしや及および前ぜん驅くよ、我わが靈たましひを全まつたくして痛つう悔くわいせん爲ために祈いのり給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

苦くるしみの激浪あらなみを忍しのびし受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは今いま人人ひとびとの諸しよ病びやうを醫いやし給たまふ。故ゆゑに讚さん美びせらる。

光榮 諸しよ預よ言者げんしやを以もつて單一たんいつにして混淆こんかうせざる三さん位ゐに於おいて讚榮さんえいせらるる神かみよ、前ぜん驅くの祈き禱たうに由よりて我われを救すくひ給たまへ。

今も 憂うれひに在ある者ものの堅けん固ごなる轉達者てんたつしやよ、祈いのる、我われ度ど生せいの慾よくに與あづかる者ものの爲ために轉達てんたつして、我われを救すくひ給たまへ。

横線 - 『八調経』第六調

 火曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十字架の讚頌スティヒラ、第六調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢは釘ていせられて、全ぜん地ちを動うごかし、信者しんじやの心こゝろを堅かため給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを歌か頌しようして、愛あいを以もつて爾なんぢの悟さとり難がたき力ちからに伏拜ふくはいす。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは頰ほゝを批うたれ、唾つばきせられて、毒害どくがいの敵てきの凶きよう惡あくを制せいし、目めの誘惑いざなひに由よりて墮だ落らくせしアダムを起おこし給たまへり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢが非義ひぎに木きに懸かけられて、人人ひとびとの罪過ざいくわを釋とき給たまふを見みる時とき、日ひし晦くらみ、地ち皆みな震ふるひ、磐いはは裂さけたり。

次ぎて若し之あらば、月課經の聖人の讚頌スティヒラ。若し之なくば、又次の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

童貞女どうていぢよは童貞どうていの門もん徒とと偕ともに曾かつて主しゆの釘ていせらるる時とき十じふ字架じかの側かたはらに立たちて、泣なきて呼よべり、鳴呼あゝ衆しゆう人じんを苦くるしみより釋とき給たまふハリストスよ、如何いかんぞ爾なんぢ苦くるしみを受うくる。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

至いたりて潔いさぎよき者ものは呼よべり、我われ爾なんぢの種たねなき懷孕はらみと至し淨じやうなる產さんとを思おもひて大おほいに訝いぶかる、救世主きうせいしゆよ、如何いかんぞ爾なんぢ斯かく罪犯者ざいはんしやの如ごとく死しするを甘あまんじたる。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

潔いさぎよき母はゝ童貞女どうていぢよよ、我われ人ひととして木きに擧あげられて釘ていせらる、死し者しやとして墓はかに置おかるれども、神かみとして光くわう榮えいを以もつて三みつ日目かめに復ふく活くわつせん。

光榮、今も、生神女讚詞 救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの潔いさぎよき母はゝ童貞女どうていぢよは至いたりて不ふ法はふなる人人ひとびとが非義ひぎに爾なんぢを木きに釘ていするを見みる時とき、シメオンの預よ言げんせし如ごとく、其その心こゝろ傷きずつけられたり。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第六調。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかは爾なんぢの人人ひとびとの爲ために生命いのち及および保護まもりなり。我われ等ら之これを恃たのみて、爾なんぢ身みにて釘ていせられし我わが神かみを歌うたふ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ、視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかは人類じんるゐの爲ために樂園らくゑんを啓ひらけり。我われ等ら朽きう壞くわいより救すくはれて、爾なんぢ身みにて釘ていせられし我わが神かみを歌うたふ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 ハリストスよ、受難者じゆなんしやは爾なんぢの爲ために多おほくの苦くるしみを忍しのびしに因よりて、天てんに於おいて完くわん美びなる榮えい冠くわんを受うけたり、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのらん爲ためなり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 至いたりて無む玷てんなる生しやう神女しんぢよは我われ等らの生命いのちが木きに懸かゝれるを見みて、母はゝとして泣なきて呼よべり、吾わが子こ、吾わが神かみよ、愛あいを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものを救すくひ給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱及び發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 火曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第六調。

第一歌頌

イルモス イズライリは陸くがの如ごとく淵ふちを蹈ふみ渡わたり、追おひ詰つめしファラオンの溺おぼるるを見みて呼よべり、凱歌かちうたを神かみに奉たてまつらん。

附唱 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

我われ大いたく我わが汚けがれたる生命いのちと無む量りやうの惡あくとの爲ために泣なく、潔いさぎよき者ものよ、何なにをか爾なんぢに痛告つうこくせん、我われ惑まどひて畏おそる。女宰ぢよさいよ、我われを援たすけ給たまへ。

我われ慾よくに耽ふける者ものは我わが惡あしくして甚はなはだしき墮だ落らくを何いづれより言いひ起おこさん、嗚呼あゝ是これより如何いかにか爲ならん。女宰ぢよさいよ、終をはりの至いたらざる先さきに我われを憐あはれみ給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、我われ常つねに死しの時とき及および畏おそるべき審判しんぱんを思おもへども、至いたりて惡あしき習慣ならはしに因よりて誘惑いざなひに陷おちいる。祈いのる、我われを援たすけ給たまへ。

今も 誘惑者いうわくしやは我わが今いま神聖しんせいなる德行とくかうに裸ら體たいにして、神かみより遠とほく離はなれて踈うとんぜらるるを見みて、我われを呑のまんと欲ほつす。女宰ぢよさいよ、之これを許ゆるす勿なかれ。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢが信者しんじやの角つのを高たかうし、我われ等らを爾なんぢが承認うけとめの石いしに堅かためし仁じん慈じの主しゆ、吾わが神かみよ、爾なんぢと均ひとしく聖せいなるはなし。

女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我われ慾よくに耽ふける者ものは我わが無む量りやうの惡あくを以もつて甚はなはだしく靈たましひを汚けがせり、是これより安いづくにか往ゆかん、我われ全まつたく失望しつばうせり。

潔いさぎよき者ものよ、哀かなしい哉かな、我われ放蕩はうたうの者ものは驕おごれる心こゝろと、不ふ當たうなる行おこなひと、言ことばと、思おもひとを以もつて我わが衷うちに神かみの像ざうと肖せうとに循したがひて造つくられし者ものを汚けがせり。

光榮 仁じん慈じなる者ものよ、智慧ちゑの昧くらまされたる我われの如ごとく不ふ當たうなることを行おこなひし者ものは人人ひとびとの中うちにあらず、世よに生うまれざりき、蓋けだし我われは神聖しんせいなる洗禮せんれいを汚けがせり。

今も 至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、我われは惡あくの極きよくに至いたれり、亟すみやかに我われを援たすけ給たまへ。天てん地ちは我わが不ふ當たうなる行おこなひに勝たへずして呼よぶ。

第四歌頌

イルモス 尊たふとき敎けう會くわいは淨きよき心こゝろより主しゆの爲ために祝いはひ、神かみに適かなひて呼よび歌うたふ、ハリストスは吾わが力ちからと神かみと主しゆなり。

潔いさぎよき者ものよ、天てん使しの品ひん位ゐ及および天軍てんぐんは爾なんぢの子この權能けんのうに畏おそる、惟たゞ我われは失望しつばうして、畏懼おそれを感かんぜず。

全ぜん地ちは我わが甚はなはだしき惡あくを行おこなふを見みて驚おどろき怪あやしみて、爾なんぢの子この多おほくの慈じ憐れんを奇きとす。

光榮 我われ甚はなはだしく肉體にくたいの殿でん及および主しゆの殿でんを汚けがせり。人人ひとびとは戰をのゝきて主しゆの殿でんに入いるに、我われ放蕩はうたうの者ものは耻はぢなくして入いる、嗚呼あゝ哀かなしい哉かな。

今も 女宰ぢよさいよ、我われ至いたりて當あたらずと雖いへども、我われを爾なんぢの子この帲幪おほひより遠とほざくる毋なかれ、踈うとき者ものと爲なす毋なかれ。祈いのる、我われを我わが諸罪しよざいの汚けがれより洗あらひ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 至し仁じんなる神かみの言ことばよ、切せつに祈いのる、爾なんぢに朝あさの祈き禱たうを奉たてまつる者ものの靈たましひを爾なんぢが神かみの光ひかりにて照てらして、爾なんぢ罪つみの暗やみより呼よび出いだす眞まことの神かみを知しらしめ給たまへ。

仁じん慈じなる者ものよ、爾なんぢの神聖しんせいなる煇煌かゞやきを以もつて吾わが靈たましひの慾よく、誘惑者いうわくしやが我わが内うちに播まきたる者ものを醫いやして、我われを其その疾やましき捕執とらはれより脫のがれしめ給たまへ、蓋けだし彼かれは我われを援助たすけなき者ものと見みて哂わらふ。

童貞女どうていぢよよ、アダムは爾なんぢの子この一ひとつの誡いましめに背そむきて遠とほざけられたり。我われ犯罪者はんざいしや及および反はん離り者しやは我わが無む量りやうの罪つみの爲ために如何いかにか泣なかん。

光榮 昔むかしカインは殺人者ひとごろし及および殺弟者おとうところしと爲なりて、神かみより詛のろはれたり。我われ暴ばう虐ぎやく者しや今いま靈たましひを殺ころして耻はぢざる者ものは何なにをか爲なさん。

今も 我われ饕餮たうてつと飽はう食しよくとを以もつて粗そ暴ばうなるイサフに效ならひ、沈湎ちんめんを以もつて靈たましひを汚けがし、詭き譎けつを以もつて我わが生命いのちを穢けがせり。誰たれか我われ慾よくに耽ふける者ものの爲ために哭なかざらん、嗚呼あゝ哀かなしい哉かな。

第六歌頌

イルモス 誘惑いざなひの猛風あらしにて浪なみの立たち揚あがる世よの海うみを觀みて、爾なんぢの穩おだやかなる港みなとに著つきて呼よぶ、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

我わが度ど生せいは淫いん慾よくに染そみ、我わが靈たましひは汚けがらはし、生命いのちは全まつたく不ふ當たうなり、我わが肉體にくたいは甚はなはだしく惡あくに汚けがれたり。祈いのる、童貞女どうていぢよよ、速すみやかに我われを援たすけ給たまへ。

仁じん慈じなる者ものよ、終をはりは近ちかづけるに、我われ之これに勝たへず、良りやう心しんは我われを攻せめ、惡あしき行おこなひと度ど生せいの放蕩はうたうとは我わが前まへに在あり。潔いさぎよき者ものよ、我われ爾なんぢの子この審判しんぱんを畏おそる。

光榮 我わが肉慾にくよくの燃もゆるに因よりて、畏おそるべき熄きえざる火ひの河かはと眠ねむらざる蟲むしとは我われを待まつ。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて是これ等らを滅けし給たまへ。

今も 仁じん慈じなる者ものよ、我われ今いま戰をのゝきて、凶きよう惡あくなる捕執とらはれを苦くるしむ。蓋けだし誘惑者いうわくしやは終をはりの先さきに我われを殺ころさんと欲ほつして、我われを俘囚とりこと爲なして、諸德しよとくを褫はぎたり。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第六調。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは爾なんぢの人人ひとびとの恃賴たのみと轉達てんたつと避所かくれがなり、蓋けだし世せ界かいの救主きうしゆは潔いさぎよく爾なんぢより生うまれて爾なんぢを賴たのむ者ものを救すくひ給たまふ。爾なんぢ曾かつて爾なんぢの子この十じふ字架じかの側かたはらに哭なきて立たちし如ごとく、今いまも彼かれの前まへに轉達てんたつして、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものを滅亾ほろびより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

第七歌頌

イルモス 天てん使しは敬虔けいけんなる少者せうしやの爲ために爐ゐろりに露つゆを出いださしめ、ハルデヤ人じんを燒やく神かみの命めいは苦くるしむる者ものに呼よばしめたり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

凶きよう惡者あくしやは七しちに七倍しちばいして我わが諸慾しよよくの焰ほのほを燃もやし、淫いん慾よくを以もつて常つねに我わが心こゝろを殺ころす。神かみの母はゝよ、我わが淚なみだの流ながれを以もつて之これを滅けして、我われを救すくひ給たまへ。

仁じん慈じなる女宰ぢよさいよ、諸罪しよざいの泥ひぢに汚けがさるる我われを棄すつる毋なかれ、蓋けだし至いたりて凶きよう惡あくなる敵てきは我われを失望しつばうの中うちに見みて哂わらふ。祈いのる、親みづから爾なんぢの權能けんのうの手てを以もつて我われを起おこし給たまへ。

光榮 我わが慾よくに耽ふけりたる感覺かんかくなき靈たましひよ、審判しんぱんは畏おそるべく、苦くるしみは劇はげしくして終をはりなし。然しかれども今いま爾なんぢの審判者しんぱんしや及および神かみの母はゝの前まへに俯ふ伏ふくして、自みづから望のぞみを失うしなふ勿なかれ。

今も 我われ慾よくに耽ふけりたる者ものは無む量りやうの惡あくに昧くらまされて、心こゝろと智慧ちゑと體からだとを汚けがせり。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの光ひかりの煇煌かゞやきを以もつて我われを導みちびきて、速すみやかに無む慾よくの甘樂かんらくに入いれ給たまへ。

第八歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢは敬虔けいけんなる者ものの爲ために焰ほのほより露つゆを注そゝぎ、義ぎ人じんの祭まつりの爲ために水みづより火ひを出いだせり、爾なんぢは一ひとつの望のぞみにて萬ばん事じを行おこなひ給たまへばなり、我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

聖三者せいさんしやの一いち位ゐなる神かみを生うみて手てに抱いだきし童貞女どうていぢよ母はゝよ、我わが慾よくの燃もゆる爐ゐろりを滅けして、淚なみだの流ながれを以もつて我わが靈たましひを洗あらひ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ死しの來きたることと彼かの審判しんぱんとを今いま畏おそるれども、惡あしきことを行おこなふを聊いさゝかも耻はぢず。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて終をはりの先さきに我われを援たすけ給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、我われに絕たえざる歎息たんそくを賜たまひ、淚なみだの雨あめを與あたへよ、我わが多おほくの罪過ざいくわと醫いやし難がたき傷きずとを洗あらひて、永遠えいゑんの生命いのちを得えん爲ためなり。

今も 女宰ぢよさいよ、我わが惡あくの多おほきを爾なんぢの前まへに痛告つうこくせり、世よには我われの如ごとく神かみ爾なんぢの子こ及および主しゆを怒いからせし者もの一人いちにんもなし。童貞女どうていぢよよ、速すみやかに彼かれを我わが爲ために慈じ憐れんに轉てんぜしめ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 天てん使しの品ひん位ゐすら見みるを得えざる神かみは、人ひと見みる能あたはず、唯たゞ爾なんぢ至し淨じやうの者ものに藉よりて人體じんたいを取とりし言ことばは人人ひとびとに現あらはれ給たまへり。我われ等ら彼かれを崇あがめて、天軍てんぐんと偕ともに爾なんぢを讚ほめ揚あぐ。

至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、視みよ、我われ多おほくの畏おそれと愛あいとを以もつて爾なんぢに來きたる、我われ爾なんぢの僕ぼくは爾なんぢの祈き禱たうの力ちからを知しればなり。蓋けだし實じつに母はゝの祈き禱たうは輙たやすく子こを慈じ憐れんに傾かたぶく。

潔いさぎよき者ものよ、天てん使し首しゆの品ひん位ゐと我わが造成主ざうせいしゆの衆おほくの天軍てんぐんと、使徒しと及および預よ言者げんしやの會くわい、致ち命者めいしや、克肖者こくせうしや及および神品しんぴん致ち命者めいしやと偕ともに我われ等らの爲ために神かみに祈き禱たうを捧さゝげ給たまへ。

光榮 潔けつ淨じやうにして仁じん慈じなる者ものよ、願ねがはくは我われ今いまも、我わが靈たましひの世よを出いづる時ときも爾なんぢの援助たすけを得えん。至いたりて無む玷てんなる者ものよ、速すみやかに我われを惡あく鬼きの苛虐くるしめより脫のがれしめて、我わが彼かれ等らに付わたされんことを許ゆるす毋なかれ。

今も 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われは洪恩こうおんなる審判者しんぱんしやにして仁愛じんあいなる爾なんぢの子こを待まつ、我われを棄すつる勿なかれ。至いたりて無む玷てんなる者ものよ、彼かれを我わが爲ために寬くわん容ようなる者ものと爲なして、審判しんぱんの時ときに我われを其その至し淨じやうなる寶はう座ざの右みぎに立たてんことを祈いのり給たまへ、我われ爾なんぢを恃たのめばなり。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第六調

水曜日

 水曜日の早課

第一の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第六調。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかは聖せいにせられたり、蓋けだし此これに緣よりて諸罪しよざいを病やむ者ものに醫治いやしは行おこなはる。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくす、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

ハリストス主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかの木きの樹たてられしのみにして、死しの基もとゐは動うごけり、蓋けだし地ぢ獄ごくは貪むさぼりて呑のみし者ものを戰をのゝきて放はなてり。聖せいなる者ものよ、爾なんぢは其その爲なしし救すくひを我われ等らに顯あらはし給たまへり、故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚揚さんやうす。神かみの子こよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは爾なんぢの人人ひとびとの恃賴たのみと轉達てんたつと避所かくれがなり、蓋けだし實じつに世せ界かいの救主きうしゆは爾なんぢより生うまれて、爾なんぢを賴たのむ者ものを救すくひ給たまふ。爾なんぢ曾かつて爾なんぢの子こ及および神かみの十じふ字架じかの側かたはらに哭なきて立たちし如ごとく、今いまも彼かれの前まへに轉達てんたつして、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものを滅亾ほろびより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

第二の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第六調。

獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆよ、今日こんにち預よ言者げんしやの言ことばは應かなへり。蓋けだし視みよ、我われ等らは爾なんぢの足あしの立たちし處ところに伏拜ふくはいし、木きに緣よる救すくひを嘗なめて、生しやう神女しんぢよの祈き禱たうを以もつて罪つみに緣よる苦くるしみを釋とかるるを得えたり。

句 神かみ我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

主しゆよ、イウデヤ人じんは爾なんぢ萬ばん衆しゆうの生命いのちを死しに定さだめたり、杖つゑに由よりて紅海こうかいを濟わたりし者ものは爾なんぢを十じふ字架じかに釘ていせり、磐いはより蜜みつを吸すひし者ものは爾なんぢに膽いを進すゝめたり。然しかれども爾なんぢは甘あまんじて忍しのび給たまへり、我われ等らを敵てきの奴ど隷れいより釋とかん爲ためなり。ハリストス我わが神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致ち命者めいしやが審判しんぱん座ざの前まへに顯あらはしし勇敢ゆうかんと其その多た種しゆの劇はげしき苦く難なんの忍耐にんたいとは苛虐者くるしめびと及および諸しよ王わうを驚おどろかせり。其時そのとき無む形けいの品ひん位ゐは立たちて、彼かれ等らの爲ために備そなへられたる勝しよう利りの榮えい冠くわんを執とれり。睿えい智ち者しやはハリストスを承うけ認とむるを以もつて敵てきを斃たふせり。彼かれ等らを堅かためし主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 婚姻こんいんに與あづからざる母はゝは十じふ字架じかの側かたはらに立たちて、彼かれより種たねなく生うまれし者ものに呼よべり、嗚呼あゝ子こよ、劍つるぎは我わが心こゝろを貫つらぬけり。萬ばん衆しゆうは爾なんぢ造成主ざうせいしゆ及および神かみの前まへに戰をのゝけるに、我われ如何いかんぞ爾なんぢが木きに懸かけらるるを見みるに忍しのびん。恒忍ごうにんなる主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

第三の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第六調。

ハリストスよ、爾なんぢが甘あまんじて我われ等らの爲ために十じふ字架じかに釘ていせられしを見みて、造物ざうぶつは畏おそれに因よりて戰をのゝき、日ひは其その光ひかりを晦くらまし、磐いはは崩くづれ、殿でんの神聖しんせいなる幕まくは裂さけたり、無む慙ざんにして不ふ法はふなるエウレイ人じんを罪つみせん爲ためなり。

木きはエデムに於おいて原げん祖そに滅亾ほろびを致いたし、十じふ字架じかの木きは髑髏されかうべの處ところに於おいて生命いのちを生しやうぜり。蓋けだしハリストスの釘ていせられしに由よりて、惡敵あくてきの讎怨しうえんは滅ほろぼされ、アダムは憐あはれみを蒙かうむり、樂園らくゑんを獲えて呼よぶ、嗚呼あゝ祝しゆく福ふくせられし木きや。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 ハリストスよ、爾なんぢを生うみし永貞えいてい童女どうぢよは爾なんぢが我われ等らの爲ために十じふ字架じかに擧あげられしを見みる時とき、哀かなしみの劍つるぎを以もつて己おのれの心こゝろと靈たましひとを刺さして、母はゝとして痛いたく哭なけり。彼かれの祈き禱たうに由よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

尊貴にして生命を施す十字架の規程カノン、其冠詞は、救世主よ、爾は木に釘せられて我を救ふ。イオシフの作。第六調。

第一歌頌

イルモス イズライリは陸くがの如ごとく淵ふちを蹈ふみ渡わたり、追おひ詰つめしファラオンの溺おぼるるを見みて呼よべり、凱歌かちうたを神かみに奉たてまつらん。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは十じふ字架じかに手てを舒のべ、退しりぞけられたる人人ひとびとを抱いだきて、爾なんぢの父ちゝに攜たづさへ給たまへり、其その至し愛あいなる一性いつせいの子こなればなり。

言ことばよ、爾なんぢは羔こひつじの如ごとく十じふ字架じかに擧あげられて、爾なんぢの迷まよひし羊ひつじを尋たづね、之これを獲えて、迷まよはざる者ものに加くはへ給たまへり。イイススよ、光くわう榮えいは爾なんぢの權能けんのうに歸きす。

致命者讚詞 尊榮そんえいなる受難者じゆなんしや、永福えいふくなる致ち命者めいしやは上うへなる生命いのちを慕したひて、多おほくの苦くるしみと諸もろもろの禍わざはひとを忍しのびて、地ち上じやうに殺ころされたり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは義ぎなるハリストスの爲ために不義ふぎなる審判所しんぱんじよに於おいて凡およその不義ふぎなる審判しんぱん、爾なんぢ等らを義ぎとする者ものを神かみの助たすけに因よりて忍しのび給たまへり。

生神女讚詞 主宰しゆさいよ、爾なんぢはアダムより出いでたる衆しゆう人じんに苦くるしみなきを得えしめん爲ために十じふ字架じかに苦くるしみを忍しのび給たまふ、地ちは之これを見みて震ふるひ、女宰ぢよさいは母はゝとして哭なきて呼よべり。

又至聖なる生神女の規程カノン、第六調。

第一歌頌

イルモス同上

至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、天てんを張はり地ちを基もとづけたる主しゆは爾なんぢより身みと偕ともに出いでて、爾なんぢを我われ等らの爲ために地ち上じやうの天てんと現あらはし給たまへり。

我われ等らの爲ために人ひとと爲なりし神かみを生うみたる潔いさぎよき者ものよ、彼かれに祈いのりて、多おほく彼かれの前まへに罪つみを犯おかしし我われ等らを審判しんぱんの日ひに於おいて憐あはれまんことを求もとめ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢの聖せいなる腹はらより輝かゞやき出いでたる日ひは至いたりて光くわう明めいなる光くわう線せんにて全ぜん地ちを輝かゞやかす、故ゆゑに我われ等ら照てらされて、爾なんぢ神かみの母はゝを尊たふとむ。

