『八調経』第三調

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土曜日(スボタ)

 「スボタ」の小晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に主日の讚頌スティヒラ第三章。其一は二次。第三調。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかにて死しの權けんは滅ほろぼされ、惡あく魔まの誘惑いざなひは空むなしくせられたり。信しんを以もつて救すくはるる人ひとの族やからは恒つねに歌うたを爾なんぢに奉たてまつる。

主しゆよ、爾なんぢの復ふく活くわつにて萬有ばんいうは照てらされ、樂園らくゑんは再ふたゝび開ひらかれたり。悉ことごとくの造物ざうぶつは爾なんぢを讚ほめ揚あげて、恒つねに歌うたを爾なんぢに奉たてまつる。

我われは父ちゝ及および子この能力ちからを崇あがめ、聖神せいしんの權けんを歌うたひ、分わかれず造つくられざる神性しんせい、一體いつたいの三者さんしや、世世よよに王わうたる者ものを讚ほめ揚あぐ。

光榮、今も、生神女讚詞、定理歌ドグマティク。第三調。

最いと大おほいなる奇き跡せきや、生うみし者ものは童貞女どうていぢよ、生うまれし者ものは世よより先さきなる神かみなり、預よ言げんせられし產さん、性せいに超こえて成なりたる者ものなり。嗚呼あゝ畏おそるべき奧密あうみつや、思おもはるれども言いひ難がたし、見みらるれども悟さとられず。福さいはひなる哉かな爾なんぢ至し淨じやうなる少女せうぢよ、地ち上じやうのアダムの女むすめにして、至し上じやうの神かみの母はゝと現あらはれたる者ものなり。彼かれに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。提綱ポロキメン、「主は王たり」、三次。句、主は能力を衣、又之を帶にせり。次に「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。司祭聯禱を誦せず。我等直に左の讚頌を歌ふ。

挿句くづけに主日の讚頌スティヒラ、第三調。

己おのれの苦くるしみにて日ひを晦くらくし、己おのれの復ふく活くわつの光ひかりにて萬物ばんぶつを照てらししハリストス、人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、我われ等らの晩くれの歌うたを納いれ給たまへ。

次に生神女の讚頌三章。第三調。

句 我われ爾なんぢの名なを萬世ばんせいに誌しるさしめん。

潔いさぎよき者ものよ、我われ等ら爾なんぢを神しん゜靈れいの約匱やくひつ、神かみの錄しるしし石板せきばんとして我わが立法者りつぱふしや及および造成主ざうせいしゆを納いるる者ものと識しる。彼かれに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

句 女ぢよよ、之これを聽きき、之これを觀み、爾なんぢの耳みゝを傾かたぶけよ。

婚姻こんいんに與あづからざる潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの腹はらに入いりて身みを取とりし性せいの見みられぬ神かみ言ことばは爾なんぢを地ちに於おいて天てんと現あらはしたり。故ゆゑに爾なんぢは衆しゆう人じんに不死ふしの露つゆを降くだし給たまふ。

句 民みん中ちゆうの富とめる者ものは爾なんぢの顏かんばせを拜をがまん。

童貞女どうていぢよよ、我われ等らは爾なんぢの祈き禱たうに由よりて救すくひを得え、此これに緣よりて常つねに患くわん難なん及および誘惑いうわくの暴風あらしを免まぬかる。故ゆゑに求もとむ、絕たえず我わが爲ために我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞、第三調。

至し淨じやうなるマリヤよ、我われ等らは爾なんぢに依よりて人ひとの性せいの復興ふくこう及および重ちよう生せいを知しる、蓋けだし萬物ばんぶつの造成主ざうせいしゆは爾なんぢの腹はらに我わが合成がふせいを受うけて、我われ等らを地ぢ獄ごく及および死しより起おこして、我われ等らに永遠えいゑんの生命いのちを賜たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、地下ちかの者ものを天てん上じやうに合あはせし永貞えいてい童女どうぢよよ、慶よろこべ、地ちの四し極きよくの恃賴たのみと轉達てんたつと保護ほごよ、慶よろこべ、爾なんぢの子この復ふく活くわつにて萬有ばんいうを照てらし、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまふ者ものよ、慶よろこべ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に主日の讚詞トロパリ。光榮、今も、其生神女讚詞、及び發放詞。

 「スボタ」の大晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十句を立てて、主日の讚頌スティヒラを歌ふ。第三調。

句 我わが靈たましひを獄ひとやより引ひき出いだして、我われに爾なんぢの名なを讚榮さんえいせしめ給たまへ。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかにて死しの權けんは滅ほろぼされ、惡あく魔まの誘惑いざなひは空むなしくせられたり。信しんを以もつて救すくはるる人ひとの族やからは恒つねに歌うたを爾なんぢに奉たてまつる。

句 爾なんぢ恩おんを我われに賜たまはん時とき、義ぎ人じんは我われを環めぐらん。

主しゆよ、爾なんぢの復ふく活くわつにて萬有ばんいうは照てらされ、樂園らくゑんは再ふたゝび開ひらかれたり。悉ことごとくの造物ざうぶつは爾なんぢを讚ほめ揚あげて、恒つねに歌うたを爾なんぢに奉たてまつる。

句 主しゆよ、我われ深ふかき處ところより爾なんぢに呼よぶ。主しゆよ、我わが聲こゑを聽きき給たまへ。

我われは父ちゝ及および子この能力ちからを崇あがめ、聖神せいしんの權けんを歌うたひ、分わかれず造つくられざる神性しんせい、一體いつたいの三者さんしや、世世よよに王わうたる者ものを讚ほめ揚あぐ。

又 アナトリイの讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくは爾なんぢの耳みゝは我わが禱いのりの聲こゑを聽きき納いれん。

ハリストスよ、我われ等ら爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかに伏拜ふくはいし、爾なんぢの復ふく活くわつを歌か頌しよう讚榮さんえいす、蓋けだし爾なんぢの傷きずに因よりて我われ等ら皆みな癒いやされたり。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

我われ等らは童貞女どうていぢよより身みを取とりし救世主きうせいしゆを歌うたふ、蓋けだし我われ等らの爲ために十じふ字架じかに釘ていせられ、三みつ日目かめに復ふく活くわつして、我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまへり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

ハリストスは降くだりて、地ぢ獄ごくに在ある者ものに福音ふくいんして曰いへり、勇いさめよ、今いま勝かてり、我われは復ふく活くわつなり、我われ死しの門もんを破やぶりて、爾なんぢ等らを引ひき上あげん。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

ハリストス神かみよ、我われ等ら爾なんぢの至し淨じやうなる家いへに立たつに堪たへざる者ものは晩くれの歌うたを奉たてまつりて、深ふかき心こゝろより籲よぶ、爾なんぢの三みつ日目かめの復ふく活くわつにて世せ界かいを照てらしし人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの民たみを爾なんぢの諸敵しよてきの手てより脫のがれしめ給たまへ。

他の讚頌スティヒラ、至聖生神女に捧ぐ、月課經ミネヤの讚頌の無き所に之を歌ふ。アモレイのパワェルの作、第七調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

童貞女どうていぢよよ、我われ何事なにごとに遇あひても爾なんぢの神聖しんせいなる恩おん寵ちようを呼よぶ者ものに慈じ憐れんを垂たれて、速すみやかに聽きき給たまへ、蓋けだし我わが靈たましひの望のぞみを一切いつさい爾なんぢに負おはせたり。我われ萬ばん事じに於おいて爾なんぢの神聖しんせいなる慮おもんぱかりを恃たのむ、爾なんぢ我われに將しやう來らいの光くわう榮えい及および神聖しんせいなる生命いのちをも獲えしめ給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

生しやう神女しんぢよよ、我わが諸慾しよよくの炭すみは我われの中うちに燃もえたり。祈いのる、女宰ぢよさいよ、怒いかりと憤いきどほり、沉湎ちんめんと邪淫じやいん、貪婪たんらんと頑げわん固こ、怠惰おこたりと煩悶もだえ、驕慢けうまんと良りやう心しんに戾もとることより吾わが靈たましひを脫のがれしめて、我われを救すくひ給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

我われ等ら皆みな潔いさぎよき良りやう心しんを以もつて生しやう神女しんぢよの前まへに俯ふ伏ふくして、心こゝろの内うちより絕たえず呼よばん、聖せいなる女宰ぢよさいよ、我われ等ら衆しゆうを愠怒いかりと忿恨うらみ、災禍わざはひと誘惑いざなひより救すくひ給たまへ。蓋けだし我われ等らは爾なんぢを垣墻かき及および保固かためとして獲えて、爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきて、爾なんぢに依よりて救すくはる。

光榮、今も、生神女讚詞

最いと尊たふとき者ものよ、我われ等ら如何いかで爾なんぢが神人かみびとを生うみしに驚おどろかざらん。至いたりて玷きずなき者ものよ、爾なんぢは夫をつとの誘いざなひを受うけずして、世よの無なき先さきより母はゝなく父ちゝより生うまれ、聊いさゝかも變易かはり、或あるひは混淆まじり、或あるひは分離わかれを受うけず、二ふたつの性せいの質しつを全まつたうして守まもれる子こを父ちゝなく身みにて生うめり。故ゆゑに母はゝ、童貞女どうていぢよ、女宰ぢよさいよ、正たゞしく爾なんぢを生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものの靈たましひの救すくはれんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

次ぎて香爐捧持の聖入。「穩なる光」。提綱ポロキメン及び聯禱。

挿句くづけに主日の讚頌スティヒラ、第三調。

己おのれの苦くるしみにて日ひを晦くらくし、己おのれの復ふく活くわつの光ひかりにて萬物ばんぶつを照てらししハリストス、人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、我われ等らの晩くれの歌うたを納いれ給たまへ。

他の讚頌スティヒラ

句 主しゆは王わうたり、彼かれは威ゐ嚴げんを衣きたり。

主しゆよ、爾なんぢが生命いのちを施ほどこす復ふく活くわつは全ぜん世せ界かいを照てらして、爾なんぢの朽くちたる造物ざうぶつを興おこせり。故ゆゑに我われ等らアダムの詛のろひを脫だつして呼よぶ、全能ぜんのうの主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 故ゆゑに世せ界かいは堅けん固ごにして動うごかざらん。

爾なんぢは變易へんえきせざる神かみにして、身みにて苦くるしみを受うけて變易へんえきせり。造物ざうぶつは爾なんぢが十じふ字架じかに懸かゝれるを見みるに堪たへずして、恐懼おそれに由よりて變へんじ、歎息たんそくして爾なんぢの恒忍ごうにんを讚ほめ揚あげたり。爾なんぢは地ぢ獄ごくに降くだり、三みつ日目かめに復ふく活くわつして、世せ界かいに生命いのちと大おほいなる憐あはれみとを賜たまへり。

句 主しゆよ、聖德せいとくは爾なんぢの家いへに屬ぞくして永遠えいゑんに至いたらん。

ハリストスよ、爾なんぢは我わが族やからを死しより救すくはん爲ために死しを忍しのび、三みつ日目かめに死しより復ふく活くわつして、爾なんぢを神かみと識認しきにんせし者ものを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめて、世せ界かいを照てらし給たまへり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、生神女讚詞

爾なんぢは種たねなく聖神せいしんに由よりて、父ちゝの旨むねを以もつて、神かみの子こ、世よの無なき先さきに母はゝなく父ちゝより生うまれし者ものを妊はらみ、我われ等らの爲ために父ちゝなく爾なんぢより在ありし者ものを身みにて生うみ、嬰をさなごたる者ものを乳ちにて養やしなへり。彼かれに我われ等らの靈たましひを諸難しよなんより脫のがれしめんことを息やめずして禱いのり給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に、

主日の讚詞トロパリ、第三調。

天てんに在ある者もの樂たのしめよ、地ちに在ある者もの悅よろこべよ、主しゆは其その臂ひぢの力ちからを顯あらはして、死しを以もつて死しを滅ほろぼし、復ふく活くわつの首はじめとなり、我われ等らを地ぢ獄ごくの腹はらより救すくひ、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまひたればなり。

光榮、今も、生神女讚詞

生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ等らは爾なんぢ我わが族やからの救すくひの爲ために轉達てんたつする者ものを讚ほめ歌うたふ、爾なんぢの子こ吾わが神かみは人ひとを愛あいするに因よりて、爾なんぢより取とりし身みにて十じふ字架じかの苦くるしみを受うけ、我われ等らを滅亾ほろびより救すくひたればなり。

 「スボタ」の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン。第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

至し淨じやうなる神かみの聘女よめよ、我われ等ら信者しんじやは、淸きよき歌うたを以もつて、爾なんぢ父ちゝの惠めぐみ及および聖神せいしんの降臨かうりんに由よりて、神かみの母はゝと爲なりし者ものを讚榮さんえいし、天てん使し首しゆと偕ともに歌か頌しようを以もつて、我わが救すくひの爲ために、爾なんぢを祝しゆく讚さんす。

昔むかしエワは造成ざうせいの時ときにアダムの肋あばら骨ぼねより造つくられ、ハリストスは生しやう神女しんぢよの腹はらより顯あらはれ給たまへり。是これ吾わが神かみにして、變易へんえきなく人ひとと爲なり、永遠えいゑんの主しゆにして、時ときに順したがひし者ものなり。

光榮 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、エワの腹はらを苦くるしみの中うちに子こを生うむことに定罪ていざいせし主しゆは爾なんぢの腹はらに入いり給たまへり。是これ我わが神かみにして、身みを以もつて言いひ難がたく現あらはれて、原げん母ぼの債おひめを解とき給たまひし者ものなり。

今も 神かみの母はゝよ、我われ等ら罪つみの重おも負にに因よりて失望しつばうの深處ふかみに陷おちいりて、熱切ねつせつに爾なんぢに呼よぶ、女宰ぢよさいよ、我われ等ら罪惡ざいあくの中うちに溺おぼるる者ものを援たすけ給たまへ、我われ等らは神かみの次つぎに獨ひとり爾なんぢを賴たのみとすればなり。

第三歌頌

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、アアロンの杖つゑ、潤うるほひなくして華はなさきたる者ものは爾なんぢを預よ象しやうせり、蓋けだし爾なんぢは種たねなく、變易へんえきせずして身みを取とりし神かみを生うみ給たまへり。

至し淨じやうなる者ものよ、預よ言者げんしやは神しん゜を以もつて爾なんぢを神聖しんせいなる火ひの燃もゆる燈ともしびとして預よ見けんせり、蓋けだし爾なんぢは世よに在ある者ものの爲ために光くわう照せうと永生えいせいとを顯あらはし給たまへり。

光榮 我われ等ら天てん使し首しゆガウリイルに就つきて、共ともに歌うたを以もつて童貞女どうていぢよに呼よばん、慶よろこべよ、爾なんぢに依よりて原げん祖その定罪ていざいの詛のろひが解とかれたればなり。

今も 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら罪つみなる者ものは爾なんぢを救すくひの墻かきと有たもちて救すくはる。女宰ぢよさいよ、我われ等らの祈いのりを棄すつる勿なかれ、辱はづかしむる勿なかれ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

至し淨じやうなる者ものよ、昔むかしアウワクムは神かみに感かんぜられて、神しん゜を以もつて爾なんぢを神しん゜靈れいの山やま、諸德しよとくの蔭かげと見みて、言ことばが身みを取とりて南みなみたる爾なんぢより來きたりしを傳つたへたり。

女宰ぢよさいよ、タニイルは神しん゜を以もつて爾なんぢを其その童貞どうていの潔けつ淨じやうを像かたどる大おほいなる斫きられざる山やまと見みたり、是これより石いしたるハリストス言ことばは斫きられて、偶像ぐうざうの迷まよひを滅ほろぼし給たまへり。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、ダワィドは爾なんぢを奇異きいなる高たかき山やまと預よ言げんせり、蓋けだし父ちゝの獨生どくせい子しは爾なんぢに入いりて、身みを取とることを悅よろこび給たまへり。故ゆゑに我われ等ら神しん゜を以もつて爾なんぢに慶よろこべよと呼よぶ。

今も 罪つみなる者もの及および謙けん卑ぴの者ものの至し仁じんにして熱切ねつせつなる轉達者てんたつしや、神かみの母はゝ、至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを諸もろもろの災禍わざはひ、憂愁うれひ及および諸罪しよざいより救すくひ給たまへ。

第五歌頌

イルモス イサイヤは預よ象しやうに於おいて崇たかき寶はう座ざに坐ざして光くわう榮えいの諸天しよてん使しに繞めぐらるる神かみを見みし時ときに籲よべり、噫あゝ 我われ 禍わざはひなる哉かな、我われ肉體にくたいを取とる神かみ、暮くれざる光ひかりと平安へいあんとを司つかさどる者ものを預よ見けんせり。

イエッセイの根ねは凋しぼまざる花はなを發ひらきたり、是これ童貞女どうていぢよマリヤは種たねなくして、聖神せいしんに由よりて父ちゝの旨むねを以もつて、無む原げんなる神かみ、異い邦はうの諸國しよこくを其その權内けんないに有たもつ主しゆ、諸民しよみんの冀望のぞみなる者ものを生うみ給たまひしなり。

平安へいあんの王わうは來きたりて、ダワィドの寶はう座ざに坐ざせり。嗚呼あゝ奇き跡せきや、生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢより身みを取とりし神かみは王わうと爲なりて、不ふ和わを解とき、モアフの諸候しよこうを慄をのゝかせ、爾なんぢを女王によわうとして顯あらはし給たまへり。

光榮 童貞女どうていぢよよ、イサイヤは爾なんぢの無む玷てんなる華くわ美び、ハリストスが是これに藉よりて種たねなく身みを衣きたる者ものを顯あらはして呼よぶ、光くわう榮えいの主しゆは輕かろき雲くもに乘のりて來きたり、迷まよひの幽暗くらやみを拂はらひて、我われ等らを照てらさん。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは聖神せいしんに因よりて父ちゝと一體いつたいなる言ことばを孕はらみて、之これを二に性せいに於おいて全まつたき神かみ及および全まつたき人ひととして生うみ給たまへり。我われ等ら信しんを以もつて其その肉體にくたいの顯現あらはれを尊たふとむ。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの罪つみの淵ふちは我われを圍かこみ、我わが靈たましひは亾ほろびんとす。祈いのる、主宰しゆさい敎導者けうだうしやよ、爾なんぢの高たかき手てを伸のべて、我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

讚さん美びたる者ものよ、睿えい智ち者しやは歌か頌しようを以もつて爾なんぢを榻とことして豫よ象しやうす、其その上うへに爾なんぢより身みを取とりて、變易へんえきなく生うまれ給たまひし實在じつざいの神かみは休いこひて、爾なんぢを榮えいせり。

讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは選えらばれたる衣ころもの如ごとくなれり、蓋けだし言ことばは爾なんぢより神聖しんせいなる紫し袞こん衣いとして身みを取とり、神かみに合かなふが如ごとく妝よそほはれて王わうと爲なれり。

光榮 神かみの聘女よめよ、爾なんぢは神聖しんせいなる合成がふせいの容處いれどころ、黃こ金がねよりも美うるはしき者ものと爲なれり、蓋けだし爾なんぢに藉よりて神かみは人ひとと爲なり、又また神かみは人ひととして人人ひとびとに語かたり給たまへり。

今も 讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、不ふ敬虔けいけんにして爾なんぢを尊たふとまざる者ものは爾なんぢの至し榮えいなる肖像せうざうを見みて媢嫉ねたみに囓かまれ、異い端たんの毒どく惡あくに殺ころさる。

主憐めよ。三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第三調。

生しやう神女しんぢよよ、我われ熱切ねつせつなる信しんより、不ふ當たうの口くち、穢けがれたる心こゝろを以もつて爾なんぢに呼よぶ、我われ諸罪しよざいに溺おぼれたる者ものを救すくへ、失望しつばうに因よりて殺ころされたる者ものを宥なだめ給たまへ、我わが救すくはれて爾なんぢに呼よばん爲ためなり、慶よろこべ、童貞女どうていぢよ、ハリスティアニン等らの扶助者たすけよ。

第七歌頌

イルモス 昔むかし三人みたりの少者せうしやはペルシヤ人じんの尊たふとめる金こがねの像ざうに伏拜ふくはいせずして、爐ゐろりの中なかに歌うたへり、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

童貞女どうていぢよよ、荊棘いばらと火焰ほのほとは相あひ合あはせられ、兩ふたつながら損そこなはるるなく現あらはれて、明あきらかに爾なんぢを預よ象しやうす、蓋けだし爾なんぢは神かみを生うみて、童貞女どうていぢよに止とゞまる。

童貞女どうていぢよ母はゝよ、ゲデオンの爲ために顯あらはれたる羊ひつじの毛け及および露つゆの奇き跡せきは爾なんぢの產さんを前兆ぜんてうせり、蓋けだし爾なんぢは獨ひとり神聖しんせいなる言ことばを露つゆの如ごとく己おのれの腹はらに宿やどし給たまへり。

光榮 我わが罪つみの火ひは我われに「ゲエンナ」の焰ほのほの堪たへ難がたきを示しめす。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの慈じ憐れんに由よりて之これを滅けして、痛つう悔くわいを以もつて我われを光ひかりに導みちびき給たまへ。

今も 至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら皆みな爾なんぢの肖像せうざうを尊たふとみて、原像げんざうたる爾なんぢを常つねに神かみの前まへに我われ等らの轉達者てんたつしや及および慈じ憐れんなる帲幪おほひとして有たもつ。

第八歌頌

イルモス ワワィロンの爐ゐろりが少者せうしやを焚やかざりし如ごとく、神性しんせいの火ひは童貞女どうていぢよを殘そこなはざりき。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは少者せうしやと共ともに呼よばん、主しゆの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

父ちゝは爾なんぢを荊棘いばらの間あひだにある最いと美うるはしき花はなの如ごとく、華くわ美びの光明くわうみやうにて輝かゞやける者ものとして獲えて、爾なんぢ婚姻こんいんに與あづからざる聘女よめを聖神せいしんに由よりて己おのれの子この居處すまひと爲なすを悅よろこび給たまへり。

我われ靈たましひを全まつたくして爾なんぢ天てん上じやうの軍ぐんより至いたりて聖せいなる無む玷てんの童貞女どうていぢよを讚榮さんえいす。蓋けだし爾なんぢは彼かれ等らの造成主ざうせいしゆ、混こんぜざる合成がふせいを以もつて爾なんぢより身みを取とりし者ものを腹はらに宿やどし給たまへり。

光榮 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは童貞どうていを殘そこなひなく守まもりて、父ちゝの旨むねに因よりて婚姻こんいんに與あづからざる聘女よめと爲なり、光くわう榮えいの神しん゜の臨のぞみて蔭おほふ處ところと爲なりて、實じつに神かみの子この母はゝと顯あらはれたり。

今も 性せいの無む形けいにして見みえざる神かみは聖せいなる童貞女どうていぢよより言いひ難がたく其その性せいに超こえて人ひとと生うまれて、一いち位ゐに於おいて二に性せいの者ものと見みらる、聖書せいしよに示しめすが如ごとし。

第九歌頌

イルモス 神かみに適かなふ新あらたなる奇き跡せきや、主しゆは顯あらはに童貞女どうていぢよの閉とざせる戸とを通とほり、入いるときは無む形けいの神かみにして、出いづるときは人體じんたいを衣きたる者ものとなり、戸とは元もとの儘まゝ閉とざせり。我われ等ら彼かれを神かみの母はゝとして、言いひ難がたく崇あがめ讚ほむ。

聖せいなる根ねより聖せいなる實みは生しやうず、蓋けだし胎たいの荒あれたる者ものは先せん祖ぞの神かみの法はふに聖せいにせられて、凋しぼまざる生命いのちたる生しやう神しん童貞女どうていぢよを生しやうじたり、アンナは年とし老おいて子こを受うけて悅よろこぶ。我われ等らは此この子こを神かみの母はゝとして讚榮さんえいす。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの產さんは神かみに適かなふ新あらたなる事ことなり、蓋けだし爾なんぢの腹はらの中うちに父ちゝの指ゆびにて人ひとの形かたちは銘しるされ、聖せいなる神しん゜に因よりて聖せいなる子こは身みを取とり給たまへり。我われ等ら彼かれを混淆こんかうなく神かみ及および人ひととして崇あがめ讚ほむ。

光榮 凡およその義ぎ判はんは我われを責せめ、惡あしき行おこなひは聲こゑを揚あげて我われを懲こらし、我わが靈たましひは一切いつさいの詰問きつもんせられんことを知しりて、「ゲエンナ」の焰ほのほに慄をのゝく。女宰ぢよさいよ、終をはりの先さきに爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを之これより脫のがれしめ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは產さんの後のちに不ふ朽きうの者ものと現あらはれたり、蓋けだし性せいに超こえて身みにて萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ、父ちゝの性せいに離はなれずして人ひとと爲なりし者ものを生うみ、聖神せいしんに由よりて童貞女どうていぢよに止とゞまり給たまへり、故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚榮さんえいして歌うたを奉たてまつる。

次ぎて「常に福にして」。聖三祝文。主日の小讚詞コンダク、及び發放詞。

日曜日(主日)

 主日の夜半課

聖三者の規程カノン、其冠詞は、三者、惟一の神元よ、爾を讚揚す。ミトロファンの作。第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

悟さとり難がたき惟一ゆゐいちなる三さん位ゐの神元しんげんよ、我われに爾なんぢの三さん光くわうの輝煌かゞやきにて照てらさるるを得えしめ給たまへ、我わが爾なんぢ天てん使しの口くちに賴よりて三聖さんせいの歌うたを以もつて絕たえず歌うたはるる主しゆを歌か頌しようせん爲ためなり。

悉ことごとくの無む形けいの品ひん位ゐは敬つゝしみて惟一ゆゐいちなる三さん光くわうの神元しんげんを造成ざうせいの原因げんいんとして歌うたふ、我われ等ら人人ひとびとの大數たいすうも同心どうしんに歌うたひて、塵ちりに屬ぞくする口くちを以もつて熱切ねつせつに彼かれを讚榮さんえいす。

光榮 萬有ばんいうの一いち元げんなる神かみよ、神學しんがく師等しらは宜よろしきに合かなひて意義いぎ深ふかく爾なんぢを智慧ちゑと、言ことば、及および神しん゜と名なづけて、生うまれざる父ちゝより永遠えいゑんに子この生うまるること、偕ともに又また神聖しんせいなる神しん゜の出いづることを示しめす。

今も 性せいの仁愛じんあいなる神かみの言ことばよ、爾なんぢは人ひとの性せいを受うけて、惟一ゆゐいちの神性しんせいの三さん位ゐなる一いち元げんの光ひかりを輝かゞやかして、衆しゆうに爾なんぢを生うみし至し淨じやうなる童貞女どうていぢよを至いたりて光くわう榮えいなる者ものと顯あらはし給たまへり。

第三歌頌

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

昔むかしイリヤは三みたび水みづを薪たきゞの上うへに沃そゝぐことを命めいじて、形かたちを以もつて惟一ゆゐいちの神かみの三さん位ゐを顯あらはせり。

地ちに生うまるる者ものの朽きう壞くわいの性せいは爾なんぢ惟一ゆゐいちなる三さん光くわうの變易へんえきせざる造成主ざうせいしゆを歌うたひて、爾なんぢに呼よぶ、主宰しゆさいよ、我われを種種しゆじゆの惡あしき變易へんえきより援たすけて救すくひ給たまへ。

光榮 萬有ばんいうの神かみよ、我われ等ら信者しんじやは諸しよ預よ言者げんしや、光くわう榮えいなる使徒しと及および敎をしへの宣傳者せんでんしやの言ことばと侔ひとしきことを述のべて、爾なんぢ同どう能のうなる三者さんしやを讚榮さんえいす。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、ハリストスは人ひとを愛あいする主しゆとして、爾なんぢに藉よりて最高いとたかき寶はう座ざより下くだりて、人ひとを高たかくし、衆しゆうに三日さんじつの光ひかりを輝かゞやかし給たまへり。

第三歌頌の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

主憐めよ、三次。

永在えいざいなる惟一ゆゐいちの主しゆ、無む原げんなる父ちゝの子こハリストス、及および神聖しんせいなる神しん゜よ、爾なんぢの諸僕しよぼくを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等ら皆みな罪つみを犯おかしたれども、爾なんぢより離はなれざりき。故ゆゑに祈いのる、三さん位ゐの主しゆよ、權けんを有たもつ者ものとして、爾なんぢの造物ざうぶつを諸もろもろの誘惑いざなひより救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、永在えいざいの神かみ及および主しゆは仁じん慈じなるに因よりて、爾なんぢより身みを取とり、本性ほんせいを易かへずして、我われ等らに肖にたる者ものとなり給たまへり。故ゆゑに我われ等ら彼かれを神人かみびとと尊たふとみて、爾なんぢを婚姻こんいんに與あづからざる生しやう神女しんぢよと傳つたへて、爾なんぢの種たねなき產さんの至し大だいなる奇き跡せきを讚榮さんえいす。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

根ねよりするが如ごとく、父ちゝより二ふたつの芽めは生しやうじたり、子こ及および義ぎなる神しん゜、父ちゝと一性いつせい一體いつたいにして、同どう無む原げん同尊どうそんなる者ものなり。故ゆゑに我われ等ら惟一ゆゐいちの神性しんせいの三さん光くわうを尊たふとむ。二次。

光榮 無む數すうの靈れい智ちなる者ものは絕たえず爾なんぢ測はかり難がたき神かみを歌うたふ。彼かれ等らと偕ともに我われ等ら讚榮さんえいして言いふ、永在えいざいの三者さんしやよ、人ひとを愛あいする主しゆなるに因よりて、爾なんぢの諸僕しよぼくを救すくひ給たまへ。

今も 慈じ憐れん多おほき神かみの言ことばよ、爾なんぢは本性ほんせいを易かへずして我われ等らの爲ために人體じんたいを取とり、惟一ゆゐいちの神かみの三さん位ゐの奧あう義ぎを敎をしへて、我われ等らの中うちに爾なんぢを愛あいする愛あいを燃もやし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚榮さんえいす。

第五歌頌

イルモス イサイヤは預よ象しやうに於おいて崇たかき寶はう座ざに坐ざして光くわう榮えいの諸天しよてん使しに繞めぐらるる神かみを見みし時ときに籲よべり、噫あゝ 我われ 禍わざはひなる哉かな、我われ肉體にくたいを取とる神かみ、暮くれざる光ひかりと平安へいあんとを司つかさどる者ものを預よ見けんせり。

イサイヤは預よ象しやうに於おいて惟一ゆゐいちの神かみ、セラフィムの至し淨じやうなる聲こゑを以もつて三さん位ゐに讚榮さんえいせらるる主しゆを見みて、直たゞちに三さん光くわうの性せい、三日さんじつの惟一者ゆゐいちしやを傳つたへん爲ために遣つかはされたり。二次。

光榮 曩さきに悉ことごとくの見みゆると見みえざるとの性せいを無むより造つくりし三日さんじつの惟一者ゆゐいちしやよ、信しんを以もつて爾なんぢ獨一どくいつの神かみを歌か頌しようする者ものを諸もろもろの誘惑いざなひより救すくひて、爾なんぢの光くわう榮えいを見みるを得えしめ給たまへ。

今も 光くわう明めい潔けつ淨じやうなる神かみの聘女よめ童貞女どうていぢよよ、我われ等ら愛あいを以もつて爾なんぢを歌か頌しよう讚さん美びす。蓋けだし三者さんしやの一いち位ゐ、光くわう榮えいの主しゆハリストスは二に性せい二旨にしにして爾なんぢより生うまれ給たまへり。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの罪つみの淵ふちは我われを圍かこみ、我わが靈たましひは兦ほろびんとす。祈いのる、主宰しゆさい敎導者けうだうしやよ、爾なんぢの高たかき手てを伸のべて、我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

移い住ぢゆう者しやたるアウラアムは惟一ゆゐいちの主しゆ、三さん位ゐに於おいて人ひとの形かたちを以もつて現あらはれしを待あしらふことを得えたり。二次。

光榮 鳴呼あゝ三日さんじつの主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの心こゝろを近ちかづき難がたき光ひかりに向むかはしめて、我わが靈たましひに爾なんぢの光くわう榮えいの光くわう照せうを與あたへ給たまへ、我われ等らが爾なんぢの言いひ難がたき華くわ美びに輝かゞやかされん爲ためなり。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、我わが爲ために爾なんぢの腹はらより生うまれし光ひかりの門もんを啓ひらき給たまへ、我わが神性しんせいの三さん光くわうの輝煌かゞやきを仰あふぎて、爾なんぢ至いたりて光くわう明めいなる女宰ぢよさいを讚榮さんえいせん爲ためなり。

第六歌頌の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

主憐めよ、三次

我われ等らは一性いつせい一體いつたいの神かみの三日さんじつの權柄けんぺいを歌うたひて、三聖さんせいの聲こゑを以もつて呼よばん、聖せいなる哉かな無む原げんの父ちゝ、聖せいなる哉かな同どう無む原げんの子こ、及および聖神せいしん、惟一ゆゐいちの分わかれざる我わが神かみ、萬有ばんいうの造成者ざうせいしや、人ひとを愛あいする主しゆや。

光榮、今も、生神女讚詞 純じゆん潔けつなる少女せうぢよよ、如何いかにして容いれ難がたき者ものは爾なんぢの腹はらに宿やどり、神かみの變易へんえきせざる性せいの混淆こんかう或あるひは分ぶん離りに與あづからずして身みを取とり、人ひととして現あらはれたる、此これ至し大だいなる奇き跡せきなり。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて常つねに爾なんぢを生しやう神女しんぢよと傳つたへて崇あがめ讚ほむ。

第七歌頌

イルモス 昔むかし敬虔けいけんなる三人みたりの少者せうしやをハルデイの焰ほのほに凉すゞしくせし如ごとく、我われ等らをも神性しんせいの明あかるき火ひにて輝かゞやかし給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よべばなり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢの光ひかりを施ほどこす光くわう線せんを以もつて、我われを爾なんぢの三さん光くわうの神性しんせいの殿でん、全まつたく明あきらかにして、諸罪しよざい諸慾しよよくの暗やみに與あづからざる者ものと爲なし給たまへ。吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我われ等らは父ちゝ、子こ、聖神せいしんの三さん位ゐ、又また其その各かく位ゐの本ほん質しつに於おいて惟一ゆゐいちの神性しんせいを傳つたへて呼よぶ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

光榮 昔むかし三さん位ゐの神かみはアウラアムにマムブリイの橡かしの傍かたはらに現あらはれて、懇ねんごろに遠人ゑんじんを待あしらふ德とくの報むくいとしてイサアクを賜たまへり。我われ等ら今いまも彼かれを吾わが先せん祖ぞの神かみとして崇あがめ讚ほむ。

今も 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる純じゆん潔けつなる生しやう神女しんぢよよ、造物主ざうぶつしゆは神かみに宜よろしきが如ごとく爾なんぢの至し淨じやうなる童貞どうていの腹はらに由よりて人ひとと成なり、地ちに現あらはれて、我われ等らを神成しんせいし給たまへり。

第八歌頌

イルモス 敬虔けいけんの範のりたる少者せうしやは堪たへ難がたき火ひに入いれられしに、焰ほのほに惱なやまされずして、神聖しんせいなる歌うたを歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

根ねよりするが如ごとく、無む原げんの父ちゝより同どう無む原げんにして子こは生しやうじ、聖神せいしんは出いでて、永在えいざいなる三さん位ゐの神性しんせいの惟一ゆゐいちの光くわう榮えいと能のう力りよくとを顯あらはせり。我われ等ら衆しゆう信者しんじやは之これを世世よよに崇あがめ歌うたふ。二次。

光榮 父ちゝ、其その像かたちなる言ことば、及および聖神せいしんよ、爾なんぢは己おのれの輝煌かゞやきにて天てんの品ひん位ゐに默もださずして三聖さんせいの歌うたを以もつて爾なんぢの三さん光くわう同どう能のうなる權柄けんぺいを歌うたはんことを慫すゝむ。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを萬世ばんせいに崇あがめ歌うたふ。

今も 女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、預よ言者げんしやは神かみに感かんぜられて、遙はるかに爾なんぢの產さんを見みて、種たねなく性せいに超こえて生うまれし者ものを讚榮さんえいせり。我われ等らも同心どうしんに彼かれを主しゆと歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

第九歌頌

イルモス 神かみに適かなふ新あらたなる奇き蹟せきや、主しゆは顯あらはに童貞女どうていぢよの閉とざせる戸とを通とほり、入いるときは無む形けいの神かみにして、出いづるときは人體じんたいを衣きたる者ものとなり、戸とは元もとの儘まゝ閉とざせり。我われ等ら彼かれを神かみの母はゝとして、言いひ難がたく崇あがめ讚ほむ。

神かみに肖にたる無む形けいの品ひん位ゐは三さん光くわうの光くわう榮えいを見みん爲ために上うへに飛とび擧あがらんと欲ほつすれども、甚はなはだ近ちかづき難がたき光ひかりを畏かしこみて、絕たえず歌うたを奉たてまつる。彼かれ等らと同心どうしんに我われ等らは爾なんぢ惟一ゆゐいちなる三者さんしやを崇あがめ讚ほむ。二次。

光榮 主宰しゆさい、萬有ばんいうの神かみよ、我われ等ら地ち上じやうの者ものは知ち識しきと言ことばとある靈たましひを爾なんぢより受うけて、飽あかせられぬ愛あいを以もつて全まつたき心こゝろより爾なんぢ實じつに一性いつせいなる三さん位ゐを歌うたふ。故ゆゑに慈じ憐れんなる主しゆよ、仁愛じんあいを以もつて我われ等らを宥なだめ給たまへ。

今も 萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆよ、我われ等らを惟一ゆゐいちなる三さん光くわうの神元しんげんの光くわう明めいなる殿でんと爲なし、潔いさぎよく爾なんぢに奉ほう事じして、靈れい智ちの眼めを以もつて爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいを見みるを得えしめ給たまへ、惟一ゆゐいちなる生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに由よりてなり。我われ等ら宜よろしきに合かなひて彼かれを至し榮えいなる者ものとして崇あがめ讚ほむ。

次にグリゴリイ シナイトの聖三讚歌、「爾神言を讚榮するは」、及び其他夜半課の式。本書の末に載す。

 主日の早課

六段の聖詠の後に、
「主は神なり」に主日の讚詞トロパリ、第三調、「天に在る者樂しめよ」。光榮、今も、生神女讚詞、「生神童貞女よ、我等は爾我が族の救の爲に」。次に常例の聖詠の誦讀。

第一の誦文の後に主日の坐誦讚詞セダレン、第三調。

ハリストスは寢ねむりし者ものの初實はつものとして死しより興おき、造物ざうぶつに先さきだちて生うまれし者もの、萬物ばんぶつを造つくりし主しゆは、我わが族やからの朽くちたる性せいを己おのれの内うちに改あらため給たまへり。死しよ、爾なんぢは已すでに君きみたらず、萬有ばんいうの主宰しゆさいは爾なんぢの權けんを破やぶりたればなり。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる勿なかれ。

主しゆよ、爾なんぢは身みにて死しを嘗なめて、爾なんぢの復ふく活くわつにて死しの苦にがきを斷たち、人ひとを之これに勝かたん爲ために固かためて、初はじめの詛のろひを敗やぶらしめ給たまへり。我わが生命いのちを衞まもる主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、生神女讚詞

生しやう神女しんぢよよ、ガウリイルは爾なんぢが童貞どうていの美うるはしきと爾なんぢが潔けつ淨じやうの光ひかれるとを奇きとして呼よべり、如何いかなる爾なんぢに適かなふ讚さん美びを爾なんぢに獻さゝげん、如何いかに爾なんぢを名なづけん、我われ訝いぶかりて驚おどろく。故ゆゑに命めいぜられし如ごとく爾なんぢに呼よぶ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者もの、慶よろこべよ。

第二の誦文の後に主日の坐誦讚詞セダレン、第三調。

主しゆよ、地ぢ獄ごくは爾なんぢの變易へんえきなき神性しんせいと自じ由いうなる苦くるしみとに驚おどろきて、哭なきて言いへり、我われ不ふ朽きうの肉體にくたいの合成がふせいに慄をのゝく、見みえざる者ものが竊ひそかに我われと戰たゝかふを見みる。故ゆゑに我わが執とらへたる者ものも呼よぶ、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの復ふく活くわつに歸きす。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き跡せきを傳つたへん。

我われ等ら信者しんじやは十じふ字架じかに釘ていせらるることの測はかり難がたき、復ふく活くわつの言いひ難がたき神聖しんせいなる奧あう義ぎを傳つたふ、蓋けだし今いま死しと地ぢ獄ごくとは虜とりこにせられ、人類じんるゐは不ふ朽きうを衣きたり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに籲よぶ、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの復ふく活くわつに歸きす。

光榮、今も、生神女讚詞 

生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは父ちゝ及および聖神せいしんと一體いつたいなる測はかり難がたく像かたどり難がたき主しゆを奧密あうみつに爾なんぢの腹はらに容いれ給たまへり、我われ等らは爾なんぢの產さんに由よりて聖三者せいさんしやの惟一ゆゐいちなる混淆こんかうせざる能力ちからを世せ界かいに讚榮さんえいせんことを悟さとれり。故ゆゑに感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者もの、慶よろこべよ。

「ネポロチニ」の後に應答歌イパコイ、第三調。

顯現あらはれにて驚おどろかし、言語ことばにて慰なぐさむる光くわう明めいの天てん使しは攜香女けいかうぢよに言いへり、何なんぞ生いける者ものを墓はかに尋たづぬる、墓はかを空むなしくせし者ものは興おきたり。彼かれが朽きう壞くわいを變かへて親みづから變かはらざる者ものなるを悟さとりて、神かみに謂いへ、爾なんぢの所爲わざは何なんぞ驚おどろくべき、人ひとの族やからを救すくひ給たまひしに因よる。

品第詞ステペンナ、第三調。第一倡和詞アンティフォン。每句復唱す。

言ことばよ、爾なんぢはシオンの虜とりこをワワィロンより引ひき出いだせり、我われをも諸慾しよよくより生命いのちに引ひき寄よせ給たまへ。

南みなみ風かぜの時ときに神聖しんせいなる淚なみだを以もつて播まく者ものは、喜よろこびを以もつて永生えいせいの穗ほを刈かる。

光榮 聖神せいしんには凡およその善よき賜たまものは屬ぞくす、蓋けだし彼かれは父ちゝ及および子こと偕ともに輝かゞやき、萬物ばんぶつは彼かれに賴よりて生いき且かつ動うごく。

今も 同上。

第二倡和詞アンティフォン

若もし主しゆ諸德しよとくの家いへを造つくらずば、我われ等ら徒いたづらに勞らうす、主しゆ靈たましひを蔽おほはんに、誰たれも我われ等らの城しろを破やぶらざらん。

聖神せいしんの腹はらの果みたる諸聖人しよせいじんは、父ちゝの子こなると均ひとしく、恒つねに爾なんぢハリストスの子こなり。

光榮 聖神せいしんに藉よりて一切いつさいの聖せい事じ、一切いつさいの智慧ちゑは洞察どうさつせらる、蓋けだし彼かれに緣よりて萬物ばんぶつは生存せいそんす。我われ等ら父ちゝ及および言ことばに於おけるが如ごとく彼かれに務つとめん、其その神かみなればなり。

今も、同上。

第三倡和詞アンティフォン

主しゆを畏おそれて誡いましめの道みちを行ゆく者ものは福さいはひなり、生命いのちの諸果しよくわを食くらはんとすればなり。

牧ぼく師し長ちやうよ、爾なんぢの諸しよ子しが善業ぜんげふの枝えだを持もちて、爾なんぢの席せきを環めぐれるを見みて、樂たのしめよ。

光榮 聖神せいしんより凡およその光くわう榮えいの富とみは出いで、彼かれより凡およその造物ざうぶつに恩おん寵ちようと生命せいめいとは賜たまはる。故ゆゑに彼かれは父ちゝ及および言ことばと齋ひとしく歌うたはるるなり。

今も、同上

提綱ポロキメン、第三調。

諸民しよみんに言いふべし、主しゆは王わうたり、故ゆゑに世せ界かいは堅けん固ごにして搖うごかざらん。

句 新あらたなる歌うたを主しゆに歌うたへ、全ぜん地ちよ、主しゆに歌うたへ。

「凡そ呼吸ある者」。句、「神を其聖所に讚め揚げよ」。主日の早課の福音經。

「ハリストスの復活を見て」。第五十聖詠。其他常例の如し。

主日の規程カノン、第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

附唱 主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの聖せいなる復ふく活くわつに歸きす。

土つちを擬ぎ定ていして、罪つみを犯おかしし者ものの爲ために汗あせの果みとして荊棘いばらを出いだすことを命めいぜし主しゆ、法はふに戾もとる手てより身みにて荊棘いばらの冠かんむりを受うけし者ものは、是これ吾わが神かみなり。彼かれは詛のろひを滅ほろぼし給たまへり、光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

苦くるしみに與あづかる生いける身みを受うけしに因よりて死しを懼おそれし者ものは、死しに勝かちて之これを破やぶる者ものと顯あらはれたり、是これ吾わが神かみなり。彼かれは殘ざん虐ぎやく者しやと戰たゝかひて、衆しゆう人じんを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめ給たまへり、光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

生神女讚詞 萬族ばんぞくは爾なんぢ種たねなく生うみし者ものを眞まことの生しやう神女しんぢよと讚榮さんえいす、蓋けだし爾なんぢの聖せいにせられし腹はらに降くだりし者ものは是これ吾わが神かみなり。彼かれは我われ等らの爲ために我われ等らに肖にたる者ものと爲なりて、爾なんぢより神かみ及および人ひととして生うまれ給たまへり。

