『八調経』第五調

土曜日(スボタ)

 「スボタ」の小晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に四句を立てて八調經の主日の讚頌スティヒラ三章を歌ふ、其第一は二次、第五調。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

ハリストスよ、爾なんぢは尊たふとき十じふ字架じかにて惡あく魔まを辱はづかしめ、復ふく活くわつにて罪つみの螫刺はりを鈍にぶくし、我われ等らを死しの門もんより救すくひ給たまへり。獨生どくせい子しよ、我われ等ら爾なんぢを讚榮さんえいす。

人類じんるゐに復ふく活くわつを賜たまふ主しゆは羊ひつじの如ごとく屠宰ほふりの爲ために牽ひかれたり。地ぢ獄ごくの君きみは之これを畏おそれ、悲かなしみの門もんは擧あげられたり、蓋けだし光くわう榮えいの王わうハリストスは入いりて、縛なはめに在ある者ものに出いでよ、幽暗くらやみに在ある者ものに顯あらはれよと言いへり。

大おほいなる奇き迹せきや、見みえざる者ものの造成主ざうせいしゆは、人ひとを愛あいするに因よりて、身みにて苦くるしみを受うけ、不死ふしの者ものは復ふく活くわつせり。諸民しよみん諸しよ族ぞく來きたりて、之これに伏拜ふくはいせん、蓋けだし其その惠めぐみに因よりて、我われ等らは迷まよひより脫のがれて、三さん位ゐにして惟一ゆゐいちなる神かみを歌うたふを習ならへり。

光榮、今も、生神女讚詞。定理歌ドグマティク。第五調。

我われ等らは神かみに妝よそほはれたる尊そん貴きなる少女せうぢよ、ヘルワィムより至いたりて尊そん貴きなる者ものを尊たふとまん、蓋けだし萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆは人ひとと爲ならんと欲ほつして、言いひ難がたく其内そのうちに入いり給たまへり。嗚呼あゝ奇異きいなる事こと、至し榮えいなる奧密あうみつや、孰たれか之これを聞ききて驚おどろかざらん、神かみは人ひとと爲なりて變易へんえきせず、童貞どうていの門もんを過とほりて、門もんは元もとのまま閉とざさる、預よ言者げんしやの言いへるが如ごとし、人ひと永ながく之これを過とほらず、唯たゞ主しゆイズライリの神かみ、大おほいなる憐あはれみを有たもつ者ものは過とほらん。

次ぎて「穩なる光」。其後提綱ポロキメン、「主は王たり」。三次。

句 主は能力を衣、又之を帶にせり。

次に「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。司祭聯禱を誦せず。我等直に次の讚頌スティヒラを歌ふ。

挿句くづけに主日の讚頌スティヒラ、第五調。

爾なんぢ身みを取とりたれども、天てんを離はなれざりし救世主きうせいしゆハリストスを歌うたの聲こゑを以もつて讚ほめ揚あぐ。蓋けだし爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなるによりて、我わが族やからの爲ために十じふ字架じかと死しとを受うけて、地ぢ獄ごくの門もんを破やぶり、三みつ日目かめに復ふく活くわつして、我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへり。

又生神女の讚頌スティヒラ、第五調。

句 我われ爾なんぢの名なを萬世ばんせいに誌しるさしめん。

潔いさぎよき少女せうぢよよ、我われ今いま手てを伸のべて爾なんぢに向むかひ、汚けがれたる口くちを祈禱いのりの爲ために啓ひらき、心こゝろの膝ひざを屈かゞめ、靈たましひの中うちに爾なんぢの至し淨じやうなる足あしに觸ふれて、爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくす。爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我わが諸しよ病びやうを醫いやし、我わが多た年ねんの多おほくの治ぢし難がたき傷創きずを醫いやし、我われを見みゆると見みえざる敵てきより救すくひ、我わが怠惰おこたりの重おもきを輕かろくし給たまへ、我わが爾なんぢ世せ界かいが大おほいなる憐あはれみを得えたる所以ゆゑんの者ものを歌うたひて讚榮さんえいせん爲ためなり。

句 女ぢよよ、之これを聽きき、之これを觀み、爾なんぢの耳みゝを傾かたぶけよ。

言いひ難がたく神かみの子こを孕はらみて、之これを生うみし純じゆん潔けつなる者ものよ、慶よろこべ、彼かれは我われ等らの爲ために實じつに爾なんぢの血ちより身みを受うけ、智慧ちゑ及および自じ主しゆある靈たましひを有たもてり、蓋けだし言いひ難がたき慈じ憐れんと仁じん慈じとに因よりて全まつたくアダムを衣き給たまへり。之これに因よりてハリストスは我われ等らの爲ために二に性せいの者ものとして現あらはれ、己おのれの内うちに兩りやう性せいの行動かうどうを示しめし給たまへり。我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

句 民みん中ちゆうの富とめる者ものは爾なんぢの顏かんばせを拜をがまん。

慶よろこべよ、至いたりて讚さん美びたる童貞女どうていぢよ、神かみの選えらびて愛あいする所ところのイアコフの榮さかえ、救すくはるる者ものの門もん、火焰ほのほを執とる鉗ひばさみ、詛のろひの解かい釋しやく、陷おちいりし者ものの再さい興こう、神かみを宿やどしし腹はら、ヘルワィムより至し聖せいなる者もの、造物ざうぶつに超こゆる者もの、仰あふぎ難がたき顯現あらはれ、新あらたなる風聞きこえ、言いひ難がたき宣傳つたへ、言ことばの車くるま、光ひかれる雲くも、之これより日ひは輝かゞやきて、我われを照てらし、黑暗くらやみに在ある者ものに大おほいなる憐あはれみを賜たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢに於おける預よ言げんは應かなへり。預よ言者げんしやの中うち或者あるものは爾なんぢを東ひがしに向むかふエデムの門もん、爾なんぢと全ぜん世せ界かいとの造成主ざうせいしゆの外ほかに孰たれも過とほらざりし者ものと名なづけたり。或者あるものは火ひに焚やかるる棘いばらと爲なせり、蓋けだし神性しんせいの火ひは爾なんぢの内うちに在ありて、爾なんぢは焚やかれぬ者ものとして止とゞまれり。或者あるものは聖せいなる山やまと爲なせり、之これより人ひとの手てに因よらずして隅石すみいしは截きり分わけられて、無む形けいのナウホドノソルの像ざうを碎くだけり。神かみの母はゝよ、爾なんぢに於おける祕ひ密みつは實じつに大おほいにして至し榮えいなり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚榮さんえいす。爾なんぢに依よりて我わが靈たましひの救すくひ成なりたればなり。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、「信者よ、父と聖神と偕に」。生神女讚詞、「通られぬ主の門よ、慶べ」。聯禱及び發放詞。
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 「スボタ」の大晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十句を立てて主日の讚頌スティヒラを歌ふ、第五調。

句 我わが靈たましひを獄ひとやより引ひき出いだして、我われに爾なんぢの名なを讚榮さんえいせしめ給たまへ。

ハリストスよ、爾なんぢは尊たふとき十じふ字架じかにて惡あく魔まを辱はづかしめ、復ふく活くわつにて罪つみの螫刺はりを鈍にぶくし、我われ等らを死しの門もんより救すくひ給たまへり。獨生どくせい子しよ、我われ等ら爾なんぢを讚榮さんえいす。

句 爾なんぢ恩おんを我われに賜たまはん時とき、義ぎ人じんは我われを環めぐらん。

人類じんるゐに復ふく活くわつを賜たまふ主しゆは羊ひつじの如ごとく屠宰ほふりの爲ために牽ひかれたり。地ぢ獄ごくの君きみは之これを畏おそれ、悲かなしみの門もんは擧あげられたり、蓋けだし光くわう榮えいの王わうハリストスは入いりて、縛なはめに在ある者ものに出いでよ、幽暗くらやみに在ある者ものに顯あらはれよと言いへり。

句 主しゆよ、我われ深ふかき處ところより爾なんぢに呼よぶ。主しゆよ、我わが聲こゑを聞きき給たまへ。

大おほいなる奇き迹せきや、見みえざる者ものの造成主ざうせいしゆは、人ひとを愛あいするに因よりて、身みにて苦くるしみを受うけ、不死ふしの者ものは復ふく活くわつせり。諸民しよみん諸しよ族ぞく來きたりて、之これに伏拜ふくはいせん、蓋けだし其その惠めぐみに因よりて、我われ等らは迷まよひより脫のがれて、三さん位ゐにして惟一ゆゐいちなる神かみを歌うたふを習ならへり。

又讚頌スティヒラ、アナトリイの作。同調。

句 願ねがはくは爾なんぢの耳みゝは我わが禱いのりの聲こゑを聽きき納いれん。

我われ等ら暮くれの伏拜ふくはいを爾なんぢ暮くれざる光ひかりに奉たてまつる、爾なんぢは世よの季すゑに、鏡かゞみに於おけるが如ごとく、身みに藉よりて世せ界かいに耀かゞやき、地ぢ獄ごくにまで降くだり、彼處かしこにある幽暗くらやみを破やぶり、復ふく活くわつの光ひかりを諸民しよみんに顯あらはし給たまへり。光ひかりを施ほどこす主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

我われ等らはハリストス我わが救すくひの首かしらを讚さん頌しようす、蓋けだし彼かれ死しより復ふく活くわつせしに、世せ界かいは迷まよひより救すくはれたり、天てん使しの軍ぐんは歡よろこび、惡あく魔まの誘いざなひは去さり、墜おちたるアダムは起おき、ディアワォルは空むなしくせられたり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

番兵ばんぺいは不ふ法はふの者ものより敎をしへられたり、ハリストスの復ふく活くわつを匿かくせ、銀ぎんを受うけて云いへ、我われ等らが寢いねたる時とき、死し者しやは墓はかより竊ぬすまれたりと。誰たれか之これを見みたる、誰たれか何時いつか死し者しやの竊ぬすまれしを聞ききたる、況いはんや其その香料かうれうを傅ぬられ、裸ら體たいになり、歛葬はうむりの衣ころもを墓はかに遺のこしたるをや。イウデヤ人じんよ、惑まどふ毋なかれ、諸しよ預よ言者げんしやの言ことばを學まなびて、彼かれが實じつに世せ界かいの贖しよく罪ざい者しや及および全能者ぜんのうしやなるを悟さとれ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

地ぢ獄ごくを虜とりこにし、死しを滅ほろぼしし主しゆ、尊たふとき十じふ字架じかにて世せ界かいを照てらしし我わが救世主きうせいしゆよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

又生神女の讚頌スティヒラ、アモレイのパワェルの作。第五調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは諸造物しよざうぶつより最高いとたかき者ものにして、實じつにヘルワィムの如ごとき寶はう座ざと爲なれり、蓋けだし神かみの言ことばは我われ等らの像かたちを興おこさんと欲ほつして爾なんぢの内うちに入いり、身みを以もつて爾なんぢより出いでて、我われ等らの爲ために十じふ字架じかの苦くるしみを受うけて、神かみとして、我われ等らの變へんぜられたる性せい、曾かつて定罪ていざいせられし者ものに復ふく活くわつを賜たまへり。故ゆゑに神かみの母はゝよ、我われ等らは爾なんぢの子こを造成主ざうせいしゆとして、彼かれに審判しんぱんの時ときに我われ等らに赦免ゆるしと矜憐あはれみとを賜たまはんことを祈いのる。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

潔いさぎよき神かみの母はゝよ、我われ何なにを以もつて爾なんぢの至し榮えいなる敎けう會くわいを稱しようせんか、エデムの園そのとせん、ノイの舟ふね、卽すなはち神かみの爲ために王わうたる司し祭さい班はん、聖せいなる人民じんみん、ハリストス我わが神かみの會くわいを救すくひし者ものとせん。爾なんぢをモイセイの約櫃やくひつに譬たとへん、其内そのうちに贖しよく罪所ざいしよ及および華はなを生しやうぜし杖つゑあり、燈臺とうだい、マンナの壺つぼ、及および金こがねの香かう爐ろあり、凡およその信者しんじやは之これに趨はしり附つきて、大おほいなる憐あはれみを求もとめ得うるなり。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

獨ひとり冀望のぞみを失うしなひし者ものの冀望のぞみ、佑助たすけなき者ものの爲ために備そなはりたる佑助たすけ、仁じん慈じを施ほどこす主しゆイイススを生うみし潔いさぎよき者ものよ、今いま我わが劣れつ弱じやくを憐あはれみ、我わが思情おもひに傷しやう感かんを與あたへ、我わが淚なみだの流ながれを以もつて我わが罪つみの淵ふちを涸からし、我わが無む量りやうの慾よくの暴風あらしを鎭しづめ、我わが亂みだれたる心こゝろを神聖しんせいなる平穩へいをんに充みてて、ハリストスに我わが諸罪しよざいの全まつたき赦ゆるしを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞

昔むかし紅くれなゐの海うみにて婚姻こんいんを知しらざる聘女よめの象かたち記しるされたり。彼處かしこにはモイセイ、水みづを分わかつ者もの、此處こゝにはガウリイル、奇き迹せきに務つとむる者ものなり。彼かの時ときイズライリは足あしを濡ぬらさずして深處ふかみを步あゆみ、今いま童貞女どうていぢよは種たねなくしてハリストスを生うめり。海うみはイズライリの涉わたりし後のち元もとのまま過とほられず、玷きずなき者ものはエムマヌイルを生うみし後のち元もとのまま玷きずなし。永遠えいゑんにして最いと永遠えいゑんなる者もの、人ひととなりて現あらはれし神かみよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

次ぎて 「穩なる光」。提綱ポロキメン、「主は王たり」。其他常例の如し。

挿句くづけに主日の讚頌スティヒラ、第五調。

爾なんぢ身みを取とりたれども、天てんを離はなれざりし救世主きうせいしゆハリストスを歌うたの聲こゑを以もつて讚ほめ揚あぐ。蓋けだし爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなるによりて、我わが族やからの爲ために十じふ字架じかと死しとを受うけて、地ぢ獄ごくの門もんを破やぶり、三みつ日目かめに復ふく活くわつして、我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへり。

又讚頌スティヒラ

句 主しゆは王わうたり、彼かれは威ゐ嚴げんを衣きたり。

生命いのちを施ほどこす主しゆよ、爾なんぢは脅わきを刺さされて、衆しゆう人じんの爲ために赦免ゆるしと、生命いのちと、拯救すくひとを流ながし、身みを以もつて死しを受うけて、我われ等らに不死ふしを賜たまひ、墓はかに入いりて我われ等らを釋とき、神かみとして己おのれと偕ともに至し榮えいに復ふく活くわつせしめ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら呼よぶ、人ひとを愛あいする主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 故ゆゑに世せ界かいは堅けん固ごにして動うごかざらん。

人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせらるると地ぢ獄ごくに降くだることとは奇き妙めうなり、蓋けだし爾なんぢは地ぢ獄ごくを虜とりこにして、古こ世せいよりの俘囚めしうどを神かみとして己おのれと偕ともに至し榮えいに復ふく活くわつせしめ、樂園らくゑんを啓ひらきて、彼かれ等らを其中そのうちに入いれ給たまへり。故ゆゑに爾なんぢの三みつ日目かめの復ふく活くわつを讚榮さんえいする我われ等らにも罪つみの洗淨きよめを與あたへて、樂園らくゑんに居をる者ものと爲ならしめ給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じなる主しゆなればなり。

句 主しゆよ、聖德せいとくは爾なんぢの家いへに屬ぞくして永遠えいゑんに至いたらん。

我われ等らの爲ために身みにて苦くるしみを受うけ、三みつ日目かめに死しより復ふく活くわつせし仁愛じんあいの主しゆよ、我わが肉慾にくよくを醫いやし、我われ等らを甚はなはだしき諸罪しよざいより起おこして救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞

最いと尊たふとき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは殿でん及および門もんなり、宮みや及および王わうの寶はう座ざなり。我わが贖しよく罪主ざいしゆハリストス、義ぎの日ひたる王わうは其その手てを以もつて己おのれの像ざうに從したがひて造つくりし者ものを照てらさんと欲ほつして、爾なんぢに依よりて闇冥くらやみに眠ねむる者ものに現あらはれ給たまへり。故ゆゑに讚ほめ歌うたはるる者ものよ、彼かれの前まへに母はゝの勇敢いさみを獲えたる者ものとして、我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを恒つねに祈いのり給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に、

讚詞トロパリ、第五調。

信者しんじやよ、父ちゝと聖神せいしんと偕ともに始はじめなき言ことば、吾わが救すくひの爲ために童貞女どうていぢよより生うまれし者ものを讚ほめ歌うたひて拜をがむべし、彼かれ甘あまんじて其その身みにて十じふ字架じかに上のぼり、死しを忍しのび、其その光くわう榮えいの復ふく活くわつにて死しせし者ものを復ふく活くわつせしめ給たまひしに因よる。

生神女讚詞 通とほられぬ主しゆの門もんよ、慶よろこべ、爾なんぢに趨はしり附つく者ものの垣墻かきと帲幪おほひよ、慶よろこべ、穩おだやかなる湊みなとよ、婚姻こんいんを識しらずして、身みにて爾なんぢの造成主ざうせいしゆ及および神かみを生うみし者ものよ、慶よろこべ。爾なんぢの產さんを讚ほめ歌うたひて拜をがむ者ものの爲ために息やめずして禱いのり給たまへ。

横線 - 『八調経』第五調

 「スボタ」の晩堂課

司祭誦す、「我等の神は恒に崇め讚めらる」。我等、我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。「天の王」。聖三祝文。「天に在す」の後に、主憐めよ、十二次。光榮、今も、「來れ我らの王」、三次。第五十聖詠。其他常例の如し。

其後至聖なる生神女の規程カノンを歌ふ。第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱歌かちうたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

附唱 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢに宜よろしきに合かなひて歌うたを捧さゝぐるは我われ等ら皆みな惑まどふ、爾なんぢの光くわう榮えい萬ばん衆しゆうに超こゆればなり。然しかれども神かみの聘女よめよ、畏おそれと愛あいとを以もつて爾なんぢに奉たてまつる禱いのりを忌いむ勿なかれ。

生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ等ら皆みな爾なんぢの盡つきざる泉いづみの水みづに趨はしり附つきて呼よぶ、我わが族やからの惟一ゆゐいちの歡喜よろこびなる至いたりて潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの諸しよ敎けう會くわいの爲ために平安へいあんを求もとめ得え給たまへ。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢより甘あまんじて身みを取とりし神かみは爾なんぢを患くわん難なんに在ある者ものの爲ために港みなとと定さだめ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに趨はしり附つきて呼よぶ、爾なんぢの諸僕しよぼくに爾なんぢの佑助たすけを與あたへ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる神かみの母はゝ、童貞女どうていぢよよ、願ねがはくは爾なんぢの祈き禱たうは爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために諸難しよなんの緩和ゆるめ、諸慾しよよくの洗淨きよめ、諸罪しよざいの赦免ゆるし、種種しゆじゆの病やまひの醫治いやしと爲ならん。

第三歌頌

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを固かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

女宰ぢよさい・生命いのちの母はゝよ、爾なんぢは地ちに生うまるる者ものの倚賴たのみと佑助たすけ、歡喜よろこびと帲幪おほひ、及および避所かくれがなり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、至し淨じやうなる者ものよ、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものに爾なんぢの佑助たすけを降くだし給たまへ。

仁じん慈じなる全能ぜんのうの主しゆ、萬有ばんいうの神かみ、救世主きうせいしゆよ、我われ等ら病やめる者もの及および厲はげしき危き難なんに圍かこまるる者ものは轉達者てんたつしやとして我われ等らの爲ために祈いのる爾なんぢの至し淨じやうなる母はゝを進すゝむ。我われ等らの諸罪しよざいの縲絏なはめを解とき給たまへ。

光榮 獨ひとり萬有ばんいうを造つくりて之これを掌つかさどる主しゆを生うみて、童貞どうていに止とゞまりし神かみの聘女よめよ、實じつに爾なんぢを神かみの母はゝとして讚榮さんえいする爾なんぢの諸僕しよぼくに上うへより救すくひを與あたへ給たまへ。

今も 世せ界かいの爲ために神聖しんせいなる水みづを流ながしし女宰ぢよさいよ、我われを活いける水みづに滿みてて、爾なんぢの神聖しんせいなる平穩へいをんを以もつて我わが不ふ法はふの激はげしき流ながれと吾わが心こゝろの暴浪あらなみとを鎭しづめ給たまへ。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、神かみは爾なんぢ悉ことごとくの造物ざうぶつより上うへなる者ものを地ちに在ある者ものの爲ために彼かれの前まへの轉達者てんたつしやとして賜たまへり。

童貞女どうていぢよ母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを神かみの殿でんと知しりて、爾なんぢを尊たふとみて熱切ねつせつに祈いのる、生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために爾なんぢの慈じ憐れんの門もんを閉とざす勿なかれ。

光榮 婚姻こんいんに與あづからざる母はゝよ、我われ等ら皆みな爾なんぢを實じつに裝さう飾しよくしたる神かみの衣ころもと知しりて、爾なんぢを尊たふとみて求もとむ、赦罪しやざいの衣ころもを我われ等らに衣きせ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ母はゝマリヤよ、大おほいなるガウリイルが上うへより爾なんぢに慶よろこべよと呼よびし時ときより、全ぜん世せ界かいは爾なんぢの產さんを以もつて歡喜よろこびに滿みちたり。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

我われ等らは實じつに我わが諸罪しよざいの債おひめに應かなひて罰ばつを蒙かうむる。鳴呼あゝ至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢの子この怒いかりを我われ等らより轉てんぜしめ給たまへ。

獨ひとり光ひかりを暗やみより出いだしし神かみを婚姻こんいんに與あづからずして生うみし潔いさぎよき者ものよ、彼かれに爾なんぢの諸僕しよぼくに神聖しんせいなる光ひかりを降くださんことを熱切ねつせつに祈いのり給たまへ。

光榮 ソロモンの預よ言げんせし神聖しんせいなる潔いさぎよき聘女よめ、造成主ざうせいしゆの母はゝよ、爾なんぢの祈き禱たうの芳かうばしき香かをりを以もつて爾なんぢの諸僕しよぼくを薰かをらせ給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために稱しよう義ぎ及および贖しよく罪ざいたるハリストスを種たねなく生うみて、原げん祖その性せいを詛のろひより釋とき給たまへり。

第六歌頌

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

造成主ざうせいしゆを生うみし生しやう神女しんぢよ・女宰ぢよさいよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために赦罪しやざいを求もとめ得えて、我われ等らに能力ちからを與あたへ給たまへ、我わが爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、慈じ憐れんなる者ものとして、我われ等ら忠ちゆう信しんに爾なんぢに祈いのる爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために佑助たすけと爲なりて、我われ等らに能力ちからを與あたへ給たまへ、我わが爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

光榮 宜よろしきに合かなひて能よくせざるなき潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、爾なんぢの慈じ憐れんなる目めを以もつて顧かへりみて、我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくを朽きう壞くわいより擧あげ給たまへ。

今も 求もとむる者ものの爲ために絕たえず宏くわう恩おんの流ながれを注そゝぐ仁じん慈じにして無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、我われにも爾なんぢの子この戒いましめの光ひかりを注そゝぎ給たまへ。

次ぎて主憐れめよ。三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第五調。

至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢ慈じ憐れんの者ものに趨はしり附つきて、爾なんぢの熱切ねつせつなる保護ほごを求もとむる者ものを憐あはれみ給たまへ。蓋けだし爾なんぢは、神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよよ、至し上じやうの神かみの仁じん慈じなる母はゝとして、常つねに衆しゆう人じんを爾なんぢの母はゝたる祈き禱たうの中うちに抱いだきて、衆しゆうを救すくふを能よくす。

第七歌頌

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

測はかられぬ神かみの智慧ちゑたるハリストスよ、爾なんぢを生うみし者ものに因よりて、爾なんぢの諸僕しよぼく常つねに、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものを宥なだめ給たまへ。

主しゆよ、我われ等ら爾なんぢの仁じん慈じに祈いのる、爾なんぢを生うみし者ものに因よりて、我われ等ら畏おそれを以もつて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものの痛傷いたみを醫いやし給たまへ。

光榮 神かみの母はゝよ、爾なんぢの慈じ憐れんなる目めを以もつて顧かへりみて、爾なんぢの諸僕しよぼく、信しんを以もつて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものを凡およその患くわん難なんより脫のがれしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、我われ等らは惡あくを行おこなひて爾なんぢより離はなれたれども、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よぶ時とき直たゞちに爾なんぢの佑助たすけを獲えたり。

第八歌頌

イルモス 世世よよの前さきに父ちゝより生うまれし子こ及および神かみ、末すゑの時ときに童貞女どうていぢよより身みを取とりし者ものを、司し祭さい等らは歌うたへ、人人ひとびとは萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

我われ等らの女宰ぢよさい童貞女どうていぢよ、善福ぜんぷくの賦予ふよ者しやよ、爾なんぢの諸僕しよぼくに諸慾しよよくの醫治いやしを與あたへ給たまへ、我わが常つねに爾なんぢを歌うたひて、世世よよに崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは測はかり難がたく贖しよく罪主ざいしゆを生うみ、言いひ難がたく乳ちにて之これを養やしなひて、童貞女どうていぢよに止とゞまれり。爾なんぢを歌うたひて、萬世ばんせいに讚榮さんえいする者ものの爲ために彼かれに祈いのり給たまへ。

光榮 我われ等らは調てう和わしたる詠えい會くわいを爲なして、爾なんぢ贖しよく罪主ざいしゆの光くわう明めいなる燈ともしびに歌うたはん、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは常つねに童貞女どうていぢよマリヤを歌うたひて、世世よよに彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

今も 潔いさぎよき牝め羊ひつじ、神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよ母はゝよ、我われを肉體にくたいの諸慾しよよくより潔きよめ給たまへ、我わが誘惑いざなひの網あみを免まぬかれて、爾なんぢを歌か頌しようせん爲ためなり。

第九歌頌

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル神かみ、及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

讚ほめ歌うたはるる主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢ造成主ざうせいしゆに於おける我われ等らの倚賴たのみは過すぎず、爾なんぢの恩おん寵ちようも變かはらず。求もとむ、此この兩者ふたつに依よりて爾なんぢの諸僕しよぼくに堅けん固ごなる力ちからを與あたへ給たまへ、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりてなり。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、爾なんぢは生命いのちの眞まことの母はゝとして、不ふ能のうなる者ものの力ちから、病やむ者ものの醫治いやしなり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに趨はしり附つきて、凡およその憂愁うれひの喜悅よろこびに變へんずるを得え、爾なんぢの帲幪おほひにて救すくはる。

光榮 女宰ぢよさいよ、我われ等らは爾なんぢの神聖しんせいなる像ざうを見みて、其中そのうちに爾なんぢを實體じつたいの如ごとく仰あふぎ、之これに俯ふ伏ふくして醫治いやしを受うく、故ゆゑに地ち上じやうの異い端者たんしやの凡およその無知むちを惡にくむ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、我われ等ら罪つみなる者ものは爾なんぢを醫治いやしの淵ふち、恩惠おんけいの海うみと知しれり。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、獨ひとり至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく者ものを凡およその患くわん難なんより救すくひ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」。聖三祝文。「天に在す」の後に小讚詞コンダク。其他常例の如し、幷に發放詞。

gold and luxury under line png e1791509531294 - 『八調経』第五調

日曜日(主日)

 主日の夜半課

生命を施す聖三者の規程カノン、其冠詞は、三日の光に第五の規程カノン。ミトロファンの作。第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱かち歌うたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

附唱 至し聖せいなる三者さんしや我われ等らの神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

我われ等ら惟一ゆゐいちなる三日さんじつの體たいの權柄けんぺいを歌うたひて呼よぶ、全能ぜんのうの神かみ主宰しゆさいよ、我われ等らの智慧ちゑを照てらして、爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいに升のぼせ給たまへ。

天てん使しの靈れい智ちなる品ひん位ゐは天てん上じやうに三聖さんせいの歌うたを以もつて爾なんぢ三さん數すうの惟一者ゆゐいちしや、合一がふいつの三者さんしや、實在じつざいにして全能ぜんのうなる神かみを默もださずして歌うたふ。

光榮 光ひかりの原因げんいんたる三さん位ゐの惟一者ゆゐいちしや、萬物ばんぶつの大仁だいじん慈じなる主宰しゆさいよ、吾わが靈たましひに爾なんぢの愛あいの光くわう明めいにして神聖しんせいなる最いと甘あまき飮料のみもの、及および洗淨きよめを爲なす傷しやう感かんを與あたへ給たまへ。

今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、羊ひつじの毛けに於おけるが如ごとく、神聖しんせいなる雨あめは音おとなくして天てんより爾なんぢの胎たいに降くだりて、全まつたく枯かれたる人ひとの性せいを救すくへり。

第三歌頌

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを固かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

三さん光くわうの神かみ造物主ざうぶつしゆよ、爾なんぢは靈れい智ちなる者ものを創さう意いして、爾なんぢの神性しんせいを絕たえず歌うたふ者ものを造つくり給たまへり。祈いのる、塵ちりに屬ぞくする地ち上じやうの者ものの祈き禱たう冀き願ぐわんをも納いれ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じなる主しゆなればなり。

性せいに於おいて聊いさゝかも變易へんえきせざる主しゆよ、變易へんえきする我われ等ら爾なんぢを歌うたふ者ものに爾なんぢの仁じん慈じの窮きはめ難がたき泉いづみを流ながして、諸罪しよざいの赦ゆるしと救すくひとを與あたへ給たまへ。爾なんぢは仁じん慈じなる主しゆなればなり。

光榮 我われ等らは爾なんぢ惟一ゆゐいちなる三さん光くわうの主しゆ、萬有ばんいうの主宰しゆさいの神性しんせいの變易へんえきせざる體たいに於おいて父ちゝと子こと聖神せいしんとを讚榮さんえいす、諸しよ預よ言者げんしや及および使徒しとが爾なんぢより明あきらかに敎をしへられしが如ごとし。

生神女讚詞 神かみの言ことばよ、爾なんぢはモイセイに棘いばらの中うちに全能者ぜんのうしやの大おほいなる議事ぎじの使し者しやと現あらはれて、爾なんぢが童貞女どうていぢよより身みを取とることを示しめし給たまへり。爾なんぢは此これを以もつて我われ等らを變化へんくわして、天てんに升のぼせ給たまへり。

主憐めよ、三次。

坐誦讚詞セダレン、第五調。

別わかれざる聖三者せいさんしやよ、爾なんぢは仁じん慈じなり、蓋けだし衆しゆうを憐あはれみ給たまふ、全能ぜんのうにして宏くわう恩おん、寬くわん容ようにして矜きよう憐れんなればなり。故ゆゑに我われ等ら多おほくの罪つみに壓あつせらるる者ものは爾なんぢに趨はしり附つきて呼よぶ、爾なんぢの諸僕しよぼくを潔きよめて、衆しゆうを凡およその苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢ慈じ憐れんの者ものに趨はしり附つきて、爾なんぢの熱切ねつせつなる保護ほごを求もとむる者ものを憐あはれみ給たまへ。蓋けだし爾なんぢは、神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよよ、至し上じやうの神かみの仁じん慈じなる母はゝとして、常つねに衆しゆう人じんを爾なんぢの母はゝたる祈き禱たうの中うちに抱いだきて、衆しゆうを救すくふを能よくす。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

ダニイルはハリストス審判者しんぱんしやが父ちゝに到いたり、神しん゜が異い象しやうを顯あらはすを見みて、奧密あうみつに惟一ゆゐいちの主しゆの三さん光くわうなるを敎をしへらる。

塵ちりの口くちを以もつて爾なんぢ實在じつざいの神かみ、位ゐにて三者さんしや、性せいにて惟一者ゆゐいちしやなる主しゆを歌うたふ者ものに諸天しよてん使しの光くわう榮えいを得えしめ給たまへ。

光榮 我われ等らは三さん位ゐに於おいて惟一ゆゐいちの權柄けんぺい、惟一ゆゐいちの主しゆ制せいを分離わかちなく讚榮さんえいす。父ちゝと、子こと、聖神せいしんよ、我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくを照てらし給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、アウワクムが嘗かつて見みたる聖せいなる者ものの出いでし樹こ蔭かげ繁しげき山やまは爾なんぢの降孕はらみの奧密あうみつに見みらるる產さんを顯あらはせり。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

仁じん慈じに因よりて人ひとを造つくり、爾なんぢの像ざうに循したがひて之これを飾かざりし三さん光くわうなる吾わが神かみよ、我われの中うちに居をり給たまへ、爾なんぢは善ぜんにして慈じ憐れんなればなり。

三日さんじつの惟一者ゆゐいちしやよ、爾なんぢ我われを救すくひの神聖しんせいなる途みちに向むかはしめて、爾なんぢの煇煌かゞやきに滿みて給たまへ、爾なんぢは性せいに於おいて能力ちからの無む量りやうなる神かみなればなり。

光榮 惟一ゆゐいちの性せいの分わかれざる光ひかり、位ゐにて分わかれたる、三さん光くわうなる、暮くれざる者ものよ、爾なんぢの光くわう線せんを以もつて我わが心こゝろを照てらし給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつ無む玷てんなる者ものよ、昔むかし預よ言者げんしやは爾なんぢを暮くれざる光ひかりに向むかふ門もんと見みて、直たゞちに爾なんぢが神かみの居處すまひなるを知しれり。

第六歌頌

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

神元しんげんは位ゐに於おいて三さん光くわうなり、性せいと旨むねとに於おいて惟一ゆゐいちにして合同がふどうなり、均ひとしく行かう爲ゐする者ものなり。

預よ言者げんしやは光ひかりなる爾なんぢの父ちゝに向むかひて、我われ等ら神しん゜に由よりて子この光ひかりを觀みんと歌うたひて、明あきらかに惟一ゆゐいちの神かみの三日さんじつなるを示しめせり。

光榮 單一たんいつなる神性しんせいは三さん位ゐに於おいて惟一ゆゐいちの權柄けんぺいと能のう力りよくとを有たもち給たまふ、彼かれに由よりて萬物ばんぶつは護まもられて改あらためらる。

生神女讚詞 惟一ゆゐいちにして三さん光くわうなる主宰しゆさい神かみよ、神かみの母はゝの祈き禱たうに由よりて、爾なんぢを歌うたふ者ものに諸罪しよざいと患くわん難なんとの解げ脫だつを與あたへ給たまへ。

主憐めよ、三次。

坐誦讚詞セダレン、第五調。

我われ等ら今いま三日さんじつの光ひかりを讚榮さんえいし、單一たんいつの三者さんしやに伏拜ふくはいす、蓋けだし我われ等らを照てらして憐あはれみ、全ぜん人類じんるゐを朽きう壞くわいより救すくひ、全ぜん世せ界かいを偶像ぐうざうの迷まよひより脫のがれしめて、我われ等らに國くにを與あたへ給たまへり。

光榮、今も、生神女讚詞 我われ凡およその事ことに惑まどひて、衆しゆう人じんの恃賴たのみ、罪人つみびと及および卑微ひびの者ものの避所かくれがたる爾なんぢに趨はしり附つきて呼よぶ、我われ不ふ當たうの者ものは罪つみを犯おかし、之これを感かんぜずして惡あくに止とゞまる。我われを憐あはれめ、終をはりの前さきに我われを反正はんせいせしめて、當あたらざる者ものを凡およその苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

慈じ憐れんの淵ふち、宏くわう恩おんの測はかられぬ海うみを有たもつ主しゆよ、爾なんぢ惟一ゆゐいちにして三さん光くわうなる萬有ばんいうの神かみを歌うたふ者ものを憐あはれみ給たまへ。

我われ等ら爾なんぢ惟一ゆゐいちにして三さん光くわうなる測はかられぬ主しゆ神かみを歌うたひて、爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの諸僕しよぼくに諸罪しよざいの洗淨きよめを與あたへ給たまへ。

光榮 我われ等らは惟一ゆゐいちの權柄けんぺいの中うちに三さん位ゐを均ひとしく尊たふとみて、父ちゝと子こと至し聖神せいしんの分わかたれざる性せいを分わかつ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは父ちゝと同どう無む原げんの芽め、神性しんせいの花はな、衆しゆう人じんに生命いのちを與あたふる同どう實在じつざいの芽めを生しやうじ給たまへり。

第八歌頌

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりに在ありて爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆの前まへに全ぜん世せ界かいの詠隊えいたいと爲なりて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

我わが神かみよ、爾なんぢは昔むかし惟一ゆゐいちの主しゆ制せいの三さん位ゐなるを顯あらははさん爲ために、人ひとの像かたちに於おいて爾なんぢの惟一ゆゐいちの權柄けんぺいを歌うたふアウラアムに現あらはれ給たまへり。

仁じん慈じなる父ちゝ、子こ、及および聖神せいしん、近ちかづき難がたき光ひかり、萬有ばんいうの主しゆよ、爾なんぢ我われに宏くわう恩おんを施ほどこす爾なんぢの光くわう線せんを仰あふぐを得えしめ給たまへ、我わが常つねに爾なんぢの悅よろこびを爲なさん爲ためなり。

光榮 永久えいきうなる神父かみちゝは聖せいなり、父ちゝより生うまれし子こは聖せいなり、生いのちを施ほどこす神しん゜、父ちゝより出いでて、子こに由よりて現あらはるる主しゆは聖せいなり。

生神女讚詞 讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために三日さんじつの光くわう榮えいの中うちより一いつのハリストス主しゆを輝かゞやかし給たまへり、彼かれは衆しゆう人じんに三さん位ゐに於おいて惟一ゆゐいちなる神元しんげんを世世よよに歌うたはんことを奧密あうみつに敎をしへ給たまふ。

第九歌頌

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル、神かみ及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

無む原げんなる惟一者ゆゐいちしやよ、人ひとの言ことばを以もつて宜よろしきに合かなひて爾なんぢを歌うたふ能あたはず。然しかれども神元しんげんなる同どう寶はう座ざの三者さんしやよ、我われ等ら信しんを以もつて勇いさみて能よくする所ところに循したがひて爾なんぢの權柄けんぺいに光くわう榮えいと讚さん美びとを奉たてまつる。

ヘルワィム及およびセラフィムは至し淨じやうなる口くちを以もつて爾なんぢ惟一ゆゐいちなる三さん光くわうの神かみに同一どういつの讚榮さんえいを奉たてまつる。主しゆよ、彼かれ等らと偕ともに爾なんぢの權柄けんぺいを讚ほめ揚あぐる罪つみなる我われ等らをも納いれ給たまへ。

光榮 イサイヤは爾なんぢがヘルワィムの寶はう座ざに坐ざするを見みたり、セラフィムは爾なんぢの周圍まはりに立たち、翼つばさにて面おもてを蔽おほひて呼よべり、聖せい、聖せい、聖せいなる哉かな三聖さんせいの神かみ、三さん位ゐに於おいて讚榮さんえいせらるる主しゆや。

生神女讚詞 爾なんぢは純じゆん潔けつ無む玷てんなる童貞女どうていぢよにして、子ことして我われ等らを誘惑いざなひより救すくふ變易へんえきなき神かみを生うみ給たまへり。今いまも我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

次にグリゴリイ シナイトの聖三讚歌、「爾神言を讚榮するは」、及び其他夜半課の式、本書の末に載す。

横線 - 『八調経』第五調

 主日の早課

六段の聖詠終りて「主は神なり」、第五調に依りて歌ひ、後主日の讚詞トロパリ、「信者よ、父と聖神と偕に」、二次。光榮、今も、生神女讚詞、「通られぬ主の門よ、慶べ」。次に聖詠經の常例の誦讀。

第一の誦文の後に主日の坐誦讚詞セダレン、第五調。

我われ等らは主しゆの十じふ字架じかを讚ほめ揚あげ、聖せいなる葬はうむりを尊たふとみ歌うたひ、其その復ふく活くわつを崇あがめ讚ほめん、彼かれは神かみとして、死しの權けんと惡あく魔まの力ちからとを奪うばひて、死しせし者ものを己おのれと偕ともに墓はかより起おこし、地ぢ獄ごくに在ある者ものに光ひかりを輝かゞやかしたればなり。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる毋なかれ。

主しゆよ、爾なんぢは死し者しやと稱となへられて死しを滅ほろぼし、墓はかに藏をさめられて墓はかを空むなしくせり。上かみには兵卒へいそつ柩ひつぎを守まもり、下しもには爾なんぢ古こ世せいより死しせし者ものを復ふく活くわつせしめ給たまへり。全能ぜんのうにして悟さとり難がたき主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、生神女讚詞 神かみの通とほり給たまふ聖山せいざんよ、慶よろこべ、燒やかれざる生いける棘いばらよ、慶よろこべ、獨ひとり世せ界かいの爲ためには神かみに往ゆく橋はし、死し者しやを永遠えいゑんの生命いのちに渡わたす者ものよ、慶よろこべ、潔いさぎよき童貞女どうていぢよ、夫をつとを識しらずして我われ等らの靈たましひの救すくひを生うみし者ものよ、慶よろこべ。

第二の誦文の後に主日の坐誦讚詞セダレン、第五調。

主しゆよ、爾なんぢが三みつ日目かめの復ふく活くわつ及および使徒しとの伏拜ふくはいの後のちに、ペトル爾なんぢに呼よべり、女をんな等たちは勇敢いさみを現あらはししに、我われは畏おそれたり、盜賊たうぞくは爾なんぢを承うけ認とめしに、我われは諱いみたり。是これより爾なんぢ我われを招まねきて門もん徒とと爲なすか、抑そもそも我われを復また海かい上じやうの漁者ぎよしやと爲なすか。求もとむ、神かみよ、痛つう悔くわいする我われを納いれて、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き迹せきを傳つたへん。

主しゆよ、不ふ法者はふしやは爾なんぢを定罪ていざいせられし者ものの中うちに十じふ字架じかに釘ていして、戈ほこを以もつて爾なんぢの脅わきを刺させり。嗚呼あゝ慈じ憐れんの者ものよ、爾なんぢは葬はうむりを受うけて、地ぢ獄ごくの門もんを破やぶり、三みつ日目かめに復ふく活くわつし給たまへり。女をんな等たち爾なんぢを見みん爲ために趨はしり附つきて、使徒等しとらに復ふく活くわつを知しらせたり。尊たふとみ崇あがめらるる救世主きうせいしゆ、天てん使等しらの歌うたふ者もの、崇あがめ讚ほめらるる主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、生神女讚詞 婚姻こんいんに與あづからざる聘女よめ、神かみの母はゝ、エワの悲かなしみを喜よろこびに變へんぜし者ものよ、我われ等ら信者しんじやは歌うたひて、爾なんぢに伏拜ふくはいす、蓋けだし爾なんぢは我われ等らを古いにしへの詛のろひより脫のがれしめたり。至し聖せいにして讚さん美びたる者ものよ、今いまも我われ等らの救すくはれんことを息やめずして祈いのり給たまへ。

應答歌イパコイ、第五調。

天てん使しの顯見あらはれにて心こゝろ驚おどろかされ、神妙しんめうの復ふく活くわつにて靈たましひ照てらさるる攜香女けいかうぢよは使徒しとに福音ふくいんせり、異い邦はうの中うちに復ふく活くわつを傳つたへよ、主しゆは奇き跡せきを以もつて佑たすけん、我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまふ主しゆなればなり。

品第詞ステペンナ、第五調。第一倡和詞アンティフォン。每句復唱す。

我わが救世主きうせいしゆよ、我われ憂うれひの中うちにダワィドの如ごとく爾なんぢに歌うたふ、我わが靈たましひを欺騙あざむきの舌したより免まぬかれしめ給たまへ。

野のに居をる者ものの生命いのちは福さいはひなり、彼かれ等らは神聖しんせいなる愛あいに勵はげまさる。

光榮 聖神せいしんにて見みゆると見みえざる者ものは悉ことごとく保たもたる、彼かれは實じつに聖三者せいさんしやの一いつにして、全能ぜんのうの主しゆなればなり。

今も、同上。

第二倡和詞

靈たましひよ、山やまに上のぼらん、彼處かしこに往ゆけ、蓋けだし助たすけは彼處かしこより來きたる。

ハリストスよ、願ねがはくは爾なんぢの右みぎの手ては我われにも觸ふれて、凡およその邪曲よこしまより我われを護まもらん。

光榮 聖神せいしんに向むかひて讚さん美びして曰いはん、爾なんぢは神かみなり、生命いのちなり、愛あいなり、光ひかりなり、睿えい智ちなり、爾なんぢは仁じん慈じなり、爾なんぢは世世よよに王わうたり。

今も、同上。

第三倡和詞

人ひと我われに向むかひて、主しゆの家いへに往ゆかんと云いふ時とき、我われ多おほくの歡喜よろこびに盈みてられて、禱いのりを獻さゝぐ。

ダワィドの家いへに畏おそるべき事ことは行おこなはる、蓋けだし火ひは彼處かしこに凡およその耻はづべき心こゝろを焚やく。

光榮 聖神せいしんには生命いのちを施ほどこす權けん位ゐあり、凡すべての生物いきものは彼かれを以もつて活いかさる、父ちゝ及および言ことばを以もつてするが如ごとし。

今も、同上。

提綱ポロキメン、第五調。

主しゆ我わが神かみよ、起おきて爾なんぢの手てを擧あげよ、爾なんぢ世世よよの王わうなればなり。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き迹せきを傳つたへん。

「凡そ呼吸ある者」。句、「神を其聖所に讚め揚げよ」。順序の早課福音經

ハリストスの復ふく活くわつを見みて、聖せいなる主しゆイイスス、獨ひとり罪つみなき者ものを拜をがむべし。ハリストスよ、我われ等ら爾なんぢの十じふ字架じかを拜をがみ、爾なんぢの聖せいなる復ふく活くわつを歌うたひ讚ほむ、爾なんぢは我われ等らの神かみなればなり、爾なんぢの外ほか他たの神かみを知しらず、唯たゞ爾なんぢの名なを稱となふ。信者しんじやよ、皆みな來きたりて、ハリストスの聖せいなる復ふく活くわつを拜をがむべし、十じふ字架じかにて歡喜よろこびは全ぜん世せ界かいに臨のぞみたればなり。我われ等ら恒つねに主しゆを讚ほめ揚あげて、其その復ふく活くわつを崇あがめ歌うたはん、主しゆは十じふ字架じかに釘くぎうたるるを忍しのびて、死しを以もつて死しを滅ほろぼししに因よる。

第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて」。

光榮 使徒しとの祈き禱たうに依よりて、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我われ等らの多おほくの罪つみを淨きよめ給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに依よりて、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我われ等らの多おほくの罪つみを淨きよめ給たまへ。

次ぎて、第六調。

神かみよ、爾なんぢの大おほいなる憐あはれみに因よりて我われを憐あはれみ、爾なんぢが惠めぐみの多おほきに因よりて我われの不ふ法はふを抹けし給たまへ。

讚頌スティヒラ

預あらかじめ言いひし如ごとく、イイスス墓はかより復ふく活くわつして、我われ等らに永遠えいゑんの生命いのちと大おほいなる憐あはれみとを賜たまへり。

「神よ、爾の民を救ひ」。高聲、「爾が獨生子の仁慈と慈憐と」。

規程カノン四篇、主日の、讚詞トロパリ四章、十字架復活の、三章、生神女の、三章、月課經ミネヤの、四章。若し聖人の祭ならば、聖人の、六章、十字架復活の、二章、生神女の、二章。

主日の規程カノン、第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱歌かちうたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

附唱 主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの聖せいなる復ふく活くわつに歸きす。

ハリストスよ、棘いばらを生しやうずるエウレイの會くわいは爾なんぢ恩主おんしゆに母はゝたる愛あいを守まもらずして、棘いばらを爾なんぢ原げん祖その棘いばらの禁戒きんかいを釋とく者ものに冠かうむらせたり。

生命いのちを賜たまふハリストス、罪つみなき主しゆよ、爾なんぢは傾かたぶきて我われ穽あなに陷おちいりし者ものを起おこし、朽きう壞くわいに與あづからざる者ものにして我わが惡臭あくしうの朽きう壞くわいを忍しのびて、我われを神かみの性せいの香料かうれうにて薰かをらせ給たまへり。

