『八調経』第四調

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土曜日(スボタ)

 「スボタ」の小晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に主日の讚頌スティヒラ三章。其第一は二次。第四調。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

ハリストス神かみよ、我われ等ら絕たえず爾なんぢが生命いのちを施ほどこす十じふ字架じかに伏拜ふくはいして、爾なんぢが三みつ日目かめの復ふく活くわつを讚榮さんえいす。蓋けだし全能ぜんのうの主しゆよ、爾なんぢは此これを以もつて人ひとの朽くちたる性せいを新あらたにして、我われ等らに復また天てんに升のぼるを賜たまへり、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。二次。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは甘あまんじて十じふ字架じかの木きに釘ていせられて、木きの誡いましめを犯おかしし罰ばつを解とけり、有能いうのう者しやよ、地ぢ獄ごくに降くだりて、神かみとして死しの縛なはめを斷たち給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢが死しよりの復ふく活くわつに伏拜ふくはいして、歡よろこびて呼よぶ、全能ぜんのうの主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

主しゆよ、爾なんぢは地ぢ獄ごくの門もんを破やぶり、爾なんぢの死しを以もつて死しの國くにを滅ほろぼし、人類じんるゐを朽きう壞くわいより釋ときて、世せ界かいに生命せいめいと不ふ朽きうと大おほいなる憐あはれみとを賜たまへり。

光榮、今も、生神女讚詞、定理歌ドグマティク。第四調。

生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは、權けんある者ものを位くらゐより黜しりぞけ、卑いやしき者ものを擧あげ、ハリストスの十じふ字架じかと葬はうむりと光くわう榮えいなる復ふく活くわつとを讚榮さんえいする己おのれの信者しんじやの角つのを高たかくする主しゆを種たねなく孕はらみて、言いひ難がたく生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢ、此かくの如ごとき諸しよ恩おんの中ちゆう保はう者しやにして、常つねに吾わが靈たましひの救すくはれんことを祈いのる者ものを默もださざる歌うたを以もつて讚揚さんやうす。

次ぎて「穩なる光」。提綱ポロキメン、「主は王たり」、三次。句、主は能力を衣、又之を帶にせり。次に「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。

司祭聯禱を誦せず。我等直に左の讚頌を歌ふ。

挿句くづけに主日の讚頌スティヒラ、第四調。

主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに上のぼりて、我わが原げん祖そよりの詛のろひを滅ほろぼし、地ぢ獄ごくに下くだりて、世世よよの俘囚とりこを釋とき、人類じんるゐに不ふ朽きうを賜たまへり。故ゆゑに我われ等ら歌うたひて、生命いのちと救すくひとを施ほどこす爾なんぢの復ふく活くわつを崇あがめ讚ほむ。

次に生神女の讚頌。

句 我われ爾なんぢの名なを萬世ばんせいに誌しるさしめん。

無む原げんの父ちゝより永遠えいゑんに生うまるる子こなる神かみは慈じ憐れんに因よりて人人ひとびとの救すくひの爲ために人ひとと爲なり給たまへり。彼かれは寬くわん容ようの主しゆとして、初はじめて造つくられし者ものに復また樂園らくゑんを與あたへ、人ひとの性せいを蛇へびの誘惑いざなひより脫のがれしめ、陷おちいりし神かみの像ざうを救すくはん爲ために純じゆん潔けつ無む玷てんなる童貞女どうていぢよ母はゝより生うまれ給たまへり。我われ等ら皆みな彼かれの母はゝを避所かくれが及および港みなととして讚揚さんやうす。

句 女ぢよよ、之これを聽きき、之これを觀み、爾なんぢの耳みゝを傾かたぶけよ。

神福しんぷくなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは胎内たいないに身みを取とりし萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ、曩さきに蛇へびの誘惑いざなひに由よりて陷おちいりし初はじめの人ひとを造つくりたる主しゆを有たもち、言いひ難がたく身みにて我われ等らの爲ために神かみを生うみて、爾なんぢの產さんを以もつて古ふるびたる人ひとの性せいを朽きう壞くわいより釋とき給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの恩おん寵ちようを歌うたひて崇あがめ讚ほむ。聘女よめならぬ聘女よめよ、我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを絕たえず祈いのり給たまへ。

句 民みん中ちゆうの富とめる者ものは爾なんぢの顏かんばせを拜をがまん。

純じゆん潔けつにして至し福ふくなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの慈じ憐れんと仁じん慈じとの測はかり難がたき淵ふちを我われ等ら衆しゆうに顯あらはさん爲ために、爾なんぢの諸僕しよぼくの罪つみを悉ことごとく滅けし給たまへ、爾なんぢは神かみの母はゝとして、造物ざうぶつの上うへに權けんを有たもちて、爾なんぢの力ちからを以もつて凡およそ欲ほつする所ところを行おこなふを能よくすればなり、蓋けだし爾なんぢの内うちに入いりたる聖神せいしんの恩おん寵ちようは常つねに萬ばん事じに於おいて爾なんぢを助たすく。

光榮、今も、

至いたりて讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、天てん上じやうにセラフィムより父ちゝ及および聖神せいしんと偕ともに讚榮さんえいせらるる子こは、初はじめて造つくられし人ひとを新あらたにせんと欲ほつして、言いひ難がたく爾なんぢの胎内たいないに入いり、人體じんたいを有たもつ者ものとして爾なんぢより輝かゞやき出いでて、神性しんせいを以もつて全ぜん世せ界かいを照てらして、拜偶像はいぐうざうより脫のがれしめ、己おのれを以もつて人類じんるゐを神成しんせいして、天てんに升のぼせ給たまへり、是これハリストス神かみ我われ等らの靈たましひの救きう者しやなり。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。讚詞トロパリ、「主の女弟子は」。生神女讚詞、「是れ古世より隱されて」。聯禱及び發放詞。
横線 - 『八調経』第四調

 「スボタ」の大晩課

「主よ爾に籲ぶ」に主日の讚頌スティヒラ、第四調。

句 我わが靈たましひを獄ひとやより引ひき出いだして、我われに爾なんぢの名なを讚榮さんえいせしめ給たまへ。

ハリストス神かみよ、我われ等ら絕たえず爾なんぢが生命いのちを施ほどこす十じふ字架じかに伏拜ふくはいして、爾なんぢが三みつ日目かめの復ふく活くわつを讚榮さんえいす。蓋けだし全能ぜんのうの主しゆよ、爾なんぢは此これを以もつて人ひとの朽くちたる性せいを新あらたにして、我われ等らに復また天てんに升のぼるを賜たまへり、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 爾なんぢ恩おんを我われに賜たまはん時とき、義ぎ人じんは我われを環めぐらん。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは甘あまんじて十じふ字架じかの木きに釘ていせられて、木きの誡いましめを犯おかしし罰ばつを解とけり、有能いうのう者しやよ、地ぢ獄ごくに降くだりて、神かみとして死しの縛なはめを斷たち給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢが死しよりの復ふく活くわつに伏拜ふくはいして、歡よろこびて呼よぶ、全能ぜんのうの主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆよ、我われ深ふかき處ところより爾なんぢに呼よぶ。主しゆよ、我わが聲こゑを聽きき給たまへ。

主しゆよ、爾なんぢは地ぢ獄ごくの門もんを破やぶり、爾なんぢの死しを以もつて死しの國くにを滅ほろぼし、人類じんるゐを朽きう壞くわいより釋ときて、世せ界かいに生命せいめいと不ふ朽きうと大おほいなる憐あはれみとを賜たまへり。

又 讚頌スティヒラ、アナトリイの作。

句 願ねがはくは爾なんぢの耳みゝは我わが禱いのりの聲こゑを聽きき納いれん。

人人ひとびとよ、來きたりて、救世主きうせいしゆの三みつ日目かめの復ふく活くわつを歌うたはん。我われ等ら此これに因よりて地ぢ獄ごくの釋とき難がたき縛なはめより脫のがれ、皆みな不ふ朽きうと生命せいめいとを受うけて呼よぶ、十じふ字架じかに釘ていせられ、瘞はうむられて、復ふく活くわつせし獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの復ふく活くわつを以もつて我われ等らを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

救世主きうせいしゆよ、諸天しよてん使し及および人人ひとびとは爾なんぢの三みつ日目かめの復ふく活くわつを歌うたふ。此これに因よりて地ちの極はては照てらされ、我われ等ら皆みな敵てきの奴ど隷れいより脫のがれて呼よぶ、生いのちを施ほどこす全能ぜんのうの救世主きうせいしゆ、獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの復ふく活くわつを以もつて我われ等らを救すくひ給たまへ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

ハリストス神かみよ、爾なんぢは銅あかゞねの門もんを破やぶり、柱はしらを折くじきて、罪つみに陷おちいりし人類じんるゐを復ふく活くわつせしめ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら聲こゑを合あはせて歌うたふ、死しより復ふく活くわつせし主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

主しゆよ、爾なんぢが父ちゝより生うまるることは年歲としなくして永久えいきうなり、童貞女どうていぢよより身みを取とることは人人ひとびとの爲ために測はかり難がたく言いひ難がたし、地ぢ獄ごくに降くだることは惡あく魔ま及および其その使つかひ等らの爲ために懼おそるべし。蓋けだし爾なんぢは死しを踐ふみて、三みつ日目かめに復ふく活くわつして、人人ひとびとに不ふ朽きうと大おほいなる憐あはれみとを賜たまへり。

又生神女の讚頌スティヒラ、アモレイのパワェルの作、第八調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

純じゆん潔けつなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの血ちより身みを取とりし萬有ばんいうの神かみは爾なんぢを信者しんじやの爲ためには帲幪おほひ、患くわん難なん急迫きふはくに在ある者ものの爲ためには轉達てんたつ及および扶ふ助者じよしや、颶風あらしに遇あふ者ものの爲ためには穩おだやかなる港みなとと顯あらはし給たまへり。故ゆゑに爾なんぢ凡およそ爾なんぢの神聖しんせいなる帲幪おほひの下したに趨はしり附つく者ものを諸もろもろの憂愁うれひ及および煩悶もだえより救すくひ給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

至し福ふくなる女宰ぢよさいよ、我われ爾なんぢの神聖しんせいなる名なを常つねに尊たふとみて崇あがめ、敬つゝしみ讚ほめて歌うたはん。祈いのる、爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく我われを諸敵しよてきの悅よろこびと爲なさずして、爾なんぢの尊たふとき祈き禱たうの翼つばさを以もつて常つねに我われを悉ことごとくの誘惑いざなひより損そこなはれざる者ものとして護まもり給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、慶よろこべ、信者しんじやの倚賴たのみよ、慶よろこべ、世せ界かいの潔淨きよめよ、慶よろこべ、爾なんぢの諸僕しよぼくを諸もろもろの憂愁うれひより脫のがれしむる者ものよ、慶よろこべ、死しを滅ほろぼして生せい活くわつを與あたふる者ものよ、慶よろこべ、慰なぐさむる者ものよ、慶よろこべ、轉達者てんたつしやよ、慶よろこべ、避所かくれがよ、慶よろこべ。

光榮、今も、生神女讚詞

生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢに因よりて神かみの先せん祖ぞと爲なりし預よ言者げんしやダワィドは、爾なんぢに大おほいなる事ことを爲なしし者ものに、爾なんぢの事ことを歌うたひ呼よべり、女王によわうは爾なんぢの右みぎに立たてりと。蓋けだし父ちゝなく爾なんぢより甘あまんじて人ひとの性せいを取とりし神かみハリストス、大おほいにして裕ゆたかなる憐あはれみを有たもつ主しゆは、爾なんぢ母はゝを生命いのちの中ちゆう保はう者しやと現あらはせり、是これ慾よくに朽くちたる己おのれの像かたちを改あらため、山やまの中なかに迷まよひし羊ひつじを獲えて、肩かたに置おき、父ちゝの前まへに攜たづさへ、己おのれの旨むねに協かなはせ、之これを天軍てんぐんに合あはせて、世せ界かいを救すくはん爲ためなり。

次ぎて「穩なる光」。提綱ポロキメン、「主は王たり」。其他常例の如し。

挿句くづけに主日の讚頌スティヒラ、第四調。

主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに上のぼりて、我わが原げん祖そよりの詛のろひを滅ほろぼし、地ぢ獄ごくに下くだりて、世世よよの俘囚とりこを釋とき、人類じんるゐに不ふ朽きうを賜たまへり。故ゆゑに我われ等ら歌うたひて、生命いのちと救すくひとを施ほどこす爾なんぢの復ふく活くわつを崇あがめ讚ほむ。

又 讚頌スティヒラ

句 主しゆは王わうたり、彼かれは威ゐ嚴げんを衣きたり。

獨ひとり有能いうのうなる主しゆよ、爾なんぢは木きに懸かけられて、悉ことごとくの造物ざうぶつを震ふるはせ、墓はかに入いれられて、墓はかに居をる者ものを復ふく活くわつせしめて、人類じんるゐに不ふ朽きうと生命せいめいとを賜たまへり。故ゆゑに我われ等ら歌うたひて爾なんぢの三みつ日目かめの復ふく活くわつを崇あがめ讚ほむ。

句 故ゆゑに世せ界かいは堅けん固ごにして動うごかざらん。

ハリストスよ、不ふ法はふの民たみは恩主おんしゆに對たいして恩おんを知しらざる者ものと顯あらはれて、爾なんぢをピラトに解わたして、十じふ字架じかに釘ていせん爲ために定さだめたり。惟たゞ爾なんぢは甘あまんじて葬はうむりを忍しのび、神かみとして己おのれの權けんを以もつて三みつ日目かめに復ふく活くわつして、我われ等らに終をはりなき生命いのちと大おほいなる憐あはれみとを賜たまへり。

句 主しゆよ、聖德せいとくは爾なんぢの家いへに屬ぞくして永遠えいゑんに至いたらん。

女をんな等たちは淚なみだを流ながし墓はかに至いたりて、爾なんぢを尋たづねしに、得えずして、歎なげき泣なきて呼よびて曰いへり、哀かなしい哉かな我わが救世主きうせいしゆ、萬有ばんいうの王わうよ、爾なんぢ如何いかんぞ竊ぬすまれたる、何いづれの處ところか爾なんぢの生いのちを施ほどこす身みを隱かくす。天てん使しは彼かれ等らに對こたへて曰いへり、泣なく勿なかれ、往ゆきて傳つたへよ、主しゆは復ふく活くわつして我われ等らに喜よろこびを賜たまへり、獨ひとり仁じん慈じの主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞

至いたりて玷きずなき者ものよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの祈き禱たうを顧かへりみて、堪たへ難がたき攻擊こうげきを我われ等らより退しりぞけ、諸もろもろの憂苦うれひを我われ等らより遠とほざけ給たまへ、我われ等らは爾なんぢを一ひとつの堅けん固ごなる恃たのむべき錨いかりとして有たもち、爾なんぢの轉達てんたつを得えたればなり。女宰ぢよさいよ、願ねがはくは我われ等ら爾なんぢを呼よぶ者ものは耻はぢを蒙かうむらざらん、遄すみやかに我わが切せつなる祈いのりを應かなへ給たまへ、蓋けだし我われ等ら中ちゆう心しんより爾なんぢに籲よぶ、女宰ぢよさい、衆しゆう人じんの佑助たすけと、歡喜よろこびと、庇護おほひと、我われ等らの靈たましひの拯救すくひなる者ものよ、慶よろこべ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に、

主日の讚詞トロパリ、第四調

主しゆの女をんな弟子でしは復ふく活くわつの光ひかる音おとづれを天てん使しより聞きき受うけて、原げん祖そよりの定罪ていざいを振ふるひ棄すて、使徒しとに誇ほこりて曰いへり、死しは滅ほろぼされ、ハリストス神かみは復ふく活くわつして、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまへり。

光榮、今も、生神女讚詞

是これ古こ世せいより隱かくされて、天てん使等しらにも知しられざる祕ひ密みつなり、生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢに藉よりて神かみは混こんぜざる合一がふいつを以もつて身みを取とりて、地ちに在ある者ものに現あらはれ、甘あまんじて我われ等らの爲ために十じふ字架じかを受うけ、此これを以もつて始はじめに造つくられし者ものを復ふく活くわつせしめて、我われ等らの靈たましひを死しより救すくひ給たまへり。
横線 - 『八調経』第四調

 「スボタ」の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第四調。

第一歌頌

イルモス 古いにしへのイズライリは足あしを濡ぬらさずして海うみの紅くれなゐの淵ふちを渡わたり、野のに於おいてモイセイの十じふ字じ形かたの手てにてアマリクの力ちからに勝かてり。

附唱 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

獨ひとり爾なんぢの帲幪おほひの下したに熱心ねつしんに趨はしり附つく者ものを患くわん難なん憂愁いうしうより保護ほごする至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、至し仁じんなる者ものとして、中ちゆう心しんより捧さゝぐる我われ等らの禱いのりを納いれ給たまへ。

神人かみびとの母はゝよ、我われ不ふ當たうの者ものは爾なんぢを穩おだやかなる港みなととして獲えて、危き難なん葘害さいがいの暴浪あらなみを脫のがれて、感謝かんしやの歌うたを爾なんぢに奉たてまつる。

光榮 神かみの母はゝよ、慈じ憐れんにして溫柔をんじうなる爾なんぢの目めを以もつて我わが災禍わざはひ及および憂患うれひに圍かこまるるを見みて、速すみやかに我われを解とき給たまへ、我われ爾なんぢを援助たすけとして呼よべばなり。

今も 女宰ぢよさいよ、獨ひとり爾なんぢの諸僕しよぼくの慈じ憐れん仁じん慈じなる轉達者てんたつしやとして、我われ烈はげしき憂患うれひに苦くるしめらるる者ものに祈禱いのりの手てを伸のべて、我われを甚はなはだしき禍わざはひより脫のがれしめ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 强つよき者ものの弓ゆみは弱よわみ、弱よわれる者ものは力ちからを帶おびたり、故ゆゑに我わが心こゝろは主しゆの中うちに堅かためられたり。

婚姻こんいんに與あづからざる生しやう神女しんぢよよ、我われ爾なんぢを堅けん固ごなる武器ぶき及および垣墻かきとして獲えて、敵てきの軍ぐんに勝かちて、爾なんぢの偉ゐ大だいなるを歌うたふ。

生しやう神しん童貞女どうていぢよ、我われ等らの倚賴たのみよ、爾なんぢは悲哀かなしみの爐ゐろりを毁こぼち、失望しつばうの熱ねつを滅けし給たまふ、孰たれか爾なんぢの如ごとく斯かく之これを能よくする。

光榮 神かみの母はゝよ、爾なんぢの佑助たすけを乞こふ爾なんぢの僕ぼくの聲こゑを納いれ給たまへ。我わが倚賴たのみよ、我われに聆ききて、諸難しよなんより脫のがれしめ給たまへ。

今も 多おほくの罪つみより我われ等らに苦くるしみは至いたり、死しの害がいは及およべり。生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを救すくひ給たまへ、爾なんぢ之これを能よくすればなり。

第四歌頌

イルモス 敎けう會くわいは爾なんぢ義ぎの日ひが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、竝ならび立たちて正たゞしく呼よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

女宰ぢよさいよ、徒いたづらに我われの敵てきと爲なりて、我わが靈たましひを滅ほろぼさんと謀はかる者ものに勝かちて、我われを護まもり、憐あはれみて救すくひ給たまへ、我われ爾なんぢの僕ぼくは爾なんぢに趨はしり附つけばなり。

我わが仁じん慈じなる保護ほご者しやよ、我われを欺騙あざむきの舌したより脫のがれしめて、度ど生せいの行おこなひの汚けがされぬ者ものと顯あらはし給たまへ、爾なんぢは造物主ざうぶつしゆの母はゝとして能よくする所ところ多おほければなり。

光榮 我われ病やめる者ものは爾なんぢを善よく醫いやす醫師いしと知しりて、心こゝろと口くちとを以もつて呼よぶ、女宰ぢよさいよ、我われを醫いやし、憐あはれみて救すくひ給たまへ、我われ爾なんぢの僕ぼくは爾なんぢに趨はしり附つけばなり。

今も 我われ等らの神かみの母はゝよ、我わが苦く難なんに付わたさるるを容ゆるす勿なかれ、我われを凡およその憂うれひ及および人ひとの惡あくに惱なやまされざる者ものとして護まもり給たまへ、爾なんぢは我われ等ら衆しゆうの爲ために扶ふ助者じよしやなればなり。

第五歌頌

イルモス 我わが主しゆよ、爾なんぢは光ひかり、信しんじて爾なんぢを崇あがめ歌うたふ者ものを闇くらき無智むちより引ひき出いだす聖せいなる光ひかりにして、世せ界かいに來きたり給たまへり。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの僕ぼくの祈き禱たうを主しゆ爾なんぢの子こに向むかはしめ給たまへ、我われ吾わが多おほくの罪過ざいくわの赦ゆるしを得えん爲ためなり。

神かみの聘女よめよ、我われを諸慾しよよく及および諸難しよなんより救すくひ給たまへ、神かみは實じつに爾なんぢを卑微ひびなる我われの爲ために潔淨きよめとして備そなへたればなり。

光榮 嗚呼あゝ女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは我われの帲幪おほひ、常つねに我われの美譽ほまれなり、爾なんぢに趨はしり附つく者ものを必かならず棄すてざればなり。

今も 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの產さんを尊たふとむ者ものを憐あはれみて、苦くるしみ 及および憂うれひより脫のがれしめ給たまへ、爾なんぢ能よくせざる所ところなければなり。

第六歌頌

イルモス 憐あはれみに由よりて爾なんぢの脅わきより流ながれし血ちにて惡あく魔まの祭まつりの血ちより淨きよめられし敎けう會くわいは爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、讚揚ほめあげの聲こゑを以もつて爾なんぢを祭まつらん。

至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、我われに及およびたる待またざる憂うれひの中うちに於おいて爾なんぢ親みづから我われの保固かためなり。我われ爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢは己おのれの僕ぼくの大おほいなる保護ほご者しやなればなり。

至し淨じやうなる者ものよ、我わが靈たましひの創傷きずを醫いやし給たまへ。童貞女どうていぢよよ、我われを護まもりて、爾なんぢの僕ぼくを讒言ざんげん、惡謀あくぼう、及および諸もろもろの誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、常つねに爾なんぢに趨はしり附つく我われを攻せむる不義ふぎなる惡謀者あくぼうしやを破やぶりて、我われを棄すてて滅ほろぶるを容ゆるす勿なかれ、爾なんぢ神かみの母はゝに能よくせざる所ところなければなり。

今も 女宰ぢよさいよ、我わが靈たましひの荒あれたる浪なみを鎭しづめ給たまへ、多おほくの罪つみ、菑害わざわひ、及および憂患うれひは起たちて我われを攻せむればなり、親みづから我われを救すくひ給たまへ。

主憐めよ、三次、光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第四調。

生しやう神女しんぢよよ、我われ放蕩はうたうにして多おほくの罪つみを以もつて智慧ちゑを昧くらましし者ものは爾なんぢの堅けん固ごなる保護ほごに呼よぶ、潔いさぎよき神かみの母はゝよ、我わが靈たましひの眸子ひとみを照てらし、我われに痛つう悔くわいの曙しよ光くわうを輝かゞやかし、我われに光明ひかりの甲よろひを衣きせ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 火ひの中うちに爾なんぢがアウラアムの少者せうしやを救すくひ、義ぎの審判しんぱんを被かうむれるハルデヤ人じんを滅ほろぼしし讚さん美びたる主しゆ、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

マリヤよ、爾なんぢの祈き禱たうの劍つるぎを以もつてアガリ人じんの虐待しへたげを速すみやかに滅ほろぼして、民たみ及および爾なんぢの群ぐん、爾なんぢの子こに、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よぶ者ものを護まもり給たまへ。

神聖しんせいなる幕まくよ、爾なんぢに趨はしり附つく我われを入いれ給たまへ、我われを滅ほろぼさんと欲ほつする敵てきが我われを執とらへざらん爲ためなり。蓋けだし我われ呼よぶ、讚さん美びたる我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

光榮 神かみの母はゝマリヤよ、我われ誘惑いざなひの暴浪あらなみの中うちに溺おぼらされて、扶助たすけを有たもたざる爾なんぢの僕ぼくを速すみやかに救すくひ給たまへ。我われ爾なんぢに呼よぶ、地ち極きよくの倚賴たのみよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

今も 仁じん慈じなる生しやう神女しんぢよよ、諸罪しよざいの緣由ゆゑんなる人ひとの謀はかりごとを今いま爾なんぢの神聖しんせいなる祈き禱たうを以もつて破やぶりて、爾なんぢの諸僕しよぼくを疾やましき誘惑いざなひ及および諸もろもろの害がいより脫のがれしめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 衆しゆう人じんの贖しよく罪主ざいしゆ全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは降くだりて、焰ほのほの中うちに敬虔けいけんを守まもりし者ものに露つゆを注そゝぎて、歌うたはしめ給たまへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて崇あがめ讚ほめよ。

不ふ法はふの民たみは我われ等らを攻せめて、爾なんぢに事つかふる者ものを滅ほろぼさんと誇ほこる。至し淨じやうなる者ものよ、彼かれを破やぶりて、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよと呼よぶ者ものを覆おほひ給たまへ。

獨ひとり神かみの母はゝよ、爾なんぢの多おほくの仁じん慈じ慈じ憐れんは我われ等らを罪つみの擬ぎ定てい及および種種しゆじゆの患くわん難なんより救すくふ、爾なんぢ神かみを生うみて、彼かれの世せ界かいを憐あはれみ給たまへばなり。

光榮 女宰ぢよさいよ、爾なんぢは我わが保固かため及および援助たすけなるに因よりて、我われ諸敵しよてきの怒いかりを懼おそれずして、爾なんぢを歌うたひて、爾なんぢの子こに呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

今も 女宰ぢよさいよ、今いま我わが禱いのりに慈じ憐れんを垂たれて、我われに悲かなしみに代かへて喜よろこびを賜たまへ、我わが爾なんぢを歌うたひて、爾なんぢの子こに呼よばん爲ためなり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

第九歌頌

イルモス エワは不ふ順じゆんを病やみて、詛のろひを入いれたり、爾なんぢは、童貞どうてい生しやう神女しんぢよよ、己おのれの產さんにて世せ界かいの爲ために祝しゆく福ふくの華はなを發ひらけり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

詭き譎けつ不ふ法はふなるアラワィヤ人じんは我われ等らに向むかひて武器ぶきを磨とぎて、謀はかりごとを設まうく、生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは十じふ字架じか及および爾なんぢの祈き禱たうの力ちからを以もつて彼かれに向むかひて爾なんぢの諸僕しよぼくを堅かため給たまふ。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの光くわう榮えいを傳つたふ。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢに敵てきに對たいして力ちからの授さづけられしに因よりて、爾なんぢ我われを患くわん難なんより脫のがれしめ給たまふ。我われ爾なんぢに何なにを捧さゝげんを知しらず、唯たゞ我わが有たもてる感謝かんしやを爾なんぢに捧さゝぐ、今いま之これを納いれて、我われを救すくひ給たまへ。

光榮 嗚呼あゝ萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆの至いたりて光くわう明めいなる母はゝ、哀かなしむ者ものの慰藉なぐさめ、溺おぼらさるる者ものの援助たすけ、弱よわる者ものの守護まもりよ、爾なんぢ我われを生しやう涯がい護まもり給たまへ。

今も 至いたりて讚さん美びたる者ものよ、今いま多おほくの罪つみと災禍わざはひとに攻せめらるる我われを棄すつる勿なかれ。我われ爾なんぢに讚さん美びの祭まつりを奉たてまつりて、熱切ねつせつに爾なんぢに呼よぶ、聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われを助たすけ給たまへ、蓋けだし我われ爾なんぢを讚榮さんえいして歌か頌しようを終をふ。

次ぎて「常に福にして」。聖三祝文。其他常例の如し、幷に發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第四調

日曜日(主日)

 主日の夜半課

聖三者の規程カノン。其冠詞は、神に第四の歌を奉る。ミトロファンの作。第四調。

第一歌頌

イルモス 古いにしへのイズライリは足あしを濡ぬらさずして海うみの紅くれなゐの淵ふちを渡わたり、野のに於おいてモイセイの十じふ字じ形かたの手てにてアマリクの力ちからに勝かてり。

我われ等らは神元しんげんの三者さんしや、三さん位ゐに於おいて惟一ゆゐいちなる性せい、同どう永在えいざい、同どう寶はう座ざなる者ものを讚榮さんえいして、祈いのりて言いはん、信しんを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいする者ものを救すくひ給たまへ。

子こは父ちゝより神しん爲ゐの膏あぶらたる歡喜よろこびの神しん゜に傅ふ膏かうせられ、人ひとと成なりて、惟一ゆゐいちの神性しんせいの三さん位ゐなるを敎をしへ給たまへり。

光榮 三日さんじつの惟一者ゆゐいちしやよ、セラフィム等らは爾なんぢの近ちかづき難がたき光くわう榮えいの華くわ美びを觀みるに勝たへずして、翼つばさにて己おのれを覆おほひ、常つねに聖三せいさんの歌うたを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいす。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは言いひ難がたく萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ、人人ひとびとを古いにしへの詛のろひ及および死しの朽きう壞くわいより救すくふ者ものを生うみ給たまひしに、我われ等ら爾なんぢに因よりて惟一ゆゐいちの三さん位ゐなる神かみを知しれり。

第三歌頌

イルモス ハリストスよ、我われ等らは智慧ちゑと能力ちからと富有とみとを以もつて誇ほこるにあらず、乃すなはち爾なんぢ父ちゝと一性いつせいなる智慧ちゑを以もつて誇ほこる、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなる者ものなければなり。

ハリストスよ、爾なんぢは嘗かつて爾なんぢの聖せいなる使徒等しとらに上うへよりの能力ちからたる撫ぶ恤じゆつ者しやを父ちゝより遣つかはして、惟一ゆゐいちの神性しんせいの三日さんじつなるを顯あらはし給たまへり。

三さん位ゐなる惟一者ゆゐいちしやよ、爾なんぢは人ひとの像かたちを以もつて太たい祖そアウラアムに現あらはれし時とき、爾なんぢの仁じん慈じと權能けんのうとの變易かはりなきを示しめし給たまへり。

光榮 三さん位ゐに於おいて信しんぜらるる惟一ゆゐいちの神かみ、明あきらかに形かたどられず衆しゆうに料はかられざる主しゆよ、我われ等らの靈たましひを凡およその憂うれひより救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 我われ等らは爾なんぢの子この睿えい智ちなる敎をしへに導みちびかれて、惟一ゆゐいちにして三さん光くわうなる神元しんげんを讚榮さんえいし、爾なんぢ永貞えいてい童女どうぢよをも讚さん美びす。

次ぎて坐誦讚詞セダレン、第四調。

三日さんじつにして造つくられざる一性いつせいの惟一者ゆゐいちしや、三さん位ゐにして曉さとられぬ者ものよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを宥なだめ、慈じ憐れんなる神かみとして諸難しよなんより救すくひ給たまへ。蓋けだし主しゆよ、我われ等らは獨ひとり爾なんぢを救きう者しや及および主宰しゆさいとして有たもちて呼よぶ、我われ等らに慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ等ら多おほくの禍わざはひ及および敵てきの攻擊こうげきに圍かこまれて、恒つねに失望しつばうに陷おちいる者ものは獨ひとり爾なんぢを拯救すくひと倚賴たのみと守護まもりとして有たもちて今いまも信しんを以もつて熱切ねつせつに爾なんぢに祈いのる、爾なんぢの諸僕しよぼくを救すくひ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 光くわう榮えいの中うちに神性しんせいの寶はう座ざに坐ざするイイスス神かみは、輕かろき雲くもに乘のるが如ごとく、朽くちざる手てに抱いだかれ來きたりて、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きすと呼よぶ者ものを救すくひ給たまへり。

曉さとられぬ神かみよ、我われ等らはセラフィム等らと偕ともに爾なんぢ神性しんせいの惟一ゆゐいちなる永在えいざいの三者さんしやを、分わかれざる性せい、近ちかづき難がたき者もの、光くわう榮えいの同一どういつなる主しゆとして讚榮さんえいす。

我われ等らは爾なんぢ神性しんせいの位ゐに於おいて言いひ難がたく分わかれ、惟一ゆゐいちの權柄けんぺいと能のう力りよくとに於おいて合あはせられたる獨一どくいつの限かぎりなき形かたどられぬ三者さんしや、萬物ばんぶつの造成主ざうせいしゆを歌うたひ讚ほむ。

光榮 無む原げんなる智慧ちゑは言いひ難がたく言ことばを生うみ、神聖しんせいなる同どう能のうの神しん゜を發はつし給たまへり、之これに由よりて我われ等らは一體いつたいなる三者さんしや、萬物ばんぶつの主宰しゆさい神かみを傳つたふ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、言ことばは古いにしへの者ものに異い象しやうの中うちに見みられて、爾なんぢより人體じんたいを取とることを預よ言げんし、後のちには人人ひとびとに現あらはれて、實じつに三さん位ゐなる一いち元げんを顯あらはし給たまへり。

第五歌頌

イルモス 萬物ばんぶつは爾なんぢが神妙しんめうの光くわう榮えいに驚おどろかざるなし、爾なんぢ婚配こんぱいを識しらざる童貞女どうていぢよは至し上じやうの神かみを孕はらみ、永遠えいゑんの子こを生うみて、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものに平安へいあんを賜たまへばなり。

我われ等らは信しんを以もつて全功ぜんこうの神かみの惟一ゆゐいちなる近ちかづき難がたき性せいの中うちに生命いのちの泉いづみなる合一がふいつせられたる三さん位ゐを識しりて、同どう永在えいざいなる父ちゝ、子こ、及および聖神せいしんを尊たふとむ。

三日さんじつの光ひかりよ、我われに惟一ゆゐいちなる造つくられざる神性しんせい、凡およその光ひかりの泉いづみたる者ものの光くわう線せんを輝かゞやかし給たまへ、我わが爾なんぢの言いひ難がたき華くわ美びを仰あふぎ瞻みん爲ためなり。

光榮 爾なんぢ惟一ゆゐいちにして三さん位ゐなる神かみは萬物ばんぶつを造つくり、之これを保たもち、睿えい智ちを以もつて之これを司つかさどり、萬ばん衆しゆうに生いのちを賜たまふ主しゆなり。故ゆゑに我われ等ら忠ちゆう信しんに爾なんぢに呼よぶ、三さん光くわうの主宰しゆさいよ、爾なんぢを歌うたふ者ものを護まもり給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、己おのれの神聖しんせいなる像ざうに形かたどりて人ひとを造つくりし主しゆは昔むかし朽くちたる人ひとを仁じん慈じを以もつて神成しんせいせんと欲ほつして、爾なんぢに藉よりて人ひとと爲なり、惟一ゆゐいちなる三さん數すうの神元しんげんを傳つたへ給たまへり。

第六歌頌

イルモス 三日みつかの葬はうむりを預よ象しやうする預よ言者げんしやイオナは鯨くぢらの中うちに在ありて祈いのりて籲よべり、イイスス萬軍ばんぐんの王わうよ、我われを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

父ちゝは其聲そのこゑを以もつて子こを顯あらはし、神しん゜はハリストスの洗せんを受うくる時ときに見みられたり、故ゆゑに我われ等らは惟一ゆゐいちにして三さん位ゐなる神元しんげんを讚榮さんえいす。

イサイヤは爾なんぢが三聖さんせいの聲こゑに歌うたはれて、高たかき寶はう座ざに坐ざするを見みし時とき、惟一ゆゐいちなる神元しんげんの三さん位ゐを識しれり。

光榮 最高いとたかき三さん位ゐなる王わうよ、我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくの心こゝろを高たかまりたる者ものと爲なし給たまへ、我われ等らが明あきらかに爾なんぢの光くわう榮えいの輝煌かゞやきを見みん爲ためなり。

生神女讚詞 神かみの子こは人ひとを愛あいする主しゆとして童貞女どうていぢよより甘あまんじて我われ等らの像かたちを受うけて、人人ひとびとを神聖しんせいなる光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なし給たまへり。

坐誦讚詞セダレン、第四調。

我われ等らは生うまれざる父ちゝ、父ちゝより生うまれし子こ、及および出いづる聖神せいしんを識しりて、無む原げんなる國くに及および惟一ゆゐいちの神性しんせいを傳つたへ、之これを讚榮さんえいして、心こゝろを一いつにして呼よぶ、一體いつたいなる三さん位ゐの神かみよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは年としに因よらざる、世よより先さきなる神かみを年としに及およびて性せいに超こえて身みを以もつて神人かみびととして生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな敬つゝしみて爾なんぢを眞まことの生しやう神女しんぢよと承うけ認とめて、熱切ねつせつに爾なんぢに呼よぶ、衆しゆう人じんに永遠えいゑんの光くわう榮えいを得えしめ給たまへ。

第七歌頌

イルモス アウラアムの少者せうしやはペルシヤの爐ゐろりに在ありて、焰ほのほよりも强つよく敬虔けいけんの愛あいに爇やかれて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢが光くわう榮えいの殿でんに於おいて爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我われ等ら凡およそ地ちに生うまるる者ものは天てん上じやうの靈れい智ちなる品ひん位ゐに正たゞしく效ならひて、同どう功こうなる三さん位ゐに於おいて惟一ゆゐいちの神性しんせいを讚榮さんえいす。二次。

光榮 昔むかし聖せいなる預よ言者げんしやの宣言せんげんは異い象しやうを以もつて爾なんぢ萬世ばんせいを造つくりし言いひ難がたき惟一ゆゐいちなる神かみ及および主しゆの神元しんげんなる三さん位ゐを顯あらはせり。

生神女讚詞 爾なんぢ性せいに於おいて見みえざる全功ぜんこうの言ことばは潔いさぎよき生しやう神女しんぢよより人ひととして人人ひとびとに現あらはれて、人ひとを爾なんぢの神性しんせいに與あづかることに召めし給たまへり。

第八歌頌

イルモス ダニイルは獅子しし穴あなに手てを伸のべて、獅子ししの口くちを閉とざし、敬虔けいけんの篤あつき少者せうしやは德とくを帶おび、火ひの力ちからを滅けして呼よべり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

一いち元げんなる三日さんじつの光ひかり、無む原げんの性せい、悟さとられぬ華くわ美びよ、我わが心こゝろに入いりて、我われを爾なんぢの神性しんせいの光くわう明めい潔けつ淨じやうなる殿でんと爲なして、呼よばしめ給たまへ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ、歌うたひて世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。二次。

光榮 分わかれざる三者さんしや、混淆こんかうせざる惟一者ゆゐいちしやよ、我われを諸もろもろの慾よく及および罪過ざいくわの幽闇くらやみより脫のがれしめて、爾なんぢの神聖しんせいなる光くわう線せんを以もつて照てらし給たまへ、我わが爾なんぢの光くわう榮えいを想像さうざうして、爾なんぢ光くわう榮えいの主しゆを歌うたはん爲ためなり。

生神女讚詞 生うまれざる智慧ちゑたる父ちゝ、彼かれと一性いつせいなる言ことば、及および同どう寶はう座ざなる神しん゜、神性しんせい、能のう力りよく、實在じつざい、永遠えいゑんにして言いひ難がたき全功ぜんこうなる三者さんしや、惟一者ゆゐいちしやよ、生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに因よりて爾なんぢの群ぐんを護まもり給たまへ、爾なんぢは性せいに於おいて人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

第九歌頌

イルモス 凡およそ地ちに生うまるる者ものは聖神せいしんに照てらされて樂たのしみ、形かたちなき智慧ちゑの性せいも祝いはひ、神かみの母はゝの聖せいなる祭まつりを尊たふとみて呼よぶべし、至いたりて福さいはひなる潔いさぎよき生しやう神女しんぢよ、永貞えいてい童女どうぢよよ、慶よろこべよ。

一いち元げんなる三さん光くわうよ、我われ今いま吾わが心こゝろと思おもひ及および我わが靈體れいたいの悉ことごとくの望のぞみを爾なんぢ我わが造成主ざうせいしゆ及および救世主きうせいしゆに進すゝめて、爾なんぢに呼よぶ、我われ爾なんぢの僕ぼくを諸もろもろの誘惑いざなひ及および憂患うれひより救すくひ給たまへ。二次。

光榮 近ちかづく可べからざる光ひかりに居をる父ちゝ、言ことば、撫ぶ恤じゆつ者しや、光くわう榮えいの日ひ、光ひかりを持たもつ主しゆよ、我われ等らの智慧ちゑ及および心こゝろを爾なんぢ至し上じやうの者ものに擧あげて、爾なんぢの潔けつ淨じやうなる光くわう線せんを以もつて照てらして、常つねに爾なんぢ一いち元げん三さん位ゐなる神かみを讚榮さんえいせしめ給たまへ。

生神女讚詞 主しゆよ、爾なんぢを信しんじて、無む原げんにして永在えいざいなる惟一ゆゐいちの性せい、神元しんげんなる一體いつたいの三さん位ゐを傳つたふる者ものを、潔いさぎよき神かみの母はゝの祈き禱たうに由よりて救すくひて、彼かれ等らに爾なんぢの神聖しんせいなる光くわう榮えいを得えしめ給たまへ。

次にグリゴリイ シナイトの聖三讚歌、「爾神言を讚榮するは」、及び其他夜半課の式。本書の末に載す。

横線 - 『八調経』第四調

 主日の早課

「主は神なり、我等に臨めり」、第四調。次に讚詞トロパリ、「主の女弟子は」、二次。光榮、今も、生神女讚詞、「是れ古世より隱されて」。次に聖詠經の常例の誦讀。

第一の誦文の後に主日の坐誦讚詞セダレン、第四調。

攜香女けいかうぢよは墓はかの門もんを見みて、天てん使しの光ひかりに堪たえず、戰をのゝき驚おどろきて云いへり、豈あに盜賊たうぞくの爲ために樂園らくゑんを開ひらきし者ものは盜ぬすまれしか、或あるひは苦くるしみの前まへに興おくることを傳つたへし者ものは興おきしか。實じつにハリストスは復ふく活くわつし、地ぢ獄ごくに在ある者ものに生命せいめいと復ふく活くわつとを賜たまへり。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる毋なかれ。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは自じ由いうの旨むねに因よりて十じふ字架じかを忍しのび、死しすべき人人ひとびとは爾なんぢ言ことばにて四し極きよくを合成がふせいせし者ものを新あらたなる墓はかに藏をさめたり。故ゆゑに敵てきは縛しばられ、死しは虜とらへられ、地ぢ獄ごくにある者ものは皆みな爾なんぢが生命いのちを施ほどこす復ふく活くわつに籲よべり、生命いのちを賜たまふハリストス、世世よよに存そんする者ものは復ふく活くわつせり。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの聘定者へいていしや及および守しゆ護ご者しやなるイオシフは天然てんねんに逾こゆる事ことを見みて、驚おどろき、爾なんぢの種たねなき懷孕はらみに於おいて、毛けに降くだりし雨あめ、火ひに燒やかれざりし棘いばら、華はなを生しやうぜしアアロンの杖つゑを思おもひて、司し祭さい等らに證しようして呼よべり、童貞女どうていぢよは生うみ、生うみし後のちも恒つねに童貞女どうていぢよなり。

第二の誦文の後に主日の坐誦讚詞セダレン、第四調。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは不死ふしの者ものとして墓はかより復ふく活くわつし、爾なんぢの力ちからを以もつて爾なんぢの世せ界かいを共ともに興おこせり、ハリストス我わが神かみよ、爾なんぢは能のう力りよくを以もつて死しの權けんを滅ほろぼせり、慈じ憐れんの主しゆよ、爾なんぢは衆しゆうに復ふく活くわつを示しめし給たまへり。故ゆゑに獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ等ら爾なんぢを讚榮さんえいす。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き迹せきを傳つたへん。

ガウリイルは上じやう天てんの高たかきより降くだり、白はく衣いにして、生命いのちの石いしの在ありし處ところの石いしに就つきて、哭なく者ものに呼よべり、愛憐あいれんの情こゝろを抱いだく者ものよ、涕泣ていきふを止やめて、勇いさめよ、蓋けだし爾なんぢ等らが泣なきて尋たづぬる者ものは實じつに復ふく活くわつせり。故ゆゑに使徒等しとらに呼よべ、主しゆは復ふく活くわつせり、喜よろこびの音おとづれを受うけて興おきし者ものに伏拜ふくはいせよ、勇いさめよ、エワも勇いさむべし。

光榮、今も、生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、天てん使しの品ひん位ゐは皆みな爾なんぢの產さんの畏おそるべき奧密あうみつに驚おどろきたり、如何いかんぞ萬物ばんぶつを其その手てに保たもつ者ものは人ひとの如ごとく爾なんぢの手てに保たもたれ、永久えいきうの者ものは始はじめを受うけ、凡およそ呼吸いきある者ものを言いひ難がたき仁じん慈じを以もつて養やしなふ者ものは乳ちにて養やしなはるる。故ゆゑに彼かれ等らは爾なんぢを眞まことの神かみの母はゝとして讚さん頌しよう讚榮さんえいす。

「ネポロチニ」の後に應答歌イパコイ、第四調。

ハリストスよ、爾なんぢの至し榮えいなる復ふく活くわつに魁さきがけせし攜香女けいかうぢよは、使徒等しとらに爾なんぢが神かみとして復ふく活くわつし、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまひしを傳つたへたり。

品第詞ステペンナ、第四調。第一倡和詞アンティフォン、每句復唱す。

我わが幼いとけなき時ときより多おほくの慾よくは我われを攻せむ、吾わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢ親みづから我われを守まもりて救すくひ給たまへ。

シオンを惡にくむ者ものは主しゆより辱はづかしめを受うけよ、爾なんぢ等ら草くさの火ひに於おけるが如ごとく枯からされんとすればなり。

光榮 聖神せいしんにて凡およその靈たましひは活いかされ、淸淨きよきを以もつて愈いよいよ上のぼり、三さん位ゐの一體いつたいにて奧密あうみつにて照てらさる。

今も、同上。

第二倡和詞

主しゆよ、我われ靈たましひの深處ふかみより熱切ねつせつに爾なんぢに籲よべり、願ねがはくは爾なんぢの神聖しんせいなる耳みゝは我われにも聽きかん。

凡およそ主しゆに於おける望のぞみを得えたる者ものは悉ことごとくの憂うれふる者ものの上うへに在あり。

光榮 聖神せいしんにて恩おん寵ちようの流ながれは注そゝがれ、凡およその造物ざうぶつに飮のませて、之これを活いかす。

今も、同上。

第三倡和詞

言ことばよ、願ねがはくは我わが心こゝろは爾なんぢに擧あげられ、世せ俗ぞくの華くわ美びは一いつも其その樂たのしみを以もつて我われを弱よわめざらん。

人ひと其その母はゝに愛あいを保たもつが如ごとく、主しゆに對たいして更さらに篤あつき情じやうを保たもつべし。

光榮 聖神せいしんには神かみを識しる知ち識しきと、明めい悟ごと、睿えい智ちとの富とみは由よるなり、蓋けだし言ことばは彼かれに因よりて父ちゝの悉ことごとくの命めいを露あらはす。

今も、同上。

提綱ポロキメン、第四調。

主しゆよ、起おきて我われ等らを佑たすけよ、爾なんぢの憐あはれみに因よりて我われ等らを救すくひ給たまへ。

句 「神よ、我等は己の耳にて聞けり」。「凡そ呼吸ある者」。主日の早課の福音經。「ハリストスの復活を見て」。第五十聖詠。其他常例の如し。

主日の規程カノン。ダマスクの聖イオアンの作。

第一歌頌

イルモス 古いにしへのイズライリは足あしを濡ぬらさずして海うみの紅くれなゐの淵ふちを渡わたり、野のに於おいてモイセイの十じふ字じ形かたの手てにてアマリクの力ちからに勝かてり。

附唱 主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの聖せいなる復ふく活くわつに歸きす。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは至し淨じやうなる十じふ字架じかの木きに上あげられて、我われ等らの墮だ落らくを改あらため、木きに緣よる殘害ざんがいの傷いたみを醫いやし給たまへり、爾なんぢは仁じん慈じ全能ぜんのうの主しゆなればなり。

像かたどり難がたきハリストスよ、爾なんぢは體からだにて墓はかに在あり、靈たましひにて神かみとして地ぢ獄ごくに在あり、盜賊たうぞくと偕ともに樂園らくゑんに在あり、父ちゝ及および聖神せいしんと偕ともに寶はう座ざに在ありて、一切いつさいを滿みて給たまへり。