又十字架復活の規程カノン、第三調。

第一歌頌

イルモス 人人ひとびとよ、童貞女どうていぢよより我わが救すくひの爲ために生うまれて、地ちの物ものを天てんの物ものと一いつに爲なしし主しゆに新あらたなる歌うたを歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

罪つみを愛あいする殘ざん虐ぎやく者しやに奴ど隷れいとせられし人類じんるゐを、ハリストスは神聖しんせいなる血ちを以もつて贖あがなひ、之これを新あらたにして神成しんせいし給たまへり、光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

生命いのちの寶藏はうざうたるハリストスは死しに屬ぞくする者ものとして甘あまんじて死しを嘗なめ、性せいの不死ふしなる者ものとして死し者しやを生いかし給たまへり、光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

又至聖なる生神女の規程カノン、其冠詞は、生神女よ、我第三の歌を爾に奉る。第三調。

第一歌頌 イルモス同上

童貞女どうていぢよよ、天てん上じやうの凡およその性せいは地ち上じやうの者ものと偕ともに、地ぢ獄ごくの者ものも、宜よろしきに合かなひて、爾なんぢより身みを取とりし主しゆの前まへに膝ひざを屈かゞむ、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

少女せうぢよよ、大おほいなる哉かな爾なんぢに藉よる和わ睦ぼくや、神かみとして豐ゆたかに諸しよ恩おんを施ほどこす主しゆは爾なんぢより身みを取とりて、神聖しんせいなる神しん゜を我われ等らに賜たまへり、光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

共頌カタワシヤ、「我が口を開きて」。

第三歌頌

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

ハリストスよ、爾なんぢの十じふ字架じかを以もつて不ふ虔者けんしやは辱はづかしめられたり、蓋けだし阱おとしあなを掘ほり、之これを竣をへて、自みづから其中そのうちに陷おちいり、謙けん卑ぴの者ものの角つのは爾なんぢの復ふく活くわつに藉よりて擧あげられたり。

人ひとを愛あいする主しゆよ、聖敎せいけうの傳道でんだうが諸民しよみんに廣くわう布ふするは水みづの海うみに溢あふるるが如ごとし、蓋けだし爾なんぢは墓はかより復ふく活くわつして、聖三者せいさんしやの光ひかりを顯あらはし給たまへり。

生神女讚詞 永遠えいゑんに王わうたる主しゆの活いける城邑まちよ、光くわう榮えいの事ことは爾なんぢに於おいて傳つたへられたり、女宰ぢよさいよ、爾なんぢに藉よりて神かみが地ち上じやうの者ものと偕ともに居をりたればなり。

又

イルモス 主宰しゆさいハリストス、我われ等らの防固かためよ、爾なんぢは力ちからを以もつて敵てきの弓ゆみを折をり、盾たてを壞やぶり給たまへり。主しゆよ、爾なんぢは聖せいなり。

至し淨じやうなる十じふ字架じかよ、爾なんぢは邪敎じやけうの汚穢けがれの潔淨きよめと現あらはれたり、蓋けだし至いたりて神聖しんせいなるイイススは爾なんぢの上うへに手てを舒のべ給たまへり。

生命いのちを受うけし墓はかよ、我われ等ら衆しゆう信者しんじやは爾なんぢに伏拜ふくはいすべし、蓋けだしハリストス我わが眞まことの神かみは爾なんぢの中うちに葬はうむられて、復ふく活くわつし給たまへり。

又 イルモス同上

ハリストスよ、預よ言者げんしやの言いひし如ごとく、イエッセイの根ねよりせし杖つゑたる童貞女どうていぢよは爾なんぢ花はなたる者ものを我われ等らの爲ために發ひらき給たまへり。主しゆよ、爾なんぢは聖せいなり。

地ちに生うまるる者ものを神かみに體合たいがふせしめん爲ために爾なんぢは童貞女どうていぢよより我われ等らの肉體にくたいを受うけて、貧まづしくなり給たまへり。主しゆよ、爾なんぢは聖せいなり。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

ハリストスよ、爾なんぢは慈じ憐れんに因よりて瘡痍きずと毁傷いたみとを受うけ、頰ほゝを批うつ陵辱はづかしめを忍しのび、恒忍ごうにんにして唾つばきせらるるを堪たへ、此これ等らを以もつて我わが爲ために救すくひを成なし給たまへり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

至し榮えいなる生命いのちよ、爾なんぢは貧まづしき者ものを苦くるしみより、乏とぼしき者ものを嘆なげきより救すくはん爲ために、死しに屬ぞくする身みにて死しを受うけ、壞やぶりし者ものを壞やぶり、衆しゆう人じんを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめ給たまへり、光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

生神女讚詞 主しゆハリストスよ、爾なんぢの苦くるしみにて獲えたる牧群ぼくぐんを記き念ねんし、爾なんぢの至し榮えいなる母はゝの慈じ憐れんなる禱いのりを受うけて、迫害はくがいせらるる者ものを顧かへりみて、爾なんぢの力ちからを以もつて之これを救すくひ給たまへ。

又

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの誕生うまれの奧あう義ぎは奇異きいにして言いひ難がたし。我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれ、且かつ樂たのしみて爾なんぢに呼よぶ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは己おのれの像ざうに循したがひて人ひとを造つくり、髑髏されかうべの處ところに十じふ字架じかに釘ていせられて、其その罪つみを犯おかすに因よりて死しせしを救すくひ給たまへり。

主しゆよ、爾なんぢ墓はかより復ふく活くわつせしに、死しは其その呑のみたる死し者しやを還かへし、地ぢ獄ごくの朽きう壞くわいせしむる國くには破やぶられたり。

生神女讚詞 潔いさぎよきマリヤ、黃金こがねの香かう爐ろよ、聖三者せいさんしやの一いつなる神かみ言ことばは混淆こんかうなく爾なんぢの内うちに降くだり、身みを取とりて世せ界かいを薰かをらせ給たまへり。

又 イルモス同上

神聖しんせいなる智慧ちゑの測度はかりを以もつて山やまを建たてし主宰しゆさいよ、爾なんぢは石いしとして山やまたる童貞女どうていぢよより人ひとの手てに由よらずして斫きられたり。人ひとを愛あいする主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

主宰しゆさい言ことばよ、爾なんぢは我われ等らの病やめる性せいを醫いやし給たまへり、之これに童貞女どうていぢよの内うちに於おいて最もつとも良よきき效能かうのうある藥料やくれうたる爾なんぢの至し淨じやうなる神性しんせいを合あはせしを以もつてなり。

童貞女どうていぢよより身みを取とり、人ひとと爲なりて我われに體合たいがふせし主しゆ言ことばよ、爾なんぢは我われの分ぶんなり、我わが望のぞむ所ところの嗣し業げふなり。

第五歌頌

イルモス 爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆ、悟さとり難がたき平安へいあんに、朝あさの禱いのりを奉たてまつる、爾なんぢの誡いましめは光ひかりなるに因よりて、我われに之これを敎をしへ給たまへ。

義ぎを以もつて全ぜん地ちを審判しんぱんする見みざる所ところなき主しゆよ、爾なんぢはエウレイ人じんの媢嫉ねたみに因よりて不義ふぎなる審判者しんぱんしやに付わたされて、古いにしへのアダムを定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへり。

死しより復ふく活くわつせしハリストスよ、爾なんぢの十じふ字架じかの勝かたれぬ力ちからを以もつて爾なんぢの平安へいあんを爾なんぢの諸しよ敎けう會くわいに與あたへて、我わが靈たましひを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢは獨ひとり萬物ばんぶつの中うちに容いれられざる神かみの言ことばを容いれて、天てんより至いたりて宏ひろき聖せいなる幕まくと顯あらはれたり。

又

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは見みえざる者ものにして地ちに現あらはれ、悟さとり難がたき者ものにして甘あまんじて人人ひとびとと偕ともに居をりたり。我われ等ら朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

嗚呼あゝ我わがハリストスよ、爾なんぢは戈ほこを以もつて脅わきを刺さされて、人ひとの肋あばら骨ぼねより造つくられ、衆しゆう人じんの滅亡ほろびの緣由ゆゑんと爲なりし者ものを詛のろひより解とき給たまへり。

性せいに於おいて父ちゝと同一どういつなるハリストス、我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは至し淨じやう至し尊そんなる爾なんぢの肉體にくたいの聖せいにせられし殿でんを死しより復ふく活くわつせしめ給たまへり。

又 イルモス同上

童貞女どうていぢよよ、神かみの言ことばたる爾なんぢの子こ、始はじめて造つくられしアダムの造成主ざうせいしゆは爾なんぢより己おのれの爲ために生いける身みを造つくりたれども、造物ざうぶつに非あらず。

童貞女どうていぢよよ、父ちゝと同一どういつなる神かみの言ことばたる爾なんぢの子こ主しゆイイススは二に性せいに於おいて完くわん全ぜんなる一いち位ゐ、全まつたき神かみ及および人ひとたるなり。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの罪つみの淵ふちは我われを圍かこみ、我わが靈たましひは亾ほろびんとす。祈いのる、主宰しゆさい敎導者けうだうしやよ、爾なんぢの高たかき手てを伸のべて、我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢの仁じん慈じなる降臨かうりんに因よりて、慈じ憐れんと洪恩こうおんとの淵ふちは我われを圍かこめり。蓋けだし爾なんぢは身みを取とり、僕ぼくの形かたちを受うけて、我われを神成しんせいして、己おのれと偕ともに光くわう榮えいを獲えしめ給たまへり。

殺ころす者ものは殺ころされし主しゆの生いかされたるを見みて、死しに服ふくせり。ハリストスよ、是これ爾なんぢの復ふく活くわつの表式あらはれ、爾なんぢの至し淨じやうなる苦くるしみの勝しよう利りの記號しるしなり。

生神女讚詞 智慧ちゑに超こえて獨ひとり造成主ざうせいしゆ及および人人ひとびとの轉達者てんたつしやと爲なりし至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの子こが罪つみを犯おかしし爾なんぢの諸僕しよぼくに慈じ憐れんを垂たれて、援助たすけを施ほどこさんことを祈いのり給たまへ。

又

イルモス イオナは地ぢ獄ごくの住所すまひに居をる形像かたどりと爲なりて呼よべり、人ひとを愛あいする主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

爾なんぢは傷きずを受うけて、地ぢ獄ごくに傷きずつけられし者ものを十じふ字架じかの苦くるしみに因よりて己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめ給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、人ひとを愛あいする主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

ハリストスよ、地ぢ獄ごくの門もんは恐懼おそれに因よりて爾なんぢの爲ために啓ひらかれ、敵てきの器うつはは劫おびやかさる。故ゆゑに女をんな等たちは爾なんぢを迎むかへて、悲かなしみに易かへて喜よろこびを受うけたり。

又 イルモス同上

形かたちなき者ものは不ふ朽きうなる童貞女どうていぢよより我われ等らに肖にたる身みを受うけ、形かたち及および物體ぶつたいと爲なりて、神性しんせいを易かへずして人ひとと現あらはれ給たまへり。

至し淨じやうなる者ものよ、我われを諸罪しよざいの淵ふち及および諸慾しよよくの烈風あらしより脫のがれしめ給たまへ。蓋けだし爾なんぢは信しんを以もつて爾なんぢに趨はしり附つく者ものの爲ために港みなとなり、奇き跡せきの淵ふちなり。

小讚詞コンダク、第三調。

慈じ憐れんなる主しゆよ、爾なんぢは今いま墓はかより復ふく活くわつして、我われ等らを死しの門もんより升のぼせ給たまへり。今いまアダムは樂たのしみ、エワは歡よろこび、諸しよ預よ言者げんしやは列れつ祖そと偕ともに絕たえず爾なんぢの權柄けんぺいの神聖しんせいなる能のう力りよくを讚ほめ歌うたふ。

同讚詞イコス 天てん地ちは今いま樂たのしみて、同心どうしんにハリストス神かみを讚ほめ歌うたふべし、彼かれが囚とらへられし者ものを墓はかより復ふく活くわつせしめしに因よる。萬物ばんぶつ皆みな喜よろこびて、萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ及および我われ等らの贖しよく罪主ざいしゆに宜よろしきに合かなふ歌うたを奉たてまつる。蓋けだし彼かれは今いま生命いのちを施ほどこす主しゆとして、人人ひとびとを地ぢ獄ごくより升のぼせて天てんに擧あげ、敵てきの傲慢がうまんを墜おとし、己おのれの權柄けんぺいの神聖しんせいなる能のう力りよくを以もつて地ぢ獄ごくの門もんを破やぶり給たまふ。

第七歌頌

イルモス 昔むかし敬虔けいけんなる三人みたりの少者せうしやをハルデイの焰ほのほに凉すゞしくせし如ごとく、我われ等らをも神性しんせいの明あかるき火ひにて輝かゞやかし給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よべばなり。

造物主ざうぶつしゆの十じふ字架じかに釘ていせらるる時とき、殿でんの美うるはしき幔まくは裂さけて、聖書せいしよに隱かくれたる眞しん理りを信者しんじやに顯あらはせり。故ゆゑに彼かれ等ら呼よぶ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

ハリストスよ、爾なんぢの脅わきの刺さされしに、爾なんぢは、定制ていせいに由よりて、地ちに滴したゝる生命いのちを施ほどこす神聖しんせいなる血ちの點滴したゝりを以もつて、地ちより造つくられし者ものを改あらため造つくり給たまへり。故ゆゑに彼かれ等ら呼よぶ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

聖三者讚詞 我われ等ら信者しんじやは善ぜんなる神しん゜を父ちゝ及および獨生どくせいの子こと偕ともに讚榮さんえいし、三さん位ゐの中うちに惟一ゆゐいちの元げん、惟一ゆゐいちの神性しんせいを尊たふとみて呼よばん、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

又

イルモス 驕おごれる苛虐者くるしめびとは少者せうしやの玩ぐわん具ぐと爲なれり。蓋けだし彼かれ等らは七倍しちばい燃もやされたる焰ほのほを塵ちりの如ごとく履ふみて歌うたへり、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

日ひは十じふ字架じかに懸かゝれる者ものの凡庸ぼんようの人ひとに非あらずして肉體にくたいを取とりし神かみなるを見みて晦くらみたり。我われ等ら彼かれに歌うたふ、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

地ぢ獄ごくは神性しんせいの堅けん固ごなる主しゆ、不ふ朽きうを賜たまふ者ものを受うけて、恐おそれて義ぎ者しやの靈たましひを吐はき出いだせり。蓋けだし彼かれ等ら呼よべり、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、潔いさぎよき心こゝろを以もつて爾なんぢを神かみの母はゝと承うけ認とむる者ものの爲ために爾なんぢは祝しゆく福ふくの最いと尊たふとき寶藏はうざうと顯あらはれたり、蓋けだし爾なんぢより我わが先せん祖ぞの神かみは身みを取とり給たまへり。

又 イルモス同上

光くわう榮えいの主しゆ、天てん上じやうの軍ぐんを其その權内けんないに持たもつ者もの、父ちゝと偕ともに坐ざする者ものは童貞女どうていぢよの手てに抱いだかる。主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

死しは猛烈まうれつなれども、爾なんぢに附つきたれば、爾なんぢ之これを滅ほろぼせり、童貞女どうていぢよより神性しんせいに合あはせられたる身みを取とりたればなり。主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我われ等ら皆みな爾なんぢ神かみを生うみし者ものを生しやう神女しんぢよと知しれり、三者さんしやの一いち位ゐ、爾なんぢより身みを取とりし者ものを生うみたればなり。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの腹はらの果みは祝しゆく福ふくせられたり。

第八歌頌

イルモス 敬虔けいけんの範のりたる少者せうしやは堪たへ難がたき火ひに入いれられしに、焰ほのほに惱なやまされずして、神聖しんせいなる歌うたを歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

爾なんぢの十じふ字架じかの髑髏されかうべの處ところに樹たてられしに、殿でんの裝さう飾しよくは裂さかれ、造物ざうぶつは恐懼おそれに由よりて傾かたぶきて歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

ハリストスよ、爾なんぢは墓はかより復ふく活くわつして、木きに緣よりて誘いざなはれて陷おちいりし者ものを神聖しんせいなる力ちからを以もつて改あらため給たまへり。故ゆゑに彼かれ呼よびて云いふ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、爾なんぢは神かみの殿でん、活いける居處すまひ、及および約匱やくひつと顯あらはれたり、爾なんぢは造物主ざうぶつしゆを人人ひとびとと和やはらげ給たまへり。我われ等ら悉ことごとくの造物ざうぶつは宜よろしきに合かなひて爾なんぢを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

又

イルモス 敬神けいしんの少者せうしやは無む形けいの火ひにて物質ぶつしつの火ひの焰ほのほを滅けして歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

神かみの言ことばは苦くるしみを受うけざりき、神かみの性せいは苦くるしみに與あづからざる者ものなればなり、神かみは人體じんたいにて苦くるしみを受うけ給たまへり。我われ等ら彼かれに歌うたふ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは死しに屬ぞくする者ものとして寢いね、不死ふしの者ものとして復ふく活くわつして、歌うたふ者ものを死しより救すくひ給たまふ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

聖三者讚詞 我われ等らは敬虔けいけんを抱いだきて三さん位ゐなる神性しんせい、言いひ難がたく合あはせらるる者ものに奉ほう事じして歌うたふ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

又 イルモス同上

爾なんぢは母はゝとして無む形けいの品ひん位ゐに超こえて神かみに近ちかくなり給たまへり。恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢの產さんを祝しゆく讚さんして、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

爾なんぢの本性ほんせいの華くわ美びは至いたりて美うるはしくして、其その輝煌かゞやきは神性しんせいの肉體にくたいなり。恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢの產さんを祝しゆく讚さんして、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

次ぎて生神女の歌、「我が靈は主を崇め」、附唱と共に、「ヘルワィムより尊く」。

第九歌頌

イルモス 神かみに適かなふ新あらたなる奇き蹟せきや、主しゆは顯あらはに童貞女どうていぢよの閉とざせる戸とを通とほり、入いるときは無む形けいの神かみにして、出いづるときは人體じんたいを衣きたる者ものとなり、戸とは元もとの儘まゝ閉とざせり。我われ等ら彼かれを神かみの母はゝとして、言いひ難がたく崇あがめ讚ほむ。

神かみの言ことばよ、爾なんぢ造物主ざうぶつしゆが木きに擧あげられ、神かみが諸僕しよぼくの爲ために身みにて苦くるしみを受うけ、氣息いきなくして墓はかに臥ふし、死し者しやを地ぢ獄ごくより解とき給たまひしを見みるは畏おそるべき哉かな。故ゆゑにハリストスよ、我われ等ら爾なんぢを全能者ぜんのうしやとして崇あがめ讚ほむ。

ハリストスよ、爾なんぢは死し者しやとして墓はかに置おかれて、列れつ祖そを死しの朽きう壞くわいより救すくひ、生命いのちの花はなを發ひらきて、死し者しやを復ふく活くわつせしめ、人ひとの性せいを光ひかりに導みちびき、神聖しんせいなる不ふ朽きうを之これに衣きせ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを永在えいざいの光ひかりの泉いづみとして崇あがめ讚ほむ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは神かみの殿でん及および寶はう座ざと現あらはれたり、至し上じやう者しやは之これに入いり、夫をつとなく爾なんぢより生うまれて、爾なんぢの體たいの門もんを啓ひらかざりき。故ゆゑに潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの息やめざる祈き禱たうを以もつて諸敵しよてきを速すみやかに我わが皇くわう帝ていに服ふくせしめ給たまへ。

又

イルモス 潔いさぎよき者ものよ、我われ等らは爾なんぢの至し淨じやうなる產さんに欣よろこばしく感かんぜられ、爾なんぢの慕したはしき美び德とくを奇きとして、天てん使しの歌うたを以もつて宜よろしきに合かなひて爾なんぢを神かみの母はゝとして崇あがめ讚ほむ。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは尊たふとからざる死しより衆しゆう人じんに尊たふときを流ながし、十じふ字架じかに釘ていせらるるに因よりて死しに屬ぞくする性せいを以もつて死しを嘗なめて、我われに不ふ朽きうを賜たまへり、人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

ハリストスよ、爾なんぢは墓はかより復ふく活くわつして我われを救すくひ、我われを升のぼせて、爾なんぢの父ちゝに攜たづさへ、彼かれと偕ともに其その右みぎに坐ざせしめ給たまへり、爾なんぢの仁じん慈じの至し大だいなるに因よりてなり。

又 イルモス同上

童貞女どうていぢよよ、敬虔けいけんなる信者しんじやは爾なんぢを讚さん美びして飽あくことを知しらず。神聖しんせいなる望のぞみより望のぞみに進すゝみて、我われ等ら常つねに爾なんぢを神かみの母はゝとして崇あがめ讚ほむ。

ハリストスよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために愧はぢを得えざる轉達者てんたつしやとして爾なんぢを生うみし者ものを賜たまへり。彼かれの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢは我われ等らに宏くわう恩おんを施ほどこす仁じん慈じなる神しん゜、父ちゝより爾なんぢに緣よりて出いづる主しゆを與あたへ給たまふ。

共頌カタワシヤの後に小聯禱。次ぎて主我等の神は聖なり、及び光耀歌。

「凡そ呼吸ある者」に主日の讚頌スティヒラ。第三調。

句 彼かれ等らの爲ために記しるされし審判しんぱんを行おこなはん爲ためなり、斯この榮さかえは其その悉ことごとくの聖人せいじんに在あり。

萬民ばんみん來きたりて、畏おそるべき奧密あうみつの力ちからを悟さとれ、蓋けだしハリストス吾わが救世主きうせいしゆ、太初はじめより有ある言ことばは、我われ等らの爲ために十じふ字架じかに釘ていせられ、甘あまんじて葬はうむられ、死しより復ふく活くわつせり、萬有ばんいうを救すくはん爲ためなり。我われ等ら彼かれに伏拜ふくはいせん。

句 神かみを其その聖所せいしよに讚ほめ揚あげよ、彼かれを其その有いう力りよくの穹蒼おほぞらに讚ほめ揚あげよ。

主しゆよ、爾なんぢの番兵ばんぺいは具つぶさに奇き跡せきを告つげたれども、虛むなしき集しふ會くわいは彼かれ等らの手てに賄賂まひなひを充みてて、爾なんぢの復ふく活くわつ、世せ界かいが讚榮さんえいする者ものを隱かくさんと思おもへり。我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 其その權能けんのうに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ、其その至いと嚴おごそかなるに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

復ふく活くわつの證明あかしを受うけて、皆みな歡喜よろこびに充みたされたり、蓋けだしマリヤ「マグダリナ」墓はかに來きたりて、石いしに坐ざする衣ころもの輝かゞやける天てん使しに遇あへり、彼かれ言いへり、何なんぞ生いける者ものを死し者しやの中うちに尋たづぬる、此こゝに在あらず、其その言いひし如ごとく復ふく活くわつし、爾なんぢ等らに先さきだちてガリレヤに往ゆく。

句 角らつぱの聲こゑを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、琴きんと瑟しつとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

人ひとを愛あいする主宰しゆさいよ、我われ等ら爾なんぢの光ひかりに於おいて光ひかりを觀みん、蓋けだし爾なんぢは死しより復ふく活くわつして、人類じんるゐに救すくひを賜たまへり、悉ことごとくの造物ざうぶつが爾なんぢ獨ひとり罪つみなき者ものを讚榮さんえいせん爲ためなり。我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

又讚頌スティヒラ、アナトリイの作。同調。

句 鼓つゞみと舞まひとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、絃いとと簫せうとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

主しゆよ、攜香女けいかうぢよは淚なみだを垂たれて、朝あさの歌うたを爾なんぢに獻さゝげたり。蓋けだし芳かうばしき香料かうれうを攜たづさへて、爾なんぢの墓はかに至いたり、爾なんぢの至し淨じやうなる體たいに傅ぬらんと欲ほつせり。然しかれども石いしに坐ざする天てん使しは彼かれ等らに福音ふくいんせり、何なんぞ生いける者ものを死し者しやの中うちに尋たづぬる、彼かれは死しを滅ほろぼして、神かみとして復ふく活くわつし、衆しゆうに大おほいなる憐あはれみを賜たまへり。

句 和くわ聲せいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、大聲たいせいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。凡およそ呼吸いきある者ものは主しゆを讚ほめ揚あげよ。

生命いのちを施ほどこす爾なんぢの墓はかに於おいて光ひかれる天てん使しは攜香女けいかうぢよに謂いへり、贖しよく罪主ざいしゆは墓はかを空むなしくし、地ぢ獄ごくを虜とりこにして、三みつ日目かめに復ふく活くわつせり、獨ひとり神かみ及および全能者ぜんのうしやなればなり。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる毋なかれ。

七日なぬかの首はじめの日ひ、マリヤ「マグダリナ」來きたりて、爾なんぢを墓はかに尋たづねしに、遇あはずして、哭なきて呼よべり、我わが救世主きうせいしゆよ、哀かなしい哉かな、衆しゆうの王わうよ、爾なんぢは竊ぬすまれたり。生命いのちを報はうずる二ふたりの天てん使しは墓はかの中うちより彼かれに呼よべり、婦をんなよ、何なんぞ哭なける、彼かれ曰いふ、我われ哭なく、蓋けだし人ひと我わが主しゆを墓はかより取とれり、我われ其その何處いづこに彼かれを置おきしを知しらず。此これを言いひて、顧かへりみて爾なんぢを見みて、直たゞちに呼よべり、我わが主しゆ、我わが神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き跡せきを傳つたへん。

エウレイ人じんは生命いのちを墓はかに閉とざせり、然しかれども盜賊たうぞくは舌したを以もつて樂たのしみを啓ひらきて、呼よびて曰いへり、我われの爲ために我われと共ともに十じふ字架じかに釘ていせられ、我われと偕ともに木きに懸かゝりたる者ものは、父ちゝと偕ともに寶はう座ざに坐ざする者ものとして我われに現あらはれたり、蓋けだし彼かれはハリストス我われ等らの救主きうしゆ、大おほいなる憐あはれみを有たもつ者ものなり。

光榮、福音の讚頌スティヒラ。

今も、生神女讚詞、「生神童貞女よ、爾は至りて讚美たる者なり」。

大詠頌。次ぎて讚詞トロパリ

今いま救すくひは世せ界かいに及およべり。我われ等ら墓はかより復ふく活くわつせし吾わが生命いのちの首かしらなる主しゆに歌うたふ、其その死しにて死しを滅ほろぼし、我われ等らに勝しよう利りと大おほいなる慈じ憐れんとを賜たまへばなり。

聯禱及び發放詞。

 主日の聖体礼儀に

聖體禮儀リトゥルギヤには眞福詞、第三調。

ハリストスよ、爾なんぢは誡いましめに背そむきし原げん祖そアダムを樂園らくゑんより逐おひ出いだせり。然しかれども爾なんぢ、洪恩こうおんなる主しゆよ、十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを承うけ認みとめし盜賊たうぞく、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものを其中そのうちに入いれ給たまへり。

句 心こゝろの淸きよき者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみを見みんとすればなり。

生命いのちを賜たまふ主しゆよ、爾なんぢは罪つみを犯おかしし我われ等らを死しの詛のろひに定さだめたり。然しかれども爾なんぢ、罪つみなき主宰しゆさいよ、爾なんぢの體からだにて苦くるしみを受うけて、死しすべき人人ひとびと、我われ等らをも爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものを活いかし給たまへり。

句 和わ平へいを行おこなふ者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみの子こと名なづけられんとすればなり。

主しゆ、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは死しより復ふく活くわつして、其その復ふく活くわつを以もつて我われ等らを諸もろもろの苦くるしみより復ふく活くわつせしめ、死しの悉ことごとくの力ちからを滅ほろぼし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢに呼よぶ、我われ等らをも爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

爾なんぢは神かみなるに因よりて、爾なんぢの三日みつかの葬はうむりを以もつて地ぢ獄ごくに在ある殺ころされし者ものを活いかして、己おのれと共ともに起おこし、仁じん慈じなるに因よりて、我われ等ら衆しゆう人じん、恒つねに信しんを以もつて爾なんぢに、我われ等らをも爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものに不ふ朽きうを流ながし給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは死しより復ふく活くわつして、先まづ攜香女けいかうぢよに現あらはれて、慶よろこべよと呼よび、且かつ彼かれ等らを以もつて爾なんぢの友ともに爾なんぢの復ふく活くわつを報しらせ給たまふ。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢに呼よぶ、我われ等らをも爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

モイセイは山やまの上うへに手てを伸のべて、十じふ字架じかを預よ象しやうして、アマリクに勝かてり。我われ等ら皆みな信しんを以もつて之これを惡あく鬼きに對たいする堅けん固ごなる武器ぶきとして受うけて呼よぶ、我われ等らをも爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへ。

光榮 我われ等ら信者しんじやは父ちゝと子こと聖神せいしん、惟一ゆゐいちの神かみ、惟一ゆゐいちの主しゆを崇あがめ歌うたふ。聖三者せいさんしやは獨一どくいつの日ひより三さん光くわうの輝かゞやくが如ごとく、我われ等ら衆しゆうを照てらし給たまふ。故ゆゑに我われ等ら呼よぶ、我われ等らをも爾なんぢの國くにに於おいて憶おもひ給たまへ。

今も、生神女讚詞 神かみの門もんよ、慶よろこべ、身みを取とりし造物主ざうぶつしゆは此これに藉よりて出いでて、其その封印ふういんを損そこなはざりき。神聖しんせいの雨あめたるハリストスを抱いだく輕かろき雲くもよ、慶よろこべ、階梯かけはし及および天てんの寶はう座ざよ、慶よろこべ、樹こ蔭かげ繁しげき斫きられざる尊たふとき神かみの山やまよ、慶よろこべ。

提綱ポロキメン、第三調。

我わが神かみに歌うたひ歌うたへよ、我わが王わうに歌うたひ歌うたへよ。

句 萬民ばんみんよ、手てを拍うち、歡よろこびの聲こゑを以もつて神かみに呼よべ。

「アリルイヤ」、主しゆよ、我われ爾なんぢを恃たのむ、願ねがはくは我われ世世よよに羞はぢを得えざらん。

句 我わが爲ために堅けん固ごなる避所かくれがとなりて、我われに常つねに隱かくるるを得えしめ給たまへ。

 主日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に傷感の讚頌スティヒラ、第三調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

天てんの父ちゝよ、我われ大おほいに罪つみを犯おかし、爾なんぢ本性ほんせいの仁じん慈じ慈じ憐れんなる主宰しゆさいを悲かなしましめて、今いま爾なんぢに歸かへる者ものを蕩たう子しの如ごとく受うけて、爾なんぢが傭やとひ人びとの一ひとりと爲なし給たまへ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

我われ不ふ當たうの者ものは懶惰おこたりを極きはめて度ど生せいし、旣すでに生命いのちの終をはりに近ちかづきて、我われを待まつ審判しんぱん及および神かみより遠とほざけらるることを思おもはず。救世主きうせいしゆよ、我われを反正はんせいせしめて、此これ等らより脫のがれしめ給たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

至し善ぜんの主しゆよ、我わが卑微ひびなる靈たましひを「ゲエンナ」及および切齒はがみより、其その他た凡およその永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ、我わが信しんを以もつて爾なんぢ本性ほんせいの慈じ憐れん仁愛じんあいなる神かみを歌うたはん爲ためなり。

次に月課經ミネヤの聖人の讚頌スティヒラ。光榮、聖人の、今も、生神女讚詞。若し月課經なくば、聖なる無形軍の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

主しゆよ、爾なんぢは衆しゆうに爾なんぢが仁じん慈じの富とみを顯あらはして、無む形けいの品ひん位ゐを造つくり、今いま默もださざる聲こゑを以もつて智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの光くわう榮えいを讚榮さんえいする者ものを無むより有いうと爲なし給たまへり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢの天てん使しの能力ちからは大おほいなり。彼かれ等らは無む形けいにして世せ界かいを巡めぐりて、爾なんぢより受うけし能力ちからを以もつて諸しよ敎けう會くわいを護まもり、且かつ爾なんぢに全ぜん地ちの爲ために祈いのる。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

爾なんぢに奉ほう事じする天軍てんぐんは爾なんぢの獨一どくいつなる三日さんじつの華くわ美びを見みて、世せ界かいに居をる者ものの爲ために第だい二にの光ひかりと現あらはれ、齋ひとしく輝かゞやきて、我われ等らに神聖しんせいなる光明くわうみやうを賜たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞 萬物ばんぶつを宰さい制せいする至し淨じやうなる者ものよ、我われ靈たましひの諸慾しよよくに厲はげしく制せいせらるる者ものを爾なんぢの熱心ねつしんなる轉達てんたつ及および母はゝの祈き禱たうを以もつて釋ときて、爾なんぢの子こ及および神かみに服役ふくえきせしめ給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに傷感の讚頌スティヒラ、第三調。

ハリストスよ、我われ等らは暮くれの歌うたを香かう爐ろ及および屬神ぞくしん゜の詩賦しふと共ともに爾なんぢに奉たてまつる、我われ等らの靈たましひを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

主しゆ我わが神かみよ、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢは衆しゆう人じんの爲ために救すくひなればなり。諸慾しよよくの烈風あらしは我われを擾みだし、我わが不ふ法はふの重おも負には我われを溺おぼらす。我われに援助たすけの手てを授さづけて、我われを痛つう悔くわいの光ひかりに升のぼせ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり慈じ憐れんにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり。我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかの能力ちからは大おほいなり、蓋けだし一ひとつの處ところに建たてられて、全ぜん世せ界かいに行動かうどうし、漁者ぎよしやの中うちより使徒しと、異い邦人はうじんの中うちより致ち命者めいしやを現あらはして、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのらしむ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ、爾なんぢに祈いのる衆しゆう人じんの轉達者てんたつしやよ、我われ等ら爾なんぢに因よりて勇いさみを得え、爾なんぢを以もつて誇ほこりと爲なす、我わが悉ことごとくの倚賴たのみは爾なんぢに在あり、爾なんぢより生うまれし者ものに爾なんぢの不ふ當たうなる諸僕しよぼくの爲ために祈いのり給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ及び發放詞。

 主日の晩堂課

至聖なる生神女に奉る祈禱の規程カノン、第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

獨ひとり大名たいめいにして至し聖せいなる童貞女どうていぢよマリヤ、ヘルワィムより尊榮そんえいなる者もの、ダワィドの女むすめ、イアコフの榮さかえ、我わが神かみの母はゝよ、爾なんぢの光くわう榮えいは極きはめて大おほいなり。我われ等ら皆みな信しんを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいす。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは言ことばを以もつて天てんを幔まくの如ごとく張はりたる主しゆを人ひとの如ごとく爾なんぢの手てに抱いだきたり。彼かれに我わが靈たましひを無知むちなる諸慾しよよく及および諸もろもろの憂患うれひより脫のがれしめんことを常つねに祈いのり給たまへ。

光榮 世世よよの先さきより預よ定ていせられし童貞女どうていぢよ、至いたりて潔いさぎよき紫し袞こん衣いなる者ものよ、光くわう榮えいの王わうは末すゑの時ときに於おいて爾なんぢを衣きて、原げん祖そアダムの皮かはの衣ころもを掩おほひ給たまへり。祈いのる、今いま我われをも掩おほひ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは堪たへ難がたき火ひたるハリストスを生うみて、人類じんるゐを朽きう壞くわいせしめし古いにしへの罪つみを涸からせり。祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが靈たましひの諸慾しよよくの流ながれを涸からし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、仁じん慈じなる定制ていせいに因よりて、萬有ばんいうの主宰しゆさいは爾なんぢの子こと名なづけられたり。故ゆゑに女宰ぢよさいよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを諸慾しよよくの奴ど役えきより救すくひ給たまへ。

救すくひの港みなと及および無む慾よくの泉いづみを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、我われ爾なんぢの僕ぼくを速すみやかに肉慾にくよくの烈風あらしより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは入いらざる光ひかりの至いたりて光くわう明めいなる燈ともしびと爲なりて、世せ界かいを照てらせり。祈いのる、爾なんぢの光くわう線せんにて我わが靈たましひの雲くもを拂はらひ給たまへ。

今も 生命いのちを賜たまふハリストスを言いひ難がたく生うみし女宰ぢよさいよ、我われ多おほくの惡あく慾よくに因よりて靈たましひの死し者しやと爲なりし者ものを活いかし給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり。我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

肉體にくたいの意念おもひの戰たゝかひは我われを攻せめて、我わが靈たましひを執とらふ。凡およその智慧ちゑに超こゆる和わ平へいを生うみし女宰ぢよさいよ、爾なんぢの和わ平へいを我われに與あたへ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは神しん゜靈れいの香料かうれうを腹はらより世せ界かいの爲ために流ながせり。故ゆゑに我わが靈たましひを諸慾しよよくの汚けがれより潔きよめて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて無む慾よくの香料かうれうを我われに與あたへ給たまへ。

光榮 我われ爾なんぢを生命いのちの「マンナ」たる神人かみびとハリストスを容いれし黃こ金がねの壺つぼと知しりて祈いのる。飢き渴かつに苦くるしめる吾わが靈たましひを養やしなひて、恩おん寵ちようの流ながれを飮のましめ給たまへ。

今も エワは先さきに不ふ節制せつせいに因よりて死しを世よに入いれ、爾なんぢは潔いさぎよき童貞どうていを以もつて眞まことの生命いのちを入いれたり。故ゆゑに爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを罪つみの死しより救すくひ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは見みえざる者ものにして地ちに現あらはれ、悟さとり難がたき者ものにして甘あまんじて人人ひとびとと偕ともに居をりたり。我われ等ら朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

童貞女どうていぢよよ、我われ等らの爲ために救すくひと爲なりし爾なんぢの子こは衆しゆうを朽きう壞くわいより救すくひ給たまへり。故ゆゑに我われを肉體にくたいの意念おもひ及および諸慾しよよくの攻擊こうげきより救すくひ給たまへ。

人ひとを潔きよめし熾炭やけずみの鉗ひばさみたる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうの火ひを以もつて我わが諸慾しよよくの思おもひの荊棘いばらを焚やき盡つくし給たまへ。

光榮 爾なんぢは仁愛じんあいに因よりて我われ等らの爲ために屠ほふられし神聖しんせいなる犢こうしを生うみし神かみの牝め牛うしなり。彼かれの神聖しんせいなる血ちを以もつて我わが心こゝろを潔きよめ給たまへ。

今も 我わが先さきに得えたる諸德しよとくの美うるはしき衣ころもは我わが懶惰おこたりに因よりて剥はがれたり。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは今いま爾なんぢの祈き禱たうに因よりて更さらに美うるはしきを我われに衣きせ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの罪つみの淵ふちは我われを圍かこみ、我わが靈たましひは亾ほろびんとす。祈いのる、主宰しゆさい敎導者けうだうしやよ、爾なんぢの高たかき手てを伸のべて、我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

凶きよう惡者あくしやの甚はなはだしき攻擊こうげきは我わが靈たましひの殿でんを動うごかせり。地ちを水みづの上うへに建たてたるハリストスを生うみし者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて之これを堅かため給たまへ。

爾なんぢは最いと貴たふとき眞珠しんじゆを生うみて、地ち上じやうの者ものの債おひめを解ときたり。故ゆゑに至し淨じやうなる者ものよ、速すみやかに我わが罪つみと慾よくと憂うれひとの縲絏なはめを解とき給たまへ。

光榮 爾なんぢの胎たいより生うまれし至し善ぜんなる神かみは爾なんぢを信者しんじやの爲ために避所かくれが及および神聖しんせいなる庇覆おほひとして與あたへたり。故ゆゑに至し淨じやうなる者ものよ、我われをも爾なんぢの手てにて覆おほひて護まもり給たまへ。

今も 不ふ當たうなる我われ屢しばしば度ど生せいの浪なみに危あやうく溺おぼらされ、常つねに惡敵あくてきの攻擊こうげきに荒あらさるる者ものは今いま爾なんぢに呼よぶ、生しやう神女しんぢよよ、我われを援たすけ給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第三調。

言ことばの神聖しんせいなる幕まくと爲なりし獨一どくいつ至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ母はゝ、潔けつ淨じやうを以もつて諸天しよてん使しに超こえたる者ものよ、我われ衆しゆう人じんに超こえて肉體にくたいの罪つみに汚けがされたる者ものを爾なんぢの祈き禱たうの神聖しんせいなる水みづを以もつて潔きよめて、我われに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 昔むかし敬虔けいけんなる三人みたりの少者せうしやをハルデイの焰ほのほに凉すゞしくせし如ごとく、我われ等らをも神性しんせいの明あかるき火ひにて輝かゞやかし給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よべばなり。

詭き譎けつなる惡あく鬼きの會くわい及および多おほくの肉慾にくよくは我われを圍かこめり。戰たゝかひに堅けん固ごなるハリストスを生うみし者ものよ、我われを甚はなはだしき憂患うれひ及および厲はげしき攻擊こうげきより救すくひ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、ヘルワィムの性せいの近ちかづき難がたく、天てん使しの品ひん位ゐの畏おそるべき惟一ゆゐいちの主しゆは爾なんぢの内うちに入いりて、我われ等らを新あらたにし給たまへり。女宰ぢよさいよ、彼かれに藉よりて我われを見みえざる敵てきの爲ために畏おそるべき者ものと顯あらはし給たまへ。

光榮 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは生命いのちの樹きを生しやうぜし神しん゜靈れいの樂園らくゑんと爲なれり、アダムは之これに與あづかりて死しの果みより救すくはれたり。故ゆゑに我われをも今いま樂たのしましめて、諸慾しよよくの糧かてより脫のがれしめ給たまへ。

今も 人人ひとびとの爲ために救主きうしゆを生うみ、我わが先せん祖ぞの神かみの聖せいにせられたる殿でんと爲なりし者ものよ、我われを肉慾にくよくの汚けがれ及および惡あく鬼きの誘いざなひより脫のがれしめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 敬虔けいけんの範のりたる少者せうしやは堪たへ難がたき火ひに入いれられしに、焰ほのほに惱なやまされずして、神聖しんせいなる歌うたを歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

世せ界かいに晝ひると夜よるとの大おほいなる光くわう體たいを造つくりし光ひかりの雲くもなる神かみの母はゝよ、爾なんぢの光くわう線せんを以もつて我わが諸慾しよよく諸罪しよざいの黑暗くらやみを悉ことごとく拂はらひて、我われを光ひかりの子こと爲なし給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、天てんより爾なんぢの腹はらに降くだりし雨あめを以もつて我わが靈たましひ及および我わが心こゝろを濕うるほして潔きよめ、諸もろもろの慾よくと愁うるひとの炎ほのほを滅けし給たまへ、我わが熱心ねつしんにして爾なんぢを萬世ばんせいに讚榮さんえいせん爲ためなり。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは天てん地ちの萬ばん性せいを無むより造つくりし神かみの睿えい智ちを言いひ難がたく生うみ給たまへり。其その言ことばを以もつて我われに智慧ちゑと智ち識しきとを與あたへ給たまへ、我わが常つねに爾なんぢの神聖しんせいなる產さんを歌うたはん爲ためなり。

今も 世せ界かいの女宰ぢよさいよ、爾なんぢの祈き禱たうに由よりて我わが靈體れいたいの濕うるほされ、我わが諸罪しよざいの疾やまひ及および惡あく慾よくより速すみやかに脫のがれんことを求もとめて爾なんぢに祈いのる、爾なんぢは衆しゆう人じんの醫治いやしなればなり。

第九歌頌

イルモス モイセイはシナイ山ざんに於おいて棘いばらの中うちに、爾なんぢを焚やかれずして神性しんせいの火ひを胎内たいないに孕はらみし者ものとして觀み、ダニイルは爾なんぢを截きられざる山やまとして觀み、イサイヤは芽めを萌きざしし杖つゑ、ダワィドの根ねより出いでし者ものなりと呼よべり。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは神聖しんせいなる織機はたなり、之これに藉よりて聖神せいしんはハリストスの爲ために衣ころもたる肉體にくたいを織おり給たまへり。祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうに由よりて我われに潔けつ淨じやうの衣ころもを衣きせ給たまへ。

神しん゜靈れいの葡ぶ萄だう、我われ等らに不ふ朽きうの酒さけを飮のましむる神聖しんせいなる房ふさを生しやうぜし者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが靈たましひの爲ために傷しやう感かんと潔けつ淨じやうの酒さけとを流ながし給たまへ。

光榮 潔いさぎよくして聖せいなる婚筵こんえんの宮みや、其中そのうちに神かみが神性しんせいを以もつて人じん性せいに配合はいがふせし者ものよ、爾なんぢに祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを爾なんぢの子こに合あはせて、神聖しんせいなる生命いのちに與あづからしめ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは不ふ朽きうの泉いづみたるハリストスを生うみて、人性じんせいの朽きう壞くわいの草くさ場ばを變化へんくわせり。祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、我われを焦こがし我われを擾みだす諸慾しよよくの猛烈まうれつなるを殺ころし給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。聖三祝文。「天に在す」の後に諸讚詞トロパリ。其他常例の如し、幷に發放詞。

月曜日

 月曜日の早課

第一の誦文の後に傷感の坐誦讚詞セダレン、第三調。

吾わが靈たましひよ、地ち上じやうに在ある時ときに痛つう悔くわいせよ、蓋けだし塵ちりは墓はかに在ありて歌うたはず、罪過ざいくわより救すくはず。ハリストス神かみに呼よべ、心こゝろを知しる主しゆよ、我われ爾なんぢの前まへに罪つみを犯おかせり、神かみよ、我われを定罪ていざいせざる先さきに我われを宥なだめ、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