生神女讚詞 詛のろひは釋とかれ、悲かなしみは息やみたり、蓋けだし祝しゆく福ふくせられし童貞女どうていぢよ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものは四し極きよくの爲ために祝しゆく福ふくたるハリストスを花はなの如ごとく生しやうじて、信者しんじやの爲ために喜よろこびを耀かゞやかし給たまへり。

又十字架復活の規程カノン

第一歌頌 同調

イルモス 「我等は民に足を濡らさずして」。

甘あまんじて身みにて十じふ字架じかに釘ていせられ、木きに緣よりて陷おちいりし者ものを古いにしへの定罪ていざいより釋ときたる主しゆ、獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

死しして墓はかより復ふく活くわつせしハリストス、陷おちいりし者ものを己おのれと偕ともに起おこして、父ちゝと同どう座ざするを以もつて之これを榮えいせし主しゆ、獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、爾なんぢより身みを取とりて、父ちゝの懷ふところを離はなれざりし神かみに、其その造つくりし者ものを凡およその患くわん難なんより救すくはんことを絕たえず祈いのり給たまへ。

又至聖なる生神女の規程カノン、其冠詞は、光を生みし童貞女よ、我を照し給へ。

第一歌頌 同調

イルモス 「强き手にて戰を滅す」。

至し淨じやうなる母はゝ童貞女どうていぢよよ、爾なんぢに入いりて神性しんせいの光くわう線せんを以もつて世せ界かいを照てらしし光ひかりたるハリストスに、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものを照てらさんことを祈いのり給たまへ。

諸德しよとくの華くわ美びに飾かざられたる者ものとして、爾なんぢ恩おん寵ちようを蒙かうむれる至し淨じやうなる童貞女どうていぢよは聖神せいしんの光くわう照せうに藉よりて、靈妙れいめうの華くわ美びたる萬有ばんいうを飾かざりし主しゆを受うけ給たまへり。

童貞女どうていぢよよ、昔むかしシナイに於おいて棘いばらは爾なんぢを預よ象しやうして、火ひに合あはせられて焚やけざりき、蓋けだし爾なんぢ童貞女どうていぢよは生うみて童貞女どうていぢよに止とゞまり、母はゝにして智慧ちゑに超こえて童貞女どうていぢよなり。

共頌カタワシヤ、「我が口を開きて」。

第三歌頌

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを固かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

ハリストスよ、恩おんを知しらざるイズライリの諸しよ子し、磐いはより蜜みつを吮すひし者ものは爾なんぢ野のにて奇き跡せきを行おこなひし主しゆに膽いを捧さゝげ、マンナの恩おんに代かへて醯すを酬むくいたり。

昔むかし光ひかれる雲くもに覆おほはれたる者ものは生命いのちたるハリストスを墓はかに置おきたり、然しかれども彼かれは己おのれの權けんを以もつて復ふく活くわつして、上うへより衆しゆう信者しんじやに奧密あうみつに蔭おほへる聖神せいしんの光くわう照せうを賜たまへり。

生神女讚詞 神かみの母はゝよ、爾なんぢは婚姻こんいんに與あづからず、母はゝの產さん苦くを知しらずして、永在えいざいの父ちゝより輝かゞやきし者ものを生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等らは正たゞしく爾なんぢを生しやう神女しんぢよと傳つたふ、身みを取とりし言ことばを生うみたればなり。

又 イルモス 「ハリストスよ、爾の十字架の力にて」。

生命いのちを賜たまふハリストスよ、爾なんぢは墓はかより復ふく活くわつして、甘あまんじて受うけし爾なんぢの十じふ字架じかの死しを歌うたふ者ものを死しの朽きう壞くわいより救すくひ給たまへり。

ハリストスよ、攜香女けいかうぢよは香料かうれうを爾なんぢの身みに傅ぬらん爲ために急いそぎしに、爾なんぢに遇あはずして還かへりて、爾なんぢの復ふく活くわつを歌か頌しようせり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの胎たいより身みを取とりし主しゆに、爾なんぢ潔いさぎよき童貞女どうていぢよを歌うたふ者ものを惡あく魔まの誘惑いざなひより脫のがれしめんことを絕たえず祈いのり給たまへ。

又 イルモス 「己の命にて虛しき處に」。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは今いま明あきらかに衆しゆうに、至し上じやう者しやが朽くちたる性せいを新あらたにせん爲ために我われ等らに降くだりし梯かけはしと見みられたり、蓋けだし爾なんぢに藉よりて至し仁じんの主しゆは甘あまんじて世せ界かいに共きよう與よし給たまへり。

純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、昔むかし預よ定ていせられ、世世よよの先さきに知しらざる所ところなき神かみに預よ見けんせられたる奧密あうみつは、今いま末すゑの時ときに於おいて爾なんぢの胎内たいないに成じやう就じゆせられたり。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ、獨ひとり人人ひとびとの裝さう飾しよくたる者ものよ、爾なんぢの中ちゆう保はうに依よりて古いにしへの詛のろひの定罪ていざいは釋とかれたり、蓋けだし爾なんぢより主しゆは現あらはれて、至し仁じんの者ものとして衆しゆうに祝しゆく福ふくを流ながし給たまへり。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢは木きを以もつてメㇽラの最いと苦にがき水みづを甘あまくして、罪つみの味あぢを滅けす爾なんぢの至し淨じやうなる十じふ字架じかを形かたちを以もつて預よ象しやうし給たまへり。

我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは智ち識しきの木きに代かへて十じふ字架じか、甘あまき食しよくに代かへて膽いを受うけ、死しの朽きう壞くわいに代かへて爾なんぢの神聖しんせいなる血ちを流ながし給たまへり。

生神女讚詞 爾なんぢは婚姻こんいんに與あづからずして潔いさぎよく胎内たいないに孕はらみ、產さん苦くなく身みにて神かみを生うみ、生うみて後のち童貞女どうていぢよとして護まもられたり。

又 イルモス 「我十字架の力の風聲」。

十じふ字架じかが地ち上じやうに髑髏されかうべの處ところに樹たてられしに、地ぢ獄ごくの門もんは壞やぶられ、世世よよの門衞かどもりは呼よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

救世主きうせいしゆが死し者しやの如ごとく縛しばられし者ものに降くだりしに、古こ世せいよりの死し者しやは彼かれと偕ともに復ふく活くわつして呼よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよは生うみて、母はゝの產さん苦くを知しらざれども、母はゝと爲なりて童貞女どうていぢよに止とゞまれり。我われ等ら彼かれを歌うたひて呼よぶ、生しやう神女しんぢよよ、慶よろこべ。

又 イルモス 「ハリストスよ、アウワクムは先知の目にて」。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ敬虔けいけんを抱いだきて、心こゝろと智慧ちゑ、靈たましひと口くちを以もつて爾なんぢを眞まことの生しやう神女しんぢよと承うけ認とめ、救すくひの果みを獲えて、爾なんぢの祈き禱たうに由よりて救すくはる。

純じゆん潔けつなる者ものよ、無むより萬物ばんぶつを造つくりし者ものは、恩主おんしゆとして爾なんぢ潔いさぎよき者ものより造つくらるるを嘉よみし給たまへり、信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものの救すくひの爲ためなり。

純じゆん潔けつ無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、天てん上じやうの品ひん位ゐは爾なんぢの產さんを歌うたひて、爾なんぢを眞まことの生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものの救すくひの爲ために悅よろこぶ。

イサイヤは爾なんぢを杖つゑと名なづけたり、是これより我われ等らの爲ために美うるはしき花はなたるハリストス神かみは生しやうぜり、信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく者ものの救すくひの爲ためなり。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

光くわう榮えいの主しゆは謙けん卑ぴの形かたちに於おいて甘あまんじて辱はづかしめられて木きに懸かゝる、我われ等らの爲ために神聖しんせいなる光くわう榮えいの事ことを言いひ難がたく慮おもんぱかるに因よりてなり。

ハリストスよ、爾なんぢは朽くつるなく身みにて死しの朽きう壞くわいを嘗なめ、三みつ日目かめに墓はかより輝かゞやき出いでて、我われに不ふ朽きうを衣きせ給たまへり。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために稱しよう義ぎ及および贖しよく罪ざいたるハリストスを種たねなく生うみて、原げん祖その性せいを詛のろひより釋とき給たまへり。

又 イルモス 「主よ、我等夙に興きて」。

我われ等らの救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは木きに手てを伸のべて、衆しゆうを己おのれに召めし給たまへり、人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは己おのれの葬はうむりにて地ち獄ごくを虜とりこにし、己おのれの復ふく活くわつにて衆しゆうを歡喜よろこびに滿みて給たまへり。

生命いのちを賜たまふ主しゆよ、爾なんぢは三みつ日目かめに墓はかより復ふく活くわつして、衆しゆうに滅ほろびざる不死ふしを流ながし給たまへり。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを產さんの後のちに童貞女どうていぢよたる者ものとして歌うたふ、爾なんぢは身みにて世せ界かいの爲ために神かみ言ことばを生うみたればなり。

又 イルモス 「光を衣の如く衣る者よ」。

潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、衆しゆう預よ言者げんしやは明あきらかに爾なんぢを神かみの母はゝたらん者ものとして預よ言げんせり、蓋けだし爾なんぢは獨ひとり全まつたく純じゆん潔けつ無む玷てんの者ものとして獲えられたり。

潔いさぎよき者ものよ、我われ等ら爾なんぢを活いける水みづを含ふくむ光くわう明めいなる雲くも、我われ等ら望のぞみを失うしなひし者ものの爲ために不ふ朽きうの雨あめたるハリストスを降くだしし者ものと知しれり。

爾なんぢ全まつたく純じゆん善ぜん無む玷てんにして潔いさぎよく童貞どうていに封印ふういんせられし者ものを神かみは愛あいして、爾なんぢの内うちに入いり給たまへり、獨ひとり仁じん慈じなる主しゆなればなり。

第六歌頌

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

主宰しゆさいハリストスよ、禁きんぜられたる糧かてを食しよくして、朽きう壞くわいに陷おちいりし原げん祖そは爾なんぢの苦くるしみに因よりて生命いのちに升のぼせられたり。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは生命いのちにして地ぢ獄ごくに降くだり、朽きう壞くわいせしめし者ものの爲ために朽きう壞くわいと爲なりて、朽きう壞くわいに由よりて復ふく活くわつを流ながし給たまへり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよは生うめり、生うみて後のち實じつに潔いさぎよき者ものとして止とゞまれり、己おのれの手てに萬物ばんぶつを持たもつ主しゆを抱いだきし童貞女どうていぢよ母はゝなればなり。

又 イルモス 「主よ、淵は我を圍み」。

ハリストス我われ等らの神かみよ、爾なんぢは己おのれの手てを伸のべて、遠とほく散さんじたる爾なんぢの諸民しよみんの會くわいを爾なんぢの生いのちを施ほどこす十じふ字架じかを以もつて集あつめ給たまへり、人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

爾なんぢは死しを虜とりこにし、地ぢ獄ごくの門もんを壞やぶれり、縛しばられたるアダムは釋とかれて爾なんぢに呼よべり、主しゆよ、爾なんぢの右みぎの手ては我われを拯すくひ給たまへり。

生神女讚詞 光くわう榮えいなるマリヤ、正敎者せいけうしやの美譽ほまれよ、我われ等ら宜よろしきに合かなひて爾なんぢを焚やかれぬ棘いばら及および山やま、活いける梯かけはし及および天てんの門もんとして讚榮さんえいす。

又 イルモス 「主宰ハリストスよ、靈を壞る颶風」。

純じゆん潔けつなる神かみの母はゝよ、萬有ばんいうの緣由ゆゑんにして、萬有ばんいうに存在そんざいを賜たまひし主しゆは我われ等らに似にたる身みを取とらんと欲ほつして、爾なんぢを其その緣由ゆゑんとして有たもち給たまへり。

純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいよ、我われ等ら爾なんぢを、信しんを以もつて爾なんぢの至し榮えいなる帲幪おほひの下したに趨はしり附つく者ものの爲ために醫治いやしの泉いづみ、靈たましひを養やしなふ者ものなりと知しる。

爾なんぢは我われ等ら、爾なんぢを眞まことの生しやう神女しんぢよとして傳つたふる者ものの爲ために、贖しよく罪ざいの緣由ゆゑんたる生いのちを施ほどこす主しゆ、永遠えいゑんの救すくひを賜たまふ者ものを生うみ給たまへり。

小讚詞コンダク、第五調。

我わが救世主きうせいしゆ、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは地ぢ獄ごくに降くだり、全能者ぜんのうしやとして其その門もんを壞やぶり、造成主ざうせいしゆとして死し者しやを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめ、死しの刺はりを折くじき、アダムを詛のろひより釋とき給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな呼よぶ、主しゆよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

同讚詞イコス 女をんな等たちは天てん使しの聲こゑを聞ききて涕泣なきを止とゞめ、喜よろこび且かつ戰をのゝけり、驚おどろくべき事ことを見みたればなり。視みよ、ハリストスは彼かれ等らに近ちかづきて曰いへり、喜よろこべ、勇いさめよ、我われは世よに勝かてり、俘囚とりこを釋ときたり。急いそぎて門もん徒とに往ゆきて彼かれ等らに報はうぜよ、我われ爾なんぢ等らに先さきだちてガリレヤに往ゆかん、敎をしへを授さづけん爲ためなりと。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

爾なんぢは身みに蔽おほはれて、之これを釣つりの餌ゑばとして、爾なんぢの神かみたる力ちからを以もつて蛇へびを釣つり、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものを升のぼせ給たまへり。

大だい地ちの通とほり難がたき固こ體たいを造つくりし容いれられぬ主しゆは地ち中ちゆうに穿うがちたる墓はかに身みにて藏をさめらる。我われ等ら皆みな彼かれに歌うたふ、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは二に性せいに於おいて一いち位ゐたる身みを取とりし神かみを生うみ給たまへり。我われ等ら皆みな彼かれに歌うたふ、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

又 イルモス 「火の爐の中に歌へる少者を」。

十じふ字架じかの木きを以もつて偶像ぐうざうの迷まよひを解ときたる我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

死しより復ふく活くわつして、地ぢ獄ごくに在ある者ものを己おのれと偕ともに起おこしし我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

己おのれの死しを以もつて死しの權けんを滅ほろぼししハリストスよ、爾なんぢ我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよより生うまれて、之これを生しやう神女しんぢよと爲なしし我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

又 イルモス 「尊まるる先祖の主は」。

限かぎりなき者ものは變易へんえきせずして、仁じん慈じの主しゆなるに因よりて、爾なんぢ至し聖せいなる者ものの内うちに其その位ゐを以もつて身みに合あはせられたり。彼かれ惟一ゆゐいちの我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら同心どうしんに爾なんぢを純じゆん潔けつなる聘女よめ及および爾なんぢの造成主ざうせいしゆの寶はう座ざとして讚榮さんえいす。我われ等ら皆みな彼かれに歌うたふ、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは神しん゜に潔きよめられて、萬有ばんいうの王わう、爾なんぢを造つくりし者ものの母はゝと爲なり給たまへり。我われ等ら皆みな彼かれに歌うたふ、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、主しゆは爾なんぢより取とりし身みの衣ころもを衣きて、我われを救すくひ給たまへり。我われ等ら皆みな彼かれに歌うたふ、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

第八歌頌

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりに在ありて爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆの前まへに全ぜん世せ界かいの詠隊えいたいと爲なりて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

ハリストスよ、爾なんぢは自じ由いうなる救すくひの苦くるしみの爵さかづきの爲ために、之これを不ふ自じ由いうなる者ものの如ごとくにして祈いのれり、各おのおの二ふたつの性せいに屬ぞくする二ふたつの望のぞみを世世よよに有たもてばなり。

ハリストスよ、爾なんぢの全功ぜんこうなる降臨かうりんに因よりて辱はづかしめられたる地ぢ獄ごくは古こ世せいより誘惑いざなひを以もつて殺ころしし者ものを悉ことごとく吐はき出いだせり。彼かれ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢ智慧ちゑに超こえて神かみの言ことばに因よりて主しゆを生うみて童貞女どうていぢよに止とゞまりし者ものを我われ等ら造物ざうぶつ皆みな讚さん頌しようして、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

又 イルモス 「世世の前に父より生れし子」。

甘あまんじて十じふ字架じかに手てを伸のべて、死しの縲絏なはめを斷たちしハリストス神かみを司し祭さい等らは歌うたへ、人人ひとびとは萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

新娶者はなむこの如ごとく墓はかより輝かゞやき出いで、攜香女けいかうぢよに現あらはれて、之これに喜よろこびを報はうぜしハリストス神かみを司し祭さい等らは歌うたへ、人人ひとびとは萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

生神女讚詞 潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢはヘルワィムより上うへなる者ものと現あらはれて、彼かれ等らが舁になふ主しゆを爾なんぢの腹はらに宿やどし給たまへり。我われ等ら人人ひとびとは無む形けいの者ものと偕ともに彼かれを萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

又 イルモス 「少者は爐に在りて」。

爾なんぢ神かみの母はゝが喜よろこびを受うけしに、今いま原げん祖その悲かなしみは息やみたり。故ゆゑに童貞女どうていぢよよ、我われ等ら絕たえず爾なんぢを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

童貞女どうていぢよよ、無む形けいの會くわいは我われ等らと偕ともに愛あいを以もつて一いつの詠えい會くわいを爲なして、爾なんぢの悟さとり難がたき產さんを歌うたひて、之これを世世よよに崇あがめ讚ほむ。

少女せうぢよよ、爾なんぢより不死ふしの透明とうめいの泉いづみたる萬有ばんいうの主しゆは出いでて、信しんを以もつて爾なんぢを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむる者ものの汚けがれを滌あらふ。

童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢを實じつに神聖しんせいなる光ひかれる寶はう座ざ、及および恩おん寵ちようの石板せきばんと認みとむ、爾なんぢは父ちゝの言ことばを受うけたればなり。我われ等ら彼かれを萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、附唱と共に、「ヘルワィムより尊く」。

第九歌頌

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル、神かみ及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは陷おちいりし人ひとを童貞女どうていぢよの胎内たいないより受うけて、全まつたく之これに合あはせられたり、惟たゞ一ひとつの罪つみにも與あづからざりき。爾なんぢは己おのれの至し淨じやうなる苦くるしみを以もつて全まつたき人ひとを朽きう壞くわいより釋とき給たまへり。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢの至し淨じやうにして生いのちを施ほどこす脅わきより流ながれし神聖しんせいなる血ちに由よりて、偶像ぐうざうの祭まつりは息やみ、全ぜん地ちは爾なんぢに讚さん美びの祭まつりを獻けんず。

生神女讚詞 純じゆん潔けつ無む玷てんなる少女せうぢよよ、爾なんぢの生うみし者ものは無む形けいの神かみに非あらず、亦また常つねの人ひとに非あらず、卽すなはち完くわん全ぜんなる人ひとにして、實じつに完くわん全ぜんなる神かみなり。我われ等ら彼かれを父ちゝ及および聖神せいしんと偕ともに崇あがめ讚ほむ。

又 イルモス 「爾悟り難く解き難く」。

爾なんぢ十じふ字架じかに苦くるしみを受うけて、死しを以もつて地ぢ獄ごくの力ちからを壞やぶりし主しゆを我われ等ら信者しんじやは忠ちゆう信しんに崇あがめ讚ほむ。

爾なんぢ三みつ日目かめに墓はかより復ふく活くわつし、地ぢ獄ごくを虜とりこにして、世せ界かいを照てらしし主しゆを我われ等ら信者しんじやは心こゝろを一いつにして崇あがめ讚ほむ。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ、ハリストス神かみの母はゝよ、慶よろこべ、爾なんぢが生うみし主しゆに祈いのりて、信しんを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

又 イルモス 「イサイヤ祝へよ」。

生しやう神女しんぢよ永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢの潔いさぎよき血ちより、夫をつとなく種たねなく性せいに超こえて、萬物ばんぶつの造成主ざうせいしゆ、父ちゝの獨生どくせいの子この爲ために智慧ちゑあり靈たましひある身みは結成けつせいせられたり。

至し聖せいなる母はゝ童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは死しの止とゞめ難がたき奮進すゝみを止とゞめたり、智慧ちゑに超こえて身みにて實じつに永久えいきうの生命いのちを生うみたればなり、地ぢ獄ごくは之これを呑のまんと欲ほつしたれども空むなしくせられたり。

純じゆん潔けつ無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢの子こは主宰しゆさいの寶はう座ざに坐ざして、爾なんぢ神聖しんせいなる諸德しよとくの金繍きんしうの衣ころもにて輝かゞやける者ものを己おのれの右みぎに立たてて、爾なんぢに母はゝたる尊そん貴きを賜たまへり。

神かみの母はゝよ、爾なんぢの產さんは智慧ちゑに超こゆ、蓋けだし爾なんぢは夫をつとなくして孕はらみ、童貞女どうていぢよにして生うみ給たまへり、生うまれし者ものは神かみなればなり。我われ等ら彼かれを讚ほめ揚あげて、童貞女どうていぢよよ、爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

共頌カタワシヤの後に小聯禱。次ぎて主我等の神は聖なり、三次。早課の差遣詞エクサポスティラリイ。

「凡そ呼吸ある者」に主日の讚頌スティヒラ、第五調。

句 彼かれ等らの爲ために記しるされし審判しんぱんを行おこなはん爲ためなり、斯この榮さかえは其その悉ことごとくの聖人せいじんに在あり。

主しゆよ、不ふ法はふの者もの墓はかを封ふうじたれども、爾なんぢは生しやう神女しんぢよより生うまれし如ごとく、墓はかより出いでたり。如何いかにして爾なんぢ身みを取とりしか、爾なんぢの無む形けいの天てん使等しらは悟さとらざりき、何時いつ爾なんぢ復ふく活くわつせしか、爾なんぢを守まもる兵卒へいそつは覺おぼえざりき。蓋けだし二ふたつながら硏究けんきうする者ものの爲ために封ふうぜられ、信しんを以もつて奧密あうみつを拜をがむ者ものの爲ために奇き迹せきと顯あらはれたり。此この奧密あうみつを讚さん頌しようする我われ等らに歡喜よろこびと大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

句 神かみを其その聖所せいしよに讚ほめ揚あげよ、彼かれを其その有いう力りよくの穹蒼おほぞらに讚ほめ揚あげよ。

世世よよの閉鎭とざしを壞やぶり、桎梏かせを截たちし主しゆよ、爾なんぢは墓はかより復ふく活くわつし、裹つゝみ布ぬのを遺のこして、爾なんぢが實じつの三日みつかの葬はうむりの證しようと爲なし、洞ほらの内うちに守まもらるる者ものにして、先さきだちてガリレヤに往ゆけり。大おほいなる哉かな爾なんぢの憐あはれみ、悟さとり難がたき救世主きうせいしゆよ、我われ等らを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

句 其その權能けんのうに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ、其その至いと嚴おごそかなるに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

主しゆよ、女をんな等たちは墓はかに趨はしりて、爾なんぢ我われ等らの爲ために苦くるしみを受うけしハリストスを見みんとせしに、來きたりて、天てん使しを見みたり。彼かれは震ふるひ移うつりたる石いしに坐ざし、彼かれ等らに呼よびて曰いへり、主しゆは復ふく活くわつせり、門もん徒とに告つげよ、我われ等らの靈たましひを救すくふ者ものは死しより復ふく活くわつせりと。

句 角らつぱの聲こゑを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、琴きんと瑟しつとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

主しゆよ、爾なんぢは封ふうぜられたる墓はかより出いでし如ごとく、閉とざされたる門もんより爾なんぢの門もん徒とに入いりて、之これに爾なんぢ寬くわん忍にんなる救世主きうせいしゆが身みに受うけし苦くるしみを示しめせり。爾なんぢはダワィドの裔すゑとして傷きずを忍しのび、神かみの子ことして世せ界かいを自じ由いうにし給たまへり。大おほいなる哉かな爾なんぢの憐あはれみ、悟さとり難がたき救世主きうせいしゆよ、我われ等らを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

又讚頌スティヒラ、アナトリイの作。

句 鼓つゞみと舞まひとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、絃いとと簫せうとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

主しゆ、世世よよの王わう、萬物ばんぶつの造成主ざうせいしゆ、我われ等ら衆しゆうを地ぢ獄ごくより釋とかんと欲ほつして、我われ等らの爲ために身みにて十じふ字架じかに釘ていせらるることと葬はうむりとを受うけし者ものよ、爾なんぢは我われ等らの神かみなり、爾なんぢの外ほか我われ等ら他たの神かみを識しらず。

句 和わ聲せいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、大聲たいせいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。凡およそ呼吸いきある者ものは主しゆを讚ほめ揚あげよ。

主しゆよ、孰たれか爾なんぢの至いたりて光くわう明めいなる奇き蹟せきを測はからん、或あるひは孰たれか爾なんぢの畏おそるべき祕ひ密みつを傳つたへん、爾なんぢ親みづから欲ほつせし如ごとく、我われ等らの爲ために人ひとと爲なりて、爾なんぢの權けんの力ちからを顯あらはしたればなり。蓋けだし爾なんぢの十じふ字架じかにて盜賊たうぞくの爲ために樂園らくゑんを啓ひらき、爾なんぢの葬はうむりにて地ぢ獄ごくの門もんを破やぶり、爾なんぢの復ふく活くわつにて衆しゆうを富とませり。慈じ憐れんの主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる毋なかれ。

香料かうれうを攜たづさふる婦をんな等たち最いと早はやく爾なんぢの墓はかに至いたりて、爾なんぢ不死ふしの言ことば及および神かみに香料かうれうを釁ぬらんと望のぞみしに、天てん使しの言ことばに諭さとされて、喜よろこびて歸かへり、使徒等しとらに、爾なんぢが、萬有ばんいうの生命いのちよ、復ふく活くわつして世せ界かいに潔淨きよめと大おほいなる憐あはれみとを賜たまひしを明あきらかに傳つたへたり。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き跡せきを傳つたへん。

神かみを受うけし墓はかの番兵ばんぺいはイウデヤ人じんに謂いへり、噫あゝ爾なんぢ等らの空想くうさうなる議ぎ定ていや、限かぎられぬ者ものを護まもらんと試こゝろみて徒いたづらに勞らうせり、釘ていせられし者ものの復ふく活くわつを隱かくさんと欲ほつして明あきらかに之これを顯あらはせり。噫あゝ爾なんぢ等らの空想くうさうなる議ぎ會くわいや、何なんぞ隱かくされぬことを復また隱かくさんと謀はかる、寧むしろ我われ等らより聞ききて、成なりたる事ことの實じつなるを信しんぜよ。電いなづまの如ごとき天てん使しは天てんより降くだりて石いしを移うつせり、彼かれを懼おそるるに因よりて我われ等らは死しせし者ものの如ごとくなれり。

彼かれは智ちなる攜香女けいかうぢよに呼よびて云いへり、番兵ばんぺいの死しせる如ごとくなり、封ふう印いんの啓ひらけ、地ぢ獄ごくの罄つくされたるを見みざるか、何なんぞ地ぢ獄ごくの勝しよう利りを空むなしくし、死しの刺はりを折くじきし者ものを死し者しやの如ごとく尋たづぬる。疾とく往ゆきて使徒等しとらに復ふく活くわつを福音ふくいんして、懼おそれなく呼よべ、大おほいなる慈じ憐れんを有たもつ主しゆは實じつに復ふく活くわつし給たまへり。

光榮、早課の福音の讚頌スティヒラ。今も、「生神童貞女よ、爾は至りて讚美たる者なり」。大詠頌。

次ぎて復活の讚詞トロパリ。

今いま救すくひは世せ界かいに及およべり。我われ等ら墓はかより復ふく活くわつせし吾わが生命いのちの首かしらなる主しゆに歌うたふ、其その死しにて死しを滅ほろぼし、我われ等らに勝しよう利りと大おほいなる慈じ憐れんとを賜たまへり。

次ぎて聯禱、及び發放詞。
横線 - 『八調経』第五調

 主日の聖体礼儀に

聖體禮儀リトゥルギヤには眞福詞、第五調。

ハリストスよ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを神かみなりと信しんじ、誠まことの心こゝろより爾なんぢを承うけ認みとめて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 心こゝろの淸きよき者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみを見みんとすればなり。

我わが族やからの爲ために十じふ字架じかの木きに於おいて生命いのちの花はなを開ひらき、木きに緣よる詛のろひを枯からしし者ものを、救世主きうせいしゆ及および造物主ざうぶつしゆとして同心どうしんに讚ほめ歌うたはん。

句 和わ平へいを行おこなふ者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみの子こと名なづけられんとすればなり。

ハリストスよ、爾なんぢは己おのれの死しを以もつて死しの力ちからを壞やぶり、古こ世せいよりの死し者しや、爾なんぢ眞まことの神かみ及および我われ等らの救世主きうせいしゆを歌うたふ者ものを己おのれと偕ともに起おこし給たまへり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

ハリストス、生いのちを施ほどこす主しゆよ、尊たふとき女をんな等たちは爾なんぢの墓はかに來きたりて、爾なんぢに香料かうれうを傅ぬらんと欲ほつせしに、天てん使しは彼かれ等らに現あらはれて呼よべり、主しゆは復ふく活くわつし給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

ハリストスよ、爾なんぢは定罪ていざいせられたる二人ふたりの盜賊たうぞくの間あひだに十じふ字架じかに釘ていせられしに、一人ひとりは爾なんぢを誹そしりて、義ぎに稱かなひて罪つみせられ、一人ひとりは爾なんぢを承うけ認とめて、樂園らくゑんに入いれられたり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

尊たふとき女をんな等たちは使徒しとの會くわいに來きたりて呼よべり、ハリストスは復ふく活くわつし給たまへり、彼かれを主宰しゆさい及および造物主ざうぶつしゆとして伏ふし拜をがまん。

光榮、聖三者讚詞 分わかれざる聖三者せいさんしや、全功ぜんこう全能ぜんのうなる惟一者ゆゐいちしや、父ちゝ、子こ、及および聖神せいしんよ、我われ等ら爾なんぢ眞まことの神かみ及および我われ等らの救世主きうせいしゆを歌うたふ。

今も、生神女讚詞 活いける神かみの宮みや及および過とほられぬ門もんよ、慶よろこべ、焚やかれざる火ひの狀さまの寶はう座ざよ、慶よろこべ、エムマヌイル、ハリストス我われ等らの神かみの母はゝよ、慶よろこべ。

提綱ポロキメン、第五調。

主しゆよ、爾なんぢは我われ等らを保たもち、我われ等らを護まもりて、斯この世よより永遠えいゑんに至いたらん。

句 主しゆよ、我われを救すくひ給たまへ、蓋けだし義ぎ人じんは絕たえたり。

「アリルイヤ」、主しゆよ、我われ永ながく爾なんぢの慈じ憐れんを歌うたひ、我わが口くちを以もつて世世よよに爾なんぢの眞實しんじつを傳つたへん。

句 蓋けだし我われ言いふ、慈じ憐れんは永ながく建たてられたり、爾なんぢは爾なんぢの眞實しんじつを天てんに固かためたり。

横線 - 『八調経』第五調

 主日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に痛悔の讚頌スティヒラ、第五調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

我われ不ふ當たうにして、聊いさゝかも吾わが罪つみを蔽おほふ行おこなひの無なき者ものは、爾なんぢが言いふ所ところの畏おそるべき報むくいを見みて、泣なきて痛いたく歎なげき、且かつ祈いのる、我わが終をはりの至いたらざる先さき、死しの收穫かりいれの先さき、懼おそるべき審判しんぱんの先さき、我わが定罪ていざいせられて、罪人ざいにん等らを囓かまんとする滅きえざる火ひ、外そとの暗やみ、死しせざる蟲むしと切齒はがみとの我われに及およばざる先さきに、我わがハリストスよ、我われに諸罪しよざいの赦ゆるしと大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

我わが神かみ、我わが造成主ざうせいしゆよ、我われ不ふ當たうの者ものは爾なんぢの律法りつぱふ及および聖書せいしよを顧かへりみず、爾なんぢの誡いましめを棄すてて、如何いかんぞ彼處かしこの苦くるしみを逃のがれん。故ゆゑに救世主きうせいしゆよ、我わが終をはりの先さきに我われに淚なみだの雨あめ、眞まことの傷しやう感かん、及および赦免ゆるしを與あたへ給たまへ、仁じん慈じなる神かみとして、地ぢ獄ごくの淵ふちに我われを墜おとさんと謀はかる惡あく鬼きの隊たいを我われより遠とほく逐おひ給たまへ。救世主きうせいしゆよ、爾なんぢに祈いのる、爾なんぢの全能ぜんのうの手てを我われより離はなす毋なかれ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

鳴呼あゝ哀かなしい哉かな、我われ不ふ當たうの者ものは如何いかんぞ智慧ちゑの昧くらまされたる、如何いかんぞ爾なんぢより離はなれて、罪つみに役えき事じし、我わが内うちに居をる肉慾にくよくの逸樂いつらくに全まつたく己おのれを委ゆだねたる。今いま我わが生命いのちの終をはり及および將しやう來らいの苦くるしみを待まつ。至し仁じんなる主しゆよ、我われに淚なみだの痛つう悔くわいと我わが無む數すうの諸罪しよざいの釋ゆるしとを與あたへ給たまへ。我われ熱信ねつしんに爾なんぢ世せ界かいに大おほいなる慈じ憐れんを賜たまふ主しゆに祈いのる。

又無形軍の讚頌スティヒラ

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

神元しんげんの尊たふとき奧密者あうみつしや、三さん光くわう一體いつたいなる神かみに無む形けいの聲こゑと火焰くわえんの舌したとを以もつて絕たえず歌うたを奉たてまつる者ものよ、汚けがれたる口くちより捧さゝぐる我われ等らの祈き禱たう冀き願ぐわんを彼かれの前まへに攜たづさへて、我われ等らの爲ために諸罪しよざいの赦ゆるしを求もとめ給たまへ。蓋けだし我われ等らの柔にう弱じやくを衣きたる主しゆは我われ等らの弱よわきを知しり、且かつ性せいの仁じん慈じなるに因よりて、罪つみを犯おかしし諸僕しよぼくの爲ために爾なんぢ等らの禱いのりを納いれ給たまはん、世せ界かいに大おほいなる慈じ憐れんを賜たまふ主しゆなればなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

我わが主宰しゆさいに近ちかづきて、畏おそれを以もつて其その神聖しんせいなる寶はう座ざの前まへに立たちて、言いひ難がたき光ひかりに盈みてらるる衆しゆう天てん使しよ、罪つみの暗やみに迷まよへる我われを仁じん慈じなる神かみの命めいに由よりて救すくひの光ひかりに導みちびき、爾なんぢ等らの守しゆ護ごと恩おん寵ちようとを以もつて詭き譎けつなる惡あく鬼きの昏くら暗やみを逐おひ給たまへ、蓋けだし光ひかりの至いたるに耐たへずして疾とく退しりぞく。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

神聖しんせいなる恩おん寵ちようの寶はう座ざの前まへに立たちて、神聖しんせいなる光ひかりより眞まことの光くわう照せうを受うくる神かみの光くわう明めいなる諸天しよてん使し、人人ひとびとを愛あいする者ものよ、我われ等ら罪惡ざいあくの暴風あらしの中うちに在ありて難なんを受うくる者もの、及および昏昧くらやみに寢いぬる者ものを天てんより眷かへりみ給たまへ。鳴呼あゝ天てん使し首しゆよ、來きたりて我われ等らを助たすけ、我われ等らを諸惡しよあくの原もとたる敵てきの網あみより脫のがれしめ給たまへ、崇あがめ讚ほめらるる者ものよ、我われ等ら皆みな爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つけばなり。

光榮、今も、生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは實じつにヘルワィムの寶はう座ざにして、諸天しよてん使しに超こゆる者ものなり、蓋けだし神かみの言ことばは我われ等らの形かたちを新あらたにせんと欲ほつして、爾なんぢの内うちに入いりたり、身みを取とりて爾なんぢより出いでて、仁じん慈じなるに由よりて我われ等らの爲ために十じふ字架じか及および苦くるしみを受うけ、神かみなるに由よりて復ふく活くわつを賜たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢが我われ等らの定罪ていざいせられし性せいを造物主ざうぶつしゆと和わ睦ぼくせしめしを感謝かんしやして、爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの祈き禱たうに由よりて我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしと憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

次ぎて「穩なる光」本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第五調。

主しゆよ、我われ罪つみを犯おかして息やめず、仁愛じんあいを蒙かうむりて覺さとらず、獨ひとり仁じん慈じなる主しゆよ、我わが心こゝろの頑陋かたくななるに勝かちて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

主しゆよ、我われ爾なんぢの威ゐ嚴げんを畏おそるれども、惡あくを行おこなふを息やめず、誰たれか審判しんぱんに遇あひて審判者しんぱんしやを畏おそれざる、或あるひは誰たれか醫いやされんと欲ほつして醫師いしを怒いからすること我われの如ごとくなる。恒忍ごうにんの主しゆよ、我わが劣れつ弱じやくに慈じ憐れんを垂たれて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり。我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは地ち上じやうの諸しよ事じを顧かへりみずして、勇いさましく己おのれを苦くるしめに付わたし、福樂ふくらくの望のぞみを誤あやまらずして、天てんの國くにを嗣つぐ者ものと爲なれり。人ひとを愛あいする神かみの前まへに勇敢いさみを有たもちて、世せ界かいに平安へいあん、我われ等らの靈たましひに大おほいなる慈じ憐れんを求もとめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 至し榮えい至し大だいにして畏おそるべき祕ひ密みつなる哉かな、容いれられぬ者ものは腹はらに入いり、母はゝは產さんの後のちにも猶なほ童貞女どうていぢよなり、蓋けだし彼かれより身みを取とりし神かみを生うみ給たまへり。我われ等ら之これを歌か頌しようし、之これに歌うたを奉たてまつりて、諸天しよてん使しと偕ともに呼よばん、聖せいなる哉かなハリストス神かみ、我われ等らの爲ために人ひとと爲なりし主しゆや、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ。光榮、今も、生神女讚詞、讚詞トロパリの調に循ふ。其後聯禱、及び發放詞。

横線 - 『八調経』第五調

 主日の晩堂課

至聖なる生神女に奉る祈禱の規程カノン、第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱歌かちうたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

童貞女どうていぢよよ、實じつに驚おどろくべき奇き跡せきは爾なんぢの内うちに行おこなはる、蓋けだし爾なんぢは己おのれの腹はらに容いれられぬ者ものを宿やどし、言いひ難がたく生うみて、永貞えいてい童女どうぢよに止とゞまり給たまへり。

爾なんぢに來きたりし天てんの雨あめを言いひ難がたく容いれて、不可思議ふかしぎなる產さんの後のちに童貞女どうていぢよに止とゞまりし女宰ぢよさいよ、我われに諸罪しよざいの赦ゆるしを降くだし給たまへ。

光榮 獨ひとり祝しゆく讚さんせられて神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよ、人人ひとびとの爲ために言いひ難がたき歡喜よろこびを生うみし者ものよ、祈いのる、我わが靈たましひの憂うれひを去さりて、我わが心こゝろを樂たのしましめ給たまへ。

今も 至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、至し大だいなる仁じん慈じに因よりて爾なんぢより輝かゞやきし者ものは全まつたく冀望のぞみ及および生命いのちの甘かん味みなり。我われ今いま絕たえず爾なんぢを讚榮さんえいする者ものを救すくはんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

第三歌頌

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを固かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、影かげなる律法りつぱふの行おこなひは過すぎ去されり。蓋けだし爾なんぢは、至し淨じやうなる者ものよ、我われ等らの爲ために立法者りつぱふしやハリストス、潔淨きよめと光くわう照せうとの恩おん寵ちようの法はふを立たてて、詛のろひより脫のがれしむる主しゆを生うみ給たまへり。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢより身みを取とりし神かみは生うまれて、先さきの見みえざる者ものは身みにて見みゆる者ものと爲なれり。少女せうぢよよ、熱心ねつしんに彼かれに祈いのりて、我われ欣よろこばしく爾なんぢを讚榮さんえいする者ものを見みゆると見みえざる敵てきより脫のがれしめんことを求もとめ給たまへ。

光榮 諸慾しよよくの激はげしき浪なみは我われを溺おぼらし、惡あく鬼きの淵ふちは我われを圍かこみ、罪つみの暴風あらしは我わが心こゝろを擾みだす。神かみの母はゝよ、爾なんぢは欣よろこばしく爾なんぢを歌うたふ者ものを堅かため給たまへ。

今も 我われ等らは神聖しんせいなるガウリイルに從したがひて、敬虔けいけんと熱信ねつしんとを抱いだきて、心こゝろを同おなじくして婚姻こんいんに與あづからざる母はゝ生しやう神女しんぢよに慶よろこべよを奉たてまつらん、彼かれに因よりて患くわん難なん、憂愁いうしう、諸しよ病びやうより救すくはるればなり。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつれられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

雲くもを以もつて天てんに衣きする主しゆの爲ために爾なんぢの童貞どうていの血ちより爾なんぢの内うちに衣ころもを織おりし童貞女どうていぢよよ、曩さきに誘惑いざなひを以もつて裸ら體たいにせられし我われに不ふ朽きうの衣ころもを衣きせ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの腹はらは聖せいなる王わう及および神かみの言いひ難がたき宮みやと爲なれり、此これに入いりて、彼かれは我われ等らを屬神ぞくしん゜の堂だうと爲なし給たまへり。

光榮 純じゆん潔けつなる神かみの母はゝよ、爾なんぢは慈じ憐れんなるに因よりて、我わが至いたりて不ふ當たうなる靈たましひ、諸慾しよよく諸罪しよざいに因よりて甚はなはだしく昧くらまされて無む感覺かんかくと爲なりし者ものに慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢはイエッセイの根ねより不ふ朽きうの國くにの女王によわうと輝かゞやきて、アダムとダワィドとの神かみ又また造成者ざうせいしや及および主しゆたる子こを夫をつとなく生うみ給たまへり。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢは產さんの後のちに不ふ朽きうなる童貞女どうていぢよに止とゞまり、朽きう壞くわいせし衆しゆう人じんを生命いのちに導みちびき、不ふ朽きうを以もつて彼かれ等らを輝かゞやかし給たまふ。

至し淨じやうなる神かみの聘女よめよ、爾なんぢは世世よよの先さきに父ちゝより輝かゞやきし永久えいきうの者ものを新あらたなる嬰兒をさなごとして生うみ給たまへり。彼かれに世せ界かいの爲ために祈いのり給たまへ。

光榮 童貞女どうていぢよよ、我わが爾なんぢより生うまれし者ものの審判しんぱん座ざの前まへに立たたん時とき、願ねがはくは我われを審判しんぱんの詰問きつもんより脫のがれしむる保護ほご者しやとして爾なんぢを獲えん。

今も リワンより來きたりし神かみの聘女よめ・童貞女どうていぢよ、全まつたく美うるはしくして無む玷てんなる者ものよ、聖神せいしんに藉よりて爾なんぢの内うちに神かみの子こが人體じんたいを取とることは預よ言げんせられたり。

第六歌頌

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

生しやう神しん女ぢよよ、爾なんぢは夫をつとを識しらずして、我われ等らの卑微ひびに慈じ憐れんを垂たれ給たまふエムマヌイルを生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等らは宜よろしきに合かなひて爾なんぢを讚榮さんえいす。

至し聖せいなる者ものよ、爾なんぢは智慧ちゑに超こえて永久えいきうの者ものを、言ことばに超こえて造成主ざうせいしゆを生うみ給たまへり。彼かれは爾なんぢを生しやう神女しんぢよと歌うたふ者ものを凡およその朽きう壞くわいより救すくひ給たまふ。

光榮 至し善ぜんなる造成主ざうせいしゆ及および恩主おんしゆを生うみし至し聖せいなる女宰ぢよさい、善ぜんを愛あいする者ものよ、惡あくに耽ふける我わが靈たましひを善ぜんなる者ものと爲なし給たまへ。

今も 純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ等らは爾なんぢに新あたらしき又また舊ふるき讚さん美びを奉たてまつる、蓋けだし我われ等らには爾なんぢを讚さん美びする爲ためにガウリイルと偕ともに爾なんぢに慶よろこべよと歌うたふより更さらに善よきはなし。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第五調。

我われは己おのれの惡あしき行おこなひと、少わかき時ときより我われを圍かこみて靈たましひを壓あつする諸罪しよざいの深處ふかみとを思おもひて、今いま審判しんぱんに先さきだちて己おのれの爲ために泣なく。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われに赦ゆるしを與あたへて、救すくひを得えしめ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

至し淨じやうなる者ものよ、我われを惡あしき煩悶もだえと諸慾しよよくの昏昧くらみと永遠えいゑんの定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ、我わが信しんを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

生命いのちを生うみし者ものよ、我わが諸慾しよよくを殺ころし給たまへ。神かみの聘女よめよ、我われ臥ふす者ものを無む感覺かんかくの墓はかより起おこし給たまへ、我わが愛あいを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

光榮 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢは無む形けいの神かみを身みを衣きたる者ものとして生うみ給たまへり。彼かれは我われ等ら畏おそれを以もつて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものを救すくひ給たまふ。

今も 童貞女どうていぢよよ、我われ等らは功こうなくして爾なんぢの淨きよき祈禱いのりを醫治いやしとして得えて、歌うたひて靈たましひの全ぜん愈ゆ、體からだの强きやう健けんを求もとむ。

第八歌頌

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりに在ありて爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆの前まへに全ぜん世せ界かいの詠隊えいたいと爲なりて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

光ひかりの門もんよ、我わが爲ために痛つう悔くわいの光くわう明めいなる門もんを啓ひらき、凡およその義ぎの途みちを示しめして、神かみの旨むねを行おこなはしめ給たまへ。

童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢは父ちゝと同どう無む原げんなる子こを新あらたなる嬰兒をさなごとして地ち上じやうに生うみ給たまへり、其その言いひ難がたき慈じ憐れんを以もつて、我われ等ら罪つみに由よりて朽きう壞くわいせし者ものの形かたちを受うけんと欲ほつしたればなり。

光榮 常つねに榮えいせらるる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは全まつたく美うるはしく、全まつたく妝よそほはれ、神かみが愛あいして選えらびたる者ものと現あらはれたり。故ゆゑに潔いさぎよき者ものよ、我われ等ら世世よよに爾なんぢを歌うたふ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、神かみの神しん゜は爾なんぢを預よ言げんして言いへり、我われの親したしき者ものよ、爾なんぢは全まつたく潔いさぎよくして神聖しんせいなる光くわう榮えいに滿みてられたりと。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを歌か頌しようして歌うたふ、爾なんぢ神人かみびとを生うみし者ものには喜よろこぶこと適かなへり。

第九歌頌

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル、神かみ及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢに趨はしり附つく者ものの歎息たんそくを今いま退しりぞくる勿なくして、我われ等ら憂うれひの中うちに在ありて歌うたを以もつて爾なんぢを歌か頌しようする者ものの涕泣ていきふを喜よろこびに、傷しやう感かんを樂たのしみに變へんじ給たまへ。

神聖しんせいなる命めいを以もつて地ちを水みづの上うへに基もとづけし救世主きうせいしゆを生うみし潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは動うごかざる基もとゐなり、此この上うへに我われ等ら欣よろこばしく爾なんぢを讚さん美びする者ものを堅かたく立たてんことを祈いのり給たまへ。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの產さんは智慧ちゑに超こゆ、蓋けだし爾なんぢは夫をつとなく孕はらみて、童貞女どうていぢよにして生うみ給たまへり、生うまれし者ものは神かみなればなり。我われ等ら彼かれを崇あがめて、爾なんぢ生うみし者ものを讚ほめ揚あぐ。

今も 主しゆよ、爾なんぢは畏おそるべし、ハリストス惟一ゆゐいちの王わうよ、爾なんぢ審判しんぱんを行おこなはんに、其時そのとき誰たれか爾なんぢの恐嚇おどしに堪たへん。故ゆゑに祈いのる、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢを生うみし者ものの嘉よみせらるる祈き禱たうに由よりて、我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」。其他常例の如し、及び發放詞。

gold and luxury under line png e1791509531294 - 『八調経』第五調

月曜日

 月曜日の早課

第一の誦文の後に痛悔の坐誦讚詞セダレン、第五調。

審判者しんぱんしやが坐ざし、諸天しよてん使しが前まへに立たち、角らつぱの鳴なり、焰ほのほの燃もゆる時とき、吾わが靈たましひよ、審判しんぱんに曳ひかれて何なにをか爲なさん。其時そのとき犯おかしし罪つみは爾なんぢの前まへに立たち、爾なんぢの隱ひそかなる諸罪しよざいは顯あらはれん。故ゆゑに終をはりの至いたらざる先さきに審判者しんぱんしやに呼よべ、神かみよ、我われを潔きよめ、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