生神女讚詞 爾なんぢは種たねなく父ちゝの旨むねを以もつて神聖しんせいなる神しん゜に由よりて子こを孕はらみ、身みにて生うみ給たまへり、是これ父ちゝより母はゝなくして、我われ等らの爲ために爾なんぢより父ちゝなくして生うまれ給たまひし主しゆなり。

又十字架復活の規程カノン、第四調。

第一歌頌

イルモス 我わが口くちを開ひらきて、聖神せいしんに滿みてられ、言ことばを女王によわう母はゝに奉たてまつり、樂たのしみ祝いはひ、喜よろこびて其その奇き迹せきを歌うたはん。

主しゆよ、爾なんぢは人類じんるゐの壞やぶれを醫いやして、爾なんぢの神聖しんせいなる血ちを以もつて之これを新あらたにし、昔むかし爾なんぢの造物ざうぶつを壞やぶりし力ちからの强つよき者ものを壞やぶり給たまへり。

爾なんぢの殺ころさるるは死し者しやの復ふく活くわつと爲なれり、蓋けだし死しは永遠えいゑんの生命いのちと鬪たゝかひて、殺ころす力ちからを失うしなへり、萬有ばんいうを司つかさどる神かみが人體じんたいを取とりたればなり。

生神女讚詞 爾なんぢの神聖しんせいなる活いける宮みや、爾なんぢを腹はらに宿やどしし童貞女どうていぢよ、爾なんぢ我わが神かみの聖せいなる山やまは天軍てんぐんに超こえて美うるはしき者ものなり。

又至聖なる生神女の規程カノン、其冠詞は、至榮なる少女に第四の歌。第四調。

第一歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよより生うまれし主しゆよ、祈いのる、强つよき軍ぐんたる我わが靈たましひの諸慾しよよくを無む慾よくの深處ふかみに沈しづめ給たまへ、我わが鼓つゞみを以もつてするが如ごとく、肉にく情じやうを殺ころすに由よりて凱歌かちうたを爾なんぢに歌うたはん爲ためなり。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの產さんを畏おそるるに因よりて、人人ひとびとは戰をのゝき、諸民しよみんは震ふるひ、諸國しよこくは動うごけり、蓋けだし我わが王わうは來きたりて、暴ばう虐ぎやく者しやを斃たふし、世せ界かいを朽きう壞くわいより救すくひ給たまへり。

最高いとたかきに居をるハリストスは人人ひとびとに降くだりて、己おのれの居處すまひを聖せいにして、動うごきなき者ものと顯あらはせり、蓋けだし爾なんぢは獨ひとり造成主ざうせいしゆを生うみて、生うみし後のちにも童貞どうていの寶たからを守まもり給たまへり。

第三歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢの敎けう會くわいは爾なんぢの爲ために樂たのしみて呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢは我わが能力ちからと避所かくれがと堡障かためなり。

生命せいめいの樹き、神しん゜靈れいの眞まことの葡ぶ萄だうは十じふ字架じかに懸かゝりて、衆しゆう人じんに不ふ朽きうを流ながし給たまふ。

至し大だい至し嚴げんにして地ぢ獄ごくの傲慢がうまんを倒たふしし主しゆは不ふ朽きうの神かみとして今いま肉體にくたいを以もつて復ふく活くわつし給たまへり。

生神女讚詞 神かみの母はゝよ、爾なんぢは獨ひとり地ちに居をる者ものの爲ために性せいに超こゆる諸福しよふくの中ちゆう保はう者しやと爲なれり、故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに慶よろこべよを捧さゝぐ。

又

イルモス 生しやう神女しんぢよ、生せい活くわつにして盡つきざる泉いづみよ、祝いはひて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ者ものの靈たましひを固かため、彼かれ等らに爾なんぢが神妙しんめうなる光くわう榮えいの中うちに榮えい冠くわんを冠かうむらしめ給たまへ。

救世主きうせいしゆよ、蛇へびは毒どくに充みちたる齒はを以もつて我われを囓かみたり、爾なんぢは、全能ぜんのうの主宰しゆさいよ、爾なんぢの手ての釘くぎを以もつて之これを折くじき給たまへり、人ひとを愛あいする主しゆよ、聖者せいしやの中うちに爾なんぢに超こゆる聖せいなる者ものなければなり。

生いのちを賜たまふ仁愛じんあいの主しゆよ、爾なんぢは甘あまんじて死しし、墓はかに置おかれて、地ぢ獄ごくの門もんを啓ひらきて、古こ世せいよりの靈たましひを釋とき給たまへり、人ひとを愛あいする主しゆよ、聖者せいしやの中うちに爾なんぢに超こゆる聖せいなる者ものなければなり。

生神女讚詞 爾なんぢは耕たがへされぬ畝うねと顯あらはれて、生命いのちの穗ほを生しやうじ給たまへり、是これ凡およそ不死ふしに與あづかる者ものの中ちゆう保はう者しやにして、聖者せいしやの中うちに息いこひ給たまふ聖せいなる者ものなり。

又

イルモス 爾なんぢは凡およその首しゆ領りやうより上うへなる者ものにして、甘あまんじて高たかきより地ちに降くだりて、謙けん卑ぴなる人ひとの性せいを最いと下しもなる地ぢ獄ごくより升のぼせ給たまへり、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなる者ものなければなり。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢに由よりて勝たへ難がたき神性しんせいの火ひに著つきたる人ひとの性せいは潔きよめられて活いかさる、蓋けだし爾なんぢの内うちに奧密あうみつに燒やかれたる餅へいは之これを永生えいせいの爲ために養やしなふ。

此この眞まことに神かみに近ちかき者ものは誰たれぞ、是これ天てん使しの品ひん位ゐに超こえ、童貞どうていの華くわ美びを以もつて輝かゞやき、全能者ぜんのうしやの母はゝとして光ひかる者ものなり。

第四歌頌

イルモス 敎けう會くわいは爾なんぢ義ぎの日ひが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、竝ならび立たちて正たゞしく呼よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

爾なんぢは十じふ字架じかに升のぼりて、甘あまんじて衣きたる爾なんぢの至し淨じやうなる肉體にくたいの苦くるしみを以もつて我わが苦くるしみを醫いやし給たまふ。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

主宰しゆさいよ、死しは爾なんぢの罪つみなくして生いのちを施ほどこす身みを呑のみて、宜よろしきに合かなひて殺ころされたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは婚姻こんいんに與あづからずして生うめり、生うみし後のちにも亦また童貞女どうていぢよと現あらはれ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら疑うたがひなき信しんを以もつて默もださざる聲こゑにて爾なんぢに呼よぶ、女宰ぢよさいよ、慶よろこべ。

又

イルモス 預よ言者げんしやアウワクムは爾なんぢ至し上じやう者しやが童貞女どうていぢよより身みを取とり給たまふ神かみの測はかり難がたき定制ていせいを洞察みとほして籲よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

ハリストスよ、律法りつぱふに服ふくしたるイズライリは爾なんぢ服ふくせしめし神かみを識しらざりき、乃すなはち律法りつぱふに對たいして不ふ當たうなる者ものにして、律法りつぱふに背そむきて、爾なんぢを罪犯者ざいはんしやの如ごとく十じふ字架じかに釘ていせり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの神成しんせいせられし靈たましひは地ぢ獄ごくの寶たからを掠かすめて、古こ世せいよりの靈たましひを共ともに復ふく活くわつせしめ、生いのちを施ほどこす體からだは衆しゆうに不ふ朽きうを流ながせり。

生神女讚詞 我われ等ら皆みな爾なんぢ永貞えいてい童女どうぢよ、眞まことの生しやう神女しんぢよ、見神者けんしんしやモイセイの爲ために火ひの中うちに在ありて焚やかれざりし至し淨じやうなる棘いばらの預よ象しやうせし者ものを讚榮さんえいす。

又

イルモス 光くわう榮えいの中うちに神性しんせいの寶はう座ざに坐ざするイイスス神かみは、輕かろき雲くもに乘のるが如ごとく、朽くちざる手てに抱いだかれ來きたりて、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きすと呼よぶ者ものを救すくひ給たまへり。

見みえざる者ものは見みゆる形かたちに於おいて人ひとと偕ともに在いまし、神性しんせいの悟さとられぬ者ものは爾なんぢ少女せうぢよより人體じんたいを受うけて、爾なんぢ潔いさぎよき神かみの母はゝを承うけ認とむる者ものを救すくひ給たまふ。

童貞女どうていぢよは形體けいたいの中うちに無む形けい體たいの者もの、物體ぶつたいに與あづかるを以もつて彼かれに由よりて赤せき子しと爲なりし者ものを受うけたり。故ゆゑに二に性せいに於おいて一いち位ゐにして、肉體にくたいある神かみ及および性せいに超こゆる人ひとは識認しきにんせらる。

爾なんぢ童貞女どうていぢよの内うちに入いりて、種たねなく生うまれ給たまひし神かみ言ことばは、萬物ばんぶつの造成主ざうせいしゆ及および主宰しゆさいたるに因よりて、爾なんぢを產さんの時とき及および產さんの後のちに童貞女どうていぢよとして護まもり給たまへり。

第五歌頌

イルモス 我わが主しゆよ、爾なんぢは光ひかり、信しんじて爾なんぢを崇あがめ歌うたふ者ものを闇くらき無智むちより引ひき出いだす聖せいなる光ひかりにして、世せ界かいに來きたり給たまへり。

主しゆよ、爾なんぢは慈じ憐れんに由よりて地ちに降くだり、爾なんぢは木きに擧あげられて陷おちいりし人ひとの性せいを擧あげ給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢは我わが罪つみに因よる罰ばつを負おひ給たまへり、宏くわう恩おんの主しゆよ、爾なんぢは神聖しんせいなる爾なんぢの復ふく活くわつを以もつて死しの疾やまひを除のぞき給たまへり。

生神女讚詞 神かみの聘女よめよ、我われ等ら爾なんぢを敵てきに對たいして勝かたれぬ武器ぶきとして有たもつ、我われ等ら爾なんぢを堅固かため及および我わが救すくひの冀望たのみとして得えたり。

又

イルモス 萬物ばんぶつは爾なんぢが神妙しんめうの光くわう榮えいに驚おどろかざるなし、爾なんぢ婚配こんぱいを識しらざる童貞女どうていぢよは至し上じやうの神かみを孕はらみ、永遠えいゑんの子こを生うみて、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものに平安へいあんを賜たまへばなり。

無知むちなる地ぢ獄ごくは口くちを啓ひらきて全まつたく爾なんぢを受うけたり、蓋けだし爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせられ、戈ほこにて刺さされ、氣息いきなきを見みて、活いける神かみを常人つねびとと思おもへり、惟たゞ爾なんぢの神性しんせいの能力ちからを試こゝろみて悟さとれり。

不死ふしにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの身みの毁こぼたれたる殿でんを分わかちし墓はか及および地ぢ獄ごくは兩ふたつながら强しひられて、一いつは爾なんぢの諸聖人しよせいじんの靈たましひを放はなち、一いつは其その體からだを還かへせり。

生神女讚詞 視みよ、今いま預よ言者げんしやの預よ言げんは應かなへり、蓋けだし爾なんぢ婚配こんぱいを識しらざる童貞女どうていぢよは至し上じやうの神かみを孕はらみ、永遠えいゑんの子こ、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものに平安へいあんを賜たまふ主しゆを生うみ給たまへり。

又

イルモス 神かみは預よ言げんして云いへり、我われ今いま起おき、今いま光くわう榮えいを獲え、今いま高たかく擧あがりて、童貞女どうていぢよより受うけたる陷おちいりし者ものを我わが神性しんせいの靈れい智ちなる光ひかりに擧あげん。

潔いさぎよき者ものよ、神かみの子こは爾なんぢの内うちに入いりて、爾なんぢを光くわう榮えいの堂だう、神かみの聖山せいざん、聘女よめ、宮みや、聖せいにせられし殿でんと爲なし、我われ等らの爲ために永在えいざいの樂園らくゑんと爲なし給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢは童貞女どうていぢよの血ちより種たねなくして人體じんたいを受うけ給たまへり、是これ至し淨じやうにして實在じつざいなる、明覺めいがくにして靈たましひある、自じ行かう、自じ願ぐわん、自じ宰さい、自じ主しゆの人體じんたいなり。

童貞女どうていぢよの腹はらは暴ばう虐ぎやく者しやの智慧ちゑを辱はづかしめたり、蓋けだし哺乳兒ちのみごは手てを靈たましひを害がいする蝮まむしの穴あなに入いれ、傲慢がうまんなる反はん離り者しやを倒たふして、信者しんじやの足そく下かに服ふくせしめたり。

第六歌頌

イルモス 憐あはれみに由よりて爾なんぢの脅わきより流ながれし血ちにて惡あく魔まの祭まつりの血ちより淨きよめられし敎けう會くわいは爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、讚揚ほめあげの聲こゑを以もつて爾なんぢを祭まつらん。

爾なんぢは十じふ字架じかに上のぼり、力ちからを帶おびて、暴ばう虐ぎやく者しやと戰たゝかひ、神かみとして之これを高たかきより墜おとし、勝かたれぬ力ちからを以もつてアダムを復ふく活くわつせしめ給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢは美うるはしく輝かゞやきて墓はかより復ふく活くわつして、爾なんぢの神聖しんせいなる力ちからを以もつて諸敵しよてきを散ちらし、神かみとして衆しゆうを樂たのしみに充みて給たまへり。

生神女讚詞 嗚呼あゝ諸しよ奇き跡せきに超こゆる新あらたなる奇き跡せきや、童貞女どうていぢよは夫をつとを識しらずして胎内たいないに萬有ばんいうを保たもつ主しゆを孕はらみて、狹せまからざりき。

又

イルモス 我われ海うみの深處ふかみに至いたり、多おほくの罪つみの暴風あらしは我われを沈しづめたり、慈じ憐れんの主しゆよ、神かみなるに由よりて、我わが生命いのちを深處ふかみより引ひき上あげ給たまへ。

地ぢ獄ごくは其その口くちを啓ひらきて我われを呑のみ、無智むちにして高たかぶれり、然しかれどもハリストスは降くだりて我わが生命いのちを擧あげたり、人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

死しに因よりて死しは滅ほろびたり、蓋けだし死しせし者ものは復ふく活くわつして、我われに不ふ朽きうを賜たまへり。不死ふしの主しゆは女をんな等たちに現あらはれて、祝慶よろこびを宣のべたり。

生神女讚詞 嗚呼あゝ生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの腹はらは勝たへ難がたき神性しんせいの潔いさぎよき宿處やどりどころと顯あらはれたり、天てんの品ひん位ゐは畏おそれなくして之これを見みるを得えざりき。

又 イルモス 同上。

昔むかし蛇へびは我わが原げん母ぼエワに依よりて我われを誘いざなひて殺ころせり、今いまは、潔いさぎよき者ものよ、我われを造つくりし主しゆは爾なんぢに依よりて我われを朽きう壞くわいより喚よび起おこせり。

少女せうぢよよ、仁じん慈じの淵ふちは爾なんぢ選えらびたる者ものを言いひ難がたく奇き跡せきの淵ふちと顯あらはせり、蓋けだし珍珠ちんじゆたるハリストスは爾なんぢより神性しんせいの電いなづまにて輝かゞやけり。

小讚詞コンダク、第四調。

我わが救世主きうせいしゆ及および贖しよく罪主ざいしゆは神かみとして地ちに生うまれし者ものを桎梏かせより釋ときて、墓はかより復ふく活くわつせしめ、地ぢ獄ごくの門もんを破やぶりて、主宰しゆさいとして三みつ日目かめに復ふく活くわつし給たまへり。

同讚詞イコス 我われ等ら地ちに生うまるる者ものは皆みな生命いのちを賜たまふハリストス、死しより復ふく活くわつして三みつ日目かめに墓はかより出いで、己おのれの力ちからを以もつて死しの門もんを破やぶり、地ぢ獄ごくを殺ころし、死しの刺はりを折くじき、アダムをエワと偕ともに釋ときたる主しゆを歌うたひて、熱心ねつしんに讚さん美びを奉たてまつらん。蓋けだし彼かれは獨一どくいつ有能いうのうなる神かみ及および主宰しゆさいとして三みつ日目かめに復ふく活くわつし給たまへり。

第七歌頌

イルモス アウラアムの少者せうしやはペルシヤの爐ゐろりに在ありて、焰ほのほよりも强つよく敬虔けいけんの愛あいに爇やかれて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢが光くわう榮えいの殿でんに於おいて爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

ハリストスの神聖しんせいなる血ちを以もつて洗あらはれて不ふ朽きうに召めされたる人類じんるゐは感謝かんしやして歌うたふ、主しゆよ、爾なんぢが光くわう榮えいの殿でんに於おいて爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

ハリストスよ、我われ等らの復ふく活くわつの源みなもとたる爾なんぢの墓はかは、生命いのちを施ほどこす者もの、地ぢ堂だうより美うるはしき者もの、實じつに凡およその王わうの宮みやよりも光ひかれる者ものとして現あらはれたり。

生神女讚詞 至し上じやう者しやの聖せいにせられたる神妙しんめうの居處すまひよ、慶よろこべ、蓋けだし生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢに緣よりて欣喜よろこびは斯かく呼よぶ者ものに賜たまはりたり、至いたりて無む玷てんなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢは女をんなの中うちに祝しゆく福ふくせられたり。

又

イルモス 敬虔けいけんの者ものは造物主ざうぶつしゆに易かへて造物ざうぶつに事つかふることをせざりき、火ひの嚇おどしを勇いさましく踐ふみて、喜よろこび歌うたへり、讚さん美びたる主しゆ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

人ひとを救すくふ主しゆよ、爾なんぢは木きに擧あげられて驕おごれる目めを低ひくくし、高たかぶれる眉まゆを地ちに下くだせり。讚さん美びたる主しゆ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

死しより復ふく活くわつして、地ぢ獄ごくに囚とらはれたる無む數すうの人人ひとびとを出いだしし主宰しゆさいよ、我われ等ら爾なんぢに事つかふる者ものの角つのを爾なんぢの力ちからを以もつて高たかくし給たまへ。讚さん美びたる主しゆ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

聖三者讚詞 我われ等らは神聖しんせいなる宣言せんげんに遵したがひて、惟一ゆゐいちの神かみ、三さん光くわうに於おいて混淆こんかうなく分ぶん離りなくして輝かゞやく主しゆ、萬物ばんぶつを照てらす永久えいきうの光くわう焰えんを讚榮さんえいして呼よぶ、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

又

イルモス 三人みたりの少者せうしやはワワィロンに於おいて窘迫者くるしめびとの命令めいれいを空言くうげんと爲なして、焰ほのほの中うちに呼よべり、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我わが心こゝろに燃もゆる愛あいの火ひは我われを生しやう神女しんぢよを歌うたふ爲ために進すゝめて、母はゝ及および童貞女どうていぢよに呼よばしむ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、萬軍ばんぐんの主しゆは爾なんぢと偕ともにす。

生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは造成主ざうせいしゆ及および主宰しゆさいを生うみて、造物ざうぶつより最高いとたかき者ものと現あらはれたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、萬軍ばんぐんの主しゆは爾なんぢと偕ともにす。

聖三者讚詞 我われは爾なんぢ獨一どくいつの主しゆを三みつの分わかれざる聖せいなる位くらゐに於おいて尊たふとみ、三さん位ゐの神性しんせいを歌うたひて呼よぶ、萬有ばんいうを宰つかさどる三者さんしやよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

第八歌頌

イルモス ダニイルは獅子しし穴あなに在ありて手てを伸のべて、獅子ししの口くちを閉とざし、敬虔けいけんの篤あつき少者せうしやは德とくを帶おび、火ひの力ちからを滅けして呼よべり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは十じふ字架じかに手てを伸のべて萬民ばんみんを集あつめ、爾なんぢを讚さん頌しようする惟一ゆゐいちの敎けう會くわいを顯あらはして、在ざい地ち在天ざいてんに同心どうしんに歌うたはしむ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

白はく衣いにして復ふく活くわつの近ちかづき難がたき光ひかりに輝かゞやける天てん使しは女をんな等たちに現あらはれて呼よべり、何なんぞ生いける者ものを死し者しやの如ごとく墓はかに尋たづぬる、ハリストスは實じつに興おきたり、我われ等ら彼かれに呼よばん、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは獨ひとり萬族ばんぞくの中うちに神かみの母はゝと現あらはれたり、純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは神性しんせいの居處すまひと爲なりて、近ちかづき難がたき光ひかりの火ひに焚やかれざりき。故ゆゑに神かみの聘女よめマリヤよ、我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

又

イルモス 生しやう神女しんぢよの產さんは敬虔けいけんの少者せうしやを爐ゐろりの中うちに守まもれり。其時そのときに預あらかじめ徵しるされ、今いま已すでに應かなひし此この產さんは全ぜん世せ界かいに勸すゝめて爾なんぢに歌うたはしむ、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

ハリストスよ、造物ざうぶつは爾なんぢが非義ひぎに屠ほふらるるを見みて、哀かなしみて哭なけり、地ちは悶もだえ、日ひは黑こく衣いの如ごとく晦冥くらやみを衣きたり、我われ等らは絕たえず爾なんぢを歌うたひて世世よよに崇あがめ讚ほむ。

我われに降くだりて地ぢ獄ごくにまで至いたり、衆しゆうの爲ために復ふく活くわつの途みちを闢ひらきし主しゆよ、爾なんぢは復また升のぼり、我われを肩かたに任になひて父ちゝに攜たづさへ給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

聖三者讚詞 我われ等らは原げん始しの智慧ちゑ及および萬有ばんいうの原因げんいんたる惟一ゆゐいち自じ在ざいなる父ちゝ、無む原げんの言ことば、及および撫ぶ恤じゆつ者しやたる神しん゜、萬有ばんいうの獨一どくいつの神かみを讚榮さんえいし、合一がふいつなる三者さんしやに伏拜ふくはいして、萬世ばんせいに之これを崇あがめ讚ほむ。

又

イルモス 衆しゆう人じんの贖しよく罪主ざいしゆ全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは降くだりて、焰ほのほの中うちに敬虔けいけんを守まもりし者ものに露つゆを注そゝぎて、歌うたはしめ給たまへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて崇あがめ讚ほめよ。

爾なんぢをアダムの肋あばら骨ぼねより造つくりし萬有ばんいうの主しゆは爾なんぢの童貞どうていより身みを取とり給たまへり。我われ等ら彼かれを歌うたひて呼よぶ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ、歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

生しやう神女しんぢよよ、アウラアムは幕まくに在ありて爾なんぢに於おける奧密あうみつを見みたり、蓋けだし彼かれは爾なんぢの無む形けいの子こを接うけて歌うたへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ、歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

少女せうぢよよ、爾なんぢの童貞どうていの預よ象しやうは聖三者せいさんしやと同どう數すうなる少者せうしやを救すくへり、蓋けだし彼かれ等らは童貞どうていの身みを以もつて焰ほのほを踐ふみて呼よべり、主しゆを崇あがめ、歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

第九歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよよ、手てにて斫きられざる隅石すみいしハリストスは、爾なんぢ斫きられざる山やまより斫きり分わけられて、離はなれたる性せいを合あはせ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら樂たのしみて、爾なんぢ生しやう神女しんぢよを崇あがめ歌うたふ。

我わが神かみよ、爾なんぢは全まつたき神性しんせいを以もつて混淆こんかうせざる合一がふいつに於おいて全まつたき我われを受うけて、多おほくの慈じ憐れんに由よりて身みにて十じふ字架じかに忍しのびたる爾なんぢの苦くるしみを以もつて全まつたき我われに救すくひを賜たまへり。

爾なんぢの門もん徒とは爾なんぢの墓はかの啓ひらかれ、爾なんぢの復ふく活くわつに由よりて神かみの身みを裹つゝみし布ぬのの空むなしくなりたるを見みて、天てん使しと偕ともに呼よべり、主しゆは實じつに興おき給たまへり。

聖三者讚詞 我われ等ら衆しゆう信者しんじやは神性しんせいの惟一ゆゐいちにして三さん位ゐなる神かみに伏拜ふくはいして、混淆こんかうせざる位くらゐに於おいて同どう能のう同尊どうそんなる父ちゝ、子こ、聖神せいしんを尊たふとみて崇あがめ讚ほむ。

又

イルモス 凡およそ地ちに生うまるる者ものは聖神せいしんに照てらされて樂たのしみ、形かたちなき智慧ちゑの性せいも祝いはひ、神かみの母はゝの聖せいなる祭まつりを尊たふとみて呼よぶべし、至いたりて福さいはひなる潔いさぎよき生しやう神女しんぢよ、永貞えいてい童女どうぢよよ、慶よろこべよ。

蛇へびは匍はひ近ちかづき、欺あざむきを以もつて我われを擄とらへて、エデムより出いだせり、全能ぜんのうの主しゆは髑髏されかうべの處ところの堅かたき石いしに彼かれを嬰兒みどりごの如ごとく擊うち殺ころし、十じふ字架じかの木きを以もつて我われの爲ために復また樂園らくゑんの門もんを啓ひらき給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢは敵てきの固かためを破やぶり、全能ぜんのうの手てを以もつて其その富とみを掠かすめ、我われを地ぢ獄ごくより引ひき出いだし、昔むかしの甚はなはだしく誇ほこる者ものを辱はづかしめ給たまへり。

仁じん慈じなるハリストスよ、爾なんぢの卑微ひびなる民たみを顧かへりみて諸難しよなんより救すくひ、爾なんぢの權能けんのうの手てを以もつて我わが皇くわう帝ていを堅かため、爾なんぢの選えらびたる嗣し業げふを諸敵しよてきより護まもり給たまへ、爾なんぢは仁愛じんあいの主しゆなればなり。

又

イルモス 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、神かみの言いひ難がたき祕ひ密みつは明あきらかに爾なんぢに於おいて行おこなはる、蓋けだし神かみは慈じ憐れんに由よりて爾なんぢより身みを取とりて生うまれ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを生しやう神女しんぢよとして崇あがめ讚ほむ。

聖神せいしんの裝さう飾しよくせし紫し袞こん衣いを衣きたる至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢを棘いばらの中なかに耀かゞやく百合花ゆり、忠ちゆう信しんに爾なんぢを讚ほめ揚あぐる衆しゆう人じんを芳かうばしき香かをりに滿みつる者ものとして觀みる。

純じゆん潔けつなる者ものよ、不ふ朽きうなる主しゆは爾なんぢの腹はらより朽きう壞くわいすべき人ひとの性せいを取とりて、仁じん慈じに由よりて之これを己おのれの内うちに不ふ朽きうなる者ものと爲なし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを生しやう神女しんぢよとして崇あがめ讚ほむ。

萬物ばんぶつの女宰ぢよさいたる者ものよ、爾なんぢの民たみに勝しよう利りを與あたへて、敵てきを敎けう會くわいと和わせしめ給たまへ、我われ等らが爾なんぢを生しやう神女しんぢよとして崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

共頌カタワシヤの後に小聯禱、及び主我等の神は聖なり、次に光耀歌。光榮、今も、生神女讚詞。

「凡そ呼吸ある者」に主日の讚頌スティヒラ、第四調。

句 彼かれ等らの爲ために記しるされし審判しんぱんを行おこなはん爲ためなり。斯この榮さかえは其その悉ことごとくの聖人せいじんに在あり。

十じふ字架じかと死しとを忍しのび、死しより復ふく活くわつせし全能ぜんのうの主しゆよ、我われ等ら爾なんぢの復ふく活くわつを讚榮さんえいす。

句 神かみを其その聖所せいしよに讚ほめ揚あげよ、彼かれを其その有いう力りよくの穹蒼おほぞらに讚ほめ揚あげよ。

ハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかにて我われ等らを古いにしへの詛のろひより解とき、爾なんぢの死しにて我われ等らの性せいを苦くるしむる惡あく魔まを空むなしくし、爾なんぢの復ふく活くわつにて萬有ばんいうを歡喜よろこびに滿みて給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、死しより復ふく活くわつせし主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 其その權能けんのうに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ、其その至いと嚴おごそかなるに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかにて我われ等らを爾なんぢの眞しん理りに導みちびきて、敵てきの網あみより脫のがれしめ給たまへ。死しより復ふく活くわつせし仁愛じんあいの主しゆよ、爾なんぢの聖人せいじんの祈き禱たうに因よりて爾なんぢの手てを伸のべて、罪つみに陷おちいりし我われ等らを起おこし給たまへ。

句 角らつぱの聲こゑを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、琴きんと瑟しつとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

神かみの獨生どくせいの言ことばよ、爾なんぢは父ちゝの懷ふところを離はなれずして、人ひとを愛あいするに因よりて地ちに來きたり、變易へんえきせずして人ひとと爲なれり。神かみの性せいには苦くるしみに與あづからざる者ものにして、身みにて十じふ字架じかと死しとを忍しのび、死しより復ふく活くわつして、人類じんるゐに不死ふしを賜たまへり、獨ひとり全能ぜんのうの主しゆなればなり。

又讚頌スティヒラ、アナトリイの作、同調。

句 鼓つゞみと舞まひとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、絃いとと簫せうとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは身みにて死しを受うけたり、我われ等らに不死ふしを得えしめん爲ためなり、墓はかに入いりたり、我われ等らを地ぢ獄ごくより脫のがれしめて、己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめん爲ためなり、爾なんぢは人ひととして苦くるしみを受うけ、神かみとして復ふく活くわつし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら呼よぶ、生命いのちを賜たまふ主しゆ、獨ひとり人ひとを愛あいする者ものよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 和くわ聲せいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、大聲たいせいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。凡およそ呼吸いきある者ものは主しゆを讚ほめ揚あげよ。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかが髑髏されかうべの處ところに樹たてられし時とき、磐いはは裂さけたり、爾なんぢが死し者しやとして墓はかに藏をさめられし時とき、地ぢ獄ごくの門衞かどもりは懼おそれたり、蓋けだし爾なんぢ救世主きうせいしゆよ、死しの權けんを空むなしくして、爾なんぢの復ふく活くわつにて悉ことごとくの死し者しやに不ふ朽きうを賜たまへり。生命いのちを賜たまふ主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる毋なかれ。

ハリストス神かみよ、女をんな等たちは爾なんぢの復ふく活くわつを觀みんと欲ほつせしに、先まづマリヤ マグダリナ來きたりて、石いしの墓はかより移うつされ、天てん使しの坐ざせるに遇あへり、彼かれ女をんなに謂いふ、爾なんぢ等ら何なんぞ生いける者ものを死し者しやの中うちに尋たづぬる、彼かれは神かみとして復ふく活くわつし給たまへり、萬民ばんみんを救すくはん爲ためなり。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き跡せきを傳つたへん。

イウデヤ人じんよ、言いふべし、爾なんぢ等らが守まもらんと定さだめしイイススは安いづこにか在ある、爾なんぢ等らが墓はかに置おきて、石いしに封印ふういんせし者ものは安いづこにか在ある、生命せいめいの主しゆを諱いみし者ものよ、死し者しやを與あたへ、葬はうむられし者ものを與あたへよ、或あるひは復ふく活くわつせし者ものを信しんぜよ。若もし爾なんぢ等ら主しゆの復ふく活くわつに於おいて默もださば、石いしは呼よばん、殊ことに墓はかより移うつされし者ものは然しかせん。我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの仁じん慈じは大おほいなる哉かな、爾なんぢの定制ていせいの奧あう義ぎは大おほいなる哉かな、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、早課の福音の讚頌スティヒラ。今も、生神女讚詞、「生神童貞女よ、爾は至りて讚美たる者なり」。大詠頌。

詠頌の後に復活の讚詞トロパリ

主しゆよ、爾なんぢは墓はかより復ふく活くわつして、地ぢ獄ごくの鎖くさりを壞やぶり、死しの定罪ていざいを滅ほろぼし、衆しゆう人じんを敵てきの網あみより救すくへり。獨ひとり大だい慈じ憐れんなる者ものよ、爾なんぢは使徒しとに顯あらはれて、彼かれ等らを傳敎でんけうに遣つかはし、彼かれ等らに依よりて爾なんぢの平安へいあんを世せ界かいに賜たまへり。

次ぎて聯禱及び發放詞。其後第一時課、其他常例の如し、幷に最後の發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 主日の聖体礼儀に

聖體禮儀リトゥルギヤには眞福詞、第四調。

アダムは木きに緣よりて樂園らくゑんより出いだされ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかの木きに緣よりて樂園らくゑんに入いりたり。彼かれは食しよくして造物主ざうぶつしゆの誡いましめに背そむき、此これは共ともに十じふ字架じかに釘ていせられて、隱かくれたる神かみを認みとめて籲よべり、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 心こゝろの淸きよき者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみを見みんとすればなり。

十じふ字架じかに擧あげられて死しの力ちからを滅ほろぼし、神かみとして我われ等らの罪つみの書券かきつけを抹けしし獨一どくいつ仁愛じんあいの主しゆよ、我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢに事つかふる者ものにも盜賊たうぞくの痛つう悔くわいを與あたへ給たまへ、蓋けだし我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、ハリストス我わが神かみよ、我われ等らをも爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへ。

句 和わ平へいを行おこなふ者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみの子こと名なづけられんとすればなり。

人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに於おいて戈ほこを以もつて我われ等らの罪つみの書券かきつけを破やぶり、死し者しやの中うちに入いりて彼處かしこの暴ばう虐ぎやく者しやを縛しばり、爾なんぢの復ふく活くわつを以もつて衆しゆう人じんを地ぢ獄ごくの械繫かせより釋とき給たまへり。我われ等ら是これに照てらされて爾なんぢに呼よぶ、我われ等らをも爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの者ものなればなり。

十じふ字架じかに釘ていせられ、全能ぜんのうなるに因よりて、三みつ日目かめに墓はかより復ふく活くわつし、始はじめて造つくられしアダムを復ふく活くわつせしめし獨一どくいつ不死ふしの主しゆよ、我われをも痛つう悔くわいに向むかはせ、心こゝろを全まつたうして、熱あつき信しんを以もつて、常つねに爾なんぢに籲よばしめ給たまへ、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

苦くるしみに與あづからざる主しゆは我われ等らの爲ために苦くるしみに與あづかる人ひとと爲なり、甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせられて、我われ等らを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめ給たまへり。故ゆゑに我われ等らは十じふ字架じかと共ともに苦くるしみ及および復ふく活くわつを讚榮さんえいす、此これ等らに由よりて我われ等らは新あらたに造つくられ、此これ等らに由よりて救すくはれて呼よぶ、我われ等らをも爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

我われ等ら信者しんじやは、死しより復ふく活くわつして、地ぢ獄ごくの權けんを虜とりこにし、攜香女けいかうぢよに現あらはれて、慶よろこべよと云いひし主しゆに、我わが靈たましひを滅亡ほろびより救すくはんことを祈いのりて、善ぜん智ちなる盜賊たうぞくの聲こゑを以もつて恒つねに彼かれに籲よばん、我われ等らをも爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへ。

光榮、聖三者讚詞 我われ等ら衆しゆう信者しんじやは宜よろしきに合かなひて同どう意いに父ちゝ、子こ、聖神せいしんを讚榮さんえいするを得えん爲ために祈いのらん。惟一ゆゐいちの神性しんせいは三さん位ゐに於おいて混淆こんかうなく、分ぶん離りなく、單一たんいつにして近ちかづき難がたし、我われ等らは彼かれに由よりて火ひの苦くるしみより救すくはる。

今も、生神女讚詞 ハリストスよ、我われ等らは身みにて種たねなく爾なんぢを生うみし爾なんぢの母はゝ、產さんの後のちにも實じつに不ふ朽きうなる童貞女どうていぢよに止とゞまりし者ものを轉達者てんたつしやとして爾なんぢに進すゝむ。慈じ憐れん多おほき主宰しゆさいよ、我われ等らをも爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへと常つねに呼よぶ者ものに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

提綱ポロキメン、第四調。

主しゆよ、爾なんぢの工業しわざは何なんぞ多おほき、皆みな智慧ちゑを以もつて作つくれり。

句 我わが靈たましひよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、主しゆ我わが神かみよ、爾なんぢは至いたりて大おほいなり。

「アリルイヤ」、神かみよ、爾なんぢの寶はう座ざは世世よよに在あり、爾なんぢの國くにの權柄けんぺいは正せい直ちよくの權柄けんぺいなり。句、爾なんぢは義ぎを愛あいし、不ふ法はふを惡にくめり。

横線 - 『八調経』第四調

 主日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に痛悔の讚頌スティヒラ、第四調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

人ひとを愛あいする主しゆよ、我わが爾なんぢの前まへに犯おかしし罪つみは人ひとの性せいに順したがひて行おこなひし事こと、卽すなはち赦ゆるさるべき者ものには非あらず、是これ人ひとの性せいに違たがひて行おこなひし事ことにして、赦ゆるしを得うべからざる者ものなり。然しかれども爾なんぢ、性せいの則のりに超こえて不可思議ふかしぎに人ひとと爲なりし我わが救世主きうせいしゆよ、智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの仁愛じんあいに因よりて、爾なんぢに趨はしり附つく我われを憐あはれみ給たまへ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

ハリストスよ、爾なんぢは義ぎ人じんの爲ためにあらずして罪人ざいにんの爲ために痛つう悔くわいを定さだめ給たまり。故ゆゑに我われは盜賊たうぞくと蕩たう子し、マナッシヤと淫いん婦ぷ、窘逐者きんちくしや、稅ぜい吏り、及および爾なんぢを諱いみし者ものの例れいを有たもちて、望のぞみを失うしなはず。蓋けだし我わが救世主きうせいしゆよ、我われ爾なんぢの仁じん慈じ愛憐あいれんを知しりて、淚なみだを流ながして、爾なんぢに趨はしり附つきて、爾なんぢが我われを受うけんことを確信かくしんす。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

神かみ萬有ばんいうの王わうよ、我われ今いま肉慾にくよくに沈しづみて、爾なんぢより遠とほざかりたる者ものに傷しやう感かんの心こゝろ、惡あくに離はなるること、及および眞まことの更新あらたまりを與あたへ給たまへ。全能ぜんのうなるイイスス、我われ等らの靈たましひの救主きうしゆよ、爾なんぢの多おほくの仁じん慈じに由よりて、我われ望のぞみを有たもたざる放蕩はうたうの者ものを救すくひ給たまへ。

次に、之あらば、月課經ミネヤの聖人の讚頌スティヒラ。若し月課經なくば、聖なる無形軍の讚頌、第四調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

不死ふしなる主しゆよ、爾なんぢは天軍てんぐんを以もつて爾なんぢの神聖しんせいなる光ひかりの最いと尊たふとき器うつはと爲なし、天てん使しの品ひん位ゐを定さだめて、爾なんぢの寶はう座ざの前まへに奉ほう事じし、爾なんぢの光くわう榮えいを仰あふぎ、爾なんぢの言ことばに遵したがひ、爾なんぢの至し聖せいなる旨むねを行おこなふ者ものと爲なし給たまへり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

仁じん慈じにして無む原げんなる主宰しゆさいよ、爾なんぢは仁じん慈じの淵ふちを顯あらはさんと欲ほつして、先まづ爾なんぢの全能ぜんのうの指麾しき及および神聖しんせいなる命めいを以もつて天軍てんぐんの品ひん位ゐを造つくり給たまへり。蓋けだし仁じん慈じの限かぎりなき主しゆには其その仁じん慈じを溢あふれしめて、無む數すうの者ものの恩おん賜しと爲なさんことは誠まことに宜よろしきに合かなへり。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

全能者ぜんのうしやよ、六翼りくよくのセラフィム、多た目もくのヘルワィムは最高いとたかき寶はう座ざと偕ともに爾なんぢを繞めぐりて立たち、直たゞちに爾なんぢの全功ぜんこうの光ひかりに與あづかり、主しゆ制せい、首しゆ領りやう、權柄けんぺい、差さ役首えきしゆ、差さ役えき、及および神聖しんせいなる能のう力りよくは爾なんぢの光くわう榮えいを崇あがめ讚ほめて、我われ等らの爲ために爾なんぢに祈いのる。

光榮、今も、生神女讚詞 天てん使しの品ひん位ゐに超こゆる純じゆん潔けつなる者ものよ、天てん使しと偕ともに常つねに天てん使し及および萬物ばんぶつを宰つかさどる主しゆに祈いのりて、我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまひ、我われ等らを諸慾しよよくより脫のがれしめ、我われ等らを其時そのときに彼かれの光くわう榮えいを歌うたひ及および永福えいふくを嗣つぐに勝たふる者ものと爲なさんことを求もとめ給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第四調。

主しゆよ、我われ淚なみだを以もつて吾わが罪つみの書券かきつけを滌あらひ、吾わが生命いのちの餘よ日じつを痛つう悔くわいを以もつて爾なんぢを悅よろこばしめんと欲ほつしたれども、敵てきは我われを誘いざなひて、吾わが靈たましひを攻せむ、主しゆよ、我わが未いまだ全まつたく亡ほろびざる先さきに我われを救すくひ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

主しゆよ、誰たれか颶ぐ風ふうに遭あひて、爾なんぢの停泊みなとに著つきて救すくひを獲えざらん、或あるひは誰たれか病やまひに遇あひて、爾なんぢ萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ及および病やむ者ものの醫師いしの治ち療れうを求もとめて愈いゆるを得えざらん、主しゆよ、我わが未いまだ全まつたく亡ほろびざる先さきに我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり。我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

爾なんぢの諸聖人しよせいじんの記き憶おくに於おいて榮えいせらるるハリストス神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうを納いれて、我われ等らに大おほいなる憐あはれみを垂たれ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 光ひかりの雲くもよ、慶よろこべ、光くわう明めいなる燈ともしびよ、慶よろこべ、「マンナ」を納いるる壺つぼよ、慶よろこべ、アアロンの杖つゑよ、慶よろこべ、焚やかれぬ棘いばらよ、慶よろこべ、宮きゆう殿でんよ、慶よろこべ、寶はう座ざよ、慶よろこべ、聖せいなる山やまよ、慶よろこべ、避所かくれがよ、慶よろこぺ、神聖しんせいなる筵えんよ、慶よろこべ、奧密あうみつの門もんよ、慶よろこべ、衆しゆうの歡喜よろこびよ、慶よろこべ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、及び發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 主日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第四調。

第一歌頌

イルモス 古いにしへのイズライリは足あしを濡ぬらさずして海うみの紅くれなゐの淵ふちを渡わたり、野のに於おいてモイセイの十じふ字じ形かたの手てにてアマリクの力ちからに勝かてり。

神かみを身みにて生うみし至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、我わが靈たましひより奉たてまつる禱いのりを納いれ給たまへ、我われ爾なんぢの有能いうのうなる援助たすけに趨はしり附つきたればなり、願ねがはくは我わが冀望のぞみは空むなしくならざらん。

至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、我われ忠ちゆう信しんに爾なんぢに俯ふ伏ふくす、多おほくの勇敢いさみを有たもつに因よりて、爾なんぢの子この前まへに轉達てんたつして、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを諸もろもろの憂うれひより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 我われ生命いのちの海うみの浪なみに溺おぼらされ、烈はげしき危き難なんに圍かこまれて、穩おだやかなる停泊みなとたる爾なんぢの帲幪おほひに趨はしり附つきたり、故ゆゑに生しやう神女しんぢよよ、我われを諸難しよなんより救すくひ給たまへ。

今も 仁じん慈じ純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、愛憐あいれんにして溫柔をんじうなる目めを以もつて爾なんぢの僕ぼくを見み、速すみやかに爾なんぢの僕ぼくの禱いのりを聆きき、之これを應かなへて、仇敵きうてきの惡謀あくぼうを破やぶり給たまへ。

第三歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢの敎けう會くわいは爾なんぢの爲ために樂たのしみて呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢは我わが能力ちからと避所かくれがと堡障かためなり。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢは信者しんじやの爲ために敵てきに對たいしては扶ふ助者じよしや、戰たゝかひに於おいては保護ほご者しや、悲哀かなしみに在ある者ものには避所かくれがなり。

爾なんぢが身みにて生うみし萬有ばんいうの神かみに、其その爾なんぢの子こなるに因よりて、度生いのちの誘惑いざなひに因よる吾わが惡あく事じより我われを釋とかんことを祈いのり給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、慈じ憐れんを以もつて我われ等らの卑微ひびなるを顧かへりみて、爾なんぢの諸僕しよぼくに迫せまる怒いかりより脫のがれしめ給たまへ。

今も 仁じん慈じなる女宰ぢよさいよ、我われ等ら常つねに爾なんぢの帲幪おほひの下したに諸もろもろの憂うれひより救すくはれて、爾なんぢの子こに讚さん美びを奉たてまつる。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、爾なんぢの作爲わざを悟さとりて驚おどろけり。

潔いさぎよき神かみの母はゝよ、爾なんぢの子この前まへに勇敢いさみを有たもつに因よりて、我われを現在げんざいの誘惑いざなひより護まもりて、常つねに我われと戰たゝかふ諸敵しよてきの謀はかりごとを破やぶり給たまへ。

天てん上じやうの品ひん位ゐ、諸しよ致ち命者めいしや、及および諸しよ義ぎ人じんは使徒等しとらと偕ともに、神聖しんせいなる預よ言者げんしや、及および克肖者こくせうしやの會くわいは生しやう神女しんぢよ母はゝと偕ともに我われ等らの爲ためにハリストスに祈いのり給たまへ。

光榮 ハリストスよ、世せ界かいの爲ために祈いのる爾なんぢの至し榮えいなる母はゝを納いれ給たまへ、彼かれは慈じ憐れんを抱いだきて爾なんぢに呼よぶ、吾わが子こよ、我われの祈禱いのりを納いれて、地ちに迫せまる怒いかりを鎭しづめ給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよよ、我われ爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくして、吾わが心こゝろの深處ふかみより祈いのる、我われを現在げんざいの誘惑いざなひより護まもり給たまへ、我わが罪惡ざいあくより救すくはれて、歌うたを爾なんぢの光明くわうみやうに奉たてまつらん爲ためなり。

第五歌頌

イルモス ハリストスよ、不ふ虔けんの者ものは爾なんぢの光くわう榮えいを見みざらん、惟たゞ我われ等らは夜よより寤さめて、爾なんぢ神かみの獨生どくせい子し、父ちゝの光くわう榮えいの輝煌かゞやき、人ひとを愛あいする主しゆを崇あがめ歌うたふ。

地ち上じやうの者ものの倚賴たのみ及および守護まもりなる潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、祈いのる、我われ等ら卑微ひびなる者ものを憐あはれみて、現在げんざいの怒いかりより脫のがれしめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ等らは爾なんぢの祈き禱たうを壞やぶられぬ墻かきとして有たもちて爾なんぢに呼よぶ、鳴呼あゝ女宰ぢよさいよ、我われ等らに慈じ憐れんを垂たれて、諸敵しよてきを逐おひ給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、我われ等らは淚なみだと共ともに祈いのりて、爾なんぢの仁じん慈じに伏拜ふくはいす、願ねがはくは我われ等ら常つねに爾なんぢを賴たのむを以もつて誇ほこる者ものは耻はぢを得えざらん。

今も 至いたりて讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢの至し淨じやうなる手てを以もつて我われ等らを攻せむる敵てきを逐おひ給たまへ、不ふ當たうなる彼かれ等らが我われ等らの倚賴たのみを爾なんぢに負おはせしを知しらん爲ためなり。

第六歌頌

イルモス 三日みつかの葬はうむりを預よ象しやうする預よ言者げんしやイオナは鯨くぢらの中うちに在ありて祈いのりて籲よべり、イイスス萬軍ばんぐんの王わうよ、我われを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆよ、祈いのる、種たねなく爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて我われ等らの罪つみを潔きよめ給たまへ、言ことばよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために爾なんぢの尊たふとき血ちを流ながしたればなり。

凶きよう惡あくなる敵てきは集あつまりて、非義ひぎに我われ等らを攻せむ。神かみの聘女よめよ、昔むかし魔ま術じゆつ者しやシモンを斃たふしし如ごとく、彼かれ等らを斃たふし給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、祈いのる、我われ等らの祈き禱たうを聆ききて、諸敵しよてきが集あつまりて我われ等らに及およぼす諸もろもろの苦く難なんの暴浪あらなみを鎭しづめ給たまへ。