吾わが靈たましひよ、罪過ざいくわの中うちに在ありて何いづれの時ときに至いたるか、痛つう悔くわいを延のばして何いづれの時ときに至いたるか。將しやう來らいの審判しんぱんを念おもひに抱いだきてハリストス神かみに籲よべ、心こゝろを知しる主しゆよ、我われ罪つみを犯おかせり、罪つみなき主しゆよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞

生しやう神女しんぢよよ、ガウリイルは爾なんぢが童貞どうていの美うるはしきと爾なんぢが潔けつ淨じやうの光ひかれるとを奇きとして呼よべり、如何いかなる爾なんぢに適かなふ讚さん美びを爾なんぢに獻さゝげん、如何いかに爾なんぢを名なづけん、我われ訝いぶかりて驚おどろく。故ゆゑに命めいぜられし如ごとく爾なんぢに呼よぶ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者もの、慶よろこべよ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

畏おそるべき審判しんぱんには我われ罪つみする者ものなきに攻せめられ、證しようする者ものなきに定罪ていざいせらる、蓋けだし良りやう心しんの書しよは啓ひらかれ、隱かくれたる所爲しわざは顯あらはる。神かみよ、此この公こう衆しゆうの觀みる所ところに我わが行おこなひし事ことを糾たゞさざる前さきに我われを潔きよめ、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

主しゆよ、爾なんぢは我わが諸罪しよざいの深處ふかみを知しる。ペトルに於おけるが如ごとく、我われに援助たすけの手てを授さづけて、我われを救すくひ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞

至いたりて讚さん美びたる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らの忍耐にんたいの勇敢いさみは惡敵あくてきの詭き計けいに勝かてり、故ゆゑに爾なんぢ等らは永遠えいゑんの福ふくを獲えたり。眞しん理りの證しよう者しやよ、ハリストスを愛あいする人人ひとびとの群ぐんを救すくはんことを主しゆに祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞

マリヤ・童貞女どうていぢよ・母はゝ、聖せいなる山やま、エデムの樂園らくゑんたる者ものよ、慶よろこべ、爾なんぢよりハリストス神かみ、種たねなき言ことば、世せ界かいの爲ために生命いのちを生しやうぜし主しゆは生うまれ給たまへり。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

嗚呼あゝ至いたりて義ぎなる審判者しんぱんしやよ、我われ等らが爾なんぢの偏へん頗ぱなき審判しんぱん座ざ、神聖しんせいなる審判しんぱんの前まへに立たち、天軍てんぐんも慄をのゝきて爾なんぢの前まへに立たたん時とき、我われ如何いかにして其時そのとき爾なんぢの前まへに現あらはれん、我わが所爲しわざは定罪ていざい及および火ひに當あたる。祈いのる、爾なんぢの天てん使等しらの祈き禱たうに由よりて、其時そのとき我われを宥なだめ、我われを救すくひ給たまへ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは全能者ぜんのうしやとして言ことばを以もつて天てん地ちの萬物ばんぶつを造つくれり。天てん使しの品ひん位ゐは慄をのゝきて爾なんぢの前まへに立たち、爾なんぢに息やめざる讚さん美びを奉たてまつりて、爾なんぢの光ひかりを以もつて地ちの四し極きよくを照てらす。彼かれ等らと偕ともに我われ等らも爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの慈じ憐れんに由よりて我われ等らを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは耕作かうさくせられざる葡ぶ萄だうの樹きとして、至いたりて美うるはしき房ふさ、衆しゆうの靈體れいたいを樂たのしましむる救すくひの酒さけを我われ等らに流ながす者ものを生しやうぜり。故ゆゑに我われ等ら常つねに爾なんぢを諸福しよふくの緣由ゆゑんとして讚さん美びして、天てん使しと偕ともに爾なんぢに呼よぶ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者もの、慶よろこべよ。

傷感の規程カノン、我が主イイススハリストス及び其聖なる致命者に奉る。イオシフ師の作。第三調。

第一歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは海うみを分わかちて、ファラオンの兵車いくさぐるまを深處ふかみに掩おほひ、歌うたを以もつて爾なんぢを讚ほめ揚あぐるイズライリ民みんを救すくひ給たまへり。

罪つみなき主しゆよ、我わが無智むちにして行おこなひし諸罪しよざいの黑暗くらやみより我われを脫のがれしめて、昔むかし淫いん婦ぷに於おいてせし如ごとく、我われに傷しやう感かんの淚なみだを與あたへ給たまへ。

甘あまんじて洞窟ほらあなに生うまれし仁愛じんあいの主しゆよ、我われ不ふ當たうの行おこなひに因よりて盜賊たうぞくの巢窟さうくつと爲なりし者ものを諸德しよとくに因よりて爾なんぢの殿でんと爲なし給たまへ。

致命者讚詞 神かみに感かんぜらるる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは聖神せいしんの指導みちびきに依よりて苦くるしみの烈風あらしを過とほりて、神聖しんせいなる港みなとに到いたれり。

致命者讚詞 讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは聖神せいしんの恩おん寵ちように照てらされて、喜よろこびて邪敎じやけうの最いと深ふかき黑暗くらやみより脫のがれたり。

生神女讚詞 罪つみを犯おかしし者ものの扶助たすけ、陷おちいりし者ものの更新あらためたる至し聖せい至し潔けつなる童貞女どうていぢよよ、我われ多た罪ざいの者ものに傷しやう感かんの痛つう悔くわいを與あたへ給たまへ。

又聖なる無形天軍の規程カノン。其冠詞は、無形軍に第三の歌を奉る。フェオファンの作。第三調。

第一歌頌

イルモス 人人ひとびとよ、童貞女どうていぢよより我わが救すくひの爲ために生うまれて、地ちの物ものを天てんの物ものと一いつに爲なしし主しゆに新あらたなる歌うたを歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

無む原げんの光ひかりにして萬物ばんぶつを照てらすハリストス神かみよ、爾なんぢの軍ぐんの轉達てんたつに因よりて我わが思念おもひを照てらし給たまへ。

救世主きうせいしゆよ、天てん使しの品ひん位ゐは天てん使しに宜よろしきが如ごとく爾なんぢの至いたりて豐ゆたかなる恩おん寵ちように與あづかるを悅よろこびて、奧密あうみつに爾なんぢの美うるはしき光明くわうみやうに輝かゞやかさる。

生命いのちを施ほどこし、諸しよ恩おんを賜たまふ善ぜんなる神しん゜、父ちゝより出いづる主しゆは神聖しんせいなる恩おん寵ちようを以もつて天軍てんぐんを堅かためて、善ぜんの動うごかざる者ものと爲なし給たまへり。

生神女讚詞 無む形けいの品ひん位ゐの首しゆ長ちやう、光くわう榮えいなるガウリイルよ、今いまも歡喜よろこびの聲こゑを以もつて恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものに呼よべ、純じゆん潔けつなる者ものよ、慶よろこべ。

第三歌頌

イルモス 獨ひとり慈じ憐れんの深ふかき主しゆよ、我われを固かためよ、ペトルに於おけるが如ごとく、我われに手てを伸のべて、我われを救すくひ給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆよ、溺おぼるるペトルを救すくひし如ごとく、斯かく我われをも我わが罪惡ざいあくの深處ふかみより引ひき上あげ給たまへ。

詭き譎けつの者ものは諸慾しよよくを以もつて我われを殺ころせり。生いのちを施ほどこす主しゆよ、爾なんぢは痛つう悔くわいを以もつて我われを活いかし給たまへ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは非義ひぎに有形いうけいの火ひを以もつて焚やかれて、無む形けいにして無む形けいの光ひかりを慕したふ望のぞみを以もつて燃もえたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは裂さかれて、詭き譎けつの者ものの惡謀あくぼう及および殘ざん虐ぎやくを空むなしくなして、榮えい冠くわんを獲えたり。

生神女讚詞 女宰ぢよさいマリヤよ、我われ靈たましひを滅ほろぼす多おほくの慾よくに縛しばられたる者ものを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて解とき給たまへ。

又

イルモス 主宰しゆさいハリストス、我われ等らの防固かためよ、爾なんぢは力ちからを以もつて敵てきの弓ゆみを折をり、盾たてを壞やぶり給たまへり。主しゆよ、爾なんぢは聖せいなり。

至し善ぜんなる主しゆよ、爾なんぢは奧密あうみつに爾なんぢの無む形けいの光明くわうみやうにて輝かゞやける天てん使しの品ひん位ゐを爾なんぢの仁じん慈じを流ながす河かはと顯あらはし給たまへり。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは己おのれの仁じん慈じと能のう力りよくとの富とみを顯あらはさん爲ために靈れい智ちなる軍ぐんを造つくりて、爾なんぢの光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なし給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢに奉ほう事じする輝かゞやける天てん使しの軍ぐんは慄をのゝきて爾なんぢの前まへに立たちて、常つねに爾なんぢの無む量りやうなる能力ちからを崇あがめ歌うたふ。

生神女讚詞 神かみの母はゝよ、全まつたき人ひとの主宰しゆさいは本性ほんせいを易かへずして爾なんぢより全まつたき人ひとを受うけて、爾なんぢを恩おん寵ちようの泉いづみと顯あらはし給たまへり。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、豈あに爾なんぢは河かはに向むかひて怒いかるか、河かはに向むかひて爾なんぢの憤いきどほりを洩もらすか、或あるひは海うみに向むかひて爾なんぢの怒いかりを發はつするか。

主しゆよ、我わが諸慾しよよくの縲絏なはめを解とき、痛つう悔くわいを以もつて我われを縛しばりて、爾なんぢの福ふくに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

日ひたるハリストスよ、我われに痛つう悔くわいの光くわう明めいなる模式のりを輝かゞやかして、我わが惡あくの深ふかき夜よるを除のぞき給たまへ。

致命者讚詞 睿えい智ちなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは熾炭やけずみの如ごとく邪敎じやけうを焚やきて、黑暗くらやみに居をる人人ひとびとを照てらす者ものと顯あらはれたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らはハリストスの死しの狀じやうに效ならひて、己おのれを種種しゆじゆの苦くるしみに委ゆだねたり、故ゆゑに神聖しんせいなる生命いのちを嗣つぎ給たまへり。

生神女讚詞 罪つみを犯おかす者ものの轉達者てんたつしやなる潔いさぎよき者ものよ、我われに實まことの痛つう悔くわいを與あたへて、我わが諸慾しよよくの煩擾みだれを鎭しづめ給たまへ。

又

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの誕生うまれの奧あう義ぎは奇異きいにして言いひ難がたし。我われ爾なんぢの風聲おとづれを聽ききて懼おそれ、且かつ樂たのしみて爾なんぢに呼よぶ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

三日さんじつの光明くわうみやうを受うけて輝かゞやける雲くもたる天軍てんぐんは三さん位ゐの神かみの意旨いしを以もつて造つくられて、聖神せいしんの力ちからを以もつて宰つかさどらる。

救世主きうせいしゆよ、天てん使等しらは世せ界かいに爾なんぢを信しんずるを望のぞむ者ものに守しゆ護ご者しやとして遣つかはされて、爾なんぢの敬虔けいけんなる諸僕しよぼくを護まもりて、彼かれ等らの救すくひを助たすく。

天てん使等しらは爾なんぢに近ちかづくに由よりて奧密あうみつに爾なんぢの神元しんげんの光ひかりに照てらされて呼よぶ、人ひとを愛あいする主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ僕ぼくとして祈いのりて今いま爾なんぢの帲幪おほひの下したに來きたる。神かみの母はゝ、無む慾よくの緣由ゆゑんなる主しゆを生うみし者ものよ、我われを諸慾しよよくの煩擾みだれより脫のがれしめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス ハリストス神かみよ、爾なんぢの暮くれざる光ひかりにて我わが謙けん卑ぴの靈たましひを照てらして、爾なんぢを畏おそるる畏おそれに導みちびき給たまへ、爾なんぢの誡いましめは光ひかりなればなり。

人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの審判しんぱんに於おいて我われを善行ぜんかうに裸ら體たいなる者ものとして立たたしむる勿なかれ、痛つう悔くわいを以もつて神聖しんせいなる業わざの衣ころもを我われに衣きせ給たまへ。

我われ諸慾しよよくの武器ぶきに傷きずつけられて、失望しつばうの坎あなに陷おちいりたり。主宰しゆさいよ、我われを棄すつる勿なかれ、滅亾ほろびの坎あなより出いだして我われを醫いやし給たまへ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは鐵搭くまでにて厲はげしく搔かかれ、瘡痍きずにて苦くるしめられ、劍つるぎにて殺ころされしに、偶像ぐうざうの前まへに膝ひざを屈かゞめざりき。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、世せ界かいは常つねに爾なんぢ等らの種種しゆじゆの苦くるしみを崇あがめて仰あふぎ見みる、此これ等らに由よりて爾なんぢ等らは天てん上じやうに天てん使等しらと偕ともに居をるを得えたればなり。

生神女讚詞 獨ひとり言ことばに緣よりて地ち上じやうに身みを以もつて神かみの言ことばを生うみて童貞女どうていぢよに止とゞまりし者ものよ、我われを無知むちの行おこなひより脫のがれしめ給たまへ、我わが尊たふとき言ことばを以もつて爾なんぢを讚ほめ歌うたはん爲ためなり。

又

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは見みえざる者ものにして地ちに現あらはれ、悟さとり難がたき者ものにして甘あまんじて人人ひとびとと偕ともに居をりたり。我われ等ら朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

信者しんじやよ、我われ等ら父ちゝと、子こと、聖神せいしんとの三さん光くわうの光ひかりに照てらされて、天てん使しの軍ぐんと共ともに惟一ゆゐいちなる神かみを崇あがめ歌うたはん。

天てん使しの品ひん位ゐは神性しんせいの入いらざる光ひかりに照てらされ、自みづからも輝かゞやける燈ともしびと爲なりて、豐ゆたかに神かみの恩おん寵ちようを地ち上じやうの者ものに傳つたふ。

聖神せいしんの恩おん寵ちように輝かゞやけるセラフィム等らは默もださざる聲こゑを以もつて三聖さんせいの歌うたを神かみに奉たてまつりて、我われ等らに無む原げんなる一性いつせい一體いつたいの三者さんしやを尊たふとまんことを敎をしふ。

生神女讚詞 至いたりて潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、天てん使し首しゆガウリイルは天てんより降くだりて、生いのちを施ほどこす主しゆを種たねなく生うまんことを爾なんぢに福音ふくいんせり。

第六歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、凶きよう惡あくなる諸敵しよてきに攻せめられて、將まさに亾ほろびんとする我われ等らを棄すつる勿なかれ。救世主きうせいしゆよ、預よ言者げんしやを猛獸まうじうより拯すくひし如ごとく、我われ等らを拯すくひ給たまへ。

ハリストスよ、我われは古いにしへのファリセイの如ごとく思おもひを以もつて高たかぶり、罪つみを以もつて甚はなはだしく墮だ落らくせり、詭き譎けつの者ものは之これを見みて樂たのしむ。十じふ字架じかを以もつて彼かれを卑ひくくせし主しゆよ、今いま卑ひくくなりたる我われを憐あはれみ給たまへ。

主宰しゆさいよ、我われ不ふ當たうの者ものは衆しゆう人じんに超こえて我わが度ど生せいに於おいて罪つみを好このみて、爾なんぢの恒忍ごうにんを竭つくしたれども、心こゝろ尚なほ頑陋かたくななり。祈いのる、爾なんぢの仁じん慈じを以もつて我われを反正はんせいせしめ給たまへ。

致命者讚詞 法はふに戾もとる者ものは殘忍ざんにんなる旨むねに因よりて、神しん智ちの致ち命者めいしやを定罪ていざいして、火ひを以もつて之これを焚やき、劍つるぎを以もつて之これを刺さして、其その實じつに黃こ金がねよりも輝かゞやける者ものたるを顯あらはし、且かつハリストスと共ともに嗣業よつぎと爲なせり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは讎怨うらみに滿みちたる審判しんぱん、至し大だいなる辛勞しんらう、性せいに超こゆる苦くるしみを歷へて、幽暗くらやみの君きみに勝かちて、神かみより榮えい冠くわんを受うけたり。

生神女讚詞 我われ等らは神かみの約匱やくひつ、實じつに聖せいなる筵えん、我われ等らの潔淨きよめ、神かみの活いける殿でん、純じゆん金きんの燈臺とうだいたる造成主ざうせいしゆの眞まことの母はゝを崇あがめ歌うたふ。

又

イルモス イオナは地ぢ獄ごくの住所すまひに居をる形像かたどりと爲なりて呼よべり、人ひとを愛あいする主しゆよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

神元しんげんの有能いうのうなる第一だいいちの輝煌かゞやきたる差さ役えき首しゆは差さ役えきと首しゆ領りやうと權柄けんぺい、及および能のう力りよくと共ともに默もださざる聲こゑを以もつて呼よびて、熱切ねつせつに主しゆを歌うたふ。二次。

秩序ちつじよある品ひん位ゐを以もつて無む形けいの世せ界かいを端たん正せいに飾かざり給たまひし主しゆよ、爾なんぢの尊たふとき敎けう會くわいをして此この美うるはしき秩序ちつじよに效ならふを得えしめ給たまへ。

生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの内うちに入いりたる言ことばは爾なんぢを醫治いやしの常つねに流ながるる泉いづみと爲なし給たまへり。祈いのる、吾わが靈たましひの創痍きずを痊いやし給たまへ。

第七歌頌

イルモス 三人みたりの少者せうしやは爐ゐろりに於おいて聖三者せいさんしやを像かたどりて、火ひの恐嚇おどしを履ふみ、歌うたひて呼よべり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

鳴呼あゝ靈たましひよ、我わが時ときは終をはる、逝世せいせいは門もんの側かたはらに在あり、故ゆゑに痛つう悔くわいの結果けつくわを顯あらはして、門もんの未いまだ閉とざされざる先さきにハリストスに呼よべ、主しゆよ、我われを救すくひ給たまへ。

我われ等ら眞まことの智ち識しきの犂すきを以もつて心こゝろを耕たがへして、痛つう悔くわいの麥むぎを播まかん、我わが靈たましひの耕作者かうさくしやたるハリストスに因よりて義ぎの穗ほを穫からん爲ためなり。

致命者讚詞 敬虔けいけんの光くわう體たい、不ふ敬虔けいけんと戰たゝかふ者もの、貧者ひんじやを富とます者ものたる主しゆの致ち命者めいしやよ、貧ひん窮きゆうになりたる我わが至いたりて不ふ當たうなる靈たましひを諸德しよとくに富とまし給たまへ。

致命者讚詞 深ふかき心こゝろより歎息たんそくせし稅ぜい吏りを救すくひしハリストスよ、我わが微び小せうなる歎息たんそくをも受うけて、己おのれの百ひやく體たいを以もつて爾なんぢを榮えいせし受難者じゆなんしやに因よりて我われを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 赦罪しやざいの水みづを流ながす泉いづみよ、我わが罪過ざいくわの流ながれを涸からして、我われに淚なみだの雨雲あまぐもを與あたへ給たまへ、我わが常つねに爾なんぢを生しやう神女しんぢよとして歌うたはん爲ためなり。

又

イルモス 驕おごれる苛虐者くるしめびとは少者せうしやの玩ぐわん具ぐと爲なれり。蓋けだし彼かれ等らは七倍しちばい燃もやされたる焰ほのほを塵ちりの如ごとく履ふみて歌うたへり、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

天てん使しの品ひん位ゐよ、爾なんぢ等らは明あきらかなる智慧ちゑと勇いさましき眼めとを以もつて原げん始しの光ひかりを觀みて、之これに與あづかるに因よりて第だい二にの光ひかりと爲なりて呼よぶ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。二次。

天てん使しの品ひん位ゐよ、爾なんぢ等らは易かはらざる冀望のぞみと飽あかざる愛あいとに導みちびかれ、造物主ざうぶつしゆの華くわ美びに與あづかりて第だい二にの光くわう體たいと爲なりて呼よぶ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは父ちゝより母はゝなく永遠えいゑんに生うまるる無む原げんの言ことばを神聖しんせいなる產さんを以もつて身みを取とりし者ものとして生うみ給たまへり。女宰ぢよさいよ、爾なんぢの腹はらの果みは祝しゆく福ふくせられたり。

第八歌頌

イルモス 神かみたる力ちからを以もつて焰ほのほの中うちにエウレイの少者せうしやに降くだりて、現あらはれし主しゆを、司し祭さい等らよ、崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

ハムは哂わらふに因よりて父ちゝの發はつせし言ことばを以もつて奴ど隷れいと爲なれり。吾わが靈たましひよ、爾なんぢは諸慾しよよくの奴ど隷れいと爲なりて、非ひ禮れいに哂わらひ、天てんの父ちゝに愧はぢずして何なにをか爲なさん。

カインは無智むちの嫉妬ねたみに因よりて弟おとうとを殺ころす者ものと爲なれり。吾わが靈たましひよ、爾なんぢは彼かれに似にたる者ものと顯あらはれて、他た人にんを殺ころししにあらず、乃すなはち度ど生せいの逸樂いつらくと迷惑まよひとを以もつて己おのれを殺ころせり。

致命者讚詞 我われ等ら集あつまりて、信しんを以もつて、主しゆの選えらびたる眞珠しんじゆ、貴たふとき器うつは、神かみの恩おん寵ちようの光ひかりにて輝かゞやける燈ともしびたるハリストスの受難者じゆなんしやを宜よろしきに合かなひて尊たふとまん。

致命者讚詞 睿えい智ちなる受難者じゆなんしやの血ちを香かう爐ろに勝まさりて受うけ給たまひし言ことばよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて痛つう悔くわいを以もつて爾なんぢに趨はしり附つく者ものを救すくひ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり慈じ憐れんの主しゆなればなり。

生神女讚詞 我われ放蕩はうたうなる度ど生せいの甚はなはだしきを以もつて今いま地ぢ獄ごくに近ちかづけり。仁じん慈じなる神かみを言いひ難がたく生うみし者ものとして多おほくの慈じ憐れんを有たもつ少女せうぢよよ、我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

又

イルモス 敬神けいしんの少者せうしやは無む形けいの火ひにて物質ぶつしつの火ひの焰ほのほを滅けして歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

爾なんぢ萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆとして、意思おもひを以もつて諸天しよてん使しを造つくりしに、彼かれ等らは畏おそれて爾なんぢの前まへに立たちて呼よべり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

天てんの靈れい智ち者しやは神聖しんせいなる火ひに與あづかるに因よりて、焰ほのほの如ごとくなりて呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

爾なんぢは見みゆる萬物ばんぶつに先さきだちて、見みえずして靈れい智ちなる諸天しよてん使しを造つくりしに、彼かれ等らは絕たえず爾なんぢに呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

生神女讚詞 神かみの母はゝ童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは言ことばに超こえて身みを取とりし父ちゝの言ことばを生うみ給たまへり。悉ことごとくの造物ざうぶつは彼かれを主しゆとして歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

次ぎて生神女の歌詠を歌ふ、「我が靈は主を崇め」。

第九歌頌

イルモス モイセイはシナイ山ざんに於おいて棘いばらの中うちに、爾なんぢを焚やかれずして神性しんせいの火ひを胎内たいないに孕はらみし者ものとして觀み、ダニイルは爾なんぢを截きられざる山やまとして觀み、イサイヤは芽めを萌きざしし杖つゑ、ダワィドの根ねより出いでし者ものなりと呼よべり。

イアコフは昔むかし節制せつせいに因よりて長ちやうたるを得え、イサフは腹はらを制せいせずして長ちやう子しの業げふを失うしなへり。不ふ節制せつせいは如何いかにか惡あしき、節制せつせいは如何いかにか大おほいなる。嗚呼あゝ靈たましひよ、不ふ當たうなる事ことを避さけ、善ぜんに進すゝむを愛あいせよ。

無む玷てんなるイオフは多おほく忍しのびたる者ものとして榮えい冠くわんを獲えたり、蓋けだし誘惑いざなひの河かはは溢あふれたれども、彼かれの心こゝろの柱はしらを動うごかさざりき。鳴呼あゝ靈たましひよ、常つねに熱心ねつしんに彼かれに效ならひて、凶きよう惡者あくしやの惡謀あくぼうに動うごかされぬ者ものと爲なれ。

致命者讚詞 ハリストスの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは聖神せいしんの火ひに因よりて銳するどき劍つるぎと爲なりて、敵てきの軍ぐん隊たいを斫きり、大おほいなる勝しよう利りに榮えいせられて、萬有ばんいうの王わうの全能ぜんのうの手てより榮えい冠くわんを受うけたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやの無む玷てんなる大數たいすうよ、我わが甚はなはだしき罪惡ざいあくの大數たいすうを潔きよめんことを、爾なんぢ等らの言いひ難がたき勤勞きんらうを受うけて、無む形けいの軍ぐんに爾なんぢ等らを合あはせたる主宰しゆさい神かみに祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 主宰しゆさいの美うるはしき宮みやよ、我われを光ひかりの家いへと爲なし給たまへ、過とほられぬ門もんよ、我わが爲ために痛つう悔くわいの途みちを啓ひらき給たまへ、聖せいなる地ちよ、我われを溫柔をんじうの者ものの地ちに導みちびき給たまへ、女宰ぢよさいよ、我われを諸慾しよよくの一切いつさいの權けんより解とき給たまへ。

又

イルモス 潔いさぎよき者ものよ我われ等らは爾なんぢの至し淨じやうなる產さんに欣よろこばしく感かんぜられ、爾なんぢの慕したはしき美び德とくを奇きとして、天てん使しの歌うたを以もつて宜よろしきに合かなひて爾なんぢを神かみの母はゝとして崇あがめ讚ほむ。

嗚呼あゝ至いたりて神聖しんせいなる神かみの諸天しよてん使し、今いま大おほいなる第一だいいちの光ひかりの前まへに立たてる品ひん位ゐよ、爾なんぢ等らは我われ等ら衆しゆう、能よくする所ところに適かなひて爾なんぢ等らを崇あがめ讚ほむる者ものの爲ために最もつとも勇ゆう毅きなる祈き禱者たうしやと爲なり給たまへり。二次。

同どう能のうなる三者さんしやを讚榮さんえいするを得えたる、其その輝煌かゞやきにて第一だいいちに照てらさるる者ものよ、我われ等ら敬虔けいけんを抱いだきて爾なんぢ等らを崇あがめ讚ほむる者ものをして第だい二にの光ひかりに照てらさるるを得えしめ給たまへ。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら皆みな爾なんぢを我わが救すくひの基もとゐなりと識しる。蓋けだし爾なんぢの至し淨じやうなる產さんは、其その神聖しんせいなる血ちを以もつて、爾なんぢを歌うたひて忠ちゆう信しんに讚榮さんえいする者ものを救すくひ給たまへり。

次ぎて「常に福にして」。小聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに傷感の讚頌スティヒラ、第三調。

主しゆよ我わが散ちらされたる思おもひを聚あつめ、我わが荒あれたる心こゝろを潔きよめ給たまへ。ペトルに於おけるが如ごとく我われに痛つう悔くわいを、稅ぜい吏りに於おけるが如ごとく歎息たんそくを、淫いん婦ぷに於おけるが如ごとく淚なみだを與あたへ給たまへ、我わが大おほいなる聲こゑを以もつて爾なんぢに呼よばん爲ためなり、神かみよ、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。

爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我われ屢しばしば歌か頌しようを獻けんじて、罪つみを犯おかすと顯あらはれたり、蓋けだし舌したにて歌か頌しようを唱となへ、靈たましひにて不ふ當たうの事ことを思おもふ。ハリストス神かみよ、痛つう悔くわいを以もつて兩ふたつながら之これを改あらためて、我われを救すくひ給たまへ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 衆しゆう民みん來きたりて、聖せいなる受難者じゆなんしやの記き憶おくを尊たふとまん、蓋けだし彼かれ等らは天てん使等しら及および人人ひとびとの爲ために觀玩みものと爲なりて、ハリストスより勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけて、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞 至し聖せい至し潔けつなる女宰ぢよさい、天てんの品ひん位ゐの榮譽ほまれ、諸しよ使徒しとの歌詠うた、諸しよ預よ言者げんしやの成じやう就じゆなる者ものよ、我われ等らの祈き禱たうを納いれ給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ及び聯禱。次に第一時課、及び發放詞。

 月曜日の聖体礼儀に

月曜日の眞福詞、第三調。

ハリストスよ、爾なんぢは誡いましめに背そむきし原げん祖そアダムを樂園らくゑんより逐おひ出いだせり。然しかれども爾なんぢ、洪恩こうおんなる主しゆよ、十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを承うけ認みとめし盜賊たうぞく、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものを其中そのうちに入いれ給たまへり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

ハリストスよ、爾なんぢの慈じ憐れんの多おほきに因よりて我わが罪惡ざいあくの多おほきを顧かへりみずして、我われを救すくひ給たまへ。救世主きうせいしゆよ、審判しんぱんの日ひに於おいて我われを定罪ていざい及および永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ、我わが爾なんぢの仁じん慈じを讚榮さんえいせん爲ためなり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

ヘルワィムとセラフィム、寶はう座ざと天てん使し首しゆ、能のう力りよくと首しゆ領りやう、主しゆ制せいと權柄けんぺい、及および衆しゆう天てん使しよ、造成主ざうせいしゆが地ちを審判しんぱんせんとする時とき、其時そのとき我わが罪過ざいくわを顧かへりみざらんことを祈いのり給たまへ、彼かれは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

聖せいにせられし血ちを以もつて緋ひ袞こん衣いを染そめたるハリストスの受難者じゆなんしやは宜よろしきに合かなひて天軍てんぐんの王わうと偕ともに實じつに王わうたるを得えて、我われ等ら常つねに熱心ねつしんに彼かれ等らを尊たふとむ者ものの爲ために罪過ざいくわの赦ゆるしを求もとむ。

光榮 信者しんじやよ、我われ等らは三さん位ゐなる惟一ゆゐいちの神性しんせい、父ちゝと言ことばと聖せいなる撫ぶ恤じゆつ者しや神しん゜とを敬虔けいけんに歌うたひて、天てん使しの聲こゑを以もつて默もださずして呼よばん、聖せい、聖せい、聖せいなる哉かな爾なんぢ神かみ、我われ等らの靈たましひを救すくふ主しゆや。

今も、生神女讚詞 光ひかりよりする光ひかりを生うみし潔いさぎよき童貞女どうていぢよ、輝かゞやれる雲くもよ、我われ度ど生せいの諸慾しよよく及および逸樂いつらくに昧くらまされたる者ものを光ひかりに導みちびきて、我われを改あらためて、度ど生せいに於おいて善ぜんを爲なしし者ものの今いま受うけたる光くわう榮えいを獲えんことを祈いのり給たまへ。

 月曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に讚頌スティヒラ、第三調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

ハリストスよ、變へん幻げん極きはまりなき蛇へびは我わが内うちに善行ぜんかうに於おける倦怠おこたりを見みて、直たゞちに罪つみの甘味あまみを示しめして、神聖しんせいなる誡いましめに戾もとる苦にがき行おこなひを勸すゝむ、斯かく我われを欺あざむきて、惡あくを善ぜんの如ごとく取とらしむ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

我われ終をはりに至いたるまで直なほき途みちを棄すてて、諸もろもろの不ふ法はふと罪過ざいくわとの途みちを務つとめて行ゆき、今いま死しの門もんに近ちかづきて、迫せまりて呼よぶ、我わが生命いのちの途みち、吾わが至し善ぜんなるイイススよ、我われを眞まことの痛つう悔くわいの廣ひろきに向むかはしめて救すくひ、我われに更新あらたまりを賜たまひて、死しの前さきに神聖しんせいなる赦罪しやざいを獲えしめ給たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

我われ諸もろもろの罪つみ、多おほくの過あやまち、不ふ當たうなる行おこなひに殺ころされて、實じつに倚賴たよりなき者ものとして死しして臥ふす、唯たゞ一ひとつの我わが望のぞみは生いく、是これ爾なんぢの慈じ憐れんに於おける望のぞみなり。死し者しやに呼こ吸きふと生命いのちとを賜たまひ、我われ等らを殺ころしし諸慾しよよくを殺ころすハリストスよ、速すみやかに我われを永遠えいゑんの死しより脫のがれしめ給たまへ。

次ぎて月課經ミネヤの讚頌スティヒラ、光榮、若し之れあらば聖人の、今も、生神女の。若し月課經なくば、又聖大前驅イオアンの讚頌。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

爾なんぢの誕生うまれを以もつて母はゝの子こなきこと、父ちゝの聲こゑなきことを解ときたる前ぜん驅くよ、慈じ憐れんなる父ちゝの子こ、產さん苦くなくして智慧ちゑの生うみし言ことばたる萬有ばんいうの主宰しゆさい及および神かみに奉たてまつる爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、我わが心こゝろの善ぜんを生うまざること、靈たましひの果みなきことを解ときて、我われを堅かためて、彼かれが嘉よみすることを言いひ且かつ行おこなふを得えしめ給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

ハリストスの爲ために道みちを備そなへ、徑こみちを直なほくし、其その面前めんぜんに遣つかはされし者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうと顯あらはなる佑助たすけとを以もつて我わが心こゝろに彼かれに往ゆく道みちを啓ひらき給たまへ。其その尊たふとき足あしの行ゆく處ところを整とゝのふるに勝たへし者ものよ、我われに溫柔をんじうなる者ものの足あしの行ゆく所ところの天てんの地ちを步あゆむを得えしめ給たまへ、我わが愛あいを以もつて爾なんぢ轉達者てんたつしやを尊たふとまん爲ためなり。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

地ちに在ありて熱心ねつしんに天てん使しの度ど生せいに效ならひし授洗じゆせんイオアン、預よ言者げんしやの終末すゑ、新約しんやくの初しよ致ち命者めいしや、地下ちかに在ある者ものの爲ために彼處かしこに神かみの言ことばの降くだることの第一だいいちの傳敎でんけう師し、ハリストスに稱しようせられし者もの、羔こひつじ及および贖しよく罪主ざいしゆの友ともよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて爾なんぢの僕ぼくを敵てきの諸もろもろの誘惑いざなひ及および種種しゆじゆの攻擊こうげきより脫のがれしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 入いらざる光ひかりの雲くもたる神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる少女せうぢよ、祝しゆく福ふくせられしマリヤよ、我われ無知むちにして罪過ざいくわの幽暗くらやみに圍かこまるる者ものの爲ために痛つう悔くわいの光ひかりを輝かゞやかし給たまへ。至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく者ものを「ゲエンナ」の火ひ及および外そとの幽暗くらやみより救すくひて、暮くれざる日ひに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。

挿句くづけに讚頌スティヒラ、第三調。

ハリストスよ、我われ等らは暮くれの歌うたを香かう爐ろ及および屬神ぞくしん゜の詩賦しふと共ともに爾なんぢに奉たてまつる、救世主きうせいしゆよ、我われ等らの靈たましひを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

主しゆ我わが神かみよ、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢは衆しゆう人じんの爲ために救すくひなればなり。諸慾しよよくの烈風あらしは我われを擾みだし、不ふ法はふの重おも負には我われを溺おぼらす。我われに援助たすけの手てを授さづけて、我われを痛つう悔くわいの光ひかりに升のぼせ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり慈じ憐れんにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

ハリストスよ、爾なんぢの致ち命者めいしやの力ちからは大おほいなり、蓋けだし彼かれ等らは墓はかに臥ふして惡あく鬼きを逐おふ、聖三者せいさんしやに於おける信しんを以もつて正敎せいけうの爲ために戰たゝかひて、敵てきの權けんを虛むなしくしたればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 女をんなの中うちに聖せいなる生しやう神女しんぢよ、聘女よめならぬ母はゝよ、爾なんぢが生うみし王わう及および神かみに、其その仁愛じんあいの主しゆなるに因よりて、我われ等らを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び發放詞。

 月曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

我われ怠慢おこたりに生命いのちを費つひやして、我わが生いのちの終をはりに近ちかづけり。至し淨じやうなる者ものよ、祈いのる、爾なんぢ親みづから末すゑの時ときにだに我われに傷しやう感かんを與あたへ給たまへ、我わが痛いたく我われの無む量りやうの罪過ざいくわを悔くいて哭なかん爲ためなり。

童貞女どうていぢよよ、我われ無知むちにして我わが肉體にくたいの慾よくを以もつて神かみの像ざうに依よる華くわ美びを汚けがして、神かみの忿恚いきどほり及および烈はげしき火ひの罰ばつを懼おそれたり。祈いのる、爾なんぢに趨はしり附つく我われを憐あはれみ給たまへ。

光榮 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ不ふ當たうの者ものは膝ひざを屈かゞめて爾なんぢの援助たすけを求もとむ。爾なんぢ傷いためる靈たましひに聽ききて、爾なんぢの祈き禱たうの光くわう線せんを以もつて我わが憂うれひの塞ふさがれる雲くもを拂はらひ給たまへ。

今も 女宰ぢよさいよ、慾よくに耽ふける吾わが靈たましひの畦うねに淚なみだにて豐ゆたかに濕うるほさるるを賜たまひて、我われに百ひやく倍ばいの實みを結むすぶを得えしめて、我わが心こゝろを凡およその樂たのしみに盈みて給たまへ、我わが爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

第三歌頌

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

仁じん慈じなる生しやう神女しんぢよよ、我われに淚なみだの雨雲あまぐもを與あたへ、此これを以もつて吾わが慾よくの爐ゐろりを滅けして、我わが靈たましひの諸もろもろの汚けがれを滌あらひ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ靈たましひの良りやう產さんを不ふ法はふの中うちに汚けがして、言ことばが我われに神かみの像ざうに依よる嗣し業げふを問とはん時とき、我われ其その詰問きつもんに戰をのゝく。

光榮 罪過ざいくわの烈風あらしは今いま我われを圍かこみて、失望しつばうの深處ふかみに下くだせり。潔いさぎよき者ものよ、我われに手てを授さづけて我われを痛つう悔くわいに導みちびき給たまへ。

今も 純じゆん潔けつなる者ものよ、審判しんぱんの時ときに爾なんぢの僕ぼくを「ゲエンナ」及および其その他たの凡およその罰ばつより脫のがれしめて、爾なんぢの子こ及および神かみの國くにに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

潔いさぎよき者ものよ、吾わが不ふ當たうの行おこなひの水みづは我わが不ふ幸かうなる靈たましひにまで至いたれり。故ゆゑに我われ塵ちりに屬ぞくする思念おもひに圍かこまれて、痛いたましく呼よぶ、女宰ぢよさいよ、我われ爾なんぢの僕ぼくを棄すつる毋なかれ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、無む形けいの猛獸まうじうは今いま無む慙ざんに我われを圍かこみて、憐あはれみなく我わが卑微ひびなる靈たましひを執とらへんと謀はかる。至し淨じやうなる者ものよ、彼かれ等らが靈たましひを害がいする頷あぎを壞やぶり給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、祈いのる、爾なんぢの僕ぼくに慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの民たみを將しやう來らいの罰ばつより脫のがれしめ給たまへ、我われ等らが感謝かんしやして爾なんぢに呼よばん爲ためなり、萬有ばんいうの女王によわうよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、新娶者はなむこが夜半よはに來きたりて地ちを審判しんぱんせん時とき、其時そのとき我われに光くわう明めいなる燈ともしびを以もつて彼かれを迎むかふる爲ために出いでて、其その降臨かうりんに伏拜ふくはいするを得えしめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは見みえざる者ものにして地ちに現あらはれ、悟さとり難がたき者ものにして甘あまんじて人人ひとびとと偕ともに居をりたり。我われ等ら朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

實じつに犬いぬの群むれは我われを環めぐり、惡あく鬼きの黨くみは我われを圍かこめり。至し淨じやうなる者ものよ、今いま彼かれ等らの謀はかりごとを破やぶり給たまへ。

凶きよう惡あくの者ものは今いま我われの爲ために阱おとしあなを掘ほりて、我われを此この中うちに落おとさんことを謀はかる。女宰ぢよさいよ、願ねがはくは爾なんぢの右みぎの手てに因よりて、彼かれは自みづから設まうけし穴あなに陷おちいらん。

光榮 讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢの子この來きたらん時とき、願ねがはくは我われは其その憤いきどほりを以もつて責せめられざらん、其その怒いかりを以もつて罰ばつせられざらん、乃すなはち爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを救すくひ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、我わが不ふ當たうなる靈たましひの弱よわく且かつ卑いやしきを見み、又また無む形けいの敵てきの攻擊こうげきを見みて、彼かれ等らの害がいより我われを脫のがれしめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの罪つみの淵ふちは我われを圍かこみ、我わが靈たましひは亾ほろびんとす。祈いのる、主宰しゆさい敎導者けうだうしやよ、爾なんぢの高たかき手てを伸のべて、我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

純じゆん潔けつにして讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆの指麾しきに因よりて吾わが靈たましひが體からだに別わかれん時とき、我われを惡にくむ者ものの手てより我われを脫のがれしめ給たまへ。

神かみの母はゝよ、傷しやう感かんの流ながれを以もつて我わが惡あく事じの濁にごりたる河かはを涸からして、審判しんぱんの日ひに於おいて我われを安息あんそくの水みづに導みちびき給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは吾わが靈たましひの柔にう弱じやく、吾わが智慧ちゑの無む力りよく、肉體にくたいの不ふ能のうを識しる。故ゆゑに爾なんぢの僕ぼくを救すくひ給たまへ、我われ爾なんぢを勝かたれぬ保護ほご者しやとして得えたればなり。

今も 無む玷てんなる少女せうぢよよ、我われに靈たましひの淚なみだの流ながれを與あたへ給たまへ、我われ此これを以もつて我わが罪過ざいくわの泥濘ひぢりこ、諸慾しよよくの紛擾みだれ、肉體にくたいの汚穢けがれを滌あらはん。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン

慈じ憐れんなる主しゆを腹はらに宿やどしし女宰ぢよさいよ、爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきて、熱心ねつしんに爾なんぢの神聖しんせいなる佑助たすけを求もとむる者ものを宥なだめて憐あはれみ給たまへ。潔いさぎよき者ものよ、彼かれが造物ざうぶつの主宰しゆさいの前まへに立たたん時とき、永遠えいゑんの火ひ及および凡およその定罪ていざいより彼かれを救すくひ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 昔むかし三人みたりの少者せうしやはペルシヤ人じんの尊たふとめる金こがねの像ざうに伏拜ふくはいせずして、爐ゐろりの中なかに歌うたへり、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

潔いさぎよき者ものよ、罪過ざいくわの水みづは我われに流ながれて我わが靈たましひにまで至いたり、今いまを限かぎりの淵ふちは我われを圍かこめり、祈いのる、其その激浪あらなみより我われを援たすけ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの慈じ憐れんの多おほきに因よりて、我われに爾なんぢの產さんの脅わきより出いでたる血ちを灑そゝぎ、淚なみだの流ながれにて我われを滌あらひ、凡およその汚けがれより我われを潔きよめ給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつなる者ものよ、我わが靈たましひに痛悔くやみ、心こゝろに謙遜へりくだりを予あたへ給たまへ、我わが常つねに無む情じやうに我われを執とらへんと欲ほつする者ものの凡およその詭き計けいより脫のがれん爲ためなり。

今も 女宰ぢよさいよ、慈じ憐れんなる神かみの母はゝとして信しんを以もつて爾なんぢの子こに、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よぶ爾なんぢの諸僕しよぼくに慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 敬虔けいけんの範のりたる少者せうしやは堪たへ難がたき火ひに入いれられしに、焰ほのほに惱なやまされずして、神聖しんせいなる歌うたを歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの子この權柄けんぺいを以もつて射いる者ものの矢やを折をり給たまへ。願ねがはくは其その暴ばう虐ぎやくは今いま其その頂いたゞきに落おちん、我わが歌うたはん爲ためなり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

少女せうぢよよ、爾なんぢの光ひかりを以もつて吾わが昧くらみたる心こゝろを照てらし、光ひかりの武器ぶきを以もつて我わが爲ために光ひかりの門もんを啓ひらき給たまへ。蓋けだし我われ呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

光榮 我われ寢いねて死しし、失望しつばうの墓はかに臥ふす。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢ親みづから我われを起おこして、我われに勇いさましく歌うたふを得えしめ給たまへ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、傷しやう感かんを抱いだきて爾なんぢを尊たふとむ者ものを惡あく魔まの網あみより脫のがれしめんことを絕たえず祈いのり給たまへ。蓋けだし彼かれ等らは爾なんぢの子こに呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

第九歌頌

イルモス 我われ等ら信者しんじやは影かげ及および文ぶんなる律法りつぱふに於おいて預よ象しやうを見みん、凡およそ始はじめて生うまるる男だん子しは神かみに獻さゝげられたり。故ゆゑに我われ等らは無む原げんの父ちゝより始はじめて生うまれし言ことば、夫をつとなき母はゝより始はじめて生うまれし子こを崇あがめ讚ほむ。

諸慾しよよくの浪なみと不ふ淨じやうなる思念おもひの攻擊こうげきとは我わが靈たましひを擾みだし、惡人あくにんの烈風あらしは常つねに我われを惑まどはす。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは仁愛じんあいなる者ものとして、我われを圍かこめる危き難なんより速すみやかに脫のがれしめ給たまへ。

卑微ひびなる靈たましひよ、爾なんぢの惡あしき行おこなひを棄すて、神かみの怒いかりを干おかすを息やめて、熱心ねつしんに彼かれの誡いましめを受うけよ、生しやう神女しんぢよを爾なんぢの道みちを直なほくする者ものとして有たもてばなり。