我われ等ら皆みな警醒けいせいして、多おほくの油あぶらと光くわう明めいなる燈ともしびとを以もつてハリストスを迎むかへん、婚筵こんえんの宮みやの内うちに入いらん爲ためなり。蓋けだし門もんの外そとに在ある者ものは徒いたづらに神かみに呼よばん、我われを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 ヘルワィムより聖せいにして、セラフィムより上うへなる至いたりて潔いさぎよき者ものよ、我われ等ら罪つみなる者ものは爾なんぢを實じつに生しやう神女しんぢよと承うけ認みとめ、保護ほご者しやと有たもちて、患くわん難なんの時ときに救すくひを得う。故ゆゑに我わが靈たましひの權けん力りよく及および避所かくれがよ、我われ等らの爲ために息やめずして祈いのり給たまへ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第五調。

靈たましひよ、今世こんせいの事ことは暫ざん時じにして、來世らいせいの事ことは永遠えいゑんなり、我われ審判所しんぱんじよを見み、寶はう座ざに坐ざし給たまふ審判者しんぱんしやを見みて、應答こたへに慄をのゝく。是これより急いそぎて反正はんせいせよ、審判しんぱんには赦ゆるしなし。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

我われ多おほくの罪つみの牀とこに臥ふし、我わが救すくひの望のぞみは奪うばはれたり、蓋けだし我わが怠惰おこたりの眠ねむりは吾わが靈たましひに苦くるしみを招まねく。童貞女どうていぢよより生うまれし神かみよ、我われを興おこし給たまへ、我わが爾なんぢを歌うたひて讚榮さんえいせん爲ためなり。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 今日こんにち受難者じゆなんしやの記き憶おくは地ちに輝かゞやき、天てんにも光ひかる、天てん使しの會くわいは祝いはひ、人ひとの族やからは共ともに歡よろこぶ。故ゆゑに彼かれ等らは主しゆに我われ等らの靈たましひの憐あはれみを蒙かうむらんことを祈いのり給たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ等らは歡喜よろこびの聲こゑを以もつて諸天しよてん使しと偕ともに天てんの讚さん美び、人人ひとびとと偕ともに地ちの讚さん頌しようを奉たてまつりて、爾なんぢに呼よぶ、最いと濶ひろき天てんの門もんよ、慶よろこべ、獨ひとり地ちに生うまるる者ものの救すくひよ、慶よろこべ、恩おん寵ちようを蒙かうむりて、身みを取とりし神かみを生うみし潔いさぎよき者ものよ、慶よろこべ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第五調。

救世主きうせいしゆよ、我われ無智むちの慾よくに由よりて傴かゞみて、放蕩はうたうに我わが生命いのちを費つひやしし者ものを召めして、蕩たう子しの如ごとく受うけ、大おほいなる慈じ憐れんを以もつて我わが爲ために父ちゝの懷ふところを啓ひらきて、無む形けいの者ものの祈き禱たうに因よりて我われに古いにしへの尊そん貴きを得えしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 爾なんぢに趨はしり附つく者ものの爲ために熱心ねつしんにして勝かたれぬ轉達者てんたつしや、堅けん固ごにして耻はぢを得えざる恃賴たのみ、垣墻かき、帲幪おほひ及および港みなとなる潔いさぎよき永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢの子こ及および神かみに諸天しよてん使しと偕ともに祈いのりて、世せ界かいに平安へいあんと拯救すくひと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

規程カノン、其冠詞は、言よ、多く爾に罪を犯しし我を宥め給へ。イオシフ師の作。第五調。

第一歌頌

イルモス 我われ等ら驚おどろくべき奇き蹟せきを紅くれなゐの海うみに行おこなひし主しゆに凱歌かちうたを謳うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

ハリストスよ、我われ仇敵きうてきの多おほくの誘惑いざなひに餌ゑばせられて迷まよへる者ものを轉てんぜしめて、宥なだめ給たまへ、爾なんぢは全能ぜんのうの主しゆなればなり。

聾者みゝしひの耳みゝを啓ひらきしハリストスよ、祈いのる、我わが聾みゝしひと爲なりたる靈たましひの耳みゝを啓ひらき給たまへ、我わが爾なんぢの言ことばを聽きかん爲ためなり。

致命者讚詞 義ぎの日ひたるハリストスの新あらたに現あらはれし星ほしたる致ち命者めいしやよ、我われ等らの心こゝろより昏昧くらやみを逐おひ給たまへ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやは聖神せいしんの神聖しんせいなる熾炭やけずみに燃もやされたる箭やと現あらはれて、蛇へびの悉ことごとくの矢やを折くじく。

生神女讚詞 神かみの光くわう榮えいの門もんよ、祈いのる、我わが爲ために痛つう悔くわいの門もんを啓ひらきて、我わが卑微ひびなる靈たましひを地ぢ獄ごくの門もんより脫のがれしめ給たまへ。

又無形天軍の規程カノン、其冠詞は、諸天使に第五の歌。フェオファンの作。第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱歌かちうたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

光ひかりを施ほどこす神元しんげんの奧密者あうみつしやたる諸天しよてん使し、直たゞちに受うけたる其その光くわう線せんにて輝かゞやく者ものよ、主宰しゆさいに光ひかりを以もつて吾わが靈たましひを照てらさんことを祈いのり給たまへ。二次。

鳴呼あゝ天軍首てんぐんしゆ、天てんの品ひん位ゐの先立者せんりつしやよ、高たかき寶はう座ざの前まへに立たつ者ものとして、勇敢いさみを有たもちて、敬虔けいけんの心こゝろを以もつて爾なんぢ等らを歌うたふ者ものを諸難しよなんより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 詛のろひは釋とかれ、悲かなしみは息やみたり、蓋けだし祝しゆく福ふくせられて恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものは四し極きよくの爲ために祝しゆく福ふくたるハリストスを生うみて、信者しんじやに喜よろこびを耀かゞやかし給たまへり。

第三歌頌

イルモス 神かみは諸民しよみんの上うへに王わうと爲なり、神かみは其その聖せいなる寶はう座ざに坐ざし給たまふ。我われ等らは心しん智ちを以もつて彼かれを王わう及および神かみとして歌うたふ。

一人いちにんの亡ほろびんことをも欲ほつせざる仁じん慈じ宏くわう恩おんの主しゆよ、我われ亾ほろぶる者ものを宥なだめて、爾なんぢの慈じ憐れんの指麾しきを以もつて我われを救すくひ給たまへ。

知しると知しらずして爾なんぢの前まへに罪つみを犯おかす者ものの一切いつさいを知しるハリストス主しゆよ、我われ來きたりて爾なんぢに俯ふ伏ふくする者ものを蕩たう子しの如ごとく納いれ給たまへ。

致命者讚詞 福ふくたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは活いける罪つみを殺ころして、敵てきの死しせしを顯あらはさん爲ために肉體にくたいの死しを顧かへりみざりき。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは苦くるしみにて飾かざられ、血ちに染そみたる衣ころもにて妝よそほはれ、榮えい冠くわんを冠かうむる者ものとして萬有ばんいうの王わうの前まへに立たち給たまふ。

生神女讚詞 肉體にくたいを取とりし神かみを生うみたる童貞女どうていぢよ母はゝよ、常つねに爾なんぢに呼よぶ者ものの聲こゑを受うけて、我われ等らを諸もろもろの患くわん難なんより脫のがれしめ給たまへ。

又

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを堅かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

爾なんぢの全能ぜんのうなる仁じん慈じを顯あらはして、言ことばを以もつて天てん上じやうの軍ぐんの品ひん位ゐを睿えい智ちに造つくりたる獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、彼かれ等らの轉達てんたつを以もつて爾なんぢの敎けう會くわいを堅かため給たまへ。二次。

言いひ難がたき光くわう照せうを以もつて諸天しよてん使しを飾かざり、彼かれ等らに因よりて爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたむる仁じん慈じなるハリストス主宰しゆさいよ、祈いのる、彼かれ等らを以もつて我わが不ふ當たうなる靈たましひを照てらして、我わが數かぞへ難がたき罪つみを憶おもふ勿なかれ。

生神女讚詞 至し淨じやうにして讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは、無む形けいの品ひん位ゐを照てらす主しゆ、常つねに惟一ゆゐいちの神元しんげんを三さん位ゐに歌うたはしむる神かみの母はゝと爲なり給たまへり。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢが攝せつ理りの作爲わざは預よ言者げんしやアウワクムを驚おどろかせり、蓋けだし爾なんぢは爾なんぢの民たみの救すくひの爲ために出いで、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために臨のぞめり。

我わが生しやう涯がい行おこなひし作爲わざは惡あくなり、不ふ當たうなり、ハリストス我わが神かみよ、我われに正せい直ちよくなる痛つう悔くわいを與あたへて、我われを是これ等らより救すくひ給たまへ。

ハリストスよ、我われ凡およその尊たふとき誡いましめを犯おかし、爾なんぢを畏おそるる心こゝろを喪うしなひし者ものは爾なんぢの逭のがれ難がたき審判しんぱんを畏おそる。慈じ憐れんの主しゆよ、其時そのとき我われを定罪ていざいする勿なかれ。

致命者讚詞 言ことばよ、爾なんぢの受難者じゆなんしやは革帶かはひもを以もつて繫つながれ、傷創きずにて甚はなはだしく蔽おほはれ、鐵搭くまでにて爬かかれて、信しんを以もつて喜よろこべり。

致命者讚詞 勇敢ゆうかんなる受難者じゆなんしやよ、凶きよう惡者あくしやは爾なんぢ等らの堅かたく立たてるを聊いさゝかも動うごかすこと能あたはざりき、故ゆゑに爾なんぢ等らは多おほくの動うごかさるる者ものの爲ために神聖しんせいなる堅固かためと爲なり給たまへり。

生神女讚詞 讚さん美びたる者ものよ、主しゆは爾なんぢの潔いさぎよき血ちより身みを取とりて、爾なんぢを尊たふとむ者ものに爾なんぢの慈じ憐れんなる轉達てんたつに因よりて、痛つう悔くわいを賜たまふ、仁じん慈じにして獨ひとり人ひとを愛いつくしむ主しゆなればなり。

又

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

大仁だいじん慈じなる主しゆよ、爾なんぢは天てん使しの品ひん位ゐを造つくりて、爾なんぢの神かみたる光ひかりを以もつて之これを光くわう照せうして、至いたりて輝かゞやく者ものと爲なし、爾なんぢの權けん力りよくを以もつて之これを堅かためて、大おほいなる能のう力りよくを具そなふる者ものと爲なし給たまへり。二次。

信者しんじやよ、我われ等らは肉體にくたいの地ち上じやうの念おもひを去さり、無む形けいの品ひん位ゐの度ど生せいに效ならひて、智慧ちゑを屬神ぞくしんの事ことに傾かたぶけん。

生神女讚詞 華くわ美びを以もつて竝ならびなく天てん使しの品ひん位ゐに超こゆる至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我わが爲ために轉達者てんたつしやと避所かくれが及および港みなとと爲なりて、我わが諸慾しよよくの暴風あらしを斥しりぞけ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 眞まことの光ひかりなるハリストス神かみよ、我わが神しん゜は夜や中ちゆうより爾なんぢを慕したふ、爾なんぢの顏かんばせを我われに顯あらはし給たまへ。

嗚呼あゝ靈たましひよ、重おもき眠ねむりたる我わが甚はなはだしき罪つみより覺さめ興おきて、痛つう悔くわいの光ひかりに照てらされよ。

我われ等ら勤勉きんべんを以もつて靈たましひを新あらたにし、傷しやう感かんの淚なみだを以もつて飮料のみものとせん、痛つう悔くわいの穗ほを生しやうぜん爲ためなり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは愛あいの熾炭やけずみを以もつて天てんの鍛きたへたる最いと銳するどき劍つるぎと顯あらはれて、敵てきの軍ぐんを剿たち給たまへり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは敵てきに服ふく從じゆうせずして、之これを服ふく從じゆうせしめて、ハリストスの親したしき友ともと爲なり給たまへり。

生神女讚詞 女をんなの中うちに祝しゆく福ふくせられたる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの慈じ憐れんを爾なんぢの民たみに垂たれ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じなる主しゆの母はゝと爲なりたればなり。

又

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

至いたりて光くわう榮えいなる天てん使し首しゆよ、爾なんぢ等らは全ぜん地ちの極きよくを巡めぐりて、主宰しゆさいの恩惠おんけいを信者しんじやに攜たづさへ、且かつ彼かれ等らを護まもり給たまふ。二次。

神父かみちゝの言ことばよ、光くわう榮えいにして飾かざられたる天てんの品ひん位ゐは爾なんぢの言ことばに循したがひて、爾なんぢの光くわう照せうの光ひかりに照てらさる。

生神女讚詞 悉ことごとくの聖せいなる望のぞみの滿足まんぞくなる主しゆを生うみし潔いさぎよき者ものよ、我われ爾なんぢを生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものに善行ぜんかうの望のぞみを起おこさしめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは預よ言者げんしやを鯨くぢらより脫のがせり、我われを諸罪しよざいの深處ふかみより引ひき上あげて、拯すくひ給たまへ。

斯この生いのちに於おいて我われ不ふ當たうの者ものは獨ひとり行おこなはざる罪つみなし、獨ひとり罪つみなき主しゆよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

我われ等ら皆みな熱心ねつしんの帆ほを擧あげて、痛つう悔くわいを以もつて救すくひの港みなとに急いそがん、救すくはるるを得えん爲ためなり。

致命者讚詞 宣傳者せんでんしや、使徒しと、致ち命者めいしやの苦くるしみにて造物ざうぶつは輝かゞやかさる、人ひとを愛あいする主しゆよ、彼かれ等らに由よりて我われ等らをも照てらし給たまへ。

致命者讚詞 我われ等ら皆みな、神かみの光くわう線せんを容いれし器うつは、尊たふとき光くわう體たいなる致ち命者めいしやを崇あがめ讚ほめん。

生神女讚詞 信者しんじやの轉達者てんたつしやたる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの諸僕しよぼくが凡およその罪つみより救すくはれんことを主しゆに祈いのり給たまへ。

又

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

裝さう飾しよくせられたる天てん使しの品ひん位ゐよ、爾なんぢ等らは直たゞちに神かみの光くわう照せうに照てらされて、光ひかりより光ひかりに進すゝむ。二次。

三さん光くわうの光くわう線せんに優ゆたかに裝さう飾しよくせらるる天てん使し及および天てん使し首しゆよ、爾なんぢ等らの祈き禱たうを以もつて我わが不ふ當たうなる靈たましひを照てらし給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは諸天しよてん使しの敬つゝしみて前まへに立たち、喜よろこび且かつ戰をのゝきて見みる所ところの神かみ、萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆを孕はらみ給たまへり。

第七歌頌

イルモス 光くわう榮えいの寶はう座ざに坐ざして淵ふちを臨のぞむ、讚さん美びたる至し榮えいなる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

慈じ憐れんに因よりて悉ことごとくの痛つう悔くわいする者ものを受うけ給たまふ讚さん美びたる至し榮えいなる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

吾わが柔にう弱じやくを知しる慈じ憐れんなるハリストス、讚さん美びたる至し榮えいなる主しゆよ、我わが多おほくの慾よくを醫いやし給たまへ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやの會くわいは神かみの力ちからに堅かためられて、諸敵しよてきに勝かちて呼よべり、讚さん美びたる至し榮えいなる神かみよ、爾なんぢは世世よよに崇あがめ讚ほめらる。

致命者讚詞 睿えい智ちなる受難者じゆなんしやを多た種しゆの苦くるしみを忍しのばん爲ために堅かためし言ことばよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて衆しゆうを宥なだめ給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよの腹はらに入いりて、人ひとを救すくひ給たまひし讚さん美びたる至し榮えいなる神かみよ、爾なんぢは世世よよに崇あがめ讚ほめらる。

又

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

天てん使し首しゆよ、ハリストスは測はかり難がたき力ちからを顯あらはして、爾なんぢ等らを立たてて、歌うたはんことを敎をしへたり、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。二次。

仁じん慈じを以もつて無む形けいの品ひん位ゐの無む量りやうなる數かずを飾かざり給たまふ主しゆよ、信者しんじやの會くわいをして爾なんぢを歌うたふを得えしめ給たまへ、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 信しんを以もつて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ衆しゆう信者しんじやに無む慾よくを流ながしし童貞女どうていぢよよ、諸慾しよよくに動うごかさるる我われを今いま堅かため給たまへ。

第八歌頌

イルモス 萬物ばんぶつの造成主ざうせいしゆ、諸天しよてん使しの畏おそるる者ものを、人人ひとびとよ、歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

主しゆよ、罪惡ざいあくに因よりて死し者しやと爲なりし我われを活いかし給たまへ、我わが萬世ばんせいに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

主しゆよ、痛つう悔くわいを以もつて我われを照てらして、諸罪しよざいの暗昧やみより脫のがれしめ給たまへ、我わが萬世ばんせいに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしや致ち命者めいしやは至し榮えいに天てんより露つゆを承うけて、迷まよひの焰ほのほを踐ふみ給たまへり。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは肥こえたる地ちの如ごとく、實じつに百ひやく倍ばいの穗ほを主しゆハリストスに獻けんじたり。

生神女讚詞 讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、神かみは爾なんぢより輝かゞやき出いでて、神かみを知しる智ち識しきを以もつて昧くらまされし者ものを照てらし給たまへり。

又

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりに在ありて爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆの前まへに全ぜん世せ界かいの詠隊えいたいと爲なりて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

天てん使しの會くわいは今いま我われを招まねきて歌うたを獻けんぜしむ、我われ熱心ねつしんなる望のぞみを以もつて彼かれ等らと共ともに歌うたふ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを崇あがめ讚ほめよ。二次。

至し聖せいなる三日さんじつの光ひかりの役者えきしやよ、信しんを以もつて、造物ざうぶつは主しゆを歌か頌しようして、世世よよに彼かれを崇あがめ讚ほめよと歌うたふ者ものの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 光ひかりの門もんたる童貞女どうていぢよ母はゝよ、信しんを以もつて、造物ざうぶつは主しゆを歌か頌しようして、世世よよに彼かれを崇あがめ讚ほめよと歌うたふ者ものを爾なんぢの光ひかりにて照てらし給たまへ。

第九歌頌

イルモス 我われ等ら人類じんるゐは爾なんぢ女をんなの中うちに福さいはひなる者もの、神かみに祝しゆく福ふくせられたる童貞女どうていぢよを歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

主しゆよ、我われ無知むちにして無む數すうに罪つみを犯おかしし者ものに慈じ憐れんを垂たれ給たまへ、言ことばよ、我われに爾なんぢの國くにを獲えしめ給たまへ。

獨一どくいつの救世主きうせいしゆよ、昔むかし痛つう悔くわいせしニネワィヤ人じんを救すくひし如ごとく、爾なんぢを歌うたふ我われ等らをも爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 主しゆの受難者じゆなんしや、神かみの光くわう榮えいに與あづかる者ものよ、爾なんぢ等らは體からだを種種しゆじゆの瘡痍きずに付わたして、靈たましひを瘡痍きずなくして救すくへり。

致命者讚詞 萬有ばんいうの主しゆの瘡痍きずを己おのれの身みに負おひし者ものよ、爾なんぢ等らは晝ひるに輝かゞやく星ほし、地ち上じやうに衆しゆう人じんの靈たましひを照てらす者ものと現あらはれたり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは火ひの寶はう座ざの如ごとく、萬物ばんぶつを己おのれの手てに載のする主しゆを載のせ、萬有ばんいうを養やしなふ主しゆを乳ちにて養やしなへり。

又

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル、神かみ及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

天てん使しの品ひん位ゐの光くわう榮えいなる首かしら、至いたりて光くわう明めいなるミハイル、及および爾なんぢ神かみが人體じんたいを取とることの眞まことの宣傳者せんでんしやと爲なりしガウリイルよ、爾なんぢ等らを歌うたふ衆しゆう人じんを護まもり給たまへ。二次。

富とめる恩おん賜しを以もつて己おのれの寶たからを豐ゆたかに流ながし、天てん使しの品ひん位ゐを造つくりし主宰しゆさいよ、彼かれ等らと偕ともに審判者しんぱんしや及および萬有ばんいうの王わうとして來きたる時とき、我われ爾なんぢの仁じん慈じに趨はしり附つく者ものを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞
純じゆん潔けつ無む玷てんにして至し福ふくなる生しやう神女しんぢよよ、無む形けいなる寶はう座ざ、ヘルワィムとセラフィム、權柄けんぺいと能のう力りよく、首しゆ領りやうと主しゆ制せい、光くわう明めいなる天てん使し及および天てん使し首しゆは爾なんぢの子こに奉ほう事じす。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第五調。

童貞女どうていぢよより生うまれし主しゆよ、祈いのる、我わが多おほくの罪過ざいくわを顧かへりみずして、我われに痛つう悔くわいの心こゝろを與あたへて、我わが悉ことごとくの罪つみを潔きよめて我われを憐あはれみ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

禍わざはひなる哉かな、我われ孰たれにか似にたる者ものと爲なりし、果みなき無花果樹いちじくの如ごとくなりて、詛のろひと斫きらるることとを畏おそる。祈いのる、天てんの耕作者かうさくしやハリストス神かみよ、我わが荒あれたる靈たましひを果みを結むすぶ者ものと爲なし、我われを蕩たう子しの如ごとく受うけて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

天てんの王わうの軍ぐんは祝しゆく讚さんせらるる哉かな、受難者じゆなんしやは地ちに生うまれし者ものなれども、天てん使しの位くらゐに至いたらんことを勉つとめ、肉體にくたいを顧かへりみずして、苦くるしみに因よりて無む形けいの者ものの尊そん貴きを獲えたり。主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らに大おほいなる憐あはれみを垂たれ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて轉達てんたつして、我われ等らの靈たましひの爲ために多おほくの慈じ憐れんと多おほくの罪つみの潔淨きよめとを求もとめ給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に、若し之あらば、聖人の讚詞トロパリ、若しなくば、本日の讚詞。次に聯禱、第一時課、及び其他常例の如し、幷に發放詞。

横線 - 『八調経』第五調

 月曜日の聖体礼儀に

月曜日の眞福詞、第六調。

ハリストスよ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを神かみなりと信しんじ、誠まことの心こゝろより爾なんぢを承うけ認みとめて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

靈たましひを滅ほろぼす盜賊たうぞくは生命いのちの道みちに遇あひて我われに傷きずつけたり。ハリストスよ、我われ今いま爾なんぢの慈じ憐れんに趨はしり附つきて祈いのる、我われを醫いやして救すくひ給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

天てんの品ひん位ゐは爾なんぢ萬有ばんいうの神かみを歌か頌しようす。主宰しゆさいよ、祈いのる、彼かれ等らの聖せいなる轉達てんたつに因よりて我わが多おほくの惡あくを顧かへりみずして、我われを救すくひ給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

天てん使しの會くわいに合あはせられて、暮くれざる光ひかりに滿みてらるるハリストスの受難者じゆなんしやよ、我わが心こゝろの惡臭あくしうの慾よくを滅ほろぼし給たまへ。

光榮 我われ等ら地ちに生うまるる者ものは天てん上じやうに歌うたはるる神かみに天てん使しの如ごとく三聖さんせいの歌うたを歌うたはん、聖せいなる哉かな無む原げんの父ちゝ、子こ、及および聖神せいしんや。

今も 天てん使しの言ことばに因よりて爾なんぢの腹はらに歡喜よろこびを受うけし潔いさぎよき者ものよ、惡あく事じに因よりて悲かなしめる我わが靈たましひを歡喜よろこびに滿みてて、我われを光ひかりに導みちびき給たまへ。

横線 - 『八調経』第五調

 月曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に痛悔の讚頌スティヒラ、第五調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

禍わざはひなる哉かな、我われ、仁じん慈じなる我わが神かみ及および主しゆを怒いからしし者ものや。ハリストスよ、幾次いくたびか我われ信しんを守まもり善ぜんを行おこなふことを約やくしたれども、常つねに謊いつはる者ものと見あらはれたり。先まづ洗禮せんれいの衣ころもを汚けがして、我わが爾なんぢに於おける約やくを守まもらざりき、後のち屢しばしば痛つう悔くわいを爲なし、奧密あうみつに慈じ憐れんを蒙かうむりて、諸罪しよざいの赦ゆるしを得えたれども、復また肉慾にくよくに從したがひ、惡あく鬼きに誘いざなはれて、諸もろもろの罪つみを犯おかすを止やめざりき。仁じん慈じの深ふかき救世主きうせいしゆよ、終をはりに至いたるまで我われを滅亾ほろびに委ゆだぬる毋なかれ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

不ふ當たうなる靈たましひよ、爾なんぢ審判しんぱんの日ひに何なんの報むくいを得えんか、抑そもそも孰たれか爾なんぢを永遠えいゑんの火ひ、其その他たの苦くるしみの擬ぎ定ていより脫のがれしめんか。若もし爾なんぢ自みづから惡あく事じを棄すてず、善ぜん事じに生いのちを送おくりて主しゆの憐あはれみを得えずば、孰たれも有あるなし。故ゆゑに日日ひびに淚なみだを流ながして、ハリストスに祈いのりて、爾なんぢの無む量りやうの罪つみ、時とき每ごとに行おこなひと言ことばと思おもひとを以もつて犯おかす者ものの全まつたき赦免ゆるしを賜たまはんことを求もとめよ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

救世主きうせいしゆよ、願ねがはくは罪つみの習慣ならはしは我われを縛しばらず、又また惡あく鬼き、常つねに戰たゝかひて己おのれの旨むねに從したがはしめんと欲ほつする者ものは我われを制せいせざらん。全能ぜんのうの主しゆよ、爾なんぢの强つよき手てを以もつて我われを其その管くわん下かより出いだして、親みづから我われの内うちに王わうと爲なり給たまへ。仁愛じんあいなる言ことばよ、我われを全まつたく爾なんぢに屬ぞくせしめ、爾なんぢの旨むねに適かなひて生いのちを度わたらしめ、爾なんぢの内うちに我われを息いこはしめ、我われに潔淨きよめと拯救すくひと大おほいなる憐あはれみとを得えしめ給たまへ。

又 前驅の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

ハリストスの前ぜん驅く、福ふくたる致ち命者めいしやよ、我われ信しんを以もつて爾なんぢの神聖しんせいなる帲幪おほひの下したに趨はしり附つく、全まつたく地ちに傾かたぶきて、甚はなはだしく戕そこなはれし我われを醫いやし給たまへ。祈いのる、畏おそるべき審判しんぱんの日ひに我わが審判しんぱん座ざの前まへに立たたん時とき、我われを定罪ていざいと永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ、睿えい智ち者しやよ、爾なんぢは世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまふ主しゆの前まへに耻はぢを得えざる勇敢いさみを有たもてばなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

ハリストスの睿えい智ちなる前ぜん驅く、日ひよりも明あきらかなる燈ともしびよ、祈いのる、無む量りやうの惡あくの暗昧くらやみに陷おちいりし我われに光ひかりの光くわう線せんを輝かゞやかし、我われを罪つみの穽あなより起おこして、爾なんぢの尊たふとき聲こゑを以もつて導みちびき給たまへ。昔むかし爾なんぢの產さんを以もつて父ちゝの聲こゑを解ときたる者ものよ、祈いのる、今いま我わが聲こゑを直なほくし給たまへ、我わが信しんと愛あいとを以もつて仁愛じんあいなる救世主きうせいしゆ、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまふ神かみを讚榮さんえいせん爲ためなり。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

福ふくたる預よ言者げんしや、前ぜん驅く、及および宣傳者せんでんしやイオアン、救世主きうせいしゆに悉ことごとくの人ひとより大おほいなりと稱しようせられし者ものよ、爾なんぢは實じつに神かみの神聖しんせいなる殿でんたりき、萬ばん衆しゆうに生いのちを施ほどこす主しゆを己おのれの心こゝろに有たもちたればなり。祈いのる、奇異きいなる者ものよ、我われ等ら爾なんぢの聖せいなる殿でんに趨はしり附つきて、爾なんぢを尊たふとむ者ものが神かみに近ちかづきて、聖神せいしんの殿でんと爲ならんことを求もとめ給たまへ、我わが歌うたを以もつて爾なんぢの轉達てんたつと熱切ねつせつなる祈き禱たうとを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

光榮、今も、生神女讚詞 我われ幼をさなき時ときより罪つみを犯おかして息やめず、我わが智慧ちゑを昧くらまし、心こゝろを惡あくに習ならはしたり。今いま我われ歎なげきて、我わが甚はなはだしき迷まよひと我わが無智むちと惡あしき習ならはし及および靈たましひの滅亾ほろびの爲ために泣なく。女宰ぢよさいよ、我われ亾ほろぶる者ものを棄すてずして、我われを憐あはれみて、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われを諸もろもろの誘惑いざなひ及および慾よくより援たすけ給たまへ、我わが老おゆるに及およびても神かみの前まへに痛つう悔くわいせん爲ためなり。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン、及び聯禱。「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第五調。

主しゆよ、我われ罪つみを犯おかして息やめず、仁愛じんあいを蒙かうむりて覺さとらず、獨ひとり仁じん慈じなる主しゆよ、我わが心こゝろの頑陋かたくななるに勝かちて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

主しゆよ、我われ爾なんぢの威ゐ嚴げんを畏おそるれども、惡あくを行おこなふを息やめず、誰たれか審判しんぱんに遇あひて審判者しんぱんしやを畏おそれざる、或あるひは誰たれか醫いやされんと欲ほつして醫師いしを怒いからすること我われの如ごとくなる。恒忍ごうにんの主しゆよ、我わが劣れつ弱じやくに慈じ憐れんを垂たれて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり。我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの諸聖人しよせいじんは信しんの盾たてを具ぐ足そくし、十じふ字架じかの記號しるしにて己おのれを堅かため、勇いさましく己おのれを苦くるしみに付わたして、惡あく魔まの驕慢おごりと誘惑いざなひとを空むなしくせり。彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて、全能ぜんのうの神かみとして、世せ界かいに平安へいあん、我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを降くだし給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 至し聖せいなる母はゝ童貞女どうていぢよ、地ちの面おもてより凡およその淚なみだを拭のごひし者ものよ、我わが深ふかく歎息たんそくする靈たましひの痛いたみを鎭しづめ給たまへ。蓋けだし爾なんぢは人人ひとびとの病やまひを退しりぞけ、罪つみを犯おかしし者ものの憂うれひを解とき給たまふ、我われ等ら皆みな爾なんぢを倚賴たのみ及および堅固かためとして獲えたればなり。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ、光榮、今も、生神女讚詞、讚詞トロパリの調に循ふ。次に聯禱及び發放詞。
横線 - 『八調経』第五調

 月曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱歌かちうたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

附唱 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

仁じん慈じにして無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、我われに痛つう悔くわいの靈たましひ、心こゝろに謙遜けんそん、智慧ちゑに潔けつ淨じやう、生命いのちに更新あらたまり、及および諸罪しよざいの赦免ゆるしと淚なみだの泉いづみとを與あたへ給たまへ。

我わが苦く難なんと傷しやう感かんとを見み、舊ふるき罪過ざいくわの傷きずを醫いやし、我われに痛つう悔くわいの時とき及および諸罪しよざいの告解こくかいを與あたへ給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ我わが惡あくの淵ふちを思おもひて、逝世せいせいの先さきに己おのれの爲ために泣なく。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、我われを苦くるしみより脫のがれしめんことを爾なんぢの子こに祈いのり給たまへ。

今も 吾わが靈たましひよ、痛つう悔くわいの時ときを有たもちて、凡およその惡あくより離はなれて、淚なみだと共ともに爾なんぢの造成主ざうせいしゆに呼よべ、我わが神かみよ、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて我われを救すくひ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを固かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我わが諸慾しよよくの魁かしらは我われを圍かこみて、神かみの像ざうと肖せうとに從したがひて造つくられし我われを耻はぢに滿みてたり。祈いのる、我われ傷しやう感かんの情じやうを抱いだきて爾なんぢを歌うたふ者ものを其害そのがいより脫のがれしめ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、仇敵きうてきは誘惑いざなひを以もつて我われを捕とらへんと謀はかりて、永遠えいゑんの焰ほのほの燃料ぜんれうと爲なさんと欲ほつす。祈いのる、其その惡謀あくぼうと惡計あくけいとを破やぶり給たまへ、我わが喜よろこびて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

光榮 義ぎ者しやの敵てきは誘惑いざなひを以もつて我われを多おほくの罪つみの深ふかき坎あなに置おけり。至いたりて無む玷てんなる女宰ぢよさいよ、我われ今いま全身ぜんしんに傷きずつけられ、援助たすけなき者ものとして、爾なんぢの祈き禱たうを求もとむ、我われを救すくひ給たまへ。

今も 我われ不ふ當たうの者ものは怠惰おこたりの中うちに生いのちを費つひやし、今いま死しの門もんに近ちかづきて、敵てきの惡謀あくぼうを懼おそれて爾なんぢに呼よぶ、我われを其その誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ、我わが救すくはれて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ罪つみの矢やに傷きずつけられて、今いま全ぜん體たいに病やまひを獲えたり。故ゆゑに爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの祈き禱たうの良りやう藥やくを以もつて我わが靈たましひの傷きずを醫いやし給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは爾なんぢを神かみの前まへに轉達者てんたつしやとして獲えて、我われ等らを凡およその危き難なん及および永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめんことを祈いのる。

光榮 仁じん慈じなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは我われの爲ために恃賴たのみと盾たて、保固かためと垣墻かき、諸罪しよざいの赦ゆるしと吾わが靈たましひの光くわう照せう、美譽ほまれと能力ちからなり。

今も 我われは放蕩はうたうにして、慈じ憐れんなるハリストスの我われに賜たまひし善ぜん事じの富とみを費つひやせり。至し淨じやうなる少女せうぢよよ、我われ饑き饉きんに因よりて亾ほろぶる者ものを棄すつる勿なかれ。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

女宰ぢよさいよ、我わが卑微ひびなる靈たましひの不ふ能のう、我わが肉體にくたいの柔にう弱じやく、我わが智慧ちゑの俘囚とりこと爲なりしを見みて、望のぞみを失うしなひし我われを救すくひ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの生うみし神かみに常つねに祈いのりて、我われ等ら衆しゆう爾なんぢを生しやう神女しんぢよと承うけ認とめて、爾なんぢの產さんを讚榮さんえいする者ものを救すくはんことを求もとめ給たまへ。

光榮 孰たれか爾なんぢ純じゆん潔けつなる者ものを讚さん美びせざらん、蓋けだし爾なんぢは全ぜん世せ界かいの救主きうしゆハリストス、惟一ゆゐいちの主宰しゆさいを言いひ難がたく生うみ給たまへり。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、我われに淚なみだの流ながれを降くだし給たまへ、我われ此これを以もつて我わが諸罪しよざいの不ふ潔けつ不ふ淨じやうを滌あらひて、爾なんぢの大おほいなる仁じん慈じを歌うたはん。

第六歌頌

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

我われ諸罪しよざいと不ふ法はふとの深處ふかみに陷おちいりたり。祈いのる、純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの手てを伸のべて、我われを失望しつばうの地ぢ獄ごくより引ひき上あげ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは我われを擾みだす多おほくの罪過ざいくわと思念おもひとを知しる、求もとむ、急いそぎて、我われを此これ等らより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢが造つくりし世せ界かいを審判しんぱんせんとする時とき、潔いさぎよく爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて、我われ爾なんぢの僕ぼくを宥なだめ給たまへ。

今も 潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、我わが靈たましひは諸罪しよざいの深處ふかみに引ひかれて、惡あく鬼きの獲えものと爲なれり。祈いのる、望のぞみを失うしなひし我われを救すくひ給たまへ。

主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第五調。

至いたりて無む玷てんなる生しやう神女しんぢよよ、我わが靈たましひの甚はなはだしき諸慾しよよく、我わが肉體にくたいの諸しよ病びやうを亟すみやかに醫いやし、我わが智慧ちゑの迷まよひを止とゞめ給たまへ。我われに思おもひの靜しづかなる中うちに萬有ばんいうの王わうに潔いさぎよき祈き禱たうを捧さゝげて、諸罪しよざいの赦ゆるしを求もとめんことを得えしめ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

我われは我わが不ふ當たうの行おこなひと諸罪しよざいとの多おほきを思おもひの中うちに入いるる時とき、恐おそれて慄をのゝく。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを此これ等らより釋とき給たまへ。

死しせざる蟲むしと滅きえざる火ひとは常つねに我われを嚇おどして、吾わが靈たましひを囓かむ。至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、願ねがはくは我われは此これ等らを試こゝろみざらん。

光榮 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、外そとの暗やみと畏おそるべき苦くるしみより我われ爾なんぢの僕ぼくを脫のがれしめ給たまへ。我われ爾なんぢの子こに呼よぶ、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

今も 我われ耻はづべき慾よくを以もつて肉體にくたいを汚けがし、不ふ潔けつなる思おもひを以もつて智慧ちゑを昧くらませり。求もとむ、潔いさぎよき者ものよ、我われ爾なんぢの不ふ當たうの僕ぼくを宥なだめて救すくひ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりに在ありて爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆの前まへに全ぜん世せ界かいの詠隊えいたいと爲なりて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ爾なんぢに我わが卑微ひびなる靈たましひの不ふ能のうと吾わが心こゝろの柔にう弱じやくとを訴うつたへ、我わが智慧ちゑの迷まよひを告つげて、爾なんぢの佑助たすけを求もとむ。

言ことばよ、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて、爾なんぢの諸僕しよぼくに憐あはれみを垂たれて、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを崇あがめ讚ほめよと歌うたふ者ものを救すくひ給たまへ。

光榮 慈じ憐れんの主しゆを生うみし者ものよ、信しんを以もつて、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを崇あがめ讚ほめよと歌うたふ衆しゆう人じんを憐あはれみ給たまへ。

今も 仁じん慈じなる童貞女どうていぢよよ、我われを外そとの暗やみと死しせざる蟲むしより救すくひ給たまへ、爾なんぢは世せ界かいの造成主ざうせいしゆを生うみたればなり。彼かれは凡およそ欲ほつする所ところを爾なんぢの祈き禱たうに由よりて行おこなひ給たまふ。

第九歌頌

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル、神かみ及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、爾なんぢが言いひ難がたく生うみし神かみに熱切ねつせつに祈いのりて、我われ等らを患くわん難なん憂愁いうしう及および將しやう來らいの畏おそるべき審判しんぱんより脫のがれしめて、其その聖者せいしやの光くわう照せうを獲えしめんことを求もとめ給たまへ。

ハリストスよ、我われは衆しゆうに超こえて罪つみを犯おかし、爾なんぢの生いのちを施ほどこす誡いましめに背そむきて、無智むちなる禽獸きんじうに似にたる者ものと爲なれり。言ことばよ、求もとむ、爾なんぢの母はゝの祈き禱たうに由よりて、我われを痛つう悔くわいせざりし者ものとして此この生いのちより取とり上あぐる毋なかれ。

光榮 仁じん慈じなる者ものよ、慈じ憐れんの淵ふちたる神かみの言ことばを生うみし者ものとして、爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく衆しゆう人じんの靈たましひを憐あはれみ給たまへ、我われ等ら皆みな爾なんぢを神かみの前まへに耻はぢを受うけざる轉達者てんたつしやとして獲えたればなり。

今も 神かみの母はゝよ、我われ等らの爲ために諸罪しよざいの洗淨きよめと赦免ゆるし、凡およその危き難なんの排除のぞき、生命いのちの潔淨いさぎよき、光くわう明めいなる更新あらたまりを求もとめ給たまへ、我われ等らが爾なんぢの大おほいなる仁じん慈じを讚榮さんえいせん爲ためなり。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

gold and luxury under line png e1791509531294 - 『八調経』第五調

火曜日

 火曜日の早課

第一の誦文の後に痛悔の坐誦讚詞セダレン、第五調。

審判者しんぱんしやが坐ざし、諸天しよてん使しが前まへに立たち、角らつぱの鳴なり、焰ほのほの燃もゆる時とき、吾わが靈たましひよ、審判しんぱんに曳ひかれて何なにをか爲なさん。其時そのとき犯おかしし罪つみは爾なんぢの前まへに立たち、爾なんぢの隱ひそかなる諸罪しよざいは顯あらはれん。故ゆゑに終をはりの至いたらざる先さきに審判者しんぱんしやに呼よべ、神かみよ、我われを潔きよめ、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

我われ等ら皆みな警醒けいせいして、多おほくの油あぶらと光くわう明めいなる燈ともしびとを以もつてハリストスを迎むかへん、婚筵こんえんの宮みやの内うちに入いらん爲ためなり。蓋けだし門もんの外そとに在ある者ものは徒いたづらに神かみに呼よばん、我われを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 童貞女どうていぢよの驚おどろくべき奧密あうみつは世せ界かいの爲ために救すくひと爲なれり、蓋けだし衆しゆう人じんの歡喜よろこびなる主しゆは彼かれより種たねなく生うまれ、朽きう壞くわいなくして身みにて現あらはれたり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第五調。

嗚呼あゝ吾わが靈たましひよ、萬まん萬まんの天てん使しが審判者しんぱんしやの前まへに立たちて、爾なんぢの行おこなひの顯あらはれん時とき、爾なんぢは耻辱はぢの爲ために何なにの答こたへをか爲なさん。故ゆゑに終をはりの至いたらざる先さきに淚なみだを流ながして呼よべ、仁じん慈じなる主しゆよ、我われ罪つみを犯おかせり、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

我われ多おほくの罪つみの牀とこに臥ふし、我わが救すくひの望のぞみは奪うばはれたり、蓋けだし我わが怠惰おこたりの眠ねむりは吾わが靈たましひに苦くるしみを招まねく。童貞女どうていぢよより生うまれし神かみよ、我われを興おこし給たまへ、我わが爾なんぢを歌うたひて讚榮さんえいせん爲ためなり。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 ハリストス神かみよ、爾なんぢは聖せい致ち命者めいしやの奇き跡せきを壞やぶられぬ垣墻かきとして我われ等らに賜たまへり。彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて諸敵しよてきの謀はかりごとを破やぶり、國くにの權柄けんぺいを堅かため給たまへ、爾なんぢ獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、我われ爾なんぢの僕ぼくの上うへに爾なんぢの速すみやかなる覆庇おほひと佑助たすけと慈じ憐れんとを現あらはして、我わが空むなしき想おもひの激浪あらなみを鎭しづめ、我わが陷おちいりたる靈たましひを起おこし給たまへ。蓋けだし我われ知しる、童貞女どうていぢよよ、我われは爾なんぢが欲ほつする所ところ能よくせざるなきを知しる。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第五調。

失望しつばうの激浪あらなみは我われ罪つみの深處ふかみに陷おちいりし者ものを溺おぼらす。祈いのる、ハリストス救世主きうせいしゆよ、萬有ばんいうの全能ぜんのうなる司つかさとして、爾なんぢの前ぜん驅くの祈き禱たうに因よりて、慈じ憐れんを以もつて亟すみやかに我われを無む慾よくの穩おだやかなる港みなとに導みちびきて、我われを救すくひ給たまへ。

ガウリイルの聲こゑに因よりて孕はらみし時とき、エリサワェタは無む結果けつくわを解とかれ、童貞女どうていぢよは猶なほ童貞女どうていぢよに止とゞまれり。前ぜん驅くイオアンは童貞女どうていぢよの腹はらの中なかに神かみ主宰しゆさいが我われ等らの救すくひの爲ために身みを取とりしを預よ見けんして、腹はらに在ありて喜よろこび躍をどれり。

光榮、今も、生神女讚詞 根ねより生しやうぜし神聖しんせいなる花はな、約匱やくひつ及および燈臺とうだい、金こがねの壺つぼ、生命せいめいの餅へいを載のする聖せい案あんたる者ものよ、爾なんぢの子こ及および神かみに聖せいなる前ぜん驅くと偕ともに祈いのりて、爾なんぢを生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものを宥なだめて救すくはんことを求もとめ給たまへ。

規程カノン、其冠詞は、ハリストスよ、我等に諸罪の潔淨を與へ給へ。イオシフの作。第五調。

第一歌頌

イルモス 主しゆよ、日ひが未いまだ嘗かつて照てらさず、又また鑒かんがみざる地ち、天てんの面おもてが未いまだ嘗かつて露あらはに見みざる淵ふちを、イズライリは足あしを濡ぬらさずして濟わたり、爾なんぢは彼かれを讚さん美び凱旋がいせんの歌うたを奉たてまつる者ものとして、爾なんぢの聖せいなる山やまに入いれ給たまへり。

救世主きうせいしゆよ、我わが行おこなひし事ことの潔淨きよめを我われに賜たまひ、我わが此この世よを離はなれざる先さきに我われを赦ゆるし給たまへ。癩者らいしやを潔きよめし主しゆよ、我わが多おほくの膿汁のうじふを潔きよめて、爾なんぢが生せい死し者しやを審判しんぱんせん爲ために來きたる時とき、我われに傷きずなくして爾なんぢの前まへに立たつを得えしめ給たまへ。

暮くれざる日ひよ、吾わが靈たましひの目めを蔽おほふ膿汁のうじふは爾なんぢが現あらはれて地ち上じやうに發はつせし光くわう線せんを見みるを許ゆるさず。慈じ憐れんの主しゆ救世主きうせいしゆよ、之これを潔きよめて、我われに爾なんぢの恩おん寵ちようの光ひかりを仰あふぐを得えしめ給たまへ。

致命者讚詞 福ふくたる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは警醒けいせいを以もつてハリストスの誡いましめを守まもりて、敵てきの惡あくを悉ことごとく眠ねむらせたり。故ゆゑに祈いのる、罪つみの眠ねむりに壓あつせらるる我われをも痛つう悔くわいの神聖しんせいなる警醒けいせいの爲ために興おこし給たまへ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは戰たゝかふ敵てきと肉體にくたいを交まじへ、十じふ字架じかの武器ぶきを以もつて之これに勝かち、血ちの流ながれに之これを溺おぼらし、神かみよりの勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけて、凱旋がいせんの歌うたを唱となへて歌うたふ。

生神女讚詞 潔いさぎよき女宰ぢよさい童貞女どうていぢよよ、我われを惡あしき風習ならはしより解とき、古いにしへの誘惑者いうわくしやの惡謀あくぼうに動うごかさるる我われを誡いましめの石いしに堅かため、ハリストスの悅よろこびを獲えしめて、能よく凱旋がいせんの歌うたを唱となへて歌うたはしめ給たまへ。

又前驅イオアンの規程カノン、其冠詞は、授洗者よ、斯の禱を受け給へ。イオシフの作。第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱歌かちうたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

前ぜん驅くよ、爾なんぢは物質ぶつしつの形體けいたいに在ありて、淨きよき生命いのち、無む形けい者しやの如ごとき生命いのちを度わたれり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、信しんを以もつて爾なんぢを讚さん美びする者ものを己おのれに效ならふ者ものと爲なし給たまへ。

慈じ憐れんの淵ふちたるハリストスを河かはの流ながれに沈しづめし前ぜん驅くよ、彼かれに我わが惡あくの淵ふちを涸からして、我わが思念おもひを照てらさんことを祈いのり給たまへ。

救世主きうせいしゆの前ぜん驅くよ、我われ爾なんぢに祈いのる、人ひとを愛あいする主しゆの前まへに轉達てんたつして、我われに諸罪しよざいの痛つう悔くわいと罪つみの惡臭あくしうの泥ひぢを滌あらふ傷しやう感かんとを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

生神女讚詞 讚さん美びたる女宰ぢよさいよ、爾なんぢは世世よよの先さきに父ちゝより生うまれし者ものを產さん苦くに與あづからずして言いひ難がたく生うみ給たまへり。爾なんぢに趨はしり附つく者ものを凡およその害がいより救すくはんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

