『八調経』第二調

(1 票: 5.0 分の 5)

土曜日(スボタ)

 「スボタ」の小晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に八調經の主日の讚頌スティヒラ三章を歌ふ、其第一は二次。第二調。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

來きたりて、世よの無なき先さきに父ちゝより生うまれし神かみの言ことば、童貞女どうていぢよマリヤより身みを取とりし者ものに伏拜ふくはいせん。蓋けだし彼かれは親みづから望のぞみし如ごとく、十じふ字架じかを忍しのびて、葬はうむりに付わたされたり、死しより復ふく活くわつして、我われ迷まよへる人ひとを救すくひ給たまへり。

ハリストス吾わが救世主きうせいしゆは我われ等らを罪つみする書券かきつけを十じふ字架じかに釘くぎうちて之これを抹けし、死しの權けんを空むなしくし給たまへり。我われ等ら其その三みつ日目かめの復ふく活くわつに伏拜ふくはいす。

我われ等らは天てん使し首しゆと共ともにハリストスの復ふく活くわつを讚ほめ歌うたはん。蓋けだし彼かれは我われ等らの靈たましひの贖しよく罪主ざいしゆ及および救世主きうせいしゆなり、且かつ畏おそるべき光くわう榮えいと勁つよき能力ちからとを以もつて還また來きたりて、其その造つくりし世せ界かいを審判しんぱんせん。

光榮、今も、生神女讚詞、定理歌ドグマティク。第二調。

嗚呼あゝ至し大だいなる奧密あうみつや、我われ奇き蹟せきを見みて、神性しんせいを傳つたふ。蓋けだしエムマヌイルは人ひとを愛あいする主しゆとして天性てんせいの門もんを啓ひらき、神かみとして童貞どうていの鑰かぎを壞やぶらざりき。乃すなはち聞きくに因よりて入いりし如ごとく、斯かく胎内たいないより出いでたり、孕はらまれし如ごとく、斯かく人體じんたいを取とれり、無む欲よくにして入いりて、言いひ難がたく出いでたり。預よ言者げんしやの言いへる如ごとく、此この門もんは閉とざされて、何人なんぴとも此これより入いるを得えず、唯たゞ獨ひとり大仁だいじん慈じなる主しゆイズライリの神かみは入いらん。

次ぎて「穩なる光」。提綱ポロキメン、主しゆは王わうたり、彼かれは威ゐ嚴げんを衣きたり。三次。句、主しゆは能のう力りよくを衣き、又また之これを帶おびにせり。次に「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。司祭聯禱を誦せず、我等直に次の讚頌スティヒラを歌ふ。

挿句くづけに主日の讚頌スティヒラ、第二調。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの復ふく活くわつは全ぜん世せ界かいを照てらせり、爾なんぢは己おのれの造物ざうぶつを召めし給たまへり。全能ぜんのうの主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

又、至聖なる生神女の讚頌スティヒラ、同調。

句 我われ爾なんぢの名なを萬世ばんせいに誌しるさしめん。

凡すべての悲かなしむ者ものの喜よろこび、侵害しんがいせらるる者ものの轉達てんたつ、貧まづしき者ものの養育者やういくしや、遠人たびびとの慰藉なぐさめ、瞽者めしひの杖つゑ、弱よわき者ものの眷顧かへりみ、勞らう苦くする者ものの庇蔭おほひ及および保護まもり、孤こ獨どくの者ものの扶助たすけたる至いたりて潔いさぎよき者もの、至し上じやうの神かみの母はゝよ、祈いのる、務つとめて爾なんぢの諸僕しよぼくに救すくはるるを得えしめ給たまへ。

句 女ぢよよ、之これを聽きき、之これを觀み、爾なんぢの耳みゝを傾かたぶけよ。

我われ不ふ當たうなる者ものは凡およその不ふ法はふを行おこなひ、凡およその罪つみを犯おかして、凡およその定罪ていざいに當あたれり。童貞女どうていぢよよ、我われに痛つう悔くわいの心こゝろを與あたへて、我われを彼處かしこに定罪ていざいせられざる者ものと爲なし給たまへ。蓋けだし我われ爾なんぢを祈き禱者たうしやとして捧さゝげ、爾なんぢを轉達者てんたつしやとして呼よぶ、神かみの聘女よめよ、我われに辱はぢを得えしむる毋なかれ。

句 民みん中ちゆうの富とめる者ものは爾なんぢの顏かんばせを拜をがまん。

潔いさぎよき神かみの聘女よめよ、我われ等らには造物主ざうぶつしゆ及および主宰しゆさいの前まへに於おいて爾なんぢの外ほかに他たの避所かくれがなし。我わが神かみの母はゝよ、愛あいを以もつて爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つく我われ等らを爾なんぢの熱切ねつせつなる轉達てんたつより遠とほざくる勿なかれ、我われ等らを辱はづかしむる勿なかれ。務つとめて爾なんぢの祐助たすけを與あたへて、我われ等らに臨のぞむ怒いかりより救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞、第二調。

少女せうぢよ・神かみの聘女よめよ、爾なんぢに因よりて成なりたる世せ界かいの贖しよく罪ざいの爲ために誰たれか宜よろしきにて爾なんぢを讚揚さんやうし爾なんぢを讚さん美びするを得えん。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よびて云いふ、アダムを神成しんせいし、離はなれたるを合あはせし者ものよ、慶よろこべ、爾なんぢの子こ我わが神かみの輝かゞやける復ふく活くわつにて我わが族やからを照てらしし者ものよ、慶よろこべ。蓋けだし我われ等らハリスティアニンの族やからは斷たえず爾なんぢを讚さん美びす。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に主日の讚詞トロパリ。小聯禱。發放詞。

 「スボタ」の大晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十句を立てて、八調經の主日の讚頌スティヒラ三章、アナトリイの四章、月課經ミネヤの三、或は四、或は六章を歌ふ。若し聖人の祭日ならば、光榮、月課經の、今も、調の第一の生神女讚詞。

主日の讚頌スティヒラ、第二調。

句 我わが靈たましひを獄ひとやより引ひき出いだして、我われに爾なんぢの名なを讚榮さんえいせしめ給たまへ。

來きたりて、世よの無なき先さきに父ちゝより生うまれし神かみの言ことば、童貞女どうていぢよマリヤより身みを取とりし者ものに伏拜ふくはいせん。蓋けだし彼かれは親みづから望のぞみし如ごとく、十じふ字架じかを忍しのびて、葬はうむりに付わたされたり、死しより復ふく活くわつして、我われ迷まよへる人ひとを救すくひ給たまへり。

句 爾なんぢ恩おんを我われに賜たまはん時とき、義ぎ人じんは我われを環めぐらん。

ハリストス吾わが救世主きうせいしゆは我われ等らを罪つみする書券かきつけを十じふ字架じかに釘くぎうちて之これを抹けし、死しの權けんを空むなしくし給たまへり。我われ等ら其その三みつ日目かめの復ふく活くわつに伏拜ふくはいす。

句 主しゆよ、我われ深ふかき處ところより爾なんぢに呼よぶ。主しゆよ、我わが聲こゑを聽きき給たまへ。

我われ等らは天てん使し首しゆと共ともにハリストスの復ふく活くわつを讚ほめ歌うたはん。蓋けだし彼かれは我われ等らの靈たましひの贖しよく罪主ざいしゆ及および救世主きうせいしゆなり、且かつ畏おそるべき光くわう榮えいと勁つよき能力ちからとを以もつて還また來きたりて、其その造つくりし世せ界かいを審判しんぱんせん。

又讚頌スティヒラ、アナトリイの作。同調。

句 願ねがはくは爾なんぢの耳みゝは我わが禱いのりの聲こゑを聽きき納いれん。

天てん使しは爾なんぢ十じふ字架じかに釘ていせられて葬はうむられたる主宰しゆさいを傳つたへて、女をんな等たちに言いへり、來きたりて、主しゆの臥ふしたる處ところを觀みよ、蓋けだし彼かれは言いひし如ごとく復ふく活くわつせり、全能者ぜんのうしやなればなり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ惟一ゆゐいち不死ふしの者ものに伏拜ふくはいす。生命いのちを賜たまふハリストスよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

爾なんぢの十じふ字架じかにて木きに緣よる詛のろひを空むなしくし、爾なんぢの葬はうむりにて死しの權けんを滅ほろぼし、爾なんぢの復ふく活くわつにて人類じんるゐを照てらし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに籲よぶ、恩主おんしゆハリストス吾わが神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

主しゆよ、死しの門もんは畏懼おそれに因よりて爾なんぢの爲ために啓ひらけ、地ぢ獄ごくの門衞かどもりは爾なんぢを見みて懼おそれたり、蓋けだし爾なんぢは銅あかゞねの門もんを破やぶり、鐵くろがねの柱はしらを折くじき、我われ等らを幽闇くらやみと死しの蔭かげより引ひき出いだし、我われ等らの縛なはめを截たち給たまへり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

救すくひの歌うたを歌うたひて、口くちを齋ひとしくして籲よばん、皆みな來きたりて、主しゆの家いへに伏拜ふくはいして曰いはん、木きの上うへに釘ていせられて、死しより復ふく活くわつし、父ちゝの懷ふところに在います主しゆよ、我われ等らの罪つみを淨きよめ給たまへ。

他の讚頌スティヒラ、至聖生神女に捧ぐ、月課經ミネヤの讚頌の無き所に之を歌ふ。アモレイのパワェルの作。第六調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

倚賴たよりなき者ものの堅けん固ごなる憑恃たのみ、罪つみに陷おちいる者ものの拯救すくひたる讚ほめ歌うたはるるマリヤ、潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、我わが此この禱いのりを受うけて、爾なんぢの母はゝたる祈き禱たうを以もつて我われに生しやう涯がい犯おかしし諸罪しよざいの赦ゆるしを獲えしめ給たまへ。女宰ぢよさいよ、爾なんぢの大おほいなる憐あはれみに由よりて、我われを危き難なん及および將しやう來らいの定罪ていざいより救すくひ給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

我わが在世ざいせいの日ひは惡あし、惡あしくして罪惡ざいあくに充みつ、凶きよう惡あくなるサタナ甚はなはだしく我われを擾みだすに因よる。神かみの母はゝよ、爾なんぢ我われを其害そのがいより免まぬかれしめ、至し聖せいなる者ものよ、爾なんぢ我われを其その口くちより脫のがし給たまへ、我われ悉ことごとくの憑恃たのみを爾なんぢに負おはせたればなり。爾なんぢの熱切ねつせつなる祈き禱たうを以もつて我われを救すくひ給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

耻はぢを得えざる轉達者てんたつしやよ、慶よろこべ、至し善ぜんなる生しやう神女しんぢよよ、慶よろこべ、世せ界かいの蠲潔きよめよ、慶よろこべ、悲かなしむ者ものの喜よろこび、颶ぐ風ふうに遭あふ者ものの停泊みなとよ、慶よろこべ、凡およそ危き難なんに在ある者ものの扶ふ助者じよしやよ、慶よろこべ。童貞女どうていぢよ・純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいよ、我われをも悉ことごとくの苦く難なんより護まもり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞。

恩おん寵ちよう來きたりて、法はふ律りつの影かげは去されり。蓋けだし燃もゆる棘いばらの焚やけざりし如ごとく、童貞女どうていぢよは生うみし後のちも永ながく童貞女どうていぢよなり。燄ほのほの柱はしらの代かはりに義ぎの日ひは出いでて光ひかる、モイセイの代かはりに我わが靈たましひの救きう者しやハリストスは現あらはれたり。

次ぎて香爐捧持の聖入。「穩なる光」。提綱ポロキメン及び聯禱。

挿句くづけに主日の讚頌スティヒラ、第二調。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの復ふく活くわつは全ぜん世せ界かいを照てらせり、爾なんぢは己おのれの造物ざうぶつを召めし給たまへり。全能ぜんのうの主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

又讚頌スティヒラ

句 主しゆは王わうたり、彼かれは威ゐ嚴げんを衣きたり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは木きにて木きに緣よる詛のろひを空むなしくし、爾なんぢの葬はうむりにて死しの權けんを滅ほろぼし、爾なんぢの復ふく活くわつにて吾わが族やからを照てらし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、生命いのちを施ほどこすハリストス我わが神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 故ゆゑに世せ界かいは堅けん固ごにして動うごかざらん。

ハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに釘ていせらるる者ものと顯あらはれて、造物ざうぶつの美うるはしきを變易へんえきせり。惟たゞ兵卒へいそつは殘忍ざんにんにして戈ほこを以もつて爾なんぢの脅わきを刺さし、エウレイ人じんは爾なんぢの權けんを知しらずして墓はかを封印ふういんせんことを求もとめたり。慈じ憐れんに由よりて葬はうむりを受うけ、三みつ日目かめに復ふく活くわつせし主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆよ、聖德せいとくは爾なんぢの家いへに屬ぞくして永遠えいゑんに至いたらん。

生命いのちを施ほどこすハリストスよ、爾なんぢは死しに屬ぞくする者ものの爲ために甘あまんじて苦くるしみを受うけて、有能いうのう者しやとして地ぢ獄ごくに降くだり、彼處かしこに爾なんぢの降臨かうりんを待まつ者ものを强つよき者ものの手てより奪うばひて、地ぢ獄ごくに易かへて樂園らくゑんに住すむを賜たまへり。故ゆゑに爾なんぢの三みつ日目かめの復ふく活くわつを讚揚さんやうする我われ等らにも諸罪しよざいの潔淨きよめと大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 嗚呼あゝ新あらたなる奇き跡せき、古いにしへの悉ことごとくの奇き跡せきに勝まさる者ものや、誰たれか夫をつとなき母はゝが萬物ばんぶつを有たもつ主しゆを生うみて、其その手てに抱いだくを知しりたる、此この產さんは神かみの旨むねなり。至いたりて潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢが嬰兒をさなごとして己おのれの手てに抱いだきし主しゆの前まへに母はゝの勇いさみを以もつて、我われ等ら爾なんぢを尊たふとむ者ものの靈たましひを憐あはれみて救すくはんことを常つねに祈いのり給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に、主日の讚詞トロパリ、第二調。

死しせざる生命いのちよ、爾なんぢ死しに降くだりし時とき、神かみの性せいの光ひかりにて地ぢ獄ごくを殺ころせり。死しせし者ものを地ち下したより復ふく活くわつせしめし時とき、天軍てんぐん皆みな呼よびて曰いへり、生命いのちを賜たまふ主しゆハリストス吾わが神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの奧あう義ぎは皆みな智慧ちゑに超こゆ、皆みな至し榮えいなり。貞潔ていけつの封ふうぜられ、童貞どうていの守まもらるるに、爾なんぢは實じつの母はゝと知しられて、眞まことの神かみを生うみ給たまへり。彼かれに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

 「スボタ」の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン。讒誣憂愁患難に遇ふ者も之を歌ふべし。第二調。

第一歌頌

イルモス 全まつたく備そなはれる力ちからは昔むかしファラオンの全軍ぜんぐんを深水ふかみに敷しき、人體じんたいを取とりし言ことば、讚榮さんえいせらるる主しゆは萬よろづの惡あくを致いたす罪つみを滅ほろぼし給たまへり、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

凡およそ憂うれひに在ある者ものに速すみやかに聆きき、悲かなしみに在ある者ものを助たすくる至し善ぜんなる生しやう神女しんぢよ、憂うれふる者ものの歡喜よろこびたる女宰ぢよさいよ、畏おそれずして爾なんぢを歌うたふ者ものに恩おん寵ちようを與あたへ給たまへ。

至いたりて豐ゆたかなる恩おん寵ちようを獲えたる女宰ぢよさい、憂うれふる者ものの歡喜よろこびよ、爾なんぢの毅き然ぜんたる祈き禱たうを以もつて、我われ卑微ひびなる爾なんぢの僕ぼくを諸難しよなんより援たすけ給たまへ。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、祈いのる、爾なんぢに趨はしり附つく我われ等らを見みゆると見みえざる諸敵しよてきより援たすけて、我われ等らに仇あだする者ものの凡およその謀はかりごとを破やぶり給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢに祈いのる、我われより人ひとの辱はづかしめと惡謀者あくぼうしやの讒言ざんげんとを除のぞきて、我われに爾なんぢが養育やういくせし主しゆを熱切ねつせつに讚榮さんえいせしめ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 木きを以もつて罪つみを殺ころしし主しゆよ、我われ等らを爾なんぢの中うちに堅かためて、爾なんぢを畏おそるる畏おそれを我われ等ら、爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろに植うゑ給たまへ。

讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、諸敵しよてきの空むなしき惡謀あくぼうを破やぶりて、爾なんぢの盡つきざる祈き禱たうを以もつて、爾なんぢを讚ほめ歌うたふ我われ等らを救すくひ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの慈じ憐れんなる眼めを以もつて我われを顧かへりみて、見みゆると見みえざる諸敵しよてきの凡およその惡謀あくばうより援たすけて、彼かれ等らの眼めの眸子ひとみを昧くらまし給たまへ。

光榮 童貞女どうていぢよよ、常つねに我われ等らを滅ほろぼさんと謀はかる諸敵しよてきの惡あしき攻擊こうげき、火ひの如ごとく焚やく者ものを、爾なんぢの祈き禱たうの露つゆにて消けし給たまへ。

今も 滅きえざる燈ともしび、常つねに輝かゞやく曉あかつき、光くわう榮えいの日ひハリストスを生うみし者ものよ、憂愁うれひの夜よに圍かこまるる我われを爾なんぢの祈き禱たうにて照てらし給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢの聲こゑ、爾なんぢが野のに呼よぶ聲こゑと名なづけし者ものを聞きけり、爾なんぢが多た水すゐの上うへに轟とゞろきて、爾なんぢの子この事ことを證しようせし時とき、彼かれは現あらはれし聖神せいしんに滿みてられて籲よべり、爾なんぢはハリストス、神かみの智慧ちゑと能力ちからなり。

神かみの母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを救すくひの橋はし、眠ねむらざる祈き禱たう、堅けん固ごなる保護ほごとして祈いのる、慈じ憐れんを以もつて我われ等らの勝たへ難がたき悲哀かなしみ、諸しよ病びやう、諸難しよなん、諸慾しよよくを見みて、之これを善ぜんに變へんじて、速すみやかに喜悅よろこびを與あたへ給たまへ。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、我われ等らは患くわん難なんに在ありて爾なんぢの保護ほごに與あづからざるなし。故ゆゑに今いまも手てを舒のべて、甚はなはだしく荒あらさるる我われ等らを速すみやかに援たすけ給たまへ。神かみの母はゝよ、我われ等らの悲哀かなしみに慈じ憐れんを垂たれて、速すみやかに喜悅よろこびを與あたへ給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、不ふ法はふの者ものは爾なんぢを賴たのみとせずして、傲慢がうまんの舌した、人ひとの舌した、常つねに嫉妬ねたみを流ながし、不義ふぎに隣となりの血ちを灑そゝがんと吼ほゆる者ものを賴たのみと爲なす。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢ彼かれ等らの頷あぎを壞やぶり給たまへ。

今も 女宰ぢよさいよ、高たかぶる仇敵きうてきの昂あげたる首くび、其その謀はかりごと、其その惡あしき風習ならはし、其その每日まいにち我われに向むかひて惡あくを謀はかる心こゝろを低ひくくし給たまへ。神かみの母はゝよ、爾なんぢを呼よぶ者ものに能のう力りよくと勝しよう利りとを與あたへて、速すみやかに彼かれ等らを喜よろこばしめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス イサイヤに爇炭やけずみとして現あらはれし日ひは童貞女どうていぢよの腹はらより黑暗くらやみに迷まよひし者ものに輝かゞやきて、神かみを知しる知ち識しきの光くわう照せうを賜たまふ。

眞まことなる祈き禱者たうしや、ハリスティアニン等らの倚賴たのみ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我われ等ら熱心ねつしんに爾なんぢを呼よびて爾なんぢに祈いのる者ものの祈き禱たうを納いれ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ等ら地ちに生うまるる者ものは爾なんぢを生命いのちの泉いづみ、不死ふしの水みづを流ながす者ものと知しりて、爾なんぢを讚さん美びす。

光榮 凶きよう惡あくなる敵てきは我われ等らを攻せめて、舌したを以もつて劍つるぎの如ごとくに我われ等らを滅ほろぼさんと欲ほつす。神かみの母はゝよ、爾なんぢの能力ちからにて我われ等らを護まもり給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、孰たれか爾なんぢの有いう力りよくなる保護ほごの多おほきを數かぞへん、故ゆゑに我われ等ら患くわん難なんに在ある者ものを速すみやかに援たすけ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

貞潔ていけつの者ものの守しゆ護ご者しやたる神かみの聘女よめよ、今いま爾なんぢを呼よぶ者ものに現あらはれて、之これを凡およその患くわん難なん危き害がいより脫のがれしめ給たまへ。

祝しゆく福ふくせられたる至し淨じやうの者ものよ、敵てきの惡あく事じを毁こぼち、不義ふぎなる讒言ざんげんを禁とゞめて、罪つみなき者ものを憂うれひより救すくひ給たまへ。

光榮 ハリストス神かみの母はゝよ、我われ等らは甚はなはだしき罪惡ざいあくに圍かこまれ、侵擊しんげきする諸難しよなんに溺おぼらされて、爾なんぢの神聖しんせいなる帲幪おほひの下したに趨はしり附つく。

今も 神かみの聘女よめよ、爾なんぢは夫をつとに與あづからずして主しゆを生うみて、產さんの後のちにも亦また童貞女どうていぢよと顯あらはれたり。嗚呼あゝ爾なんぢの中うちに行おこなはれたる至し榮えいなる奇き跡せきや。

次に主憐めよ。三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第二調。

熱心ねつしんなる祈き禱者たうしや、破やぶられざる城しろ、慈じ憐れんの泉いづみ、世せ界かいの避所かくれがよ、我われ等ら熱切ねつせつに爾なんぢに呼よぶ、女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよ、獨ひとり速すみやかに轉達てんたつする者ものよ、急いそぎて我われ等らを患くわん難なんより脫のがれしめ給たまへ。

第七歌頌

イルモス ハリストスよ、爾なんぢは至し榮えいにして童貞女どうていぢよより生うまるるを明あきらかに預よ象しやうせんと欲ほつして、少者せうしやを爐ゐろりの中うちに焚やかるるなく護まもり給たまへり。彼かれ等らは爾なんぢを歌か頌しようして歌うたへり、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、嗚呼あゝ爾なんぢの慈じ憐れんや、蓋けだし爾なんぢは危き難なん攻擊こうげきの中うちに爾なんぢを呼よぶ者ものの無む量りやうなる憂愁うれひ及および葘害わざはひを解とき給たまふ。祝しゆく福ふくせられたる者ものよ、故ゆゑに今いまも爾なんぢを讚ほめ揚あぐる者ものを援たすけ給たまへ。

爾なんぢの速すみやかなる保護ほごを顯あらはし、爾なんぢが神かみの母はゝとして能よくするを顯あらはし給たまへ、我われ等ら淚なみだを流ながし、俯ふ伏ふくして、心こゝろより爾なんぢに呼よぶ、速すみやかに爾なんぢの諸僕しよぼくの憂愁うれひを慰なぐさめ、疾病やまひを醫いやし給たまへ。

光榮 人人ひとびとの口くちは猛たけき獅しゝの如ごとく啓ひらかれて、墓はかの如ごとく我われを呑のまんと欲ほつす。祝しゆく福ふくせられたる生しやう神女しんぢよ、恃賴たのみなき者ものの恃賴たのみよ、爾なんぢ現あらはれて彼かれ等らの力ちからを破やぶり給たまへ。

今も 諸敵しよてきは見みて耻はづべし、我われ等らを防ふせぎ護まもる爾なんぢの力ちからを知しるべし、祝しゆく福ふくせられたる生しやう神女しんぢよ、恃賴たのみなき者ものの恃賴たのみよ、彼かれ等らを地ぢ獄ごくの淵ふちに墜おとし給たまへ。

第八歌頌

イルモス 昔むかしワワィロンの火ひの爐ゐろりは神かみの命めいによりて其その勢いきほひを分わかち、ハルデイを焦こがして、信者しんじやを凉すゞしくせり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよと歌うたへばなり。

我われ等らの避所かくれが、世せ界かいの歡喜よろこびなる神かみの母はゝよ、急いそぎて慈じ憐れんを垂たれ、速すみやかに爾なんぢの恩おん寵ちようを我われ等ら侵害しんがいせらるる者ものに與あたへ、至し善ぜんの者ものよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを護まもり給たまへ。

不ふ虔者けんしやの會くわいは我われ等らに向むかひて惡あしき謀はかりごとを設まうけたり、昔むかしのアヒトフェルの如ごとし。唯たゞ我われ等ら呼よぶ、生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて之これを破やぶりて、彼かれ等らの力ちからを仆たふし給たまへ。

光榮 女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、凡およその憂うれひ、種種しゆじゆの病やまひ、甚はなはだしき禍わざはひの中うちに在ありて、心こゝろより僞いつはりなく爾なんぢを呼よぶ者ものに速すみやかに聽ききて、恒つねに爾なんぢの祈き禱たうを以もつて彼かれ等らを助たすけ給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの名なの地ち上じやうに讚榮さんえいせられん爲ために、爾なんぢより輝かゞやきし主しゆは爾なんぢを以もつて有能いうのうなる恃賴たのみ及および守護まもりとして罪人ざいにん等らに賜たまへり、蓋けだし爾なんぢに因よりて凡およそ呼吸いきある者ものは神かみに趨はしり附つく。

第九歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの位くらゐに合かなひて能よく爾なんぢを讚さん美びする舌したなし、天てん上じやうの智慧ちゑも如何いかに爾なんぢを歌か頌しようするを知しらず。唯たゞ爾なんぢ、仁じん慈じの者ものとして、我われ等らの信しんを納いれ給たまへ、我われ等らの熱切ねつせつなる愛あいを知しればなり、蓋けだし爾なんぢはハリスティアニン等らの轉達てんたつなり、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

凶きよう惡あくの事ことを謀はかる凡およその舌したは閉とざさるべし、虛僞いつはりの口くち、驕誇ほこりと仇あだする媢嫉ねたみとを以もつて不義ふぎにして義ぎ者しやに不ふ法はふを歸きする口くちは默もだすべし、生しやう神女しんぢよとハリストスの諸聖人しよせいじんとの祈き禱たうに因よりてなり。

我われ等ら病やまひを負おひ憂うれひを懷いだく者ものは皆みな祈き禱たうに勇いさみある潔いさぎよき生しやう神女しんぢよを賴たのみて呼よぶ、潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、恒つねに速すみやかに爾なんぢの諸僕しよぼくを其その負おふ所ところの諸しよ病びやうより援たすけ給たまへ、我われ等らには神かみに亞つぎて爾なんぢの外ほかに他たの保護ほご者しやなければなり。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは失望しつばうせし者ものの大おほいなる避所かくれが、颶ぐ風ふうに遭あふ者ものの穩おだやかなる停泊みなとなり。故ゆゑに我われ等らも爾なんぢに趨はしり附つきて呼よぶ、眞まことの生命いのちの母はゝよ、願ねがはくは我われ等ら耻はぢを得えざらん、願ねがはくは感謝かんしやして熱心ねつしんに爾なんぢを崇あがめ讚ほめん。

今も 至し淨じやうなる少女せうぢよよ、神聖しんせいなる歌うたを納いれて、爾なんぢを賴たのむ者ものに恩おん寵ちようを報むくい、常つねに諸しよ敎けう會くわいに平安へいあん、我わが皇くわう帝ていに勝しよう利りを降くださんことを求もとめ給たまへ、凡およそのハリスティアニンの舌したが爾なんぢを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

次ぎて「常に福にして」。其他常例の如し、幷に發放詞。

日曜日(主日)

 主日の朝、夜半課

聖三者の規程カノン。ミトロファンの作、其冠詞は、神元の三位の光を歌ふ。第二調。

第一歌頌

イルモス 全まつたく備そなはれる力ちからは昔むかしファラオンの全軍ぜんぐんを深水ふかみに敷しき、人體じんたいを取とりし言ことば、讚榮さんえいせらるる主しゆは萬よろづの惡あくを致いたす罪つみを滅ほろぼし給たまへり、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

我われ等ら歌うたを以もつて三さん位ゐにして一いち元げんなる神性しんせいを歌か頌しようして言いはん、慈じ憐れんの汲くみ盡つくされぬ實在じつざいの淵ふちを有たもつ神かみよ、爾なんぢに伏拜ふくはいする者ものを護まもりて救すくひ給たまへ、人ひとを慈いつくしむ主しゆなればなり。

泉いづみ及および根ねたる父ちゝ、緣由ゆゑんの者ものとして、爾なんぢの子こと聖神せいしんとの中うちに居をる神かみよ、一體いつたいの神性しんせいの三日さんじつの光ひかりを我わが心こゝろに注そゝぎて、神しん爲ゐの光くわう照せうに與あづかるを以もつて我われを照てらし給たまへ。

光榮 三さん光くわうなる神元しんげんの惟一者ゆゐいちしやよ、爾なんぢの輝かゞやける光くわう線せんを注そゝぐを以もつて、我わが諸罪しよざいと諸慾しよよくとの黑暗くらやみを散さんじて、我われを爾なんぢの近ちかづき難がたき光くわう榮えいの宮みや及および潔いさぎよき幕まくと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの胎たいの内うちに人じん性せいを取とりし神かみ言ことばは、其その仁愛じんあいを以もつて、我わが性せいの古いにしへの流ながれ、甚はなはだしく濁にごりて穢けがれたる者ものを潔きよめて之これを照てらし、我われ等らに三さん光くわうなる神元しんげんの奧あう義ぎを敎をしへ給たまへり。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢ我われを信しんの石いしに堅かたく立たて、我わが口くちを啓ひらきて我わが敵てきに對むかはしめ給たまへり、蓋けだし我わが神しん゜は樂たのしみて歌うたへり、吾わが神かみと侔ひとしく聖せいなるはなく、主しゆよ、爾なんぢの外ほかに義ぎなるはなし。

我われ同尊どうそんなる神元しんげん、一性いつせいなる三さん位ゐを讚榮さんえいす、蓋けだし生命いのちより生命いのちは生しやうじたれども、爾なんぢ我われ等らの神かみは惟一ゆゐいちなり。主しゆよ、爾なんぢの外ほかに聖せいなるはなし。

聖三者せいさんしや、分わかれざる一いち元げんよ、爾なんぢは天てんの無む形けいなる品ひん位ゐを爾なんぢの美び善ぜんの鏡かゞみとして造つくりて、斷たえず爾なんぢを歌うたはしむ。求もとむ、今いま塵ちりに屬ぞくする我わが口くちの讚さん美びをも納いれ給たまへ。

光榮 三日さんじつの惟一者ゆゐいちしやよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの心こゝろと意おもひとを信しんの石いしに堅かたく立たてて、爾なんぢの愛あいの淵ふちを以もつて之これを弘ひろめ給たまへ、蓋けだし爾なんぢは我われ等らの神かみなり、願ねがはくは我われ等ら爾なんぢを賴たのみて耻はぢを受うけざらん。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、先さきに凡およその造物ざうぶつに存在そんざいを賜たまひし主しゆは無む量りやうの仁じん慈じに因よりて爾なんぢの胎内たいないに存在そんざいを受うけ、且かつ惟一ゆゐいちの神性しんせいと權能けんのうとの三日さんじつの光ひかりを衆しゆうに輝かゞやかし給たまへり。

坐誦讚詞セダレン、第二調。

慈じ憐れんなる主しゆよ、爾なんぢは始はじめにアダムを造つくりし時とき、爾なんぢの實じつ性せいの言ことばに呼よべり、我われ等らの肖せうに循したがひて造つくらんと、造成者ざうせいしや聖神せいしんも偕ともに在いませり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、造物主ざうぶつしゆ我わが神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、神かみは我われ等らに臨のぞまんと定さだめし時とき、爾なんぢの至いたりて潔いさぎよき胎内たいないに入いり、爾なんぢに依よりて人ひとの合成がふせいを救すくひ、衆しゆうに天國てんこくを賜たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、女宰ぢよさい・潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、慶よろこべ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、爾なんぢは我われ迷まよへる者ものを尋たづねて、我われにまで至いたればなり。故ゆゑに慈じ憐れん深ふかき主しゆよ、我われに於おける爾なんぢの大おほいなる寬くわん容ようを讚榮さんえいす。

惟一者ゆゐいちしや、無む原げんなる三者さんしやよ、無む形けいなる天てん使しの品ひん位ゐも爾なんぢを悟さとる能あたはず、然しかれども我われ等ら塵ちりに屬ぞくする舌したを以もつて爾なんぢの實在じつざいの仁じん慈じを歌か頌しようし、信しんを以もつて之これを讚榮さんえいす。