女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我わが靈たましひを昧くらます不ふ當たうなる念おもひの暗やみを、爾なんぢより身みを取とりし主しゆの聖せいなる誡いましめの光ひかりにて散さんじ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢが信者しんじやの角つのを高たかうし、我われ等らを爾なんぢが承認うけとめの石いしに堅かためし仁じん慈じの主しゆ、吾わが神かみよ、爾なんぢと均ひとしく聖せいなるはなし。

十じふ字架じかが地ち上じやうに樹たてられしに、迷まよひは墜おち、造物ざうぶつは動うごき、敵てきの攻擊こうげきに動うごかさるる心こゝろは信しんを以もつて堅かためらる。

狂くるひたる不義ふぎの人人ひとびとは爾なんぢ獨ひとり義ぎなる主しゆ、地ち上じやうの者ものを義ぎと爲なして、詭き譎者けつしやの不義ふぎなる手てより引ひき出いだす者ものを死しに定さだめたり。

致命者讚詞 詭き譎者けつしやは其その凶きよう惡あくを盡つくして、聖せいなる者ものと戰たゝかひたれども、勝かたれて、彼かれ等らが服ふく從じゆうせずして、神かみの光明くわうみやうに與あづかる者ものと爲なりしを見みたり。

致命者讚詞 ハリストスの受難者じゆなんしやの肉體にくたいの華くわ美びは甚はなはだしき傷創きずに由よりて變へんじたれども、靈たましひの光くわう明めいは聖神せいしんの行動かうどうに由よりて更さらに輝かゞやけり。

生神女讚詞 子こよ、我われ爾なんぢを生うみし時とき、悉ことごとくの人ひとの子こより美うるはしき者ものなりと知しれり、ハリストスよ、如何いかんぞ今いま十じふ字架じかに釘ていせられて美うるはしきを失うしなひたると、童貞女どうていぢよは哭なきて言いへり。

又 イルモス同上

萬物ばんぶつを保たもつハリストスを手てに保たもてる潔いさぎよき神かみの母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを歌うたふ者ものを凶きよう惡あくなる惡あく魔まの手て、及および凡およその苦惱なやみより脫のがれしめ給たまへ。

至いたりて無む玷てんなる女宰ぢよさい童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らを惡あく鬼きの攻擊こうげき、不義ふぎなる人人ひとびと、凡およその誘惑いざなひ及および有いう害がいなる諸しよ病びやうより脫のがれしめ給たまへ。

時ときに由よらざる言ことばを時ときの中うちに性せいに超こえて身みにて生うみし後のち童貞女どうていぢよに止とゞまりし少女せうぢよよ、視みよ、萬世ばんせい爾なんぢを讚さん美びす。

人ひとを愛あいする神かみを生うみし童貞女どうていぢよよ、我われ不ふ當たうなる爾なんぢの僕ぼくを彼かれの畏おそるべき降臨かうりんの時ときに凡およその定罪ていざいより救すくひ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 尊たふとき敎けう會くわいは淨きよき心こゝろより主しゆの爲ために祝いはひ、神かみに適かなひて呼よび歌うたふ、ハリストスは吾わが力ちからと神かみと主しゆなり。

暮くれざる日ひたるハリストスよ、日ひは爾なんぢが木きに釘ていせられしを見みて、畏おそれに由よりて晦くらみたるに、萬物ばんぶつは暗昧くらやみの迷まよひより解とかれて、爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

救世主きうせいしゆよ、法はふに戾もとる人人ひとびとは爾なんぢの手てを縛しばりしに、凡およその解とき難がたき縲絏なはめに縛しばられたる者ものは皆みな解とかれ、敵てきは縛しばられ、迷まよひは除のぞかれたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは血ちの流ながれを以もつて無知むちにして甚はなはだしく誇ほこる迫害者はくがいしやファラオンを溺おぼらし、樂たのしみて福ふくの地ちに移うつり給たまへり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは神しん゜の翼つばさを以もつて敵てきの網あみを飛とび踰こえ、喜よろこびて本原ほんげんの善ぜんと、生命いのちと、暮くれざる光ひかりとのある處ところに升のぼり給たまへり。

生神女讚詞 女宰ぢよさいよ、爾なんぢより身みを取とりし者ものの釘ていせられ、我われ等らの爲ために其その至し淨じやうなる脅わきを戈ほこにて刺ささるるを見みる時とき、爾なんぢは苦くるしみの劍つるぎを以もつて傷きずつけられたり。

又 イルモス同上

我われ等ら皆みな神かみの殿でんたる聖せいなる童貞女どうていぢよを歌うたひて、欣よろこばしく讚さん美びせん、彼かれに由よりて我われ等ら罪過ざいくわより解とかれて、神成しんせいせられたればなり。

我われ等らは童貞女どうていぢよを神かみに入いる門もん、神聖しんせいなる樂園らくゑん、成聖せいせいの靈妙れいめうなる處ところ、イアコフの榮さかえとして讚さん美びす。

純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいよ、ハリストスは、信しんと愛あいとを以もつて淨きよき心こゝろより爾なんぢ眞まことの生しやう神女しんぢよを呼よぶ者ものの爲ために、爾なんぢを穩靜をんせいなる港みなとと爲なし給たまへり。

神かみの至いたりて淨きよくして廣ひろき居所すまひと爲なりし至し淨じやうなるマリヤよ、我わが靈たましひの不ふ潔けつ不ふ淨じやうを潔きよめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 至し仁じんなる神かみの言ことばよ、切せつに祈いのる、爾なんぢに朝あさの祈き禱たうを奉たてまつる者ものの靈たましひを爾なんぢが神かみの光ひかりにて照てらして、爾なんぢ罪つみの暗やみより呼よび出いだす眞まことの神かみを知しらしめ給たまへ。

雲くもを以もつて天てんに衣きする主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは裸ら體たいにして甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせられて、我わが惡あくの裸ら體たいを覆おほひ、我われを照てらして、不ふ朽きうの衣い服ふくを衣きせ給たまへり。

眞まことの葡ぶ萄だうたるハリストスは十じふ字架じかに釘ていせられて、我わが靈たましひの爲ために實じつに甘かん味みなる者ものとして、酒さけを滴したゝらせて、敵てきの誘惑いざなひの凡およその醉ゑひを醒さまし給たまへり。

致命者讚詞 聖せいにせられし傷きずにて妝よそほはれ、榮えい冠くわんにて飾かざられたるハリストスの受難者じゆなんしやは身みを以もつて苦くるしみを受うけたる神かみの前まへに立たちて、我われ等らの諸罪しよざいの赦ゆるしを求もとめ給たまふ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやは彼處かしこの光くわう榮えいと、生命いのちと、眞まことの樂たのしみとを仰あふぎ、主宰しゆさいの苦くるしみに堅かためられて、諸もろもろの苦く難なんの颶ぐ風ふうを忍しのび給たまへり。

生神女讚詞 ハリストスよ、我われは爾なんぢ獨ひとり萬有ばんいうに容いれられざる主しゆを腹はらに容いれて、產さん苦くなく生うみたり、今いまは爾なんぢの釘ていせらるるを見みて苦くるしむと、至し淨じやうなる童貞女どうていぢよは哭なきて言いへり。

又 イルモス同上

至し淨じやうなる者ものよ、言ことばを以もつて萬物ばんぶつを造つくり、睿えい智ちなる攝せつ理りを以もつて之これを宰つかさどる獨一どくいつの主しゆは、親みづから欲ほつする如ごとく、慈じ憐れんに因よりて爾なんぢより造つくられて、言いひ難がたく肉體にくたいと爲なり給たまへり。

視みよ、潔いさぎよき童貞女どうていぢよは、預よ言者げんしやの陳のぶる如ごとく、萬有ばんいうの神かみ主宰しゆさい及および主しゆを其その胎内たいないに孕はらみて、言いひ難がたく生うみ、生うみて後のち不ふ朽きうなる童貞女どうていぢよに止とゞまり給たまへり。

マリヤ、萬ばん衆しゆうの女宰ぢよさいよ、祈いのる、慈じ憐れんの者ものとして、我われを畏おそるべき捕執とらはれより脫のがれしめ、爾なんぢより身みを取とりし主しゆの戈ほこを以もつて我わが罪つみの書券かきつけを裂さき給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの轉達てんたつと祈き禱たうとを以もつて我わが罪つみの桎梏かせを壞やぶり給たまへ、爾なんぢは信しんを以もつて爾なんぢの神聖しんせいなる帲幪おほひに趨はしり附つく失望しつばうの者ものの爲ために恃賴たのみなればなり。

第六歌頌

イルモス 誘惑いざなひの猛風あらしにて浪なみの立たち揚あがる世よの海うみを觀みて、爾なんぢの穩おだやかなる港みなとに著つきて呼よぶ、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢは棘いばらを冠かうむりて、諸慾しよよくの棘いばらを斷たち、戈ほこにて脅わきを刺さされて、我われ等らを死し者しやと爲なしし至いたりて惡謀あくぼうなる蛇へびを殺ころし給たまへり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは十じふ字架じかに擧あげられて、敵てきの力ちからを斃たふし、頰ほゝを批うたれて、我われを苦くるしき奴ど隷れいより解とき給たまへり。洪恩こうおんなる主しゆよ、我われ爾なんぢの恒忍ごうにんに伏拜ふくはいす。

致命者讚詞 十じふ字架じかに護まもらるる受難者じゆなんしやは凶きよう惡あくなる誘惑いざなひの墻かきを壞やぶり、天てん上じやうの城邑まちに移うつりて、勝しよう利りの榮えい冠くわんにて飾かざられたり、故ゆゑに讚さん美びせらる。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは至し榮えいにして自みづから苦くるしみの高たかきに登のぼり、惡敵あくてきの驕おごりを地ちに倒たふして、上うへより榮えい冠くわんを受うけたり。

生神女讚詞 父ちゝの煇煌かゞやきたる主しゆよ、萬有ばんいうを照てらして暗昧くらやみの魁かしらを斃たふしたるに、如何いかんぞ十じふ字架じかに擧あげられたると、至し淨じやうなる女宰ぢよさいは母はゝとして哭なきて言いへり。

又 イルモス同上

火ひたるイイススは爾なんぢの腹はらを焚やかずして、身みにて爾なんぢより出いで給たまへり、潔いさぎよき者ものよ、信しんを以もつて爾なんぢを歌か頌しようする者ものを火ひ及および凡およその苦くるしみより救すくはんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われ爾なんぢ聖せい天てん使等しらの飾かざりなる者ものを歌うたひて祈いのる、我われより惡あく鬼きの勸すゝむる忌いまはしき想像さうざうを斥しりぞけて、吾わが心こゝろを安靜あんせいに護まもり給たまへ。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、父ちゝの獨生どくせい子しは爾なんぢの胎内たいないに於おいて種たねなく形體けいたいに合あはせられて、二に性せい一いち位ゐにして、爾なんぢの尊たふとき童貞どうていを害そこなひなく護まもりて、爾なんぢより出いで給たまへり。

仁じん慈じなる者ものよ、我わが罪つみの多おほきを爾なんぢの慈じ憐れんの多おほきを以もつて潔きよめて、爾なんぢに趨はしり附つきて、忠ちゆう信しんに爾なんぢの慈じ憐れんを求もとむる爾なんぢの僕ぼくを救すくひ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 天てん使しは敬虔けいけんなる少者せうしやの爲ために爐ゐろりに露つゆを出いださしめ、ハルデヤ人じんを燒やく神かみの命めいは苦くるしむる者ものに呼よばしめたり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

獨ひとり全能ぜんのうなる主しゆよ、爾なんぢは頰ほゝを批うたれて、毒蛇どくじやの惡計あくけいを制せいし、木きに懸かけられて、衆しゆうを照てらして呼よばしむ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

第一だいいちの人ひとアダムは木きの果みを食くらひて死しを獲えたり、第だい二にの人ひとハリストスは木きの上うへに殺ころされて、惡謀あくぼうの逞たくましき敵てきを殺ころして、不死ふしの生命いのちを賜たまふ。

致命者讚詞 苦くるしみに遇あはせられたる致ち命者めいしやは苦くるしみに由よりて主しゆに升のぼせられ、信しんの堅かたき石いしの上うへに立たち、神かみの指麾しきを以もつて敵てきの凡およその惡計あくけいを空むなしくし給たまへり。

致命者讚詞 苦くるしみに照てらされたる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは日ひよりも明あきらかに輝かゞやき、幽暗くらやみの凡およその權柄けんぺいを破やぶりて、ハリストスに歌うたふ、吾わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 神性しんせいの變易へんえきなき主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに懸かけられて萬物ばんぶつを變へんじ給たまへりと、童貞女どうていぢよは其その子こに言いひ、且かつ此これ等らを見みて泣なきて、主しゆの多おほくの恒忍ごうにんを奇きとせり。

又 イルモス同上

至し淨じやうなる者ものよ、限かぎられぬ者ものとして父ちゝの懷ふところに坐ざする主しゆは今いま爾なんぢより形かたちを衣き、限かぎられて爾なんぢの懷ふところに坐ざし給たまふ、蓋けだしアダムを救すくはん爲ために新あらたなるアダムと爲なり給たまへり。

純じゆん潔けつなる者ものよ、我わが仁愛じんあいなる神かみに絕たえず祈いのりて、我われ等らが諸罪しよざいの全まつたき赦ゆるしを受うけて、天てん上じやうに彼かれを愛あいする者ものの爲ために備そなへられたる福ふくを獲えんことを求もとめ給たまへ。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われ等らは爾なんぢ祝しゆく讚さんせらるる主しゆを生うみし者ものを祝しゆく讚さんす。彼かれは神聖しんせいなる祝しゆく福ふくを人ひとの性せいに冠かうむらせて、其その先さきに古ふるびたるを新あらたなる者ものと爲なし給たまふ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ等ら爾なんぢを救すくひの港みなととして獲えて、暴風あらしより救すくはれ、爾なんぢに於おける恃賴たのみを靈たましひの固かためと爲なして呼よぶ、身みにて神かみを生うみし者ものは崇あがめ讚ほめらる。

第八歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢは敬虔けいけんなる者ものの爲ために焰ほのほより露つゆを注そゝぎ、義ぎ人じんの祭まつりの爲ために水みづより火ひを出いだせり、爾なんぢは一ひとつの望のぞみにて萬ばん事じを行おこなひ給たまへばなり、我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

至し上じやうなる洪恩こうおんの神かみよ、爾なんぢは心こゝろの謙けん卑ぴを以もつて木きに擧あげられて、至いたりて傲慢がうまんなる蛇へびを卑ひくくし、苦くるしみを以もつて卑ひくくせられたるアダムを升のぼせ給たまへり。

昔むかし苦味にがみを變へんぜし主しゆ、萬ばん衆しゆうの甘味あまみと生命いのち、光ひかりと救すくひなる二に性せい一いち位ゐの主宰しゆさいよ、爾なんぢは木きに擧あげられて、膽いを嘗なめ給たまへり。

致命者讚詞 讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢ等らは膝ひざを偶像ぐうざうの前まへに屈かゞめずして、無む玷てんなる羔こひつじの如ごとく屠ほふられ、凶きよう惡者あくしやの力ちからを滅ほろぼして、ハリストスを世世よよに讚さん頌しようす。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは生せい活くわつの神しん゜の殿でんと現あらはれて、偶像ぐうざうの殿でんを毁こぼち、天てん上じやうの殿でんに擧あげられて、ハリストスを世世よよに讚さん頌しようす。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、イアコフは爾なんぢを、惡あくの深處ふかみに躓つまづきし我われ等らを天てんの高たかきに登のぼす梯かけはしと預よ見けんせり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ潔いさぎよき者ものを世世よよに崇あがめ讚ほむ。

又 イルモス同上

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる祝しゆく福ふくせられたる潔いさぎよき者ものよ、我われ等ら爾なんぢを實じつに生しやう神女しんぢよと承うけ認とめて、天てん使しと偕ともに忠ちゆう信しんに爾なんぢに呼よぶ、慶よろこべ、蓋けだし爾なんぢは獨ひとり地ちに在ある者ものの爲ために歡喜よろこびを生うみ給たまへり。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの先せん祖ぞの神かみに感かんぜられし簫ふえは爾なんぢを預よ象しやうして、至し聖せいなる匱ひつ、身みを取とりし神かみ、我われ等らが世世よよに讚ほめ揚あぐる主しゆを容いるる者ものと爲なせり。

婚姻こんいんに與あづからざる少女せうぢよ、神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者もの、颶ぐ風ふうに遇あふハリスティアニン等らの港みなと及および恃賴たのみよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを患くわん難なん、諸慾しよよく、誘惑いうわく、及および永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢが光くわう榮えいを以もつて萬ばん衆しゆうを審判しんぱんする爲ために來きたらん時とき、我われ罪つみなる者ものを右みぎの羊ひつじに加くはへ給たまへ、爾なんぢの母はゝの祈き禱たうに依よりてなり、我わが爾なんぢを萬世ばんせいに讚榮さんえいせん爲ためなり。

次に生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」。

第九歌頌

イルモス 天てん使しの品ひん位ゐすら見みるを得えざる神かみは、人ひと見みる能あたはず、唯たゞ至し淨じやうの者ものに藉よりて人體じんたいを取とりし言ことばは人人ひとびとに現あらはれ給たまへり。我われ等ら彼かれを崇あがめて、天軍てんぐんと偕ともに爾なんぢを讚ほめ揚あぐ。

時ときと年としとの主宰しゆさい、獨ひとり恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢは地ちの中なかに正午まひるに木きに擧あげられ釘ていせられて、樂園らくゑんの中なかに木きの果みに緣よりて躓つまづきたる原げん祖そを起おこし給たまへり。

十じふ字架じかが樹たてられしに、苦くるしむる者ものは心こゝろに死しの傷きずを受うけ、縛しばられし者ものは朽きう壞くわいより釋とかれ、神かみを知しる知ち識しきは衆しゆう人じんの中うちに植うゑられ、敵てきは空むなしくせられ、萬ばん衆しゆうは歡喜よろこびに滿みてられたり。

致命者讚詞 主しゆの致ち命者めいしやよ、ハリストスが釘ていせられて祭まつりに獻けんぜられし時ときより、地ちは天てんと合あはせられて、爾なんぢ等らの大數たいすうを攜たづさへたり。爾なんぢ等らは無む數すうの劇はげしき苦くるしみを忍しのびて、今いま神かみの奉ほう事じ者しやの大數たいすうと偕ともに耀かゞやき給たまふ。

致命者讚詞 主しゆの致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは無む形けいの光ひかりに照てらされて、位置ゐちに於おいて諸神しよしんと爲なり、冢ちよう子しの居處すまひの中うちに入いれられて永遠えいゑんの光くわう榮えいに滿みてらる。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは職しよくとして爾なんぢ等らを尊たふとむ。

生神女讚詞 恒忍ごうにんなる主宰しゆさいよ、我わが靈妙れいめうに爾なんぢを生うみし時とき、爾なんぢの產うまれは畏おそるべかりき、今いまは造物ざうぶつ爾なんぢが甘あまんじて木きに釘ていせらるるを見みて畏おそれたりと、無む玷てんなる者ものは母はゝとして哭なきて呼よべり。我われ等ら彼かれを崇あがめ讚ほむ。

又 イルモス同上

神かみの子こ、無む原げんなる言ことばは身みを取とりて、童貞女どうていぢよの子こと爲なり、父ちゝの善ぜん旨しと聖神せいしんの行動かうどうとに因よりて、我わが朽くちたる形かたちを全まつたく新あらたにし給たまへり、全能者ぜんのうしやなればなり。

靈たましひよ、起おきて、祈き禱たうと凡およその善ぜんとの爲ために警醒けいせいし、勉勵べんれいを以もつて睡眠ねむりの怠惰おこたりを退しりぞけよ、恒つねに潔いさぎよき神かみの母はゝを警醒けいせいする守しゆ護ご者しやとして有たもてばなり。我われ等ら彼かれを崇あがめ讚ほむ。

純じゆん潔けつなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは信者しんじやの爲ために恃賴たのみと、帲幪おほひと、歡喜よろこびなり。故ゆゑに我われ爾なんぢの慈じ憐れんに祈いのる、多おほくの罪つみと惡あしき思おもひとの暗やみに昧くらまされたる吾わが靈たましひを照てらし給たまへ。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる聖せいなる童貞女どうていぢよよ、我わが爲ために光ひかりの門もんを啓ひらき給たまへ、罪つみの夜よるが我われを蔽おほはざらん爲ためなり。我わが生命いのちを爾なんぢより人體じんたいを取とりし主しゆの聖せいなる誡いましめの穩靜をんせいなる港みなとに向むかはしめ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」。小聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第六調。

ハリストスよ、我われ十じふ字架じかに由よりて恃賴たのみを有たもち、此これに由よりて誇ほこりて呼よぶ、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢを神かみ及および人ひとと承うけ認とめざる者ものの驕おごりを倒たふし給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我われ等らは十じふ字架じかに防ふせぎ護まもられて、敵てきと戰たゝかひて、其その惡謀あくぼうと攻擊こうげきとを畏おそれず。蓋けだし彼かれは傲慢がうまんの者ものにして、木きに釘ていせられしハリストスの力ちからを以もつて空むなしくせられて蹂ふまれたり。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致ち命者めいしやの記き憶おくは主しゆを畏おそるる者ものの爲ために喜悅よろこびなり、蓋けだし彼かれ等らはハリストスの爲ために苦くるしみを忍しのびて、彼かれより榮えい冠くわんを受うけたり。今いまは勇敢いさみを以もつて我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまふ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 無む玷てんなる牝め羊ひつじ、純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいは己おのれの羔こひつじを十じふ字架じかの木きの上うへに覩みて、母はゝとして哭なき、奇きとして呼よべり、甘愛かんあいなる子こよ、此この新あらたにして至し榮えいなる顯見あらはれは何なにぞや、如何いかんぞ恩おんを知しらざる會くわいは爾なんぢをピラトの裁判さいばんに付わたして、萬有ばんいうの生命いのちを死しに定さだむる。言ことばよ、我われ爾なんぢの言いひ難がたき寬くわん容ようを歌か頌しようす。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、及び第一時課、常例の聖詠、其他、幷びに發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 水曜日の聖体礼儀に

水曜日の眞福詞、第六調。

神かみ我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを憶おもひて、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

獨ひとり仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢは甘あまんじて木きに擧あげられて、惡あくの深處ふかみに陷おちいりし者ものを起おこし給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

爾なんぢ義ぎの日ひが木きの上うへに甘あまんじて苦くるしみを受うくるを見みて、地ちは震ふるひ、日ひは晦くらみたり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

致命者讚詞 救世主きうせいしゆの苦くるしみに與あづかりたる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは彼かれと偕ともに神聖しんせいなる光くわう照せうに與あづかりて、共きよう與よに因よりて神成しんせいせられたり。

光榮 聖三者せいさんしやの一いつなる主しゆ、甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせらるるを忍しのびし我わがハリストスよ、我われを罪つみの深處ふかみより上あげ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよ母はゝは十じふ字架じかの側かたはらに立たち、己おのれの子こが甘あまんじて苦くるしみを受うくるを見みて、彼かれを讚さん頌しようせり。