第三歌頌

イルモス 主しゆよ、度ど生せいの浪なみに動うごかさるる吾わが心こゝろを堅かためて、神かみとして之これを穩おだやかなる湊みなとに向むかはしめ給たまへ。

我われ爾なんぢ神かみに痛つう悔くわいすることを約やくして後のち、復また罪つみを犯おかすを如何いかにせん、爾なんぢが地ちを審判しんぱんせん時とき、我われ如何いかに現あらはれん。

我われ等ら主しゆに禱いのりを奉たてまつり、歎息たんそくして、汚けがれを淨きよむる淚なみだを注そゝがん、彼處かしこに救すくはれん爲ためなり。

致命者讚詞 生命いのちを愛あいする不ふ法者はふしやは死ししたる思おもひを以もつて、ハリストスを承うけ認みとむる勝しよう利り者しやたる致ち命者めいしやに傷きずつけたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやの會くわいは無む形けいなる天てん使しの會くわいに加くははりて、聖神せいしんの恩おん寵ちように因よりて天てん使しと侔ひとしき者ものと爲なれり。

生神女讚詞 光ひかりの門もんたる童貞女どうていぢよよ、今いま我わが爲ために痛つう悔くわいの門もんを啓ひらきて、我わが卑微ひびなる靈たましひの諸慾しよよくの入いる戸とを閉とぢ給たまへ。

又

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを堅かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

信しんを以もつて爾なんぢの殿でんに來きたり就つく者ものの爲ために常つねに醫治いやしを流ながす奇異きいなる前ぜん驅くよ、爾なんぢに祈いのる、吾わが心こゝろの諸慾しよよく、不ふ注ちゆう意いに因よりて我われと共ともに不ふ當たうに生せい長ちやうせし者ものを醫いやし給たまへ。

獨ひとり至いたりて義ぎなる審判者しんぱんしやよ、我われ爾なんぢの偏へん頗ぱなき審判しんぱんを思おもひて、常つねに歎息たんそくして淚なみだを流ながす。主しゆ我わが神かみよ、爾なんぢの授洗者じゆせんしやの祈き禱たうに因よりて、其時そのとき我われを定罪ていざいせられざる者ものとして護まもり給たまへ。

新しんと舊きうとの轉達者てんたつしやと爲なりし光くわう榮えいなる前ぜん驅くよ、爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの神聖しんせいなる轉達てんたつを以もつて、我われ多おほくの罪つみの爲ために古ふるびたる者ものを痛つう悔くわいに因よりて新あらたにし給たまへ、我わが讚歌ほめうたを捧さゝげて爾なんぢを尊たふとまん爲ためなり。

生神女讚詞 聖せいなる童貞女どうていぢよ母はゝ、獨ひとり純じゆん潔けつなる者ものよ、祈いのる、我われ等らの諸罪しよざいの傷きずを醫いやし、我われ等らの思おもひを照てらし、心こゝろを聖せいにし、我われ等ら衆しゆうを永遠えいゑんの定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、獨ひとり人ひとを愛あいする者ものよ、我われ爾なんぢの攝せつ理りを悟さとりて爾なんぢを讚榮さんえいせり。

主しゆよ、我われ爾なんぢの光ひかりを施ほどこす言ことばを輕かろんじて、昧くらき行爲わざを行おこなへり、故ゆゑに彼處かしこの畏おそるべき爾なんぢの審判しんぱんに戰をのゝく。

我われ等ら神聖しんせいなる畏懼おそれの帆ほを靈たましひの舟ふねに揚あげて、痛つう悔くわいの港みなとに到いたりて、諸惡しよあくの暴風あらしを逃のがれん。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは甘味あまみを滴したゝらす神聖しんせいなる山やま、及および神かみの樹うゑたる樂園らくゑん、生命せいめいの樹きとして主しゆを有たもつ者ものと現あらはれたり。

致命者讚詞 聖せいなる者ものは勇敢ゆうかんと忍耐にんたいとの射擊しやげきを以もつて戰たゝかふ惡あく鬼きを射い殪たふして、光くわう榮えいの冠かんむりを受うけたり。

生神女讚詞 罪つみを犯おかす者ものの轉達者てんたつしや、陷おちいる者ものの神聖しんせいなる更新あらたまりたる至いたりて潔いさぎよき女宰ぢよさいは、神かみを生うみし者ものとして讚榮さんえいせらる。

又

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

授洗者じゆせんしやよ、爾なんぢはハリストス王わうの眞まことの軍ぐん士しとして天てん上じやうの國くにに入いりたり。絕たえず彼かれに爾なんぢを尊たふとむ人人ひとびとを宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

福ふくたる者ものよ、主しゆは爾なんぢの心こゝろの諸德しよとくを預よ見けんして、爾なんぢを母はゝの胎内たいないより聖せいにせり。求もとむ、彼かれに我われ等ら衆しゆうを聖せいにせんことを祈いのり給たまへ。

前ぜん驅くよ、爾なんぢは死し者しやに我われ等らの爲ために殺ころされし者ものの來きたるを福音ふくいんせり。彼かれに罪つみに由よりて殺ころされたる我われをも活いかして救すくはんことを祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 仁じん慈じなる神かみを言いひ難がたく生うみし獨ひとり至いたりて無む玷てんなる者ものよ、至し大だいなる慈じ憐れんを以もつて我われを憐あはれみて、永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 無む形けいの日ひたる主しゆよ、夜や中ちゆうに諸慾しよよくの黑暗くらやみと戰たゝかふ我わが堪たへざる靈たましひに慈じ憐れんを垂たれて、我われの衷うちに白日はくじつの光くわう線せんを耀かゞやかし給たまへ、光ひかりの中うちに夜よの明あけん爲ためなり。

行おこなひに由よりては我われに救すくひなし。蓋けだし我われ不ふ當たうの者ものは地ち上じやうに多おほく罪つみを行おこなへり。神かみよ、爾なんぢの誡いましめに背そむく者ものを爾なんぢが審判しんぱんせんとする時とき、我われ爾なんぢの畏おそるべき審判しんぱんに戰をのゝく。

我われ如何いかんぞ無智むちと爲なりたる、如何いかんぞ惡あしき行爲わざを爲なして昧くらまされたる。ハリストスよ、我われ如何いかんぞ爾なんぢを畏おそれざりし、我われ地ちにまで傴かゞまりて、無智むちなる禽獸きんじうと均ひとしき者ものと爲なれり。祈いのる、萬有ばんいうの神かみよ、我われを轉てんぜしめ給たまへ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやの雲くもは劇はげしき苦くるしみの雲くもを拂はらひ、眞まことの智ち識しきの日ひを輝かゞやかし、多た神しんの暗昧くらやみを散さんじ、暮くれざる光ひかりに至いたれり。

致命者讚詞 ハリストス救世主きうせいしゆよ、祈いのる、爾なんぢの聖せいなる致ち命者めいしやの祈き禱たうに因よりて我わが智慧ちゑを聖せいにし、我われを光くわう照せうに滿みてて、永遠えいゑんの光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なし給たまへ、我わが爾なんぢを讚榮さんえいして歌うたはん爲ためなり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよ母はゝ、信者しんじやの避所かくれが及および港みなとよ、爾なんぢは言ことばに因よりて我われ等らの爲ために言いひ難がたく神かみを生うみしに、彼かれは爾なんぢの仁じん慈じなる轉達てんたつに因よりて、我われ等ら衆しゆう多おほく罪つみを犯おかしし者ものに痛つう悔くわいを賜たまふ。

又

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

前ぜん驅くよ、無む結果けつくわの腹はらは爾なんぢを生うみしに、爾なんぢは善果ぜんくわを結むすぶ爾なんぢの言ことばを以もつて善よき行おこなひの結果けつくわなき心こゝろを善果ぜんくわを結むすぶ者ものと爲なせり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚さん頌しようす。

永福えいふくなる前ぜん驅くよ、爾なんぢは野のに於おいて芳かうばしき百合ゆりの花はなの如ごとく發ひらきたり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、我わが靈たましひの惡あくの臭しう氣きを悉ことごとく拂はらひ給たまへ。

睿えい智ちなる前ぜん驅くよ、爾なんぢは律法りつぱふと恩おん寵ちようとの間あひだに立たてり。故ゆゑに爾なんぢに呼よぶ、罪つみの法はふに勝かたれて、患くわん難なんの中うちにある我われ不ふ當たうの者ものを憐あはれみ給たまへ。

生神女讚詞 通とほられぬ光くわう榮えいの門もんたる至いたりて潔いさぎよき者ものよ、我わが爲ために痛つう悔くわいの門もん、我われを神聖しんせいなる處ところ及および彼處かしこの安息あんそくに入いらしむる者ものを啓ひらき給たまへ。

第六歌頌

イルモス 主しゆよ、預よ言者げんしやを猛獸まうじうより脫のがしし如ごとく、祈いのる、我われをも制せいし難がたき諸慾しよよくの深處ふかみより升のぼせ給たまへ、我わが復また爾なんぢの聖せいなる殿でんを觀みん爲ためなり。

視みよ、反正はんせいの時ときなり、然しかるに我われ倒たふれて臥ふし、常つねに感覺かんかくなき者ものの如ごとし。言ことばよ、我わが心こゝろの昏昧くらみを解ときて、我われを宥なだめ給たまへ。

仁じん慈じなるハリストスよ、我われ歎息たんそくする者ものを昔むかしの稅ぜい吏りの如ごとく宥なだめ、罪女ざいぢよの如ごとく熱心ねつしんに淚なみだを流ながすを得えしめ給たまへ、我われも我わが多おほくの罪過ざいくわの泥ひぢを洗あらはん爲ためなり。

致命者讚詞 ハリストスの大だい致ち命者めいしやよ、我われ多おほく罪つみを犯おかしし者ものを彼處かしこに待まつ所ところの「ゲエンナ」の大おほいなる焰ほのほより脫のがれしめ給たまへ、我われも常つねに大おほいに爾なんぢ等らの記き憶おくを讚榮さんえいせん爲ためなり。

致命者讚詞 神かみ及および主しゆよ、爾なんぢの受難者じゆなんしやは善よき戰たゝかひを戰たゝかひて後のち、生命せいめいを施ほどこす爾なんぢの右みぎの手てより欣よろこばしく榮えい冠くわんを冠かうむらせられたり。彼かれ等らの尊たふとき祈き禱たうに因よりて爾なんぢの衆しゆう民みんを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 恩おん寵ちようを蒙かうむれる者もの、成聖せいせいの幕まく、尊たふとき匱ひつ、神かみの光ひかりの燈臺とうだい、生命せいめいの餅へいの案あん、言ことばの活いける宮みやよ、我われを聖神せいしんの殿でんと爲なし給たまへ。

又

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

言いひ難がたき光くわう線せんにて輝かゞやくハリストスの前ぜん驅くよ、爾なんぢの有能いうのうなる祈き禱たうを以もつて敬虔けいけんに爾なんぢを讚さん美びする者ものの心こゝろを照てらし給たまへ。

ハリストスの前ぜん驅くよ、我われ怠惰おこたりの眠ねむりに陷おちいりたる者ものを恩おん寵ちようを以もつて照てらして、熱心ねつしんに神かみの旨むねを行おこなはん爲ために起おこし給たまへ。
福ふくたる者ものよ、我われ等ら爾なんぢを主宰しゆさいの前まへに神聖しんせいなる轉達者てんたつしや及および祈き禱者たうしやとして獲えたる者ものを凡およその憂愁うれひと災禍わざはひより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつ無む玷てんなる生しやう神女しんぢよよ、罪つみの暴風あらしは我われを擾みだす、亟すみやかに我われを之これより脫のがれしめて、痛つう悔くわいの港みなとに入いれ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 少者せうしやの禱いのりは火ひを滅けす者ものなり、露つゆを出いだす爐ゐろりは奇き跡せきを傳つたふる者ものなり、我わが先せん祖ぞの神かみを讚ほめ歌うたふ者ものを焦こがさず焚やかず。

ハリストス神かみよ、爾なんぢの大おほいなる仁じん慈じに因よりて、我わが不ふ法はふ、我わが不義ふぎ、無む數すうの罪過ざいくわを赦ゆるして、我われを將しやう來らいの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

我われ蕩たう子しの如ごとく受うけたる富とみを費つひやして、今いま神聖しんせいなる糧かてなきに因よりて飢うゑて死しす。救世主きうせいしゆよ、我われ痛つう悔くわいする者ものを納いれて救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 奇異きいなる主しゆの致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは多おほくの苦くるしみに因よりて百ひやく體たい殺ころされて、戰たゝかふ敵てきを死し者しやと爲なせり。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは敬虔けいけんの心こゝろを抱いだきて爾なんぢ等らを歌か頌しようす。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは忍耐にんたいと勇ゆう毅きとを以もつて惡あく鬼きの軍ぐん、苦くるしむる者ものの大數たいすうを射擊しやげきして、之これに傷きずつけて、今いま眞まことの生命いのちに移うつり給たまへり。

生神女讚詞 潔いさぎよき神かみの母はゝよ、爾なんぢは衆しゆう人じんの爲ために救すくひの港みなとと爲なりて、諸慾しよよくの暴風あらしを鎭しづめ、凡およそ地ち上じやうに在ある卑微ひびの者ものを穩靜をんせいに至いたらしむ。

又

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

我われ等ら言ことばを以もつて爾なんぢ言ことばの前ぜん驅くに祈いのる、生うまるる時とき父ちゝの聲こゑを解ときたる如ごとく、我われ等らの罪過ざいくわの網あみを解とき給たまへ。

光くわう明めいなる日ひよ、我われに痛つう悔くわいの救すくひの光ひかりを耀かゞやかして、我わが昧くらみたる心こゝろを擾みだす諸慾しよよくの暗昧やみより我われを脫のがれしめ給たまへ。

我われは結果けつくわなき靈たましひ、子こなき心こゝろを獲えたり。無む結果けつくわの者ものの神聖しんせいなる產さんたるハリストスの授洗者じゆせんしやよ、我わが痛つう悔くわいの果みを生しやうぜんことを常つねに祈いのり給たまへ。

我われ等らは父ちゝと侔ひとしき子こ及および聖神せいしん、分わかれざる三者さんしやを讚榮さんえいして、敬つゝしみて歌うたふ、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは幼兒をさなごたるハリストス、古いにしへの罪つみに因よりて古ふるびたる我われ等らを改あらため給たまふ主しゆを生うみ給たまへり。

第八歌頌

イルモス 萬有ばんいうの王わう、造成主ざうせいしゆを、天てん使しの軍ぐん、人類じんるゐの會くわい及および司し祭さい等らは歌うたひ、「レワィト」等らは尊たふとみ、人人ひとびとは萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

ハリストスよ、視みよ、我わが靈たましひの傷きずは腐くされて且かつ臭くさし、我われ力ちから衰おとろへて痛いたく憊つかれたり。救世主きうせいしゆよ、痛つう悔くわいの良りやう藥やくを以もつて我われを醫いやし給たまへ。

至いたりて凶きよう惡あくなる蛇へびは誘惑いざなひを以もつて我われを奪うばひて、惡あくに滿みてたり。我われ歎息たんそくして呼よぶ、言ことばよ、定罪ていざいせられたる卑微ひびなる我われを棄すつる毋なかれ。

致命者讚詞 讚さん美びたる睿えい智ち者しやよ、爾なんぢ等らは堅かたく立たちて動うごかざりき、十じふ字架じかの敵てき、爾なんぢ等らを躓つまづかしめんと謀はかりし者ものを爾なんぢ等らは倒たふして、全まつたく之これに勝かてり。

致命者讚詞 讚さん美びたる主しゆの致ち命者めいしやよ、火ひも、劍つるぎも、猛獸まうじうも、飢うゑも、刃輪はぐるまも、其その他たの苦くるしみも爾なんぢ等らを仁愛じんあいなるハリストスより離はなすこと能あたはざりき。

生神女讚詞 諸天しよてん使しの令譽ほまれ、人人ひとびとの拯救すくひたる神かみの母はゝよ、我わが爲ために保ほ證しよう者しやと爲なり給たまへ、我わが轉てんじて、先さきに知しると知しらずして犯おかしし罪つみの赦ゆるしを受うけん爲ためなり。

又

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりに在ありて爾なんぢ萬有ばんいうを造つくりし主しゆの前まへに全ぜん世せ界かいの詠隊えいたいと爲なりて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

大おほいなる前ぜん驅くよ、爾なんぢは悔くわい改かいを傳つたへて、集あつまりし人人ひとびとをイオルダンの流ながれに洗あらへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、我われに淚なみだの泉いづみを遣つかはして、我わが諸慾しよよくの流ながれを涸からし給たまへ。

靈たましひよ、全能者ぜんのうしやの審判しんぱんを思おもひて、戰をのゝきて呼よべ、慈じ憐れんなる主しゆよ、爾なんぢの授洗者じゆせんしやに因よりて、我われを宥なだめ救すくひて、苦くるしみを免まぬかれしめ給たまへ。

聖せいなる前ぜん驅くよ、我われ不ふ潔けつなる口くち、汚けがれたる舌したを搖うごかして爾なんぢに祈いのる、誘惑者いうわくしやの種種しゆじゆの攻擊こうげきに因よりて絕たえず動うごかさるる我われを速すみやかに助たすけ給たまへ。

聖三者讚詞 父ちゝと子こと聖神せいしん、一體いつたいなる三者さんしやよ、我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを降くだし給たまへ、我われ等らが全まつたき救すくひを獲えて、爾なんぢを萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる少女せうぢよよ、爾なんぢは高たかき產さんを以もつて我われ等らを墮だ落らくの穴あなより上あげたり。故ゆゑに我われ等らは感謝かんしやの聲こゑを以もつて熱信ねつしんに爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ歌うたふ。

次に生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、及び躬拜。

第九歌頌

イルモス 蓋けだし權能けんのう者しやは爾なんぢに大おほいなる事ことを成なして、爾なんぢが種たねなく己おのれの造物主ざうぶつしゆを生うみしに因よりて、產さんの後のちにも爾なんぢを潔いさぎよき童貞女どうていぢよと顯あらはせり、故ゆゑに生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

イイススよ、爾なんぢに呼よぶ、我わが爾なんぢの恒忍ごうにんを崇あがめ讚ほめん爲ために、復また我われを忍しのびて、果みを結むすばざる無花果樹いちじくの如ごとく我われを斫きる毋なかれ、我わが爾なんぢに痛つう悔くわいの果みを獻けんぜん爲ためなり。

獨ひとり權柄けんぺい能のう力りよくなる主しゆよ、爾なんぢは如何いかに畏おそるべき、爾なんぢが審判しんぱん座ざに坐ざせん時とき、孰たれか爾なんぢの畏おそるべき威ゐ嚴げんに敵てきせん、其時そのとき我われを定罪ていざいせられざる者ものとして護まもり給たまへ。

致命者讚詞 主しゆの致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは己おのれの神聖しんせいなる苦くるしみを以もつて人人ひとびとの肉體にくたいの苦くるしみを除のぞく。祈いのる、吾わが靈たましひの甚はなはだしき苦惱くなうを醫いやし給たまへ、爾なんぢ等らは靈妙れいめうなる醫師いしなればなり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らの不ふ朽體きうたいの柩ひつぎは日ひの光くわう線せんよりも明あきらかに神聖しんせいなる恩おん寵ちようの光ひかりを放はなちて、信しんを以もつて爾なんぢ等らを讚ほめ揚あぐる者ものの心こゝろを照てらし、靈たましひを耀かゞやかす。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、爾なんぢは實じつに光ひかりを出いだす雲くも、新あらたなる民たみを約やく地ちに導みちびく者もの、又また生命いのちに入いるる門もんと現あらはれたり。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢ生しやう神女しんぢよを崇あがめ讚ほむ。

又

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル、神かみ及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

ハリストスの前ぜん驅くよ、視みよ、爾なんぢの殿でんの美うるはしきは地ち上じやうの天てんの如ごとく知しらる。我われ等ら今いま其内そのうちに來きたり、神聖しんせいなる光ひかりに照てらされて、日日ひびに爾なんぢを讚さん頌しようす。

至し福ふくなる授洗者じゆせんしやよ、爾なんぢは主宰しゆさいの忠ちゆう信しんなる友ともとして、我われを篤あつき心こゝろを以もつて絕たえず彼かれを愛あいする愛あいに堅かため、且かつ我われを滅亾ほろびに進すゝむる諸慾しよよくを惡にくましめ給たまへ。

睿えい智ち者しやよ、爾なんぢは諸方しよはうの風かぜに動うごかさるる葦あしに非あらざりき、卽すなはち我われ等らの神聖しんせいなる保固かため及および敎けう會くわいの堅立けんりつなり。爾なんぢの祈き禱たうを以もつて敎けう會くわいを動うごかざる者ものと護まもりて、凡およその誘惑いざなひを退しりぞけ給たまへ。

造成主ざうせいしゆの降臨かうりんは門もんの側かたはらにあり、怠惰おこたりの中うちに生いのちを度わたれる不ふ當たうなる靈たましひよ、何なんぞ己おのれの爲ために泣なかざる。起おきて主しゆに呼よべ、救世主きうせいしゆよ、前ぜん驅くの祈き禱たうに因よりて我われを憐あはれみ給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

生神女讚詞 純じゆん潔けつ無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢは實じつに爾なんぢより輝かゞやき出いでて、迷まよひの甚はなはだしき暗昧やみを散さんじたる日ひの光ひかれる車くるまと現あらはれたり。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて職しよくとして爾なんぢを讚さん頌しようす。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。小聯禱。光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第五調。

童貞女どうていぢよより生うまれし主しゆよ、祈いのる、我わが多おほくの罪過ざいくわを顧かへりみずして、我われに痛つう悔くわいの心こゝろを與あたへて、我わが悉ことごとくの罪つみを潔きよめて我われを憐あはれみ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

禍わざはひなる哉かな、我われ孰たれにか似にたる者ものと爲なりし、果みなき無花果樹いちじくの如ごとくなりて、詛のろひと斫きらるることとを畏おそる。祈いのる、天てんの耕作者かうさくしやハリストス神かみよ、我わが荒あれたる靈たましひを果みを結むすぶ者ものと爲なし、我われを蕩たう子しの如ごとく受うけて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの受難者じゆなんしや、天てん使しの品ひん位ゐに效ならふ者ものは、肉體にくたい無なき者ものの如ごとく苦くるしみを忍しのびて、一心いつしんに約やくせられし福ふくの樂たのしみを恃賴たのみとして有たもてり。ハリストス神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて爾なんぢの世せ界かいに平安へいあん、我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて轉達てんたつして、我われ等らの靈たましひの爲ために多おほくの慈じ憐れんと多おほくの罪つみの潔淨きよめとを求もとめ給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ及び聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、其他、幷びに發放詞。

横線 - 『八調経』第五調

 火曜日の聖体礼儀に

火曜日の眞福詞、第五調。

ハリストスよ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを神かみなりと信しんじ、誠まことの心こゝろより爾なんぢを承うけ認みとめて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句。義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

仁じん慈じなる主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは靈たましひを盡つくして泣なきたる淫いん婦ぷを義ぎと爲なしし如ごとく、祈いのる、我われ望のぞみを失うしなひし者ものをも凡およその苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

我われ等らはハリストスに先驅さきがけして善よき途みちを備そなへしイオアンを同心どうしんに讚さん美びすべし、彼かれの神聖しんせいなる祈き禱たうに因よりて諸罪しよざいより救すくはれん爲ためなり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

熱心ねつしんなる靈たましひを以もつてハリストスの爵しやくを飮のみたる聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らの神聖しんせいなる祈き禱たうの雨あめを以もつて我われ等らを濁にごれる諸罪しよざい及および諸しよ病びやうより潔きよめ給たまへ。

光榮、聖三者讚詞 悟さとられぬ神かみ、全能ぜんのうなる三者さんしや、及および惟一者ゆゐいちしやよ、前ぜん驅くの祈き禱たうに因よりて我われを救すくひて、我わが前まへに在ある黑暗くらやみ及および火焰ほのほより脫のがれしめ給たまへ。

今も、生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、我われ常つねに惡あしき行おこなひに汚けがさるる者ものは爾なんぢ主宰しゆさいの汚けがれなき母はゝに祈いのる、女宰ぢよさいよ、我われを凡およその汚けがれより潔きよめ給たまへ。

横線 - 『八調経』第五調

 火曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十字架の讚頌、第五調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

ハリストスよ、爾なんぢは羔こひつじの如ごとく十じふ字架じかに擧あげられて、誘惑者いうわくしやの驕おごりを倒たふし、己おのれを屠殺ほふりに付わたして、爾なんぢの血ちにて全ぜん地ちを聖せいにし、戈ほこを以もつて刺さされて、焰ほのほの劍つるぎに我わが前まへより退しりぞかんことを命めいじ、我われに樂園らくゑんに入いりて、畏おそれなく生命せいめいの樹きを以もつて樂たのしまんことを許ゆるし給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢの苦くるしみに因よりて救すくはれて、喜よろこびて呼よぶ、光くわう榮えいは爾なんぢの神聖しんせいなる十じふ字架じかに歸きす、我われ等ら此これを以もつて古いにしへの詛のろひより釋とかれて、祝しゆく福ふくと大おほいなる憐あはれみとを得えたり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

至し仁じんなる主しゆ、我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは人人ひとびとの諸しよ病びやうと詬辱はづかしめとを止とゞめんと欲ほつして、耻はづべき釘てい刑けいを忍しのび給たまふ。惡あくに與あづからざる言ことばよ、爾なんぢは膽いを嘗なめて、我われ等らの惡あくの苦にが味みを除のぞき、脅わきを刺ささるる傷きずを受うけて、主宰しゆさいとして我われ等らの傷きずを醫いやし給たまふ。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢの光くわう榮えいなる定制ていせいを歌か頌しようし、伏拜ふくはいして戈ほこと海絨かいじうと葦あしとを尊たふとむ、爾なんぢ此これ等らを以もつて爾なんぢの世せ界かいに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを賜たまひしに因よる。

句 我わが靈たましひ、主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

イイススよ、如何いかんぞエウレイの不ふ法はふなる民たみは爾なんぢ憐あはれみ深ふかき者ものを憐あはれまずして、十じふ字架じかに釘ていせんと定さだめたると、童貞女どうていぢよは產さん苦くなく生うみし者ものの十じふ字架じかに擧あげられしを覩みたる時とき、曾かつて哭なきて云いへり。吾わが甘愛かんあいの子こ、吾わが至いたりて慈いつくしむ子こよ、不ふ法はふなる會くわいは何なにをか爾なんぢに爲なしたる。獨ひとり至し仁じんなる主しゆよ、信しんを以もつて爾なんぢの十じふ字架じかを讚榮さんえいし、又また爾なんぢが約やくせし如ごとく我われを崇あがむる者ものを速すみやかに救すくひ給たまへ。

又生神女の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

仁愛じんあいなるハリストスよ、爾なんぢは初はじめに造つくられしアダムの諸しよ病びやうの書券かきつけをアダムの造成主ざうせいしゆとして全まつたく破やぶらんと欲ほつして、十じふ字架じかに釘ていせられたり。罪つみなき言ことばよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために爾なんぢの神聖しんせいなる脅わきを戈ほこにて傷きずつけんことを許ゆるして、焰ほのほの劍つるぎに我われ等らが樂園らくゑんに入いる門もんを遮さへぎるを禁きんじ給たまへり。故ゆゑに人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ等ら爾なんぢを讚榮さんえいして、爾なんぢの權柄けんぺいを歌うたひ、爾なんぢの十じふ字架じかを尊たふとみて歌か頌しようす、是これに由よりて凡およその性せいが病やまひなき生命いのちと大おほいなる憐あはれみとを獲えたればなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

昔むかし牝め羊ひつじは己おのれの羔こひつじが屠殺ほふりの爲ために行ゆくを見みて、哭なきて從したがひて、斯かく彼かれに呼よべり、吾わが甘愛かんあいなる子こハリストスよ、安いづこにか赴おもむく、恒忍ごうにんなる主しゆ、至いたりて愛あいすべきイイススよ、何なんぞ止とゞまらずして斯この途みちを行ゆく。罪つみなき慈じ憐れんなる主しゆ、吾わが至し愛あいの子こよ、爾なんぢの婢ひに言ことばを出いだせ、宏くわう恩おんなる者ものよ、不可思議ふかしぎに爾なんぢを生うみし者ものを默もだして遺すつる毋なかれ。生命いのちを賜たまふ神かみよ、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

句 蓋けだし、彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは實じつにヘルワィムの寶はう座ざにして、衆しゆう造物ざうぶつに超こゆる者ものなり、蓋けだし神かみの言ことばは我われ等らの形かたちを新あらたにせんと欲ほつして、爾なんぢの内うちに入いりたり、身みを取とりて爾なんぢより出いでて、仁じん慈じなるに由よりて我われ等らの爲ために十じふ字架じか及および苦くるしみを受うけ、神かみなるに由よりて復ふく活くわつを賜たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢが我われ等らの定罪ていざいせられし性せいを造物主ざうぶつしゆと和わ睦ぼくせしめしを感謝かんしやして、爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの祈き禱たうに由よりて我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしと憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 罪つみなき吾わがハリストスよ、爾なんぢは衆しゆう人じんに救すくひを得えしめんと欲ほつして、我われ等らの爲ために贖しよく罪ざいとして、價あたひの大おほいなる爾なんぢの至いたりて潔いさぎよき血ちを甘あまんじて與あたへ給たまへり。故ゆゑに爾なんぢの母はゝは爾なんぢが釘ていせられしを見みて淚なみだを流ながし、痛いたく歎なげきて言いへり、吾わが子こ、至いたりて無む玷てんなる羔こひつじ、暮くれざる光ひかりよ、爾なんぢの尊たふとき血ちにて世せ界かいを贖あがなはんと欲ほつして、如何いかんぞ我わが目めより隱かくれたる。救世主きうせいしゆよ、衆しゆう人じんに光くわう照せうと、平安へいあんと、大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第五調。

主しゆよ、昔むかし預よ言者げんしやモイセイの時ときに爾なんぢの十じふ字架じかの形かたちのみ現あらはれて、爾なんぢの敵てきに勝かてり。今いま我われ等らは實體じつたいの爾なんぢの十じふ字架じかを執とりて、佑助たすけを求もとむ、人ひとを愛あいする主しゆよ、大おほいなる慈じ憐れんに由よりて爾なんぢの敎けう會くわいを堅かため、吾わが皇くわう帝ていにコンスタンティンに於おけるが如ごとく勝しよう利りを與あたへ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

ハリストスよ、爾なんぢの十じふ字架じかは實じつ質しつに於おいては見みゆる木きなれども、神聖しんせいなる力ちからを衣きせられ、有形いうけいに世せ界かいに現あらはれて、無む形けいに我わが救すくひを靈妙れいめうに行おこなふ。救世主きうせいしゆよ、我われ等ら之これに伏拜ふくはいして爾なんぢを讚榮さんえいす、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、我われ等らの爲ために祈いのり給たまへ、我われ等らが不ふ法はふより救すくはれん爲ためなり、蓋けだし爾なんぢ等らには我わが爲ために祈いのる恩おん寵ちようは賜たまはりたり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 造物主ざうぶつしゆ及および神かみは嘗かつて陷おちいりしアダムの形かたちを新あらたにせんと欲ほつして、我わが全まつたき形かたちを受うけて、之これを衣きて、甘あまんじて罪つみある者ものの如ごとく十じふ字架じかに上のぼり、手てを伸のべて、昔むかし木きの果みに伸のぶるに由よりて弱よわりたる手てを醫いやし給たまへり。純じゆん潔けつなる者ものは彼かれを見みて呼よべり、吾わが子こよ、此この言いひ難がたき恒忍ごうにんは何なんぞや、我われは爾なんぢ己おのれの手てに地ちの四し極きよくを保たもつ者ものが十じふ字架じかに上あげられしを見みるに忍しのびず。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ。光榮、今も、生神女讚詞、讚詞の調に循ふ。次ぎに聯禱及び發放詞。
横線 - 『八調経』第五調

 火曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱歌かちうたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの諸僕しよぼくが心こゝろの深處ふかみより熱信ねつしんに爾なんぢに奉たてまつる祈き禱たうを納いれて、之これを爾なんぢの子こに捧さゝげて、諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは實じつに地ちに生うまるる者ものの恩者おんしやにして、豐ゆたかに彼かれ等らに恩おん寵ちようを垂たれ、救すくひの門もんを過とほらしめて、生命いのちに導みちびき給たまふ。神かみの母はゝよ、爾なんぢに祈いのる者ものの爲ために常つねに絕たえず轉達てんたつし給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、爾なんぢを歌うたふ者ものの禱いのりに耳みゝを傾かたぶけて、救すくひの爲ために有能いうのうなる佑助たすけを與あたへ給たまへ、爾なんぢを尊たふとむ者ものを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて諸難しよなんより脫のがれしめて、害がいなく護まもり給たまへ。

今も 至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら甚はなはだしき誘惑いざなひに圍かこまるる者ものを亟すみやかに助たすけ、熱切ねつせつに轉達てんたつして、諸もろもろの災禍わざはひより脫のがれしめ、憂愁うれひより解とき給たまへ。

第三歌頌

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを固かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

神かみの母はゝ、我われ等らの靈たましひを光ひかりに導みちびく者ものよ、爾なんぢの光くわう明めいなる祈き禱たうを以もつて吾わが心こゝろの暗くらき雲くもを散さんじ、我われを照てらして、晝ひるの子こ、諸德しよとくに輝かゞやく者ものし爲なし給たまへ。

我われ等ら常つねに宜よろしきに合かなひて爾なんぢを歌うたはんと欲ほつすれども能あたはずして、卑いやしき口くちより讚さん美びを奉たてまつる、寬くわん容ように之これを納いれて、熱信ねつしんに爾なんぢに祈いのる者ものの祈き禱たうを應かなはせ給たまへ。

光榮 結果けつくわなき靈たましひを善よき果みを結むすぶ者ものと爲なし、荒あれたる心こゝろを爾なんぢの祈き禱たうにて潔きよむる神かみの母はゝよ、我わが靈たましひをも信しんと汚けがれなき生命いのちとの果みを出いだす者ものと爲なし給たまへ。

今も 己おのれの手てに全ぜん地ちの極きよくを持たもつ者ものにして奈何いかんぞ母はゝの懷ふところに抱いだかるる、惠めぐみを以もつて悉ことごとくの生いける者ものに飽あかしむる主しゆにして奈何いかんぞ乳ち房ぶさより乳ちにて養やしなはるる、豐ゆたかに諸しよ恩おんを流ながす者ものは奈何いかんぞ身みを取とりて貧まづしくなりたる。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ等ら爾なんぢを獨ひとり神かみの前まへに轉達てんたつして、罪つみある者ものの諸罪しよざいの債おひめを解とく者ものなりと知しりて、讚さん美びと歌か頌しようとを以もつて爾なんぢを尊たふとむ。

至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、神かみは爾なんぢの内うちに入いりて、爾なんぢを聖せいにせられし殿でんと爲なし給たまへり。彼かれに常つねに爾なんぢの諸僕しよぼくを葘害さいがいより護まもらんことを祈いのり給たまへ。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを恃たのむ卑微ひびなる諸僕しよぼくの祈き禱たうを聽ききて、爾なんぢの母はゝたる勇敢いさみを以もつて亟すみやかに我われ等らを諸難しよなんより救すくひ給たまへ。

今も 神かみの母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを憂愁うれひの中うちに慰藉なぐさめ、誘惑いざなひの中うちに援助たすけ、災禍わざはひの中うちに轉達者てんたつしやとして獲えて、種種しゆじゆの苦く難なんより救すくはる。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

爾なんぢは無む原げんの者ものを定てい期きに生うみ、性せいの實じつに形かたどられぬ者ものを身みの形かたちに生うみ給たまへり。彼かれに絕たえず爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために祈いのり給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは患くわん難なんの中うちに在ある者ものに亟すみやかに近ちかづきて、常つねに彼かれ等らを助たすけ、誘惑いざなひの中うちに爾なんぢを呼よぶ者ものを救すくひに導みちびき給たまふ。

光榮 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて仁じん慈じなる神かみの慈じ憐れんを我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくに垂たれて、我われ等らに平安へいあんなる生命いのちと諸罪しよざいの赦ゆるしとを與あたへ給たまへ。

今も イサイヤの見みたる熾炭やけずみを生うみし純じゆん潔けつなる者ものよ、祈いのる、我わが諸罪しよざいの本ほん質しつを燒やきて、我われを照てらし給たまへ。

第六歌頌

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢは朽きう壞くわいを滅ほろぼしし主しゆを生うみたる者ものとして、我われ等ら罪つみの諸慾しよよくに因よりて殺ころされし者ものを、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、活いかして起おこし給たまへ。

我われ等ら爾なんぢを堅けん固ごなる恃賴たのみ、敵てきに破やぶられぬ垣墻かき、有能いうのうなる佑助たすけと有たもちて、我われ等らに對たいする惡謀あくぼうを恐おそれざらん。

光榮 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、地ち上じやうの者ものに病やまひの中うちに臨のぞみて、常つねに之これを醫いやし、爾なんぢの役者えきしやに患くわん難なんの時ときに現あらはれて、之これを害がいなき者ものとして護まもり給たまへ。

今も 神かみの聘女よめよ、殺人者ひとごろしなる惡あく鬼きの詭き計けいより來きたる思念おもひの雲くもに昧くらまされたる吾わが靈たましひを照てらし給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第五調。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、爾なんぢの子この十じふ字架じかにて偶像ぐうざうの迷まよひは悉ことごとく虛むなしくなり、惡あく魔まの力ちからは破やぶられたり。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは職しよくとして常つねに爾なんぢを歌うたひて讚ほめ揚あげ、實じつに生しやう神女しんぢよと承うけ認とめて爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

第七歌頌

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢの忠ちゆう信しんなる諸僕しよぼくの祈き願ぐわんを納いれて、信しんを以もつて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものを誘惑いざなひより脫のがれしめ、憂患うれひより救すくひ給たまへ。

萬善ばんぜんの原因げんいんなる神かみを我われ等らの爲ために生うみし潔いさぎよき者ものよ、母はゝたる禱いのりを以もつて彼かれに爾なんぢを讚ほめ揚あぐる我われ等らを宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、我われ等らは爾なんぢを勝かたれぬ轉達者てんたつしや及および動うごかされぬ基址もとゐとして獲えて、爾なんぢの保護ほごに覆おほはれて、我われ等らを射いる敵てきの惡謀あくぼうに勝かつ。

今も 女宰ぢよさいよ、我われ爾なんぢの僕ぼくの卑微ひびなるを見みて、常つねに、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものを永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりに在ありて爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆの前まへに全ぜん世せ界かいの詠隊えいたいと爲なりて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

童貞女どうていぢよよ、我われ等ら信者しんじやは言語ことばと思念おもひとを以もつて爾なんぢに讚さん美びを奉たてまつりて呼よぶ、主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

童貞女どうていぢよよ、ソロモンは爾なんぢを全まつたく美うるはしく神かみと親したしき者ものなりと預あらかじめ錄しるせり。神かみと至いたりて親したしき者ものとして、母はゝたる勇敢いさみを以もつて世よに在ある者ものを救すくひ給たまへ。

光榮 我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを神かみに亞つぎて患くわん難なんの中うちに拯救すくひの恃賴たのみと有たもちて呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

今も 讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、卑いやしき口くちより爾なんぢに呼よぶ者ものの歌うたを納いれ給たまへ、病やむ者ものの爲ために肉體にくたいの良りやう醫い、失望しつばうする者ものの爲ために靈たましひの救すくひなる者ものよ、慶よろこべ。

第九歌頌

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル、神かみ及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

我われ等ら傷しやう感かんの心こゝろより爾なんぢに禱いのりを奉たてまつる、罪つみなる我われ等らを憐あはれみ給たまへ、我われ等ら爾なんぢ至いたりて慈じ憐れんなる生しやう神女しんぢよを呼よぶ者ものが試こゝろみの日ひに於おいて耻はぢを得えざらん爲ためなり。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、塵ちりに屬ぞくする爾なんぢの親しん族ぞくを遺すてずして、我われ等ら衆しゆうを覆おほふ佑助者たすけと爲なり、憂愁うれひの中うちに我われ等らを堅かため、疾病やまひの中うちに醫いやし給たまへ、我われ等らは救すくふことを能よくする爾なんぢを恃たのめばなり。

光榮 神かみよ、今いま爾なんぢの民たみの祈き禱たうを聽ききて、我われ等らを敵てきの害がいより脫のがれしめ給たまへ。視みよ、我われ等らは爾なんぢを生うみし童貞女どうていぢよ、我われ等らが愛あいを以もつて讚さん美びする者ものを眞まことの潔淨きよめとして爾なんぢに進すゝむ。

今も 女宰ぢよさいよ、我われ等ら衆しゆう地ちに生うまるる者ものは熱心ねつしんに爾なんぢの權能けんのうの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきて、爾なんぢの慈じ憐れんと宏くわう恩おんとを求もとむ、此これ等らを注そゝぎて我われ等ら衆しゆうを聖せいにし給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜、聖三祝文、「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

gold and luxury under line png e1791509531294 - 『八調経』第五調

水曜日

 水曜日の早課

第一の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第五調。

救世主きうせいしゆよ、髑髏されかうべの處ところは樂園らくゑんと爲なれり、蓋けだし十じふ字架じかの木きは樹たてられしのみにして、直たゞちに生命せいめいの葡ぶ萄だうの房ふさたる爾なんぢを我われ等らの樂たのしみの爲ために生しやうじたり。光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

我われ等ら信者しんじやは救世主きうせいしゆ及および贖しよく罪主ざいしゆが、親みづから知しるが如ごとく欲ほつするが如ごとく、甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせられしを歌か頌しようして讚榮さんえいせん。蓋けだし彼かれは十じふ字架じかに人人ひとびとの罪つみを釘ていして、人類じんるゐを迷まよひより脫のがれしめて、國くにを獲えしめ給たまへり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 產さん苦くなく爾なんぢを生うみし者ものは、爾なんぢが木きに擧あげられしを見みて、淚なみだを流ながして呼よべり、嗚呼あゝ甘愛かんあいなる子こよ、我われ爾なんぢが罪犯者ざいはんしやの如ごとく二ふたりの罪犯者ざいはんしやの間あひだに十じふ字架じかに釘ていせられしを見みて、靈たましひ裂さかる。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第五調。

己おのれの旨むねに由よりて十じふ字架じかに釘ていせらるるを忍しのびて、人人ひとびとを朽きう壞くわいより解ときたる救世主きうせいしゆよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを歌か頌しようして伏拜ふくはいす、爾なんぢは十じふ字架じかの力ちからを以もつて我われ等らを照てらしたればなり。宏くわう恩おんにして仁愛じんあいなる主しゆよ、我われ等ら畏懼おそれを以もつて爾なんぢを生命いのちを施ほどこす者もの及および主しゆとして讚榮さんえいす。

句 神かみ我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかの木きは世せ界かいの爲ために救すくひと現あらはれたり、蓋けだし爾なんぢは甘あまんじて其その上うへに釘ていせられて、地ちに生うまるる者ものを詛のろひより釋とき給たまへり。衆しゆう人じんの歡喜よろこびたる主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの受難者じゆなんしやは爾なんぢの苦くるしみの杯さかづきを慕したひて、人生じんせいの榮華えいぐわを遺すてて、諸天しよてん使しの侶ともと爲なれり。ハリストスよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らの靈たましひに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、爾なんぢの子この十じふ字架じかにて偶像ぐうざうの迷まよひは悉ことごとく虛むなしくなり、惡あく魔まの力ちからは破やぶられたり。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは職しよくとして常つねに爾なんぢを歌うたひて讚ほめ揚あげ、實じつに生しやう神女しんぢよと承うけ認とめて爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第五調。

諸しよ預よ言者げんしやの預よ言げんは已すでに應かなひ、爾なんぢの古いにしへの議ぎ定ていは終をはりを成なせり、蓋けだし爾なんぢは、萬有ばんいうの王わうハリストスよ、甘あまんじて身みを取とりて貧まづしき者ものと爲なり、我われ等らの爲ために十じふ字架じかに上のぼりて、死しを忍しのび給たまへり。故ゆゑに言ことばよ、我われ等らは智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの寬くわん容ようを讚榮さんえいす。

イイスス萬有ばんいうの王わうよ、天てん使しの品ひん位ゐは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせられて眠ねむりしを見みて畏おそれ、惡あく鬼きの軍ぐんは直たゞちに走はしり、地ぢ獄ごくの柱はしらは折くじかれ、死しの殘虐くるしめは息やみ、墓はかの中なかの死し者しやは復ふく活くわつせり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 ハリストスよ、爾なんぢの母はゝは爾なんぢが甘あまんじて十じふ字架じかに盜賊たうぞくの間あひだに懸かゝれるを見みて、母はゝとして心こゝろ裂さかれて言いへり、罪つみなき子こ、仁じん慈じに由よりて人類じんるゐを活いかさんと欲ほつする者ものよ、如何いかんぞ罪犯者ざいはんしやの如ごとく、非義ひぎに十じふ字架じかに釘ていせられたる。

十字架の規程カノン、其冠詞は、世界を擧ぐるハリストスよ、爾は木の上に擧げられたり。イオシフの作。第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱歌かちうたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

悟さとり難がたく人體じんたいを取とりて、身みにて世せ界かいに現あらはれし主しゆを法はふに戾もとるエウレイの會くわいは木きの上うへに擧あげたり、其その親みづから甘あまんぜしが如ごとし。

ハリストスよ、狂くるへるエウレイ人じんが爾なんぢ熟じゆくしたる葡ぶ萄だうを十じふ字架じかの木きに擧あげし時とき、爾なんぢは、言ことばよ、樂たのしみの酒さけ、惡者あくしやの凡およその醉ゑひを醒さます者ものを滴したゝらせ給たまへり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らの忍耐にんたいは讚さん美びの法はふに超こゆ、蓋けだし爾なんぢ等らは凡およその人ひとの性せいに超こゆる苦くるしみを忍しのびて、苦くるしみなき安息あんそくに入いりて樂たのしみ給たまふ。

致命者讚詞 ハリストスの讚さん美びたる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは言ことばの操舵かぢとりに因よりて、苦くるしみの浪なみを濟わたり、天てんの港みなとに到いたりて、今いま神聖しんせいなる平穩へいをんを樂たのしむ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの胎たいより生うまれし主しゆの非義ひぎに木きの上うへに擧あげられしを見みて、爾なんぢは淚なみだを流ながして、其その實じつに言いひ難がたき寬くわん容ようを歌か頌しようし給たまへり。

又生神女の規程カノン、其冠詞は、今童貞女に第五の歌頌を奉る。第五調。

第一歌頌

イルモス同上

神聖しんせいなる光くわう榮えいの門もんたる神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよ、樂園らくゑんの門もんを啓ひらきたる者ものよ、祈いのる、我われにも痛つう悔くわいの門もんを啓ひらきて、我わが智慧ちゑを爾なんぢを歌か頌しようせん爲ために照てらし給たまへ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは生せいと死しとを主つかさどる主しゆを生うみて、死しの進行しんかうを止とゞめたり。彼かれに吾わが靈たましひを殺ころす諸罪しよざいを止とゞめて、我われを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

父ちゝと同どう無む原げんなる言ことばは萬族ばんぞくの中うちより獨ひとり爾なんぢイアコフの榮さかえを選えらびて、爾なんぢの血ちより身みを取とり給たまへり。女宰ぢよさいよ、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われを救すくひ給たまへ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは羊ひつじの毛けに於おけるが如ごとく爾なんぢに降くだりし天てんの雨あめを受うけたり。故ゆゑに母はゝ童貞女どうていぢよよ、爾なんぢに祈いのる、我わが諸慾しよよくの雨あめを涸からし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを固かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

我わがイイススよ、爾なんぢ十じふ字架じかに釘ていせらるるに、樂園らくゑんは復また啓ひらかれ、盜賊たうぞくは衆しゆうに先さきだちて喜よろこびて入いる、爾なんぢ死しせるに、誘惑者いうわくしや敵てきは殺ころされ、殺ころされたるアダムは生いかさる。光くわう榮えいは爾なんぢの大おほいなる慈じ憐れんに歸きす。

イイススよ、爾なんぢは仁じん慈じに因よりて木きの上うへに釘ていせられて、罪つみの焰ほのほを滅けし給たまふ、爾なんぢは縛しばられて迷まよひを解とき、裸ら體たいにせられて人ひとに光くわう榮えいの衣ころもを衣きせ給たまふ。光くわう榮えいは爾なんぢの大おほいなる仁じん慈じに歸きす。