人ひとの性せいを造つくりし全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは見みざる所ところなき主しゆとして今いま我われの一切いつさいの不ふ能のうを見みる、故ゆゑに爾なんぢの僕ぼくを憐あはれみて、復また善ぜん良りやうなる生命いのちに上のぼせ給たまへ。

光榮 我われ等らは本原ほんげんなる惟一者ゆゐいちしやの混こんぜざる三さん位ゐを讚ほめ歌うたひて、位くらゐを分わかち、其その意旨いし、其その光くわう榮えい、其その神性しんせいに於おいて之これを合一がふいつにして、別わかれざる者ものと爲なす。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ永貞えいてい童女どうぢよよ、造成主ざうせいしゆは古こ世せいより獨ひとり爾なんぢを明あきらかに無む玷てん純じゆん潔けつなる宮みやと認みとめて、之これに入いり、人ひとを愛あいする主しゆとして人じん性せいの形かたちを受うけ給たまへり。

第五歌頌

イルモス 幽闇くらやみに居をる者ものの光くわう照せう、失望しつばうする者ものの救きう贖しよくたるハリストス我わが救主きうしゆよ、我われ爾なんぢ平安へいあんの王わうに朝あさの祈禱いのりを奉たてまつる、爾なんぢの光ひかりを以もつて我われを照てらし給たまへ、我われ爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

平安へいあんと生せい活くわつとを與あたふる爾なんぢの攝せつ理りの光くわう線せんを一切いつさいの造物ざうぶつに注そゝぐ平安へいあんの王わうよ、我われを爾なんぢの平安へいあんに護まもり給たまへ、爾なんぢは萬有ばんいうの生命いのち及および平安へいあんなればなり。

父ちゝの言ことばよ、爾なんぢは棘いばらの中うちに火ひの形かたちを以もつてモイセイに現あらはれて、天てん使しと名なづけられし時とき、豫あらかじめ爾なんぢが我われ等らに降臨かうりんせんことを示しめせり。此この降臨かうりんに由よりて爾なんぢは衆しゆうに明あきらかに惟一ゆゐいちの神元しんげんの三さん位ゐなる權柄けんぺいを顯あらはし給たまへり。

光榮 神性しんせいに屬ぞくする同どう永在えいざいの光くわう榮えいを有たもつ一いち元げんなる聖三者せいさんしやよ、信しんを以もつて正たゞしく爾なんぢを讚ほめ歌うたふ者ものに爾なんぢの無む原げんにして惟一ゆゐいちなる三日さんじつの光ひかりの光くわう榮えいを見みるを得えしめ給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよ母はゝよ、實じつ性せいの神かみ言ことば、萬世ばんせいを保たもつ主しゆは言いひ難がたく爾なんぢの胎内たいないに保たもたれたり、人人ひとびとを惟一ゆゐいちの權能けんのうに召めして合一がふいつならしめん爲ためなり。

第六歌頌

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

慈じ憐れんを旨むねとする三日さんじつの神かみよ、爾なんぢを信しんずる者ものを憐あはれみて、爾なんぢの諸僕しよぼくを諸罪しよざい、諸慾しよよく、諸難しよなんより脫のがれしめ給たまへ。二次。

光榮 仁じん慈じの言いひ難がたき淵ふちに因よりて、爾なんぢが三さん光くわうの神性しんせいの量はかり難がたき光くわう照せうを以もつて我われを照てらし給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、至し上じやう者しやは言いひ難がたく爾なんぢに藉よりて全まつたき人ひとを衣きて人ひとと爲なりて、三日さんじつの光ひかりを以もつて我われを輝かゞやかし給たまへり。

坐誦讚詞セダレン、第二調。

憐あはれみの淵ふちを有たもつ慈じ憐れんの主しゆ、無む原げんなる三さん位ゐの惟一者ゆゐいちしやよ、我われ等らを納いれて、爾なんぢを讚榮さんえいする人人ひとびとを顧かへりみ、爾なんぢに祈いのる者ものの歌うたを受うけ給たまへ、蓋けだし我われ等ら爾なんぢ萬有ばんいうの神かみを賴たのみて、罪過ざいくわの赦ゆるしを賜たまはんことを求もとむ。

光榮、今も、生神女讚詞 慈じ憐れんの泉いづみを生うみし生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは仁愛じんあい仁じん慈じなる者ものなり、蓋けだし爾なんぢは獨ひとり信者しんじやの保護まもり、爾なんぢは憂うれふる者ものの慰藉なぐさめなり。故ゆゑに今いま我われ等ら皆みな爾なんぢの助たすけを恃たのみて、信しんを以もつて俯ふ伏ふくして、罪過ざいくわの釋とかれんことを求もとむ。

第七歌頌

イルモス 黃金こがねの偶像ぐうざうがデイルの野のに奉ほう事じせられし時とき、爾なんぢの三人みたりの少者せうしやは神かみに逆さかふ命めいを顧かへりみずして、火ひの中なかに投なげられ、凉すゞしくせられて歌うたへり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

獨ひとり變易へんえきなき三さん位ゐの主しゆよ、爾なんぢは天てん使しの軍ぐんを立たてて、斷たえず爾なんぢを讚榮さんえいせしむ。求もとむ、我わが心こゝろをも常つねに熱愛ねつあいを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいし、敬つゝしみて歌か頌しようする者ものと爲なし給たまへ。二次。

光榮 一いち元げんなる三日さんじつの神かみよ、無む形けいの者ものの品ひん位ゐは爾なんぢの光くわう線せんに照てらされて、第だい二にの光ひかりと爲なる。求もとむ、光ひかりを施ほどこす三さん光くわう者しやよ、我われをも照てらして、爾なんぢの光ひかりに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 言いひ難がたく人ひとを愛あいするに因よりて童貞女どうていぢよの胎内たいないに人ひとと爲なり、人ひとを神成しんせいして、父ちゝと偕ともに光くわう榮えいの寶はう座ざに坐ざする主しゆよ、我われ等ら爾なんぢを愛あいする者ものを擧あげて、天てんに向むかはしむることを遺わするる勿なかれ。

第八歌頌

イルモス 三重みへに福ふくたる少者せうしやは金こがねの像ざうを顧かへりみずして、變易かはりなき活いける神かみの像かたちを見みて、焰ほのほの中うちに歌うたへり、造ざうを受うけし萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

近ちかづき難がたき三者さんしや、同どう永在えいざい同どう無む原げんなる神元しんげん、萬ばん事じに於おいて變易かはりなき神かみ、萬有ばんいうの主しゆよ、諸敵しよてきの凡およその惡謀あくぼうとデモンの攻擊こうげきとを空むなしくして、常つねに我われを害がいなく守まもり給たまへ。二次。

光榮 睿えい智ちと全能ぜんのうとを以もつて世せ界かいを合成がふせいして、之これを整齋せいせい全ぜん備びなる秩序ちつじよに守まもる形かたどり難がたき三日さんじつの一いち元げんよ、我わが心こゝろに入いりて、我われに天てん使しの品ひん位ゐと偕ともに萬世ばんせい默もださずして爾なんぢを歌か頌しよう讚榮さんえいせしめ給たまへ。

今も 父ちゝの睿えい智ち、測はかり難がたく言いひ難がたき神かみの言ことばよ、爾なんぢは變易へんえきなき爾なんぢの性せいを易かへずして、慈じ憐れんに因よりて人ひとの性せいを受うけて、衆しゆうに萬世ばんせいの宰つかさたる惟一ゆゐいちの三者さんしやを尊たふとまんことを敎をしへ給たまへり。

第九歌頌

イルモス 日ひより前さきに光ひかり輝かゞやきし神かみ、肉體にくたいにて我われ等らに臨のぞみし者ものを、貞潔ていけつの腹はらより言いひ難がたく生うみし讚さん美びたる至淨いときよき生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

無む原げんの光ひかりより同どう無む原げんの光ひかりなる子こは輝かゞやき、又また同どう性せいの光ひかりなる聖神せいしんは出いで給たまへり、我われ等らは神かみに合かなふ言いひ難がたき不ふ朽きうの產さん、又また言いひ難がたき出しゆつを信しんず。

三日さんじつの神性しんせいよ、爾なんぢの三さん光くわうの光明くわうみやうを爾なんぢに歌か頌しようする者ものの心こゝろに輝かゞやかして、彼かれ等らに一切いつさいを悟さとる智慧ちゑを啓ひらき、彼かれ等らに爾なんぢの善ぜんにして純じゆん全ぜんなる旨むねを行おこなひて、爾なんぢを讚さん美び讚榮さんえいするを賜たまへ。

光榮 神かみとして性せいに限かぎりなき聖三者せいさんしやよ、爾なんぢは慈じ憐れんの量はかり難がたき淵ふちを有たもちて、嘗かつて我われ等らに慈じ憐れんを施ほどこし給たまへり。祈いのる、今いまも爾なんぢの諸僕しよぼくに慈じ憐れんを垂たれて、之これを罪過ざいくわと患くわん難なんと危き害がいより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 三さん位ゐに於おいて歌か頌しようせらるる我わが神かみ、惟一ゆゐいちの神かみ、惟一ゆゐいちの全能者ぜんのうしやよ、我われを凡およその誘惑いうわく及および迫害はくがいより救すくひ、生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに由よりて爾なんぢの牧群ぼくぐんを守まもり給たまへ。

次にグリゴリイ・シナイトの聖三讚歌、「爾神言を讚榮するは」、及び其他夜半課の式。本書の末に載す。

 主日の早課

 「主は神なり」に讚詞トロパリ、「死せざる生命よ」。光榮、今も、「生神女よ、爾の奧義は」。

第一の誦文の後に主日の坐誦讚詞セダレン、第二調。

尊たふときイオシフは爾なんぢの潔いさぎよき身みを木きより下おろし、淨きよき布ぬのに裹つゝみ、香料かうれうにて覆おほひ、新あらたなる墓はかに藏をさめたり。然しかれども主しゆよ、爾なんぢは三みつ日目かめに復ふく活くわつして、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまへり。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる毋なかれ。

天てん使しは香料かうれうを攜たづさふる女をんなに墓はかの側かたはらに現あらはれて呼よべり、香料かうれうは死し者しやに適かなふ、ハリストスは朽きう壞くわいに與あづからざる者ものなり、乃すなはち籲よべ、主しゆは復ふく活くわつして、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまへり。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは至いたりて讚さん美びたる者ものなり、我われ等ら爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし爾なんぢの子この十じふ字架じかにて地ぢ獄ごくは滅ほろぼされ、死しは殺ころされ、我われ等ら殺ころされし者ものは興おきて生命いのちを得え、復また古いにしへの樂たのしみなる樂園らくゑんを受うけたり。故ゆゑに我われ等らハリストス吾わが神かみに感謝かんしやして、其その權能けんのうありて獨ひとり大仁だいじん慈じなるを讚榮さんえいす。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第二調。

墓はかの石いしに封印ふういんするを禁きんぜずして、爾なんぢは復ふく活くわつして、信しんの石いしを衆しゆうに賜たまへり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き跡せきを傳つたへん。

爾なんぢの門もん徒との會くわいは攜香女けいかうぢよと偕ともに同心どうしんに喜よろこぶ。我われ等らも彼かれ等らと偕ともに共きよう與よの祭まつりを祝いはひ、爾なんぢの復ふく活くわつを讚榮さんえい尊敬そんけいして爾なんぢに呼よぶ、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの民たみに大おほいなる憐あはれみを垂たれ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは至いたりて讚さん美びたる者ものなり、蓋けだし爾なんぢより身みを取とりし主しゆは地ぢ獄ごくを虜とりこにし、アダムを喚よび起おこし、詛のろひを破やぶり、エワを赦ゆるし、死しを滅ほろぼし、我われ等らを生いかせり。故ゆゑに我われ等ら歌うたひて呼よぶ、斯かく行おこなひ給たまひしハリストス神かみは崇あがめ讚ほめらる、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

「ネポロチニ」の後に應答歌イパコイ、第二調。

ハリストス神かみよ、苦難くるしみの後のち、女をんな等たち墓はかに往ゆきて、爾なんぢの身みに香料かうれうを傅ぬらんとせしに、天てん使等しらを墓はかの中うちに見みて驚おどろけり、蓋けだし彼かれ等らの言いふを聽きけり、主しゆは復ふく活くわつして、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまへり。

品第詞ステペンナ、第二調。第一倡和詞アンティフォン。每句復唱す。

救世主きうせいしゆよ、我わが心こゝろの目めを天てんに爾なんぢに擧あぐ、爾なんぢの光くわう照せうにて我われを救すくひ給たまへ。

嗚呼あゝ吾わがハリストスよ、時とき每ごとに多おほく爾なんぢに罪つみを犯おかせる我われ等らを憐あはれみて、終をはりの前まへに爾なんぢに痛つう悔くわいする法はふを與あたへ給たまへ。

光榮 聖神せいしんには宰さい制せいし、聖せいを施ほどこし、造物ざうぶつを活くわつ動どうせしむること適かなふ、父ちゝ及および子こと一性いつせいの神かみなればなり。

今も、同上。

第二倡和詞

若もし主しゆ我われ等らの中うちにあらずば、誰たれか敵てき又また殺人者ひとごろしより全まつたうし護まもらるるに堪たへん。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの僕ぼくを彼かれ等らの齒はに付わたす勿なかれ、蓋けだし我わが敵てきは獅しゝの如ごとく我われに向むかひ進すゝむ。

光榮 聖神せいしんには生命いのちの泉いづみ及および尊榮そんえいは屬ぞくす、蓋けだし神かみとして、其その力ちからを以もつて、一切いつさいの造物ざうぶつを父ちゝの中うちに、子こに因よりて守まもる。

今も、同上。

第三倡和詞

主しゆを賴たのむ者ものは聖山せいざんに似にたり、敢あへて敵てきの攻擊こうげきに因よりて動うごかざらん。

敬虔けいけんに生いのちを送おくる者ものは己おのれの手てを不ふ法はふに伸のぶべからず、蓋けだしハリストスは其その嗣し業げふの爲ために杖つゑを放はなたず。

光榮 聖神せいしんにて一切いつさいの智慧ちゑは涌わき出いださる、是これより使徒しとは恩おん寵ちようを斟くみ、致ち命者めいしやは苦くるしみに因よりて榮えい冠くわんを冠かうむり、預よ言者げんしやは見みる。

今も、同上。

提綱ポロキメン、第二調。

主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢが定さだめし審判しんぱんを行おこなひ給たまへ、萬民ばんみん爾なんぢを環めぐらん。

句 主しゆ我わが神かみよ、我われ爾なんぢを賴たのむ、我われを救すくひ給たまへ。

「凡そ呼吸ある者は」。主日の早課福音經。

「ハリストスの復活を見て」。第五十聖詠。其他常例の如し。

主日の規程カノン、第二調

第一歌頌

イルモス 全まつたく備そなはれる力ちからは昔むかしファラオンの全軍ぜんぐんを深水ふかみに敷しき、人體じんたいを取とりし言ことば、讚榮さんえいせらるる主しゆは萬よろづの惡あくを致いたす罪つみを滅ほろぼし給たまへり、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

附唱 主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの聖せいなる復ふく活くわつに歸きす。

至し善ぜんなる主しゆよ、世よの君きみ、我われ等らが爾なんぢの誡いましめに背そむきて服ふく從じゆうせし者ものは爾なんぢの十じふ字架じかにて定罪ていざいせられたり、蓋けだし死しに屬ぞくする者ものと爲なして爾なんぢに觸ふれて、爾なんぢの權能けんのうに由よりて權けんを失うしなひ、弱よわき者ものと顯あらはれたり。

爾なんぢは人類じんるゐの贖しよく罪主ざいしゆ及および不ふ朽きうの生命いのちの首かしらとして世よに來きたれり、蓋けだし爾なんぢの復ふく活くわつを以もつて死しの縲絏なはめを斷たち給たまへり。我われ等ら皆みな之これを讚榮さんえいす、爾なんぢ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

生神女讚詞 潔いさぎよき永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢは見みゆると見みえざる一切いつさいの造物ざうぶつより至いたりて上うへなる者ものと顯あらはれたり、造成主ざうせいしゆを生うみたればなり、其その爾なんぢの胎内たいないに身みを取とらんと欲ほつせしが如ごとし。彼かれに勇敢いさみを以もつて我わが靈たましひを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

又十字架復活の規程カノン、其冠詞は、生命を施す言に讚美を歌ふ。

第一歌頌 同調

イルモス 選えらばれたるイズライリは曾かつて履ふまれぬ、常つねならぬ、海うみの路みちを足あしを濡ぬらさずして過とほりて呼よべり、主しゆに謳うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

ハリストスよ、爾なんぢは肉體にくたいの苦くるしみに由よりて弱よわき者ものの能力ちから、陷おちいりし者ものの提起おこし、死しせし者ものの不ふ朽きうと爲なれり、光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

神かみ造成主ざうせいしゆ及および更新者かうしんしやは殺ころされて、陷おちいりし像ざうに慈じ憐れんを施ほどこし、壞やぶられし者ものを興おこし、衆しゆうを生いかし給たまへり、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

又至聖なる生神女の規程カノン、其冠詞は、生命を施す少女に讚美を歌ふ。

第一歌頌 同調、同イルモス

潔いさぎよき者ものよ、昔むかし靈現れいげんの梯かけはし及および奇き妙めうに啓ひらけたる海うみの路みちは爾なんぢの產さんを顯あらはせり。我われ等ら皆みな之これを歌うたふ、其その光くわう榮えい顯あらはれたればなり。

純じゆん潔けつなる者ものよ、至し上じやう者しやの力ちから、三者さんしやの一いち位ゐ、神かみの智慧ちゑは爾なんぢより身みを取とりて、人人ひとびとに近ちかづき給たまへり、其その光くわう榮えい顯あらはれたればなり。

潔いさぎよき者ものよ、義ぎの日ひは爾なんぢの閉とざされたる胎たいの過とほられぬ門もんを過とほりて、世せ界かいに輝かゞやけり、其その光くわう榮えい顯あらはれたればなり。

共頌カタワシヤ、「我が口を開きて」。

第三歌頌

イルモス 主しゆよ、荒あれ地ちの如ごとく實みを結むすばざる異い邦はうの敎けう會くわいは、爾なんぢの來きたるに因よりて、百合ゆりの如ごとく華はなさけり、我わが心こゝろは此これに緣よりて固かためられたり。

造物ざうぶつは爾なんぢの苦くるしみに因よりて變へんじたり、爾なんぢ神聖しんせいなる指麾しきを以もつて一切いつさいを基もとづけたる主しゆが卑いやしき形かたちに於おいて不ふ法者はふしやより辱はづかしめらるるを見みたればなり。

ハリストスよ、爾なんぢは己おのれの像ざうに形かたどりて、爾なんぢの手てを以もつて我われを塵ちりより造つくり、復また罪つみの爲ために地ちの塵ちりに還かへされし者ものを地ぢ獄ごくに下くだりて、己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめ給たまへり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの產さんに因よりて天てん使しの品ひん位ゐは驚おどろき、人人ひとびとの心こゝろは懼おそれたり、故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢを生しやう神女しんぢよと尊たふとむ。

又

イルモス ハリストスよ、爾なんぢの權能けんのうに因よりて强つよき者ものの弓ゆみは折をられ、弱よわき者ものは力ちからを帶おびたり。

萬有ばんいうより上うへなるハリストスは肉體にくたいの苦くるしみを以もつて天てん使等しらの性せいより少すこしく遜くだりたり。

ハリストスよ、爾なんぢは死しして罪犯者ざいはんしやと偕ともに算かぞへられ、復ふく活くわつして女をんな等たちに光くわう榮えいの榮えい冠くわんを以もつて輝かゞやける者ものと顯あらはれたり。

又 同イルモス

童貞女どうていぢよよ、時ときの造成者ざうせいしやにして凡およその時ときに超こゆる者ものは甘あまんじて爾なんぢに藉よりて嬰兒をさなごと爲なりたり。

我われ等らは天てんより宏ひろき腹はら、アダムに喜よろこびて天てんに居をらしむる者ものを歌か頌しようせん。

第四歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよに藉よりて來きたりし者ものは使し者しやに非あらず、天てん使しに非あらず、主しゆ親みづから人體じんたいを取とりて、我われ全まつたき人ひとを救すくひ給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

我わが神かみ、審判しんぱんを諸民しよみんに行おこなふ主宰しゆさいよ、爾なんぢは聲こゑを出いださずして、審判しんぱんせらるる者ものとして審判しんぱん座ざの前まへに立たつ。ハリストスよ、爾なんぢは此この苦くるしみにて世せ界かいの爲ために救すくひを立たて給たまへり。

ハリストスよ、爾なんぢの苦くるしみに因よりて敵てきには武器ぶき悉ことごとく盡つき、爾なんぢが地ぢ獄ごくに下くだるに因よりて仇あだの城邑まちは毁こぼたれ、苦くるしむる者ものの狂きやう暴ばうは壞やぶられたり。

生神女讚詞 女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら衆しゆう信者しんじやは爾なんぢを救すくひの湊みなと及および堅けん固ごなる城しろとして知しる、爾なんぢの祈き禱たうに因よりて我われ等らの靈たましひを危き難なんより脫のがれしめ給たまへばなり。

又

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ爾なんぢの光くわう榮えいなる攝せつ理りを聞ききて、爾なんぢの悟さとり難がたき能力ちからを讚榮さんえいせり。

ハリストスよ、病やまひなく爾なんぢを生うみし童貞女どうていぢよは爾なんぢが木きに釘ていせられたるを見みて、母はゝとして病やまひを忍しのびたり。

死しは勝かたれ、死し者しやは地ぢ獄ごくの門もんを壞こぼちたり、蓋けだし衆しゆうを呑のむ者ものは破やぶられて、天性てんせいに超こゆる諸しよ恩おんは我われに賜たまはりたり。

又 同イルモス

視みよ、主しゆの家いへの神聖しんせいなる山やまは最高いとたかく擧あがりたり、是これ神かみの母はゝ、天軍てんぐんに超こゆる者ものなり。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは獨ひとり神聖しんせいなる召めしに勝たふる者ものと爲なりて、天性てんせいに超こえて造物ざうぶつを掌つかさどる主しゆを生うみ給たまへり。

第五歌頌

イルモス ハリストス神かみよ、爾なんぢは神かみと人ひととの中保者なかだちと爲なれり、主宰しゆさいよ、我われ等らは爾なんぢに依よりて、無智むちの闇やみより光ひかりの原もとなる爾なんぢの父ちゝに就つくを得えたればなり。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは身みにて甘あまんじて松まつと黄楊樹つげと柏香木はくかうぼくとに擧あげられしに因よりて、リワンの柏香木はくかうぼくを摧くだく如ごとく、諸民しよみんの驕おごりを壞やぶり給たまへり。

ハリストスよ、彼かれ等ら爾なんぢを氣息いきなき死し者しやとして最いと深ふかき坎あなに置おきたれども、爾なんぢは傷きずつけられて、爾なんぢの傷きずに因よりて墓はかに寢いぬる遺わすれられたる死し者しやを爾なんぢと偕ともに復ふく活くわつせしめ給たまへり。

生神女讚詞 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢを賴たのむ者ものを諸敵しよてきの攻擊こうげきより護まもりて、之これに平安へいあんを賜たまはんことを爾なんぢの子こ及および主しゆに祈いのり給たまへ。

又

イルモス イサイヤに爇炭やけずみとして現あらはれし日ひは童貞女どうていぢよの腹はらより黑暗くらやみに迷まよひし者ものに輝かゞやきて、神かみを知しる知ち識しきの光くわう照せうを賜たまふ。

第一だいいちのアダムは齋ものいみを辭いなみて、死しを致いたす木きの果みを食くらふ、第だい二にのアダムは木きに釘ていせられて、其その罪つみを滅ほろぼす。

無む形けいの神性しんせいにて苦くるしみに與あづからざるハリストスよ、爾なんぢは人ひとの性せいにて苦くるしみ及および死しに與あづかりて、殺ころされし者ものを不ふ朽きうの者ものと爲なして、地ぢ獄ごくの深處ふかみより復ふく活くわつせしめ給たまへり。

又 同イルモス

雲くもよ、樂たのしみの甘味あまみを地ちに居をる者ものに注そゝげ、蓋けだし世よの先さきより在います神かみは童貞女どうていぢよより身みを取とりて、嬰兒をさなごとして我われ等らに賜たまはりたり。

末すゑの時ときに童貞女どうていぢよより種たねなく身みを取とりし至し上じやう者しやは我わが生命いのち我わが肉體にくたいに光ひかりを輝かゞやかして、罪つみに由よる衰すゐ弱じやくを除のぞき給たまへり。

第六歌頌

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

義ぎ者しやは犯罪者はんざいしやの如ごとく定罪ていざいせられ、犯罪者はんざいしやと偕ともに木きに釘ていせられて、己おのれの血ちに由よりて罪過ざいくわある者ものに赦ゆるしを賜たまふ。

昔むかし一人ひとり第一だいいちのアダムに由よりて死しは世よに入いり、又また一人ひとり神かみの子こに由よりて復ふく活くわつは顯あらはれたり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは夫をつとを識しらずして生うみ、又また永遠えいゑんに童貞女どうていぢよに止とゞまりて、爾なんぢの子こ及および神かみの眞まことの神性しんせいの印象しるしを顯あらはす。

又

イルモス 主宰しゆさいよ、傷いためる靈たましひより祈き禱たうの言ことばの聲こゑを聞ききて、我われを諸難しよなんより脫のがれしめ給たまへ、爾なんぢは獨ひとり我われ等らの救すくひの緣由ゆゑんなればなり。

爾なんぢは生命せいめいの樹きを罪つみに陷おちいりし者ものより護まもらん爲ためにヘルワィムを立たてたり、然しかれども爾なんぢを見みて門もんは啓ひらかれたり、爾なんぢ盜賊たうぞくを樂園らくゑんに導みちびきて現あらはれたればなり。

一人いちにんの死しに藉よりて地ぢ獄ごくは破やぶられて空むなしくなれり、其その聚あつめたる多おほくの富とみは獨ひとりハリストス我われ等ら衆しゆうの爲ために之これを盡つくし給たまへり。

又 同イルモス

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、罪つみに服役ふくえきする人ひとの性せいは爾なんぢに緣よりて自じ由いうを獲えたり、蓋けだし爾なんぢの子こは羔こひつじの如ごとく衆しゆうの爲ために屠ほふられたり。

我われ等ら皆みな爾なんぢ眞まことの神かみの母はゝに呼よぶ、怒いかりに觸ふれたる諸僕しよぼくを援たすけ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり子この前まへに勇敢いさみを有たもてばなり。

小讚詞コンダク、第二調。

全能ぜんのうの救世主きうせいしゆよ、爾なんぢ墓はかより復ふく活くわつせしに、地ぢ獄ごくは奇き蹟せきを見みて慄をのゝき、死し者しやは起おき、造物ざうぶつは見みて爾なんぢと偕ともに喜よろこび、アダムは共ともに樂たのしみ、我わが救世主きうせいしゆよ、世せ界かいは常つねに爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

同讚詞イコス 救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは昧くらまされし者ものの光ひかり、爾なんぢは衆しゆうの復ふく活くわつ、人人ひとびとの生命いのちなり。言ことばよ、爾なんぢは死しの權けんを滅ほろぼし、地ぢ獄ごくの門もんを破やぶりて、衆しゆうを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめたり。人ひとを愛あいする主しゆよ、死し者しやは奇き跡せきを見みて驚おどろき、萬物ばんぶつは爾なんぢの復ふく活くわつの爲ために喜よろこぶ。故ゆゑに我われ等ら衆しゆうも爾なんぢの寬くわん容ようを讚榮さんえい歌か頌しようし、我わが救世主きうせいしゆよ、世せ界かいは常つねに爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

第七歌頌

イルモス 不ふ法はふなる虐者しへたげびとの神かみに戾もとる命令めいれいは高たかき焰ほのほを起おこしたれども、讚ほめ歌うたはるるハリストスは敬虔けいけんの少者せうしやに屬神ぞくしんの露つゆを降くだし給たまへり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは慈じ憐れんに由よりて人ひとの死しに苦くるしめらるるを見みるに忍しのびずして、人ひとと爲なり、來きたりて、爾なんぢの血ちを以もつて之これを救すくひ給たまへり、爾なんぢは我わが先せん祖ぞの讚さん美び讚榮さんえいせらるる神かみなればなり。

ハリストスよ、地ぢ獄ごくの門衞かどもりは爾なんぢが復讐ふくしうの衣ころもを衣きたるを見みて懼おそれたり、蓋けだし爾なんぢ主宰しゆさいは狂きやう暴ばうの殘ざん虐ぎやく者しやたる奴ど隷れいを殺ころさん爲ために來きたり給たまへり、爾なんぢは我わが先せん祖ぞの讚さん美び讚榮さんえいせらるる神かみなればなり。

生神女讚詞 無む玷てんなる童貞女どうていぢよ、聘女よめならぬ母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを獨ひとり變易へんえきなき神かみを生うみし者ものとして、聖者せいしやの中うちに至いたりて聖せいなる者ものなりと識しる、蓋けだし爾なんぢは神聖しんせいなる爾なんぢの產さんにて衆しゆう信者しんじやに不ふ朽きうを流ながし給たまへり。

又

イルモス 昔むかし少者せうしやは智慧ちゑ深ふかき辯舌者べんぜつしやと現あらはれて、至いたりて敬虔けいけんなる靈たましひより口くちを以もつて祝しゆく讚さんして歌うたへり、先せん祖ぞ及および我われ等らの至し聖せいなる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

昔むかし不ふ順じゆんはエデムに於おいて原げん祖そを定罪ていざいせり、然しかれども至し聖せいにして讚さん美びたる先せん祖ぞの神かみは甘あまんじて定罪ていざいせらるるを以もつて誡いましめを犯おかしし者ものの罪つみを釋とき給たまへり。

至し聖せいにして讚さん美びたる先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは殺人者ひとごろしの猜忌そねみに因よりてエデムに於おいて其その舌したにて傷きずつけられし者ものを救すくへり、甘あまんじて得えたる傷きずを爾なんぢは甘あまんじて受うけたる苦くるしみにて醫いやし給たまへり。

生神女讚詞 至し聖せいにして讚さん美びたる先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは神性しんせいの光明くわうみやうにて暗くらき地ぢ獄ごくを照てらして、我われ死しの蔭かげを行ゆく者ものを光ひかりに召めし給たまへり。

又 同イルモス

イアコフは人體じんたいを取とり給たまふ神かみを夜や間かん朦朧おぼろの中うちに見みたり、爾なんぢに由よりて至し聖せいにして讚さん美びたる先せん祖ぞの神かみは明あきらかに彼かれを歌うたふ者ものに現あらはれ給たまへり。

潔いさぎよき者ものよ、至し聖せいにして讚さん美びたる先せん祖ぞの神かみ、爾なんぢに由よりて甘あまんじて人人ひとびとに合あはせられし主しゆは、言いひ難がたく彼かれ等らの罪つみを卸おろさんとする前兆しるしとして、イアコフと角力ちからくらべを爲なし給たまふ。

爾なんぢ童貞女どうていぢよの子こ、至し聖せいなる三者さんしやの一いち位ゐを疑うたがひなき信しんを以もつて傳つたへず、舌したを以もつて至し聖せいにして讚さん美びたる先せん祖ぞの神かみよと呼よばざる人ひとは厭いとはるべし。

第八歌頌

イルモス 昔むかしワワィロンの火ひの爐ゐろりは神かみの命めいによりて其その勢いきほひを分わかち、ハルデイを焦こがして、信者しんじやを凉すゞしくせり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよと歌うたへばなり。

ハリストスよ、天てん使しの品ひん位ゐは爾なんぢの肉體にくたいの衣ころもが爾なんぢの血ちにて赤あかみたるを見みて慄をのゝき、爾なんぢの大おほいなる寬くわん忍にんに驚おどろきて呼よべり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

慈じ憐れんなるハリストスよ、爾なんぢは己おのれの復ふく活くわつを以もつて我われの死しに屬ぞくする性せいに不死ふしを衣き給たまへり。故ゆゑに選えらびを蒙かうむりたる民たみは感謝かんしやして爾なんぢを讚ほめ歌うたひ、樂たのしみて爾なんぢに呼よぶ、實じつに死しは勝かちに呑のまれたり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、爾なんぢは父ちゝに別わかれざる者ものを種たねなく胎内たいないに孕はらみて、言いひ難がたく生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢを我われ衆しゆうの救すくひと認みとむ。

又

イルモス 三重みへに福ふくたる少者せうしやは金こがねの像ざうを顧かへりみずして、變易かはりなき活いける神かみの像かたちを見みて、焰ほのほの中うちに歌うたへり、造ざうを受うけし萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

慈じ憐れん豐ゆたかなる仁愛じんあいの主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに釘ていせらるる者ものと見みられ、甘あまんじて葬はうむられ、三みつ日目かめに復ふく活くわつし、衆しゆう人じんを救すくひて、信しんを以もつて歌うたはしむ、萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