光榮 純じゆん潔けつなる者ものよ、萬有ばんいうの主しゆを生うみし者ものとして、我われを諸慾しよよくと甚はなはだしき罪つみより釋ときて、爾なんぢの多おほくの慈じ憐れんに由よりて我われを豐ゆたかに善行ぜんかうに富とましめ給たまへ、我わが喜よろこびて愛あいを以もつて爾なんぢを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

今も 靈たましひよ、終をはりは近ちかづき、審判しんぱんは門もんの側かたはらに在あり、耻はづべき行おこなひを棄すてて、善ぜんなる度ど生せいを始はじめよ、生しやう神女しんぢよを凡およその惡あくより爾なんぢを救すくふ扶ふ助者じよしやとして有たもてばなり。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

火曜日

 火曜日の早課

第一の誦文の後に傷感の坐誦讚詞セダレン、第三調。

吾わが靈たましひよ、地ち上じやうに寄き寓ぐうする時ときに痛つう悔くわいせよ、蓋けだし塵ちりは墓はかに在ありて歌うたはず、罪過ざいくわより救すくはず。ハリストス神かみに呼よべ、心こゝろを知しる主しゆよ、我われ爾なんぢの前まへに罪つみを犯おかせり、神かみよ、我われを定罪ていざいせざる先さきに我われを宥なだめ、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

吾わが靈たましひよ、罪過ざいくわの中うちに在ありて何いづれの時ときに至いたるか、痛つう悔くわいを延のばして何いづれの時ときに至いたるか。將しやう來らいの審判しんぱんを念おもひに抱いだきてハリストス神かみに籲よべ、心こゝろを知しる主しゆよ、我われ罪つみを犯おかせり、罪つみなき主しゆよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 我われ等らの避所かくれが及および能力ちからたる生しやう神女しんぢよ、世せ界かいの堅けん固ごなる扶ふ助者じよしや、獨ひとり祝しゆく福ふくせられし者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて爾なんぢの諸僕しよぼくを凡およその危き難なんより庇おほひ給たまへ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

畏おそるべき審判しんぱんには我われ罪つみする者ものなきに攻せめられ、證しようする者ものなきに定罪ていざいせらる、蓋けだし良りやう心しんの書しよは啓ひらかれ、隱かくれたる所爲しわざは顯あらはる。神かみよ、此この公こう衆しゆうの觀みる所ところに我わが行おこなひし事ことを糾たゞさざる先さきに我われを潔きよめ、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

主しゆよ、爾なんぢは我わが諸罪しよざいの深處ふかみを知しる。ペトルに於おけるが如ごとく、我われに援助たすけの手てを授さづけて、我われを救すくひ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

最いと光くわう明めいなる燈ともしび、病やむ者ものの醫師いし、讚さん美びたる聖せい受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは信しんを以もつて輝かゞやく。蓋けだし殘ざん虐ぎやく者しやの苛虐くるしめを懼おそれずして、眞まことの十じふ字架じかを勝かたれぬ勝しよう利りと有たもちて、偶像ぐうざうの邪敎じやけうを滅ほろぼし給たまへり。

光榮、今も、生神女讚詞 至し善ぜんなる女宰ぢよさいよ、信しんを以もつて爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく者ものを納いれ給たまへ、我われを諱いむ毋なかれ、痛つう悔くわいして祈いのる者ものを棄すつる毋なかれ。我わが不ふ當たうの口くちより祈き禱たうを受うけて、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われを諸もろもろの網あみより脫のがれしめ給たまへ、我わが勇敢いさみを以もつて爾なんぢに呼よばん爲ためなり、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者もの、慶よろこべよ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

神福しんぷくなる預よ言者げんしや及および前ぜん驅くよ、我われ等らは爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきて、信しんを以もつて靈たましひの深處ふかみより呼よぶ、葘害さいがい危き難なんの紛擾みだれと諸慾しよよくの浪なみとを鎭しづめ、諸敵しよてきの惡謀あくぼうを空むなしくなして、我われ等らの爲ために大おほいなる憐あはれみを求もとめ給たまへ。

不ふ當たうなる靈たましひよ、爾なんぢの逝世せいせいの前さきに痛つう悔くわいを以もつて爾なんぢの煩悶もだえを拂はらひ去さり、泣なきて寬くわん容ようなるイイスス、人ひとを愛あいする主しゆに向むかひて呼よべ、主宰しゆさいよ、我われ爾なんぢの前まへに罪つみを犯おかせり、求もとむ、獨ひとり罪つみなき主しゆよ、爾なんぢが慈じ憐れんなるを以もつて聖せい前ぜん驅くの祈き禱たうに因よりて我われを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる女宰ぢよさいよ、爾なんぢに於おいて行おこなはれし神かみの畏おそるべき奧密あうみつは測はかり難がたく、悟さとり難がたし、蓋けだし爾なんぢは圍かこまれぬ者ものを孕はらみ、其その爾なんぢの至し淨じやうなる血ちより身みを取とりたるを生うみ給たまへり。潔いさぎよき者ものよ、前ぜん驅くと偕ともに彼かれに吾わが靈たましひの救すくはれんことを常つねに祈いのり給たまへ。

傷感の規程カノン、我が主イイススハリストス及び其聖なる致命者に奉る。其冠詞は、神の言よ、我が歎息に耳を傾けよ。イオシフの作。第三調。

第一歌頌

イルモス 奇き妙めう至し榮えいに奇き迹せきを行おこなふ神かみよ、爾なんぢは淵ふちを地ちと爲なし、兵車いくさぐるまを沈しづめ、爾なんぢを我わが王わう及および神かみとして歌うたふ人人ひとびとを救すくひ給たまへり。

信者しんじやよ、我われ等ら終をはりの至いたらざる先さきに靈たましひを全まつたうして己おのれの爲ために泣なかん。新娶者はなむこは近ちかづく、我われ等ら光くわう明めいなる燈ともしびの如ごとく行おこなひを燃もやさん、神聖しんせいなる婚筵こんえんの宮みやに共ともに入いるを得えん爲ためなり。

昔むかしマナッシヤは靈たましひを全まつたうして痛つう悔くわいして救すくひを得えたり、蓋けだし繫つながれて桎梏かせの中うちより惟一ゆゐいちの主宰しゆさいに呼よべり。靈たましひよ、彼かれに效ならへ、然しからば輙たやすく救すくひを得えん。

致命者讚詞 神聖しんせいなる致ち命者めいしやは目めの抉くじらるること、手てと足あしとの截たたるること、舌したの切きらるること、腿もゝと臂ひぢとの壞やぶらるることを忍しのびて、イイススハリストスに感謝かんしやせり。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らの不ふ朽體きうたいの柩ひつぎは我われ等ら衆しゆう信者しんじやの爲ために醫い院ゐんと顯あらはれたり。我われ等ら職しよくとして常つねに爾なんぢ等らを尊たふとむ者ものは此これより靈たましひと體からだとの醫治いやしを斟くむ。

生神女讚詞 不死ふしの「マンナ」ハリストスを容いるる靈れい智ちの壺つぼたる讚ほめ歌うたはるる童貞女どうていぢよよ、我われを靈たましひを殘そこなふ諸慾しよよくの侵害しんがいより救すくひ給たまへ、我わが信しんを以もつて敬虔けいけんに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

又 前驅イオアンの規程カノン。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

無む結果けつくわの胎たいの神聖しんせいなる果みたる主しゆの前ぜん驅くよ、我わが諸德しよとくの果みを結むすばん爲ために神かみに祈いのりて、我わが罪つみの無む結果けつくわを解とき、我わが智慧ちゑより幽暗くらやみを掃はらひ給たまへ。

大おほいなる前ぜん驅くよ、爾なんぢは信しんを以もつて地ち上じやうに、全ぜん地ちを照てらしし光くわう榮えいの日ひに先さきだつ星ほしとして現あらはれたり。彼かれに祈いのりて、惡あしき思おもひに昧くらまされたる我わが靈たましひを照てらさんことを求もとめ給たまへ。

地ぢ獄ごくに在ある者ものに近ちかづく生命いのちを神聖しんせいなる神しん゜に因よりて預あらかじめ知しらせし光くわう榮えいなる預よ言者げんしや前ぜん驅くよ、我わが殺ころされたる靈たましひを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて活いかして、之これを墓はかよりするが如ごとく諸罪しよざいより起おこし給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、祈いのる、天てん使し首しゆと天てん使し、及および諸聖人しよせいじんと偕ともに爾なんぢより我われ等らに現あらはれし主しゆに祈いのりて、我われ等ら爾なんぢを眞まことの生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものの諸難しよなんより救すくはれんことを求もとめ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 果みを結むすばざる子こなき靈たましひよ、榮さかえたる果みを獲えて、樂たのしみて呼よべ、神かみよ、我われ爾なんぢに緣よりて堅かためられたり、主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなるはなく、義ぎなるはなし。

我われは無知むちに神かみの法はふに背そむきて、定罪ていざいせらるべき者ものにして、何なにを爲なさんを知しらず。至いたりて義ぎなる審判者しんぱんしやよ、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。

東ひがしの東ひがしたる仁愛じんあいの主しゆ、慈じ憐れん深ふかき者ものよ、祈いのる、我われの爲ために義ぎの光ひかりを輝かゞやかして、我われを諸慾しよよくの昏昧くらみと苦くるしみの幽暗やみより脫のがれしめ給たまへ。

致命者讚詞 神しん゜靈れいの地ちの居きよ住ぢゆう者しや、樂園らくゑんの果みの繁しげき樹きたる聖せい致ち命者めいしや、神聖しんせいなる水みづを有たもつ泉いづみよ、爾なんぢ等らは聖せいなる飮料のみものを注そゝぐ器うつはと顯あらはれたり。

致命者讚詞 衆おほくの肉體にくたいの中うちに一ひとつの風ふう儀ぎを有たもつ受難者じゆなんしや致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは敵てきたる世せ君くんの萬まん萬まんに勝かちて、分わかれざる三者さんしやを傳つたへたり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ母はゝ、衆しゆう人じんの女宰ぢよさいよ、我われ等ら衆しゆう痛つう悔くわいしてハリストスに趨はしり附つき、諸罪しよざいの赦ゆるしを得えんことを求もとむる者ものの爲ために彼かれを慈じ憐れんなる者ものと爲なし給たまへ。

又

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

言ことばの聲こゑたりし授洗者じゆせんしやよ、聲こゑを以もつて爾なんぢを尊たふとむ者ものを今いま彼かれに向むかはしめ、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

救世主きうせいしゆよ、我われ爾なんぢの前まへに罪つみを犯おかして不ふ法はふを行おこなひ、痛いたく過あやまちて靈たましひを汚けがせり。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、爾なんぢの授洗者じゆせんしやに因よりて我われを宥なだめ給たまへ。

野のに養やしなはれたる者ものにして新あらたなる人ひとの嚮きやう導だう者しやたる前ぜん驅くよ、爾なんぢに祈いのる、逸樂いつらくに因よりて野のに迷まよひし我われを痛つう悔くわいの道みちに向むかはしめ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、諸しよ使徒しと、聖せいにせられし預よ言者げんしや、致ち命者めいしや、天てん上じやうの軍ぐんと偕ともに爾なんぢの子こに爾なんぢを歌うたふ我われ等らを宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

第四歌頌

イルモス 潔いさぎよき者ものよ、アウワクムは樹こ蔭かげ繁しげき山やまとして爾なんぢの至し淨じやうなる體たいを預よ見けんして籲よべり、神かみは南みなみより、聖せいなる者ものは樹こ蔭かげ繁しげき山やまより來きたらん。

昔むかし不ふ服ふく不ふ順じゆんの人人ひとびとの爲ために巖いはより水みづを流ながして、其その渴かわきを止とゞめしハリストス神かみよ、我わが涸かれたる靈たましひより我われを滌あらふ傷しやう感かんの滴したゝりを注そゝぎ給たまへ。

病やむ者ものの醫師いしたる救世主きうせいしゆよ、仁じん慈じなるに因よりて、爾なんぢが慈じ憐れんの指麾しきを以もつて我わが心こゝろの諸慾しよよくに痛つう悔くわいの神聖しんせいなる良りやう藥やくを傅つけて、之これを醫いやし給たまへ、我わが信しんを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは意いを決けつし、肉體にくたいに於おける親したしみを釋ときて、爾なんぢ等らを苦くるしめんと欲ほつする者ものに己おのれを付わたせり、故ゆゑに造物主ざうぶつしゆの親したしき友ともと爲なり給たまへり。

致命者讚詞 ハリストスの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは多た種しゆの苦虐くるしめに因よりて最いと苦くるしき多た數すうの傷きずを受うけたり、故ゆゑに屬神ぞくしん゜の賜たまものの恩おん寵ちようを獲えて、我わが諸慾しよよくの多た年ねんの病やまひを退しりぞく。

生神女讚詞 最高名いとかうめいなる少女せうぢよよ、慶よろこべ、神かみ言ことばは爾なんぢより生うまれて、我われ等らを無知むちにして不ふ當たうなる行おこなひより釋とき給たまふ。光ひかれる雲くも、我われ等らの憂悶もだえの雲くもを拂はらふ者ものよ、慶よろこべ。

又

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

主しゆの前ぜん驅くよ、我われ爾なんぢ身みにて現あらはれし言ことばの聲こゑたる者ものに祈いのる、言ことばを以もつて爾なんぢを尊たふとみ、職しよくとして信しんを以もつて讚さん美びする我われを無知むちなる行おこなひより脫のがれしめ給たまへ。

嗚呼あゝ靈たましひよ、歎息たんそくして神かみ爾なんぢの造成主ざうせいしゆに籲よべ、ハリストスよ、我われ罪つみを犯おかせり、我われを潔きよめ給たまへ、神聖しんせいなる前ぜん驅くの祈き禱たうに因よりて、我われを畏おそるべき苦く難なんと災禍わざはひと憂愁うれひより脫のがれしめ給たまへ。

授洗者じゆせんしやよ、我われ激はげしき慾よくの多おほくの浪なみに溺おぼらされ、颶ぐ風ふうに甚はなはだしく圍かこまれて、常つねに沈しづめらるる者ものを引ひき出いだして、痛つう悔くわいの湊みなとに向むかはしめ給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる神かみの母はゝ、ヘルワィムより最高いとたかき輅くるまなる者ものよ、無む形けいなる役者えきしや及および衆しゆう聖人せいじんと偕ともに爾なんぢが生うみしハリストスに我われ望のぞみを失うしなひし者ものを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

第五歌頌

イルモス 神かみの獨生どくせいの子こ及および言ことばよ、我われ等ら朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ、爾なんぢの平安へいあんを我われ等らに與あたへ、我われ等ら爾なんぢを歌うたひて中ちゆう心しんに拜をがむ者ものを憐あはれみ給たまへ。

イイススよ、痛つう悔くわいの「イッソプ」を以もつて我われに沃そゝぎて、諸慾しよよくの汚けがれより潔きよめ給たまへ、爾なんぢが義ぎなる審判しんぱんを以もつて萬ばん衆しゆうを審判しんぱんせん時ときに我わが潔きよき者ものとして爾なんぢの前まへに現あらはれん爲ためなり。

救世主きうせいしゆよ、我わが極きはめて不ふ當たうなる靈たましひの傷きずは朽くちたり。病やむ者ものの醫師いし、諸善しよぜんを與あたふる主しゆよ、爾なんぢの多おほくの慈じ憐れんに因よりて我われを醫いやして救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやの土つちの器うつはは地ちに在ありて碎くだかれたり、然しかれども靈たましひの堅けん固ごはハリストスの力ちからに因よりて更さらに固かたくなりて輝かゞやけり。

致命者讚詞 諸聖人しよせいじんの流ながさるる血ちは全ぜん地ちを聖せいにし、信者しんじやの靈たましひを濕うるほし、虛むなしき敎をしへの濁にごりたる流ながれを涸からせり。

生神女讚詞 少女せうぢよよ、爾なんぢの產さんは原げん祖その詛のろひを無む結果けつくわの者ものと爲なし、我われ等ら爾なんぢを祝しゆく讚さんして、信しんを以もつて讚榮さんえいする者ものの爲ために祝しゆく福ふくの河かはを流ながせり。

又

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは見みえざる者ものにして地ちに現あらはれ、悟さとり難がたき者ものにして甘あまんじて人人ひとびとと偕ともに居をりたり。我われ等ら朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

福ふくたる者ものよ、爾なんぢは肉體にくたいを以もつて地ち上じやうに天てん使しの如ごとく居をりたり。故ゆゑに我われ爾なんぢに禱いのる、我わが靈たましひを肉體にくたいの念おもひより釋とき給たまへ。

主しゆの前ぜん驅くよ、我われ罪つみの深處ふかみに陷おちいり、逸樂いつらくにて靈たましひを汚けがして、苦く難なんの中うちに在ありて爾なんぢに趨はしり附つく者ものを救すくひ給たまへ。

預よ言者げんしやよ、爾なんぢは諸しよ預よ言者げんしやより最高いとたかき者ものと現あらはれたり、傳つたへし者ものを自みづから見みるを得えたればなり。彼かれに我われ等らの靈たましひを照てらさんことを常つねに祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 言ことばが爾なんぢの中うちに入いりしに因よりて天てんより最いと廣ひろき者ものと現あらはれたる神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我われを狹せばむる諸罪しよざいより解とき給たまへ。

第六歌頌

イルモス 諸慾しよよくの深處ふかみは我われを沈しづめ、逆ぎやく風ふうの狂暴あれは起おこりて我われを攻せむ。救世主きうせいしゆよ、急いそぎて我われを救すくひ、預よ言者げんしやを猛獸まうじうより救すくひし如ごとく、我われを淪滅ほろびより脫のがれしめ給たまへ。

我われ罪つみの幽闇やみに昧くらまされて行動うごきなくして臥ふす、昔むかし我わが爲ために戈ほこにて傷きずつけられしハリストス神かみよ、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われを宥なだめ給たまへ。

我われ歎なげけども惡あくの中うちに止とゞまり、哭なけども審判しんぱんに戰をのゝかず、我われ感動かんどうなきを病やむ。神かみの言ことばよ、爾なんぢの仁じん慈じなる定さだめを以もつて我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 至いたりて光くわう榮えいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは羔こひつじの如ごとく聊いさゝかも呼よばはらず、言ことばをも聲こゑをも出いださずして、屠殺ほふりと創傷きずとの爲ために曳ひかれて、ハリストスを歌か頌しようせり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは糧かてとして猛獸まうじうに畀あたへられ、海うみの深處ふかみに投なげられて、靈たましひにて悅よろこべり。故ゆゑにハリストスは不ふ朽きうの榮えい冠くわんを以もつて爾なんぢ等らを飾かざり給たまへり。

生神女讚詞 救すくはるる者ものの戸と、我われ等らの爲ために身みを取とりし主しゆの獨ひとり過とほり給たまひし門もんよ、信しんを以もつて爾なんぢを歌うたふ我われ等らの爲ために義ぎの門もんを啓ひらき給たまへ。

又

イルモス 今いまを限かぎりの罪つみの淵ふちは我われを圍かこみ、我わが靈たましひは亾ほろびんとす。祈いのる、主宰しゆさい敎導者けうだうしやよ、爾なんぢの高たかき手てを伸のべて、我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

睿えい智ち者しやよ、爾なんぢの手ての下したに傾かたぶきし甘味あまみの泉いづみを爾なんぢ水みづを以もつて洗せんせり。多おほく罪つみを犯おかしし我われに傷しやう感かんの水みづを降くださんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

前ぜん驅くよ、爾なんぢは水みづを以もつて最高いとたかき天てんを覆おほへるイイスス、仁愛じんあいの主しゆ、慈じ憐れんの淵ふちたる者ものを河かはの中うちに洗あらへり。我われに赦罪しやざいを流ながさんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

前ぜん驅くよ、爾なんぢは天國てんこくは邇ちかづけり、悔くわい改かいせよと呼よべり。愛あいを以もつて爾なんぢを崇あがめて、爾なんぢの尊たふとき覆庇おほひの下したに趨はしり附つく者ものに之これに入いらんことを得えしめ給たまへ。

生神女讚詞 造成主ざうせいしゆに爾なんぢの身みを借かしし至し淨じやうなる者ものよ、天てん上じやうの軍ぐんと衆しゆう預よ言者げんしやと使徒しと及および致ち命者めいしやと偕ともに我われを宥なだめて救すくはんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

第七歌頌

イルモス 爐ゐろりの焰ほのほに露つゆを注そゝぎ、少者せうしやを焚やかるるなく救すくひし主しゆ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは世世よよに崇あがめ讚ほめらる。

我われ不ふ朽きうの衣ころもを脫ぬぎ、耻ち辱じよくの行おこなひを衣きたり。故ゆゑに爾なんぢに呼よぶ、宏くわう恩おんなる神かみよ、諸德しよとくの衣ころもにて我われを飾かざり給たまへ。

イイススよ、我われ淫行いんかうの目めと不ふ節制せつせいの觸さはりとに汚けがされて、爾なんぢの前まへに汚けがらはしき者ものと爲なれり。我われを蕩たう子しの如ごとく納いれ給たまへ。

致命者讚詞 ハリストスの軍ぐん士し、神聖しんせいなる燈ともしびよ、爾なんぢ等らは上うへなる生命いのちを愛あいして、多おほくの苦くるしみを忍しのべり、故ゆゑに忠ちゆう信しんに讚さん美びせらる。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは苦くるしみの火ひに潔きよめられ、日ひよりも明あきらかに輝かゞやきて、無む神しんの凡およその幽闇くらやみを散さんじたり。

生神女讚詞 萬有ばんいうを圍かこむ主しゆを生うみし潔いさぎよき生しやう神女しんぢよ・永貞えいてい童女どうぢよよ、我われを圍かこむ無知むちの幽闇くらやみ及および罪つみより脫のがれしめ給たまへ。

又

イルモス 三人みたりの少者せうしやは爐ゐろりに於おいて聖三者せいさんしやを像かたどりて、火ひの恐嚇おどしを履ふみ、歌うたひて呼よべり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

ハリストスの授洗者じゆせんしや、前ぜん驅く、日ひの燈臺とうだいよ、怠慢おこたりに昧くらまされて盲めしひと爲なりし我わが靈たましひを照てらして、我われを痛つう悔くわいの途みちに向むかはしめ給たまへ。

我われ審判しんぱんの時ときを思おもひて痛いたく畏おそる、多おほくの不ふ當たうなる行おこなひを爲なしたればなり。主しゆの授洗者じゆせんしやよ、轉達てんたつして我わが前まへに在ある火ひより我われを脫のがれしめ給たまへ。

我わが生命いのちの保護ほご者しやなる前ぜん驅くよ、我われを見みゆる及および見みえざる敵てきより守まもり、蔽おほひて、天國てんこくに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、諸しよ預よ言者げんしや、使徒しと、致ち命者めいしやと偕ともに爾なんぢの子こに祈いのりて、常つねに爾なんぢを尊たふとむ我われ等らを將しやう來らいの苦く難なんより救すくはんことを求もとめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 至いと高たかきに天てん使等しらより默もださずして讚榮さんえいせらるる神かみを、諸天しよてんの天てんと地ち、山やまと岡をかと深處ふかみ、及および悉ことごとくの人類じんるゐは、歌うたを以もつて造成主ざうせいしゆ及および贖しよく罪主ざいしゆとして崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

萬有ばんいうの王わうよ、我われ良りやう心しんを失うしなひたる者ものは爾なんぢを畏おそるる畏おそれを我わが心こゝろに抱いだかずして、肉體にくたいの逸樂いつらくに生いのちを費つひやして、爾なんぢの審判しんぱんに戰をのゝく。祈いのる、今いま痛つう悔くわいする我われを忌いむ毋なかれ。

地ち上じやうに罪つみなく童貞女どうていぢよより生うまれし慈じ憐れん多おほき主しゆよ、痛つう悔くわいを以もつて我われを地ち上じやうの罪つみより洗あらひて、溫柔をんじうの者ものの住すむ聖せいなる地ちに移うつるを得えしめ給たまへ。

致命者讚詞 ハリストス萬有ばんいうの神かみの至いたりて光くわう榮えいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ自身みづからの血ちに染そみたる爾なんぢ等らの足あしは、敵てきに障さゝへられずして、嚴おごそかに天てん上じやうに往ゆくを得えたり。

致命者讚詞 光くわう榮えいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは意いを決けつして苦難くるしみ及および大おほいなる格鬪たゝかひの爲ために衣ころもを脫ぬぎ、敵てきを裸ら體たいにして、之これに耻ち辱じよくを衣きせたり、故ゆゑに天てん上じやうに榮えい冠くわんを冠かうむりて樂たのしむ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、華くわ美びに榮さかえたる主しゆは爾なんぢイアコフの華くわ美びを愛あいして、爾なんぢの腹はらに入いりて、人ひとの性せいを諸もろもろの華くわ美びにて飾かざり給たまへり、此これ智慧ちゑに超こゆる諸しよ恩おん賜しなり。

又

イルモス 敬虔けいけんの範のりたる少者せうしやは堪たへ難がたき火ひに入いれられしに、焰ほのほに惱なやまされずして、神聖しんせいなる歌うたを歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

神聖しんせいなる前ぜん驅くイオアンよ、爾なんぢは人人ひとびとの罪つみを任になふ神かみの羔こひつじを傳つたへたり。我わが諸罪しよざいの任にを解ときて、我われに救すくはるる者ものの分ぶんを得えしめんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

神かみの無む原げんなる言ことばよ、爾なんぢに祈いのる、光くわう榮えいにして神聖しんせいなる爾なんぢの授洗者じゆせんしやに因よりて、我われ全身ぜんしん惡あく事じの幽暗くらやみに圍かこまるる者ものを焰ほのほの燃もゆる爐ゐろり及および外そとの幽暗くらやみより脫のがれしめ給たまへ。

虛むなしくして無む結果けつくわなる靈たましひに悔くわい改かいの善果ぜんくわを傳つたへし主しゆの神聖しんせいなる預よ言者げんしやよ、荊棘いばらを生しやうずる我わが靈たましひを凡およその逸樂いつらくより潔きよめ給たまへ、我わが善行ぜんかうの穗ほを生しやうぜん爲ためなり。

生神女讚詞 神かみの母はゝとして、聖せいなる天てん使し、諸しよ預よ言者げんしや、使徒しと、致ち命者めいしやと偕ともに祈いのりて、常つねに爾なんぢ生しやう神女しんぢよを讚さん美びする者ものを諸もろもろの葘害わざはひ、憂患うれひ及および將しやう來らいの悉ことごとくの苦くるしみより脫のがれしめんことを求もとめ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 祝しゆく讚さんせらるる哉かな主しゆ、イズライリの神かみ、我われ等らの爲ために救すくひの角つのを其その僕ぼくダワィドの家いへに興おこしし者ものや、其その矜恤あはれみに因よりて東旭あさひは上うへより我われ等らに臨のぞみ、我われ等らの足あしを平安へいあんの道みちに向むかはしめたり。

視みよ、嘉よく納いるべき時とき及および潔きよめの日ひなり。嗚呼あゝ靈たましひよ、是これより望のぞみを起おこして、轉てんじて悔くわい改かいの果みを結むすべ、然しからずば畏おそるべき死しの斧をのは爾なんぢを無む結果けつくわの者ものと見みて、古いにしへの無花果いちじくの如ごとく斫きりて彼處かしこの火ひに投とうぜん。

我われは古いにしへの富とめる者ものの如ごとく逸樂いつらくの中うちに樂たのしみ、隣となりに對たいして多おほくの無慈悲むじひを抱いだきて、滅きえざる火ひを畏おそれず。主宰しゆさいよ、求もとむ、我わが靈たましひの頑固かたくななるを柔やはらげ給たまへ、我われ昧くらまされし者ものが終をはりにだにも慈悲じひを以もつて照てらされん爲ためなり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らはハリストスの神聖しんせいなる血ちに印いん證しようせられて、信しんを以もつて堅けん固ごに苦くるしみを忍しのびて、不ふ信しんの諸敵しよてきを仆たふし、衆おほくの人人ひとびとを汚けがらはしき迷まよひより出いだし、靈妙れいめうに神かみを識しる知ち識しきの光ひかりにて之これを照てらし給たまへり。

致命者讚詞 ハリストスの神聖しんせいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは敵てきの軍ぐんを斬きる利とき劍つるぎと顯あらはれ、又また聖三者せいさんしやの光明くわうみやうを容いるる器うつは、信者しんじやの爲ために敬虔けいけんの光ひかりを輝かゞやかす燈ともしび、神しん靈れいなるシオンの眞まことの軍ぐん士しと顯あらはれたり。

生神女讚詞 預よ言者げんしやは爾なんぢを光ひかれる雲くもと預よ見けんせり、是これより大おほいなる日ひハリストス神かみは我われ等らに現あらはれて、先さきに昧くらまされし者ものを照てらし給たまへり。仁じん慈じなる者ものよ、我わが諸慾しよよくの雲くもを拂はらひて、神聖しんせいなる光ひかりを以もつて我われを照てらさんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

又

イルモス 我われ等ら信者しんじやは影かげ及および文ぶんなる律法りつぱふに於おいて預よ象しやうを見みん、凡およそ始はじめて生うまるる男だん子しは神かみに獻さゝげられたり。故ゆゑに我われ等らは無む原げんの父ちゝより始はじめて生うまれし言ことば、夫をつとなき母はゝより始はじめて生うまれし子こを崇あがめ讚ほむ。

睿えい智ちなる預よ言者げんしやよ、爾なんぢは律法りつぱふの影かげに注ちゆう目もくし、明あきらかに神かみの恩おん寵ちようの曉あかつきを見みて、地ちの極はてを照てらして、無知むちの幽暗くらやみを拂はらへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを尊たふとむ。

ハリストスの致ち命者めいしや、神聖しんせいなる授洗者じゆせんしや、悔くわい改かいの燈ともしび、敬虔けいけんの朝あさとして、舊きうと新しんとの中ちゆう保はう者しやよ、惡あくに緣よりて舊ふるびたる我わが卑いやしき靈たましひを新あらたにして、神聖しんせいなる智ち識しきを以もつて照てらし給たまへ。

睿えい智ち者しやよ、畏おそるべき時とき、戰をのゝくべき時とき、定罪ていざいの時ときに於おいて我われ定罪ていざいせらるる者ものを彼處かしこに待まつ所ところの嚴げん罰ばつより脫のがれしめ給たまへ、我わが靈たましひの救きう者しやが爾なんぢ新娶者はなむこの友ともの祈き禱たうを聽きき給たまへばなり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる母はゝ童貞女どうていぢよよ、神かみの母はゝとして、神かみの言ことばが身みにて爾なんぢより生うまれし潔いさぎよき母はゝとして、無む形けいの者もの、使徒しと及および預よ言者げんしや、成聖者せいせいしや及および致ち命者めいしやと偕ともに常つねに彼かれに世せ界かいに平安へいあんを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに傷感の讚頌スティヒラ、第三調。

主しゆよ、我わが散ちらされたる思おもひを聚あつめ、我わが荒あれたる心こゝろを潔きよめ給たまへ。ペトルに於おけるが如ごとく我われに痛つう悔くわいを、稅ぜい吏りに於おけるが如ごとく歎息たんそくを、淫いん婦ぷに於おけるが如ごとく淚なみだを與あたへ給たまへ、我わが大おほいなる聲こゑを以もつて爾なんぢに呼よばん爲ためなり、神かみよ、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり慈じ憐れんにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。

爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作しわざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我われ屢しばしば歌か頌しようを獻けんじて罪つみを犯おかすと顯あらはれたり、蓋けだし舌したにて歌か頌しようを唱となへ、靈たましひにて不ふ當たうの事ことを思おもふ。ハリストス神かみよ、痛つう悔くわいを以もつて兩ふたつながら之これを改あらためて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

ハリストスの軍ぐん士しは諸しよ王わうと苛虐者くるしめびととを畏おそるる畏おそれを棄すてて、勇敢ゆうかんを以もつて勇いさましくハリストス、萬有ばんいうの主しゆ神かみ、我われ等らの王わうを承うけ認とめたり、今いまは我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞 爾なんぢは種たねなく聖神せいしんに由よりて孕はらみ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚榮さんえいして歌うたふ、至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、慶よろこべ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ及び聯禱。次に第一時課、竝に發放詞。

 火曜日の聖体礼儀に

火曜日の眞福詞、第三調。

ハリストスよ、爾なんぢは誡いましめに背そむきし原げん祖そアダムを樂園らくゑんより逐おひ出いだせり。然しかれども爾なんぢ、洪恩こうおんなる主しゆよ、十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを承うけ認みとめし盜賊たうぞく、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものを其中そのうちに入いれ給たまへり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

ハリストスよ、我われ度ど生せいの逸樂いつらくに汚けがれたる靈たましひを以もつて直たゞちに爾なんぢの洪恩こうおんに就つきて、熱心ねつしんに爾なんぢ獨ひとり隱微ひそかなる事ことを知しる者ものに呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢの慈じ憐れんに由よりて我われを潔きよめ給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

舊きうと新しんとの中ちゆう保はう者しやと爲なりし至いたりて讚さん美びたる神聖しんせいなる授洗者じゆせんしやよ、罪つみに由よりて舊ふるびたる我われを新あらたにして、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、我われに能よくハリストスの國くにに入いらしむる痛つう悔くわいの途みちを躓つまづきなく行ゆくを得えしめ給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんにし爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

勇敢ゆうかんなる聖せい受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは善よき戰たゝかひを戰たゝかひて、無む數すうの病やまひを忍しのびたり、之これに因よりて常つねに衆しゆう人じんの病やまひを援たすけ、惡あく鬼きの惱なやみを退しりぞく。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢ等らを讚榮さんえいす。

光榮 我われ等らが讚榮さんえいする三さん位ゐの惟一者ゆゐいちしやは實じつに光ひかりなり、生命いのちなり、全能者ぜんのうしやなり。蓋けだし父ちゝと子こと聖神せいしんとは萬有ばんいうを持たもつ惟一者ゆゐいちしやにして、三さん位ゐに於おいて惟一ゆゐいちの主宰しゆさい、主しゆ、神かみと知しらるる者ものなり。

今も 童貞女どうていぢよ母はゝよ、常つねに罪つみを犯おかして、仁じん慈じなる神かみを怒いからしむる我われを宥なだめ、仁じん慈じなる者ものとして、今いま我われに痛つう悔くわいの心こゝろを固かため給たまへ、我わが將しやう來らいの苦くるしみを免まぬかれて、熱心ねつしんに爾なんぢ少女せうぢよの祈き禱たうを歌か頌しようせん爲ためなり。

 火曜日の晩課

十字架の讚頌スティヒラ、第三調。

言ことばよ、爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせらるるに因よりて造物ざうぶつは變へんじ、日ひは畏懼おそれに因よりて光くわう線せんを隱かくし、殿でんの幔まくは裂さけ、凡およその信者しんじやは救すくはれたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの無む量りやうの富とみを讚榮さんえいす。

慈じ憐れんに因よりて我わが肉體にくたいを受うけし神かみ主宰しゆさいは木きに釘ていせられ、身み擧あげられて、我われ等ら仆たふされし者ものを擧あげ給たまへり、其その仁じん慈じなる旨むねの定さだめしが如ごとし。

主しゆよ、爾なんぢの脅わきより流ながされし神聖しんせいなる血ちと水みづとの滴したゝりにて世せ界かいは新造しんざうせられたり、蓋けだし爾なんぢは洪恩こうおんなるに因よりて水みづを以もつて衆しゆう人じんの罪つみを洗あらひ、血ちを以もつて赦免しやめんを書しるし給たまふ。

又 生神女の讚頌スティヒラ。

我われ怠慢たいまんの牀とこに臥ふし、懶惰おこたりの中うちに我わが生命いのちの時ときを費つひやして、我わが逝世せいせいの期きを畏おそる。少女せうぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを痛つう悔くわいに興おこして、救すくひ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我わが心こゝろの病やまひを醫いやし、我わが智慧ちゑの迷まよひを止とゞめ、我われに淨きよき心こゝろを以もつて爾なんぢを歌か頌しようし、恩おん寵ちようを獲え、審判しんぱんの日ひに於おいて慈じ憐れんを蒙かうむらんことを得えしめ給たまへ。

我わが卑いやしき靈たましひよ、惡あくの負おひ難がたき任にを卸おろし、淚なみだを流ながして就つきて呼よべ、潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われに爾なんぢの子こ及および神かみの輕かろき軛くびきを負おふを獲えしめ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢが己おのれの子この十じふ字架じかに在あるを見みる時とき、劍つるぎは爾なんぢの心こゝろを刺さして、爾なんぢ呼よべり、產さんの後のちに我われを童貞女どうていぢよと護まもりし吾わが子こ吾わが神かみよ、我われを子こなき者ものと爲なす勿なかれ。

次ぎて「穩なる光」。提綱ポロキメン。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第三調。

ハリストスよ、我われ爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じか、世せ界かいの守しゆ護ご者しや、我われ等ら罪つみなる人ひとの救すくひ、大おほいなる潔淨きよめ、王わうの勝しよう利り、全ぜん世せ界かいの美譽ほまれなる者ものに伏拜ふくはいす。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

不ふ順じゆんの木きは世せ界かいに死しを生しやうじ、十じふ字架じかの木きは生命せいめいと不ふ朽きうとを生しやうじたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ釘ていせられし主しゆに伏拜ふくはいす、願ねがはくは爾なんぢが顏かんばせの光ひかりは我われ等らに輝かゞやかん。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

諸しよ預よ言者げんしや、ハリストスの使徒しと及および致ち命者めいしやは一體いつたいの三者さんしやを歌うたはんことを敎をしへ、迷まよへる異い邦民はうみんを照てらし、人ひとの諸しよ子しを諸天しよてん使しの侶ともと爲なせり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 我わがハリストスよ、爾なんぢを生うみし無む玷てんなる牝め羊ひつじ、爾なんぢの母はゝは爾なんぢが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、歔欷すゝりなきして呼よべり、產さんの後のちにも我われを潔いさぎよき者ものと守まもりし主しゆよ、我われを子こなき者ものと爲なす勿なかれ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。聯禱及び發放詞。

 火曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいよ、我われは爾なんぢ神かみの母はゝを慈じ憐れん及および仁愛じんあいの泉いづみと知しりて、就つきて爾なんぢの仁じん慈じに祈いのる、我われに傷しやう感かんを與あたへ給たまへ、我わが諸罪しよざいの爲ために歎なげきて哭なかん爲ためなり。

我われに靈たましひの淚なみだの滴したゝりを與あたへて、我わが行おこなひの悉ことごとくの汚けがれと惡あしき念おもひとを洗あらひ、我わが靈たましひの不ふ潔けつを淨きよめ、我われを聖神せいしんの殿でんと爲なし給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ諸罪しよざいの浪なみに荒あらされ、常つねに激はげしく敵てきの行動かうどうに溺おぼらされ、今いま滅亡ほろびの深處ふかみに沈しづめられて爾なんぢに呼よぶ、我われを救すくひ給たまへ。

今も 衆しゆうの女宰ぢよさい・生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの慈じ憐れんの多おほきに因よりて我わが不ふ當たうなる靈たましひを憐あはれみ、今いま爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく者ものを永遠えいゑんの火ひ及および惡あく鬼きの攻擊こうげきより脫のがれしめ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

至いたりて讚さん美びたる者ものよ、惡あしき思おもひにて昧くらまされし我わが智慧ちゑを神聖しんせいなる光ひかりにて照てらし給たまへ、爾なんぢは父ちゝより輝かゞやきし永在えいざいの光ひかりを生うみたればなり。

義ぎ人じんの敵てきは我わが靈たましひを躓つまづかせて地ちに仆たふせり。潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、爾なんぢの右みぎの手てを以もつて我われを起おこし給たまへ。

光榮 我われ不ふ當たうなる者ものは稅ぜい吏りの聲こゑを以もつて爾なんぢに呼よぶ、女宰ぢよさいよ、我われを潔きよめ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて爾なんぢの僕ぼくに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

今も 女宰ぢよさいよ、我わが靈たましひの傷きずを醫いやし、思念おもひの至いたりて濁にごりたる浪なみを鎭しづめ、我われに平へい和わの治安をさまりを與あたへ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

我われ逸樂いつらくと色慾しきよくとを以もつて肉體にくたいを汚けがし、汚けがらはしき思おもひに因よりて吾わが靈たましひの潔けつ淨じやうを失うしなひ、智慧ちゑを昧くらましたり。女宰ぢよさいよ、爾なんぢの僕ぼくを棄すつる勿なかれ。

潔いさぎよき者ものよ、我わが爲ために遁處のがれどころと避所かくれがと防禦ふせぎ、救すくひの角つの及および保護ほご者しやと爲なりて、常つねに我われを凡およその憂患うれひより脫のがれしめ、我わが諸敵しよてきを辱はづかしめ給たまへ。

光榮 多おほくの攻擊こうげきに圍かこまれ、常つねに惡あく鬼きの詭き計けいにて溺おぼらさるる我われ不ふ當たうの者ものは今いま爾なんぢに趨はしり附つく。爾なんぢの熱心ねつしんなる祈き禱たうを以もつて我われ爾なんぢの僕ぼくを救すくひ給たまへ。

今も 諸慾しよよくの明あきらかならざる夜よるは我われ不ふ當たうの者ものを圍かこむ。仁じん慈じにして純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの光ひかりを以もつて吾わが靈たましひの雲くもを拂はらひて、神かみの誡いましめの光ひかりに向むかはしめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス イサイヤは預よ象しやうに於おいて崇たかき寶はう座ざに坐ざして光くわう榮えいの諸天しよてん使しに繞めぐらるる神かみを見みし時ときに籲よべり、噫あゝ 我われ 禍わざはひなる哉かな、我われ肉體にくたいを取とる神かみ、暮くれざる光ひかりと平安へいあんとを司つかさどる者ものを預よ見けんせり。

我わが生命いのちの時ときは煙けむりの如ごとく消きえたり、我われ死しの門もんに近ちかづきて、惡あく鬼きの攻擊こうげきを畏おそる、常つねに彼かれ等らの行爲わざを行おこなひたればなり。純じゆん潔けつなる者ものよ、我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我わが惡あくの淵ふちを涸からし、我われに淚なみだの河かはを與あたへて、我わが諸慾しよよくの焰ほのほを盡ことごとく滅けし、審判しんぱんの日ひに於おいて我われに火ひ及および他たの苦くるしみより脫のがれんことを得えしめ給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、罪つみにて病やめる我わが靈たましひを爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて醫いやして、我われに遜へりくだりて常つねに爾なんぢの子この誡いましめを行おこなふを得えしめ給たまへ、我わが彼かれの仁じん慈じを蒙かうむらん爲ためなり。

今も 吾わが子こよ、爾なんぢの神聖しんせいなる敎けう會くわいは爾なんぢの脅わきより流ながれし聖せいなる血ちを以もつて潔きよめられたり、我われは十じふ字架じかに爾なんぢの悉ことごとくの苦くるしみを見みて苦くるしむと、言ことばの母はゝは哭なきて言いへり。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの罪つみの淵ふちは我われを圍かこみ、我わが靈たましひは亾ほろびんとす。祈いのる、主宰しゆさい敎導者けうだうしやよ、爾なんぢの高たかき手てを伸のべて、我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

神かみの聘女よめよ、爾なんぢの潔いさぎよき血ちより身みを取とりし神かみの子こは爾なんぢを罪人ざいにん等らの爲ために大おほいなる避所かくれがと爲なせり、故ゆゑに爾なんぢの諸僕しよぼくに慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。

仁じん慈じなる者ものよ、爾なんぢの光ひかりを以もつて不ふ當たうなる思おもひに昧くらまされたる我わが心こゝろの目めを照てらし、我われを光ひかりの子こと爲なして、明あかるき處ところに入いらしめ給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、慾よくの念おもひの浪なみは常つねに我われを擾みだし、惡あく鬼きの暴風あらしは溺おぼらす。祈いのる、我われを無む慾よくの石いしに固かため給たまへ。

今も 我われ靈たましひの死しを以もつて寢いねて、失望しつばうの柩ひつぎに臥ふす。祈いのる、我われに手てを授さづけて、我われを起おこして痛つう悔くわいの度生いのちに導みちびき給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第三調。

生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢの子この十じふ字架じかを能のう力りよくの杖つゑとして獲えて、此これを以もつて諸敵しよてきの驕おごりを墜おとし、愛あいを以もつて絕たえず爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

第七歌頌

イルモス 昔むかし三人みたりの少者せうしやはペルシヤ人じんの尊たふとめる金こがねの像ざうに伏拜ふくはいせずして、爐ゐろりの中なかに歌うたへり、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

潔いさぎよき者ものよ、罪つみに由よりて弱よわりたる我わが靈たましひに能のう力りよくを佩おばしめて、我われを救すくひ給たまへ。蓋けだし我われ信しんを以もつて爾なんぢの子こに呼よぶ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我われ死しの時ときと不死ふしなる永遠えいゑんの苦くるしみとを畏おそれて、爾なんぢに趨はしり附つく。少女せうぢよ、神かみの母はゝよ、執とらふる者ものの網あみより我われを救すくひ給たまへ。

光榮 容いれられぬ神かみを腹はらに容いれし生しやう神女しんぢよよ、多おほくの罪つみに狹せばめらるる我わが智慧ちゑを此これより釋とき給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよよ、人ひとの族やからは爾なんぢに祈いのる、女宰ぢよさいよ、爾なんぢの諸僕しよぼく、信しんを以もつて爾なんぢの子こに、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よぶ者ものを憐あはれみ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 敬虔けいけんの範のりたる少者せうしやは堪たへ難がたき火ひに入いれられしに、焰ほのほに惱なやまされずして、神聖しんせいなる歌うたを歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