致命者讚詞 常つねに輝かゞやきて不ふ虔けんの暗やみを遠とほざくる星ほしたる致ち命者めいしやを現あらはししハリストスよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我わが惡あくの夜よを拂はらひて、我わが昧くらみたる心こゝろを照てらし給たまへ。

致命者讚詞 光くわう榮えいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは睿えい智ちにして不ふ法者はふしやの勸すゝめを避さけ、法はふに遵したがひて苦くるしみを受うけて、法はふに合かなふ信しんの爲ために榮えい冠くわんを冠かうむらせられ、神聖しんせいなる糧かて及および樂園らくゑんの樂たのしみを獲えたり。

生神女讚詞 讚さん美びたる者ものよ、天てん使しの品ひん位ゐは竝ならびなく彼かれ等らに超こゆる爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし爾なんぢは神かみ、木きに緣よる詛のろひを木きを以もつて滅ほろぼして、祝しゆく福ふくを流ながしし主しゆを身みにて生うみ給たまへり。

又 イルモス同上

潔いさぎよき者ものよ、罪つみの矢やに傷きずつけられし我われを爾なんぢの治ち療れうにて醫いやし給たまへ。爾なんぢの產さんを以もつて人類じんるゐを諸しよ病びやうより救すくひし者ものよ、我われを圍かこめる諸しよ病びやうより助たすけ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、常つねに我わが卑微ひびなる心こゝろを徒いたづらに侵おかして、我われを殺ころさんと謀はかる見みえざる敵てきを爾なんぢの守しゆ護ごを以もつて斃たふし給たまへ、彼かれ等らが得うる所ところなくして、耻はぢに滿みてらるる者ものと爲ならん爲ためなり。

神聖しんせいなる水みづを世せ界かいの爲ために流ながしし女宰ぢよさいよ、我われに活いける水みづを滿みてて、我わが不ふ法はふの甚はなはだしき流ながれを涸からし、我わが心こゝろの浪なみを爾なんぢの神聖しんせいなる平穩へいをんにて鎭しづめ給たまへ。

律法りつぱふ終をはりて影かげは去されり。蓋けだし爾なんぢは、純じゆん潔けつ至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、立法者りつぱふしやハリストス、我われ等らの爲ために潔淨きよめと光くわう照せうとの恩おん寵ちようの法はふを立たてて詛のろひを除のぞく者ものを生うみ給たまへり。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢは甘あまんじて木きに懸かけられ、爾なんぢの至し聖せいなる靈たましひを父ちゝの手てに付わたして、人人ひとびとの靈たましひに完くわん全ぜんなる救すくひを成なし給たまへり。

イイススよ、不義ふぎなる審判者しんぱんしやは爾なんぢ義ぎなる審判者しんぱんしやを木きに懸かけられて死しするに定さだめたり、爾なんぢが我われ等ら不義ふぎにして敵てきに服ふくせし者ものを義ぎと爲なさん爲ためなり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは地ち上じやうに於おいて多おほくの災禍わざはひと、憂愁うれひと、無む數すうの苦くるしみとに與あづかりて、古こ世せいより備そなへられたる福樂ふくらくを見みるを得えたり。

致命者讚詞 尊たふとき致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは試誘こゝろみの冬ふゆを過すぎ、天てんの應報むくいの春はるに到いたりて、天てん使しの品ひん位ゐに加くはへられたり。

生神女讚詞 祝しゆく福ふくせられし者ものよ、爾なんぢが己おのれの子この釘ていせられて父ちゝの手てに靈たましひを付わたすを見みし時とき、神聖しんせいなる苦くるしみの劍つるぎは爾なんぢの靈たましひを貫つらぬけり。

又 イルモス同上

純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、行おこなひに由よりては我われに救すくひなし。故ゆゑに我われ恃賴たのみを以もつて爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく、失望しつばうせし我われを爾なんぢの祈き禱たうに由よりて救すくひ給たまへ。

光ひかりの潔いさぎよき器うつは、日ひの尊たふとき輅くるまたる女宰ぢよさいよ、祈いのる、罪惡ざいあくの暗やみに昧くらまされたる我わが心こゝろを照てらして、我われを救すくひ給たまへ。

雲くもを以もつて天てんに衣きする主しゆの爲ために爾なんぢの童貞どうていの血ちより衣ころもを織おりし少女せうぢよよ、誘惑いざなひに由よりて裸ら體たいと爲なりたる我われに不ふ朽きうの衣ころもを衣きせ給たまへ。

至し聖せいなる童貞女どうていぢよ、神かみの聘女よめよ、造成主ざうせいしゆは爾なんぢを人生じんせいの谷たにより百合花ゆりのはなの如ごとく採とりて、爾なんぢに依よりて世せ界かいに屬神ぞくしんの芳かうばしき香かを吹ふき給たまへり。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

義ぎなる審判者しんぱんしやハリストスよ、爾なんぢは立たちて審判しんぱんせられて、身みを以もつて仇あだを定罪ていざいし、葦あしにて擊うたれて、我わが爲ために全まつたき自じ由いうを書しるし給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢが身みにて木きの上うへに懸かゝれるを見みて、日ひは其その光ひかりを晦冥くらやみに變へんじ、地ちは震ふるひ、磐いはは裂さけたり。

致命者讚詞 讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは神かみの法はふを守まもる者ものとして、苦くるしみを以もつて地ちの四し極きよくを聖せいにして、聖所せいしよを嗣つぎ給たまへり。

致命者讚詞 至いたりて善ぜんにして至いたりて光くわう明めいなる致ち命者めいしや、神聖しんせいなる光くわう榮えいを衣きて、敵てきの惡あくを裸ら體たいにせし者ものは尊たふとまるべし。

生神女讚詞 我われ等ら爾なんぢ純じゆん潔けつなる神かみの母はゝを讚さん頌しようす、爾なんぢに依よりて詛のろひは空むなしくなり、救きう贖しよくと祝しゆく福ふくとは賜たまはりたり。

又 イルモス同上

童貞女どうていぢよよ、我わが爾なんぢより生うまれし主しゆの審判しんぱん座ざの前まへに立たたん時とき、祈いのる、其時そのとき我わが爲ために佑助たすけと爲なりて、我われを定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ罪つみの法はふに勝かたれ、屢しばしば敵てきの誘惑いざなひに迷まよはされて、諸罪しよざいの淵ふちに墜おとさるる者ものを援たすけ給たまへ。

イサイヤの見みたる熾炭やけずみを生うみし純じゆん潔けつなる者ものよ、祈いのる、我わが諸罪しよざいの本ほん質しつを燒やきて、我われを照てらし給たまへ。

ハリストスに爾なんぢの血ちより肉體にくたいを借かしし童貞女どうていぢよよ、我わが肉體にくたいの慾よくを全まつたく潔きよめて、我われに無む慾よくの途みちを示しめし給たまへ。

第六歌頌

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢは木きに擧あげられて、敵てきの悉ことごとくの驕おごりを墜おとし、陷おちいりし者ものを救すくひ給たまへり、爾なんぢの大おほいなる仁じん慈じに因よりてなり。

主宰しゆさい言ことばよ、義ぎ人じん等らの靈たましひは昔むかし爾なんぢが靈たましひを付わたすを感覺かんかくせし時とき、古こ世せいよりの桎梏かせを釋とかれたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは堅かたき金剛石こんがうせきの如ごとく、恒忍ごうにんなる靈たましひを以もつて悉ことごとくの烈はげしき苦くるしみを忍しのび、自みづから謙へりくだりて敵てきを倒たふし給たまへり。

致命者讚詞 主しゆの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らはハリストスの苦く難なんに效ならふ者ものと爲なりて、凡およその苦くるしみを忍しのび給たまへり、故ゆゑに天てん上じやうの華麗くわれいを獲えたり。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ、獨ひとり至いたりて奇異きいなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの產さんは奇き妙めうにして、大おほいなる奇き跡せきを行おこなひて、聖者せいしやの中うちに讚榮さんえいせらる。

又 イルモス同上

獨ひとり潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、願ねがはくは失望しつばうの深處ふかみは我われを囓かまず、罪つみの淚なみだは我われを掩おほはずして、我われ爾なんぢの祈き禱たうに因よりて救すくはれん。

至し淨じやうなる者ものよ、律法りつぱふの燈臺とうだいは爾なんぢ萬有ばんいうを照てらしし光ひかりを生うみたる者ものを預よ象しやうせり。故ゆゑに爾なんぢに呼よぶ、昧くらまされし我われを照てらし給たまへ。

至し善ぜんなる恩主おんしゆ及および造成主ざうせいしゆを生うみし至し淨じやうにして善ぜんを愛あいする女宰ぢよさいよ、我わが惡あくに耽ふけりたる靈たましひを善ぜんならしめ給たまへ。

爾なんぢは救すくひの緣由ゆゑんたる生命いのちを施ほどこす主しゆ、實じつに永遠えいゑんの救きう贖しよくを爾なんぢを生しやう神女しんぢよと傳つたふる我われ等らに賜たまふ者ものを生うみ給たまへり。

第七歌頌

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

不死ふしの王わうよ、不ふ法はふなる會くわいは棘いばらの冠かんむりを以もつて爾なんぢ、迷まよひの棘いばらを根ねより斷たち給たまふ主しゆに冠かうむらせたり。神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

言ことばよ、爾なんぢは性せいに於おいて苦くるしみに與あづからざる者ものにして、我われに不ふ朽きうの衣ころもを衣きせん爲ために、甘あまんじて裸ら體たいと爲なり、唾つばきせらるることと、十じふ字架じかと、苦くるしみとを忍しのび給たまへり。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは萬有ばんいうを司つかさどる主しゆの苦くるしみに效ならふ者ものと爲なりて、實じつに動うごきなき國くにの子こ及および嗣よつぎと爲なり給たまへり。

致命者讚詞 爾なんぢ等らは木きの上うへに手てを伸のべし者ものを萬有ばんいうの王わう及および主宰しゆさいと尊たふとみて、生命いのちなき木像もくざうを尊敬そんけいせざりき。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの產さんは奇き妙めうなり、蓋けだし爾なんぢは神かみ、木きに緣よりて迷まよひの焰ほのほを滅けして、世せ界かいを照てらしし主しゆを生うみ給たまへり。

又 イルモス同上

讚さん美びたる至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、我われ爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし爾なんぢは至いたりて讚さん美びたる神かみを種たねなく生うみ給たまへり。彼かれは、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものを神成しんせいし給たまふ。

生命いのちを生うみし神かみの聘女よめよ、我わが諸慾しよよくを殺ころして、我われ臥ふす者ものを無む感覺かんかくの柩ひつぎより起おこし給たまへ、我わが愛あいを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの禱いのりを眷かへりみて、信しんを以もつて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものを禍わざはひより脫のがれしめ、憂うれひより救すくひ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは無む量りやうの能力ちからある主しゆ、我われ等らの不ふ能のうを任になひし者ものを生うみ給たまへり。彼かれに痛いたく弱よわりたる吾わが靈たましひを醫いやさんことを祈いのり給たまへ。

第八歌頌

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりに在ありて爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆの前まへに全ぜん世せ界かいの詠隊えいたいと爲なりて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

至し上じやうの神かみよ、爾なんぢは十じふ字架じかに擧あげられたり、生命いのちの甘味あまみよ、爾なんぢは膽いを飮のませられたり、爾なんぢは戈ほこにて刺さされて、樂園らくゑんに於おいてアダムを斃たふしし蛇へびを刺さし殺ころし給たまへり。

救世主きうせいしゆ言ことばよ、爾なんぢは甘あまんじて縛しばられて、我われを罪つみの縲絏なはめより解とき、反はん離り者しや敵てきを永遠えいゑんの縲絏なはめにて縛しばり給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢの苦くるしみを世世よよに讚榮さんえいす。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは無む形けいの光ひかりに與あづかる者ものと現あらはれ、第だい二にの光ひかりと爲なりて、暗昧くらやみの迷まよひを拂はらひ、衆しゆう信者しんじやの心こゝろを神聖しんせいに照てらし給たまふ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは自じ主しゆなる上うへのイエルサリムの子こと爲なり、冢ちよう子しの敎けう會くわいの中うちに輝かゞやきて、世世よよにハリストスを崇あがめ讚ほむ。

生神女讚詞 女宰ぢよさい少女せうぢよよ、爾なんぢは十じふ字架じかの側かたはらに立たち、爾なんぢが生うみたるハリストスの釘ていせられしを見みて呼よべり、無む原げんなる父ちゝの子こ及および言ことば、無む原げんの主しゆよ、我われを子こなき者ものと爲なす毋なかれ。

又 イルモス同上

至し善ぜんにして神かみを見みる童貞女どうていぢよよ、我われに善ぜんを行おこなひて神かみを仰あふぎ見みるを得えしめ給たまへ、我わが呼よばん爲ためなり、主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

光ひかりの門もんたる童貞女どうていぢよよ、我わが爲ために痛つう悔くわいの光くわう明めいなる門もんを啓ひらき、凡およその義ぎの直なほき途みちを示しめして、神かみの旨むねを行おこなふに導みちびき給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは聖せいなる言ことば、信者しんじやを聖せいにする者ものを言いひ難がたく生うみ給たまへり。至し聖せいなる者ものよ、彼かれに今いま我わが卑微ひびなる靈たましひ、惡あくに汚けがされたる者ものを聖せいにせんことを祈いのり給たまへ。

聖せいなる女宰ぢよさいよ、光ひかりの源みなもと及および不死ふしの泉いづみたる萬有ばんいうの主しゆは爾なんぢより出いでたり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、潔いさぎよき者ものよ、我わが惡あくの流ながれを爾なんぢの祈き禱たうの雨あめにて涸からし給たまへ。

次に生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、及び躬拜。

第九歌頌

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル、神かみ及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは羔こひつじとして木きに擧あげられて、無む形けいの狼おほかみの顋あぎを壞やぶり、其その口くちより爾なんぢの靈れい智ちなる羊ひつじを奪うばひて、父ちゝに攜たづさへ給たまへり。

仁じん慈じなるハリストスよ、爾なんぢは諸しよ王わうの王わうとして、棘いばらの冠かんむりを冠かうむらせられて、凶きよう惡者あくしやの國くにを滅ほろぼし、迷まよひの棘いばらを根ねより絕たち給たまへり。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいす。

致命者讚詞 勝かたれぬ致ち命者めいしや、衆しゆう信者しんじやを照てらす者もの、敬虔けいけんの動うごきなき柱はしら、讚榮さんえいせらるべき者ものよ、爾なんぢ等らの敵てきに對たいして堅けん固ごに立たつ所ところの德とくは日ひの如ごとく輝かゞやきて、敵てきの悉ことごとくの暗昧くらやみを散さんじたり。

致命者讚詞 救世主きうせいしゆの至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは神かみの集あつめし隊たい、天てんの軍ぐん、選えらばれたる會くわいにして、神聖しんせいなる恩おん寵ちようを以もつて凶きよう惡者あくしやの城しろを悉ことごとく破やぶり給たまへり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは地ち上じやうに敬虔けいけんと眞まことの智ち識しきとを植うゑて、園そのに生しやうじたる詛のろひを絕たやす園丁ゑんていを生うみ給たまへり。我われ等ら彼かれを崇あがめて、爾なんぢ童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

又 イルモス同上

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは動うごきなき基もとゐたる救世主きうせいしゆ、神聖しんせいなる命めいを以もつて地ちを水みづの上うへに基もとづけし者ものを生うみ給たまへり。彼かれに敬虔けいけんにして爾なんぢを讚さん美びする我われ等らを堅かためんことを祈いのり給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われに謙遜けんそんを以もつて神かみの戒いましめの途みちを迷まよひなく行ゆかしめ、我われより惡あく鬼きの誘惑いざなひと諸慾しよよくの攻擊こうげきとを遠とほざけて、我われに平穩へいをんを與あたへ給たまへ。

敵てきは我わが怠惰おこたりの坐睡ゐねむりに己おのれを委ゆだぬるを見みて、攻せめ來きたりて、逸樂いつらくの眠ねむりを以もつて我われを奪うばはんと謀はかる。潔いさぎよき母はゝ童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの眠ねむらざる祈き禱たうを以もつて親みづから我われを護まもり給たまへ。

我われは自みづから定罪ていざいせし者ものの如ごとく、我わが罪つみの多おほきと審判しんぱんせられんとする畏おそるべき審判しんぱんとを思おもふ。祈いのる、審判者しんぱんしや神かみを生うみし生しやう神女しんぢよよ、其時そのとき我われを定罪ていざいせられざる者ものとして護まもり給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。小聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第五調。

ハリストスよ、爾なんぢの十じふ字架じかの木きの樹たてられしのみにして、偶像ぐうざうの迷まよひは遠とほざかり、恩おん寵ちようは華はなさけり。已すでに定罪ていざいの苦くるしみは息やみて、救すくひの勝しよう利りは我われ等らに顯あらはれたり。蓋けだし十じふ字架じかは我われ等らの爲ために美譽ほまれなり、十じふ字架じかは我われ等らの爲ために堅固かためなり、十じふ字架じかは我われ等らの爲ために歡喜よろこびなり。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

ハリストスよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために羊ひつじの如ごとく祭まつりに牽ひかれ、エムマヌイルよ、爾なんぢは無垢むくなる羔こひつじの如ごとく自じ由いうの屠殺ほふりに牽ひかれて、罪犯者ざいはんしやと偕ともに算かぞへられたり。異い邦はうの諸しよ族ぞくよ、來きたりて歌か頌しようして、十じふ字架じかに懸かけられし終をはりなき生命いのちに伏拜ふくはいせん。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

聖せいなる致ち命者めいしやは地ち上じやうに戰たゝかひて、嚴寒げんかんを忍しのび、火ひに付わたされ、水みづに投とうぜられたり。是これ彼かれ等らの聲こゑなり、我われ等らは火ひと水みづとの中うちに入いり、而しかうして爾なんぢ我われ等らを引ひき出いだして自じ由いうを賜たまへりと。ハリストス神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 童貞女どうていぢよ母はゝ、至し福ふくなる少女せうぢよは昔むかし羔こひつじたる其その子こが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、泣なきて呼よべり、鳴呼あゝ吾わが子こよ、爾なんぢは性せいの不死ふしなる神かみにして如何いかんぞ死しする。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ。聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、其他、幷に發放詞。

横線 - 『八調経』第五調

 水曜日の聖体礼儀に

水曜日の眞福詞、第五調。

ハリストスよ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを神かみなりと信しんじ、誠まことの心こゝろより爾なんぢを承うけ認みとめて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

ハリストスよ、爾なんぢは脅わきを刺さされて赦罪しやざいの流ながれを注そゝぎ、十じふ字架じかに己おのれの手てを釘ていせられて人人ひとびとの慾よくの思おもひを悉ことごとく除のぞき給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに上のぼりて、惡あく鬼きの大數たいすうを悉ことごとく慄をのゝかせ、殘ざん虐ぎやく者しやの滅亾ほろびを爲なす權けん威ゐを倒たふして、人類じんるゐを救すくひ給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

主しゆの福ふくたる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らはハリストスの苦く難なんに效ならふ者ものと爲なりて、凡およその苦くるしみを忍しのび給たまへり、故ゆゑに天てん上じやうの華麗くわれいを獲えたり。

光榮 父ちゝと聖神せいしんとに離はなれざるハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに自じ由いうなる苦くるしみを忍しのびて、我われ等らの朽きう壞くわいを爲なす諸慾しよよくを悉ことごとく除のぞき給たまへり。

今も 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、爾なんぢは十じふ字架じかの側かたはらに立たち、爾なんぢの子この傷きずつけられしを見みて、靈たましひに傷きずつけられて、彼かれの實じつに大おほいなる定制ていせいを歌か頌しようし給たまへり。

横線 - 『八調経』第五調

 水曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に聖使徒の讚頌スティヒラ、第五調。
句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

主しゆの門もん徒と等らよ、爾なんぢ等らは全ぜん地ちを經へて、神かみの敎をしへを植うゑ給たまへり。爾なんぢ等らは燈ともしび及および富とみとして、唯たゞ言ことばのみを有たもち、之これを用もつて諸しよ王わうと殘虐者くるしめびととを辱はづかしめ、哲學者てつがくしやと辯論者べんろんしやとの智ち識しきを蜘蛛くもの網あみの如ごとく裂さき、衆しゆうを造物主ざうぶつしゆを知しる知ち識しきに召めして、惡あく鬼きの空むなしき奉ほう事じを斷たち給たまへり。故ゆゑに祈いのる、爾なんぢ等らの祈き禱たうを以もつて我われを無知むちなる諸慾しよよくより脫のがれしめ給たまへ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

至し福ふくなる使徒等しとらよ、神かみに奉たてまつる爾なんぢ等らの祈き禱たうを以もつて我われ等ら衆しゆうを誘惑いうわくの紛擾みだれ、諸しよ異い端たんの僞ぎ敎けう、惡あく鬼きの謀はかりごと、人人ひとびとの惡あしき會くわい合がふと不ふ和わ、滅きえざる火ひ、死しせざる蟲むし、切齒はがみ、其その他たの種種しゆじゆの苦くるしみより脫のがれしめ、節制せつせいと勤勞きんらうと德行とくかうとを修をさむるを助たすけて、主しゆの大おほいなる憐あはれみと天國てんこくの嗣し業げふとを得えしめ給たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

至いたりて讚さん美びたる十じふ二に使徒しと、及および彼かれ等らと同おなじく熱心ねつしんなる七しち十じふ二にの會くわいは、人ひとの性せいの能よくする所ところに循したがひて、一體いつたいにして三さん位ゐなる神かみの光ひかりに照てらされ、其その煇煌かゞやきを受うけて、第だい二にの光ひかりと爲なりて、ハリストスの福音ふくいんを以もつて世せ界かいの四し極きよくを照てらし、諸しよ異い端たんの暗昧くらやみを斥しりぞけ、常つねに世せ界かいに平安へいあん及および大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことをハリストスに祈いのり給たまふ。

又聖大奇跡者ニコライの讚頌スティヒラ、第五調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

慶よろこべよ、聖せいにせられし首しゆ長ちやう、諸德しよとくの淸きよき居處すまひ、神品しんぴん職しよくの神聖しんせいなる規範のり、祈いのる者ものの慈じ憐れんなる扶ふ助者じよしや、劣れつ弱じやくの者ものの祈き禱たうに耳みゝを傾かたぶくる者もの、備そなへられたる保護ほご者しや、衆しゆう人じんの救すくひを爲なす避所かくれが、大おほいなる牧ぼく師し、勝しよう利りの名なを有たもてる者ものや。我われ等ら信しんを以もつて常つねに爾なんぢの光くわう榮えいなる記き憶おくを尊たふとむ者ものに大おほいなる憐あはれみを降くださんことをハリストスに祈いのり給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

慶よろこべよ、聖せいにせられし睿えい智ち者しや、聖三者せいさんしやの淸きよき居處すまひ、敎けう會くわいの柱はしら、信者しんじやの固かため、患くわん難なんに遇あふ者ものの扶ふ助者じよしや、光ひかれる星ほし、其その神かみに悅よろこばるる祈き禱たうの煇煌かゞやきにて常つねに災禍わざはひと憂愁うれひとの暗昧くらやみを散さんずる者もの、穩おだやかなる港みなと、度ど生せいの激浪あらなみに打うたるる人人ひとびとの到いたりて救すくひを得える者もの、成聖者せいせいしやニコライや。我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを降くださんことをハリストスに祈いのり給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

慶よろこべよ、成聖者せいせいしやの美譽ほまれ、神聖しんせいなる奇き跡せきの盡つきざる淵ふち、敎けう會くわいの華くわ美び、光ひかれる星ほし、其その煇煌かゞやきにて我われ等ら各人かくじんを照てらす者もの、動うごかされぬ柱はしら、信しんの範のりたる成聖者せいせいしやニコライや。愛あいを以もつて爾なんぢの尊たふとき記き憶おくを行おこなふ我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことをハリストスに祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 慶よろこべよ、諸しよ預よ言者げんしやの封印ふういん、及および神かみの聲こゑなる使徒等しとらの宣傳せんでんたる潔いさぎよき者ものや。爾なんぢは眞まことに實在じつざいなる神かみ、身みを取とりし者ものを智慧ちゑと言ことばとに超こえて生うみ給たまへり。我われ等ら彼かれに由よりて當初はじめの良りやう產さんを受うけ、樂園らくゑんの糧かてを樂たのしみて、爾なんぢ是かくの如ごとき喜悅よろこびの所以ゆゑんと爲なりし者もの、及および我われ等らの祈き禱者たうしやを歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。至し淨じやうなる者ものよ、我われ等らは爾なんぢの恩惠めぐみに富とまされて、爾なんぢの子こより永遠えいゑんの生命いのちを得えて、豐ゆたかに其その大おほいなる憐あはれみを蒙かうむる。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。其他。

挿句くづけに使徒の讚頌スティヒラ、第五調。

救世主きうせいしゆの門もん徒とよ、爾なんぢ等らは奧密あうみつの實見者じつけんしやと爲なりて、見みえざる始はじめなき者ものを傳つたへて云いへり、太初はじめに言ことば有ありと。爾なんぢ等らは諸天しよてん使しより先さきに造つくられしに非あらず、人人ひとびとより學まなびしに非あらず、乃すなはち上うへなる睿えい智ちより之これを學まなべり。故ゆゑに勇敢いさみを有たもちて、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

我われ等ら同心どうしんに歌うたを以もつて主しゆの諸しよ使徒しとを讚ほめ揚あげん、蓋けだし彼かれ等らは十じふ字架じかの武器ぶきを佩おびて、偶像ぐうざうの迷まよひを空むなしくし、榮えい冠くわんを冠かうむれる勝しよう利り者しやと現あらはれたり。彼かれ等ら及および衆しゆう聖人せいじんの祈き禱たうに因よりて、神かみよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは靈たましひの愛あいを傾かたぶけてハリストスを愛あいし、彼かれを諱いまずして、種種しゆじゆの苦くるしみを忍しのび、殘ざん虐ぎやく者しやの强きやう暴ばうを倒たふし、屈くつせず撓たわまざる信しんを守まもりて、天てんに移うつり給たまへり。故ゆゑに主しゆの前まへに勇敢いさみを有たもちて、我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ等ら信者しんじやは職しよくとして爾なんぢを讚さん美びし、爾なんぢを動うごかされぬ城しろ、壞やぶられぬ墻かき、堅けん固ごなる轉達者てんたつしや、及および我わが靈たましひの避所かくれがとして讚榮さんえいす。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。聖三祝文。「天に在す」の後に司祭、「蓋國と權能と」。次に讚詞、聯禱、及び發放詞。

横線 - 『八調経』第五調

 水曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第五調。

第一歌頌

イルモス 我われ等らは、民たみに足あしを濡ぬらさずして海うみを渡わたらしめ、ファラオンを其その全軍ぜんぐんと偕ともに溺おぼれしめし救世主きうせいしゆ神かみ、獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

附唱 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

ハリストス王わうの光ひかれる幕まくよ、敵てきの誘惑いざなひに因よりて昧くらまされ、諸罪しよざいの暗やみに由よりて瞽めしひと爲なりし我わが思念おもひを照てらし給たまへ。

神かみの母はゝよ、我わが卑微ひびなる靈たましひを惡あしき思念おもひより解ときて、之これを神かみの居處すまひと爲なし給たまへ、我わが職しよくとして常つねに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、我わが神かみの命めいに由よりて暫ざん時じの生命いのちより離はなれん時とき、我われを惡あく鬼きの手ての達たつせざる者ものと爲なして、我われに嚮導者けうだうしやとして天てん使しを與あたへ給たまへ。

今も 鳴呼あゝ靈たましひよ、何なんぞ甚はなはだしき煩悶もだえの中うちに生いのちを費つひやしたる、此これより勵はげみて主しゆの母はゝに呼よべ、神かみの母はゝよ、我われを潔きよめて救すくひ給たまへ。

第三歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢの十じふ字架じかの力ちからにて我わが思慮おもひを堅かため給たまへ、我わが爾なんぢの救すくひを施ほどこす升しよう天てんを歌うたひ讚ほめん爲ためなり。

至し福ふくなる生しやう神女しんぢよよ、熱切ねつせつに爾なんぢを歌うたふ我われを諸慾しよよくと苦く難なんとの穽おとしあなより引ひき上あげ給たまへ。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我わが無む量りやうの罪惡ざいあくの哀かなしみの衣ころもを解ときて、諸德しよとくの樂たのしみを佩おばしめ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、我われに淚なみだの滴したゝりを與あたへ給たまへ、我わが心こゝろより憂悶もだえを遠とほざけて、熱心ねつしんに爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

今も 無む玷てんなる者ものよ、無む形けいの敵てきの驕おごりを倒たふして、速すみやかに我われを彼かれ等らの苛虐くるしめより解とき給たまへ。

第四歌頌

イルモス 我われ十じふ字架じかの力ちからの風聲おとづれ、樂園らくゑんが是これにて啓ひらかれしを聞ききて籲よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

靈たましひよ、何なんぞ結果けつくわなき無花果いちじくに似にたる者ものと爲なりて、聊いさゝかも斫きることと永遠えいゑんの焰ほのほとを畏おそれざる、急いそぎて終をはりの至いたらざる前さきに起おきよ。

何いづれの舌したか能よく我わが行おこなひし惡あくの無む量りやうの海うみと諸罪しよざいの深處ふかみとを述のべん。至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、我われ望のぞみを失うしなひし者ものを救すくひ給たまへ。

光榮 我われは吾わが多おほくの罪つみと滅きえざる火ひとを思おもふ時とき、己おのれの爲ために哭なく。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢに祈いのる、我われに痛つう悔くわいの時ときを與あたへ給たまへ。

今も 願ねがはくは吼ほゆる獅子ししの如ごとき敵てきは我わが不ふ當たうの靈たましひを奪うばはざらん、慈じ憐れんなる者ものよ、爾なんぢの力ちからを以もつて靈たましひを害がいする其その齒はを折くじき給たまへ。

第五歌頌

イルモス 主しゆよ、我われ等ら夙つとに興おきて爾なんぢに籲よぶ、我われ等らを救すくひ給たまへ、爾なんぢは我われ等らの神かみなればなり、爾なんぢの外ほか他たの神かみを知しらず。

女宰ぢよさいよ、祈いのる、顧かへりみて我わが聲こゑを聞ききて、我われを永遠えいゑんの定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ。

我われ罪つみの矢やに傷きずつけられて爾なんぢに呼よぶ、至し淨じやうなる者ものよ、我わが心こゝろの傷きずを醫いやし給たまへ。

光榮 獨ひとり人ひとを愛あいする宏くわう恩おんなる主しゆよ、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて我われを憐あはれみ給たまへ、爾なんぢは我われの神かみ及および主しゆなればなり。

今も 獨ひとり讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢの仁じん慈じに祈いのる、我われを憐あはれみて、慈じ憐れんを得えしめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 主しゆよ、淵ふちは我われを圍かこみ、鯨くぢらは我われの爲ために柩ひつぎとなれり、惟たゞ我われ爾なんぢ人ひとを愛あいする者ものに籲よびしに、爾なんぢの右みぎの手ては我われを拯すくひ給たまへり。

詭き譎けつの者ものは吼ほゆる獅しゝの如ごとく我われを裂さきて、其その凶きよう惡あくの糧かてと爲なさんと欲ほつす。潔いさぎよき者ものよ、彼かれの害がいより我われを脫のがれしめ給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆよ、潔いさぎよく爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢの世せ界かいを潔きよめ、凡およその憂患うれひより脫のがれしめて、永遠えいゑんの光くわう榮えいを獲えしめ給たまへ。

光榮 諸罪しよざいの淵ふちは我われを圍かこみて、失望しつばうの深處ふかみに下くだせり。潔いさぎよき者ものよ、祈いのる、爾なんぢを讚榮さんえいする我われを最いと下しもなる地ぢ獄ごくより引ひき上あげ給たまへ。

今も 我わが生いのちは怠惰おこたりと諸罪しよざいとに滿みちたり、故ゆゑに讚さん美びたる潔いさぎよき者ものよ、我わが終をはりの至いたらざる前さきに我われを痛つう悔くわいに轉てんぜしめて救すくひ給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第五調。

堅けん固ごにして壞やぶられぬ垣墻かきよ、慶よろこべ、諸敵しよてきを仆たふす者ものよ、慶よろこべ、正敎せいけうの信者しんじやを興おこす者ものよ、慶よろこべ。生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは實じつに爾なんぢを恃たのむ我われ等らを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて凡およその患くわん難なんと神かみに戾もとる諸敵しよてきより救すくひ給たまふ。

第七歌頌

イルモス 火ひの爐ゐろりの中うちに歌うたへる少者せうしやを救すくひ給たまひし我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われに自じ由いうと不ふ自じ由いうとの惡あくの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

我わが心こゝろは不ふ虔けんなる惡念あくねんの攻擊こうげきに由よりて弱よわる。仁じん慈じなる者ものよ、我われを援たすけ給たまへ。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、我わが靈たましひの諸慾しよよくの傷きずを今いま爾なんぢの祈き禱たうの良りやう藥やくを以もつて醫いやし給たまへ。

今も 仁じん慈じなる者ものよ、我われに痛つう悔くわいの靈たましひと謙遜けんそんの思念おもひとを與あたへ給たまへ、我わが爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

第八歌頌

イルモス 世世よよの前さきに父ちゝより生うまれし子こ及および神かみ、末すゑの時ときに童貞女どうていぢよより身みを取とりし者ものを、司し祭さい等らは歌うたへ、人人ひとびとは萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

生しやう神女しんぢよよ、我われ不ふ當たうの者ものは怠惰おこたりの中うちに生命いのちを費つひやし、我わが度ど生せいの終をはりに近ちかづきて爾なんぢに呼よぶ、諸敵しよてきの網あみより我わが卑微ひびなる靈たましひを救すくひ給たまへ。

肉體にくたいの諸しよ病びやうと、靈たましひの甚はなはだしき傷きずと、諸慾しよよくの攻擊こうげきとに苦くるしめらるる我われに爾なんぢの權柄けんぺいの力ちからを與あたへ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり慈じ憐れんなればなり。

光榮 潔いさぎよき少女せうぢよよ、我われ生命いのちの海うみに荒あらされ、惡あく鬼きの浪なみに打うたるる者ものを救すくひて、神かみに向むかはしめて、彼かれの悅よろこびを爲なす度ど生せいに入いれ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、遣つかはされたるガウリイルは婚筵こんえんの宮みやに於おけるが如ごとく入いりて呼よべり、慶よろこべよ、萬有ばんいうの王わうハリストスは爾なんぢを至し榮えいなる宮みやとして、爾なんぢの爲ために入いりて、地ちの者ものを神成しんせいし給たまへり。

第九歌頌

イルモス 爾なんぢ悟さとり難がたく解とき難がたく神かみの母はゝと爲なり、時ときの中うちに於おいて時ときに緣よらざる主しゆを言いひ難がたく生うみし者ものを、我われ等ら信者しんじやは心こゝろを一いつにして崇あがめ讚ほむ。

我われ等らは爾なんぢ言いひ難がたく神かみを生うみし者ものを、轉達者てんたつしやと動うごかされぬ垣墻かき、靈たましひの救すくひ及および奇き跡せきの泉いづみとして獲えたり。

眞まことの神かみの言ことばよ、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて、審判しんぱんの日ひに於おいて我われに慈じ憐れんを垂たれて、爾なんぢの右みぎに立たつ者ものに加くはへ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、我われ倚賴たのみを爾なんぢに負おはせし者ものを永遠えいゑんの火ひ、眠ねむらざる蟲むし、及および凡およその苦くるしみより救すくひ給たまへ。

今も 神かみの聘女よめよ、我わが靈たましひが我わが不ふ當たうなる體からだより離はなれん時とき、我われを見みえざる敵てきの苛虐くるしめより脫のがれしめ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、幷に發放詞。

gold and luxury under line png e1791509531294 - 『八調経』第五調

木曜日

 木曜日の早課

第一の誦文の後に使徒の坐誦讚詞セダレン、第五調。

我われ等ら衆しゆう地ち上じやうの者ものは睿えい智ちなる諸しよ使徒しとを、言ことばの實見者じつけんしや及および役者えきしやとして、屬神ぞくしんの詩賦しふと歌か頌しようとを以もつて讚ほめ揚あげん。蓋けだし彼かれ等らは熱切ねつせつに、我われ等ら其その聖せいにせられし記き憶おくを歌うたひて、其その不ふ朽體きうたいに伏拜ふくはいする者ものの爲ためにハリストスに祈いのる。

句 其聲そのこゑは全ぜん地ちに傳つたはり、其その言ことばは地ちの極はてに至いたる。

我われ等らは同心どうしんに諸しよ使徒しとを、言ことばの實見者じつけんしや、神聖しんせいなる傳道でんだう師し、異い邦民はうみんを獲えたる屬神ぞくしんの漁者ぎよしやとして讚ほめ揚あげん。蓋けだし彼かれ等らは我われ等らをハリストスを知しる知ち識しきに導みちびきて、人類じんるゐを迷まよひより脫のがれしめて、天國てんこくを獲えしめたり。

光榮、今も、生神女讚詞 我われ不ふ當たうの者ものは良りやう心しんの議ぎ判はんに定罪ていざいせられて、審判しんぱんの先さきに我わが多おほくの惡あくを思おもひて、審判しんぱんに戰をのゝく。故ゆゑに傷しやう感かんの情じやうを抱いだきて、爾なんぢ勝かたれぬ轉達者てんたつしや及および帲幪おほひに呼よぶ、彼かの辱はづかしめより我われを脫のがれしめて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて救すくひ給たまへ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第五調。

我われ等ら同心どうしんに諸しよ使徒しとを崇あがめ讚ほめん。蓋けだし彼かれ等らは衆しゆう人じんに主しゆの醇じゆん正せいの敎をしへを傳つたへて、僞ぎ敎けうの暗昧くらやみを拂はらひ、恩おん寵ちようの敎をしへを以もつて屬神ぞくしんの文明ぶんめいを世せ界かいに輝かゞやかせり、且かつ我われ等らの救すくはれんことを祈いのり給たまふ。

句 諸天しよてんは神かみの光くわう榮えいを傳つたへ、穹蒼おほぞらは其その手ての作爲しわざを誥つぐ。

復上の坐誦讚詞セダレンを誦す。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 聖せい致ち命者めいしやの行おこなひを見みて天軍てんぐんは大おほいに驚おどろけり、如何いかにして死しに屬ぞくする肉體にくたいに在ありて、善よく戰たゝかひて、十じふ字架じかの力ちからを以もつて見みえずして無む形けいの敵てきに勝かちたる。今いま彼かれ等らは我われ等らの靈たましひの憐あはれみを蒙かうむらんことを主しゆに祈いのり給たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞 我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを港みなとと垣墻かき、避所かくれがと倚賴たのみ、帲幪おほひと熱切ねつせつなる保護ほごとして獲えて、爾なんぢに趨はしり附つきて、信しんを以もつて熱心ねつしんに呼よぶ、生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢを恃たのむ者ものを憐あはれみて、諸罪しよざいより脫のがれしめ給たまへり。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第五調。

救世主きうせいしゆの門もん徒と、神聖しんせいなる使徒しと、救すくひの言ことばを地ちの四し極きよくに播まきて、幽暗くらやみと蔭かげとに坐ざする人人ひとびとを照てらしし讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢ等らの祈き禱たうを以もつて諸慾しよよくの暗やみに昧くらまされし吾わが靈たましひを照てらし給たまへ。

主しゆよ、不ふ智ちなる漁者ぎよしやは爾なんぢが身みを取とりし言いひ難がたき奧密あうみつを傳つたへて、哲學者てつがくしやを辱はづかしめ、辯論者べんろんしやの口くちを塞ふさぎ、諸民しよみんの睿えい智ちなる敎けう師しと爲なりて、地ちの四し極きよくを神聖しんせいなる智ち識しきの光ひかりにて照てらせり。彼かれ等らに由よりて我われ等らに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ、堅かたき恃賴たのみを爾なんぢに負おはしむる人人ひとびとを種種しゆじゆの災禍わざはひ及および誘惑いざなひより庇おほふ者ものよ、使徒等しとらと偕ともに爾なんぢの子こに祈いのりて、我われ等ら衆しゆう爾なんぢを歌か頌しようする者ものを劇はげしき苦く難なんより脫のがれしめて、救すくひ給たまへ。

聖使徒の規程カノン。ニキヤの「エピスコプ」フェオファンの作。第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱歌かちうたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

神聖しんせいなる諸しよ使徒しと、身みに在ありて人人ひとびとと對たい話わせし光ひかりの原因げんいんなる主しゆの煇煌かゞやきに富とまされたる光くわう榮えいなる者ものよ、吾わが靈たましひの悉ことごとくの暗昧くらやみを散さんじ給たまへ。二次。

使徒等しとらよ、神聖しんせいなる弓ゆみは爾なんぢ等らを矢やとして射いて、全ぜん世せ界かいに遣つかはして、惡謀者あくぼうしやの矢やを折をり、信者しんじやの傷きずを醫いやせり。

使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは實在じつざいの睿えい智ちを敎けう師しと有たもちて、睿えい智ちを以もつて地ちの四し極きよくを照てらせり。祈いのる、我われに敵てきの凡およその惡謀あくぼうを防ふせがん爲ために智慧ちゑを與あたへ給たまへ。

生神女讚詞 獨ひとり祝しゆく福ふくらせれて神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよ、祝しゆく福ふくを以もつて人類じんるゐを悅よろこばしし至し淨じやうなる者ものよ、神聖しんせいなる使徒等しとらと偕ともに我われ等らが憐あはれみを蒙かうむらんことをハリストスに祈いのり給たまへ。

又我等の聖神父奇跡者ニコライの規程カノン、其冠詞は、ニコライよ、第五の歌頌を爾に捧ぐ。イオシフの作。第五調。

第一歌頌

イルモス同上

成聖者せいせいしやニコライ、睿えい智ちなる神しん父ぷよ、爾なんぢは信しんと愛あいとを以もつて神かみに屬ぞくする者ものと爲なりて、其その至し聖せいなる望のぞみを行おこなひて、萬ばん事じに於おいて聖せいなる者ものと爲なれり。

我われ等ら誘惑いざなひと憂患うれひとに圍かこまるる者ものは爾なんぢを宏くわう恩おんなる主しゆの前まへに轉達者てんたつしやと有たもちて、爾なんぢに趨はしり附つく、凡およその苦く難なんより我われ等らを救すくふ手てを授さづけ給たまへ。

聖せいニコライよ、ハリストスは爾なんぢをミラ城じやうの信者しんじやの爲ために成聖者せいせいしやと立たてしに、爾なんぢは奇き跡せきの香氣かをりを以もつて人人ひとびとを薰かをらせたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、罪つみの惡臭あくしうより我われ等らを脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、昔むかし預よ言者げんしやの會くわいは爾なんぢを神聖しんせいなる山やま及および通とほられぬ門もんと稱となへたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、少女せうぢよよ、痛つう悔くわいの神聖しんせいなる門もんを我われ等らの爲ために啓ひらき給たまへ。

第三歌頌

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを固かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

光くわう榮えいなる使徒等しとらよ、仁じん慈じ至し大だいにして、身みにて貧まづしくなりし主しゆは、彼かれの爲ために貧まづしくなりたる爾なんぢ等らを種種しゆじゆの恩おん賜しに富とまして、爾なんぢ等らを以もつて地ちの四し極きよくを神聖しんせい尊そん貴きなる智ち識しきに富とまし給たまへり。二次。

ハリストスよ、我われ毒どく惡あくなる蛇へびに囓かまれて、傷きずつきたる心こゝろを獲えたり。故ゆゑに爾なんぢ我わが爲ために傷きずつけられし主しゆに呼よびて祈いのる、爾なんぢの使徒しとの祈き禱たうに因よりて我われを醫いやして救すくひ給たまへ。

至し福ふくなる者ものよ、爾なんぢ等らの祈き禱たうの網あみを以もつて我われを惡あくの深處ふかみ、思し念ねんの激浪あらなみ、及および死しを致いたす諸慾しよよくより引ひき出いだして、救すくはるる者ものとして萬有ばんいうの神かみに攜たづさへ給たまへ。

生神女讚詞 天てんの雨あめを受うけし童貞女どうていぢよよ、諸しよ使徒しとと偕ともに彼かれに祈いのりて、我わが慾よくの流ながれを遏とゞめ、我わが罪つみの淵ふちを涸からして、熱切ねつせつに爾なんぢを讚榮さんえいする我われを救すくはんことを求もとめ給たまへ。

又 イルモス同上

克肖こくせうにして大おほいなるニコライよ、爾なんぢは凶きよう惡者あくしやに敵てきして、神聖しんせいなる勤勞きんらうを以もつて其その矢やを鈍にぶくせり。睿えい智ち者しやよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて爾なんぢを歌か頌しようする者ものを其その惡謀あくぼうと攻擊こうげきとに惱なやまされぬ者ものとして護まもり給たまへ。

司し祭首さいしゆ長ちやうニコライ、聖せいにせられし神しん父ぷよ、爾なんぢは地ち上じやうに天てん使しの度ど生せいを爲なして、今いま諸天しよてん使しと偕ともに常つねに聖三者せいさんしやの寶はう座ざの前まへに立たちて、我われ等らの諸罪しよざいと諸難しよなんとの釋とかるるを求もとめ給たまふ。

神しん父ぷニコライよ、祈いのる、爾なんぢの光くわう明めいなる祈き禱たうを以もつて我わが智慧ちゑの昏昧くらみを斥しりぞけ、諸慾しよよくの暴風あらしを鎭しづめて、我われを無む慾よくの港みなとに向むかはしめ給たまへ、我わが讚歌ほめうたを以もつて爾なんぢを讚さん榮えいせん爲ためなり。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる純じゆん潔けつなる少女せうぢよよ、實じつに女王によわうの如ごとく金繍きんしうの衣ころもに妝よそほはれ、ハリストスの右みぎに立たちて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らの爲ために天國てんこくを求もとめ得え給たまへ。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

門もんたるイイスス、我われ等らの神かみ及および主しゆは諸しよ使徒しとに其その智ち識しきを啓ひらきて、彼かれ等らの敎をしへを以もつて衆しゆう異い邦民はうみんの爲ために門もんを啓ひらき給たまへり。二次。

神かみの子こよ、爾なんぢは使徒等しとらを爾なんぢの天てんの父ちゝの義子ぎしと爲なせり、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等ら衆しゆうを光ひかりの子こと爲なし給たまへ。

至し榮えいにして審判者しんぱんしや及および王わうと偕ともに十じふ二にの寶はう座ざに坐ざせんとする使徒等しとらよ、我われに畏おそるべく慄をのゝくべき審判しんぱんを免まぬかれしめ給たまへ。

生神女讚詞 神かみの成聖せいせいの匱ひつよ、我わが靈たましひを聖せいにし、思おもひを照てらして、常つねに諸しよ使徒しとと偕ともにハリストスに我われを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

又 イルモス同上

聖せいニコライよ、爾なんぢは今世こんせいの暫ざん時じの事ことを以もつて來世らいせいの福樂ふくらくを得えたり。爾なんぢの聖せいなる祈き禱たうを以もつて我われ等らをも之これに與あづかる者ものと爲なして、今世こんせいの諸もろもろの誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ。

ミラ城じやうの民たみの首しゆ座ざと爲なりし聖せいニコライよ、香料かうれうを以もつて我わが心こゝろの感覺かんかくを薰かをらせて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて之これより惡臭あくしうの諸慾しよよくを退しりぞけ給たまへ。

ニコライよ、見みゆると見みえざるとの敵てきの惡謀あくぼうを破やぶりて、常つねに我われ等らと戰たゝかふ惡敵あくてきを終をはりなき滅兦ほろびに遣つかはし給たまへ。

生神女讚詞 聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ常つねに肉體にくたいの逸樂いつらくに溺おぼらされ、失望しつばうの牀とこに臥ふして歎なげく者ものを援たすけ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

屬神ぞくしんの辯論者べんろんしやたる尊たふとき使徒等しとらは、樓たかどのに在ありて、火ひの狀さまを以もつて彼かれ等らに臨のぞみし聖神せいしんを敬つゝしみて受うけたり。二次。