神かみの言ことばハリストスよ、爾なんぢは造つくりし者ものを朽きう壞くわいより救すくはん爲ために地ぢ獄ごくに降くだり、爾なんぢの神聖しんせいなる力ちからにて之これを不ふ朽きうの者ものと爲なし、爾なんぢの永在えいざいなる光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なして呼よばしむ、萬物ばんぶつはハリストスを歌うたひて、世世よよに讚ほめ揚あぐべし。

又 同イルモス

仁じん慈じ能のう力りよくの比くらぶべきなき主しゆは爾なんぢに由よりて地ち上じやうに見みられ、人人ひとびとと偕ともに在いませり。我われ等ら信者しんじや皆みな彼かれを歌うたひて呼よぶ、造ざうを受うけし萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

我われ等らは爾なんぢ潔いさぎよき者ものを實じつに生しやう神女しんぢよと傳つたへて讚榮さんえいす、蓋けだし爾なんぢは三者さんしやの一いち位ゐ、身みを取とりし者ものを生うみ給たまへり。我われ等ら皆みな彼かれに父ちゝ及および聖神せいしんと偕ともに歌うたふ、萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、附唱と共に、「ヘルワィムより尊く」。

第九歌頌

イルモス 無む原げんの父ちゝの子こ、神かみと主しゆは、童貞女どうていぢよより人體じんたいを取とり、我われ等らに現あらはれて、昧くらまされし者ものを明あかし、散ちらされし者ものを集あつめ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら讚さん美びたる生しやう神女しんぢよを崇あがめ歌うたふ。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの至し淨じやうなる十じふ字架じかの三重みへに尊そん貴きなる木きは地ち堂だうに於おけるが如ごとく髑髏されかうべの處ところに植うゑられ、神聖しんせいなる泉いづみよりするが如ごとく爾なんぢの脅わきの神聖しんせいなる血ちと水みづとに濕うるほされて、我われ等らの爲ために生命いのちを生しやうじたり。

全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは十じふ字架じかに上あげられて、有權者いうけんしやを墜おとし、下しもに堅けん固ごなる地ぢ獄ごくに伏ふしたる人ひとの性せいを擧あげて、父ちゝの寶はう座ざに坐ざせしめたり。我われ等ら父ちゝと偕ともに爾なんぢ還また來きたらんとする主しゆに伏拜ふくはいして崇あがめ歌うたふ。

聖三者讚詞 我われ等ら信者しんじやは三さん位ゐなる惟一者ゆゐいちしや、一性いつせいの三者さんしやを眞しん正せいに歌うたひて、分わかれざる至し聖せいなる性せい體たい、三さん妙めうの暮くれざる日ひ、獨一どくいつ永在えいざいにして、光ひかりを我われ等らに輝かゞやかしし神かみを讚榮さんえいす。

又 イルモス 「食に緣りて甚しく朽壞に陷りし」。

ハリストスよ、爾なんぢは髑髏されかうべの處ところに、定罪ていざいせられし者ものの間あひだに、羔こひつじの如ごとく十じふ字架じかに上あげられ、戈ほこにて脅わきを刺さされて、仁じん慈じなる主しゆとして、塵ちりに屬ぞくする我われ等ら、信しんを以もつて爾なんぢの神聖しんせいなる復ふく活くわつを尊たふとむ者ものに生命いのちを賜たまへり。

我われ等ら衆しゆう信者しんじやは己おのれの死しを以もつて死しの權けんを空むなしくせし神かみに伏拜ふくはいせん、古こ世せいよりの死し者しやを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめて、衆しゆうに生命せいめいと復ふく活くわつとを與あたへ給たまへばなり。

又

イルモス 神かみの言ことば、童貞女どうていぢよの子こ、諸神しよしんの神かみ、諸しよ聖せいの至し聖者せいしやたる主しゆよ、爾なんぢは全まつたく冀望のぞみ、全まつたく甘味あまみなり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢ及および爾なんぢを生うみし者ものを崇あがめ讚ほむ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの胎内たいないに於おいて能のう力りよくの杖つゑたる神かみの言ことばは朽きう壞くわいの性せいに與あたへられて、此この躓つまづきて地ぢ獄ごくに陷おちいりし者ものを復ふく活くわつせしめたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ純じゆん潔けつなる者ものを生しやう神女しんぢよとして崇あがめ讚ほむ。

主宰しゆさいよ、慈じ憐れんを以もつて我われ等らの爲ために祈いのる爾なんぢの母はゝを納いれて、衆しゆうを爾なんぢの仁じん慈じに充みたしめ給たまへ、我われ等ら皆みな爾なんぢを恩主おんしゆとして崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

共頌カタワシヤの後に小聯禱。次ぎて主我等の神は聖なり、三次。早課の差遣詞エクサポスティラリイ。

「凡そ呼吸ある者」に主日の讚頌スティヒラ、第二調。

句 彼かれ等らの爲ために記しるされし審判しんぱんを行おこなはん爲ためなり、斯この榮さかえは其その悉ことごとくの聖人せいじんに在あり。

主しゆよ、凡およそ呼吸いきある者もの及および悉ことごとくの造物ざうぶつは爾なんぢを讚榮さんえいす、蓋けだし爾なんぢは十じふ字架じかにて死しを空むなしくせり、人人ひとびとに爾なんぢの死しよりの復ふく活くわつを顯あらはさん爲ためなり、獨ひとり人ひとを慈いつくしむ主しゆなればなり。

句 神かみを其その聖所せいしよに讚ほめ揚あげよ、彼かれを其その有いう力りよくの穹蒼おほぞらに讚ほめ揚あげよ。

イウデヤの人ひと言いふべし、如何いかんぞ王わうを守まもる兵卒へいそつは之これを失うしなひたる、何なんぞ石いしは生命いのちの石いしを守まもらざりし。或あるひは葬はうむられし者ものを與あたふべし、或あるひは復ふく活くわつせし者ものに伏拜ふくはいして、我われ等らと偕ともに云いふべし、吾わが救世主きうせいしゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの大おほいなる惠めぐみに歸きす、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 其その權能けんのうに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ、其その至いと嚴おごそかなるに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

人人ひとびとよ、喜よろこび樂たのしめよ、墓はかの石いしに坐ざする天てん使しは我われ等らに福音ふくいんして云いへり、ハリストス・世せ界かいの救主きうしゆは死しより復ふく活くわつして、萬有ばんいうに馨かうばしき香氣かをりを滿みて給たまへり。人人ひとびとよ、喜よろこび樂たのしめよ。

句 角らつぱの聲こゑを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、琴きんと瑟しつとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

主しゆよ、天てん使しは爾なんぢが未いまだ孕はらまれざる先さきに、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものに慶よろこべよと報はうじ、天てん使しは又また爾なんぢの復ふく活くわつの時ときに、爾なんぢが光くわう榮えいなる墓はかの石いしを移うつせり。彼かれは悲かなしみに代かへて樂たのしみの徵しるしを示しめし、此これは死しに代かへて我われ等らに生いのちを施ほどこす主宰しゆさいを傳つたへたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、萬有ばんいうの恩者おんしやなる主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

又讚頌スティヒラ、アナトリイの作、第二調。

句 皷つゞみと舞まひとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、絃いとと簫せうとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

女をんな等たちは淚なみだと共ともに香料かうれうを爾なんぢの墓はかに注そゝぎしに、彼かれ等らの口くちは、ハリストス復ふく活くわつせりと言いふ時とき、歡喜よろこびに滿みてられたり。

句 和わ聲せいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、大聲たいせいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。凡およそ呼吸いきある者ものは主しゆを讚ほめ揚あげよ。

諸しよ族ぞく諸民しよみんはハリストス我われ等らの神かみ、甘あまんじて我われ等らの爲ために十じふ字架じかを忍しのびて、地ぢ獄ごくに三日みつか在ありし主しゆを讚ほめ揚あげて、其その死しよりの復ふく活くわつ、世せ界かいの四し極きよくを照てらしし者ものに伏拜ふくはいすべし。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる毋なかれ。

ハリストスよ、爾なんぢは望のぞみし如ごとく、十じふ字架じかに釘ていせられ、葬はうむられたり、神かみ及および主宰しゆさいとして、死しを滅ほろぼし、光くわう榮えいの中うちに復ふく活くわつして、世せ界かいに永遠えいゑんの生命いのちと大おほいなる憐あはれみとを賜たまへり。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あぐ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き跡せきを傳つたへん。

嗚呼あゝ石いしに封印ふういんせし不ふ法者はふしやは實じつに我われ等らに更さらに多おほくの奇き跡せきを見みるを得えしめたり。番兵ばんぺいは今いま彼かれが墓はかより出いでたるを知しれるに、之これに謂いふ、告つぐべし、我われ等らが寢いねたる時とき、其その門もん徒と來きたりて、彼かれを竊ぬすめりと。誰たれか死し者しや、殊ことに裸ら體たいなる者ものを竊ぬすまん、彼かれ親みづから神かみとして、己おのれの權けんを以もつて復ふく活くわつして、墓はかの中うちに其その斂葬はうむりの衣ころもを遺のこせり。イウデヤ人じんよ、來きたりて、觀みよ、死しを滅ほろぼし、人類じんるゐに永遠えいゑんの生命いのちと大おほいなる憐あはれみとを賜たまひし者ものは如何いかにして封印ふういんを破やぶらざりし。

光榮、早課の福音の讚頌スティヒラ、今も、生神女讚詞、「生神童貞女よ、爾は至りて讚美たる者なり」。

大詠頌。次ぎて復活の讚詞トロパリ。

主しゆよ、爾なんぢは墓はかより復ふく活くわつして、地ぢ獄ごくの鎖くさりを壞やぶり、死しの定罪ていざいを滅ほろぼし、衆しゆう人じんを敵てきの網あみより救すくへり。獨ひとり大だい慈じ憐れんなる者ものよ、爾なんぢは使徒しとに顯あらはれて、彼かれ等らを傳敎でんけうに遣つかはし、彼かれ等らに依よりて爾なんぢの平安へいあんを世せ界かいに賜たまへり。

 主日の聖体礼儀に

聖體禮儀リトゥルギヤには、眞福詞、第二調。

我われ等ら盜賊たうぞくの聲こゑを爾なんぢに奉たてまつりて祈いのる、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

句 心こゝろの淸きよき者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみを見みんとすればなり。

人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが我われ等らの爲ために受うけ給たまひし十じふ字架じかを爾なんぢに奉たてまつりて、我わが罪過ざいくわの赦ゆるしを求もとむ。

句 和わ平へいを行おこなふ者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみの子こと名なづれられんとすればなり。

人ひとを愛あいする主宰しゆさいよ、我われ等ら爾なんぢの葬はうむりと復ふく活くわつとに伏拜ふくはいす、爾なんぢは此これ等らを以もつて世せ界かいを朽きう壞くわいより脫のがれしめ給たまへり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

主しゆよ、爾なんぢの死しにて死しは呑のまれたり、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは復ふく活くわつを以もつて世せ界かいを救すくひ給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

爾なんぢは墓はかより復ふく活くわつして、攜香女けいかうぢよに遇あひ、彼かれ等らに爾なんぢの復ふく活くわつを使徒しとに傳つたへんことを命めいじ給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

ハリストスよ、黑暗くらやみに眠ねむる者ものは爾なんぢ地ぢ獄ごくの深處ふかみに輝かゞやきし光ひかりを見みて復ふく活くわつせり。

光榮 我われ等ら皆みな信しんを以もつて父ちゝを讚榮さんえいし、子こに伏拜ふくはいし、聖神せいしんを歌か頌しようせん。

今も、生神女讚詞 火ひの狀さまの寶はう座ざよ、慶よろこべ、聘女よめならぬ聘女よめよ、慶よろこべ、神かみを人人ひとびとの爲ために生うみし童貞女どうていぢよ、慶よろこべ。

提綱ポロキメン、第二調。

主しゆは我わが力ちから、我わが歌うたなり、彼かれは我わが救すくひとなれり。

句 主しゆは嚴きびしく我われを罰ばつしたれども、我われを死しに付わたさざりき。

「アリルイヤ」、願ねがはくは主しゆは憂うれひの日ひに於おいて爾なんぢに聽きき、イアコフの神かみの名なは爾なんぢを扞ふせぎ衞まもらん。

句 主しゆよ、王わうを救すくへ、又また我われ等らが爾なんぢに呼よばん時とき、我われ等らに聽きき給たまへ。

 主日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に主宰の傷感の讚頌スティヒラ、第二調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

憐あはれみの淵ふち、恩めぐみの河かはを流ながす所ところの慈じ憐れんの泉いづみを有たもつ至し善ぜんなる父ちゝ、父ちゝの言ことばたる子こ、及および聖神せいしん、造つくられざる神性しんせいよ、我われ等らの祈き禱たう祈き願ぐわんを納いれて、罪過ざいくわの中うちに居をる衆しゆう人じんに赦ゆるしを與あたへ給たまへ、爾なんぢは宏くわう恩おんにして人ひとを愛あいする神かみなればなり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

ハリストス我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは神かみとして性せいに依よりて慈じ憐れん仁愛じんあい宏くわう恩おんの心こゝろを有たもち給たまふ。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのり、俯ふ伏ふくして呼よび、常つねに爾なんぢに求もとむ、爾なんぢの諸僕しよぼくの多おほくの罪過ざいくわを解とき、我われ等ら衆しゆうの犯おかしし諸罪しよざいを赦ゆるし給たまへ、爾なんぢは宏くわう恩おんにして人ひとを愛あいする神かみなればなり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは神かみとして衆しゆう人じんを救すくはんと欲ほつして、彼かれ等らの爲ために人體じんたいを取とり、人ひとと現あらはれ給たまへり。人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ等ら爾なんぢの誡いましめを尊たふとむ者ものを救すくひ給たまへ。蓋けだし爾なんぢが來きたりしは義ぎ人じんを救すくふ爲ために非あらず、乃すなはち我われ等ら罪過ざいくわの中うちに在ありて多おほくの罪つみに縛しばられし者ものを神聖しんせいなる洗禮せんれいの恩おん寵ちようを以もつて解とかん爲ためなり、爾なんぢは宏くわう恩おんにして人ひとを愛あいする神かみなればなり。

次に月課經ミネヤの讚頌スティヒラ。若し月課經なくば、聖なる無形天軍の讚頌、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

寶はう座ざ、ヘルワィム及およびセラフィム、主しゆ制せい、能のう力りよく及および尊たふとき權柄けんぺい、差さ役えき、差さ役えき首しゆ、之これと偕ともに首しゆ領りやうは、彼かれ等らの不ふ朽きうの性せいを造つくりし主しゆに同心どうしんにして絕たえざる歌うたを歌うたひ、三さん位ゐに於おいて一性いつせい一體いつたい、同尊どうそん同どう寶はう座ざの神かみを尊たふとまんことを衆しゆうに敎をしふ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

無む形けいの者ものの首しゆたる品ひん位ゐは直たゞちに神元しんげんの光明くわうみやうの照てらしを受うけて、神聖しんせいなる光ひかりを他たの品ひん位ゐに其その等級とうきふに適かなひて傳つたへ、又また愛あいの法はふに循したがひて、熱切ねつせつに之これを我われ等らに送おくり、各人かくじんの量りやうに稱かなひて、心こゝろの潔淨きよめを爲なす。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

我われ等ら神かみを愛あいする愛あいに感かんぜられて、常つねに我わが心こゝろの眼め、靈たましひの思おもひを上うへに天てんに向むかはしめん、彼處かしこより出いづる光くわう線せんに照てらされて、諸慾しよよくの黑暗くらやみを脫のがれん爲ためなり。願ねがはくは諸天しよてん使しと偕ともに造成主ざうせいしゆの威ゐ嚴げんなる寶はう座ざの前まへに立たちて、光ひかりより光ひかりに進すゝまん。

光榮、今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの子この無む數すうの天てん使しは、三聖さんせいの聲こゑを以もつて、爾なんぢを彼かれの火ひの狀さまの寶はう座ざ、活いける宮みや、常つねに地ちより彼かれに渡わたす神聖しんせいなる橋はしと歌うたひて、天てん使し首しゆガウリイルと同心どうしんに、爾なんぢ歡喜よろこびの泉いづみを生うみし者ものに呼よぶ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者もの、慶よろこべよ。

次ぎて「穩なる光」。提綱ポロキメン、主の諸僕、夜中主の家に立つ者よ、今主を崇め讚めよ。其後「主よ、我等を守り」。

挿句くづけに傷感の讚頌スティヒラ、第二調。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、我われ放蕩はうたうの子この如ごとく爾なんぢの前まへに罪つみを獲えたり、父ちゝよ、我われ痛つう悔くわいする者ものを納いれよ、神かみよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、我われ稅ぜい吏りの聲こゑを以もつて爾なんぢに呼よぶ、神かみよ、我われを彼かれの如ごとく潔きよめて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり。我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致ち命者めいしやは地ち上じやうの甘樂かんらくを嗜たしまずして、天てん上じやうの福樂ふくらくを獲え、諸天しよてん使しと同どう住ぢゆうする者ものと爲なれり。主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて、我われ等らを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 慶よろこべよ、生しやう神女しんぢよマリヤ、毁こぼたれぬ殿でん、更さらに言いへば聖せいなる殿でんや、預よ言者げんしやの呼よぶが如ごとし、爾なんぢの聖せいなる殿でんは義ぎに於おいて奇異きいなり。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ。光榮、今も、生神女讚詞、讚詞トロパリの調に循ふ。聯禱及び發放詞。

 主日の晩堂課

至聖なる生神女を讚頌する規程カノン、第二調。

第一歌頌

イルモス 全まつたく備そなはれる力ちからは昔むかしファラオンの全軍ぜんぐんを深水ふかみに敷しき、人體じんたいを取とりし言ことば、讚榮さんえいせらるる主しゆは萬よろづの惡あくを致いたす罪つみを滅ほろぼし給たまへり、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

爾なんぢより我われ等らの爲ために輝かゞやきし暮くれざる日ひは、嚴おごそかに爾なんぢを靈れい智ちにして至いたりて明あきらかなる天てんと顯あらはしたり。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、我われを慾よくの臭しう氣きより脫のがれしめ給たまへ、我わが愛あいを以もつて爾なんぢ獨一どくいつの母はゝ童貞女どうていぢよを歌か頌しようせん爲ためなり。

女宰ぢよさいよ、我われ爾なんぢ、靈れい智ちの熾炭やけずみを取とりて人ひとの性せいを潔きよめん鉗ひばさみなる者ものに祈いのる、我わが多おほくの罪過ざいくわの穢けがれを滌あらひ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを汚けがす諸慾しよよくより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 仁じん慈じの泉いづみなるハリストスを生うみて、人人ひとびとの爲ためにエデムを啓ひらきし至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよ、世せ界かいの女宰ぢよさいよ、我わが爲ために爾なんぢの慈じ憐れんの門もんを啓ひらきて、我われに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

今も 女宰ぢよさい・永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢの子こ及および神かみに祈いのりて、我わが罪過ざいくわの縛なはめを斷たち、我われを攻せむる罪つみを除のぞき給たまへ、我わが救すくはれて、常つねに爾なんぢ純じゆん潔けつなる者ものを歌か頌しようせん爲ためなり。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢ我われを信しんの石いしに堅かたく立たて、我わが口くちを啓ひらきて我わが敵てきに對むかはしめ給たまへり。蓋けだし我わが神しん゜は樂たのしみて歌うたへり、吾わが神かみと侔ひとしく聖せいなるはなく、主しゆよ、爾なんぢの外ほかに義ぎなるはなし。

晨あさの星ほしより先さきに輝かゞやきしハリストス、日ひよりする入いらざる日ひたる者ものを生うみし至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの祈き禱たうの光くわう線せんにて我わが諸慾しよよくの霧きりと幽闇くらやみとを拂はらひて、我われを照てらし給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの產さんを以もつて爾なんぢは先せん祖ぞダワィドの陷おちいりて壞やぶられたる幕まくを興おこせり。祈いのる、生しやう神女しんぢよよ、諸慾しよよく諸罪しよざいに因よりて壞やぶられたる我われ爾なんぢの僕ぼくをも興おこし給たまへ。

光榮 童貞女どうていぢよよ、我わが靈たましひの諸罪しよざい諸慾しよよくを退しりぞくる劍つるぎと爲なりて、我われを爾なんぢに護まもられて侵おかされぬこと彼かの樂園らくゑんの如ごとく爲なして、靈神れいしん゜の花はなを開ひらく者ものと顯あらはし給たまへ。

今も 神かみの母はゝよ、慈じ憐れんの手てを舒のべて、我われを接うけ、爾なんぢに趨はしり附つきて、爾なんぢに俯ふ伏ふくし、爾なんぢの援たすけを求もとむる者ものを凡およその定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、爾なんぢは我われ迷まよへる者ものを尋たづねて、我われにまで至いたればなり。故ゆゑに慈じ憐れん深ふかき主しゆよ、我われに於おける爾なんぢの大おほいなる寬くわん容ようを讚榮さんえいす。

人ひとの性せいの穢けがれなき聖せいなる酵ぱんだね、造成主ざうせいしゆが之これを取とりて人じん性せいを改あらため造つくりし者ものよ、我わが諸慾しよよくの穢けがれを消けし、我わが諸罪しよざいの不ふ潔けつを潔きよめ給たまへ。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、爾なんぢの祈き禱たうの醫い藥やくと傅ふ油いうとを以もつて、今いま我わが靈たましひの疵きず、諸罪しよざいの傷いたみを瘳いやし給たまへ、爾なんぢは人じん性せいの神妙しんめうなる醫療いやしを生うみたればなり。

光榮 地ぢ獄ごくに縛しばられたる者ものに救すくひを賜たまひしハリストスを生うみたる女宰ぢよさいよ、我わが諸慾しよよくの縛なはめを解とき、爾なんぢの祈き禱たうの劍つるぎにて我わが諸罪しよざいの桎梏かせを截たち給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、甚はなはだしく我われを昧くらましし我わが靈たましひの諸慾しよよくを醫いやして、思念おもひを照てらし給たまへ。我われを攻せめて、每日まいにち我わが爲ために網あみを張はる衆おほくの惡あく鬼きを遠とほく我われより逐おひ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 幽闇くらやみに居をる者ものの光くわう照せう、失望しつばうする者ものの救きう贖しよくたるハリストス我わが救主きうしゆよ、我われ爾なんぢ平安へいあんの王わうに朝あさの祈禱いのりを奉たてまつる、爾なんぢの光ひかりを以もつて我われを照てらし給たまへ、我われ爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

世せ界かいの祝しゆく福ふくたるハリストスを生うみて、世せ界かいを古いにしへの詛のろひより救すくひし女宰ぢよさいよ、我われを不ふ當たうなる思念おもひ及および凡およその憂愁うれひより救すくひ給たまへ、爾なんぢは獨ひとり信者しんじやの歡喜よろこびなればなり。

惡あく鬼きの隊たいは我わが靈たましひの城邑まちを圍かこみて、甚はなはだしく之これを虜とりこにせんことを務つとむ、萬有ばんいうの王わうの城邑まちたる至し榮えいなる女宰ぢよさいよ、破やぶられぬ墉垣かきたる爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを環めぐりて救すくひ給たまへ。

光榮 惡あく鬼きの誘惑いざなひの烈はげしき颶風あらしは我わが思念おもひを亂みだす、凡およその造物ざうぶつの惟一ゆゐいちなる全能ぜんのうの舵師かぢとりハリストスを生うみし者ものよ、速すみやかに來きたりて、之これを鎭しづめ給たまへ。

今も 潔いさぎよき神かみの母はゝよ、滅亾ほろびの黑暗くらやみに閉とざされたる我われに痛つう悔くわいの光ひかりを輝かゞやかし、仆たふれたる我われに援助たすけの手てを與あたへて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを興おこして、神かみの誡いましめを行おこなはしめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

永遠えいゑんの生命いのちを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、我わが靈たましひが肉體にくたいより出いづる時とき、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて死しを殺ころし給たまへ。

人ひとを惡にくむ蛇へびは我われを誘いざなひて執とらへんと欲ほつす、蛇へびの首かしらを碎くだきたる者ものを生うみし女宰ぢよさいよ、之これを空むなしくなし給たまへ。

光榮 生命いのちの途みちたるハリストス我わが神かみを生うみし者ものよ、曲まがれる途みちを行ゆきし我われを直なほき途みちに向むかはしめ給たまへ。

今も 人人ひとびとの救すくひの爲ために神かみを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、我わが靈たましひの諸慾しよよくを醫いやして、憂愁うれひの惑まどひに勝かち給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第二調。

慈じ憐れんの泉いづみなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らに憐あはれみを垂たれ、罪つみなる人人ひとびとを顧かへりみて、恒つねの如ごとく爾なんぢの力ちからを顯あらはし給たまへ、蓋けだし我われ等らは爾なんぢを恃たのみて、天軍首てんぐんしゆガウリイルに傚ならひて爾なんぢに呼よぶ、慶よろこべよ。

第七歌頌

イルモス 睿えい智ちなる少者せうしやは金こがねの像ざうに事つかへずして、自みづから焰ほのほに趣おもむき、彼かれ等らの諸神しよしんを辱はづかしめ、焰ほのほの中うちに在ありて呼よびしに、天てん使し彼かれ等らに露つゆを注そゝげり、爾なんぢ等らの口くちの祈き禱たうは已すでに納いれられたり。

諸慾しよよくの浪なみは我わが思念おもひを擾みだし、靈たましひを蕩うごかす。求もとむ、神妙しんめうなる命めいにて濤なみたつ海うみを鎭しづめたる主しゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、之これを無む慾よくの平穩へいをんに變へんじて、肉體にくたいの紛擾みだれを治をさめ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我われ爾なんぢの僕ぼくは爾なんぢを天てんより現あらはれたる靈れい智ちなる東ひがしの門もんと知しりて、爾なんぢに依よりて天てんに入いらんことを祈いのる、女宰ぢよさいよ、我われを接うけて、光ひかりを以もつて導みちびき給たまへ。

光榮 ハリストス爾なんぢの子こは甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせられて、黑暗くらやみの首しゆ領りやうを辱はづかしめ、死しの廢はい壞くわいの力ちからを滅ほろぼせり。至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、此この十じふ字架じかにて我わが肉慾にくよくの想おもひを殺ころし給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、信しんを以もつて爾なんぢに趨はしり附つきて、救すくひを求もとむる者ものの爲ために爾なんぢより生うまれし神かみに絕たえず祈いのり給たまへ。爾なんぢは獨ひとり世せ界かいの保護ほご者しや、望のぞみを失うしなひし者ものの冀望のぞみ及および守護まもり、艱難かんなんに惱なやまさるる者ものの援助たすけなり。

第八歌頌

イルモス 三重みへに福ふくたる少者せうしやは金こがねの像ざうを顧かへりみずして、變易かはりなき活いける神かみの像ざうを見みて、焰ほのほの中うちに歌うたへり、造ざうを受うけし萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

聖者せいしやの至し聖せいなる者もの、古いにしへの幕まくの模式かたを示しめしし大おほいなる司し祭さい長ちやうを己おのれの中うちに宿やどしし神造しんざうの幕まくたる童貞女どうていぢよよ、我わが心こゝろを萬有ばんいうの王わう、至し上じやう者しやハリストスの聖せいなる幕まくと爲なし給たまへ。

神聖しんせいなる匱ひつ及および約やくの石板せきばんを賜たまひし爾なんぢの像かたどられぬ子こハリストス、神かみの至し淨じやうなる言ことばを抱いだきし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうに依よりて、此この言ことばが神かみの指ゆびを以もつて板いたに於おけるが如ごとく、我わが靈たましひに錄しるさるるを致いたし給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの胎たいより、尊たふとき石いしは山やまよりするが如ごとく截きり分わけられて、獨一どくいつ全能ぜんのうの有權者いうけんしやとして、悉ことごとくの迷まよひの柱はしらを摧くだけり。求もとむ、彼かれを以もつて今いま我わが靈たましひの諸慾しよよくの像ざうを滅ほろぼして、無む形けいの敵てきの頷あぎを壞やぶり給たまへ。

今も 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、諸罪しよざいの焰ほのほに由よりて涸かれたる我わが心こゝろに生命せいめいの水みづを飮のませて、常つねに我われに傷しやう感かんを與あたへ給たまへ。蓋けだし我われ畏おそれを以もつて歌うたふ、萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あぐべし。

第九歌頌

イルモス 日ひより前さきに光ひかり輝かゞやきし神かみ、肉體にくたいにて我われ等らに臨のぞみし者ものを、貞潔ていけつの腹はらより言いひ難がたく生うみし讚さん美びたる至淨いときよき生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは義ぎの日ひたるハリストスを輝かゞやかして、至いたりて光くわう明めいなる天てんと顯あらはれたり。求もとむ、彼かれに由よりて爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが諸慾しよよくの夜よを散さんじて、我わが靈たましひを照てらし、我わが心こゝろを輝かゞやかして、明あきらかなる者ものと爲なし給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、我わが烈はげしき敵てきを審さばき、之これに勝かちて、我われを其その侵害しんがいより援たすけ給たまへ。蓋けだし爾なんぢは善ぜんにして義ぎなる審判者しんぱんしや、神性しんせいの議ぎ定ていの中うちに死しを定罪ていざいせし者ものを生うみ給たまへり。

光榮 童貞女どうていぢよよ、神かみとして肉體にくたいなき者ものを造つくりし主しゆは爾なんぢより肉體にくたいを取とり給たまへり。求もとむ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ爾なんぢの僕ぼくを肉慾にくよくの攻擊こうげき及および肉體にくたいの思念おもひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 爾なんぢは先さきにアダムの性せいを造つくりし新あらたなるアダムを生うみて、エワの哀かなしみを釋とき給たまへり。求もとむ、我わが諸罪しよざいの書券かきつけをも裂さきて、我われを葘害わざはひと憂愁うれひと諸慾しよよくより脫のがれしめ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、聖三祝文。「天に在す」の後に諸讚詞トロパリ。其他常例の如し、幷に發放詞。

月曜日

 月曜日の早課

第一の誦文の後に傷感の坐誦讚詞セダレン、第二調。

我わが不ふ法はふは海うみの浪なみの如ごとく我われを打うつ、我われ多おほくの罪つみに緣よりて舟ふねの如ごとく淵ふちに沈しづむ。主しゆよ、我われを痛つう悔くわいの穩おだやかなる湊みなとに向むかはしめて、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

主しゆよ、我われは果みなき樹きなり、聊いさゝかも痛つう悔くわいの果みを結むすばずして、斫きらるるを畏おそれ、彼かの滅きえざる火ひに慄をのゝく。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、此この禍わざはひに先さきだちて我われを反正はんせいせしめて救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 慈じ憐れんの泉いづみなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らに憐あはれみを垂たれ、罪つみなる人人ひとびとを顧かへりみて、恒つねの如ごとく爾なんぢの力ちからを顯あらはし給たまへ、蓋けだし我われ等らは爾なんぢを恃たのみて、天軍首てんぐんしゆガウリイルに傚ならひて爾なんぢに呼よぶ、慶よろこべよ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第二調。

我われを憐あはれみ給たまへとダワィドは言いへり。我われも爾なんぢに呼よぶ、救世主きうせいしゆよ、我われ罪つみを犯おかせり、痛つう悔くわいを以もつて我わが諸罪しよざいを潔きよめて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

神かみよ、我われを憐あはれみ、我われを憐あはれみ給たまへと、ダワィドは二ふたつの罪つみの爲ために泣なけり、我われは無む數すうの罪過ざいくわの爲ために爾なんぢに呼よぶ。彼かれは淚なみだにて其その褥しとねを濡うるほせり、我われは一滴いつてきだに注そゝがざりき。望のぞみを失うしなひて祈いのる、神かみよ、爾なんぢの大おほいなる憐あはれみに因よりて我われを憐あはれみ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

諸聖人しよせいじんは爾なんぢ雲くもを以もつて天てんを覆おほふ者ものを己おのれの衣ころもと爲なして、世よに在ありて不ふ法者はふしやより苦くるしみを忍しのびて、偶像ぐうざうの迷まよひを空むなしくせり。救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らをも見みえざる敵てきより脫のがれしめて救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほめて呼よぶ、入いらざる光ひかりの雲くもよ、慶よろこべ、爾なんぢは此この光ひかりなる光くわう榮えいの主しゆを爾なんぢの懷ふところに抱いだき給たまへり。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第二調。

ハリストスよ、我われは知しると知しらずして、晝ひると夜よるに罪つみを犯おかして、獨ひとり地ち上じやうに於おいて我わが不ふ法はふを以もつて爾なんぢの怒いかりを招まねく。獨ひとり仁じん慈じにして不死ふしなる主しゆ、慈じ憐れんに因よりて罪人ざいにんを召めして悔くわい改かいせしめん爲ために來きたりし者ものよ、爾なんぢの諸天しよてん使しの祈き禱たうに因よりて、我われを反正はんせいせしめて救すくひ給たまへ。