横線 - 『八調経』第六調

 水曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に聖使徒の讚頌スティヒラ、第六調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

神學しんがく師し及および見神者けんしんしやたる門もん徒とよ、爾なんぢ等らは神かみの大おほいなる祕ひ密みつの役者えきしやと爲なれり、醫治いやしの恩おん賜しを受うけて、衆しゆう人じんの諸しよ病びやうを醫いやし給たまふ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

見神者けんしんしや、主しゆの使徒しとよ、爾なんぢ等らは我わが靈たましひの爲ために大おほいなる避所かくれがと帲幪おほひなり、惡あく鬼きを遠とほざくる者ものなり。故ゆゑに我われ等らは常つねに爾なんぢ等らを尊たふとむ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

福ふくたる聖せい使徒しとよ、熱信ねつしんに爾なんぢ等らを讚ほめ揚あぐる者ものを凡およその災禍わざはひと惡あく鬼きの苦惱なやみ、諸罪しよざいと諸慾しよよくより脫のがれしめ給たまへ。

次に月課經の聖人の讚頌スティヒラ。若し月課經なくば、又聖大奇跡者ニコライの讚頌、第六調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

福ふくたる睿えい智ち者しやニコライよ、祈いのる、俯ふ伏ふくする我われを憐あはれみて、我わが靈たましひの目めを照てらし給たまへ、我わが光ひかりを賜たまふ慈じ憐れんなる主しゆを明あきらかに見みん爲ためなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

聖せいニコライ、福ふくたる成聖者せいせいしやよ、我われを惱なやまさんと謀はかる諸敵しよてき及および其害そのがいより我われを脫のがれしめて、血ちを流ながす者ものより我われを救すくひ給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

成聖者せいせいしやよ、我われ等ら信者しんじやは今いま爾なんぢを穩おだやかなる港みなとと壞やぶられぬ墻かき、堅けん固ごなる柱はしらと痛つう悔くわいの門もん、吾わが靈たましひの嚮きやう導だう師し及および守しゆ護ご者しやとして獲えたり。

光榮、今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、凶きよう惡あくなる敵てきは爾なんぢの牧群ぼくぐんを妬ねたみて、常つねに之これと鬪たゝかひて、己おのれの食しよくと爲なさんと欲ほつす。求もとむ、生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢ我われ等らを其害そのがいより救すくひ給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。提綱ポロキメン、「神よ、爾の名を以て我を救ひ」。句、「神よ、我が禱を聽き」。及び「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。

挿句くづけに聖使徒の讚頌スティヒラ、第六調。

主しゆよ、使徒等しとらは或時あるときは網あみを以もつて海うみの深ふかさを試こゝろみ、或時あるときは敎をしへを聽ききて天國てんこくの高たかさを度はかれり、彼かの時ときは機巧たくみを以もつて測はかり難がたき深ふかさを究きはめ、此この時ときは信しんを以もつて形かたどり難がたき爾なんぢの懷ふところに至いたりて、年としに限かぎられざる爾なんぢの子こを世せ界かいに傳つたへたり。彼かれ等ら及および衆しゆう聖人せいじんの祈き禱たうに因よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

ハリストスよ、昔むかし爾なんぢの門もん徒とは舟ふねに颶風はやてに遇あひて呼よべり、夫ふう子しよ、我われ等らを救すくひ給たまへ、殆ほとんど亾ほろぶ。今いまも我われ等ら祈いのりて呼よぶ、仁愛じんあいなる我わが救世主きうせいしゆよ、我われ等らを我わが患くわん難なんより脫のがれしめ給たまへ。
句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかは致ち命者めいしやの爲ために勝かたれぬ武器ぶきと爲なれり、蓋けだし彼かれ等らは己おのれの前まへに死しを見み、來世らいせいの生命いのちを先見せんけんして、爾なんぢに於おける恃賴たのみを以もつて堅かためたれたり。彼かれ等らの禱いのりに由よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 女宰ぢよさいよ、我わが心こゝろの目めを爾なんぢに擧あぐ、我わが微かすかなる歎息たんそくを顧かへりみざる勿なかれ。爾なんぢの子こが世せ界かいを審判しんぱんせん時ときに、我わが爲ために庇蔭おほひ及および扶助者たすけと爲なり給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。及び發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 水曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、其冠詞は、至聖なる者よ、イオアンの涕泣を受け給へ。修道士イオアンの作。第六調。

第一歌頌

イルモス 佑たすけ護まもる者もの顯あらはれて、我わが救すくひと爲なれり、彼かれは吾わが神かみなり、我われ彼かれを讚ほめ揚あげん、彼かれは我わが父ちゝの神かみなり、我われ彼かれを尊たふとみ頌うたはん、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

附唱 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ全まつたく諸慾しよよくに汚けがされて望のぞみを失うしなひたる不ふ當たうなる者ものは如何いかんぞ爾なんぢに就つかん。唯たゞ祈いのる、至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、我われを憐あはれみて、我わが不ふ當たうなる靈たましひを救すくひ給たまへ。

卑微ひびなる靈たましひよ、耻ち辱じよくの深處ふかみより起おきて、熱切ねつせつに獨ひとり潔いさぎよき者ものに呼よべ、純じゆん潔けつ無む玷てんなる少女せうぢよよ、我われを憐あはれみて、諸慾しよよくより救すくひ給たまへ。

光榮 我われ諸慾しよよくの暴風あらしに由よりて罪つみの中うちに溺おぼれたり。潔いさぎよき者ものよ、今いま我われに援助たすけの手てを伸のべて、諸慾しよよくの耻ち辱じよくより脫のがれしめ給たまへ、我わが常つねに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

今も 神かみの母はゝよ、全まつたく我われを汚けがしし罪つみの烈はげしき暴風あらしより我われを救すくひ給たまへ。我われ爾なんぢに趨はしり附つく、今いま我わが諸罪しよざいの重おもきを輕かろくし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢの誡いましめの石いしに我わが動うごける心こゝろを固かため給たまへ、爾なんぢ獨ひとり聖せいにして主しゆなればなり。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われ耻はづべき惡あく慾よくに由よりて老おいたる者ものを少わかく爲なして、諸罪しよざいの縲絏なはめを釋とき給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、我われ熱心ねつしんに爾なんぢに趨はしり附つく者ものを罪つみの塵ちり及および泥ひぢより潔きよめて、神かみの殿でんと爲なし給たまへ。

光榮 不ふ當たうなる靈たましひよ、煩悶もだえの眠ねむりより起おきて、獨ひとり爾なんぢを救すくふ少女せうぢよ、神かみの聘女よめに目めを注そゝげ。

今も 女宰ぢよさいよ、我われ望のぞみを失うしなひ、悲かなしみて爾なんぢに來きたり、爾なんぢの熱切ねつせつなる祈き禱たうに趨はしり附つく、潔いさぎよき者ものよ、我われ爾なんぢの僕ぼくを救すくひ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、預よ言者げんしやは爾なんぢの降臨かうりんの事ことを聞きき、爾なんぢが童貞女どうていぢよより生うまれ、人人ひとびとに顯あらはれんと欲ほつするを懼おそれて曰いへり、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

至いたりて無む玷てんなる神かみの母はゝよ、我わが言ことばと行おこなひとは爾なんぢの子この義ぎなる審判しんぱんを受うけん、願ねがはくは其時そのとき我われ爾なんぢを凡およその苦くるしみより我われを脫のがれしむる避所かくれが及および權能けんのうなる保護ほごとして獲えん。

我わが生いのちは汚けがらはし、我われ罪つみに褻なれ、慾よくに耽ふけりたり。潔いさぎよき者ものよ、我われを諸罪しよざいの汚けがれより潔きよめて、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて仁じん慈じなる神かみの前まへに我われを雪ゆきの如ごとく白しろく爲なし給たまへ。

光榮 我われ諸罪しよざいの縲絏なはめに全まつたく縛しばられて、痛つう悔くわいの途みちに向むかふ能あたはず。純じゆん潔けつなる者ものよ、我われに手てを伸のべて、我わが足あしを救すくひの途みちに向むかはしめ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを劇はげしき苦くるしみ、外そとの暗やみ、及および「ゲエンナ」より脫のがれしめ給たまへ、爾なんぢは獨一どくいつ至し仁じんなる主しゆを生うみし者ものとして、勇敢いさみと能力ちからとを有たもち給たまへばなり。

第五歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、祈いのる、夜よより寤さむる者ものを照てらし、我われをも爾なんぢの誡いましめに導みちびき、救世主きうせいしゆよ、我われに爾なんぢの旨むねを行おこなふを訓をしへ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、審判しんぱんの日ひに現あらはれて、我われを護まもりて、苦くるしみ及および火ひより脫のがれしめ給たまへ、我わが救すくはれて、爾なんぢの勝かたれぬ恩おん寵ちようを歌うたはん爲ためなり。

女宰ぢよさいよ、敵てきは我わが爾なんぢの帲幪おほひより離はなれたるを窺うかゞひ、吾わが靈たましひを諸罪しよざいの深處ふかみに墜おとして、我われを見みて哂わらふ。祈いのる、我われを援たすけ給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつ無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢに祈いのる、我わが不ふ當たうにして多た慾よくなる靈たましひの起おくるを致いたして、多おほくの罪つみの重任おもにを是これより卸おろし給たまへ。

今も 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われ不ふ當たうの者ものは不ふ潔けつ不ふ淨じやうなる口くちより爾なんぢに禱いのりを奉たてまつりて、爾なんぢに求もとむ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを宥なだめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ心こゝろを盡つくして仁じん慈じなる神かみに籲よべり、彼かれは我わが最いと深ふかき地ぢ獄ごくより呼よぶを聆きき、我わが生命いのちを淪滅ほろびより援たすけ給たまへり。

主宰しゆさいハリストスよ、我われ放蕩はうたうにして至いたりて不ふ當たうなる者ものを容いれて、爾なんぢを生うみし童貞女どうていぢよの祈き禱たうに由よりて、苦くるしみより救すくひ、左ひだりの者ものの分ぶんより脫のがれしめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、暗くらき地ぢ獄ごくを畏おそるる畏おそれは我われを圍かこみ、山羊やぎの分ぶんは我わが心こゝろを擾みだす。至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢに祈いのる、我われを是これより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我わが肉にく慾よくを殺ころし、我わが至いたりて不ふ當たうなる靈たましひを活いかして、我われを直なほき途みちに向むかはしめ給たまへ。

今も 我われ無知むちなる者ものは僕ぼくたる禱いのりを爾なんぢに奉たてまつりて、爾なんぢの至いたりて深ふかき慈じ憐れんに趨はしり附つく。潔いさぎよき者ものよ、耻はぢを蒙かうむりし者ものとして我われを還かへす勿なかれ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第六調。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われ心こゝろの底そこより爾なんぢに歎息たんそくを奉たてまつりて、爾なんぢの慈じ憐れんなる轉達てんたつを求もとむ、獨ひとり祝しゆく讚さんせらるる者ものよ、我わが多た慾よくの靈たましひを憐あはれみて、大仁だいじん慈じなる神かみに我われを定罪ていざい及および燃もゆる火ひの池いけより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

第七歌頌

イルモス 列れつ祖その神かみよ、我われ等ら罪つみを犯おかし、不ふ法はふを行おこなひ、不義ふぎを爾なんぢの前まへに爲なし、爾なんぢが我われ等らに誡いましめしことを守まもらざりき、行おこなはざりき、然しかれども終をはりに至いたるまで我われ等らを棄すつる毋なかれ。

我われは爾なんぢ童貞女どうていぢよ母はゝを慈じ憐れんの者もの、善ぜんを愛あいする者もの、純じゆん潔けつなる者ものと知しりて、不ふ當たうにして爾なんぢに趨はしり附つく。祈いのる、至いたりて無む玷てんなる者ものよ、耻はぢを蒙かうむりし者ものとして我われを爾なんぢより退しりぞくる勿なかれ。

鳴呼あゝ多た慾よくにして不ふ當たうなる靈たましひよ、目めを覺さまして起おきて、感かん傷しやうして膺むねを拊うち、淚なみだの流ながれを注そゝげ、ハリストス神かみの慈じ憐れんなる母はゝが爾なんぢ不ふ當たうの者ものを憐あはれまん爲ためなり。

光榮 我われ曩さきに神聖しんせいなる洗禮せんれいに由よりて神かみの殿でんと爲なりしに、不ふ當たうにして全まつたく己おのれを汚けがし、甚はなはだしき墮だ落らくに陷おちいりて伏ふす。至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよ、失望しつばうせし者ものの恃賴たのみよ、祈いのる、爾なんぢ我われを起おこし給たまへ。

今も 深ふかき雲くもは我わが至いたりて不ふ當たうなる心こゝろを圍かこみ、暗昧くらやみは我わが慾よくの靈たましひを蔽おほへり。神かみの聘女よめよ、痛つう悔くわいの光くわう線せんを以もつて我われを照てらし給たまへ。我わが爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

第八歌頌

イルモス 凡およそ呼吸いきある者ものと造物ざうぶつは、天軍てんぐんの讚榮さんえいし、ヘルワィムとセラフィムの戰をのゝく者ものを歌うたひ、崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

燃もゆる火ひの河かはは我われを嚇おどし、甚はなはだしき暗やみは我われを震ふるはせ、蟲むしと切齒はがみとは我われを驚おどろかす。童貞女どうていぢよよ、願ねがはくは其時そのとき我われ爾なんぢを權けん力りよくある保護ほご者しやとして獲えん。

主しゆよ、願ねがはくは我われ火ひの燃料ぜんれうと爲ならざらん、願ねがはくは爾なんぢの恐喝おどしの聲こゑを聞きかざらん、爾なんぢの潔いさぎよき母はゝが爾なんぢに祈いのればなり。彼かれの祈き禱たうに因よりて我われを憐あはれみ給たまへ、我われ爾なんぢに呼よぶ。

光榮 ハリストスよ、我われに爾なんぢの慈じ憐れんなる聲こゑを聞きくを得えしめ、選えらばれたる者ものと偕ともに立たつを賜たまへ。願ねがはくは悲かなしみの處ところは我われを受うけざらん、生しやう神女しんぢよが之これを爾なんぢに祈いのればなり。

今も 潔いさぎよき者ものよ、我われに今いま淚なみだの流ながれを遣つかはし、我われの衷うちに靈たましひの底そこよりする歎息たんそくを起おこして、常つねに爾なんぢの帲幪おほひに俯ふ伏ふくせしめ給たまへ、我わが爾なんぢの祈き禱たうに因よりて罪つみの釋とかるるを得えん爲ためなり。

第九歌頌

イルモス 種たねなき胎はらごもりの產さんは言いひ難がたし、夫をつとを知しらざる母はゝの果みは朽くちず、神かみを生うむ產さんは天性てんせいを改あらたむればなり。故ゆゑに我われ等ら萬族ばんぞく爾なんぢを神かみの聘女よめなる母はゝとして、正たゞしく崇あがめ讚ほむ。

童貞女どうていぢよよ、審判しんぱんの畏おそるべき日ひは我われを嚇おどし、切齒はがみは我わが心こゝろを擾みだし、山羊やぎと偕ともに立たつことは我われを驚おどろかす。願ねがはくは我わが審判しんぱんせられん時とき、爾なんぢ生しやう神女しんぢよを我わが援助たすけとして獲えん。

我われ今いま戰をのゝき、「ゲエンナ」を畏おそるる畏おそれは我われを擾みだす、我われ不ふ當たうにして定罪ていざいせられし者ものは何なにを爲なすべきを知しらず。故ゆゑに爾なんぢに趨はしり附つきて、熱切ねつせつなる傷しやう感かんを以もつて爾なんぢに呼よぶ、至し淨じやうなる者ものよ、我われを棄すつる勿なかれ。

光榮 我わがハリストスよ、我われ審判しんぱん座ざを見み、爾なんぢの審判しんぱんを思おもひて、我わが行おこなひに應かなふ義ぎなる審判しんぱんを受うけば定罪ていざいせらるべきを知しる。惟たゞ求もとむ、其時そのとき我わが爲ために爾なんぢの多おほくの慈じ憐れんに祈いのる爾なんぢの純じゆん潔けつなる母はゝを容いれ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、我われ思念おもひの中うちに爾なんぢの足あしに觸ふれて、爾なんぢに祈いのりて呼よぶ、我わが涕泣ていきふを容いれ、歌うたを聞ききて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われに諸罪しよざいの釋とかるるを賜たまへ、我わが愛あいを以もつて爾なんぢを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

次ぎて「常に福にして」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、幷に發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第六調

木曜日

 木曜日の早課

第一の誦文の後に使徒の坐誦讚詞セダレン、第六調。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの門もん徒との中うちに來きたりて、彼かれ等らに爾なんぢの平安へいあんを賜たまひし如ごとく、我われ等らにも來きたりて、我われ等らを救すくひ給たまへ。

句 其聲そのこゑは全ぜん地ちに傳つたはり、其その言ことばは地ちの極はてに至いたる。

爾なんぢの門もん徒との會くわいは全ぜん地ちを照てらせり、蓋けだし先さきに魚うをの漁者ぎよしやたりし者ものは今いま人ひとを漁ぎよする者ものと爲なれり。神かみよ、彼かれ等らに因よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我わが罪つみは甚はなはだ多おほし、淨きよき者ものよ、爾なんぢに趨はしり附つきて救すくひを求もとむ。獨ひとり讚さん美びせらるる者ものよ、我わが病やめる靈たましひを顧かへりみて、爾なんぢの子こ吾わが神かみに我わが行おこなひし罪惡ざいあくの赦ゆるしを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第六調。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの門もん徒とは地ちの諸しよ極きよくに遣つかはされて、敬つゝしみて魚うをの如ごとく異い邦民はうみんを漁ぎよして、爾なんぢの仁じん慈じに攜たづさへ來きたれり。ハリストスよ、彼かれ等らに因よりて我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの民たみに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

句 主しゆよ、諸天しよてんは爾なんぢの奇異きいなる事わざを讚榮さんえいせん。

主しゆよ、十じふ二にの使徒しとは十じふ二にの光くわう線せんとして日ひの如ごとく地ちを輝かゞやかせり。蓋けだし爾なんぢは彼かれ等らに因よりて迷まよひを生しやうずる者ものを滅ほろぼし、彼かれ等らに因よりて爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを照てらし給たまふ。彼かれ等らに因よりて慈じ憐れんなる主しゆとして我われ等らをも救すくひ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの聖者せいしやの記き憶おくは今日こんにちエデムの樂園らくゑんの如ごとく現あらはれたり。蓋けだし此この裏うちに萬物ばんぶつは喜よろこぶ、爾なんぢは彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我わが生いける中うち我われを棄すつる勿なかれ。我われを人ひとの轉達てんたつに委ゆだぬる勿なかれ、乃すなはち自みづから我われを護まもりて救すくひ給たまへ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第六調。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢの睿えい智ちなる門もん徒との救すくひの聲こゑは電いなづまの如ごとく全ぜん地ちに傳つたはり、暗昧くらやみと罪惡ざいあくとの中うちに在ある者ものを照てらして、我われ等らを晝ひる及および光ひかりの子こと爲なせり。故ゆゑに萬物ばんぶつは敬つゝしみて爾なんぢを讚榮さんえいす。

漁者ぎよしやは舟ふねを遺すてて、神聖しんせいなる敎をしへの網あみを以もつて衆しゆうを虛誕きよたんの深處ふかみより引ひき出いだし、之これを神かみに付わたして、常つねに敬虔けいけんの心こゝろを以もつて彼かれを讚榮さんえいせしむ。

光榮、今も、生神女讚詞 聖せいなる女宰ぢよさい、ハリストス我わが神かみの母はゝよ、言いひ難がたく萬ばん衆しゆうの造成主ざうせいしゆを生うみし者ものとして、聖せい使徒等しとらと偕ともに常つねに彼かれの仁じん慈じに我われ等らを諸慾しよよくより救すくひて、罪つみの赦ゆるしを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

光榮にして讚美たる聖使徒の規程カノン。フェオファンの作。第六調。

第一歌頌

イルモス イズライリは陸くがの如ごとく淵ふちを蹈ふみ渡わたり、追おい詰つめしファラオンの溺おぼるるを見みて呼よべり、凱歌かちうたを神かみに奉たてまつらん。

世せ界かいの爲ために光ひかりと爲なりし神福しんぷくなる神言者しんげんしやよ、輝かゞやける光くわう線せんにて我われ等らを照てらして、諸慾しよよくの夜よると諸もろもろの誘惑いざなひの暗やみより脫のがれしめ給たまへ。二次。

主しゆの門もん徒とよ、聖神せいしんは嚴おごそかに爾なんぢ等らを全ぜん地ちに尊たふとき君きみとして立たてたり、故ゆゑに爾なんぢ等らは空くう氣き中ちゆうの君きみに勝かちて、信者しんじやを彼かれより救すくひ給たまふ。

無む形けいの火ひに燃もやされて輝かゞやける炭すみの如ごとき睿えい智ち者しやよ、我わが形體けいたいの慾よくを燬やきて、我われを無む慾よくと生命せいめいとの光ひかりに導みちびき給たまへ。

生神女讚詞 主しゆイイスス、萬有ばんいうの王わうよ、諸しよ使徒しと、預よ言者げんしや、致ち命者めいしや、及および爾なんぢを生うみし潔いさぎよき者ものの祈き禱たうに由よりて、爾なんぢの前まへに罪つみを獲えたる人人ひとびとを宥なだめ給たまへ。

又聖奇跡者ニコライの規程カノン、其冠詞は、ニコライよ、第六の歌頌を受け給へ。イオンフの作。第六調。

第一歌頌

イルモス 見みるべきファラオンは全軍ぜんぐんと共ともに溺おぼらされ、イズライリは海うみの中なかを過とほりて呼よべり、主しゆ吾わが神かみに謳うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

喜よろこびを以もつて天てんに居をる睿えい智ちなる神しん父ぷよ、地ち上じやうに信しんを以もつて聲こゑを合あはせて爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろを惱なやます凡およその憂うれひを爾なんぢの轉達てんたつを以もつて散さんじ給たまへ。

神しん父ぷニコライよ、信しんを以もつて今いま爾なんぢの聖せいなる帲幪おほひに趨はしり附つく者ものを害がいを爲なす諸慾しよよく、滅亾ほろびを爲なす諸敵しよてき、詭き譎けつの者ものの凡およその誘惑いざなひに對たいして堅かため給たまへ。

聖せいニコライよ、見みえざる敵てきの矢やに傷きずつけられし我われ等らを爾なんぢの祈き禱たうの良りやう藥やくを以もつて醫いやし給たまへ、我われ等らが壯健さうけんにして主しゆの道みちを行ゆかん爲ためなり。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、父ちゝと同どう永在えいざいなる子こは末すゑの時ときに於おいて、我われ等ら信者しんじやの再生さいせいの爲ために、甘あまんじて爾なんぢの胎内たいないに入いり給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを歌か頌しようす。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢが信者しんじやの角つのを高たかうし、我われ等らを爾なんぢが承認うけとめの石いしに堅かためし仁じん慈じの主しゆ、吾わが神かみよ、爾なんぢと均ひとしく聖せいなるはなし。

光くわう榮えいなる使徒しとよ、聖神せいしんは威ゐ嚴げんなる降臨かうりんを以もつて爾なんぢ等らの舌したを鍊ねりて、爾なんぢ等らを以もつて殘そこなはれし人人ひとびとを改あらためて、生命いのちを獲えしめ給たまふ。二次。