今も ガリレヤのカナに於おいて水みづを酒さけに變へんぜしハリストスよ、宏くわう恩おんなる主しゆとして、生しやう神女しんぢよに因よりて我われに慈じ憐れんを垂たれて、我わが悲かなしみを喜よろこびに易かへ、歎なげきを樂たのしみに變へんじ給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第四調。

生しやう神女しんぢよよ、我われ放蕩はうたうにして多おほくの罪つみを以もつて智慧ちゑを昧くらましし者ものは爾なんぢの堅けん固ごなる保護ほごに呼よぶ、潔いさぎよき神かみの母はゝよ、我わが靈たましひの眸子ひとみを照てらし、我われに痛つう悔くわいの曙しよ光くわうを輝かゞやかし、我われに光明ひかりの甲よろひを衣きせ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみ、世世よよに崇あがめ歌うたはるる者ものよ、爾なんぢの名なに緣よりて、終をはりに至いたるまで我われ等らを棄すつる毋なかれ、爾なんぢの約やくを破やぶる毋なかれ、爾なんぢの慈じ憐れんを我われ等らより離はなす毋なかれ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ今いま種種しゆじゆの災禍わざはひ及および憂患うれひの中うちに在ありて、爾なんぢ我わが救すくひなる者ものに趨はしり附つきて呼よぶ、願ねがはくは我わが倚賴たのみに於おいて我われ辱はづかしめられて還かへらざらん、爾なんぢ我われに聆ききて、執とらふる者ものの網あみより我われを脫のがれしめ給たまへ。

我われ不ふ當たうの者ものは膝ひざを屈かゞめ、手てを伸のべ、謙へりくだりて首かうべを垂たれて、吾わが心こゝろより呼よびて、爾なんぢ至し淨じやうなる童貞女どうていぢよに祈いのる、敵てきの惡謀あくぼうに因よりて常つねに我われに逼せまる憂患うれひより我われを脫のがれしめ給たまへ。

光榮 至し榮えいなる潔いさぎよきマリヤ、地ち上じやうの者ものの譽ほまれよ、求もとむ、我われ等ら敬虔けいけんの心こゝろを抱いだきて爾なんぢの產さんに祈いのりて伏拜ふくはいする者ものに爾なんぢの助たすけを與あたへ給たまへ、我われ等らは爾なんぢの外ほかに他たの冀望のぞみ及および保護ほご者しやを獲えざればなり。

今も 智慧ちゑに超こえ、凡およその性せいに超こえて神かみを生うみし夫をつとを識しらざるマリヤ、信者しんじやの轉達者てんたつしやよ、爾なんぢを尊たふとむ者ものを諸もろもろの誘惑いざなひより潔けつ淨じやうに守まもりて、見みゆると見みえざる諸敵しよてきの害がいより脫のがれしめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス ダニイルは獅子しし穴あなに在ありて手てを伸のべて、獅子ししの口くちを閉とざし、敬虔けいけんの篤あつき少者せうしやは德とくを帶おび、火ひの力ちからを滅けして呼よべり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

潔いさぎよき者ものよ、我われは手てを擧あげて爾なんぢの子こに向むかふを得えず、全まつたく汚けがされたればなり、故ゆゑに女宰ぢよさいよ、熱心ねつしんに爾なんぢに趨はしり附つく、仁じん慈じ寬くわん容ようなる神かみに轉達てんたつして、我われ等らを侵おかす諸敵しよてきより脫のがれしめんことを祈いのり給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ目めと心こゝろと靈たましひとを爾なんぢに向むかはしめたり、潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、慈じ憐れんを以もつて我われ不ふ當たうなる者ものの爲ために宏くわう恩おんの主しゆに轉達てんたつして、我われを凡およその危き難なん、患くわん難なん、憂愁いうしうより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

光榮 主宰しゆさいよ、爾なんぢの武器ぶきを以もつて有能いうのうの主しゆとして我われ等らと戰たゝかふ者ものを斃たふして、信しんを以もつて爾なんぢを賴たのむ者ものに勝しよう利りを與あたへ給たまへ、生しやう神女しんぢよは授洗じゆせんイオアンと偕ともに、及および爾なんぢの使徒しとと致ち命者めいしやとの會くわいは爾なんぢに祈いのる。

今も 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、ガウリイルは嘗かつて福音ふくいんの欣慶よろこびを爾なんぢに攜たづさへしに、原げん母ぼの歎なげきは爾なんぢの產さんに因よりて滅けされたり。祈いのる、爾なんぢ親みづから吾わが靈たましひの憂悶もだえをも解ときて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを耻はぢを得えざる者ものと爲なし給たまへ。

第九歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよよ、手てにて斫きられざる隅石すみいしハリストスは、爾なんぢ斫きられざる山やまより斫きり分わけられて、離はなれたる性せいを合あはせ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら樂たのしみて、爾なんぢ生しやう神女しんぢよを崇あがめ歌うたふ。

生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、速すみやかに爾なんぢの助たすけを顯あらはし給たまへ。慈じ憐れんを以もつて爾なんぢの耳みゝを傾かたぶけて、熱心ねつしんに呼よぶ者ものに聆ききて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らを諸もろもろの苦く難なんより脫のがれしめ給たまへ。

我われ全まつたく怠惰おこたりに耽ふけりたる者ものは我わが罪つみの深處ふかみに在ありて望のぞみを失うしなふ。故ゆゑに童貞女どうていぢよ母はゝよ、ハリストスのペトルに於おけるが如ごとく、手てを我われに伸のべて、我われを罪つみの深處ふかみより引ひき出いだし給たまへ。

光榮 童貞女どうていぢよよ、檢束けんそくなき驕おごれる舌した、矢やの如ごとく磨とがれて我われを害がいして殺ころさんと欲ほつする者ものを制せいして、敵てきの惡謀あくぼうを空むなしくなし給たまへ。

今も 至し上じやうの神かみの母はゝよ、我われ等らを攻せむる諸敵しよてきの謀はかりごとを悉ことごとく破やぶりて、爾なんぢを賴たのむ者ものを喜よろこびに充みて給たまへ、我われ等ら皆みな熱心ねつしんに爾なんぢの守しゆ護ごを傳つたへん爲ためなり。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に諸讚詞トロパリ。其他常例の如し、幷に發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第四調

月曜日

 月曜日の早課

第一の誦文の後に痛悔の坐誦讚詞セダレン、第四調。

主しゆよ、我わが卑微ひびなる靈たましひ、罪ざい中ちゆうに一いつ生しやうを費つひやしし者ものを顧かへりみて、我われを罪女ざいぢよの如ごとく納いれて、救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

我われ現在げんざいの生命いのちの海うみを渡わたりて、我わが多おほくの惡あくの淵ふちを思おもひ、靈たましひの嚮きやう導だう師しを有たもたずして、ペトルの聲こゑを以もつて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我われを救すくへ、神かみよ、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは我われ等らハリスティアニンの爲ために破やぶられぬ墻かきなり、蓋けだし我われ等らは爾なんぢに趨はしり附つきて害がいなくして止とゞまり、復また罪つみを犯おかせば爾なんぢを祈き禱者たうしやとして有たもつ。故ゆゑに感謝かんしやの心こゝろを抱いだきて爾なんぢに呼よぶ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、慶よろこべ、主しゆは爾なんぢと偕ともにす。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第四調。

願ねがはくは我われ等ら皆みな速すみやかにハリストスと偕ともに其その婚筵こんえんの宮みやに入いりて、ハリストス我わが神かみの神聖しんせいなる聲こゑを聞きかん、天てんの光くわう榮えいを愛あいする者ものは來きたりて、信しんを以もつて己おのれの燈ともしびを燃もやして、智ちなる處女せうぢよと偕ともに之これを受うけよ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

ハリストス我わが神かみよ、我われは多おほくの吾わが罪つみに擬ぎ定ていせられ、苦くるしみの恐懼おそれに擾みだされて、中ちゆう心しんより爾なんぢ生いのちと死しとの權けんを有たもつ主しゆに痛つう悔くわいの淚なみだを奉たてまつり、傷しやう感かんの心こゝろを抱いだきて爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、我われ罪つみを犯おかせり、我われを救すくひ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

今日こんにち天てん使しの軍ぐんは受難者じゆなんしやの記き憶おくに於おいて來きたりて、信者しんじやの意念おもひを照てらし、恩おん寵ちようを以もつて世せ界かいを輝かゞやかす。神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 天てん使しより言ことばを爾なんぢの胎内たいないに受うけし童貞女どうていぢよ、身みを取とりたるハリストス神かみエムマヌイルを生うみし生しやう神女しんぢよよ、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまへ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第四調。

至いたりて神聖しんせいなる三者さんしやよ、無む形けい體たいの者ものの品ひん位ゐは無む形けいの口くちを以もつて絕たえず爾なんぢを歌うたひ、畏おそれを以もつて爾なんぢの前まへに立たちて呼よぶ、聖せいなる哉かな三さん位ゐの神性しんせいよと。獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて爾なんぢの手ての造物ざうぶつを憐あはれみ給たまへ。

主宰しゆさいよ、天てん使しの品ひん位ゐは畏おそれを以もつて爾なんぢの寶はう座ざの前まへに立たちて、彼處かしこより出いづる光ひかりに常つねに照てらされて、默もださずして爾なんぢに凱旋がいせんの歌うたを奉たてまつる。主しゆよ、彼かれ等らの聖せいなる祈き禱たうに因よりて、世せ界かいに平安へいあん、我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 永在えいざいの神かみを生うみし純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよ、獨ひとり至いたりて讚さん美びたる者ものよ、無む形けいの者ものと偕ともに常つねに彼かれに祈いのりて、信しんと愛あいとを以もつて宜よろしきに合かなひて爾なんぢを歌うたふ我われ等らに終をはりに至いたらざる先さきに罪つみの赦ゆるし及および生命いのちの更新あらたまりを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

痛悔の規程カノン、我が主イイススハリストス及び其聖なる致命者に奉る。其冠詞は、救世主よ、昔の蕩子の如く我を救ひ給へ。第四調。

第一歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよより生うまれし主しゆよ、祈いのる、强つよき軍ぐんたる我わが靈たましひの諸慾しよよくを無む慾よくの深處ふかみに沈しづめ給たまへ、我わが鼓つゞみを以もつてするが如ごとく、肉にく情じやうを殺ころすに由よりて凱歌かちうたを爾なんぢに歌うたはん爲ためなり。

我わが救世主きうせいしゆイイスス、蕩たう子しを救すくひ、罪女ざいぢよの淚なみだを受うけ、歎息たんそくせし稅ぜい吏りを直たゞちに義ぎと爲なしし主しゆよ、我われ無む量りやうの罪つみを犯おかして爾なんぢに轉てんずる者ものをも受うけて、救すくひ給たまへ。

惡あくの火ひは我わが靈たましひを焚やくべき物ものの如ごとく囓かみて、將しやう來らいの焰ほのほの備そなへと爲なす、仁愛じんあいにして恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢの慈じ憐れんを灌そゝぐを以もつて之これを滅けして、我われに痛つう悔くわいの淚なみだを與あたへ給たまへ。

致命者讚詞 多おほくの智慧ちゑに滿みたされたる聖せいなる受難者じゆなんしやの會くわいは凡およその不ふ法者はふしやの無智むちなる慫慂すゝめと理りに戾もとる命めいとを斥しりぞけて、神聖しんせいなる尊敬そんけいを獲えたり。

致命者讚詞 信しんに依よりて世せ上じやうの榮華えいぐわを輕かろんじて、天てん上じやうの生命いのちを嗣つぎたる睿えい智ちにして讚さん美びたる受難者じゆなんしやよ、忠ちゆう信しんに爾なんぢ等らを讚さん頌しようする我われを世せ俗ぞくの諸もろもろの誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ、光くわう榮えいの日ひの至いたりて明あきらかなる燈ともしびよ、憂悶もだえに因よりて滅けされたる吾わが靈たましひの火ひを燃もやして、常つねに神聖しんせいなる行おこなひの油あぶらを以もつて之これを養やしなひ給たまへ、我わが信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

又聖なる無形天軍の規程カノン、第四調。

第一歌頌

イルモス同上

潔いさぎよき智慧ちゑとして、大おほいなる元げん始しの智慧ちゑの前まへに立たち、神聖しんせいなる光ひかりに饜あかせられ、萬有ばんいうの原因げんいんたる言ことばを歌うたふ至し榮えいなる諸天しよてん使しよ、爾なんぢ等らの光くわう線せんを以もつて我われを照てらし給たまへ。二次。

愛あいを以もつて專もつぱら神かみに屬ぞくし、神聖しんせいなる華くわ美びに飾かざられたる光くわう榮えいなる天てん使し首しゆよ、爾なんぢ等らは常つねに造成主ざうせいしゆの寶はう座ざの周邉まはりに立たちて、凱旋がいせんの歌うたを奉たてまつる。

生神女讚詞 天軍てんぐんの常つねに讚榮さんえいする言ことばを腹はらに受うけし獨ひとり純じゆん潔けつなる者ものよ、吾わが靈たましひを輝かゞやかし、罪惡ざいあくの暗くらき思おもひを散さんじて、爾なんぢの產さんを悟さとる智ち識しきを以もつて照てらし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢは凡およその首しゆ領りやうより上うへなる者ものにして、甘あまんじて高たかきより地ちに降くだりて、謙けん卑ぴなる人ひとの性せいを最いと下しもなる地ぢ獄ごくより升のぼせ給たまへり、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなる者ものなければなり。

諸慾しよよくの暗やみは我わが生いのちを夜よるの如ごとく圍かこめり、暮くれざる光ひかりたるハリストス神かみよ、人ひとを愛あいする主しゆなるに因よりて、痛つう悔くわいの光くわう線せんを以もつて我われを照てらして救すくひ給たまへ、我わが爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、淚なみだと惠施ほどこしとを以もつて我われを潔きよめて、選えらばれたる者ものの分ぶんの嗣業よつぎと爲なし、之これに反はんする者ものの分ぶんを免まぬかれしめ給たまへ、我わが常つねに爾なんぢを讚さん美び讚榮さんえいせん爲ためなり。

致命者讚詞 神聖しんせいなる軍ぐんの對たい話わ者しやたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らの足あしは血ちに染そめられて、地ちを其その罪つみと共ともに遺のこして、最いと速すみやかに天てんに走はしれり。

致命者讚詞 ハリストスの受難者じゆなんしやよ、苦くるしみに由よりて弱よわりたる爾なんぢ等らの體からだは解とかれたり、靈たましひは益ますます力ちからを獲えて、愛あいを以もつて解とかるるなくして、己おのれの旨むねを以もつて萬有ばんいうを造つくりし主しゆに繫つながれたり。

生神女讚詞 主しゆを生うみて萬有ばんいうの女宰ぢよさいと爲なりしマリヤよ、慾よくに縛しばられ、惡あくに昧くらまされたる我わが智慧ちゑを釋ときて照てらし給たまへ。

又 イルモス同上

天てん上じやうの品ひん位ゐに讚さん頌しようせらるるハリストス言ことばよ、信者しんじやの會くわいに彼かれ等らの美うるはしきに效ならひて、正たゞしき心こゝろを以もつて爾なんぢを讚さん頌しようせしめ給たまへ、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなる者ものなければなり。二次。

神聖しんせいなる天てん使し首しゆよ、爾なんぢ等らは熱切ねつせつなる愛あいを以もつて愛あいの原因げんいんに親したしく與あづかり、役者えきしやとして其その前まへに立たちて、默もださずして無む原げんなる神かみの惟一ゆゐいちの性せいを歌うたふ。

生神女讚詞 萬有ばんいうに祝しゆく福ふくを被かうむらするハリストスを生うみし潔いさぎよき母はゝよ、爾なんぢは古いにしへのエワの詛のろひを解とき給たまへり、至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢと侔ひとしき扶ふ助者じよしやなければなり。

第四歌頌

イルモス 光くわう榮えいの中うちに神性しんせいの寶はう座ざに坐ざするイイスス神かみは、輕かろき雲くもに乘のるが如ごとく、朽くちざる手てに抱いだかれ來きたりて、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きすと呼よぶ者ものを救すくひ給たまへり。

主しゆよ、我われ今いま爾なんぢ至いたりて義ぎなる審判者しんぱんしやの前まへに俯ふ伏ふくす、定罪ていざいせられて望のぞみを失うしなひし我われを憐あはれみ、爾なんぢの義ぎなる審定しんていより脫のがれしめて、選えらばれたる者ものと偕ともに立たつを得えしめ給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆハリストスよ、殘忍ざんにんなる盜賊たうぞくに遇あひて傷きずつけられし我われに痛つう悔くわいの酒さけと油あぶらとを沃そゝぎ、我われを醫いやして、救すくひの衣ころもを衣きせ給たまへ。

致命者讚詞 至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは肉體にくたいの衣ころもを褫はがれて、上うへより救すくひの衣い裳しやうを衣きせられ、先さきに原げん祖そを裸ら體たいにせし者ものを裸ら體たいにして、氣息いきなき死し者しやと爲なせり。

致命者讚詞 神かみの言ことばの虔誠けんせいなる智ち識しきに飾かざられたる致ち命者めいしやは不ふ法者はふしやの前まへに辯べんを奮ふるひて、不ふ虔けんなる智ち者しや及および辯者べんしやを悉ことごとく辱はづかしめて、惡敵あくてきを殺ころせり。

生神女讚詞 神かみの母はゝ童貞女どうていぢよよ、睿えい智ちの淵ふちたるイイススは獨ひとり爾なんぢを至し淨じやうなる者ものと見みて、雨あめの如ごとく爾なんぢに降くだりて、神聖しんせいなる恩おん寵ちようを以もつて不ふ虔けんの激はげしき流ながれを塞ふさぎ給たまへり。

又 イルモス同上

永在えいざいなる神かみの言ことばよ、爾なんぢは曉さとり難がたき力ちからを以もつて天てんの靈れい智ち者しやを無むより有いうと爲なし、言いひ難がたき爾なんぢの光くわう榮えいを以もつて彼かれ等らを飾かざりて呼よばしむ、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

聖神せいしんの權能けんのうに掌つかさどられ、其その神聖しんせいなる光ひかりに輝かゞやかさるる天てん上じやうの軍ぐんは奪うばはれざる尊そん位ゐを嗣つぎて、萬有ばんいうの惟一ゆゐいちなる原因げんいん及および神かみを讚榮さんえいす。

爾なんぢの光ひかりの役者えきしやは爾なんぢの顏かんばせの言いひ難がたき華くわ美びを見みるを得え、是これより明覺さとりを受うけて、爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

生神女讚詞 女王によわう・童貞女どうていぢよは金繍きんしうの衣ころもに飾かざられて、諸天しよてん使しに竝ならびなく上うへなる者ものとして、今いま子こたる王わうの前まへに立たちて呼よぶ、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

第五歌頌

イルモス 神かみは預よ言げんして云いへり、我われ今いま起おき、今いま光くわう榮えいを獲え、今いま高たかく擧あがりて、童貞女どうていぢよより受うけたる陷おちいりし者ものを我わが神性しんせいの靈れい智ちなる光ひかりに擧あげん。

嗚呼あゝ如何いかに我われ定罪ていざいせらるべき者ものは爾なんぢ審判者しんぱんしや、萬有ばんいうの神かみの前まへに立たたん、如何いかに我われ全まつたく己おのれを不ふ當たうに爲なしし者ものは無智むちにして自じ由いうに犯おかしし悉ことごとくの惡あく事じの爲ために責せめられん。

主しゆよ、我われを救すくひ給たまへ、我われ多おほくの惡あくに滿みちたればなり。祈いのる、我わが罪つみ及および甚はなはだしき創傷きずを醫いやし給たまへ、我わがイイススよ、我われ多おほく爾なんぢの前まへに罪つみを犯おかしし者ものを獨ひとり遺のこして滅亾ほろびに委ゆだぬる毋なかれ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは福ふくたる終をはりに遇あひて、光くわう榮えいを獲えたり。蓋けだし勇いさましく創傷きずと諸もろもろの苦くるしみとに與あづからんことを決心けつしんして、己おのれの百ひやく體たいを以もつて受難者じゆなんしやの首かしらたるハリストスを榮えいせり。

致命者讚詞 福ふくたるハリストスの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは神聖しんせいなる美うるはしき度ど生せいを以もつて天てんの富とみ、凋しぼまざる榮えい冠くわん、暮くれざる光ひかり、及および手てにて造つくられぬ永遠えいゑんに古ふるびざる居處すまひを嗣つぎたり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、預よ言者げんしやの聲こゑは爾なんぢの奇き跡せきを預よ言げんして、爾なんぢを山やまと門もん、及および光くわう明めいなる燈ともしびと名なづけたり、是これより實じつに奇異きいなる光ひかりは出いでて、全ぜん世せ界かいを照てらす。

又 イルモス同上

ヘルワィムとセラフィムは寶はう座ざと偕ともに、神聖しんせいなる差さ役えき首しゆと主しゆ制せい、能のう力りよくと首しゆ領りやうと權柄けんぺいは差さ役えきと偕ともに、戰をのゝきて最いと尊たふとき惟一ゆゐいちなる三さん位ゐの神性しんせいを讚榮さんえいす。二次。

ハリストスよ、輝かゞやける天てん使等しらは現あらはれて、爾なんぢの復ふく活くわつを世せ界かいに克肖こくせうなる女をんな等たちに傳つたへ、爾なんぢの神性しんせいの光ひかりを以もつて爾なんぢの諸敵しよてきを戰をのゝかす。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよより言いひ難がたく生うまれて、人人ひとびとを朽きう壞くわいより救すくふ主しゆよ、今いま眞しん正せいなる聲こゑを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいする爾なんぢの敎けう會くわいを天てん使し首しゆの軍ぐんを以もつて護まもり給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ海うみの深處ふかみに至いたり、多おほくの罪つみの暴風あらしは我われを沈しづめたり、慈じ憐れんの主しゆよ、神かみなるに因よりて、我わが生命いのちを深處ふかみより引ひき上あげ給たまへ。

我われ不ふ當たうの者ものは死し者しやの如ごとく悟さとらず、感覺かんかくせず、常つねに汚けがれたる心こゝろを有たもつ、神かみ我わが造成主ざうせいしゆよ、終をはりに至いたるまで我われを滅兦ほろびに委ゆだぬる毋なかれ。

慈じ憐れんなる主しゆよ、我わが行おこなひは敵てきの如ごとく爾なんぢの審判しんぱんに於おいて我われを訟うつたへんと欲ほつす、ハリストスよ、速すみやかに我われを之これより脫のがれしめて、痛つう悔くわいに導みちびき給たまへ。

致命者讚詞 不ふ法者はふしやの會くわいは受難者じゆなんしやの骨ほねを折くじきたれども、彼かれ等らの信しんを折くじかざりき、彼かれ等らは此これに因よりて神かみ吾わが靈たましひの救主きうしゆの嗣よつぎと現あらはれたり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやは尊たふとき石いしとして神しん智ちを以もつて冀望きばうの動うごかざる石いしに立たてられ、聖神せいしんの殿でんとして神かみの殿でんに入いれられたり。

生神女讚詞 日ひたるハリストスを生うみし神かみの聘女よめよ、罪つみの暗くらき感かん觸しよくに由よりて昧くらみたる我わが心こゝろを爾なんぢの内うちに在ある光ひかりを以もつて照てらし給たまへ。

又 イルモス同上

主宰しゆさいの周しう圍ゐに立たちて、潔けつ淨じやうに原げん始しの光ひかりの輝煌かゞやきを樂たのしめる天てん使しの軍ぐんよ、信しんを以もつて爾なんぢ等らを歌うたふ者ものを照てらし給たまへ。二次。

爾なんぢの睿えい智ちを以もつて諸天しよてん使しを造つくりし主しゆよ、爾なんぢは主宰しゆさいとして彼かれ等らの品ひん位ゐを定さだめて、讚さん頌しようを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいする主しゆ制せい、能のう力りよく、セラフィム等らを現あらはし給たまへり。

生神女讚詞 神聖しんせいなる慮おもんぱかりを以もつて萬物ばんぶつを護まもり給たまふ主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは最高いとたかき寶はう座ざに息いこふが如ごとく、童貞女どうていぢよの手てに息いこひ給たまへり。

第七歌頌

イルモス 三人みたりの少者せうしやはワワィロンに於おいて窘逐者くるしめびとの命令めいれいを空言くうげんと爲なして、焰ほのほの中うちに呼よべり、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

哀かなしい哉かな吾わが不ふ當たうなる靈たましひよ、爾なんぢ不ふ當たうなる事ことを愛あいし、善ぜんなる事ことを求もとめざる者ものを我われ誰たれにか譬たとへん、故ゆゑに終をはりに至いたらざる先さきに務つとめて善ぜん良りやうなる行おこなひを示しめせ。

ハリストスよ、我われに淚なみだの雨あめを與あたへて、我われを甚はなはだしき罪惡ざいあくより滌あらひ給たまへ。救世主きうせいしゆよ、我われ人ひとに超こえて多おほく爾なんぢの前まへに罪つみを犯おかしし者ものを今いま滅亡ほろびの爲ために遺のこす毋なかれ。

致命者讚詞 光くわう榮えいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは己おのれの身みに殺ころされし言ことばの死しの狀じやうを佩おびて、迷まよひを殺ころせり。爾なんぢ等らは死しして後のち生いき、慾よくに由よりて殺ころされたる者ものを活いかし給たまふ。

致命者讚詞 光くわう榮えいなる致ち命者めいしやよ、何いづれの處ところか今いま爾なんぢ等らを光くわう照せう者しやとして有たもたざる、何いづれの地ちか爾なんぢ等らの苦く難なん及および醫治いやしの流ながれにて聖せいにせられざる。

生神女讚詞 女宰ぢよさいよ、爾なんぢは獨ひとり產さんの後のちに童貞どうていの德とくにて耀かゞやく者ものと止とゞまり、獨ひとり母はゝの產さん苦くを免まぬかれたり、爾なんぢは獨ひとり神かみ我わが靈たましひの贖しよく罪主ざいしゆを生うみたればなり。

又 イルモス同上

吾わが靈たましひよ、行おこなひし事ことの證しよう者しやとして無む形けいなる天てん使等しらを有たもちて、淨きよき度生いのちを選えらびて呼よばん、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。二次。

熾炭やけずみにて潔きよめられし神聖しんせいなるイサイヤは爾なんぢの寶はう座ざの前まへに立たてるセラフィム等らを見みて呼よぶ、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは明あきらかに悉ことごとくの無む形けいの品ひん位ゐに超こゆ、造成者ざうせいしや及および主しゆを生うみたればなり、至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの腹はらの果みは祝しゆく福ふくせられたり。

第八歌頌

イルモス 衆しゆう人じんの贖しよく罪主ざいしゆ全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは降くだりて、焰ほのほの中うちに敬虔けいけんを守まもりし者ものに露つゆを注そゝぎて、歌うたはしめ給たまへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて崇あがめ讚ほめよ。

我われ諸慾しよよくに服ふくして無知むちなる禽獸きんじうに似にたる者ものと爲なれり。無む原げんなる神かみの言ことばよ、我われを還かへして救すくひ給たまへ、蓋けだし我われ呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

救世主きうせいしゆよ、我われ神しん゜にて造つくられし葡ぶ萄だうなる者ものを林はやしの豕ゐのこは掘ほり、野のの獸けものは食はみたり。言ことばよ、我われを此これ等らより脫のがれしめて、德とくの實みを爾なんぢに捧さゝぐる者ものと爲なし給たまへ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、血ちの綾羅うすぎぬは神かみの織おりたる爾なんぢ等らの紫し袞こん衣いを蔽おほへり、爾なんぢ等らは之これに妝よそほはれ、勝しよう利りの榮えい冠くわんを冠かうむりて、最高いとたかきに永遠えいゑんの王わうの前まへに立たち給たまふ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやの聖せいせられし會くわいは法はふに違たがふを命めいずる聖せいにせられざる會くわいを破やぶり、法はふに遵したがひて苦くるしみを受うけて、法はふに合かなひて萬有ばんいうの主宰しゆさいより榮えい冠くわんを獲えたり。

生神女讚詞 獨ひとり恩おん寵ちようを滿まん被ぴする者ものよ、萬物ばんぶつは爾なんぢの產さんを祝しゆく讚さんす、此これに緣よりて我われ等らは祝しゆく福ふくを蒙かうむり、詛のろひより脫のがれたればなり。至いたりて讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢは我わが族やからに宏くわう恩おんを施ほどこしし者ものなり。

又 イルモス同上

不死ふしの生命せいめいたる主しゆよ、爾なんぢは諸天しよてん使しを造つくりて、彼かれ等らを不死ふしの生命せいめいに與あづかる者ものと爲なして、歌うたはしめ給たまふ、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて崇あがめ讚ほめよ。二次。

天てん使し首しゆは無む形けいに爾なんぢを繞めぐりて立たち、絕たえざる聲こゑを以もつて爾なんぢを歌か頌しようし、神かみに合かなふが如ごとく爾なんぢを萬有ばんいうの主宰しゆさいとして讚榮さんえいして呼よぶ、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて崇あがめ讚ほめよ

生神女讚詞 至し福ふくなる者ものよ、律法りつぱふの預よ象しやうは爾なんぢ神聖しんせいなる性せいの無む形けいにして形體けいたいに合あはせられし神かみを生うみたる者ものを形かたどれり。童貞女どうていぢよよ、我われ等らは爾なんぢの產さんを祝しゆく讚さんす。

次ぎて生神女の歌詠を歌ふ、「我が靈は主を崇め」。

第九歌頌

イルモス エワは不ふ順じゆんを病やみて、詛のろひを入いれたり、爾なんぢは、童貞どうてい生しやう神女しんぢよよ、己おのれの產さんにて世せ界かいの爲ために祝しゆく福ふくの華はなを發ひらけり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

視みよ、痛つう悔くわいの時ときなり、我われ等ら何なんぞ怠おこたれる、何なんぞ眠ねむりに沈しづめる、煩悶もだえは退しりぞくべし、錄しるせる如ごとく、我われ等ら慈じ惠けいの油あぶらを以もつて燈ともしびを妝よそほふべし、泣なきて門もんの外そとに留とゞまらざらん爲ためなり。

吾わが靈たましひよ、痛つう悔くわいする時ときのある間あひだに、爾なんぢが知しると知しらずして行おこなひし諸惡しよあくより轉てんじて、知しらざる所ところなき主しゆに呼よべ、我われ爾なんぢの前まへに罪つみを獲えたり、主宰しゆさいよ、赦ゆるし給たまへ、我われ不ふ當たうの者ものを諱いむ勿なかれ。

致命者讚詞 ハリストスは聖せいなる受難者じゆなんしやを諸もろもろの地ち及および城邑まちより光くわう榮えいなる處ところ、尊たふとき安息處あんそくしよに集あつめ給たまへり、彼かれ等らは今いま冢ちよう子しの敎けう會くわいの中うちに輝かゞやきて樂たのしむ。

致命者讚詞 獨ひとり慈じ憐れん多おほき主しゆよ、爾なんぢの尊そん貴きなる致ち命者めいしやの尊たふとき柩ひつぎは聖神せいしんの光くわう線せんに照てらされ、至し榮えいに醫治いやしの光ひかりを放はなちて、諸しよ病びやうを退しりぞく。

生神女讚詞 神かみの聘女よめよ、爾なんぢの内うちに在ある光ひかりの光くわう線せんを以もつて吾わが靈たましひを照てらし、滅亾ほろびの穽あなに伏ふす者ものを起おこして、常つねに我わが心こゝろを攻せめて、諸慾しよよくに誘いざなふ惡敵あくてきを破やぶり給たまへ。

又

イルモス 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、神かみの言いひ難がたき祕ひ密みつは明あきらかに爾なんぢに於おいて行おこなはる、蓋けだし神かみは慈じ憐れんに由よりて爾なんぢより身みを取とりて生うまれ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを生しやう神女しんぢよとして崇あがめ讚ほむ。

智慧ちゑたる父ちゝ、言ことばたる子こ、及および聖神せいしんを歌うたふ諸天しよてん使しよ、今いま熱切ねつせつに我われ等らの爲ために神聖しんせいなる恩おん寵ちようの賜たまものを求もとめて、務つとめて之これを我われ等らに施ほどこし給たまへ。二次。

ハリストスよ、不ふ朽きうの賜たまものと恩おん寵ちようとに美うるはしく飾かざられたる神聖しんせいなる天てん使し首しゆは爾なんぢ不ふ朽きうの永在えいざいなる泉いづみを歌うたひて、恩主おんしゆとして崇あがめ讚ほむ。

生神女讚詞 神かみの母はゝよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを言いひ難がたき產さんの殿でん、活いける宮みや、恩おん寵ちようの法はふの匱ひつとして知しる、故ゆゑに絕たえず爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

次ぎて「常に福にして」。躬拜。聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第四調。

救世主きうせいしゆよ、我わが淚なみだにて我われを滌あらひ給たまへ、我われ多おほくの罪つみに由よりて汚けがされたればなり。故ゆゑに爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくす、神かみよ、我われ罪つみを犯おかせり、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我われは爾なんぢの靈れい智ちなる群ぐんの羊ひつじにして、爾なんぢ善よき牧者ぼくしやに趨はしり附つく。神かみよ、我われ迷まよひし者ものを尋たづね獲えて、我われを憐あはれみ給たまへ。
句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、誰たれか爾なんぢ等らが戰たゝかひし善よき戰たゝかひを見みて驚おどろかざらん、如何いかんぞ肉體にくたいに在ありて、ハリストスを承しよう認にんし、十じふ字架じかを武器ぶきとして、肉體にくたいなき敵てきに勝かちたる。故ゆゑに爾なんぢ等らは宜よろしきに合かなひて惡あく鬼きを逐おふ者もの、諸敵しよてきを退しりぞくる者ものと顯あらはれて、常つねに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ、萬有ばんいうの女王によわう、正敎せいけうの者ものの譽ほまれよ、異い端者たんしやの驕おごりを破やぶり、其その面おもてを辱はづかしめ給たまへ、彼かれ等らは爾なんぢ至し淨じやうなる者ものを拜をがまず、爾なんぢの尊たふとき聖像せいざうを敬うやまはざればなり。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。及び聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、其他、幷に發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 月曜日の聖体礼儀に

月曜日の眞福詞、第四調。

アダムは木きに緣よりて樂園らくゑんより出いだされ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかの木きに緣よりて樂園らくゑんに入いりたり。彼かれは食しよくして造物主ざうぶつしゆの誡いましめに背そむき、此これは共ともに十じふ字架じかに釘ていせられて、隱かくれたる神かみを認みとめて籲よべり、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

我われ衆しゆう人じんに超こえて地ち上じやうに罪つみを犯おかして、彼處かしこの偏へん頗ぱなき審判しんぱんを畏おそる。至し仁じんなる主しゆよ、我われに凡およその汚けがれを滌あらふ痛つう悔くわいを與あたへて、彼かの時ときに定罪ていざいなき者ものと爲なして、苦くるしみを免まぬかれしめ給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

ヘルワィムとセラフィム、權柄けんぺいと寶はう座ざ、差さ役えき首しゆと主しゆ制せい、能のう力りよくと聖せいなる差さ役えき、及および最高いとたかき首しゆ領りやうよ、今いま萬有ばんいうの主宰しゆさいの前まへに立たちて、凡およそ信しんを以もつて我われ等らを爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものの爲ために諸罪しよざいの赦ゆるしと生命いのちの更新あらたまりとを求もとめ給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

至いたりて讚さん美びたるハリストスの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは火ひに投とうぜられて、迷まよひの枯草かれくさを焚やき、爾なんぢ等らの血ちの多おほきを以もつて深處ふかみの蛇へびを溺おぼらし、勝しよう利りを得えて、天軍てんぐんと偕ともに喜よろこびて、熱切ねつせつに我われ等らの救すくはれんことを祈いのり給たまふ。

光榮 三日さんじつの光ひかり、世せ界かいの完くわん備びの中うちに輝かゞやく者ものよ、吾わが靈たましひの甚はなはだしき諸慾しよよくを拂はらひて、我われに光くわう照せうと諸罪しよざいの潔淨きよめとを降くだし給たまへ。蓋けだし我われ今いま信しんを以もつて爾なんぢ無む原げんなる父ちゝ、同どう寶はう座ざの子こ、及および聖神せいしんに呼よぶ、聖三者せいさんしや、全功ぜんこうの能力ちからよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、我われ常つねに罪つみを犯おかし、甚はなはだしく怠おこたれる者ものを憐あはれみて、我われに痛つう悔くわいの範のりを示しめし、我わが悶もだゆる靈たましひに傷しやう感かんを與あたへ給たまへ。蓋けだし爾なんぢは、至し淨じやうなる者ものよ、愛あいを以もつて爾なんぢを歌うたひ、信しんを以もつて爾なんぢに、讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、我われ等らをも憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものの耻はぢを得えざる倚賴たのみなり。

横線 - 『八調経』第四調

 月曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に痛悔の讚頌スティヒラ、第四調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

靈たましひよ、ハナアンの婦をんなに效ならひて、後うしろよりハリストスに捫さはりて、屢しばしば呼よべ、嗚呼あゝ主宰しゆさいハリストス、慈じ憐れんの多おほき恩主おんしゆよ、我われを憐あはれみ給たまへ、我われは子ことして、魔ま鬼きに慿よらるる放はう恣しなる肉體にくたいを有たもつ、祈いのる、是これより熱ねつ情じやうを拂はらひ、放はう恣しなる遊佚いういつを止とゞめて、爾なんぢに於おける畏おそれを以もつて之これを死し者しやと爲なし給たまへ、至いたりて潔いさぎよく孕はらみて爾なんぢを生うみし者もの及および諸聖人しよせいじんの祈き禱たうに由よりてなり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

ハリストスよ、爾なんぢは昔むかし罪つみを犯おかししニネワィヤ人じんにイオナを遣つかはして宣敎せんけうせしめしに、彼かれ等らは痛つう悔くわいして、忿恚いきどほりを寬くわん容ように變へんじ、滅ほろびを致いたす怒いかりを免まぬかれたり。人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ不ふ當たうなる者ものにも爾なんぢの有能いうのうなる援助たすけを遣つかはし給たまへ、我わが無む數すうの罪過ざいくわより轉てんじて、痛つう悔くわいの途みちに向むかはしめられ、痛いたく歎なげき泣なきて、爾なんぢの慈じ憐れんに因よりて我わが多おほくの罪つみより救すくはれん爲ためなり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

罪つみを犯おかす人人ひとびとを痛つう悔くわいに召めして、彼かれ等らを救すくはん爲ために世せ界かいに來きたりし宏くわう恩おんなる我わが救主きうしゆよ、我われ衆しゆう人じんに超こえて爾なんぢを怒いからしし者ものを爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて憐あはれみて救すくひ給たまへ。仁じん慈じなる主しゆとして我われを痛つう悔くわいの途みちに向むかはしめ、我われに傷しやう感かんの念おもひを與あたへ、我わが心こゝろを謙遜けんそんと、溫柔をんじうと、正せい直ちよくと、順良じゆんりやうとに堅かため給たまへ、爾なんぢは至いたりて人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

又聖大前驅イオアンの讚頌スティヒラ、第四調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

婦をんなの生うみし者ものの中うち衆しゆうに超こゆる前ぜん驅くよ、主しゆの前まへに勇敢いさみを有たもちて、彼かれに信しんを以もつて爾なんぢに祈いのる者ものの爲ために絕たえず轉達てんたつして、我われ等らに反正はんせいと痛つう悔くわいとを賜たまはんことを求もとめ給たまへ、我われ等らが救すくはれて、常つねに爾なんぢを歌か頌しようせん爲ためなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

母はゝの胎内たいないより預よ言者げんしやと名なづけられ、其その腹はらより主しゆの降臨かうりんの傳道でんだう師し、前ぜん驅く、及および使徒しとと名なづけられし者ものよ、有いう力りよくなる軍ぐん士しとして、我われ惡あく鬼きに服ふくし、罪つみの奴ど隷れいと爲なりし者ものを此これ等らより脫のがれしめ給たまへ、我わが爾なんぢの速すみやかなる保護ほごを傳つたへん爲ためなり。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

福ふくたるハリストスの授洗者じゆせんしや、聖神せいしんの箕みたる者ものよ、糠からの如ごとき風習ならはしを我わが心こゝろより拂はらひ、神聖しんせいなる行爲わざを我われより聚あつめて、麥むぎの如ごとく神かみの倉くらに斂をさめ給たまへ、我わが爾なんぢの轉達てんたつに緣よりて主宰しゆさいを悅よろこばしむる備そなへと爲ならん爲ためなり。

光榮、今も、生神女讚詞 純じゆん潔けつなる少女せうぢよよ、我われに中ちゆう心しんよりの淚なみだ、内ない情じやうよりの歎息たんそく、靈たましひの傷感いたみ、度ど生せいの中うちに行おこなひし諸罪しよざいの痛告つうこくを予あたへ給たまへ、我わが爾なんぢの助たすけに因よりて痛つう悔くわいの中うちに生いのちを送おくりて、赦ゆるしを得えん爲ためなり。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第四調。

主しゆよ、我われ淚なみだを以もつて吾わが罪つみの書券かきつけを滌あらひ、吾わが生命いのちの餘よ日じつの痛つう悔くわいを以もつて爾なんぢを悅よろこばしめんと欲ほつしたれども、敵てきは我われを誘いざなひて、吾わが靈たましひを攻せむ、主しゆよ、我わが未いまだ全まつたく亡ほろびざる先さきに我われを救すくひ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

主しゆよ、誰たれか颶ぐ風ふうに遭あひて、爾なんぢの停泊みなとに著つきて救すくひを獲えざらん、或あるひは誰たれか病やまひに遇あひて、爾なんぢ萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ及および病やむ者ものの醫師いしの治ち療れうを求もとめて愈いゆるを得えざらん、主しゆよ、我わが未いまだ全まつたく亡ほろびざる先さきに我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり。我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

聖せいなる致ち命者めいしやの忍耐にんたいを受うけし仁愛じんあいの主しゆよ、我われ等らよりも歌詠うたを受うけて、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 ハリストス神かみの母はゝ、萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆを生うみし者ものよ、我わが危き難なんより我われ等らを救すくひ給たまへ、我われ等ら皆みな爾なんぢに呼よばん爲ためなり、吾わが靈たましひの惟一ゆゐいちの轉達てんたつよ、慶よろこべ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、及び發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 月曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第四調。

第一歌頌

イルモス 古いにしへのイズライリは足あしを濡ぬらさずして海うみの紅くれなゐの淵ふちを渡わたり、野のに於おいてモイセイの十じふ字じ形かたの手てにてアマリクの力ちからに勝かてり。

獨ひとり爾なんぢの帲幪おほひの下したに熱心ねつしんに趨はしり附つく者ものを患くわん難なん憂愁いうしうより保護ほごする至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、至し仁じんなる者ものとして、中ちゆう心しんより捧さゝぐる我われ等らの禱いのりを納いれ給たまへ。

神人かみびとの母はゝよ、我われ不ふ當たうの者ものは爾なんぢを穩おだやかなる港みなととして獲えて、危き難なん葘害さいがいの暴浪あらなみを脫のがれて、感謝かんしやの歌うたを爾なんぢに奉たてまつる。

光榮 神かみの母はゝよ、慈じ憐れんにして溫柔をんじうなる爾なんぢの目めを以もつて我わが災禍わざはひ及および憂患うれひに圍かこまるるを見みて、速すみやかに我われを解とき給たまへ、我われ爾なんぢを援助たすけとして呼よべばなり。

今も 潔いさぎよき者ものよ、エワ及およびアダムは爾なんぢに由よりて定罪ていざいを免まぬかれたり、彼かれ等らと偕ともに我われも爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくす、我わが悲かなしみの淚なみだを今いま喜よろこびに易かへて、我われを患くわん難なんより釋とき給たまへ。

第三歌頌

イルモス 强つよき者ものの弓ゆみは弱よわみ、弱よわれる者ものは力ちからを帶おびたり、故ゆゑに我わが心こゝろは主しゆの中うちに堅かためられたり。

婚姻こんいんに與あづからざる生しやう神女しんぢよよ、我われ爾なんぢを堅けん固ごなる武器ぶき及および垣墻かきとして獲えて、敵てきの軍ぐんに勝かちて、爾なんぢの偉ゐ大だいなるを歌うたふ。

生しやう神しん童貞女どうていぢよ、我われ等らの倚賴たのみよ、爾なんぢは悲哀かなしみの爐ゐろりを毁こぼち、失望しつばうの熱ねつを滅けし給たまふ、孰たれか爾なんぢの如ごとく斯かく之これを能よくする。

光榮 神かみの母はゝよ、爾なんぢの佑助たすけを乞こふ爾なんぢの僕ぼくの聲こゑを納いれ給たまへ。我わが倚賴たのみよ、我われに聆ききて、速すみやかに我われを救すくひ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、我われを顧かへりみて救すくひ給たまへ、蓋けだし爾なんぢは神聖しんせいなる指麾しきを以もつて萬有ばんいうを司つかさどる神かみの言ことばを、言ことば及および智慧ちゑに超こえて、肉體にくたいを取とりし者ものとして生うみ給たまへり。

第四歌頌

イルモス 敎けう會くわいは爾なんぢ義ぎの日ひが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、竝ならび立たちて正たゞしく呼よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

女宰ぢよさいよ、徒いたづらに我われの敵てきと爲なりて、我わが靈たましひを滅ほろぼさんと謀はかる者ものに勝かちて、我われを惡謀あくぼうに惱なやまされぬ者ものとして護まもり給たまへ、我わが喜よろこびて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

我わが仁じん慈じなる保護ほご者しやよ、我われを欺騙あざむきの舌したより脫のがれしめて、度ど生せいの行おこなひの汚けがされぬ者ものと顯あらはし給たまへ、爾なんぢは造物主ざうぶつしゆの母はゝとして能よくする所ところ多おほければなり。

光榮 我われ病やめる者ものは爾なんぢを善よく醫いやす醫師いしと知しりて、心こゝろと口くちとを以もつて呼よぶ、女宰ぢよさいよ、我われを醫いやし、憐あはれみて救すくひ給たまへ、我われ爾なんぢの僕ぼくは爾なんぢに趨はしり附つけばなり。

今も 童貞女どうていぢよマリヤよ、我われ等ら皆みな爾なんぢを諸天しよてん使し及および人人ひとびとの譽ほまれとして讚ほめ歌うたひて、信しんを以もつて祈いのる、女宰ぢよさいよ、我われ等らが凡およその憂患うれひより脫のがるるを得えんことを祈いのり給たまへ。

第五歌頌

イルモス 我わが主しゆよ、爾なんぢは光ひかり、信しんじて爾なんぢを崇あがめ歌うたふ者ものを闇くらき無智むちより引ひき出いだす聖せいなる光ひかりにして、世せ界かいに來きたり給たまへり。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの僕ぼくの祈き禱たうを主しゆ爾なんぢの子こに向むかはしめ給たまへ、我わが多おほくの罪過ざいくわの赦ゆるしを得えん爲ためなり。

神かみの聘女よめよ、我われを諸慾しよよく及および諸難しよなんより救すくひ給たまへ、神かみは爾なんぢを彼かれの前まへに卑微ひびなる我われの爲ために轉達者てんたつしやとして備そなへたればなり。

光榮 鳴呼あゝ女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは我われの帲幪おほひ、常つねに我われの美譽ほまれなり、悲哀かなしみに遭あふ者ものを必かならず棄すてざればなり。

今も 讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて今いま我われ等らの爲ために罪つみの赦ゆるしを求もとめて、我われ等らを諸もろもろの誘惑いざなひ及および不ふ潔けつなる諸慾しよよくより脫のがれしめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 憐あはれみに由よりて爾なんぢの脅わきより流ながれし血ちにて惡あく魔まの祭まつりの血ちより淨きよめられし敎けう會くわいは爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、讚揚ほめあげの聲こゑを以もつて爾なんぢを祭まつらん。

至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、我われに及およびたる待またざる憂うれひの中うちに於おいて爾なんぢ親みづから我われの保固かためなり、我われ爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢは己おのれの僕ぼくの大おほいなる保護ほご者しやなればなり。