我われ實じつに蕩たう子しに效ならひ、諸罪しよざいの中うちに我わが一いつ生しやうを盡つくして、今いま呼よぶ、少女せうぢよよ、我われ爾なんぢの前まへに罪つみを獲えたり、我われを爾なんぢの子こ及および造成主ざうせいしゆの傭やとひ人びとの一ひとりの如ごとく爲なし給たまへ、我わが萬世ばんせいに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

我わが靈たましひは惡あくに盈みち、我われは凡およそ墓はかに入いる者ものと等ひとしくなれり。生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢ我われを慾よくの穴あなと我わが諸惡しよあくの泥ひぢより引ひき出いだし給たまへ。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの聖せいなる胎たいより生うまれしハリストスに多おほくの罪つみの赦ゆるしを我われに賜たまはんことを祈いのり給たまへ、我わが歌うたはん爲ためなり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、吾わが靈たましひが神かみの命めいに因よりて此この生命いのちを去さらん時とき、執とらふる者ものの網あみより我われを脫のがれしめ給たまへ。蓋けだし我われ呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

第九歌頌

イルモス 我われ等ら信者しんじやは影かげ及および文ぶんなる律法りつぱふに於おいて預よ象しやうを見みん、凡およそ始はじめて生うまるる男だん子しは神かみに獻さゝげられたり。故ゆゑに我われ等らは無む原げんの父ちゝより始はじめて生うまれし言ことば、夫をつとなき母はゝより始はじめて生うまれし子こを崇あがめ讚ほむ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、人ひとの族やからは今いま爾なんぢの勝かたれぬ祈き禱たうの富とみを獲えて、晝ひるに夜よるに呼よぶ、爾なんぢの造成主ざうせいしゆ及および子こに爾なんぢを歌うたふ者ものを宥なだめんことを常つねに息やめずして祈いのり給たまへ。

不ふ當たうなる慾よくの矢やは我わが靈たましひに傷きずつけ、惡あく鬼きの誘惑いざなひは惡あしき念おもひを以もつて常つねに我わが智慧ちゑを擾みだす。故ゆゑに少女せうぢよよ、我わが醫いやし難がたき傷きずを醫いやし給たまへ。

光榮 潔いさぎよき神かみの聘女よめよ、我われと戰たゝかふ敵てきの傷きずより我われを護まもり給たまへ、蓋けだし我われ不ふ當たうの者ものは彼かれ等らの攻擊こうげきと多おほくの惡謀あくぼうと狂きやう暴ばうとに勝たへず。祈いのる、速すみやかに我われを救すくひ給たまへ。

今も 爾なんぢは我わが卑いやしき體からだの不ふ能のう、我わが靈たましひの傷きず、我わが心こゝろの歎息なげき、我わが智慧ちゑの迷まよひと惑まどひとを知しる。故ゆゑに爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われに平愈いやしを與あたへ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

水曜日

 水曜日の早課

第一の「カフィズマ」の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第三調。

十じふ字架じかは地ちに建たてられて天てんに摩さはれり、是これ木きが此かくの如ごとき高度たかさに至いたりしに非あらず、萬有ばんいうを充みつる爾なんぢが此この上うへに在ありて斯かく成なれり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

神かみの羔こひつじよ、爾なんぢは松まつ・杉すぎ・黃楊樹つげに擧あげられたり、信しんを以もつて爾なんぢの自じ由いうなる釘殺ていさつに伏拜ふくはいする者ものを救すくはん爲ためなり。ハリストス神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、十字架生神女讚詞

生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢの子この十じふ字架じかを能のう力りよくの杖つゑとして獲えて、此これを以もつて諸敵しよてきの驕おごりを墜おとし、愛あいを以もつて絕たえず爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

第二の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第三調。

人類じんるゐの爲ために頰ほゝを批うたれて怒いからざりし主しゆよ、我われ等らの生命いのちを朽きう壞くわいより釋ときて、我われ等らを救すくひ給たまへ。

句 神かみ我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

天てん使しの軍ぐんは爾なんぢの量はかり難がたき權能けんのうと自じ由いうなる釘殺ていさつとを見みて驚おどろけり、如何いかにして見みえざる者ものは人類じんるゐを朽きう壞くわいより救すくはんと欲ほつして、身みに傷きずを受うけたる。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ生いのちを施ほどこす主しゆに呼よぶ、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの仁愛じんあいに歸きす。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 ハリストスの恒忍ごうにんなる致ち命者めいしやはハリストスの全ぜん備びの武具ぶぐを衣き、信しんの盾たてを執とりて、受難者じゆなんしやに適かなふが如ごとく敵てきの軍ぐんを斃たふせり。蓋けだし生命いのちの望のぞみを抱いだきて、勇いさましく暴ばう虐ぎやく者しやの悉ことごとくの恐嚇おどしと傷きずとを忍しのびたり、故ゆゑに榮えい冠くわんを受うけ給たまへり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 ハリストスよ、婚姻こんいんに與あづからざる潔いさぎよき爾なんぢの母はゝは爾なんぢが死しして十じふ字架じかに懸かゝれるを見みて、母はゝとして哭なきて言いへり、吾わが子こよ、不ふ法はふにして恩おんを知しらざるエウレイの會くわい、屢しばしば爾なんぢの大おほいなる賜たまものを樂たのしみし者ものは何なにをか爾なんぢに報むくいたる。我われ爾なんぢの神聖しんせいなる寬くわん容ようを歌うたふ。

第三の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第三調。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかと死しとを受うけて、我われ等らに不死ふしの生命いのちを流ながし、世せ界かいを朽きう壞くわいより釋とき給たまへり。故ゆゑに生命いのちを賜たまふ仁愛じんあいの主しゆよ、我われ等らは衆しゆう人じんに救すくひを施ほどこす爾なんぢの苦くるしみと、平安へいあんを與あたふる勝かたれぬ武器ぶきたる爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかとを讚榮さんえいす。

萬物ばんぶつより最高いとたかき主宰しゆさいよ、爾なんぢは十じふ字架じかの辱はづかしめを忍しのびたり、我われ先さきに甚はなはだしく辱はづかしめられし者ものを尊たふとくせん爲ためなり。恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢは戈ほこにて脅わきを刺さされたり、我われ爾なんぢの造物ざうぶつを朽きう壞くわいより救すくはん爲ためなり。人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ爾なんぢの大おほいなる慈じ憐れんと仁じん慈じとを歌うたふ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 主宰しゆさいよ、婚姻こんいんに與あづからざる無む玷てんなる童貞女どうていぢよ爾なんぢの母はゝは爾なんぢが木きに擧あげられしを見みて呼よべり、嗚呼あゝ哀かなしい哉かな、吾わが甘愛かんあいなる子こよ、如何いかにして至いたりて不ふ法はふなる會くわいは爾なんぢ萬ばん衆しゆうの造成者ざうせいしや及および主宰しゆさいを木きに懸かけんことを定さだめたる。我われ爾なんぢの至し大だいなる仁じん慈じを歌うたふ。

尊貴にして生命を施す十字架の規程カノン、其冠詞は、言よ、爾は苦にて人人の苦を止めたり。イオシフの作。第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

言ことばよ、爾なんぢは尊たふとき爾なんぢの身みの苦くるしみを以もつて昔むかし惡敵あくてきに傷きずつけられし人類じんるゐの多た病びやうの苦くるしみを醫いやし、凡およそ敬虔けいけんに爾なんぢの量はかられぬ定制ていせいに伏拜ふくはいする者ものを救すくひ給たまふ。

樂園らくゑんに於おいて誡いましめに背そむかしむる誘惑いざなひを以もつて人ひとを縛しばりし者ものは今いま解とかれぬ械かせにて縛しばられたり、人ひとを愛あいする主しゆが身みを取とりて、我われ等らの罪惡ざいあくを解とかん爲ために、甘あまんじて縛しばられしに因よる。

致命者讚詞 大名たいめいなる受難者じゆなんしやは造物ざうぶつが惡あく鬼きの誘惑いざなひに因よりて溺おぼるる苦く難なんを見みて、傲慢がうまんなる敵てきの力ちからを悉ことごとく血ちの流ながれの中うちに沈しづめて、信者しんじやの爲ために穩おだやかなる港みなとと顯あらはれたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやの會くわいは天てん上じやうの品ひん位ゐと嚴おごそかに竝ならび立たち、常つねに造つくられざる神性しんせいの光ひかりに輝かゞやかされて、地ちに在ありて信しんを以もつて神かみの奇き跡せきを讚榮さんえいする者ものを輝かゞやかす。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは地ち上じやうに神かみ言ことば、仁じん慈じに因よりて己おのれの苦くるしみと尊たふとき十じふ字架じかとを以もつて我われ等らを天てんに上のぼせ給たまひし主しゆを生うみて、天てん上じやうの品ひん位ゐより最高いとたかき者ものと顯あらはれたり。

又至聖なる生神女の規程カノン、其冠詞は、生神女に第三の歌を奉る。

第一歌頌

イルモス同上

至し淨じやうなる者ものよ、預よ言者げんしやアウワクムは神しん゜を以もつて爾なんぢを樹こ蔭かげ繁しげき山やまと預よ見けんせり。祈いのる、慾よくに刺さされて、死しの蔭かげに在ある我われを爾なんぢの蔭かげに蔽おほひて、我われに迫せまる諸慾しよよくより脫のがれしめ給たまへ。二次。

爾なんぢの子この神聖しんせいなる脅わきより出いでし神聖しんせいなる流ながれの注そゝぐを以もつて吾わが心こゝろの疵きずを滌あらひ給たまへ、我わが宜よろしきに合かなひて爾なんぢ永福えいふく無む玷てんなる者ものを崇あがめて讚榮さんえいせん爲ためなり。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは生うみし者ものと同おなじく行かう爲ゐする言ことば、人ひとの性せいを神成しんせいせし主しゆを生うみ給たまへり。彼かれに祈いのりて、我われ惑まどひて敵てきの惡謀あくぼうに因よりて弱よわりたる者ものに神聖しんせいなる慰なぐさめを得えしめんことを求もとめ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

爾なんぢ神かみの性せいを以もつて苦くるしみに與あづからず、仁じん慈じに由よりて身みを以もつて苦くるしみに與あづかる者ものと爲なり、我われ等らに不死ふしを賜たまひし主しゆをエウレイの會くわいは木きを以もつて殺ころせり。

地ちを水みづの上うへに懸かけし言ことばよ、爾なんぢは甘あまんじて木きの上うへに懸かけられて、惡あくの穴あなに陷おちいりし我われを天てんに登のぼせ給たまへり。

致命者讚詞 創痍きずに飾かざられたる至いたりて讚さん美びたるハリストスの致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは主しゆの前まへに立たちて、其その極きはめて富とめる手てより應報むくいを受うけ給たまふ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは欣よろこばしき靈たましひを以もつて己おのれを瘡痍きずの爲ために付わたして、蛇へびを甚はなはだしく哀かなしませ、天てん使しの品ひん位ゐを歡喜よろこびに充みてたり。

生神女讚詞 婚姻こんいんに與あづからざる者ものはハリストスの十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、哭なきて曰いへり、幽暗くらやみに在ある者ものを照てらし給たまふ光くわう榮えいの日ひよ、爾なんぢは我わが目めより隱かくれたり。

又 イルモス同上

慈じ憐れんにして至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、仁愛じんあいの言いひ盡つくされぬ、宏くわう恩おんの富とめる主しゆに我われ等ら惱なやまさるる者ものを宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆの住居すまひたる潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ靈たましひを害がいする盜賊たうぞくの巢窟さうくつと爲なりし者ものの中うちに撫ぶ恤じゆつ者しやの住すまんことを祈いのり給たまへ。

神聖しんせいなる手てを以もつて萬有ばんいうを持たもつ主しゆを己おのれの手てに抱いだきし生しやう神女しんぢよよ、我われを眷かへりみて、諸慾しよよくに傾かたぶける不ふ當たうの意思おもひより脫のがれしめ給たまへ

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

凡およその尊そん貴きに超こゆる主宰しゆさいハリストス、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは葦あしにて首かうべを擊うたれて、實じつに辱はづかしめを忍しのびたり、我われ犯罪はんざいに由よりて辱はづかしめられし者ものを尊たふとくせん爲ためなり。

恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢは眞まことの王わうとして、甘あまんじて棘いばらの冠かんむりを冠かうむらせられたり、棘いばらを生しやうずる人ひとの罪つみを根ねより絕たやさん爲ためなり。救世主きうせいしゆよ、我われ爾なんぢの苦くるしみを歌うたひ讚ほむ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは痍瘡きずの苦くるしみに因よりて仆たふされずして、敵てきの誘惑いざなひを仆たふし、爾なんぢ等らの足あしにて甚はなはだしく高たかぶる暴ばう虐ぎやく者しやの驕おごりを踐ふみたり。

致命者讚詞 至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは朽くつべき身みを以もつて神聖しんせいなる不ふ朽きうを獲え、苦くるしみを以もつて苦くるしみに與あづからざる者ものの尊たふとき苦くるしみに勇いさましく效ならひて、無む形けいの品ひん位ゐに加くはへられたり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる少女せうぢよよ、昔むかし預よ言者げんしやは爾なんぢを卷軸まきものと見みたり、其中そのうちに父ちゝの指ゆびにて身みを取とれる言ことば、戈ほこを以もつて原げん祖その書券かきつけを破やぶりし者ものは錄しるされたり。

又 イルモス同上

甘あまんじて創傷きずと屠殺ほふりとを忍しのび給たまひしハリストス、獨ひとり慈じ憐れんの多おほき主しゆよ、惡あく鬼きの殘酷ざんこくなる攻擊こうげきに傷きずつけられし吾わが靈たましひを爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて醫いやし給たまへ。

造成主ざうせいしゆハリストスよ、我われは爾なんぢの手ての工業しわざ及および造物ざうぶつにして、蛇へびの惡謀あくぼうに由よりて、度生いのちの逸樂いつらくに壞やぶられたり。故ゆゑに爾なんぢを生うみし者ものの神聖しんせいなる祈き禱たうに由よりて我われを新あらたに造つくり給たまへ。

獨一どくいつの永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢは言ことばに超こえて父ちゝの言ことば、人人ひとびとを凡およその無知むちより解ときたる主しゆを生うみ給たまへり。切せつに彼かれに我われ無知むちなる慾よくの擒とりこと爲なりし者ものを解とかんことを祈いのり給たまへ。

至し聖せいなる幕まく、光ひかりの居處すまひ、絕たえず香料かうれうを滴したゝらす器うつはたる至し淨じやうなる神かみの聘女よめよ、爾なんぢは常つねに手てより我われ等らに醫治いやしを流ながし給たまふ。

第五歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは見みえざる者ものにして地ちに現あらはれ、悟さとり難がたき者ものにして甘あまんじて人人ひとびとと偕ともに居をりたり。我われ等ら朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

仁じん慈じ全能ぜんのうなる主しゆよ、爾なんぢは羔こひつじの如ごとく木きの上うへに擧あげられ、我われ等らの爲ために祭まつりとして父ちゝに獻けんぜられて、偶像ぐうざうの祭まつりを止とゞめ給たまへり。

生命いのちを賜たまふ主しゆよ、爾なんぢは戈ほこにて脅わきを刺さされて、爾なんぢを三者さんしやの一いつにして二ふたつの行かう爲ゐを有たもつ主しゆと傳つたふる者ものの爲ために救すくひの二ふたつの泉いづみを流ながし給たまへり。

致命者讚詞 イイススよ、堅けん固ごなる受難者じゆなんしやは信しんを以もつて爾なんぢを堅かたき基もとゐ及および動うごかざる石いしとして獲えて、尊たふとき石いしの如ごとく己おのれを其その上うへに建たてたり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしや致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは信しんに依よりて神かみの力ちからに堅かためられ、誘惑者いうわくしやの烈はげしき力ちからを悉ことごとく破やぶりて、嚴おごそかに榮えい冠くわんを冠かうむれり。

生神女讚詞 至し聖せいなる女宰ぢよさい、吾わが靈たましひの轉達者てんたつしやよ、爾なんぢは不ふ朽きうにハリストスを生うむを以もつて先さきに犯罪はんざいに由よりて朽きう壞くわいせし我われ等らの性せいを新あらたに造つくり給たまへり。

又

イルモス イサイヤは預よ象しやうに於おいて崇たかき寶はう座ざに坐ざして光くわう榮えいの諸天しよてん使しに繞めぐらるる神かみを見みし時ときに籲よべり、噫あゝ 我われ 禍わざはひなる哉かな、我われ肉體にくたいを取とる神かみ、暮くれざる光ひかりと平安へいあんとを司つかさどる者ものを預よ見けんせり。

童貞女どうていぢよ、光ひかれる雲くもよ、我わが肉體にくたいの病やまひ、靈たましひの疾わづらひを醫いやして、怠惰おこたりの雲くもを拂はらひ給たまへ。我われ爾なんぢに祈いのりて、愛あいを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいする者ものに壯健さうけんを與あたへ、諸難しよなんより脫のがるるを得えしめ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我われ凡およその罪つみに盈みちたる者ものは爾なんぢより生うまれし主しゆに今いま爾なんぢを轉達者てんたつしや及および祈き禱者たうしやとして進すゝむ。我われの爲ために保護ほご者しやと爲なり、我わが生命いのちの改造者あらためと爲なり、我われを神聖しんせいなる智ち識しきの途みちに嚮きやう導だうする者ものと爲なり給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我わが智慧ちゑを聖せいにし、靈たましひを光ひかりに導みちびき、我われを神聖しんせいなる光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なし給たまへ、蓋けだし視みよ、我われ惡あくに盈みち、凡およその逸樂いつらくの奴ど隷れいと爲なり、我わが良りやう心しんを汚けがせり。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの罪つみの淵ふちは我われを圍かこみ、我わが靈たましひは亾ほろびんとす。祈いのる、主宰しゆさい敎導者けうだうしやよ、爾なんぢの高たかき手てを伸のべて、我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

詭き譎けつなる蛇へびは食しよくを以もつて我われを誘いざなひて、エデムより引ひき出いだし、ハリストスは甘あまんじて木きの上うへに擧あげられて、復また我わが爲ために是これに入いるを得えしめ給たまへり。

恩者おんしや主しゆよ、爾なんぢの脅わき傷きずつけられしに、我われ等らに傷きずつけし者ものは傷きずつけられて、醫いやされぬ者ものと爲なり、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢが甘あまんじて受うけし傷きずに因よりて醫いやされたり。

致命者讚詞 ハリストスの睿えい智ちなる軍ぐん士しは火ひに投なげられ、燔やかるる羔こひつじの如ごとく神かみ・萬有ばんいうの王わうに祭まつりとして獻けんぜられて、言いひ難がたき樂たのしみを繼つぎたり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは盡つくされぬ寶たからより斟くみて、醫治いやしの河かはを流ながし、諸慾しよよくの害がいを涸からし、信者しんじやの會くわいに飮のましむ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる母はゝ・童貞女どうていぢよ・女宰ぢよさいよ、爾なんぢの血ちより身みを取とりし言ことばの殺ころされしを見みて、爾なんぢは母はゝとして呼よびて、生命いのちの源みなもとたる主しゆを讚榮さんえいせり。

又

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、凶きよう惡あくなる諸敵しよてきに攻せめられて、將まさに亾ほろびんとする我われ等らを棄すつる勿なかれ。救世主きうせいしゆよ、預よ言者げんしやを猛獸まうじうより拯すくひし如ごとく、我われ等らを拯すくひ給たまへ。

我われは高たかぶる思念おもひを以もつてファリセイに超こえ、常つねに驕おごりて無む量りやうの罪つみの淵ふちに進すゝめり。獨ひとり 潔いさぎよき者ものよ、極きはめて卑いやしくなりたる我われを宥なだめ給たまへ。二次。

至いたりて奇異きいなる降孕はらみと產さんとを有たもちし童貞女どうていぢよよ、今いま我われ不ふ當たうなる者ものの上うへに爾なんぢの慈じ憐れんを奇異きいなる者ものと顯あらはし給たまへ、蓋けだし我われ不ふ法はふに於おいて妊はらまれ、生うまれて逸樂いつらくの奴ど隷れいと爲なれり。

我われ畏おそるべき審判しんぱんを記き念ねんする時とき呼よび、泣なきて淚なみだを流ながす、惡あしき行おこなひを有たもてばなり。婚姻こんいんに與あづからざる童貞女どうていぢよ、神かみの母はゝよ、畏おそるべき時ときに於おいて我わが爲ために轉達者てんたつしやと爲なり給たまへ。

第七歌頌

イルモス 昔むかし三人みたりの少者せうしやはペルシヤ人じんの尊たふとめる金こがねの像ざうに伏拜ふくはいせずして、爐ゐろりの中なかに歌うたへり、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

仁愛じんあいの主しゆ、萬ばん衆しゆうの神かみよ、爾なんぢは己おのれの疾苦くるしみにて我われ等らの疾苦くるしみを止とゞめて、今いま敬虔けいけんに爾なんぢの尊たふとき疾苦くるしみに伏拜ふくはいする者ものを疾苦くるしみなき生命いのちに移うつし給たまふ。

ハリストスよ、造物ざうぶつは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせらるるを見みし時とき、變へんじて戰をのゝけり、地ちは震ふるひ、磐いはは裂さけ、日ひは其その光ひかりを隱かくせり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやはハリストスの法はふに循したがひて、不ふ法はふなる誘惑いざなひを退しりぞけ、法はふの爲ために審判所しんぱんしよの中なかに苦くるしみを受うけて、嚴おごそかに榮えい冠くわんを冠かうむれり。

致命者讚詞 主しゆの受難者じゆなんしや、榮えい冠くわんを冠かうむりし者ものよ、爾なんぢ等らは火ひよりも熱あつき決心けつしんを得えて、火ひに燒やかれずして呼よべり、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの生うみしハリストスが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、爾なんぢ立たちて呼よべり、產さんの後のちにも我われを潔いさぎよき者ものと守まもりし主しゆよ、我われを子こなき者ものと爲なす毋なかれ。

又

イルモス 三人みたりの少者せうしやは爐ゐろりに於おいて聖三者せいさんしやを像かたどりて、火ひの恐嚇おどしを履ふみ、歌うたひて呼よべり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

女宰ぢよさいよ、行おこなひに由よりては我われに救すくひなし、罪つみに罪つみを、惡あくに惡あくを加くはふればなり。故ゆゑに潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。二次。

審判しんぱんは門もんの側かたはらに在あり、審判しんぱん座ざは設まうけられたり、卑微ひびなる靈たましひよ、己おのれを備そなへて呼よべ、言ことばよ、我われを審判しんぱんする時とき、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて我われを定罪ていざいする勿なかれ。

我われ罪つみの果みを摘つまみて殺ころされたり。結果けつくわなき靈たましひを攜たづさへて爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの腹はらの果みを以もつて朽きう壞くわいを破やぶりし者ものよ、之これを果みを結むすぶ者ものと爲なし給たまへ。

第八歌頌

イルモス ワワィロンの爐ゐろりが少者せうしやを焚やかざりし如ごとく、神性しんせいの火ひは童貞女どうていぢよを殘そこなはざりき。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは少者せうしやと偕ともに呼よばん、主しゆの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

慈じ憐れん多おほきハリストスよ、爾なんぢ釘ていせられしに、樂園らくゑんは復また開ひらかれ、自おのづから旋まはる焰ほのほの劍つるぎは爾なんぢの聖せいなる脅わきを刺さしし戈ほこに耻はぢて退しりぞきたり。

ハリストスよ、爾なんぢと鬪たゝかふ者ものは戈ほこに傷きずつけられて斃たふれ、斃たふれしアダムは生いのちに囘かへりて、爾なんぢ甘あまんじて屠ほふられし主しゆに呼よぶ、慈じ憐れん多おほき我わが神かみよ、我われ爾なんぢを祝頌しゆくしようして讚榮さんえいす。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、世せ界かいは爾なんぢ等らの戰たゝかひと諸德しよとくと無む數すうの奇き蹟せきとを以もつて照てらされ、萬よろづの病やまひより助たすけられて、信しんを以もつて呼よぶ、主しゆの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

致命者讚詞 永えい光くわうなる聖せい致ち命者めいしやよ、曩さきに海陸かいりくを滅ほろぼさんと誇ほこりし者ものは爾なんぢ等らの足そく下かに倒たふされて、嘲あざけり觀みらる。ハリストスは生いのちを施ほどこす右みぎの手てにて凋しぼまざる榮えい冠くわんを以もつて爾なんぢ等らを飾かざる。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは定てい期きに於おいて期き及および時ときより上うへなる者ものを生うみたり。彼かれは己おのれの縛なはめを以もつて初はじめに造つくられしアダムを定てい期きの縛なはめより釋とき、又また己おのれの甘あまき愛あいの縛なはめにて之これを縛しばり給たまへり。

又

イルモス 敬虔けいけんの範のりたる少者せうしやは堪たへ難がたき火ひに入いれられしに、焰ほのほに惱なやまされずして、神聖しんせいなる歌うたを歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

全まつたく善ぜんなる者ものにして萬有ばんいうの王わうに近ちかくなりし生しやう神女しんぢよよ、我われ惡あくを行おこなひて怠慢おこたりの中うちに一いつ生しやうを送おくりし者ものを善行ぜんかうに充みて給たまへ、我わが萬世ばんせいに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

神かみの言ことばよ、昔むかし至し榮えいに預よ言者げんしやを鯨くぢらの腹はらより救すくひし如ごとく、斯かく救世主きうせいしゆよ、滅亾ほろびの深處ふかみに陷おちいりし我わが靈たましひを救すくひ給たまへ、婚姻こんいんに與あづからずして爾なんぢを生うみし童貞女どうていぢよが爾なんぢに祈いのればなり。

生しやう神女しんぢよよ、凶きよう惡者あくしやは我われ神かみの造物ざうぶつが美うるはしき衣ころもを衣きたるを見みて、之これを褫はぎたり。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢ祈き禱たうを以もつて我われを痛つう悔くわいの神聖しんせいなる衣ころもにて飾かざり給たまへ。

次に生神女の歌、「我が靈は主を崇め」。

第九歌頌

イルモス 棘いばらと火ひとを以もつてシナイ山ざんに立法者りつぱふしやモイセイの爲ために預よ象しやうせられ、神かみの火ひを焚やかるるなく腹はらに宿やどしし者もの、最いと光くわう明めいなる滅けされぬ燈ともしびたる實まことの生しやう神女しんぢよを尊たふとみて、歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

仁じん慈じなるハリストス、生いのちを賜たまふ主しゆよ、爾なんぢは失うしなひし「ドラフマ」を尋たづねん爲ために、十じふ字架じかに於おいて爾なんぢの身みを燃ともし、之これを獲えて、爾なんぢの天てん上じやうの軍ぐんを喜よろこびに與あづかる者ものと爲なし給たまへり。彼かれ等らと偕ともに我われ等らは爾なんぢを恩主おんしゆとして尊たふとみて、歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

ハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに手てを擧あげて、先さきに多おほくの慾よくに因よりて弱よわりたる我わが手てを爾なんぢの力ちからにて堅かため、實じつに弱よわりたる我わが膝ひざを神聖しんせいなる路みちを行ゆかん爲ために堅けん固ごにし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

致命者讚詞 ハリストスよ、爾なんぢの堅けん固ごにして奇異きいなる受難者じゆなんしやは無む量りやうの苦くるしみの焰ほのほに燃もえて、凉すゞしくする露つゆとして爾なんぢを獲えたり。故ゆゑに喜よろこびて尊たふとき路みちを行ゆき、歌うたを以もつて絕たえず爾なんぢを歌か頌しようせり。

致命者讚詞 ハリストスよ、多た數すうの聖せい受難者じゆなんしやの品ひん位ゐは多おほく爾なんぢを悲かなしましむる人人ひとびとの會くわいの爲ために爾なんぢに祈いのる。洪恩こうおんの主しゆよ、爾なんぢの慈じ憐れんの多おほきに因よりて我われ等らの不ふ法はふの多おほきを潔きよめ給たまへ、爾なんぢ人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは父ちゝの輝煌かゞやきたる、地ち上じやうの者ものの形かたちを受うけし主しゆを生うみ給たまへり。日ひは其その十じふ字架じかに擧あげられしを見みるに勝たへずして晦くらみ、拜偶像宗はいぐうざうしうの幽闇くらやみは滅きえたり。故ゆゑに我われ等らは彼かれ及および爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

又

イルモス 我われ等ら信者しんじやは影かげ及および文ぶんなる律法りつぱふに於おいて預よ象しやうを見みん、凡およそ始はじめて生うまるる男だん子しは神かみに獻さゝげられたり。故ゆゑに我われ等らは無む原げんの父ちゝより始はじめて生うまれし言ことば、夫をつとなき母はゝより始はじめて生うまれし子こを崇あがめ讚ほむ。

不ふ朽きうにして無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、我われ智慧ちゑの朽きう壞くわいせられ、靈たましひと良りやう心しんとの朽きう壞くわいせられ、惡あくにて汚けがされ、一いつの善ぜんもなき者ものを棄すつる勿なくして、敬虔けいけんの行おこなひにて飾かざり給たまへ。

慈じ憐れんの多おほき恩主おんしゆよ、我われは惡あくに盈みち、爾なんぢ仁愛じんあいなる主しゆより我われを踈うとくする思念おもひに充みちたり。故ゆゑに歎なげきて呼よぶ、痛つう悔くわいする我われを受うけて、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて我われを遠とほざくる勿なかれ。

純じゆん潔けつなる少女せうぢよよ、願ねがはくは我われ爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきて、爾なんぢを祐助たすけの爲ために呼よぶ者ものは、爾なんぢの祈き禱たうに由よりて、凡およその怒いかり、死しを致いたす諸慾しよよく、畏おそるべき「ゲエンナ」の火ひ、不義ふぎなる人人ひとびと及および凶きよう惡あくなる諸敵しよてきより救すくはれん。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、神かみの母はゝとして我われ母はゝの腹はらより爾なんぢを賴たのみし爾なんぢの僕ぼくが、凡およその葘害わざはひ及および惡あしき風習ならはしより救すくはれんことを爾なんぢより生うまれし主しゆ神かみ及および王わうに祈いのり給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、聯禱及び其他。

挿句くづけに讚頌スティヒラ、第三調。

我われ猜忌そねみに因よりて樂園らくゑんより逐おひ出いだされて、甚はなはだしき倒たふれを以もつて倒たふれたり。然しかれども爾なんぢは、主宰しゆさいよ、我われを棄すてずして、我わが爲ために我われの性せいを受うけ、十じふ字架じかに釘ていせられ、我われを救すくひて、我われを光くわう榮えいの中うちに入いれ給たまふ。我わが贖しよく罪主ざいしゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

モイセイは山やまに於おいて十じふ字じ形かたに手てを上うへに舒のべて、アマリクに勝かてり。爾なんぢは、救世主きうせいしゆよ、尊たふとき十じふ字架じかの上うへに手てを舒のべ、我われを抱いだきて、敵てきの奴ど隷れいより救すくひ、我われに生命いのちの記章しるしを與あたへて、我わが諸敵しよてきの弓ゆみより脫のがれしめ給たまふ。故ゆゑに言ことばよ、我われ爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかに伏拜ふくはいす。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは善よき戰たゝかひを戰たゝかひしに由よりて、死しの後のちにも世せ界かいの中うちに光くわう體たいの如ごとく輝かゞやく。故ゆゑに勇敢いさみを有たもちてハリストスに我われ等らの靈たましひを憐あはれまんことを祈いのり給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 至し仁じんなる我わがハリストスよ、純じゆん潔けつなる者ものは爾なんぢが木きに懸かゝれるを覩みて、母はゝとして哭なきて呼よべり、我わが至し愛あいの子こよ、如何いかんぞ不ふ法はふなる會くわいは爾なんぢを木きに懸かくるを定さだめたる。

 水曜日の聖体礼儀に

水曜日の眞福詞、第三調。

ハリストスよ、爾なんぢは誡いましめに背そむきし原げん祖そアダムを樂園らくゑんより逐おひ出いだせり。然しかれども爾なんぢ、洪恩こうおんなる主しゆよ、十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを承うけ認みとめし盜賊たうぞく、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものを其中そのうちに入いれ給たまへり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

我わがイイススよ、爾なんぢは我わが爲ために十じふ字架じかに釘ていせられ、脅わきを刺さされて、我わが爲ために二ふたつの救すくひの泉いづみを流ながし給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢの苦くるしみに因よりて救すくはれて、爾なんぢの仁じん慈じを歌か頌しよう讚榮さんえいす。ハリストスよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ呼よぶ者ものを憶おもひ給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

イイススハリストスよ、爾なんぢは罪犯者ざいはんしやと偕ともに算かぞへられて、我われ等ら衆しゆうの罪犯ざいはんを任になひ、萬ばん衆しゆうの王わうとして棘いばらを冠かうむりて、原げん祖その罪つみの棘いばらを根ねより絕たやし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて今いま爾なんぢの苦くるしみを讚榮さんえいす。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

勇敢ゆうかんなる受難者じゆなんしや、至いたりて光くわう榮えいなる聖せい致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らはハリストスの苦くるしみに效ならひて、神聖しんせいなる力ちからを以もつて敵てきの誘いざなひを破やぶり、天てんの光くわう榮えいを受うけて、我われ等ら衆しゆうの爲ために祈いのり給たまふ。

光榮 三さん位ゐの惟一者ゆゐいちしや、全能ぜんのうなる分わかれざる三者さんしや、惟一ゆゐいちの性せい及および力ちからよ、爾なんぢを歌うたふ者ものを凡およその敵てきの害がいより覆おほひて、彼かれ等らに生いのちの中うちに善ぜんを行おこなひし者ものの受うけたる爾なんぢの國くにを得えしめ給たまへ。

今も 神かみの母はゝ童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは潔いさぎよき爾なんぢの血ちより身みを受うけし者ものの十じふ字架じかにあるを見みて、哭なきて呼よべり、子こよ、惡あしき會くわいは衆しゆう信者しんじやの生命いのち及および復ふく活くわつたる爾なんぢを殺ころして、何なにをか是これ爾なんぢに報むくいたる。

 水曜日の晩課

「主よ爾に籲ぶ」に聖使徒の讚頌スティヒラ、第三調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

洪恩こうおんにして獨ひとり慈じ憐れんなる仁愛じんあいの主しゆよ、尊そん貴き神聖しんせいなる爾なんぢの使徒しとの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢの諸僕しよぼくに爾なんぢの平安へいあんを與あたへ、爾なんぢを歌うたひて、信しんを以もつて伏拜ふくはいする者ものを患くわん難なんより救すくひ給たまへ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

我わが恩者おんしや、神聖しんせいなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らが十じふ二にの位くらゐに坐ざして、萬民ばんみんの審判者しんぱんしやと偕ともに凡およその造物ざうぶつを審判しんぱんせん時とき、我われを定罪ていざいせられざる者ものと爲なして、幽暗くらやみと凡およその苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

睿えい智ちなる我わが恩者おんしや、神聖しんせいなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らに祈いのる、神かみの實見者じつけんしやとして、我われを凶きよう惡者あくしやの矢やより脫のがれしめ、彼かれの惡謀あくぼうを滅けして、屬神ぞくしん゜の露つゆを以もつて我われを濕うるほし給たまへ。

次ぎて若し之あらば、月課經の聖人の讚頌スティヒラ。若しなくば、又聖大奇跡者ニコライの讚頌。同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

我われ不ふ當たうの者ものは蛇へびに囓かまれ、傷きずつけられて、氣息いきなき死し者しやとして仆たふされて伏ふくす。至し福ふくなる成聖者せいせいしやよ、爾なんぢの力ちからある祈き禱たうを以もつて速すみやかに我われを興おこし給たまへ、我わが爾なんぢの速すみやかに聽きく恩おん寵ちようを讚榮さんえいせん爲ためなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

詭き譎けつの者ものは我わが靈たましひが惡あしき思おもひに昧くらまされて眠ねむれるを見みて、我われを捕とらへんことを務つとめて息やめず、神かみよ、ニコライの祈き禱たうに由よりて我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

至し福ふくなるニコライよ、爾なんぢは我われ等ら衆しゆうの爲ために大おほいなる救すくひと顯あらはれたり、爾なんぢの諸僕しよぼくを凡およその危き難なん、患くわん難なん、誘惑いうわく、諸しよ病びやう、攻擊こうげき及および見みえざる諸敵しよてきより救すくひ給たまへばなり。

光榮、今も、生神女讚詞

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢが奇き跡せきの力ちからは大おほいなり、蓋けだし爾なんぢは患くわん難なんより助たすけ、死しより救すくひ、待またざる禍わざはひより脫のがれしめ、憂うれひを解とき、人人ひとびとの罪過ざいくわを除のぞき給たまふ。
次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。

挿句くづけに使徒の讚頌スティヒラ、第三調。

聖せいなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らの聲こゑは全ぜん地ちに傳つたはれり、爾なんぢ等らは偶像ぐうざうの迷まよひを破やぶりて、神かみを知しる智ち識しきを傳つたへたり、福ふくたる者ものよ、是これ爾なんぢ等らの善ぜんなる功勞こうらうなり。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢ等らの記き憶おくを歌うたひて崇あがめ讚ほむ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

光くわう榮えいなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは生いのちを施ほどこす葡ぶ萄だうの枝えだと爲なりて、敬虔けいけんの實みとして自みづから己おのれを神かみに獻けんじたり。故ゆゑに彼かれの前まへに勇敢いさみを有たもちて、我われ等らの靈たましひに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

主しゆよ、爾なんぢの致ち命者めいしやは信しんにて固かためられ、望のぞみにて强つよくせられ、爾なんぢの十じふ字架じかを愛あいする愛あいにて靈たましひを合あはせられて、諸敵しよてきの强きやう暴ばうに勝かてり。故ゆゑに榮えい冠くわんを享うけて、無む形けいの者ものと共ともに我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞

童貞女どうていぢよよ、我われ多おほく罪つみを犯おかす者ものを爾なんぢの大おほいなる禱いのりを以もつて苦くるしみの火ひより脫のがれしめ給たまへ。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを直なほくし、爾なんぢの母はゝたる禱いのりにて我われを救すくひの途みちに向むかはしめ給たまへ。

 水曜日の晩堂課

至聖なる生神女に奉る祈禱の規程カノン。第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

生しやう神女しんぢよよ、我われに痛つう悔くわいの歎なげきと靈たましひの淚なみだとを與あたへ給たまへ、我わが多おほくの罪過ざいくわ及および良りやう心しんの不ふ正せいの爲ために泣なきて、爾なんぢの慈じ憐れんを蒙かうむらん爲ためなり。

童貞女どうていぢよよ、我われ意い念ねんにて躓つまづき、滅兦ほろびの淵ふちに陷おちいりて、今いま爾なんぢの援助たすけを求もとむ。我わが弱よわりたる靈たましひを神かみの誡いましめの堅かたき石いしの上うへに動うごきなく建たて給たまへ。

光榮 我われは果みを結むすばざる無花果樹いちじくにして、我わが神かみ造物主ざうぶつしゆが我われを斫きりて火ひに投とうぜんことを定さだむるを畏おそる。女宰ぢよさいよ、速すみやかに我われに善行ぜんかうの果みを結むすぶ痛つう悔くわいを與あたへ給たまへ、我わが爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

今も 王わうの淸きよき宮みやたるべき吾わが心こゝろは我われ不ふ當たうなる諸慾しよよくにて之これを汚けがせり。神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる至し淨じやうなる者ものよ、祈いのる、之これを潔きよめて、貞潔ていけつと潔いさぎよき度ど生せいと善行ぜんかうとを以もつて飾かざり給たまへ。

第三歌頌

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

我われと戰たゝかひ我われを攻せむる者もの多おほし、我われを環めぐる者ものより遁のがるる路みちなし。潔いさぎよき者ものよ、我われの祈いのりを棄すつる勿なかれ。

我われ多おほくの惡あく、多おほくの吾わが罪つみに壓あつせられて、天てんの高たかきに目めを擧あぐる能あたはず。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢ我われに赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

光榮 凶きよう惡あくなる蛇へびは每日まいにち我わが卑いやしき靈たましひを裂さかんことを謀はかる。生しやう神女しんぢよよ、彼かれが靈たましひを滅ほろぼす齒はを折くじき給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよよ、我われ爾なんぢの僕ぼくを凡およその禍わざはひ及および罪つみの暴風あらしより脫のがれしめ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを救すくひの港みなとに向むかはせ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

我わが罪つみの淵ふちと亂みだれたる意い念ねんの烈はげしき暴浪あらなみとを思おもひて慄をのゝく。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢ我われを導みちびきて穩おだやかなる港みなとに向むかはしめ給たまへ。

無む感覺かんかくは我わが靈たましひに至いたりて、我われ生いのちの中うちに行おこなひし惡あくを忘わすれたり。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢ我われに行おこなひしことを痛つう悔くわいするを得えしめ給たまへ。

光榮 神かみの母はゝよ、我われに淚なみだの流ながれを與あたへて、諸慾しよよくの火ひを滅けし、我わが智慧ちゑを壓あつする世せ俗ぞくの暴浪あらなみを鎭しづめ、聖神せいしんの火ひを以もつて罪つみの棘いばらを焚やき給たまへ、爾なんぢは我われの帲幪おほひ、我われの美譽ほまれなればなり。

今も 我われ惡あしき思おもひの暴浪あらなみに全まつたく溺おぼらされ、常つねに失望しつばうの深處ふかみに引ひかれて、爾なんぢに呼よぶ、女宰ぢよさいよ、我われ爾なんぢの僕ぼくを救すくひ給たまへ。

第五歌頌

イルモス イサイヤは預よ象しやうに於おいて崇たかき寶はう座ざに坐ざして光くわう榮えいの諸天しよてん使しに繞めぐらるる神かみを見みし時ときに籲よべり、噫あゝ 我われ 禍わざはひなる哉かな、我われ肉體にくたいを取とる神かみ、暮くれざる光ひかりと平安へいあんとを司つかさどる者ものを預よ見けんせり。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢは吾わが靈たましひの病やまひ、體からだの不ふ能のう、吾わが智慧ちゑの柔弱よわきと變かはり易やすきとを知しる。故ゆゑに爾なんぢの慈じ憐れんと恩おん寵ちようとを我われに獲えしめ給たまへ、我わが爾なんぢの帲幪おほひの下したに救すくはれて、爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの仁愛じんあいの宏くわう恩おんを我わが爲ために閉とざす勿なかれ。傷しやう感かんを抱いだきて爾なんぢに來きたる者ものに爾なんぢの慈じ憐れん及および諸罪しよざいの潔淨きよめと赦免ゆるしとを與あたへ給たまへ、我わが感謝かんしやして爾なんぢの偉ゐ大だいなるを歌うたはん爲ためなり。

光榮 童貞女どうていぢよよ、徒いたづらに我われを惡にくみ、我われを攻せむる者ものは今いま我わが首かうべの髮けよりも多おほくなりて、我われを執とらへて己おのれの獲えものと爲なさんと謀はかる。潔いさぎよき者ものよ、彼かれ等らを辱はづかしめて返かへらしめ給たまへ。

今も 平安へいあんの王わうを生うみしに因よりて世せ界かいに平安へいあん、衆しゆう人じんに救すくひを賜たまひし潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我わが靈たましひと體からだとの諸慾しよよくの戰たゝかひを救世主きうせいしゆハリストスを畏おそるる畏おそれと彼かれを愛あいする愛あいとを以もつて平安へいあんならしめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの淵ふちは我われを圍かこみ、我わが靈たましひは亾ほろびんとす。祈いのる、主宰しゆさい敎導者けうだうしやよ、爾なんぢの高たかき手てを伸のべて、我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

地ち上じやうに在ありし者ものの中うち思おもひと言ことばと行おこなひとに於おいて惡あくを以もつて我われに超こゆる者ものなし。故ゆゑに女宰ぢよさいよ、我われ爾なんぢの仁愛じんあいを求もとむ、我われに慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。

罪惡ざいあく行おこなはれて常つねに悲哀かなしみを生うむ、故ゆゑに我われ等ら今いま苦くるしき禍わざはひに圍かこまる。獨ひとりハリスティアニン等らの救すくひなる者ものよ、我われ等らを助たすけ給たまへ。

光榮 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは生うみし後のちにも潔いさぎよき者ものと顯あらはれたり。故ゆゑに爾なんぢが生うみし者ものに、我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくが凡およその敵てきの害がいより救すくはれんことを常つねに祈いのり給たまへ。

今も 神かみの言ことばよ、爾なんぢの至し淨じやうなる母はゝ、衆しゆう預よ言者げんしやと致ち命者めいしや、及および聖せいにせられし門もん徒との祈き禱たうに由よりて、我われ等らに平安へいあんと諸罪しよざいの潔淨きよめとを與あたへ給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次、光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第三調。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ多おほくの怠惰おこたりの中うちに我わが生いのちを送おくれり、今いまは我わが時ときの終をはりに近ちかづきて、我わが諸敵しよてきが我われの靈たましひを執とらへて滅亾ほろびの深處ふかみに墜おとさんことを畏おそる。純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの僕ぼくを憐あはれみて、我われを其その迫害はくがいより救すくひ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 昔むかし敬虔けいけんなる三人みたりの少者せうしやをハルデヤの焰ほのほに凉すゞしくせし如ごとく、我われ等らをも神性しんせいの明あかるき火ひにて輝かゞやかし給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よべばなり。