不ふ敬虔けいけんを破やぶりし使徒等しとらよ、諸罪しよざいに由よりて壞やぶれたる我わが心こゝろを恩おん寵ちようの露つゆを以もつて醫いやし給たまへ。

使徒等しとらよ、ハリストスは爾なんぢ等らを磨とがれたる箭やとして遣つかはして、凶きよう惡あくの箭やを折をり給たまへり、祈いのる、敵てきの箭やに傷きずつけられし我われを醫いやし給たまへ。

生神女讚詞 至し大だいなる仁じん慈じの主しゆよ、我われを定罪ていざいする毋なかれ、我われを爾なんぢの顏かんばせより退しりぞくる毋なかれ、潔いさぎよく爾なんぢを生うみし者もの及および使徒しとの會くわいは爾なんぢに祈いのる。

又 イルモス同上

聖せいニコライよ、爾なんぢは異い邦はうの偶像ぐうざうを壞やぶり、異い端者たんしやの謀はかりごとを無む效かうと爲なし、死しに曳ひかるる者ものを救すくひ給たまへり。

克肖者こくせうしやよ、爾なんぢは少わかき時ときより主しゆに役えき事じし、今いまは彼處かしこに在ある光ひかりに遍あまねく照てらされて盛さかんに耀かゞやく。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、吾わが靈たましひの雲くもを散さんじ給たまへ。

神しん父ぷニコライよ、爾なんぢに祈いのる、此この時とき我われ等ら衆しゆう爾なんぢを呼よぶ者ものの中うちに臨のぞみて、我わが救すくひの爲ためにする求もとめを應かなへ給たまへ。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、智慧ちゑにて悟さとられぬ主しゆは爾なんぢに受うけられて、身みを有たもつ者ものと爲なり、人人ひとびとを受うけて、彼かれ等らを圍かこめる災禍わざはひ及および憂愁うれひより脫のがれしめ給たまふ。

第六歌頌

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは聖せいにせられし爾なんぢの門もん徒との敎をしへの鹽しほを以もつて、人類じんるゐの中うちに廣ひろまりたる惡あくの敗はい壞くわいを止とゞめ給たまへり。二次。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは我わが惡あくの深處ふかみを知しる、人ひとを愛あいする主しゆよ、我われに手てを授さづけて、爾なんぢの聖せいにせられし使徒しとの祈き禱たうに由よりて我われを救すくひ給たまへ。

至いたりて義ぎなる審判者しんぱんしやよ、畏おそるべき審判しんぱんの日ひに於おいて、爾なんぢの光くわう榮えいなる使徒しとの祈き禱たうに由よりて、戰をのゝく我われを定罪ていざいより救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 主しゆよ、不ふ法はふの多おほきに因よりて失望しつばうせし我われに爾なんぢの母はゝ及および門もん徒との祈き禱たうに因よりて救すくひを得えしめ給たまへ。

又 イルモス同上

聖せいニコラィよ、主宰しゆさいに祈いのりて、我われ等ら爾なんぢを尊たふとむ衆しゆうに慈じ憐れんを垂たれて、我わが諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

ニコライよ、我われ等ら爾なんぢを主しゆの前まへに祈き禱者たうしやとして得えたる者ものを諸しよ病びやうと世せ俗ぞくの誘惑いざなひと、災禍わざはひ及および憂愁うれひより脫のがれしめ給たまへ。

ニコライよ、主宰しゆさいハリストスは爾なんぢを有能いうのうなる醫師いしと顯あらはせり。故ゆゑに敬虔けいけんを以もつて爾なんぢに趨はしり附つく者ものの諸しよ病びやうを醫いやし給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは夫をつとを識しらずして生うみて、神かみの母はゝと爲なれり。故ゆゑに我われ信しんを以もつて爾なんぢに祈いのる、吾わが靈たましひの煩悶もだえを散さんじ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

ハリストスの門もん徒と・見神者けんしんしやよ、尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは爾なんぢ等らを高たかくして、敵てきの悉ことごとくの力ちからを墜おとし給たまへり。

諸しよ使徒しとよ、爾なんぢ等らの祈き禱たうを以もつて傷しやう感かんの流ながれにて我わが心こゝろの汚けがれを滌あらひて、呼よばしめ給たまへ、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

神かみ言ことばの門もん徒と等らよ、爾なんぢ等らは聖神せいしんの火ひを以もつて凡およその虛誕きよたんの質しつを燒やけり。祈いのる、燒やく所ところの「ゲエンナ」より我われを脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 陷おちいりしアダムの改新あらためなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢ及および神聖しんせいなる使徒等しとらの祈き禱たうを以もつて我われ惡あくの淵ふちに陷おちいりし者ものを起おこし給たまへ。

又 イルモス同上

全まつたく己おのれを神かみに託たくせし神しん智ちなるニコライよ、常つねに不ふ當たうにして世せ俗ぞくの慾よくに陷おちいる我われを全まつたくして救すくひ給たまへ。

至いたりて光くわう明めいなる燈ともしびよ、常つねに諸慾しよよくの闇やみに昧くらまさるる我わが智慧ちゑを照てらして、我われに端たん正せいにして生いのちを度わたるを得えしめ給たまへ。

ニコライよ、凡およそ我われに對むかひて開ひらかるる凶きよう惡あくなる口くちを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて塞ふさぎて、我われを見みゆると見みえざるとの敵てきより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ、至いたりて光ひかれる雲くもよ、爾なんぢより我われ等らの爲ために暮くれざる日ひハリストス我わが神かみは輝かゞやき出いでて、無智むちの暗昧くらやみに在ある者ものを照てらし給たまへり。

第八歌頌

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりに在ありて爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆの前まへに全ぜん世せ界かいの詠隊えいたいと爲なりて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

言ことばよ、爾なんぢは使徒等しとらを靈れい智ちなる雲くもとして披ひらきて、我われ等らに睿えい智ちにして神聖しんせいなる敎をしへの雨あめを注そゝぎて、萬世ばんせいに我われ等らに飮のましむ。

敎けう會くわいの至いたりて堅けん固ごなる柱はしら、敎をしへの定てい理りを以もつて敎けう會くわいを動うごかざる者ものと爲なす見神者けんしんしやよ、我わが靈たましひの朽くちたる家いへを神聖しんせいなる工たくみを以もつて固かため給たまへ。

靈たましひよ、歎息たんそくして、心こゝろを傾かたぶけて淚なみだの流ながれを主しゆに捧さゝげて呼よべ、獨ひとり宏くわう恩おんなる主しゆよ、至し榮えいなる使徒しとの嘉よく納いれらるる祈き禱たうに由よりて、我われを潔きよめて救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 擇えらばれたるシオン、王わうの城邑まちたる至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、神聖しんせいなる門もん徒とと偕ともに爾なんぢの無む原げんなる子こに祈いのりて、我われを上うへなる城邑まちの住ぢゆう者しやと爲なし給たまへ。

又 イルモス同上

ミラ城じやうの首しゆ成聖者せいせいしやたりし大おほいなるニコライよ、香料かうれうを以もつて我わが靈たましひの感覺かんかくを薰かをらせ給たまへ、我わが諸慾しよよくの惡臭あくしうを脫のがれて、撫ぶ恤じゆつ者しやの恩おん寵ちようを受うけん爲ためなり。

睿えい智ち者しやよ、爾なんぢは聖せいなる爾なんぢの言ことばの流ながれにてアリイの褻瀆けがしの流ながれを遏とゞめたり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、至し福ふくなるニコライよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが諸慾しよよくの流ながれを涸からし給たまへ。

爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らを罪過ざいくわと、惡あく魔まの攻擊こうげきと、惡あしき人人ひとびとの害がいより脫のがれしめ給たまへ、我われ等らが爾なんぢを吾わが救きう護ご者しやとして崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

聖三者讚詞 我われ等ら信しんを以もつて絕たえず三者さんしやの一體いつたいを讚榮さんえいして呼よばん、父ちゝと言ことばと至し聖神せいしんよ、我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに崇あがめ歌うたふ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、神かみは我われ等らの爲ために爾なんぢより身みを衣きて、爾なんぢ純じゆん潔けつなる者ものを全ぜん人類じんるゐの爲ために神聖しんせいなる轉達者てんたつしやと爲なせり。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは大おほいなる聲こゑを以もつて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、及び叩拜。

第九歌頌

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル、神かみ及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

睿えい智ち者しやよ、爾なんぢ等らは神聖しんせいの諸德しよとくにて輝かゞやく靈れい智ちなる星ほしの列つらなれる天てんと現あらはれ、ハリストスを日ひの如ごとく其中そのうちに有たもちて、地ちの四し極きよくを新あらたにし給たまへり、故ゆゑに爾なんぢ等ら讚さん美びせらる。

ハリストスの瘡痍きずを以もつて己おのれの神聖しんせいなる身みの最いと美うるはしき飾かざりと爲なしたる睿えい智ち者しやよ、惡あく魔まの矢やに傷きずつけられたる我わが靈たましひを主しゆに於おける轉達てんたつを以もつて醫いやし給たまへ。

主しゆハリストスよ、罪つみの最いと深ふかき穴あなに臥ふして、甚はなはだしき怠惰おこたりの眠ねむりにて靈たましひの壓あつせらるる我われを、爾なんぢの門もん徒とに由よりて、ラザリを起おこしし如ごとく起おこして救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 大仁だいじん慈じなる神かみの言ことばよ、吾わが靈たましひに爾なんぢの誡いましめの直なほき途みちを行ゆかしめ給たまへ、爾なんぢを生うみし至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ及および爾なんぢの睿えい智ちなる諸しよ使徒しとは之これを爾なんぢに祈いのる。

又 イルモス同上

爾なんぢは神聖しんせいなる成聖者せいせいしやにして、ハリストスの悉ことごとくの誡いましめを守まもり給たまへり、故ゆゑに信者しんじやの爲ために神聖しんせいなる保護ほご者しやと爲なれり。神しん父ぷニコライよ、彼かれ等らを諸もろもろの誘惑いざなひ及および葘害わざはひより護まもり給たまへ。

克肖こくせうなる神しん父ぷニコライよ、爾なんぢは善よき牧者ぼくしやとして、昔むかし饑き饉きんに由よりて憊つかれたる爾なんぢの都邑まちを養やしなひし如ごとく、斯かく今いまも、慈じ憐れんなる保護ほご者しやとして、靈れい智ちなる糧かてを以もつて我わが靈たましひを養やしなひ給たまへ。

克肖こくせうなる牧者ぼくしやよ、我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢ常つねにハリストスの敎けう會くわいの穹蒼おほぞらに懸かゝれる大おほいなる日ひに祈いのる、光ひかりの至いたりて光くわう明めいなる煇煌かゞやきを以もつて我われ等らの靈たましひの罪つみの深ふかき闇やみを拂はらひ給たまへ。

書しるせるが如ごとく、ハリストスの降臨かうりんの畏おそるべき日ひは邇ちかづけり。靈たましひよ、醒さめて、怠惰おこたりを退しりぞけて、熱切ねつせつにハリストスに呼よべ、主しゆよ、爾なんぢのニコライの祈き禱たうに由よりて我われを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる永貞えいてい童女どうぢよよ、預よ言者げんしやは爾なんぢを光くわう明めいなる燈臺とうだいとして預よ見けんせり、其その上うへに靈れい智ちなる燈ともしびハリストスは載のせらる。彼かれに由よりて我われ等ら幽暗くらやみ及および慾よくの中うちに臥ふす者ものは照てらされて、爾なんぢ生しやう神女しんぢよを讚さん頌しようす。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。小聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに使徒の讚頌スティヒラ、第五調。

救世主きうせいしゆの門もん徒とよ、爾なんぢ等らは奧密あうみつの實見者じつけんしやと爲なりて、見みえざる・始はじめなき者ものを傳つたへて云いへり、太初はじめに言ことば有ありと。爾なんぢ等らは諸天しよてん使しより先さきに造つくられしに非あらず、人人ひとびとより學まなびしに非あらず、乃すなはち上うへなる睿えい智ちより之これを學まなべり。故ゆゑに勇敢いさみを有たもちて、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。

爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我われ等ら同心どうしんに歌うたを以もつて主しゆの諸しよ使徒しとを讚ほめ揚あげん、蓋けだし彼かれ等らは十じふ字架じかの武器ぶきを佩おびて、偶像ぐうざうの迷まよひを空むなしくし、榮えい冠くわんを冠かうむれる勝しよう利り者しやと現あらはれたり。彼かれ等ら及および衆しゆう聖人せいじんの祈き禱たうに因よりて、神かみよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 聖せいなる者ものは苦くるしみの中うちに在ありて歡よろこびて呼よべり、是これ我われ等らの爲ために主宰しゆさいに於おける貿易ぼうえきなり、蓋けだし我われ等らは肉體にくたいに受うくる傷きずに易かへては復ふく活くわつの時ときに光くわう潔けつなる衣ころもを受うけ、耻辱はづかしめに易かへては榮えい冠くわん、獄ひとやの桎梏かせに易かへては樂園らくゑん、罪犯者ざいはんしやと偕ともにする定罪ていざいに易かへては天てん使等しらと偕ともに居をることを受うけん。主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢを讚さん美びす、爾なんぢより義ぎの日ひたるハリストス、大おほいなる憐あはれみを有たもつ主しゆは輝かゞやき出いでたればなり。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に、若し之あらば、聖人の讚詞トロパリ。次に聯禱、及び第一時課、常例の聖詠、其他次第に循ふ、幷に發放詞。

横線 - 『八調経』第五調

 木曜日の聖体礼儀に

木曜日の眞福詞、第五調。

ハリストスよ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを神かみなりと信しんじ、誠まことの心こゝろより爾なんぢを承うけ認みとめて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 和わ平へいを行おこなふ者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみの子こと名なづけられんとすればなり。

神聖しんせいなる門もん徒とよ、爾なんぢ等らは光ひかれる雲くもの如ごとく大だい地ちを歷へて、活いける水みづを注そゝぎ、罪過ざいくわに因よりて涸かれたる心こゝろに饒ゆたかに飮のませ給たまへり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

ハリストス我わが神かみの神聖しんせいなる門もん徒とよ、爾なんぢ等らは潔いさぎよき童貞女どうていぢよより輝かゞやき出いでし日ひの奧密あうみつなる光くわう線せんとして、無知むちの暗昧くらやみに坐ざする者ものを照てらし給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

致命者讚詞 聖せいなる睿えい智ち者しやよ、爾なんぢ等らは熱心ねつしんなる靈たましひを以もつて劇はげしき苦くるしみの焚やく火ひを忍しのび、偶像ぐうざうの迷まよひを焚やきて、神聖しんせいなる樂たのしみに移うつり給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

ハリストスよ、爾なんぢは罪過ざいくわの深處ふかみに埋うづみたる金錢ドラフマを取とりて父ちゝに攜たづさへん爲ために、聖神せいしんを以もつて使徒しと傳道でんだう師等しらを造つくり給たまへり。

光榮、聖三者讚詞 至いたりて神聖しんせいなる三者さんしや、無む原げんなる父ちゝ、同どう無む原げんの子こ、及および聖神せいしん、惟一ゆゐいちの神かみよ、悉ことごとくの傳道でんだう師しの祈き禱たうに依よりて爾なんぢの敎けう會くわいを護まもり給たまへ。

今も、生神女讚詞 諸しよ使徒しとの飾かざりなる神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我われ度ど生せいの逸樂いつらくに昧くらまされし者ものを痛つう悔くわいの光ひかりを以もつて照てらし給たまへ、我わが爾なんぢを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

横線 - 『八調経』第五調

 木曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十字架の讚頌スティヒラ、第五調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝししまん爲ためなり。

林はやしの悉ことごとくの木きは、主宰しゆさいの苦く難なんに由よりて歡よろこばれたる最いと尊たふとき木きを見みて歡よろこぶべし。此この木きは恩おん寵ちようを火焰ほのほの如ごとく耀かゞやかし、衆しゆうの爲ために恩おん賜しを水みづの如ごとく流ながし、靈たましひと心こゝろとを照てらし、諸しよ病びやうを醫いやし、諸慾しよよくを退しりぞけ、見みえざる惡あく鬼きを遠とほく逐おひ、異い邦民はうみんに勝かち、諸しよ王わうに敵てきに對たいする勝しよう利りを與あたへ、恒つねに信者しんじやに祝しゆく福ふくと大おほいなる憐あはれみとを與あたふ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

預よ言者げんしやの言いひし如ごとく、主しゆの足あしの立たちし處ところに我われ等ら信しんを以もつて伏拜ふくはいし、十じふ字架じかに釘ていせられて共ともに我われ等らの罪過ざいくわを釘ていせしハリストスを讚榮さんえいせん。彼かれは木きに緣よる詛のろひを破やぶり、遠とほく父ちゝに離はなれたる者ものを之これと和わ睦ぼくせしめ給たまへり。我われ等らは其その手てと足あしとの釘くぎ、戈ほこと葦よし、海絨かいじうと冠かんむりに接吻せつぷんし、嘲罵のゝしりと陵辱はづかしめと其その他たの忍しのびたる事ことを尊たふとまん、此これ等らに因よりて救すくはれたればなり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの且かつを待まつより甚はなはだし。

我われ等らは百ひやく體たいをハリストスと偕ともに十じふ字架じかに釘ていして、世よの爲ために死しし、世よを持たもつハリストスの蹤あとに行ゆくを慕したひて、其その神聖しんせいなる十じふ字架じかを肩かたに任になひ、肉體にくたいの逸樂いつらくと靈たましひを罪つみに引ひく惡慾あくよくとを退しりぞけ、心こゝろの中うちに十じふ字架じかの前まへに立たちて、其その上うへに釘ていせられて、歎息たんそくして己おのれの靈たましひを父ちゝの手てに付わたしし者ものを仰あふがん、常つねに彼かれと偕ともに別わかれずして居をらん爲ためなり。

又至聖なる生神女の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

至し淨じやうなる者ものは葡ぶ萄だうの樹きとして栽培さいばいせられずして生しやうぜし實みが木きに懸かけられて、戈ほこを以もつて神聖しんせいなる脅わきを刺さされしを見みて、呼よびて云いへり、吾わが子こ及および神かみよ、是これ何なにぞや、凡およその病やまひと苦くるしみとを醫いやす者もの、神かみの性せいにて苦くるしみに與あづからざる主しゆにして、奈何いかんぞ苦くるしみを忍しのぶ、如何いかにして恩おんを知しらざる民たみは爾なんぢ恩主おんしゆに諸しよ恩おんに易かへて斯かく酬むくいたると。生しやう神女しんぢよよ、彼かれの苦くるしみに因よりて我われを苦くるしみより釋とかんことを常つねに祈いのり給たまへ、我わが爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

我われ等ら衆しゆう不ふ當たうの行おこなひと誡いましめに背そむくこととを以もつて神かみを怒いからせし者ものは、熱あつき淚なみだを流ながし、手てを伸のべ、胷むねを拊うち、膝ひざを屈かゞめ、面おもてを地ちに伏ふせ、歎息たんそくを天てんに發はつして、將しやう來らいの審判しんぱんに苦くるしみを免まぬかるることを求もとめん。主しゆよ、爾なんぢを悲かなしませし者ものは爾なんぢに轉てんじて祈いのる、爾なんぢが身みを取とり、十じふ字架じかを忍しのびて救すくはんと欲ほつせし者ものを、爾なんぢの母はゝの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢの國くにに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

靈たましひよ、爾なんぢ誰たれに似にて益ますます惡あくに進すゝみ、無知むちにして傷きずに更さらに多おほくの傷きずを加くはへ、全身ぜんしん傷きずを被かうむるに至いたりたる。何なんぞ思おもはざる、審判者しんぱんしやは近ちかづく、爾なんぢ彼かれの前まへに立たちて、行おこなひに由よりて罰ばつを受うけん。疾とく轉てんじて童貞女どうていぢよに俯ふ伏ふくして呼よべ、女宰ぢよさいよ、女宰ぢよさいよ、爾なんぢより人人ひとびとの救すくひの爲ために生うまれ、身みにて釘ていせられし大仁だいじん慈じなる神かみを怒いからせし我われを棄すつる毋なかれ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 罪つみなき吾わがハリストスよ、爾なんぢは衆しゆう人じんに救すくひを得えしめんと欲ほつして、我われ等らの爲ために贖しよく罪ざいとして、價あたひの大おほいなる爾なんぢの至いたりて潔いさぎよき血ちを甘あまんじて與あたへ給たまへり。故ゆゑに爾なんぢの母はゝは爾なんぢが釘ていせられしを見みて淚なみだを流ながし、痛いたく歎なげきて言いへり、吾わが子こ、至いたりて無む玷てんなる羔こひつじ、暮くれざる光ひかりよ、爾なんぢの尊たふとき血ちにて世せ界かいを贖あがなはんと欲ほつして、如何いかんぞ我わが目めより隱かくれたる。救世主きうせいしゆよ、衆しゆう人じんに光くわう照せうと、平安へいあんと、大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第五調。

主しゆよ、昔むかし預よ言者げんしやモイセイの時ときに爾なんぢの十じふ字架じかの形かたちのみ現あらはれて、爾なんぢの敵てきに勝かてり。今いま我われ等らは實體じつたいの爾なんぢの十じふ字架じかを執とりて、佑助たすけを求もとむ、人ひとを愛あいする主しゆよ、大おほいなる慈じ憐れんに由よりて爾なんぢの敎けう會くわいを堅かため、吾わが皇くわう帝ていにコンスタンティン王わうに於おけるが如ごとく勝しよう利りを與あたへ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

ハリストスよ、爾なんぢの十じふ字架じかは實じつ質しつに於おいては見みゆる木きなれども、神聖しんせいなる力ちからを衣きせられ、有形いうけいに世せ界かいに現あらはれて、無む形けいに我わが救すくひを靈妙れいめうに行おこなふ。救世主きうせいしゆよ、我われ等ら之これに伏拜ふくはいして爾なんぢを讚榮さんえいす、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは凡およそ地ち上じやうの事ことを意いとせずして、勇いさましく己おのれを苦くるしみに付わたし、望のぞみし福ふくを得えて、天てんの國くにを嗣つぐ者ものと爲なれり。仁愛じんあいなる神かみの前まへに勇敢いさみを有たもちて、世せ界かいの爲ために平安へいあん、我われ等らの靈たましひの爲ために大おほいなる憐あはれみを求もとめ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 童貞女どうていぢよ母はゝ、至し福ふくなる少女せうぢよは昔むかし羔こひつじたる其その子こが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、泣なきて呼よべり、嗚呼あゝ吾わが子こよ、爾なんぢは性せいの不死ふしなる神かみにして如何いかんぞ死しする。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ。聯禱及び發放詞。

横線 - 『八調経』第五調

 木曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱歌かちうたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

童貞女どうていぢよ神かみの聘女よめよ、我われ等らは爾なんぢを他たの樂園らくゑん、靈れい智ちにして、竝ならびなくエデムの樂園らくゑんに超こゆる者ものとして知しる、蓋けだし爾なんぢは、神かみの母はゝよ、人人ひとびとの爲ために不ふ朽きうを生しやうじ給たまへり。

アダムは樂園らくゑんに智ち識しきの樹きの果みを食くらひて、生命せいめいの樹きに與あづかるを禁きんぜられたり。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢより身みを取とりし者ものは不死ふしを與あたへ給たまへり。

光榮 初はじめのアダムは地ちより全能者ぜんのうしやの至し淨じやうなる手てにて造つくられたり。生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢより種たねなくして新あらたなるアダム、人類じんるゐの造成主ざうせいしゆは生うまれ給たまへり。

今も 無む量りやうの罪過ざいくわの今いまを限かぎりの淵ふちは我われを圍かこみて、我われを甚はなはだしき失望しつばうの深處ふかみに降くだす。慈じ憐れんの淵ふちを生うみし者ものよ、急いそぎて我われを救すくひ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを固かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

初はじめに地ちに生いける物ものを生しやうずるを命めいぜし神かみの言ことばは、今いま地ち上じやうに夫をつとを識しらざる童貞女どうていぢよより神かみの性せいを易かへずして身みを取とりて生うまれ給たまへり。

女宰ぢよさい生命いのちの母はゝよ、爾なんぢは地ちに生うまるる者ものの恃賴たのみと扶助たすけ、喜悅よろこびと帲幪おほひ、及および避所かくれがなり。故ゆゑに我われ等ら祈いのる、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものに爾なんぢの扶助たすけを降くだし給たまへ。

光榮 宏くわう恩おんなる造成主ざうせいしゆ、萬有ばんいうの神かみよ、我われ等ら甚はなはだしき誘惑いざなひに圍かこまれて弱よわる者ものは爾なんぢの至し聖せいなる幕まくを祈き禱たうの爲ために進すゝめて爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの諸僕しよぼくを苦く難なんの圍かこみより釋とき給たまへ。

今も 罪つみの浪なみは甚はなはだしく我われを擾みだして、惡あくの深處ふかみに引ひき、善ぜんに逆さかふ思おもひの颶ぐ風ふうは我わが靈たましひを荒あらす。嚮きやう導だう師しを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、急いそぎて爾なんぢの僕ぼくを救すくひ給たまへ。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

エワは蛇へびに順したがひて、女をんなの爲ために悲かなしみを生うめり。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは神かみの言ことばを信しんじて、全ぜん世せ界かいの爲ために歡喜よろこびの華はなを發ひらけり。

初はじめにアダムの肋あばら骨ぼねよりエワは出いでたり。今いまは神かみの聘女よめたる母はゝより神かみは生うまれ給たまへり、童貞女どうていぢよは彼かれを身みを取とりし者ものとして父ちゝなく生うみ給たまへり。

光榮 エワは喜よろこぶ、蓋けだし、潔いさぎよく審判者しんぱんしやを孕はらみて、仁じん慈じなる主しゆを生うみし少女せうぢよは原げん母ぼを古いにしへの定罪ていざいより釋とき給たまへり。

今も 我わが生命いのちは諸罪しよざいに滿みち、思念おもひは慾よくに耽ふけり、我わが靈たましひは定罪ていざいせられたり。祈いのる、女宰ぢよさいよ、爾なんぢの仁じん慈じに由よりて我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

童貞女どうていぢよ、光ひかりを施ほどこす主しゆの母はゝよ、我われ等らは爾なんぢを光ひかりの柱はしら及および雲くもとして獲えて、誘惑いざなひの野のを行ゆきて災禍わざはひを免まぬかる。

神かみを身みにて生うみし者ものよ、慶よろこべ、彼かれは世よの先さきより無む形けいに父ちゝより生うまれて、今いまは有形いうけいに我われ等らに現あらはるることを甘あまんじ給たまへり。

光榮 マリヤよ、日ひは爾なんぢの光ひかりに勝かたれたり、蓋けだし爾なんぢは光くわう體たいを以もつて天てんを飾かざりし主しゆを手てに抱いだきて、爾なんぢの乳ち房ぶさにて養やしなひ給たまへり。

今も ハリストス我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢを生うみし潔いさぎよき母はゝの祈き禱たうに由よりて、我われを不ふ滅めつの火ひに定罪ていざいする毋なかれ。

第六歌頌

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

潔いさぎよき永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢは昔むかし預よ言者げんしやイオナを鯨くぢらの内うちに救すくひし奇異きいなる神かみを爾なんぢの腹はらの内うちに忮そこなひなく宿やどし給たまへり。

海うみを保たもつ主しゆ神かみを生うみし至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ等らを荒あらす誘惑いざなひの海うみを鎭しづめ給たまへ。

光榮 萬ばん衆しゆうの平穩へいをんたるハリストスを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、彼かれに捧さゝぐる爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが諸慾しよよくの烈はげしき颶ぐ風ふうを穩おだやかに爲なし給たまへ。

今も 憂うれひの日ひに於おいて我わが肉體にくたいの縛なはめを釋とかれんとする時とき、我われに臨のぞみて、惡あく鬼きの圍かこみより脫のがれしめ給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第五調。

ハリストスよ、爾なんぢの母はゝは爾なんぢが甘あまんじて十じふ字架じかに盜賊たうぞくの間あひだに懸かゝれるを見みて、母はゝとして心こゝろ裂さかれて言いへり、罪つみなき子こ、仁じん慈じに由よりて人類じんるゐを活いかさんと欲ほつする者ものよ、如何いかんぞ罪犯者ざいはんしやの如ごとく、非義ひぎに十じふ字架じかに釘ていせられたる。

第七歌頌

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

祝しゆく福ふくせられし者ものよ、太たい祖そアウラアムに臨のぞみし神かみは爾なんぢの子こと爲なりて、彼かれの子し孫そん及および異い邦民はうみんに祝しゆく福ふくし給たまへり。

爾なんぢはイアコフの見みたる光くわう潔けつなる梯かけはしなり、蓋けだし神かみは獨ひとり爾なんぢを母はゝと預よ象しやうして、爾なんぢに因よりて彼かれの諸しよ子しを己おのれに合あはせ給たまへり。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、父ちゝ及および聖神せいしんと偕ともに尊たふとまるる子こは爾なんぢを選えらび、己おのれの至し愛あいなる居處すまひと爲なして、爾なんぢに藉よりて身みを取とり給たまへり。

今も 爾なんぢが生うみし神かみに常つねに祈いのりて、我われ失望しつばうせし者ものを救すくひて、信しんを以もつて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よぶ者ものに憐あはれみを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりに在ありて爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆの前まへに全ぜん世せ界かいの詠隊えいたいと爲なりて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの產さんは窮きはむれども悟さとられず、唯たゞ信しんを以もつて、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを崇あがめ讚ほめよと呼よぶ者ものに拯救すくひとして現あらはる。

聘女よめならぬ聘女よめよ、爾なんぢは童貞女どうていぢよの光くわう榮えいを失うしなはずして、母はゝの尊そん貴きに富とまされたり、如何いかに斯かくなりしか、奇き跡せきを行おこなひし主しゆは之これを知しる、我われ等ら彼かれを世世よよに崇あがめ讚ほむ。

光榮 仁じん慈じ潔けつ淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我わが卑微ひびなる靈たましひの痛傷いたみを見みて、速すみやかに病やまひを醫いやし給たまへ、我わが世世よよに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

今も 至し善ぜんなる言ことばよ、仁じん慈じを以もつて爾なんぢの母はゝ、爾なんぢの尊たふとき血ちにて獲えたる民たみを救すくはんことを祈いのる者ものを受うけ給たまへ、我われ等らが萬世ばんせいに爾なんぢを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

第九歌頌

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル、神かみ及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

拜をがまるる聖三者せいさんしやの一いち位ゐを身みにて潔いさぎよく我われ等らの爲ために生うみし生しやう神女しんぢよ・女宰ぢよさいよ、聖三者せいさんしやに祈いのりて、地ちに在ある者ものに平安へいあんを與あたへ、爾なんぢを歌うたふ我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

エムマヌイルは一いち位ゐなれども二に性せいあり、視みよ、彼かれの内うちにある二ふたつの旨むね及および二ふたつの行動はたらきは之これを顯あらはす。我われ等らは彼かれを生うみし者ものを生しやう神女しんぢよと承うけ認とむ。

光榮 我われは吾わが罪つみの多おほき、慾よくの興起おこり、我わが靈たましひの煩悶もだえ、我わが智慧ちゑの迷惑まよひを思おもひて、己おのれの爲ために淚なみだを流ながす。主しゆよ、我われ失望しつばうせし者ものに救すくひを得えしめ給たまへ。

今も 主しゆよ、我わが敵てきは盜賊たうぞくの如ごとく來きたり攻せめて、上うへなる美うるはしき光ひかる衣ころもを剥はぎて、多おほくの傷きずを我われに負おはせたり、爾なんぢ我われ死しするばかりなる者ものに臨のぞみて、我われを起おこし給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第五調

金曜日

 金曜日の早課

第一の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン。第五調。

救世主きうせいしゆよ、髑髏されかうべの處ところは樂園らくゑんと爲なれり、蓋けだし十じふ字架じかの木きは建たてられしのみにして、直たゞちに生命せいめいの葡ぶ萄だうの房ふさたる爾なんぢを我われ等らの樂たのしみの爲ために生しやうじたり。光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

我われ等ら信者しんじやは救世主きうせいしゆ及および贖しよく罪主ざいしゆが、親みづから知しるが如ごとく欲ほつするが如ごとく、甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせられしを歌か頌しようして讚榮さんえいせん。蓋けだし彼かれは十じふ字架じかに人人ひとびとの罪つみを釘ていして、人類じんるゐを迷まよひより脫のがれしめて、國くにを獲えしめ給たまへり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 ハリストスよ、爾なんぢの母はゝは爾なんぢが甘あまんじて十じふ字架じかに盜賊たうぞくの間あひだに懸かゝれるを見みて、母はゝとして心こゝろ裂さかれて言いへり、罪つみなき子こ、仁じん慈じに由よりて人類じんるゐを活いかさんと欲ほつする者ものよ、如何いかんぞ罪犯者ざいはんしやの如ごとく、非義ひぎに十じふ字架じかに釘ていせられたる。

第二の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第五調。

己おのれの旨むねに由よりて十じふ字架じかに釘ていせらるるを忍しのびて、人人ひとびとを朽きう壞くわいより解ときたる救世主きうせいしゆよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを歌か頌しようして伏拜ふくはいす、爾なんぢは十じふ字架じかの力ちからを以もつて我われ等らを照てらしたればなり。宏くわう恩おんにして仁愛じんあいなる王わうよ、我われ等ら皆みな爾なんぢを生命いのちを施ほどこす者もの及および主しゆとして讚榮さんえいす。

句 神かみ我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

宏くわう恩おんなる主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは甘あまんじて十じふ字架じかを忍しのびて、食しよくに緣よる古いにしへの詛のろひを、全能ぜんのうなる神かみとして滅ほろぼし給たまへり。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢの神聖しんせい尊そん貴きなる苦くるしみを歌うたひ、之これに伏拜ふくはいして、絕たえず言ことばに超こゆる爾なんぢの定制ていせいを讚榮さんえいす。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 今日こんにち受難者じゆなんしやの記き憶おくは地ちに輝かゞやき、天てんにも光ひかる、天てん使しの會くわいは祝いはひ、人ひとの族やからは共ともに歡よろこぶ。故ゆゑに彼かれ等らは主しゆに我われ等らの靈たましひの憐あはれみを蒙かうむらんことを祈いのり給たまふ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、爾なんぢの子この十じふ字架じかにて偶像ぐうざうの迷まよひは悉ことごとく虛むなしくなり、惡あく魔まの力ちからは破やぶられたり。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは職しよくとして常つねに爾なんぢを歌うたひて讚ほめ揚あげ、實じつに生しやう神しん女ぢよと承うけ認とめて爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第五調。

イイスス萬有ばんいうの王わうよ、天てん使しの品ひん位ゐは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせられて眠ねむりしを見みて驚おどろき、惡あく鬼きの軍ぐんは直たゞちに勝かたれ、地ぢ獄ごくの柱はしらは折くじかれ、死しの殘虐くるしめは息やみ、墓はかの中なかの死し者しやは復ふく活くわつせり。

イイススよ、アダムは蛇へびの嫉妬ねたみに因よりて木きより悲かなしみを獲えて、朽きう壞くわいに陷おちいりたり。爾なんぢ釘ていせられしに、彼かれは復また生命いのちを樂たのしみ、十じふ字架じかの木きに緣よりて天てんに住すむ者ものと爲なり、蛇へびは虛むなしくせられ、朽きう壞くわいは呑のまれたり。我われ等ら皆みな爾なんぢに光くわう榮えいを獻けんず。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 救世主きうせいしゆよ、產さん苦くなく爾なんぢを生うみし者ものは爾なんぢが木きに擧あげられしを見みて、淚なみだを流ながして呼よべり、嗚呼あゝ甘愛かんあいなる子こよ、我われ爾なんぢが罪犯者ざいはんしやの審判しんぱんに因よりて二ふたりの罪犯者ざいはんしやの間あひだに十じふ字架じかに釘ていせられしを見みて、靈たましひ裂さかる。

尊貴にして生命を施す十字架の規程カノン、其冠詞は、我がハリストスよ、爾は苦に因りて我を苦より救ひ給ふ。イオシフ師の作。第五調。

第一歌頌

イルモス 我われ等らは、民たみに足あしを濡ぬらさずして海うみを渡わたらしめ、ファラオンを其その全軍ぜんぐんと偕ともに溺おぼれしめし救世主きうせいしゆ神かみ、獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

ハリストスよ、爾なんぢは甘あまんじて苦くるしみを殺ころす苦くるしみを忍しのびて、昔むかし樂園らくゑんに於おいて我われ等らを殺ころしし者ものを殺ころし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの仁じん慈じを讚榮さんえいす。

ハリストスよ、爾なんぢ十じふ字架じかに擧あげられしに、敵てきは墜おとされ、我われ等ら陷おちいりし者ものは擧あげられ樂園らくゑんの住ぢゆう者しやと爲なりて、爾なんぢの國くにの權柄けんぺいを讚榮さんえいす。

致命者讚詞 睿えい智ちなる大だい致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは十じふ字架じかの盾たてを武器ぶきと爲なして、凡およその惡あく鬼きの軍ぐんと戰たゝかひ、之これに勝かちて光くわう榮えいを獲えたり。

致命者讚詞 讚さん美びたる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは尊たふとき羔こひつじとして、我われ等らの爲ために屠ほふられし羔こひつじに獻けんぜられて、不ふ淨じやうの祭まつりを止とゞめたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ等らを讚さん頌しようす。

生神女讚詞 純じゆん潔けつ無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために日ひの老おいたる者ものを新あらたなる嬰兒をさなごとして生うみ給たまへり、是これ其その神聖しんせいなる苦くるしみを以もつて老おいたる人ひとの性せいを新あらたにせし者ものなり。

又至聖なる生神女の規程カノン。

第一歌頌

イルモス同上

純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよ母はゝマリヤよ、我われ爾なんぢを慈じ憐れんの泉いづみ及および熱切ねつせつなる轉達者てんたつしやと知しりて、爾なんぢに呼よぶ、我わが卑微ひびなる靈たましひを憐あはれみて宥なだめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、神かみの子こは爾なんぢの胎内たいないに入いり、人ひとの性せいを取とりて、至し仁じんなる主しゆとして、衆しゆう人じんを蛇へびの朽きう壞くわいより救すくひ給たまへり。

純じゆん潔けつなる神かみの母はゝよ、我われの爲ために光くわう照せう及および救すくひの恃賴たのみと爲なりて、諸罪しよざいの縛なはめを解とき、我われを將しやう來らいの定罪ていざい及および苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

神かみの母はゝよ、我わが卑微ひびなる靈たましひを惡あしき思おもひより解ときて、之これを神かみの居處すまひと爲なし給たまへ、我わが職しよくとして常つねに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

第三歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢの十じふ字架じかの力ちからにて我わが思慮おもひを堅かため給たまへ、我わが爾なんぢの救すくひを施ほどこす升しよう天てんを歌うたひ讚ほめん爲ためなり。

主宰しゆさい救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは木きに擧あげられて、果みの朽きう壞くわいを枯からし、爾なんぢの脅わきより我われ等らの爲ために不ふ朽きうの泉いづみを流ながし給たまふ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは羔こひつじの如ごとく十じふ字架じかに屠ほふられて、爾なんぢの神聖しんせいなる血ちを以もつて我わが靈たましひの門かどくちの楣かもゐに記しるし給たまへり。故ゆゑに我われ等らは畏おそれを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいす。

致命者讚詞 ハリストスの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは縛しばられ、多おほくの苦くるしみに付わたされ、猛獸まうじうに投なげられて、動うごきなく止とゞまり給たまへり。

致命者讚詞 我わが神かみの致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは生命いのちの葡ぶ萄だうの房ふさとして、信者しんじやの心こゝろを樂たのしましむる苦くるしみの酒さけを流ながし給たまへり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの子こ及および主しゆは木きの上うへに死しして、我われ等らの爲ために生命いのちの中ちゆう保はう者しやと顯あらはれて、爾なんぢを歌うたふ者ものを榮えいし給たまふ。

又 イルモス同上

神かみの母はゝよ、我われ無む量りやうの罪過ざいくわの滅亾ほろびの穽あなに陷おちいりし者ものを、爾なんぢの慈じ憐れんの多おほきを以もつて引ひき出いだし給たまへ。

讚さん美びたる者ものよ、我われ生命いのちの晩くれに至いたり、煩悶もだえに圍かこまれて、爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢ我われの爲ために扶ふ助者じよしやと爲なり給たまへ。

至し聖せい至し潔けつなる生しやう神女しんぢよよ、我われに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへて、我わが爲ために救すくひと永遠えいゑんの喜よろこびとを求もとめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われに淚なみだの滴したゝりを與あたへ給たまへ、我わが心こゝろより煩悶もだえを退しりぞけて、熱切ねつせつに爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

第四歌頌

イルモス 我われ十じふ字架じかの力ちからの風聲おとづれ、樂園らくゑんが是これにて啓ひらかれしを聞ききて籲よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

義ぎの日ひハリストス言ことばよ、爾なんぢは十じふ字架じかに在ありて入いりし時とき、我われ等ら爾なんぢの畏おそるべき定制ていせいを歌うたふ者ものの爲ために暮くれざる光ひかりを輝かゞやかし給たまへり。

ハリストス審判者しんぱんしやよ、爾なんぢ曾かつて審判しんぱん座ざの前まへに立たちて、非義ひぎなる敵てきを定罪ていざいせり、不義ふぎなる者ものの間あひだに釘ていせられて、我われ等らを義ぎと爲なし給たまへり。

致命者讚詞 主しゆの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは見みえざる敵てきを辱はづかしめ、勝しよう利り者しやとして榮えい冠くわんを冠かうむりて呼よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

致命者讚詞 我われ等ら集あつまりて信しんを以もつて、靈れい智ちなる樂園らくゑんの凋しぼまざる花はな、價あたひの最いと貴たふとき器うつはたるハリストスの受難者じゆなんしやを尊たふとまん。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは生うみしハリストスの十じふ字架じかにあるを見みたる時とき、彼かれの言いひ難がたき恒忍ごうにんを奇きとせり。故ゆゑに我われ等らは彼かれと偕ともに爾なんぢを讚榮さんえいす。

又 イルモス同上

誰たれか能よく我わが惡あしき行おこなひ及および多おほくの罪過ざいくわの爲ために審判者しんぱんしやに祈いのりて其その赦ゆるしを獲えん、唯たゞ爾なんぢ潔いさぎよき童貞女どうていぢよのみ、獨ひとり罪つみを行おこなひし者ものの轉達者てんたつしやなればなり。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの力ちからを以もつて、我われ多おほくの罪過ざいくわに陷おちいりて、吾わが靈たましひを罪つみの奴ど隷れいと爲なしし者ものを起おこし、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを奴ど隷れいより釋とき給たまへ。

純じゆん潔けつ無む玷てんなる生しやう神女しんぢよよ、萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ及および王わうを生うみし者ものとして、我われを凡およその不ふ潔けつの罪過ざいくわより脫のがれしめ給たまへ。

我わが多おほくの罪つみと滅きえざる火ひとを思念おもひに起おこす時とき、我われ己おのれの爲ために泣なく。祈いのる、至し淨じやうなる者ものよ、我われに痛つう悔くわいの時ときを與あたへ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 主しゆよ、我われ等ら夙つとに興おきて爾なんぢに籲よぶ、我われ等らを救すくひ給たまへ、爾なんぢは我われ等らの神かみなればなり、爾なんぢの外ほか他たの神かみを知しらず。

ハリストスよ、磐いはは爾なんぢが木きに擧あげられしを感かんじて裂さかれ、地ちの基もとゐは震ふるへり。

義ぎの日ひ、恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢ木きに擧あげられて、日ひは光ひかりを隱かくせり。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは奇き跡せきの光ひかりに輝かゞやきて、神しん゜を以もつて諸しよ病びやうの暗昧くらやみを遠とほざけ給たまふ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らの體からだは劍つるぎにて斷たたれて、靈たましひは神かみを愛あいする愛あいより斷たたれざりき。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢは救世主きうせいしゆの十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、哭なきて呼よべり。

又 イルモス同上

女宰ぢよさいよ、我われ全ぜん體たいに罪つみの傷きずを被かうむりし者ものを爾なんぢの慈じ憐れんの良りやう藥やくを以もつて醫いやし給たまへ。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢは昔むかし神聖しんせいなる產さんを以もつて朽きう壞くわいの流ながれを止とゞめたり、今いまも我わが罪過ざいくわの流ながれを止とゞめ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、吾わが靈たましひを憐あはれみ宥なだめて、定罪ていざい及および永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、祈いのる、顧かへりみて我わが聲こゑを聞ききて、我われを永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 主しゆよ、淵ふちは我われを圍かこみ、鯨くぢらは我われの爲ために柩ひつぎとなれり、惟たゞ我われ爾なんぢ人ひとを愛あいする者ものに籲よびしに、爾なんぢの右みぎの手ては我われを拯すくひ給たまへり。

十じふ字架じかが地ちに樹たてられしに、惡あく鬼きは斃たふれ、信しんは堅かためられ、天てんと地ちとの間あひだの不ふ和わは息やみたり。

主しゆよ、爾なんぢ己おのれの身みを木きの上うへに燈ともしびの如ごとく點ともししに、日ひの光ひかりは滅きえ、暗くらき慾よくの中うちに埋うづめられたる「ドラフマ」は獲えられたり。

致命者讚詞 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢ木きの上うへに擧あげられしに、致ち命者めいしやの會くわいは爾なんぢの後あとに從したがひて、爾なんぢの苦くるしみに效ならへり。

致命者讚詞 榮えい冠くわんを冠かうむれる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは血ちの流ながれを以もつて迷まよひの川かはを涸からし、神聖しんせいなる露つゆを以もつて惡あく鬼きの燃もやしし火ひを滅けし給たまへり。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢが造成主ざうせいしゆの釘ていせられて、其その神聖しんせいなる脅わきの戈ほこを以もつて刺ささるるを見みし時とき、劍つるぎは爾なんぢの心こゝろを貫つらぬけり。

又 イルモス同上

罪過ざいくわの淵ふちは我われを環めぐり、罪つみの深處ふかみは我われを圍かこみて、滅亾ほろびの失望しつばうに墜おとす。聖せいなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢ今いま我われを救すくひ給たまへ。

至し聖せいなる女宰ぢよさいよ、我われ諸罪しよざいの牀とこに臥ふす者ものを起おこして、痛つう悔くわいの救すくひの光ひかりにて輝かゞやかし給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆよ、潔いさぎよく爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて、爾なんぢの世せ界かいを潔きよめ、諸もろもろの憂うれひより脫のがれしめて、永遠えいゑんの光くわう榮えいを獲えしめ給たまへ。

我われ常つねに惡あしき行おこなひを離はなれんことを約やくすれども、恒つねに僞いつはりて、我わが主宰しゆさいを悲かなしましむ。至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢ我われに更新あらたまりを與あたへ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 火ひの爐ゐろりの中なかに歌うたへる少者せうしやを救すくひ給たまひし我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

我われ等らが逸樂いつらくの罪つみより救すくはれん爲ために、爾なんぢは、生命いのちの甘味あまみたるハリストスよ、膽いを嘗なめ給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢ木きの上うへに傷きずつけられしに、アダムの多た年ねんの傷きずは醫いやされたり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは甘あまんじて己おのれを苦くるしみに付わたして、勝しよう利り者しやと現あらはれたり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは痛いたましき辱はづかしめを受うくるを以もつて神かみを尊敬そんけいして、上うへなる尊敬そんけいを得えたり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは產さんの前まへの如ごとく、產さんの後のちにも童貞女どうていぢよに止とゞまれり、蓋けだし神かみは生うまれたり、人人ひとびとを神成しんせいせん爲ためなり。

又 イルモス同上

潔いさぎよき神かみの母はゝよ、我われ信しんを以もつて常つねに爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく者ものを棄すつる毋なかれ。

神かみの母はゝよ、我われに淚なみだの流ながれを與あたへて、我わが諸慾しよよくの叢くさむらを枯からし給たまへ。

讚さん美びたる神かみを生うみし至いたりて無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ罪つみの鐵索くさりにて縛しばられたる者ものを釋とき給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ熱心ねつしんに爾なんぢに趨はしり附つきて、爾なんぢに呼よぶ、童貞女どうていぢよよ、我われを永遠えいゑんの火ひより救すくひ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 世世よよの前さきに父ちゝより生うまれし子こ及および神かみ、末すゑの時ときに童貞女どうていぢよ母はゝより身みを取とりし者ものを、司し祭さい等らは歌うたへ、人人ひとびとは萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