女宰ぢよさいよ、我わが靈たましひの創傷きずを醫いやし給たまへ。童貞女どうていぢよよ、我われを護まもりて、爾なんぢの僕ぼくを讒言ざんげん、惡謀あくぼう、及および諸もろもろの誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、常つねに爾なんぢに趨はしり附つく我われを攻せむる不義ふぎなる惡謀者あくぼうしやを破やぶりて、我われを棄すてて滅ほろぶるを容ゆるす勿なかれ、爾なんぢ神かみの母はゝに能よくせざる所ところなければなり。

今も 女宰ぢよさいよ、我わが靈たましひの荒あれたる浪なみを鎭しづめ給たまへ、多おほくの罪つみ、誘惑いざなひ、及および憂患うれひは起たちて我われを攻せむればなり、親みづから我われを救すくひ給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第四調。

童貞女どうていぢよよ、我われ等ら皆みな爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきて爾なんぢに呼よぶ、我われ等らより祈禱いのりを受うけて、人ひとを愛あいする主しゆに絕たえず爾なんぢの諸僕しよぼくの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

第七歌頌

イルモス 火ひの中うちに爾なんぢがアウラアムの少者せうしやを救すくひ、義ぎの審判しんぱんを被かうむれるハルデヤ人じんを滅ほろぼしし讚さん美びたる主しゆ、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

マリヤよ、爾なんぢの祈き禱たうの劍つるぎを以もつてアガリ人じんの虐待しへたげを速すみやかに滅ほろぼして、民たみ及および爾なんぢの群ぐん、爾なんぢの子こに、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よぶ者ものを護まもり給たまへ。

神聖しんせいなる幕まくよ、爾なんぢに趨はしり附つく我われを入いれ給たまへ、我われを滅ほろぼさんと欲ほつする敵てきが我われを執とらへざらん爲ためなり。神かみの母はゝよ、我われ爾なんぢの子こに歌うたふ、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

光榮 神かみの母はゝマリヤよ、我われ誘惑いざなひの暴浪あらなみの中うちに溺おぼらされて、扶助たすけを有たもたざる爾なんぢの僕ぼくを速すみやかに救すくひ給たまへ、蓋けだし我われ爾なんぢに呼よぶ、我わが倚賴たのみなる生しやう神女しんぢよよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

今も 仁じん慈じなる生しやう神女しんぢよよ、諸罪しよざいの緣由ゆゑんなる人ひとの誘惑いざなひを今いま爾なんぢの神聖しんせいなる祈き禱たうを以もつて禦ふせぎて、爾なんぢの諸僕しよぼくを疾やましき罪過ざいくわ及および諸もろもろの誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 衆しゆう人じんの贖しよく罪主ざいしゆ全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは降くだりて、焰ほのほの中うちに敬虔けいけんを守まもりし者ものに露つゆを注そゝぎて、歌うたはしめ給たまへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて崇あがめ讚ほめよ。

不ふ法はふの民たみは我われ等らを攻せめて、爾なんぢに事つかふる者ものを滅ほろぼさんと誇ほこる。至し淨じやうなる者ものよ、彼かれを破やぶりて、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよと呼よぶ者ものを覆おほひ給たまへ。

獨ひとり神かみの母はゝよ、爾なんぢの多おほくの仁じん慈じ慈じ憐れんは我われ等らを罪つみの擬ぎ定てい及および種種しゆじゆの患くわん難なんより救すくふ、爾なんぢ神かみを生うみて、彼かれの世せ界かいを憐あはれみ給たまへばなり。

光榮 女宰ぢよさいよ、今いま我わが禱いのりに慈じ憐れんを垂たれて、我われに悲かなしみに代かへて喜よろこびを賜たまへ、我わが爾なんぢを歌うたひて、爾なんぢの子こに呼よばん爲ためなり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

今も 女宰ぢよさいよ、爾なんぢは我わが保固かため及および援助たすけなるに因よりて、我われ諸敵しよてきの怒いかりを懼おそれずして、爾なんぢを歌うたひて、爾なんぢの子こに呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

第九歌頌

イルモス エワは不ふ順じゆんを病やみて、詛のろひを入いれたり、爾なんぢは、童貞どうてい生しやう神女しんぢよよ、己おのれの產さんにて世せ界かいの爲ために祝しゆく福ふくの華はなを發ひらけり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

詭き譎けつ不ふ法はふなるアラワィヤ人じんは我われ等らに向むかひて武器ぶきを磨とぎて、謀はかりごとを設まうく、生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは爾なんぢの子この十じふ字架じか及および爾なんぢの祈き禱たうの力ちからを以もつて彼かれに向むかひて爾なんぢの諸僕しよぼくを堅かため給たまふ。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの光くわう榮えいを傳つたふ。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢは我われに敵てきに對たいする保固かためとして授さづけられたり、爾なんぢ我われを患くわん難なんより脫のがれしめ給たまふ。潔いさぎよき者ものよ、我われ爾なんぢに何なにを捧さゝげんか、我われ知しらず、唯たゞ我わが有たもてる感謝かんしやを爾なんぢに捧さゝぐ、爾なんぢの僕ぼくより之これを納いれて、我われを救すくひ給たまへ。

光榮 嗚呼あゝ萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆの母はゝ、嗚呼あゝ純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよ、哀かなしむ者ものの慰藉なぐさめ、溺おぼらさるる者ものの援助たすけ、弱よわる者ものの守護まもりよ、爾なんぢ我われを生しやう涯がい護まもり給たまへ。

今も 至いたりて讚さん美びたる者ものよ、我われ多おほくの罪つみと甚はなはだしき災禍わざはひとに攻せめらるる者ものは今いま爾なんぢに讚さん美びの祭まつりを奉たてまつりて、熱切ねつせつに爾なんぢに呼よぶ、聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われを助たすけ給たまへ、蓋けだし我われ爾なんぢを讚榮さんえいして歌か頌しようを終をふ。

次ぎて「常に福にして」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第四調

火曜日

 火曜日の早課

第一の誦文の後に痛悔の坐誦讚詞セダレン、第四調。

主しゆよ、我わが卑微ひびなる靈たましひ、罪ざい中ちゆうに一いつ生しやうを費つひやしし者ものを顧かへりみて、我われを罪女ざいぢよの如ごとく納いれて、救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

我われ現在げんざいの生命いのちの海うみを渡わたりて、我わが多おほくの惡あくの淵ふちを思おもひ、靈たましひの嚮きやう導だう師しを有たもたずして、ペトルの聲こゑを以もつて爾なんぢに呼よぶ、ハリストスよ、我われを救すくへ、神かみよ、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 爾なんぢは實じつに生しやう神女しんぢよなるに因よりて、母はゝとして勇敢いさみを以もつて爾なんぢの子こ我われ等らの神かみに祈いのりて、爾なんぢの帲幪おほひを求もとむる城市まちを護まもり、爾なんぢ停泊みなと及および垣墻かきたる者もの、獨ひとり人類じんるゐの轉達てんたつなる者ものに趨はしり附つく民たみを救すくひ給たまへ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第四調。

我わが不ふ當たうなる靈たましひの諸慾しよよくの暗やみと度生いのちの逸樂いつらくとに昧くらまされたる心こゝろに傷しやう感かんの情じやうは起おこらず。救世主きうせいしゆよ、我われ不ふ當たうの者ものを憐あはれみて、我われに傷しやう感かんの情じやうを與あたへ給たまへ、我わが終をはりに至いたらざる先さきに爾なんぢの仁じん慈じに呼よばん爲ためなり、ハリストス我わが救主きうしゆよ、我われ望のぞみを失うしなひし當あたらざる僕ぼくを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

願ねがはくは我われ等ら皆みな速すみやかにハリストスと偕ともに其その婚筵こんえんの宮みやに入いりて、ハリストス我わが神かみの神聖しんせいなる聲こゑを聞きかん、天てんの光くわう榮えいを愛あいする者ものは來きたりて、信しんを以もつて己おのれの燈ともしびを燃ともして、智ちなる處女せうぢよと偕ともに之これを受うけよ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

ハリストス我わが神かみよ、爾なんぢの受難者じゆなんしやは十じふ字架じかを武器ぶきとして、惡あくの魁かしらたる敵てきの惡謀あくぼうに勝かち、光くわう體たいの如ごとく輝かゞやきて、地ち上じやうの者ものを導みちびき、信しんを以もつて求もとむる者ものに醫治いやしを與あたふ。彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよ、獨ひとり淨きよく、獨ひとり讚さん美びたる者ものよ、我われ等らは爾なんぢより身みを取とりし者ものは父ちゝの言ことばハリストス我わが神かみなりと知しれり、故ゆゑに絕たえず爾なんぢを歌うたひて崇あがめ讚ほむ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第四調。

靈たましひよ、爾なんぢの逝世せいせいの先さきに痛つう悔くわいせよ、罪つみを行おこなふ者ものの爲ために避さくべからざる偏へん頗ぱなき審判しんぱんあり。心こゝろの傷しやう感かんを以もつて主しゆに呼よべ、慈じ憐れんなる主しゆよ、我われは知しると知しらずして罪つみを犯おかせり、爾なんぢの授洗者じゆせんしやの祈き禱たうに由よりて、我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

野のを愛あいする斑鳩やまばと、聖せいにせられし授洗者じゆせんしや、悔くわい改かいの宣傳者せんでんしや、人ひとと爲なりしハリストスを示しめしし者ものは凡およそ罪つみを行おこなふ者ものの爲ために轉達者てんたつしやと爲なり、凡およそ颶ぐ風ふうに遭あふ者ものの爲ために息やめざる扶ふ助者じよしやと爲なれり。ハリストスよ、其その祈き禱たうに因よりて爾なんぢの世せ界かいを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは神聖しんせいなる產さんを以もつて慾よくの中うちに朽くちたる地ち上じやうの者ものの死しに屬ぞくする性せいを新あらたにして、衆しゆうを死しより不ふ朽きうの生命いのちに起おこし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな宜よろしきに合かなひて爾なんぢ至し榮えいなる童貞女どうていぢよを讚さん美びす、爾なんぢの預よ言げんせしが如ごとし。

痛悔の規程カノン、我が主イイススハリストス及び聖なる致命者に奉る。其冠詞は、言よ、潔きよめを爲す淚にて我を洗ひ給へ。イオンフの作。第四調。

第一歌頌

イルモス エギペトを擊うち、苛虐者くるしめびとファラオンを海うみに沈しづめし主しゆは、民たみを奴ど隸れいより拯すくひ給たまへり。故ゆゑに彼かれ等らはモイセイに隨したがひて主しゆに凱歌かちうたを奉たてまつる、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

主しゆよ、隱ひそかに幽暗くらやみの業わざを行おこなふ者ものを顯あらはに責せむる毋なかれ、衆しゆうの前まへに辱はづかしむる毋なかれ。救世主きうせいしゆよ、誠實せいじつなる痛つう悔くわいの光ひかりを以もつて我われを照てらして救すくひ給たまへ。

主宰しゆさいよ、我われ放蕩はうたうの者ものは常つねに罪つみに罪つみを加くはへて、聊いさゝかも爾なんぢを畏おそるる畏おそれを感かんぜず。主しゆよ、終をはりに至いたらざる先さきに我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 光くわう榮えいなる聖者せいしやは敬虔けいけんの盾たてに掩おほはれ、十じふ字架じかの武器ぶきを劍つるぎの如ごとく執とりて、敵てきと戰たゝかはん爲ために出いでて之これを斃たふせり。

致命者讚詞 猛たけき獅子しし、斬きる劍つるぎ、沸たぎる鑊かま、搔かく鐵搭くまで、身みを裂さく甚はなはだしき苦くるしみを神聖しんせいなる致ち命者めいしやは懼おそれざりき。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは聖神せいしんに由よりて金裝きんさうせられたる約匱やくひつと顯あらはれて、律法りつぱふの石板せきばんにあらずして、昔むかし律法りつぱふと諸しよ預よ言者げんしやとの預よ言げんせし主しゆハリストスを内うちに有たもてる者ものなり。

又尊貴なる聖前驅イオアンの規程カノン。其冠詞は、福たる者よ、我愛を以て爾に禱の歌を綴る。イオシフの作。第四調。

第一歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよより生うまれし主しゆよ、祈いのる、强つよき軍ぐんたる我わが靈たましひの諸慾しよよくを無む慾よくの深處ふかみに沈しづめ給たまへ、我わが鼓つゞみを以もつてするが如ごとく、肉にく情じやうを殺ころすに由よりて凱歌かちうたを爾なんぢに歌うたはん爲ためなり。

授洗者じゆせんしやよ、爾なんぢは大おほいなる星ほしの如ごとく日ひに先さきだちて、爾なんぢの光ひかりを以もつて地ちを照てらせり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、無む數すうの罪惡ざいあくに由よりて甚はなはだしく昧くらまされて矇めしひと爲なりたる我わが心こゝろを照てらし給たまへ。

福ふくたる者ものよ、昔むかし爾なんぢの生うまるるを以もつて胎たいの無む結果けつくわの縛しばりは解とかれたり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、慾よくの爲ために荒あれて無む結果けつくわの者ものと爲なりたる我わが靈たましひを爾なんぢの祈き禱たうに由よりて諸德しよとくの善よき果みを結むすぶ者ものと爲なし給たまへ。

至し榮えいなる授洗者じゆせんしやよ、爾なんぢはイリヤの力ちからを以もつて前驅さきがけして、贖しよく罪主ざいしゆの爲ために途みちを備そなへたり。彼かれに我わが靈たましひの途みちを向むかはしめて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて諸もろもろの誘惑いざなひを斥しりぞけ、諸慾しよよくの焰ほのほを滅けし給たまへ。

生神女讚詞 光ひかれる雲くもよ、爾なんぢの光くわう明めいなる轉達てんたつを以もつて我わが靈たましひの暗くらき雲くもを散さんじ給たまへ、我わが爾なんぢより輝かゞやきし光ひかりを仰あふぎ、之これに照てらせれて暮くれざる光ひかりに至いたらん爲ためなり。

第三歌頌

イルモス 雷いかづちを强つよめ、風かぜを作つくる主しゆよ、我われを固かため給たまへ、我わが忠ちゆう信しんに爾なんぢを歌うたひて、爾なんぢの旨むねを行おこなはん爲ためなり、我われ等らの神かみよ、爾なんぢと均ひとしく聖せいなる者ものなければなり。

瞽者めしひの目めを啓ひらきしハリストスよ、逸樂いつらくと度生いのちの憂うれひとに昧くらまされて、聊いさゝかも爾なんぢの定さだめを仰あふぎ視みざる我わが目めを啓ひらき給たまへ。

視みよ、時ときなり、吾わが靈たましひよ、爾なんぢの行おこなひし諸惡しよあくより起おきて、畏おそれを以もつて主宰しゆさい贖しよく罪主ざいしゆに呼よべ、ハリストスよ、我わが爲ために痛つう悔くわいの門もんを開ひらき給たまへ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやの神聖しんせいなる戰たゝかひに由よりてワェリアルは逐おはれたり、昔むかし誇ほこりし者ものは彼かれ等らに踐ふまれて、行動かうどうなき死し者しやと見みらる。

致命者讚詞 聖せい致ち命者めいしやの會くわいは馳はすべき程みちを盡つくし、神聖しんせいなる力ちからを以もつて無む形けいなる黑こく鬼きの萬まん萬まんを實じつに敗やぶりて、光くわう榮えいを獲えたり。

生神女讚詞 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは列れつ祖その哀かなしみを解ときて、我われ等らの歡喜よろこびなる生いのちを施ほどこす主しゆ及および贖しよく罪主ざいしゆを生うみ給たまへり。彼かれに我われ等らの靈たましひを救すくはんことを熱切ねつせつに祈いのり給たまへ。

又

イルモス 强つよき者ものの弓ゆみは弱よわみ、弱よわれる者ものは力ちからを帶おびたり、故ゆゑに我わが心こゝろは主しゆの中うちに堅かためられたり。

福ふくたる者ものよ、爾なんぢは凡およその德とくを行おこなひ、凡およその惡あくを中ちゆう心しんより惡にくみて、人人ひとびとに悔くわい改かいの途みちを示しめし給たまへり。

爾なんぢは身みを取とりし言ことばの大おほいなる前ぜん驅くと爲なれり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、無知むちなる諸慾しよよくより我われを脫のがれしめて、無む慾よくに導みちびき給たまへ。

前ぜん驅くよ、爾なんぢは猶なほ肉體にくたいに居をりて、肉體にくたいなき者ものの度ど生せいを爲なせり。捧神者ほうしんしやよ、祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らをも之これに效ならはん爲ために堅かため給たまへ。

生神女讚詞 母はゝ童貞女どうていぢよよ、罪惡ざいあくに由よりて不ふ當たうの者ものと爲なりし世せ界かいは爾なんぢに由よりて憐あはれみを蒙かうむれり。故ゆゑに我われ等ら宜よろしきに合かなひて讚歌ほめうたを以もつて爾なんぢを讚さん美びす。

第四歌頌

イルモス 神かみよ、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、主しゆよ、我われ爾なんぢの作爲わざを悟さとりて驚おどろけり、蓋けだし全ぜん地ちは爾なんぢの讚さん美びに盈みちたり。

我われは諸德しよとくを褫はがれて惡あくを衣きたるに、視みよ、耻はぢに充みちたり、仁愛じんあいなるイイススよ、神聖しんせいなる衣ころもにて我われを飾かざり給たまへ。

我われ世よの海うみの水みづを渡わたりて、怠惰おこたりに由よりて肉體にくたいの逸樂いつらくに溺おぼるる難なんに遭あへり、言ことばよ、我われを痛つう悔くわいの港みなとに向むかはしめ給たまへ。

致命者讚詞 勇敢ゆうかんなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは忍耐にんたいの神聖しんせいなる力ちからを以もつて實じつに罪つみの悉ことごとくの汚けがれを潔きよめて、衆しゆうに救すくひを與あたへたり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやは石いしの如ごとく地ちに投なげられ、頑かたくななる迷まよひを全まつたく倒たふして、上うへなる都城まちに至いたれり。主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 我われ何いづれの時とき何いづれの處ところに於おいても爾なんぢを救すくひとして呼よぶ、我わが贖しよく罪主ざいしゆ及および救世主きうせいしゆたる神かみを生うみし純じゆん潔けつなる者ものよ、我われを棄すつる毋なかれ。

又

イルモス 洪恩こうおんなる主しゆよ、爾なんぢは己おのれの像ざうを愛あいするに因よりて、爾なんぢの十じふ字架じかに上のぼりしに、異い邦民はうみんは融とけたり、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは我われの堅固かためと美譽ほまれなればなり。

光くわう榮えいなる前ぜん驅くよ、我われ等らは爾なんぢを眞實しんじつの言ことばを以もつて眞まことの春はるを前兆ぜんてうする鳩はとと知しりて、常つねに崇あがめ讚ほむ。

舊きうと新しんとの轉達者てんたつしやたる前ぜん驅くよ、誘惑者いうわくしやの誘いざなひに由よりて壞やぶられし我われを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて全まつたく新あらたになし給たまへ。

無む玷てんなる度ど生せいの爲ために荒くわう野やに住すまひし前ぜん驅くよ、諸もろもろの罪惡ざいあくに由よりて荒あれたる我わが心こゝろを爾なんぢの神聖しんせいなる祈き禱たうを以もつて新あらたになし給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの子こは我われ等らの爲ために潔淨きよめ及および拯救すくひと知しられたり。彼かれに祈いのりて、傷しやう感かんの情じやうを以もつて爾なんぢを讚さん美びする者ものの靈たましひを救すくはんことを求もとめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢの誡いましめの光ひかりを我われに耀かゞやかし給たまへ、我わが神しん゜は朝あさ早はやく爾なんぢに向むかひて、爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし爾なんぢは我われ等らの神かみなり、我われ爾なんぢ平安へいあんの王わうに趨はしり附つく。

イイススよ、憂悶もだえの中うちに朽きう壞くわいの生いのちを度わたりて、日日ひびに誘惑者いうわくしやの誘いざなひに昧くらまさるる我われを憐あはれみて、痛つう悔くわいの光ひかり及および生命いのちに向むかはしめ給たまへ。

蛇へびの欺騙あざむきに由よりて高たかく擧あがりたる吾わが心こゝろは大おほいなる墮だ落らくを以もつて落おちたり。倒たふされし者ものの更新あらためなるイイススよ、爾なんぢの多おほくの慈じ憐れんに由よりて我われを起おこして救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 神福しんぷくなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは血ちの滴したゝるを以もつて多た神しんの迷まよひの爐ゐろりを滅けし、醫治いやしの注そゝぐを以もつて常つねに苦くるしみの焰ほのほを鎭しづめ給たまふ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは審判しんぱん座ざの前まへに立たち、鐵搭くまでにて搔かかれ、首くびを斬きられ、多おほくの烈はげしき苦くるしみに遇あはせられて、神かみの指麾しきに由よりて動うごきなく止とゞまりたり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよ・女宰ぢよさいよ、我われ罪惡ざいあくの黑暗くらやみに居をる者ものに爾なんぢの慈じ憐れんの光くわう線せんを輝かゞやかして、我われを痛つう悔くわいの光ひかりに向むかはしめ給たまへ、我わが信しんを以もつて爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

又

イルモス 仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢの光ひかりを我われ等らに遣つかはし、罪過ざいくわの闇やみより我われ等らを解ときて、爾なんぢの平安へいあんを賜たまへ。

野のに養やしなはれし者ものよ、野のの熾炭やけずみの如ごとく諸慾しよよくの熱ねつに焚やかるる我われを爾なんぢの祈き禱たうの露つゆを以もつて之これに惱なやまされぬ者ものと爲なし給たまへ。

至いたりて福ふくたる者ものよ、爾なんぢの聖せいなる右みぎの手てより父ちゝの神聖しんせいなる右みぎの手て、爾なんぢの聖せいなる轉達てんたつに因よりて我われ等らを誘惑者いうわくしやの手てより救すくふ者ものは洗せんを受うく。

前ぜん驅くよ、全ぜん世せ界かいは爾なんぢを避所かくれがと有いう力りよくなる覆庇おほひ及および大おほいなる墻かきとして有たもつ。爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らを凡およその艱難かんなんより救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 童貞どうてい少女せうぢよよ、神かみは爾なんぢ、イアコフの榮さかえたる者ものを愛あいして、爾なんぢを以もつて凡およそ先さきに罪惡ざいあくに昧くらまされし者ものを飾かざり給たまふ。

第六歌頌

イルモス 我われ行おこなひを以もつて世せ俗ぞくの淵ふちに沈しづみ、地ぢ獄ごくに降くだりて、イオナが鯨くぢらよりせし如ごとく、斯かく呼よぶ、神かみの子こ及および言ことばよ、祈いのる、我われを諸惡しよあくの深處ふかみより引ひき上あげ給たまへ。

我われ不ふ當たうの者ものは怠惰おこたりの坐睡ゐねむりにて靈たましひを弱よわらせ、罪つみの寢ねむりにて仆たふれたり。主しゆよ、我われを起おこして痛つう悔くわいの光ひかりに向むかはしめて、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われを救すくひ給たまへ。

我われ不ふ當たうの者ものは如何いかんぞ墮だ落らくしたる、如何いかんぞ至し仁じんなる神かみに離はなれたる、如何いかんぞ彼かの恐おそるべき審判しんぱん、我わが審判しんぱんせられんとする者ものを思おもひに入いれざる。我わが造成主ざうせいしゆよ、我われを宥なだめ給たまへ。

致命者讚詞 至いたりて光くわう明めいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは實じつに救すくひの歌うたを絕たえず唱となへ、信者しんじやの心こゝろを樂たのしませ、迷まよひの醉ゑひを全まつたく醒さます簫ふゑと顯あらはれたり。

致命者讚詞 ハリストスの致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは造成主ざうせいしゆを愛あいする熱愛ねつあいに由よりて、人ひとの度どに超こゆる甚はなはだしき苦くるしみを、他た人にんの身みに於おけるが如ごとく、喜よろこびて忍しのび給たまへり。

生神女讚詞 衆しゆう信者しんじやの轉達者てんたつしや及および帲幪おほひたる至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、我わが爲ために轉達てんたつして、我われを將しやう來らいの怒いかり及および審判しんぱんの時ときに畏おそるべき定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ、我わが信しんを以もつて常つねに爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

又

イルモス 我われ海うみの深處ふかみに至いたり、多おほくの罪つみの暴風あらしは我われを沈しづめたり。慈じ憐れんの主しゆよ、神かみなるに因よりて、我わが生命いのちを深處ふかみより引ひき上あげ給たまへ。

前ぜん驅くよ、爾なんぢは流ながれの中うちに立たちて、衆しゆう人じんの罪つみを任になふ主宰しゆさいに洗せんを授さづけたり。絕たえず彼かれに我われ等らの靈たましひを宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

前ぜん驅くよ、爾なんぢは悔くわい改かいの傳道でんだう師しと顯あらはれたり、亡ほろびを爲なす罪つみに汚けがされて、起おくる能あたはざる我わが心こゝろを起おこして、痛つう悔くわいに向むかはしめ給たまへ。

福ふくたる者ものよ、爾なんぢは野のに在ありて人人ひとびとの靈たましひに言ことばの將まさに來きたらんとするを傳つたへたり。故ゆゑに凡およその敎けう會くわいは默もださざる聲こゑを以もつて爾なんぢを讚揚さんやうす。

生神女讚詞 神かみの聘女よめよ、爾なんぢの畏おそるべき產さんに由よりて律法りつぱふの預よ象しやうは明あきらかになりたり、女宰ぢよさいよ、我われ等ら今いま其その應かなへるを見みて、宜よろしきに合かなひて爾なんぢを尊たふとむ。

第七歌頌

イルモス 黃金こがねの偶像ぐうざうに伏拜ふくはいせざりしアウラアムの少者せうしやは、黃金こがねが坩堝るつぼに於おける如ごとく、火ひの爐ゐろりに鍊ねられ、光ひかれる宮みやに在あるが如ごとく、樂たのしみて歌うたへり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

ハリストスよ、爾なんぢは仁じん慈じなるに由よりて、世せ界かいを古いにしへの定罪ていざいより救すくはんと欲ほつして、嬰兒をさなごと現あらはれたり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、宏くわう恩おんなる主しゆよ、多おほくの罪つみに由よりて古ふるびたる我われを今いま新あらたにして救すくひ給たまへ、蓋けだし我われ歌うたふ、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

昔むかし痛つう悔くわいせしマナッシヤを救すくひ、淚なみだを流ながしし罪女ざいぢよを宥なだめ、言ことばを以もつて盜賊たうぞくを義ぎと爲なしし救世主きうせいしゆよ、多おほくの甚はなはだしき罪つみを爾なんぢの前まへに犯おかしし我われをも納いれ給たまへ、蓋けだし我われ呼よぶ、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、多た神しんの烈はげしき暴風あらしが世せ界かいを圍かこめるに、爾なんぢ等らは敬虔けいけんの舟ふねを造つくり、ハリストスの操舵かぢとりにて生命いのちの港みなとに漕こぎ到いたりて呼よぶ、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやは黃金こがねが坩堝るつぼに於おけるが如ごとく、苦くるしみに鍊ねられて輝かゞやく者ものと爲なり、ハリストスの苦く難なんの尊たふとき印いんに證しようせられたる者ものとして、今いま天てんの寶藏はうざうに納をさめられて堅かたく護まもらる。

生神女讚詞 救世主きうせいしゆ及および神かみ、贖しよく罪主ざいしゆ及および主宰しゆさいを身みにて生うみし至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、常つねに彼かれに我われ等らの爲ために祈いのり給たまへ、我われ等らが多おほくの甚はなはだしき罪つみの赦ゆるしを受うけて、智慧ちゑに超こゆる彼かれの慈じ憐れんを讚榮さんえいせん爲ためなり。

又

イルモス 昔むかしアウラアムの少者せうしやはワワィロンに於おいて爐ゐろりの焰ほのほを蹈ふみて、歌うたを以もつて呼よべり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

凡およそ生うまれし者ものの中うちに最いと大おほいなる者ものと現あらはれたる預よ言者げんしやよ、爾なんぢの至し大だいなる祈き禱たうを以もつて神かみの前まへに大罪だいざいを犯おかしし我われを大おほいなる焰ほのほ及および永遠えいゑんの幽暗くらやみより脫のがれしめ給たまへ、我わが爾なんぢを讚さん美びせん爲ためなり。

我われは果みを結むすばざる無花果樹いちじくと顯あらはれて、斫きらるるを恐おそる。救世主きうせいしゆの前ぜん驅くよ、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われを堅かためて、果みを結むすぶ者ものと爲なし給たまへ、我わが爾なんぢを讚さん美びせん爲ためなり。

前ぜん驅くイオアンよ、衆しゆう人じんの贖しよく罪主ざいしゆに奉たてまつる爾なんぢの勇いさましき祈き禱たうを以もつて、我われ信しんに由よりて爾なんぢに趨はしり附つく者ものに對たいして起おこる所ところの凡およその敵てきの暴風あらしを鎭しづめ給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、靈たましひと舌したとを以もつて常つねに爾なんぢを讚榮さんえいする爾なんぢの諸僕しよぼくを凶きよう惡者あくしやの攻擊こうげき及および惡あく鬼きの奴ど役えきより護まもり給たまへ。

第八歌頌

イルモス 主しゆよ、ヘルワィムセラフィム等らは火焰くわえんの中うちに爾なんぢの前まへに立たち、造物ざうぶつは皆みな爾なんぢに美うるはしき歌うたを歌うたふ、人人ひとびとよ、惟一ゆゐいちの造成主ざうせいしゆハリストスを歌うたひ、崇あがめ、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

救世主きうせいしゆよ、我われは爾なんぢを畏おそるる畏おそれに止とゞまらず、爾なんぢの誡いましめに遵したがはず、聊いさゝかも爾なんぢの旨むねを行おこなはざりき、我われ不ふ當たうの者ものは如何いかにか爲ならん、人ひとを愛あいする主しゆよ、功こうなき我われを宥なだめて、我われを退しりぞくる毋なかれ。

諸善しよぜんの耕作者かうさくしやよ、爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢを畏おそるる畏おそれの鐮かまを以もつて我わが不ふ當たうなる靈たましひの棘いばらの思おもひを悉ことごとく根ねより刈かり給たまへ、ハリストスよ、我われに痛つう悔くわいの種たねより救すくひの穗ほを生しやうずるを得えしめ給たまへ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは多おほくの苦くるしみの中うちに狹せばめられて、恩おん寵ちようを以もつて廣ひろまり、陷阱おとしあなの充じゆう滿まんせる敵てきの途みちを狹せばめて、今いま我われ等らに信しんと愛あいとを以もつて神かみの途みちを行ゆくを敎をしへ給たまふ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、誘惑者いうわくしやは爾なんぢ等らの苦く難なんと忍耐にんたいとの深處ふかみに陷おちいりて難なんに遭あひ、無知むちの者ものにして衆しゆうに晒わらはれて臥ふす、爾なんぢ等らは勝しよう利りの榮えい冠くわんにて飾かざらる。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの腹はらは世せ界かいの爲ために衆しゆうを養やしなふ生命いのちの麥むぎを載のする禾塲うちばと顯あらはれたり、故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを凡およその善ぜんの原因げんいんとして宜よろしきに合かなひて讚さん美びす。

又

イルモス 衆しゆう人じんの贖しよく罪主ざいしゆ全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは降くだりて、焰ほのほの中うちに敬虔けいけんを守まもりし者ものに露つゆを注そゝぎて、歌うたはしめ給たまへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて崇あがめ讚ほめよ。

前ぜん驅くよ、煩悶もだえの眠ねむりに陷おちいり、惡あくの暗やみに昏くらまされたる我われを爾なんぢの明あきらかなる祈き禱たうを以もつて改あらためて、晝ひるに在あるが如ごとく諸德しよとくを以もつて美うるはしく行ゆかしめ給たまへ。

誘惑いざなひの暴風あらしは我われを圍かこみ、諸慾しよよくの浪なみは我われを擾みだす、前ぜん驅くよ、我われに手てを授さづけて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが靈たましひの舟ふねを痛つう悔くわいの港みなとに到いたらしめ給たまへ。

河かはの水みづの中うちに於おいて世せ界かいの罪つみを任になふ主しゆに洗せんを授さづけし福ふくたる前ぜん驅くイオアンよ、爾なんぢの祈き禱たうの流ながれを以もつて我わが惡あくの淵ふちを涸からし給たまへ。

前ぜん驅くよ、爾なんぢは言いひ難がたく爾なんぢより洗せんを受うけしイイススの上うへに聖神せいしんを見み、父ちゝの聲こゑの彼かれを證しようするを聞きけり、彼かれに我われ等らを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ等らの更新あらたまりの泉いづみとして、蛇へびの毒どくに惱なやまされたる我われを全まつたく改あらため給たまへ、我わが信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを讚さん美びせん爲ためなり。

次に生神女の歌詠を歌ふ、「我が靈は主を崇め」。

第九歌頌

イルモス イズライリの神かみは其その臂ひぢの力ちからを顯あらはせり、蓋けだし權けんある者ものを位くらゐより黜しりぞけ、卑いやしき者ものを擧あげたり、東旭あさひは上うへより我われ等らに臨のぞみ、我われ等らを平安へいあんの道みちに向むかはしめたり。

視みよ、奧密あうみつの宮みやは啓ひらかれ、智ち者しやは諸德しよとくの油あぶらにて其その燈ともしびを飾かざりて、光くわう明めいなる者ものとして入いる。嗚呼あゝ靈たましひよ、煩悶もだえの眠ねむりを退しりぞけよ、燈ともしびを執とりてハリストスと偕ともに入いらん爲ためなり。

言ことばよ、我われ思念おもひの中うちに罪女ざいぢよの如ごとく爾なんぢの足あしを執とりて、淚なみだを以もつて之これを滌あらふ。救世主きうせいしゆよ、我われを諸慾しよよくの泥ひぢより滌あらひて、今いま我われにも言いひ給たまへ、爾なんぢの信しんは爾なんぢを救すくへりと、我わが爾なんぢの無む量りやうの慈じ憐れんを歌うたはん爲ためなり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは常つねにハリストスの瘡痍きずを光くわう明めいなる美び飾しよくとして有たもちて、樂たのしき心こゝろと喜よろこばしき靈たましひとを以もつて天てん上じやうに居をりて、我われ等らの爲ために平安へいあんと、諸難しよなんより脫のがるることと、諸罪しよざいより解とかるることとを求もとめ給たまふ。

致命者讚詞 神聖しんせいなる受難者じゆなんしやよ、イズライリの中うちに有たもたれて之これを諸難しよなんより救すくひし約匱やくひつの如ごとく、爾なんぢ等らの不ふ朽體きうたいを有たもつ凡およその處ところは聖せいにせられ、天てん上じやうの者ものは爾なんぢ等らの福ふくたる靈たましひを獲えて、尊たふとき天てん使等しらと偕ともに喜よろこぶ。

生神女讚詞 善ぜんを愛あいする神かみを生うみし善ぜんを愛あいする少女せうぢよよ、我われ爾なんぢに呼よぶ、諸慾しよよくと惡あく鬼きの誘惑いざなひとに因よりて惡あくに滿みちたる吾わが不ふ當たうの靈たましひを善ぜんなる者ものと爲なし給たまへ、我わが信しんを以もつて爾なんぢ衆しゆう人じんの恃賴たのみを歌うたはん爲ためなり。

又

イルモス エワは不ふ順じゆんを病やみて、詛のろひを入いれたり、爾なんぢは、童貞どうてい生しやう神女しんぢよよ、己おのれの產さんにて世せ界かいの爲ために祝しゆく福ふくの華はなを發ひらけり、故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

主しゆハリストスは我わが力ちから我わが歌うたなり。福ふくたる前ぜん驅くよ、彼かれに我われを諸慾しよよくと惡あく鬼きの諸もろもろの誘惑いざなひとに對たいして堅かためんことを祈いのりて、我われに神聖しんせいなる旨むねを行おこなはしめ給たまへ、我わが愛あいを以もつて常つねに爾なんぢを讚さん美びせん爲ためなり。

神聖しんせいなる前ぜん驅くよ、爾なんぢは美うるはしき班鳩やまばと及およびハリストスの神聖しんせいなる春はるを報はうずる好よき音ねの燕つばめと現あらはれたり。爾なんぢに祈いのる、我われを靈たましひを害がいする冬ふゆ及および罪つみの暴風あらしより脫のがれしめんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

神聖しんせいなる前ぜん驅くよ、爾なんぢは母はゝの胎内たいないに躍をどりて、童貞女どうていぢよより輝かゞやきし者ものを知しらせたり。彼かれに祈いのりて、我われを殺ころす吾わが肉慾にくよくの動搖うごきを殺ころして、我わが心こゝろを喜悅よろこびに滿みたしめんことを求もとめ給たまへ、我わが爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

靈たましひよ、憐あはれみなき審判しんぱんは憐あはれみを行おこなはざる者ものを待まつ、視みよ、愼つゝしめ、油あぶらを取とりて爾なんぢの燈ともしびを燃ともし、滅けされぬ者ものとして之これを守まもれ、新娶者はなむこは近ちかづく、警醒けいせいせよ、滅けされぬ望のぞみを有たもたん爲ためなり。

生神女讚詞 善ぜんを愛あいする神かみを生うみし善ぜんを愛あいする生しやう神女しんぢよよ、彼かれに祈いのりて、我われを凡およその惡あくより脫のがれしめ、肉體にくたいの逸樂いつらくを惡にくましめて、我われに善ぜんを愛あいする熱心ねつしんを與あたへんことを求もとめ給たまへ、我わが歌うたを以もつて爾なんぢを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

次ぎて「常に福にして」。聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第四調。

救世主きうせいしゆよ、我わが淚なみだにて我われを滌あらひ給たまへ、我われ多おほくの罪つみに由よりて汚けがされたればなり。故ゆゑに爾なんぢの前まへに俯ふ伏ふくす、神かみよ、我われ罪つみを犯おかせり、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我われは爾なんぢの靈れい智ちなる群ぐんの羊ひつじにして、爾なんぢ善よき牧者ぼくしやに趨はしり附つく。神かみよ、我われ迷まよひし者ものを尋たづね獲えて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは裁判所さいばんしよに勇いさましくハリストスを傳つたへて、天てん使等しらの侶ともと爲なれり、蓋けだし凡およそ世よに在ある美うるはしき者ものを無なきが如ごとく棄すてて、堅かたき恃賴たのみとして信しんを保たもてり。故ゆゑに迷まよひを逐おひ、信者しんじやに醫治いやしの恩おん賜しを流ながして、絕たえず我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞 讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを悉ことごとくの禍わざはひより護まもり給たまへ、我われ等らが爾なんぢ我わが靈たましひの倚賴たのみを讚榮さんえいせん爲ためなり。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。及び聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、其他、幷に發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 火曜日の聖体礼儀に

火曜日の眞福詞、第四調。

アダムは木きに緣よりて樂園らくゑんより出いだされ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかの木きに緣よりて樂園らくゑんに入いりたり。彼かれは食しよくして造物主ざうぶつしゆの誡いましめに背そむき、此これは共ともに十じふ字架じかに釘ていせられて、隱かくれたる神かみを認みとめて籲よべり、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

慈じ憐れんなるに由よりてペトルの痛哭つうこく及および罪女ざいぢよの涕泣ていきふを受うけ、稅ぜい吏りの唯たゞ歎息たんそくせしを宥なだめしハリストス言ことば、至し仁じんなる主しゆよ、我われ俯ふ伏ふくして諸罪しよざいの赦ゆるしを求もとむる者ものをも憐あはれみて、永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

荒あれたる胎たいの縛しばりを解ときたる大おほいなる前ぜん驅くよ、我わが卑微ひびなる心こゝろの無む結果けつくわを解ときて、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて諸德しよとくの果みを捧さゝげしめ給たまへ。我われは此これに因よりて盡つくされぬ糧かてを獲えて、ハリストスに呼よばん、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを憶おもひ給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

睿えい智ちにして至し榮えいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは傷創きずにて苦くるしめられ、猛獸まうじうに食しよくとして畀あたへられ、劍つるぎにて斬きられ、海うみの深處ふかみに投なげられ、火ひに燬やかれ、銳するどき刃はにて割さかれて、神かみを棄すてざりき。聖せいなる者ものよ、彼かれに我われ等らの爲ために平安へいあんと、光くわう照せうと、大おほいなる憐あはれみとを求もとめ給たまへ。

光榮 我われ等ら衆しゆう信者しんじやは同どう意いにして父ちゝと子こと聖神せいしんとに祈いのりて、宜よろしきに合かなひて神性しんせいの惟一ゆゐいちなるを、三さん位ゐに於おいて混淆こんかうなく、分ぶん離りなく、變易へんえきなく、近ちかづき難がたき者ものとして讚榮さんえいす。彼かれに由よりて我われ等ら火ひの苦くるしみより救すくはる。

今も 神かみの聘女よめマリヤ、我わが神かみの廣ひろき入いり處どころなる者ものよ、爾なんぢは父ちゝと同どう無む原げん、聖神せいしんと同どう寶はう座ざなる主しゆを胎内たいないに入いれて、人類じんるゐに恩おんを施ほどこさん爲ために人ひとと爲なりし者ものを智慧ちゑ及および言ことばに超こえて生うみ給たまへり。熱心ねつしんに彼かれに爾なんぢの諸僕しよぼくの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

横線 - 『八調経』第四調

 火曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十字架の讚頌スティヒラ、第四調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

至し仁じんなる主宰しゆさいよ、爾なんぢは十じふ字架じかに擧あげられ、戈ほこにて刺さされ、指ゆびは血ちに染そめられて、我われ等らの爲ために赦免ゆるしを書しるし、原げん祖そアダムの書券かきつけを裂さきて、人ひとの性せいを自じ由いうにし給たまへり。故ゆゑに宏くわう恩おんなる主しゆよ、我われ等らは智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの仁じん慈じを歌か頌しようす。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

主宰しゆさいイイススよ、我われ等らは爾なんぢの苦くるしみ、十じふ字架じか、戈ほこ及および葦あし、海絨かいじうと釘くぎ、絳あかき袍うはぎと棘いばらの冠かんむり、批うたるることと唾つばきせらるることと辱はづかしめ、爾なんぢの甘あまんじて忍しのびし者ものを歌か頌しようす。獨ひとり生いのちを施ほどこす寬くわん容ようの主しゆよ、我われ爾なんぢの恒忍ごうにんを讚さん美びす、人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ信しんを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいす。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

至し仁じんなる主しゆよ、我われ爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかに伏拜ふくはいして、愛あいを以もつて接吻せつぷんし、爾なんぢが智慧ちゑに超こゆる降臨かうりん、無む量りやうなる仁じん慈じ、言いひ難がたき宏くわう恩おん、豐ゆたかなる慈じ憐れんを讚榮さんえいす、此これに因よりて爾なんぢは罪惡ざいあくの幽暗くらやみの中うちに圍かこまれたる人ひとの性せいを救すくひ給たまへり。ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの釘てい刑けいに歸きす。

次に、之あらば、月課經ミネヤの聖人の讚頌スティヒラ。若し月課經なくば、又至聖なる生神女の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

主しゆよ、爾なんぢの潔いさぎよき母はゝは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせらるるを見みて、驚おどろきて呼よべり、至し愛あいの子こよ、此この觀みる所ところは何なにぞや、爾なんぢの多おほくの奇き跡せきを樂たのしみし不ふ順じゆん不ふ法はふの會くわいは斯かく爾なんぢに報むくゆるか。主宰しゆさいよ、光くわう榮えいは爾なんぢの言いひ難がたき寬くわん容ように歸きす。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

羔こひつじ及および牧者ぼくしやたる爾なんぢが木きの上うへに在あるを見みて、生うみし牝め羊ひつじは哭なき、母はゝとして爾なんぢに言いへり、至し愛あいの子こ、恒忍ごうにんなる主宰しゆさいよ、如何いかんぞ十じふ字架じかの木きに擧あげられたる、言ことばよ、如何いかんぞ爾なんぢの手て足あしは不ふ法者はふしやより釘ていせられて、爾なんぢ血ちを流ながしたる。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

主しゆよ、童貞女どうていぢよ爾なんぢの母はゝは爾なんぢが十じふ字架じかに懸かけられしを見みて訝いぶかり、目めを注そゝぎて云いへり、主宰しゆさいよ、爾なんぢの多おほくの恩おん賜しを樂たのしみし者ものは何なにをか爾なんぢに報むくいたる。惟たゞ祈いのる、我われを獨ひとり世よに遺のこす毋なかれ、速すみやかに復ふく活くわつして、己おのれと偕ともに原げん祖そを起おこし給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 母はゝよ、我われ爾なんぢの子こ及および神かみ、地ちを寄よする所ところなくして水みづの上うへに懸かけ、萬物ばんぶつを造つくりし者ものが木きの上うへに懸かけられしを見みて哭なく毋なかれ、蓋けだし我われ復ふく活くわつして光くわう榮えいを獲え、異い能のうを以もつて地ぢ獄ごくの國くにを滅ほろぼし、其その力ちからを破やぶりて、慈じ憐れんなるに由よりて縛しばられし者ものを苦くるしみより釋とき、人ひとを愛あいするに由よりて我わが父ちゝに攜たづさへん。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第四調。

ハリストスよ、爾なんぢは勝かたれぬ武器ぶきとして爾なんぢの十じふ字架じかを我われ等らに賜たまへり、我われ等ら此これを以もつて仇敵きうてきの惡謀あくぼうに勝かつ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

ハリストスよ、我われ等らは常つねに爾なんぢの十じふ字架じかを佑助たすけとして有たもちて、輙たやすく敵てきの網あみを踐ふむ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

諸聖人しよせいじんよ、救世主きうせいしゆの前まへに勇敢いさみを有たもつに因よりて、絕たえず我われ等ら罪つみなる者ものの爲ために祈いのりて、我われ等らの靈たましひに罪過ざいくわの赦ゆるしと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものはハリストス仁愛じんあいの主しゆが十じふ字架じかに釘ていせられ、戈ほこにて脅わきを刺ささるるを見みて、哭なきて呼よべり、吾わが子こよ、是これ何なにぞや、恩おんを知しらざる民たみは爾なんぢが彼かれ等らに爲なしし善ぜんに易かへて何なにをか爾なんぢに報むくいたる、爾なんぢ至し愛あいの者ものは我われを子こなき者ものとして遺のこすか。慈じ憐れんの主しゆよ、我われ爾なんぢが甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせらるるを奇きとす。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。聯禱及び發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 火曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第四調。

第一歌頌

イルモス 我わが口くちを開ひらきて、聖神せいしんに滿みてられ、言ことばを女王によわう母はゝに奉たてまつり、樂たのしみ祝いはひ、喜よろこびて其その奇き跡せきを歌うたはん。

至いたりて無む玷てんなる神かみの母はゝよ、爾なんぢは神かみの無む量りやうの智慧ちゑ及および力ちからなるハリストスを身みにて種たねなく生うみて、爾なんぢの產さんに由よりて能のう力りよくの權けんと神聖しんせいなる尊そん貴きとを得えたり。

嗚呼あゝ智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの產さんや、至し淨じやうなる者ものよ、此これに因よりて地ち上じやうの者ものの大數たいすうは不ふ朽きうを獲えて、今いま宜よろしきに合かなひて爾なんぢを更新あらたまりの中ちゆう保はう者しやとして讚揚さんやうす。

光榮 童貞女どうていぢよよ、我われ靈體れいたいの病やめる爾なんぢの僕ぼくを爾なんぢの覆庇おほひにて醫いやし給たまへ、蓋けだし我われ爾なんぢを凡およそ憂うれひに遭あふ者ものの轉達者てんたつしやと知しれり、爾なんぢは我われ等らの救すくひを生うみたればなり。

今も 女宰ぢよさいよ、我われ無む量りやうの誘惑いざなひの暴風あらしに因よりて憂うれひの淵ふちに甚はなはだしく沈しづめらるる者ものに救すくひの手てを伸のべて、我われを惡あくの深處ふかみより引ひき出いだし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよ、生せい活くわつにして盡つきざる泉いづみよ、祝いはひて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ者ものの靈たましひを固かため、彼かれ等らに爾なんぢが神妙しんめうなる光くわう榮えいの中うちに榮えい冠くわんを冠かうむらしめ給たまへ。

女宰ぢよさい童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは徧あまねく病びやう者しやに醫治いやしの流ながれを灌そゝぎ給たまふ、智慧ちゑに超こえて爾なんぢより生うまれし仁じん慈じの主しゆが爾なんぢを慈じ憐れんの泉いづみと爲なしたればなり。