言ことばよ、我われ知しりて罪つみを犯おかす者ものは審判しんぱんの日ひに於おいて如何いかんぞ憐あはれみを得えん。故ゆゑに爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの門もん徒とに因よりて我われ自みづから定罪ていざいする者ものを宥なだめ給たまへ。

ハリストスの救すくひを施ほどこす苦くるしみに效ならひし光くわう榮えいなる使徒しとよ、醫師いしとして吾わが靈たましひの多た年ねんの甚はなはだしき慾よくを醫いやし給たまへ。

生神女讚詞 ハリストス救世主きうせいしゆよ、罪つみを犯おかしし我われを生しやう神女しんぢよ及および爾なんぢの使徒しとに由よりて轉てんぜしめて、神かみとして憐あはれみて、永遠えいゑんの火ひより救すくひ給たまへ。

又

イルモス 主しゆよ、爾なんぢを信しんずる信しんの堅かたき石いしに我わが意思おもひを堅かため給たまへ、我われ爾なんぢ仁じん慈じの主しゆを避所かくれが及および防固かためとして有たもてばなり。

至し福ふくなるニコライよ、爾なんぢは靈たましひを害がいする慾よくに對たいして勝しよう利りを獲えたり、常つねに我わが諸慾しよよくに甚はなはだしく勝かたるる我われ等らを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて此これ等らより脫のがれしめ給たまへ。

睿えい智ち者しやよ、爾なんぢは節制せつせいを以もつて肉慾にくよくの肢し體たいを殺ころして、老おいざる生命いのちに移うつれり、欣よろこばしく爾なんぢを讚ほめ揚あぐる我われ等らにも之これを獲えしめんことを祈いのり給たまへ。

成聖者せいせいしやよ、天てんの高たかきより絕たえず我われ等らに臨のぞみて、神かみに奉たてまつる爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らより凡およその度ど生せいの苦く難なんを退しりぞけ給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、我われ等らに罪つみの赦ゆるしを賜たまはんことを救世主きうせいしゆに祈いのりて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて常つねに吾わが靈たましひより凡およその暗昧やみを散さんじ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 尊たふとき敎けう會くわいは淨きよき心こゝろより主しゆの爲ために祝いはひ、神かみに適かなひて呼よび歌うたふ、ハリストスは吾わが力ちからと神かみと主しゆなり。

穩靜をんせいなる港みなと、颶ぐ風ふうなき港みなとたる使徒等しとらよ、甚はなはだしき諸罪しよざいの激浪あらなみに打うたるる我われを穩おだやかなる港みなとに到いたらしめ給たまへ。二次。

吾わが靈たましひよ、歎息たんそくせよ、吾わが靈たましひよ、淚なみだを流ながせ、吾わが卑微ひびなる心こゝろよ、全まつたく善ぜんに着つけよ、神かみが爾なんぢを將しやう來らいの焰ほのほ及および苦くるしみより脫のがれしめん爲ためなり。

人人ひとびとを救すくふ者ものたる至し福ふくなる使徒等しとらよ、主宰しゆさい救世主きうせいしゆに、人ひとを愛あいする主しゆとして、我われ等らを惡者あくしやの誘惑いざなひより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ、無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、使徒等しとらと偕ともに我われ等らの爲ために禱いのりを捧さゝげ給たまへ、我われ等らが凶きよう惡者あくしやの誘惑いざなひ及および諸もろもろの災禍わざはひより救すくはれん爲ためなり。

又

イルモス 我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、爾なんぢの作爲わざを悟さとりて驚おどろけり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

聖せいニコライよ、恩おん寵ちようを賜たまふ我わが神かみに禱いのりを奉たてまつりて、詭き譎けつの者ものに傷きずつれられたる我わが不ふ當たうなる心こゝろを醫いやし給たまへ。

ハリストスの役者えきしやニコライよ、爾なんぢは滅亾ほろびを爲なす宮みやを毁こぼてり。故ゆゑに我われ信しんを以もつて爾なんぢに祈いのる、吾わが靈たましひの惡あくの偶像ぐうざうを滅ほろぼし給たまへ。

神しん智ちなる成聖者せいせいしや神しん父ぷニコライよ、爾なんぢは義ぎなる行ぎやう實じつを以もつて薰かをりて、ミラ城じやうの主しゆ敎けう座ざを飾かざり給たまへり。

生神女讚詞 聘女よめならぬ女宰ぢよさい、祝しゆく讚さんせらるる神かみの母はゝ、獨ひとり人人ひとびとの扶助たすけなる者ものよ、爾なんぢを歌うたふ者ものを凡およその害がいより救すくひ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 至し仁じんなる神かみの言ことばよ、切せつに祈いのる、爾なんぢに朝あさの祈き禱たうを奉たてまつる者ものの靈たましひを爾なんぢが神かみの光ひかりにて照てらして、爾なんぢ罪つみの暗やみより呼よび出いだす眞まことの神かみを知しらしめ給たまへ。

誘惑いざなひと憂愁うれひとの至いたりて狹せまき路みちを行ゆきて、生命いのちの門もんに入いりし言ことばの門もん徒と等らよ、我わが靈たましひの路みちを平たひらかに爲なし給たまへ。二次。

ハリストスの使徒等しとら、神聖しんせいなる東ひがしの光くわう體たいたる者ものよ、我われを諸慾しよよくの暗昧くらやみと逸樂いつらくの暗やみ、誘惑いざなひと憂愁うれひ、暴風あらしと災禍わざはひより脫のがれしめ給たまへ。

神かみの言ことばに書しるされし卷軸まきものたる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らの祈き禱たうを以もつて我わが罪つみの惡あしき書券かきつけを裂さきて、我われを生命せいめいの書しよに錄しるさんことを祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 我われの拯救すくひ及および恃賴たのみ、衆しゆう人じんの耻はぢを得えざる恃賴たのみなる獨ひとり讚さん美びたる少女せうぢよよ、爾なんぢの子こに奉たてまつる爾なんぢ及および神聖しんせいなる門もん徒との祈き禱たうを以もつて我われ恃賴たのみを爾なんぢに負おはしむる者ものを救すくひ給たまへ。

又

イルモス 光ひかりを世せ界かいに輝かゞやかししハリストスよ、我われ夜中よはより爾なんぢに呼よぶ者ものの心こゝろを照てらして、我われを救すくひ給たまへ。

聖せいニコライよ、怠惰おこたりの眠ねむりに耽ふけりたる我われを爾なんぢの熱切ねつせつにして聖せいなる轉達てんたつを以もつて起おこし給たまへ。

成聖者せいせいしやニコライよ、イイスス救世主きうせいしゆに我われを永遠えいゑんの苦くるしみより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

成聖者せいせいしやニコライよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを世せ俗ぞくの誘惑いざなひ及および惡あく鬼きの害がいより護まもり給たまへ。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ等らに存在そんざいを賜たまふ主しゆは爾なんぢの胎内たいないに入いり給たまへり。彼かれに我われ等らを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

第六歌頌

イルモス 誘惑いざなひの猛風あらしにて浪なみの立たち揚あがる世よの海うみを觀みて、爾なんぢの穩おだやかなる港みなとに著つきて呼よぶ、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

光くわう榮えいなる者ものよ、爾なんぢ等らは聖神せいしんの書しるされたる碑ひとして、實じつに尊たふとき法はふを靈たましひの中うちに有たもてり、此これを以もつて文ぶんの律法りつぱふを廢はいして、世せ界かいを救すくひ給たまへり。二次。

罪つみを行おこなひ、無智むちにして惡あしき風習ならはしに循したがふ靈たましひよ、亟すみやかに轉てんじて、慈じ憐れんなる主しゆに呼よべ、言ことばよ、使徒等しとらに由よりて我われを救すくひ給たまへ。

衆しゆう人じんの爲ために屠ほふられし無む玷てんなる羔こひつじよ、驚おどろくべく畏おそるべき爾なんぢの降臨かうりんの時ときに、爾なんぢの神聖しんせいなる傳道でんだう師しの祈き禱たうに由よりて、我われを爾なんぢの選えらばれたる右みぎの羊ひつじに合あはせ給たまへ。

生神女讚詞 無む原げんなる神かみの子こよ、無む形けいなる役者えきしやの會くわいは爾なんぢに祈いのり、門もん徒との會くわいは爾なんぢを生うみし者ものと偕ともに爾なんぢに祈いのる、爾なんぢの民たみに慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。

又

イルモス ハリストスよ、我われ罪つみの鯨くぢらに呑のまれて、爾なんぢに呼よぶ、預よ言者げんしやの如ごとく我われを淪滅ほろびより脫のがれしめ給たまへ。

ニコライよ、造物ざうぶつは爾なんぢを靈れい智ちなる燈ともしびと有たもちて、爾なんぢの數かぞへ難がたき奇き跡せきの光くわう線せんにて照てらさる。

爾なんぢに趨はしり附つく者ものの爲ために眠ねむらざる祈き禱者たうしやたるニコライよ、我われを怠惰おこたりの惡あしき眠ねむりより脫のがれしめ給たまへ。

睿えい智ちなるニコライよ、爾なんぢは昔むかし非義ひぎに死しに定さだめられし者ものを救すくへり、斯かく我われをも諸難しよなん及および諸罪しよざいより救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 獨ひとり神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ常つねに度ど生せいの患くわん難なんに荒あらさるる者ものを援たすけ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 天てん使しは敬虔けいけんなる少者せうしやの爲ために爐ゐろりに露つゆを出いださしめ、ハルデヤ人じんを燒やく神かみの命めいは苦くるしむる者ものに呼よばしめたり、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

使徒しとよ、爾なんぢ等らは言ことばの釣つりを以もつて衆しゆうを迷まよひの深處ふかみより引ひき出いだして、我われ等らの爲ために屠ほふられし言ことばに攜たづさへ來きたりて、彼かれに歌うたへり、吾わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。二次。

使徒しとよ、爾なんぢ等らは形體けいたいに現あらはれし神かみと面おもてを合あはせて語かたりて、其その光ひかりを施ほどこす光くわう線せんにて照てらされたり。祈いのる、我われを照てらし給たまへ、蓋けだし我われ呼よぶ、吾わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

神聖しんせいなる門もん徒と等らよ、善よき牧者ぼくしやに祈いのりて、我われ罪惡ざいあくの山やまに迷まよひし者ものを尋たづねて救すくはんことを求もとめ給たまへ。蓋けだし我われ熱切ねつせつに呼よぶ、吾わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 女宰ぢよさい童貞女どうていぢよよ、諸しよ預よ言者げんしや、使徒しと、及および致ち命者めいしやと偕ともに爾なんぢが生うみし者ものに祈いのりて、我われに地ち上じやうの惡あくを免まぬかれしめて、天てん上じやうの福ふくに與あづかるを得えしめんことを求もとめ給たまへ。

又

イルモス 爾なんぢの敬虔けいけんなる少者せうしやの禱いのりを聞ききて、燃もゆる爐ゐろりに露つゆを灑そゝぎし主しゆ、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

至し福ふくなるニコライよ、爾なんぢは神かみの力ちからを以もつて異い端者たんしやの軍ぐんを破やぶりて、其その誘惑いざなひより爾なんぢの牧群ぼくぐんを救すくひ給たまへり。

航海かうかいする者ものに現あらはれ、苦くるしめる爾なんぢの城邑まちを養やしなひし神しん父ぷニコライよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて靈たましひを滅ほろぼす饑き饉きんより我われを援たすけ給たまへ。

神しん父ぷニコライよ、援たすけの爲ために爾なんぢを呼よぶ者ものを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて堅かためて、惡あく鬼きの凶きよう惡あくなる暴風あらしを鎭しづめ給たまへ。

生神女讚詞 衆しゆう人じんの女宰ぢよさい、聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを慾よくの奴ど隷れいより釋とき給たまへ。

第八歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢは敬虔けいけんなる者ものの爲ために焰ほのほより露つゆを注そゝぎ、義ぎ人じんの祭まつりの爲ために水みづより火ひを出いだせり、爾なんぢは一ひとつの望のぞみにて萬ばん事じを行おこなひ給たまへばなり、我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

救世主きうせいしゆの耕作者かうさくしやたる神聖しんせいなる使徒等しとらよ、祈き禱たうの鐮かまを以もつて吾わが靈たましひの悉ことごとくの稗ひえを除のぞき給たまへ、我わが救すくひの實みのりたる穗ほを生しやうぜん爲ためなり。二次。

見神者けんしんしやよ、爾なんぢ等らは言ことばの耜すきを以もつて荒あれたる心こゝろを新あらたにして、尊たふとき敎をしへを播まきて、救すくはれし者ものを百ひやく倍ばいの穗ほとして穫かり給たまへり。

言ことばの門もん徒と等らよ、爾なんぢ等らは敵てきの凶きよう惡あくを眠ねむらせて、義ぎ者しやに適かなふ眠ねむりを以もつて眠ねむりて、我われ等らの爲ために世世よよに眠ねむらざる祈き禱者たうしやと爲なり給たまへり。

生神女讚詞 慈じ憐れんなる主しゆよ、我われを滅きえざる火ひより脫のがれしめ給たまへ、諸しよ預よ言者げんしや、致ち命者めいしや、爾なんぢの使徒しと、及および言いひ難がたく爾なんぢを胎内たいないに容いれし夫をつとを識しらざる童貞女どうていぢよの祈き禱たうに因よりてなり。

又

イルモス 爾なんぢの敬虔けいけんなる少者せうしやは爐ゐろりの中うちにヘルワィムに效ならひて、三聖さんせいの歌うたを歌うたへり、崇あがめよ、歌うたへよ、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

抱神者はうしんしやニコライよ、爾なんぢは至いたりて光くわう明めいなる生命いのちの高たかきに登のぼりし者ものと現あらはれ、全ぜん地ちに知しられて、諸もろもろの奇き跡せきを以もつて暗昧くらやみに居をる者ものを照てらし給たまふ。

福ふくたるニコライよ、敬虔けいけんに警醒けいせいして、爾なんぢを尊たふとむ者ものに恩おん寵ちようを降くだし、我われ等らに對たいして仇あだを構かまへ、我われ等らを害がいせんと謀はかる者ものの怨うらみを眠ねむらせ給たまへ。

屬神ぞくしんの力ちからを以もつて敵てきの網あみを悉ことごとく破やぶりし神しん智ちなる成聖者せいせいしやニコライよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを此この網あみより脫のがれしめて、我わが生命いのちを導みちびき給たまへ。

生神女讚詞 神かみを生うみし童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし爾なんぢに因よりて詛のろひは空むなしくなり、凡およそ爾なんぢ獨ひとり夫をつとを識しらざる神かみの母はゝを讚さん美びする者ものに祝しゆく福ふくは賜たまはりたり。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、附唱と共に、及び叩拜。

第九歌頌

イルモス 天てん使しの品ひん位ゐすら見みるを得えざる神かみは、人ひと見みる能あたはず、唯たゞ爾なんぢ至し淨じやうの者ものに藉よりて人體じんたいを取とりし言ことばは人人ひとびとに現あらはれ給たまへり。我われ等ら彼かれを崇あがめて、天軍てんぐんと偕ともに爾なんぢを讚ほめ揚あぐ。

神聖しんせいなる使徒しとよ、變易へんえきせずして人ひとに合あはせられ、體合たいがふを以もつて死しに屬ぞくする性せいを神成しんせいせし神かみを爾なんぢ等らは全ぜん世せ界かいに傳つたへて、衆しゆう人じんを無む神しんの迷まよひより解とき給たまへり。故ゆゑに爾なんぢ等ら常つねに讚さん美びせらる。二次。

肉體にくたいの種種しゆじゆの苦くるしみを以もつてハリストスの苦くるしみを形かたどりし使徒等しとらよ、吾わが肉體にくたいの慾よくを殺ころして、弱よわりて苦くるしみ、且かつ殺ころされたる吾わが靈たましひを活いかし給たまへ。

我われ迷まよひて惡あくの途みちを踐ふみ、罪つみの淵ふちに陷おちいりて苦くるしむ。人ひとを愛あいする主しゆよ、我わが爲ために途みちと爲なりて、我われを爾なんぢの誡いましめの迷まよはざる途みちに向むかはしめ給たまへ。

生神女讚詞 ハリストスよ、天てん使しと天てん使し首しゆの品ひん位ゐ、權柄けんぺいと能のう力りよく、首しゆ領りやうと主しゆ制せい、ヘルワィムとセラフィム、寶はう座ざ及および使徒しとの會くわいは爾なんぢを生うみし者ものと偕ともに爾なんぢに祈いのる、獨一どくいつなる王わうよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを救すくひ給たまへ。

又

イルモス 天てん使しより慶よろこべよを受うけて、己おのれの造成主ざうせいしゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢを讚ほめ揚あぐる者ものを救すくひ給たまへ。

成聖者せいせいしやの飾かざり、奇き跡せきの泉いづみたるニコライよ、人ひとを愛あいする主しゆ神かみに祈いのりて、我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを得えしめ給たまへ。

ニコライよ、昔むかし俘囚めしうどを死しより救すくひし如ごとく、斯かく我われ等らをも度ど生せいの誘惑いざなひより救すくひ給たまへ。

ニコライよ、爾なんぢはリキヤのミラに葬はうむられ、常つねに香料かうれうを流ながして、諸慾しよよくの惡臭あくしうを拂はらひ給たまふ。

造成主ざうせいしゆの降臨かうりんは門もんの側かたはらに在あり、吾わが靈たましひよ、怠おこたる勿なかれ、乃すなはち呼よべ、ハリストスよ、ニコライの祈き禱たうに由よりて我われを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 光ひかりを生うみし讚さん美びたる者ものよ、吾わが心こゝろの昧くらみたる眸子ひとみを照てらし給たまへ、我わが爾なんぢに依よりて救すくはれて、爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。小聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに使徒の讚頌スティヒラ、第六調。

ハリストスの使徒しとよ、爾なんぢ等らは睿えい智ちにして惡あく鬼きの迷まよひの暴風あらしを鎭しづめて穩靜をんせいと爲なし、全ぜん世せ界かいに醇じゆん正せいの敎をしへを授さづけたり。今いまは我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我われ等ら信者しんじやはハリストス我わが王わうの睿えい智ちなる門もん徒との記き憶おくを宜よろしきに合かなひて歌うたを以もつて尊たふとまん、彼かれ等らは聖三者せいさんしやを信しんずる信しんを世せ界かいに傳つたへたればなり。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 我わが神かみは其その選えらびたる聖者せいしやを奇異きいなる者ものと爲なし給たまへり。彼かれの諸僕しよぼくよ、喜よろこびて樂たのしめ、彼かれは爾なんぢ等らの爲ために榮えい冠くわんと己おのれの國くにとを備そなへたればなり。惟たゞ爾なんぢ等らに祈いのる、我われ等らをも忘わするる勿なかれ。

光榮、今も、生神女讚詞 悲かなしむ者ものの慰藉なぐさめ、病やむ者ものの醫治いやし、戰たゝかふ者ものの和わ睦ぼく、暴風あらしに遇あふ者ものの安靜あんせいたる衆しゆうに歌うたはるる生しやう神女しんぢよ、獨ひとり信者しんじやの轉達てんたつなる者ものよ、都邑まちと民たみとを救すくひ給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に諸讚詞トロパリ、及び聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、其他、及び發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 木曜日の聖体礼儀に

木曜日の眞福詞、第六調。

神かみ我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを憶おもひて、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

光くわう榮えいなる使徒しとよ、爾なんぢ等らは奧あう妙めうなる光くわう線せんの如ごとく世せ界かいを過とほりて、敎をしへを以もつて人類じんるゐを照てらし給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

光くわう照せうせられし主しゆの使徒しとよ、爾なんぢ等らは雲くもの如ごとく神聖しんせいなる智ち識しきの水みづを世せ界かいに注そゝぎ給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは苦くるしみの火ひに近ちかづきて、爾なんぢ等らを凉すゞしくする神聖しんせいなる露つゆを神かみより受うけ給たまへり。

光榮 我われ等ら信者しんじやは尊榮そんえいなる聖三者せいさんしやに伏拜ふくはいして、同心どうしんに呼よばん、使徒等しとらの祈き禱たうに由よりて我われ等ら衆しゆうを救すくひ給たまへ。

今も 言ことばに超こえて父ちゝと同どう無む原げんなる言ことばを生うみし生しやう神女しんぢよよ、我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

横線 - 『八調経』第六調

 木曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十字架の讚頌スティヒラ、第六調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

恒忍ごうにんにして仁愛じんあいなる我わが神かみ、大仁だいじん慈じにして洪恩こうおんなる主しゆよ、如何いかんぞ爾なんぢは人類じんるゐの爲ために木きの上うへに屠ほふられて殺ころさるることを忍しのびたる。我われ等らは爾なんぢの慈じ憐れんを讚榮さんえいす。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

恒忍ごうにんにして至し仁じんなる主しゆ、獨ひとり生命いのちを賜たまふ者ものよ、爾なんぢは衆しゆう人じんを詭き譎けつの者ものより救すくはんと欲ほつして、頰ほゝを批うたれ、十じふ字架じかに釘ていせられ、辱はづかしめを受うけて、一切いつさいを忍しのび給たまへり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

牧者ぼくしやよ、爾なんぢは十じふ字架じかに上のぼり、手てを伸のべて呼よべり、迷まよひに由よりて昧くらまされし人人ひとびとよ、我われに來きたりて照てらされよ、我われは光ひかりなればなり。獨ひとり光ひかりを賜たまふ主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

又生神女の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

童貞女どうていぢよよ、諸罪しよざいの大おほいなる重任おもにに因よりて傴かゞみたる吾わが靈たましひを起おこし給たまへ、爾なんぢは倒たふされし者ものを起おこし給たまふ救世主きうせいしゆ、輙たやすく母はゝの勇敢いさみを容いるる者ものを有たもてばなり。祈いのる、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我わが罪つみの書券かきつけを破やぶり給たまへ、爾なんぢの大おほいなる慈じ憐れんに因よりてなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

生しやう神女しんぢよよ、我われ罪つみに緣よりて失望しつばうし、不ふ法はふにて汚けがされ、神かみの命めいを輕かろんぜし者ものを顧かへりみて、爾なんぢの顏かんばせより退しりぞくる勿なかれ、爾なんぢは我われの恃賴たのみ及および轉達てんたつなればなり。求もとむ、我わが禱いのりを聽ききて、我われを凡およその汚けがれより潔きよめ給たまへ、爾なんぢの大おほいなる慈じ憐れんに因よりてなり。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

至し聖せいなる者ものよ、我わが爲ために痛つう悔くわいの門もんを啓ひらき、我われに淚なみだの泉いづみを與あたへ、傷しやう感かんと貞潔ていけつの心こゝろとを賜たまへ、我われ獨ひとり爾なんぢを堅けん固ごなる轉達てんたつと有たもちて、我わが悉ことごとくの恃賴たのみを爾なんぢに負おはすればなり。女宰ぢよさいよ、我われを耻はぢを蒙かうむれる者ものとして退しりぞくる勿なかれ、我われを容いれて救すくひ給たまへ、爾なんぢの大おほいなる慈じ憐れんに因よりてなり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものは爾なんぢが木きに釘ていせらるるを見みて呼よべり、鳴呼あゝ吾わが子こ及および神かみよ、爾なんぢが大仁だいじん慈じに由よりて忍しのび給たまふ此この至し榮えいにして奇き妙めうなる顯現あらはれは何なにぞや。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン、我わが助たすけは天てん地ちを造つくりし主しゆより來きたる。