木きに緣よる詛のろひを木きを以もつて除のぞきて、祝しゆく福ふくを人人ひとびとに流ながしし至し仁じんなる救世主きうせいしゆよ、我われ等ら爾なんぢを歌うたひて、爾なんぢを世世よよに崇あがめ讚ほむ。

爾なんぢの十じふ字架じかを以もつて驕おごれる蛇へびを卑ひくくし、深ふかく陷おちいりし人ひとを升のぼせし救世主きうせいしゆよ、我われ等ら爾なんぢを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

致命者讚詞 迷まよひを滅ほろぼしし者もの、神かみの敎をしへの爲ために戰たゝかひし者もの、敎けう會くわいの柱はしら、實じつに堅牢けんらうなる金剛石アダマント、ハリストスの軍ぐん士したる受難者じゆなんしやを我われ等ら熱信ねつしんに歌うたを以もつて尊たふとまん。

致命者讚詞 光くわう榮えいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは日ひの如ごとく輝かゞやきて、恩おん寵ちようを以もつて諸しよ病びやうの雲くもを散さんじ、聖三者せいさんしやを信しんずる信しんを以もつて不ふ虔けんの暗昧くらやみを拂はらへり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、新婦はなよめの友ともガウリイルは爾なんぢに遣つかはされて、呼よびて云いへり、慶よろこべよ、萬有ばんいうの王わうハリストスの最いと美うるはしき宮みやよ、ハリストスは此これに入いりて、衆しゆう人じんを神成しんせいし給たまふ。

又 イルモス同上

我われは「ゲエンナ」の罰ばつを畏おそるれども、常つねに罪つみを行おこなひて、心こゝろと思おもひとは煩悶もだえの中うちにあり。祈いのる、童貞女どうていぢよよ、吾わが煩悶もだえを解ときて、我われを火ひより脫のがれしめ給たまへ。

我われは屢しばしば肉體にくたいの逸樂いつらくに引ひかれ、捕とらはれて賣うらるる者ものの如ごとくにして、常つねに神かみを怒いからす。生しやう神女しんぢよ、獨ひとり恃賴たのみなき者ものの恃賴たのみよ、親みづから我われを憐あはれみ給たまへ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうは耻はぢを得えず、蓋けだし爾なんぢの子こ及および神かみに祈いのりて、欲ほつする所ところ與あたへざるなし。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、我わが卑微ひびなる靈たましひを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

我われは體からだの疾病やまひ、慾よくの勃起おこり、靈たましひの傷創きずに甚はなはだしく苦くるしめらる。惟一ゆゐいちの恩主おんしゆを生うみし者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを健康すこやかに爲なし給たまへ。

次に生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、及び躬拜。

第九歌頌

イルモス 爾なんぢ悟さとり難がたく解とき難がたく神かみの母はゝと爲なり、時ときの中うちに於おいて時ときに緣よらざる主しゆを言いひ難がたく生うみし者ものを、我われ等ら信者しんじやは心こゝろを一いつにして崇あがめ讚ほむ。

獨ひとり權柄けんぺいを有たもつ主しゆよ、爾なんぢ十じふ字架じかに擧あげられて、其その上うへに於おいて指ゆびを血ちに染そめしに、敵てきの力ちから及および權けんは奪うばはれたり。

ハリストスよ、爾なんぢを十じふ字架じかに釘ていせし不ふ法者はふしやは爾なんぢの手てと足あしとを刺さし穿つらぬき、爾なんぢの骨ほねを數かぞへ、膽いと醋すとを爾なんぢに飮のませたり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは欣よろこばしき口くちを以もつて殘虐者くるしめびとの前まへに人ひとと爲なりし神かみを傳つたへて、光くわう榮えいを嗣つぎたり。

致命者讚詞 最いと尊たふとき諸しよ病びやうの醫師いし、神聖しんせいなる致ち命者めいしやよ、敵てきは爾なんぢ等らに傷きずを負おはせ、種種しゆじゆの苦くるしみを加くはへて、自みづから病やまひを得えたり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢより我われ等らの爲ために光ひかりなるイイススは輝かゞやきて、十じふ字架じかに釘ていせらるるを以もつて衆しゆう造物ざうぶつを照てらして、惡あく鬼きの暗昧くらやみを拂はらひ給たまへり。

又 イルモス同上

至し淨じやうなる者ものよ、我われに痛つう悔くわいの淚なみだを與あたへ給たまへ、我わが生命いのちの終をはりの至いたらざる先さきに、我わが惡あしき所爲しわざ、不義ふぎなる行おこなひに因よりて泣なかん爲ためなり。

靈たましひよ、何なんぞ不義ふぎなる行おこなひを以もつて爾なんぢの主宰しゆさいを悲かなしませて起おきざる、終をはりの至いたらざる先さきに急いそぎて痛つう悔くわいせよ。

純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、我われを諸もろもろの罪つみ及および憂患うれひより救すくひて、我われに慈じ憐れんを垂たれ、不ふ朽きうなる生命いのちに與あづかるを得えしめ給たまへ。

我われ等らは爾なんぢ言いひ難がたく神かみを生うみし者ものを轉達者てんたつしやと壞やぶられぬ垣墻かき、靈たましひの救すくひ及および奇き跡せきの泉いづみとして得えたり。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。小聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第五調。

ハリストスよ、爾なんぢの十じふ字架じかの木きの樹たてられしのみにして、迷まよひは遠とほざかり、恩おん寵ちようは華はなさけり。已すでに定罪ていざいの苦くるしみは息やみて、救すくひの勝しよう利りは我われ等らに顯あらはれたり。蓋けだし十じふ字架じかは我われ等らの爲ために美譽ほまれなり、十じふ字架じかは我われ等らの爲ために堅固かためなり、十じふ字架じかは我われ等らの爲ために歡喜よろこびなり。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

ハリストスよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために羊ひつじの如ごとく祭まつりに牽ひかれ、エムマヌイルよ、爾なんぢは無垢むくなる羔こひつじの如ごとく自じ由いうの屠殺ほふりに牽ひかれて、罪犯者ざいはんしやと偕ともに算かぞへられたり。異い邦はうの諸しよ族ぞくよ、來きたりて歌か頌しようして、十じふ字架じかに懸かけられし終をはりなき生命いのちに伏拜ふくはいせん。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 天てんの王わうの軍ぐんは祝しゆく讚さんせらるる哉かな、受難者じゆなんしやは地ちに生うまれし者ものなれども、天てん使しの位くらゐに至いたらんことを勉つとめ、肉體にくたいを顧かへりみずして、苦くるしみに因よりて無む形けいの者ものの尊そん貴きを獲えたり。主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 イイススよ、爾なんぢを生うみし者ものは十じふ字架じかの側かたはらに立たちて、歔欷すゝりなきして呼よべり、我われ斯かく爾なんぢが木きに釘ていせられしを見みるに忍しのびず。我われ夫をつとを識しらざる者ものにして、爾なんぢを生うみし時とき、產さん苦くに與あづからざりしに、如何いかんぞ今いま苦く難なんに苦くるしめられ、心こゝろを刺ささるる、蓋けだし今いまはシメオンの言いひし言ことば應かなひたり、無む玷てんの者ものよ、劍つるぎは爾なんぢの心こゝろを貫つらぬかんと。鳴呼あゝ吾わが子こよ、今いま復ふく活くわつして、爾なんぢを歌うたふ者ものを救すくひ給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、其他、幷に發放詞。

横線 - 『八調経』第五調

 金曜日の聖体礼儀に

金曜日の眞福詞、第五調。

ハリストスよ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを神かみなりと信しんじ、誠まことの心こゝろより爾なんぢを承うけ認みとめて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

生命いのちを施ほどこす宏くわう恩おん仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに殺ころされて、食しよくに因よりて死しせしアダムを活いかして、復また彼かれを樂園らくゑんの住ぢゆう者しやと爲なし給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

眞まことの葡ぶ萄だうの樹きたるハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに釘ていせられて、救すくひの飮料のみものを流ながし、恩おん寵ちようを以もつて衆しゆう信者しんじやの心こゝろに飮のませ給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

致命者讚詞 ハリストスの睿えい智ちなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは擊うたれ、百ひやく體たい斷たたれて、主宰しゆさいの屠殺ほふりを形かたどれり、故ゆゑに常つねに讚さん美びせらる。

光榮、聖三者讚詞 我われ等ら忠ちゆう信しんに爾なんぢ三さん位ゐに於おいて惟一ゆゐいちなる神かみ、分わかれざる神性しんせいに伏拜ふくはいして呼よぶ、聖三者せいさんしや、惟一者ゆゐいちしや、我われ等らの神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

今も、生神女讚詞 女宰ぢよさいよ、爾なんぢは我われ等らの生命いのちが甘あまんじて十じふ字架じかの木きに死しせしを見みて、泣なきて痛いたく苦くるしめり。故ゆゑに我われ等ら衆しゆう屬神ぞくしんの歌か頌しようを以もつて常つねに爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第五調

「スボタ」の奉神礼の規程

 「主は神なり」を歌う時

「主は神なり」を歌ふ時のスボタの晩課早課、及び聖體禮儀リトゥルギヤの奉事の事。

金曜日には、晩課の常例の誦文の後に、「主よ、爾に籲ぶ」に月課經ミネヤの聖人の讚頌スティヒラ六章を歌ふ。光榮、若し之あらば、聖人の自調。若しなくば、光榮、今も、本調の第一の生神女讚詞。挿句くづけに八調經オクトイホの本調の致命者讚詞三章。光榮、若し之あらば、聖人の。若しなくば、光榮、今も、生神女讚詞。次に「主宰よ、今爾の言に循ひて云云」、及び聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ。光榮、今も、本調の生神女讚詞。聯禱及び發放詞。

知るべし。若し使徒の一、或は大聖人の一、或は讚詞トロパリのあらざる聖人に遇はずば、「主は神なり」を歌はずして、「アリルイヤ」を第二調に据りて歌ふ。早課に六聖詠の後に「主は神なり」を歌ふ、聖人の讚詞トロパリの調に据る、及び其讚詞二次。光榮、今も、第一の生神女讚詞、聖人の讚詞トロパリの調に据る。次に第十六「カフィズマ」、「主我が主に謂へり云云」を誦文す、常例の如し。誦文の後に聯禱。八調經の致命者の二坐誦讚詞セダレン、第一及び第二。光榮、今も、本調の第一の生神女讚詞。幷に誦讀。其後「ネポロチニ」「道に玷なくして云云」を歌ふ。此の時司祭爐儀を行ふ。「ネポロチニ」の後に致命者の二坐誦讚詞セダレン、第三及び第四、幷に死者讚詞。光榮、今も、生神女讚詞。又誦讀。及び第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて云云」。次に規程カノン三篇を歌ふ、卽月課經ミネヤの聖人の、「イルモス」と共に六章、「イルモス」二次、讚詞トロパリ四章(蓋「スボタ」に於ては常に此の規程を先にす)、其後聖人の堂の四章、終に八調經オクトイホの致命者の四章。蓋死者の規程は金曜日の晩堂課に歌ふ。規程には歌頌、「主に歌はん」を附唱す。第三歌頌の後に月課經の聖人の坐誦讚詞セダレン。光榮、今も、生神女讚詞。第六歌頌の後に、若し之あらば、聖人の小讚詞コンダク及び同讚詞イコス。幷に祭日略解プロログを讀む。第九歌頌の後に光耀歌、先に若し之あらば、聖人の。次に光榮、八調經の。今も、生神女讚詞。若しなくば、八調經の光耀歌、卽「神として死者と生者とを司り云云」。光榮、今も、「生神女よ、我等は爾を以て誇り云云」。「凡そ呼吸ある者」に八調經の讚頌スティヒラを歌はずして挿句くづけに之を歌ふ。若し「凡そ呼吸ある者」に聖人の讚頌なくば、其時誦す、「主我等の神よ、光榮は爾に歸す云云」。若し「凡そ呼吸ある者」に聖人の讚頌あらば、其時「主我等の神よ、光榮は爾に歸す云云」を誦せずして、讚頌の後直に誦す、「光榮は爾我等に光を顯しし主に歸す」。「至高には光榮神に歸し云云」。其後聯禱、「我等の朝の禱を增して主に獻らん云云」。次に挿句くづけの讚頌スティヒラを歌ふ、卽八調經の「凡そ呼吸ある者」の三の致命者讚詞、第一、第二、第三を常例の附唱と共に歌ふ、其一「主よ、夙に爾の憐を以て我等に饜かしめよ云云」、其二「願はくは主吾が神の惠は我等に在らん云云」。一を措く。第四の死者讚詞はダマスキンの作。光榮、若之あらば、聖人の自調。若しなくば、光榮、今も、其生神女讚詞。「スボタ」の挿句くづけの讚頌スティヒラは之を用ゐず、此れ唯大齋の下記の「スボタ」の早課に歌ふ、卽第二第三第四の「スボタ」に、或は「アリルイヤ」を歌ふに遇ふ時なり。其時挿句くづけの讚頌スティヒラを其死者の附唱と共に歌ふ。次に「至上者よ、主を讚榮し云云」、及び聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞。光榮、今も、早課の生神女讚詞、聖人の讚詞の調に据る。聯禱、第一時課、發放詞、萬壽詞。之を終へて後前院に於て熱衷公禱リティヤを歌ふ、常例の如し。

聖體禮儀リトゥルギヤに眞福詞は八調經オクトイホの六章。若し聖體禮儀リトゥルギヤに聖人の歌頌あらば、其時聖人の第三歌頌四章、及び八調經の本調の四章。聖入の後に諸讚詞トロパリを誦すること次の如し、ハリストス或は生神女の堂ならば、先に堂の讚詞。次に本日の讚詞、「使徒、致命者、及び預言者云云」。其後順序の聖人の讚詞トロパリ、及び其小讚詞コンダク。若し讚詞及び小讚詞を有つ他の聖人あらば、之を誦せよ。若し「スボタ」に一の聖人にも讚詞或は小讚詞なくば、其時本日の讚詞の後に死者の爲の讚詞を誦す、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。若し聖人或いは聖女の堂ならば、「スボタ」に此の堂の讚詞を誦せず、蓋衆聖人は本日の讚詞の中に唱へられたり。光榮、小讚詞、「ハリストスよ、爾が諸僕の靈を諸聖人と偕に云云」。今も、「主よ、全世界は捧神なる致命者を云云」。
若し聖人或は聖女の堂ならば、其時聖入の後に諸讚詞を誦すること次の如し、先に本日の、「使徒、致命者、及び預言者云云」、次に順序の聖人の讚詞トロパリ及び小讚詞コンダク。若し之なくば、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。光榮、「ハリストスよ、爾の諸僕の靈を諸聖人と偕に云云」。今も、「主よ、全世界は捧神なる致命者を云云」。ハリストス或は生神女の堂ならば、祭前期及び祭後期の外、同じく終に堂の小讚詞にあらずして、此の本日の小讚詞、今も、「主よ、全世界云云」を誦す。蓋「スボタ」に於てはハリストス及び生神女の堂の小讚詞を用ゐず、唯若し大聖人に遇はば、其時、今も、生神女の堂の小讚詞。生神女の堂の小讚詞あらずば、「ハリスティアニン等の辱を得ざる轉達云云」を誦す。提綱ポロキメン、使徒、アリルイヤ、福音經、及び領聖詞は先に聖人の、次に本日の、蓋使徒及び福音經は主の祭日の外、常に聖人のを先にす。「スボタ」に「主は神なり」の歌はるる時、常に斯の奉事を行ふ。若し「スボタ」に主宰の祭日に遇はば、其時必祭日の全奉事を歌ふ。

横線 - 『八調経』第五調

 「アリルイヤ」を歌う時

「スボタ」に「アリルイヤ」を歌ふ時の奉事
金曜日の晩課に第十八「カフィズマ」を誦文す。次に「主よ、爾に籲ぶ」に月課經ミネヤの聖人の讚頌スティヒラ三章、八調經オクトイホの致命者讚詞三、卽第二第三第四なり、第一を措く。光榮、今も、本調の主日の生神女讚詞。「穩なる光」。其後提綱ポロキメン。次に「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩云云」。挿句くづけに第一の致命者讚詞、及び死者讚詞に、ダマスクのイオアン師の作。光榮、今も、生神女讚詞。次に「主宰よ、今爾の言に循ひて云云」、及び聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞、第二調、「使徒、致命者、及び預言者云云」。光榮、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。今も、生神女讚詞、「言い難き光の聖なる母よ云云」。聯禱及び發放詞。幷に常例の如く前院に出づ。

早課には、常例の始及び六聖詠の後に、「主は神なり」に代へて、第二調に据りて「アリルイヤ」を歌ふこと三次。次に第一句、「主よ、爾が選び近づけし者は福なり」。第二句、「彼等の記憶は世世に在らん」。第三句、「彼等の靈は福に居らん」。讚詞トロパリ、第二調、「使徒、致命者、及び預言者云云」、二次。光榮、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。今も、生神女讚詞、「言い難き光の聖なる母よ云云」。次に第十六「カフィズマ」。常例の聯禱、其後八調經の致命者の三坐誦讚詞セダレンの中第二及び第三を誦す、第一を措く。次に句、「神よ、爾は爾の聖所に於て嚴なり」。幷に第四の致命者の坐誦讚詞を誦す。第一の生神女讚詞を措く。次に句、「主よ、爾が選び近づけし者は福なり」、幷に本調の死者の坐誦讚詞を誦す。光榮、今も、第二の生神女讚詞、幷に誦讀。其後直に「道に玷なくして云云」、附唱 「主よ、爾は崇め讚めらる云云」。と共に第二調に据りて歌ふ。「カフィズマ」を二段に分つ。第一段の後には光榮、今も、を誦せずして、次の句を歌ふ、「若し爾の律法我の慰とならざりしならば云云」、三次。幷に司祭(輔祭あらば輔祭)寢りし者の爲に聯禱を誦す、「我等復又云云」。詠隊、主憐めよ、一次。「又寢りし神の諸僕(某)の靈の安息の爲云云」。詠隊、主憐めよ、一次「主神が彼等の靈を云云」。詠隊、主憐めよ、一次。「彼等に神の憐と天國と云云」。詠隊、主賜へよ。輔祭、主に禱らん。司祭、「諸の靈神゜と諸の肉體との神云云」。詠隊、主憐めよ、四十次。高聲、「蓋爾は、ハリストス我等の神よ云云」。詠隊、「アミン」。次に第二段を歌ふ、「我爾に屬す、我を救ひ給へ云云」。附唱、「救世主よ、我を救ひ給へ」。終は、「願はくは我が靈生きて爾を讚榮せん云云」、三次。次に「主よ、爾は崇め讚めらる云云」。竝に安息の爲の讚詞を歌ふ、「聖人の群は生命の泉と云云」、其他。畢りて後に司祭或は輔祭上に記しし安息の爲の聯禱を誦して、寢りし者を記憶す。詠隊、主憐めよ、四十次を歌ひて、司祭が祝文、「諸の靈神゜と諸の肉體との神云云」を誦し畢るに至る。高聲の後に坐誦讚詞、第五調、「我が救世主よ、爾の諸僕を義人等と偕に云云」。光榮、今も、生神女讚詞、「童貞女より世界に輝き云云」。幷に誦讀。第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて云云」。次に規程カノン、先に月課經ミネヤの、「イルモス」と共に六章、次に本堂の四章、及び八調經の第一の規程四章。第三歌頌の後に常例の聯禱。小讚詞コンダク及び坐誦讚詞セダレンは月課經の。幷に誦讀。第六歌頌の後に小讚詞、第八調、「ハリストスよ、爾の諸僕の靈を諸聖人と偕に云云」、及び同讚詞イコス、幷に祭日略解プロログ。第九歌頌の後に八調經の光耀歌。「凡そ呼吸ある者」に致命者讚詞四章。光榮、死者讚詞。今も、生神女讚詞。挿句くづけに死者の讚頌スティヒラ、フェオファン師の作。光榮、今も、生神女讚詞。次に「至上者よ、主を讚榮し云云」、及び聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、第二調、「使徒、致命者、及び預言者云云」。光榮、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。今も、生神女讚詞、「言い難き光の聖なる母よ云云」。幷に聯禱。次に司祭、「永在の主ハリストス我等の神は云云」。詠隊、「神よ、我が今上皇帝云云」。第一時課、發放詞。時課には讚詞、「使徒、致命者、及び預言者云云」。光榮、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。今も、時課の生神女讚詞。「天に在す」の後に小讚詞、「ハリストスよ、爾が諸僕の靈を諸聖人と偕に云云」。幷に發放詞。

聖體禮儀リトゥルギヤに、眞福詞は八調經の六章。聖入の後に讚詞トロパリ、「使徒、致命者、及び預言者云云」。幷に「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。光榮、小讚詞、「ハリストスよ、爾が諸僕の靈を諸聖人と偕に云云」。今も、生神女讚詞、「生神女、聘女ならぬ聘女、信者の救よ云云」。提綱ポロキメン、第六調、「義人よ、主の爲に喜び樂しめ」。句、「不法を赦され、罪を蔽はれたる人は福なり」。安息の爲に提綱、「彼等の靈は福に居らん。使徒は「スボタ」の順序の誦讀、又安息の爲の。「アリルイヤ」、第八調、「義人は呼ぶに云云」。句、「主よ、爾が選び近づけし者は福なり云云」。福音經は「スボタ」の順序の誦讀、又安息の爲の。領聖詞は「義人よ、主の爲に喜べ云云」、又、安息の爲の、「主よ、爾が選び近づけし者は福なり云云」。

横線 - 『八調経』第五調

 死者祈祷礼儀

金曜日晩課の發放詞の後、司祭は祭袍フェロニを、輔祭は祭衣スティハリを衣、香爐及び乳香を執りて、前院に出づ、幇堂者ほうだうしや燭臺を持して前行す、衆彼等に隨ふ。前院には檯上に糖飯たうはんの置けるあり、司祭、我等の神は祝讚せらる云云と誦して、糖飯の四周に爐儀を行ふ。誦經第九十聖詠至上者の覆の下に居る者は云云を誦す。(若し晩課或は早課の後にあらずして、他の時に行はば、始は常例の如し、卽聖三祝文、「天に在す」の後に司祭高聲、「蓋國及び權能」、次に主憐めよ、十二次、光榮、今も、來れ、我等の王神に叩拜せん、三次、後第九十聖詠。)畢りて後光榮、今も、「アリルイヤ」三次、幷に死者の聯禱。

我われ等ら安あん和わにして主しゆに祈いのらん。

詠隊、主しゆ憐あはれめよ。

上うへより降くだる安あん和わと我われ等らが靈たましひの救すくひの爲ために主しゆに祈いのらん。

福ふくたる記き憶おくに於おいて移うつりし者ものの諸罪しよざいの赦ゆるしの爲ために主しゆに祈いのらん。

常つねに記き憶おくせらるる神かみの諸僕しよぼく(某)の安息あんそくと、平穩へいをんと、福ふくたる記き憶おくの爲ために主しゆに祈いのらん。

彼かれ等らに凡およそ自じ由いうと不ふ自じ由いうとの罪つみの赦ゆるさるるが爲ために主しゆに祈いのらん。

彼かれ等らが定罪ていざいせられずして光くわう榮えいの主しゆの畏おそるべき寶はう座ざの前まへに立たつが爲ために主しゆに祈いのらん。

哭なき哀かなしみてハリストスより慰藉なぐさめを受うくるを望のぞむ者ものの爲ために主しゆに祈いのらん。

彼かれ等らが凡およその病やまひと、悲かなしみと、歎息なげきより釋とかれて、神かみの顏かんばせの光ひかりの輝かゞやく處ところに入いれらるるが爲ために主しゆに禱いのらん。

主しゆ我わが神かみが彼かれ等らの靈たましひを光ひかる處ところ、茂しげき草くさ場ば、安息あんそくの處ところ、衆しゆう義ぎ人じんの居をる處ところに入いるるが爲ために主しゆに禱いのらん。

彼かれ等らがアウラアムと、イサアクと、イアコフとの懷ふところに算かぞへ置おかるるが爲ために主しゆに禱いのらん。

我われ等ら諸もろもろの憂愁うれひと、忿怒いかりと、危難あやふきとを免まぬかるるが爲ために主しゆに禱いのらん。

神かみよ、爾なんぢの恩おん寵ちようを以もつて我われ等らを佑たすけ救すくひ憐あはれみ護まもれよ。

彼かれ等ら及および我われ等ら衆しゆう人じんの爲ために神かみの憐あはれみと、天國てんこくと諸罪しよざいの赦ゆるしとを求もとめて、悉ことごとくの我われ等らの生命いのちを以もつてハリストス神かみに委ゐ託たくせん。

詠隊、主しゆ爾なんぢに。

司祭高聲、蓋けだし爾なんぢは、ハリストス我われ等らの神かみよ、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼく、常つねに記き憶おくせらるる斯この聖堂せいだうの建立者こんりふしや、我われ等らの諸しよ父ふ及および兄弟けいてい、此この處ところと諸方しよはうとに葬はうむられたる正敎せいけうのハリスティアニン等らの復ふく活くわつと、生命せいめいと、安息あんそくなり。我われ等ら光くわう榮えいを爾なんぢと、爾なんぢの無む原げんの父ちゝと、至し聖せい至し善ぜんにして生いのちを施ほどこす爾なんぢの神しん゜とに獻けんず、今いまも何時いつも世世よよに、「アミン」。

次ぎて「アリルイヤ」三次、第八調。句を誦すること次の如し。

第一句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。
第二句 彼かれ等らの記き憶おくは世世よよに在あらん。
第三句 彼かれ等らの靈たましひは福ふくに居をらん。

次に讚詞トロパリ、第八調。

惟一ゆゐいちの造成主ざうせいしゆ、深ふかき智慧ちゑと仁じん慈じとを以もつて萬ばん事じを治をさめ、衆しゆう人じんに益えきある事ことを賜たまふ主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ、蓋けだし彼かれ等らは爾なんぢ造物主ざうぶつしゆと造成主ざうせいしゆと我わが神かみに恃賴たのみを負おはせたればなり。二次。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ、聘女よめならぬ聘女よめ、信者しんじやの救すくひよ、我われ等らは爾なんぢを垣墻かきと港みなと、及および爾なんぢが生うみし神かみの前まへに嘉よく納いれらるる祈き禱者たうしやとして有たもつ。

其後第十七「カフィズマ」、「道に玷なくして」、附唱、主よ、爾の諸僕の靈を憶ひ給へ、第二調に依りて歌ふ。左列詠隊第二句を歌ふ。斯く兩詠隊更かはるがはる相續きて以下の句を歌ふ。「カフィズマ」を二段に分つ、第一段の後には光榮今もを誦せずして、直に次の句を誦す。

若もし爾なんぢの律法りつぱふ我われの慰なぐさめとならざりしならば、我われは我わが禍わざはひの中うちに亡ほろびしならん。我われ永ながく爾なんぢの命めいを忘わすれざらん、爾なんぢ此これを以もつて我われを生いかせばなり。三次。

次に司祭(輔祭あらば輔祭)先に寢りし者の爲に聯禱を誦す。

我われ等ら復また又また安あん和わにして主しゆに禱いのらん。

詠隊、主しゆ憐あはれめよ。

又また寢ねむりし神かみの諸僕しよぼく(某)の靈たましひの安息あんそくの爲ため、及および彼かれ等らに凡およそ自じ由いうと不ふ自じ由いうとの罪つみの赦ゆるされんが爲ために禱いのる。

詠隊、主しゆ憐あはれめよ。

主しゆ神かみが彼かれ等らの靈たましひを諸しよ義ぎ人じんの安息あんそくする所ところに入いれ給たまはんことを禱いのる。

詠隊、主しゆ憐あはれめよ。

彼かれ等らに神かみの憐あはれみと天國てんこくと諸罪しよざいの赦ゆるしとを賜たまはんことをハリストス我わが死しせざる王わう及および神かみに求もとむ。

詠隊、主しゆ賜たまへよ。

輔祭、主に禱らん。 詠隊、主憐めよ。四十次

司祭祝文默誦す。

諸もろもろの靈神れいしん゜と諸もろもろの肉體にくたいとの神かみ、死しを滅ほろぼし、惡あく魔まを虛むなしくし、爾なんぢの世せ界かいに生命いのちを賜たまひし主しゆよ、爾なんぢ親みづから寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼく(某)の靈たましひを光ひかる處ところ、茂しげき草くさ場ば、平安へいあんの處ところ、病やまひと悲かなしみと歎息なげきとの遠とほざかりし處ところに安息あんそくせしめ、善ぜんにして人ひとを愛あいする神かみなるに因よりて、彼かれ等らが或あるひは言ことば、或あるひは行おこなひ、或あるひは思おもひにて犯おかしし悉ことごとくの罪つみを赦ゆるし給たまへ。蓋けだし人ひと一ひとりも生いきて罪つみを行おこなはざる者ものなし、唯たゞ爾なんぢは罪つみなし、爾なんぢの義ぎは永遠えいゑんの義ぎ、爾なんぢの言ことばは眞實しんじつなり。

高聲、蓋けだし爾なんぢは、ハリストス我われ等らの神かみよ、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼく云云

兩詠隊第二段の諸句を更かはるがはる歌ふ、

附唱 主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。終りて後に句、願はくは我が靈生きて云云、終に至るまで歌ふこと三次。

次に安息の爲の諸讚詞トロパリ、第五調に依りて歌ふ。

附唱 主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

聖人せいじんの群むれは生命いのちの泉いづみと天堂てんだうの門もんとを得えたり、願ねがはくは我われも痛つう悔くわいを以もつて道みちを得えんことを。我われは亾ほろびし羊ひつじなり、救世主きうせいしゆよ、我われを呼よび返かへして救すくひ給たまへ。

主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

神かみの羔こひつじを傳つたへ、己おのれも羔こひつじの如ごとく屠ほふられて、老おいざる永久えいきうの生命いのちに移うつりし聖せいなる致ち命者めいしやよ、我われ等らに罪債おひめの赦ゆるしを賜たまはんことを切せつに祈いのり給たまへ。

主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

狹せまく苦くるしき路みちを過とほりて、生いける中うち十じふ字架じかを衡くびきの如ごとく負おひ、信しんじて我われに從したがひし衆しゆう人じんよ、來きたりて、爾なんぢ等らの爲ために備そなへたる褒はう賞しやうと天てんの榮えい冠くわんとを樂たのしめよ。

主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

我われは罪惡ざいあくの創きずを負おへども、爾なんぢが言いひ難がたき光くわう榮えいの像かたちなり。主宰しゆさいよ、爾なんぢの造つくりし者ものに憐あはれみを垂たれ、爾なんぢの惠めぐみにて淨きよめ、切せつに望のぞめる生しやう國こくを我われに與あたへて、我われを復また樂園らくゑんに住すむ者ものと爲なし給たまへ。

主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

昔むかし我われを無むより造つくりて、爾なんぢが神かみたる像かたちにて飾かざり、戒いましめを犯おかすに因よりて復また我われを我わが出いでし地ちに歸かへしし主しゆよ、我われを神かみの肖すがたに適かなふ位くらゐに升のぼせ、古いにしへの華麗うるはしきを以もつて我われを改あらため給たまへ。

主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

神かみよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを安やすんぜしめて、聖人せいじんの群むれと義ぎ人じんが日ひの如ごとく光ひかれる樂園らくゑんに入いれ給たまへ。爾なんぢの眠ねむりし諸僕しよぼくを安やすんぜしめて、其その悉ことごとくの過あやまちを思おもふ勿なかれ。

光榮、聖三者讚詞 一ひとつの神性しんせいの三みつの光ひかりを敬つゝしみ歌うたひて呼よぶ、無む原げんの父ちゝと、同どう無む原げんの子こと、聖神せいしんよ、爾なんぢは聖せいなり。我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢに勤つとむる者ものを照てらして、永遠えいゑんの火ひを免まぬかれしめ給たまへ。

今も、生神女讚詞 衆しゆう人じんの救すくひの爲ために身みにて神かみを生うみし潔いさぎよき者ものよ、慶よろこべ、人ひとの族やからは爾なんぢに因よりて救すくひを得えたり。潔いさぎよくして讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、願ねがはくは我われ等ら爾なんぢに因よりて樂園らくゑんを得えんことを。

次ぎて「アリルイヤ」三次。其後聯禱、司祭寢りし者を記憶す、上に「ネポロチニ」の中間に記ししが如し。若し「ネポロチニ」を歌はずば、其時「アリルイヤ」の後に讚詞トロパリ「惟一の造成主」、及び其生神女讚詞を歌ひて、直に「主よ、爾は崇め讚めらる」、幷に讚詞トロパリ「聖人の群は」、其他。後に司祭寢りし者を記憶す、上に示ししが如し。

高聲の後に死者の坐誦讚詞セダレン、第五調。

我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを義ぎ人じん等らと偕ともに安やすんぜしめて、錄しるしし如ごとく、之これを爾なんぢの庭にはに居をらしめ給たまへ。爾なんぢの仁じん慈じなるに因よりて、其その自じ由いうと自じ由いうならざる、其その凡およそ知しると知しらざる罪つみを恕ゆるし給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 童貞女どうていぢよより世せ界かいに輝かゞやき、彼かれを以もつて光ひかりの諸しよ子しを顯あらはししハリストス神かみよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

次ぎて第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて」。
其後八調經の中にある本調の死者の規程カノン、四句を立つ。第三歌頌の後にイルモス及び聯禱、司祭は寢りし者を記憶す、上にネポロチニの中間に記ししが如し。高聲、「蓋爾は、ハリストス我等の神よ」。

次ぎて坐誦讚詞セダレン、第六調。

誠まことに物もの皆みな虛むなし、生命いのちは影かげなり、夢ゆめなり、凡およそ地ちに生うまれし者ものは徒いたづらに忙いそがはし、聖書せいしよに云いひしが如ごとく、我われ等ら全ぜん地ちを獲うるも遂つひに墓はかに入いらん、彼處かしこには諸しよ王わうと貧まづしき者ものと共ともに在あり、故ゆゑにハリストス神かみよ、世よを逝さりし爾なんぢの諸僕しよぼくを安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞

至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我わが生いける中うち我われを棄すつる勿なかれ、我われを人ひとの轉達てんたつに委ゆだぬる勿なかれ、親みづから我われを護まもりて救すくひ給たまへ。

第六歌頌の後にイルモス及び聯禱、司祭寢りし者を記憶す、前に示ししが如し。高聲、「蓋爾は、ハリストス我等の神よ」。

次ぎて小讚詞コンダク、第八調。

ハリストスよ、爾なんぢが諸僕しよぼくの靈たましひを諸聖人しよせいじんと偕ともに、疾やまひも悲かなしみも歎なげきもなくして、終をはりなき生命いのちのある處ところに安やすんぜしめ給たまへ。

同讚詞イコス 人ひとを造つくりし主しゆよ、爾なんぢは獨ひとり死しせざる者ものなり、我われ等ら地ちの者ものは、土つちより造つくられて、復また土つちに逝ゆかん、爾なんぢ我われを造つくりし主しゆの命めいじて我われに言いひしが如ごとし、爾なんぢ土つちにして土つちに歸かへらんと。我われ等ら人人ひとびと皆みな彼處かしこに往ゆき、墓はかの上うへに哭なきて歌うたひて云いはん、アリルイヤ、アリルイヤ、アリルイヤ。

第九歌頌の後に司祭誦す、生しやう神女しんぢよ及および光ひかりの母はゝを歌うたを以もつて讚ほめ揚あげん。

詠隊、主しゆよ、諸神しよしん゜と義ぎ人じん等らの靈たましひとは爾なんぢを崇あがめ讚ほめん。幷に第九歌頌のイルモスを歌ふ。

次に聖三祝文、「天に在す」の後に次の讚詞トロパリを歌ふ、第四調。

人ひとを愛あいする救世主きうせいしゆよ、死しせし義ぎ人じん等らの靈たましひと偕ともに爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめて、彼かれ等らを爾なんぢに在ある福樂ふくらくの生命いのちに護まもり給たまへ。

讚詞トロパリ、同調。

主しゆよ、爾なんぢの諸聖人しよせいじんの安息あんそくする處ところに爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮 爾なんぢは地ぢ獄ごくに降くだりて繫つながれし者ものの鎖くさりを釋ときたる神かみなり、親みづから爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひをも安やすんぜしめ給たまへ。

今も、生神女讚詞 獨ひとり潔いさぎよく玷きずなき童貞女どうていぢよ、種たねなくして神かみを生うみし者ものよ、彼かれ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

次に司祭(輔祭あらば輔祭)聯禱を誦す。

神かみよ、爾なんぢの大おほいなる憐あはれみに因よりて我われ等らを憐あはれめよ、爾なんぢに禱いのる、聆きき納いれて憐あはれめよ。

詠隊、主しゆ憐あはれめよ。三次。

又また寢ねむりし神かみの諸僕しよぼく(某)の靈たましひの安息あんそくの爲ため、及および彼かれ等らに凡およそ自じ由いうと不ふ自じ由いうとの罪つみの赦ゆるされんが爲ために禱いのる。

詠隊、主しゆ憐あはれめよ。三次。

主しゆ神かみが彼かれ等らの靈たましひを諸しよ義ぎ人じんの安息あんそくする處ところに入いれ給たまはんことを禱いのる。

詠隊、主しゆ憐あはれめよ。三次。

彼かれ等らに神かみの憐あはれみと天國てんこくと諸罪しよざいの赦ゆるしとを賜たまはんことをハリストス我わが死しせざる王わう及および神かみに求もとむ。

詠隊、主しゆ賜たまへよ。

輔祭、主しゆに禱いのらん。

司祭祝文、「諸の靈神゜と諸の肉體との神」。斯の中に古世より死せし吾が諸父兄弟、此所と諸方とに葬られたる正敎のハリスティアニン等を記憶す。高聲、「蓋爾は、ハリストス我等の神よ」。

次ぎて司祭或は輔祭誦す、睿えい智ち。詠隊、「ヘルワィムより尊く」。
司祭、ハリストス神かみ我われ等らの恃たのみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。詠隊、光榮、今も、主憐めよ、三次、福を降せ。

司祭發放詞を誦す。

死しより復ふく活くわつせしハリストス我われ等らの眞まことの神かみは、其その至し淨じやうなる母はゝ、光くわう榮えいにして讚さん美びたる聖せい使徒しと、克肖こくせう捧神ほうしんなる吾わが諸神しよしん父ぷ及および諸聖人しよせいじんの祈き禱たうに因よりて、我われ等らに別わかれし其その諸僕しよぼくの靈たましひを諸しよ義ぎ人じんの住所すまひに入いれ、アウラアムの懷ふところに安やすんぜしめ、諸しよ義ぎ人じんの列れつに加くはへ、及および我われ等らを憐あはれみ給たまはん、善ぜんにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

發放詞の後に輔祭高聲にして誦す。

主しゆよ、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼく(某)に其その福ふくたる寢ねむりに永遠えいゑんの安息あんそくを與あたへて、彼かれ等らに永遠えいゑんの記き憶おくを爲なし給たまへ。

詠隊歌ふ、永遠えいゑんの記き憶おく。三次。

輔祭のなき處には詠隊歌ふ、寢ねむりし神かみの諸僕しよぼく(某)に永遠えいゑんの記き憶おく。

斯の祈禱禮儀は每金曜日に行ふべし、其時寢りし我が諸父兄弟の記憶の爲に糖飯を備ふ。

横線 - 『八調経』第五調

 多燭詞ある聖人に遇う時

スボタに多燭詞ポリエレイある聖人に遇ふ時の奉事の事
金曜日の晩課に、第一カフィズマ「惡人の謀に行かず云云」の第一倡和詞アンティフォンを歌ふ。「主よ、爾に籲ぶ」に聖人の讚頌スティヒラ六章。光榮、聖人の自調。今も、本調の第一の生神女讚詞。

若し徹夜禱ある大聖人にして聖務長が徹夜禱を行はんと欲せば、次の如し。

小晩課に聖人の讚頌スティヒラ四章を歌ふ。光榮、聖人の自調。今も、常例の生神女讚詞、聖人の調に据る。挿句くづけに聖人の讚頌。光榮、若し之あらば、聖人の。若しなくば、光榮、今も、生神女讚詞。聖三祝文の後に聖人の讚詞トロパリ。光榮、今も、生神女讚詞、本調に据る。小聯禱、主日の晩課に指定せしが如し、幷に發放詞。

大晩課には、「惡人の謀に行かず」の後に「主よ、爾に籲ぶ」に聖人の讚頌スティヒラ八章。光榮、聖人の。今も、本調の第一の生神女讚詞。若し祭前期或は祭後期ならば、「主よ、爾に籲ぶ」に祭日の讚頌スティヒラ三、及び聖人の五。光榮、聖人の。今も、本調の生神女讚詞。聖入。本日の提綱ポロキメン。聖人の喩言パリミヤ三篇。熱衷公禱リティヤに本堂の、及び聖人の讚頌。光榮、聖人の。今も、生神女讚詞、聖人或は祭日の調に据る。挿句くづけには聖人の讚頌。光榮、聖人の。今も、生神女讚詞、聖人或は祭日の調に据る。餅の祝福の時に聖人の讚詞、二次、及び「生神童貞女よ、慶べよ云云」一次。「願はくは主の名は崇め讚められて云云」を歌ふこと三次。第三十三聖詠、「我何の時にも主を讚め揚げん云云」、終は「唯主を尋ぬる者は何の幸福にも缺くるなし」。聖人の傳を讀む。

早課には、「主は神なり」に聖人の讚詞、二次。光榮、今も、本調の第一の生神女讚詞。若し祭前期或は祭後期ならば、祭日の讚詞、二次。光榮、聖人の。今も、祭日の。次に第十六「カフィズマ」。聯禱。聖人の坐誦讚詞セダレン、二次。光榮、今も、生神女讚詞。幷に誦讀。其後第十七「カフィズマ」、「道に玷なくして云云」。之を誦する時、司祭爐儀を行はずして、多燭詞ポリエレイの時に行ふ。次に聖人の坐誦讚詞セダレン、二次。光榮、今も、生神女讚詞。幷に誦讀。其後聖人の多燭詞、及び坐誦讚詞、二次。光榮、今も、生神女讚詞。幷に誦讀。品第詞ステペンナ、第四調の第一倡和詞アンティフォン。聖人の提綱ポロキメン。「凡そ呼吸ある者」。福音經。第五十聖詠。畢りて後聖人の讚頌スティヒラ。次に「神よ、爾の民を救ひ云云」。司祭高聲、「爾が獨生子の仁慈と慈憐云云」。詠隊、「アミン」。其後生神女の規程カノン、「イルモス」と共に六章を歌ふ、「イルモス」二次、讚詞トロパリ四章。若しハリストス或は生神女の堂、又若し祭前期或は祭後期ならば、同じく規程「イルモス」と共に六章を歌ひ、幷に聖人の八章を歌ふ。共頌カタワシヤは規定の如し。第三歌頌の後に祭前期或は祭日の小讚詞コンダク。次に聖人の坐誦讚詞セダレン、二次。光榮、今も、其生神女讚詞、或は祭日の。第六歌頌の後に聖人の小讚詞コンダク、及び同讚詞イコス。次に祭日略解プロログを讀む。第九歌頌の後に聖人の光耀歌、二次。光榮、今も、其生神女讚詞、或は祭日の。「凡そ呼吸ある者」に聖人の讚頌四章。若し祭後期ならば、「凡そ呼吸ある者」に六章、卽當日の挿句くづけの祭日の三、及び聖人の三なり。光榮、聖人の自調。今も、生神女讚詞、聖人の、或は祭日の調に据る。大詠頌。次に聖人の讚詞。光榮、今も、本調の主日の生神女讚詞、或は祭日の。聯禱、發放詞、及び第一時課。第一時課に聖人の讚詞トロパリ。若し祭前期或は祭後期ならば、祭日の讚詞。光榮、聖人の。今も、時課の生神女讚詞。「天に在す」の後に聖人の小讚詞コンダク。若し祭前期或は祭後期ならば、祭日の小讚詞を更かはるがはる誦す。最後の發放詞。

聖體禮儀リトゥルギヤには、眞福詞は聖人の、第三及び第六歌頌。若し祭後期ならば、祭日の順序の歌頌、及び聖人の第六歌頌。聖入の後にハリストスの、或は生神女の堂の讚詞、次に本日の聖人の。光榮、其小讚詞。今も、生神女の堂の。生神女の堂のあらざる所には、今も、「ハリスティアニン等の辱を得ざる轉達云云。」祭前期或は祭後期ならば、今も、祭前期の、或は祭日の小讚詞。若し主の祭の祭前期或は祭後期にして、堂がハリストスのならば、其時堂の讚詞及び小讚詞を誦せずして、祭前期或は祭後期の讚詞及び小讚詞を誦す。生神女の堂のは主の祭の祭前期或は祭後期に誦せず。聖人の提綱ポロキメン、使徒、アリルイヤ、福音經、及び領聖詞は徹夜禱の聖人の。若し多燭詞ポリエレイあらば、本日のをも加ふ。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第五調

金曜日(続き)

 金曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に聖致命者と成聖者と克肖者との讚頌スティヒラ。第五調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは己おのれの血ちの流ながれを以もつて甚はなはだしき不ふ虔けんの焰ほのほを滅けして、世せ界かいに衆しゆうの爲ために敬虔けいけんの光明くわうみやうを照てらせり。致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは虛名きよめいなる諸神しよしんと、其その惡臭あくしうの祭祀まつりと、宮みやとを盡ことごとく焚やきて、地ちに在ある者ものの爲ために最いと潔きよき光ひかりを輝かゞやかせり。我われ等ら之これに照てらされて、無む神しんの暗やみを脫のがれ、偶像ぐうざうの迷まよひを避さけて、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまふハリストスに伏拜ふくはいす。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

聖せいにせられし諸しよ牧ぼく師しよ、爾なんぢ等らは無む原げんの父ちゝ、同どう無む原げんの子こ、及および聖神せいしんの軍ぐん士しと爲なりて、不ふ虔けんなる異い端者たんしやの言ことばと網あみとを輙たやすく破やぶり、信者しんじやに敬虔けいけんの心こゝろを抱いだきて、三さん位ゐに於おいて惟一ゆゐいちなる神かみを尊たふとむを敎をしへて、聖せいなる敎けう會くわいを堅かため給たまへり。故ゆゑに爾なんぢ等ら讚さん美びせらる、蓋けだしハリストスの群ぐんを生命いのちを養やしなふ草くさ場ばに牧ぼくして、是これが爲ために種種しゆじゆの憂うれひと多た樣やうの患くわん難なんとを忍しのび給たまへり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

克肖者こくせうしやの會くわいは戰たゝかひて、肉體にくたいの諸慾しよよくを全まつたく蹂ふみにじり、勇いさましく惡あく鬼きの悉ことごとくの惡謀あくぼうに勝かち、恩おん寵ちようを以もつて智慧ちゑを照てらし、諸德しよとくを以もつて靈たましひを飾かざり、無む形けいの者ものの如ごとく度ど生せいして、天てん使等しらの對たい話わ者しやと爲なれり。今いまは彼かれ等らと偕ともに天てん上じやうの居處すまひに喜よろこびて樂たのしみ、ハリストスの前まへに立たちて、彼かれに我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことを祈いのる。

又 致命者の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

主しゆよ、爾なんぢの諸聖人しよせいじんは信しんの盾たてを具ぐ足そくし、十じふ字架じかの記號しるしにて己おのれを堅かため、勇いさましく己おのれを苦くるしみに付わたして、惡あく魔まの驕慢おごりと誘惑いざなひとを空むなしくせり。彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて、全能ぜんのうの神かみとして、世せ界かいに平安へいあん、我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを降くだし給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