童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢは性せいに超こえて仁じん慈じなる神かみ言ことばの爲ために美うるはしき宮みやと爲なれり、故ゆゑに我わが爲ために爾なんぢの豐ゆたかなる慈じ憐れんを啓ひらきて、我われを救すくひに上のぼせ給たまへ。

光榮 多おほくの甚はなはだしき惡あくに由よりて我わが力ちからは殺ころされ、多おほくの憂うれひに因よりて我われ望のぞみを失うしなへり。生命いのちを生うみし童貞女どうていぢよ、泣なく者ものの慰藉なぐさめたる女ぢよ君くんよ、我われを助たすけ給たまへ。

今も 獨ひとり神かみの母はゝたる者ものよ、我われを憐あはれみ、惡あく鬼きと諸慾しよよくとに由よりて溺おぼらさるる我わが不ふ當たうなる靈たましひを憐あはれみて之これを宥なだめ、我わが死しする先さきに慈じ憐れんを以もつて之これを潔きよめ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 預よ言者げんしやアウワクムは爾なんぢ至し上じやう者しやが童貞女どうていぢよより身みを取とり給たまふ神かみの測はかり難がたき定制ていせいを洞察みとほして籲よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

生しやう神女しんぢよよ、萬有ばんいうの王わうは爾なんぢ王わうの根ね及および裔えいより出いでし者ものを愛あいして、爾なんぢの内うちに入いりて、爾なんぢをヘルワィム及およびセラフィムより上うへなる者ものと爲なし給たまへり。

潔いさぎよき者ものよ、造成主ざうせいしゆは人類じんるゐの爲ために爾なんぢより身みを取とりて生うまれて、爾なんぢをハリスティアニン等らの爲ために眞實しんじつの轉達者てんたつしやと爲なし給たまへり、故ゆゑに我われ爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく。

光榮 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ爾なんぢの僕ぼくの爲ために帲幪おほひと、守護まもり及および避所かくれがと爲なり、我われを無む量りやうの惡あくより醫いやして、爾なんぢに歌うたはしめ給たまへ、光くわう榮えいは爾なんぢの言いひ難がたき產さんに歸きす。

今も 我われ慾よくに染そみたる吾わが思おもひに因よりて悶もだえ、泣なき、歎なげきて、爾なんぢに祈いのる、慈じ憐れんの泉いづみとして吾わが諸しよ病びやうより我われを脫のがれしめて、我われに神聖しんせいなる傷しやう感かんを與あたへ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 萬物ばんぶつは爾なんぢが神妙しんめうの光くわう榮えいに驚おどろかざるなし、爾なんぢ婚配こんぱいを識しらざる童貞女どうていぢよは至し上じやうの神かみを孕はらみ、永遠えいゑんの子こを生うみて、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものに平安へいあんを賜たまへばなり。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢはハリストス王わうの活いける雲くもとして、常つねに凡およその病びやう者しやに醫治いやしの水みづを灌そゝぎ給たまふ。故ゆゑに我われ熱切ねつせつに爾なんぢに祈いのる、我われ病やむ者ものに醫治いやしの露つゆを降くだし給たまへ。

神かみの聘女よめ童貞女どうていぢよよ、爾なんぢが生うみし者ものに、其その救世主きうせいしゆ及および主宰しゆさいたるに因よりて、絕たえず祈いのりて、我われを憂うれひ及および病やまひより釋とき、我わが諸罪しよざいを赦ゆるして、我われを不ふ朽きうなる喜悅よろこびに升のぼせ給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは我われの倚賴たのみと、拯救すくひ及および美譽ほまれなり。故ゆゑに我われ爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく、我われ今いま多おほくの罪つみ及および苦くるしき病やまひを負おへる者ものを忌いまずして、速すみやかに我われを救すくひ給たまへ。

今も 熟じゆくしたる果みよ、如何いかんぞ木きに懸かゝれる、爾なんぢの苦くるしみを以もつて日ひの光ひかりを晦くらましし光くわう榮えいの日ひよ、如何いかんぞ上のぼりたると、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢを生うみし潔いさぎよき者ものは昔むかし母はゝとして哭なきて爾なんぢに呼よべり。

第六歌頌

イルモス 我われ海うみの深處ふかみに至いたり、多おほくの罪つみの暴風あらしは我われを沈しづめたり、慈じ憐れんの主しゆよ、神かみなるに因よりて、我わが生命いのちを深處ふかみより引ひき上あげ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、萬有ばんいうの王わう及および我わが神かみは爾なんぢより僕ぼくの形かたちを受うけて、爾なんぢを生しやう神女しんぢよとしてヘルワィム及および畏おそるべきセラフィムより上うへなる者ものと爲なし給たまへり。

獨ひとり衆しゆう人じんに神聖しんせいなる生命いのち及および救すくひを賜たまふ主しゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、我われ望のぞみを失うしなひし者ものの諸慾しよよくの起おこるを鎭しづめて、我われに救すくひを得えしめ給たまへ。

光榮 衆しゆう人じんの贖しよく罪主ざいしゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの佑助たすけを我われに與あたへて、我われを災禍わざはひ及および憂患うれひより脫のがれしめ、我われを誘惑いざなひ及および諸罪しよざいより救すくひ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、我われ等らは爾なんぢを以もつて誇ほこり、爾なんぢに依よりて諸難しよなんより救すくはる、我われ等ら爾なんぢを恃たのみて爾なんぢを歌うたふ者ものは惡敵あくてきの攻擊こうげきを畏おそれず。
次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第四調。

純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよ、ハリストス神かみの母はゝよ、爾なんぢが己おのれの子こ及および神かみの甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせらるるを見みし時とき、劍つるぎは爾なんぢの至し聖せいなる靈たましひを貫つらぬけり。至いたりて讚さん美びたる者ものよ、我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを絕たえず彼かれに祈いのり給たまへ。

第七歌頌

イルモス 敬虔けいけんの者ものは造物主ざうぶつしゆに易かへて造物ざうぶつに事つかふることをせざりき、火ひの嚇おどしを勇いさましく踐ふみて、喜よろこび歌うたへり、讚さん美びたる主しゆ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

慾よくに因よりて我わが悉ことごとくの力ちからは瓦かはらの片かけの如ごとく枯かれたり、視みよ、我われ地ぢ獄ごくに近ちかづけり。神かみの母はゝよ、爾なんぢの慈じ憐れんの手てを以もつて我われを滅亾ほろびを致いたす縛なはめより救すくひ、我われを圍かこめる憂患うれひより引ひき出いだし給たまへ。

多た種しゆの惡あくに因よりて我わが心こゝろは裂さかれ、多おほくの罪つみ及および病やまひに因よりて我わが生命いのちは苦くるしくなれり、我われ等らの爲ために生命いのちを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、我われを此これ等らより救すくひ給たまへ。

光榮 祝しゆく讚さんせらるる至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢが慈じ憐れんなるに因よりて我われに至し仁じんなるハリストスの國くにに入いるを得えしめ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを靈たましひを滅ほろぼす諸もろもろの誘惑いざなひ及および病やまひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 我わが無む量りやうの罪つみに由よりて劇はげしくなりたる吾わが諸しよ病びやうは我われを靈たましひと體からだとの死しに引ひく。女宰ぢよさいよ、爾なんぢ有能いうのうなるに因よりて我われを諸もろもろの憂うれひ及および病やまひより脫のがれしめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよの產さんは敬虔けいけんの少者せうしやを爐ゐろりの中うちに守まもれり。其時そのときに預あらかじめ徵しるされ、今いま已すでに應かなひし此この產さんは全ぜん世せ界かいに勸すゝめて爾なんぢに歌うたはしむ、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

我われは多おほくの棘いばらの如ごとき諸慾しよよくを得えて、其その刺とげに刺さされ、劇はげしく苦くるしみて望のぞみを失うしなへり。ハリストス神かみの至し淨じやうなる母はゝよ、此これ等らより我われを脫のがれしめて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

義ぎの日ひの光ひかりの燈ともしびたる神かみの母はゝよ、爾なんぢの慈じ憐れんの光くわう線せんを以もつて我わが諸罪しよざいの幽闇くらやみを散さんじ、信しんを以もつて爾なんぢの至し淨じやうなる產さんを歌うたひて讚ほめ揚あぐる者ものに重おもき諸しよ病びやうより救すくはるるを得えしめ給たまへ。

光榮 永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢの腹はらに入いりて言いひ難がたく身みを取とりし永在えいざいなる神かみは爾なんぢを世せ界かいの轉達者てんたつしや及および衆しゆう人じんの佑助たすけと爲なし給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、我われを甚はなはだしき諸慾しよよく及および諸罪しよざいの縲絏なはめより釋とき給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよ、神かみの母はゝよ、我わが終をはりの時とき我われを惡あく鬼きの手て、畏おそるべき詰問きつもんと定罪ていざい、苦くるしき魔ま關くわんと空くう氣き中ちゆうの君きみ、及および永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 凡およそ地ちに生うまるる者ものは聖神せいしんに照てらされて樂たのしみ、形かたちなき智慧ちゑの性せいも祝いはひ、神かみの母はゝの聖せいなる祭まつりを尊たふとみて呼よぶべし、至いたりて福さいはひなる潔いさぎよき生しやう神女しんぢよ、永貞えいてい童女どうぢよよ、慶よろこべよ。

潔いさぎよき者ものよ、地ち上じやうの族やからは爾なんぢの產さんに因よりて神性しんせいに合あはせらるるを以もつて子こたる神しん゜を獲えて高たかく擧あがれり。故ゆゑに天てん上じやうの大數たいすうは地ち上じやうの者ものと偕ともに喜よろこびて、宜よろしきに合かなひて爾なんぢを我わが神かみの眞まことの母はゝ及および全ぜん世せ界かいの避所かくれがとして歌うたふ。

我われは無む量りやうの罪つみを以もつて獲えたる傷創きずと疾病やまひとに因よりて全まつたく弱よわりたり。女宰ぢよさいよ、爾なんぢの援助たすけと守護まもりとを求もとむ、我われを悉ことごとくの甚はなはだしき災禍わざはひ及および憂患うれひより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 爾なんぢ身みにてハリストス神かみを生うみし者ものに我われ今いま傷しやう感かんの靈たましひより愛あいを以もつて歌か頌しようと讚榮さんえいとを奉たてまつる。生しやう神女しんぢよよ、慈じ憐れんに由よりて之これを納いれて、我わが悉ことごとくの求もとめを成じやう就じゆせしめ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを守まもり給たまへ。

今も 潔いさぎよき神かみの母はゝよ、我わが靈たましひの目めを照てらし給たまへ、罪つみの幽闇くらやみが我われを蔽おほはず、失望しつばうの深處ふかみが我われを溺おぼらさざらん爲ためなり。衆しゆう信者しんじやの耻はぢを得えざる轉達者てんたつしやよ、親みづから我われを導みちびきて救すくひ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聖三祝文、「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第四調

水曜日

 水曜日の早課

第一の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第四調。

爾なんぢは己おのれの尊たふとき血ちを以もつて我われ等らを律法りつぱふの詛のろひより贖あがなへり、十じふ字架じかに釘ていせられ、戈ほこにて刺さされて、人人ひとびとに不死ふしを流ながし給たまへり。我われ等らの救世主きうせいしゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

救世主きうせいしゆよ、イウデヤ人じん爾なんぢを十じふ字架じかに釘ていせしに、爾なんぢは、ハリストス我わが神かみよ、此これを以もつて我われ等らを異い邦はうの中うちより召めし給たまへり。獨ひとり人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢは甘あまんじて手てを其その上うへに伸のべ、戈ほこにて爾なんぢの脅わきの刺ささるるを受うけ給たまへり、爾なんぢの多おほくの慈じ憐れんに由よりてなり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 ハリストスよ、聘女よめならぬ爾なんぢの母はゝは爾なんぢが十じふ字架じかに擧あげらるるを見みし時とき、母はゝとして哭なきて斯かく言いへり、吾わが子こよ、此この新あらたにして驚おどろくべき奇き跡せきは何なにぞや、我わが甘愛かんあいなる光ひかりよ、如何いかんぞ不ふ法はふなる會くわいは爾なんぢ衆しゆうに生命いのちを賜たまふ者ものを十じふ字架じかに釘ていする。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第四調。

ハリストス我わが神かみよ、爾なんぢを謗そしり、我われ等らを嚇おどす諸敵しよてきが我われ等らを服ふくせしめざる先さきに速すみやかに我われ等らを助たすけ給たまへ。獨ひとり人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかを以もつて我われ等らと戰たゝかふ者ものを滅ほろぼし給たまへ、我わが諸敵しよてきが正敎者せいけうしやの信しんは生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに因よりて如何いかなる力ちからを有たもつかを悟さとらん爲ためなり。

句 神かみ我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは甘あまんじて髑髏されかうべの處ところに十じふ字架じかに釘ていせられて、爾なんぢの多おほくの慈じ憐れんに因よりて我わが古いにしへの罪つみの傷きずを醫いやし給たまへり。蓋けだし爾なんぢは、仁愛じんあいなる吾わが救世主きうせいしゆよ、人類じんるゐの爲ために死しを受うけ、信しんを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものの爲ために爾なんぢの脅わきより血ちと水みづとを流ながさんことを望のぞみ給たまへり。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

聖せいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは十じふ字架じかの力ちからに由よりて善よき戰たゝかひを戰たゝかひて、爾なんぢ等らの忍耐にんたいを以もつて敵てきを全まつたく滅ほろぼし給たまへり。故ゆゑに我われ等らは忠ちゆう信しんに爾なんぢ等らの尊たふとき記き憶おくを行おこなひて、至し聖せいなる神しん゜の恩おん寵ちようを以もつて爾なんぢ等らの祈き禱たうに由よりて聖せいにせらる。ハリストスの聖せいなる軍ぐん士等しらよ、世せ界かいの爲ために救世主きうせいしゆに祈いのり給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 童貞女どうていぢよ・牝め羊ひつじは種たねなくして彼かれより生うまれし羔こひつじの十じふ字架じかに在ありて戈ほこを以もつて刺さされしを見みて、哀かなしみの矢やに刺さされ、苦くるしみて呼よべり、此この新あらたなる奧密あうみつは何なにぞや、獨ひとり生命いのちの主しゆたる者ものは如何いかんぞ死しする。故ゆゑに復ふく活くわつして、陷おちいりし原げん祖そを己おのれと偕ともに起おこし給たまへ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第四調。

ハリストスよ、兇殺者ひとごろしの惡謀あくぼうに因よりて樂園らくゑんに於おいて甚はなはだしく陷おちいりし我われを爾なんぢは髑髏されかうべの處ところに於おいて起おこし、木きを以もつて木きに緣よる詛のろひを除のぞき、誘惑いざなひにて我われを殺ころしし蛇へびを殺ころして、我われに神聖しんせいなる生命いのちを賜たまへり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの神聖しんせいなる釘てい刑けいに歸きす。

ハリストス言ことばよ、爾なんぢ義ぎの日ひが木きの上うへに懸かけられしを見みて、日ひは光ひかりを晦くらまし、造物ざうぶつは震ふるひ、死し者しやは寢ねむりより覺さむるが如ごとく疾とく墓はかより起おきて、爾なんぢの神聖しんせいなる權能けんのうの光くわう榮えいを歌か頌しようせり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよ、ハリストス神かみの母はゝよ、爾なんぢが己おのれの子こ及および神かみの甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせらるるを見みし時とき、劍つるぎは爾なんぢの至し聖せいなる靈たましひを貫つらぬけり。至いたりて讚さん美びたる者ものよ、我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを絕たえず彼かれに祈いのり給たまへ。

尊貴にして生命を施す十字架及び聖致命者の規程カノン。イオシフの作。其冠詞は次の如し、十字架は救の武器なり。第四調。

第一歌頌

イルモス 古いにしへのイズライリは足あしを濡ぬらさずして海うみの紅くれなゐの淵ふちを渡わたり、野のに於おいてモイセイの十じふ字じ形かたの手てにてアマリクの力ちからに勝かてり。

天てんを張はりたるイイススよ、爾なんぢは己おのれの手てを伸のべて、爾なんぢより遠とほきにある異い邦民はうみんを、仁じん慈じ慈じ憐れんなる主しゆとして、明あきらかに己おのれに召めし給たまへり。

我わがハリストス言ことばよ、爾なんぢの十じふ字架じかを以もつて我われを扞ふせぎ衞まもり給たまへ、我わが日日ひびに我われの前まへに網あみを張はりて我われを執とらへて滅ほろぼさんと謀はかる狼おほかみに捕とらはれざらん爲ためなり。

致命者讚詞 福ふくたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは己おのれの苦くるしみにて悉ことごとくの苦くるしみの緣由ゆゑんなる者ものを滅ほろぼし、今いま苦くるしみなき生命いのちを繼つぎて、常つねに我わが靈たましひと體からだとの凡およその苦くるしみを輕かろくし給たまふ。

致命者讚詞 聖せいなる睿えい智ち者しやよ、甘あまんじて縛しばられて凡およその迷まよひを破やぶりしハリストスの爲ために爾なんぢ等らは縛しばられて、解とかれぬ縲絏なはめを以もつて惡謀者あくぼうしやを縛しばれり。故ゆゑに宜よろしきに合かなひて讚さん美びせらる。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは產さんの後のちに童貞女どうていぢよに止とゞまれり、蓋けだし十じふ字架じかに擧あげられて、地ち上じやうの者ものを己おのれと偕ともに擧あげたる神かみを生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら衆しゆう信者しんじやは大おほいなる聲こゑを以もつて爾なんぢを讚さん頌しようす。

又至聖なる生神女の規程カノン、其冠詞は、生神童貞女に禱を奉る。第四調。

第一歌頌

イルモス同上

凡およその造物ざうぶつより最いと淨きよき純じゆん潔けつなる神かみの母はゝよ、不ふ潔けつなる慾よくにて甚はなはだしく汚けがされたる我わが心こゝろを爾なんぢの淨きよき祈き禱たうを以もつて潔きよめ給たまへ。二次。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ母はゝよ、我わが造成主ざうせいしゆ及および神かみに奉たてまつる爾なんぢの神かみに悅よろこばるる祈き禱たうを以もつて、將しやう來らいの恐おそるべき審判しんぱんの時ときに、我われを淚なみだ及および歎息なげきより脫のがれしめ給たまへ。

獨ひとり智慧ちゑに超こえて爾なんぢの產さんを以もつて人類じんるゐを詛のろひより釋ときたる至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて肉體にくたいの慾よくの奴ど隷れいと爲なりし我われを釋とき給たまへ。

第三歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢの敎けう會くわいは爾なんぢの爲ために樂たのしみて呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢは我わが能力ちからと避所かくれがと堡障かためなり。

主宰しゆさいハリストス我わが神かみよ、爾なんぢは十じふ字架じかに擧あげられて、朽きう壞くわいの中うちに落おとされし者ものを擧あげ、敵てきを落おとし給たまへり。

父ちゝの實在じつざいの言ことばよ、爾なんぢ脅わきを刺さされしに、敵てきの劍つるぎは鈍にぶり、エデムは啓ひらかれたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは火ひの河かはにて迷まよひの河かはを涸からし、多た神しんの焰ほのほを滅けし給たまへり。

致命者讚詞 十じふ字架じかに釘ていせられ、鐵搭くまでにて搔かかるるハリストスの致ち命者めいしやは忍耐にんたいの劍つるぎを以もつて諸敵しよてき及および蛇へびを殺ころせり。

生神女讚詞 主宰しゆさいよ、無む玷てんなる牝め羊ひつじは爾なんぢが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、泣なき苦くるしみて、爾なんぢの權能けんのうを歌か頌しようせり。

又

イルモス ハリストスよ、我われ等らは智慧ちゑと能力ちからと富有とみとを以もつて誇ほこるにあらず、乃すなはち爾なんぢ、父ちゝと一性いつせいなる智慧ちゑを以もつて誇ほこる、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなる者ものなければなり。

女宰ぢよさいよ、我われ爾なんぢヘルワィムより最いと上うへなる者ものに祈いのる、蛇へびの誘いざなひに由よりて陷おちいりたる我わが心こゝろを肉體にくたいの慾よくより上うへなる者ものと爲なし給たまへ。二次。

畏おそるべき詰問きつもんに於おいて主しゆが我われ多おほく罪つみを犯おかしし者ものを定罪ていざいせんとする時とき、願ねがはくは我われ爾なんぢを、純じゆん潔けつなる者ものよ、定罪ていざいより我われを脫のがれしむる者ものとして獲えん。

ハリストスよ、爾なんぢの仁じん慈じに由よりて我わが無慈悲むじひの風習ならはしを改あらためて、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに因よりて我われ無慈悲むじひなる者ものを救すくひ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 敎けう會くわいは爾なんぢ義ぎの日ひが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、竝ならび立たちて正たゞしく呼よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

爾なんぢ光くわう榮えいの日ひの甘あまんじて木きの上うへに擧あげられしを見みて、日ひは晦冥くらやみを衣き、磐いはは崩くづれ、殿でんの幔まくは裂さけたり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢ十じふ字架じかに釘ていせられ、戈ほこにて刺ささるるに、自おのづから旋まはる劍つるぎは爾なんぢの權能けんのうを歌か頌しようする善ぜん智ちなる盜賊たうぞくの前まへより爾なんぢの命めいに由よりて退しりぞきたり。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの受難者じゆなんしやは爾なんぢの十じふ字架じかの武器ぶきに護まもられて、惡あくの矢やに傷きずつけられぬ者ものと顯あらはれ、拜偶像はいぐうざうの堅けん固ごならざる墻かきを毁こぼてり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは無む玷てんなる祭まつり及および全燔ぜんぱんの獻物さゝげものとして慈じ憐れんに由よりて貧まづしくなりし主しゆの前まへに攜たづさへられて、苦くるしみの爲ために報むくいを受うけたり。

生神女讚詞 獨ひとり時ときに由よらざる者ものを時ときに及およびて生うみて、無む玷てんなる童貞どうていを守まもりし少女せうぢよが主しゆの木きの上うへに擧あげらるるを見みし時とき、苦くるしみは其その靈たましひを裂さきたり。

又 イルモス同上

己おのれの造物ざうぶつに諸しよ恩おんを賜たまはん爲ために己おのれを竭つくしし至し聖者せいしやの神聖しんせいなる家いへと爲なりし至いたりて潔いさぎよき者ものよ、我わが靈たましひを聖せいにし、思おもひを照てらし給たまへ。二次。

女宰ぢよさいよ、惡あくの風かぜに吹ふかれて怠惰おこたりに沈しづめらるる我わが思おもひを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて堅けん固ごにして、誘惑いざなひより出いだし給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我われ今いま爾なんぢ天てんの王わうの活いける宮みやたる者ものに祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ盜賊たうぞくの巢窟さうくつなる者ものを聖三者せいさんしやの家いへと爲なし給たまへ。

第五歌頌

イルモス 我わが主しゆよ、爾なんぢは光ひかり、信しんじて爾なんぢを崇あがめ歌うたふ者ものを闇くらき無智むちより引ひき出いだす聖せいなる光ひかりにして、世せ界かいに來きたり給たまへり。

鳴呼あゝ主宰しゆさいよ、爾なんぢの脅腹わきばらの刺さされしに、爾なんぢは我われ肋あばら骨ぼねの罪つみに因よりて朽きう壞くわいに陷おちいりし者ものの爲ために不ふ朽きうの神聖しんせいなる流ながれを注そゝぎ給たまふ。

爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかは敵てきに對たいして勝しよう利りなり。言ことばよ、爾なんぢは之これを我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものに靈たましひの救すくひの爲ために賜たまへり。

致命者讚詞 死しせし者ものは大おほいなる苦くるしみの物質ぶつしつの火ひを過とほりて後のち、至いたりて光くわう明めいなる致ち命者めいしやとして今いま火焰くわえんの役者えきしやに合あはせられたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやの肉體にくたいは多おほくの苦くるしみに由よりて壞やぶらるるに、彼かれ等らの靈たましひの造物主ざうぶつしゆに於おける愛あいは壞やぶられずして、更さらに堅かためられたり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、獨一どくいつ至し仁じんの主しゆは爾なんぢの不ふ朽きうなる胎たいに入いりて、身みを取とりし者ものと顯あらはれて、十じふ字架じかに釘ていせられたり、我われ等らを朽きう壞くわいより救すくはん爲ためなり。

又

イルモス ハリストスよ、不ふ虔けんの者ものは爾なんぢの光くわう榮えいを見みざらん、惟たゞ我われ等らは夜よより寤さめて、爾なんぢ神かみの獨生どくせい子し、父ちゝの光くわう榮えいの輝煌かゞやき、人ひとを愛あいする主しゆを崇あがめ歌うたふ。

神かみの羔こひつじを生うみし牝め羊ひつじなる女宰ぢよさいよ、蛇へびの惡謀あくぼうに誘いざなはれたる吾わが靈たましひ、罪つみに因よりて山やまの中なかに迷まよへる者ものを尋たづね給たまへ。

生しやう神女しんぢよ・永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢの熱あつき祈き禱たうを以もつて甚はなはだしき寒さむさに凍こゞゆる吾わが靈たましひの内うちに造物主ざうぶつしゆに於おける神聖しんせいなる愛あいの熱あつさを起おこし給たまへ。

女をんなの中うちに善ぜんにして無む玷てんなる潔いさぎよき者ものよ、我わが不ふ當たうなる靈たましひを今いま慾よくの汚けがれより潔きよめて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われに潔いさぎよく生いのちを度わたるを得えしめ給たまへ。

仁じん慈じ潔けつ淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの翼つばさの庇蔭おほひの下したに吾わが靈たましひを眸子ひとみの如ごとく守まもりて、我われを惡あく鬼きの誘惑いざなひ、煩悶もだえ、及および苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 憐あはれみに由よりて爾なんぢの脅わきより流ながれし血ちにて惡あく魔まの祭まつりの血ちより淨きよめられし敎けう會くわいは爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、讚揚ほめあげの聲こゑを以もつて爾なんぢを祭まつらん。

凡およその尊そん貴きより至いたりて尊そん貴きなる仁愛じんあいの主しゆよ、爾なんぢは辱はづかしめらるるを忍しのびたり、甚はなはだしく辱はづかしめられし我われを尊たふとき者ものと爲なして、十じふ字架じかを以もつて救すくはん爲ためなり。

主しゆよ、爾なんぢは木きに擧あげられ、死し者しやと爲なりて、吾わが靈たましひを殺ころしし者ものを凡およその耻はぢに充みてて、死し者しやと爲なし給たまへり。故ゆゑに我わが造成主ざうせいしゆよ、我われ今いま爾なんぢの力ちからを歌うたふ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らに傷きずつけし凶きよう惡者あくしやは自みづから愈いやされぬ傷きずを受うけ、爾なんぢ等らの足あしに踐ふまれて、衆しゆうに嘲あざけられて觀みらる。

致命者讚詞 墓はかに臥ふす致ち命者めいしやの聖せい驅くの塵ちりは惡あく鬼きを塵ちりの如ごとく散ちらし、醫い療れうを流ながして、人人ひとびとの種種しゆじゆの病やまひを醫いやす。

生神女讚詞 嗚呼あゝ吾わが子こよ、法はふに戾もとる會くわいは釘くぎを以もつて爾なんぢを十じふ字架じかに釘ていして、哀かなしみの劍つるぎにて吾わが心こゝろを貫つらぬけりと、童貞女どうていぢよは淚なみだを流ながして呼よべり。

又 イルモス同上

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの產さんは死しを滅ほろぼす者もの、死し者しやに生命いのちと拯救すくひとを賜たまふ者ものと爲なれり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、殺ころされし吾わが靈たましひを復ふく活くわつせしめ給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆよ、世よの海うみに荒あらさるる我われに援助たすけの手てを伸のべ給たまへ、爾なんぢの母はゝ及および無む數すうの天軍てんぐんの祈き禱たうに因よりてなり。

神聖しんせいなる穗ほを生しやうぜし田たなる者ものよ、弱よわりて神聖しんせいなる行おこなひの饑き饉きんに疲つかれたる吾わが靈たましひを棄すてずして、爾なんぢの子この神聖しんせいなる恩おん寵ちようにて食やしなひ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我わが肉慾にくよくの發動はつどうを鎭しづめて、穉わかき馬うまの如ごとく躍をどる我わが肉體にくたいの動搖うごきを爾なんぢの祈き禱たうの力ちからを以もつて制せいして、智慧ちゑに服ふくせしめ給たまへ。

第七歌頌

イルモス アウラアムの少者せうしやはペルシヤの爐ゐろりに在ありて、焰ほのほよりも强つよく敬虔けいけんの愛あいに爇やかれて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢが光くわう榮えいの殿でんに於おいて爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

雲くもを以もつて天てんに衣きする獨一どくいつ不死ふしの主しゆよ、爾なんぢは甘あまんじて裸ら體たいにして木きに釘ていせられて、昔むかし原げん祖そを裸ら體たいにせし者ものに永遠えいゑんの耻はぢを衣きせ給たまへり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢ十じふ字架じかに擧あげられしに、陷おちいりしアダムは起おきたり、戈ほこにて脅わきを刺さされしに、惡謀者あくぼうしやは死しの傷きずを受うけたり。主しゆよ、爾なんぢの權能けんのうは崇あがめ讚ほめらる。

致命者讚詞 讚さん美びたる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは最いと美うるはしき言ことばに最いと美うるはしく合あはせられて、全まつたく世よを離はなれ、縛しばられ害そこなはれて、全まつたく敵てきを倒たふしたり。

致命者讚詞 實じつに光くわう榮えいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは神聖しんせいなる苦くるしみにて迷まよひの籬かきを毁こぼち、敬虔けいけんに爾なんぢ等らを讚さん美びする信者しんじやの爲ためな墻垣かき及および守護まもりと現あらはれたり。

生神女讚詞 少女せうぢよよ、爾なんぢは爐ゐろりの中うちに露つゆを現あらはししハリストス神かみ、聊いさゝかも爾なんぢの胎たいを焚やかざりし主しゆの木きに懸かけられしを見みて、其その智慧ちゑに超こゆる寬くわん容ようを讚榮さんえいせり。

又 イルモス同上

少女せうぢよ、神聖しんせいなる山やま、偶像ぐうざうの柱はしらを壞やぶりし石いしの斫きられたる者ものよ、吾わが靈たましひの偶像ぐうざうを壞やぶり、吾わが心こゝろの頑かたくななる迷まよひを拂はらひ給たまへ。

少女せうぢよよ、爾なんぢは、瞬またゝきを以もつて欲ほつする時ときに地ち及および其その上うへに在ある者ものを動うごかす主しゆを爾なんぢの胎たいに容いれて動うごかざりき。祈いのる、敵てきの攻擊こうげきに由よりて動うごかさるる我われを堅かため給たまへ。

凶きよう惡者あくしやは逸樂いつらくの醜みにくきを以もつて我われを昧くらましたり。生しやう神女しんぢよよ、我わが肉慾にくよくの思おもひを斥しりぞけて、吾わが靈たましひを諸德しよとくに飾かざられたる者ものと爲なし給たまへ。

慈じ憐れん仁じん慈じの神聖しんせいなる器うつはよ、我われに豐ゆたかに爾なんぢの宏くわう恩おんの富とみを流ながして、我わが諸罪しよざいの汚けがれを滌あらひ、肉慾にくよくの熱ねつを滅けし給たまへ。

第八歌頌

イルモス ダニイルは獅子しし穴あなに在ありて手てを伸のべて、獅子ししの口くちを閉とざし、敬虔けいけんの篤あつき少者せうしやは德とくを帶おび、火ひの力ちからを滅けして呼よべり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは甘あまんじて十じふ字架じかの上うへに手てを伸のべて、不ふ節制せつせいの手ての罪つみを滅けし給たまへり。主しゆよ、爾なんぢは釘くぎにて釘ていせられて、始はじめに造つくられし者ものの慾よくに染そみたる智慧ちゑを新あらたにして呼よばしむ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢの神聖しんせいなる脅わきの刺ささるるを以もつて始はじめに造つくられしアダムの書券かきつけは裂さかれ、爾なんぢの血ちの滴したゝるを以もつて全ぜん地ちは聖せいにせられて、感謝かんしやの聲こゑを以もつて常つねに呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

致命者讚詞 至し榮えいなる致ち命者めいしやは火ひの中なかに立たち、露つゆにて霑うるほさるる如ごとく焚やかれずして、奧密あうみつなる同心どうしんを以もつて少者せうしやの實じつに神聖しんせいなる歌うたを歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは甘あまんじて烈はげしき火ひを忍しのび、千萬せんまんの苦くるしみに付わたされ、虛むなしきに服ふくせずして、神かみに堅かためられ、暮くれざる光ひかりに趨はしり附つきて呼よべり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

生神女讚詞 讚さん美びたる女宰ぢよさいよ、爾なんぢは人人ひとびとを殺ころす敵てきを殺ころししハリストスの殺ころさるるを見みて、彼かれを主宰しゆさいとして歌か頌しようして哭なき、其その恒忍ごうにんを奇きとして呼よべり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

又 イルモス同上

女宰ぢよさいよ、爾なんぢは熟じゆくしたる果みを生うみ給たまへり、死しは之これを嘗なめて亾ほろびたり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、誘惑いざなひに由よりて罪つみの果みにて殺ころされし我われを生いかし給たまへ、蓋けだし我われ歌うたふ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの寐ねむらざる祈き禱たうを以もつて我わが念おもひの慾よくの動搖うごきを寐ねむらせ、我われを怠慢おこたりの寐ねむりより起おこして、醒さめたる靈たましひを以もつて歌うたはしめ給たまへ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

生しやう神女しんぢよよ、我わが諸罪しよざいの械かせを壞やぶり、肉慾にくよくの起おこるを鎭しづめ給たまへ。衆しゆう信者しんじやの轉達者てんたつしや及および拯救すくひよ、爾なんぢの僕ぼくの惡あしき謀はかりごとを速すみやかに斷たち、隱ひそかなる意い念ねんを潔きよめ給たまへ。

不ふ當たうなる靈たましひよ、爾なんぢは彼處かしこに爾なんぢの無む數すうの惡あく事じを訟うつたへんとする證しよう者しやを畏おそれざるか、然しからば至し仁じんなる主しゆの前まへに痛つう悔くわいして、獨ひとり至し淨じやうなる童貞女どうていぢよを保護ほご者しやとして受うけよ、彼かれは人人ひとびとの避所かくれがなればなり。

第九歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよよ、手てにて斫きられざる隅石すみいしハリストスは、爾なんぢ斫きられざる山やまより斫きり分わけられて、離はなれたる性せいを合あはせ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら樂たのしみて、爾なんぢ生しやう神女しんぢよを崇あがめ歌うたふ。

視みよ、生命いのちは十じふ字架じかに懸かけられし者ものと衆しゆうの前まへに現あらはれたり、日ひは之これに勝たへずして光くわう線せんを隱かくし、地ちは震ふるひ、人人ひとびとの思おもひは敬虔けいけんと潔けつ淨じやうとに堅かためらる。

嗚呼あゝ我わがイイススよ、如何いかんぞ不ふ法はふなる會くわいは爾なんぢ立法者りつぱふしやを定罪ていざいして、萬ばん衆しゆうの生命いのち及および主しゆ、苦くるしみを以もつて衆しゆう人じんに不死ふしを流ながす者ものを木きの上うへに死しするに定さだめたる。

致命者讚詞 讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢ等らは虔誠けんせいなる口くちを以もつて智慧ちゑを盡つくして、神かみの言ことばが人體じんたいを取とることを不ふ法はふなる諸敵しよてきの中うちに傳つたへ、潔いさぎよく苦くるしみを受うけて、勝しよう利りの榮えい冠くわんを獲えたり。

致命者讚詞 神聖しんせいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは光ひかれる星ほしの如ごとく、聖せいにせられし苦くるしみの輝煌かゞやきと神聖しんせいなる醫い療れうの光くわう線せんとを以もつて悉ことごとくの造物ざうぶつを照てらし、諸慾しよよくの深ふかき黑闇くらやみを散さんず。

生神女讚詞 光ひかりの雲くもたる潔いさぎよき童貞女どうていぢよ、昔むかし不死ふしなる主しゆの釘ていせられし時とき晦くらみたる日ひを見みし者ものよ、我わが罪つみに由よりて晦くらみたる靈たましひを照てらし、我わが諸惡しよあくの雲くもを拂はらひ給たまへ。

又 イルモス同上

童貞女どうていぢよ、我わが神かみの母はゝよ、爾なんぢの子この神聖しんせいなる戈ほこを以もつて我わが惡あくの繫つなぎを壞やぶり、縛しばられて禍わざはひの中うちに在ある我わが不ふ當たうの靈たましひを釋ときて、神かみを愛あいする愛あいに繫つなぎ給たまへ。

天てんより最いと宏ひろき童貞女どうていぢよよ、敵てきの多おほくの攻擊こうげきに狹せばめられたる我わが心こゝろを無む慾よくの廣ひろきに升のぼせて、我われを常つねに狹せばき路みちを行ゆかん爲ために堅かため給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我わが爾なんぢ實じつに至いたりて讚さん美びたる者ものを讚榮さんえいせん爲ために、我われを凡およその罪つみの無智むちより解ときて、爾なんぢの慈じ憐れんに趨はしり附つく者ものを天てんの光くわう榮えいに與あづからしめ給たまへ。

至し上じやうの神かみの母はゝよ、我われ等らに對たいして武器ぶきを執とる者ものの凡およその謀はかりごとを止とゞめて、爾なんぢを賴たのむ者ものを喜よろこびに盈みて給たまへ、我われ等らが皆みな熱心ねつしんに爾なんぢの保護ほごを傳つたへん爲ためなり。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第四調。

イイスス我わが救世主きうせいしゆよ、願ねがはくは爾なんぢの十じふ字架じかは我われ等らの爲ために墻かきと爲ならん、蓋けだし我われ等ら信者しんじやは爾なんぢ身みにて其その上うへに釘ていせられて、我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまふ主しゆの外ほかに他たの倚賴たのみを有たもたず。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

主しゆよ、爾なんぢは凡およそ爾なんぢを畏おそるる者ものに記號しるしとして爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかを賜たまへり、爾なんぢは此これを以もつて幽暗くらやみの首しゆ領りやう及および權柄けんぺいを辱はづかしめ、我われ等らを初はじめの福樂ふくらくに升のぼせ給たまへり。故ゆゑに全能ぜんのうのイイスス、我わが靈たましひの救主きうしゆよ、我われ等らは爾なんぢの仁愛じんあいなる定制ていせいを讚榮さんえいす。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、我われ等ら如何いかんぞ爾なんぢ等らの勳功いさをしに驚おどろかざらん、蓋けだし爾なんぢ等らは死しすべき肉體にくたいありて、形體けいたいなき敵てきに勝かてり、暴虐者くるしめびとの嚇おどしは爾なんぢ等らを畏おそれしめざりき、苦くるしみに付わたす事ことは爾なんぢ等らを驚おどろかさざりき、爾なんぢ等らは實じつに宜よろしきに合かなひてハリストスより榮えいせられたり。我われ等らの靈たましひの爲ために大おほいなる憐あはれみを求もとめ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 至し淨じやうなる女宰ぢよさいは誘惑者いうわくしやを殺ころすハリストスの殺ころさるるを見みて、其その胎たいより出いでし者ものに向むかひて、哀かなしみて哭なき、彼かれの恒忍ごうにんを奇きとして呼よべり、我わが至し愛あいなる子こよ、爾なんぢの婢ひを忘わするる毋なかれ、仁愛じんあいなる主しゆよ、我われを慰なぐさむるに遲おそなはる勿なかれ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ及び聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、幷に發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 水曜日の聖体礼儀に

水曜日の眞福詞、第四調。

アダムは木きに緣よりて樂園らくゑんより出いだされ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかの木きに緣よりて樂園らくゑんに入いりたり。彼かれは食しよくして造物主ざうぶつしゆの誡いましめに背そむき、此これは共ともに十じふ字架じかに釘ていせられて、隱かくれたる神かみを認みとめて籲よべり、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

ハリストスよ、爾なんぢは多おほくの仁じん慈じに由よりて十じふ字架じかに釘ていせられ、脅わきを刺さされて、赦免しやめんの二ふたつの泉いづみを流ながし給たまへり。地ちは暴ばう虐ぎやくを見みるに勝たへずして震ふるひ、磐いはは裂さけ、日ひは光ひかりを隱かくし、山やまと岡をかとは動うごけり、爾なんぢの權柄けんぺいを畏おそるるに因よりてなり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

手てを以もつて人ひとを造つくりしハリストス、恒忍ごうにんなる主しゆよ、昔むかし不ふ節制せつせいにして知ち識しきの樹きに伸のべたる原げん祖その手ての罪つみを贖あがなはん爲ために、爾なんぢは甘あまんじて十じふ字架じかの上うへに伸のべられて、己おのれの手てを釘ていするを許ゆるせり、無む量りやうの慈じ憐れんに由よりてなり。言ことばよ、光くわう榮えいは智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの仁じん慈じに歸きす。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは尊たふとき勳功いさをしの最いと光くわう明めいなる輝煌かゞやきにて地ちを天てんと爲なし、其その空虛くうきよの黑暗くらやみを悉ことごとく散さんじ、暮くれざる光ひかりに入いりて、之これに與あづかるを以もつて神成しんせいせられて、凡およそ職しよくとして爾なんぢ等らを讚さん美びする者ものに智慧ちゑの光ひかりを輝かゞやかす。

光榮 我われ等らは萬有ばんいうの原因げんいんたる聖三者せいさんしやに讚さん美びと、光くわう榮えいと、尊そん貴きとを奉たてまつり、三聖さんせいの聲こゑを以もつて天てん使しの歌うたを無む原げんなる父ちゝと子こと聖神せいしんとに捧さゝげ、善ぜん智ちなる盜賊たうぞくの聲こゑを以もつて歌うたひて呼よぶ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものは己おのれの子こ及および神かみが甘あまんじて十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、奇きとして哭なき、萬有ばんいうを美うるはしく飾かざりし者ものに謂いへり、主しゆよ、爾なんぢの美うるはしきは何いづこにか隱かくれたる、恩おんを知しらざる會くわいは諸善しよぜんに易かへて何なんぞ斯かく爾なんぢに報むくいたる。我われ智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの仁じん慈じを歌うたふ。

横線 - 『八調経』第四調

 水曜日の晩課

「主よ爾に籲ぶ」に聖使徒の讚頌スティヒラ、第四調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

光くわう榮えいなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは確實かくじつなる智慧ちゑを以もつて戰たゝかひ、屬神ぞくしん゜の全ぜん備びの武具ぶぐを佩おびて、勇いさましく凶きよう惡あくなる敵てきに向むかひ、惡あく鬼きの悉ことごとくの力ちからを滅ほろぼして、人人ひとびとの靈たましひを贜物かすめものとして奪うばへり。故ゆゑに我われ等らは世世よよに爾なんぢ等らを尊たふとむ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

ハリストスよ、爾なんぢの神聖しんせいなる十じふ二にの使徒しとは敎をしへの網あみを十じふ字じ形かたに張はりて、萬民ばんみんを爾なんぢを知しる智ち識しきに捕とらへ、諸慾しよよくの鹵海しほうみを涸からせり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、爾なんぢを悅よろこばしむる彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて、我われを諸罪しよざいの深處ふかみより喚よび起おこし給たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

神かみに選えらばれたる最いと尊たふとき十じふ二にの使徒しとは今いま神聖しんせいなる歌うたを以もつて讚さん美びせらるべし、ペトルとパワェル、イアコフ、ルカ及およびイオアン、マトフェイとフォマ、マルコ、シモン及およびフィリップ、至し榮えいなるアンドレイ、マトフィイと偕ともに、及および睿えい智ちなるワルフォロメイ、竝ならびに他たの七しち十じふなり。

又聖大奇跡者ニコライの讚頌スティヒラ。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

聖せいニコライよ、聖神せいしんの恩おん寵ちようは神聖しんせいなる香膏ミロを爾なんぢに抹ぬりて、爾なんぢをミラ城じやうの首しゆ座ざと爲なししに、爾なんぢは成聖せいせいせられし諸德しよとくの香膏ミロを以もつて世せ界かいの四し極きよくを薰かをらせ、爾なんぢの芳かうばしき祈き禱たうを以もつて恒つねに臭しう氣きの諸慾しよよくを拂はらふ。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢを崇あがめ讚ほめて、爾なんぢの至し聖せいなる記き憶おくを行おこなふ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

聖せいニコライよ、爾なんぢは滅きえざる燈ともしび、全ぜん世せ界かいの光くわう體たいとして敎けう會くわいの穹蒼おほぞらに輝かゞやき出いでて、世せ界かいを照てらし、烈はげしき葘害さいがいの黑闇くらやみを逐おひ、憂いう患くわんの猛風あらしを斥しりぞけて、深ふかき平穩へいをんを施ほどこす。故ゆゑに我われ等ら宜よろしきに合かなひて爾なんぢを讚さん美びす。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

至し聖せいなる神しん父ぷニコライ、諸天しよてん使しの同どう住ぢゆう者しや、使徒しと及および預よ言者げんしやと儔ひとしき者ものよ、爾なんぢは正まさしく在ありても、夢ゆめに現あらはれても、非義ひぎに由よりて死しに定さだめられし者ものを救すくひ給たまへり。蓋けだし爾なんぢは慈じ憐れんなり、善ぜんを愛あいする者ものなり、爾なんぢの保護ほごを求もとむる信者しんじやの熱切ねつせつなる救きう者しやなり、眞まことの轉達者てんたつしやなり。

光榮、今も、生神女讚詞 容いれられざる神かみ、仁愛じんあいに由よりて人ひとと爲なり、爾なんぢより我われ等らの合成がふせいを受うけて之これを神成しんせいせし主しゆを爾なんぢの腹はらに容いれし純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、我われ今いま憂うれふる者ものを棄すてずして、速すみやかに宥なだめて、凶きよう惡者あくしやの抗敵かうてき及および侵害しんがいより脫のがれしめ給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン、及び其他。

挿句くづけに讚頌スティヒラ、第四調。

ハリストス神かみよ、爾なんぢは聖神せいしんを以もつて使徒しとの會くわいを照てらし給たまへり。求もとむ、彼かれ等らに因よりて我われ等らの罪つみの汚けがれを滌あらひて、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

ハリストス神かみよ、爾なんぢの聖神せいしんは無む學がくなる門もん徒とを敎導けうだう師しと爲なし、多た種しゆの方言はうげんの調てう和わを以もつて迷まよひを空むなしくし給たまへり、全能ぜんのうの主しゆなればなり。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

活いける祭まつり、靈れい智ちなる全燔ぜんぱん、主しゆの致ち命者めいしや、全ぜん備びなる屠殺ほふり、神かみを知しり又また神かみに知しらるる羔こひつじ、其その牢をりに狼おほかみの入いる能あたはざる者ものよ、我われ等らも爾なんぢ等らと偕ともに靜しづかなる水みづの畔ほとりに牧ぼくせられて休いこはんことを祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 ハリストス神かみの母はゝ、萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆを生うみし者ものよ、我わが危き難なんより我われ等らを救すくひ給たまへ、我われ等ら皆みな爾なんぢに呼よばん爲ためなり、吾わが靈たましひの惟一ゆゐいちの轉達てんたつよ、慶よろこべ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。聯禱及び發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 水曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第四調。

第一歌頌

イルモス 古いにしへのイズライリは足あしを濡ぬらさずして海うみの紅くれなゐの淵ふちを渡わたり、野のに於おいてモイセイの十じふ字じ形かたの手てにてアマリクの力ちからに勝かてり。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは實じつに神かみ及および主しゆを生うみて、實じつに獨ひとり生しやう神女しんぢよと名なづけられたり。故ゆゑに我われ等ら忠ちゆう信しんに爾なんぢを歌か頌しようして、職しよくとして讚榮さんえいす。

至し淨じやうなる者ものよ、イアコフよりする星ほし、神かみとして星ほしの多おほきを數かぞふる者ものは爾なんぢより輝かゞやき出いでたり。祈いのる、彼かれの光ひかりにて我わが罪つみの黑暗くらやみを拂はらひ給たまへ。