女宰ぢよさいよ、我われ體からだと靈たましひとに汚けがされ、不ふ潔けつの行おこなひに盈みちたる者ものは爾なんぢ潔けつ淨じやう無む玷てんなる神かみの母はゝの慈じ憐れんを賴たのみて祈いのる、至し淨じやうなる者ものよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

我わが罪つみの多おほく、我わが惡あくの甚はなはだしきを思おもへば、我わが心こゝろ痛いたく惑まどひて、我われを失望しつばうの深處ふかみに引ひく。至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢ我われ烈はげしく溺おぼらされて亾ほろぶる者ものを救すくひ給たまへ。

光榮 至し仁じんなる主しゆよ、爾なんぢが仁じん慈じの宏くわう恩おんの多おほきを以もつて我わが罪つみの多おほきを蔽おほひて、我われ等らの爲ために寬くわん容ようの者ものと爲なり給たまへ。蓋けだし我われ等ら默もださずして呼よぶ、主しゆ吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

今も 祝しゆく讚さんせらるる者ものよ、諸慾しよよくの塵ちり、憂愁うれひの深ふかみ、世せ俗ぞくの禍わざはひより無む慾よくと潔いさぎよき樂たのしみとに我われ等らを移うつし給たまへ。蓋けだし我われ等ら呼よぶ、爾なんぢは獨ひとり神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものなり。

第八歌頌

イルモス 敬神けいしんの少者せうしやは無む形けいの火ひにて物質ぶつしつの火ひの焰ほのほを滅けして歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

逸樂いつらくの苦味にがみは肉體にくたいの感覺かんかくを經へて、吾わが靈たましひを甚はなはだしく汚けがして、死しに至いたらしむ。世せ界かいの女宰ぢよさいよ、我わが爲ために救すくひと爲なり給たまへ。

女宰ぢよさいよ、我われ靈たましひと心こゝろと肉體からだとを爾なんぢに託たくせり、我われに爾なんぢの外ほかに佗たに慈じ憐れんを受うくべき賴たのみなければなり。故ゆゑに爾なんぢの豐ゆたかなる慈じ憐れんと恩おん寵ちようとを我われに與あたへ給たまへ。

光榮 蛇へびは潛ひそかに近ちかづきて、肉體にくたいの逸樂いつらくの毒どくを以もつて甚はなはだしく吾わが不ふ當たうなる靈たましひを害がいせり。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうの良りやう藥やくを以もつて之これを活いかし給たまへ。

今も 神かみ救世主きうせいしゆ、平安へいあんの君きみを生うみし童貞女どうていぢよよ、速すみやかに世せ界かいに平安へいあんを遣つかはさんことを彼かれに祈いのり給たまへ、我われ等らが平安へいあんの中うちに彼かれを讚榮さんえいせん爲ためなり。

第九歌頌

イルモス 我われ等らは爾なんぢ焚やかれぬ棘いばら及および聖せいなる童貞女どうていぢよ、光ひかりの母はゝ及および生しやう神女しんぢよ、我われ等ら衆しゆうの倚賴たのみなる者ものを崇あがめ讚ほむ。

潔いさぎよき者ものよ、吾わが靈たましひの諸慾しよよくの思念おもひの汚けがれを潔きよめて、我われに無む慾よくの美うるはしき衣ころもを衣きせ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我われに痛つう悔くわいの神聖しんせいなる門もんを啓ひらき、我わが諸慾しよよくと逸樂いつらくとの門もんを閉とざして、爾なんぢの力ちからを以もつて之これを禁いましめ給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、我わが歎なげきの聲こゑ、我わが泣聲なきごゑを聽ききて、我わが不ふ當たうなる靈たましひに潔淨きよめと拯救すくひとを與あたへ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、預よ言者げんしやダニイルは日ひの老おいたる者ものが寶はう座ざに坐ざするを見みし時とき、其時そのとき又また實じつに嚴おごそかに爾なんぢの產さんを見みたり。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、幷に發放詞。

木曜日

 木曜日の早課

第一の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

皆みな來きたりて、使徒等しとらを敎導けうだう師しとして崇あがめ讚ほめん、彼かれ等らは偶像ぐうざうの迷まよひを虛むなしくし、人人ひとびとを生命いのちの光ひかりに導みちびき、聖三者せいさんしやを信しんぜんことを敎をしへたればなり。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは今いま彼かれ等らの尊たふとき記き憶おくを行おこなひて、ハリストス我わが神かみを讚榮さんえいす。

句 其聲そのこゑは全ぜん地ちに傳つたはり、其その言ことばは地ちの極はてに至いたる。

主しゆよ、爾なんぢは使徒等しとらの記き憶おくを輝かゞやかせり、蓋けだし全能者ぜんのうしやとして彼かれ等らを爾なんぢの苦くるしみに效ならはん爲ために堅かため給たまへり。彼かれ等らは勇いさましく敵てきの力ちからに勝かてり、故ゆゑに諸しよ病びやうを醫いやす恩おん寵ちようを受うけたり。人ひとを愛あいする主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて爾なんぢの民たみに平安へいあんを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞

生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは無む原げんなる父ちゝと一體いつたいなる悟さとられず形かたどられぬ主しゆを奧密あうみつに爾なんぢの腹はらに容いれ給たまへり。我われ等らは聖三者せいさんしやの惟一ゆゐいちにして混淆こんかうせざる神性しんせいを曉さとりて、爾なんぢの產さんを世せ界かいに讚榮さんえいす。故ゆゑに感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、慶よろこべ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

使徒等しとらは神かみの言ことばの流ながれを全ぜん地ちに飮のませしに、信しんの穗ほは生しやうじて、世せ界かいの四し極きよくに充みち、稗ひえは皆みな斫きられたり。故ゆゑに彼かれ等らは衆しゆうをハリストス神かみに導みちびきて、造つくられざる聖三者せいさんしやの名なに因よりて洗せんを授さづけたり。

句 諸天しよてんは神かみの光くわう榮えいを傳つたへ、穹蒼おほぞらは其その手ての作爲しわざを誥つぐ。

再上の坐誦讚詞セダレンを誦すべし。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

聖せいなる受難者じゆなんしやよ、慈じ憐れんなる神かみに我われ等らの靈たましひに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢが實じつに生しやう神女しんぢよたるを預よ言者げんしやは傳つたへ、使徒しとは敎をしへ、致ち命者めいしやは承うけ認とめ、我われ等らは信しんじたり。故ゆゑに爾なんぢの產さんを崇あがめ讚ほむ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

ハリストスよ、爾なんぢは慈じ憐れんなるに由よりて、爾なんぢの使徒等しとらを地ちの四し極きよくに遣つかはししに、彼かれ等らは銳するどく尖とがりたる箭やの如ごとく、凡およその不ふ虔けんと妄信まうしんとを殪たふし、救すくひの敎をしへを植うゑたり。宏くわう恩おんなる主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我わが靈たましひに平安へいあんを與あたへ給たまへ。

聖せいニコライよ、我われ等ら爾なんぢ眞實しんじつの傳道でんだう師し、世せ界かいの最いと光くわう明めいなる燈ともしびを讚ほめ歌うたひて、信しんを以もつて祈いのりて呼よぶ、無む罪ざいの者ものを死しより脫のがしし如ごとく、斯かく我われ等らをも諸もろもろの災禍わざはひ、憂愁うれひ、及および凡およその害がいより救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞

純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいよ、多おほくの罪つみにて殺ころされたる我わが靈たましひを活いかし給たまへ、爾なんぢの子この前まへに母はゝの勇敢いさみを有たもてばなり。蓋けだし爾なんぢ獨ひとり智慧ちゑ及および明悟さとりに超こえて父ちゝ及および聖神せいしんと同どう無む原げんなる言ことば、常つねに世せ界かいに生命いのちと不ふ朽きうと大おほいなる憐あはれみとを賜たまふ主しゆを生うみ給たまへり。

光榮にして讚美たる聖使徒の規程カノン。フェオファンの作。第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

來きたりて、我われ等らは敎けう會くわいの柱はしら、信しんの基もとゐ、敬虔けいけんの礎いしずゑ、衆しゆう信者しんじやを堅かたむる聖せい使徒等しとらを崇あがめ讚ほめん、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて救すくひを得えん爲ためなり。二次。

義ぎなる審判者しんぱんしやよ、我われ放蕩はうたうの者ものは畏おそれて審判しんぱんに先さきだちて自みづから己おのれを定罪ていざいす、無む數すうの惡あしき行おこなひを有たもてばなり。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、望のぞみを失うしなひし我われを爾なんぢの使徒しとの神聖しんせいなる祈き禱たうに由よりて救すくひ給たまへ。

敬虔けいけんの動うごかざる柱はしらよ、我われ敵てきの誘惑いざなひに因よりて躓つまづきて地ちに伏ふし、難なんに遭あひて惑まどへる者ものを起おこし給たまへ、我わが犯おかしたる罪つみの赦ゆるしを得えん爲ためなり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、聖せい預よ言者げんしや、使徒しと、致ち命者めいしやと偕ともに爾なんぢより身みを取とりし主しゆに切せつに祈いのり給たまへ、願ねがはくば彼かれは我わが悉ことごとくの肉慾にくよくを殺ころして、我われ等らに永遠えいゑんの生命いのちを賜たまはん。

又聖大奇跡者ニコライの規程カノン。イオシフの作。第三調。

第一歌頌

イルモス 紅くれなゐの海うみに至し妙めうなる奇き蹟せきを行おこなひし主しゆに歌うたはん、蓋けだし彼かれは海うみを以もつて敵てきを掩おほひ、イズライリを救すくひ給たまへり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

至いたりて光くわう明めいなる滅きえざる燈ともしび、地ち上じやうに建たてられし柱はしら、神聖しんせいなる港みなとに送おくる嚮きやう導だう師したるニコライを我われ等ら衆しゆう常つねに世せ俗ぞくの浪なみに溺おぼらさるる者ものは尊たふとみて、愛あいを以もつて讚さん美びせん。

至し福ふくなるニコライよ、爾なんぢは神かみの力ちからに堅かためられて、智慧ちゑに適かなふ敬虔けいけんの熱心ねつしんを得えたり、故ゆゑに非義ひぎに死しに定さだめられし者ものを救すくへり。祈いのる、我われ等らを凡およその非義ひぎなる侵害しんがいより救すくひ給たまへ。

神しん父ぷよ、爾なんぢ絕たえず主しゆに禱いのりを獻さゝげ給たまへ、彼かれが獨ひとり仁じん慈じなるに因よりて、我われ等らを諸もろもろの罪つみ、災禍わざはひ、憂愁うれひ及および永遠えいゑんの火ひの苦くるしみより脫のがれしめん爲ためなり。

生神女讚詞 神聖しんせいなる慈じ憐れんの言いひ難がたき淵ふちに由よりて我われ等らの悉ことごとくの不ふ法はふを除のぞく立法者りつぱふしやを容いれ給たまひし神聖しんせいの約匱やくひつたる至いたりて潔いさぎよきマリヤを我われ等ら同心どうしんに讚ほめ歌うたはん。

第三歌頌

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

世せ界かいの四し極きよくを神聖しんせいなる敎をしへに充みてたるハリストスの實見者じつけんしやよ、吾わが靈たましひを義ぎ德とくの行おこなひ及および善ぜんなる思おもひに充みて給たまへ。二次。

ハリストスの門もん徒とよ、我われを凶きよう惡者あくしやの多おほくの誘惑いざなひ、及および凡およその憂愁うれひ、凡およその災難わざはひ、凡およその侵害しんがいより脫のがれしめ給たまへ。

嗚呼あゝ我わが不ふ當たうにして卑微ひびなる靈たましひ、屢しばしば罪つみを犯おかして神かみを怒いからする者ものよ、惡あくを行おこなふを息やめずして、如何いかんぞ之これを赦ゆるすを求もとめん。

生神女讚詞 イアコフの見みたる神聖しんせいなる梯かけはし、此これに緣よりて神かみが降くだりて我われ等らを升のぼす者ものよ、使徒等しとらと偕ともに我われ等らを宥なだめんことを切せつに祈いのり給たまへ。

又

イルモス 果みを結むすばざる子こなき靈たましひよ、榮さかえたる果みを獲えて、樂たのしみて呼よべ、神かみよ、我われ爾なんぢに因よりて堅かためられたり、主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなるはなく、義ぎなるはなし。

睿えい智ちなる神しん父ぷニコライよ、爾なんぢは磨とぎたる屬神ぞくしん゜の劍つるぎと顯あらはれて、異い端者たんしやの惡あしき稗ひえを斫きり、信者しんじやの爲ために諸德しよとくの救すくひの道みちを平たひらかにし給たまふ。

聖せいなる者ものよ、我われ等らは爾なんぢ醫治いやしの流ながれを注そゝぐ泉いづみに祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等ら衆しゆうの諸慾しよよくの汚けがれを洗あらひて、我われ等らを災禍わざはひ及および憂患うれひより脫のがれしめ給たまへ。

爾なんぢの力ちからある祈き禱たうにて敵てきを倒たふす神しん父ぷニコライよ、今いまも諸慾しよよくの攻擊こうげきに由よりて弱よわりたる我われ等らの意念おもひを爾なんぢの聖せいなる祈き禱たうを以もつて堅かため給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる神かみの母はゝよ、智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの產さんを智慧ちゑは悟さとる能あたはず。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、我わが智慧ちゑに恩おん寵ちようを與あたへて、常つねに爾なんぢを讚榮さんえいせしめ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

言ことばよ、爾なんぢは使徒等しとらを電いなづまの如ごとく、暮くれざる日ひの光くわう線せんの如ごとく世せ界かいの四し極きよくに遣つかはして、衆しゆうを照てらし、無む神しんの幽暗くらやみを拂はらひ給たまへり。二次。

言ことばよ、甚はなはだしき罪つみの海うみは我われを溺おぼらし、不ふ當たうなる思おもひの暴浪あらなみは我わが卑微ひびなる靈たましひを擾みだす。舵手かぢとりなる主しゆよ、爾なんぢの門もん徒との祈き禱たうに由よりて我われを救すくひ給たまへ。

主宰しゆさいよ、我われ爾なんぢの畏おそるべき降臨かうりんを思おもひて慄をのゝく、審判しんぱんに先さきだちて吾わが衷うちに我われを定罪ていざいする良りやう心しん及および我わが無む感覺かんかくを責せむる苦く痛つうを有たもてばなり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよ・神かみの少女せうぢよより生うまれし神かみの言ことば・救世主きうせいしゆよ、彼かれ及および爾なんぢの睿えい智ちなる使徒しとの聖せいなる轉達てんたつに由よりて、我われ等らの靈たましひを凡およその侵害しんがいと凡およその患くわん難なんより救すくひ給たまへ。

又

イルモス 潔いさぎよき者ものよ、アウワクムは樹こ蔭かげ繁しげき山やまとして爾なんぢの至し淨じやうなる體たいを預よ見けんして籲よべり、神かみは南みなみより、聖せいなる者ものは樹こ蔭かげ繁しげき山やまより來きたらん。

神しん父ぷニコライよ、凡およその信者しんじやは常つねに爾なんぢを神かみの前まへに轉達者てんたつしやとして進すゝむ。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、我われ等らを烈はげしき誘惑いざなひ及および罪つみの墮だ落らくより脫のがれしめ給たまへ。

睿えい智ちにして至し福ふくなる神しん父ぷよ、爾なんぢは心こゝろの中うちに活いける水みづとして主しゆの恩おん寵ちようを有たもちて、常つねに患くわん難なんの火ひ及および諸罪しよざいの旱ひでりに惱なやまされて滅ほろびんとする者ものを濕うるほし給たまふ。

昔むかし非義ひぎに死しに曳ひかるる者ものを救すくひし至し福ふくなる者ものよ、今いま我われ等らをも害がいを爲なす人人ひとびとの攻擊こうげき及および凡およその惡あく鬼きの誘惑いうわくより救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは最多いとおほき慈じ憐れんに因よりて人體じんたいを取とりし言ことばを言いひ難がたく生うみ給たまへり。彼かれに我われ等ら衆しゆうを肉慾にくよくの汚けがれ及および凡およその度ど生せいの患くわん難なんより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

第五歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは見みえざる者ものにして地ちに現あらはれ、悟さとり難がたき者ものにして甘あまんじて人人ひとびとと偕ともに居をりたり。我われ等ら朝あさの禱いのりを奉たてまつりて爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

ハリストスよ、爾なんぢは地ち上じやうに身みを取とりて、門もん徒と等らを爾なんぢの光くわう榮えいを傳つたふる天てんと爲なし給たまへり。主しゆよ、彼かれ等らに由よりて我われ等らの靈たましひを憐あはれみ給たまへ。二次。

言ことばよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを爾なんぢの使徒等しとらの納いれらるべき祈き禱たうに由よりて、諸慾しよよく及および凡およその患くわん難なんと烈はげしき攻擊こうげきより脫のがれしめ給たまへ。

嗚呼あゝ我わが慾よくに耽ふけりたる靈たましひよ、結果けつくわなき者ものにして、如何いかんぞ爾なんぢは畏おそるべき審判しんぱんの前まへに立たたん、速すみやかに痛つう悔くわいして、諸德しよとくの果みを結むすべ。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの淨きよき血ちより身みを取とりて、言いひ難がたく地ちに現あらはれし主しゆに、其その爾なんぢの子こたるに因よりて、我われ等らに潔淨きよめを賜たまはんことを常つねに祈いのり給たまへ。

又

イルモス ハリストス神かみよ、爾なんぢの暮くれざる光ひかりにて我わが謙けん卑ぴの靈たましひを照てらして、爾なんぢを畏おそるる畏おそれに導みちびき給たまへ、爾なんぢの誡いましめは光ひかりなればなり。

至いたりて潔いさぎよき光ひかりの前まへに立たちて、常つねに彼處かしこより出いづる光くわう線せんに照てらさるる神しん父ぷよ、衆しゆうの爲ために潔淨きよめと平安へいあんとを求もとめ給たまへ。

至し仁じんの主しゆよ、無智むちなる意い念ねんを以もつて衆しゆう人じんに超こえて爾なんぢを怒いからする我われをニコライの熱切ねつせつなる祈き禱たうに因よりて宥なだめ給たまへ。

神しん父ぷニコライよ、我われ怠惰おこたりの中うちに吾わが生いのちを費つひやして、爾なんぢに祈いのる、我わが汚けがれたれる思おもひを痛つう悔くわいに起おこし給たまへ。

生神女讚詞 天てん使等しらの歡喜よろこびたる、獨ひとり恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我わが憂うれひて煩悶もだえに沈しづめる心こゝろを歡喜よろこびに充みて給たまへ。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの罪つみの淵ふちは我われを圍かこみ、我わが靈たましひは亾ほろびんとす。祈いのる、主宰しゆさい敎導者けうだうしやよ、爾なんぢの高たかき手てを伸のべて、我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

使徒しとの會くわいよ、屬神ぞくしん゜の睿えい智ちの河かはを流ながし、世せ俗ぞくの意い念ねんの流ながれを涸からして、敬虔けいけんの者ものの會くわいに飮のましめ給たまへ。二次。

我わが卑微ひびなる靈たましひよ、歎息たんそくし、流涕りうていし、主しゆに籲よびて曰いへ、我われ爾なんぢに罪つみを獲えたり、仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢの睿えい智ちなる使徒しとの祈き禱たうに因よりて我われを潔きよめ給たまへ。

諸慾しよよくの河かはは溢あふれて、吾わが靈たましひの家いへを溺おぼらせり。屬神ぞくしん゜の河かはたる使徒等しとらよ、殘そこなはれたる我われを新あらたにして活いかし給たまへ。

生神女讚詞 ハリストスよ、使徒しとの會くわいは爾なんぢを生うみし者ものと偕ともに祈いのる、仁じん慈じの主しゆ、寬くわん容ようなる神かみとして爾なんぢの諸僕しよぼくに潔淨きよめと平安へいあんとを降くだし給たまへ。

又

イルモス 諸慾しよよくの深處ふかみは我われを沈しづめ、逆ぎやく風ふうの狂暴あれは起おこりて我われを攻せむ。救世主きうせいしゆよ、急いそぎて我われを救すくひ、預よ言者げんしやを猛獸まうじうより救すくひし如ごとく、我われを淪滅ほろびより脫のがれしめ給たまへ。

睿えい智ち者しやよ、爾なんぢは節制せつせいを以もつて肢し體たいを制せいして、老おいざる生命いのちを得えたり。祈いのる、我われ等らをも爾なんぢの祈き禱たうに因よりて、之これに與あづかる者ものと爲なして、罪惡ざいあくを脫のがれしめ給たまへ。

睿えい智ちなる成聖者せいせいしやよ、爾なんぢの聖せいにせられし祈き禱たうの帆ほを以もつて我われ等らを多た種しゆの誘惑いざなひの海うみ及および罪つみの深處ふかみより脫のがれしめて、生命いのちの港みなとに送おくり給たまへ。

成聖者せいせいしやよ、爾なんぢはミラ リキヤの寶はう座ざの飾かざりと爲なりて、司し祭さい諸しよ長ちやうの裝さう飾しよくと顯あらはれたり。祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らを世よの誘いざなひに惱なやまされざる者ものとして護まもり給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき母はゝよ、爾なんぢの胎たいに入いりし言ことばは惟一ゆゐいちの神かみとして、慈じ憐れんの多おほきを以もつて、昔むかし犯罪はんざいに由よりて人人ひとびとの中うちに入いりし朽きう壞くわいを外そとに逐おひ給たまへり。

第七歌頌

イルモス 昔むかし三人みたりの少者せうしやはペルシヤ人じんの尊たふとめる金こがねの像ざうに伏拜ふくはいせずして、爐ゐろりの中なかに歌うたへり、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

光くわう明めいなる使徒等しとらよ、世せ界かいの光ひかりなるハリストスは爾なんぢ等らを迷まよひの幽暗くらやみを拂はらひ、信者しんじやの智慧ちゑを照てらす光ひかりと顯あらはし給たまへり。二次。

神かみの聲こゑたる使徒等しとらよ、我われ等らに向むかひて設まうくる所ところの敵てきの網あみを破やぶりて、爾なんぢ等らに趨はしり附つく我われ等らの爲ために痛つう悔くわいの途みちを平たひらかにし給たまへ。

神かみの言ことばを傳つたへし主しゆの使徒等しとら、神聖しんせいなる鹽しほたる者ものよ、肉慾にくよくに因よりて朽くちたる吾わが靈たましひを潔きよめて活いかし給たまへ。

生神女讚詞 イアコフの榮さかえたる者ものよ、祈いのる、爾なんぢの潔いさぎよき血ちより生うまれし主しゆに今いま使徒等しとらと偕ともに祈いのりて、諸德しよとくの華くわ美びを以もつて我われを飾かざり給たまへ。

又

イルモス 三人みたりの少者せうしやは爐ゐろりに於おいて聖三者せいさんしやを像かたどりて、火ひの恐嚇おどしを履ふみ、歌うたひて呼よべり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

神しん父ぷニコライよ、爾なんぢは眞實しんじつの牧ぼく師し長ちやうとして、昔むかし主しゆの民たみを害がいする狂きやう暴ばうなるアリイを爾なんぢの言ことばの縲絏なはにて縛しばり給たまへり。

神しん父ぷニコライよ、爾なんぢは潔いさぎよく爾なんぢの至し聖せいなる度ど生せいを終をへて、今いま諸聖人しよせいじんと偕ともに居をりて、敬虔けいけんに爾なんぢを讚さん美びする者ものに成聖せいせいと光くわう照せうとを遣つかはし給たまふ。

神しん父ぷニコライよ、我われ等らは爾なんぢを備そなはりたる保護ほご者しや、熱心ねつしんなる轉達者てんたつしやとして常つねに呼よぶ、我われ等らを諸慾しよよく及および我われ等らに及およぶ所ところの俟またざる誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 光ひかりを生うみし潔いさぎよき者ものよ、簡慢かんまんに由よりて靈たましひを昧くらましし我われを照てらして、吾わが心こゝろの燈ともしびを燃もやし給たまへ、我わが熱心ねつしんに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

第八歌頌

イルモス 敬虔けいけんの範のりたる少者せうしやは堪たへ難がたき火ひに入いれられしに、焰ほのほに惱なやまされずして、神聖しんせいなる歌うたを歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

我われ凶きよう惡者あくしやの誘惑いざなひに因よりて諸慾しよよくの武器ぶきにて傷きずつけられ、無智むちにて心こゝろを殘そこなへり。靈體れいたいの醫師いしたる光くわう榮えいなる使徒等しとらよ、我われ全身ぜんしん病やめる者ものを醫いやし給たまへ。二次。

聖せいなる傳道でんだう師しの言ことばは全ぜん地ちに傳つたはりて、正たゞしく惟一ゆゐいちの神かみ、聖三者せいさんしやの一いつの性せい、一いつの能のう力りよく、一いつの權柄けんぺいを萬世ばんせいに尊たふとまんことを敎をしへたり。

主宰しゆさいよ、我われ多おほくの罪つみを行おこなひ、常つねに罪惡ざいあくに在ありて爾なんぢの神聖しんせいなる恒忍ごうにんを盡つくしし者ものを憐あはれみて、痛つう悔くわいに召めし給たまへ、爾なんぢは、言ことばよ、我われの不ふ能のうと怠惰おこたりと無智むちとを知しればなり。

生神女讚詞 神聖しんせいなる熾炭やけずみを言いひ難がたく執とりし神聖しんせいなる鉗ひばさみたる至いたりて潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢ及および讚さん美びたる聖せい使徒等しとらの祈き禱たうの露つゆを以もつて我わが諸慾しよよくの燃もゆる炭すみを滅けし給たまへ。

又

イルモス 至いと高たかきに天てん使等しらより默もださずして讚榮さんえいせらるる神かみを、諸天しよてんの天てんと地ち、山やまと岡をかと深處ふかみ、及および悉ことごとくの人類じんるゐは、歌うたを以もつて造成主ざうせいしゆ及および贖しよく罪主ざいしゆとして崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

克肖者こくせうしやよ、爾なんぢは溫柔をんじうなる者ものと爲なりて、溫柔をんじうなる者ものの地ちを嗣つぎたり。故ゆゑ我われ信しんを以もつて爾なんぢに祈いのる、常つねに我われと戰たゝかふ凶きよう惡者あくしやの暴浪あらなみを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて鎭しづめ給たまへ。

聖せいニコライよ、爾なんぢは非義ひぎに死しに定さだめられたる軍ぐん將しやうを救すくひし如ごとく、斯かく救世主きうせいしゆに祈いのりて、我われ等らを惡あしき人人ひとびとの侵害しんがい及および凡およその惡あく鬼きの詭き計けいより救すくひ給たまへ。

聖せいニコライよ、爾なんぢは人人ひとびとに正せい直ちよくなる救すくひの道みちを示しめせり、生いのちを度わたる我われ等らを爾なんぢの祈き禱たうに因よりて之これに向むかはしめ給たまへ、我われ等らが共ともに生命いのちの門もんに入いらん爲ためなり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢより生うまれし主しゆは我わが力ちから我わが歌うたなり。童貞女どうていぢよよ、慾よくに由よりて弱よわりたる我われを堅かためて、彼かれの救すくひの戒いましめを行おこなはしめんことを切せつに彼かれに祈いのり給たまへ。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、拜と共に。

第九歌頌

イルモス 我われ等ら信者しんじやは影かげ及および文ぶんなる律法りつぱふに於おいて預よ象しやうを見みん、凡およそ始はじめて生うまるる男だん子しは神かみに獻さゝげられたり。故ゆゑに我われ等らは無む原げんの父ちゝより始はじめて生うまれし言ことば、夫をつとなき母はゝより始はじめて生うまれし子こを崇あがめ讚ほむ。

爾なんぢの門もん徒と等らの言ことばにて地ちの四し極きよくを固かためし無む原げんなる父ちゝの言ことばよ、無智むちの慾よくに躓つまづきて、惡あく鬼きの誘惑いざなひを以もつて溺おぼらさるる我われを彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて宥なだめ給たまへ。二次。

諸慾しよよくの奴ど隷れいと爲なりし我わが靈たましひよ、我われ等らの爲ために苦くるしみを受うけし主しゆに禱いのりを獻さゝげよ、彼かれが其その肉體にくたいの苦くるしみに效ならひし聖せいなる門もん徒との祈き禱たうに由よりて、爾なんぢを永遠えいゑんの苦くるしみより救すくはん爲ためなり。

ハリストスの門もん徒と等らよ、主しゆと偕ともに坐ざして審判しんぱんに服ふくする者ものを審判しんぱんせん時とき、不ふ當たうの行おこなひにて汚けがされたる吾わが靈たましひを定罪ていざいせられざる者ものとして護まもり給たまへ、爾なんぢ等らは我わが善ぜんなる保護ほご者しや及および世せ界かいの轉達者てんたつしやなればなり。

生神女讚詞 諸しよ聖せいの聖せいなる神かみを智慧ちゑ及および言ことばに超こえて生うみし潔いさぎよき童貞女どうていぢよ、至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ、ハリストスの宮みや、至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、聖せいなる使徒等しとらと偕ともに衆しゆう人じんの爲ために祈いのり給たまへ。

又

イルモス モイセイはシナイ山ざんに於おいて棘いばらの中うちに、爾なんぢを焚やかれずして神性しんせいの火ひを胎内たいないに孕はらみし者ものとして觀み、ダニイルは爾なんぢを截きられざる山やまとして觀み、イサイヤは芽めを萌きざしし杖つゑ、ダワィドの根ねより出いでし者ものなりと呼よべり。

神しん父ぷニコライよ、地ち上じやうの世せ界かいは爾なんぢを神聖しんせいなる垣墻かきと保固かため、及および善よき避所かくれがとして獲えたり、蓋けだし我われ等らは常つねに爾なんぢの轉達てんたつに因よりて凡およその誘惑いうわく及および侵害しんがいより救すくはる。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢを歌うたひて崇あがめ讚ほむ。

至し福ふくなる者ものよ、我われ多おほくの攻擊こうげきに狹せばめられて、爾なんぢの熱心ねつしんなる祈き禱たうの廣ひろきに趨はしり附つきて、爾なんぢに呼よぶ、吾わが靈たましひの病やまひを醫いやし、失望しつばうの浪なみを鎭しづめ、我わが智慧ちゑの紛擾みだれを治をさめ給たまへ。

造成主ざうせいしゆは來きたりて、全ぜん地ちを審判しんぱんせん、我われ不ふ當たうにして備そなへなき者ものは我わが惡あく事じの多おほきを思おもひて慄をのゝく。恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢの克肖者こくせうしやニコライの神聖しんせいなる祈き禱たうに由よりて我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 光ひかりを生うみし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは我わが救すくひの光くわう照せうと顯あらはれて、吾わが靈たましひの暗黑あんこくなる雲くもを拂はらひ給たまへり、我わが爾なんぢの祈き禱たうに由よりて聖せいなる事ことを行おこなひて晝ひるの子こと爲ならん爲ため、歌か頌しようの中うちに敬つゝしみて爾なんぢを讚さん美びせん爲ためなり。

次ぎて「常に福にして」、聯禱及び光耀歌。

挿句くづけに讚頌スティヒラ、第三調。

聖せいなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らの聲こゑは全ぜん地ちに傳つたはれり、爾なんぢ等らは偶像ぐうざうの迷まよひを破やぶりて、神かみを知しる知ち識しきを傳つたへたり、福ふくたる者ものよ、是これ爾なんぢ等らの善ぜんなる功勞こうらうなり。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢ等らの記き憶おくを歌うたひて崇あがめ讚ほむ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

ハリストスの誡いましめを玷きずなく守まもりし聖せいなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは費つひえなく受うけ、費つひえなく與あたへて、我われ等らの靈たましひと體からだとの苦くるしみを醫いやし給たまふ。故ゆゑに勇敢いさみを有たもちて彼かれに我われ等らの靈たましひの憐あはれみを蒙かうむらんことを祈いのり給たまへ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは善よき戰たゝかひを戰たゝかひしに由よりて、死しの後のちにも世せ界かいの中うちに光くわう體たいの如ごとく輝かゞやく。故ゆゑに勇敢いさみを有たもちてハリストスに我われ等らの靈たましひを憐あはれまんことを祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 爾なんぢは種たねなく聖神せいしんに由よりて孕はらみ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚榮さんえいして歌うたふ、至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、慶よろこべ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」、第一時課、及び發放詞。

 木曜日の聖体礼儀に

木曜日の眞福詞、第三調。

ハリストスよ、爾なんぢは誡いましめに背そむきし原げん祖そアダムを樂園らくゑんより逐おひ出いだせり。然しかれども爾なんぢ、洪恩こうおんなる主しゆよ、十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを承うけ認みとめし盜賊たうぞく、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものを其中そのうちに入いれ給たまへり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは十じふ字架じかの杖つゑを以もつて人人ひとびとを無知むちの深處ふかみより引ひき出いだし、エㇽリンの迷まよひを地ちより拂はらひて、實じつに信者しんじやを救すくふ者ものと爲なれり。故ゆゑに讚さん美びせらる。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

光くわう榮えいなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは義ぎの日ひの靈妙れいめうなる光くわう線せん及および光明くわうみやうと爲なりて、邪敎じやけうの黑暗くらやみを拂はらひ、衆しゆう人じんを神かみを知しる智ち識しきの光ひかりに導みちびき給たまへり。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢ等らを尊たふとむ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

睿えい智ちなる聖せい受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは苦くるしみの火ひを忍しのびて、上うへより恩おん寵ちようの露つゆを承うけ、ハリストスの悅よろこびを爲なす者ものとして恒つねに人人ひとびとの苦くるしみを醫いやし給たまふ。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢ等らを尊たふとむ。

光榮 三者さんしやの聖せいにせられし傳道でんだう師しペトルとパワェル、マルコとルカ、マトフェイ、シモン、イアコフ、アンドレイ、イオアン、フォマ、ワルフォロメイ、及および睿えい智ちなるフィリップよ、我われ等らが凡およその患くわん難なんより救すくはれんことを常つねに熱心ねつしんに彼かれに祈いのり給たまへ。

今も 使徒しとの飾かざり、聖せい受難者じゆなんしやの歡喜よろこびたる神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる女宰ぢよさいよ、我われ等ら衆しゆうの爲ために救世主きうせいしゆ及および神かみに祈いのり給たまへ、我われ等らが諸罪しよざいの赦ゆるしを受うけて、神聖しんせいなる生命いのちに與あづかる者ものと爲ならん爲ためなり。

 木曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十字架の讚頌スティヒラ、第三調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

主しゆよ、爾なんぢは神かみの性せいを以もつては苦くるしみに與あづからざる者ものにして、爾なんぢの人ひとの性せいを以もつて苦くるしみを受うけ、十じふ字架じかに釘ていせられ、戈ほこにて脅わきを刺さされて、是これより我わが爲ために言いひ難がたき機き密みつの二ふたつの河かはを流ながし給たまへり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

萬有ばんいうの王わうよ、爾なんぢは棘いばらを以もつて編あみたる冕かんむりを戱たはむれに冠かうむらせられて、罪つみの棘いばらを根ねより絕たやせり。救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは葦あしを手てに執とりて、我われ等ら衆しゆう爾なんぢを信しんずる者ものを上うへの書しよに錄しるし給たまへり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

寬くわん容ようなるハリストスよ、エウレイ人じんの不義ふぎなる嫉妬ねたみは爾なんぢを十じふ字架じかに釘ていして後のち、爾なんぢが死しせし後のちにも敢あへて息やまざりき、殘忍ざんにんの者ものは爾なんぢを惑まどはす者ものなりと讒ざんして、ピラトに爾なんぢの墓はかを守まもるを求もとめたり。嗚呼あゝ醫いやされぬ怒いかりや。

又 至聖なる生神女の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

爾なんぢの腹はらより出いでて輝かゞやきし入いらざる日ひの十じふ字架じかに在ありて入いりたるを見みし時とき、爾なんぢは靈たましひに痛いたく悲かなしみて呼よべり、甘あまんじて入いりたる日ひよ、復また輝かゞやきて、我われ及および世せ界かいを照てらし給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

生いける者ものと死しせし者ものとを審判しんぱんせん爲ために來きたらんとする主しゆを生うみし女宰ぢよさいよ、病やみて死ししたる吾わが靈たましひを痛つう悔くわいに由よりて爾なんぢの子この脅わきより流ながれたる神聖しんせいなる血ちを以もつて活いかして、我われを其その生せい活くわつの誡いましめを行おこなふ者ものと顯あらはし給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

牝め羊ひつじ及および母はゝは云いへり、子こよ、我われ產さん苦くなくして爾なんぢを生うみし時とき、憂うれひ及および悲かなしみの闇やみを脫のがれたり、然しかれども今いまは、吾わが主宰しゆさいよ、爾なんぢが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、苦くるしき矢やは吾わが心こゝろを貫つらぬき、我われ無む量りやうの哀かなしみに沈しづむ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものは呼よべり、言ことばよ、爾なんぢの釘ていせらるるに由よりて世せ界かいは憐あはれみを蒙かうむり、造物ざうぶつは照てらされ、異い邦人はうじんは救すくひを得えたり、唯たゞ我われは今いま爾なんぢ主宰しゆさいの自じ由いうなる苦くるしみを見みて心こゝろ裂さかる。

挿句くづけに讚頌スティヒラ、第三調。

ハリストスよ、我われ等らは爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じか、世せ界かいの守護まもり、我われ等ら罪人ざいにんの拯救すくひ、大おほいなる潔淨きよめ、諸しよ王わうの勝しよう利り、全ぜん世せ界かいの美譽ほまれなる者ものに伏拜ふくはいす。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

モイセイは山やまに於おいて十じふ字じ形かたに手てを上うへに舒のべて、アマリクに勝かてり。爾なんぢは、救世主きうせいしゆよ、尊たふとき十じふ字架じかの上うへに手てを舒のべ、我われを抱いだきて、敵てきの奴ど隷れいより救すくひ、我われに生命いのちの記章しるしを與あたへて、我わが諸敵しよてきの弓ゆみより脫のがれしめ給たまふ。故ゆゑに言ことばよ、我われ爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかに伏拜ふくはいす。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかの能力ちからは大おほいなり、蓋けだし一ひとつの處ところに建たてられて、全ぜん世せ界かいに行動かうどうし、漁者ぎよしやの中うちより使徒しと、異い邦人はうじんの中うちより致ち命者めいしやを現あらはして、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのらしむ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 我わが至し仁じんなるハリストスよ、純じゆん潔けつなる者ものは爾なんぢが木きに擧あげられしを見みて、母はゝとして泣なきて呼よべり、吾わが至し愛あいの子こよ、如何いかんぞ不ふ法はふなる會くわいは爾なんぢを十じふ字架じかに擧あげたる。

 木曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン。第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ爾なんぢ、預よ言者げんしやアウワクムが神しん゜を以もつて預よ見けんせし樹こ蔭かげ繁しげき山やまに祈いのる、慾よくの火ひに苦くるしめる我われを爾なんぢの蔭かげに蔽おほひて、死しの蔭かげの甚はなはだしき患くわん難なんより脫のがれしめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの子この神聖しんせいなる脅わきより出いでし神聖しんせいなる血ちの注そゝぐを以もつて吾わが心こゝろの疵きずを滌あらひ給たまへ、我わが宜よろしきに合かなひて爾なんぢ永福えいふく無む玷てんなる者ものを崇あがめて讚榮さんえいせん爲ためなり。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは父ちゝと同おなじく行かう爲ゐする言ことば、人ひとの性せいを神成しんせいせし主しゆを生うみ給たまへり。彼かれに祈いのりて、我われ惑まどひて敵てきの惡謀あくぼうに因よりて弱よわりたる者ものに神聖しんせいなる慰なぐさめを得えしめんことを求もとめ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの神聖しんせいなる祈き禱たうを以もつて我われに諸罪しよざいの潔淨きよめを與あたへ給たまへ、女宰ぢよさいよ、爾なんぢの祈き禱たうは有能いうのうなればなり。爾なんぢを歌うたふ者ものをも諸罪しよざい、諸慾しよよく、憂愁いうしう、患くわん難なんより脫のがれしめ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

慈じ憐れんにして至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、仁愛じんあいの言いひ盡つくされぬ、宏くわう恩おんの富とめる主しゆに我われ等ら苦くるしめらるる者ものを宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆの殿でんたる潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ靈たましひを害がいする盜賊たうぞくの巢窟さうくつと爲なりし者ものの中うちに撫ぶ恤じゆつ者しやの入いらんことを祈いのり給たまへ。

光榮 神かみとして萬有ばんいうを持たもつ主しゆを己おのれの手てに抱いだきし生しやう神女しんぢよよ、我われを眷かへりみて、諸慾しよよくに傾かたぶける不ふ當たうの意思おもひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、祈いのる、我われに爾なんぢの至し大だいなる慈じ憐れんを啓ひらきて、我わが爲ために患くわん難なんの中うちに於おいて熱心ねつしんなる扶助たすけ及および拯救すくひと爲なり給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

神かみとして甘あまんじて創傷きずと屠殺ほふりとを忍しのび給たまひしハリストス、獨ひとり慈じ憐れんの多おほき主しゆよ、惡あく鬼きの殘酷ざんこくなる攻擊こうげきにて傷きずつけられし吾わが靈たましひを爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて醫いやし給たまへ。

造成主ざうせいしゆハリストスよ、我われは爾なんぢの手ての工業しわざ及および造物ざうぶつなり、蛇へびの惡謀あくぼうは度生いのちの逸樂いつらくを以もつて我われを壞やぶれり。故ゆゑに言ことばよ、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて我われを新あらたにし給たまへ。

光榮 獨一どくいつの永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢは言ことばに超こえて父ちゝの言ことば、人人ひとびとを凡およその無知むちより解とく主しゆを生うみ給たまへり。切せつに彼かれに我われ無知むちなる逸樂いつらくの擒とりこと爲なりし者ものを解とかんことを祈いのり給たまへ。

今も 至し聖せいなる幕まく、光ひかりの居處すまひ、絕たえず衆しゆうに香料かうれうを注そゝぐ器うつはたる純じゆん潔けつなる神かみの聘女よめよ、爾なんぢは常つねに手てより我われ等らに醫治いやしを流ながし給たまふ。

第五歌頌

イルモス イサイヤは預よ象しやうに於おいて崇たかき寶はう座ざに坐ざして光くわう榮えいの諸天しよてん使しに繞めぐらるる神かみを見みし時ときに籲よべり、噫あゝ 我われ 禍わざはひなる哉かな、我われ肉體にくたいを取とる神かみ、暮くれざる光ひかりと平安へいあんとを司つかさどる者ものを預よ見けんせり。

童貞女どうていぢよ、光ひかれる雲くもよ、我わが肉體にくたいの病やまひ及および靈たましひの憂うれひを醫いやして、煩悶もだえの雲くもを拂はらひ給たまへ。我われ歌うたひて、愛あいを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいする者ものに壯健さうけんを與あたへ、諸難しよなんより脫のがるるを得えしめ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我われ凡およその罪つみに盈みちたる者ものは爾なんぢより生うまれし主しゆに今いま爾なんぢを轉達者てんたつしや及および祈き禱者たうしやとして進すゝむ。我わが生命いのちの改造者あらためと爲なり、我われを神聖しんせいなる智ち識しきの途みちに嚮きやう導だうする者ものと爲なり給たまへ。

光榮 童貞女どうていぢよよ、我わが智慧ちゑを聖せいにし、靈たましひを照てらし、我われを神聖しんせいなる光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。蓋けだし視みよ、我われ惡あくに盈みち、凡およその逸樂いつらくの奴ど隷れいと爲なり、我わが良りやう心しんを汚けがせり。

今も 靈たましひに豐ゆたかなる飮料のみものを與あたふる美うるはしき房ふさを生しやうぜし神聖しんせいなる葡ぶ萄だうたる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢ我われに其その甘味あまみを飮のませ、逸樂いつらくの醉ゑひを醒さまして、我われを救すくひ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、凶きよう惡あくなる諸敵しよてきに攻せめられて、將まさに亾ほろびんとする我われ等らを棄すつる勿なかれ。救世主きうせいしゆよ、預よ言者げんしやを猛獸まうじうより拯すくひし如ごとく、我われ等らを拯すくひ給たまへ。

我われは思念おもひにて高たかぶれるファリセイに超こえ、常つねに驕おごりて無む量りやうの罪つみの淵ふちに進すゝめり。獨ひとり 潔いさぎよき者ものよ、極きはめて卑いやしくなりたる我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。

至いたりて奇異きいなる降孕はらみと產さんとを有たもちし童貞女どうていぢよよ、今いま我われ不ふ當たうなる者ものの上うへに爾なんぢの慈じ憐れんを奇異きいなる者ものと顯あらはし給たまへ、蓋けだし我われ不ふ法はふに於おいて妊はらまれ、生うまれて逸樂いつらくの奴ど隷れいと爲なれり。

光榮 我われ畏おそるべき審判しんぱんを記き念ねんする時とき歎なげき、泣なきて淚なみだを流ながす、惡あしき行おこなひを有たもてばなり。婚姻こんいんに與あづからざる童貞女どうていぢよ、神かみの母はゝよ、畏おそるべき時ときに於おいて我わが爲ために轉達者てんたつしやと爲なり給たまへ。

今も 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、凡およその智慧ちゑは爾なんぢに於おいて行おこなはれし靈妙れいめうにして至し榮えいなる奇き跡せきを悟さとり且かつ言いふこと能あたはず、如何いかにして爾なんぢは生うみて童貞女どうていぢよに止とゞまる、生うまれし者ものは性せいに於おいて神かみなればなり。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第三調。