句 我われ目めを擧あげて山やまを望のぞむ、我わが援助たすけは彼處かしこより來きたらん。

次に「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第六調。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかは爾なんぢの人人ひとびとの爲ために生命いのち及および保護まもりなり。我われ等ら之これを恃たのみて、爾なんぢ身みにて釘ていせられし我わが神かみを歌うたふ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかは人類じんるゐの爲ために樂園らくゑんを啓ひらけり。我われ等ら朽きう壞くわいより救すくはれて、爾なんぢ身みにて釘ていせられし我わが神かみを歌うたふ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの致ち命者めいしやは爾なんぢを諱いまざりき、爾なんぢの誡いましめより離はなれざりき。彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 童貞女どうていぢよは童貞どうていの門もん徒とと偕ともに曾かつて主しゆの釘ていせらるる時とき十じふ字架じかの側かたはらに立たちて、泣なきて呼よべり、鳴呼あゝ衆しゆう人じんを苦くるしみより釋とき給たまふハリストスよ、如何いかんぞ爾なんぢ苦くるしみを受うくる。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。聯禱及び發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 木曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、其冠詞は、童貞女よ、我に痛悔の淚を與へ給へ。第六調。

第一歌頌

イルモス イズライリは陸くがの如ごとく淵ふちを蹈ふみ渡わたり、追おひ詰つめしファラオンの溺おぼるるを見みて呼よべり、凱歌かちうたを神かみに奉たてまつらん。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、不ふ當たうなる口くち、不ふ潔けつなる唇くちびるより畏おそれなく奉たてまつる吾わが祈き禱たうを納いれて、傷しやう感かんの光ひかりを爾なんぢの僕ぼくに輝かゞやかし給たまへ。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われに淚なみだの雨あめを與あたへ給たまへ、我わが地ち上じやうに行おこなひし諸罪しよざいの爲ために熱切ねつせつに泣なきて、爾なんぢに依よりて凡およその苦くるしみより逃のがれん爲ためなり。

光榮 仁じん慈じの泉いづみを生うみし者ものよ、我わが涕泣ていきふを退しりぞくる勿なかれ。至し仁じんなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの慈いつくしみある眼めを以もつて慈じ憐れんにして我わが靈たましひの諸慾しよよくを醫いやし給たまへ。

今も 吾わが靈たましひよ、歎息たんそくし、流涕りうていし、己おのれの爲ために痛いたく泣なきて、神かみの母はゝに伏拜ふくはいして言いへ、我われ罪つみなる者ものを畏おそるべき苦くるしみより救すくひ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢが信者しんじやの角つのを高たかうし、我われ等らを爾なんぢが承認うけとめの石いしに堅かためし仁じん慈じの主しゆ、吾わが神かみよ、爾なんぢと均ひとしく聖せいなるはなし。

至し聖せい至し潔けつなる童貞女どうていぢよよ、罪つみを行おこなひしこと我われの如ごときはなし、我われ無む量りやうなる惡あしき念おもひの奴ど隷れいと爲なれり。惟たゞ爾なんぢを恃たのみて祈いのる、此これ等らより我われを釋とき給たまへ。

視みよ、惡敵あくてきは我われを攻せめて、多おほくの傷きずを負おはせ、我われを俘囚とりこにして、我わが靈たましひを滅亾ほろびに引ひく。

光榮 至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、我わが罪つみは甚はなはだ多おほし。故ゆゑに我われ卑微ひびなる者ものは熱信ねつしんに俯ふ伏ふくして爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢが身みにて生うみし主しゆに畏おそるべき時ときに於おいて我われに憐あはれみを垂たれんことを祈いのり給たまへ。

今も 聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ凡およその定罪ていざいに當あたる者ものを援たすけて、神かみの前まへに母はゝの勇敢いさみを有たもつ者ものとして、我われを彼かれの宮みやに入いれ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 尊たふとき敎けう會くわいは淨きよき心こゝろより主しゆの爲ために祝いはひ、神かみに適かなひて呼よび歌うたふ、ハリストスは吾わが力ちからと神かみと主しゆなり。

女宰ぢよさいよ、我われに淚なみだの泉いづみを賜たまへ、我わが卑微ひびなる我われの靈たましひの汚けがれを滌あらひて、曾かつて蛇へびの勸すゝめに由よりて失うしなひし華くわ美びを獲えん爲ためなり。

我わが仁じん慈じなる神かみ、仁愛じんあいなる神かみ、慈じ憐れんの泉いづみよ、今いま爾なんぢの慈じ憐れんを我われに注そゝぎ給たまへ。我わが恃賴たのみ及および轉達者てんたつしやなる爾なんぢの母はゝは爾なんぢに祈いのる。

光榮 至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、我われ放蕩はうたうの者もの、我われ至いたりて不ふ當たうなる者もの、智慧ちゑなく耻はぢなくして多おほく爾なんぢの前まへに罪つみを犯おかしし者ものを憐あはれみて救すくひ、「ゲエンナ」より脫のがれしめ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは萬ばん衆しゆうの生命いのちを生うみて、死しの草くさ場ばを空むなしくせり。故ゆゑに我われも爾なんぢに呼よぶ、我われ罪つみを犯おかせり、爾なんぢの母はゝたる祈き禱たうを以もつて我われを救すくひ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 至し仁じんなる神かみの言ことばよ、切せつに祈いのる、爾なんぢに朝あさの祈き禱たうを奉たてまつる者ものの靈たましひを爾なんぢが神かみの光ひかりにて照てらして、爾なんぢ罪つみの暗やみより呼よび出いだす眞まことの神かみを知しらしめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ悉ことごとくの我わが望のぞみを爾なんぢに負おはせし者ものを憐あはれみ給たまへ。熱信ねつしんに爾なんぢに呼よぶ、吾わが靈たましひの惡あく慾よくを一切いつさい顧かへりみずして、我われを宥なだめ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我われを諸慾しよよく、憂愁うれひと災禍わざはひ、及および凶きよう惡あくなる諸敵しよてきより救すくひ、我わが卑微ひびなる靈たましひを其その攻擊こうげきより脫のがれしめ給たまへ、我わが敵てきが我われは彼かれに勝かてりと曰いはざらん爲ためなり。

光榮 體からだと靈たましひとの至し潔けつ至し淨じやうなる者ものよ、現あらはれて我わが靈たましひを汚けがれより淨きよめ、我われに潔いさぎよく生いのちを度わたるを賜たまひて、我われを主しゆの神聖しんせいなる旨むねを行おこなふに導みちびき給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよよ、我われ多おほくの罪つみの中うちに生いのちを費つひやしし者ものは獨ひとり爾なんぢを避所かくれが及および神かみの前まへの轉達てんたつと有たもてり。故ゆゑに祈いのる、爾なんぢ我われを宥なだめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 誘惑いざなひの猛風あらしにて浪なみの立たち揚あがる世よの海うみを觀みて、爾なんぢの穩おだやかなる港みなとに著つきて呼よぶ、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、我わが僅わづかなる歎息たんそくと手てを擧あぐることとを芳かうばしき祭まつりの如ごとく納いれて、我われに潔いさぎよき良りやう心しんを以もつて爾なんぢの顏かんばせを見みるを得えしめ給たまへ。

慈じ憐れんなる女宰ぢよさい、爾なんぢの胎内たいないより輝かゞやき出いでたる仁じん慈じなる神かみの母はゝよ、我わが禱いのりを退しりぞくる勿なかれ、我われに終をはりの至いたらざる先さきに神聖しんせいなる赦罪しやざいを與あたへ給たまへ。

光榮 我われ至いたりて不ふ當たうなる者ものは諸慾しよよくに誘いざなはれて、神かみより遠とほざかりたり。仁じん慈じなる童貞女どうていぢよよ、我われを救すくはんことを彼かれに祈いのり給たまへ、我われ爾なんぢに趨はしり附つきたればなり、慈じ憐れんの衣ころもにて我われを飾かざり給たまへ。

今も 火ひなるイイススは爾なんぢの胎たいを焚やかずして、身みを以もつて爾なんぢより出いで給たまへり。潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、信しんを以もつて爾なんぢを歌か頌しようする者ものを火ひ及および凡およその苦くるしみより脫のがれしめんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第六調。

潔けつ淨じやう尊榮そんえいなる童貞女どうていぢよ、諸天しよてん使しの光くわう榮えい、獨ひとり祝しゆく讚さんせらるる者ものよ、爾なんぢは己おのれの子こ及および神かみの十じふ字架じかの側かたはらに立たてる時とき、敵てきの殘害ざんがいに忍しのびずして、涕泣ていきふし歎息たんそくして呼よべり、如何いかんぞ仁愛じんあいなる主しゆは彼かれに行おこなふ此これ等らの事ことを忍しのぶ。

第七歌頌

イルモス 少者せうしやはワワィロンに於おいて爐ゐろりの焰ほのほを懼おそれざりき、乃すなはち火ひの中うちに投なげられて、霑うるほされて歌うたへり、主しゆ吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

嗚呼あゝ吾わが靈たましひよ、行おこなひし諸惡しよあくより起おきよ、何なんぞ寢いぬる、何なんぞ煩悶もだえの眠ねむりの中うちに臥ふす。生しやう神女しんぢよに呼よべ、至し聖せいなる者ものよ、我われを助たすけ給たまへ。

至し聖せいなる者ものよ、我われ爾なんぢの像すがたの形かたちを尊たつとべども敢あへて爾なんぢに目めを擧あぐるを得えず。祈いのる、我われに罪債おひめの赦ゆるしを與あたへて、淸きよき心こゝろを以もつて爾なんぢの至し淨じやうなる聖像せいざうを見みるを得えしめ給たまへ。

光榮 神かみの母はゝよ、我われ爾なんぢの轉達てんたつに趨はしり附つき、俯ふ伏ふくして罪つみの赦ゆるしを乞こふ。女宰ぢよさいよ、我われを退しりぞくる勿なかれ、憐あはれみて我われを救すくひ給たまへ。

今も 我われ靈たましひを害がいする敵てきの多た種しゆの惡あくに由よりて心こゝろと智慧ちゑとを汚けがせり。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢに祈いのる、我われを棄すてずして、其その誘惑いざなひより爾なんぢの僕ぼくを脫のがれしめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 福ふくたる少者せうしやはワワィロンに於おいて先せん祖ぞの律おきての爲ために危あやふきを顧かへりみずして、君きみの無知むちなる命めいを輕かろんじ、火ひに擲なげうたれて其中そのうちに焚やかれずして、全能者ぜんのうしやに適かなふ歌うたを歌うたへり、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

我われ無む量りやうに罪つみを行おこなひて、諸罪しよざいの中うちに吾わが肉體にくたいを汚けがしし無知むちなる者ものは、義ぎなる審判しんぱんの日ひを思おもふ時とき、悶もだえて懼おそれ、驚おどろき戰をのゝきて爾なんぢの慈じ憐れんに俯ふ伏ふくす。女宰ぢよさいよ、我われを退しりぞくる毋なかれ、我わが憂うれひを見みて、凡およその定罪ていざい及および多た種しゆの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

我われ不ふ當たうの者ものは神かみの法はふを輕かろんじて、怠惰おこたりの中うちに臥ふす。至し淨じやうなる者ものよ、我われを顧かへりみ、亟すみやかに起おこして、救すくはれし者ものの分ぶんに與あづからしめ給たまへ、我わが歡よろこびて爾なんぢに呼よばん爲ためなり、世せ界かいの歡喜よろこび、信しんを以もつて爾なんぢの堅けん固ごなる帲幪おほひを呼よぶ者ものの爲ための獨ひとりの轉達者てんたつしやよ、慶よろこべ。

光榮 嗚呼あゝ吾わが靈たましひよ、畏おそるべき審判しんぱんに天てん使等しらが畏おそれ戰をのゝきて立たたん時とき、我われ等ら其時そのとき如何いかなる畏懼おそれと戰慄をのゝきとを以もつて立たたんか。生しやう神女しんぢよを仁じん慈じなる轉達者てんたつしやと有たもちて、膝ひざを屈かゞめ、手てを上うへに擧あげて呼よべ、童貞女どうていぢよよ、其時そのとき爾なんぢの慈じ憐れんなる眼めを以もつて我われを顧かへりみて宥なだめ給たまへ。

今も 讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、今いま爾なんぢの轉達てんたつに耻はぢを得えざる力ちからあることを示しめし給たまへ、蓋けだし爾なんぢの子こは宜よろしきに合かなひて母はゝの禱いのりに傾かたぶかん。潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、今いま急迫きふはくの時ときに亟すみやかに援たすけ給たまへ、我わが備そなへを爲なさざる者ものとして世よを去さらずして、復また生いきん爲ためなり。

第九歌頌

イルモス 母はゝよ、我われ爾なんぢが種たねなくして孕はらみし子この柩ひつぎに在あるを見みて泣なく毋なかれ、蓋けだし我われ起おきて光くわう榮えいを獲え、神かみなるに因よりて、常つねに信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを讚揚さんやうする者ものを光くわう榮えいの中うちに高たかくせん。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢに祈いのる、願ねがはくは我われ天てん上じやうの光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲ならん。至し淨じやうなる者ものよ、我われを宥なだめて、無む量りやうの罪債おひめを赦ゆるし、知しると知しらずして、晝ひるに夜よるに行おこなひしことを一切いつさい顧かへりみる勿なかれ、我わが喜よろこびて感謝かんしやの歌うたを爾なんぢに奉たてまつらん爲ためなり。

少女せうぢよよ、我われを諸もろもろの憂うれひより出いだして、我わが足あしを神聖しんせいなる救すくひの石いしに立たて給たまへ。蓋けだし我われ今いま爾なんぢを勝かたれぬ轉達者てんたつしやとして獲えて、木きに於おける誡いましめに背そむくに由よりて造つくりし墻かき及および隔へだてを踰こえんことを信しんず。

光榮 我われ爾なんぢ慈じ憐れんなる審判者しんぱんしや及および主宰しゆさいを生うみし者ものに祈いのる。我わが汚けがれたる口くちの卑微ひびなる歌うたを納いれて、我われ衆しゆう人じんに超こえて罪つみを犯おかしし者ものを忌いむ毋なかれ、我われ爾なんぢの僕ぼくは神かみの前まへに爾なんぢを轉達者てんたつしやとして有たもてばなり。

今も 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは悉ことごとくの造物ざうぶつより上うへなる者ものとして、爾なんぢの腹はらに身みを取とりし神かみを宿やどし給たまへり。潔いさぎよき者ものよ、彼かれに熱切ねつせつに爾なんぢの僕ぼくを凡およその縲絏なはめより釋とかんことを禱いのり給たまへ、我われも自じ由いうなる聲こゑを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

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金曜日

 金曜日の早課

第一の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第六調。

獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆよ、今日こんにち預よ言者げんしやの言ことばは應かなへり。蓋けだし視みよ、我われ等らは爾なんぢの足あしの立たちし處ところに伏拜ふくはいし、木きに緣よる救すくひを嘗なめて、生しやう神女しんぢよの祈き禱たうを以もつて罪つみに緣よる苦くるしみを釋とかるるを得えたり。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

ハリストス主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかの木きの樹たてられしのみにして、死しの基もとゐは動うごけり、蓋けだし地ぢ獄ごくは貪むさぼりて呑のみし者ものを戰をのゝきて放はなてり。聖せいなる者ものよ、爾なんぢは其その爲なしし救すくひを我われ等らに顯あらはし給たまへり、故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚揚さんやうす。神かみの子こよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよ、獨ひとり無む玷てんなる牝め羊ひつじよ、爾なんぢは潔いさぎよき爾なんぢの血ちより身みを取とりし羔こひつじの甘あまんじて十じふ字架じかに懸かゝれるを見みて、苦くるしき淚なみだを流ながして呼よべり、吾わが無垢むくなる子こよ、我われ爾なんぢの畏おそるべき定制ていせいを歌うたふ。

第二の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第六調。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかは聖せいにせられたり、蓋けだし此これに緣よりて諸罪しよざいを病やむ者ものに醫治いやしは行おこなはる。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくす、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 神かみ我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

主しゆよ、イウデヤ人じんは爾なんぢ萬ばん衆しゆうの生命いのちを死しに定さだめたり、杖つゑに由よりて紅海こうかいを濟わたりし者ものは爾なんぢを十じふ字架じかに釘ていせり、磐いはより蜜みつを吸すひし者ものは爾なんぢに膽いを進すゝめたり。然しかれども爾なんぢは甘あまんじて忍しのび給たまへり、我われ等らを敵てきの奴ど隷れいより釋とかん爲ためなり。ハリストス我わが神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 童貞女どうていぢよ母はゝは無む欲よくにして智慧ちゑに超こえて彼かれより身みを取とりし者ものの十じふ字架じかの側かたはらに立たち、母はゝとして淚なみだを流ながして呼よべり、鳴呼あゝ吾わが子こ及および神かみよ、我われは爾なんぢ地ち上じやうに在ある者ものに呼こ吸きうを與あたふる主しゆの死し者しやとして懸かゝれるを見みるに忍しのびず。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第六調。

十じふ字架じか、惡あく魔まを逐おふ者もの、病びやう者しやを醫いやす者もの、信者しんじやの能力ちから及および保護まもり、諸しよ王わうの勝しよう利り、正敎者せいけうしやの眞まことの譽ほまれ、ハリストスの敎けう會くわいの固かためなる祝しゆく福ふくせられたる木きよ、我われ等らの爲ために盾たてと墻かき及および守しゆ護ご者しやと爲なれ。

言ことばよ、爾なんぢは慈じ憐れんと仁じん慈じとに因よりて十じふ字架じかの木きに升のぼり、戈ほこを以もつて脅わきを刺さされて、全能ぜんのうの神かみとして、我われ等らの罪つみの書券かきつけを破やぶり給たまへり。故ゆゑに我われ等ら敬虔けいけんに爾なんぢの言いひ難がたき定制ていせいを歌うたふ。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢは常つねに諸しよ義ぎ人じんの爲ために光ひかりなり、蓋けだし聖せいなる者ものは爾なんぢに照てらされ、絕たえず光くわう體たいの如ごとく輝かゞやきて、不ふ虔者けんしやの燈ともしびを滅けす。我わが救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我わが燈ともしびを輝かゞやかして、我われを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我わが生いける中うち我われを棄すつる勿なかれ、我われを人ひとの轉達てんたつに委ゆだぬる勿なかれ、乃すなはち親みづから我われを護まもりて救すくひ給たまへ。

尊貴にして生命を施す十字架の規程カノン、第六調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし逐おひつめし窘迫者くるしめびとを海うみの浪なみにて匿かくしし主しゆを、救すくはれし者ものの子こは土つちの下したに匿かくせり。然しかれども我われ等らは童女どうぢよの如ごとく主しゆに歌うたはん、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

爾なんぢは己おのれの尊たふとき苦くるしみを以もつて耻はぢを蒙かうむりたる人ひとの性せいを尊たふとくし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら畏おそれを以もつて爾なんぢを尊たふとみ、爾なんぢの權柄けんぺいを崇あがめて、忠ちゆう信しんに讚榮さんえいす、爾なんぢ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

全能ぜんのうの言ことばよ、爾なんぢは己おのれの血ちを以もつて血ちの不義ふぎなる流ながれを止とゞめ、人ひとの性せいを惡あくの汚けがれより淨きよめ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら救すくはるる者ものは爾なんぢの權柄けんぺいを讚榮さんえいす。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは譽ほめらるべき抗敵かうてきを以もつて實じつに殘忍ざんにんなる猛獸まうじうに勝かち、神聖しんせいなる恩おん寵ちようの露つゆを以もつて火ひの性せいを服ふくせしめ、多た神しんの烈はげしき暴風あらしを鎭しづめたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは血ちの雨あめを以もつて無む神しんの迷まよひの河かはを涸からして、世せ界かいの爲ために醫治いやしの雨あめを注そゝぎ、諸慾しよよくの焰ほのほを滅けし給たまふ。故ゆゑに爾なんぢ等ら讚さん美びせらる。

生神女讚詞 婚姻こんいんに與あづからざる少女せうぢよは爾なんぢ人じんの子こより美うるはしき者もの、信者しんじやの飾かざりたる者ものが苦くるしみを受うくる時ときに華榮みばえも姿容すがたもなきを見みて、母はゝとして哭なき、愛あいを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせり。

又至聖なる生神女の規程カノン。

第一歌頌

調及びイルモス同上

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる光くわう榮えいなるマリヤ、歡喜よろこびの中ちゆう保はう者しやよ、爾なんぢを歌うたふ者ものに神聖しんせいなる恩惠おんけいを蒙かうむらしめ給たまへ、我われ等らが感謝かんしやの歌うたを爾なんぢに奉たてまつらん爲ためなり。

神かみの母はゝよ、爾なんぢの奧密あうみつは至し大だいなる哉かな、蓋けだし爾なんぢは造物ざうぶつの女宰ぢよさいと現あらはれて、天てん使しの軍ぐんの敢あへて見みるを得えざる主しゆを爾なんぢの手てに抱いだき給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚さん頌しようす。

原げん母ぼが木きの果みを食くらふに因よりて全ぜん人類じんるゐは死しの朽きう壞くわいに定さだめられたり。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢに由よりて彼かれは喚よび起おこされたり、爾なんぢ不ふ朽きうの生命いのちを生うみたればなり。

第三歌頌

イルモス 造物ざうぶつは爾なんぢ、全ぜん地ちを寄よする所ところなくして水みづの上うへに懸かけし者ものが、髑髏されかうべの處ところに懸かかれるを覩みて、大いたく懼おそれ、戰をのゝきて籲よべり、主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなるはなし。

主しゆよ、日ひは爾なんぢ、全ぜん地ちを寄よする所ところなくして水みづの上うへに懸かけし者ものが木きの上うへに擧あげられて、脅わきを刺ささるるを見みて、爾なんぢが萬有ばんいうの光くわう照せうなるを知しりて、晦くらみたり。

恒忍ごうにんなる主しゆよ、昔むかし樂園らくゑんに於おいてアダムに傷きずつけし凶きよう惡者あくしやは爾なんぢの釘くぎを以もつて傷きずつけらる。彼かれは傷きずつけられて、醫いやされぬ者ものとして世世よよに止とゞまり、衆しゆう信者しんじやは凡およその傷きずの醫治いやしを得えたり。

致命者讚詞 天てん使しの會くわいは致ち命者めいしやの群むれが屠ほふられし羔こひつじの爲ために寸斷すんだんせらるるを見みる時とき驚おどろけり、如何いかんぞ形體けいたいの者ものは無む形けいの敵てきに勝かちて、勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うくる。

致命者讚詞 聖せいなる者ものは獨ひとり能あたはざる所ところなく强つよき主しゆの力ちからを衣きせられて、敵てきと格鬪かくたうし、其その强つよからざる力ちからを踐ふみて、神かみより榮えい冠くわんを受うけたり。

生神女讚詞 純じゆん潔けつ無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢより生うまれし主しゆが戈ほこを以もつて傷きずつけられしを見みし時とき、爾なんぢは心こゝろに傷きずつけられて、奇きとして言いへり、子こよ、至いたりて不ふ法はふなる會くわいは何なにをか爾なんぢに報むくいたる。