光榮 潔けつ淨じやう無む玷てんなる者ものよ、我われ爾なんぢを神かみが人體じんたいを取とりし靈れい智ちなる婚筵こんえんの宮みやとして知しる。爾なんぢに祈いのる、我われを肉體にくたいの慾よく、憂愁うれひ、誘惑いざなひ及および災禍わざはひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 全能者ぜんのうしや神かみが天てんより地ちに我われ等らに降くだりし梯かけはしたる童貞女どうていぢよよ、我われを地ち上じやうの肉慾にくよくより天てんに升のぼせて、神かみの前まへに至いたらしめ給たまへ。

第三歌頌

イルモス ハリストスよ、我われ等らは智慧ちゑと能力ちからと富有とみとを以もつて誇ほこるにあらず、乃すなはち爾なんぢ父ちゝと一性いつせいなる智慧ちゑを以もつて誇ほこる、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなる者ものなければなり。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢは憂うれふる者ものの慰藉なぐさめを注そゝぐ泉いづみなり。祈いのる、我われにも爾なんぢの祈き禱たうの水みづの流ながれを注そゝぎて、苦くるしみの爐ゐろりを滅けし給たまへ。

造物ざうぶつ者しや及および主しゆを生うみて、我われ等らの性せいの甚はなはだしき傷きずを醫いやしし潔いさぎよき者ものよ、不ふ當たうなる念おもひに傷きずつれられし我われを醫いやし給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ多おほくの罪つみ、慾よく及および誘惑いざなひの海うみに荒あらさるる者ものを爾なんぢの守しゆ護ごを以もつて最いと穩おだやかなる港みなとに向むかはしめ給たまへ。

今も 羊ひつじの毛けに於おけるが如ごとく、爾なんぢの腹はらに降くだりし神聖しんせいなる雨あめを以もつて、爾なんぢの祈き禱たうに因よりて、慾よくの火ひに燃もゆる吾わが心こゝろを霑うるほし給たまへ。

第四歌頌

イルモス 敎けう會くわいは爾なんぢ義ぎの日ひが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、竝ならび立たちて正たゞしく呼よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

潔いさぎよき者ものよ、流ながれて衆しゆうの生命いのちを薰かをらする爾なんぢの子この香料かうれうの中うちより無む慾よくの香料かうれうを我わが靈たましひに沃そゝぎて、其その慾よくの臭しう氣きを悉ことごとく散さんじ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、罪つみの不ふ潔けつに汚けがされたる我われに爾なんぢの祈き禱たうの「イッソプ」を沃そゝぎて、我わが諸慾しよよくの汚けがれを滌あらひ、之これを潔きよめて、我われをハリストスの居處すまひと爲なし給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、我われは爾なんぢ神かみの指ゆびにて書しるされて封印ふういんせられし書しよたる者ものに祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうの指ゆびを以もつて我われに諸罪しよざいの赦免しやめんを書しるして、諸難しよなんより脫のがれしめ給たまへ。

今も 預よ言者げんしやの嘗かつて言いひし如ごとく、山やまの巓いたゞきに建たてる神かみの殿でんたる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われをハリストスの爲ために淨きよき殿でんと爲なし給たまへ。

第五歌頌

イルモス 我わが主しゆよ、爾なんぢは光ひかり、信しんじて爾なんぢを崇あがめ歌うたふ者ものを闇くらき無智むちより引ひき出いだす聖せいなる光ひかりにして、世せ界かいに來きたり給たまへり。

神かみの母はゝよ、我われ爾なんぢをシオンに降くだりしアエルモンの露つゆと知しりて、我わが肉慾にくよくの焰ほのほを滅けさんことを祈いのる。

生命いのちの樂園らくゑんたる生しやう神女しんぢよよ、速すみやかに我われを罪つみの死し及および種種しゆじゆの慾よくより救すくひ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは天てんより地ちに沃そゝがれたる香料かうれうの靈れい智ちなる玉ぎよくの盒うつはなり、今いま我われを芳香かをりに滿みて給たまへ。

今も 神かみの聘女よめよ、爾なんぢは朽きう壞くわいに陷おちいりたる人ひとを新あらたにし給たまへり、我われをも今いま諸罪しよざい諸慾しよよくの深處ふかみより引ひき出いだし給たまへ。

第六歌頌

イルモス 憐あはれみに由よりて爾なんぢの脅わきより流ながれし血ちにて惡あく魔まの祭まつりの血ちより淨きよめられし敎けう會くわいは爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、讚揚ほめあげの聲こゑを以もつて爾なんぢを祭まつらん。

光くわう榮えいなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢは光くわう榮えいの王わうの美うるはしき宮みやと爲なりて、人人ひとびとを榮えいせり、祈いのる、我われにも不ふ朽きうの光くわう榮えいを獲えしめ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは潔けつ淨じやうなる不ふ朽きうを以もつて人ひとの性せいの惡あくなる朽きう壞くわいを新あらたにし給たまへり、求もとむ、我わが慾よくの流ながれ及および肉體にくたいの念おもひの河かはを涸からし給たまへ。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、我わが肉慾にくよくの發動はつどうを鎭しづめて、穉わかき馬うまの如ごとく躍をどる我わが肉體にくたいの動搖うごきを爾なんぢの祈き禱たうの力ちからを以もつて制せいして、智慧ちゑに服ふくせしめ給たまへ。

今も 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ爾なんぢ讚さん美びたる神かみを生うみし者ものを歌うたひて、爾なんぢに祈いのる、我われを畏おそるべき詰問きつもん及および永遠えいゑんの定罪ていざいより脫のがれしめて救すくひ給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第四調。

勝かたれぬ轉達者てんたつしや、神かみの母はゝ、爾なんぢに趨はしり附つく者ものの熱心ねつしんなる祈き禱者たうしやよ、我われを患くわん難なんより救すくひ給たまへ。衆しゆう人じんの保護ほご者しやよ、我われを棄すつる勿なかれ。

第七歌頌

イルモス アウラアムの少者せうしやはペルシヤの爐ゐろりに在ありて、焰ほのほよりも强つよく敬虔けいけんの愛あいに爇やかれて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢが光くわう榮えいの殿でんに於おいて爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

神かみを容いれて燃もゆれども焚やかれぬ棘いばらなる潔いさぎよき者ものよ、我わが惡あしき思おもひの棘いばらを焚やき、吾わが靈たましひの意い念ねんを照てらして、諸慾しよよくの淵ふちを涸からし給たまへ。

爾なんぢは獨ひとり第だい二にの天てんと現あらはれて、地ち上じやうに世世よよの尊敬そんけいと神聖しんせいなる光くわう榮えいとを獲えたり。求もとむ、我わが驕慢けうまんの敵てきなる惡あく鬼きを滅ほろぼし給たまへ。

光榮 慈じ憐れん仁じん慈じの神聖しんせいなる器うつはよ、我われに豐ゆたかに爾なんぢの宏くわう恩おんの富とみを流ながして、我わが諸罪しよざいの汚けがれを滌あらひ、肉慾にくよくの熱ねつを滅けし給たまへ。

今も 我われ常つねに放蕩はうたうに生せい活くわつして、神かみより曾かつて我われに賜たまはりたる屬神ぞくしん゜の富とみを肉體にくたいの逸樂いつらくの爲ために費つひやせり。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて蕩たう子しの如ごとく我われを義ぎと爲なし給たまへ。

第八歌頌

イルモス ダニイルは獅子しし穴あなに在ありて手てを伸のべて、獅子ししの口くちを閉とざし、敬虔けいけんの篤あつき少者せうしやは德とくを帶おび、火ひの力ちからを滅けして呼よべり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

生しやう神女しんぢよよ、我わが諸罪しよざいの械かせを壞やぶり、肉慾にくよくの起おこるを鎭しづめ給たまへ。衆しゆう信者しんじやの轉達者てんたつしや及および拯救すくひよ、爾なんぢの僕ぼくの惡あしき謀はかりごとを速すみやかに斷たち、隱ひそかなる意い念ねんを潔きよめ給たまへ。

現あらはれたる神かみの山やま、斫きられざる者もの、樹こ蔭かげ繁しげき者ものたる至いたりて潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうの蔭かげにて我われを蔽おほひ、執とらふる者ものの網あみより脫のがれしめ、惡あく鬼きの矢や及および汚けがれたる思おもひより護まもり給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、神かみを畏おそるる畏おそれと傷しやう感かんの神しん゜とを我わが腹はらに容いれて、諸德しよとくの生命いのちを生うむを得えしめ、我われを惡あく鬼きの爲ために畏おそるべき者ものと爲なし、神聖しんせいなる光くわう榮えいの諸天しよてん使しの對談者たいだんしやと爲なし給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、我われの爲ために速すみやかに生命いのちの戸と、我わが倚賴たのみの門もんを啓ひらきて、我われを終をはりなき生命いのちに向むかはしめ、我われ爾なんぢの僕ぼくを天國てんこくの嗣よつぎ及および諸聖人しよせいじんと偕ともに神聖しんせいなる光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

第九歌頌

イルモス エワは不ふ順じゆんを病やみて、詛のろひを入いれたり、爾なんぢは、童貞どうてい生しやう神女しんぢよよ、己おのれの產さんにて世せ界かいの爲ために祝しゆく福ふくの華はなを發ひらけり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて爾なんぢの僕ぼくを顧かへりみて、速すみやかに我われを侵おかし、我われを苦くるしむる見みえざる敵てきより脫のがれしめ、我われを災禍わざはひ、憂患うれひ、及および多た種しゆの誘惑いざなひより救すくひ給たまへ。

全能ぜんのうの言ことば、至し善ぜんにして仁愛じんあいなる主しゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、我われ全身ぜんしん罪つみの傷きずに蔽おほはれて定罪ていざいせられし者ものを醫いやして、凶きよう惡あくなる意念おもひより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 至し仁じんなる者ものよ、生せい死しを司つかさどる爾なんぢの子こは先さきに死しに陷おちいりしアダムの爲ために死しを嘗なめ給たまへり。求もとむ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを諸慾しよよく及および墮だ落らくより起おこし給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢに趨はしり附つく者ものを患くわん難なんと墮だ落らく、罪つみと暴風あらし、肉慾にくよくと度ど生せいの憂うれひ、及および凶きよう惡者あくしやの攻擊こうげきより救すくひ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、幷に發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第四調

木曜日

 木曜日の早課

第一の誦文の後に使徒の坐誦讚詞セダレン、第四調。

使徒しとの上じやう座ざにして全ぜん世せ界かいの敎けう師しなる者ものよ、世せ界かいに平安へいあん、我わが靈たましひに大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことを萬有ばんいうの主宰しゆさいに祈いのり給たまへ。

句 其聲そのこゑは全ぜん地ちに傳つたはり、其その言ことばは地ちの極はてに至いたる。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは己おのれの門もん徒とを地ちの四し極きよくに光くわう體たいと現あらはして、幽暗くらやみに在ある靈たましひの爲ために爾なんぢを知しる智ち識しきを輝かゞやかし、彼かれ等らに由よりて偶像ぐうざうの迷まよひを昧くらまして、虔誠けんせいの敎をしへを以もつて世せ界かいを照てらし給たまへり。其その祈き禱たうに由よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 女宰ぢよさいよ、速すみやかに我われ等らの祈き禱たうを受うけて、之これを爾なんぢの子こ及および神かみに捧さゝげ給たまへ。純じゆん潔けつなる女ぢよ君くん生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢに趨はしり附つく者ものを諸難しよなんより解とき、爾なんぢの諸僕しよぼくに對たいして武器ぶきを執とる者ものの惡計あくけいと强きやう暴ばうとを滅ほろぼし給たまへ。

第二の誦文の後に使徒の坐誦讚詞セダレン、第四調。

光くわう榮えいなる使徒しとよ、爾なんぢ等らの聲こゑは全ぜん地ちを廻めぐりて、迷まよひの智慧ちゑを愚ぐと爲ならしめ、人人ひとびとを迷まよひの深處ふかみより引ひき出いだして、衆しゆうに救すくひの途みちを示しめせり。故ゆゑに我われ等ら今いま宜よろしきに合かなひて爾なんぢ等らを讚さん頌しようす。

句 諸天しよてんは神かみの光くわう榮えいを傳つたへ、穹蒼おほぞらは其その手ての作爲しわざを誥つぐ。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは己おのれの門もん徒とを敎をしへの宣傳者せんでんしやとして世よに現あらはし、彼かれ等らを以もつて萬民ばんみんを爾なんぢを知しる智ち識しきに導みちびき給たまへり、蓋けだし彼かれ等らは言ことばの光ひかりにて衆しゆうを照てらし、敎をしへを以もつて無智むちの幽暗くらやみを散さんじたり。其その祈き禱たうに由よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの致ち命者めいしやは其その苦くるしみに由よりて爾なんぢ我わが神かみより不ふ朽きうの榮えい冠くわんを受うけたり、爾なんぢの力ちからを有たもちて、苛虐者くるしめびとを斃たふし、惡あく鬼きの不ふ能のうなる强きやう暴ばうを破やぶりたればなり。彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 女宰ぢよさいよ、病やめる靈たましひより呼よぶ爾なんぢの僕ぼくに聽ききて、我わが多おほくの惡あくの赦ゆるしを我われに與あたへ給たまへ、我われ晝ひるに夜よるに爾なんぢを轉達者てんたつしやとして有たもてばなり。生しやう神女しんぢよよ、我われを「ゲエンナ」の火ひより脫のがれしめて、我われを爾なんぢの子こ及および神かみの右みぎに立たて給たまへ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第四調。

光くわう榮えいなる使徒しとよ、義ぎの日ひたるハリストスは全ぜん地ちを照てらさん爲ために爾なんぢ等らを光くわう線せんとして出いだし給たまへり。爾なんぢ等らは神聖しんせいなる祈き禱たうに由よりて暮くれざる神聖しんせいなる光ひかりを以もつて衆しゆうを輝かゞやかし、信しんを以もつて爾なんぢ等らの聖せいなる記き憶おくを行おこなふ者ものを照てらし給たまふ。

聖神せいしん父ぷニコライよ、速すみやかに至いたりて、我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくを其その遇あふ所ところの患くわん難なん憂愁いうしうより救すくひ給たまへ、爾なんぢは造物主ざうぶつしゆ及および神かみの前まへに勇敢いさみを有たもてばなり。信しんを以もつて爾なんぢを呼よぶ者ものに疾とく來きたりて、今いま爾なんぢの保護ほご及および帲幪おほひを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは悉ことごとくの造物ざうぶつより上うへなるに因よりて、我われ等ら宜よろしきに合かなひて爾なんぢを歌か頌しようするを知しらず。爾なんぢに祈いのる、我わが功こうなくして我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

光榮にして讚美たる聖使徒の規程カノン。フェオファン師の作。第四調。

第一歌頌

イルモス 古いにしへのイズライリは足あしを濡ぬらさずして海うみの紅くれなゐの淵ふちを渡わたり、野のに於おいてモイセイの十じふ字じ形かたの手てにてアマリクの力ちからに勝かてり。

ハリストスの光くわう榮えいなる諸しよ使徒しと、撫ぶ恤じゆつ者しやの神聖しんせいなる琴こと、常つねに其その神聖しんせいなる感動かんどうに由よりて聲こゑを出いだす者ものは我われ等らの爲ために實じつに救すくひの歌うたを歌うたへり。二次。

ハリストスの光くわう榮えいなる實見者じつけんしやよ、我われ怠惰おこたりの牀とこに寢いねて、靈たましひの甚はなはだしき病やまひに由よりて罪つみの死しに瀕ひんする者ものに爾なんぢ等らの眷顧かへりみを得えしめ給たまへ。

言ことばを以もつて異い邦民はうみんの無知むちを解ときたる使徒等しとらよ、無知むちの行おこなひに由よりて痛いたく昧くらみたる吾わが心こゝろを撫ぶ恤じゆつ者しやの恩おん寵ちようを以もつて照てらし給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは產さんの後のちにも不ふ朽きうなる童貞女どうていぢよに止とゞまれり、我われ等らの爲ために地ちに現あらはれし神かみを言ことばに超こえて生うみたればなり、熱切ねつせつに彼かれに我われ等らの靈たましひを照てらさんことを祈いのり給たまへ。

又聖ニコライの規程カノン、其冠詞は、是れニコライに第四の歌詠。イオシフの作。同調。

第一歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよより生うまれし主しゆよ、祈いのる、强つよき軍ぐんたる我わが靈たましひの諸慾しよよくを無む慾よくの深處ふかみに沈しづめ給たまへ、我わが鼓つゞみを以もつてするが如ごとく、肉にく情じやうを殺ころすに由よりて凱歌かちうたを爾なんぢに歌うたはん爲ためなり。

哀かなしみなき生命いのちを嗣つぎ、常つねに屬神ぞくしん゜の喜悅よろこびに滿みちたる至し福ふく至し聖せいなる神しん父ぷニコライよ、祈いのる、吾わが靈たましひより凡およその哀かなしみを斥しりぞけ給たまへ、我わが喜よろこびて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

成聖者せいせいしやニコライよ、爾なんぢは高たかき諸德しよとくの燈臺とうだいに立たてられて、燈ともしびの如ごとく信者しんじやの心こゝろを照てらす。故ゆゑに我われ信しんを以もつて爾なんぢに祈いのる、爾なんぢの光くわう明めいなる祈き禱たうに由よりて我わが靈たましひの黑暗くらやみを拂はらひ給たまへ。

睿えい智ちなる神しん父ぷよ、我われ今いま朽きう壞くわいの生命いのちの海うみを渡わたり、諸もろもろの誘惑いざなひに漾たゞよはされて、爾なんぢに趨はしり附つきて呼よぶ、願ねがはくは爾なんぢ我われの爲ために舵師かぢとりと爲なりて、爾なんぢの神聖しんせいなる祈き禱たうを以もつて暴風あらしを平穩へいをんに變へんぜん。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの眠ねむらざる禱いのりを以もつて我わが靈たましひの諸慾しよよくを眠ねむらせ、爾なんぢの聖せいなる轉達てんたつを以もつて我われ等らに神かみの旨むねを行おこなはん爲ために神聖しんせいにして救すくひを得えしむる勇敢いさみを與あたへ給たまへ。

第三歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢの敎けう會くわいは爾なんぢの爲ために樂たのしみて呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢは我わが能力ちからと避所かくれがと堡障かためなり。

主宰しゆさい神かみよ、爾なんぢの門もん徒との靈れい智ちなる河かはの流ながれは爾なんぢの城邑まちを神妙しんめうに樂たのしましむ。二次。

天てんの住ぢゆう者しや、神しん゜靈れいの品ひん位ゐの同どう役者えきしやたる至し榮えいなる使徒等しとらよ、我われ等らを諸もろもろの憂うれひより脫のがれしめ給たまへ。

爾なんぢの靈れい智ちなる諸天しよてんを堅かためしハリストスよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われを爾なんぢの旨むねの石いしの上うへに堅かため給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じの主しゆなればなり。

生神女讚詞 主しゆよ、潔いさぎよく爾なんぢを生うみし者ものは母はゝとして門もん徒との會くわいと偕ともに爾なんぢに祈いのる、我われ等らに爾なんぢの慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。

又

イルモス ハリストスよ、我われ等らは智慧ちゑと能力ちからと富有とみとを以もつて誇ほこるにあらず、乃すなはち爾なんぢ、父ちゝと一性いつせいなる智慧ちゑを以もつて誇ほこる、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなる者ものなければなり。

聖せいニコライよ、爾なんぢは戰たゝかふ敵てきを滅ほろぼす武器ぶきと顯あらはれたり。祈いのる、彼かれ等らの誘いざなひに惱なやまされざる者ものとして我われ等らを護まもりて、神かみの旨むねを行おこなはしめ給たまへ。

敵てきの惡謀あくぼう及および網あみを壞やぶりし成聖者せいせいしやよ、吾わが靈たましひの壞やぶれを醫いやし給たまへ、我わが信しんを以もつて爾なんぢを我われの轉達者てんたつしやとして尊たふとまん爲ためなり。

アルテミダの偶像ぐうざうの殿みやを毁こぼちし神しん父ぷニコライよ、爾なんぢの神聖しんせいなる祈き禱たうを以もつて我わが智慧ちゑの慾よくの想像さうざうを消けし給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢを轉達者てんたつしやとして獲えたり、我わが哀かなしみを喜よろこびに易かへて、我われ等らを死しを生しやうずる憂うれひより脫のがれしめ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 敎けう會くわいは爾なんぢ義ぎの日ひが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、竝ならび立たちて正たゞしく呼よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは其その選えらびたる者ものを馬うまの如ごとく海うみに放はなちて、邪敎じやけうの水みづを亂みださしめ、衆しゆうに爾なんぢの眞まことの智ち識しきを報はうぜしめ給たまへり。二次。

至し榮えいなる使徒しと、虔誠けんせいを以もつて敎けう會くわいの靈れい智ちの穹蒼おほぞらを照てらしし星ほしなる者ものよ、我われを無知むちの夜よる及および諸罪しよざいより救すくひ給たまへ。

礪とがれたる箭やと顯あらはれし使徒等しとらよ、今いま我われに惡あくを射いる敵てきの火箭ひやを滅けして、我わが思念おもひを堅かため給たまへ。

生神女讚詞 ハリストスよ、敵てきの囓かむに由よりて毒害どくがいせられたる吾わが靈たましひを効驗かうけんある醫い療れうを以もつて醫いやし給たまへ、爾なんぢを生うみし者もの及および爾なんぢの聖せい使徒等しとらの祈き禱たうに因よりてなり。

又

イルモス 光くわう榮えいの中うちに神性しんせいの寶はう座ざに坐ざするイイスス神かみは、輕かろき雲くもに乘のるが如ごとく、朽くちざる手てに抱いだかれ來きたりて、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きすと呼よぶ者ものを救すくひ給たまへり。

聖せいニコライよ、爾なんぢの至し榮えいなる生命せいめい及および神聖しんせいなる奇き蹟せきは爾なんぢを遍あまねき處ところに至し榮えいなる者ものと顯あらはして、成聖者せいせいしやの飾かざりと爲なし、凡およそ歡喜よろこびの歌うたを以もつて爾なんぢを尊たふとむ者ものの譽ほまれと爲なす。

福ふくたる者ものよ、爾なんぢは高たかき寶はう座ざに在ありて謙遜けんそんの神聖しんせいなる輝煌かゞやきを以もつて神かみを榮えいせり。睿えい智ちなる神しん父ぷよ、神かみに悅よろこばるる爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らを其その輝煌かゞやきに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

神しん父ぷよ、爾なんぢは神聖しんせいなる熱心ねつしんに燃もえて、非義ひぎに死しに曳ひかるる者ものを救すくひ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、斯かく誘惑いざなひに由よりて殺ころさるる我われ等らの心こゝろを之これより脫のがれしめ給たまへ。

歡喜よろこびを以もつて天てんに居をる神しん父ぷニコライよ、凡およそ爾なんぢを呼よぶ者ものに見みえずして臨のぞみて、吾わが靈たましひの諸しよ病びやうを醫いやし、宜よろしきに合かなひて慰藉なぐさめを與あたへ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、天軍てんぐんは爾なんぢの神聖しんせいなる產さんの偉ゐ大だいなるを奇きとして讚さん頌しようす。童貞女どうていぢよよ、彼かれ等らと偕ともに凡およそ淨きよき信しんを以もつて爾なんぢを讚さん美びする者ものの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

第五歌頌

イルモス 我わが主しゆよ、爾なんぢは光ひかり、信しんじて爾なんぢを崇あがめ歌うたふ者ものを闇くらき無智むちより引ひき出いだす聖せいなる光ひかりにして、世せ界かいに來きたり給たまへり。

光くわう榮えいなる使徒しと、生命いのちの葡ぶ萄だうの樹きより生しやうぜし房ふさよ、爾なんぢ等らは凡およその者ものに靈れい智ちなる樂たのしみの酒さけを飮のませ給たまへり。二次。

使徒等しとらよ、無智むちにして靈たましひの煩悶もだえの幽暗くらやみに居をる者ものを神かみの誡いましめの光ひかりに導みちびき給たまへ。

福ふくたる使徒等しとらよ、我われ等らを靈たましひの罪つみ、將しやう來らいの審判しんぱん、朽きう壞くわい及および患くわん難なんより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 神かみよ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなるに因よりて我われを救すくひ給たまへ、言いひ難がたく爾なんぢを生うみし者もの及および神聖しんせいなる爾なんぢの衆しゆう使徒しとの祈き禱たうに因よりて我われを救すくひ給たまへ。

又

イルモス ハリストスよ、不ふ虔けんの者ものは爾なんぢの光くわう榮えいを見みざらん、惟たゞ我われ等らは夜よより寤さめて、爾なんぢ神かみの獨生どくせい子し、父ちゝの光くわう榮えいの輝煌かゞやき、人ひとを愛あいする主しゆを崇あがめ歌うたふ。

睿えい智ちなる神しん父ぷニコライよ、爾なんぢは死しして日ひの如ごとく入いりたれども、ハリストスの下もとに在ありて爾なんぢの奇き跡せきの光くわう明めいなる光くわう線せんを以もつて輝かゞやきて、普ふ天てん下かを照てらし給たまふ。

成聖者せいせいしやニコライよ、誘惑いざなひ及および憂愁うれひの我われ等らに及およぶ日ひに於おいて我われ等らに聽ききて、爾なんぢの中うちに棲すむ聖神せいしんの恩おん寵ちようを以もつて凡およその苦く難なんを退しりぞけ給たまへ。

成聖者せいせいしやニコライよ、我われ度ど生せいの慾よくにて損そこなひたる靈たましひを有たもつ者ものは援助たすけの爲ために爾なんぢを呼よぶ、急いそぎて、至し仁じんなる主しゆに祈いのりて、我われに全まつたき醫治いやしを與あたへ給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、イサイヤは靈れい智ちなる目めを以もつて爾なんぢを視みて呼よぶ、視みよ、主しゆイイススは童貞女どうていぢよ、神かみの少女せうぢよより人人ひとびとの復生ふくせいの爲ために生うまれんと欲ほつす。

第六歌頌

イルモス 憐あはれみに由よりて爾なんぢの脅わきより流ながれし血ちにて惡あく魔まの祭まつりの血ちより淨きよめられし敎けう會くわいは爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、讚揚ほめあげの聲こゑを以もつて爾なんぢを祭まつらん。

善よき牧者ぼくしやの神かみに選えらばれたる羊ひつじの子こは世せ界かいに散さんじて、敎をしへを以もつて凡およその狼おほかみの猛烈まうれつを羊ひつじの溫柔をんじうに變へんじたり。二次。

聖せい使徒等しとら、神聖しんせいなる樂園らくゑんの善果ぜんくわを結むすびたる樹きよ、我わが至いたりて不ふ當たうなる靈たましひの無む結果けつくわを諸德しよとくの善果ぜんくわを結むすぶ風習ならはしに變へんじ給たまへ。

我われ逸樂いつらくの武器ぶきに傷きずつれられて死しせり、ハリストスより死し者しやを復ふく活くわつせしむる恩おん寵ちようを受うけし光くわう榮えいなる者ものよ、殺ころされし我わが不ふ當たうなる靈たましひを活いかし給たまへ。

生神女讚詞 仁じん慈じなる萬有ばんいうの神かみよ、爾なんぢを生うみし生しやう神女しんぢよ、爾なんぢの使徒しと及および致ち命者めいしやの祈き禱たうに由よりて、我わが靈たましひの烈はげしき暴風あらしを鎭しづめ給たまへ。

又

イルモス 我われ海うみの深處ふかみに至いたり、多おほくの罪つみの暴風あらしは我われを沈しづめたり。慈じ憐れんの主しゆよ、神かみなるに因よりて、我わが生命いのちを深處ふかみより引ひき上あげ給たまへ。

神しん智ちなる神しん父ぷニコライよ、爾なんぢは救世主きうせいしゆの力ちからに堅かためられて、能よく見みえざる敵てきを滅ほろぼせり、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らを其その甚はなはだしき害がいより脫のがれしめ給たまへ。

至し榮えいなるニコライよ、爾なんぢの聖せいなる祈き禱たうを以もつて我われ等らを惡あしき人ひとの强きやう迫はく及および「ゲエンナ」の苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

昔むかし非義ひぎに死し罪ざいに定さだめられたる軍ぐん將しやうは爾なんぢの轉達てんたつに由よりて救すくはれたり。奇異きいなる神しん父ぷよ、彼かれ等らの如ごとく我われ等らをも凡およその害がいより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 神かみの母はゝ、至し聖せいなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの民たみ及および城邑まちは爾なんぢに祈いのる、我われ等らを凡およその患くわん難なん及および彼處かしこの永遠えいゑんの定罪ていざいより救すくひ給たまへ。

第七歌頌

イルモス アウラアムの少者せうしやはペルシヤの爐ゐろりに在ありて、焰ほのほよりも强つよく敬虔けいけんの愛あいに爇やかれて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢが光くわう榮えいの殿でんに於おいて爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

ハリストスの義ぎなる使徒しとよ、爾なんぢ等らは至し聖せいなる傳道でんだうの力ちからを以もつて迷まよひの幽暗くらやみを散さんじて、信者しんじやの靈たましひを神かみを知しる智ち識しきにて照てらし給たまへり。二次。

常つねに芳かうばしき香料かうれうを流ながす神聖しんせいなる門もん徒とよ、爾なんぢ等らに趨はしり附つく者ものを神しん゜靈れいの香料かうれうの薰かをりに滿みてて、惡臭あくしうの諸慾しよよくを拂はらひ給たまへ。

不ふ朽きうなる言ことばの光くわう榮えいなる門もん徒とよ、肉慾にくよくに由よりて朽きう壞くわいせられし我われを救すくひて歌うたはしめ給たまへ、主しゆよ、爾なんぢが光くわう榮えいの宮みやに於おいて爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 仁じん慈じなる言ことばよ、天てん使しの會くわい、爾なんぢの致ち命者めいしや及および使徒しとの會くわいは常つねに爾なんぢの至し大だいなる仁じん慈じに祈いのる、慈じ憐れんなる主しゆとして、生しやう神女しんぢよに由よりて衆しゆうを憐あはれみ給たまへ。

又

イルモス 三人みたりの少者せうしやはワワィロンに於おいて窘迫者くるしめびとの命令めいれいを空言くうげんと爲なして、焰ほのほの中うちに呼よべり、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

聖せいニコライよ、諸聖人しよせいじんの中うちに息いこふ萬有ばんいうの惟一ゆゐいちなる造物主ざうぶつしゆに我われ等らを聖せいにして、其その豐ゆたかなる慈じ憐れんを我われ等らに遣つかはさんことを祈いのり給たまへ。

光くわう榮えいなる者ものよ、爾なんぢは克肖こくせうにして義ぎ、溫をん順じゆんにして柔にう和わ謙遜けんそんなるに由よりて、神品しんぴん職しよくの至し榮えいなる高たかきに擧あげられて、奇き跡せき休きう徵ちようを行おこなひ給たまふ。

克肖こくせうなる者ものよ、爾なんぢは神聖しんせいなる法はふを守まもりて、神かみの至いたりて淨きよき殿でんと顯あらはれたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、至し福ふくなる者ものよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを凡およその不ふ法はふより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 少女せうぢよよ、爾なんぢの勇いさましき祈き禱たうを以もつて我わが靈たましひの慾よくの發動はつどうを眠ねむらせ、我われに勇敢いさみを與あたへて、煩悶もだえの眠ねむりを遠とほく退しりぞけ給たまへ。

第八歌頌

イルモス ダニイルは獅子しし穴あなに在ありて手てを伸のべて、獅子ししの口くちを閉とざし、敬虔けいけんの篤あつき少者せうしやは德とくを帶おび、火ひの力ちからを滅けして呼よべり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

ハリストスの使徒しと、火ひを吹ふく口くちたる者ものよ、爾なんぢ等らは閉とざしなき口くちを閉とざして、救すくひの敎をしへを遍あまねき處ところに播まき、衆しゆうを無む形けいの狼おほかみの口くちより脫のがれしめて呼よばしむ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに彼かれを讚ほめ揚あげよ。二次。

ハリストスの好よき聲こゑの角らつぱたる光くわう榮えいなる使徒しとよ、我わが死ししたる靈たましひの傍かたはらに響ひゞきて、之これを失望しつばうと甚はなはだしき憂悶もだえとの墓はかより起おこして歌うたはしめ給たまへ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

ハリストスよ、我われ智慧ちゑの悖もとれるに由よりて爾なんぢの法はふを蹂躙じうりんせし者もの、主宰しゆさいよ、我われ放蕩はうたうにして罪つみの深處ふかみに陷おちいりて、常つねに惡あしき風習ならはしに順したがふ者ものを爾なんぢの門もん徒との祈き禱たうに由よりて棄すつる毋なかれ。

生神女讚詞 マリヤ、萬ばん衆しゆうの女ぢよ君くんよ、我われ蛇へびに制せいせられて、常つねに罪つみを犯おかす者ものを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて解ときて、ハリストスに服ふくせしめて、淨きよき度ど生せいに於おいて歌うたはしめ給たまへ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

又

イルモス 衆しゆう人じんの贖しよく罪主ざいしゆ全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは降くだりて、焰ほのほの中うちに敬虔けいけんを守まもりし者ものに露つゆを注そゝぎて、歌うたはしめ給たまへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて崇あがめ讚ほめよ。

ニコライよ、爾なんぢは神聖しんせいなる事ことを述のべて、不ふ法者はふしやの閉とざしなき口くちを閉とざし、多おほくの者ものをアリイの害がいより脫のがれしめて、正敎せいけうの心こゝろを以もつて歌うたはしむ、主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

勝しよう利りと同どう名めいなる聖者せいしやよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、我われ等ら常つねに熱心ねつしんに爾なんぢに祈いのる者ものを死しを生うむ諸慾しよよく、及および不ふ法はふなる人人ひとびとの詐いつはりの舌したに勝かつ者ものと爲なし給たまへ。

奇き跡せき者しやニコライよ、患くわん難なんの日ひに於おいて我われ等らが信しんを以もつて爾なんぢに祈いのりて、爾なんぢの救すくひを爲なす助たすけを降くださんことを求もとむる時ときに、我われ等らの禱いのりを受うけ給たまへ。

聖三者讚詞 我われ等ら信者しんじやは正敎せいけうの心こゝろを抱いだきて聖せいなる三者さんしやに伏拜ふくはいし、父ちゝ子こ及および至し聖神せいしんを讚榮さんえいして呼よばん、主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて萬世ばんせいに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

生神女讚詞 至し仁じんなる言ことばを生うみし祝しゆく讚さんせらるる至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの慈じ憐れんを我われに垂たれて、審判しんぱんの時ときに我われを護まもりて、彼處かしこの定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよよ、手てにて斫きられざる隅石すみいしハリストスは、爾なんぢ斫きられざる山やまより斫きり分わけられて、離はなれたる性せいを合あはせ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら樂たのしみて、爾なんぢ生しやう神女しんぢよを崇あがめ歌うたふ。

屋隅をくぐうの首石しゆせきと爲なりし者ものの選えらびたる石いしなる使徒しとよ、爾なんぢ等らは衆しゆう信者しんじやの心こゝろを建たてて、信しんの石いしにて敵てきの建造たてものを碎くだき給たまへり。二次。

ハリストスより釋とき及および縛しばる權けんを受うけし使徒等しとらよ、我わが惡あくの繫つなぎを釋とき、我われを神かみを愛あいする愛あいに繫つなぎて、神かみの國くにに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

主宰しゆさいの神聖しんせいなる雲くも、神福しんぷくなる使徒等しとらよ、諸もろもろの惡あしき行おこなひに由よりて涸かれたる吾わが心こゝろを今いま神聖しんせいなる雨あめを以もつて濕うるほして、果みを結むすぶ者ものと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、聖せいなる天てん使し、神聖しんせいなる使徒しと、光くわう榮えいなる致ち命者めいしやと偕ともに爾なんぢの子こ及および神かみに我われ等らの靈たましひを諸難しよなんより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

又

イルモス エワは不ふ順じゆんを病やみて、詛のろひを入いれたり、爾なんぢは、童貞どうてい生しやう神女しんぢよよ、己おのれの產さんにて世せ界かいの爲ために祝しゆく福ふくの華はなを發ひらけり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

克肖こくせうなるニコライよ、信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢに趨はしり附つく者ものの爲ために爾なんぢの柩ひつぎは常つねに醫治いやしを施ほどこして、諸しよ病びやうを葬はうむり、香料かうれうの薰かをりを流ながす。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを讚さん頌しようす。

神福しんぷくなるニコライ、司祭長アルヒエレイ等らの飾かざりよ、爾なんぢは神聖しんせいなる奇き跡せきの輝煌かゞやきを以もつて日ひの如ごとく普ふ天てん下かを照てらし、爾なんぢの聖せいなる轉達てんたつに由よりて甚はなはだしき患くわん難なんの幽暗くらやみを遠とほざく。

ニコライよ、我われ等ら度ど生せいの累わづらひ、惡あく鬼きの攻擊こうげき、惡あしき人人ひとびとの誘惑いざなひに絕たえず烈はげしく荒あらさるる者ものを常つねに宥なだめ給たまへ、我われ等ら皆みな爾なんぢを讚さん頌しようせん爲ためなり。

嗚呼あゝ我わが靈たましひよ、主宰しゆさいが爾なんぢを審判しんぱんに曳ひきて、爾なんぢの隱かくれたる行おこなひを審判しんぱんせんとする畏おそるべき日ひ及および時ときを思おもひて、彼かれに呼よべ、救世主きうせいしゆよ、ニコライの祈き禱たうに由よりて我われを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、我われ等らは喜よろこびを以もつて爾なんぢに神聖しんせいなるガウリイルの聲こゑを奉たてまつりて呼よぶ、常つねに生命せいめいの樹きを其中そのうちに有たもつ樂園らくゑんよ、慶よろこべ、言ことばの至し榮えいなる宮みやよ、慶よろこべ。

挿句くづけに使徒の讚頌スティヒラ、第四調。

ハリストス神かみよ、爾なんぢは聖神せいしんを以もつて使徒しとの會くわいを照てらし給たまへり。求もとむ、彼かれ等らに因よりて我われ等らの罪つみの汚けがれを滌あらひて、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

ハリストス神かみよ、爾なんぢの聖神せいしんは無む學がくなる門もん徒とを敎導けうだう師しと爲なし、多た種しゆの方言はうげんの調てう和わを以もつて迷まよひを空むなしくし給たまへり、全能ぜんのうの主しゆなればなり。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの聖人せいじん等らの死しは貴たふとし、蓋けだし彼かれ等らは劍つるぎと、火ひと、嚴寒さむさとに壞やぶられ、己おのれの血ちを流ながして、恃賴たのみを爾なんぢに負おはせたり。故ゆゑに救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らは忍しのびたる後のちに其その功勞こうらうの報むくいとして爾なんぢより大おほいなる惠めぐみを受うけたり。

光榮、今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを墻かきと穩おだやかなる湊みなと及および堅固かためとして獲えたり。故ゆゑに我われ生命いのちの激浪あらなみに遭あふ者ものは祈いのる、舵かぢを操とりて我われを救すくひ給たまへ。

横線 - 『八調経』第四調

 木曜日の聖体礼儀に

木曜日の眞福詞、第四調。

アダムは木きに緣よりて樂園らくゑんより出いだされ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかの木きに緣よりて樂園らくゑんに入いりたり。彼かれは食しよくして造物主ざうぶつしゆの誡いましめに背そむき、此こし共ともに十じふ字架じかに釘ていせられて、隱かくれたる神かみを認みとめて籲よべり、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

牧者ぼくしや及および羔こひつじの神しん゜靈れいの養育やういくたる睿えい智ちなる者ものよ、爾なんぢ等らは彼かれより羔こひつじの如ごとく狼おほかみの中うちに遣つかはされて、神聖しんせいなる傳道でんだうを以もつて其その猛烈まうれつを溫柔をんじうに變へんじ、信しんと堅けん固ごなる念おもひとを以もつて呼よばしむ、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

主しゆの使徒しとよ、爾なんぢ等らは全ぜん地ちを巡めぐりて、光くわう明めいなる星ほしの如ごとく暗くらき迷まよひを散さんじて、救すくひの光ひかりを迷まよはされたる者ものに照てらせり。故ゆゑにハリストスの傳道でんだう師しよ、我われ等らは爾なんぢ等らを讚さん美びして求もとむ、常つねに我われ等らの爲ために主しゆに祈いのり給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

致命者讚詞 睿えい智ちにして福ふくたる者ものよ、爾なんぢ等らは殺ころされ、物質ぶつしつの火ひに焚やかれて、暗くらき多た神しんの迷まよひを焚やき盡つくせり。今いまは信しんを以もつて爾なんぢ等らに來きたる者ものに醫治いやしの流ながれを注そゝぎて、熱切ねつせつにハリストスに呼よばしむ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

光榮、聖三者讚詞 我われ等らは堅けん固ごなる思おもひと警醒けいせいの心こゝろとを以もつて最高いとたかきに坐ざする父ちゝ、其その同どう座ざたる子こ、及および聖神せいしんに言いはん、分わかれざる聖三者せいさんしや、嘗かつて言ことばを以もつて萬物ばんぶつを造つくり、萬ばん衆しゆうを照てらす神かみよ、信しんを以もつて爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

今も、生神女讚詞 神かみの母はゝ、純じゆん潔けつなる少女せうぢよよ、爾なんぢは使徒しとの歡喜よろこび、受難者じゆなんしやの實じつに凋しぼまざる榮えい冠くわんなり。女宰ぢよさいよ、彼かれ等らと偕ともに我われ等ら爾なんぢに祈いのる者ものの爲ために諸罪しよざいの赦ゆるしと生命せいめいの更新あらためとを求もとめ給たまへ、蓋けだし我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢに呼よぶ、實じつに諸福しよふくの寶藏はうざうなる者ものよ、慶よろこべ。

横線 - 『八調経』第四調

 木曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十字架の讚頌スティヒラ、第四調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

恒忍ごうにんなる言ことばよ、萬物ばんぶつは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせらるるを見みる時とき、變へんぜられて慄をのゝけり、地ちは震ふるひ動うごき、殿でんの幔まくは爾なんぢが辱はづかしめらるるに因よりて畏おそれて裂さかれ、磐いはは畏懼おそれに因よりて碎くだかれ、日ひは爾なんぢが己おのれの造成主ざうせいしゆなるを知しりて光くわう線せんを匿かくせり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

如何いかんぞ至いたりて不ふ法はふなる會くわいは爾なんぢ不死ふしの審判者しんぱんしや、昔むかし野のに於おいて見神者けんしんしやモイセイに律法りつぱふを授さづけし主しゆを畏おそるるなく定罪ていざいしたる、如何いかんぞ爾なんぢ萬ばん衆しゆうの生命いのちが木きの上うへに死ししたるを見みて聊いさゝかも畏おそれず、爾なんぢが獨ひとり造物ざうぶつの主宰しゆさいたることを心こゝろに懷おもはざりし。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

慈じ憐れん多おほき主しゆよ、原げん祖そアダムが古こ世せいよりの罪つみの書券かきつけは爾なんぢの脅わきの刺ささるるを以もつて裂さかれ、棄すてられたる人ひとの性せいは爾なんぢの血ちの沃そゝぐを以もつて聖せいにせられて呼よぶ、全能ぜんのうなるイイスス、我われ等らの靈たましひの救主きうしゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの仁じん慈じに歸きし、光くわう榮えいは爾なんぢの神聖しんせいなる釘てい刑けいに歸きす。

次に、之あらば、月課經ミネヤの聖人の讚頌スティヒラ。若し月課經なくば、又至聖なる生神女の讚頌スティヒラ、第四調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

主しゆよ、爾なんぢの潔いさぎよき母はゝは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせらるるを見みて、驚おどろきて呼よべり、至し愛あいの子こよ、此この觀みる所ところは何なにぞや、爾なんぢの多おほくの奇き跡せきを樂たのしみし不ふ順じゆん不ふ法はふの會くわいは斯かく爾なんぢに報むくゆるか。主宰しゆさいよ、光くわう榮えいは爾なんぢの言いひ難がたき寬くわん容ように歸きす。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

復上の讚頌スティヒラを誦す。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

羔こひつじ及および牧者ぼくしやたる爾なんぢが木きの上うへに在あるを見みて、生うみし牝め羊ひつじは哭なき、母はゝとして爾なんぢに言いへり、至し愛あいの子こ、恒忍ごうにんなる主宰しゆさいよ、如何いかんぞ十じふ字架じかの木きに懸かゝりたる、言ことばよ、如何いかんぞ爾なんぢの手て足あしは不ふ法者はふしやより釘ていせられて、爾なんぢ血ちを流ながしたる。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 主しゆよ、童貞女どうていぢよ爾なんぢの母はゝは爾なんぢが十じふ字架じかに懸かけられしを見みて訝いぶかり、目めを注そゝぎて云いへり。主宰しゆさいよ、爾なんぢの多おほくの恩おん賜しを樂たのしみし者ものは何なにをか爾なんぢに報むくいたる。惟たゞ祈いのる、我われを獨ひとり世よに遺のこす毋なかれ、速すみやかに復ふく活くわつして、己おのれと偕ともに原げん祖そを起おこし給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第四調。

ハリストスよ、爾なんぢは勝かたれぬ武器ぶきとして爾なんぢの十じふ字架じかを我われ等らに賜たまへり、我われ等ら此これを以もつて仇敵きうてきの惡謀あくぼうに勝かつ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

ハリストスよ、我われ等らは常つねに爾なんぢの十じふ字架じかを佑助たすけとして有たもちて、輙たやすく敵てきの網あみを踐ふむ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

爾なんぢの諸聖人しよせいじんの記き憶おくの中うちに榮えいせらるるハリストス神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうを納いれて、我われ等らに大おほいなる憐あはれみを垂たれ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 母はゝよ、我われ爾なんぢの子こ及および神かみ、地ちを寄よする所ところなくして水みづの上うへに懸かけ、萬物ばんぶつを造つくりし者ものが木きの上うへに懸かけられしを見みて哭なく毋なかれ、蓋けだし我われ復ふく活くわつして光くわう榮えいを獲え、異い能のうを以もつて地ぢ獄ごくの國くにを滅ほろぼし、其その力ちからを破やぶりて、慈じ憐れんなるに由よりて縛しばられし者ものを苦くるしみより釋とき、人ひとを愛あいするに由よりて我わが父ちゝに攜たづさへん。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。聯禱及び發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 木曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第四調。

第一歌頌

イルモス 我わが口くちを開ひらきて、聖神せいしんに滿みてられ、言ことばを女王によわう母はゝに奉たてまつり、樂たのしみ祝いはひ、喜よろこびて其その奇き迹せきを歌うたはん。

潔いさぎよき神かみの母はゝよ、爾なんぢは獨ひとり爾なんぢの諸僕しよぼくの轉達てんたつ、避所かくれが、及および保護ほごなり、故ゆゑに我われ爾なんぢに俯ふ伏ふくして呼よぶ、慈じ憐れんなるに因よりて、我われ不ふ當たうの者ものを救すくひ給たまへ。

汚けがれたる行おこなひは面まのあたりに之これを責せむる我わが良りやう心しんを傷いたましむ。女宰ぢよさいよ、急いそぎて我わが爲ために援助たすけと爲なりて、終をはりの前さきに我われを之これより脫のがれしめて救すくひ給たまへ。

光榮 至し聖せいなる言ことばを生うみし女宰ぢよさい、天てん上じやうの軍ぐんよりも聖せいにして、獨ひとり讚さん美びたる者ものよ、我わが汚けがれたる心こゝろを聖せいにし給たまへ。

今も 我わが救すくひの恃賴たのみを我われ爾なんぢに負おはしめて、信しんを以もつて爾なんぢ慈じ憐れんなる童貞女どうていぢよに趨はしり附つく。恃賴たのみなき者ものの恃賴たのみよ、我われを棄すつる毋なかれ、我われを惡あく鬼きの悅よろこびと爲なす毋なかれ。

第三歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよ、生せい活くわつにして盡つきざる泉いづみよ、祝いはひて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ者ものの靈たましひを固かため、彼かれ等らに爾なんぢが神妙しんめうなる光くわう榮えいの中うちに榮えい冠くわんを冠かうむらしめ給たまへ。

無む玷てん純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ罪つみの熱ねつに焚やかるる者ものに爾なんぢの慈じ憐れんの露つゆを注そゝぎ、自みづから我わが悲かなしみを凉すゞしくして、神聖しんせいなる喜よろこびを我われに與あたへ給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、祈いのる、爾なんぢ善ぜんなるに因よりて爾なんぢの中うちに在ある光ひかりを以もつて我わが智慧ちゑの幽暗くらやみを散さんじ、宏くわう恩おん慈じ憐れんなるに因よりて我われを痛つう悔くわいの範のりに效ならはしめ給たまへ、我わが救すくはれて爾なんぢを讚さん美びせん爲ためなり。