ハリストスよ、婚姻こんいんに與あづからざる潔いさぎよき爾なんぢの母はゝは爾なんぢが死しして木きに懸かゝれるを見みて、母はゝとして哭なきて言いへり、吾わが子こよ、不ふ法はふにして恩おんを知しらざるエウレイの會くわい、屢しばしば爾なんぢの大おほいなる賜たまものを樂たのしみし者ものは何なにをか爾なんぢに報むくいたる。我われ爾なんぢの神聖しんせいなる寬くわん容ようを歌うたふ。

第七歌頌

イルモス 三人みたりの少者せうしやは爐ゐろりに於おいて聖三者せいさんしやを像かたどりて、火ひの恐嚇おどしを履ふみ、歌うたひて呼よべり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

女宰ぢよさいよ、行おこなひに由よりては我われに救すくひなし、罪つみに罪つみを、惡あくに惡あくを加くはふればなり。故ゆゑに潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。

審判しんぱんは門もんの側かたはらに在あり、審判しんぱん座ざは設まうけられたり、卑微ひびなる靈たましひよ、己おのれを備そなへて呼よべ、言ことばよ、我われを審判しんぱんする時とき、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに因よりて我われを定罪ていざいする勿なかれ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、我われ罪つみの果みを摘つまみて殺ころされたり、結果けつくわなき靈たましひを攜たづさへて爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの腹はらの果みを以もつて朽きう壞くわいを破やぶりし者ものよ、我われを果みを結むすぶ者ものと爲なし給たまへ。

今も 嗚呼あゝ靈妙れいめうなる祕ひ密みつ、嗚呼あゝ畏おそるべき奧あう義ぎや、如何いかにして神かみは人ひとの如ごとく地ちに現あらはれたる、彼かれの知しるが如ごとく、望のぞむが如ごとく、嘉よみするが如ごとし、彼かれは其その欲ほつする如ごとく行おこなひ給たまふ。

第八歌頌

イルモス 敬虔けいけんの範のりたる少者せうしやは堪たへ難がたき火ひに入いれられしに、焰ほのほに惱なやまされずして、神聖しんせいなる歌うたを歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

全まつたく善ぜんなる者ものにして萬有ばんいうの王わうに近ちかくなりし生しやう神女しんぢよよ、我われ惡あくを行おこなひて怠慢おこたりの中うちに一いつ生しやうを送おくりし者ものを善行ぜんかうに充みて給たまへ、我わが萬世ばんせいに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

神かみの言ことばよ、昔むかし至し榮えいに預よ言者げんしやを鯨くぢらの腹はらより救すくひし如ごとく、斯かく救世主きうせいしゆよ、滅亾ほろびの深處ふかみに陷おちいりし我わが靈たましひを救すくひ給たまへ、婚姻こんいんに與あづからずして爾なんぢを生うみし童貞女どうていぢよが爾なんぢに祈いのればなり。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、凶きよう惡者あくしやは我わが美うるはしき衣ころもを衣きたるを見みて、之これを褫はぎたり。神かみの母はゝ、童貞女どうていぢよよ、爾なんぢ親みづから祈き禱たうを以もつて我われを痛つう悔くわいの神聖しんせいなる衣ころもにて飾かざり給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、凡およその造物ざうぶつが戰をのゝく所ところの主しゆ、慈じ憐れんに由よりて我われ等らの爲ために幼兒をさなごと爲なりし者ものを爾なんぢは手てに抱いだき給たまへり。彼かれに祈いのりて、凡およそ信しんを以もつて、生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら萬世ばんせいに爾なんぢを崇あがめ讚ほむと、呼よぶ者ものを救すくはんことを求もとめ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 我われ等ら信者しんじやは影かげ及および文ぶんなる律法りつぱふに於おいて預よ象しやうを見みん、凡およそ始はじめて生うまるる男だん子しは神かみに捧さゝげられたり。故ゆゑに我われ等らは無む原げんの父ちゝより始はじめて生うまれし言ことば、夫をつとなき母はゝより始はじめて生うまれし子こを崇あがめ讚ほむ。

不ふ朽きうにして無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、我われ智慧ちゑと靈たましひとの朽きう壞くわいせられ、惡あくを以もつて良りやう心しんを汚けがし、一いつの善ぜんもなき者ものを棄すつる勿なくして、敬虔けいけんの行おこなひにて飾かざり給たまへ。

慈じ憐れんの多おほき恩主おんしゆよ、我われは惡あくに盈みち、爾なんぢ仁愛じんあいなる主しゆより我われを踈うとくする思念おもひに充みちたり。故ゆゑに歎なげきて呼よぶ、痛つう悔くわいする我われを受うけて、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりて我われを遠とほざくる勿なかれ。

光榮 純じゆん潔けつなる少女せうぢよよ、願ねがはくは我われ爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきて、爾なんぢを祐助たすけの爲ために呼よぶ者ものは、爾なんぢの祈き禱たうに由よりて、凡およその怒いかり、死しを致いたす諸慾しよよく、畏おそるべき「ゲエンナ」の火ひ、不義ふぎなる人人ひとびと及および凶きよう惡あくなる諸敵しよてきより救すくはれん。

今も 童貞女どうていぢよよ、至いたりて美うるはしき主しゆは爾なんぢを靈たましひにて美うるはしく、思おもひにて美うるはしく、肉體にくたいにて美うるはしき者ものと視みて、親みづから知しるが如ごとく爾なんぢの童貞どうていの胎たいより身みを取とりて、我われ等らの醜みにくきを飾かざり給たまへり。彼かれに我われ等らの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。聖三祝文。「天に在す」の後に司祭高聲。讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

金曜日

 金曜日の早課

第一の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第三調。

十じふ字架じかは地ちに建たてられて天てんに摩さはれり、是これ木きが此かくの如ごとき高度たかさに至いたりしに非あらず、萬有ばんいうを充みつる爾なんぢが此この上うへに在ありて斯かく成なれり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは十じふ字架じか及および死しの苦くるしみを受うけんことを定さだめて、造物ざうぶつの間あひだに之これを忍しのび給たまへり。爾なんぢが己おのれの身みを十じふ字架じかに釘ていするを許ゆるしし時とき、其時そのとき日ひは光くわう線せんを隱かくし、其時そのとき盜賊たうぞくは之これを視みて、十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを歌うたひて敬つゝしみて呼よべり、主しゆよ、我われを憶おもひ給たまへと、乃すなはち信しんじて樂園らくゑんを受うけたり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 言ことばの無む玷てんなる牝め羊ひつじ、不ふ朽きうなる童貞女どうていぢよ母はゝは產さん苦くなくして彼かれより生うまれし者ものの十じふ字架じかに懸かゝれるを覩みて、母はゝとして泣なきて呼よべり、嗚呼あゝ吾わが子こよ、爾なんぢは人ひとを耻ち辱じよくの苦くるしみより救すくはんと欲ほつして、如何いかんぞ甘あまんじて苦くるしみを受うくる。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

神かみの羔こひつじよ、爾なんぢは松まつ・杉すぎ・黃楊樹つげに擧あげられたり、信しんを以もつて爾なんぢの自じ由いうなる釘殺ていさつに伏拜ふくはいする者ものを救すくはん爲ためなり。ハリストス神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 神かみ我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

天てん使しの軍ぐんは爾なんぢの量はかり難がたき權能けんのうと自じ由いうなる釘殺ていさつとを見みて驚おどろけり、如何いかにして見みえざる者ものは人類じんるゐを朽きう壞くわいより救すくはんと欲ほつして、身みに傷きずを受うけたる。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ恩主おんしゆに呼よぶ、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの仁愛じんあいに歸きす。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らの勇敢ゆうかんなる忍耐にんたいは惡あくの魁かしらたる敵てきの惡謀あくぼうに勝かてり、故ゆゑに爾なんぢ等らは永遠えいゑんの福樂ふくらくを獲えたり。眞實しんじつの證しよう者しやよ、主しゆハリストスに彼かれを愛あいする人人ひとびとの群ぐんを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 洪恩こうおんなるハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかの上うへに甘あまんじて耻はづべき死しを忍しのび給たまへり、爾なんぢを生うみし者ものは之これを見みて心こゝろ刺さされたり。世よの罪つみを任になひし獨ひとり至し善ぜんにして人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの至し大だいなる慈じ憐れんに由よりて、彼かれの祈き禱たうを以もつて世せ界かいを宥なだめて救すくひ給たまへ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

罪つみなき主しゆよ、爾なんぢは言いひ難がたき慈じ憐れんに因よりて、詛のろひの器うつはたる十じふ字架じかを忍しのびて、初はじめて造つくられし人ひとを初はじめの詛のろひより解とき給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの尊たふとき苦くるしみに伏拜ふくはいして、爾なんぢの聖せいなる定制ていせいを讚榮さんえいす、爾なんぢ獨ひとり至し大だいなる慈じ憐れんに由よりて之これを成じやう就じゆして、爾なんぢの造物ざうぶつを救すくひ給たまへり。

人類じんるゐの爲ために頰ほゝを批うたれて怒いからざりし主しゆよ、我われ等らの生命いのちを朽きう壞くわいより釋ときて、我われ等らを救すくひ給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢの子この十じふ字架じかを能のう力りよくの杖つゑとして獲えて、此これを以もつて諸敵しよてきの驕おごりを墜おとし、愛あいを以もつて絕たえず爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

尊貴にして生命を施す十字架の規程カノン、其冠詞は、十字架は信者の譽及び榮なり。イオシフの作。第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし日ひは深處ふかみより出いでたる乾かわける地ちの上うへに升のぼれり、蓋けだし水みづは徒步かちにて海うみを渡わたる民たみの爲ために左さ右いうに壁かべの如ごとく堅かたく立たてり。彼かれ等ら神かみに悅よろこばるる歌うたを捧ゝげて曰いへり、主しゆに謳うたはん、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

洪恩こうおんなる主しゆよ、爾なんぢは杖つゑを以もつて海うみの浪なみを凝こらせ、民たみを過とほらしめて、爾なんぢの十じふ字架じかを前兆ぜんてうせり。爾なんぢは此これを以もつて迷まよひの水みづを擊うちて、凡およそ信しんを以もつて爾なんぢの力ちからを歌うたふ者ものを神かみを知しる智ち識しきの地ちに移うつして救すくひ給たまへり。

命めいを以もつて淵ふちを造つくり、水みづを以もつて其その宮みやを蔽おほひ、地ちを水みづの上うへに懸かけし主しゆよ、爾なんぢは木きに懸かゝれども、指麾しきを以もつて一切いつさいの造物ざうぶつを振ふるはせ、衆しゆう人じんの心こゝろを爾なんぢを畏おそるる畏おそれに堅かため給たまふ。

致命者讚詞 ハリストスの致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは彼かれの苦くるしみに與あづかるを以もつて神かみの子こと爲なり、上うへなるシオンの住ぢゆう者しや及および嗣よ業つぎと爲なりて、其中そのうちに榮えい冠くわんを冠かうむりて欣よろこばしく呼よぶ、主しゆに謳うたはん、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは手て足あしを斷たたれ、身みを鐵搭くまでにて抓かかれ、火ひの中なかに投とうぜられて、聊いさゝかもハリストス萬有ばんいうの神かみを諱いまずして、熱心ねつしんに呼よべり、主しゆに謳うたはん、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

生神女讚詞 至いたりて善ぜんなる童貞女どうていぢよ・女宰ぢよさいよ、爾なんぢは生うみたる子この甘あまんじて木きに懸かけられしを見みて、泣なき苦くるしみて呼よべり、萬有ばんいうの神かみ、仁愛じんあいなる主宰しゆさい、光くわう榮えいの主しゆよ、如何いかんぞ此かくの如ごとき苦くるしみを忍しのぶ。

又至聖なる生神女の規程カノン、第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの神聖しんせいなる祈き禱たうを以もつて我われに罪過ざいくわの潔淨きよめを與あたへ給たまへ、爾なんぢの祈き禱たうは力ちからありて、爾なんぢを尊たふとむ者ものを諸罪しよざい、諸慾しよよく、憂愁いうしう、患くわん難なんより救すくひ給たまへばなり。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうの水みづを以もつて我わが無む量りやうの諸罪しよざい諸慾しよよくの暑熱あつさに因よりて弱よわりたる我われの卑微ひびなる靈たましひを霑うるほし給たまへ、我わが神聖しんせいなる凉氣すゞしみを得えて、歌うたを以もつて爾なんぢを熱心ねつしんなる轉達者てんたつしやとして崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、我われ全身ぜんしん罪つみに沈しづみ、痛いたく失望しつばうせし者ものに爾なんぢの慈じ憐れんの手てを舒のべて、我われを痛つう悔くわいの高たかきに上あげ、我われに淚なみだの流ながれを與あたへ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために熱心ねつしんに爾なんぢの子こに祈いのる勇敢いさみを有たもつに因よりて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが罪惡ざいあくの書券かきつけを破やぶり給たまへ、我われ等らハリスティアニンは獨ひとり爾なんぢを轉達者てんたつしやとして有たもてばなり。

第三歌頌

イルモス 主しゆ、爾なんぢを賴たのむ者ものの堅固かためよ、爾なんぢの尊たふとき血ちにて獲えたる敎けう會くわいを堅かため給たまへ。

人體じんたいを取とりし言ことばよ、爾なんぢは極きはめて耻はづべき釘殺ていさつを忍しのびて、爾なんぢを尊たふとむ者ものに眞まことの尊そん貴きを獲えしめ給たまへり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢが詛のろひと爲なりて、十じふ字架じかを以もつて祝しゆく福ふくを流ながししに、地ちに生うまるる者ものは詛のろひより解とかれたり。

致命者讚詞 至いたりて讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢ等らは地ち上じやうに寄き寓者ぐうしやと爲なりて、眞まことの天てんの住ぢゆう民みん及およびハリストスと共ともに嗣よつぎと顯あらはれたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは十じふ字架じかを最强いとつよき武器ぶきとして獲えて、殘害者ざんがいしやなる敵てきの一切いつさいの力ちからに勝かてり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは生うみて後のちにも童貞女どうていぢよに止とゞまれり、人體じんたいを取とりし神かみ、十じふ字架じかに釘ていせらるるを甘あまんぜし主しゆを生うみたればなり。

又

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、祈いのる、速すみやかに我わが爲ために爾なんぢの慈じ憐れんの門もんを啓ひらきて、誘惑いざなひの中うちに我わが爲ために熱心ねつしんなる扶助者たすけ及および拯救すくひと爲なり給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ爾なんぢの僕ぼくを凡およその烈はげしき罪つみの暴風あらしより脫のがれしめて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを救すくひの港みなとに向むかはしめ給たまへ。

潔いさぎよき母はゝ童貞女どうていぢよよ、我われを我わが濁にごりたる諸慾しよよく、今いま我わが卑いやしき靈たましひを攻せめて之これを侵おかす者ものより救すくひ給たまへ。

仁じん慈じなる生しやう神女しんぢよよ、我われに淚なみだの雨雲あまぐもを予あたへて、此これを以もつて我わが諸慾しよよくの爐ゐろりを滅けして、吾わが靈たましひの諸もろもろの汚けがれを滌あらひ給たまへ。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢの仁じん慈じは天てんを覆おほへり、蓋けだし爾なんぢは聖所せいしよの匱ひつたる爾なんぢの無む玷てんなる母はゝより出いでて、手てに抱いだかるる嬰えい兒じとして爾なんぢの光くわう榮えいの殿でんに現あらはれ給たまへり。萬有ばんいうは爾なんぢの讚さん美びに充みてられたり。

ハリストスよ、爾なんぢは獨ひとり新あらたなるアダムと爲なりて、手てを十じふ字架じかに釘ていせられ、甘あまんじて葦あしにて擊うたれ、醋すと膽いとを飮のませられて、陷おちいりしアダムを起おこし、爾なんぢの上うへなる國くにに升のぼせ給たまへり。

神かみの言ことば、慈じ憐れんなる主しゆよ、預よ言者げんしやは爾なんぢを屠ほふりに牽ひかるる羊ひつじ、争あらそはず號さけばざる羔こひつじとして預よ見けんせり。蓋けだし爾なんぢは甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせらるるを忍しのび給たまへり、自じ由いうに罪つみを犯おかしし者ものを援たすけて救すくはん爲ためなり。

致命者讚詞 ハリストスの致ち命者めいしやは信しんの鋤すきを以もつて靈たましひを新あらたにし、窘逐きんちくを忍しのぶを以もつて種たねを播まき、苦くるしみの豐ゆたかなる穗ほ、信者しんじやの會くわいを養やしなふ者ものを聚あつめ給たまへり。故ゆゑに彼かれ等らは常つねに讚榮さんえいせらる。

致命者讚詞 忍しのび難がたき苦くるしみに狹せばめられし致ち命者めいしやは、神聖しんせいなる希き望ばうに進すゝめられて、天てん上じやうの國くにの廣ひろきに至いたり給たまへり、我わが口くちを開ひらきて、常つねに彼かれ等らの戰たゝかひを歌うたはしめん爲ためなり。

生神女讚詞 母はゝ童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは鉗ひばさみの如ごとく神聖しんせいなる熾炭やけずみ、爾なんぢの種たねなき神聖しんせいなる胎たいを燒やかずして、更さらに之これを霑うるほす者ものを受うけ給たまへり。爾なんぢは其その身みにて甘あまんじて木きに懸かけられしを見みて、歌うたを以もつて彼かれを讚榮さんえいせり。

又

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

女宰ぢよさいよ、我われ一切いつさいの望のぞみを爾なんぢに負おはせて、靈たましひを全まつたくし俯ふ伏ふくして祈いのる、生命いのちを生うみし者ものよ、我われに死しを致いたす病やまひを免まぬかれしめて、我われを救すくひの生命いのちに升のぼせ給たまへ。

潔いさぎよき女宰ぢよさい、世せ界かいの爲ために有いう力りよくなる扶ふ助者じよしやよ、我われを己おのれより遠とほざくる勿なかれ、我われを爾なんぢの面おもてより辱はづかしめて退しりぞくる勿なかれ、我われを惡あく鬼きの悅よろこびと爲なす勿なかれ。

女宰ぢよさいよ、我われ一いつも善行ぜんかうなき不ふ當たうの者ものは逸樂いつらくの銳するどき矢やに傷きずつけられて、全身ぜんしん病やまひを得えたり。故ゆゑに爾なんぢに呼よぶ、至し淨じやうなる者ものよ、我われを救すくひ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、不ふ當たうなる行おこなひの水みづは我わが卑微ひびなる靈たましひにまで至いたれり。我われ罪つみなる思おもひに攻せめられて、憂うれひて爾なんぢに呼よぶ、女宰ぢよさいよ、爾なんぢの僕ぼくを棄すつる勿なかれ。

第五歌頌

イルモス イサイヤは預よ象しやうに於おいて崇たかき寶はう座ざに坐ざして光くわう榮えいの諸天しよてん使しに繞めぐらるる神かみを見みし時ときに籲よべり、噫あゝ 我われ 禍わざはひなる哉かな、我われ肉體にくたいを取とる神かみ、暮くれざる光ひかりと平安へいあんとを司つかさどる者ものを預よ見けんせり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは木きの上うへに寢いねて、罪過ざいくわの勞らうに痛いたく疲つかれたる我われを息いこはせ給たまへり。イイススよ、爾なんぢは耻辱はづかしめの苦くるしみを受うけて、我われの耻辱はづかしめを下おろし給たまへり。言ことばよ、我われ爾なんぢの權柄けんぺい及および神聖しんせいなる苦くるしみを歌うたふ。

人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに於おいて爾なんぢの身みを燈ともしびの如ごとく燃ともして、失うしなはれし「ドラフマ」を尋たづね、之これを獲えて、爾なんぢの友ともたる天軍てんぐんを共ともに喜よろこばん爲ために召めし給たまへり。ハリストスよ、我われ等らは爾なんぢの國くにの權柄けんぺいを歌うたふ。

致命者讚詞 惑まどはす者ものは惑まどはされぬハリストスの受難者じゆなんしやの足そく下かに倒たふされ、死しして行動かうどうなき者ものと見みられ、彼かれ等らは實じつに天てん使等しらに加くはへられて、言いひ難がたき歡喜よろこびに滿みたされたり。

致命者讚詞 烈はげしき沍寒さむさに凍こゞえさせられ、甚はなはだしき傷きずに蔽おほはれ、種種しゆじゆの苦くるしみに付わたされし致ち命者めいしやは天てんの國くにの神聖しんせいなる溫暖あたゝかきに移うつりて、常つねに信者しんじやの爲ために溫あたゝかき轉達者てんたつしやと顯あらはる。

生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよは昔むかし肋あばら骨ぼねよりエワを造つくりし主しゆが木きに釘ていせられて、戈ほこを以もつて脅わきを刺ささるるを見みて、母はゝとして呼よべり、吾わが子こ、不死ふしの生命いのちよ、爾なんぢ如何いかんぞ死しする。

又 イルモス同上

靈たましひに神聖しんせいなる飮料のみものを與あたふる美うるはしき房ふさを生しやうぜし神聖しんせいなる葡ぶ萄だうたる童貞女どうていぢよよ、我わが靈たましひを諸慾しよよくの有いう害がいなる飮料のみもの、逸樂いつらくの醉ゑひ、及および永遠えいゑんの火ひより救すくひ給たまへ。

至し淨じやうなる神かみの聘女よめよ、我われ諸慾しよよくの泥どろに陷おちいりし者ものを諸罪しよざいの深ふかき濘ひぢより出いだし、爾なんぢの祈き禱たうの流ながれを以もつて我われを諸慾しよよくの汚けがれより洗あらひて、救すくひの光くわう明めいなる衣ころもを衣きせ給たまへ。

平安へいあんの王わうを生うみしに因よりて世せ界かいに平安へいあん、衆しゆう人じんに救すくひを賜たまひし潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我わが靈たましひと體からだとの諸慾しよよくの今いまの戰たゝかひを救世主きうせいしゆハリストスを畏おそるる畏おそれと彼かれを愛あいする愛あいとを以もつて平安へいあんならしめ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我わが諸罪しよざいを病やめる靈たましひを爾なんぢの慈じ憐れんにて醫いやして、我われを謙遜へりくだりを以もつて常つねに爾なんぢの子この戒いましめを行おこなふに導みちびき給たまへ、我わが彼かれの恩おん寵ちようを蒙かうむらん爲ためなり。

第六歌頌

イルモス 翁おきなは神かみより諸民しよみんに來きたりし救すくひを親したしく見みて、爾なんぢに籲よべり、ハリストスよ、爾なんぢは我われの神かみなり。

ハリストスよ、爾なんぢは羔こひつじの如ごとく甘あまんじて屠ほふられて、甘あまんじて木きの實みを食くらふに因よりて死しせし者ものを復また生命いのちに升のぼせ給たまへり。

生命いのちを賜たまふ主しゆよ、爾なんぢ十じふ字架じかに擧あげられしに、惡あく鬼きの迷まよひは墜おち、信者しんじやの大數たいすうは擧あがりて爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

致命者讚詞 血ちに染そみたる緋ひ袞こん衣いを衣きたる致ち命者めいしやは、美うるはしき榮えい冠くわんに飾かざられて、今いま萬有ばんいうの王わうの前まへに立たつ。

致命者讚詞 聖せい致ち命者めいしやの不ふ朽體きうたいは凡およそ來きたり就つく者ものに醫治いやしを流ながして、苦くるしみの多おほきを溺おぼらす。

生神女讚詞 少女せうぢよよ、人ひとの智慧ちゑは性せいに超こゆる爾なんぢの產さんの奧密あうみつを悟さとる能あたはず、爾なんぢ智慧ちゑに超こえて神かみを生うみたればなり。

又

イルモス 今いまを限かぎりの罪つみの淵ふちは我われを圍かこみ、我わが靈たましひは亾ほろびんとす。祈いのる、主宰しゆさい敎導者けうだうしやよ、爾なんぢの高たかき手てを伸のべて、我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢ慈じ憐れんなるに因よりて、我われ信しんを以もつて爾なんぢの保護ほごを求もとむる爾なんぢの僕ぼくに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへて、我われを將しやう來らいの審判しんぱんより脫のがれしめ給たまへ。

贖しよく罪主ざいしゆの母はゝ、女宰ぢよさいよ、我わが逝世せいせいの時とき、無知むちに因よりて我わが行おこなひし事ことを空くう氣き中ちゆうの鬼きに詰なじらるる時ときに、我われを防ふせぎて護まもり給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、我われ全まつたく不ふ當たうにして常つねに汚けがれの中うちに在ある者ものは、今いま我わが足あしの痕あとに死しを見みて、爾なんぢに呼よぶ、我われを援たすけ給たまへ。

慾よくの思おもひの浪なみは常つねに我われを擾みだし、凶きよう惡あくの鬼きの暴風あらしは我われを沈しづむ。至し淨じやうなる者ものよ、我われを無む慾よくの石いしに固かため給たまへ。

第七歌頌

イルモス 爾なんぢ、火ひに在ありて神かみを傳つたへし少者せうしやに露つゆを注そゝぎ、又また不ふ朽きうの童貞女どうていぢよに入いりし神かみ言ことばを、我われ等ら讚さん美びして、敬つゝしみて歌うたふ、わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

三者さんしやの一いつなる爾なんぢは黃楊つげ・杉すぎ・松まつに擧あげられて、多おほくの逸樂いつらくの深處ふかみに陷おちいりし者ものを擧あげ給たまへり。我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

主しゆよ、爾なんぢは無垢むくなる羊ひつじの如ごとく祭まつりに獻けんぜられて、尊たふとき血ちを以もつて造物ざうぶつを惡にくむべき惡あく鬼きに獻さゝぐる血ちより潔きよめ、汚けがらはしき祭まつりを滅ほろぼし給たまへり。神かみの言ことばよ、光くわう榮えいは爾なんぢの權能けんのうに歸きす。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやは動うごかざる柱はしらの如ごとく苛虐者くるしめびとの前まへに立たちて、迷まよひを動うごかし、信者しんじやの心こゝろを堅かためて歌うたへり、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

致命者讚詞 ハリストスの受難者じゆなんしや、榮えい冠くわんを冠かうむれる者ものは火ひよりも熱あつき決心けつしんを得えて、火ひに燒やかれずして歌うたへり、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは獨ひとり比たぐひなき降孕はらみと言いひ難がたき產さんとを有たもちて、人體じんたいを取とりし主宰しゆさい、身みにて十じふ字架じかに釘ていせられし者ものを生うみ給たまへり。我われ等ら彼かれを歌うたひて呼よぶ、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

又

イルモス 昔むかし敬虔けいけんなる三人みたりの少者せうしやをハルデヤの焰ほのほに凉すゞしくせし如ごとく、我われ等らをも神性しんせいの明あかるき火ひにて輝かゞやかし給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よべばなり。

女宰ぢよさいよ、我われ體からだと靈たましひとに汚けがされ、不ふ潔けつの行おこなひに盈みちたる者ものは爾なんぢ潔けつ淨じやう無む玷てんなる神かみの母はゝの慈じ憐れんを賴たのみて祈いのる、至し淨じやうなる者ものよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

我わが罪つみの多おほく、我わが惡あくの甚はなはだしきを思おもへば、我わが心こゝろ痛いたく惑まどひて、我われを失望しつばうの深處ふかみに引ひく。至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、我われ烈はげしく溺おぼらされて亾ほろぶる者ものを救すくひ給たまへ。

仁じん慈じなる者ものよ、惡あしき行おこなひに由よりて卑いやしくなりたる吾わが靈たましひを憐あはれみて、我われを痛つう悔くわいの途みちに向むかはしめ、爾なんぢの子この旨むねを行おこなふに導みちびきて、苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

至し仁じんなる者ものよ、爾なんぢが仁じん慈じの宏くわう恩おんの多おほきを以もつて我わが罪つみの多おほきを蔽おほひて、我われ等らの爲ために寬くわん容ようの者ものと爲なり給たまへ。蓋けだし我われ等ら默もださずして呼よぶ、至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの腹はらの果みは祝しゆく福ふくせられたり。

第八歌頌

イルモス 敬虔けいけんの範のりたる少者せうしやは堪たへ難がたき火ひに入いれられしに、焰ほのほに惱なやまされずして、神聖しんせいなる歌うたを歌うたへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

言ことばよ、不ふ順じゆんにして無知むちなる民たみが爾なんぢを死しに定さだめしに、爾なんぢは柔じう順じゆんに甘あまんじて釘ていせられて、甘あまんじて殺ころされし者ものを活いかし給たまへり。故ゆゑに彼かれ等らは爾なんぢを歌うたひて世世よよに崇あがめ讚ほむ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは十じふ字架じかに手てを伸のべて、初はじめて造つくられし者ものの不ふ節制せつせいに木きの實みに伸のべたる手てを醫いやし給たまへり。日ひは畏おそれを以もつて爾なんぢを覩みて光くわう線せんを隱かくし、造物ざうぶつは皆みな震ふるへり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは聖せいにせられし戰たゝかひの熱ねつを以もつて不ふ虔けん無む神しんの流ながれを涸からし、醫治いやしの泉いづみを流ながして、諸慾しよよくの汚けがれを洗あらひ、豐ゆたかに信者しんじやの心こゝろに飮のませ給たまふ。

致命者讚詞 ハリストスの爲ために苦くるしみを忍しのび、且かつ神聖しんせいなる誡いましめを行おこなひしに因よりて、無む形けいの者ものの同どう住ぢゆう者しやと爲なりし受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らを世世よよに尊たふとむ者ものが今いま上うへなる都城まちに錄しるされんことを神かみに祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 我われ等ら衆しゆう信者しんじやは爾なんぢ產さんの後のちにも童貞女どうていぢよに止とゞまりし生しやう神女しんぢよを金こがねの壺つぼと燈ともしび、食しよく案あんと杖つゑ、神聖しんせいなる山やまと雲くも、王わうの宮みや及および火ひの狀さまの寶はう座ざと稱となふ。

又

イルモス 神かみたる力ちからを以もつて焰ほのほの中うちにエウレイの少者せうしやに降くだりて、現あらはれし主しゆを、司し祭さい等らよ、崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

逸樂いつらくの苦味にがみは肉體にくたいの感覺かんかくを經へて、吾わが靈たましひを甚はなはだしく汚けがして、死しに至いたらしむ。世せ界かいの女宰ぢよさいよ、我わが爲ために救すくひと爲なり給たまへ。

女宰ぢよさいよ、我われ心こゝろと靈たましひと肉體からだとを爾なんぢに託たくせり、我われに爾なんぢの外ほかに佗たに慈じ憐れんを受うくべき賴たのみなければなり。故ゆゑに爾なんぢの豐ゆたかなる恩おん寵ちようを我われに與あたへ給たまへ。

蛇へびは潛ひそかに近ちかづきて、肉體にくたいの逸樂いつらくの毒どくを以もつて甚はなはだしく吾わが不ふ當たうなる靈たましひを害がいせり。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうの良りやう藥やくを以もつて之これを活いかし給たまへ。

聖せいなる女宰ぢよさいよ、罪惡ざいあくの甚はなはだしき夜よは我われを掩おほふ、我われ靈たましひを照てらす慈じ惠けいの油あぶらにて燃もゆる燈ともしびを持もたざればなり。故ゆゑに我われ上うへなる宮みやより逐おひ出いだされたり。

次に生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」。

第九歌頌

イルモス 我われ等ら信者しんじやは影かげ及および文ぶんなる律法りつぱふに於おいて預よ象しやうを見みん、凡およそ始はじめて生うまるる男だん子しは神かみに獻さゝげられたり。故ゆゑに我われ等らは無む原げんの父ちゝより始はじめて生うまれし言ことば、夫をつとなき母はゝより始はじめて生うまれし子こを崇あがめ讚ほむ。

全ぜん地ちを無むの上うへに基もとづけし慈じ憐れんの多おほきイイススハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに釘ていせられて、我われ惡あしき習ならはしに由よりて罪つみの泥ひぢに溺おぼれし者ものを、仁じん慈じなる主しゆとして憐あはれみて引ひき出いだし、爾なんぢの耻はづべき死しを以もつて我われを尊たふとくし給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢ性せいにて見みえざる神かみは肉體にくたいにて十じふ字架じかに擧あげらるる者ものと見みられたり、見みゆる世せ界かいを見みえざる敵てきより救すくひ、下しもに在ある者ものを天てんの者もの、爾なんぢの大おほいなる能のう力りよくの權柄けんぺいを讚榮さんえいする者ものと爲なさん爲ためなり。

致命者讚詞 至いたりて光くわう榮えいなる救世主きうせいしゆの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは聖せい天てん使等しらと同おなじき選えらばれたる聖せいにせられし軍ぐん、其中そのなかに生命せいめいの樹きたるハリストスを有たもつ樂園らくゑん、神かみに飾かざられたる敎けう會くわいの尊たふとき品ひん位ゐと現あらはれたり。

致命者讚詞 欣よろこばしく主宰しゆさいの寶はう座ざの前まへに立たてる聖せい致ち命者めいしやよ、地ち上じやうに爾なんぢ等らを記き憶おくする我われ等らを記き憶おくして、彼處かしこより豐ゆたかに光くわう線せんを遣つかはして我われ等らを照てらし給たまへ、我われ等らが債おひめの赦ゆるしを受うけん爲ためなり。

生神女讚詞 吾わが子こよ、光くわう體たいは爾なんぢの釘殺ていさつを見みて隱かくれたり、如何いかんぞ生命いのちの首かしらたる爾なんぢを死しに付わたししエウレイの不ふ信しんの會くわいは隱かくれざりしと、生しやう神女しんぢよは呼よべり。我われ等ら絕たえず彼かれを崇あがめ讚ほむ。

又

イルモス 我われ等らは爾なんぢ焚やかれぬ棘いばら及および聖せいなる童貞女どうていぢよ、光ひかりの母はゝ及および生しやう神女しんぢよ、我われ等ら衆しゆうの倚賴たのみなる者ものを崇あがめ讚ほむ。

潔いさぎよき者ものよ、吾わが靈たましひの諸慾しよよくの思念おもひの汚けがれを潔きよめて、我われに無む慾よくの美うるはしき衣ころもを衣きせ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我われに痛つう悔くわいの神聖しんせいなる門もんを啓ひらき、我わが諸慾しよよくと逸樂いつらくとの門もんを閉とざして、爾なんぢの力ちからを以もつて之これを禁いましめ給たまへ。

純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、我わが歎なげきの聲こゑ、我わが泣聲なきごゑを聽ききて、我わが不ふ當たうなる靈たましひに潔淨きよめと拯救すくひとを與あたへ給たまへ。

我われは我わが惡あしき行おこなひを思おもひて、全まつたく望のぞみを失うしなひて惑まどふ。女宰ぢよさいよ、功こうなき我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、小聯禱、光耀歌。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第三調。

不ふ順じゆんの木きは世せ界かいに死しを生しやうじ、十じふ字架じかの木きは生命せいめいと不ふ朽きうとを生しやうじたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ釘ていせられし主しゆに祈いのる、願ねがはくは爾なんぢが顏かんばせの光ひかりは我われ等らに輝かゞやかん。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。

爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我われ猜忌そねみに因よりて樂園らくゑんより逐おひ出いだされて、甚はなはだしき倒たふれを以もつて倒たふれたり。然しかれども爾なんぢは、主宰しゆさいよ、我われを棄すてずして、我わが爲ために我われの性せいを受うけ、十じふ字架じかに釘ていせられ、我われを救すくひて、我われを光くわう榮えいの中うちに入いれ給たまふ。我わが贖しよく罪主ざいしゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

衆しゆう民みん來きたりて、聖せいなる受難者じゆなんしやの記き憶おくを尊たふとまん、蓋けだし彼かれ等らは天てん使等しら及および人人ひとびとの爲ために觀玩みものと爲なりて、ハリストスより勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけて、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまふ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢより生うまれし主しゆの木きに懸かけられしを見みて、爾なんぢは哀かなしみて呼よべり、吾わが甘愛かんあいなる子こ、人類じんるゐに恩おんを施ほどこしし者ものよ、爾なんぢの光くわう明めいなる華くわ美びは何處いづこにか隱かくれたる。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」、聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、第一時課、及び發放詞。

 金曜日の聖体礼儀に

金曜日の眞福詞、第三調。

ハリストスよ、爾なんぢは誡いましめに背そむきし原げん祖そアダムを樂園らくゑんより逐おひ出いだせり。然しかれども爾なんぢ、洪恩こうおんなる主しゆよ、十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを承うけ認みとめし盜賊たうぞく、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものを其中そのうちに入いれ給たまへり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

主宰しゆさい救世主きうせいしゆよ、爾なんぢ暮くれざる日ひが十じふ字架じかに在あるを見みて、日ひは光ひかりを晦くらまし、磐いはは裂さけ、地ちは震ふるひ、殿でんの幔まくは二ふたつに裂さけたり、爾なんぢ萬ばん衆しゆうの悟さとり難がたき主しゆが非義ひぎに苦くるしめらるるを見みたればなり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

生いける者ものの生命いのちたるイイススよ、爾なんぢは衆しゆう人じんの爲ために死しに曳ひかれたり、爾なんぢの神聖しんせいなる苦くるしみを以もつて、神かみとして、昔むかし食しよくの爲ために殺ころされし者ものを救すくひて、樂園らくゑんの住ぢゆう者しやと爲なさん爲ためなり。故ゆゑに我われ等ら今いま信しんを以もつて爾なんぢの苦くるしみを讚榮さんえいす。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは、甘あまんじて我われ等らの爲ために苦くるしみを受うけ、人人ひとびとより耻辱はづかしめを除のぞきし主しゆの苦くるしみに效ならひて、多おほくの苦く難なんを以もつて敵てきを斃たふして、上うへなる光くわう榮えいを受うけたり。故ゆゑに宜よろしきに合かなひて讚榮さんえいせらる。

光榮 我われ等ら衆しゆう信者しんじやは父ちゝ、子こ、及および撫ぶ恤じゆつ者しや、義ぎなる神しん゜に伏拜ふくはいし、神かみの宜よろしきに合かなひて、正敎せいけうの智慧ちゑを以もつて惟一ゆゐいちの元げん始しと光くわう榮えいとを敬虔けいけんに歌うたひて呼よばん、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつなる者ものは身みを以もつて甘あまんじて苦くるしみを忍しのび給たまふ其その子この十じふ字架じかに在あるを覩みて、痛いたく哀かなしみて哭なきて呼よべり、嗚呼あゝ吾わが子こ、罪つみに由よりて死しせし者ものを活いかさんと欲ほつする主しゆよ、如何いかんぞ殺ころされたる。

 金曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に聖致命者と成聖者と克肖者との讚頌スティヒラ、第三調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

勇敢ゆうかんなる致ち命者めいしやは堅けん固ごに苦く難なんを受うけて、創傷きずと縲絏なはめと種種しゆじゆの苦くるしみとを忍しのびしに因よりて、實じつに宜よろしきに合かなひて病やまひなき福ふくたる嗣し業げふに送おくられたり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

主しゆの成聖者せいせいしやよ、爾なんぢ等らは敬虔けいけん神聖しんせいなる言ことばを傳つたへ、悉ことごとくの異い端たんの激論げきろんを破やぶりて、衆しゆう信者しんじやの爲ために首導者しゆだうしやと顯あらはれたり。故ゆゑに尊敬たふとみを受うく。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

捧神ほうしんなる諸神しよしん父ぷよ、爾なんぢ等らは形體けいたいに在ありて無む形けい體たいの品ひん位ゐに似にたる者ものと爲なりて、至し榮えいに彼かれ等らの度ど生せいを著あらはし給たまへり。故ゆゑに彼かれ等らの住居すまひに居をるなり。

又 致命者の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかの能力ちからは大おほいなり、蓋けだし一ひとつの處ところに建たてられて、全ぜん世せ界かいに行動かうどうし、漁者ぎよしやの中うちより使徒しと、異い邦人はうじんの中うちより致ち命者めいしやを現あらはして、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのらしむ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。
ハリストスよ、爾なんぢの致ち命者めいしやの能力ちからは大おほいなり、蓋けだし彼かれ等らは墓はかに臥ふして惡あく鬼きを逐おひ、聖三者せいさんしやの信しんを以もつて敬虔けいけんの爲ために戰たゝかひて、敵てきの權けんを空むなしくし給たまへり。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

諸しよ預よ言者げんしや、ハリストスの使徒しと、及および致ち命者めいしやは我われ等らに一體いつたいの三者さんしやを歌うたふを敎をしへ、迷まよひし異い邦民はうみんを照てらし、人ひとの諸しよ子しを天てん使等しらの侶ともと爲なし給たまへり。

光榮、今も、生神女讚詞 最いと尊たふとき者ものよ、我われ等ら如何いかで爾なんぢが神人かみびとを生うみしに驚おどろかざらん。至いたりて玷きずなき者ものよ、爾なんぢは夫をつとの誘いざなひを受うけずして、世よの無なき先さきより母はゝなく父ちゝより生うまれ、聊いさゝかも變易かはり、或あるひは混淆まじり、或あるひは分離わかれを受うけず、二ふたつの性せいの質しつを全まつたうして守まもれる子こを父ちゝなく身みにて生うめり。故ゆゑに母はゝ、童貞女どうていぢよ、女宰ぢよさいよ、正たゞしく爾なんぢを生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものの靈たましひの救すくはれんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。

挿句くづけに致命者の讚頌スティヒラ、第三調。

主しゆよ、爾なんぢの致ち命者めいしやは信しんにて固かためられ、望のぞみにて强つよくせられ、爾なんぢの十じふ字架じかを愛あいする愛あいにて靈たましひを合あはせられて、諸敵しよてきの强きやう暴ばうに勝かてり。故ゆゑに榮えい冠くわんを享うけて、無む形けいの者ものと共ともに我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまふ。

死者の讚頌スティヒラ 凡およそ死しの後のちに存そんせざる人ひとの事じ物ぶつは皆みな虛むなし、富ふう貴きは留とゞまらず、榮華えいぐわは伴ともなはず、死し來きたりて皆みな此これを滅ほろぼさん。故ゆゑに我われ等らはハリストス死しせざる王わうに籲よばん、我われ等らより移うつされし者ものを爾なんぢに、凡およそ樂たのしむ者ものの住居すまひある所ところに安やすんぜしめ給たまへ。

死者の讚頌スティヒラ 人人ひとびとよ、我われ等ら何なん爲すれぞ徒いたづらに忙いそがはしき、我わが走はしる路みちは短みぢかし、生命いのちは烟けむりなり、蒸氣ゆげなり、灰はひと塵ちりなり、僅わづかに現あらはれて速すみやかに亡ほろぶ。故ゆゑに我われ等らはハリストス死しせざる王わうに籲よばん、我われ等らより移うつされし者ものを爾なんぢに、凡およそ樂たのしむ者ものの住居すまひある處ところに安やすんぜしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 女をんなの中うちに聖せいなる生しやう神女しんぢよ、聘女よめならぬ母はゝよ、爾なんぢが生うみし王わう及および神かみに、其その仁愛じんあいの主しゆなるに因よりて、我われ等らを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び發放詞。

 金曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第三調。

第一歌頌

イルモス 昔むかし神妙しんめうの瞬またゝきにて水みづを一區ひとつに匯あつめ、又またイズライリ人じんの爲ために海うみを分わかちし者ものは、是これ崇あがめ讚ほめらるる吾わが神かみなり。我われ等ら獨ひとり彼かれに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

潔いさぎよき神かみの母はゝよ、爾なんぢは全まつたく智慧ちゑに超こえて救すくひの首かしら、生いのちを施ほどこす主しゆを生うみて、原げん母ぼエワの定罪ていざいの縲絏なはめを解とき給たまへり。故ゆゑに萬物ばんぶつは爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、靈たましひと體からだとに烈はげしき病やまひに苦くるしめる我われを煩悶もだえの深處ふかみより引ひき出いだして、凡およその患くわん難なんより脫のがれしめ給たまへ、爾なんぢは、至し淨じやうなる者ものよ、慈じ憐れんの泉いづみなればなり。

光榮 我われ樂たのしみの衣ころもを褫はがれ、憂うれひと病やまひとに陷おちいりて、全身ぜんしん甚はなはだしく傷きずつけられたり。女宰ぢよさいよ、急いそぎて我われを圍かこめる誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ、爾なんぢは我わが爲ために避所かくれが及および希望のぞみなればなり。

今も 神かみの聘女よめよ、我われ爾なんぢを堅けん固ごなる轉達者てんたつしやとして獲えて、爾なんぢの帲幪おほひに趨はしり附つきて祈いのる、神かみの母はゝよ、我われ多おほくの慾よくと病やまひと憂うれひとに苦くるしめる爾なんぢの僕ぼくを棄すてずして、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて醫いやし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

我われ不ふ當たうの者ものは己おのれの後あとに死しを見みて、傷いたましき煩悶もだえと憂愁うれひとに在あり。至し淨じやうなる者ものよ、祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを救すくひ給たまへ。

惡あしくして放蕩はうたうなる行おこなひに汚けがされたる我わが一いつ生しやうは我われを訟うつたへて、我われを失望しつばうの中うちに沈しづむ。潔いさぎよき者ものよ、我われを救すくひ給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、獨ひとり仁じん慈じに由よりて遍あまねく流ながさるる爾なんぢの洪恩こうおんの淵ふちは、新あらたなる膏あぶらの如ごとく凡およそ常つねに爾なんぢを歌うたふ者ものを潤うるほす。

今も 神かみの聘女よめよ、我わが性せいを爾なんぢより受うけたる爾なんぢの子こ及および主しゆは爾なんぢの祈き禱たうに由よりて爾なんぢを歌うたふ者ものを己おのれに合あはせ給たまふ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