無む形けいの者ものの至し聖せいなる品ひん位ゐは爾なんぢ仁じん慈じの神かみ主宰しゆさいに祈いのりて、我われ等ら愛あいを以もつて彼かれ等らの帲幪おほひに趨はしり附つく者ものを定罪ていざいの時ときに宥なだめ、烈はげしき苦くるしみと、魔ま鬼きの姦かん惡あくと、諸慾しよよくの昏昧くらみと、凡およその危き難なんより脫のがれしめんことを求もとむ。

光榮、今も、生神女讚詞 潔いさぎよき生しやう神女しんぢよ、聘女よめならぬ聘女よめ、種たねなく萬有ばんいうの主宰しゆさいを生うみし者ものよ、彼かれに諸天しよてん使しと偕ともに祈いのりて、我われ等らを凡およその迷惑まどひより脫のがれしめ、我わが靈たましひに傷しやう感かんと、光くわう照せうと、諸罪しよざいの潔淨きよめとを賜たまはんことを求もとめ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり速すみやかなる保護ほご者しやなればなり。

傷感の規程カノン、我が主イイススハリストス及び其聖なる致命者に奉る。其冠詞は、神の言よ、我に淚の雨を賜へ。イオシフの作。第二調。

第一歌頌

イルモス 人人ひとびとよ、來きたりて、海うみを分わかちて、エギペトの奴ど隷れいより引ひき出いだしし民たみを過とほらせしハリストス神かみに歌うたを歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

人體じんたいを取とりて、宣の給たまひし如ごとく、義ぎ人じんを召めす爲ために非あらず、乃すなはち罪人ざいにんを召めして悔くわい改かいせしめん爲ために來きたりし言ことばよ、多おほく罪つみを犯おかしし我われを納いれて救すくひ給たまへ。

獨ひとり我われは諸罪しよざいに服ふく從じゆうし、獨ひとり我われは諸慾しよよくの爲ために門もんを啓ひらけり。獨ひとり能よく變易へんえきせしむる主しゆよ、我われを反正はんせいせしめて、爾なんぢの慈じ憐れんに由よりて救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 主しゆよ、凶きよう惡者あくしやの狂きやう暴ばうに勝かちて、不死ふしの富とみを得えたる受難者じゆなんしやは榮えい冠くわんを冠かうむりて、爾なんぢの審判しんぱん座ざの前まへに立たつ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやは聖神せいしんの力ちからを以もつて、我われ等らに治醫いやしの流ながれを注そゝぎて、常つねに我わが肉慾にくよくの流動りうどうを涸からす。

生神女讚詞 無む慾よくの泉いづみを生うみし少女せうぢよ、獨ひとり神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、諸慾しよよくに傷きずつけられし我われを醫いやして、永遠えいゑんの火ひを免まぬかれしめ給たまへ。

又聖なる無形天軍の規程カノン。其冠詞は、天使の會に讚美を歌ふ。フェオファンの作。第二調。

第一歌頌

イルモス 選えらばれたるイズライリは曾かつて履ふまれぬ、常つねならぬ、海うみの路みちを足あしを濡ぬらさずして過とほりて呼よべり、主しゆに謳うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

ハリストスよ、爾なんぢは無む形けいなる品ひん位ゐ、爾なんぢを全能者ぜんのうしやとして讚榮さんえいする者ものを、爾なんぢの神性しんせいの光くわう線せんにて燃もやされたる神妙しんめうなる熾炭やけずみと著あらはし給たまへり。

ハリストスよ、天てん使等しらは爾なんぢに近ちかづくに因よりて賜たまはりたる不ふ朽きうの力ちからと不死ふしの光くわう榮えいとを獲えて光ひかり輝かゞやく。

ハリストスよ、光ひかれる天てん使等しらは其その性せいに屬ぞくする無む形けいの潔けつ淨じやうを顯あらはし、又また形けい狀じやうを以もつて有形いうけいにも之これを示しめす。

生神女讚詞 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、天てん使しの品ひん位ゐは喜よろこびて性せいに超こゆる爾なんぢの產さんに奉ほう事じす、爾なんぢは彼かれ等らの神かみ及および主しゆを生うみたればなり。

第三歌頌

イルモス 木きを以もつて罪つみを殺ころしし主しゆよ、我われ等らを爾なんぢの中うちに堅かためて、爾なんぢを畏おそるる畏おそれを我われ等ら、爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろに植うゑ給たまへ。

朽くちざる腹はらに入いりたるハリストスよ、慾よくにて朽くちたる我わが靈たましひを痛つう悔くわいに由よりて新あらたにして、永在えいざいの光ひかりに滿みてらるる者ものと顯あらはし給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ爾なんぢの怒いかりを干おかす敵てきに從したがひ、凡およその罪つみを行おこなひて、無智むちに爾なんぢ獨一どくいつ恒忍ごうにんの主しゆを怒いからせたり。

致命者讚詞 十じふ字架じかに護まもらるる勝かたれぬ救世主きうせいしゆの軍ぐん士したる致ち命者めいしやは、神かみに由よりて、垣かきを毁こぼつが如ごとく、勇いさましく迷まよひの堅堡かためを毁こぼてり。

致命者讚詞 勇敢ゆうかんなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは神かみの力ちからを以もつて己おのれの弱よわきを堅かためて、敵てきの堅堡かためを全まつたく滅ほろぼせり。

生神女讚詞 マリヤ、黃金こがねの香かう爐ろなる者ものよ、我わが諸慾しよよくの臭しう氣きを拂はらひて、敵てきの詭き譎けつなる攻擊こうげきに搖うごかさるる我われを固かため給たまへ。

又

イルモス ハリストスよ、爾なんぢの權能けんのうに因よりて强つよき者ものの弓ゆみは折をられ、弱よわき者ものは力ちからを帶おびたり。

性せいに依よりて不死ふしなる神かみは睿えい智ちを以もつて天軍てんぐんを造つくり、恩おん寵ちようを以もつて之これを不死ふしの者ものと爲なし給たまへり。二次。

熱切ねつせつなる愛あいを以もつて今いまハリストスの前まへに立たてる諸天しよてん使しよ、我われ等ら衆しゆうの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 母はゝ永貞えいてい童女どうぢよよ、時ときを造つくりし主しゆは定さだまりたる時ときに於おいて爾なんぢより始はじめを受うけ給たまへり。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、爾なんぢは我われ迷まよへる者ものを尋たづねて、我われにまで至いたればなり。故ゆゑに慈じ憐れん深ふかき主しゆよ、我われに於おける爾なんぢの大おほいなる寬くわん容ようを讚榮さんえいす。

主しゆよ、我われ罪つみの不ふ潔けつに陷おちいり、上うへよりの華くわ美びを失うしなひて、苦くるしみを懼おそる。故ゆゑに痛つう悔くわいの美うるはしきを以もつて我わが卑微ひびなる靈たましひを照てらし給たまへ。

詭き譎けつの者ものは詭き譎けつなる言ことばを以もつて我われを爾なんぢより奪うばひて、己おのれの食しよくと爲なせり。萬有ばんいうの神かみよ、我われを其その姦かん惡あくより脫のがれしめて、痛つう悔くわいに召めし給たまへ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは猛獸まうじうの食しよくに畀あたへられ、火ひに燒やかれ、皮かはを剥はがれ、百ひやく體たいを寸斷すんだんせられて、ハリストスを援たすくる者ものと爲なして背そむかざりき。彼かれに我われ不ふ當たうの者ものの爲ために熱切ねつせつに祈いのり給たまへ。

致命者讚詞 ハリストスの致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは性せいに於おいて惟一者ゆゐいちしや、位ゐに於おいて三者さんしやとして、造つくられざる神性しんせいを尊たふとみて、敢あへて造つくられたる物ものを尊たふとまざりき、故ゆゑに諸もろもろの苦くるしみを受うけたり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、主しゆは爾なんぢの潔いさぎよき血ちより身みを取とり、甘あまんじて人人ひとびとに合あはせられ、常つねに爾なんぢの祈き禱たうに因よりて傾かたぶけられて、嘗かつて罪つみに沈しづみたる痛つう悔くわい者しやを受うけ給たまふ。

又

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ爾なんぢの光くわう榮えいなる攝せつ理りを聞ききて、爾なんぢの悟さとり難がたき能力ちからを讚榮さんえいせり。

宏くわう恩おんの主しゆよ、我われ無む形けいの者ものを祈き禱者たうしやとして爾なんぢに進すゝむ、慈じ憐れんなるに因よりて彼かれ等らを受うけて、我われを諸罪しよざいより救すくひ給たまへ。

神聖しんせいなる靈れい智ち者しやは萬有ばんいうの原因げんいんなる睿えい智ちに近ちかづきて、至いたりて上うへなる智ち識しきに光くわう照せうせらる。

天てん上じやうの品ひん位ゐの神聖しんせいなる裝さう飾しよくは聖神せいしんに護まもられて變易へんえきせず。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、イサイヤは遙はるかに爾なんぢが人體じんたいを取とりし神かみを手てに抱いだけるを見みて、預よ言げんせり。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを賜たまひ、世世よよを造つくりし主しゆよ、爾なんぢの誡いましめの光ひかりの中うちに我われ等らを導みちびき給たまへ、我われ等ら爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

瞽者めしひの目めを啓ひらきし主しゆよ、我わが昧くらみたる靈たましひを照てらし、之これを善行ぜんかうの爲ために警醒けいせいせしめて、怠惰おこたりの眠ねむりを終をはりまで厭いとはん爲ために堅かため給たまへ。

昔むかし盜賊たうぞくに遇あひし者ものの傷きずを醫いやしし獨一どくいつの救世主きうせいしゆよ、我わが實じつに罪つみの甚はなはだしき傷きずを患うれふる靈たましひを醫いやし給たまへ。

致命者讚詞 尊たふとき受難者じゆなんしやの會くわいは不ふ法はふなる窘逐者きんちくしやの會くわいを辱はづかしめて、多た樣やうの苦くるしみを忍しのびたり。今いまは絕たえず天てん使しの聖せいにせられし會くわいと偕ともに悅よろこぶ。

致命者讚詞 光くわう明めいなる致ち命者めいしやは忍耐にんたいの光くわう線せんを放はなちて、神聖しんせいなる神しん゜に藉よりて信者しんじやの靈たましひを照てらす至いたりて明あきらかなる星ほしと現あらはれたり。

生神女讚詞 讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために新あらたなる嬰兒をさなごとして永遠えいゑんの子こ、二に性せいにして二ふたつの旨むね二ふたつの行おこなひを有たもつ人ひと及および神かみなる主しゆを生うみ給たまへり。

又

イルモス イサイヤに爇炭やけずみとして現あらはれし日ひは童貞女どうていぢよの腹はらより黑暗くらやみに迷まよひし者ものに輝かゞやきて、神かみを知しる知ち識しきの光くわう照せうを賜たまふ。

至し聖せいなる神元しんげんに近ちかく立たちて光ひかり輝かゞやけるヘルワィム、セラフィム、及および至し高かうなる寶はう座ざは神かみに傚ならひて、他たの者ものを光くわう照せうす。二次。

悉ことごとくの光ひかりの原因げんいんなる神かみの言ことばよ、爾なんぢは光くわう明めいなる天軍てんぐん、樂たのしみと正せい直ちよくなる智慧ちゑとを以もつて爾なんぢの光くわう照せうを受うくる者ものを造つくり給たまへり。

生神女讚詞 潔いさぎよき神かみの聘女よめよ、聖せいにせられし天てん使し首しゆガウリイルは天てんより飛とび下くだりて、爾なんぢに原げん祖その憂うれひを解とく歡喜よろこびを福音ふくいんせり。

第六歌頌

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

我われ蛇へびの惡あく毒どくに倒たふされて、失望しつばうの牀とこに臥ふす。言ことばを以もつて癱ちゆう瘋ぶうの者ものを起おこししハリストスよ、我われをも起おこし給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆよ、蛇へびの暴風ばうふうに荒あらされ、常つねに罪つみの浪なみに溺おぼらさるる我われをペトルの如ごとく救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは性せいの界さかひに限かぎられずして、性せいに超こえて苦くるしみを忍しのべり、故ゆゑに智慧ちゑに超こゆる福樂ふくらくを獲えたり。

致命者讚詞 至し榮えいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは善ぜんなる者もの、美びなる者もの、尊そん貴きなる者ものとして、至し善ぜん、至し美び、至し尊そんの主しゆに體合たいがふせられて、常つねに我われ等らの爲ために祈いのり給たまふ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、造物主ざうぶつしゆは萬族ばんぞくの中うちより爾なんぢ、其その愛あいする所ところのイアコフの榮さかえを選えらびて、爾なんぢより輝かゞやきて現あらはれ給たまへり。

又

イルモス 主宰しゆさいよ、傷いためる靈たましひより祈禱いのりの言ことばの聲こゑを聞ききて、我われを諸難しよなんより脫のがれしめ給たまへ、爾なんぢは獨ひとり我われ等らの救すくひの緣由ゆゑんなればなり。

主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢの光くわう榮えいの神聖しんせいなる處ところに光くわう明めいの天軍てんぐんは神元しんげんの光ひかりに輝かゞやかされて、常つねに爾なんぢを讚榮さんえいして樂たのしむ。二次。

神かみの力ちからに堅かためらるるセラフィム等らは、默もださぬ聲こゑを以もつて三聖さんせいの歌うたを奉たてまつりて、我われ等らに三さん位ゐの神性しんせいを尊たふとまんことを敎をしふ。

生神女讚詞 少女せうぢよよ、主しゆは其その言いひし如ごとく、昔むかし眞實しんじつを以もつてダワィドに誓ちかひし事ことを爾なんぢの腹はらより出いづるを以もつて行おこなへり、爾なんぢは天てん地ちを宰つかさどる者ものを生うみたればなり。

第七歌頌

イルモス 黃金こがねの偶像ぐうざうがデイルの野のに奉ほう事じせられし時とき、爾なんぢの三人みたりの少者せうしやは神かみに逆さかふ命めいを顧かへりみずして、火ひの中なかに投なげられ、凉すゞしくせられて歌うたへり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我われ心こゝろの放蕩はうたうと惡あく鬼きの攻擊こうげきとに由よりて凡およその耻はづべきことに充みてられて、蕩たう子しの如ごとく爾なんぢの誡いましめに遠とほざかれり。今いまは歸かへりて呼よぶ、我われ彼かれの如ごとく罪つみを獲えたり、我わが爲ために身みを取とりしイイススよ、我われを厭いとふ勿なかれ。

萬有ばんいうの神かみよ、爾なんぢは昔むかし痛つう悔くわいせしニネワィヤ人じんを死しを生うむ恐嚇おどしより救すくへり。獨ひとり人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、此かくの如ごとく多おほくの放蕩はうたうに汚けがされたる我わが心こゝろ、今いま爾なんぢに歸かへる者ものを烈はげしき苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

致命者讚詞 神福しんぷくなる聖せい致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らに傷きずつけんと欲ほつせし凶きよう惡者あくしやは甚はなはだしく傷きずつけられて、痊いやされぬ者ものと爲なれり。然しかるに爾なんぢ等らの傷きずは古いにしへの誘惑者いうわくしやの攻擊こうげきにて傷きずつけられし衆しゆう信者しんじやの爲ために醫治いやしと爲なれり。

致命者讚詞 大だい致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは猛たけき獸けものをも、窘逐者きんちくしやの恐嚇おどしをも、火ひをも、傷きずをも、斬きる劍つるぎをも、燒やく器うつはをも畏おそれずして、他た人にんの身みに於おけるが如ごとく一切いつさいを忍しのべり、故ゆゑに榮えい冠くわんを獲えたり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる神かみの聘女よめ少女せうぢよよ、爾なんぢの腹はらは神聖しんせいなる智ち識しきの輝煌かゞやきにて無む神しんを退しりぞけし無む形けいの光ひかりの居處すまひと爲なれり。我われ等ら彼かれを歌うたひて呼よぶ、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

又

イルモス 昔むかし少者せうしやは智慧ちゑ深ふかき辯舌者べんぜつしやと現あらはれて、至いたりて敬虔けいけんなる靈たましひより口くちを以もつて祝しゆく讚さんして歌うたへり、先せん祖ぞ及および我われ等らの至し聖せいなる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

天てんの靈れい智ち者しやは爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいの寶はう座ざを環めぐりて、常つねに樂たのしみて、默もださざる口くちを以もつて歌うたふ、先せん祖ぞ及および我われ等らの至し聖せいなる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

天てん使しの品ひん位ゐは爾なんぢが肉體にくたいと共ともに天てんに擧あげらるるを見みる時とき、爾なんぢの爲ために天てんの門もんを啓ひらきて歌うたへり、先せん祖ぞ及および我われ等らの至し聖せいなる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。二次。

生神女讚詞 少女せうぢよよ、ガウリイルは爾なんぢが律法りつぱふ及および諸しよ預よ言者げんしやの首先しゆせんなるを示しめして呼よべり、獨ひとり讚さん美びたる者ものよ、視みよ、爾なんぢは先せん祖ぞ及および我われ等らの爲ために至し聖せいにして崇あがめ讚ほめらるる神かみを生うみ給たまふ。

第八歌頌

イルモス 昔むかしワワィロンの火ひの爐ゐろりは神かみの命めいによりて其その勢いきほひを分わかち、ハルデイを焦こがして、信者しんじやを凉すゞしくせり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよと歌うたへばなり。

我われ凶きよう惡者あくしやに從したがひて、其その惡謀あくばうに由よりて奴ど隸れいとせられたり、誘惑者いうわくしやは我わが大いたく弱よわりたるを見みて誇ほこる。迷まよへる者ものを喚よび歸かへす慈じ憐れんなる主しゆよ、我われを彼かれより脫のがれしめ給たまへ。

解とかれぬ者ものの永遠えいゑんの鐵索くさりを解ときたるハリストス救世主きうせいしゆよ、肉慾にくよくの解とき難がたき鐵索くさりに縛しばられたる我われを解ときて、救すくひの道みちを行ゆくに向むかはしめ給たまへ。

致命者讚詞 種種しゆじゆの苦くるしみの原因げんいんなる者ものは實じつに我われ卑微ひびなる者ものの上うへに其その悉ことごとくの姦かん惡あくを顯あらはせり。福ふくたる致ち命者めいしや、實じつにハリストスの苦くるしみに傚ならひし者ものよ、我われを其その毒害どくがいより脫のがれしめ給たまへ。

致命者讚詞 讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは偶像ぐうざうの前まへに膝ひざを屈かゞめざりしに因よりて、古いにしへの少者せうしやの如ごとく苦くるしみの爐ゐろりに投なげられ、神聖しんせいなる露つゆに由よりて焚やかれぬ者ものと顯あらはれて、ハリストスを世世よよに歌うたふ。

生神女讚詞 神かみの母はゝ童貞女どうていぢよよ、凶きよう惡者あくしやの多おほくの攻擊こうげきに由よりて弱よわりたる我わが不ふ當たうの靈たましひを、醫治いやしを施ほどこす爾なんぢの祈き禱たうを以もつて健康けんかうの者ものと爲なし給たまへ、我わが萬世ばんせい爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

又

イルモス 三重みへに福ふくたる少者せうしやは金こがねの像ざうを顧かへりみずして、變易かはりなき活いける神かみの像かたちを見みて、焰ほのほの中うちに歌うたへり、造ざうを受うけし萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

言ことばよ、爾なんぢは諸天しよてん使しを爾なんぢの仁じん慈じの肖せうとして造つくり給たまへり。彼かれ等らは熱切ねつせつに爾なんぢの誡いましめを行おこなひ、且かつ衆しゆう信者しんじやを助たすけて歌うたはしむ、造ざうを受うけし萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

ハリストスよ、爾なんぢは聖せい天てん使等しらの神聖しんせいなる華くわ美びを以もつて天てんの居處すまひを飾かざり、彼かれ等らを光くわう照せうして爾なんぢに歌うたはしむ、造ざうを受うけし萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

我われ等ら喜よろこびて、默もだすなく無む形けいの者ものの神聖しんせいなる歌うたを歌うたひ、主宰しゆさいを祝しゆく讚さんして彼かれ等らと偕ともに呼よばん、造ざうを受うけし萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

生神女讚詞 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、智慧ちゑを以もつて一切いつさいを宰つかさどる正せい直ちよくの主しゆは、宜よろしきに合かなひて爾なんぢ無む玷てん至し淨じやうなる童貞女どうていぢよを愛あいして、言いひ難がたく爾なんぢの内うちに入いり給たまへり。我われ等らを讚榮さんえいして呼よぶ、萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

次ぎて生神女の歌詠を歌ふ、「我が靈は主を崇め」。

第九歌頌

イルモス 食しよくに緣よりて甚はなはだしく朽きう壞くわいに陷おちいりしアダムを、言いひ難がたき智慧ちゑを以もつて改あらためん爲ために神かみより來きたりし神かみ言ことば、我われ等らの爲ために測はかり難がたく聖せいなる童貞女どうていぢよより身みを取とりし主しゆを、我われ等ら信者しんじやは同心どうしんに歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

視みよ、工作こうさくの時ときなり、靈たましひよ、何なんぞ大いたく悶もだえて無智むちに眠ねむれる。起おきて、淚なみだを以もつて爾なんぢの燈ともしびを整とゝのへよ。急いそげ、靈たましひの新娶者はなむこは近ちかづく、遲おそなはる勿なかれ、恐おそらくは神聖しんせいなる門もんの外そとに遺のこされん。

嗚呼あゝ凡およその行爲わざを諸天しよてん使し及および人人ひとびとの前まへに裸ら體たいにして顯あらはす爾なんぢの審判しんぱんは何なんぞ懼おそるべき、嗚呼あゝ爾なんぢが罪つみを犯おかしし者ものに發はつせんとする言ことばは何なんぞ烈はげしき。ハリストスよ、終をはりの前さきに我われを之これより脫のがれしめて、我われに反正はんせいの淚なみだを與あたへ給たまへ。

致命者讚詞 光くわう榮えいなる聖せい受難者じゆなんしやは羔こひつじ及および牧者ぼくしやの神聖しんせいなる血ちを以もつて印しるされて、無む玷てんなる羔こひつじの如ごとく屠ほふられて悅よろこべり。今いまは實じつに在天ざいてんの冢ちよう子しの聖せいなる全ぜん敎けう會くわいを裝さう飾しよくす。

致命者讚詞 勇敢ゆうかんなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは日ひの如ごとく輝かゞやける燈ともしびと顯あらはれて、爾なんぢ等らの苦くるしみの光くわう線せんにて凡およその靈たましひを照てらし、凡およその迷まよひの幽闇くらやみを斥しりぞく。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて宜よろしきに合かなひて爾なんぢ等らを讚さん頌しようす。

生神女讚詞 主しゆよ、我われを宥なだめ、審判しんぱんせん時とき我われを宥なだめて、火ひに定罪ていざいする毋なかれ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ。ハリストスよ、爾なんぢを生うみし童貞女どうていぢよと、衆おほくの天てん使しと、致ち命者めいしやの會くわいとは我わが爲ために爾なんぢに祈いのる。

又

イルモス 神かみの言ことば、童貞女どうていぢよの子こ、諸神しよしんの神かみ、諸しよ聖せいの至し聖者せいしやたる主しゆよ、爾なんぢは全まつたく冀望のぞみ、全まつたく甘味あまみなり、故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢ及および爾なんぢを生うみし者ものを崇あがめ讚ほむ。

ハリストスよ、白はく衣いにして現あらはれたる天てん使等しらは爾なんぢの神聖しんせいなる門もん徒とに爾なんぢの再さい度どの降臨かうりんを傳つたへたり。彼かれ等らと偕ともに我われ等ら皆みな爾なんぢを祝しゆく讚さんして崇あがめ讚ほむ。二次。

爾なんぢは凡およその靈れい智ちなる性せいの恩主おんしゆとして、至し大だいなる仁じん慈じに由よりて、爾なんぢの元げん始しの光ひかりを像かたどる第だい二にの光明くわうみやうを造つくり給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな感謝かんしやして爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

生神女讚詞 至いたりて潔いさぎよき者ものよ、神聖しんせいなる天てん軍ぐん首しゆは爾なんぢの光くわう潔けつなる童貞どうていを悟さとり、之これを奇きとして、喜よろこびを爾なんぢに報はうぜり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを生しやう神女しんぢよとして崇あがめ讚ほむ。

次ぎて「常に福にして」、及び叩拜。小聯禱及び光耀歌。其他常例の如し。

挿句くづけに傷感の讚頌スティヒラ、第二調。

仁じん慈じの主しゆよ、我われは行おこなひし不ふ當たうなる我わが行爲しわざを思おもひて、稅ぜい吏りと、泣なきたる淫いん婦ぷと、放蕩はうたうの子こに效ならひて、爾なんぢの慈じ憐れんに趨はしり附つき、爾なんぢに俯ふ伏ふくして祈いのる、神かみよ、我われを定罪ていざいせざる先さきに我われを宥なだめて、憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

童貞女どうていぢよより生うまれし主しゆよ、我わが不ふ法はふを顧かへりみずして、我わが心こゝろを潔きよめて、之これを爾なんぢの聖神せいしんの殿でんと爲なし給たまへ。無む量りやうなる大仁だいじん慈じを有たもつ主しゆよ、我われを爾なんぢの顏かんばせより退しりぞくる勿なかれ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 嗚呼あゝ受難者じゆなんしや致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らはハリストスの爲ために死しに至いたるまで苦くるしみを忍しのびて、爾なんぢ等らの靈たましひを天てん上じやうに神かみの手てに託たくし、爾なんぢ等らの不ふ朽體きうたいは全ぜん世せ界かいに尊たふとまる。諸しよ司し祭さい諸しよ王わうは爾なんぢに伏拜ふくはいし、我われ等ら衆しゆう民みんは喜よろこびて常つねに呼よぶ、聖人せいじんの死しは主しゆの目めの前まへに貴たふとき寢ねむりなり。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら憑恃たのみを以もつて爾なんぢに負おはせたり、願ねがはくは望のぞみを失うしなはざらん。惑まどはさるる者ものの扶ふ助者じよしやよ、我われ等らを患くわん難なんより救すくひて、諸敵しよてきの惡謀あくぼうを破やぶり給たまへ、讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢは我われ等らの救すくひなればなり。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ及び聯禱、次に第一時課、常例の聖詠、及び發放詞。

 月曜日の聖体礼儀に

月曜日の眞福詞、第二調。

我われ等ら盜賊たうぞくの聲こゑを爾なんぢに奉たてまつりて祈いのる、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

主しゆ神かみよ、我われを救すくひて、靈たましひを全まつたくして爾なんぢを愛あいする者ものの分ぶんに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

衆しゆう天軍てんぐんは畏おそれを以もつて爾なんぢ神かみに奉ほう事じす。彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われ等らを救すくひ給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんにし爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは信しんの武器ぶきを以もつて敵てきの軍ぐん隊たいに勝かちて、神かみに攜たづさへられたり。

光榮 靈れい智ちなる品ひん位ゐは人類じんるゐと共ともに三さん位ゐにして一性いつせいなる神かみを尊たふとむ。

今も 神かみを種たねなく生うみし至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、彼かれに我われ等らの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

 月曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に讚頌スティヒラ、第二調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

獨ひとり罪つみなきハリストス、獨ひとり惡あくに與あづからざる者もの、獨ひとり仁じん慈じの泉いづみなる主しゆよ、我わが困こん苦くを見みよ、我わが患くわん難なんを見みよ。我わが傷きずを悉ことごとく痊いやし、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて爾なんぢの僕ぼくを救すくひ給たまへ、我わが怠惰おこたりの雲くもを遠とほく拂はらひて、爾なんぢ至し仁じんなる我わが救主きうしゆを讚榮さんえいせん爲ためなり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

嗚呼あゝ我わが卑微ひびなる靈たましひよ、目めを注そゝぎて爾なんぢの行爲しわざを見みよ、何なんぞ穢けがらはしき、嗚呼あゝ爾なんぢの裸ら體たい、又また爾なんぢの孤こ獨どくなるを見みよ、蓋けだし神かみ及および諸天しよてん使しより離はなれて、終をはりなき苦くるしみに投とうぜられん。醒めさめて興おきよ、急いそぎて呼よべ、救世主きうせいしゆよ、我われ罪つみを犯おかせり、我われに赦ゆるしを予あたへて、我われを救すくひ給たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

我われ肉體にくたいを甚はなはだしく汚けがし、靈たましひと心こゝろとを穢けがらはしき思念おもひにて亂みだし、我わが感覺かんかくを悉ことごとく殘そこなひ、目めを汚けがし、耳みゝを穢けがし、舌したを言ことばにて汚けがして悉ことごとく耻はづべき者ものの爲なせり。故ゆゑに爾なんぢに俯ふ伏ふくして呼よぶ、主宰しゆさいハリストスよ、我われ罪つみを獲え、爾なんぢの前まへに罪つみを獲えたり、我われを赦ゆるして救すくひ給たまへ。

又前驅の讚頌スティヒラ、第二調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

主しゆの光くわう榮えいなる前ぜん驅くよ、爾なんぢに祈いのる、急いそぎて我われを誘惑いざなひより脫のがれしめ給たまへ、蓋けだし我われと戰たゝかふ殘酷ざんこくなる惡あく鬼きは大いたく我われを攻せめて、爾なんぢの僕ぼくの靈たましひを弱よわき禽とりの如ごとく捕とらへんと欲ほつす。至いたりて福ふくたる者ものよ、終をはりに至いたるまで我われを遺すつる毋なかれ、彼かれ等らが爾なんぢの我わが避所かくれがたるを知しらん爲ためなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

荒あれたる胎たいの至し聖せいなる果み、野のの榮さかゆる花はな、美うるはしき燕つばめ、聲こゑの淸きよき鶯うぐひす、黃金こがねの鳩はとなる福ふくたる前ぜん驅くよ、常つねに果みを結むすばざる我わが不ふ當たうの靈たましひを善行ぜんかうの果みを繁しげく結むすぶ者ものと爲なし給たまへ、其その百ひやく倍ばいの穗ほを生しやうじて、爾なんぢに神聖しんせいなる讚さん美びを捧さゝげん爲ためなり。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

福ふくたる前ぜん驅くよ、爾なんぢに祈いのる、我われ自みづから罪過ざいくわにて定罪ていざいせられし者ものを永遠えいゑんの火ひ、地ぢ獄ごくの黑暗くらやみ、凡およその憂愁うれひ、凡およその困苦くるしみ、凡およその葘害わざはひより脫のがれしめて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、我われを救すくはるる者ものの分ぶん、諸聖人しよせいじんの言いひ難がたき樂たのしみと喜よろこびとの處ところに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 種種しゆじゆの憂うれひ、甚はなはだしき誘惑いざなひ、諸もろもろの慾よくは我わが卑微ひびなる靈たましひを荒あらす。婚姻こんいんに與あづからざる少女せうぢよ、ハリストス神かみの母はゝよ、爾なんぢの神聖しんせいなる帲幪おほひの下したに趨はしり附つく我われの爲ために生命いのちの海うみに於おいて導みちびく者ものと爲なりて、我われを擾みだす颶風あらしを鎭しづめ、痛つう悔くわいと安息あんそくとの穩おだやかなる湊みなとに向むかはしめ給たまへ。

本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。

挿句くづけに傷感の讚頌スティヒラ、第二調。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、我われ放蕩はうたうの子この如ごとく爾なんぢの前まへに罪つみを獲えたり。父ちゝよ、我われ痛つう悔くわいする者ものを受うけよ、神かみよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

ハリストス救世主きうせいしゆよ、我われ稅ぜい吏りの聲こゑを以もつて爾なんぢに呼よぶ、神かみよ、我われを彼かれの如ごとく潔きよめて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 聖せいなる諸しよ致ち命者めいしやが我われ等らの爲ために祈いのり、ハリストスを歌うたふに因よりて、凡およその迷まよひは熄やみ、人類じんるゐは信しんを以もつて救すくはる。

光榮、今も、生神女讚詞 神かみの母はゝよ、我わが盡ことごとくの恃たのみを爾なんぢに負おはしむ、我われを爾なんぢの覆おほひの下したに守まもり給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ。光榮、今も、生神女讚詞、讚詞トロパリの調に依る。聯禱。發放詞。

 月曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第二調。

第一歌頌

イルモス 全まつたく備そなはれる力ちからは昔むかしファラオンの全軍ぜんぐんを深水ふかみに敷しき、人體じんたいを取とりし言ことば、讚榮さんえいせらるる主しゆは萬よろづの惡あくを致いたす罪つみを滅ほろぼし給たまへり、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