復、上の讚頌スティヒラを誦す。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは凡およその地ち上じやうの事ことを意いとせずして、勇いさましく己おのれを苦くるしみに付わたし、望のぞみし福ふくを得えて、天てんの國くにを嗣つぐ者ものと爲なれり。仁愛じんあいなる神かみの前まへに勇いさみを有たもちて、世せ界かいの爲ために平安へいあん、我われ等らの靈たましひの爲ために大おほいなる憐あはれみを求もとめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 昔むかし紅くれなゐの海うみにて婚姻こんいんを知しらざる嫁よめの象かたち記しるされたり。彼處かしこにはモイセイ、水みづを分わかつ者もの、此處こゝにはガウリイル、奇き跡せきに務つとむる者ものなり。彼かの時ときイズライリは足あしを濡ぬらさずして深處ふかみを步あゆみ、今いま童貞女どうていぢよは種たねなくしてハリストスを生うめり。海うみはイズライリの涉わたりし後のち元もとのまま過とほられず、玷きずなき者ものはエムマヌイルを生うみし後のち元もとのまま玷きずなし。永遠えいゑんにして最いと永遠えいゑんなる者もの、人ひととなりて現あらはれし神かみよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。其後「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。

挿句くづけに讚頌スティヒラ、第五調。

聖せいなる致ち命者めいしやよ、我われ等らの爲ために祈いのり給たまへ、我われ等らが不ふ法はふより救すくはれん爲ためなり、爾なんぢ等らには我われ等らの爲ために祈いのる恩おん寵ちよう賜たまはりたればなり。

聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは靈たましひの愛あいを傾かたぶけてハリストスを愛あいし、彼かれを諱いまずして、種種しゆじゆの苦くるしみを忍しのび、殘ざん虐ぎやく者しやの驕傲けうがうを仆たふし、屈くつせず撓たわまざる信しんを守まもりて、天てんに移うつり給たまへり。故ゆゑに主しゆの前まへに勇敢いさみを有たもちて、我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

死者の讚頌スティヒラ 我われ預よ言者げんしやの、我われは土つちなり灰はひなりと呼よぶを憶おもひ、又また墓はかの中なかを窺うかゞひて、惟たゞ白骨はくこつのあるを見みて云いへり、然しからば孰たれか王わう、或あるひは兵卒へいそつ、或あるひは富とめる者もの、或あるひは貧まづしき者もの、或あるひは義ぎ人じん、或あるひは罪人ざいにんたる。祈いのる、主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを諸しよ義ぎ人じんと偕ともに安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢ人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて轉達てんたつして、我われ等らの靈たましひの爲ために多おほくの慈じ憐れんと多おほくの罪つみの潔淨きよめとを求もとめ給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び發放詞。

横線 - 『八調経』第五調

 金曜日の晩堂課

至聖なる生神女に祈る規程カノン、第五調。

第一歌頌

イルモス 强つよき手てにて戰たゝかひを滅ほろぼすハリストスは馬うまと騎者のりてとを紅くれなゐの海うみに落おとし、凱歌かちうたを歌うたふイズライリを救すくひ給たまへり。

童貞女どうていぢよよ、人類じんるゐの萬族ばんぞくは爾なんぢを讚ほめ揚あぐ、昔むかし爾なんぢの預よ言げんせしが如ごとし。女宰ぢよさいよ、我われ爾なんぢを歌うたふ者ものをも受うけて、我われを照てらして悟さとらせ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは眞まことの生命いのちを生うみて、死しの刺はりと世よの罪つみとを鈍にぶくせり。女宰ぢよさいよ、之これに因よりて我わが諸慾しよよくの銳するどき矢やを速すみやかに鈍にぶくし給たまへ。

光榮 爾なんぢは獨ひとり世せ界かいより童貞どうていの金繍きんしうに妝よそほはれたる者ものと現あらはれて、アダムの無花果樹いちじくの葉はの衣ころもを裂さきたり。祈いのる、今いま爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われに貞潔ていけつの衣ころもを衣きせ給たまへ。

今も 女宰ぢよさいよ、嘗かつて多おほくの女ぢよ子しは富とみと神聖しんせいなる光くわう榮えいとを獲えたれども、爾なんぢは竝ならびなく衆しゆうに超こえたり。祈いのる、今いま我われを天てん上じやうの神聖しんせいなる恩おん寵ちように富とまし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 己おのれの命めいにて虛むなしき處ところに地ちを固かため、保たもち難がたく重おもき者ものを懸かけしハリストス、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが誡いましめの動うごかざる石いしに爾なんぢの敎けう會くわいを堅かたく立たて給たまへ。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの胎内たいないより生うまれし悟さとり難がたき神かみの睿えい智ちの深ふかさ及および高たかさは爾なんぢの内うちに知しられたり、祈いのる、是これに由よりて我わが心こゝろの深處ふかみを蛇へびの念おもひより脫のがれしめ給たまへ。

嘗かつて言ことばを以もつて先さきに有あらざりし鳥とり及および諸しよ動物どうぶつを水みづより合成がふせいせしハリストスよ、爾なんぢは童貞女どうていぢよの潔いさぎよき血ちより爾なんぢの神聖しんせいなる身みの奇異きいなる衣ころもを作つくり給たまへり。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは獨ひとり人じん性せいの潔淨きよめと現あらはれたり、蓋けだし神聖しんせいなる火ひは爾なんぢを焚やかずして爾なんぢの内うちに入いりて、之これを潔きよめたり。祈いのる、我わが諸罪しよざいと諸慾しよよくとの汚けがれを潔きよめて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを照てらし給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、我われ爾なんぢを新あらたなる葡ぶ萄だうの酒さけの爵しやく、信者しんじやに赦罪しやざいの爲ために飮のましむる者ものなりと知しる者ものは祈いのる、神聖しんせいなる水みづの流ながれを我われの心こゝろに飮のませ給たまへ。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢが神妙しんめうの謙遜へりくだりを悟さとり、戰をのゝきて爾なんぢに呼よべり、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものを救すくはん爲ために來きたり給たまへり。

爾なんぢは耕たがへされぬ畝うね、播まかざる神聖しんせいなる穗ほを生しやうぜし者ものと現あらはれたり、此これを以もつて我われ飢ううる者ものを神聖しんせいなる恩おん賜しと恩おん寵ちようとに饜あかしめ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、我われ病やみて死しに瀕ひんし、靈たましひの諸慾しよよくの熱ねつを苦くるしめる者ものに爾なんぢの祈き禱たうの水みづを飮のませて、亟すみやかに起おこし給たまへ。

光榮 神かみの活いける邑まち、神しん゜靈れいの河かはの流ながれにて樂たのしましむる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうの柱はしらを以もつて吾わが靈たましひの奧おくを堅かため給たまへ。

今も 至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、我われ爾なんぢを眞まことの義ぎの雨あめを降ふらしし雲くもと知しる者ものは祈いのる、凡およそ我われを侵おかす敵てきより亟すみやかに我われ爾なんぢの僕ぼくを覆おほひ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを衣ころもの如ごとく衣きる者ものよ、我われ爾なんぢに朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我わが昧くらまされし靈たましひを照てらし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

無む慾よくの原因げんいんたる主しゆを生うみし女宰ぢよさい童貞女どうていぢよよ、我わが罪つみと諸慾しよよくとの激浪あらなみを全まつたく鎭しづめ給たまへ。

上うへより設まうけられたる機はたとしてハリストスの神聖しんせいなる美び服ふくを織おりし潔いさぎよき者ものよ、諸德しよとくの衣ころもを以もつて我わが裸ら體たいと爲なりし靈たましひに衣きせ給たまへ。

光榮 我われ等らの爲ために神聖しんせいなる潔淨きよめたる主しゆハリストスを生うみし潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われに諸罪しよざいの潔淨きよめを與あたへ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが罪つみの痛いたみと傷きずとを醫いやし、膿汁うみを潔きよめて爾なんぢの僕ぼくに力ちからを與あたへ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 主宰しゆさいハリストスよ、靈たましひを壞やぶる颶ぐ風ふうに荒あらさるる慾よくの海うみを鎭しづめて、我われを淪滅ほろびより援たすけ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

光くわう體たいを造つくりたる光ひかりを生うみし至いたりて光くわう明めいなる者ものよ、今いま我わが靈たましひを照てらして、諸慾しよよくの暗やみより脫のがれしめ給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、嘗かつてメㇽラの水みづを甘あまくせし爾なんぢの子こに、我われを諸慾しよよく諸罪しよざいの苦味にがみより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、諸慾しよよくの流ながれは吾わが靈たましひを擾みだす。祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて之これを涸からして、我わが惡あしき念おもひを斷たち給たまへ。

今も 至いたりて無む玷てんなる女宰ぢよさいよ、ハリストスは人人ひとびとを救すくはん爲ためにシオンよりするが如ごとく爾なんぢの腹はらより來きたり給たまへり、彼かれに因よりて、我われをも災禍わざはひ及および憂愁うれひより救すくひ給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第五調。

慾よくに耽ふける靈たましひよ、何なん爲すれぞ悶もだえて、爾なんぢを憐あはれむ爾なんぢの神かみを忘わすれたる、何なんぞ彼かれの戒いましめを犯おかし、智慧ちゑを昧くらまして放蕩はうたうの中うちに生いのちを送おくる。惡あくより離はなれて生しやう神女しんぢよに呼よべ、我わが失望しつばうせし靈たましひを憐あはれみ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 尊たふとまるる先せん祖ぞの主しゆは焰ほのほを滅けし、少者せうしやを凉すゞしくせり、彼かれ等ら心こゝろを合あはせて、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると歌うたへばなり。

至し淨じやうなる者ものよ、惡あく鬼きの群ぐんは爾なんぢの名なを呼よぶことに恐おそれて慄をのゝく。彼かれ等らより我われを脫のがれしめて救すくひ、凡およその害がいより覆おほひて守まもり給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの光くわう榮えいは言いひ難がたし、爾なんぢは光くわう榮えいの主しゆを生うみたればなり。祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを爾なんぢの子こ我わが神かみの光くわう榮えいに與あづからしめ給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、我われ爾なんぢの僕ぼくの禱いのりに耳みゝを傾かたぶけて、亟すみやかに我われを災禍わざはひ、憂愁うれひ及および諸もろもろの見みゆると見みえざるとの誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、我われ耻はづべき諸慾しよよくに全まつたく汚けがされたる者ものを爾なんぢの祈き禱たうの沃そゝぎを以もつて滌あらひて、淨きよめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりに在ありて爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆの前まへに全ぜん世せ界かいの詠隊えいたいと爲なりて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

無む結果けつくわなる諸慾しよよくの水みづは我わが靈たましひの腹はらを涸からして、果みを結むすばざる者ものと爲なせり。輕かろき雲くもよ、我われに神聖しんせいなる露つゆを降くだし給たまへ、我わが痛つう悔くわいの果みを生しやうぜん爲ためなり。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが諸慾しよよくの思おもひの浪なみと暴風あらしとを鎭しづめて、我われを無む慾よくの流ながれに向むかはしめ給たまへ、我わが熱切ねつせつに爾なんぢを萬世ばんせいに讚榮さんえいせん爲ためなり。

光榮 神しん靈れいの戸と及および閉とざしたる門もん、獨ひとり神かみのみ過とほりし者ものよ、我わが諸慾しよよくの戸とを閉とぢて封ふう印しるし、我わが爲ために冀望きばうの門もんを啓ひらき給たまへ。

今も 母はゝ童貞女どうていぢよ、獨ひとり全ぜん世せ界かいの罪つみを任になひし神かみの羔こひつじ及および言ことばを言いひ難がたく生うみし者ものよ、我われより諸罪しよざいの任にを卸おろし給たまへ。

第九歌頌

イルモス イサイヤ祝いはへよ、童貞女どうていぢよは孕はらみて、子こエムマヌイル、神かみ及および人ひとなる者ものを生うめり、其その名なは東ひがし。我われ等ら彼かれを崇あがめて、童貞女どうていぢよを讚ほめ揚あぐ。

我われ人ひととして吾わが靈たましひを多おほくの罪つみにて汚けがし、肉體にくたいの慾よくにて穢けがらはしくせし者ものは、今いま熱切ねつせつに爾なんぢに祈いのる、潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを凡およその惡あくより潔きよめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは慈じ憐れんの主しゆ、人ひとを愛あいする宏くわう恩おんなる神かみ、獨ひとり仁じん慈じにして恒忍ごうにんなる者ものを生うみ給たまへり。爾なんぢの祈き禱たうを以もつて彼かれの慈じ憐れんを我われに垂たれしめて、諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、我われ煩悶もだえの坐睡ゐねむりに圍かこまれ、逸樂いつらくの中うちに寢いぬる爾なんぢの僕ぼくを、今いま爾なんぢの母はゝたる眠ねむらざる祈き禱たうを以もつて起おこして、諸德しよとくを行おこなはしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、我われ祝しゆく讚さんして爾なんぢを祝しゆく讚さんし、熱切ねつせつに爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。祈いのる、爾なんぢを歌うたふ我われに祝しゆく福ふくし、諸もろもろの患くわん難なん及および苦く難なんより脫のがれしめて、爾なんぢの手てを以もつて惡敵あくてきに勝かたれぬ者ものとして守まもり給たまへ。

次ぎて「常に福にして」。叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び其他常例の如し、幷に發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第五調

土曜日(スボタ)

 「スボタ」の早課

第一の誦文の後に致命者の坐誦讚詞セダレン、第五調。

今日こんにち受難者じゆなんしやの記き憶おくは地ちに輝かゞやき、天てんにも光ひかる、天てん使しの會くわいは祝いはひ、人ひとの族やからは共ともに歡よろこぶ。故ゆゑに彼かれ等らは主しゆに我われ等らの靈たましひの憐あはれみを蒙かうむらんことを祈いのり給たまふ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

ハリストス神かみよ、爾なんぢは聖せい致ち命者めいしやの奇き跡せきを壞やぶられぬ垣墻かきとして我われ等らに賜たまへり。彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて諸敵しよてきの謀はかりごとを破やぶり、國くにの權柄けんぺいを堅かため給たまへ、爾なんぢ獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 通とほられぬ主しゆの門もんよ、慶よろこべ、爾なんぢに趨はしり附つく者ものの垣墻かきと帲幪おほひよ、慶よろこべ、穩おだやかなる湊みなとよ、婚姻こんいんを識しらずして、身みにて爾なんぢの造成主ざうせいしゆ及および神かみを生うみし者ものよ、慶よろこべ。爾なんぢの產さんを讚ほめ歌うたひて拜をがむ者ものの爲ために息やめずして禱いのり給たまへ。

第二の誦文の後に致命者の坐誦讚詞セダレン、第五調。

主しゆよ、爾なんぢの受難者じゆなんしやは爾なんぢの苦くるしみの杯さかづきを慕したひて、人生じんせいの榮華えいぐわを遺すてて、諸天しよてん使しの侶ともと爲なれり。ハリストス神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らの靈たましひに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

聖せい致ち命者めいしやの行おこなひを見みて天軍てんぐんは大おほいに驚おどろけり、如何いかにして死しに屬ぞくする肉體にくたいに在ありて、善よく戰たゝかひて、十じふ字架じかの力ちからを以もつて見みえずして無む形けいの敵てきに勝かちたる。今いま彼かれ等らは我われ等らの靈たましひの憐あはれみを蒙かうむらんことを主しゆに祈いのり給たまふ。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり、彼かれ等らの記き憶おくは世世よよに在あらん。

次に死者の坐誦讚詞セダレン。

我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを諸しよ義ぎ人じんと偕ともに安やすんぜしめて、錄しるしし如ごとく、彼かれ等らを爾なんぢの庭にはに居をらしめ給たまへ、爾なんぢの仁じん慈じなるに因よりて、其その凡およそ自じ由いうと自じ由いうならざる、凡およそ知しると知しらざる諸罪しよざいを恕ゆるし給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 童貞女どうていぢよより世せ界かいに輝かゞやき、彼かれを以もつて光ひかりの諸しよ子しを顯あらはししハリストス神かみよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

聖致命者、成聖者、克肖者、及び死者の規程カノン。其冠詞は、ハリストスよ、爾の諸僕に斯の歌頌を捧ぐ。イオシフの作。第五調。

第一歌頌

イルモス 主しゆよ、日ひが未いまだ嘗かつて照てらさず、又また鑒かんがみざる地ち、天てんの面おもてが未いまだ嘗かつて露あらはに見みざる淵ふちを、イズライリは足あしを濡ぬらさずして濟わたり、爾なんぢは彼かれを讚さん美び凱旋がいせんの歌うたを奉たてまつる者ものとして、爾なんぢの聖せいなる山やまに入いれ給たまへり。

致命者讚詞 勇敢ゆうかんなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは體からだを殘酷ざんこくなる審判者しんぱんしやに付わたし、堪たへ難がたき苦くるしみを忍しのびて、上うへより尊そん貴きを獲えんことを望のぞめり。ハリストス爾なんぢ等らを永遠えいゑんの居處すまひに入いれしに、爾なんぢ等らは喜よろこびて凱歌かちうたを歌うたふ。

成聖者讚詞 光くわう榮えいなる克肖者こくせうしや、義ぎ者しや、及および成聖者せいせいしやは神かみの命めいを行おこなひて、善よく人人ひとびとを牧ぼくして、睿えい智ちの水みづに導みちびけり。今いまは宜よろしきに合かなひて甘樂かんらくの流ながれを受うけて、恩おん寵ちようを以もつて醫治いやしの河かはを流ながし給たまふ。

主しゆよ、我われを生命いのちの港みなとに向むかはしめ給たまへ、至し榮えいなる預よ言者げんしや、睿えい智ちなる成聖者せいせいしや、及および雄雄ををしき智慧ちゑを抱いだきて、爾なんぢ地ち上じやうに現あらはれたる主しゆの神聖しんせいなる恩おん寵ちように由よりて、苦く難なんと修齋しゆさいとを以もつて敵てきに勝かちたる聖せいなる女をんな等たちの祈き禱たうに因よりてなり。

光榮、死者讚詞 我われ等らは爾なんぢ寬くわん容ようなる神かみに祈いのる、ハリストスよ、爾なんぢの諸僕しよぼく、人生じんせいの紛擾ふんぜうより爾なんぢに移うつしし者ものの諸罪しよざいを顧かへりみずして、彼かれ等らをアウラアムの懷ふところに安やすんぜしめて、彼かれ等らに永遠えいゑんの光ひかりを樂たのしましめ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じなればなり。

今も 獨ひとり讚さん美びたる神かみの聘女よめよ、我われ等らは爾なんぢ歡喜よろこびを生うみし者ものに呼よぶ、慶よろこべ。我われ等ら衆しゆうの智慧ちゑと靈たましひとを照てらし、衆しゆうを睿えい智ちの途みちに向むかはしめて、衆しゆうに諸罪しよざいの潔淨きよめを賜たまはんことを爾なんぢの子こ及および神かみに祈いのり給たまへ。

又死者の規程カノン、月課經の規程なき時に序を逐ひて之を歌ふ、其冠詞は、死者の爲にフェオファンの第五の規程。第五調。

第一歌頌

イルモス 我われ等らは、民たみに足あしを濡ぬらさずして海うみを渡わたらしめ、ファラオンを其その全軍ぜんぐんと偕ともに溺おぼれしめし救世主きうせいしゆ神かみ、獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

附唱 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

ハリストスの受難者じゆなんしやは神かみを愛あいする愛あいを以もつて殘虐者くるしめびとの驕おごりに勝かてり。今いまは信しんを以もつて移うつされし者ものの爲ために慈じ憐れんなる赦罪しやざいと安息あんそくとを求もとむ。

附唱 主しゆよ、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。

ハリストス主宰しゆさいよ、移うつされし者ものを聖者せいしやの居處すまひ、爾なんぢの庭にはに入いれ給たまへ、爾なんぢは彼かれ等らを贖あがなはん爲ために爾なんぢの最いと尊たふとき血ちを流ながしたればなり。

光榮 父ちゝの全まつたき像かたちなる神かみの睿えい智ち、宏くわう恩おんの主しゆよ、受うけし者ものを親みづから安やすんぜしめて、彼かれ等らに永在えいざいの福樂ふくらくを與あたへ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために身みを取とりて、死しの力ちからを破やぶりし神かみの言ことばを容いるる至いたりて光くわう明めいなる幕まく、金こがねの匱ひつと顯あらはれたり。

第三歌頌

イルモス 主しゆよ、度ど生せいの浪なみに動うごかさるる吾わが心こゝろを堅かためて、神かみとして之これを穩おだやかなる湊みなとに向むかはしめ給たまへ。

致ち命者めいしや、至いたりて讚さん美びたる軍ぐん士しよ、爾なんぢ等らは惜をしまずして體からだを杖つゑにて擊うたれ、劍つるぎにて斬きらるるに任まかせたり、永遠えいゑんの華くわ美びを得えんとする望のぞみに堅かためられたればなり。

成聖者せいせいしやよ、爾なんぢ等らは職しよく位ゐを輝かゞやかし、諸德しよとくの規き範はんとなりて、ハリストスの群ぐんを生命せいめいの草くさ場ばに牧ぼくし給たまへり。

克肖者こくせうしやは節制せつせいを以もつて身みを殺ころして、神聖しんせいなる生命いのちに與あづかる者ものと爲なれり。ハリストスよ、彼かれ等らの聖せいなる祈き禱たうに由よりて我われ等らを苦く難なんより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 人ひとを愛あいする主しゆよ、寢ねむりし者ものに彼處かしこの安息あんそくを與あたへて、其その地ち上じやうに行おこなひし罪債おひめを赦ゆるし給たまへ、爾なんぢ仁じん慈じなればなり。

今も 童貞女どうていぢよ母はゝよ、女をんなの會くわいは爾なんぢ女をんなの中うちに祝しゆく福ふくせられし者ものを見みて、苦くるしみを受うけて、爾なんぢの子こに攜たづさへられたり。

又

イルモス 神かみ救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの力ちからを以もつて我われ等らを堅かため、正たゞしく爾なんぢを讚ほめ揚あぐる爾なんぢの敎けう會くわいの角つのを高たかくし給たまへ。

受難者じゆなんしやは勇いさましく戰たゝかひて、殘虐者くるしめびとの强きやう暴ばうに敵てきして立たてり、今いまは寢ねむりし者ものの爲ためにハリストスに祈いのる。

至し仁じんなる主しゆよ、爾なんぢの法はふに養やしなはれて移うつりし者ものを爾なんぢの光くわう明めいなる居處すまひに入いれて、安やすんぜしめ給たまへ。

光榮 獨ひとり仁じん慈じなる神かみよ、選えらびし者ものを聖者せいしやの光ひかりに與あづからしめて、其その諸罪しよざいを恕ゆるし給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、我われ等らは爾なんぢの產さんを歌うたふ、之これに因よりて初はじめの定罪ていざい及および詛のろひより救すくはれて、死しより釋とかれたればなり。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、獨ひとり人ひとを愛あいする者ものよ、我われ爾なんぢの攝せつ理りを悟さとりて爾なんぢを讚榮さんえいせり。

主しゆよ、受難者じゆなんしやは爾なんぢの力ちからを以もつて敵てきの力ちからに勝かちて、信者しんじやの爲ために權けん力りよく及および大おほいなる保固かためと爲なれり。

克肖者こくせうしやは皆みな喜よろこびて樂たのしみ、神聖しんせいなる司し祭さい等らは衣ころもの如ごとく義ぎを衣きる。

我われ等ら皆みな神かみの言ことばを言いひし神かみの預よ言者げんしやを歌うたひ、善よく其その行程ゆくみちを終をへし女をんなの會くわいを尊たふとまん。

光榮 主宰しゆさいよ、現在げんざいの生命いのちの紛擾ふんぜう及および颶ぐ風ふうより移うつしし者ものを爾なんぢの國くにの港みなとに導みちびきて、安やすんぜしめ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、年としに由よらざる者ものは今いま爾なんぢに依よりて年としに屬ぞくする者ものと爲なれり、彼かれに我わが靈たましひの多た年ねんの罪過ざいくわを滅ほろぼさんことを祈いのり給たまへ。

又

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢが墓はかより復ふく活くわつするを聞ききて、爾なんぢの勝かたれぬ力ちからを讚榮さんえいせり。

ハリストスよ、致ち命者めいしやは敬虔けいけんに爾なんぢ父ちゝと同どう永在えいざいなる主しゆを承うけ認とめて殺ころされたり。今いま彼かれ等ら爾なんぢに呼よぶ、受うけし爾なんぢの諸僕しよぼくを救すくひ給たまへ。

死し者しやの中うちに獨ひとり自じ由いうなる死し者しやにして、衆しゆう死し者しやに永遠えいゑんの生命いのちを賜たまひしハリストスよ、今いま移うつされし爾なんぢの諸僕しよぼくに安息あんそくを與あたへ給たまへ。

光榮 迷まよへる者ものを救すくはん爲ために來きたりしハリストスよ、信しんに於おいて移うつしし者ものを恩おん寵ちようを以もつて義ぎと爲なして、樂園らくゑんに入いるを得えしめ給たまへ。

今も 少女せうぢよよ、至し上じやう者しやの能ちからは爾なんぢを蔭おほひて、爾なんぢの内うちに生命せいめいの樂園らくゑんを爲つくれり、其中そのなかに生命いのちの樹きとして中ちゆう保はう者しや及および主しゆあるなり。

第五歌頌

イルモス 無む形けいの日ひたる主しゆよ、夜や中ちゆうに諸慾しよよくの黑暗くらやみと戰たゝかふ我わが堪たへざる靈たましひに慈じ憐れんを垂たれて、我われの衷うちに白日はくじつの光くわう線せんを耀かゞやかし給たまへ、光ひかりの中うちに夜よの明あけん爲ためなり。

致ち命者めいしやの骨ほねは病やむ者ものに醫治いやしを流ながす、惡あくに殘そこなはれずして、我われ等らの殘損そこなひを新あらたにすればなり。神かみの敵てきの骨ほねは皆みな塵ちりの如ごとく散ちらされたり。

宏くわう恩おんなる主しゆよ、成聖者せいせいしやは爾なんぢの法はふを守まもりて、人人ひとびとを牧ぼくして、將しやう來らいの生命いのちに導みちびき、克肖者こくせうしやは完くわん全ぜんなる智慧ちゑを以もつて諸慾しよよくの苦虐くるしめを殺ころせり。

諸しよ預よ言者げんしや、彼かれ等らと偕ともに衆しゆう義ぎ人じんは熱信ねつしんを以もつて尊たふとまるべし、克肖こくせうにして生いのちを度わたり、地ち上じやうに苦く難なんを以もつて輝かゞやきし神聖しんせいなる女をんな等たちは、ハリストスの婢ひとして、讚ほめらるべし。

光榮、死者讚詞 我われ等ら地ち上じやうの者ものの爲ために身みを取とりしハリストスよ、至し大だいなる仁じん慈じに因よりて、地ちより取とりし爾なんぢの信しんなる諸僕しよぼくの罪過ざいくわを顧かへりみずして、彼かれ等らを天てんの居處すまひに入いれ給たまへ。

今も、生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢに藉よりて神かみは人ひとと爲なりて、地ちに在ある者ものに現あらはれたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを歌うたひて呼よぶ、慶よろこべよ、豐稔ほうねんの地ち、凡およその生いける者ものを養やしなふ奧密あうみつの穗ほを生しやうぜし者ものや。

又

イルモス 主しゆよ、我われ等ら夙つとに興おきて爾なんぢに籲よぶ、我われ等らを救すくひ給たまへ、爾なんぢは我われ等らの神かみなればなり、爾なんぢの外ほか他たの神かみを知しらず。

主しゆよ、致ち命者めいしやの禱いのりを受うけて、爾なんぢが移うつしし靈たましひを爾なんぢの選えらびたる者ものと偕ともに納いれ給たまへ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢを信しんずる者ものは死しを見みざらんと爾なんぢは預よ言げんせり、故ゆゑに寢ねむりし者ものを安やすんぜしめ給たまへ。

光榮 主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくに爾なんぢの家いへの華くわ美びと甘樂かんらくとに與あづかるを得えしめ給たまへ。

今も 父ちゝと同どう永在えいざいなる言ことばは童貞女どうていぢよより身みを取とりて、死しを以もつて死しを殺ころし給たまへり。

第六歌頌

イルモス 主しゆよ、預よ言者げんしやを猛獸まうじうより脫のがしし如ごとく、祈いのる、我われをも制せいし難がたき諸慾しよよくの深處ふかみより升のぼせ給たまへ、我わが復また爾なんぢの聖せいなる殿でんを觀みん爲ためなり。

神聖しんせいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは體からだを殘虐者くるしめびとの手てに傷きずの爲ために付わたして、靈たましひにて樂たのしめり、實じつに永在えいざいの喜よろこびと神聖しんせいなる報むくいとを見みたればなり。

ハリストスよ、爾なんぢは睿えい智ちなる成聖者せいせいしや及および克肖者こくせうしやの爲ために光くわう榮えいと爲なれり。彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢが己おのれの血ちを以もつて獲えたる爾なんぢの人人ひとびとに慈じ憐れんを垂たれ給たまへ、爾なんぢ人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

主しゆよ、諸しよ預よ言者げんしやは智慧ちゑにて爾なんぢより照てらされて、遠とほきを近ちかきが如ごとく明あきらかに顯あらはす、女をんな等たちは爾なんぢの力ちからに由よりて、苦く難なんと修齋しゆさいとを以もつて敵てきの權けん力りよくを破やぶれり。

光榮 仁じん慈じなる主しゆよ、我われ等らより移うつされし爾なんぢの信しんなる諸僕しよぼくを選えらばれたる者ものの會くわいに加くはへて、安やすんぜしめて、爾なんぢの仁じん慈じに因よりて其その悉ことごとくの罪つみを免ゆるし給たまへ。

生神女讚詞 初はじめにエワを造つくりし主しゆよ、爾なんぢは童貞女どうていぢよの胎内たいないに入いり、萬ばん衆しゆうの主宰しゆさいにして、僕ぼくの形かたちを衣きて、我われ等らの更新あらためを成なし給たまふ。

又

イルモス 主しゆよ、淵ふちは我われを圍かこみ、鯨くぢらは我われの爲ために柩ひつぎとなれり、惟たゞ我われ爾なんぢ人ひとを愛あいする者ものに籲よびしに、爾なんぢの右みぎの手ては我われを拯すくひ給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢの致ち命者めいしやの軍ぐんは天てん上じやうの軍ぐんに效ならひて、爾なんぢに祈いのる、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが移うつしし者ものに樂たのしみを與あたへ給たまへ。

ハリストスよ、受うけし所ところの爾なんぢの諸僕しよぼくを、爾なんぢ人ひとを愛あいする主しゆなるに因よりて、凉すゞしき處ところ、諸聖者しよせいしやの明あかるき處ところ、安息あんそくの處ところに入いれ給たまへ。

光榮 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを潔きよめて、彼かれ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへて、不ふ朽きうの生命いのちと福樂ふくらくの嗣し業げふとを獲えしめ給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの種たねなき胎孕はらみの奇き跡せきは誰たれか能よく言ことばを以もつて言いひ出いださん、蓋けだし爾なんぢは慈じ憐れんに因よりて我われ等らに來きたりし神かみを生うみ給たまへり。

第七歌頌

イルモス 少者せうしやの禱いのりは火ひを滅けす者ものなり、露つゆを出いだす爐ゐろりは奇き蹟せきを傳つたふる者ものなり、我わが先せん祖ぞの神かみを讚ほめ歌うたふ者ものを焦こがさず焚やかず。

光くわう榮えいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは烈はげしき苦くるしみの火ひに焚やかれて、主しゆに於おける更さらに熱あつき愛あいを顯あらはして、敬虔けいけんなる念おもひを以もつて己おのれを凉すゞしくし給たまへり。

睿えい智ちなる者ものよ、爾なんぢ等らは聖神せいしんの睿えい智ちに飾かざられて、諸德しよとくに輝かゞやきて生命いのちを度わたり、聖せい務むを行おこなひて福音ふくいんの恩おん寵ちようを施ほどこし給たまへり。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢ等らを神かみの奉ほう事じ者しやとして崇あがめ讚ほむ。

克肖者こくせうしやよ、爾なんぢ等らは多おほくの疾しつ苦くを以もつて身みを殺ころして、將しやう來らいの生命いのちを獲えたり、今いまは諸慾しよよくの攻擊こうげきに殺ころさるる我われ等らに之これを獲えしめんことを祈いのり給たまふ。

神かみの預よ言者げんしやの福ふくたる會くわい、又また修齋しゆさいと苦く難なんとを以もつて戰たゝかひて敵てきを斃たふしし女をんなの大數たいすうは熱心ねつしんを以もつて讚ほめらるべし。

光榮 死し者しやの中うちに入いりし萬有ばんいうの生命いのちたる仁じん慈じなる言ことばよ、今いま人生じんせいの騷擾さうぜうに離はなれたる者ものを爾なんぢの神聖しんせいなる港みなとに向むかはしめて、彼かれ等らの諸罪しよざいを恕ゆるし給たまへ。

今も 女宰ぢよさいよ、我われ等ら正たゞしき智ち識しきを以もつて爾なんぢを生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものは、願ねがはくは爾なんぢの轉達てんたつに因よりて、我われ等らと戰たゝかふ見みえざる敵てき及および永遠えいゑんの火ひと幽闇くらやみより救すくはれん。

又

イルモス 火ひの爐ゐろりの中うちに歌うたへる少者せうしやを救すくひ給たまひし我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの受難者じゆなんしやの禱いのりに因よりて、今いま移うつされし者ものに近ちかづき難がたき光ひかりを樂たのしむを得えしめ給たまへ。

宏くわう恩おんなるハリストスよ、信しんに於おいて終をはりし者ものを冢ちよう子しの敎けう會くわいに加くはへ給たまへ。

光榮 救世主きうせいしゆよ、爾なんぢに移うつされし爾なんぢの諸僕しよぼくを不ふ朽きうの衣ころもを以もつて飾かざりて、安やすんぜしめ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつ無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは種たねなく生命いのちを孕はらみて、死しの流ながれを斷たち給たまへり。

第八歌頌

イルモス 萬有ばんいうの王わう、造成主ざうせいしゆを、天てん使しの軍ぐん、人類じんるゐの會くわい及および司し祭さい等らは歌うたひ、「レワィト」等らは尊たふとみ、人人ひとびとは萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

言ことばの操舵かぢとりにて苦くるしみの海うみを濟わたりし受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは血ちの流ながれの中うちに誘惑者いうわくしやの軍ぐんを悉ことごとく沈しづめて、世世よよに活いき給たまふ。

睿えい智ちなる聖せい務む者しやよ、爾なんぢ等らは聖せい職しよくを盡つくして、爾なんぢ等らに委ゆだねられたる牧群ぼくぐんを正敎せいけうの水みづにて養やしなへり、故ゆゑに實じつに美うるはしき流ながれの甘かん味みを世世よよに樂たのしむ。

克肖者こくせうしやよ、爾なんぢ等らは光ひかりの事わざを行おこなひて、信者しんじやの爲ために光くわう體たいと現あらはれて、神聖しんせいなる光明くわうみやうに移うつりたり。幽闇くらやみより我われ等らを脫のがれしめんことを主宰しゆさいに祈いのり給たまへ。

苦くるしみに因よりて凡およその尊そん貴きの充じゆう滿まんなるを受うけし女をんなの會くわいよ、樂たのしめ、諸しよ預よ言者げんしや及およびハリストスの悅よろこびを獲えたる諸しよ義ぎ人じんの隊たいも世世よよに喜よろこべ。

光榮 主宰しゆさいよ、今いま生命いのちより移うつされし爾なんぢの諸僕しよぼくに妨さまたげなく自おのづから旋まはる劍つるぎを過すぐるを許ゆるして、彼かれ等らを樂園らくゑんの内うちに入いれ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり慈じ憐れんの主しゆなればなり。

生神女讚詞 我われ等ら恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよマリヤを樂園らくゑんに入いる門もん、神かみに升のぼす梯かけはし、救すくひを求もとむる者ものの迷まよはざる嚮きやう導だう師しとして讚ほめ歌うたはん。

又

イルモス 世世よよの前さきに父ちゝより生うまれし子こ及および神かみ、末すゑの時ときに童貞女どうていぢよ母はゝより身みを取とりし者ものを、司し祭さい等らは歌うたへ、人人ひとびとは萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

聖せいなる致ち命者めいしやの功勞こうらうを受うけて、彼かれ等らに因よりて爾なんぢを信しんずる信しんに於おいて寢ねむりし者ものを安やすんぜしむる救世主きうせいしゆよ、我われ等ら爾なんぢを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

救世主きうせいしゆよ、我われ等らより移うつされし者ものを、爾なんぢが慈じ憐れんなるに因よりて、爾なんぢの天てん上じやうの光くわう榮えいの光ひかりを以もつて耀かゞやかして、爾なんぢを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむるを得えしめ給たまへ。

光榮 救世主きうせいしゆよ、爾なんぢが移うつしし者ものを諸聖人しよせいじんの會くわいに加くはへ、アウラアムの懷ふところにラザリと偕ともに入いれて、爾なんぢを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむるを得えしめ給たまへ。

生神女讚詞 潔けつ淨じやうの華くわ美びにて飾かざられたる童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢは萬善ばんぜんの原因げんいんたる主しゆの最いと美うるはしき居處すまひと爲なり給たまへり。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢ潔いさぎよき者ものを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」。

第九歌頌

イルモス 蓋けだし權能けんのう者しやは爾なんぢに大おほいなる事ことを成なして、爾なんぢが種たねなく己おのれの造物主ざうぶつしゆを生うみしに因よりて、產さんの後のちにも爾なんぢを潔いさぎよき童貞女どうていぢよと顯あらはせり、故ゆゑに生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

聖せい務むを行おこなひし諸しよ牧ぼく師し、聖せいなる預よ言者げんしやの會くわい、義ぎ者しやの無む量りやうなる大數たいすう、致ち命者めいしやの隊たいは屬神ぞくしんの歌か頌しようを以もつて讚さん美びせらるべし。彼かれ等らは我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまふ。

睿えい智ちに修齋しゆさいせし克肖者こくせうしやの奇異きいなる會くわいは多おほくの奇き跡せきの顯現あらはれを以もつて奇き妙めうなる者ものと爲なれり。奇異きいなる主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて、衆しゆう人じんの上うへに爾なんぢの慈じ憐れんを奇き妙めうなる者ものと現あらはし給たまへ。

善よく馳はすべき程みちを盡つくしし神品しんぴん致ち命者めいしやと偕ともに、女をんなの無む量りやうの大數たいすう、苦くるしみを受うけ齋ものいみを爲なして、今いま天てん使しの會くわいと偕ともに在ある者ものは、信しんと愛あいとを以もつて讚さん美びせらるべし。

光榮 言ことばよ、衆しゆう聖者せいしやの多おほきは爾なんぢに祈いのる、信しんに於おいて地ちより移うつされし多おほくの者ものを爾なんぢの慈じ憐れんの多おほきに因よりて安やすんぜしめて、其その度ど生せいの時ときに行おこなひし諸罪しよざいを赦ゆるし給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、我われ無知むちにして多おほく罪つみを行おこなひて苦くるしみを待まつ。祈いのる、是これより我われを脫のがれしめ給たまへ、我われ熱心ねつしんを以もつて爾なんぢに來きたりて、爾なんぢの神聖しんせいなる帲幪おほひを賴たのむ。

又

イルモス 爾なんぢ悟さとり難がたく解とき難がたく神かみの母はゝと爲なり、時ときの中うちに於おいて時ときに緣よらざる主しゆを言いひ難がたく生うみし者ものを、我われ等ら信者しんじやは心こゝろを一いつにして崇あがめ讚ほむ。

救世主きうせいしゆよ、聖せいなる苦く難なんの爲ために報むくいを受うけし致ち命者めいしやは今いま信しんに於おいて爾なんぢに移うつされし者ものに赦罪しやざいを賜たまはんことを祈いのる。

救世主きうせいしゆ、獨ひとり不死ふしなる者ものよ、爾なんぢは殺ころさるるを忍しのびて、慈じ憐れんの主しゆなるに因よりて、死し者しやに復ふく活くわつと不死ふしの光明くわう明めいとを與あたへ給たまへり。

光榮 救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは我われ等ら死しに陷おちいりし者ものを直なほくして、永遠えいゑんの生命いのちを恃たのまんことを敎をしへ給たまへり、此これを爾なんぢの諸僕しよぼくに獲えしめ給たまへ。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの產さんに因よりて律法りつぱふの影かげは去さりて、眞實しんじつは輝かゞやき、恩おん寵ちようは賜たまはりたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

次ぎて「常に福にして」、叩拜、聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

「凡そ呼吸ある者」に致命者の讚頌スティヒラ、第五調。

天てんの王わうの軍ぐんは祝しゆく讚さんせらるる哉かな、受難者じゆなんしやは地ちに生うまれし者ものなれども、天てん使しの位くらゐに至いたらんことを勉つとめ、肉體にくたいを顧かへりみずして、苦くるしみに因よりて無む形けいの者ものの尊そん貴きを獲えたり。主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

主しゆよ、爾なんぢの受難者じゆなんしやは天てん使しの品ひん位ゐに似にたる者ものと爲なりて、肉體にくたいなき者ものの如ごとく苦くるしみを忍しのびて、約やくせられし福ふくの樂たのしみを同心どうしんの望のぞみとして有たもてり。ハリストス神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

聖せいなる致ち命者めいしやは地ち上じやうに戰たゝかひて、嚴寒げんかんを忍しのび、火ひに付わたされ、水みづに投とうぜられたり。是これ彼かれ等らの聲こゑなり、我われ等らは火ひと水みづとの中うちに入いり、而しかうして爾なんぢ我われ等らを引ひき出いだして自じ由いうを賜たまへりと。神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

聖せいなる者ものは苦くるしみの中うちに在ありて歡よろこびて呼よべり、是これ我われ等らの爲ために主宰しゆさいに於おける貿易ぼうえきなり、蓋けだし我われ等らは肉體にくたいに受うくる傷きずに易かへては復ふく活くわつの時ときに光くわう潔けつなる衣ころもを受うけ、耻辱はづかしめに易かへては榮えい冠くわん、獄ひとやの桎梏かせに易かへては樂園らくゑん、罪犯者ざいはんしやと偕ともにする定罪ていざいに易かへては天てん使等しらと偕ともに居をることを受うけん。主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

爾なんぢ我われを造つくりし主しゆよ、爾なんぢの手てを我われに置おき、我われに戒いましめて曰いへり、爾なんぢ復また土つちに歸かへらんと。祈いのる、我われを直なほき道みちに向むかはしめて、我われに諸罪しよざいを赦ゆるし給たまへ、我われを宥なだめて、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 鳴呼あゝ不ふ當たうなる靈たましひよ、寶はう座ざが審判しんぱんの爲ために建たてられ、審判者しんぱんしやが萬まん萬まんの天てん使等しらと偕ともに降くだりて、天てんより來きたらん時とき、其時そのとき爾なんぢは何なにの答こたへをか審判者しんぱんしやに爲なさん、彼かれが審判しんぱん座ざに坐ざして、我われの如ごとき當あたらざる諸僕しよぼくと訟うつたへを定さだめん時ときに、爾なんぢ何なにをか答こたへん、何なにをか其時そのときに捧さゝげん、實じつに一いつも有ある無なし、爾なんぢの智慧ちゑと肉體からだとを汚けがしたればなり。故ゆゑに童貞女どうていぢよに俯ふ伏ふくし、絕たえず呼よびて、爾なんぢに豐ゆたかに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを求もとめよ。

挿句くづけに死者の讚頌スティヒラ、第五調。

ハリストスよ、爾なんぢの顏かんばせの光ひかりを以もつて移うつされし者ものを照てらし給たまへ。爾なんぢが宏くわう恩おんなるに因よりて、彼かれ等ら茂しげき草くさ場ば、爾なんぢの潔けつ淨じやう安靜あんせいなる水みづの畔ほとりに、太たい祖そアウラアムの慕したはしき懷ふところ、爾なんぢの光ひかりの淸きよく輝かゞやき、仁じん慈じの流ながれの溢あふるる處ところに入いれ給たまへ。衆しゆう義ぎ人じんの會くわいが爾なんぢの仁じん慈じを樂たのしみて祝いはふ處ところに、彼かれ等らと偕ともに爾なんぢの諸僕しよぼくを安やすんぜしめて、之これに大おほいなる惠めぐみを與あたへ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。

宏くわう恩おんなる主しゆよ、暫ざん時じの生命いのちより爾なんぢ萬有ばんいうの主宰しゆさい我われ等らの神かみに移うつりし者ものに、歡喜よろこびの聲こゑを以もつて歌うたひて、爾なんぢの權柄けんぺいを讚榮さんえいするを得えしめ、爾なんぢの光くわう華くわを以もつて彼かれ等らを照てらし、爾なんぢに近ちかづくを以もつて彼かれ等らを樂たのしませ給たまへ。諸天しよてん使しが爾なんぢの寶はう座ざの周圍まはりに祝いはひ、諸聖人しよせいじんの品ひん位ゐが欣よろこばしく之これを環めぐる處ところに、彼かれ等らと偕ともに爾なんぢの諸僕しよぼくに安息あんそくと大おほいなる惠めぐみとを與あたへ給たまへ。

句 彼かれ等らの靈たましひは福ふくに居をらん。

預よ言者げんしやの會くわい、使徒しとと致ち命者めいしやとの品ひん位ゐ、及および凡およそ古こ世せいより爾なんぢが救すくひを施ほどこす苦くるしみと、俘囚とりこになりし人ひとを贖あがなひたる爾なんぢの血ちとに因よりて義ぎとせられし者ものの處ところに、信しんに於おいて寢ねむりし者ものを安やすんぜしめて、人ひとを愛あいする主しゆなるに因よりて、其その諸罪しよざいを赦ゆるし給たまへ。蓋けだし爾なんぢ獨ひとり實じつに聖せいなる者ものは地ち上じやうに罪つみなくして度ど生せいし、獨ひとり死し者しやの中うちに自じ由いうなる者ものなり、故ゆゑに爾なんぢの諸僕しよぼくに安息あんそくと大おほいなる惠めぐみとを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 純じゆん潔けつなる女宰ぢよさい、獨ひとり童貞女どうていぢよ母はゝたる者ものよ、爾なんぢは立法者りつぱふしや及および王わうたるハリストスを胎内たいないに孕はらみて、我われ等ら罪つみの法はふに服役ふくえきせし者ものを自じ由いうと爲なせり、爾なんぢの子こに由よりて我われ等ら功こうなくして、恩おん寵ちようを以もつて義ぎとせらるればなり。今いま彼かれに祈いのりて、爾なんぢを神かみの母はゝと知しる者ものの靈たましひを生命せいめいの書しよに錄しるさんことを求もとめ給たまへ、我われ等らが爾なんぢの轉達てんたつに因よりて救すくはれて、世せ界かいに大おほいなる惠めぐみを賜たまふ爾なんぢの子こに常つねに伏拜ふくはいせん爲ためなり。

横線 - 『八調経』第五調

 「スボタ」の聖体礼儀に

スボタの眞福詞、第五調。

ハリストスよ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを神かみなりと信しんじ、誠まことの心こゝろより爾なんぢを承うけ認みとめて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは死しして、惡あくの原因げんいんたる敵てきを滅ほろぼし、上じやう天てんに登のぼり、勝しよう利りの榮えい冠くわんを冠かうむりて、萬有ばんいうの王わうたる神かみの前まへに立たち給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

成聖者せいせいしやは聖せい務むの光ひかりに照てらされて光くわう榮えいを獲え、克肖者こくせうしやの大數たいすうは永在えいざいの生命いのちを受うけたり、故ゆゑに讚さん美びせらる。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢの移うつしし者ものを選えらばれたる者ものの會くわいと偕ともに安息あんそくの處ところに入いれて、彼かれ等らが地ちに在ありて行おこなひし諸罪しよざいを恕ゆるし給たまへ。

光榮 鳴呼あゝ最いと尊たふとき三者さんしやよ、尊たふとき成聖者せいせいしや及および致ち命者めいしやの功勞こうらうに由よりて、信しんに於おいて死しせし者ものの靈たましひに救すくひと大おほいなる惠めぐみとを與あたへ給たまへ。

今も 恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、爾なんぢは萬ばん衆しゆうに容いれられぬ主しゆを容いれて、性せいと言ことばとに超こえて生うみ給たまへり。女宰ぢよさいよ、彼かれに我われ等ら衆しゆうに慈じ憐れんを垂たれんことを祈いのり給たまへ。

第五調 終

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