又 イルモス同上

神かみの母はゝよ、昔むかし敵てきは詭譎いつはりを以もつて我われの内うちに神かみと爲ならんとする望のぞみを起おこして、我われをエデムより出いだし、地ちに斃たふして壞やぶれり。今いまはハリストス我われを憐あはれみ、爾なんぢの胎内たいないより身みを取とりて、我われを改あらため造つくり給たまへり。

潔いさぎよき少女せうぢよよ、昔むかし爾なんぢは預よ言者げんしやイエゼキイリに生命いのちの門もんと現あらはれたり、獨ひとり身みを取とりし主しゆは此これを過とほり、至し上じやう者しやなるに因よりて、之これを閉とぢたる者ものとして護まもり給たまへり。

至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、爾なんぢの中ちゆう保はうを以もつて古いにしへの詛のろひの定罪ていざいは釋とかれたり。蓋けだし主しゆは爾なんぢに由よりて現あらはれて、至し仁じんなる者ものとして、衆しゆう人じんに豐ゆたかに祝しゆく福ふくを流ながし給たまへり。

第四歌頌

イルモス アウワクムは爾なんぢが十じふ字架じかに於おける神聖しんせいなる謙虛へりくだりを先見せんけんして、驚おどろきて籲よべり、至し善ぜんの主しゆよ、爾なんぢは地ぢ獄ごくに居をる者ものと偕ともに在ありて、全能者ぜんのうしやとして强つよき者ものの權柄けんぺいを斷たち給たまへり。

主しゆよ、爾なんぢは不ふ節制せつせいに因よりて禁きんぜられし樹きに伸のべたる手てを除のぞかん爲ために木きの上うへに屠ほふられて死しせり、定罪ていざいせられし者ものを救すくはん爲ために脅わきより赦罪しやざいを滴したゝらせ給たまへり。

至し仁じんなる主宰しゆさいよ、爾なんぢは苦くるしみを忍しのびて、我われを無智むちの諸慾しよよくより釋とき、膽いを嘗なめて、我われに恩おん寵ちようの甘味あまみを流ながし、殺ころされて、我われに生命いのちを與あたへ給たまへり。

致命者讚詞 ハリストスの受難者じゆなんしやは神かみを愛あいする愛あいの火ひを靈たましひの内うちに有たもちて、至いたりて不ふ法はふなる者ものの焰ほのほを滅けし、人人ひとびとを照てらす燈ともしびと現あらはれたり。

致命者讚詞 萬有ばんいうの王わうの神聖しんせいなる親したしき友ともは肉體にくたいに於おける親したしみに離はなれて、勇いさましく種種しゆじゆの苦くるしみに進すゝみ、勝しよう利りを獲えて、光くわう榮えいを被かうむりたり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよは呼よべり、我われ苦くるしみに與あづからずして爾なんぢを生うみしに、如何いかんぞ今いま爾なんぢが苦くるしみに與あづかるを見みる、如何いかんぞ爾なんぢ之これを忍しのぶ。無む原げんなる子こよ、我われ爾なんぢの恒忍ごうにんを讚榮さんえいす。

又 イルモス同上

獨ひとり萬族ばんぞくの中うちより選えらばれたる至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ、諸德しよとくに輝かゞやける尊榮そんえい純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの光くわう照せうを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものを照てらし給たまへ。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ母はゝ、神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる少女せうぢよよ、爾なんぢは潔いさぎよき爾なんぢの血ちより身みを取とりし神かみ救世主きうせいしゆ、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものを諸罪しよざいより救すくふ主しゆを生うみ給たまへり。

潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、無む形けいの性せいは爾なんぢの神聖しんせいなる產さんに奉ほう事じし、人人ひとびとの會くわいは愛あいを以もつて爾なんぢを歌うたふ。爾なんぢの光ひかりを以もつて我われ等らを照てらし給たまへ。

第五歌頌

イルモス 神かみの言ことばよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつる、蓋けだし爾なんぢは仁じん慈じに因よりて、變かはらざる者ものにして己おのれを罄つくし、苦くるしまざる者ものにして苦くるしみを受うくるに至いたれり。人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ陷おちいりし者ものに平安へいあんを與あたへ給たまへ。

仁愛じんあいなるハリストスよ、爾なんぢは髑髏されかうべの處ところに死し者しやと見みられて、爾なんぢの身みの苦くるしみを以もつて地ぢ獄ごくを殺ころし、姿容すがたも華榮みばえもなく懸かけられて、華くわ美びを以もつて人人ひとびとを飾かざり給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢは木きに釘ていせられて、初はじめのアダムの慾よくに緣よる詛のろひを破やぶり、戈ほこを以もつて刺さされて、焰ほのほの劍つるぎに爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために入門にふもんを禁きんぜざるを命めいじ給たまへり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやの會くわいは主宰しゆさいの苦くるしみに效ならひ、己おのれを種種しゆじゆの苦くるしみに付わたして、木きに釘ていせられ、肢し體たいを寸斷すんだんせられ、火ひに水みづに投なげられ、悉ことごとく忍しのびて、其その身みに於おいて主しゆの光くわう榮えいを顯あらはし給たまへり。

致命者讚詞 ハリストスの致ち命者めいしやは心こゝろの貧まづしき者ものを高たかくする主しゆより賜たまはりたる全ぜん備びなる智慧ちゑを以もつて智慧ちゑの驕おごれる强きやう暴ばう者しやに勝かちて、惟一ゆゐいちの神かみの光くわう榮えいを輝かゞやかし給たまへり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢはイエッセイの根ねより出いでて、世せ界かいの爲ために十じふ字架じかの木きを植うゑたる者ものを生しやうぜり。彼かれは身みを以もつて之これに升のぼり、血ちを流ながして無む神しんの河かはを涸からし給たまへり。

又 イルモス同上

神かみの聘女よめよ、天てんに至いたる梯かけはしはイアコフに現あらはれて、明あきらかに爾なんぢの實じつに奇き妙めうなる產さんを像かたどれり。蓋けだし爾なんぢに依よりて實じつに神かみは天てんより降くだりて我われ等らと偕ともに在いまし、人人ひとびとに生命いのちを賜たまへり。

神かみの母はゝ、衆しゆう人じんの爲ために樂たのしみ及および全ぜん世せ界かいの喜よろこびを生うみし者ものよ、爾なんぢに依よりて我われ等らは原げん母ぼの悲かなしみより救すくはれて、慰藉なぐさめに滿みてられたり。故ゆゑに祈いのる、讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものを患くわん難なんより護まもり給たまへ。

純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよ、神かみの聘女よめよ、見神者けんしんしやモイセイは火ひに焚やかれざる棘いばらを見みて、爾なんぢの奇き妙めうなる產さんの奧密あうみつを敎をしへられたり。蓋けだし造成主ざうせいしゆは爾なんぢの内うちに入いりて、爾なんぢ萬物ばんぶつより上うへなる者ものを焚やかざりき。

第六歌頌

イルモス イオナは鯨くぢらの腹はらに包つゝまれたれども、長ながく留とゞめられざりき。蓋けだし爾なんぢ苦くるしみを受うけ、葬はうむりに付わたされし者ものを像かたどりて、猛獸まうじうより出いでしこと宮みやより出いづる如ごとく、爾なんぢの墓はかを守まもる者ものに呼よべり、徒いたづらに虛むなしく守まもる者ものよ、爾なんぢ等ら己おのれの矜恤きようじゆつ者しやを棄すてたり。

獨ひとり祝しゆく讚さんせらるる主しゆ、至し仁じんなる造成主ざうせいしゆよ、昔むかしイアコフは少者せうしやに祝しゆく福ふくする時とき、手てを交まじへて預あらかじめ十じふ字架じかを徵しるせり。至し上じやう者しやよ、爾なんぢは之これに升のぼりて、人類じんるゐを古いにしへの詛のろひより釋とき、今いま爾なんぢを祝しゆく讚さんする者ものに祝しゆく福ふくを流ながし給たまふ。

言ことばよ、昔むかし大おほいなるモイセイは爾なんぢの苦くるしみを預よ象しやうし、銅あかゞねの蛇へびを木きに擧あげて、蛇へびに囓かまれて之これに目めを注そゝぐ者ものを毒どくより援たすけたり。蓋けだし主宰しゆさいよ、爾なんぢ十じふ字架じかに釘ていせられしに、我われ等ら衆しゆう信者しんじやは惡にくむべき蛇へびの毒害どくがいより救すくはれたり。

致命者讚詞 昔むかし神聖しんせいなる尊たふとき受難者じゆなんしやは永遠えいゑんの報むくい及および歡喜よろこびに目めを注そゝぎて、他た人にんの身みに於おけるが如ごとく苦くるしみを受うけたり。洪恩こうおんなるハリストスよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢを歌うたふ者ものを誘惑いうわく、諸罪しよざい、及および患くわん難なんより救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 尊そん貴き神聖しんせいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは血ちの流ながれを以もつて迷まよひの河かはを止とゞめて、信者しんじやの爲ために實じつに神しん智ちの水みづを流ながす泉いづみと現あらはれ給たまへり。世せ界かいの救主きうしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて、衆しゆう人じんに赦免しやめん、生命せいめい、諸罪しよざいの潔淨きよめ、及および大おほいなる憐あはれみを注そゝぎ給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは牧ぼく師し長ちやう及および主宰しゆさいが木きの上うへに擧あげられしを見みて、母はゝとして哭なきて呼よべり、子こよ、此この新あらたなる奧密あうみつは何なにぞや、如何いかんぞ爾なんぢ性せいの不死ふしなる者ものは人人ひとびとを朽きう壞くわいより救すくはんと欲ほつして死しを受うけたる。

又 イルモス同上

生しやう神女しんぢよよ、律法りつぱふの預よ象しやうと諸しよ預よ言者げんしやの預よ言げんとは爾なんぢ世せ界かいの爲ために救主きうしゆを生うまんとする者ものを現あらはしたり。彼かれは萬物ばんぶつの恩主おんしゆにして、信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢ潔いさぎよき女宰ぢよさいを讚揚さんやうする者ものに多た方はうを以もつて諸しよ恩おんを降くだし給たまふ。

昔むかし神かみに初はじめて造つくられし者ものは殺人者ひとごろしなる敵てきの誘惑いざなひに因よりて樂園らくゑんの食しよくより遠とほざかれり。獨ひとり神かみの母はゝよ、爾なんぢ救世主きうせいしゆを生うみて、復また彼かれ等らを樂園らくゑんに升のぼせたり、蓋けだし主しゆは此これが爲ために甘あまんじて十じふ字架じかと葬はうむりとを忍しのび給たまへり。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、神聖しんせいなる旨むねと全能ぜんのうの力ちからとを以もつて萬物ばんぶつを無むより造つくりし主しゆは爾なんぢの潔いさぎよき胎内たいないより神人かみびととして出いでて、先さきに無智むちの闇やみに在ありし者ものを神妙しんめうなる光ひかりを以もつて明あきらかに照てらし給たまへり。

第七歌頌

イルモス 言いひ盡つくされぬ哉かな奇き蹟せきや、爐ゐろりに於おいて敬虔けいけんの少者せうしやを焰ほのほより救すくひし者ものは、氣いき絕たえし死し者しやとして柩ひつぎに置おかる、我われ等ら、贖しよく罪主ざいしゆ神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものの救すくひの爲ためなり。

エウレイの會くわいが爾なんぢを十じふ字架じかに擧あげし時とき、地ちは見みて畏おそれ、日ひは其その光ひかりを匿かくし、暗昧くらやみに居をる者ものは光ひかりを見みて歌うたへり、贖しよく罪主ざいしゆ神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

ハリストス神かみ救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは甘あまんじて辱はづかしめを忍しのび、葦あしにて擊うたれ、王わうとして棘いばらの冠かんむりを冠かうむり給たまへり、我われ等ら、贖しよく罪主ざいしゆ神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものの救すくひの爲ためなり。

致命者讚詞 讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは縛しばられて、惡あく魔まの悉ことごとくの迷まよひを解とき、苦くるしみ及および非義ひぎなる死しを忍しのびて、上うへなる生命いのちを受うけて呼よぶ、贖しよく罪主ざいしゆ神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

致命者讚詞 讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは焰ほのほの中なかに立たちて、明あきらかに迷まよひを焚やき、神聖しんせいなる恩おん寵ちようの注そゝぐに因よりて焚やかれずして歌うたひて呼よべり、贖しよく罪主ざいしゆ神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよは呼よべり、無む原げんなる子こよ、爾なんぢ甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせらるるに、我われ今いま之これを見みて、吾わが靈たましひ悲かなしみに沈しづむ。爾なんぢは死しして、贖しよく罪主ざいしゆ神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものに生命いのちを賜たまふ。

又 イルモス同上

神かみの母はゝよ、主しゆは爾なんぢ諸德しよとくの華くわ美びに極きはめて妝よそほはれたる者ものを愛あいし、爾なんぢより身みを取とりて、我われ等らを救すくひて呼よばしむ、潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの腹はらの果みは祝しゆく福ふくせられたり。

至し淨じやうなる者ものよ、主宰しゆさいは爾なんぢを荊棘いばらの中なかの百合花ゆりとして獲えて、爾なんぢの屬神ぞくしんの美びなる香氣かをりを我われ等らに滿みたし、傷しやう感かんを以もつて彼かれに呼よばしむ、贖しよく罪主ざいしゆ神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

潔いさぎよき者ものよ、聖せいなる諸しよ預よ言者げんしやは爾なんぢの神聖しんせいなる產さんの預よ象しやうを見みて、爾なんぢを讚榮さんえいして呼よべり、神かみは童貞女どうていぢよより來きたらん、贖しよく罪主ざいしゆ神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よぶ者ものを救すくはん爲ためなり。

第八歌頌

イルモス 天てんよ、畏おそれて戰をのゝけ、地ちの基もとゐは動うごくべし、蓋けだし視みよ、至いと高たかきに居をる者ものは死し者しやに加くはへられ、小ちひさき柩ひつぎに置おかる。少者せうしやよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ、司し祭さいよ、讚ほめ歌うたへ、民たみよ、萬世ばんせいに尊たふとみ崇あがめよ。

ハリストスよ、爾なんぢは望のぞみし十じふ字架じかの苦くるしみの杯さかづきを飮のみて、生命いのちを施ほどこす脅わきより我われ肋あばら骨ぼねに由よりて死しせし者ものの爲ために赦免しやめんの泉いづみを流ながし給たまへり。我われ爾なんぢを歌うたひて唱となふ、司し祭さいよ、讚ほめ歌うたへ、民たみよ、萬世ばんせいに尊たふとみ崇あがめよ。

生命いのちを施ほどこす主しゆイイススよ、不ふ法はふなる民たみが爾なんぢを不ふ法者はふしやの間あひだに十じふ字架じかに釘ていせし時とき、地ちは震ふるひ、衆しゆうは畏おそれを以もつて歌うたへり、童子わらべよ、崇あがめ讚ほめよ、司し祭さいよ、讚ほめ歌うたへ、民たみよ、萬世ばんせいに尊たふとみ崇あがめよ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らの死しは神かみの目めの前まへに貴たつとくなれり。蓋けだし爾なんぢ等らは多おほくの苦くるしみを受うけて、ハリストスの尊たふとき苦くるしみに與あづかる者ものと爲なりて、同心どうしんに呼よぶ、童子わらべよ、崇あがめ讚ほめよ、司し祭さいよ、讚ほめ歌うたへ、民たみよ、萬世ばんせいに尊たふとみ崇あがめよ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らが諸敵しよてきと戰たゝかひし武器ぶきは實じつに肉にくに屬ぞくするにあらずして、望ばうと信しんと眞實しんじつなり。此これを以もつて爾なんぢ等らは神かみの惠めぐみを得えて、天てん使しの會くわいに合あはせられて、主宰しゆさいに呼よぶ、司し祭さいよ、讚ほめ歌うたへ、民たみよ、萬世ばんせいに尊たふとみ崇あがめよ。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよは呼よべり、至し上じやうにして無む原げんなる子こよ、爾なんぢは辱はづかしめらるること、唾つばきせらるること、葦あしにて擊うたるること、及および十じふ字架じかを忍しのび給たまふ、我われ爾なんぢの恒忍ごうにんを讚榮さんえいす。童子わらべは之これを崇あがめ讚ほめ、司し祭さいは讚ほめ歌うたひ、民たみは萬世ばんせいに尊たふとみ崇あがむ。

又 イルモス同上

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは神聖しんせいなるダニイルに截きられざる山やまと預よ見けんせられたり、蓋けだし石いしたるハリストスは爾なんぢより獨ひとり、人ひとの手てに由よらずして截きられたり。童子わらべよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ、司し祭さいよ、讚ほめ歌うたへ、民たみよ、萬世ばんせいに尊たふとみ崇あがめよ。

潔いさぎよき少女せうぢよ、永貞えいてい童女どうぢよよ、天てん上じやうの軍ぐんは常つねに歌うたを以もつて爾なんぢの產さんを讚榮さんえいし、爾なんぢをも我われ等らと偕ともに神かみの母はゝとして欣よろこばしく歌うたふ。童子わらべは爾なんぢを崇あがめ讚ほめ、司し祭さいは讚ほめ歌うたひ、民たみは萬世ばんせいに尊たふとみ崇あがむ。

潔いさぎよきマリヤ、神かみの母はゝよ、爾なんぢの光ひかりの光くわう線せんを以もつて今いま爾なんぢを眞まことの生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものを照てらし給たまへ、蓋けだし爾なんぢは光ひかりの居所すまひと現あらはれたり。我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢに呼よぶ、讚さん美び讚榮さんえいせらるる童貞女どうていぢよよ、萬世ばんせいに慶よろこべ。

次に生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、及び躬拜。

第九歌頌

イルモス 母はゝよ、我われ爾なんぢが種たねなくして孕はらみし子この柩ひつぎに在あるを見みて泣なく毋なかれ、蓋けだし我われ起おきて光くわう榮えいを獲え、神かみなるに因よりて、常つねに信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを讚揚さんやうする者ものを光くわう榮えいの中うちに高たかくせん。

獨一どくいつの救世主きうせいしゆよ、木きの果みの甘あまき食しよくの爲ために朽くちたる者ものを朽きう壞くわいより救すくはん爲ために、爾なんぢは仁じん慈じなる主しゆとして、身みを以もつて釘ていせられ、殺ころさるるを甘あまんじ給たまへり。イイススよ、我われ等ら絕たえず爾なんぢの大おほいなる仁じん慈じと能力ちからとを歌うたふ。

嗚呼あゝ救世主きうせいしゆよ、如何いかにして爾なんぢ十じふ字架じかに釘ていせらるる苦くるしみを忍しのびて、我われ等らを甚はなはだしき苦くるしみより出いだしたる、如何いかにして棘いばらを冠かうむりて、諸慾しよよくの棘いばらを悉ことごとく焚やきたる、如何いかにして膽いを飮のませられて、我われ等らの爲ために樂たのしみの杯さかづきを調てう和わしたる。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは責せめられ、獄ひとやに投とうぜられ、寸斷すんだんせられ、無む慙ざんに刃は輪ぐるまに舒のべられ、猛獸まうじうの食しよくに畀あたへられて、ハリストス萬有ばんいうの主宰しゆさいを諱いまざりき。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやの至いたりて光くわう明めいなる記き憶おくは日ひの光くわう線せんよりも明あきらかに輝かゞやきて、常つねに敬虔者けいけんしやの靈たましひを照てらし、諸慾しよよくと誘惑いうわくとの闇やみを退しりぞけ、惡あく鬼きの最いと深ふかき暗昧くらやみを散さんず。

生神女讚詞 至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢは萬物ばんぶつを持たもつ主しゆ、我われ等らを戰たゝかふ敵てきの手てより脫のがれしめし者ものを持たもちて、嬰兒をさなごとして手てに抱いだけり。爾なんぢは又また我われ等らを惡あくの陷穽おとしあなより救すくひし主しゆが十じふ字架じかの木きに擧あげられしを見み給たまへり。

又 イルモス同上

潔いさぎよき神かみの母はゝよ、爾なんぢは性せいに超こえて我われ等らの爲ために永遠えいゑんの喜悅よろこびと生命いのちとの中ちゆう保はう者しやと現あらはれたり、蓋けだし萬ばん衆しゆうの救主きうしゆ、地ちの面おもてより凡およその淚なみだを拭のごひて、衆しゆう人じんに喜悅よろこびを賜たまひし者ものを生うみ賜たまへり。

生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの先せん祖ぞダワィドは歌うたひて爾なんぢを預よ象しやうして匱ひつと名なづけ、モイセイは爾なんぢ生しやう神女しんぢよを神聖しんせいなる「マンナ」の金こがねの壺つぼと名なづけたり、蓋けだし獨ひとり爾なんぢは永久えいきうに父ちゝの懷ふところに在います主しゆを己おのれの内うちに容いれ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら歌うたを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいす。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢは實じつに萬物ばんぶつより上うへなる者ものなり、蓋けだし身みを以もつて萬有ばんいうの神かみを生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを轉達者てんたつしやと確たしかなる倚賴たのみ、及および堅けん固ごなる垣墻かきとして有たもちて、爾なんぢに依よりて救すくひを獲えんことを信しんず。

次ぎて「常に福にして」。小聯禱、光耀歌、及び其他。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第六調。

我われ十じふ字架じかに由よりて恃賴たのみを有たもち、此これに由よりて誇ほこりて呼よぶ、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢを神かみ及および人ひとと承うけ認とめざる者ものの驕おごりを倒たふし給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我われ等らは十じふ字架じかに防ふせぎ護まもられて、敵てきと戰たゝかひて、其その惡謀あくぼうと攻擊こうげきとを畏おそれず。蓋けだし彼かれは傲慢がうまんの者ものにして、木きに釘ていせられしハリストスの力ちからを以もつて空むなしくせられて蹂ふまれたり。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの聖者せいしやの記き憶おくに於おいて悉ことごとくの造物ざうぶつは祭まつる、天てんは天てん使等しらと偕ともに喜よろこび、地ちは人人ひとびとと偕ともに樂たのしむ。彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 潔いさぎよき母はゝ童貞女どうていぢよよ、我われ人ひととして木きに釘ていせられて殺ころされ、死し者しやとして墓はかに置おかれたれども、神かみとして光くわう榮えいを以もつて三みつ日目かめに復ふく活くわつせん。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、其他、幷びに發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 金曜日の聖体礼儀に

金曜日の眞福詞、第六調。

神かみ我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを憶おもひて、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

ハリストス我わが神かみよ、爾なんぢは木きの上うへに手てを伸のべ、異い邦民はうみんを抱いだきて、爾なんぢの慈じ憐れんを歌うたはしめ給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

ハリストスよ、爾なんぢは甘あまんじて木きに釘ていせられて、爾なんぢの力ちからを以もつて傲慢がうまんの者ものの螫刺どくばりを全まつたく折をり給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

苦くるしみを樂たのしみし受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは樂園らくゑんの樂たのしみを獲えて、恒つねに世せ界かいの爲ために祈いのり給たまふ。

光榮 父ちゝ、子こ、及および同どう寶はう座ざの聖神せいしん、主しゆよ、我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくを凡およその苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