潔いさぎよき者ものよ、敎けう會くわいは神しん゜に依よりて華はなさきたる常つねに榮さかゆる頌しよう美びの榮えい冠くわんを、天てん使し首しゆガウリイルと偕ともに、爾なんぢ神かみの聘女よめに奉たてまつり、慶よろこべよと歌うたひて、敬つゝしみし爾なんぢに冠かうむらす。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる潔いさぎよき者もの、ハリストス神かみの讚さん美びたる母はゝよ、爾なんぢは智慧ちゑに超こえて、父ちゝの聖せいなる地ちと現あらはれ、生命いのちを施ほどこす葡ぶ萄だうを耕作かうさくして、生せい活くわつせしむる飮料のみものを全ぜん世せ界かいに飮のませ給たまへり。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、甚はなはだしく罪惡ざいあくに打うたれて溺おぼらさるる全ぜん世せ界かいの神かみ及および主しゆ、正たゞしく我われ等らを救すくひの湊みなとに向むかはしむる舵師かぢとりなるハリストスを爾なんぢ生うみ給たまへり。

今も 避所かくれが及および救すくひの城邑まちなるマリヤ、神かみの母はゝよ、我われ等ら皆みな信しんを以もつて爾なんぢに祈いのりて、熱切ねつせつに求もとむ、爾なんぢの忠ちゆう信しんなる諸僕しよぼくの祈き禱たうを納いれて、我われ等ら衆しゆうを罪過ざいくわの擬ぎ定ていより釋とき給たまへ。

第三歌頌

イルモス 木きを以もつて罪つみを殺ころしし主しゆよ、我われ等らを爾なんぢの中うちに堅かためて、爾なんぢを畏おそるる畏おそれを我われ等ら、爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろに植うゑ給たまへ。

エワの誘いざなはるるは神かみが人人ひとびとより離はなるる始はじめと爲なれり、聖せいなる生しやう神女しんぢよは復また神かみを我われ等らに攜たづさへ給たまへり。

讚さん美びたる者ものよ、光くわう榮えいなるイオアキムは爾なんぢを生命いのちの寶藏はうざうとして世せ界かいの爲ために生うみて、至し福ふくなる產さんを喜よろこぶ、希望のぞみが胎たいの荒あれたる親おやに由よりて至いたりたればなり。

光榮 アンナより喜悅よろこびは人類じんるゐに輝かゞやけり、彼かれの子こは童貞女どうていぢよにして王わうを生うみ給たまへり。女をんな等たちは彼かれと偕ともに其その產さんを喜よろこぶ、此これを以もつて詛のろひより解とかれたればなり。

今も 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、棘いばらはシナイに於おいて爾なんぢの至し榮えいなる產さんを前兆ぜんてうせり、爾なんぢ神性しんせいの火ひを胎内たいないに受うけて、之これに焚やかれざりしに因よる。

第四歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ爾なんぢの光くわう榮えいなる攝せつ理りを聞ききて、爾なんぢの悟さとり難がたき能力ちからを讚榮さんえいせり。

童貞女どうていぢよよ、イアコフは神妙しんめうに爾なんぢを神かみが其その上うへに立たちたる梯かけはしとして預よ見けんせり。

至し淨じやうなる者ものよ、天てん使等しらの梯かけはしを降くだることは爾なんぢに藉よりて言ことばの我われ等らに來きたるを示しめせり。

光榮 讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの胎たい、爾なんぢの乳ち房ぶさは福さいはひなり、此これ等らに因よりて我われ等ら皆みな生命いのちを得えたればなり。

今も 神かみの母はゝよ、我われ等ら正せい信しんなる聲こゑを以もつて爾なんぢに於おける奧あう義ぎを歌か頌しようす。此この奧あう義ぎに因よりて爾なんぢの祈き禱たうを以もつて敎けう會くわいは護まもらる。

第五歌頌

イルモス 幽闇くらやみに居をる者ものの光くわう照せう、失望しつばうする者ものの救きう贖しよくたるハリストス我わが救主きうしゆよ、我われ爾なんぢ平安へいあんの王わうに朝あさの祈禱いのりを奉たてまつる。爾なんぢの光ひかりを以もつて我われを照てらし給たまへ、我われ爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

讚さん美びたる生しやう神女しんぢよマリヤよ、我われ等ら爾なんぢを律法りつぱふ及および約匱やくひつより最いと尊たふとき者ものとして崇あがめ歌うたふ、爾なんぢは石板せきばんとして萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ及および神かみを有たもちたればなり。

生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを神かみの言ことばの寶はう座ざとして讚榮さんえいす、神かみは人ひととして其その上うへに坐ざして、ヘルワィムより最高いとたかき者ものと現あらはれたり。

光榮 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは神聖しんせいなる爾なんぢの產さんに因よりて全ぜん人類じんるゐを苦くるしき奴ど隷れいより釋とき、ハリストスに於おける自じ由いうを以もつて女をんなの性せいを尊たふとくし給たまへり。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢが子こを生うみしに因よりて、女をんな等たちは勇いさましく敵てきに勝かち、處女しよぢよは爾なんぢに趨はしり附つきて童貞どうていを守まもる。

第六歌頌

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

世せ界かいの歡喜よろこびなる潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら正せい信しんを以もつて天てん使しと偕ともに爾なんぢに呼よぶ、童貞女どうていぢよよ、慶よろこべ、我われ等らを爾なんぢの歡喜よろこびに與あづからしめて、我わが憂うれひを消けし給たまへ。

母はゝ永貞えいてい童女どうぢよよ、我われ等ら正せい信しんを以もつて爾なんぢを奪うばはれざる歡喜よろこびの居處すまひとして崇あがめ讚ほむ、我われ等らを爾なんぢの歡喜よろこびに與あづからしめて、我わが憂うれひを消けし給たまへ。

光榮 神かみの聘女よめよ、爾なんぢは神聖しんせいなる爾なんぢの光くわう榮えいを以もつて諸天しよてんより最高いとたかき天てんと現あらはれたり、我われ等らの神かみが爾なんぢの内うちに入いりて、我われに現あらはれたればなり。

今も 今いま女をんなの性せいは喜よろこび、今いま憂うれひは熄やみて、喜悅よろこびは輝かゞやけり、マリヤが喜悅よろこびなる救世主きうせいしゆハリストス神かみを生うみたればなり。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第二調。

神かみの母はゝよ、我わが靈たましひの甚はなはだしき怠惰おこたり、我わが心こゝろの柔弱よわみを見みて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて之これを醫いやし、我われを幽闇くらやみ及および困苦くるしみより脫のがれしめて、救すくはれし者ものの分ぶんに與あづからしめ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり我われの恃賴たのみ、我われの慰藉なぐさめなればなり。

第七歌頌

イルモス 黃金こがねの偶像ぐうざうがデイルの野のに奉ほう事じせられし時とき、爾なんぢの三人みたりの少者せうしやは神かみに逆さかふ命めいを顧かへりみずして、火ひの中うちに投なげられ、凉すゞしくせられて歌うたへり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

潔いさぎよき者ものよ、昔むかしゲデオンの羊ひつじの毛けは神かみの言ことばの爾なんぢに降くだるを預よ象しやうせり、爾なんぢ不ふ朽きうなる童貞女どうていぢよが露つゆの如ごとく之これを受うけて孕はらみたればなり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢに呼よぶ、潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの腹はらの果みは祝しゆく福ふくせられたり。

マリヤ、ハリストス我わが神かみの母はゝよ、爾なんぢに於おける奧あう義ぎは新あらたにして畏おそるべく、正たゞしくして驚おどろくべし。蓋けだし我われ等ら皆みな爾なんぢに依よりて神かみ及および主宰しゆさいと和わ睦ぼくして、今いま諸天しよてん使しと偕ともに歌うたふ、潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの腹はらの果みは祝しゆく福ふくせられたり。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、昔むかしゲデオンは明あきらかに爾なんぢの神聖しんせいなる產さんを預よ兆てうして、羊ひつじの毛けを搾しぼるに由よりて水みづの滿みちたる鉢はちを攜たづさふ、蓋けだし主しゆは全ぜん性せいを以もつて神妙しんめうに爾なんぢ至し淨じやうの者ものの内うちに入いり給たまへり。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの腹はらの果みは祝しゆく福ふくせられたり。

今も マリヤよ、爾なんぢは萬有ばんいうの神かみ及および救主きうしゆを生うみて、道みちに迷まよへる者ものの嚮導みちびき、罪つみを犯おかしし者ものの更新あらため、望のぞみを失うしなひし者ものの冀望のぞみ、歌うたふ者ものの援助たすけと爲なり給たまへり、潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの腹はらの果みは祝しゆく福ふくせられたり。

第八歌頌

イルモス 火ひの爐ゐろりの中うちにエウレイの少者せうしやに降くだりて、焰ほのほを露つゆに變へんぜし神かみを、造物ざうぶつは主しゆとして歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために新あらたなる樂園らくゑんと顯あらはれて、死しを致いたす樹きに非あらず、乃すなはち生命いのちの樹き、種たねなく栽うゑたる者ものとして主しゆを生しやうじたり。我われ等ら皆みな彼かれに養やしなはれて、不死ふしの生命いのちを得うるなり。

生しやう神女しんぢよよ、ハリストスの全ぜん敎けう會くわいは爾なんぢの產さんを崇あがめ歌うたふ、蓋けだし愛あいを以もつて爾なんぢに趨はしり附つく罪人つみびと及および卑微ひびなる者ものは皆みな救すくはる、ハリストスが人人ひとびとを救すくはん爲ために地ちに來きたりたればなり。

光榮 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、原げん母ぼは爾なんぢに依よりて定罪ていざいを釋とかれたり。視みよ、今いま女等をんなたちはハリストスの爲ために苦くるしみを忍しのび、女をんなの性せいは喜よろこぶ、初しよ致ち命女めいぢよフェクラの呼よぶが如ごとし。

今も 潔いさぎよき童貞女どうていぢよ、神かみの母はゝよ、信しんを以もつて望のぞみを爾なんぢに負おはしむる者ものは一人ひとりも亡ほろびざりき、唯たゞ媢嫉ねたみを以もつて爾なんぢの印しるされたる像ざうに伏拜ふくはいするを拒こばむ者ものは亾ほろぶ。

第九歌頌

イルモス 日ひより前さきに光ひかり輝かゞやきし神かみ、肉體にくたいにて我われ等らに臨のぞみし者ものを、貞潔ていけつの腹はらより言いひ難がたく生うみし讚さん美びたる至淨いときよき生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、讚さん美びの詞ことばを以もつて熱切ねつせつに爾なんぢの產さんを歌か頌しようする我われに爾なんぢの耳みゝを傾かたぶけ、嫠婦やもめの禮物れいもつの如ごとく我わが口くちの歌うたを受うけて、我わが諸罪しよざいの赦ゆるしを求もとめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの華くわ美びは光ひかり、爾なんぢの無む玷てんなる潔けつ淨じやうは輝かゞやき、是これより更さらに盛さかんに爾なんぢの產さんは光ひかり輝かゞやく、日ひ及および萬物ばんぶつの神かみ造成主ざうせいしゆが爾なんぢより生うまれたればなり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢ潔けつ淨じやうの光ひかり、童貞どうていの光くわう明めい、及および神かみの母はゝを宜よろしきに合かなひて歌うたを以もつて歌か頌しようし、讚さん美びの聲こゑと共ともに爾なんぢに祈いのる、我われ等らを童貞どうていに堅かため、潔けつ淨じやうに護まもり給たまへ。

今も 至し潔けつ至し榮えいなるマリヤよ、爾なんぢは體からだと靈たましひとを汚けがれなく神かみの爲ために守まもりしに因よりて、ハリストス王わうは爾なんぢの美うるはしきを慕したひ、爾なんぢを己おのれの人じん性せいの母はゝと爲なして、我われの救すくひを成なし給たまへり。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。聖三祝文。「天に在す」の後に諸讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

火曜日

  火曜日の早課

第一の誦文の後に傷感の坐誦讚詞セダレン。第二調。

我わが靈たましひよ、審問しんもんの畏おそるべきを思おもひて、永遠えいゑんの苦くるしみの報むくいに慄をのゝき、淚なみだを流ながして、痛つう悔くわいを以もつて呼よべ、神かみよ、我われ罪つみを犯おかせり、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

主しゆよ、我われ定罪ていざいせられし我わが良りやう心しんを試こゝろみて、爾なんぢの懼おそるべき審判しんぱんに慄をのゝく、我われの爲ためには行おこなひに由よる救すくひなければなり。慈じ憐れんの富とみを有たもつ主しゆとして、ハリストス神かみよ、我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほめて呼よぶ、杖つゑよ、慶よろこべ、是これより種たねなく生しやうぜし神かみは木きの上うへに死しを滅ほろぼし給たまへり。

第二の誦文の後に傷感の坐誦讚詞セダレン、第二調。

我われを憐あはれみ給たまへとダワィドは言いへり。我われも爾なんぢに呼よぶ、救世主きうせいしゆよ、我われ罪つみを犯おかせり、痛つう悔くわいを以もつて我わが諸罪しよざいを潔きよめて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

神かみよ、我われを憐あはれみ、我われを憐あはれみ給たまへとダワィドは二ふたつの罪つみの爲ために泣なけり、我われは無む數すうの罪過ざいくわの爲ために爾なんぢに呼よぶ。彼かれは淚なみだにて其その褥しとねを濡うるほせり、我われは一滴いつてきだに注そゝがざりき。望のぞみを失うしなひて祈いのる、神かみよ、爾なんぢの大おほいなる憐あはれみに因よりて我われを憐あはれみ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 ハリストス神かみよ、爾なんぢは至し善ぜんなる主しゆとして、爾なんぢの聖者せいしやを黃金こがねよりも耀かゞやく者ものと爲なし、爾なんぢの克肖者こくせうしやの榮さかえを顯あらはせり。仁じん慈じなる主しゆとして、彼かれ等らの祈き禱たうを納いれて、我われ等らの生命いのちを平安へいあんならしめ給たまへ。獨ひとり聖者せいしやの中うちに休いこふ主しゆよ、我われ等らの禱いのりを香かう爐ろの香かをりの如ごとく升のぼらしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ保護ほごを爾なんぢに求もとむる者ものを棄すつる勿なかれ、我わが靈たましひ爾なんぢを賴たのめばなり、我われを憐あはれみ給たまへ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第二調。

イオアンよ、爾なんぢは慈じ憐れんの盡つきざる泉いづみをイオルダンの流ながれに沈しづめたり。故ゆゑに我われ熱切ねつせつに爾なんぢに祈いのる、多おほくの慾よくに溺おぼらされ、日日ひびに甚はなはだしく世せ俗ぞくの淵ふちに沈しづめらるる我われを、爾なんぢの嘉よみして納いれらるる祈き禱たうを以もつて、生命いのちの湊みなとに導みちびき給たまへ。

至し善ぜんなるハリストスよ、爾なんぢは大おほいなる慈じ憐れんに因よりて、天てんを傾かたぶけて降くだりて、爾なんぢの造物ざうぶつを救すくはん爲ために來きたれり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの畏おそるべき定制ていせいを歌うたひて、爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの前ぜん驅くの祈き禱たうに由よりて我われ等らに諸罪しよざいの潔淨きよめを與あたへ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり慈じ憐れんの主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 夫をつとを識しらずして己おのれの造成主ざうせいしゆを生うみて、凡およその肉體にくたいに糧かてを賜たまふ者ものに乳ちを哺のまする母はゝを孰たれか見み、誰たれか聞ききたる、嗚呼あゝ奇き跡せきや。恩おん寵ちようを蒙かうむれる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの腹はらはヘルワィムの寶はう座ざと顯あらはれたり、我われ等らの靈たましひの爲ために祈いのり給たまへ。

傷感の規程カノン、我が主イイススハリストス及び聖なる致命者に奉る。其冠詞は、嗚呼救世主よ、爾我が涕泣を納れ給ふ。イオシフの作。第二調。

第一歌頌

イルモス 靈たましひよ、モイセイの歌うたを採とりて籲よべ、佑たすけ護まもる者もの顯あらはれて、我わが救すくひと爲なれり、彼かれは吾わが神かみなり、我われ彼かれを讚ほめ揚あげん。

兄弟けいていよ、逝世せいせいの先さきに痛いたく己おのれの爲ために哭なかん、善よき淚なみだに由よりて、其時そのとき聊いさゝかも益えきを爲なさざる苦くるしみの淚なみだを逃のがれん爲ためなり。

ハリストスよ、我われ千萬せんまん度たび痛つう悔くわいせんことを約やくしたれども、感動かんどうなき靈たましひを有たもちて、罪過ざいくわに陷おちいる。救世主きうせいしゆよ、我わが弱よわきを憐あはれみ給たまへ。

致命者讚詞 神性しんせいの恩おん寵ちように濕うるほされて、苦くるしみの火ひを忍しのびしハリストスの受難者じゆなんしやよ、甚はなはだしき慾よくの中うちに沈しづみたる我われを地ぢ獄ごくの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

致命者讚詞 讚さん美びたるハリストスの致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは神かみの力ちからに由よりて敵てきに對たいして堅けん固ごなる者ものと顯あらはれて、彼かれ等らの堅けん固ごならざる力ちからを破やぶれり。

生神女讚詞 イサイヤが昔むかし熾炭やけずみを執とれる鉗ひばさみとして見みたる神かみの母はゝよ、我わが心こゝろの肉慾にくよくを燒やきて、全まつたく滅ほろぼし給たまへ。

又至尊なる預言者前驅イオアンの規程カノン。其冠詞は、授洗者よ、禱を受け給へ。イオシフの作、第二調。

第一歌頌

イルモス 全まつたく備そなはれる力ちからは昔むかしファラオンの全軍ぜんぐんを深水ふかみに敷しき、人體じんたいを取とりし言ことば、讚榮さんえいせらるる主しゆは萬よろづの惡あくを致いたす罪つみを滅ほろぼし給たまへり、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

ハリストスの授洗者じゆせんしや及および前ぜん驅くよ、常つねに肉體にくたいの逸樂いつらくに沈しづめる吾わが心こゝろを治をさめて、諸慾しよよくの浪なみを止とゞめ給たまへ、我わが神聖しんせいなる平穩へいをんに在ありて爾なんぢを歌か頌しようせん爲ためなり。

授洗者じゆせんしやよ、爾なんぢは測はかり難がたき光くわう照せうに照てらされて、光くわう明めいなる星ほしとして靈れい智ちの東ひがしに先さきだてり。惡あく鬼きの諸もろもろの攻擊こうげきに昧くらまされたる吾わが心こゝろが是この東ひがしに輝かゞやかされんことを祈いのり給たまへ。

睿えい智ちなる者ものよ、爾なんぢは昔むかし凡およその罪惡ざいあくを恩おん寵ちようの洪水こうずゐにて溺おぼらす淵ふちを河かはに沈しづめたり。福ふくたる者ものよ、祈いのる、爾なんぢの神聖しんせいなる轉達てんたつを以もつて我わが罪過ざいくわの流ながれを涸からし給たまへ。

生神女讚詞 福ふくたる前ぜん驅くよ、爾なんぢは肉體にくたいを取とりし神かみを生うみたる潔いさぎよき童貞女どうていぢよの親しん族ぞくたりき。我われ等ら彼かれと偕ともに爾なんぢを尊たふとみて、今いま爾なんぢの神聖しんせいなる殿でんに居をる者ものは祈いのる、我われ等らをも聖神せいしんの殿でんと爲なし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 諸善しよぜんを耕作かうさくし、諸德しよとくを培養ばいやうする神かみよ、爾なんぢの慈じ憐れんに因よりて、實みを結むすばざる我わが智慧ちゑを實みを結むすぶ者ものと顯あらはし給たまへ。

我われ怠惰おこたりの眠ねむりにて靈たましひを重おもくせり、ハリストスよ、之これを興おこして、痛つう悔くわいの爲ために警醒けいせいせしめて、爾なんぢの戒いましめを行おこなはしめ給たまへ。

イイススよ、畏おそるべき日ひに於おいて我われを望のぞみを失うしなひし者ものと顯あらはす勿なかれ。終をはりに至いたらざる先さきに我われを反正はんせいせしめて、烈はげしき苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

致命者讚詞 熱愛ねつあいに由よりて善よくハリストスの苦くるしみに效ならひしハリストスの受難者じゆなんしやよ、我わが靈たましひの甚はなはだしき慾よくを醫いやし給たまへ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは天てんに在ある永久えいきうの福ふくを獲えん爲ために、地ちに在ありて凡およその苦く難なんの誘いざなひを堅けん固ごに忍しのび給たまへり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは母はゝに宜よろしきが如ごとく萬ばん衆しゆうを養やしなふ者ものに乳ちを哺のませ、常つねに己おのれの手てに萬有ばんいうを持たもつ主しゆを手てに抱いだき給たまへり。

又

イルモス 爾なんぢ我われを信しんの石いしに堅かたく立たて、我わが口くちを啓ひらきて我わが敵てきに對むかはしめ給たまへり。蓋けだし我わが神しん゜は樂たのしみて歌うたへり、吾わが神かみと侔ひとしく聖せいなるはなく、主しゆよ、爾なんぢの外ほかに義ぎなるはなし。

主しゆの前ぜん驅くよ、祈いのる、我わが靈たましひの傷きずを醫いやし、怠惰おこたりに由よりて昧くらまされたる我わが智慧ちゑを爾なんぢの神聖しんせいなる轉達てんたつを以もつて照てらして、我われを敵てきの諸もろもろの攻擊こうげきより脫のがれしめ給たまへ。

睿えい智ちなる前ぜん驅くよ、爾なんぢは神かみの攝せつ理りに由よりて生うまれて、生うみし者ものの無む結果けつくわを釋ときたり。主しゆの前ぜん驅くよ、吾わが心こゝろの無む結果けつくわを釋ときて、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて今いま之これを諸德しよとくの果みを繁しげく結むすぶ者ものと爲なし給たまへ。

授洗者じゆせんしや及および前ぜん驅くよ、爾なんぢの轉達てんたつに由よりて、愛あいを以もつて神聖しんせいなる堂だうを造つくる者ものに天てん上じやうの居處すまひを獲えしめんことを祈いのれ、信しんを以もつて爾なんぢの殿でんに奉ほう事じする者ものを聖神せいしんの殿でんと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 前ぜん驅くは母はゝの胎内たいないに在ありて樂たのしみ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものの胎内たいないに在ある主しゆを拜はいせり、彼かれに我われを凡およその憂うれひより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

第四歌頌

イルモス 預よ言者げんしやは爾なんぢが童貞女どうていぢよより生うまるるを預よ見けんして、傳つたへて呼よべり、ハリストスよ、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり。蓋けだし爾なんぢは南みなみより、樹こ蔭かげ繁しげき聖山せいざんより來き給たまへり。

言ことばよ、詭き譎けつの智ち者しやたる敵てきは我われの一切いつさいを盜ぬすまれて貧まづしくなりたるを見みて、我わが滅亾ほろびを喜よろこぶ。光くわう榮えいの主しゆ、貧者ひんじやを富とます者ものよ、我われを其その姦かん惡あくより救すくひ給たまへ。

主しゆよ、我われ爲なすべからざる事ことを行おこなひて、手てと目めとを汚けがし、爾なんぢの慈じ憐れんと寬くわん忍にんとを盡つくして、爾なんぢの怒いかりを干おかせり。至し善ぜんなる者ものよ、我われを眷かへりみて憐あはれみ給たまへ。

致命者讚詞 神かみは其その聖者せいしや、彼かれに聽ききて、偶像ぐうざうの迷まよひを破やぶり、アダムが昔むかし遠とほざかりし樂園らくゑんを嗣つぎたる者ものの中うちに何なんぞ其それ嚴おごそかなる。

致命者讚詞 福ふくたる者ものよ、爾なんぢ等らは己おのれの血ちの流ながれを以もつて、昔むかし惡あく鬼きに獻さゝげらるる血ち、之これを獻さゝぐる衆しゆう人じんの滅亾ほろびを致いたす者ものを止とゞめたり。故ゆゑに常つねに讚さん美びせらる。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、預よ言者げんしやの至し榮えいなる會くわいは聖神せいしんに因よりて智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの奧あう義ぎを學まなびて、種種しゆじゆに聖せいなる現げん象しやうを以もつて之これを前兆ぜんてうせり、我われ等らは明あきらかに其その成じやう就じゆせしを見みる。

又

イルモス 童貞女どうていぢよに藉よりて來きたりし者ものは使し者しやに非あらず、天てん使しに非あらず、主しゆ親みづから人體じんたいを取とりて、我われ全まつたき人ひとを救すくひ給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

恩おん寵ちように富とめる者ものよ、爾なんぢは天てんを傾かたぶけて、人人ひとびとと對たい話わせし者ものの首かうべを爾なんぢの手てにて傾かたぶけたり。此この手てを以もつて我われを助たすけて、吾わが心こゝろを謙遜けんそんに護まもり給たまへ。

福ふくたる前ぜん驅くよ、荒あれたる野のは爾なんぢを其その住じゆう居者きよしやと爲なせり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、我わが荒あれたる靈たましひ、凡およその聖せいなる行おこなひなき者ものに之これを具そなへしめ給たまへ。

爾なんぢは神かみの法はふを守まもらしめて、不ふ法はふに屠ほふられたり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、惡あく鬼きの誘惑いうわくに誘いざなはれて、常つねに不ふ法はふを行おこなふ我われを正たゞしくなし給たまへ。

前ぜん驅くよ、爾なんぢは己おのれを以もつて主宰しゆさい・王わうの爲ために殿でんと爲なして、今いま神聖しんせいなる居處すまひに遷うつれり。爾なんぢの爲ために至し聖せいなる堂だうを造つくりし者ものに此この居處すまひを獲えしめんことを祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ病やめる者ものを眷かへりみて、我わが治ぢし難がたき甚はなはだしき諸慾しよよくを醫いやし給たまへ、我わが爾なんぢ全ぜん人類じんるゐを尊たふとくせし者ものを尊たふとまん爲ためなり。

第五歌頌

イルモス 我わが救世主きうせいしゆよ、我われの靈たましひの黑暗くらやみを掃はらひて、爾なんぢの誡いましめの光ひかりにて我われを照てらし給たまへ、爾なんぢ獨ひとり平安へいあんの王わうなればなり。

我われ無智むちにして罪つみに罪つみを加くはへ、我わが死しする時ときに賴よる所ところなし、嗚呼あゝ我われは如何いかにしてハリストスの前まへに立たたん。

慈じ憐れんなる主しゆよ、我われ破は船せんの如ごとく難なんに遇あひ、爾なんぢが我われに賜たまひし載にを失うしなひて、今いま貧まづしくなりて呼よぶ、ハリストスよ、我われを遺すつる毋なかれ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは下しもの光くわう榮えいを輕かろんじて、之これを踐ふみしに由よりて、天てんの光くわう榮えいを獲えて、ハリストスと共ともに居をるなり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは思念おもひを肉體にくたいの愛あいより離はなし、信しんを以もつて喜よろこびてハリストスの受うけし如ごとき苦くるしみを受うけたり。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、ダニイルは聖神せいしんに由よりて爾なんぢを大おほいなる山やまとして見みたり、石いしは是これより斫きられて、惡鬼デモンの偶像ぐうざうを碎くだく。

又

イルモス 幽闇くらやみに居をる者ものの光くわう照せう、失望しつばうする者ものの救きう贖しよくたるハリストス我わが救主きうしゆよ、我われ爾なんぢ平安へいあんの王わうに朝あさの祈禱いのりを奉たてまつる。爾なんぢの光ひかりを以もつて我われを照てらし給たまへ、我われ爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

イオルダンの流ながれの中うちに不ふ朽きうの泉いづみたるハリストスに洗せんを授さづけし前ぜん驅くよ、我わが慾よくの流ながれを涸からして、我われに義ぎ人じん等らの麗うるはしき歡喜よろこびの甘あまき流ながれを繼つがしめんことを祈いのり給たまへ。

我われ行おこなひし事ことと未み來らいの畏おそるべき審判しんぱんとを思おもひて、悲かなしみ泣なき、恐おそれ慄をのゝき、常つねに惑まどふ。慈じ憐れんなる主しゆよ、爾なんぢの授洗者じゆせんしやの祈き禱たうに因よりて我われを宥なだめ給たまへ。

前ぜん驅くよ、爾なんぢは人人ひとびとの救すくひは罪過ざいくわの痛つう悔くわいに在ありとの法はふを立たてて、律法りつぱふと恩おん寵ちようとの間あひだに立たちたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、痛つう悔くわいの式のりにて我われ等らを照てらし給たまへ。

恩主おんしゆ・言ことばよ、爾なんぢの諸しよ恩おんを一切いつさい浪費むだづかひせし我われに痛つう悔くわいの時ときを與あたへ給たまへ、痛つう悔くわいの全ぜん世せ界かいの宣傳者せんでんしや、大おほいなる前ぜん驅くイオアンの此これが爲ために爾なんぢに祈いのるに因よりてなり。

生神女讚詞 我われ詭き譎けつの敵てきの惡謀あくばうと誘惑いうわくとに因よりて殺ころされたり。萬有ばんいうの實在じつざいの生命いのちを生うみし純じゆん潔けつなる女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我われを生いかし給たまへ、我わが敬虔けいけんにして爾なんぢ純じゆん潔けつなる者ものを歌うたはん爲ためなり。

第六歌頌

イルモス 救世主きうせいしゆよ、我われ罪つみの深處ふかみに圍かこまれ、世せ俗ぞくの淵ふちに沈しづめらる。求もとむ、イオナを猛獸まうじうより救すくひし如ごとく、我われをも諸慾しよよくより引ひき上あげて救すくひ給たまへ。

救世主きうせいしゆよ、我われ昔むかしのハナアンの婦をんなの如ごとく爾なんぢに呼よぶ、神かみの子こよ、我われを憐あはれみて助たすけ給たまへ、我われ甚はなはだしく病やみて、自みづから感覺かんかくを囘くわい復ふくする能あたはざる靈たましひを有たもてばなり。

烈はげしき諸慾しよよくの暴風あらしは我われを擾みだす。イイススハリストスよ、昔むかし海うみを禁いましめて、爾なんぢの聖せいなる門もん徒とを救すくひし如ごとく、我われをも宥なだめて救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 尊たふとき受難者じゆなんしやよ、無む形けいの天軍てんぐんは爾なんぢ等らが肉體にくたいに在ありて顯あらはしし忍耐にんたいを奇きとして、爾なんぢ等らに能力ちからと苦く勞らうの報むくいとを賜たまふ主しゆを讚さん美びせり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは己おのれの血ちの流ながれに染そめられ、目めを抉くじられ、甚はなはだしき沍寒さむさに凍こゞえさせられて後のち、溫あたゝき生命いのちに移うつりて、ハリストスを讚ほめ歌うたふ。

生神女讚詞 讚さん美びたる者ものよ、我われ等ら爾なんぢ萬有ばんいうの神かみ及および養育者やういくしやたるハリストスを生うみし者ものを、我われ等らが食くらひて復また飢うゑざる奧密あうみつの餅へいを載のする案あんとして知しる。

又

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

言ことばを傳つたへし聲こゑよ、衆しゆうの聲こゑを受うけて、信しんを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

福ふくたる前ぜん驅くよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが靈たましひの痛傷いたみを痊いやし、諸罪しよざいの重負おもにを釋とき、失望しつばうする我われを救すくひ給たまへ。

至し榮えいなる前ぜん驅くよ、爾なんぢの手てを以もつて洗せんを授さづけしイイススに、我われ常つねに手てを擧あげて彼かれに向むかふ者ものを罪つみの手てより脫のがれしめんことを祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 我われ怠惰おこたりの坐睡ゐねむりに侵おかさる、罪つみの寢ねむりは我わが心こゝろを重おもくす。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの常つねに警醒けいせいする轉達てんたつにて我われを起おこして救すくひ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりの中うちにヘルワィムに效ならひて、祝いはひて呼よべり、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、蓋けだし眞實しんじつと義ぎ判はんとに緣よりて、悉ことごとく之これを我われ等らの諸罪しよざいの爲ために降くだせり。爾なんぢは萬世ばんせいに歌うたはれ、讚ほめ揚あげらる。

ハリストスよ、我われ爾なんぢの法はふに背そむきて、無智むちなる諸慾しよよくに服ふくし、不ふ當たうの事ことを行おこなひて、我わが無智むちに於おいて地ち上じやうの衆しゆう人じんより虛むなしき者ものと爲なれり。救世主きうせいしゆよ、仁愛じんあいに由よりて、我わが亾ほろぶるを容ゆるす毋なかれ。