女宰ぢよさいよ、我われ一切いつさいの望のぞみを爾なんぢに負おはせて、靈たましひを全まつたくし俯ふ伏ふくして祈いのる、生命いのちを生うみし者ものよ、我われに死しを致いたす病やまひを免まぬかれしめて、我われを救すくひの生命いのちに升のぼせ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ甚はなはだしき靈たましひの傷きずを病やみて失望しつばうせし爾なんぢの僕ぼくを爾なんぢの祈き禱たうを以もつて醫いやし給たまへ、爾なんぢは醫師いしたる慈じ憐れんに富とめる我わが神かみを生うみたればなり。

光榮 凡およその智慧ちゑに超こゆる歡喜よろこびを生うみし童貞女どうていぢよよ、我われ甚はなはだしき苦く難なんに陷おちいりし者ものを援たすけて、爾なんぢの神聖しんせいなる眷顧かへりみを以もつて樂たのしみの衣ころもを我われに予あたへ給たまへ。

今も 潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは第だい二にの天てんと現あらはれて、言いひ難がたく地ち上じやうに義ぎの日ひを輝かゞやかし給たまへり、此これに由よりて神しん智ちの永在えいざいの光ひかりは我われ等らを照てらせり。

第五歌頌

イルモス 爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆ、悟さとり難がたき平安へいあんに、朝あさの禱いのりを奉たてまつる、爾なんぢの誡いましめは光ひかりなるに因よりて、我われに之これを敎をしへ給たまへ。

我われ無む量りやうの罪つみに因よりて死し及および地ぢ獄ごくに近ちかづけり。神かみの母はゝよ、熱切ねつせつに爾なんぢに祈いのる、我われを無む數すうの惡あく事じより救すくひ給たまへ。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ不ふ當たうの者ものは肉體にくたいの手ての弱よわりたるに因よりて、我わが靈たましひの手てを爾なんぢに伸のぶ、多おほくの病やまひより我われを援たすけて、醫治いやしを與あたへ給たまへ。

光榮 我われ壯健さうけんの衣ころもを褫はがれて、諸しよ病びやうの傷いたましき衣ころもを衣きたり。女宰ぢよさいよ、爾なんぢに祈いのる、我われに壯健さうけんを衣きせ給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら皆みな爾なんぢを致ち命者めいしや及および使徒等しとらの聖せいにせられし裝さう飾しよく、信者しんじやの保護ほごとして宜よろしきに合かなひて讚榮さんえいす。

第六歌頌

イルモス 主しゆ我わが神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへと、イオナは呼よべり。我われも祈いのりて爾なんぢに呼よぶ、救世主きうせいしゆよ、我わが多おほくの惡あくの深處ふかみより我われを援たすけて、爾なんぢの光ひかりに導みちびき給たまへ。

我わが無む量りやうの罪過ざいくわに由よりて、害がいを爲なす敵てきは多おほくの病やまひを我われに負おはしめて、我われを殺ころさんと欲ほつす。生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢ親みづから我われを之これより脫のがれしめて、凡およその患くわん難なんより引ひき出いだし給たまへ。

我われ罪過ざいくわと諸しよ病びやうと無む量りやうの憂愁うれひとの深處ふかみに墜おとされて、今いま甚はなはだしく其中そのうちに苦くるしむ。神かみの母はゝよ、救すくひの手てを伸のべて我われを引ひき上あげ給たまへ。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、我われ爾なんぢを憂愁うれひの中うちに在ある者ものの堅けん固ごなる基もとゐ及および有いう力りよくなる援助たすけとして知しる。故ゆゑに爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきて爾なんぢに祈いのる、我われを烈はげしき災禍わざはひ及および重おもき病やまひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよ・神かみの母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを神聖しんせいなる穗ほを生しやうぜし畝うねとして歌うたふ、信者しんじやの心こゝろは此この穗ほに由よりて信しんを以もつて養やしなはれて、靈たましひの饑き饉きんは息やみたり。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第三調。

爾なんぢ母はゝを產さんの後のちにも產さんの前まへの如ごとく純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよと守まもりし惟一ゆゐいちの主しゆは、神かみの性せいを離はなれずして、爾なんぢの腹はらの内うちに身みを取とれり、神かみは人ひとと爲なりて斯かく止とゞまり給たまへり。彼かれに切せつに我われ等らに大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

第七歌頌

イルモス 昔むかし敬虔けいけんなる三人みたりの少者せうしやをハルデヤの焰ほのほに凉すゞしくせし如ごとく、我われ等らをも神性しんせいの明あかるき火ひにて輝かゞやかし給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よべばなり。

童貞女どうていぢよ・神かみの聘女よめよ、我われ失望しつばうの深處ふかみに陷おちいりし者ものに慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。至し淨じやうなる者ものよ、祈いのる、爾なんぢ我われの爲ために穩靜をんせいなる避所かくれがと爲なり給たまへ、爾なんぢは患くわん難なんに在ある者ものの爲ために常つねに救すくひの港みなとなればなり。

生しやう神女しんぢよ、信者しんじやの倚賴たのみよ、爾なんぢは智慧ちゑに超こえて言いひ難がたく神かみの智慧ちゑ及および能のう力りよくたるハリストスを生うみ給たまへり。故ゆゑに慈じ憐れんに力ちからあり、恩惠おんけいに豐ゆたかなる者ものとして、我われに救すくひの醫治いやしを施ほどこし給たまへ。

光榮 神聖しんせいなる產さんを以もつて不ふ朽きうの甘味あまみにて四し極きよくを富とましし至し榮えいなる神かみの母はゝよ、我われを朽きう壞くわいの病やまひ及および苦にがき諸慾しよよくより解ときて、救すくひを與あたへ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢを己おのれの爲ために奧密あうみつの門もん、地ちに居をる者ものの爲ために奇異きいなる保護ほご者しやと定さだめし主しゆは、爾なんぢに因よりて衆しゆう人じんの爲ために永遠えいゑんの生命いのちに入いる門もんを予あたへ給たまへり、宏くわう恩おんにして萬ばん衆しゆうの神かみなればなり。

第八歌頌

イルモス ワワィロンの爐ゐろりが少者せうしやを焚やかざりし如ごとく、神性しんせいの火ひは童貞女どうていぢよを殘そこなはざりき。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは少者せうしやと偕ともに呼よばん、主しゆの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ罪過ざいくわの數かぞへ難がたく多おほきを獲えて、今いま諸しよ病びやうに沈しづみて苦くるしむ。故ゆゑに祈いのる、我われに援助たすけの手てを伸のべて、諸しよ病びやうの深處ふかみより引ひき上あげ給たまへ。

潔いさぎよき永貞えいてい童女どうぢよ、至いたりて讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは神かみの爲ために地ち上じやうの寶はう座ざ、人人ひとびとの爲ために天てんの門もんと現あらはれたり。故ゆゑに神かみの母はゝよ、我われに救すくひの門もんを啓ひらきて、我われを諸慾しよよくの幽暗くらやみより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは葡ぶ萄だうにして、造つくられざる房ふさ、信しんを以もつて彼かれを歌うたふ者ものの靈たましひを樂たのしましむる酒さけを流ながす者ものを生しやうじ給たまへり。

今も 產さんの後のちに不ふ朽きうに止とゞまりし純じゆん潔けつなる者ものよ、祈いのる、我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくを朽きう壞くわいより脫のがれしめ給たまへ。蓋けだし我われ等らは信しんを以もつて思おもひを一いつにして歌うたふ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

第九歌頌

イルモス モイセイはシナイ山ざんに於おいて棘いばらの中うちに、爾なんぢを焚やかれずして神性しんせいの火ひを胎内たいないに孕はらみし者ものとして觀み、ダニイルは爾なんぢを截きられざる山やまとして觀み、イサイヤは芽めを萌きざしし杖つゑ、ダワィドの根ねより出いでし者ものなりと呼よべり。

嗚呼あゝ仁じん慈じなる童貞女どうていぢよよ、嗚呼あゝ世せ界かいの歡喜よろこびと避所かくれがよ、嗚呼あゝ信者しんじやの保護ほごと憂うれひよりの拯救すくひよ、我わが死しの時ときに爾なんぢ現あらはれて、我われを滅ほろぼさんと欲ほつする惡あく鬼きより脫のがれしめ給たまへ。

造成主ざうせいしゆ神かみを胎内たいないに孕はらみし潔いさぎよき童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢの内うちに在ある能力ちからにて惡あく鬼きの傲慢がうまんを仆たふして、爾なんぢの神聖しんせいなる權けんを歌うたひ、信しんを以もつて爾なんぢの像ざうに伏拜ふくはいする者ものの角つのを擧あげ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢより身みを取とりて我われ等らの性せいを新あらたに造つくりし主しゆは、歌うたを以もつて絕たえず爾なんぢ光くわう明めい有いう力りよくなる保護ほご者しや及および眞まことの生しやう神女しんぢよを讚ほめ揚あぐる者ものを母はゝたる爾なんぢの祈き禱たうに由よりて改あらため給たまふ。

今も 爾なんぢは天てん使しの歡喜よろこび、爾なんぢは義ぎ者しやの裝飾かざり、爾なんぢは信者しんじやの倚賴たのみ、爾なんぢは我われ等らの守護まもり、爾なんぢは信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを讚ほめ揚あぐる者ものを老おいざる生命いのちに渡わたらしむる橋はしなり。

次ぎて「常に福にして」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。及び其他常例の如し、幷に發放詞。

土曜日(スボタ)

 「スボタ」の早課

第一の誦文の後に致命者の坐誦讚詞セダレン、第三調。

至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らの勇敢ゆうかんなる忍耐にんたいは惡あくの魁かしらたる敵てきの惡謀あくぼうに勝かてり、故ゆゑに爾なんぢ等らは永遠えいゑんの福樂ふくらくを獲えたり。眞實しんじつの證しよう者しやよ、主しゆハリストスに彼かれを愛あいする人人ひとびとの群ぐんを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

至いたりて讚さん美びたる受難者じゆなんしや、病やめる者ものの聖せいなる醫師いしよ、爾なんぢ等らは信しんを以もつて光くわう明めいなる燈ともしびの如ごとく輝かゞやく。爾なんぢ等らは窘逐者きんちくしやより受うくる苦くるしみを畏おそれずして、偶像ぐうざうの邪敎じやけうを斃たふし給たまへり、眞まことの十じふ字架じかを勝かたれぬ武器ぶきとして有たもちたればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ等らは爾なんぢ我わが族やからの救すくひの中ちゆう保はう者しやと爲なりし者ものを讚ほめ歌うたふ、蓋けだし爾なんぢの子こ我われ等らの神かみは爾なんぢより受うけし身みにて十じふ字架じかに苦くるしみを受うけて、我われ等らを朽きう壞くわいより救すくひ給たまへり、人ひとを慈いつくしむ主しゆなればなり。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第三調。

ハリストスの恒忍ごうにんなる致ち命者めいしやはハリストスの全ぜん備びの武具ぶぐを衣き、信しんの盾たてを執とりて、受難者じゆなんしやに適かなふが如ごとく敵てきの軍ぐんを斃たふせり。蓋けだし生命いのちの望のぞみを抱いだきて、勇いさましく暴ばう虐ぎやく者しやの悉ことごとくの恐嚇おどしと傷きずとを忍しのびたり、故ゆゑに榮えい冠くわんを受うけ給たまへり。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

聖せいなる受難者じゆなんしやよ、慈じ憐れんなる神かみに我われ等らの靈たましひに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。

主しゆよ、我われ等らが爾なんぢの言ことばに因よりて爾なんぢの偏へん頗ぱなき審判しんぱんの前まへに立たたん時とき、我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢを信しんぜし者ものを辱はづかしむる毋なかれ、我われ等ら皆みな罪つみを犯おかしたれども爾なんぢより離はなれざりしに因よる。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、ハリストスよ、受うけし者ものを爾なんぢの義ぎ者しやの居處すまひの中うちに安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢは獨ひとり罪つみなき者ものなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢが實じつに生しやう神女しんぢよたるを預よ言者げんしやは傳つたへ、使徒しとは敎をしへ、致ち命者めいしやは承うけ認とめ、我われ等らは信しんじたり。故ゆゑに爾なんぢの產さんを崇あがめ讚ほむ。

聖致命者、成聖者、克肖者、及び死者の規程カノン、イオシフ師の作。第三調。

第一歌頌

イルモス 奇き妙めう至し榮えいに奇き跡せきを行おこなふ神かみよ、爾なんぢは淵ふちを地ちと爲なし、兵車いくさぐるまを沈しづめ、爾なんぢを我わが王わう及および神かみとして歌うたふ人人ひとびとを救すくひ給たまへり。

睿えい智ちなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等ら皆みな勇いさましく多た種しゆの苦くるしみを忍しのびしに因よりて光くわう榮えいを得えたり、故ゆゑに常つねに讚榮さんえいせらる。

神聖しんせいなる役者えきしや、人體じんたいを取とりし言ことばの睿えい智ちなる聖せい機き密みつの執行者しつかうしやよ、爾なんぢ等らは神聖しんせいなる力ちからを以もつて能よく主しゆの群ぐんを牧ぼくして、天てん上じやうの生命いのちを有たもつ者ものと現あらはれたり。

世よの爲ために釘ていせられし克肖者こくせうしやよ、爾なんぢ等らは肉體にくたいの一切いつさいの逸樂いつらくを棄すて、聖神せいしんの器うつはと爲なりて、神聖しんせいなる力ちからを以もつて誘惑いざなひの鬼きを滅ほろぼし給たまへり。

光榮 洪恩こうおんなる主しゆよ、爾なんぢの命めいに因よりて地ちより敬虔けいけんなる信しんを以もつて移うつりし者ものに終をはりなき生命いのちと暮くれざる光ひかりとを得えしめて、彼かれ等らを安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じなる主しゆなればなり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、我われ等ら敬虔けいけんの心こゝろを以もつて爾なんぢを身みにて神かみを生うみし者ものとして、尊たふとき女をんな等たち、齋ものいみを以もつて輝かゞやき、苦くるしみを以もつて敵てきを斃たふしし者ものと偕ともに常つねに崇あがめ讚ほむ。

又死者の規程カノン、月課經の規程なき時に序を逐ひて之を歌ふ。フェフォンの作。

第一歌頌

イルモス 昔むかしイズライリは杖つゑにて截きり分わかちたる海うみを、野のを行ゆくが如ごとく過とほりて、明あきらかに十じふ字架じかの道みちを預よ象しやうせり。故ゆゑに我われ等らは奇異きいなる吾わが神かみを讚さん美びして歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

附唱 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

爾なんぢの葬はうむりを以もつて死しを死ころし、地ぢ獄ごくの苛虐くるしみを斃たふし、我われ等らに先さきだちて天てんに升のぼりしハリストスよ、爾なんぢは己おのれと偕ともに受難者じゆなんしやの群ぐんを升のぼせ給たまへり。今いまは爾なんぢに移うつされし靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。

附唱 主しゆよ、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。

神聖しんせいなる致ち命者めいしやを堅けん固ごにして、彼かれ等らを以もつて迷まよひを滅ほろぼしし救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて、爾なんぢを信しんじて世よを終をへし者ものに神かみとして不死ふしと福ふくたる嗣し業げふとを獲えしめ給たまへ。

光榮 主宰しゆさいよ、爾なんぢは屠ほふられて、爾なんぢの血ちを諸僕しよぼくの爲ために流ながし、洪恩こうおんの主しゆとして彼かれ等らの爲ために債おひめを償つくのへり。之これに因よりて、慈じ憐れんなる主しゆよ、我われ等ら爾なんぢに祈いのる、爾なんぢに移うつされし爾なんぢの諸僕しよぼくを安やすんぜしめ給たまへ。

今も 己おのれの死しを以もつて我われ等らの死しを滅ほろぼし、老おいざる生命いのちと世世よよに存そんする福樂ふくらくとを流ながしし神かみを生うみ給たまひし潔いさぎよき生しやう神女しんぢよを我われ等ら歌うたひ讚ほめん。

第三歌頌

イルモス 果みを結むすばざる子こなき靈たましひよ、榮さかえたる果みを獲えて、樂たのしみて呼よべ、神かみよ、我われ爾なんぢに緣よりて堅かためられたり、主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなるはなく、義ぎなるはなし。

神かみの力ちからに堅かためらるる光くわう榮えいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは惡あくに强つよき敵てきの害がいを爲なす力ちからを盡ことごとく滅ほろぼして、勝しよう利りの神聖しんせいなる榮えい冠くわんを受うけ給たまへり。

克肖者こくせうしやを敵てきに勝かつ者ものと顯あらはしし主宰しゆさい、成聖者せいせいしやを至し聖せいなる傅ふ膏かうにて聖せいにせしハリストスよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて爾なんぢを歌うたふ者ものを成聖せいせいし光くわう照せうし給たまへ。

我われ等らは衆しゆう預よ言者げんしやと偕ともに、齋ものいみを以もつて輝かゞやき、信しんを以もつて苦くるしみを忍しのびて、惡謀あくぼうの蛇へびを踐ふみし神聖しんせいなる婦をんなの會くわいを歌うたひ讚ほめん。

光榮 洪恩こうおんなるハリストスよ、祈いのる、神聖しんせいなる旨むねを以もつて我われ等らより移うつしし者ものを諸聖人しよせいじんと偕ともに納いれて、爾なんぢの諸聖人しよせいじんの祈き禱たうに因よりて、其その存命ぞんめいの時ときに行おこなひし諸罪しよざいを赦ゆるし給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの聖せいなる產さんに由よりて救すくはれし我われ等らはガウリイルの聲こゑを以もつて忠ちゆう信しんに爾なんぢに呼よぶ、慶よろこべよ、且かつ祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、我われ等ら衆しゆうの爲ために諸罪しよざいの赦ゆるしを求もとめ給たまへ。

又

イルモス 言ことばにて造つくられ、聖神せいしんにて備そなへらるる萬物ばんぶつを無なきより出いだしし至し上じやうなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢの愛あいに我われを固かため給たまへ。

我われを土つちより造つくり、又また土つちに還かへしし不ふ當たうなる我われを更さらに美うるはしく新あらたにせし主しゆよ、致ち命者めいしやの祈き禱たうに因よりて寢ねむりし者ものの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。

洪恩こうおんなる主しゆよ、受難者じゆなんしや・致ち命者めいしやの縲絏なはめ、鞭撻むちうち、創傷きず、及および種種しゆじゆの苦くるしみに因よりて、爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを諸聖人しよせいじんの居處すまひに納いれ給たまへ。

光榮 人ひとを愛あいする主宰しゆさいよ、信しんと爾なんぢに於おける倚賴たのみとを以もつて寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼくを「ゲエンナ」の火ひ及および地ぢ獄ごくの暗くらき居處すまひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは、死しの力ちからを滅ほろぼして、我われ等らに不ふ朽きうを賜たまひし造成主ざうせいしゆの母はゝとして、衆しゆう造物ざうぶつに超こえて聖せいにせられし者ものなり。

第四歌頌

イルモス 潔いさぎよき者ものよ、アウワクムは樹こ蔭かげ繁しげき山やまとして爾なんぢの至し淨じやうなる胎たいを預よ見けんして籲よべり、神かみは南みなみより、聖せいなる者ものは樹こ蔭かげ繁しげき山やまより來きたらん。

睿えい智ちなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは羔こひつじの如ごとく甘あまんじて屠ほふられて、十じふ字架じかの木きの上うへに人類じんるゐの爲ために屠ほふらるるを甘あまんじ給たまひし羔こひつじたる神かみの子この前まへに皆みな羊ひつじの子この如ごとく攜たづさへられたり。

我われ等らは克肖者こくせうしやと偕ともに光くわう榮えいなる司し祭さい諸しよ長ちやう、信者しんじやの爲ために燈ともしびと爲なりし者もの、諸しよ異い端たんと諸慾しよよくの深ふかき幽暗くらやみとを破やぶりて、信しんを以もつて暮くれざる光ひかりに移うつりし者ものを尊たふとまん。

神かみの聲こゑを宣のべし預よ言者げんしやは美うるはしき言ことばを以もつて信者しんじやの靈たましひを照てらし、捧神ほうしんなる女をんな等たちは功勞こうらうの光明くわうみやうと奇き跡せきの光くわう線せんとを以もつて彼かれ等らの心こゝろを輝かゞやかす。

光榮 仁じん慈じなる神かみの言ことばよ、生いのちを終をへし者ものを天てん上じやうの光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なして、彼かれ等らに地ちに在ありて知しると知しらずして行おこなひし諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

生神女讚詞 我われ等らは致ち命者めいしやの光くわう榮えい、成聖者せいせいしやと克肖者こくせうしやとの神聖しんせいなる飾かざり、信者しんじやの固かため、預よ言者げんしやの宣傳つたへなる至いたりて讚さん美びたる主しゆの母はゝを歌うたひ讚ほめん。

又

イルモス 主しゆよ、爾なんぢは强つよき愛あいを我われ等らに顯あらはせり、我われ等らの爲ために爾なんぢの獨生どくせい子しを死しに付わたしたればなり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

慈じ憐れんを以もつて我われ等らの爲ために墓はかに入いりて、神かみとして墓はかを虛むなしくし、致ち命者めいしやを勝しよう利り者しやと顯あらはしし主宰しゆさいよ、爾なんぢの寢ねむりし諸僕しよぼくを安息あんそくの處ところに入いれ給たまへ。

受難者じゆなんしやの勇敢ゆうかんなる功勞こうらう、其その爾なんぢの爲ために忍しのびし創傷きずと百ひやく體たいの切斷せつだんとを悅よろこびて受うけたる主宰しゆさいよ、移うつしし者ものを苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 己おのれの指麾しきにて生命いのちの尺しやく度どを定さだむる主しゆよ、爾なんぢに移うつしし者ものの罪つみの隔へだてを毁こぼちて、彼かれ等らに爾なんぢの終をはりなき生命いのちと不ふ朽きうの光くわう榮えいとを獲えしめ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢ獨ひとり降孕はらみと產さんとを童貞どうていに合あはせて、實じつに母はゝ及および童貞女どうていぢよと現あらはれ給たまへり、死しの力ちからを破やぶりし神かみを生うみたればなり。

第五歌頌

イルモス ハリストス神かみよ、爾なんぢの暮くれざる光ひかりにて我わが謙けん卑ぴの靈たましひを照てらして、爾なんぢを畏おそるる畏おそれに導みちびき給たまへ、爾なんぢの誡いましめは光ひかりなればなり。

主しゆの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らの痛傷いたみと創痍きずとは敵てきに醫いやされぬ創痍きずを負おはせたり、今いま爾なんぢ等らは衆しゆう信者しんじやの創痍きずを醫いやし給たまふ。

我われ等らは克肖者こくせうしやの多た數すうを歌か頌しようし、ハリストスの成聖者せいせいしやを讚さん美びし、其その預よ言者げんしやを讚榮さんえいせん。彼かれ等らは今いま常つねに我われ等らの爲ために祈いのり給たまふ。

我われ等らの爲ために人體じんたいを取とりし神かみを愛あいする光くわう榮えいなる女をんな等たちは義ぎの爲ために苦くるしみを受うけ、齋ものいみを修をさめし者ものは今いま天てんに居をり給たまふ。

光榮 主しゆハリストスよ、地ちより移うつしし爾なんぢの忠ちゆう信しんなる諸僕しよぼくを安樂あんらくの處ところ、生いける者ものの地ち、爾なんぢの光ひかりの輝かゞやく處ところに入いれ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、神かみは爾なんぢより身みを取とりて、今いま爾なんぢを諸天しよてん使しより上うへなる者もの、悉ことごとくの造物ざうぶつに超こゆる者ものと顯あらはし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

又

イルモス 爾なんぢ萬物ばんぶつを造つくりし主しゆ、悟さとり難がたき平安へいあんに、朝あさの禱いのりを奉たてまつる、爾なんぢの誡いましめは光ひかりなるに因よりて、我われに之これを敎をしへ給たまへ。

仁じん慈じなる主しゆよ、我われ等らより移うつりし者ものを、致ち命者めいしやに因よりて、尊たふとき受難者じゆなんしやの祈き禱たうに因よりて、冢ちよう子しの敎けう會くわいに義ぎ人じん等らと偕ともに入いれ給たまへ。

多おほくの罪つみの贖あがなひの爲ために爾なんぢの至し聖せいなる血ちを流ながししハリストス救世主きうせいしゆよ、今いま爾なんぢの致ち命者めいしやの祈き禱たうに由よりて、敬虔けいけんに寢ねむりし者ものを安やすんぜしめ給たまへ。

光榮 言ことばよ、世よを逝さりし者ものの靈たましひを智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの永遠えいゑんの安樂あんらくの處ところに向むかはしめて、諸聖人しよせいじんと偕ともに神聖しんせいなる光ひかりを被かうむらしめ給たまへ。

今も 我われ等らは爾なんぢ圍かこまれぬ言ことば、死し者しやに生いのちを賜たまふ主しゆを言ことばに超こえて胎内たいないに孕はらみし童貞女どうていぢよを宜よろしきに合かなひて崇あがめ讚ほむ。

第六歌頌

イルモス 諸慾しよよくの深處ふかみは我われを沈しづめ、逆ぎやく風ふうの狂暴あれは起おこりて我われを攻せむ。救世主きうせいしゆよ、急いそぎて我われを救すくひ、預よ言者げんしやを猛獸まうじうより救すくひし如ごとく、我われを淪滅ほろびより脫のがれしめ給たまへ。

尊たふとき敎けう會くわいの燈ともしび、羔こひつじ及および牧者ぼくしやハリストスの聖せいにせられし羔こひつじたる至し榮えいなる致ち命者めいしやは聖せいなる歌うたを以もつて讚さん美びせらるべし。

謙遜へりくだりを以もつて神かみを高たかくせし克肖者こくせうしやの會くわいは高たかくせられ、善行ぜんかうを以もつて聖三者せいさんしやを榮えいせし成聖者せいせいしやの大數たいすうは榮えいせられたり。

雄拔をゝしく勇いさみたる聖せいにせられし女をんな等たちの會くわいは神聖しんせいなる奇き跡せきを顯あらはすことと苦くるしみを勇敢ゆうかんに忍しのぶこととを以もつて不ふ法はふなる敵てきに傷きずつけたり。

光榮 ハリストスよ、信しんを以もつて地ちより移うつりし者ものを聖者せいしやの會くわいに合あはせ、信しんなるアウラアムの懷ふところに入いれて、常つねに爾なんぢの至し大だいなる慈じ憐れんを讚榮さんえいせしめ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは致ち命者めいしや、預よ言者げんしや、克肖者こくせうしや、及および悉ことごとくの古こ世せいよりの義ぎ人じん等らの譽ほまれなり。故ゆゑに我われ等ら歡よろこびの聲こゑを以もつて爾なんぢを彼かれ等らと偕ともに崇あがめ讚ほむ。

又

イルモス 主しゆ我わが神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへと、イオナは呼よべり。我われも祈いのりて爾なんぢに呼よぶ、救世主きうせいしゆよ、我わが多おほくの惡あくの深處ふかみより我われを援たすけて、爾なんぢの光ひかりに導みちびき給たまへ。

ハリストスよ、受難者じゆなんしやの祈き禱たうに由よりて、信しんを以もつて寢ねむりし者ものの哀かなしみを喜よろこびに易かへ、樂たのしみを以もつて美うるはしく彼かれ等らに帶おびし、彼かれ等らを導みちびきて爾なんぢの光ひかりに向むかはしめ給たまへ。

ハリストス神かみよ、移うつされし者ものを爾なんぢの慈じ憐れんの多おほきに因よりて列れつ祖その懷ふところ、爾なんぢの顏かんばせの光ひかりの輝かゞやく處ところに安息あんそくせしめて、彼かれ等らの悉ことごとくの罪過ざいくわを顧かへりみる勿なかれ。

光榮 ハリストスよ、此この世よを逝さりて度生いのちの難難かんなんを脫のがれし者ものの上うへに爾なんぢの仁愛じんあいの奇き妙めうなる憐あはれみを顯あらはして、彼かれ等らを歡喜よろこびと平安へいあんとに飽あかしめ給たまへ。

今も 潔いさぎよき神かみの母はゝよ、我われ等らは爾なんぢの至し榮えいなる產さんに由よりて朽きう壞くわいと死しとを免まぬかれたり、蓋けだし爾なんぢは我われ等らの爲ために不ふ朽きうの泉いづみを生うみて、爾なんぢの光ひかりを以もつて全ぜん世せ界かいを照てらし給たまへり。

第七歌頌

イルモス 三人みたりの少者せうしやは爐ゐろりに於おいて聖三者せいさんしやを像かたどりて、火ひの恐嚇おどしを履ふみ、歌うたひて呼よべり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

主しゆの至し榮えいなる受難者じゆなんしやは火ひの中なかに立たちて、天てんより神聖しんせいなる露つゆを受うけ、苦くるしみを以もつて殺ころされて、惡謀あくぼうの敵てきを死し者しやと爲なせり。

神聖しんせいなる成聖者せいせいしやは舟ふねの如ごとくハリストスの敎けう會くわいを導みちびきて、之これを溺おぼらされぬ者ものとして護まもり、眞まことに險惡けんあくなる迷まよひの浪なみを脫のがれしめたり。

眞まことの修齋者しゆさいしやは聖せいにせられし勤勞きんらうを以もつて肉慾にくよくを殺ころして、無む慾よくの老おいざる生命いのちを嗣つぎて歌うたふ、主しゆ我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

光榮 言ことばよ、爾なんぢが移うつしし爾なんぢの信しんなる諸僕しよぼくを審判しんぱんの時ときに定罪ていざいせられし者ものと爲なさずして、爾なんぢの諸聖人しよせいじんの光ひかりの中うちに安息あんそくせしめて、爾なんぢの仁じん慈じを歌うたはしめ給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは實じつに致ち命者めいしや、克肖者こくせうしや、預よ言者げんしや、聖せいなる女をんな、及および悉ことごとくの神聖しんせいなる生いのちを度わたりし司し祭さい諸しよ長ちやうの光くわう榮えいなり。我われ等らは彼かれ等らと偕ともに爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

又

イルモス 昔むかし敬虔けいけんなる三人みたりの少者せうしやをハルデイの焰ほのほに凉すゞしくせし如ごとく、我われ等らをも神性しんせいの明あかるき火ひにて輝かゞやかし給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると呼よべばなり。

萬ばん衆しゆうの生命いのちの原因げんいん及および造成ざうせいの力ちからたる神かみの言ことばよ、致ち命者めいしやに約やくせられし安樂あんらくを移うつされたる爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひに獲えしめ給たまへ。吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

ハリストスよ、朽くつべき身みを顧かへりみざりし光くわう榮えいなる致ち命者めいしやは今いま毅き然ぜんとして爾なんぢに祈いのる、移うつされたる爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

光榮 十じふ字架じかの葦あしを以もつて衆しゆう信者しんじやの爲ために諸罪しよざいの赦ゆるしを書しるしし主しゆよ、今いま爾なんぢに移うつしし靈たましひを此この赦ゆるしに與あづかるを得えしめて、彼かれ等らに樂たのしみて爾なんぢに歌うたはせ給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

今も 己おのれの旨むねに由よりて萬ばん事じを行おこなふ父ちゝの言ことばは神かみとして諸慾しよよくの中うちに葬はうむられたる人ひとの性せいを新あらたにし給たまへり。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの腹はらの果みは崇あがめ讚ほめらる。

第八歌頌

イルモス 至いと高たかきに天てん使等しらより默もださずして讚榮さんえいせらるる神かみを、諸天しよてんの天てんと地ち、山やまと岡をかと深處ふかみ、及および悉ことごとくの人類じんるゐは、歌うたを以もつて造成主ざうせいしゆ及および贖しよく罪主ざいしゆとして崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

主しゆの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは傷きずを受うけ、烈はげしく種種しゆじゆの苦くるしみに付わたされて、眞まことの生命いのちを諱いまざりき、凶きよう惡あくなる迷謬まよひの偶像ぐうざうを拜はいせざりき。

聖せいにせられし受難者じゆなんしや、天てんの神しん゜靈れいの同どう住ぢゆう者しやよ、爾なんぢ等らは燈臺とうだいに置おかれたる燈ともしびの如ごとく尊そん貴きなる諸德しよとくに輝かゞやきて、衆しゆう人じんの靈たましひを照てらし、凡およその幽暗くらやみを拂はらひ給たまへり。

大名たいめいなる預よ言者げんしや及および克肖者こくせうしやの會くわい、聖せいにして尊榮そんえいなる婦をんなの大數たいすうは宜よろしきに合かなひて歌か頌しようせらるべし。彼かれ等らは救世主きうせいしゆ神かみに我われ等らの爲ために祈いのり給たまふ。

光榮 生せい死し者しやを司つかさどり給たまふ救世主きうせいしゆよ、爾なんぢが地ちより移うつしし信者しんじやを聖人せいじん等らと偕ともに爾なんぢの顏かんばせの光ひかりの中うちに入いれて、爾なんぢの慈じ憐れんの多おほきに因よりて彼かれ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

生神女讚詞 至いたりて讚さん美びたる童貞女どうていぢよ、預よ言者げんしやの宣傳つたへ、成聖者せいせいしや、受難者じゆなんしや、及および克肖者こくせうしやの裝飾かざり、聖せいなる女をんなの歡喜よろこびたる者ものは職しよくとして世世よよに歌うたはるべし。

又

イルモス 少者せうしやはワワィロンに於おいて活いける神かみに奉ほう事じせんことに熱ねつ中ちゆうして、樂がく器きを顧かへりみず、焰ほのほの中なかに立たちて、神かみに適かなふ歌うたを謳うたひて云いへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

不死ふしの寶藏はうざう、生命いのちの首かしらたるハリストスよ、爾なんぢは死し者しやの爲ために不ふ朽きうを知しらせて、之これを爾なんぢの致ち命者めいしやに賜たまひ、彼かれ等らに信しんを以もつて敬虔けいけんに爾なんぢに歌うたはしむ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

屬神ぞくしんの睿えい智ちと苦くるしみの忍耐にんたいとを以もつて輝かゞやきし堅けん固ごなる受難者じゆなんしやは移うつされし靈たましひの爲ためにハリストスに赦ゆるしを求もとめて呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

光榮 仁じん慈じなる救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの脅わきを刺さしし戈ほこを以もつて爾なんぢに移うつされし者ものの書券かきつけを破やぶりて之これを滅けし、諸罪しよざいの隔へだてを毁こぼちて彼かれ等らを受うけて、爾なんぢを歌うたはしめ給たまへ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

今も 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ等らは爾なんぢを靈れい智ちなる雲くも、靈たましひの渴かわきに苦くるしめる者ものの爲ために赦免ゆるしの活くわつ水すゐを流ながし、衆しゆう死し者しやに不死ふしを與あたふる者ものと知しりて、信しんを以もつて常つねに呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

次ぎて生神女の歌、「我が靈は主を崇め」。

第九歌頌

イルモス モイセイはシナイ山ざんに於おいて棘いばらの中うちに、爾なんぢを焚やかれずして神性しんせいの火ひを胎内たいないに孕はらみし者ものとして觀み、ダニイルは爾なんぢを截きられざる山やまとして觀み、イサイヤは芽めを萌きざしし杖つゑ、ダワィドの根ねより出いでし者ものなりと呼よべり。

ハリストスの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは我われ等らの爲ために屠ほふられし者ものの前まへに羊ひつじの子この如ごとく攜たづさへられて、天てん使しの神聖しんせいなる品ひん位ゐを歡喜よろこびに滿みてたり。故ゆゑに爾なんぢ等らの祈き禱たうを以もつて衆しゆう人じんを堅かためて、衆しゆうを敵てきの有いう害がいなる誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ。

ハリストスの聖せいにせられし司し祭さい諸しよ長ちやう、神聖しんせいなる光くわう榮えいに與あづかる者ものよ、爾なんぢ等らは生命せいめいの言ことばを有たもちて、燈ともしびの如ごとく信者しんじやの靈たましひを照てらせり。火ひの如ごとく聖神せいしんを受うけたる克肖者こくせうしやよ、爾なんぢ等らは諸慾しよよくを焚やき、偶像ぐうざうの迷まよひを滅ほろぼせり。

我われ等らは聖せい預よ言者げんしやと偕ともに律法りつぱふの前さき及および律法りつぱふの中うちに潔いさぎよき度ど生せいを以もつて輝かゞやきし克肖者こくせうしやの大數たいすうと聖せいなる女をんなの會くわいとを讚ほめ揚あげて呼よばん、主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等ら衆しゆうを救すくひ給たまへ。

光榮 ハリストスよ、爾なんぢの葬はうむり及および復ふく活くわつは衆しゆう人じんの爲ために生命いのちと爲なれり。故ゆゑに我われ等ら勇いさみて爾なんぢに呼よぶ、受うけし所ところの信しんなる爾なんぢの諸僕しよぼくを凡およその選えらばれたる者ものと偕ともに安やすんぜしめて、仁じん慈じなる神かみとして彼かれ等らの悉ことごとくの罪過ざいくわを赦ゆるし給たまへ。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、イアコフは梯かけはしに於おいて實じつに爾なんぢの預よ象しやうを見みし時ときに呼よべり、此この處ところは畏おそるべき哉かなと。爾なんぢは致ち命者めいしやの光くわう榮えい、克肖者こくせうしやの譽ほまれ、諸天しよてん使し及および衆しゆう預よ言者げんしやの飾かざり、信者しんじやの救すくひなり。

又

イルモス 棘いばらと火ひとを以もつてシナイ山ざんに立法者りつぱふしやモイセイの爲ために預よ象しやうせられ、神かみの火ひを焚やかるるなく腹はらに宿やどしし者もの、最いと光くわう明めいなる滅けされぬ燈ともしびたる實まことの生しやう神女しんぢよを尊たふとみて、歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

慈じ憐れんの主しゆよ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じ仁愛じんあいなる神かみとして、今いま爾なんぢに移うつされし者ものを、致ち命者めいしやの祈き禱たうに由よりて、溫柔をんじうなる者ものの地ちに入いれて、彼かれ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ、我われ等らが歌うたを以もつて絕たえず爾なんぢを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

ハリストスよ、爾なんぢが受うけし者ものを諸聖人しよせいじんの居處すまひに、アウラアムの懷ふところに、爾なんぢの義ぎ人じん等らと偕ともに、爾なんぢの顏かんばせの言いひ難がたき神聖しんせいなる光ひかりの輝かゞやく處ところ、實じつに世世よよに存そんする歡喜よろこびの在ある處ところに入いれ給たまへ。

光榮 生命いのちを賜たまふ主しゆよ、爾なんぢの旨むねを以もつて移うつしし爾なんぢの諸僕しよぼくに爾なんぢの福ふくたる生命いのち、永遠えいゑんの福樂ふくらく、眞まことの樂たのしみを獲えしめて、彼かれ等らを茂しげき草くさ場ばに、靜しづかなる水みづに安息あんそくせしめ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは聖せいなる約匱やくひつ及および神かみ立法者りつぱふしやの證しよう詞しの幕まくとして、胎内たいないに爾なんぢの造成主ざうせいしゆ、己おのれの死しを以もつて古いにしへの詛のろひ及および死しの法はふを廢はいせし者ものを受うけ給たまへり。

次ぎて「常に福にして」、聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

「凡そ呼吸ある者」に致命者の讚頌スティヒラ、第三調。

衆しゆう民みん來きたりて、聖せいなる致ち命者めいしやの記き憶おくを尊たふとまん、蓋けだし彼かれ等らは天てん使等しら及および人人ひとびとの爲ために觀玩みものと爲なりて、ハリストスより勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけて、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまふ。

ハリストスの軍ぐん士しは諸しよ王わうと苛虐者くるしめびととを畏おそるる畏おそれを棄すてて、勇敢ゆうかんを以もつて勇いさましくハリストス、萬有ばんいうの主しゆ神かみ、我われ等らの王わうを承うけ認とめたり、今いまは我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまふ。

聖せい天てん使しの軍ぐんは致ち命者めいしやの苦くるしみに驚おどろきたり、死しすべき肉體にくたいを有たもち、苦く難なんを顧かへりみずして、救世主きうせいしゆハリストスの苦くるしみに效ならふ者ものと爲なりたればなり、今いまは我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまふ。

聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは善よき戰たゝかひを戰たゝかひしに由よりて、死しの後のちにも世せ界かいの中うちに光くわう體たいの如ごとく輝かゞやく。故ゆゑに勇敢いさみを有たもちてハリストスに我われ等らの靈たましひを憐あはれまんことを祈いのり給たまへ。

死者の讚頌スティヒラ

人人ひとびとよ、我われ等ら何なん爲すれぞ徒いたづらに忙いそがはしき、我わが走はしる路みちは短みぢかし、生命いのちは烟けむりなり、蒸氣ゆげなり、灰はひと塵ちりなり、僅わづかに現あらはれて速すみやかに亾ほろぶ。故ゆゑに我われ等らはハリストス死しせざる王わうに籲よばん、我われ等らより移うつされし者ものを爾なんぢに、凡およそ樂たのしむ者ものの住居すまひある處ところに安やすんぜしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 爾なんぢは種たねなく聖神せいしんに因よりて孕はらみ給たまへり、故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚榮さんえいして歌うたふ、至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、慶よろこべ。

挿句くづけに死者の讚頌スティヒラ、フェオファンの作。第三調。

獨ひとり大仁だいじん慈じなる主しゆよ、我われ等ら爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかを讚榮さんえいす、此これに因よりて信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものに生命いのち及および樂園らくゑんの樂たのしみは賜たまはりたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、ハリストス神かみよ、我われ等らより移うつされし者ものを爾なんぢに、凡およそ樂たのしむ者ものの住居すまひある處ところに安やすんぜしめ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。

獨ひとり慈じ憐れん仁愛じんあいにして、仁じん慈じの量はかり難がたき淵ふちを有たもち、親みづから造つくりし人ひとの性せいを知しり給たまふハリストス神かみよ、我われ等ら爾なんぢに祈いのる、我われ等らより移うつされし者ものを爾なんぢに、凡およそ樂たのしむ者ものの住居すまひある處ところに安やすんぜしめ給たまへ。

句 彼かれ等らの靈たましひは福ふくに居をらん。

爾なんぢは人ひととして墓はかに寢いね、神かみとして勝かたれぬ力ちからを以もつて墓はかの中うちに寢いぬる者ものを復ふく活くわつせしめて、默もださざる歌うたを爾なんぢに獻さゝげしむ。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、ハリストス神かみよ、我われ等らより移うつされし者ものを爾なんぢに、凡およそ樂たのしむ者ものの住居すまひある處ところに安やすんぜしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら皆みな爾なんぢを麁あらき人ひとの性せいに合あはせられたる神性しんせいの光ひかりを載のする靈れい智ちなる燈臺とうだいとして知しる。爾なんぢの子こ及および神かみに我われ等らより移うつされし者ものを凡およそ樂たのしむ者ものの歡喜よろこびのある處ところに安やすんぜしめんことを祈いのり給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」、聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、發放詞。次に第一時課、幷に發放詞。

 「スボタ」の聖体礼儀に

「スボタ」の眞福詞、第三調。

ハリストスよ、爾なんぢは誡いましめに背そむきし原げん祖そアダムを樂園らくゑんより逐おひ出いだせり。然しかれども爾なんぢ、洪恩こうおんなる主しゆよ、十じふ字架じかに在ありて爾なんぢを承うけ認みとめし盜賊たうぞく、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものを其中そのうちに入いれ給たまへり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

ハリストスの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは火ひの苦くるしみに付わたされて、爾なんぢ等らを凉すゞしくして、肉體にくたいの烈はげしき痛いたみを忍しのばん爲ために堅かたむる天てんの露つゆを獲えたり。故ゆゑに爾なんぢ等らは常つねに我わが靈たましひの凡およその疾やまひを輕かろくし給たまふ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

聖せいにせられし成聖者せいせいしや、光くわう榮えいなる預よ言者げんしや、克肖者こくせうしやの大數たいすう、信しんに由よりて苦くるしみを受うけて敵てきの誘惑いざなひを破やぶりし神聖しんせいなる女をんなの會くわいは天てんの光くわう榮えいを受うけたり。救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて爾なんぢの諸僕しよぼくを宥なだめ給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

イイスス神かみよ、信しんに於おいて我われ等らより移うつしし者ものを爾なんぢの光ひかりの輝かゞやく處ところに、爾なんぢの選えらびたる者ものの殿でんに、永在えいざいの樂たのしみの處ところに入いれて、彼かれ等らの罪過ざいくわを問とふこと勿なかれ、我われ等らが熱心ねつしんに爾なんぢ主宰しゆさい救世主きうせいしゆを讚榮さんえいせん爲ためなり。

光榮 我われ等ら信者しんじやは父ちゝと子こと神聖しんせいなる神しん゜、造つくられざる三者さんしや、三さん位ゐにして惟一ゆゐいちの神性しんせいに於おいて常つねに無む形けいの軍ぐんより忠ちゆう信しんに讚榮さんえいせらるる神かみに伏拜ふくはいす。

今も 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢより光照てらし及および潔淨きよめたる衆しゆう人じんの贖しよく罪主ざいしゆは現あらはれたり。彼かれに熱心ねつしんに祈いのりて、將しやう來らいの畏おそるべき審判しんぱんの時ときに、我われ等ら常つねに忠ちゆう信しんに爾なんぢを歌うたふ者ものを凡およその定罪ていざいより脫のがれしめんことを求もとめ給たまへ。

第三調 終

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