光榮 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの慈じ憐れんの注そゝぐを以もつて我わが諸慾しよよくの熾炭やけずみを滅けし給たまへ。金こがねの燈臺とうだいたる純じゆん潔けつなる者ものよ、我わが心こゝろの滅きえたる燈ともしびを點てんじ給たまへ。

今も 罪つみの浪なみと不ふ當たうなる思念おもひの暴風あらしとは我われを溺おぼらす。純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢ慈じ憐れんなるに因よりて我われを憐あはれみて、我われに援助たすけの手てを伸のべ給たまへ、我わが救すくはれて爾なんぢを讚さん美びせん爲ためなり。

第四歌頌

イルモス 預よ言者げんしやアウワクムは爾なんぢ至し上じやう者しやが童貞女どうていぢよより身みを取とり給たまふ神かみの測はかり難がたき定制ていせいを洞察みとほして籲よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

至いたりて奇異きいなる神かみの母はゝ、童貞女どうていぢよよ、我われに痛つう悔くわいの光ひかりを輝かゞやかして、吾わが不ふ當たうなる靈たましひの幽暗くらやみを散さんじ、我わが心こゝろの惡あしき思おもひを退しりぞけ給たまへ。

祝しゆく讚さんせらるる者ものよ、我われ信しんを以もつて爾なんぢ衆しゆう人じんの潔淨きよめたる者ものに祈いのりて求もとむ、爾なんぢの子こを我わが爲ために慈じ憐れんなる審判者しんぱんしやと爲なし給たまへ、我わが讚歌ほめうたを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

光榮 獨ひとり潔いさぎよき者ものよ、我わが卑微ひびなる心こゝろ、諸慾しよよくの不ふ潔けつなる行動かうどうに因よりて癩らい病びやうと爲なりし者ものを醫師いしとして醫いやして、惡あく鬼きの手てより出いだし給たまへ。

今も 女宰ぢよさいよ、福ふくたるアウワクムは嘗かつて神かみに感かんぜらるる言ことばを以もつて爾なんぢを樹こ蔭かげ繁しげき聖山せいざんと名なづけて、南みなみより來きたりて爾なんぢより人體じんたいを取とり給たまふ主しゆを最いと明あきらかに宣傳せんでんせり。

第五歌頌

イルモス 萬物ばんぶつは爾なんぢが神妙しんめうの光くわう榮えいに驚おどろかざるなし、爾なんぢ婚配こんぱいを識しらざる童貞女どうていぢよは至し上じやうの神かみを孕はらみ、永遠えいゑんの子こを生うみて、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものに平安へいあんを賜たまへばなり。

純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいよ、我われ諸慾しよよくと惡念あくねんとに殺ころされたる者ものは爾なんぢの慈じ憐れんと爾なんぢの熱切ねつせつなる帲幪おほひと援助たすけとに趨はしり附つく、獨ひとり生命いのちを生うみし者ものよ、吾わが心こゝろを活いかし給たまへ。

我わが爲ために戈ほこを以もつて傷きずつけられて、蛇へびの心こゝろに傷きずつけし主しゆ救世主きうせいしゆを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、罪つみの武器ぶきに傷きずつれられし我われを爾なんぢの效驗かうけんある醫い療れうを以もつて醫いやし給たまへ。

光榮 無む玷てんにして讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、我わが心こゝろの痛いたみを醫いやし、我わが靈たましひの諸慾しよよくを退しりぞけ、煩悶もだえの黑暗くらやみを散さんじ給たまへ、我わが讚さん美びの歌うたを以もつて爾なんぢ永福えいふくなる者ものを讚さん頌しようせん爲ためなり。

今も 童貞女どうていぢよは其その生せい長ちやうせしめし葡ぶ萄だうの房ふさの木きに懸かゝれるを見みて呼よべり、子こよ、爾なんぢは液汁えきじふを滴したゝらして、爾なんぢ至いたりて恒忍ごうにんなる主しゆを十じふ字架じかに釘ていせし敵てきの醉ゑひを醒さまし給たまふ。

第六歌頌

イルモス 神かみの信者しんじやよ、來きたりて、神かみの母はゝの此この神妙しんめうなる至いたりて尊たふとき祭まつりを祝いはひ、手てを拍うちて、彼かれより生うまれし神かみを讚榮さんえいせん。

獨ひとり衆しゆう人じんの援助たすけなる者ものよ、我われ等らを患くわん難なんの中うちに援たすけ給たまへ、獨ひとり神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我われ等らに手てを授さづけて、救すくひの港みなとに導みちびき給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、畏おそるべき時ときに於おいて我われを惡あく鬼きの詰問きつもんと、定罪ていざいと、火ひと、幽暗くらやみと、苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 讚さん美びたる者ものよ、我われ爾なんぢを讚さん頌しようし、爾なんぢの尊榮そんえい偉ゐ大だいなるを讚榮さんえいす。爾なんぢ我われを不ふ潔けつなる諸慾しよよくより解ときて、永遠えいゑんの光くわう榮えいに與あづからしめ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢを歌か頌しようすべきに、實じつに宜よろしきに合かなひて之これを爲なす能あたはず、故ゆゑに爾なんぢを歌うたひて、默もだして爾なんぢに於おいて行おこなはれし言いひ難がたき奧密あうみつを尊たふとむ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第四調。

神かみの言ことばよ、爾なんぢの至し淨じやうなる母はゝは爾なんぢが十じふ字架じかに擧あげられしを見みし時とき、母はゝとして哭なきて云いへり、吾わが子こよ、斯この新あらたにして驚おどろくべき奇き跡せきは何なにぞや、如何いかんぞ爾なんぢ萬ばん衆しゆうの生命いのちは慈じ憐れんの者ものとして死し者しやを活いかさんと欲ほつして死しを嘗なむる。

第七歌頌

イルモス 敬虔けいけんの者ものは造物主ざうぶつしゆに易かへて造物ざうぶつに事つかふることをせざりき、火ひの嚇おどしを勇いさましく踐ふみて、喜よろこび歌うたへり、讚さん美びたる主しゆ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

變易へんえきせざる主しゆを生うみし獨ひとり神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる潔いさぎよき者ものよ、惡あく鬼きの誘惑いざなひに因よりて甚はなはだしく變へんじたる吾わが心こゝろが主しゆの右みぎの手てに因よりて善ぜんに變へんぜんことを祈いのり給たまへ。

ハリストス王わうを生うみし女王によわう童貞女どうていぢよよ、慾よくに由よりて傴かゞみたる我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。信者しんじやの救すくひなる者ものよ、信しんを以もつて我われを堅かためて、救すくひの道みちに向むかはしめ給たまへ。

光榮 無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢより生うまれし主しゆの前まへに我わが爲ために祈き禱者たうしやと爲なりて、我われに罪債おひめの赦ゆるしを與あたへ、神かみの國くにに入いること、福樂ふくらくに分ぶんあること、及および光ひかりに與あづかることを得えしめ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつなるマリヤ、婚姻こんいんに與あづからざる潔いさぎよき童貞女どうていぢよ、仁じん慈じの無む量りやうなる者もの、身みにて神かみを生うみし者ものよ、我われ等らを凡およその憂患うれひ及および罪つみより脫のがれしめんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

第八歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよの產さんは敬虔けいけんの少者せうしやを爐ゐろりの中うちに守まもれり。其時そのときに預あらかじめ徵しるされ、今いま已すでに應かなひし此この產さんは全ぜん世せ界かいに勸すゝめて爾なんぢに歌うたはしむ、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

我われ放蕩はうたうにして生命いのちを費つひやし、凡およその汚穢けがれを行おこなひし者ものは審判しんぱんに戰をのゝき、詰問きつもんに戰をのゝき、吾わが對こたへと定罪ていざいとに戰をのゝく。潔いさぎよき者ものよ、我わが不ふ當たうなる靈たましひを憐あはれみて、死しの前まへに我われに光くわう照せうを與あたへ給たまへ。

婚姻こんいんに與あづからざる神かみの母はゝよ、我われ救すくひの恃賴たのみを悉ことごとく爾なんぢに負おはしめて、常つねに爾なんぢを援助たすけの爲ために呼よぶ、我われを諸もろもろの憂患うれひ及および敵てきの攻擊こうげきより救すくひ、我わが惡あくの縲絏なはめを解ときて、我われを永遠えいゑんの幽暗くらやみより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢは諸天しよてん使しより上うへなる者ものと現あらはれて、言いひ難がたく身みにて神かみを生うみ給たまへり。童貞女どうていぢよよ、彼かれに祈いのりて、我われを肉體にくたいの誘惑いざなひより上うへなる者ものと爲なして、將しやう來らいの審判しんぱん及および永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめんことを求もとめ給たまへ。

今も 神聖しんせいなる水みづの泉いづみを胎内たいないに有たもちし潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われに之これを滿みてて、我わが罪つみの汚けがれを滌あらひ、我われを救すくひの生命いのちに導みちびき、我わが不ふ當たうなる靈たましひの煩悶もだえを斥しりぞけ、我われを惡あく鬼きより救すくひ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 凡およそ地ちに生うまるる者ものは聖神せいしんに照てらされて樂たのしみ、形かたちなき智慧ちゑの性せいも祝いはひ、神かみの母はゝの聖せいなる祭まつりを尊たふとみて呼よぶべし、至いたりて福さいはひなる潔いさぎよき生しやう神女しんぢよ、永貞えいてい童女どうぢよよ、慶よろこべよ。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの力ちからある祈き禱たうを以もつて我わが汚けがれたる靈たましひと體からだとの罪つみの基もとゐを壞やぶり給たまへ。嗚呼あゝ純じゆん潔けつなる者ものよ、救すくひの醫治いやしとして我われに主宰しゆさいを畏おそるる畏おそれを與あたへ給たまへ。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢは我われの光くわう照せう、爾なんぢは我われの贖あがなひ及および喜悅よろこび、爾なんぢは我われの保護ほご者しや、爾なんぢは我われの光くわう榮えい、美譽ほまれ、恃賴たのみ、及および我わが拯救すくひなり。我われ熱信ねつしんに爾なんぢに伏拜ふくはいして呼よぶ、我われ爾なんぢの不ふ當たうなる僕ぼくを救すくひて、地ぢ獄ごくの門もんより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 至し仁じんなる救世主きうせいしゆを生うみし潔けつ淨じやう無む玷てんなる者ものよ、我われ爾なんぢの僕ぼくを宥なだめて救すくひ給たまへ、我われを痛つう悔くわいの途みちに向むかはしめ、凶きよう惡者あくしやの誘惑いざなひを我われより退しりぞけ、其その網あみより我われを出いだし、永遠えいゑんの火ひより我われを脫のがれしめ給たまへ。

今も 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、曾かつて身みなき言ことばは爾なんぢより身みを衣きて、人ひととして世よに在いまし、慈じ憐れんなる者ものとして、昔むかし衆しゆう人じんを苦くるしめし者ものを神かみの力ちからを以もつて斃たふし給たまへり。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第四調

金曜日

 金曜日の早課

第一の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第四調。

爾なんぢは己おのれの尊たふとき血ちを以もつて我われ等らを律法りつぱふの詛のろひより贖あがなへり、十じふ字架じかに釘ていせられ、戈ほこにて刺さされて、人人ひとびとに不死ふしを流ながし給たまへり。我われ等らの救世主きうせいしゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

救世主きうせいしゆよ、イウデヤ人じん爾なんぢを十じふ字架じかに釘ていせしに、爾なんぢは、ハリストス我わが神かみよ、此これを以もつて我われ等らを異い邦はうの中うちより召めし給たまへり。獨ひとり人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢは甘あまんじて手てを其その上うへに伸のべ、戈ほこにて爾なんぢの脅わきの刺ささるるを受うけ給たまへり、爾なんぢの多おほくの慈じ憐れんに由よりてなり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよ、ハリストス神かみの母はゝよ、爾なんぢが己おのれの子こ及および神かみの甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせらるるを見みし時とき、劍つるぎは爾なんぢの至し聖せいなる靈たましひを貫つらぬけり。至いたりて讚さん美びたる者ものよ、我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを絕たえず彼かれに祈いのり給たまへ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第四調。

ハリストス我わが神かみよ、爾なんぢを謗そしり、我われ等らを嚇おどす諸敵しよてきが我われ等らを服ふくせしめざる先さきに速すみやかに我われ等らを助たすけ給たまへ。獨ひとり人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかを以もつて我われ等らと戰たゝかふ者ものを滅ほろぼし給たまへ、我わが諸敵しよてきが正敎者せいけうしやの信しんは生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに因よりて如何いかなる力ちからを有たもつかを悟さとらん爲ためなり。

句 神かみ我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢの神聖しんせいなる脅わきが戈ほこにて傷きずつけられしに、見みえざる敵てきの武器ぶきは悉ことごとく盡つきて、其その惡業あくげふの凡およその暴虐しへたげは息やみたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの救すくひを施ほどこす苦くるしみに伏拜ふくはいして、爾なんぢの神聖しんせいなる定制ていせいを讚榮さんえいす。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

今日こんにち天てん使しの軍ぐんは受難者じゆなんしやの記き憶おくに於おいて來きたりて、信者しんじやの意念おもひを照てらし、恩おん寵ちようを以もつて世せ界かいを耀かゞやかす。神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 神かみの言ことばよ、爾なんぢの至し淨じやうなる母はゝは爾なんぢが十じふ字じ架かに擧あげられしを見みし時とき、母はゝとして哭なきて云いへり、吾わが子こよ、斯この新あらたにして驚おどろくべき奇き跡せきは何なにぞや、如何いかんぞ爾なんぢ萬ばん衆しゆうの生命いのちは慈じ憐れんの者ものとして死し者しやを活いかさんと欲ほつして死しを嘗なむる。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第四調。

至し仁じんなる言ことばよ、爾なんぢは無む量りやうの慈じ憐れんに因よりて我われ等らの爲ために甘あまんじて非義ひぎなる裁判さいばんと十じふ字架じかと死しとを忍しのび給たまへり、誘惑いざなひに由よりて朽きう壞くわいに陷おちいりし衆しゆう人じんを定罪ていざい及および古いにしへの詛のろひより解とかん爲ためなり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの十じふ字架じかに伏拜ふくはいす。

ハリストス言ことばよ、爾なんぢ義ぎの日ひが木きの上うへに懸かけられしを見みて、日ひは光ひかりを晦くらまし、造物ざうぶつは震ふるひ、死し者しやは寢ねむりより覺さむるが如ごとく疾とく墓はかより起おきて、爾なんぢの神聖しんせいなる權能けんのうの光くわう榮えいを歌か頌しようせり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 ハリストスよ、爾なんぢの無む玷てんなる母はゝは爾なんぢが十じふ字架じかに擧あげらるるを見みし時とき、母はゝとして哭なきて斯かく云いへり、吾わが子こよ、斯この新あらたにして驚おどろくべき奇き跡せきは何なにぞや、我わが甘愛かんあいなる光ひかりよ、如何いかんぞ不ふ法はふの會くわいは爾なんぢ萬ばん衆しゆうの生命いのちを十じふ字架じかに釘ていする。

尊貴にして生命を施す十字架の規程カノン、其冠詞は、十字架に釘せられしハリストスは迷を解き給ふ。イオシフの作。第四調。

第一歌頌

イルモス 我わが口くちを開ひらきて、聖神せいしんに滿みてられ、言ことばを女王によわう母はゝに奉たてまつり、樂たのしみ祝いはひ、喜よろこびて其その奇き迹せきを歌うたはん。

恒忍ごうにんにして慈じ憐れんなる主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに神聖しんせいなる手てを伸のべて、亾ほろぶる世せ界かいを爾なんぢの權能けんのうを知しる智ち識しきに召めし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの仁じん慈じを崇あがめ讚ほむ。

無む原げんなる言ことばよ、モイセイは蛇へびを擧あげて、爾なんぢの神聖しんせいなる十じふ字架じかに釘ていせらるることを預よ象しやうせり、之これに由よりてアダムの墮だ落らくの緣由ゆゑんと爲なりし毒どく惡あくの蛇へびは墮だ落らくせり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは今いま諸聖者しよせいしやの光ひかりの中うちに居をるを得えて、パワェルの言いひし如ごとく、震ふるふべからざる國くにを受うけて、ハリストスの光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なれり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らの忍しのび難がたき苦くるしみの浪なみに漾たゞよはさるる舟ふねは沈しづまざりき、蓋けだし萬有ばんいうの王わうは舵かぢを操とりて、之これを穩おだやかなる港みなとに到いたらしめ給たまへり。

生神女讚詞 女宰ぢよさい童貞女どうていぢよよ、爾なんぢがハリストスの十じふ字架じかに釘ていせられて、戈ほこにて刺ささるるを見みし時とき、シメオンの言いひし如ごとく、劍つるぎは爾なんぢの心こゝろを貫つらぬけり、故ゆゑに爾なんぢは哭なきて痛いたみを忍しのび給たまへり。

又至聖なる生神女の規程カノン、第四調。

第一歌頌

イルモス同上

潔いさぎよき神かみの母はゝよ、爾なんぢは獨ひとり爾なんぢの諸僕しよぼくの轉達てんたつ、避所かくれが、及および保護ほごなり、故ゆゑに我われ等ら俯ふ伏ふくして爾なんぢに呼よぶ、女宰ぢよさいよ、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われ等らを救すくひ給たまへ。

至し聖せいなる言ことばを生うみし女宰ぢよさい、天てん上じやうの軍ぐんよりも聖せいなる至いたりて潔いさぎよき少女せうぢよよ、我わが汚けがれたる心こゝろを聖せいにし給たまへ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは陷おちいりし者ものの喚よび起おこし、立たてる者ものの堅固かためなり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、女宰ぢよさいよ、罪つみに由よりて墮だ落らくせし吾わが心こゝろを直なほくし給たまへ、我わが爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

神かみの母はゝよ、我われ憂うれひに由よりて死しして、行動かうどうなく臥ふす者ものに爾なんぢの援助たすけの手てを伸のべて、起おこして、我われを神聖しんせいなる樂たのしみに滿みてらるる者ものと爲なし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよ、生せい活くわつにして盡つきざる泉いづみよ、祝いはひて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ者ものの靈たましひを固かため、彼かれ等らに爾なんぢが神妙しんめうなる光くわう榮えいの中うちに榮えい冠くわんを冠かうむらしめ給たまへ。

ハリストスよ、至いたりて不ふ法はふなる人人ひとびとは爾なんぢ、神かみの羔こひつじたる者もの、慈じ憐れんに由よりて愛あいする羊ひつじを殘忍ざんにんなる狼おほかみより救すくはんと欲ほつする者ものを羊ひつじの如ごとく屠ほふりの爲ために牽ひけり。

主しゆよ、爾なんぢは義ぎを以もつて全ぜん地ちを審判しんぱんする者ものにして、審判者しんぱんしやの前まへに立たちて非義ひぎなる審判しんぱんを受うけたり、詭き譎けつなる世せ君くんの奴ど隷れいと爲なりし我われを自じ由いうにせんと欲ほつする者ものにして、頰ほゝを批うたるるを忍しのび給たまへり。

致命者讚詞 聖せいなる者ものは法はふの爲ために苦くるしみを受うけて、不ふ法はふなる敵てきを辱はづかしめ、衆しゆう人じんの復ふく活くわつの爲ために甘あまんじて殺ころされて、死しの緣由ゆゑんたる蛇へびに勝かてり。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやは苦くるしみを歷へて地ち上じやうより擧あげられて、榮えい福ふくに移うつり、有形いうけいの者ものにして無む形けいの者ものに合あはせられて、言いひ難がたき歡喜よろこびに滿みてられたり。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる女宰ぢよさい童貞女どうていぢよよ、爾なんぢより實じつにエワの爲ために更新あらたまりは現あらはれたり、卽すなはち神かみ、身みにて生うまれ、十じふ字架じかに擧あげられて、惡あく鬼きを斃たふす者ものなり。

又 イルモス同上

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ度生いのちの海うみに烈はげしく溺おぼらさるる者ものを憐あはれみて、救すくひの穩おだやかなる港みなとに向むかはしめ給たまへ、我われ爾なんぢを惟一ゆゐいちの恃賴たのみとして獲えたればなり。

生しやう神女しんぢよよ、祈いのる、爾なんぢ善ぜんなるに因よりて爾なんぢの中うちに在ある光ひかりを以もつて我わが智慧ちゑの幽暗くらやみを散さんじ、宏くわう恩おん慈じ憐れんなるに因よりて我われを痛つう悔くわいの範のりに效ならはしめ給たまへ、我わが救すくはれて爾なんぢを讚さん美びせん爲ためなり。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの慈じ憐れんの注そゝぐを以もつて我わが諸慾しよよくの熾炭やけずみを滅けし給たまへ。金こがねの燈臺とうだいたる純じゆん潔けつなる者ものよ、我わが心こゝろの滅きえたる燈ともしびを點てんじ給たまへ。

神かみの母はゝよ、爾なんぢ慈じ憐れんなる者ものとして慾よくに由よりて甚はなはだしく病やめる我わが不ふ當たうの靈たましひを顧かへりみて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを救すくひ給たまへ、我わが最もつとも善ぜんなる生命いのちを獲えて爾なんぢを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

第四歌頌

イルモス 預よ言者げんしやアウワクムは爾なんぢ至し上じやう者しやが童貞女どうていぢよより身みを取とり給たまふ神かみの測はかり難がたき定制ていせいを洞察みとほして籲よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

仁愛じんあいなる主しゆよ、爾なんぢは我われを罪つみの縛なはめより解とかん爲ために甘あまんじて縛しばられ、罪犯者ざいはんしやの如ごとく十じふ字架じかに死しし給たまへり。光くわう榮えいは爾なんぢの大おほいなる慈じ憐れんに歸きす。

神かみの言ことばよ、爾なんぢは傷創きず及および耻はづべき死しを忍しのびて、慾よくに由よりて殺ころされたる地ち上じやうの者ものの性せいを不死ふしと爲なし給たまへり、光くわう榮えいは爾なんぢの大おほいなる慈じ憐れんに歸きす。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは至し聖神せいしんに因よりて神かみの悅よろこびを嗣つがんと欲ほつして、欣よろこばしき靈たましひを以もつて傷創きず及および苦くるしき死しを忍しのびて、凶きよう惡者あくしやに傷きずつけたり。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは手て及および首くびを斷たたれ、舌したを截きられ、目めには光ひかりを奪うばはれ、百ひやく體たいは寸斷すんだんせられたれども、神かみより斷たたれずして止とゞまれり。

生神女讚詞 主宰しゆさいよ、爾なんぢ戈ほこにて刺さされしに、アダムの罪つみの書券かきつけは破やぶられたりと、生しやう神女しんぢよは主しゆの十じふ字架じかの側かたはらに立たちて、苦くるしみの中うちに呼よべり。

又 イルモス同上

純じゆん潔けつなる神かみの母はゝ、童貞女どうていぢよよ、我われに痛つう悔くわいの光ひかりを輝かゞやかして、吾わが不ふ當たうなる靈たましひの幽暗くらやみを散さんじ、我わが心こゝろの惡あしき思おもひを退しりぞけ給たまへ。

仁じん慈じ寬くわん容ようなる主宰しゆさいを生うみし至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ母はゝよ、慈じ憐れんなる者ものとして、常つねに彼かれに我われ等らを仇敵きうてきより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

祝しゆく讚さんせらるる者ものよ、我われ信しんを以もつて爾なんぢ衆しゆう人じんの潔淨きよめたる者ものに祈いのりて求もとむ、爾なんぢの子こを我わが爲ために慈じ憐れんなる審判者しんぱんしやと爲なし給たまへ、我わが讚歌ほめうたを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ常つねに爾なんぢを扶ふ助者じよしやと有たもちて、畏おそるべき者ものなし、誰たれか爾なんぢの僕ぼくを憂うれへしめんと欲ほつして懼おそれざらん。

第五歌頌

イルモス 萬物ばんぶつは爾なんぢが神妙しんめうの光くわう榮えいに驚おどろかざるなし、爾なんぢ婚配こんぱいを識しらざる童貞女どうていぢよは至し上じやうの神かみを孕はらみ、永遠えいゑんの子こを生うみて、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものに平安へいあんを賜たまへばなり。

救世主きうせいしゆよ、日ひは爾なんぢ日ひたる者ものが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、光くわう線せんを匿かくして輝かゞやくを得えざりき。爾なんぢは入いりて、迷まよひの夜よに寢いぬる者ものを照てらして、爾なんぢの權能けんのうに伏拜ふくはいせしめたり。

主しゆよ、爾なんぢは慈じ憐れんに由よりて十じふ字架じかに釘ていせられて我われを救すくふ、仁じん慈じなる主しゆとして、膽いと醋すとを嘗なめて、我われ等らを誘いざなひて朽きう壞くわいせしめし逸樂いつらくを嘗なむる罰ばつより脫のがれしめ給たまふ。

致命者讚詞 神聖しんせいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは聖神せいしんの溫煖あたゝかきを以もつて迷まよひの冬ふゆを去さらしめ、喜よろこびて安息あんそくの春はるに至いたりて、凡およそ憂患うれひの中うちに在ある者ものを助たすけ給たまふ。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは神聖しんせいなる血ちの雨あめを以もつて全ぜん地ちを潤うるほして、無む神しんの流ながれを涸からせり、故ゆゑに今いま生命いのちの水みづの畔ほとりに樂たのしみて、衆しゆう人じんの爲ために祈いのり給たまふ。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものは身みにて生うみし子この木きに擧あげられしを見みて、淚なみだを流ながして、實じつに彼かれの恒忍ごうにんを奇きとして、其その寬くわん容ようを讚さん美びせり。

又 イルモス同上

純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいよ、我われ諸慾しよよくと惡念あくねんとに殺ころされたる者ものは爾なんぢの慈じ憐れんと爾なんぢの熱切ねつせつなる帲幪おほひと援助たすけとに趨はしり附つく、獨ひとり生命いのちを生うみし者ものよ、吾わが心こゝろを活いかし給たまへ。

光ひかりを賜たまふ主しゆ、神かみ又また人ひとを生うみし至し淨じやうなる女ぢよ君くんよ、我わが昧くらまされたる心こゝろを照てらし給たまへ、母はゝとして彼かれに畏おそるべき日ひの前さきに我われに救すくひを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

純じゆん潔けつにして讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、我わが心こゝろの痛いたみを醫いやし、我わが靈たましひの諸慾しよよくを退しりぞけ、煩悶もだえの黑暗くらやみを散さんじ給たまへ、我わが讚さん美びの歌うたを以もつて爾なんぢ永福えいふくなる者ものを讚さん頌しようせん爲ためなり。

女宰ぢよさいよ、我わが諸敵しよてきの驕おごりを仆たふし給たまへ、我われ獨ひとり爾なんぢを轉達者てんたつしやと倚賴たのみ、及および堅けん固ごなる扶助たすけとして有たもてばなり。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢ我われを護まもりて、諸敵しよてきの諸もろもろの攻擊こうげきより脫のがれしめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 神かみの信者しんじやよ、來きたりて、神かみの母はゝの此この神妙しんめうなる至いたりて尊たふとき祭まつりを祝いはひ、手てを拍うちて、彼かれより生うまれし神かみを讚榮さんえいせん。

仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに釘ていせられて、忍しのびたる苦くるしみを以もつて人類じんるゐの苦くるしみを止とゞめて、衆しゆうを苦くるしみなき生命いのちに至いたらしめ給たまふ。

日ひは光くわう線せんを匿かくし、殿でんの裝さう飾しよくは裂さかれ、地ちは震ふるひ、磐いはは畏おそれに因よりて崩くづれたり、造物主ざうぶつしゆの十じふ字架じかに在あるを見みるに勝たへざればなり。

致命者讚詞 蛇へびは神聖しんせいなる致ち命者めいしやが苦くるしみにて殺ころされ、神かみの恩おん寵ちように因よりて實じつに永遠えいゑんの生命いのちを繼つぐを見みて死ししたり。

致命者讚詞 常つねに生いくる致ち命者めいしやの無む量りやうの大數たいすうよ、爾なんぢ等らは多おほくの苦くるしみを忍しのびて、亦また多おほくの榮えい冠くわんを獲えたり。祈いのる、我わが惡あくの多おほきを退しりぞけ給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる神かみの母はゝ、爾なんぢの產さんを以もつて難なんに遇あひたる衆しゆう造物ざうぶつを救すくひし者ものよ、我われ諸難しよなんの海うみに漾たゞよふ者ものの爲ために港みなとと爲なり給たまへ。

又

イルモス 三日みつかの葬はうむりを預よ象しやうする預よ言者げんしやイオナは鯨くぢらの中うちに在ありて祈いのりて籲よべり、イイスス萬軍ばんぐんの王わうよ、我われを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

義ぎの日ひの雲くもたる女宰ぢよさい、永貞えいてい童女どうぢよよ、我われに痛つう悔くわいの光ひかりを輝かゞやかして、我わが惡あしき思念おもひの雲くもを散ちらし給たまへ。

颶ぐ風ふうに遇あふ者ものの大おほいなる港みなとたる永貞えいてい童女どうぢよよ、我わが諸慾しよよくの烈はげしき浪なみを治をさめ、惡あしき思念おもひの暴風あらしを鎭しづめ給たまへ。

獨ひとり讚さん美びたる女宰ぢよさいよ、我われに傷しやう感かんの飮料のみものを飮のませ、淚なみだの川かはを與あたへ給たまへ、我わが此これを以もつて永遠えいゑんの焰ほのほを滅けさん爲ためなり。

實じつに慈じ憐れんの海うみを生しやうぜし者ものよ、我わが惡あくの荒あれたる海うみを涸からして、我われを神かみの旨むねの港みなとに向むかはしめ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 敬虔けいけんの者ものは造物主ざうぶつしゆに易かへて造物ざうぶつに事つかふることをせざりき、火ひの嚇おどしを勇いさましく踐ふみて、喜よろこび歌うたへり、讚さん美びたる主しゆ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

ハリストスが木きの上うへに擧あげられしに、仇敵きうてきは勝かたれて、甚はなはだしき墮だ落らくを以もつて落おち、曾かつて定罪ていざいせられし者ものは救すくはれて呼よぶ、主しゆ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

ハリストスよ、爾なんぢは木きの上うへに死しして、木きに緣よりて殺ころされたる我われを生いかし、爾なんぢの神聖しんせいなる傷きずにて吾わが心こゝろの傷きずを醫いやし給たまへり。讚さん美びたる主しゆ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

致命者讚詞 聖神せいしんの力ちからを以もつて諸しよ病びやうを醫いやし、惡あく鬼きを人人ひとびとより逐おはんことの恩おん賜しを受うけたる勝かたれぬ致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らの祈き禱たうを以もつて吾わが心こゝろの諸慾しよよくを醫いやし給たまへ。

致命者讚詞 讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らを溺おぼらさんと企くはだてし敵てきは其その役者えきしやと偕ともに爾なんぢ等らの血ちの中うちに溺おぼれたり、惟たゞ爾なんぢ等らは喜よろこびて歌うたふ、主しゆ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは無む玷てんなる聘女よめ、造成主ざうせいしゆの宮みや、耕作かうさくせられざる地ち、火ひの狀さまの寶はう座ざと現あらはれたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢが神かみを生うみし產さんを以もつて人人ひとびとを神成しんせいせし至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、慶よろこべ。

又

イルモス 火ひの中うちに爾なんぢがアウラアムの少者せうしやを救すくひ、義ぎの審判しんぱんを被かうむれるハルデヤ人じんを滅ほろぼしし讚さん美びたる主しゆ、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ厚あつき愛あいを以もつて爾なんぢの聖せいなる帲幪おほひの下したに趨はしり附つく、我われを空むなしく還かへらしむる勿なく、我われに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへて、我われを救すくひ給たまへ、我わが諸敵しよてきの視みて恥はぢを得えん爲ためなり。

神かみの母はゝ・童貞女どうていぢよマリヤよ、我われ惡あくを畏おそれざらん、爾なんぢ我われと偕ともに在いませばなり。我われは無む慙ざんに我われを逐おふ敵てきを逐おひて、爾なんぢの力ちからに堅かためられて之これに勝かたん。

萬有ばんいうの主宰しゆさいを生うみしに由よりて常つねに能よくせざる所ところなき祝しゆく讚さんせらるる者ものよ、我われを逸樂いつらく及および諸慾しよよくの强きやう制せいより解とき給たまへ、我わが喜よろこびて歌うたはん爲ためなり、至し上じやう者しやの寶はう座ざよ、慶よろこべ。

神かみに榮えいせられし至し淨じやうなる者ものよ、我われ爾なんぢの僕ぼくは地ち上じやうに獨ひとり爾なんぢを保護ほご者しや、及および實じつに救すくひを施ほどこす堅けん固ごなる援助たすけと有たもちて、爾なんぢに趨はしり附つく、神かみの母はゝよ、我われを執とらふる者ものの罟あみより救すくひ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよの產さんは敬虔けいけんの少者せうしやを爐ゐろりの中うちに守まもれり。其時そのときに預あらかじめ徵しるされ、今いま已すでに應かなひし此この產さんは全ぜん世せ界かいに勸すゝめて爾なんぢに歌うたはしむ、造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

時ときに由よらざる主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは定てい期きに來きたりて、我われを定てい期きの縲絏なはめより釋とき、甘あまんじて縛しばられて、傲慢がうまんの者ものを解とかれぬ桎梏かせに付わたし、十じふ字架じか及および苦くるしみを以もつて我われを救すくひ給たまふ。故ゆゑに我われ爾なんぢを世世よよに崇あがめ讚ほむ。

ハリストスよ、爾なんぢは甘あまんじて木きに擧あげられて、萬物ばんぶつを己おのれと偕ともに擧あげ給たまへり。讚さん美びたる言ことば、無む原げんなる主しゆよ、爾なんぢは己おのれの苦くるしみを以もつて幽闇くらやみの首しゆ領りやう及および權柄けんぺいを不ふ能のうの者ものと爲なし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに讚ほめ歌うたふ。

致命者讚詞 至いたりて美うるはしき致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは車くるまに於おけるが如ごとく己おのれの血ちに乘じようじて天てん上じやうの居處すまひに升のぼり、ハリストスより當然たうぜんの尊そん貴きを受うけて呼よぶ、主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしや致ち命者めいしやは木きに擧あげられ、穴あなに棄すてられ、猛獸まうじうに畀あたへられ、火ひ及および水みづに投とうぜられて、喜よろこびて歌うたへり、主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる母はゝは衆しゆうに神聖しんせいなる救すくひの勇敢いさみを與あたふるハリストスの木きの上うへに眠ねむりしを見みて、哭なきて呼よべり、此この至いたりて新あらたなる奇き跡せきは何なにぞや、衆しゆうを活いかす者ものは甘あまんじて死しす。

又 イルモス同上

我われ放蕩はうたうにして生命いのちを費つひやし、凡およその汚穢けがれを行おこなひし者ものは審判しんぱんに戰をのゝき、詰問きつもんに戰をのゝき、吾わが對こたへと定罪ていざいとに戰をのゝく。審判者しんぱんしやを生うみし潔いさぎよき者ものよ、其時そのとき我われに臨のぞみて、我われを危き難なんより救すくひ給たまへ。

婚姻こんいんに與あづからざる神かみの母はゝよ、我われ救すくひの恃賴たのみを悉ことごとく爾なんぢに負おはしめて、常つねに爾なんぢを援助たすけの爲ために呼よぶ、我われを諸もろもろの憂患うれひ及および敵てきの攻擊こうげきより救すくひ、我わが惡あくの縲絏なはめを解ときて、我われを永遠えいゑんの幽暗くらやみより脫のがれしめ給たまへ。

神かみの母はゝ童貞女どうていぢよよ、我わが終をはりの時ときに我われを惡あく鬼きの手て、苦くるしき魔ま關くわん、畏おそるべき詰問きつもん、殘忍ざんにんなる世せ君くん、及および永遠えいゑんの定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ。

女宰ぢよさい童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの僕ぼくを凡およその敵てきの惡謀あくぼうより護まもり給たまへ。我われ爾なんぢを帲幪おほひと保護まもり、避所かくれが及および保固かためとして有たもてばなり。獨ひとり人類じんるゐの轉達者てんたつしやよ、我われ爾なんぢに由よりて敵てきの罟あみより脫のがれんことを願ねがふ。

次に生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、躬拜と共に。

第九歌頌

イルモス 凡およそ地ちに生うまるる者ものは聖神せいしんに照てらされて樂たのしみ、形かたちなき智慧ちゑの性せいも祝いはひ、神かみの母はゝの聖せいなる祭まつりを尊たふとみて呼よぶべし、至いたりて福さいはひなる潔いさぎよき生しやう神女しんぢよ、永貞えいてい童女どうぢよよ、慶よろこべよ。

仁愛じんあいなる主しゆよ、爾なんぢは萬ばん衆しゆうを審判しんぱんせんとするものにして、審判しんぱんせられて立たち給たまへり。ハリストス救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは甘あまんじて棘いばらの冠かんむりを冠かうむりて、不ふ順じゆんの棘いばらを根ねより拔ぬき、衆しゆう人じんの爲ために爾なんぢの仁じん慈じを知しる知ち識しきを植うゑ給たまへり。

嗚呼あゝ如何いかんぞ不ふ法はふなる人人ひとびとは媢嫉ねたみに昧くらまされて、爾なんぢ光ひかりを施ほどこす主しゆ、至し義ぎ無む玷てんなる者ものを十じふ字架じかに付わたしたる。爾なんぢの苦くるしみを見みて日ひは晦くらみ、殿でんの裝さう飾しよくは裂さけ、地ちの基もとゐは動うごけり。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らはハリストスの苦くるしみに效ならふ者ものと爲なりて、彼かれと偕ともに國くに及および光くわう照せうを嗣つぎたり。故ゆゑに睿えい智ち者しやよ、爾なんぢ等らを歌うたふ者ものを照てらして、之これを罪つみの暗昧くらやみ及および諸もろもろの誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ。

致命者讚詞 已すでに天てんの居處すまひに入いり、永在えいざいの光くわう榮えいを受うけ、神かみに體合たいがふするに因よりて神成しんせいせられし睿えい智ちにして永えい光くわうなる致ち命者めいしやよ、我われ等ら衆しゆう熱信ねつしんに爾なんぢ等らの至し聖せい至し尊そんなる記き憶おくを尊たふとむ者ものを憶おもひ給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき少女せうぢよよ、愛あいを以もつて爾なんぢを歌か頌しよう讚さん美びする者ものを照てらして、我わが諸慾しよよくの暗昧くらやみを解とき、暴風あらしを鎭しづめ、凶きよう惡者あくしやの誘惑いざなひを退しりぞけ、吾わが皇くわう帝ていに諸敵しよてきに對たいする勝しよう利りを與あたへ給たまへ、爾なんぢの祈き禱たうに因よりてなり。

又 イルモス同上

地ち上じやうに在ある者ものの爲ために實じつに歡喜よろこびを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、慶よろこべ、爾なんぢに趨はしり附つく者ものの救すくひの港みなと及および帲幪おほひよ、慶よろこべ、陷おちいりたる者ものを升のぼせたる潔いさぎよき梯かけはしよ、慶よろこべ、至し福ふくなる生しやう神女しんぢよ、吾わ等らの靈たましひの恃賴たのみよ、慶よろこべ。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの力ちからある祈き禱たうを以もつて我わが汚けがれたる靈たましひと體からだとの罪つみの基もとゐを壞やぶり給たまへ。鳴呼あゝ純じゆん潔けつなる者ものよ、救すくひの醫治いやしとして我われに主宰しゆさいを畏おそるる神聖しんせいなる畏おそれを與あたへ給たまへ。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢは我われの光くわう照せう、爾なんぢは我われの贖あがなひ及および喜悅よろこび、爾なんぢは我われの保護ほご者しや、爾なんぢは我われの光くわう榮えい、美譽ほまれ及および我わが拯救すくひの恃賴たのみなり。我われ熱信ねつしんに爾なんぢに伏拜ふくはいして呼よぶ、我われ爾なんぢの不ふ當たうなる僕ぼくを救すくひて、地ぢ獄ごくの門もんより脫のがれしめ給たまへ。

至し仁じんなる救世主きうせいしゆを生うみし潔けつ淨じやう無む玷てんなる者ものよ、我われ爾なんぢの僕ぼくを宥なだめて救すくひ給たまへ、我われを痛つう悔くわいの途みちに向むかはしめ、凶きよう惡者あくしやの誘惑いざなひを我われより退しりぞけ、其その網あみより我われを出いだし、永遠えいゑんの火ひより我われを脫のがれしめ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに讚頌スティヒラ、第四調。

イイスス我わが救世主きうせいしゆよ、願ねがはくは爾なんぢの十じふ字架じかは我われ等らの爲ために墻かきと爲ならん、蓋けだし我われ等ら信者しんじやは爾なんぢ身みにて其その上うへに釘ていせられて、我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまふ主しゆの外ほかに他たの倚賴たのみを有たもたず。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

主しゆよ、爾なんぢは凡およそ爾なんぢを畏おそるる者ものに記號しるしとして爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかを賜たまへり、爾なんぢは此これを以もつて幽暗くらやみの首しゆ領りやう及および權柄けんぺいを辱はづかしめ、我われ等らを初はじめの福樂ふくらくに升のぼせ給たまへり。故ゆゑに全能ぜんのうのイイスス、我わが靈たましひの救主きうしゆよ、我われ等らは爾なんぢの仁愛じんあいなる定制ていせいを讚榮さんえいす。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

聖せいなる致ち命者めいしやよ、誰たれか爾なんぢ等らが戰たゝかひし善よき戰たゝかひを見みて驚おどろかざらん、如何いかんぞ肉體にくたいに在ありて、ハリストスを承しよう認にんし、十じふ字架じかを武器ぶきとして、肉體にくたいなき敵てきに勝かちたる。故ゆゑに爾なんぢ等らは宜よろしきに合かなひて惡あく鬼きを逐おふ者もの、諸敵しよてきを退しりぞくる者ものと顯あらはれて、常つねに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまふ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 主しゆよ、爾なんぢの潔いさぎよき母はゝは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせられしを見みて、驚おどろきて呼よべり、至し愛あいの子こよ、此この觀みる所ところは何なにぞや、爾なんぢの多おほくの奇き跡せきを樂たのしみたる不ふ順じゆん不ふ法はふの會くわいは斯かく爾なんぢに報むくゆるか。主宰しゆさいよ、光くわう榮えいは爾なんぢの言いひ難がたき寬くわん容ように歸きす。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」、聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、第一時課、其他常例の如し、幷に發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 金曜日の聖体礼儀に

金曜日の眞福詞、第四調。

アダムは木きに緣よりて樂園らくゑんより出いだされ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかの木きに緣よりて樂園らくゑんに入いりたり。彼かれは食しよくして造物主ざうぶつしゆの誡いましめに背そむき、此これは共ともに十じふ字架じかに釘ていせられて、隱かくれたる神かみを認みとめて籲よべり、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

獨ひとり恒忍ごうにんなる主しゆよ、天軍てんぐんは爾なんぢが十じふ字架じかに伸のべられしを見みて、訝いぶかりて慄をのゝき、地ちは震ふるひ、光くわう體たいの華くわ美びは消きえたり。人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢ非義ひぎに定罪ていざいせられしに、定罪ていざいせられしアダムは義ぎとせられたり。我われ爾なんぢの仁じん慈じを讚榮さんえいす。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは髑髏されかうべの處ところに擧あげられて、敵てきの首かしらを碎くだき、木きの上うへに死しして、木きの果みに緣よりて死しせし者ものを活いかして、樂園らくゑんに住すむ者ものと爲なし給たまへり、蓋けだし彼かれ等らは絕たえず爾なんぢの仁じん慈じを讚榮さんえいして呼よぶ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

福ふくたる聖せい致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは武器ぶきとして十じふ字架じかを執とり、勇敢ゆうかんなる思念おもひを以もつて出いでて敵てきと戰たゝかひ、彼かれ等らを滅ほろぼして不ふ朽きうの榮えい冠くわんを冠かうむり、天てん上じやうの光くわう榮えいを獲えて喜よろこぶ。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢ等らを讚さん頌しようす。

光榮 父ちゝ及および聖神せいしんと一體いつたいなる救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは明あきらかに我われ等らに於おける仁じん慈じを顯あらはして、十じふ字架じかに釘ていせられ、海絨かいじうと葦あし、詬辱はづかしめと傷創きずを忍しのび給たまへり、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものを永遠えいゑんの火ひより救すくはん爲ためなり。

今も 神かみの母はゝ至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、處所ところに限かぎられぬ主しゆは處所ところに狹せばめられずして爾なんぢの聖せいなる胎たいに入いり、木きに懸かけられて、世よに生命いのちを流ながし給たまへり。其その人ひとを愛あいする主しゆなるに因よりて、彼かれに我われ等らの肉體にくたいの念おもひを殺ころして、衆しゆうを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

横線 - 『八調経』第四調

 金曜日の晩課

「スボタ」の奉事の始及び晩課と早課との式。此等に關する規定は皆第一調に載す。

「主よ、爾に籲ぶ」に聖致命者と成聖者と克肖者との讚詞スティヒラ、第四調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは仁愛じんあいなる主しゆハリストスの苦くるしみに熱切ねつせつに效ならひて、肉體にくたいを傷創きずと甚はなはだしき苦くるしみと無む數すうの疾痛いたみとに付わたせり、常つねに目めの前まへに樂園らくゑんの神聖しんせいなる樂たのしみ、永生えいせいの糧かて、永久えいきうの光くわう榮えいを觀みたればなり、此これを獲えて爾なんぢ等らを歌か頌しようする者ものの爲ために祈いのり給たまへ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

復上の讚頌スティヒラを誦す。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

聖せいにせられし光くわう榮えいなる福ふくたる諸しよ牧ぼく師しよ、爾なんぢ等らは牧ぼく師し長ちやうハリストス、萬有ばんいうの王わうに效ならふ者ものと爲なりて、殘忍ざんにんなる狼おほかみと鬪たゝかひて、甚はなはだしき患くわん難なんを忍しのび、甘あまんじて己おのれの生命いのちを羊ひつじの爲ために捐すてて、神かみの選えらびたる群ぐんを諸もろもろの害がいより救すくひ給たまふ。

又致命者の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

活いける祭まつり、靈れい智ちなる全燔ぜんぱん、主しゆの致ち命者めいしや、全ぜん備びなる屠殺ほふり、神かみを知しり又また神かみに知しらるる羔こひつじ、其その牢をりに狼おほかみの入いる能あたはざる者ものよ、我われ等らも爾なんぢ等らと偕ともに靜しづかなる水みづの畔ほとりに牧ぼくせられて休いこはんことを祈いのり給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

主しゆよ、爾なんぢの聖人せいじん等らの死しは貴たつとし、蓋けだし彼かれ等らは劍つるぎと、火ひと、嚴寒さむさとに壞やぶられ、己おのれの血ちを流ながして、恃賴たのみを爾なんぢに負おはせたり。故ゆゑに救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らは忍しのびたる後のちに其その功勞こうらうの報むくいとして爾なんぢより大おほいなる惠めぐみを受うけたり。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは救世主きうせいしゆの前まへに勇敢いさみを有たもちて、絕たえず我われ等ら罪人ざいにんの爲ために祈いのりて、諸罪しよざいの赦ゆるし及および我われ等らの靈たましひの爲ために大おほいなる憐あはれみを求もとめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢに因よりて神かみの先せん祖ぞと爲なりし預よ言者げんしやダワィドは爾なんぢに大おほいなる事ことを爲なしし者ものに、爾なんぢの事ことを歌うたひて呼よべり、女王によわうは爾なんぢの右みぎに立たてりと。蓋けだし父ちゝなく爾なんぢより甘あまんじて人ひとの性せいを取とりし神かみハリストス、大おほいにして裕ゆたかなる憐あはれみを有たもつ主しゆは、爾なんぢ母はゝを生命いのちの中ちゆう保はう者しやと現あらはせり、是これ慾よくに朽くちたる己おのれの像かたちを改あらため、山やまの中なかに迷まよひし羊ひつじを獲えて、肩かたに置おき、父ちゝの前まへに攜たづさへ、己おのれの旨むねに協かなはせ、之これを天軍てんぐんに合あはせて、世せ界かいを救すくはん爲ためなり。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。