主しゆよ、我われダワィドの如ごとく呼よぶ、視みよ、我われは不ふ法はふに於おいて妊はらまれ、淫いん婦ぷの如ごとく淚なみだを流ながす、我われ悲かなしまする僕ぼくの如ごとく、爾なんぢ獨一どくいつ仁じん慈じなる神かみを悲かなしませたり。救世主きうせいしゆよ、仁愛じんあいに由よりて、我わが亾ほろぶるを容ゆるす毋なかれ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやの會くわいは言ことばを以もつて萬物ばんぶつを造つくりし神かみを切せつに愛あいするに由よりて、諸難しよなんを受うけて、功勞こうらうを顯あらはせり。故ゆゑに生命いのちを施ほどこす手てより致ち命者めいしやに適かなふ榮えい冠くわんを冠かうむらせられ、今いま天てん上じやうに悅よろこびて、神聖しんせいなる嗣し業げふを樂たのしむ。

致命者讚詞 至し榮えいなる者ものは目めを抉くじられ、手てと足あしとを斷たたれ、天てんに登のぼる途みちに遣つかはされて、恒つねに此この途みちを遮さへぎる敵てきを斃たふせり。言ことばよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢを讚さん頌しようする衆しゆうを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 讚さん美びたるマリヤよ、爾なんぢが智慧ちゑに超こゆる產さんをヘルワィムは讚榮さんえいし、セラフィムは歌か頌しようし、寶はう座ざ、權柄けんぺい、主しゆ制せいは常つねに讚さん美びす、爾なんぢ獨ひとり身みにて神かみを生うみたればなり。潔いさぎよき者ものよ、彼かれに我われ等ら衆しゆう愛あいを以もつて爾なんぢを尊たふとむ者ものの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

又

イルモス 不ふ法はふなる虐者しへたげびとの神かみに戾もとる命令めいれいは高たかき焰ほのほを起おこしたれども、讚ほめ歌うたはるるハリストスは敬虔けいけんの少者せうしやに屬神ぞくしんの露つゆを降くだし給たまへり。

前ぜん驅くよ、爾なんぢの傳つたへし悔くわい改かいの斧をのを以もつて我わが心こゝろの諸慾しよよくの棘いばらを根ねより絕たちて、之これを拔ぬき、神聖しんせいなる無む慾よくと凡およその惡あくより我われを遠とほざくる神かみを畏おそるる畏おそれとを其内そのうちに植うゑ給たまへ。

光くわう榮えいなる前ぜん驅くよ、爾なんぢは水みづの上うへに己おのれの宮みやを建たつる主しゆにイオルダンの流ながれの中うちに洗せんを授さづけたり。彼かれに常つねに吾わが眼めに神聖しんせいなる傷しやう感かんの水みづを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

罪つみを任になふ神かみの羔こひつじを世よに傳つたへし光くわう榮えいなる前ぜん驅くよ、彼かれに祈いのりて、我われを山羊やぎの分ぶんに與あづからざる者ものと爲なして、右みぎなる綿羊ひつじに合あはせんことを求もとめ給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、荒あれたる胎たいは果みを結むすびて、爾なんぢ己おのれの胎内たいないに身みを取とりし言ことばを宿やどせる者ものに逢あひたるに、其その胎たいに在ありし大おほいなる前ぜん驅くは爾なんぢの至し聖せいなる果みを識しりて、歡よろこび躍をどりて之これを拜はいせり。

第八歌頌

イルモス 昔むかしシナイ山ざんに於おいて棘いばらの中うちにモイセイに童貞女どうていぢよの奇き跡せきを預あらかじめ示しめしし者ものを尊たふとみ歌うたひ、崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

爾なんぢは慈じ憐れんに由よりて我われ等らを神成しんせいせん爲ために人體じんたいを取とり給たまへり、唯たゞ我われ逸樂いつらくに耽ふけりて、聊いさゝかも之これに感動かんどうせざりき。衆しゆう人じんの救すくひなるハリストスよ、爾なんぢの仁じん慈じを以もつて我われを反正はんせいせしめ給たまへ。

善よき牧者ぼくしやたる言ことばよ、罪惡ざいあくの山やまの中なかに迷まよひし我わが不ふ當たうの靈たましひを返かへして救すくひ給たまへ、詭き譎けつなる敵てきが終をはりに至いたるまで我われを囓かまざらん爲ためなり。

致命者讚詞 美び善ぜんなる受難者じゆなんしやは甚はなはだしく傷きずつけられて、互たがひに呼よべり、勇いさみて偕ともに立たたん、視みよ、ハリストスは萬世ばんせいに凋しぼまざる勝しよう利りの榮えい冠くわんを與あたへ給たまふ。

致命者讚詞 爾なんぢ等らは堅けん固ごなる忍耐にんたいを以もつて、强つよき索なはを以もつてするが如ごとく、惡謀あくぼうを抱いだきて爾なんぢ等らを誘いざなはんと欲ほつする蛇へびを絞しめ殺ころして、樂園らくゑんの糧かてを嗣つぐ者ものと顯あらはれたり。

生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、神かみは我われ等らを神成しんせいせん爲ために、爾なんぢの潔いさぎよき血ちより身みを取とりて、人ひとと爲なり給たまへり。彼かれに爾なんぢを尊たふとむ者ものの爲ために常つねに祈いのり給たまへ。

又

イルモス 昔むかしワワィロンの火ひの爐ゐろりは神かみの命めいによりて其その勢いきほひを分わかち、ハルデイを焦こがして、信者しんじやを凉すゞしくせり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよと歌うたへばなり。

手てを伸のべて、水みづを以もつて穢けがれなき者ものを洗あらひし前ぜん驅くよ、地ちに仆たふれたる我われに手てを授さづけて、我われを肉慾にくよくの穢けがれより出いだし、痛つう悔くわいを以もつて我わが全身ぜんしんを潔きよめて、我われを救すくひ給たまへ。

靈たましひよ、痛つう悔くわいの爲ために時ときを有たもちて、怠惰おこたりの最いと深ふかき眠ねむりを拂はらひ、速すみやかに醒さめて、爾なんぢの主宰しゆさいに呼よべ、慈じ憐れんなる主しゆよ、爾なんぢの授洗者じゆせんしやの祈き禱たうに由よりて我われを宥なだめ給たまへ。

福ふくたる前ぜん驅くよ、慾よくの流ながれ、惡あくの水みづは我わが靈たましひにまで至いたれり。河かはの流ながれを以もつて至いたりて安靜あんせいなる無む慾よくの淵ふちを洗あらひし者ものよ、速すみやかに我われを援たすけ給たまへ。

禍わざはひなる哉かな、多おほくの惡あくを行おこなひし我われや、禍わざはひなる哉かな、至し仁じんなる神かみを怒いからしし我われや。ハリストスの授洗者じゆせんしやよ、我われを助たすけて、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我わが罪過ざいくわを釋とき、我わが債おひめの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

生神女讚詞 至し上じやうの神かみを身みにて生うみし純じゆん潔けつなる者ものよ、我われを侵害しんがいする諸慾しよよくの汚穢けがれより出いだし、至いたりて貧まづしくなりし我われを神聖しんせいなる德とくに富とまし給たまへ、我わが救すくはれて爾なんぢを歌か頌しようせん爲ためなり。

第九歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよが孕はらめる者ものと現あらはれて、產さん苦くなく子こを生うみし事こと、地ち上じやうの者ものの中うち誰たれか是かくの如ごときを聞きき、或あるひは誰たれか何なんの時ときにか見みたる。潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの奇き跡せきは斯かくの如ごとし、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

嗚呼あゝ爾なんぢの審判しんぱん座ざは何なんぞ畏おそるべき、ハリストスよ、我われ其その前まへに審判しんぱんせらるべきに、聊いさゝかも畏おそれを感かんぜずして、怠惰おこたりを以もつて吾わが年としを送おくる。獨一どくいつの造成主ざうせいしゆ、罪つみを犯おかししマナッシヤを反正はんせいせしめし者ものよ、我われを反正はんせいせしめ給たまへ。

ハリストスよ、爾なんぢに呼よぶ、我わが無む量りやうの惡あくの流ながれを止とゞめて、我わが無知むちに因よりて陷おちいりし汚穢けがれを洗あらはん爲ために我われに淚なみだの流ながれを與あたへ給たまへ。中ちゆう心しんより痛つう悔くわいせし淫いん婦ぷを爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて救すくひし主しゆよ、我われを救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 聖せい受難者じゆなんしやの光くわう明めいなる記き憶おくは日ひの如ごとく我われ等らに輝かゞやきて、地ちの四し極きよくを照てらし、神聖しんせいなる神しん゜を以もつて拜偶像はいぐうざうの闇やみと靈たましひを害がいする諸慾しよよくの昧くらみとを拂はらふ。

致命者讚詞 尊そん貴きなる隊たい、凱旋がいせんする軍ぐん、選拔せんばつの兵へい、聖せい致ち命者めいしやの會くわい、福ふくたる品ひん位ゐは無む形けい軍ぐんの品ひん位ゐに合あはせられたり。ハリストスよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて、我われ等ら衆しゆうを爾なんぢの國くにに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよ母はゝマリヤよ、爾なんぢの腹はらより我われ等らに輝かゞやきて、無む神しんの夜よを拂はらひし主しゆの光ひかれる光くわう線せんにて、信しんを以もつて爾なんぢを尊たふとむ衆しゆうを照てらして、審判しんぱんの時ときに永遠えいゑんの幽闇くらやみより脫のがれしめ給たまへ。

又

イルモス 無む原げんの父ちゝの子こ、神かみと主しゆは、童貞女どうていぢよより人體じんたいを取とり、我われ等らに顯あらはれて、昧くらまされし者ものを明あかし、散ちらされし者ものを集あつめ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら讚さん美びたる生しやう神女しんぢよを崇あがめ歌うたふ。

獨ひとり罪つみなくして慈じ憐れん多おほき主しゆよ、爾なんぢを人人ひとびとの罪つみを任になふ神かみの羔こひつじとして全ぜん世せ界かいに傳つたへし授洗者じゆせんしやの祈き禱たうに因よりて、我われを罪惡ざいあくの汚穢けがれより出いだし給たまへ。

主しゆの前ぜん驅くよ、我われは爾なんぢを芳かうばしき花はな、薰かをる松まつ、凋しぼまざる百合ゆり、尊たふとき香料かうれうとして有たもち、爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきて、爾なんぢの祈き禱たうに因よりて我わが行爲しわざの臭しう氣きより脫のがさる。

至いたりて福ふくたる者ものよ、我われを惡あしき行おこなひの果みを結むすばずして、常つねに諸德しよとくの善よき果みを結むすぶ者もの、主しゆの子こ、神かみの國くにに與あづかる者もの、聖人せいじんの會くわいの同どう住ぢゆう者しやと爲なし給たまへ。

主しゆの前ぜん驅くよ、我われ等ら爾なんぢを愛あいし、愛あいを以もつて爾なんぢを尊たふとみ、爾なんぢの神聖しんせいなる殿でんに集あつまりて祝しゆく讚さんする者ものに、天てんより諸難しよなんの解放かいはう、度ど生せいの悔くわい改かい、諸罪しよざいの赦免しやめんを與あたへ給たまへ。

生神女讚詞 預よ言者げんしやよ、爾なんぢは萬物ばんぶつを其その手てに持たもちて、神しん母ぼの胎内たいないに懷いだかるる主しゆを拜はいせり。彼かれに我わが卑微ひびなる靈たましひ、每日まいにち多おほくの罪つみに陷おちいる者ものの救すくはれんことを神しん母ぼと偕ともに祈いのり給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。小聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに傷感の讚頌スティヒラ、第二調。

我われ衆しゆう人じんに超こえて罪つみを犯おかせり、誰たれにか效ならひて痛つう悔くわいせん、若もし稅ぜい吏りの如ごとく歎息たんそくせば、恐おそらくは天てんを侵おかさん、若もし淫いん婦ぷの如ごとく泣なかば、淚なみだにて地ちを汚けがさん。然しかれども神かみよ、我われに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへて、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

童貞女どうていぢよより生うまれし主しゆよ、我わが不ふ法はふを顧かへりみずして、我わが心こゝろを潔きよめて、之これを爾なんぢの聖神せいしんの殿でんと爲なし給たまへ。無む量りやうなる大仁だいじん慈じを有たもつ主しゆよ、我われを爾なんぢの顏かんばせより退しりぞくる勿なかれ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

聖せいなる致ち命者めいしやはハリストスの十じふ字架じかを勝かたれぬ武器ぶきとして執とりて、惡あく魔まの悉ことごとくの力ちからを空むなしくし、天てんの榮えい冠くわんを受うけて、我われ等らの垣墻かきと爲なりて、我われ等らの爲ために祈いのり給たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞 慶よろこべよ、生しやう神女しんぢよマリヤ、毁こぼたれぬ殿でん、更さらに言いへば聖せいなる殿でんや、預よ言者げんしやの呼よぶが如ごとし、爾なんぢの聖せいなる殿でんは義ぎに於おいて奇異きいなり。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ及び聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、及び其他常例の如し、幷に發放詞。

  火曜日の聖体礼儀に

火曜日の眞福詞、第二調。

我われ等ら盜賊たうぞくの聲こゑを爾なんぢに奉たてまつりて呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

我われ慾よくを以もつて盜賊たうぞく及および淫いん婦ぷに超こえたり。救世主きうせいしゆよ、我われ自みづから定罪ていざいせられし者ものを宥なだめ給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

慈じ憐れんの淵ふちを水みづに沈しづめし前ぜん驅くよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが諸慾しよよくを滅ほろぼし給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

ハリストスの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは己おのれの血ちの流ながれにて迷まよひの流ながれを涸からして、宜よろしきに合かなひて讚榮さんえいせらる。

光榮 錄しるされし如ごとく、人ひとの智慧ちゑは辯才べんさいを盡つくして、宜よろしきに合かなひて神性しんせいの三さん位ゐなる一いち元げんを歌うたふ能あたはず。

今も 無む原げんなる神かみを焚やかれずして生うみし者ものを我われ等ら皆みな讚歌ほめうたを以もつて絕たえず歌か頌しようせん。

  火曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十字架の讚頌スティヒラ、第二調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

言ことばよ、爾なんぢ十じふ字架じかに在ありて暮くれしに、光くわう體たいは光ひかるに忍しのばずして晦くらみ、地ちは震ふるひ、磐いはは崩くづれ、殿でんの飾かざりは中なかより裂さけ、墓はかは啓ひらけ、死し者しやは興おき、地ぢ獄ごくは下しもに在ある衆しゆうを出いだし、惡あく魔まは勝かたれ、死しは衆しゆう人じんの爲ために寢ねむりと爲なれり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

ハリストスよ、睿えい智ちなる盜賊たうぞくは爾なんぢが實み繁しげき葡ぶ萄だうたるを見みて、最いと巧たくみなる盜賊たうぞくと爲なりて、甚はなはだ少すくなき言ことばを以もつて先さきに行おこなひし諸罪しよざいの赦ゆるしを盜ぬすむ。我われ等ら皆みな務つとめて彼かれに效ならひて呼よばん、人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ等らをも憶おもひ給たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

ハリストスよ、爾なんぢの十じふ字架じかは、星ほしの天てんに於おけるが如ごとく、實じつに神聖しんせいなる敎けう會くわいの中うちに光ひかりて、惡あく鬼きを燒やき、信者しんじやを照てらし、爾なんぢを釘ていせし者ものの面おもてを辱はづかしむ。昔むかし爾なんぢは十じふ字架じかを前兆ぜんてうする木きを以もつて先せん祖ぞを奴ど隷 れいより引ひき出いだし、野のに於おいて石いしより蜜みつを吸すふを致いたせり。

次ぎて月課經ミネヤの讚頌スティヒラ。若し月課經なくば、至聖生神女の讚頌。同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

女宰ぢよさいよ、慈じ憐れんによりて爾なんぢの内うちに我わが合成がふせいを衣きて、我われ等らの爲ために十じふ字架じかと死しとを受うけたる主しゆは爾なんぢを衆しゆう人じんの轉達者てんたつしや、衆しゆう信者しんじやの大おほいなる避所かくれが、衆しゆうの保護ほご者しやと顯あらはし給たまへり。故ゆゑに神かみの聘女よめよ、常つねに彼かれに祈いのりて、我われ等ら衆しゆうに諸罪しよざいの潔きよめを降くださんことを求もとめ給たまへ。

句 萬ばん民みんよ、主しゆを崇あがめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

昔むかし童貞女どうていぢよ及および牝め羊ひつじは其その胎たいより生うまれし羔こひつじが定罪ていざいせられて、二ふたりの犯罪者はんざいしやと共ともに木きに懸かゝれるを見みて、呼よびて曰いへり、我わが子こ及および神かみよ、見みる所ところの畏おそるべき奧密あうみつは奇異きいなり、然しかれども爾なんぢの智慧ちゑの淵ふちは誰たれも測はかる能あたはず、我われ爾なんぢの恒忍ごうにんを歌うたふ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

爾なんぢの姿容すがたの美うるはしきは何處いづこにかある、子こよ、爾なんぢの華くわ美びの榮さかえは何處いづこにか隱かくれたる、言いひ難がたき華くわ美びを造つくりし神かみ、人ひとの子こより美うるはしき吾わが子こよ、如何いかんぞ卑いやしめられ、辱はづかしめられて、善よき姿容すがたもなく、華榮みばえもなく、衆しゆう人じんの爲ために木きの上うへに懸かゝりたると、至し善ぜんなる童貞女どうていぢよは歎息たんそく涕泣ていきふして呼よべり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 光くわう體たいの光ひかりは十じふ字架じかに露あらはれたる靈れい智ちの光ひかりに勝かたれて隱かくれたり、常つねに小ちひさき者ものは大おほいなる者ものに勝かたれ、善よき者ものは更さらに善よき者ものに位くらゐを讓ゆづる、ハリストスの光ひかるに、如何いかんぞ物質ぶつしつの光ひかりは隱かくるるに宜よろしからざらんと、至し淨じやうなる者ものは爾なんぢ光ひかりの光ひかりを觀みて、聞きくに勝たふる者ものに謂いへり。

次ぎて「穩なる光」。提綱ポロキメン、主しゆよ、願ねがはくは爾なんぢの仁慈いつくしみと慈憐あはれみとは、我わが生命いのちある日ひ我われに伴ともなはん。及び「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。其他。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第二調。

ぺトルを海うみに救すくひしハリストス救世主きうせいしゆよ、十じふ字架じかの力ちからを以もつて我われを救すくへ、神かみよ、我われを憐あはれみ給たまへ。
句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

常つねに爾なんぢの諸しよ恩おんを樂たのしむ者ものは十じふ字架じかに釘ていせらるべしと呼よべり、義ぎ人じん等らを殺ころす者ものは恩主おんしゆに代かへて犯罪者はんざいしやを赦ゆるさんことを乞こへり。爾なんぢは、ハリストスよ、苦くるしみを受うけて我われ等らを救すくはんと欲ほつして、默もだして彼かれ等らの殘忍ざんにんを忍しのび給たまへり、人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやの會くわいは窘逐者きんちくしやに敵てきして曰いへり、我われ等らは萬軍ばんぐんの王わうの兵へい士しなり、爾なんぢ等ら火ひ及および種種しゆじゆの苦くるしみに我われ等らを付わたすとも、聖三者せいさんしやの力ちからを諱いまざらん。

光榮、今も、十字架生神女讚詞

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの子こ及および神かみが釘ていせられし時とき、爾なんぢは多おほくの苦く痛つうを忍しのび、歎息たんそく涕泣ていきふして呼よべり、嗚呼あゝ甘愛かんあいなる子こよ、如何いかんぞアダム以い來らいの地ち上じやうの者ものを救すくはんと欲ほつして、非義ひぎに苦くるしみを受うくると。至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢに祈いのる、彼かれを我われ等らの爲ために慈じ憐れんなる者ものと爲なし給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。聯禱、及び發放詞。

  火曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第二調。

第一歌頌

イルモス 人人ひとびとよ來きたりて、海うみを分わかちて、エギペトの奴ど隷れいより引ひき出いだしし民たみを過とほらせしハリストス神かみに歌うたを歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

純じゆん潔けつなる者ものよ、我われには爾なんぢを讚さん頌しようする爲ために一いつも言ことばなし、我わが罪つみの幽闇くらやみが我われを蔭おほへばなり。唯たゞ祈いのる、嗚呼あゝ神かみの母はゝよ、悶もだゆる我われを納いれ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ無む量りやうの罪つみより爾なんぢの庇覆おほひの下したに趨はしり附つく。潔いさぎよき者ものよ、神かみ及および主宰しゆさいを寬くわん容ようの者ものと爲なして、我われを救すくひ給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、爾なんぢは我われの爲ために熱切ねつせつなる潔淨きよめなり。爾なんぢに趨はしり附つきて、我われ助たすけられて靈たましひの救すくひを得えん、爾なんぢは萬有ばんいうの神かみの母はゝとして、能あたはざることなければなり。

今も 靈たましひの誘惑者いうわくしやは我われを滅兦ほろびの坎あなに誘いざなへり。生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの權能けんのうの手てを我われに伸のべて、速すみやかに光ひかりに上のぼせ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 木きを以もつて罪つみを殺ころしし主しゆよ、我われ等らを爾なんぢの中うちに堅かためて、爾なんぢを畏おそるる畏おそれを我われ等ら、爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろに植うゑ給たまへ。

我われ不ふ當たうの者ものは多おほくの盜賊ぬすびとに遇あひ、衣ころもを剥はがれ、傷きずつけられて遺のこされたり。潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢ我われを遺すつる勿なかれ。

蛇へびは嘗かつて木きに緣よりてアダムを誘いざなひて裸ら體たいにせり、今いまは彼かれ輙たやすく我わが靈たましひを虜とりこにせり。女宰ぢよさいよ、爾なんぢに祈いのる、我われを宥なだめ給たまへ。

光榮 我われ今いま爾なんぢ我わが眞まことの轉達者てんたつしや及および庇覆おほひたる者ものに我わが密みつ事じを告つぐ、爾なんぢの子こが其その義ぎなる審判しんぱんの時とき我われに之これを責せめざらん爲ためなり。

今も 潔いさぎよき者ものよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし行おこなひに由よりては敢あへて我われ等らに救すくひなし。故ゆゑに熱切ねつせつなる信しんを以もつて爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの諸僕しよぼくを憐あはれみ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、爾なんぢは我われ迷まよへる者ものを尋たづねて、我われにまで至いたればなり。故ゆゑに慈じ憐れん深ふかき主しゆよ、我われに於おける爾なんぢの大おほいなる寬くわん容ようを讚榮さんえいす。

女宰ぢよさいよ、我われ醫いやされずして病やめる者もの、我われ貧まづしくなりたる者ものを遺すつる毋なかれ。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの慈じ憐れんの油あぶらを我われに注そゝげ、爾なんぢの慮おもんぱかりを以もつて神かみよりする不ふ朽きうの黃金こがねにて我われを富とまし給たまへ。

我われ凡およその善ぜんを剥はがれて諸惡しよあくの中うちに臥ふす、我われ之これを昔むかし陷おちいりし者ものより多おほく衣きたり。神かみの聘女よめよ、今いま彼かの者ものを以もつて我われを飾かざり、此この者ものより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 我われ言ことばに於おいて旨むねに於おいて常つねに淫いんを以もつて淫いん婦ぷに超こえ、貪むさぼを以もつて稅ぜい吏りに超こえたり。女宰ぢよさいよ、我われに終をはりの至いたらざる先さきに痛つう悔くわいを以もつて二ふたつの者ものを潔きよむるを得えしめ給たまへ。

今も 神かみの母はゝよ、我われ爾なんぢより遠とほざかりて、哀かなしき野のに居をるなり、誰たれか我われに翼つばさを予あたへん、我われ飛とびて、爾なんぢ我わが恃賴たのみ、不ふ當たうなる我われを煩悶もだえより救すくふ者ものに至いたらん。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを賜たまひ、世世よよを造つくりし主しゆよ、爾なんぢの誡いましめの光ひかりの中うちに我われ等らを導みちびき給たまへ、我われ等ら爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、爾なんぢの腹はらより地ちに居をる者ものに輝かゞやきし暮くれざる光ひかりを以もつて、我わが晦くらみたる靈たましひを照てらして、我わが心こゝろより凡およその暗やみを拂はらひ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、我わが不ふ當たうなる惡あしき行おこなひの甚はなはだしき夜よは我われを蔽おほふ。讚さん美びたる者ものよ、我われ爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの子こ及および主宰しゆさいの神聖しんせいなる光ひかりに我われを導みちびき給たまへ。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの子こ萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆが放蕩はうたうの子こを受うけし如ごとく、我われをも受うけ給たまへ。我われ蕩たう子しと偕ともに呼よぶ、我われ實じつに罪つみを犯おかせり、女宰ぢよさいよ、我われを救すくひ給たまへ。

今も 十じふ字架じかに於おいて身みに傷きずつけられし主しゆを言いひ難がたく生うみし至し淨じやうの者ものよ、爾なんぢ慈じ憐れんなるに因よりて、凶きよう惡者あくしやの攻擊こうげきにて傷きずつけられたる我わが心こゝろを痊いやし給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

我われ罪つみの坎あなに陷おちいりて、目めを擧あげて義ぎなる神かみに向むかふを畏おそる。神かみの聘女よめよ、我われ爾なんぢを吾わが恃賴たのみと爲なす。

吾わが心こゝろは甚はなはだしく無む量りやうの罪過ざいくわの浪なみに打うたる。生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの有能いうのうの祈き禱たうを以もつて之これを穩靜をんせいなる港みなとに導みちびき給たまへ。

光榮 女宰ぢよさい我わが恃賴たのみなる者ものよ、我わが身みより離はなれん時とき我われに爾なんぢの光くわう榮えいの華くわ美びを覩みるを得えしめ給たまへ、我わが之これに因よりて罪過ざいくわの赦ゆるさるるを知しらん爲ためなり。

今も 聖せいなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの諸僕しよぼく、信しんを以もつて爾なんぢに趨はしり附つく者ものを、神かみに奉たてまつる爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、諸もろもろの誘惑いざなひと菑害わざはひと憂患うれひより脫のがれしめ給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も

坐誦讚詞セダレン、第二調。

生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほめて呼よぶ、杖つゑよ、慶よろこべ、是これより種たねなく生しやうぜし神かみは木きの上うへに死しを滅ほろぼし給たまへり。

第七歌頌

イルモス 黃金こがねの偶像ぐうざうがデイルの野のに奉ほう事じせられし時とき、爾なんぢの三人みたりの少者せうしやは神かみに逆さかふ命めいを顧かへりみずして、火ひの中なかに投なげられ、凉すゞしくせられて歌うたへり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

敵てきは今いま口くちを開ひらきて我われを其その腹はらに受うけんと欲ほつす、蓋けだし諸方しよはうより誘いざなひを進すゝめ、網あみを張はりて、悉ことごとく吾わが途みちを遮さへぎる。童貞女どうていぢよ母はゝよ、急いそぎて我われを其その惡謀あくぼうより援たすけ給たまへ。

敵てきは我わが感覺かんかくを汚けがし、智慧ちゑを擾みだして、我われを失望しつばうの坎あなに落おとさんと務つとむ。故ゆゑに我われ獨ひとり爾なんぢに呼よぶ、我わが避所かくれがなる神かみの聘女よめよ、我われを此この凶きよう惡者あくしやの手てより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 昔むかし三人みたりの少者せうしやを燃もゆる爐ゐろりより救すくひし我わがハリストスよ、爾なんぢ親みづから言ことばよ、婚姻こんいんに與あづからざる爾なんぢの母はゝの祈き禱たうに因よりて、我われをも吾わが無む量りやうの惡あくを以もつて盛さかんに燃もやしし焰ほのほより救すくひて凉すゞしくし給たまへ。

今も 敗はい壞くわい者しやは吾わが心こゝろの肉慾にくよくに傾かたぶくを見みて之これを殺ころせり。婚姻こんいんに與あづからざる母はゝよ、爾なんぢの神聖しんせいなる力ちからを以もつて之これを生いかして、我われに敵てきに勝かつを得えしめ給たまへ、我わが信しんを以もつて爾なんぢに、身みにて神かみを生うみし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらると、呼よばん爲ためなり。

第八歌頌

イルモス 火ひの爐ゐろりの中うちにエウレイの少者せうしやに降くだりて、焰ほのほを露つゆに變へんぜし神かみを、造物ざうぶつは主しゆとして歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

我われ多おほくの惡あくの勝たへ難がたき重負おもにに因よりて屈かゞめられて、敢あへて吾わが目めを天てんに擧あぐるを得えず、唯たゞ爾なんぢに呼よぶ、惟一ゆゐいちの生しやう神女しんぢよよ、我われ陷おちいりし者ものを憐あはれみ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ爾なんぢの子こ及および神かみの怒いかりを干おかせり、我われを救すくひ給たまへ。至し淨じやうなる者ものよ、彼かれが審問しんもんせん時とき、我わが援助たすけと爲なりて、我われを左ひだりの山羊やぎの分ぶんより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 神かみの聘女よめ・少女せうぢよよ、我われ無む量りやうの惡あくに因よりて靈たましひの殺ころされし者ものを起おこし給たまへ。爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを靈たましひを害がいする敵てき及および殺害者せつがいしやの凡およその誘惑いざなひより援たすけ給たまへ。

今も 惡あくの改あらためられぬ靈たましひよ、何なんぞ始はじめの美うるはしきを全まつたく失うしなひたる、何なんぞ爾なんぢの造成主ざうせいしゆに於おける契約けいやくを悉ことごとく棄すてて、彼かれの敵てきと爲なりたる。疾とく來きたりて、敬虔けいけんにして生しやう神女しんぢよに趨はしり附つけ。

第九歌頌

イルモス 食しよくに緣よりて甚はなはだしく朽きう壞くわいに陷おちいりしアダムを、言いひ難がたき智慧ちゑを以もつて改あらためん爲ために神かみより來きたりし神かみ言ことば、我われ等らの爲ために測はかり難がたく聖せいなる童貞女どうていぢよより身みを取とりし主しゆを、我われ等ら信者しんじやは同心どうしんに歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

我われ不ふ當たうの行おこなひを以もつて感覺かんかくを汚けがして、耻はづべき事ことに滿みてられたり。至し淨じやうなる者ものよ、我われに傷しやう感かんを起おこさしめて、我われを潔きよめ給たまへ、我わが常つねに爾なんぢを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

生しやう神女しんぢよよ、各人かくじんの密みつ事じの明あきらかに顯あらはれん時とき、爾なんぢ我われを義ぎと爲なし給たまへ、爾なんぢ誠まことに力ちからを有たもてばなり。爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを黑暗くらやみより脫のがれしめて、言いひ難がたき喜悅よろこびのある光ひかりの處ところに容いれ給たまへ。

光榮 言ことばよ、爾なんぢに祈いのる、終をはりの至いたらざる先さきに我われに熱切ねつせつなる痛つう悔くわいと感動かんどうと涕泣ていきふと、又また潔けつ淨じやうと謙遜けんそんと神聖しんせいなる愛あいとを賜たまひて、爾なんぢの牧群ぼくぐんに合あはせ給たまへ、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに由よりたなり。

今も 光くわう榮えいと尊敬そんけいとを以もつて神かみの外ほかに有形いうけい無む形けいの者ものに超こゆる童貞女どうていぢよよ、我われ罪過ざいくわを以もつて地ち上じやうに罪つみを犯おかしし舊新きうしんの人人ひとびとに超こゆる者ものを厭いとはずして、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを救すくひ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。聖三祝文、「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

水曜日

 水曜日の早課

第一の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第二調。

ハリストス神かみよ、爾なんぢは救すくひを地ちの中なかに作なし、十じふ字架じかに爾なんぢの至し淨じやうなる手てを伸のべて、萬民ばんみんを集あつめて呼よばしむ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

主しゆよ、敵てきが木きの生しやうずる食しよくを以もつてアダムを虜とりこにせし如ごとく、斯かく爾なんぢは親みづから十じふ字架じかの木きと爾なんぢの苦くるしみとを以もつて敵てきを虜とりこにせり、第だい二にのアダムとして爾なんぢは殊ことに迷まよひし者ものを尋たづね、死しせし者ものを生いかさん爲ために來きたりたればなり。神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほめて呼よぶ、杖つゑよ、慶よろこべ、是これより種たねなく生しやうぜし神かみは木きの上うへに死しを滅ほろぼし給たまへり。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第二調。

主しゆよ、爾なんぢが我われ等ら不ふ當たうの者ものに爾なんぢの仁じん慈じに因よりて賜たまひし生命いのちを施ほどこす十じふ字架じかを我われ等ら祈き禱たうの中うちに爾なんぢに捧さゝぐ。獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆよ、生しやう神女しんぢよに因よりて、皇くわう帝ていと爾なんぢの城邑まちとを救すくひて、平安へいあんを與あたへ給たまへ。