今も 主しゆよ、童貞女どうていぢよは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせられしを見みて、歎息たんそくして泣なけり。彼かれの祈き禱たうに由よりて我われ等らを救すくひ給たまへ。

横線 - 『八調経』第六調

 金曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に聖致命者と成聖者と克肖者との讚頌スティヒラ。第六調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

衆しゆう致ち命者めいしやの會くわいはハリストスの苦くるしみの蹤あとに隨したがひ、勇いさましく多おほくの功勞こうらうを顯あらはして、彼かれを不ふ虔けんなる苛虐者くるしめびと及および不ふ法はふなる諸しよ王わうの前まへに神かみとして傳つたへ、多おほくの苦くるしみを忍しのびて、天てんの尊榮そんえいを獲えんことを望のぞめり。今いま之これを獲えて喜よろこびて、無む形けいなる軍ぐんの衆しゆう品ひんと偕ともに主しゆの前まへに立たち給たまふ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

第一だいいちの牧者ぼくしやたるハリストスに肖にたる者ものと爲なりし聖せいにせられし諸しよ牧ぼく師しよ、爾なんぢ等らは神かみの選えらびたる群ぐんを害がいなく終をはりに至いたるまで護まもり、殘忍ざんにんなる狼おほかみを逐おひて、神かみの寶たからを全まつたうして天てんの牢をりに登のぼせ給たまへり。故ゆゑに今いま彼處かしこに居をる者ものとして、愛あいを以もつて爾なんぢ等らを讚さん美びする我われ等らを記き念ねんして、勇いさましく我わが靈たましひの爲ためにハリストスに祈いのり給たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

克肖こくせうなる諸しよ神しん父ぷよ、爾なんぢ等らは敬虔けいけんに生いのちを度わたりて、惡あく鬼きに勝かち、諸慾しよよくの炎ほのほを滅けし、玷きずなき良りやう心しんを守まもりて、今いま天てんの軍ぐんと共ともに喜よろこぶ。蓋けだし形體けいたいに在ありて彼かの無む形體けいたいの者ものの生命いのちに肖にたる者ものと爲なり給たまへり。彼かれ等らと偕ともにハリストス至し仁じんなる神かみに爾なんぢ等らを尊たふとむ者ものを墮だ落らくより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

又讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの致ち命者めいしやは爾なんぢを諱いまざりき、爾なんぢの誡いましめより離はなれざりき。彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

復上の致命者讚詞を誦す。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

受難者じゆなんしや致ち命者めいしや、天てんの住ぢゆう民みんたる者ものは地ち上じやうに苦くるしみて、多おほくの苦く難なんを忍しのびたり。主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たう冀き願ぐわんに因よりて我われ等ら衆しゆうを護まもり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、誰たれか爾なんぢを讚さん美びせざらん、誰たれか爾なんぢの至いたりて淨きよき產さんを歌うたはざらん。世よの無なき先さきに父ちゝより光ひかる獨生どくせいの子こは爾なんぢ淨きよき者ものより言いひ難がたく身みを取とりて出いで、本性ほんせいの神かみは我われ等らの爲ために本性ほんせいの人ひとと爲なれり、其その位くらゐ一ひとつにして相分あひわかれず、其その性せい二ふたつにして相あひ失うしなはず。淨きよくして至いたりて福さいはひなる者ものよ、我わが靈たましひの憐あはれみを蒙かうむらんことを彼かれに禱いのり給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。

挿句くづけに致命者の讚頌スティヒラ、第六調。

ハリストスよ、受難者じゆなんしやは爾なんぢの爲ために多おほくの苦くるしみを忍しのびしに因よりて、天てんに於おいて完くわん美びなる榮えい冠くわんを受うけたり、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのらん爲ためなり。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかは致ち命者めいしやの爲ために勝かたれぬ武器ぶきと爲なれり、蓋けだし彼かれ等らは己おのれの前まへに死しを見み、來世らいせいの生命いのちを先見せんけんして、爾なんぢに於おける恃賴たのみを以もつて堅かためられたり。彼かれ等らの禱いのりに由よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

死者の讚頌

爾なんぢが造成ざうせいの命めいは我わが爲ために初始はじめ及および合成あはせと爲なれり、蓋けだし爾なんぢは見みゆると見みえざる性せいより我われ生いける者ものを合あはせんと欲ほつして、我われの體からだを土つちより造つくり、生命いのちを施ほどこす神妙しんめうなる爾なんぢの噓いきにて我われに靈たましひを與あたへ給たまへり。故ゆゑに救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを生いける者ものの地ちに、義ぎ人じん等らの住所すまひに安やすんぜしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 ハリストスよ、爾なんぢを生うみし者ものと、爾なんぢの致ち命者めいしや、使徒しと、預よ言者げんしや、成聖者せいせいしや、克肖者こくせうしや、義ぎ者しや、及および衆しゆう聖人せいじんの祈き禱たうに由よりて、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼくを安息あんそくせしめ給たまへ。

横線 - 『八調経』第六調

 金曜日の晩堂課

至聖なる生神女に祈る規程カノン、第六調。

第一歌頌

イルモス 佑たすけ護まもる者もの顯あらはれて、我わが救すくひと爲なれり、彼かれは吾わが神かみなり、我われ彼かれを讚ほめ揚あげん、彼かれは我わが父ちゝの神かみなり、我われ彼かれを尊たふとみ頌うたはん、彼かれ巖おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

附唱 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

仁じん慈じ潔けつ淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われを退しりぞくる勿なかれ、忌いむ勿なかれ、我われ熱心ねつしんに爾なんぢの慈じ憐れんの下したに趨はしり附つく者ものを棄すつる勿なかれ、乃すなはち我われを爾なんぢにある恩おん寵ちように飽あかしめ給たまへ。

仁じん慈じなる生しやう神女しんぢよ、憂うれふる者ものの保護ほご者しやよ、我わが靈たましひよりする歎息たんそくを受うけて、我わが行おこなひし無む量りやうの惡あくより我われを救すくひ給たまへ。

光榮 仁じん慈じなる童貞女どうていぢよ、憂うれふる者ものの轉達者てんたつしやよ、我われ爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくす、生しやう涯がいを惡あくの中うちに送おくりし我われを永遠えいゑんの火ひと、幽暗くらやみと、淵ふちより脫のがれしめ給たまへ。

今も 嗚呼あゝ我わが救世主きうせいしゆイイススよ、我われ無む量りやうに爾なんぢの前まへに罪つみを犯おかしし者ものは如何いかにして赦ゆるしを爾なんぢに求もとめん。我われ唯たゞ爾なんぢを生うみし潔いさぎよき者ものを轉達者てんたつしやとして爾なんぢに進すゝむ、我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢの誡いましめの石いしに我わが動うごける心こゝろを固かため給たまへ、爾なんぢ獨ひとり聖せいにして主しゆなればなり。

言ことばの母はゝよ、我われ爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくす、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われを受うけ給たまへ。爾なんぢの熱切ねつせつなる祈き禱たうに因よりて我われ求もとむる者ものに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、我われを憐あはれみ、我われを憐あはれみて、凡およその凶きよう惡あく、諸惡しよあく鬼きの侵害しんがい、及および永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、我わが逸樂いつらくの甚はなはだしき醉ゑひを醒さまして、我われに痛つう悔くわいの眞誠しんせいなる警醒けいせいと救すくひを獲えしむる轉てん正せいとを與あたへ給たまへ。

今も 萬有ばんいうの主しゆ及および宰つかさを言いひ難がたく生うみし生しやう神女しんぢよよ、彼かれに爾なんぢの牧群ぼくぐんを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、預よ言者げんしやは爾なんぢの降臨かうりんの事ことを聞きき、爾なんぢが童貞女どうていぢよより生うまれ、人人ひとびとに顯あらはれんと欲ほつするを懼おそれて曰いへり、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

我われ逸樂いつらくを以もつて絕たえず我わが靈たましひの傷きずを搔かくに、我わが疾やまひは益ますます加くははり、我われ感覺かんかくを失うしなひて醫いやされぬ者ものとして止とゞまる。神かみの母はゝよ、我われを憐あはれみて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを醫いやして救すくひ給たまへ。

神かみの母はゝよ、罪つみの暗やみは我わが靈たましひを蔽おほひ、我われハリストスの誡いましめを知しらずして、夜よに於おけるが如ごとく光ひかりの中うちを行ゆく。神聖しんせいなる光ひかりを生うみし者ものよ、祈いのる、我われを憐あはれみて照てらし給たまへ。

光榮 母はゝ童貞女どうていぢよよ、活いける神かみの言ことばは爾なんぢの腹はらに降くだり、爾なんぢの至し淨じやうなる血ちより我わが全まつたき合成がふせいを受うけて、二に性せいにして一いち位ゐを以もつて來きたり給たまへり。彼かれに我われ等らの靈たましひを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

今も 我われ肉慾にくよくと一切いつさいの逸樂いつらくに耽ふけりて、全身ぜんしん朽きう壞くわいし、汚けがらはしくして忌いむべき者ものと爲なれり。至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、我われを憐あはれみて、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて救すくひ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、祈いのる、夜よより寤さむる者ものを照てらし、我われをも爾なんぢの誡いましめに導みちびき、救世主きうせいしゆよ、我われに爾なんぢの旨むねを行おこなふを訓をしへ給たまへ。

我われ不ふ當たうなる事ことを行おこなひて、己おのれの爲ために「ゲエンナ」の火ひを燃もやし、甚はなはだしく神かみの怒いかりを起おこせり。潔いさぎよき者ものよ、我われを援たすけ給たまへ、我われを遺すつる勿なかれ。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ恒つねに諸罪しよざいの赦ゆるしを求もとむれども、至いたりて不ふ法はふなる事ことを行おこなふを止やめずして、爾なんぢを悲かなしましむ。信者しんじやの潔淨きよめたる者ものよ、我われに慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの血ちより生うみし完くわん全ぜんなる人ひと及および眞まことの神かみなるイイススに我われ等らが永遠えいゑんの火ひより救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

今も 過とほられぬ門もんよ、祈いのる、我わが爲ために眞まことの痛つう悔くわいの門もんを啓ひらき給たまへ。衆しゆう人じんの嚮きやう導だう師しなる潔いさぎよき者ものよ、我われに痛つう悔くわいの途みちを示しめし給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ心こゝろを盡つくして仁じん慈じなる神かみに籲よべり、彼かれは我わが最いと深ふかき地ぢ獄ごくより呼よぶを聆きき、我わが生命いのちを淪滅ほろびより援たすけ給たまへり。

不ふ當たうなる思念おもひの浪なみは今いま我われを沈しづむ。女宰ぢよさいよ、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われを眞まことの痛つう悔くわいの穩おだやかなる港みなとに導みちびき給たまへ。

少女せうぢよよ、我われ等ら爾なんぢを恃賴たのみと壞やぶられぬ墻かき、及および堅けん固ごなる轉達者てんたつしやとして獲えて、諸罪しよざいと惡あく慾よくと凡およその害がいより脫のがる。

光榮 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくして、泣なきて呼よぶ、生しやう神女しんぢよよ、我わが不ふ當たうなる靈たましひを將しやう來らいの審判しんぱん及および永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは己おのれの祈き禱たうを以もつて靈たましひの弱よわき者ものを堅かたむる者ものなり。故ゆゑに靈たましひの病やめる我われを棄すてずして醫いやし給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第六調。

ハリストスよ、爾なんぢは大おほいなる慈じ憐れんに因よりて地ちに降くだり、童貞女どうていぢよより身みを取とりて、地ち上じやうの者ものを悉ことごとく聖せいにし、悉ことごとく天てんに召めし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを恃たのめば罪つみを行おこなはず、爾なんぢに依よりて諸惡しよあくを免まぬかる、造成主ざうせいしゆ我わが神かみよ、爾なんぢは我われ等らの救主きうしゆなればなり。

第七歌頌

イルモス 列れつ祖その神かみよ、我われ等ら罪つみを犯おかし、不ふ法はふを行おこなひ、不義ふぎを爾なんぢの前まへに爲なし、爾なんぢが我われ等らに誡いましめしことを守まもらざりき、行おこなはざりき、然しかれども終をはりに至いたるまで我われ等らを棄すつる毋なかれ。

我わが不ふ當たうなる靈たましひが體からだに別わかれん時とき、之これを救すくひ、或あるひは之これを慰なぐさむる者ものの無なからんに、女宰ぢよさいよ、其時そのとき爾なんぢ臨のぞみて、我われを惡あく鬼きの侵害しんがいより救すくひ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくして、熱あつき淚なみだの滴したゝりを捧さゝぐ、我われ爾なんぢの仁愛じんあいを知しり、爾なんぢの恒忍ごうにんと寬くわん容ようとを知しる。爾なんぢ今いま我われを憐あはれみ、我われを赦ゆるして救すくひ給たまへ。

光榮 童貞女どうていぢよよ、我わが慾よくに耽ふけりたる不ふ當たうの靈たましひを憐あはれみ給たまへ。我わが肉慾にくよくの燃もゆるを見み、我わが弱よわきを見みて、我われに救すくひを爲なす援助たすけを與あたへ給たまへ。

今も 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、父ちゝと一體いつたいにして同どう無む原げんなる子こ及および言ことばは變易へんえきせずして、親みづから知しるが如ごとく、爾なんぢより靈たましひある身み、我われ等らと同おなじき者ものを受うけて、此これを以もつて我われ等らの性せいを新あらたにし給たまへり。

第八歌頌

イルモス 凡およそ呼吸いきある者ものと造物ざうぶつは、天軍てんぐんの讚榮さんえいし、ヘルワィムとセラフィムの戰をのゝく者ものを歌うたひ、崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

我われ己おのれの行爲しわざを思おもひて悶もだえ、審判者しんぱんしやの畏おそるべき審判しんぱんに戰をのゝく、我われ不ふ當たうの者ものは其時そのとき何なんの對こたへをか呈ていせん。世せ界かいの女宰ぢよさいよ、爾なんぢ我わが爲ために防ふせぎ護まもる者ものと爲なり給たまへ。

女宰ぢよさいよ、我わが爾なんぢの像すがたに目めを注そゝがん時とき、我われを爾なんぢの顏かんばせより退しりぞくる勿なかれ、我われに慈じ憐れんを垂たれて、定罪ていざいを免まぬかれしめ給たまへ。

光榮 聘女よめならぬマリヤ、神かみの聘女よめよ、爾なんぢに呼よぶ、我われ爾なんぢの僕ぼくを凶きよう惡者あくしやの凡およその害がいより脫のがれしめ給たまへ。ハリスティアニン等らの獨ひとりの轉達者てんたつしやよ、將しやう來らいの詰問きつもんの時ときに我われを覆おほひ給たまへ。

今も 女宰ぢよさいよ、爾なんぢの子こは人人ひとびとを神成しんせいせん爲ために爾なんぢより全まつたき人ひとと現あらはれたり。故ゆゑに彼かれに祈いのりて、我われを全まつたく潔きよめて、其その神聖しんせいなる國くにに與あづかる者ものと爲なさんことを求もとめ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 天てん使しより慶よろこべよを受うけて、己おのれの造成主ざうせいしゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢを讚ほめ揚あぐる者ものを救すくひ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは獨ひとり人人ひとびとの轉達者てんたつしやなり、潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢはハリスティアニン等らの垣墻かきなり。我われ今いま爾なんぢをハリストスの前まへに卑微ひびなる我われの爲ために祈き禱たうする者ものとして進すゝむ、願ねがはくは彼かれは爾なんぢの祈き禱たうに因よりて我われ不ふ當たうの者ものを憐あはれみ給たまはん。

我われ夜よるの行爲しわざを行おこなひしに因よりて、今いま義ぎに合かなひて苦くるしみの夜よるは我われ不ふ當たうの者ものを蔽おほひ、地ぢ獄ごくの凡およその苦く痛つうは我われに及およばんと欲ほつす。審判者しんぱんしや及および神かみを生うみし潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、求もとむ、我われを凡およその苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 我われ生命いのちの時ときを惡あくの中うちに費つひやし、地ぢ獄ごくの門もんに近ちかづきて、聊いさゝかも善ぜんの備そなへなき者ものとして彼處かしこに往ゆく。仁じん慈じなる生しやう神女しんぢよよ、我われを援たすけ給たまへ、我わが恃賴たのみを爾なんぢに負おはせたればなり。

今も 仁愛じんあいなる女宰ぢよさい、諸天しよてん使しの飾かざり、致ち命者めいしやの光くわう榮えいよ、彼かれ等らと偕ともに祈いのりて、我われ等ら衆しゆうが慈じ憐れんと罪債おひめの釋ゆるしとを蒙かうむり、神聖しんせいなる事ことを行おこなひて、善よく我わが生命いのちの行程みちを終をふるを得えんことを求もとめ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び其他常例の如し、幷に發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第六調

土曜日(スボタ)

 「スボタ」の早課

第一の誦文の後に致命者の坐誦讚詞セダレン、第六調。

主しゆよ、爾なんぢは常つねに諸しよ義ぎ人じんの爲ために光ひかりなり、蓋けだし聖せいなる者ものは爾なんぢに照てらされ、絕たえず光くわう體たいの如ごとく輝かゞやきて、不ふ虔者けんしやの燈ともしびを滅けす。我わが救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我わが燈ともしびを輝かゞやかして、我われを救すくひ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

聖せいなる者ものは受難じゆなんの苦く戰せんを忍しのびて、爾なんぢより勝しよう利りの尊榮そんえいを受うけ、不ふ法者はふしやの謀はかりごとを空むなしくして、不ふ朽きうの榮えい冠くわんを獲えたり。神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 祝しゆく福ふくせられたる者ものを爾なんぢの母はゝと名なづけし主しゆよ、爾なんぢは自じ由いうなる望のぞみを以もつて苦くるしみを受うけん爲ために來きたり、アダムを尋たづねんと欲ほつして十じふ字架じかの上うへに輝かゞやきて、諸天しよてん使しに謂いへり、我われと共ともに喜よろこべ、蓋けだし失うしなはれたる金錢ドラフマは獲えられたりと。睿えい智ちを以もつて一切いつさいを治をさめし我わが神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

第二の誦文の後に致命者の坐誦讚詞セダレン、第六調。

致ち命者めいしやが審判しんぱん座ざの前まへに顯あらはしし勇敢ゆうかんと其その多た種しゆの劇はげしき苦く難なんの忍耐にんたいとは苛虐者くるしめびと及および諸しよ王わうを驚おどろかせり。其時そのとき無む形けいの品ひん位ゐは立たちて、彼かれ等らの爲ために備そなへられたる勝しよう利りの榮えい冠くわんを執とれり。睿えい智ち者しやはハリストスを承うけ認とむるを以もつて敵てきを斃たふせり。彼かれ等らを堅かためし主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

主しゆよ、爾なんぢの聖者せいしやの記き憶おくは今日こんにちエデムの樂園らくゑんの如ごとく現あらはれたり。蓋けだし此この裏うちに萬物ばんぶつは喜よろこぶ、爾なんぢは彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまふ。

句 義ぎ人じんには憂うれひ多おほし、然しかれども主しゆは之これを悉ことごとく免まぬかれしめん。

死者の讚頌スティヒラ

誠まことに物もの皆みな虛むなし、生命いのちは影かげなり、夢ゆめなり。凡およそ地ちに生うまれし者ものは徒いたづらに忙いそがはし、聖書せいしよに云いひしが如ごとく、我われ等ら全ぜん地ちを獲うるも遂つひに墓はかに入いらん、彼處かしこには諸しよ王わうと貧まづしき者ものと共ともに在あり。故ゆゑにハリストス神かみよ、移うつされし者ものを安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ中ちゆう心しん中情ちゆうじやうより歎息たんそくを爾なんぢに奉たてまつりて、爾なんぢの寬くわん容ようなる轉達てんたつを求もとむ。獨ひとり祝しゆく讚さんせらるる者ものよ、我わが深ふかく慾よくに耽ふけりたる靈たましひを憐あはれみて、大仁だいじん慈じなる神かみに我われを定罪ていざい及および火ひの池いけより脫のがれしめんことを祈いのり給たまへ。

聖致命者、成聖者、克肖者、及び死者の規程カノン。イオシフの作。第六調。

第一歌頌

イルモス 見みるべきファラオンは全軍ぜんぐんと共ともに溺おぼらされ、イズライリは海うみの中なかを過とほりて呼よべり、主しゆ吾わが神かみに謳うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

致ち命者めいしやは明あきらかなる智慧ちゑを以もつて暗くらきを照てらして、不ふ虔けんなる苛虐者くるしめびとを辱はづかしめ、勝しよう利り者しやと現あらはれて、暮くれざる光ひかりに移うつり給たまへり。

ハリストスの成聖者せいせいしや、克肖者こくせうしやと預よ言者げんしやとの會くわい、及および衆しゆう義ぎ人じんの慶けい賀がする隊たいは諸德しよとくの華くわ美びに輝かゞやきて、天てんの居所すまひに入いり給たまへり。

ハリストスに從じゆう屬ぞくせし婦女をんなの大數たいすうは甚はなはだしき誘惑いざなひを以もつてエワを滅ほろぼしし者ものを雄拔ををしき功勞こうらうにて踐ふみ給たまへり。故ゆゑに神聖しんせいなる歌うたを以もつて讚さん美びせらる。

光榮、死者讚詞 始はじめて土つちより人ひとを造つくりしハリストスよ、祈いのる、爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを義ぎ人じんの居所すまひに、安息あんそくの處ところに安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢは至し仁じんの主しゆなればなり。

今も、生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは萬物ばんぶつを造つくりし主しゆを生うみて、ヘルワィム及およびセラフィムより聖せいなる者ものと現あらはれたり。絕たえず彼かれに爾なんぢを讚榮さんえいする爾なんぢの諸僕しよぼくを宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

又死者の規程カノン、月課經の規程なき時に序を逐ひて之を歌ふ。フェファンの作。

第一歌頌

イルモス 「イズラィリは陸の如く淵を蹈み渡り」。

附唱 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

ハリストスよ、勇敢ゆうかんなる致ち命者めいしやは常つねに爾なんぢに祈いのる、爾なんぢが地ちより移うつしし信者しんじやに天てんの宮みやに於おいて永遠えいゑんの福ふくを受うくるを得えしめ給たまへ。

附唱 主しゆよ、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。

萬有ばんいうを飾かざりし主しゆよ、爾なんぢは卑いやしき者ものと高たかき者ものとを取とりて、我われ人ひとを合成がふせいせられし生物いきものとして造つくり給たまへり。求もとむ、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。

光榮 爾なんぢは始はじめに我われを樂園らくゑんに置おきて、之これに住すまひ、之これを理をさむる者ものと爲なし、我わが爾なんぢの誡いましめに背そむきしに因よりて、之これより逐おひ出いだせり。求もとむ、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。

今も、生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、始はじめて肋あばら骨ぼねを以もつて我わが原げん母ぼエワを造つくりし主しゆは爾なんぢの至し淨じやうなる胎たいより身みを衣きて、此これを以もつて死しの力ちからを滅ほろぼし給たまへり。

第三歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢを信しんずる信しんの堅かたき石いしに我わが意思おもひを堅かため給たまへ、我われ爾なんぢ仁じん慈じの主しゆを避所かくれが及および防固かためとして有たもてばなり。

受難者じゆなんしやは肉體にくたいの苦くるしみに付わたされて、喜よろこびて苦くるしみなき報むくいを仰あふげり。今いま彼かれ等らは恩おん寵ちようを以もつて我われ等らの多おほくの苦くるしみを鎭しづめ給たまふ。