挿句くづけに致命者の讚頌スティヒラ、第四調。

爾なんぢの諸聖人しよせいじんの記き憶おくの中うちに榮えいせらるるハリストス神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうを納いれて、我われ等らに大おほいなる憐あはれみを垂たれ給たまへ。

聖せいなる致ち命者めいしやの忍耐にんたいを受うけし仁愛じんあいの主しゆよ、我われ等らよりも歌うたを受うけて、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

死者の讚頌スティヒラ

人ひとを愛あいする救世主きうせいしゆよ、死しせし義ぎ人じんの靈たましひと偕ともに爾なんぢが諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめて、彼かれ等らを爾なんぢに在ある福樂ふくらくの生命いのちに護まもり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 滅きえざる燈ともしび、義ぎの寶はう座ざたる至いたりて潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 金曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第四調。

第一歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよより生うまれし主しゆよ、祈いのる、强つよき軍ぐんたる我わが靈たましひの諸慾しよよくを無む慾よくの深處ふかみに沈しづめ給たまへ、我わが鼓つゞみを以もつてするが如ごとく、肉にく情じやうを殺ころすに由よりて凱歌かちうたを爾なんぢに歌うたはん爲ためなり。

至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、我わが不ふ當たうなる靈たましひを諸慾しよよくの汚けがれ、思念おもひの暴浪あらなみ、凶きよう惡者あくしやの矢や、及および敵てきの諸もろもろの攻擊こうげきより救すくひて、我われを永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われを諸罪しよざいの深處ふかみより引ひき上あげて、救世主きうせいしゆハリストス神かみの神聖しんせいなる誡いましめの光ひかりに向むかはしめ、痛つう悔くわいの救すくひの光くわう線せんを我われに輝かゞやかして、永遠えいゑんの生命いのちを與あたへ給たまへ。

光榮 我われ諸慾しよよくの泥ひぢに陷おちいり、凶きよう惡者あくしやの攻擊こうげきに痛いたく壓あつせられて、起たつ能あたはず。女宰ぢよさい童貞女どうていぢよ・母はゝよ、爾なんぢの力ちからを以もつて我われを引ひき上あげて、火ひ及および苦くるしみより我われを救すくひ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつにして讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは不ふ朽きうの泉いづみたるハリストス、不死ふしと恩おん寵ちようとを以もつて人ひとの性せいを飾かざりたる主しゆを生うみて、死しと朽きう壞くわいとを滅ほろぼし給たまへり。

第三歌頌

イルモス ハリストスよ、我われ等らは智慧ちゑと能力ちからと富有とみとを以もつて誇ほこるにあらず、乃すなはち爾なんぢ、父ちゝと一性いつせいなる智慧ちゑを以もつて誇ほこる、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなる者ものなければなり。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、祈いのる、現あらはれて爾なんぢの轉達てんたつを以もつて吾わが靈たましひの暗昧くらやみを拂はらひ、諸罪しよざいの縲絏なはめを截たちて、我われを救すくひ給たまへ。

至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、諸慾しよよくの攻擊こうげきに由よりて動うごける吾わが心こゝろを爾なんぢの仁じん慈じに由よりて神かみを畏おそるる最いと淨きよき畏おそれを以もつて堅かため給たまへ。

光榮 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われ凡およその援助たすけを得えざるに由よりて失望しつばうして、爾なんぢ權能けんのうなる守しゆ護ご者しや及および帲幪おほひに趨はしり附つきたり。求もとむ、我われを爾なんぢの神聖しんせいなる帲幪おほひより退しりぞくる毋なかれ。

今も 女宰ぢよさいよ、爾なんぢは女王によわうとして金繍きんしうの衣ころもに妝よそほはれ、今いま王わう及および神かみの右みぎに立たちて、爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために祈いのり給たまふ。

第四歌頌

イルモス 光くわう榮えいの中うちに神性しんせいの寶はう座ざに坐ざするイイスス神かみは、輕かろき雲くもに乘のるが如ごとく、朽くちざる手てに抱いだかれ來きたりて、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きすと呼よぶ者ものを救すくひ給たまへり。

神福しんぷくなる少女せうぢよよ、我われ煩悶もだえに纒まとはれ、諸慾しよよくに全まつたく昧くらまされ、諸罪しよざいに服役ふくえきせし者ものを解ときて、爾なんぢの子こ我われ等らの神かみに屬ぞくせしめ給たまへ。

無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、生命いのちを生うみし者ものとして、我われ詭き譎者けつしやの惡あくに殺ころされし者ものを活いかし給たまへ、我われ爾なんぢに趨はしり附つきたればなり。純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、慈じ憐れんの者ものとして、我われ墮だ落らくの深處ふかみに沈しづみたる者ものを引ひき上あげ給たまへ。

光榮 我われ無む量りやうの逸樂いつらくの墓はかに臥ふして、煩悶もだえと怠惰おこたりとに纒まとはる。衆しゆう人じんの再さい興こうを生うみし慈じ憐れんなる童貞女どうていぢよよ、我われを活いかして救すくひ給たまへ。

今も 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、昔むかし預よ言者げんしやは爾なんぢを神聖しんせいなる山やま、諸德しよとくの蔭かげに蔽おほはるる者ものと名なづけたり、是これより救すくひを施ほどこす言ことばは現あらはれて、我われ等らの靈たましひを改あらため造つくりて照てらし給たまふ。

第五歌頌

イルモス ハリストスよ、不ふ虔けんの者ものは爾なんぢの光くわう榮えいを見みざらん、惟たゞ我われ等らは夜よより寤さめて、爾なんぢ神かみの獨生どくせい子し、父ちゝの光くわう榮えいの輝煌かゞやき、人ひとを愛あいする主しゆを崇あがめ歌うたふ。

純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、願ねがはくは我わが卑微ひびなる靈たましひは爾なんぢの子こを畏おそれて、中ちゆう心しんより彼かれの誡いましめを行おこなふを樂たのしみと爲なさん。至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて之これに導みちびき給たまへ。

慈じ憐れんにして純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいよ、吾わが心こゝろの無智むちを退しりぞけて、我わが慾よくの靈たましひに全心ぜんしんを以もつて贖しよく罪主ざいしゆを讚ほめ揚あぐるを得えしめ給たまへ。

光榮 慈じ憐れんにして至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我わが靈たましひを眸子ひとみの如ごとく爾なんぢの翼つばさの庇蔭おほひの下したに護まもりて、惡あく鬼きの誘惑いざなひ及および苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、現あらはれて我われ爾なんぢの僕ぼくを諸慾しよよくの攻擊こうげき及および惡あく鬼きより脫のがれしめ給たまへ、我われ爾なんぢを有能いうのうなる守しゆ護ご者しや、及および耻はぢを得えざる轉達者てんたつしやとして得えたればなり。

第六歌頌

イルモス 三日みつかの葬はうむりを預よ象しやうする預よ言者げんしやイオナは鯨くぢらの中うちに在ありて祈いのりて籲よべり、イイスス萬軍ばんぐんの王わうよ、我われを淪滅ほろびより救すくひ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、常つねに我われと戰たゝかふ者ものを斃たふし給たまへ。義ぎの日ひの門もんたる神かみの母はゝよ、我わが凶きよう惡あくなる思おもひの雲くもを拂はらひ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、我われに痛つう悔くわいの光ひかりを輝かゞやかして、甚はなはだしき誘惑いざなひに引ひかれて惱なやまさるる爾なんぢの僕ぼくの惡あしき思おもひの雲くもを散さんじ給たまへ。

光榮 至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよ、衆しゆう人じんの堅けん固ごなる轉達者てんたつしや、及および帲幪おほひよ、我わが諸慾しよよくの激はげしき浪なみを鎭しづめて、惡あしき思おもひの暴風あらしを治をさめ給たまへ。

今も 吾わが靈たましひの諸罪しよざいは海うみの砂まさごよりも多おほくなりて、重任おもにの如ごとく我われを壓あつす。爾なんぢ童貞女どうていぢよよ、終をはりの前まへに我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第四調。

我われ等ら信者しんじやは生しやう神女しんぢよを我わが患くわん難なんの中うちに熱切ねつせつなる守しゆ護ご及および扶ふ助者じよしや、神かみの前まへの轉達者てんたつしやとして讚さん頌しようす、我われ等ら彼かれに由よりて朽きう壞くわいより救すくはれたり。

第七歌頌

イルモス 昔むかしアウラアムの少者せうしやはワワィロンに於おいて爐ゐろりの焰ほのほを蹈ふみて、歌うたを以もつて呼よべり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、我われ熱心ねつしんに爾なんぢを籲よぶ、我わが卑微ひびなる心こゝろを護まもりて、我われを火ひの苦くるしみ及および永遠えいゑんの黑暗くらやみより脫のがれしめ給たまへ。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、祈いのる、爾なんぢの子この戈ほこを以もつて我わが諸罪しよざいの書券かきつけを破やぶりて、我わが終をはりの時ときに我われを凡およその敵てきの圍かこみより救すくひ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我わが淚なみだの流ながれ及および爾なんぢの慈じ憐れんの雨あめを以もつて、我わが多おほくの罪つみが惡あく鬼きの行動かうどうに由よりて我わが爲ために備そなへたる爐ゐろりを滅けし給たまへ。

今も 言ことばの母はゝ、獨一どくいつの永貞えいてい童女どうぢよよ、實じつに心こゝろを盡つくして世世よよに爾なんぢを讚ほめ歌うたふ者ものを之これに及およぶ誘惑いざなひと凡およその苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 衆しゆう人じんの贖しよく罪主ざいしゆ全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは降くだりて、焰ほのほの中うちに敬虔けいけんを守まもりし者ものに露つゆを注そゝぎて、歌うたはしめ給たまへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて崇あがめ讚ほめよ。

生しやう神しん童貞女どうていぢよ、神かみの聘女よめよ、我わが病やめる靈たましひを醫いやし、昧くらまされたる智慧ちゑを照てらし、我われを火ひ及および言いひ難がたき永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

我われ無知むちの慾よくに傴かゞめられ、滅亾ほろびの深處ふかみに陷おちいりて、自みづから己おのれを焰ほのほの燃料ぜんれうと爲なせり、生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ爾なんぢの僕ぼくを之これより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 慈じ憐れんの海うみたる贖しよく罪ざい者しや及および主しゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、我わが惡あくの海うみを涸からし、衆しゆう人じんの救世主きうせいしゆを生うみし者ものとして、終をはりの前まへに我わが惡あくの縲絏なはめを解とき給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの胎内たいないより身みを取とりし主しゆ、萬物ばんぶつの宰つかさは爾なんぢを無む玷てんなる母はゝとして榮えいして、爾なんぢをも見みゆると見みえざる悉ことごとくの者ものの女ぢよ君くんと爲なし給たまへり。

第九歌頌

イルモス エワは不ふ順じゆんを病やみて、詛のろひを入いれたり、爾なんぢは、童貞どうてい生しやう神女しんぢよよ、己おのれの產さんにて世せ界かいの爲ために祝しゆく福ふくの華はなを發ひらけり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

胎たいの荒あれたる者ものより生うまれし至し淨じやうなる生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、神聖しんせいなる德とくの果みを結むすばざる我わが心こゝろを、望のぞみを以もつて萬有ばんいうを變易へんえきする主しゆの指麾しきに由よりて果みの繁しげき者ものと爲なし給たまへ、我わが爾なんぢ讚さん美びたる者ものを歌うたはん爲ためなり。

近ちかづき難がたき光ひかりを生うみし至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの光ひかりにて我われを照てらし、我わが諸慾しよよくの雲くもを散さんじ、我われを無む明みやうの闇やみより出いだして、神聖しんせいなる光ひかりを獲えしめ給たまへ、我わが爾なんぢ母はゝ童貞女どうていぢよを歌うたはん爲ためなり。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの慈じ憐れんの注そゝぐを以もつて吾わが心こゝろの汚けがれを滌あらひ、我われに常つねに淚なみだの流ながれ、諸慾しよよくの河かはを停とゞめて、苦くるしみより脫のがれしむる者ものを流ながすを得えしめ給たまへ。

今も 善ぜんを愛あいする神かみを生うみし善ぜんを愛あいする生しやう神女しんぢよ、女宰ぢよさいよ、今いま速すみやかに我われを肉體にくたいの惡あしき愛あいより釋ときて、怠惰おこたりに由よりて亾ほろぶる者ものを神かみの旨むねに服役ふくえきせしめ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」。叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び其他常例の如し、幷に發放詞。

gold and luxury under line png e1791525703966 - 『八調経』第四調

土曜日(スボタ)

 「スボタ」の早課

第一の誦文の後に致命者の坐誦讚詞セダレン、第四調。

今日こんにち天てん使しの軍ぐんは受難者じゆなんしやの記き憶おくに於おいて來きたりて、信者しんじやの意念おもひを照てらし、恩おん寵ちようを以もつて世せ界かいを輝かゞやかす。神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

ハリストス我わが神かみよ、爾なんぢの受難者じゆなんしやは十じふ字架じかを武器ぶきとして、惡あくの魁かしらたる敵てきの惡謀あくぼうに勝かち、光くわう體たいの如ごとく輝かゞやきて、人人ひとびとを導みちびき、信しんを以もつて求もとむる者ものに醫治いやしを與あたふ。彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 是これ古こ世せいより隱かくされて、天てん使等しらにも知しられざる祕ひ密みつなり、生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢに因よりて神かみは混こんぜざる合一がふいつを以もつて身みを取とりて、地ちに在ある者ものに現あらはれ、甘あまんじて、我われ等らの爲ために十じふ字架じかを受うけ、此これを以もつて始はじめに造つくられし者ものを復ふく活くわつせしめて、我われ等らの靈たましひを死しより救すくひ給たまへり。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第四調。

主しゆよ、爾なんぢの致ち命者めいしやは其その苦くるしみに由よりて爾なんぢ我わが神かみより不ふ朽きうの榮えい冠くわんを受うけたり、爾なんぢの力ちからを有たもちて、苛虐者くるしめびとを斃たふし、惡あく鬼きの不ふ能のうなる强きやう暴ばうを破やぶりたればなり。彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

句 義ぎ人じんには憂うれひ多おほし、然しかれども主しゆは之これを悉ことごとく免まぬかれしめん。

ハリストスの敎けう會くわいは全ぜん世せ界かいに在ある爾なんぢの致ち命者めいしやの血ちを以もつて緋ひ袞こん衣いの如ごとく妝よそほはれて、彼かれ等らを以もつて爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの民たみに爾なんぢの慈じ憐れんを降くだし、爾なんぢの居處すまひに平安へいあん、我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを賜たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり、彼かれ等らの記き憶おくは世世よよに在あらん。

救世主きうせいしゆよ、暫ざん時じの生いのちより移うつしし者ものを、爾なんぢは仁じん慈じ・全能ぜんのう・獨一どくいつ・仁愛じんあいの主しゆとして、安やすんぜしめて、宏くわう恩おんなるを以もつて彼かれ等らの行おこなひしことを赦ゆるし給たまへ。慈じ憐れんにして人ひとを愛あいする主しゆよ、生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに由よりて爾なんぢの手ての造つくりし者ものを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 純じゆん潔けつ無む玷てんにして婚姻こんいんに與あづからざる童貞女どうていぢよ、獨ひとり歲月さいげつ以い外ぐわいの子こ及および神かみの言ことばを歲月さいげつ以い内ないに生うみし者ものよ、彼かれに尊たふとき聖せい列れつ祖そ、致ち命者めいしや、預よ言者げんしや、及および克肖者こくせうしやと偕ともに我われ等らに潔淨きよめと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

聖致命者、成聖者、預言者、及び克肖者の規程カノン、其冠詞は、欣ばしくハリストスの神聖なる友を崇め讚む。イオシフの作。第四調。

第一歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよより生うまれし主しゆよ、祈いのる、强つよき軍ぐんたる我わが靈たましひの諸慾しよよくを無む慾よくの深處ふかみに沈しづめ給たまへ、我わが鼓つゞみを以もつてするが如ごとく、肉にく情じやうを殺ころすに由よりて凱歌かちうたを爾なんぢに歌うたはん爲ためなり。

尊たふとき敎けう會くわいは常つねに主しゆの受難者じゆなんしやの光くわう明めいなる勳功いさをしに妝よそほはれて、童貞女どうていぢよより輝かゞやきし日ひなるハリストス、迷まよひの幽暗くらやみを散さんじたる主しゆを尊たふとみて讚榮さんえいす。

我われ等ら熱心ねつしんにハリストスの成聖者せいせいしや、善よく人人ひとびとを牧ぼくせし者ものを崇あがめ讚ほめ、又また克肖こくせうにして生いのちを度わたり、神しん゜を以もつて肉體にくたいの逸樂いつらくを殺ころしし者ものの全ぜん會くわいを欣よろこばしく讚ほめ揚あげん。

女をんな等たちは神かみより力ちからを賜たまはり、恩おん寵ちように由よりて修齋しゆさいと苦くるしみの忍耐にんたいとを以もつて敵てきを踐ふみたり。主しゆよ、彼かれ等ら及および爾なんぢの聖せい預よ言者げんしやの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢの慈じ憐れんを衆しゆうに垂たれ給たまへ。

光榮 ハリストスよ、爾なんぢの義ぎなる慮おもんぱかりを以もつて朽きう壞くわいの生命いのちより不ふ朽きうの生命いのちに移うつしし爾なんぢの諸僕しよぼくを義ぎと爲ならしめ、其その諸罪しよざいを顧かへりみずして、彼かれ等らに爾なんぢの衆しゆう義ぎ人じんと偕ともに喜よろこぶを獲えしめ給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、神かみの子こは我われ等らを初はじめの定罪ていざいより贖あがなはんと欲ほつして、甘あまんじて亦また爾なんぢの子こと爲なれり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに由よりて義子ぎしと爲なりて、天てんの父ちゝを祝しゆく讚さんして爾なんぢを歌うたふ。

又死者の規程カノン、月課經の規程なき時に序を逐ひて之を歌ふ、其冠詞は、終を記念して第四の規程。第四調。

第一歌頌

イルモス 古いにしへのイズライリは足あしを濡ぬらさずして海うみの紅くれなゐの淵ふちを渡わたり、野のに於おいてモイセイの十じふ字じ形かたの手てにてアマリクの力ちからに勝かてり。

附唱 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの右みぎの手てを執とりて、彼かれ等らを不死ふしの草くさ場ばに導みちびきて、彼かれ等らに爾なんぢの華くわ美びを觀みるを得えしめ給たまへ、受難者じゆなんしや致ち命者めいしやの祈き禱たうに由よりてなり。

附唱 主しゆよ、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。

ハリストスよ、信しんを以もつて移うつりし者ものに爾なんぢの言いひ難がたき福ふくたる光くわう榮えいを嗣つぐを得えしめ、其その諸罪しよざいを顧かへりみずして、爾なんぢの血ちの灌そゝがるるに由よりて、恩おん寵ちようを以もつて彼かれ等らを義ぎと爲ならしめ給たまへ。

光榮 生いのちを施ほどこす爾なんぢの死しを以もつて殺ころす者ものを殺ころししハリストス神かみよ、受うけし所ところの爾なんぢの信しんなる僕ぼくに今いま爾なんぢに在ある生命いのちを與あたへて、親みづから彼かれ等らを安やすんぜしめ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、ハリストスは神かみの子ことして至し高かうなる華くわ美びを以もつて美うるはし、爾なんぢより身みを取とりて木きの上うへに懸かけられし者ものとして、華くわ美びなくして衆しゆう人じんの爲ために死しを受うけ給たまへり。

第三歌頌

イルモス 强つよき者ものの弓ゆみは弱よわみ、弱よわれる者ものは力ちからを帶おびたり、故ゆゑに我わが心こゝろは主しゆの中うちに堅かためられたり。

勝しよう利りを獲えたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは羔こひつじの如ごとく屠ほふられて、衆しゆう人じんの贖あがなひの爲ために屠ほふられし羔こひつじ及および神かみの言ことばハリストスに獻けんぜられたり。

聖せいにせられし機き密みつ者しやよ、爾なんぢ等らは神かみの口くちと爲なりて、聖せいなる敎をしへを以もつて人人ひとびとを照てらして、不ふ當たうなる者ものの中うちより正當せいたうの者ものを引ひき出いだせり。

克肖者こくせうしやの會くわいは節制せつせいに因よりて竭つきざる糧かてを獲え、天てんに升のぼりて、神かみの光くわう榮えいを見みるを樂たのしむ。

光榮 ハリストスよ、信しんに於おいて移うつしし衆しゆう人じんを爾なんぢの諸聖人しよせいじんの祈き禱たうに因よりて安やすんぜしめて、其その生しやう涯がい行おこなひし諸罪しよざいを顧かへりみる毋なかれ。

生神女讚詞 身みにて童貞女どうていぢよより生うまれて、女をんなの會くわいを天てん使しの會くわいに合あはせし神かみに我われ等ら讚さん美びを奉たてまつらん。

又

イルモス ハリストスよ、我われ等らは智慧ちゑと能力ちからと富有とみとを以もつて誇ほこるにあらず、乃すなはち爾なんぢ父ちゝと一性いつせいなる智慧ちゑを以もつて誇ほこる、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなる者ものなければなり。

偶像ぐうざうの迷まよひに勝かちし致ち命者めいしやは今いま主宰しゆさい神かみに先さきに終をはりし者ものに神聖しんせいなる安息あんそくを賜たまはんことを祈いのる。

主宰しゆさいよ、移うつしし爾なんぢの諸僕しよぼくに自おのづから旋まはる劍つるぎを過すぎて、生命せいめいの樹きに與あづかるを得えしめ給たまへ。

光榮 ハリストスよ、爾なんぢの諸僕しよぼくに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまひて、祝いはふ者ものの淸きよき聲こゑのある樂園らくゑんに彼かれ等らを住すまはせ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは神聖しんせいなる產さんに童貞どうていを合あはせ給たまへり、萬物ばんぶつの造成主ざうせいしゆ、其その旨むねに萬ばん衆しゆうの服ふくする所ところの者ものを言いひ難がたく生うみたればなり。

第四歌頌

イルモス 光くわう榮えいの中うちに神性しんせいの寶はう座ざに坐ざするイイスス神かみは、輕かろき雲くもに乘のるが如ごとく、朽くちざる手てに抱いだかれ來きたりて、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きすと呼よぶ者ものを救すくひ給たまへり。

致ち命者めいしやの至いたりて聖せいにせられし會くわいは光くわう榮えいを獲え、己おのれの百ひやく體たいを以もつて嚴おごそかに主しゆ、天軍てんぐんに讚榮さんえいせらるる者ものを榮えいして、我われ等らが凡およその憂患うれひより救すくはれんことを祈いのり給たまふ。

神聖しんせいなる成聖者せいせいしやよ、爾なんぢ等らは無む形けいの光ひかりにて輝かゞやく智慧ちゑを有たもちて、凡およその迷まよひの夜よを散さんじ、眞實しんじつの敎をしへを以もつて神かみの選えらびたる群ぐんをハリストスを知しる智ち識しきに導みちびき給たまへり。

克肖者こくせうしやの大數たいすうは妝よそほはれ、神聖しんせいなる女をんなの會くわいは榮えいせられ、聖せいなる諸しよ預よ言者げんしやは尊そん貴きを得えて、天てん使しの品ひん位ゐに合あはせられて喜よろこぶ。

光榮 天てん使しの同どう住ぢゆう者しやと爲なりし聖せいなる致ち命者めいしやよ、寢ねむりし衆しゆう人じんの爲ために寬宥なだめと、諸罪しよざいの全まつたき赦免ゆるしと、神聖しんせいなる樂園らくゑんに入いることとを求もとめ給たまへ。

生神女讚詞 產さんの後のちに爾なんぢを不ふ朽きうなる童貞女どうていぢよと護まもりし主しゆは爾なんぢを環めぐりて立たてる悉ことごとくの童女どうぢよを榮えいせり。彼かれ等らと偕ともに我われ等らの靈たましひが凡およその憂患うれひ及および災禍わざはひより救すくはれんことを絕たえず祈いのり給たまへ。

又

イルモス 敎けう會くわいは爾なんぢ義ぎの日ひが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、竝ならび立たちて正たゞしく呼よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

致ち命者めいしやは光くわう體たいの如ごとく現あらはれて、敎けう會くわいの天てんを照てらし、救世主きうせいしゆハリストスに寢ねむりし者ものに寬宥なだめを賜たまはんことを求もとむ。

爾なんぢの諸僕しよぼくは爾なんぢの十じふ字架じかを能のう力りよくの杖つゑと有たもちて、世よの海うみを渡わたれり。主しゆよ、彼かれ等らを爾なんぢの山やま、爾なんぢの聖所せいしよと爲なしし所ところに住すまはせ給たまへ。

光榮 主宰しゆさいよ、爾なんぢが選えらびて受うけし所ところの爾なんぢの諸僕しよぼくを、慈じ憐れんなる主しゆとして義ぎ人じんの靈たましひの在ある處ところの實じつに愛あいすべき住所すまひに入いるるを喜よろこび給たまへ。

今も 神かみの母はゝよ、死しせし者もの及および生いける者ものを司つかさどる主しゆは爾なんぢより身みを取とりて人ひとと爲なり、不死ふしにして、身みにて死しを忍しのびて、死しの力ちからを壞やぶり給たまへり。

第五歌頌

イルモス 我わが主しゆよ、爾なんぢは光ひかり、信しんじて爾なんぢを崇あがめ歌うたふ者ものを闇くらき無智むちより引ひき出いだす聖せいなる光ひかりにして、世せ界かいに來きたり給たまへり。

十じふ字架じかに擧あげられ、刃は輪ぐるまに壞やぶられ、百ひやく體たいを寸斷すんだんせられし堅けん固ごなる致ち命者めいしやは神かみより斷たたれざる者ものと現あらはれたり。

成聖者せいせいしやよ、爾なんぢ等らは愼つゝしみて爾なんぢ等らに委ゆだねられたる群ぐんを牧ぼくし、信者しんじやの救きう者しやと爲なりて、之これを羔こひつじ及および主宰しゆさいの前まへに攜たづさへたり。

克肖者こくせうしやよ、爾なんぢ等らは世よの紛擾みだれに離はなれ、心こゝろを諸慾しよよくより平安へいあんに護まもりて、萬ばん衆しゆうの神かみの子こと爲なれり。

光榮 神聖しんせいなる預よ言者げんしや及および神かみの悅よろこびを獲えたる女をんなの會くわいよ、先さきに寢ねむりし者ものの爲ために平安へいあんを求もとめ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、神かみは爾なんぢの内うちに入いりて、人人ひとびとを己おのれの神聖しんせいなる光くわう榮えいの住所すまひと爲なし給たまへり。

又 イルモス同上

主しゆよ、爾なんぢは異い能のうを以もつて致ち命者めいしやを榮えいし給たまへり、仁じん慈じなる主しゆとして、彼かれ等らに由よりて先さきに寢ねむりし者ものを安やすんぜしめ給たまへ。

慈じ憐れん多おほき主しゆよ、先さきに死しせし者ものに不ふ朽きうの生命いのち、美うるはしき喜悅よろこび、絕たえざる歡樂たのしみを與あたへ給たまへ。

光榮 獨ひとり仁じん慈じにして仁じん慈じの泉いづみなる主しゆよ、信しんありて爾なんぢを識しりて生いのちを終をへし者ものを安やすんぜしめ給たまへ。

今も 神かみの母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを歌うたひて、愛あいを以もつて爾なんぢを讚揚さんやうす、爾なんぢに緣よりて幽闇くらやみに在ある者ものに言いひ難がたく近ちかづく難がたき光ひかりは輝かゞやけり。

第六歌頌

イルモス 我われ海うみの深處ふかみに至いたり、多おほくの罪つみの暴風あらしは我われを沈しづめたり。慈じ憐れんの主しゆよ、神かみなるに因よりて、我わが生命いのちを深處ふかみより引ひき上あげ給たまへ。

致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは最いと尊たふとき石いしとして地ちに投なげられ、邪敎じやけうの造構たてものを悉ことごとく倒たふして、自みづから神かみの殿でんと爲なりたり。

成聖者せいせいしや、諸しよ義ぎ人じん、及および克肖者こくせうしや、ハリストスの群ぐんを護まもる者ものよ、爾なんぢ等らは凡およそ爾なんぢ等らに趨はしり附つく者ものを諸敵しよてきの苛虐しへたげより救すくひ給たまふ、故ゆゑに讚さん美びせらる。

女をんなの大數たいすうは諸しよ預よ言者げんしやの言ことばに遵したがひて、苦くるしみと齋ものいみとを以もつて、童貞女どうていぢよより輝かゞやきし神かみ言ことばの悅よろこびを得えたり。

光榮 衆しゆう死し者しやの生命いのちたる慈じ憐れん多おほき主しゆよ、信しんを以もつて我われ等らより爾なんぢ造物主ざうぶつしゆに移うつりし者ものを爾なんぢの諸聖人しよせいじんと偕ともに光ひかりの中うちに入いれ給たまへ。

生神女讚詞 少女せうぢよよ、我われ口くちと舌したと心こゝろとを以もつて爾なんぢ我わが神かみの尊たふとき母はゝを讚揚さんやうす。爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われを永遠えいゑんの定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ。

又

イルモス 憐あはれみに由よりて爾なんぢの脅わきより流ながれし血ちにて惡あく魔まの祭まつりの血ちより淨きよめられし敎けう會くわいは爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、讚揚ほめあげの聲こゑを以もつて爾なんぢを祭まつらん。

救世主きうせいしゆよ、願ねがはくは自おのづから旋まはる劍つるぎは爾なんぢの神聖しんせいなる脅わきを刺さしし戈ほこを見みて、爾なんぢの受難者じゆなんしやの祈き禱たうに由よりて、爾なんぢの諸僕しよぼくより退しりぞかん。

我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは木きに懸かけられて樂園らくゑんを啓ひらき給たまへり、信しんに於おいて移うつされし者ものを其中そのうちに入いれて、爾なんぢの生命いのちに與あづかる者ものと爲なし給たまへ、爾なんぢは慈じ憐れんの主しゆなればなり。

光榮 主宰しゆさいよ、敬虔けいけんにして死しを以もつて爾なんぢに移うつる者ものに生命せいめいの草くさ場ばに樂たのしむを得えしめて、彼かれ等らを古こ世せいよりの諸しよ義ぎ人じんの數かずに加くはへ給たまへ。

今も 言ことばは神かみとして見みえざる者ものなり、童貞女どうていぢよ、婚姻こんいんに與あづからざる少女せうぢよより身みを取とりて見みゆる者ものと爲なり、己おのれの死しを以もつて死しを滅ほろぼし給たまへり。

第七歌頌

イルモス 昔むかしアウラアムの少者せうしやはワワィロンに於おいて爐ゐろりの焰ほのほを蹈ふみて、歌うたを以もつて呼よべり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我われ等らは靈たましひの樂たのしみに於おいて同心どうしんに主宰しゆさいハリストスの聖せいにせられし器うつは、敎けう會くわいの墻かき及および柱はしらたる主しゆの致ち命者めいしやを歌か頌しようせん。

ハリストスの成聖者せいせいしや及および衆しゆう克肖者こくせうしやの神聖しんせいなる會くわいは天てん上じやうの軍ぐんと偕ともに喜よろこぶ。ハリストスよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて爾なんぢを歌うたふ者ものを救すくひ給たまへ。

苦くるしみを以もつて耀かゞやき、信しんを以もつて齋ものいみせし女をんな等たちの善ぜんなる忍耐にんたいは不ふ順じゆんを以もつてエワに傷きずつけし者ものを斃たふせり。

光榮 爾なんぢの死しにて地ぢ獄ごくを破やぶり、死しを滅ほろぼしし主しゆよ、信しんに於おいて移うつしし者ものを安やすんぜしめて、樂園らくゑんの住ぢゆう者しやと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 神かみの母はゝ、常つねに祝しゆく讚さんせらるる童貞女どうていぢよよ、昔むかし立法者りつぱふしやは棘いばらを焚やかざる焰ほのほを見みて、爾なんぢの產さんの狀さまを曉さとれり。

又

イルモス アウラアムの少者せうしやはペルシヤの爐ゐろりに在ありて、焰ほのほよりも强つよく敬虔けいけんの愛あいに爇やかれて呼よべり、主しゆよ、爾なんぢが光くわう榮えいの殿でんに於おいて爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

主しゆよ、悉ことごとくの致ち命者めいしやの忍耐にんたい、恒忍ごうにん、及および血ちを贖あがなひとして受うけて、敬虔けいけんに寢ねむりし者ものを爾なんぢの處ところに安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じ寬くわん容ようなる主しゆなればなり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢに移うつされし爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを爾なんぢの冢ちよう子し及および義ぎ人じん等らの數かずに加くはへて、絕たえず爾なんぢ萬有ばんいうの主宰しゆさいを以もつて樂たのしむを得えしめ給たまへ。

光榮 神かみの言ことば贖しよく罪主ざいしゆよ、爾なんぢが今いま受うけし者ものに悅樂たのしみと勇敢いさみと歡喜よろこびとを以もつて爾なんぢを雲くもに迎むかふるを得えしめ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じなる神かみなればなり。

今も 祝しゆく讚さんせらるる神かみの母はゝ童貞女どうていぢよよ、慶よろこべ、蓋けだし爾なんぢに依よりて實じつに死しは滅ほろぼされ、不ふ朽きうの生命いのちは死し者しやに賜たまはりたり。

第八歌頌

イルモス 衆しゆう人じんの贖しよく罪主ざいしゆ全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは降くだりて、焰ほのほの中うちに敬虔けいけんを守まもりし者ものに露つゆを注そゝぎて、歌うたはしめ給たまへり、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて崇あがめ讚ほめよ。

成聖者せいせいしや、預よ言者げんしや、及および致ち命者めいしやは聖せいなる功勞こうらうを終をへて、諸天しよてん使しと偕ともに聖せいなる居處すまひを得えたり、今いま彼かれ等らと偕ともに我われ等ら衆しゆうの爲ために洗淨きよめと大おほいなる憐あはれみとを求もとめ給たまふ。

克肖者こくせうしやは神しん゜に照てらされて、惡あく鬼きの暗昧くらやみを散さんじたり、彼かれ等らと偕ともに神品しんぴん致ち命者めいしや、成聖者せいせいしや、預よ言者げんしや、及および諸しよ義ぎ人じんは讚歌ほめうたを以もつて神かみを讚榮さんえいす。

嘗かつて狂きやう妄ばうにして地ちと海うみとを滅ほろぼさんと誇ほこりし者ものは熱切ねつせつに苦くるしみと齋ものいみとを以もつて神かみに事つかへし女をんなに常つねに踐ふまる。

光榮 ハリストスよ、我われ等らは信しんを以もつて寢ねむりし衆しゆう人じんの爲ために爾なんぢに祈いのる、慈じ憐れんの主しゆとして、彼かれ等らを救すくはるる者ものの會くわいに加くはへて、常つねに呼よばしめ給たまへ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

生神女讚詞 仁じん慈じ慈じ憐れんなる言ことばを生うみし神かみの母はゝ女宰ぢよさいよ、我われに爾なんぢの慈じ憐れんを垂たれて、我われを救すくひ給たまへ、蓋けだし我われ呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

又

イルモス ダニイルは獅子しし穴あなに在ありて手てを伸のべて、獅子ししの口くちを閉とざし、敬虔けいけんの篤あつき少者せうしやは德とくを帶おび、火ひの力ちからを滅けして呼よべり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

主宰しゆさいよ、致ち命者めいしやの禱いのりを納いれて、爾なんぢに於おける信しんを以もつて寢ねむりし者ものの靈たましひを安やすんぜしめて、其その罪つみを顧かへりみる毋なかれ、蓋けだし彼かれ等ら爾なんぢに呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

死しして罪犯者ざいはんしやと偕ともに算かぞへられたれども、死し者しやに不死ふしの生命いのちを流ながしし救世主きうせいしゆよ、復ふく活くわつの望のぞみを以もつて移うつされし爾なんぢの諸僕しよぼくに爾なんぢの國くにを獲えしめ給たまへ、蓋けだし彼かれ等ら爾なんぢに呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

光榮 實じつに常つねに流ながるる仁じん慈じの泉いづみたる救世主きうせいしゆよ、終をはりて朽きう壞くわいの生命いのちを遺すてし爾なんぢの諸僕しよぼくを溫柔をんじうにして天てんの居處すまひに入いれ給たまへ、蓋けだし彼かれ等ら爾なんぢに呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

今も 神かみの聘女よめマリヤよ、爾なんぢは獨ひとり地ち上じやうに最いと潔いさぎよき童貞女どうていぢよ及および夫をつとを識しらざる母はゝと現あらはれたり、蓋けだし女宰ぢよさいよ、爾なんぢは言ことば及および智慧ちゑに超こえて神かみを生うみて、死し者しやの爲ために永遠えいゑんの生命いのちを流ながし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

第九歌頌

イルモス エワは不ふ順じゆんを病やみて、詛のろひを入いれたり、爾なんぢは、童貞どうてい生しやう神女しんぢよよ、己おのれの產さんにて世せ界かいの爲ために祝しゆく福ふくの華はなを發ひらけり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

致ち命者めいしやは神聖しんせいなる賜たまものを見み、己おのれの大おほいなる苦くるしみの爲ために尊そん貴きを受うけて、喜よろこびて、實じつに彼かれ等らを偉ゐ大だいなる勝しよう利り者しやと爲なししハリストスを崇あがめ讚ほむ。

成聖者せいせいしや、神かみの宣傳者せんでんしやよ、爾なんぢ等らは立たてられて人人ひとびとを聖せいにせり。齋ものいみに照てらされたる克肖者こくせうしやよ、爾なんぢ等らは日ひよりも明あきらかに光ひかりて、大おほいなる功業しわざの顯現あらはれを以もつて信者しんじやを輝かゞやかせり。

我われ等らは神品しんぴん致ち命者めいしや、彼かれ等らと偕ともに衆しゆう預よ言者げんしや、克肖者こくせうしや、義ぎ者しや、及および神かみの悅よろこびを得えたる女をんな等たちを讚さん美びして呼よばん、ハリストスよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らの靈たましひを「ゲエンナ」より脫のがれしめ給たまへ。

光榮 ハリストス、獨ひとり大仁だいじん慈じなる主しゆよ、信しんに於おいて爾なんぢに移うつされし者ものの諸罪しよざいを顧かへりみずして、彼かれ等らに善よく爾なんぢに役えき事じせし諸聖人しよせいじんの受うけたる喜よろこびを獲えしめ給たまへ。

生神女讚詞 萬物ばんぶつを持たもつ主しゆを生うみて、天てん上じやうのヘルワィムより上うへなる者ものと顯あらはれし純じゆん潔けつなる生しやう神女しんぢよよ、吾わが智慧ちゑを上うへなる者ものと爲なして、我われを肉慾にくよくに勝かちて、主宰しゆさいの旨むねを行おこなはん爲ために堅かため給たまへ。

又 イルモス同上

主しゆよ、爾なんぢは眞まことの受難者じゆなんしや及および致ち命者めいしやに爾なんぢに祈いのる勇敢いさみを賜たまへり、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて信しんに於おいて移うつされし者ものに神聖しんせいなる救すくひを與あたへて、之これを聖せいなる居處すまひに入いれ給たまへ。

全ぜん功こうの指麾しきを以もつて萬ばん事じを益えきし、生せい死し者しやを司つかさどる主しゆよ、爾なんぢ全能ぜんのうなるに因よりて、移うつしし爾なんぢの諸僕しよぼくを靜しづかなる水みづの畔ほとりに休きうはしめ給たまへ。

光榮 性せいの至し善ぜんにして慈じ憐れん仁じん慈じに富とめる主しゆよ、爾なんぢの名なを呼よぶ者ものを外そとの暗やみより脫のがれしめ、信しんと恩おん寵ちようとを以もつて彼かれ等らを義ぎと爲なして照てらし給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、諸しよ預よ言者げんしやは爾なんぢの產さんの狀さまを傳つたへ、又また至し榮えいなる名なを以もつて爾なんぢに名なづけたり、蓋けだし爾なんぢは地ぢ獄ごくに在ある者ものの爲ために死しの權けんを滅ほろぼす生命いのちを生うみ給たまへり。

次ぎて「常に福にして」、叩拜、聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

「凡そ呼吸ある者」に致命者の讚頌スティヒラ、第四調。

聖せいなる致ち命者めいしやよ、誰たれか爾なんぢ等らが戰たゝかひし善よき戰たゝかひを見みて驚おどろかざらん、如何いかんぞ肉體にくたいに在ありて、ハリストスを承しよう認にんし、十じふ字架じかを武器ぶきとして、肉體にくたいなき敵てきに勝かちたる。故ゆゑに爾なんぢ等らは宜よろしきに合かなひて惡あく鬼きを逐おふ者もの、諸敵しよてきに勝かつ者ものと顯あらはれて、常つねに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまふ。

聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは裁判所さいばんしよに勇いさましくハリストスを傳つたへて、天てん使等しらの侶ともと爲なれり、蓋けだし凡およそ世よに在ある美うるはしき者ものを無なきが如ごとく棄すてて、堅かたき恃賴たのみとして信しんを保たもてり。故ゆゑに迷まよひを逐おひ、信者しんじやに醫治いやしの恩おん賜しを流ながして、絕たえず我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまふ。

聖せいなる致ち命者めいしやよ、我われ等ら如何いかんぞ爾なんぢ等らの勳功いさをしに驚おどろかざらん、蓋けだし爾なんぢ等らは死しすべき肉體にくたいありて、形體けいたいなき敵てきに勝かてり、暴虐者くるしめびとの嚇おどしは爾なんぢ等らを畏おそれしめざりき、苦くるしみに付わたす事ことは爾なんぢ等らを驚おどろかさざりき、爾なんぢ等らは實じつに宜よろしきに合かなひてハリストスより榮えいせられたり。

主しゆよ、爾なんぢの聖人せいじん等らの死しは貴たつとし、蓋けだし彼かれ等らは劍つるぎと、火ひと、嚴寒さむさとに壞やぶられ、己おのれの血ちを流ながして、恃賴たのみを爾なんぢに負おはせたり。故ゆゑに救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らは忍しのびたる後のちに其その功勞こうらうの報むくいとして爾なんぢより大おほいなる惠めぐみを受うけたり。

死者の讚頌スティヒラ

主しゆよ、爾なんぢが衆しゆう聖人せいじんの安息あんそくする處ところに爾なんぢの寢ねむりし諸僕しよぼくを安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮 世よに溺おぼるる愛あい何いづこにか在ある、過すぎ易やすき物ものの望のぞみ何いづこにか在ある、金銀きんぎん何いづこにか在ある、諸僕しよぼくの衆おほきと忙いそがはしきと何いづこにか在ある、皆みな塵ちり、皆みな灰はひ、皆みな影かげなり。來きたりて、死しせざる王わうに籲よばん、主しゆよ、我われ等らより移うつりし者ものに爾なんぢが永遠えいゑんの福ふくを受うけしめて、彼かれ等らを爾なんぢの老おいざる福樂ふくらくに安やすんぜしめ給たまへ。

今も、生神女讚詞 獨ひとり淨きよく至いたりて潔いさぎよき生しやう神女しんぢよ、種たねなく神かみを生うみし者ものよ、我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

挿句くづけの死者の讚頌スティヒラ、第四調。

死しの奧密あうみつは實じつに畏おそるべし、如何いかんぞ靈たましひは强しひて體からだより離はなれ、神かみの旨むねに由よりて天然てんねんの連屬れんぞくの結合けつがふより別わかるる。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、生いのちを賜たまふ仁愛じんあいの主しゆよ、移うつされし者ものを爾なんぢの諸しよ義ぎ人じんの居處すまひに安やすんぜしめ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。

爾なんぢ萬物ばんぶつを宰つかさどる主しゆが墓はかに置おかれ、死しの權けんを滅ほろぼして、其その古こ來らいの苛虐しへたげを空むなしくせしに、爾なんぢを信しんずる者ものの爲ために死しは寢ねむりと現あらはる。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、移うつされし者ものを爾なんぢの諸聖人しよせいじんの歡喜よろこびに、諸しよ義ぎ人じんの明あかるき處ところに入いれ給たまへ。

句 彼かれ等らの靈たましひは福ふくに居をらん。

爾なんぢは我われ等らの爲ために稱しよう義ぎと成聖せいせいと靈たましひの救すくひと爲なれり、蓋けだし我わが罪債おひめを己おのれに負おひて、我われ等らを義ぎとせられ救すくはれたる者ものとして父ちゝに攜たづさへ至いたれり。今いま我われ等ら爾なんぢに祈いのる、恩者おんしやにして人ひとを愛あいする主しゆよ、移うつされし者ものを爾なんぢの諸聖人しよせいじんの歡喜よろこびと光明ひかりとの中うちに安やすんぜしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ等らは神かみに感かんぜらるる諸しよ預よ言者げんしやの言ことばに循したがひて、爾なんぢを生しやう神女しんぢよと承うけ認とむ、蓋けだし爾なんぢは測はかり難がたく身みを取とりて罪つみに縛しばられし我われ等らを釋ときたる神かみを生うみ給たまへり。至し淨じやうなる者ものよ、今いま彼かれに移うつされし爾なんぢの諸僕しよぼくを己おのれの光くわう照せうにて照てらさんことを祈いのり給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」、聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、及び第一時課、常例の聖詠、幷に發放詞。

横線 - 『八調経』第四調

 「スボタ」の聖体礼儀に

「スボタ」の眞福詞、第四調。

アダムは木きに緣よりて樂園らくゑんより出いだされ、盜賊たうぞくは十じふ字架じかの木きに緣よりて樂園らくゑんに入いりたり。彼かれは食しよくして造物主ざうぶつしゆの誡いましめに背そむき、此これは共ともに十じふ字架じかに釘ていせられて、隱かくれたる神かみを認みとめて籲よべり、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らはハリストスを愛あいする愛あいに燃もえて、功勞こうらうの潤澤うるほひを以もつて邪敎じやけうの火ひを滅けし、敎けう會くわいの光くわう明めいなる燈ともしびと現あらはれて、慈じ憐れんを以もつて我われ等らの靈たましひより不ふ能のうと憂愁うれひとの黑暗くらやみを散さんず。故ゆゑに我われ等ら宜よろしきに合かなひて爾なんぢ等らを崇あがめ讚ほむ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

聖せいにせられし成聖者せいせいしや、神聖しんせいなる諸しよ預よ言者げんしや、克肖者こくせうしやの會くわい、及および聖せいなる女をんなの大數たいすうは德行とくかうを以もつて神かみの悅よろこびを獲えて、榮えいせられたり。我われ等らは彼かれ等らを讚さん美びして、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて永生えいせいと光くわう照せうとを得えんことを求もとむ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

ハリストスよ、爾なんぢの光ひかりの輝かゞやく處ところ、諸聖人しよせいじんの會くわいの喜よろこぶ處ところ、歎息なげきと疾病やまひとの遠とほざかりし處ところに、先さきに寢ねむりて多た病びやうの生命いのちに離はなれたる爾なんぢの諸僕しよぼくを納いれ、其その地ち上じやうに行おこなひし諸罪しよざいを顧かへりみずして、彼かれ等らに爾なんぢの言いひ難がたき仁じん慈じを歌うたはしめ給たまへ。

光榮 父ちゝと子こと聖神せいしんとに於おいて全まつたく合一がふいつにして分わかれざる三者さんしや、己おのれの位くらゐを混淆こんかうせざる三さん位ゐの惟一者ゆゐいちしやよ、爾なんぢの聖せいなる致ち命者めいしや、諸しよ聖神せいしん父ぷ、及および尊そん貴きなる預よ言者げんしやの祈き禱たうに因よりて、信しんを以もつて死しせし者ものを爾なんぢの處ところに安やすんぜしめて、我われ等らの靈たましひに洗淨きよめを與あたへ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは父ちゝが黎明しのゝめの前まへに生うみし言ことばを孕はらみ、全まつたき人ひとと爲なりて、二ふたつの行動かうどう二ふたつの旨むねを有たもつと知しらるる者ものを身みにて生うみ給たまへり。神かみの聘女よめ・少女せうぢよよ、彼かれを造成者ざうせいしや及および主しゆとして爾なんぢを歌うたふ我われ等らを宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

第四調 終

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