句 神かみ我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

十じふ字架じかを以もつて地ち上じやうの者ものを照てらし、罪つみある者ものを痛つう悔くわいに召めし給たまひし善よき牧者ぼくしやよ、我われを爾なんぢの群ぐんより遠とほざくる勿なかれ。獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主宰しゆさいよ、我われ迷まよひし者ものを尋たづねて、爾なんぢの聖せいなる群ぐんに合あはせ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 ハリストス神かみよ、爾なんぢは至し善ぜんなる主しゆとして、爾なんぢの聖者せいしやを黃金こがねよりも耀かゞやく者ものと爲なし、爾なんぢの克肖者こくせうしやの榮さかえを顯あらはせり。仁じん慈じなる主しゆとして、彼かれ等らの祈き禱たうを納いれて、我われ等らの生命いのちを平安へいあんならしめ給たまへ。獨ひとり聖者せいしやの中うちに休いこふ主しゆよ、我われ等らの禱いのりを香かう爐ろの香かをりの如ごとく升のぼらしめ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 ハリストスよ、童貞女どうていぢよ爾なんぢの母はゝは爾なんぢ十じふ字架じかに懸かけられて死しせし者ものを覩みて、痛いたく泣なきて曰いへり、吾わが子こよ、此この恐おそるべき祕ひ密みつは何なにぞや、衆しゆうに永遠えいゑんの生命いのちを賜たまふ者ものは如何いかんぞ甘あまんじて十じふ字架じかに耻はづべき死しを以もつて死しする。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第二調。

生命いのちを賜たまふイイスス、獨ひとり罪つみなき者ものよ、爾なんぢは多おほくの慈じ憐れんに因よりて、我われ等らの爲ために十じふ字架じかに釘ていせられて、死し者しやと爲なることを忍しのび給たまへり、爾なんぢの手ての造物ざうぶつを死しの定罪ていざいより救すくはん爲ためなり、爾なんぢは仁じん慈じなる神かみにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

甘あまんじて我われ等らの爲ために苦くるしみを受うけし主しゆよ、我われ盜賊たうぞくの如ごとく承うけ認とめて、爾なんぢ至し善ぜんの者ものに呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひて、彼かれと偕ともに我われを算かぞへ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 潔いさぎよき女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら皆みな爾なんぢの子この尊たふとき十じふ字架じかに護まもられて、輙たやすく敵てきの凡およその攻擊こうげきに勝かつ。故ゆゑに爾なんぢを神かみの母はゝ、獨ひとり我わが靈たましひの恃賴たのみなる者ものとして宜よろしきに合かなひて崇あがめ讚ほむ。

尊貴にして生命を施す十字架の規程カノン、其冠詞は、十字架の樹つは惡鬼の倒なり。イオシフの作。第二調。

第一歌頌

イルモス 全まつたく備そなはれる力ちからは昔むかしファラオンの全軍ぜんぐんを深水ふかみに敷しき、人體じんたいを取とりし言ことば、讚榮さんえいせらるる主しゆは萬よろづの惡あくを致いたす罪つみを滅ほろぼし給たまへり、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

昔むかし初はじめて造つくられし人ひとは始はじめの誡いましめに背そむきて、木きに緣よりて死しを受うけたり。木きに上あげられし不死ふしの主しゆは死しを嘗なめて衆しゆう人じんに不死ふしを賜たまへり。

十じふ字架じかが地ちに立たてられしに、敵てきに因よる迷まよひは解とけて、全まつたく空むなしくせられたり、前さきに退しりぞけられし人ひとは復また樂園らくゑんに入いる。光くわう榮えいは爾なんぢ斯かく爲なすことを嘉よみせし我われ等らの惟一ゆゐいちの神かみに歸きす。

致命者讚詞 讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等ら皆みな牡を羊ひつじの如ごとく、有いう智ちなる羔こひつじの如ごとく屠ほふられ、無む慙ざんに寸斷すんだんせられて、屠ほふられし主しゆに祭祀まつりとして獻けんぜられたり。故ゆゑに今いまは聖せいなる冢ちよう子しの敎けう會くわいの中うちに輝かゞやく。

致命者讚詞 睿えい智ちなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは劍つるぎにて斬きられ、火ひと水みづとに投なげられしに、常つねに堅かたく信しんに立たちて、詭き譎けつなる敵てきを斃たふせり。故ゆゑに福ふくたる終をはりを獲えたり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、預よ言者げんしやの聖せいにせられし會くわいは爾なんぢを過とほられぬ門もん、選えらばれたる地ち、斫きられぬ山やまと名なづけたり。蓋けだし爾なんぢは萬有ばんいうの主宰しゆさい、甘あまんじて十じふ字架じかの死しを受うけし者ものを生うみ給たまへり。

又至聖なる生神女の規程カノン、第二調。

第一歌頌

イルモス 人人ひとびとよ、來きたりて、海うみを分わかちて、エギペトの奴ど隷れいより引ひき出いだしし民たみを過とほらせらしハリストス神かみに歌うたを歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

信者しんじや皆みな來きたりて、同心どうしんに生しやう神女しんぢよを歌うたはん。蓋けだし彼かれは人ひとの智慧ちゑに超こえてハリストスを生うみて、絕たえず我われ等ら衆しゆうの救すくはれんことを祈いのる。

神かみの母はゝよ、父ちゝの實在じつざいの像ざうは爾なんぢより我わが合成がふせいを受うけて、朽くちたる像ざうを新あらたにして、之これを榮えいせり。

爾なんぢはヘルワィムより最いと尊たふとく、諸天しよてんより最高いとたかくなれり、蓋けだし無む慾よくにして智慧ちゑに超こえて神かみを爾なんぢの胎内たいないに宿やどし給たまへり。

爾なんぢは我わが諸罪しよざいの贖あがなひたる恩主おんしゆを生うみて、死しせし原げん祖そアダムを生いかし、人性じんせいを天てんに升のぼせ給たまへり。

第三歌頌

イルモス 主しゆよ、荒あれ地ちの如ごとく實みを結むすばざる異い邦はうの敎けう會くわいは、爾なんぢの來きたるに因よりて、百合ゆりの如ごとく華はなさけり、我わが心こゝろは此これに緣よりて固かためられたり。

主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに釘ていせられて萬物ばんぶつを震ふるはせ、信者しんじやを堅かためて、彼かれ等らに爾なんぢの力ちからと、爾なんぢの言いひ難がたき寬くわん容ようとを歌うたはしめ給たまふ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは十じふ字架じかを以もつて樂園らくゑんを開ひらきて、其内そのうちに爾なんぢの國くにと爾なんぢの神聖しんせいなる慈じ憐れんの富とみとを悟さとりし盜賊たうぞくを入いれ給たまへり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは芳かうばしき花はなの如ごとく、靈れい智ちなる谷たにの中うちに發ひらきて、惡臭あくしうの迷まよひを拂はらひ、信者しんじやの心こゝろを薰かをらせたり。

致命者讚詞 世せ界かいの燈ともしび、信者しんじやの聖せいなる扶ふ助者じよしやよ、聖神せいしんの輝かゞやける光くわう線せんを以もつて宜よろしきに合かなひて爾なんぢ等らを讚さん美びする衆しゆうを照てらし給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものは萬有ばんいうの主宰しゆさいが木きに上あげられ、萬ばん衆しゆうに生命いのちを賜たまふ者ものの甘あまんじて死しするを見みて、心こゝろ痛いたく苦くるしめり。

又

イルモス 木きを以もつて罪つみを殺ころしし主しゆよ、我われ等らを爾なんぢの中うちに堅かためて、爾なんぢを畏おそるる畏おそれを我われ等ら、爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろに植うゑ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢを實じつに黃金こがねの香かう爐ろ、「マンナ」の壺つぼ、神かみの山やま、神聖しんせいなる美うるはしき宮みやと稱となふ。

言ことばの殿でん及および聖せいにせられし居處すまひたる至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよ・永貞えいてい童女どうぢよよ、我わが爲ために諸罪しよざいの潔淨きよめと爲なり給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、地ちに生うまるる者ものの舌したも、無む形けいの者ものの智慧ちゑも爾なんぢの產さんを述のぶる能あたはず、爾なんぢは天性てんせい及および智慧ちゑに超こえて造成主ざうせいしゆを生うみたればなり。

生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、信しんを以もつて爾なんぢに趨はしり附つきて、爾なんぢを神かみの母はゝと傳つたふる者ものの爲ために保固かためと避所かくれが及および庇覆おほひと爲なり給たまへ。

第四歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよに藉よりて來きたりし者ものは使し者しやに非あらず、天てん使しに非あらず、主しゆ親みづから人體じんたいを取とりて、我われ全まつたき人ひとを救すくひ給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

惟一ゆゐいちの主しゆよ、爾なんぢは木きに上あげられて、殘忍ざんにんなる世せ君くんの權けんを空むなしくし、詛のろひを滅ほろぼせり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに救すくはれたる者ものは爾なんぢを讚榮さんえいす。

全能ぜんのうの主しゆよ、日ひは爾なんぢが木きに懸かけられしを見みて光ひかりを隱かくし、山やまと磐いはとは崩くづれ、殿でんの幔まくは裂さけたり。

致命者讚詞 主しゆの致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは殺ころされて敵てきを殺ころし、鐵てつにて爬かかれ、死しに屬ぞくする麤あらき皮かはを剥はがれて、光くわう榮えいを衣きせられたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは首くびを斬きられ、凶きよう惡あくなる能のう力りよくの首くびを斬きりて、永在えいざいの光くわう榮えいを繼つぎて喜よろこぶ。

生神女讚詞 婚姻こんいんに與あづからざる少女せうぢよよ、父ちゝの光ひかりなるハリストスは爾なんぢの胎たいより輝かゞやき出いでて、十じふ字架じかに釘ていせられて世せ界かいを照てらし、惡あく鬼きの黑暗くらやみを散さんじ給たまへり。

又 イルモス同上

女宰ぢよさいよ、傷しやう感かんの一滴いつてきを我われに滴したゝらせて、吾わが心こゝろの熱ねつを去さらしめ、我わが思おもひの濁にごれる流ながれを止とゞめ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ逸樂いつらくの武器ぶきに傷きずつけられ、病やみて臥ふす者ものを棄すつる毋なかれ。十じふ字架じかに釘ていせられし爾なんぢの子こ我わが神かみの戈ほこと血ちとを以もつて我われを痊いやし給たまへ。

女宰ぢよさいたるを以もつて萬物ばんぶつを富とましし純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ甚はなはだ貧まづしくなりたる者ものに神聖しんせいなる恩おん寵ちようを豐ゆたかに垂たれ給たまへ、我わが爾なんぢ至し善ぜんなる轉達者てんたつしやを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

童貞女どうていぢよよ、痛つう悔くわいを以もつて我われを凉すゞしくし、諸慾しよよくの熱ねつに因よりて涸かれたる吾わが心こゝろを濕うるほし、爾なんぢの慈じ憐れんの油あぶらと醫治いやしとを我われに灌そゝぎ給たまへ。

第五歌頌

イルモス ハリストス神かみよ、爾なんぢは神かみと人ひととの中ちゆう保はう者しやと爲なれり、主宰しゆさいよ、我われ等らは爾なんぢに依よりて、無智むちの闇やみより光ひかりの原もとなる爾なんぢの父ちゝに就つくを得えたればなり。

ハリストスよ、爾なんぢは十じふ字じ架かに釘ていせられて、地ちの基もとゐを動うごかし、戈ほこにて刺さされて、惡あくの魁かしらたる蛇へびを殺ころし、救すくひの流ながれを衆しゆうに注そゝぎ給たまへり。

言ことばよ、爾なんぢの手てに造つくられし者ものの迷まよへるを見みるに勝たへずして、爾なんぢは手てを木きの上うへに伸のべて殺ころされて、昔むかし木きに緣よりて死しせし者ものを生いかし給たまへり。

致命者讚詞 ハリストスの友とも、人人ひとびとの熱心ねつしんなる保護ほご者しや、美うるはしき花はな、聖神せいしんの最いと尊たふとき器うつはたる睿えい智ちなる受難者じゆなんしやは宜よろしきに合かなひて讚さん美びせらる。

致命者讚詞 惟一ゆゐいちなる立法者りつぱふしやよ、爾なんぢの聖せいなる受難者じゆなんしやの會くわいは法はふの爲ために苦くるしみを受うけて、不ふ法はふの者ものを辱はづかしめ、爾なんぢの力ちからに因よりて馳はすべき程みちを盡つくして、致ち命者めいしやに宜よろしきが如ごとく榮えい冠くわんを冠かうむりたり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは產さんの後のちに不ふ朽きうの者ものと顯あらはれたり、神かみが爾なんぢより身みを取とりて生うまれたればなり。爾なんぢは其その十じふ字架じかに釘ていせらるるを見みて、忍しのびずして、痛いたく苦くるしみて呼よべり。

又

イルモス 光ひかりを賜たまひ、世世よよを造つくりし主しゆよ、爾なんぢの誡いましめの光ひかりの中うちに我われ等らを導みちびき給たまへ、我われ等ら爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

神かみの母はゝよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢより種たねなく身みを取とりて生うまれし子この眞まことの神かみ及および實じつ性せいの人ひとなるを知しれり。故ゆゑに爾なんぢを讚榮さんえいす。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら信者しんじやは信しんを以もつて常つねに爾なんぢの庇覆おほひ及および保護ほごの下もとに趨はしり附つきて、爾なんぢに依よりて凡およその敵てきの侵害しんがいより救すくはる。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ等らを誘惑いざなひと擾みだれたる意思おもひ、凡およその怒いかりと凡およその罪つみ、饑き饉きんと疫えき病びやう及および永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

我われ等らの轉達者てんたつしやと拯救すくひと恃賴たのみなるハリスティアニン等らの女宰ぢよさい、讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、愛あいを以もつて常つねに忠ちゆう信しんに爾なんぢを歌か頒しようする者ものを救すくひ給たまへ。

第六歌頌

イルモス イオナは鯨くぢらの中うちより主しゆに籲よべり、祈いのる、我われを地ぢ獄ごくの深處ふかみより引ひき上あげ給たまへ、我わが讚さん美びの聲こゑと眞實しんじつの神しん゜とを以もつて爾なんぢ救主きうしゆに祭まつりを獻さゝげん爲ためなり。

言ことばよ、昔むかしイアコフは手てを少者せうしやの首かうべに按のせて、十じふ字架じかを預よ徵ちようせり。ハリストスよ、爾なんぢは其その上うへに手てを伸のべて、人類じんるゐを詭き譎けつなる敵てきの手てより救すくひ給たまへり。

萬有ばんいうの王わうハリストスよ、爾なんぢ甘あまんじて釘ていせられしに、王わうたる罪つみは滅ほろぼされ、昔むかし樂園らくゑんより逐おひ出いだされしアダムは復また其中そのうちに入いれられて、爾なんぢを讚ほめ歌うたふ。

致命者讚詞 創痍きずにて飾かざられ、天てんの華くわ美びに妝よそほはれたる實じつに主しゆの至し愛あいにして神聖しんせいなる致ち命者めいしやを、我われ等ら中ちゆう心しんより讚ほめ歌うたはん。

致命者讚詞 神聖しんせいなる致ち命者めいしやは其その燈ともしびを滅けされずして守まもり、己おのれの血ちを以もつて盛さかんに之これを燃もやして、神聖しんせいなる殿でんに入いるを得えて喜よろこぶ。

生神女讚詞 讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢ讚ほめ歌うたはるる神かみを生うみし者ものを歌うたふ。彼かれは木きに緣よりて仇敵きうてきを滅ほろぼし、彼かれの苦くるしみを歌か頌しようする者ものを朽きう壞くわいより救すくひ給たまへり。

又

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

己おのれの旨むねを以もつて萬物ばんぶつを造つくりし主しゆは其その旨むねを以もつて婚姻こんいんに與あづからざる者ものの胎内たいないに入いりて、朽きう壞くわいを以もつて病やめる者ものを、慈じ憐れんなるに因よりて、不ふ朽きうにて富とまし給たまへり。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは天てん上じやうの軍ぐんより上うへにして聖せいなり、容いれられぬ言ことばを性せいに超こえて爾なんぢの胎内たいないに容いれたればなり。

女宰ぢよさいよ、我われ生命いのちの道みちに迷まよひて、屢しばしば罪つみの無ぶ道だうに入いる者ものを、痛つう悔くわいの道みちに向むかはしめ給たまへ。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、我われ等ら爾なんぢに恃賴たのみを負おはせし爾なんぢの諸僕しよぼくの祈き禱たうを棄すつる勿なかれ、爾なんぢは靈たましひの爲ために避所かくれが及および潔淨きよめなればなり。

第七歌頌

イルモス 不ふ法はふなる虐者しへたげびとの神かみに戾もとる命令めいれいは高たかき焰ほのほを起おこしたれども、讚ほめ歌うたはるるハリストスは敬虔けいけんの少者せうしやに屬神ぞくしんの露つゆを降くだし給たまへり。

慈じ憐れんなる主しゆよ、爾なんぢ十じふ字架じかに上あげられて、戈ほこを以もつて刺さされしに、昔むかしの自おのづから旋まはる劍つるぎは我われの前まへより退しりぞく。故ゆゑに我われ爾なんぢの尊たふとき苦くるしみに由よりて苦くるしみなきを得えて、爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

モイセイに因よりて木きに上あげらるる蛇へびは、詭き譎けつなる蛇へびを殺ころして、犯罪はんざいに因よりて殺ころされたる我われ等ら衆しゆうを生いかししハリストスの上あげらるるを預よ象しやうせり。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは無む原げんの父ちゝの同どう無む原げんの子この至し淨じやうなる苦くるしみに效ならひて、彼かれと最いと親したしくなるを以もつて神かみの子こと爲なれり。故ゆゑに彼かれは爾なんぢ等らを兄弟けいてい及および其國そのくにの嗣よつぎと稱となふ。

致命者讚詞 捧神ほうしんなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは主宰しゆさいの如ごとく十じふ字架じかに上あげられ、戈ほこにて刺さされ、劍つるぎにて斬きられ、火ひと水みづとに投なげられ、刃は輪ぐるまにて寸斷すんだんせられて喜よろこべり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは耕作かうさくせずして生育せいいくせし實みのりたる葡ぶ萄だうが木きに懸かけられしを見みて呼よべり、吾わが甘愛かんあいなる子こよ、諸慾しよよくの醉ゑひを醒さますべき美び酒しゆを滴したゝらし給たまへ。

又 イルモス同上

我わが力ちからと歌うたと救すくひ、堅けん固ごなる保護ほごと破やぶられぬ墻かきたる女宰ぢよさいよ、我われと戰たゝかふ惡あく鬼き、常つねに我われを殺ころさんと謀はかる者ものを破やぶり給たまへ。二次。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは童貞どうていの血ちより身みを取とりて人類じんるゐを神成しんせいせし神かみを生うみ給たまへり。故ゆゑに爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ諸慾しよよくに汚けがされ、敵てきの惡謀あくぼうに因よりて朽きう壞くわいせし者ものを救すくひ給たまへ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爐ゐろりは爾なんぢの產さんを預よ象しやうせり、蓋けだし少者せうしやを焚やかざりき、止とゞめられぬ火ひの爾なんぢの胎たいに於おけるが如ごとし。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、爾なんぢの諸僕しよぼくを永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 昔むかしワワィロンの火ひの爐ゐろりは神かみの命めいによりて其その勢いきほひを分わかち、ハルデイを焦こがして、信者しんじやを凉すゞしくせり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよと歌うたへばなり。

恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢの不ふ朽きうの脅わきより滴したゝりし血ちに因よりて造物ざうぶつは聖せいにせられ、多た神しんの川かはは涸からされ、迷まよひの旱ひでりを退しりぞくる敬けい信しんの雨雲あまぐもは現あらはれたり。

言ことばよ、日ひは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせらるるに耻はぢて、其その光くわう線せんを隱かくし、磐いはは裂さけ、地ぢ獄ごくは下しもに畏おそれ、義ぎ者しやの靈たましひは樂たのしみて全まつたき救すくひを待まてり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやの不ふ朽體きうたいの遺片のこりは信者しんじやに醫い療れうを流ながし、常つねに醫いやし難がたき病やまひの苦惱なやみを醫いやす。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢは爾なんぢの聖せいなる致ち命者めいしやの中うちに嚴おごそかなり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは猛獸まうじうの口くちと鼎鑊かなへの熱湯ねつたう、烈はげしき沍寒さむさと甚はなはだしき暑熱あつさ、身みの裂さかるることと牢獄ひとやに閉とざさるること、及および苦く惱なうの死しを堅けん固ごに忍しのびたり、故ゆゑにハリストスと偕ともに榮えいせらる。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの子こは甘あまんじて爾なんぢの腹はらより身みを取とり、見みられぬ者ものにして見みゆる者ものと爲なりて、釘殺ていさつを受うけ、詛のろひと名なづけられて、衆しゆう人じんを詛のろひより脫のがれしめ給たまふ。

又

イルモス 昔むかし火燄ほのほの中うちにエウレイの少者せうしやに露つゆを注そゝぎ、奇異きいにしてハルデヤ人じんを其中そのうちに爇やきし主しゆを歌うたひて云いはん、彼かれを崇あがめ讚ほめて、世世よよに讚ほめ揚あげよ。

我われ等ら地ちに生うまるる者ものの生命せいめい及および救きう贖しよくたる神かみの羔こひつじを生うみし無む玷てんなる牝め羊ひつじよ、我われを棄すつる勿なかれ。蓋けだし我われ呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの神聖しんせいなる產さんは我われ等らを新あらたにして、衆しゆうを光ひかりの子こ晝ひるの子こと爲なせり。故ゆゑに我われ等ら救すくはれて呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは童貞どうていの胎たいより活いける水みづを生うみて、醫治いやしの泉いづみより信者しんじやに赦罪しやざいを流ながし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは生命いのちの實みのりたる葡ぶ萄だうを生育せいいくせり、蓋けだし爾なんぢは諸福しよふくを以もつて地ちを樂たのしましむる葡ぶ萄だうの樹きなり。我われ等ら之これを歌うたひて呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

第九歌頌

イルモス 無む原げんの父ちゝの子こ、神かみと主しゆは、童貞女どうていぢよより人體じんたいを取とり、我われ等らに現あらはれて、昧くらまされし者ものを明あかし、散ちらされし者ものを集あつめ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら讚さん美びたる生しやう神女しんぢよを崇あがめ歌うたふ。

量はかり難がたき言ことばよ、爾なんぢの傷きずに因よりて我わが朽きう壞くわいと困こん苦くとを痊いやし給たまへ。主しゆ我わが救すくひの神かみよ、爾なんぢの苦くるしみに因よりて、惡あく慾よくの中うちに埋うもれたる爾なんぢの像ざうを潔きよめ給たまへ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢ聖三者せいさんしやの一いつ、二に性せいにして一いち位ゐなる者ものは、仁じん慈じに因よりて人類じんるゐを救すくはん爲ために松まつ・杉すぎ・黃楊つげに上あげらるる者ものと見あらはれたり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは十じふ字架じかに盾たての如ごとく掩おほはれて、惡あくの魁かしらの悉ことごとくの箭やに惱なやまされぬ者ものと顯あらはれたり。故ゆゑに今いま彼かれを踐ふみて、恒つねに憎にくむべき鳥とりとなして哂わらふ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしや致ち命者めいしや敎けう會くわいの動うごかされぬ柱はしらよ、地ちは口くちを開ひらきて爾なんぢ等らの血ちを受うけ、天てんは爾なんぢ等らの神聖しんせいなる神しん゜を受うけたり。今いま爾なんぢ等らは火ひの如ごとき品ひん位ゐと偕ともに神かみの寶はう座ざの前まへに立たち給たまふ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは性せいに超こえて生うみ、童貞女どうていぢよに止とゞまりて、原げん祖その朽きう壞くわいしたる性せいを新あらたにせり、萬有ばんいうの性せいを造つくりし主しゆを生うみたればなり。至し淨じやうなる母はゝよ、爾なんぢ昔むかし彼かれが十じふ字架じかに懸かけられしを見みて籲よべり。

又

イルモス 食しよくに緣よりて甚はなはだしく朽きう壞くわいに陷おちいりしアダムを、言いひ難がたき智慧ちゑを以もつて改あらためん爲ために神かみより來きたりし神かみ言ことば、我われ等らの爲ために測はかり難がたく聖せいなる童貞女どうていぢよより身みを取とりし主しゆを、我われ等ら信者しんじやは同心どうしんに歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

爾なんぢより身みを取とりし仁じん慈じなる神かみを言いひ難がたく生うみたる惟一ゆゐいちの少女せうぢよよ、我われを神聖しんせいなる仁じん慈じを蒙かうむるに勝たふる者ものと爲なして、愛あいを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいする者ものを將しやう來らいの焰ほのほ及および凡およその苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

讚さん美びたる者ものよ、我われ等ら皆みな獨ひとり爾なんぢを堅けん固ごなる轉達者てんたつしやと恃賴たのみ、保護ほごと希き望ばう、確たしかなる庇覆おほひと破やぶられぬ城しろ、穩おだやかなる港みなとと堅かたき避所かくれがとして得えて救すくはる。

神聖しんせいなる光ひかりを生うみし少女せうぢよよ、諸慾しよよくの多おほくの侵害しんがいと惡敵あくてきの謀はかりごととに昧くらまされたる吾わが心こゝろを照てらし給たまへ。童貞女どうていぢよよ、我われを罪つみの汚けがれより潔きよむる淚なみだの點滴したゝりを常つねに我われに與あたへ給たまへ。
次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。小聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第二調。

ハリストス神かみよ、爾なんぢは十じふ字架じかの木きを我われ等ら爾なんぢを信しんずる者ものの爲ために生命せいめいの樹きと爲なし、此これを以もつて死しの權けんを秉とる者ものを虛むなしくして、罪つみに因よりて殺ころされし者ものを生いかし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、衆しゆう人じんの恩者おんしや主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

ハリストス神かみよ、アダムの貧まづしくなりしに因よりて爾なんぢは甘あまんじて貧まづしくなり、童貞女どうていぢよより身みを取とりて地ちに來きたり、我われ等らを敵てきの奴ど隸れいより救すくはん爲ために釘殺ていさつを受うけ給たまへり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 嗚呼あゝ受難者じゆなんしや致ち命者めいしやよ、凡およその城邑まちと地ち方はうとは爾なんぢ等らの不ふ朽きうの體たいを尊たふとむ。蓋けだし爾なんぢ等らは法はふに遵したがひて苦くるしみを忍しのびて、天てんより榮えい冠くわんを受うけたり。故ゆゑに爾なんぢ等らは成聖者せいせいしやの譽ほまれ、諸しよ王わうの勝しよう利り、諸しよ敎けう會くわいの裝さう飾しよくなり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞、第二調 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは耕作かうさくせずして胎内たいないに宿やどせし全まつたく實みのりたる葡ぶ萄だうが木きに懸かけられしを覩みて、泣なき號さけびて呼よべり、子こ及および恩主おんしゆよ、爾なんぢを生うみし我われの爲ために己おのれの愛憐あいれんに促うながされて、諸慾しよよくの醉ゑひを醒さますべき甘味あまみを滴したゝらせ給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」、聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、第一時課、其他、及び發放詞。

 水曜日の聖体礼儀に

水曜日の眞福詞、第二調。

我われ等ら爾なんぢに盜賊たうぞくの聲こゑを奉たてまつりて祈いのる、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢ十じふ字架じかに上のぼりしに、悉ことごとくの人ひとの性せい、絕たえず爾なんぢを歌うたふ者ものを共ともに上のぼせ給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは戈ほこを以もつてアダムの書券かきつけを裂さきて、彼かれを生者せいしやの書しよに錄しるし給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは十じふ字架じかに釘ていせらるるを忍しのびし主しゆに效ならふ者ものと爲なりて、其その光くわう榮えいにも與あづかる者ものと顯あらはれたり。

光榮 無む原げんなる父ちゝ、同どう無む原げんの子こは、聖神せいしんと共ともに同どう一いつの尊そん貴き及および光くわう榮えいに於おいて歌うたはるべし。

今も 少女せうぢよよ、爾なんぢは種たねなく生うみし者ものの十じふ字架じかに在あるを見みて、涕泣ていきふして、彼かれの恒忍ごうにんを歌か頌しようせり。

 水曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に聖使徒の讚頌スティヒラ、第二調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり。人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

睿えい智ちなる主しゆの門もん徒とよ、爾なんぢ等らは神しん゜靈れいの川かはの如ごとく、エデムより分わかれて、全ぜん地ちを潤うるほし、之これを耕作かうさくして救すくひの傳道でんだうを播まき、繁しげく實みのりたる穗ほなる救すくはれし者ものの靈たましひを穫かりて、之これを最いと尊たふとき寶たからとして無む形けいの寶藏はうざうに納をさめたり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

無む形けいの東ひがしの光くわう體たいなる者ものよ、多た慾よくなる吾わが心こゝろを諸慾しよよく及および逸樂いつらくの黑暗くらやみより出いだし給たまへ。邪敎じやけうの夜よの迷まよひを拂はらひし日ひを衆しゆう人じんに傳つたふる其その至いたりて輝かゞやける光くわう線せんよ、其その實見者じつけんしやとして彼かれに我われ等らの思し念ねんをも照てらさんことを祈いのり給たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

爾なんぢ等らは實じつに神かみの刻きざみたる新あらたなる恩おん寵ちようの石板せきばんと現あらはれ、救すくひの言ことばを載のする、父ちゝの指ゆびにて聖神せいしんを以もつて錄しるされたる活いける書卷まきものと現あらはれたり。故ゆゑに四し極きよくを周めぐりて、衆しゆう人じんに眞實しんじつの敎をしへと天てんに行ゆかしむる道みちとを明あきらかに示しめせり。

次ぎて若し之あらば、月課經の聖人の讚頌スティヒラ。若しなくば聖大奇跡者ニコライの讚頌スティヒラ。同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

聖神せいしん父ぷニコライ、ハリストスの成聖者せいせいしやよ、爾なんぢは有形いうけいにしてミラ城じやうに生いのちを度わたり、無む形けいの香膏ミロを抹ぬられて、實じつに香料かうれうと現あらはれ、信しんを以もつて爾なんぢの庇覆おほひの下したに趨はしり附つく者ものに不死ふしの芳香はうかうを薰かをらせて、主しゆに獻たてまつる爾なんぢの祈き禱たうを以もつて彼かれ等らを菑害さいがい危き難なん憂愁いうしうより解とき給たまふ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

神しん父ぷニコライよ、我われ多おほくの誘惑いざなひに圍かこまれ、世せ俗ぞくの累わづらひに纒まとはれ、危き難なんの浪なみに溺おぼらされ、憂うれひに攻せめらるる者ものは我わが一切いつさいの望のぞみを爾なんぢに負おはしむ。福ふくたる者ものよ、爾なんぢが主宰しゆさい、我われ等らの神かみに奉たてまつる祈き禱たうを以もつて我わが悉ことごとくの患くわん難なんを解とき給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

至し福ふくなるニコライよ、我われ思し念ねんの黑暗くらやみと惡あく鬼きの誘惑いざなひとに圍かこまれ、肉體にくたいの慾よくに荒あらされ、罪つみの法はふに勝かたるる者ものに至いたりて、恩おん寵ちようの光ひかりを以もつて照てらし給たまへ、爾なんぢは世せ界かいの中うちに神かみの光くわう線せんにて輝かゞやく光ひかりなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 父ちゝ及および聖神せいしんと同尊どうそんなる言ことば、末すゑの時ときに童貞女どうていぢよ・神かみの少女せうぢよより地ちに輝かゞやきし大おほいなる日ひたる者ものは爾なんぢ等らを、光くわう榮えいなる使徒等しとらよ、其その光くわう線せんとして遣つかはして、正敎せいけうの光ひかりを以もつて迷まよひの黑暗くらやみにある衆しゆう人じんを照てらし、神聖しんせいなる敎訓けうくんを以もつて彼かれ等らを之これに導みちびき給たまふ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン、神かみよ、爾なんぢの名なを以もつて我われを救すくひ、爾なんぢの力ちからを以もつて我われを判さばき給たまへ。句、神かみよ、我わが禱いのりを聽きき、我わが口くちの言ことばを聆きき納いれ給たまへ。

挿句くづけに使徒の讚頌スティヒラ、第二調。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは首しゆたる使徒等しとらの名なを世せ界かいに大おほいなる者ものと爲なせり。蓋けだし彼かれ等らは天てんの事ことを習ならひて、地ち上じやうの者ものに言いひ難がたき醫治いやしを與あたへたり、彼かれ等らの影かげすらも諸しよ病びやうを痊いやせり。漁者ぎよしやより出いでし者ものは奇き跡せきを行おこなひ、イウデヤ人じんより出いでし者ものは恩おん寵ちようの敎をしへを宣傳せんでんせり。慈じ憐れんなる主しゆよ、彼かれ等らに由よりて我われ等らに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