神聖しんせいなる成聖者せいせいしやは堅けん固ごなる智慧ちゑを以もつて凶きよう惡あくの猛獸まうじうを逐おひて、ハリストスの養育やういくせし者ものを其その惡あくに害そこなはるるなく護まもり給たまへり。

克肖者こくせうしやの會くわいは甘あまんじて主しゆの軛くびきを負おひ、肉にくの念おもひを殺ころして、永遠えいゑんの生命いのちを受うけたり。

光榮 仁じん慈じなるハリストスよ、敬虔けいけんを以もつて度生いのちより移うつりし者ものを永久えいきうの火ひより脫のがれしめて、彼かれ等らに罪債おひめの赦ゆるしと永遠えいゑんの樂たのしみとを與あたへ給たまへ。

今も 至し聖せいなる女宰ぢよさいよ、ハリストスを愛あいせし女等をんなたちは言いひ難がたく彼かれを生うみし爾なんぢを欣よろこばしき心こゝろを以もつて環めぐりて祝いはふ。

又 イルモス 「爾が信者の角を高うし」。

生命いのちを賜たまふ主しゆよ、法はふに遵したがひて苦くるしみを受うけて、爾なんぢに勝しよう利りの榮えい冠くわんを以もつて飾かざられたる致ち命者めいしやは熱心ねつしんに爾なんぢに祈いのりて、移うつされし信者しんじやに永遠えいゑんの尊そん貴きを賜たまはんことを求もとむ。

爾なんぢは先さきに多おほくの奇き跡せきと奇き徵ちようとを以もつて我われ迷まよひし者ものを敎をしへ、遂つひに慈じ憐れんなる主しゆとして、己おのれを罄つくして我われを尋たづね、我われを獲えて救すくひ給たまへり。

光榮 仁じん慈じなる主しゆよ、流ながるる朽きう壞くわいより爾なんぢに移うつりし者ものを信しんと恩おん寵ちようとを以もつて義ぎと爲なして、永遠えいゑんの居處すまひに欣よろこばしく入いるを得えしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、爾なんぢの如ごとく無む玷てんなる者ものなし、蓋けだし古こ世せいより爾なんぢは獨ひとり眞まことの神かみ、死しの力ちからを破やぶりし主しゆを胎内たいないに孕はらみ給たまへり。

第四歌頌

イルモス 我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、爾なんぢの作爲わざを悟さとりて驚おどろけり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

受難者じゆなんしやは立たちて、傲慢がうまんの者ものが彼かれ等らの足そく下かに倒たふさるるを見みて、感謝かんしやして萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆを讚榮さんえいせり。

光くわう明めいなる言ことばにて備そなへられたる成聖者せいせいしやは人人ひとびとを異い端たんの幽暗くらやみより救すくひて、明悟さとりの光ひかりに導みちびき給たまへり。

克肖者こくせうしやは熾炭やけずみの如ごとく現あらはれて、熱切ねつせつに神かみを愛あいし、肉體にくたいの諸慾しよよくを焚やきたり。故ゆゑに大おほいに讚榮さんえいせらる。

光榮 生いける者ものと死しせし者ものとを司つかさどる主宰しゆさいよ、移うつしし者ものを爾なんぢの悅よろこびを得えたる衆しゆうと偕ともに安やすんぜしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢより言いひ難がたく身みを衣きたる主しゆは雄拔ををしく勤勞きんらうせし婦女をんなの會くわいを受うけ給たまへり。

又 イルモス 「尊き敎會は淨き心より」。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは量はかり難がたき睿えい智ちと、完くわん全ぜんなる慈じ憐れんと、恩惠おんけいとを彌いよいよ著あらはさんと欲ほつして、致ち命者めいしやの會くわいを諸天しよてん使しに合あはせ給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢに移うつされし者ものに樂たのしむ者ものの居所すまひ、潔いさぎよき歡喜よろこびの聲こゑのある處ところに於おいて爾なんぢの至し淨じやうなる光くわう榮えいを受うくるを得えしめ給たまへ。

光榮 大仁だいじん慈じなる主しゆよ、爾なんぢの神聖しんせいなる權けんを以もつて地ちより移うつしし爾なんぢを歌うたふ者ものを受うけて、其その罪つみの暗昧くらやみを除のぞきて、彼かれ等らを光ひかりの子こと爲なし給たまへ。

今も 主宰しゆさいは爾なんぢの至し淨じやうなる器うつは、美うるはしき宮みや、至し聖せいなる櫃ひつ、童貞どうていの聖所せいしよ、イアコフの榮さかえとして選えらび給たまへり。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを世せ界かいに輝かゞやかししハリストスよ、我われ夜中よはより爾なんぢに呼よぶ者ものの心こゝろを照てらして、我われを救すくひ給たまへ。

受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは上うへなる恩おん寵ちようにて織おりたる衣ころもを衣きて、敵てきを裸ら體たいにし給たまへり。

我われ等らは聖せいなる預よ言者げんしやと偕ともに神しん智ちなる司し祭首さいしゆ、及および神かみの悅よろこびを獲えたる克肖者こくせうしやを尊たふとまん。

我われ等らは聖詠せいえいと詩賦しふとを以もつて善よく神かみの悅よろこびを獲えたる婦女をんなの會くわいを讚ほめ揚あげん。

光榮 主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを爾なんぢの諸しよ義ぎ人じんの居所すまひに入いれて、其その生しやう涯がい犯おかしし諸罪しよざいを顧かへりみる勿なかれ。

今も 女宰ぢよさいよ、爾なんぢはハリストス、獨ひとり仁じん慈じなる主しゆに祈いのりて、我われ等らを凡およその敵てきの害がいより救すくふ者ものと現あらはれたり。

又 イルモス 「至仁なる神の言よ」。

致ち命者めいしやは聖せいにせられし祭實さいじつ、人ひとの性せいの初實はつものとして至し榮えいなる神かみに獻けんぜられて、常つねに我われ等らの爲ために救すくひを求もとむ。

主しゆよ、先さきに寢ねむりし爾なんぢの信しんなる諸僕しよぼくに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへて、天てんに居をることと恩惠おんけいに與あづかることとを得えしめ給たまへ。

光榮 獨ひとり本性ほんせいにて生命いのちの泉いづみなる者もの、誠まことに測はかり難がたき仁じん慈じの淵ふち、獨ひとり不死ふしなる主しゆよ、終をはりし者ものに爾なんぢの國くにを獲えしめ給たまへ。

今も 女宰ぢよさいよ、爾なんぢより生うまれし主しゆは世せ界かいの爲ために力ちからと歌うた、亾ほろびし者ものの爲ために救すくひなり、信しんを以もつて爾なんぢを讚さん美びする者ものを地ぢ獄ごくの門もんより脫のがれしめ給たまふ。

第六歌頌

イルモス ハリストスよ、我われ罪つみの鯨くぢらに呑のまれて、爾なんぢに呼よぶ、預よ言者げんしやの如ごとく我われを淪滅ほろびより脫のがれしめ給たまへ。

受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは神聖しんせいなる血ちの流ながれを以もつて無む形けいの諸敵しよてきを溺おぼらし、信者しんじやの心こゝろを潤うるほし給たまへり。

世よ及および諸慾しよよくの爲ために己おのれを釘ていせし克肖者こくせうしやと、睿えい智ちなる成聖者せいせいしやとは神聖しんせいなる光くわう榮えいを得えたり。

我われ等らは預よ言者げんしやの品ひん位ゐ、及および善よく勤勞きんらうせし尊そん貴きなる婦女をんなの會くわいを職しよくとして讚揚さんやうす。

光榮 神かみよ、先さきに寢ねむりし者ものの諸罪しよざいを顧かへりみずして、其その靈たましひを爾なんぢの選えらびたる者ものと偕ともに安やすんぜしめ給たまへ。

今も 身みにてハリストスを生うみし童貞女どうていぢよよ、我わが身みの慾よくを殺ころして、我わが靈たましひを爾なんぢの轉達てんたつを以もつて活いかし給たまへ。

又 イルモス 「誘惑の猛風にて」。

仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに釘ていせられて、爾なんぢの苦くるしみに效ならふ致ち命者めいしやの會くわいを己おのれの許もとに集あつめ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、爾なんぢに移うつされし者ものを安やすんぜしめ給たまへ。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢが言いひ難がたき光くわう榮えいを以もつて雲くもに乘のりて、嚴おごそかに全ぜん世せ界かいを審判しんぱんせん爲ために來きたる時とき、地ちより受うけし爾なんぢの信しんなる諸僕しよぼくに欣よろこばしく爾なんぢを迎むかふるを得えしめ給たまへ。

光榮 生命いのちの泉いづみたる主宰しゆさいよ、信しんに於おいて此この世よを逝さりて、爾なんぢに移うつりし爾なんぢの諸僕しよぼくに天堂てんだうの福樂ふくらくを獲えしめ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、我われ等らは神かみの誡いましめに背そむきて地ちに歸かへれり、然しかれども爾なんぢに依よりて死しの朽きう壞くわいを振ふるひ落おとして、地ちより天てんに升のぼりたり。

第七歌頌

イルモス 爾なんぢの敬虔けいけんなる少者せうしやの歌うたを聞ききて、燃もゆる爐ゐろりに露つゆを灑そゝぎし主しゆ、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我われ等らはハリストスの受難者じゆなんしや、血ちの雨あめを以もつて甚はなはだしき無む神しんの焰ほのほを滅けしし者ものを歌うたを以もつて尊たふとまん。

光くわう榮えいなる司し祭さい諸しよ長ちやうは諸しよ異い端たんの冬ふゆを融とかして、喜よろこびて神聖しんせいなる春はるに移うつり給たまへり。

修齋者しゆさいしやよ、爾なんぢ等らは忍耐にんたいを以もつて聖神せいしんの豐ゆたかなる恩おん寵ちようを嗣つぎて、惡あく鬼きの大數たいすうを滅ほろぼせり。

光榮 大仁だいじん慈じなる主しゆよ、信しんに於おいて生命いのちより移うつされし者ものに爾なんぢの天堂てんだうの福樂ふくらくを嗣つがしめ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、生うまれし後のちにも爾なんぢを童貞女どうていぢよと顯あらはしし主しゆは爾なんぢに從したがひし聖せいなる婦女をんなの會くわいを救すくひ給たまへり。

又 イルモス 「天使は敬虔なる少者の爲に」。

爾なんぢの血ちを以もつて始はじめの罪つみより救すくはれし致ち命者めいしやは、己おのれの血ちに注そゝがれて、明あきらかに爾なんぢの屠ほふらるるを示しめす。吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

猛烈まうれつなる死しを殺ころしし生命いのちの首かしらたる言ことばハリストスよ、信しんを以もつて寢ねむりて、爾なんぢに歌うたひて、吾わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらると言いふ者ものを受うけ給たまへ。

光榮 神聖しんせいなる氣息いきを以もつて我われ人ひとを活いかしし無む原げんなる神かみ救世主きうせいしゆよ、移うつされし者ものに爾なんぢの國くにを獲えしめて、爾なんぢに歌うたはしめ給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

今も 純じゆん潔けつ無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢは死しの門もんを破やぶり、柱はしらを折くじきし神かみを孕はらみて、萬物ばんぶつより高たかき者ものと爲なれり。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは歌うたを以もつて爾なんぢを神かみの母はゝとして讚榮さんえいす。

第八歌頌

イルモス 爾なんぢの敬虔けいけんなる少者せうしやは爐ゐろりの中うちにヘルワィムに效ならひて、三聖さんせいの歌うたを歌うたへり、崇あがめよ、歌うたへよ、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

苦くるしみの激浪あらなみに漾たゞよはさるる神聖しんせいなる致ち命者めいしやは、勇敢ゆうかんに由よりて恩おん寵ちようを以もつて安靜あんせいの處ところに導みちびかれて、上うへの國くにに到いたれり。

克肖こくせうにして睿えい智ちなる成聖者せいせいしやは日ひの如ごとく輝かゞやきて、敎をしへの光くわう線せんと醫治いやしの光くわう照せうとを以もつて全ぜん地ちを照てらし給たまふ。

光くわう榮えいなる預よ言者げんしやと、司し祭さい諸しよ長ちやうと、克肖者こくせうしや、及および義ぎ人じん等ら、致ち命者めいしやと聖せいなる女をんなの大數たいすうよ、爾なんぢ等らの全ぜん牧群ぼくぐんを惡あく鬼きに動うごかされざる者ものとして護まもり給たまへ。

光榮 我われ等らは古こ世せいよりの義ぎ人じん等ら、及および神かみの言ことばを述のべし諸しよ預よ言者げんしやを歌うたひて、傷しやう感かんの情じやうを以もつて呼よばん、言ことばよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて信しんを以もつて寢ねむりし者ものを安やすんぜしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、婦女をんなの會くわいは爾なんぢ神かみに近ちかき完くわん美びなる者ものを愛あいし、爾なんぢの蹤あとに從したがひて萬有ばんいうの主宰しゆさいの前まへに進すゝめられて、心こゝろを合あはせて爾なんぢを讚揚さんやうす。

又 イルモス 「ハリストスよ、爾は敬虔なる者の爲に」。

致ち命者めいしや受難者じゆなんしやは勇いさましく勤勞きんらうを顯あらはし、勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけて、ハリストスに呼よぶ、爾なんぢ主しゆを世世よよに讚ほめ揚あぐ。

現生げんせいを遺のこし、爾なんぢ主宰しゆさいに移うつりて、爾なんぢ主しゆを世世よよに讚ほめ揚あぐる信者しんじやを、慈じ憐れんなる主しゆとして、溫をん和わに受うけて、安やすんぜしめ給たまへ。

光榮 救世主きうせいしゆよ、凡およそ先さきに寢ねむりて、爾なんぢ主しゆを世世よよに讚ほめ揚あぐる者ものを、爾なんぢを信しんずる信しんと恩おん寵ちようとを以もつて義ぎと爲なして、今いま溫柔をんじうなる者ものの地ちに居をるを得えしめ給たまへ。

今も 至いたりて福ふくたる者ものよ、我われ等ら皆みな爾なんぢを讚揚さんやうす、蓋けだし爾なんぢは實じつに福ふくたる言ことば、我われ等らの爲ために肉體にくたいと成なりし者ものを生うみ給たまへり。我われ等ら彼かれを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」。及び其他の句、附唱と共に。

第九歌頌

イルモス 天てん使しより慶よろこべよを受うけて、己おのれの造成主ざうせいしゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢを讚ほめ揚あぐる者ものを救すくひ給たまへ。

受難者じゆなんしや致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは潔いさぎよき羔こひつじとして主宰しゆさいに攜たづさへられたり。彼かれに我われ等らの靈たましひを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

成聖者せいせいしやよ、爾なんぢ等らは牧ぼく師しとして信者しんじやを敬虔けいけんの草くさ場ばに牧ぼくし給たまへり。今いまは天てんの牢をりに住すまひ給たまふ。

我われ等らは聖せいなる成聖者せいせいしやと、諸しよ預よ言者げんしや、及および勇いさましく苦くるしみを受うけし女等をんなたちと偕ともに克肖者こくせうしやの會くわいをも讚さん美びせん。

光榮 大仁だいじん慈じなる主しゆよ、移うつされし者ものを聖人せいじんの會くわいの樂たのしむ所ところの永久えいきうの歡喜よろこびに與あづからしめ給たまへ。

今も 光ひかりを生うみし童貞女どうていぢよよ、我わが靈たましひを照てらして、罪つみと我わが怠惰おこたりとの暗昧くらやみを逐おひ給たまへ。

又 イルモス 「天使の品位すら」。

望德ばうとくは致ち命者めいしやの會くわいを堅かためて、其その爾なんぢを愛あいする愛あいを盛さかんに燃もやせり、彼かれ等らの靈目れいもくの前まへに將しやう來らいの永久えいきうの安息あんそくを徵しるしたればなり。仁じん慈じなる主しゆよ、移うつされし信者しんじやに斯この安息あんそくを得えしめ給たまへ。

ハリストスよ、信しんを以もつて移うつされし者ものを爾なんぢの神聖しんせいなる光ひかりにて輝かゞやかし、獨ひとり仁じん慈じなる主しゆとして、彼かれ等らをアウラアムの懷ふところに安息あんそくせしめて、之これに永遠えいゑんの福樂ふくらくを與あたへ給たまへ。

光榮 本性ほんせいにて仁じん慈じ慈じ憐れんなる主しゆ、恩惠おんけいと仁愛じんあいとの淵ふちなる救世主きうせいしゆよ、此この患くわん難なんの處ところ及および死しの蔭かげより移うつしし者ものを爾なんぢの光ひかりの輝かゞやく處ところに居をらしめ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつ無む玷てんなる者ものよ、我われ等らは爾なんぢを聖せいなる幕まくと匱ひつ、及および律法りつぱふと恩おん寵ちようとの石板せきばんとして知しる。爾なんぢの中ちゆう保はうを以もつて赦罪しやざいは獲えられたり、蓋けだし人人ひとびとは爾なんぢの腹はらより身みを取とりし主しゆの血ちに緣よりて義ぎとせらるるを得う。

次ぎて「常に福にして」、聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

「凡そ呼吸ある者」に致命者の讚頌スティヒラ、第六調。

主しゆよ、爾なんぢの聖者せいしやの記き憶おくに於おいて悉ことごとくの造物ざうぶつは祭まつる、天てんは天てん使等しらと偕ともに喜よろこび、地ちは人人ひとびとと偕ともに樂たのしむ。彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

主しゆよ、若もし我われ等らの爲ために祈いのる爾なんぢの聖者せいしやと、我われ等らを憐あはれむ爾なんぢの慈じ憐れんあらずば、我われ等ら如何いかで爾なんぢ諸天しよてん使しより恒つねに讚榮さんえいせらるる主しゆを讚ほめ歌うたふを得えん。心こゝろを知しる者ものよ、我われ等らの靈たましひを宥なだめ給たまへ。

致ち命者めいしやの記き憶おくは主しゆを畏おそるる者ものの爲ために喜悅よろこびなり、蓋けだし彼かれ等らはハリストスの爲ために苦くるしみを忍しのびて、彼かれより榮えい冠くわんを受うけたり。今いまは勇敢いさみを以もつて我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまふ。

我わが神かみは其その選えらびたる聖者せいしやを奇異きいなる者ものと爲なし給たまへり。彼かれの諸僕しよぼくよ、喜よろこびて樂たのしめ、彼かれは爾なんぢ等らの爲ために榮えい冠くわんと己おのれの國くにとを備そなへたればなり。惟たゞ爾なんぢ等らに祈いのる、我われ等らをも忘わするる勿なかれ。

死者讚詞 昔むかしエデムに於おいて木きの果みを食くらふことはアダムの爲ために病やまひと爲なれり、蛇へびが其内そのうちに毒どくを吐はきたればなり、故ゆゑに死しは全ぜん人類じんるゐに入いりて人ひとを食くらへり。然しかれども主宰しゆさい來きたりて、蛇へびを斃たふして、我われ等らに復ふく活くわつを賜たまへり。故ゆゑに我われ等ら彼かれに呼よばん、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢが受うけし者ものを宥なだめて、諸聖人しよせいじんと偕ともに安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢ人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ等らは爾なんぢより身みを取とりし者ものの神かみなるを悟さとれり、彼かれに我われ等らの靈たましひの救すくひの爲ために祈いのり給たまへ。

挿句くづけに死者の讚頌スティヒラ、第六調。

大仁だいじん慈じなる主宰しゆさい、我われ等らの爲ために無む量りやうの慈じ憐れんと神聖しんせいなる仁じん慈じの盡つくされぬ泉いづみとを有たもつ救世主きうせいしゆよ、爾なんぢに移うつりし者ものを生いける者ものの地ち、愛あいすべく慕したふべき居處すまひに入いれて、永久えいきうの嗣し業げふを與あたへ給たまへ。蓋けだし爾なんぢは衆しゆう人じんの爲ために爾なんぢの血ちを流ながして、生命いのちを施ほどこす價あたひを以もつて世せ界かいを贖あがなひ給たまへり。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。

ハリストスよ、爾なんぢは甘あまんじて生いのちを施ほどこす死しを忍しのび、信者しんじやの爲ために生命せいめいを流ながして、永久えいきうの福樂ふくらくを賜たまへり。其中そのうちに復ふく活くわつの望のぞみを抱いだきて寢ねむりし者ものを入いれて、爾なんぢが獨ひとり罪つみなく、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆなるに因よりて、恩おん寵ちようを以もつて彼かれ等らの諸罪しよざいを赦ゆるし給たまへ、我われ等ら衆しゆう人じんが爾なんぢの名なを歌うたひ、爾なんぢの救すくひを施ほどこす仁愛じんあいを讚榮さんえいせん爲ためなり。

句 彼かれ等らの靈たましひは福ふくに居をらん。

ハリストスよ、我われ等らは爾なんぢを神かみたる權けんを以もつて生せい者しやを司つかさどり、死し者しやを治をさむる主しゆなりと知しりて祈いのる、仁愛じんあいなる主しゆよ、爾なんぢの信しんなる諸僕しよぼく、爾なんぢ惟一ゆゐいちの恩主おんしゆに移うつりし者ものを爾なんぢの選えらびたる者ものと偕ともに安樂あんらくの處ところ、聖せいなる光ひかりの中うちに安やすんぜしめ給たまへ。獨ひとり大仁だいじん慈じなる主しゆよ、爾なんぢは己おのれの像ざうに循したがひて造つくりし者ものを憐あはれみて、神かみとして彼かれ等らを救すくひ給たまへばなり。

光榮、今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ、婚姻こんいんに與あづからざる母はゝよ、爾なんぢは神かみに適かなふ居處すまひと現あらはれて、神かみを容いれて、二に性せい一いち位ゐなるハリストスを生うみ給たまへり。潔いさぎよき者ものよ、彼かれ、產さんの後のちにも爾なんぢを無む玷てんなる童貞女どうていぢよと護まもりし獨生どくせいの冢ちよう子しに祈いのりて、信しんを以もつて寢ねむりし者ものの靈たましひを光ひかりの中うち、不ふ朽きうなる福樂ふくらくの中うちに安息あんそくせしめんことを求もとめ給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、及び發放詞。第一時課、常例の聖詠、及び最後の發放詞。

横線 - 『八調経』第六調

 「スボタ」の聖体礼儀に

「スボタ」の眞福詞、第六調。

神かみ我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを憶おもひて、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

光くわう榮えいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは火ひと劍つるぎと猛獸まうじうの奮迅ふんじんとを畏おそれずして、永久えいきうの生命いのちを獲え給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

諸しよ預よ言者げんしやと敎けう師し、克肖者こくせうしやと義ぎ人じん等らを榮えいせし仁愛じんあいの主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

言ことばよ、信しんに於おいて暫ざん時じの生命いのちより移うつしし者ものを衆しゆう聖人せいじん及および義ぎ人じんと偕ともに容いれ給たまへ、我われ等らが爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

光榮 我われ等らは父ちゝと子こと聖神せいしんとを讚榮さんえいして言いふ、聖せいなる三者さんしやよ、我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは萬族ばんぞくの中うちに讚さん美びたる者ものと現あらはれたり、實じつに讚さん美びたる神かみを言いひ難がたく生うみ給たまひしに因よる。

第六調 終

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