我われ等ら常つねに不義ふぎなる行おこなひに攻せめられて、爾なんぢ眞まことの神かみに趨はしり附つき、爾なんぢの門もん徒との聲こゑを爾なんぢに奉たてまつりて云いふ、夫ふう子しよ、我われ等らを救すくへ、殆ほとんど亾ほろぶ。祈いのる、今いまも爾なんぢが使徒しとの祈き禱たうに因よりて、多おほくの慈じ憐れんを以もつて、人人ひとびとの罪つみを顧かへりみずして、彼かれ等らを覆おほひて、患くわん難なんより救すくふことを我われ等らの諸敵しよてきに示しめし給たまへ。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らが信しんを以もつて得えたる光くわう榮えいは大おほいなり、蓋けだし唯たゞ苦くるしみの中うちに敵てきに勝かちしのみならず、死しせし後のちにも惡あく鬼きを逐おひ、病びやう者しやを醫いやす。靈體れいたいの醫師いしよ、主しゆに我われ等らの靈たましひを憐あはれまんことを祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 靑あをき橄欖樹かんらんじゆたる童貞女どうていぢよは爾なんぢ生命いのちの果みを結むすべり、世せ界かいの爲ために大おほいにして豐ゆたかなる憐あはれみを繁はん殖しよくせしめん爲ためなり。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。讚詞トロパリ及び發放詞。

 水曜日の晩堂課

至聖なる生神女に奉る祈禱の規程カノン、第二調。

第一歌頌

イルモス 人人ひとびとよ、來きたりて、海うみを分わかちて、エギペトの奴ど隷れいより引ひき出いだしし民たみを過とほらせしハリストス神かみに歌うたを歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ靈たましひと口くちとを以もつて敬虔けいけんにして爾なんぢを眞まことの生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものを、今いま諸難しよなん、諸しよ病びやう、諸罪しよざいより救すくひ給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢの中うちに恩おん寵ちようの淵ふちあるを知しれり。故ゆゑに熱心ねつしんに爾なんぢの神聖しんせいなる庇覆おほひの下したに趨はしり附つきて救すくはる。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、我われ等ら爾なんぢを歌うたふ者ものの爲ために爾なんぢの純じゆん潔けつ尊そん貴きなる血ちより身みを取とりし主しゆに祈いのりて、我われ等らを罪過ざいくわ及および苦くるしき病やまひより脫のがれしめんことを求もとめ給たまへ。

今も 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我われ等ら衆しゆう信者しんじやは爾なんぢを美譽ほまれと喜悅よろこび、避所かくれがと保固かため、恃賴たのみと保護ほご、及および靈たましひの救すくひとして獲えたり。

第三歌頌

イルモス 木きを以もつて罪つみを殺ころしし主しゆよ、我われ等らを爾なんぢの中うちに堅かためて、爾なんぢを畏おそるる畏おそれを我われ等ら、爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろに植うゑ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢが生うみし神かみを、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、爾なんぢの帲幪おほひの下したに趨はしり附つきて、熱心ねつしんに爾なんぢの產さんを拜はいする爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために慈じ憐れんなる主しゆと爲なし給たまへ。

讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、我わが心こゝろの深處ふかみより爾なんぢに奉たてまつる我わが祈き禱たうの詞ことばを聽ききて、我われを諸慾しよよく及および諸難しよなんより救すくひ給たまへ。

光榮 童貞女どうていぢよ・神かみの聘女よめ、我わが憑恃たのみ及および轉達者てんたつしやよ、我わが生しやう涯がいを治をさめて、我われを誘惑いうわく、侵害しんがい、及および患くわん難なんより脫のがれしめ給たまへ。

今も 神かみの實在じつざいの睿えい智ちを手てに抱いだきし神かみの母はゝよ、我われ等らが無智むち及および迷惑まよひより救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

第四歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ爾なんぢの光くわう榮えいなる攝せつ理りを聞ききて、爾なんぢの悟さとり難がたき能力ちからを讚榮さんえいせり。

神かみを生うみし女宰ぢよさいよ、我わが靈たましひの傷きずを醫いやし、肉慾にくよくの穢けがれを潔きよめ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我われ諸慾しよよくと、思し念ねんと、世せ俗ぞくの累わづらひにて汚けがされし者ものを希き望ばう及および信仰しんかうにて堅かため給たまへ。

光榮 神かみの母はゝ、惟一ゆゐいち讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを侵害しんがいと、颶ぐ風ふうと、患くわん難なんより脫のがれしめ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、我われ生命いのちの浪なみに荒あらさるる者ものを助たすけて、爾なんぢの港みなとに導みちびき給たまへ。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを賜たまひ、世世よよを造つくりし主しゆよ、爾なんぢの誡いましめの光ひかりの中うちに我われ等らを導みちびき給たまへ、我われ等ら爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

我われ等ら爾なんぢ潔いさぎよき生しやう神女しんぢよを識しる者ものは敵てきの諸もろもろの誘惑いざなひに對たいして勝かたれぬ武器ぶきを有たもちて、凡およその侵害しんがいより救すくはる。

ヘルワィムより上うへなる者ものよ、爾なんぢは律法りつぱふの成滿せいまんたる、身みを取とりし神かみの言ことば、獨生どくせいの子こを生うみ給たまへり。彼かれに爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために祈いのり給たまへ。

光榮 萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆを爾なんぢの手てに抱いだきし潔いさぎよき者ものよ、彼かれを、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、今いま心こゝろを全まつたくして爾なんぢに趨はしり附つく我われ等らの爲ために慈じ憐れんなる者ものと爲なし給たまへ。

今も 我われ不ふ當たうの者ものは苦くるしみて病やめる靈たましひより爾なんぢに祈禱いのりを奉たてまつる。獨ひとり憐あはれみの原因げんいんたる言ことばを生うみし者ものよ、我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

我われ爾なんぢを救すくひの港みなとと識しる者ものは、憂うれひ多おほき生命いのちの海うみを濟わたりて呼よぶ、我わが靈たましひを導みちびく者ものとなり給たまへ。

我われ災難わざはひに遇あひて、我わが潔けつ淨じやうの衣ころもを剥はがれたり。永貞えいてい童女どうぢよ、神かみを生うみし母はゝよ、我われに歡喜よろこびの衣ころもを與あたへ給たまへ。

光榮 我われ慾よくある者ものは潔いさぎよき生命いのちに離はなれて、怠惰おこたりの中うちに度ど生せいせり。祝しゆく福ふくせられたる女宰ぢよさいよ、我われを興おこして、爾なんぢの子この誡いましめに從したがはしめ給たまへ。

今も 至いたりて慈じ憐れんなる言ことば、己おのれの血ちを以もつて人人ひとびとを朽きう壞くわいより救すくひし主しゆを生うみし生しやう神女しんぢよよ、我われを爾なんぢの慈じ憐れんを被かうむるに堪たへさせ給たまへ。
次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第二調。

潔いさぎよき永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを天國てんこくに入いるに勝たふる者ものと爲なし、惡あく慾よくの械かせを壞やぶりて、我われを將しやう來らいの焰ほのほより脫のがれしめ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 黃金こがねの偶像ぐうざうがデイルの野のに奉ほう事じせられし時とき、爾なんぢの三人みたりの少者せうしやは神かみに逆さかふ命めいを顧かへりみずして、火ひの中なかに投なげられ、凉すゞしくせられて歌うたへり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

神かみの母はゝよ、爾なんぢより身みを取とりし者ものは十じふ字架じかに釘ていせられて、アダムの書券かきつけを裂さきたり。童貞女どうていぢよよ、今いま彼かれに祈いのりて、信しんを以もつて爾なんぢに、身みにて神かみを生うみし者ものは崇あがめ讚ほめらると、呼よぶ者ものを凡およその惡あくより脫のがれしめんことを求もとめ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢは信者しんじやの善ぜんなる恃賴たのみ及および保護ほご者しやなり。我われ等ら今いま爾なんぢに祈いのる、凡およそ爾なんぢを賴たのむ者ものに豐ゆたかなる慈じ憐れんを垂たれ給たまへ、蓋けだし彼かれ等ら爾なんぢに呼よぶ、身みにて神かみを生うみし者ものは崇あがめ讚ほめらる。

光榮 我われ生命いのちの甚はなはだしき黑暗くらやみに圍かこまれて、憂うれひを共ともにして我われを憐あはれむ者ものを得えざりき。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの光ひかりを以もつて罪惡ざいあくの黑暗くらやみを解とき、我われを照てらして爾なんぢに歌うたはしめ給たまへ、身みにて神かみを生うみし者ものは崇あがめ讚ほめらる。

今も 我われ不ふ當たうの者ものは洗禮せんれいに由よりて衣きたる救すくひの戒いましめの美うるはしき衣ころもを怠惰おこたりを以もつて汚けがせり。童貞女どうていぢよよ、今いま爾なんぢに趨はしり附つきて、爾なんぢに依よりて復また救すくひの衣ころもを衣きんことを求もとむ。

第八歌頌

イルモス 火ひの爐ゐろりの中うちにエウレイの少者せうしやに降くだりて、焰ほのほを露つゆに變へんぜし神かみを、造物ざうぶつは主しゆとして歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

我われ耻ち辱じよくの深處ふかみに陷おちいりて、今いま我わが思念おもひは弱よわる、諸方しよはうより種種しゆじゆの惡あくに圍かこまるればなり。童貞女どうていぢよよ、爾なんぢ我われを醫いやして、無む慾よくの光ひかりを衣きせ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢを堅けん固ごなる柱はしら及および基もとゐ、保護ほご者しや及および轉達者てんたつしやとして獲えて、今いま救すくはれ、爾なんぢの產さんを歌うたひて、之これを萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを不死ふしの光ひかり及および泉いづみとして知しる。蓋けだし爾なんぢは不死ふしなる父ちゝの言ことば、彼かれを萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむる衆しゆう人じんを死しより救すくふ者ものを生うみ給たまへり。

今も 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは常つねに我われ等ら信者しんじやに醫治いやしの流ながれを注そゝぎ給たまふ、我われ等ら斯この豐ゆたかなる恩おん寵ちようを汲くみて、爾なんぢの潔いさぎよき產さんを歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

第九歌頌

イルモス 食しよくに緣よりて甚はなはだしく朽きう壞くわいに陷おちいりしアダムを、言いひ難がたき智慧ちゑを以もつて改あらためん爲ために神かみより來きたりし神かみ言ことば、我われ等らの爲ために測はかり難がたく聖せいなる童貞女どうていぢよより身みを取とりし主しゆを、我われ等ら信者しんじやは同心どうしんに歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

神福しんぷくなる少女せうぢよよ、我われ熱心ねつしんにして我わが一切いつさいの望のぞみを爾なんぢに負おはせたり。眞まことの生命いのちの潔いさぎよき母はゝよ、我われを救すくひ、信しんと愛あいとを抱いだきて、歌うたを以もつて爾なんぢを崇あがめ讚ほむる者ものを永遠えいゑんの糧かてに飽あかしめんことを祈いのり給たまへ。

神聖しんせいなる光ひかりの門もんと顯あらはれたる潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの無む形けいの光ひかりを以もつて我わが靈たましひの黑暗くらやみを照てらし、爾なんぢの轉達てんたつに由よりて我われに永遠えいゑんの火ひを遁のがれんことを得えしめ給たまへ、我わが絕たえず爾なんぢを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

光榮 女宰ぢよさいよ、惡あく慾よくに陷おちいりて、靈たましひと體からだとを病やみ、今いま甚はなはだしく憂うれふる者ものを見みて、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて之これを醫いやして解とき給たまへ、彼かれ等らが信しんと愛あいとを抱いだきて、歌うたを以もつて爾なんぢを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

今も 神かみの母はゝよ、永遠えいゑんの父ちゝが腹はらより生うみし子こは爾なんぢの腹はらに入いり、全まつたき人ひとと爲なりて、信しんを以もつて爾なんぢの言いひ難がたき產さんを拜はいする我われ等らの爲ために爾なんぢを恩おん寵ちようの泉いづみと現あらはし給たまへり。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。其他常例の如し、幷に發放詞。

木曜日

 木曜日の早課

第一の誦文の後に使徒の坐誦讚詞セダレン、第二調。

爾なんぢの言いひ難がたき仁愛じんあいに因よりて漁者ぎよしやを辯論者べんろんしやに超こゆる智ち者しやと爲なし、之これを傳道でんだう師しとして全ぜん地ちに遣つかはししハリストス神かみ、獨ひとり聖者せいしやの中うちに息いこふ主しゆよ、彼かれ等らに因よりて爾なんぢの敎けう會くわいを堅かため、信者しんじやに爾なんぢの祝しゆく福ふくを降くだし給たまへ。

句 其聲そのこゑは全ぜん地ちに傳つたはり、其その言ことばは地ちの極はてに至いたる。

神聖しんせいなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは神かみの睿えい智ちの門もん徒と及および實見者じつけんしやとして、智ち者しや及および辯論者べんろんしやの智慧ちゑを無智むちと爲なし、傳道でんだうの愚ぐを以もつて諸民しよみんに惟一ゆゐいちの造物ざうぶつ者しや及および主しゆを醇じゆん正せいに歌か頌しようする智慧ちゑを授さづけたり。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを讚ほめ揚あげて呼よぶ、入いらざる光ひかりの雲くもよ、慶よろこべ、蓋けだし爾なんぢは彼かれ、光くわう榮えいの主しゆたる者ものを爾なんぢの手てに抱いだき給たまへり。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第二調。

ハリストス神かみ、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆよ、漁者ぎよしやは聖神せいしんの網あみを以もつて諸民しよみんを漁ぎよして、地ちの四し極きよくに爾なんぢに父ちゝ及および聖神せいしんと共ともに伏拜ふくはいせんことを敎をしへたり。彼かれ等らに因よりて爾なんぢの敎けう會くわいを堅かため、信者しんじやに爾なんぢの祝しゆく福ふくを降くだし給たまへ。

句 主しゆよ、諸天しよてんは爾なんぢの奇異きいなる事わざを讚榮さんえいせん。

再上の坐誦讚詞セダレンを誦すべし。次に、

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 主しゆの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らの血ちを呑のみし地ちは福さいはひなり、爾なんぢ等らの體たいを受うけし殿でんは聖せいなり、蓋けだし爾なんぢ等らは審判しんぱんに於おいて敵てきを辱はづかしめ、ハリストスを勇いさましく傳つたへたり。祈いのる、其その至し善ぜんの主しゆなるに因よりて彼かれに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを求もとめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ・永貞えいてい童女どうぢよよ、我われ等ら爾なんぢに依よりて神かみの性せいに與あづかる者ものと爲なれり、爾なんぢ我われ等らの爲ために身みを取とりし神かみを生うみたればなり。故ゆゑに我われ等ら皆みな宜よろしきに合かなひて敬虔けいけんに爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第二調。

言ことばよ、爾なんぢは聖せいなる爾なんぢの門もん徒とを輝かゞやける光くわう體たいとして世せ界かいに遣つかはして、天てん下かを照てらし、衆しゆう人じんを無智むちの黑暗くらやみより脫のがれしめ給たまへり。人ひとを愛あいする主しゆよ、常つねに彼かれ等らの祈き禱たうを納いれて、黑暗くらやみに在ある我わが靈たましひを照てらして、我われを救すくひ給たまへ。

至いたりて熱切ねつせつなる轉達者てんたつしやニコライよ、爾なんぢは奇き跡せきの光くわう線せんにて普ふ天てん下かを照てらし、憂うれひの暗やみを解とき、葘害わざはひの至いたるを防ふせぐ。

光榮、今も、生神女讚詞 婚姻こんいんに與あづからざる至し淨じやうにして聖せいなる生しやう神女しんぢよ、聘女よめならぬ聘女よめよ、爾なんぢが性せいに超こえて身みにて生うみし爾なんぢの子こに、常つねに諸しよ使徒しとと偕ともに、凡およそ爾なんぢを歌うたふ者ものに諸罪しよざいの赦免しやめん、生命いのちの更新かうしん、諸慾しよよくの絕滅ぜつめつを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

聖使徒の規程カノン、フェオファンの作、第二調。

第一歌頌

イルモス 全まつたく備そなはれる力ちからは昔むかしファラオンの全軍ぜんぐんを深水ふかみに敷しき、人體じんたいを取とりし言ことば、讚榮さんえいせらるる主しゆは萬よろづの惡あくを致いたす罪つみを滅ほろぼし給たまへり、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

信しんに因よりて神聖しんせいなる光ひかりの閃電いなづまとなりし光くわう明めいなる救世主きうせいしゆの使徒しとよ、我われ逸樂いつらくの穢けがれに昧くらまされ、怠惰おこたりの中うちに我わが生しやう涯がいを送おくりし者ものを照てらし給たまへ。二次。

ハリストスの門もん徒と及および友ともよ、我われ惡業あくげふに由よりて敵てきの友ともと爲なりし者ものを此これより脫のがれしめて、吾わが靈たましひに、慈じ憐れんに由よりて人類じんるゐを愛あいせし主しゆを愛あいする情じやうを起おこし給たまへ。

卑微ひびなる吾わが靈たましひよ、死しに先さきだちて務つとめて痛つう悔くわいし、己おのれの殺ころされしを哭なけ。願ねがはくは慈じ憐れんに因よりて四よつ日目かめのラザリを復ふく活くわつせしめし主しゆは使徒しとの祈き禱たうに因よりて爾なんぢをも復ふく活くわつせしめん。

生神女讚詞 仁じん慈じなる神かみ、凡およそ朽きう壞くわいに陷おちいりし者ものに恩おんを施ほどこす主しゆを生うみし純じゆん潔けつ無む玷てんなる者ものよ、彼かれに諸しよ預よ言者げんしや、致ち命者めいしや、使徒しとと共ともに衆しゆうを患くわん難なんより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

又聖大奇蹟者潤膏者ニコライの規程カノン。其冠詞は、ニコライよ、愛の禱を納れ給へ。イオシフの作。第二調。

第一歌頌

イルモス 人人ひとびとよ、來きたりて、海うみを分わかちて、エギペトの奴ど隷れいより引ひき出いだしし民たみを過とほらせしハリストス神かみに歌うたを歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

常つねに恩おん寵ちようの神聖しんせいなる寶はう座ざの前まへに立たつニコライよ、信しんを以もつて爾なんぢを呼よぶ爾なんぢの諸僕しよぼくに恩おん寵ちようと慈じ憐れんとを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

地ち上じやうに葘害わざはひに遭あふ者ものの爲ために神かみは爾なんぢを大おほいなる轉達者てんたつしやと爲なせり。故ゆゑに祈いのる、晝ひるに夜よるに我われの爲ために轉達てんたつして、我われを敵てきの誘惑いざなひより護まもり給たまへ。

神しん父ぷニコライよ、我われ爾なんぢを光ひかれる星ほしとして覩みる。願ねがはくは爾なんぢの輝かゞやける光くわう線せんに由よりて我われ誘惑いうわく、患くわん難なん、諸罪しよざいの黑暗くらやみより脫のがれん。

生神女讚詞 獨ひとり神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我われを肉體にくたいの病やまひより護まもり、吾わが靈たましひの隱かくれたる傷きずを醫いやし、我われを永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 主しゆよ、荒あれ地ちの如ごとく實みを結むすばざる異い邦はうの敎けう會くわいは、爾なんぢの來きたるに因よりて、百合ゆりの如ごとく華はなさけり、我わが心こゝろは此これに緣よりて固かためられたり。

聖せいにして奇異きいなる見神者けんしんしやよ、爾なんぢ等らは父ちゝの睿えい智ちを敎けう師しとして得えて、聖神せいしんに因よりてエㇽリンの智慧ちゑを愚ぐと爲なせり。二次。

讚さん美びたる使徒しと、至し福ふくなる言ことばの實見者じつけんしやよ、我わが靈たましひの無む結果けつくわを解ときて、我われに行おこなひに於おいて諸德しよとくの美び果くわを結むすばしめ給たまへ。

萬ばん衆しゆうの恩者おんしや、慈じ憐れん多おほき主しゆよ、我われ今いま敵てきの毒どくの齒はに甚はなはだしく囓かまれたる者ものを爾なんぢの使徒しとの祈き禱たうに因よりて醫いやし給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、至し仁じんの神かみに衆しゆう使徒しとと偕ともに祈いのりて、爾なんぢを尊たふとむ者ものが凡およその懊惱なやみと誘惑いざなひ及および災難わざはひより救すくはれんことを求もとめ給たまへ。

又

イルモス 木きを以もつて罪つみを殺ころしし主しゆよ、我われ等らを爾なんぢの中うちに堅かためて、爾なんぢを畏おそるる畏おそれを我われ等ら、爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろに植うゑ給たまへ。

醫治いやしの泉いづみなる聖せいなる者ものよ、吾わが靈たましひの慾よくを痊いやし、我わが生命いのちを護まもり、我われ爾なんぢの僕ぼくをして葘害わざはひに遭あふことなからしめ給たまへ。

大おほいなるニコライよ、我わが轉達者てんたつしやとして我わが心こゝろの迷まよひを正たゞし、我われと戰たゝかふ見みゆると見みえざる敵てきの害がいより我われを救すくひ給たまへ。

福ふくたる者ものよ、惟一ゆゐいち至し善ぜんなる主しゆは爾なんぢを善ぜんなる保護ほご者しやとして人人ひとびとに與あたへたり。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、諸もろもろの惡あくより我われを脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは我われの力ちからと喜よろこびと樂たのしみ、堅けん固ごなる墻かきと轉達者てんたつしやなり、爾なんぢは我われを諸もろもろの誘惑いざなひ及および葘害わざはひより脫のがれしめ給たまふ。

第四歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよに藉よりて來きたりし者ものは使し者しやに非あらず、天てん使しに非あらず、主しゆ親みづから人體じんたいを取とりて、我われ全まつたき人ひとを救すくひ給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

惟一ゆゐいち人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢを全ぜん世せ界かいに傳つたへし使徒等しとらの神聖しんせいなる祈き禱たうに由よりて、我われ常つねに餒うゑて飢餓きがに苦くるしめらるる者ものを救すくひの糧かてに飽あかしめ給たまへ。二次。

人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは世せ俗ぞくの海うみに爾なんぢの光くわう榮えいなる使徒等しとらを馬うまの如ごとく放はなちて、其その不ふ信しんの鹹しほはゆく苦にがき水みづを亂みだせり。

日ひたるハリストスを幽暗くらやみに居をる者ものに報はうぜし至いたりて讚さん美びたる使徒等しとらよ、罪つみの幽闇くらやみに臥ふす我われを照てらして、我わが心こゝろの邪よこしまなる念おもひを退しりぞけ給たまへ。

生神女讚詞 萬物ばんぶつに歌うたはるる神かみを生うみし常つねに歌うたはるる者ものよ、爾なんぢを歌うたふ者ものの爲ために使徒等しとらと共ともに我われ等らが諸罪しよざいと諸難しよなんと侵害しんがいより救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

又

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、爾なんぢは我われ迷まよへる者ものを尋たづねて、我われにまで至いたればなり。故ゆゑに慈じ憐れん深ふかき主しゆよ、我われに於おける爾なんぢの大おほいなる寬くわん容ようを讚榮さんえいす。

諸德しよとくを以もつて主しゆ敎けう座ざを飾かざりしニコライよ、爾なんぢは成聖者せいせいしやの尊たふとき飾かざりと顯あらはれたり。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、我わが醜みにくき靈たましひを飾かざりて、我われを世せ俗ぞくの誘惑いざなひより救すくひ給たまへ。

至し福ふくなるニコライよ、彼かの世よに往ゆく途みちを我わが爲ために平たひらかにせよ、世せ俗ぞくの浪なみの中うちに我われを護まもりて、爾なんぢ大おほいなる轉達者てんたつしやより富とみを獲えたる者ものとして、生命いのちの港みなとに著つくを得えしめ給たまへ。

神かみの言ことばに順したがひし大おほいなるニコライよ、我わが言ことばを聞ききて、我われを惡あく鬼きの誘惑いざなひ、不ふ法はふの人人ひとびと、及および諸もろもろの葘害わざはひより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 聖せいなる女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我われ惡あく鬼きの攻擊こうげきに仆たふされて、多おほくの罪つみに陷おちいる者ものを晝ひるに夜よるに潔きよめ、護まもりて、拯救すくひに導みちびき給たまへ。

第五歌頌

イルモス ハリストス神かみよ、爾なんぢは神かみと人ひととの中保者なかだちと爲なれり、主宰しゆさいよ、我われ等らは爾なんぢに依よりて、無智むちの闇やみより光ひかりの原もとなる爾なんぢの父ちゝに就つくを得えたればなり。

大おほいなる牧者ぼくしやは其その神聖しんせいなる門もん徒とを羊ひつじの如ごとく狼おほかみの中なかに遣つかはして、洗禮せんれいの恩おん寵ちようの力ちからと善ぜんなる言ことばとを以もつて之これを變易へんえきせり。二次。

神福しんぷくたる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは神聖しんせいなる光ひかりを以もつて迷まよひの黑暗くらやみにある人人ひとびとの心こゝろを照てらせり。故ゆゑに爾なんぢ等らに祈いのる、慾よくの逸樂いつらくに昧くらまされたる我われを照てらし給たまへ。

不ふ當たうなる靈たましひよ、終をはりの前まへに務つとめて痛つう悔くわいして、主しゆに呼よべ、主宰しゆさいよ、我われ罪つみを犯おかせり、使徒等しとらに因よりて慈じ憐れんなるを以もつて我われを赦ゆるして救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 光ひかりの居處すまひたる至いたりて潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの光ひかりを以もつて黑暗くらやみに臥ふす我われを照てらして、使徒等しとらと偕ともに祈いのりて、爾なんぢの祈き禱たうに因よりて我われを凡およその危き難なんより救すくはんことを求もとめ給たまへ。

又

イルモス 光ひかりを賜たまひ、世世よよを造つくりし主しゆよ、爾なんぢの誡いましめの光ひかりの中うちに我われ等らを導みちびき給たまへ、我われ等ら爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

神かみの法はふを行おこなひし至し福ふくなるニコライよ、至し善ぜんなる神かみに祈いのりて、我われをして神聖しんせいなる法はふを守まもらしめ、且かつ不ふ法はふなる敵てき及および惡あく鬼きの害がいより我われを脫のがれしめ給たまへ。

神しん智ちなる聖せいニコライよ、昔むかし轉達てんたつして三人みたりの少者せうしやを救すくひし如ごとく、斯かく我われをも神かみに奉たてまつる爾なんぢの祈き禱たうを以もつて凡およその罪つみより救すくひ給たまへ。

ハリストスの聖せい務む者しや、罪人ざいにん等らの轉達者てんたつしや、大おほいなる奇き跡せき者しやよ、仁じん慈じなる神かみに審判しんぱんの時ときに於おいて我われを辱はづかしめざらんことを祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき主しゆの母はゝよ、慈じ憐れんなるに因よりて轉達てんたつして、多おほくの慾よくに耽ふけりたる我われを之これより脫のがれしめ給たまへ、我わが救すくはれて、靈たましひと心こゝろと舌したとを以もつて爾なんぢを讚ほめ歌うたはん爲ためなり。

第六歌頌

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

活いける水みづを有たもつ救世主きうせいしゆの門もん徒とよ、祈いのる、罪つみの熱ねつに焚やかるる吾わが靈たましひに之これを飮のませ給たまへ。二次。

神しん靈れいの天てんと爲なりし光くわう明めいなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは言いひ難がたき神かみの光くわう榮えいを傳つたへたり、我われ等ら衆しゆうが此これを獲えんことを祈いのり給たまへ。

ハリストスよ、我われ世よの海うみに烈はげしく荒あらさるる者ものは爾なんぢ衆しゆうの舵師かぢとりなる者ものに呼よぶ、爾なんぢの使徒等しとらに因よりて我われを救すくひの港みなとに向むかはしめ給たまへ。

生神女讚詞 神かみの聘女よめよ、衆しゆう天軍てんぐんと、諸しよ預よ言者げんしやと、使徒しと及および致ち命者めいしやと偕ともに我われ等らの爲ために爾なんぢの子こに祈いのり給たまへ。

又 イルモス同上

ミラ城じやうに首しゆ座ざと爲なりて、爾なんぢの善業ぜんげふを以もつて信者しんじやの會くわいを薰かをらせしニコライよ、諸罪しよざいの惡臭あくしうより我われを脫のがれしめ給たまへ。

日ひよりも明あきらかなる心こゝろを獲えたる神しん父ぷニコライよ、我われ全身ぜんしんを照てらして、誘惑いざなひと憂愁うれひとの黑暗くらやみを拂はらひ給たまへ。

宏ひろき恩めぐみを有たもつニコライよ、我われを狹せばむる惡敵あくてきより援たすけて、我わが窄せばき路みちに由よりて主しゆに往ゆくを堅かため給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、我われ何いづれの時ときにも爾なんぢに呼よぶ、願ねがはくは爾なんぢを凡およその禍わざはひ及および畏おそるべき苦くるしみより我われを援たすくる扶ふ助者じよしやとして得えん。

第七歌頌

イルモス 不ふ法はふなる虐者しへたげびとの神かみに戾もとる命令めいれいは高たかき焰ほのほを起おこしたれども、讚ほめ歌うたはるるハリストスは敬虔けいけんの少者せうしやに屬神ぞくしんの露つゆを降くだし給たまへり。

聖神せいしんの火ひに燃もやされし使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは迷まよひの熾炭やけずみを滅けして、衆しゆう信者しんじやの心こゝろに神聖しんせいなる熱信ねつしんを燃もやし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら聲こゑを揚あげて爾なんぢ等らを崇あがめ讚ほむ。二次。

神聖しんせいなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは世よと凡およそ世よにある事こととを惡にくみて、世よに於おいて人人ひとびとに體合たいがふせしハリストスを愛あいせり。彼かれに生しやう涯がい我われを凡およその惡あくより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

義ぎなる審判者しんぱんしや、心こゝろを洞徹どうてつする主しゆ、獨ひとり我わが隱かくれたる罪過ざいくわを知しる者ものよ、爾なんぢの使徒しとの祈き禱たうに因よりて、審判しんぱんの時ときに我われを定罪ていざいする勿なかれ、我われを火ひに遣つかはす勿なかれ。

生神女讚詞 婚姻こんいんに與あづからざる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは言いひ難がたく生うみて、神性しんせいの火ひに焚やかれざりき。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢを讚榮さんえいする我われを永遠えいゑんの焰ほのほより救すくはんことを使徒等しとらと偕ともに祈いのり給たまへ、

又

イルモス 黃金こがねの偶像ぐうざうがデイルの野のに奉ほう事じせられし時とき、爾なんぢの三人みたりの少者せうしやは神かみに逆さかふ命めいを顧かへりみずして、火ひの中なかに投なげられ、凉すゞしくせられて歌うたへり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

神しん父ぷニコライよ、我われ每日まいにち誘惑いざなひの火ひに觸ふれ、禽とりの如ごとく羅あみの中なかを行ゆきて、爾なんぢの宏くわう恩おんなる帲幪おほひの下したに趨はしり附つく。仁じん慈じなる主しゆ神かみに祈いのりて、我われを害がいなく護まもり給たまへ。

神しん父ぷニコライよ、我わが言ことばを遄すみやかに聽ききて、急いそぎ來きたりて、我われ諸もろもろの憂うれひ、生命いのちの累わづらひ、及および惡あく鬼きの攻擊こうげきに荒あらさるる者ものを助たすけ給たまへ、我わが救すくはれて爾なんぢの轉達てんたつを歌うたはん爲ためなり。

昔むかし夢ゆめに王わうに見あらはれて、死しに定さだめられたる無む罪ざいの者ものを救すくひし神しん父ぷニコライよ、常つねに我われに逼せまる誘惑いざなひ、身みの病やまひ及および靈たましひの憂うれひより我われを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、我われ獨ひとり爾なんぢを扶ふ助者じよしやと有たもち、爾なんぢを衆しゆう人じんの生命いのちの守しゆ護ご者しやと信しんず、我われ爾なんぢの僕ぼくを遺すつる勿なかれ。惟一ゆゐいちの世せ界かいの轉達者てんたつしやよ、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ我われを救すくひ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 昔むかしワワィロンの火ひの爐ゐろりは神かみの命めいによりて其その勢いきほひを分わかち、ハルデイを焦こがして、信者しんじやを凉すゞしくせり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよと歌うたへばなり。

言ことばの神聖しんせいなる使徒等しとらよ、至し聖神せいしんは火ひの舌したの形かたちを以もつて現あらはに爾なんぢ等らに降くだりて、爾なんぢ等らを無む神しんを焚やき、衆しゆう敬虔者けいけんしやを照てらす光くわう體たいと爲なせり。二次。

慈じ憐れんなる主しゆよ、祈いのる、爾なんぢの門もん徒との祈き禱たうに因よりて、烈はげしく慾よくに荒あらさるる我わが治ぢし難がたき心こゝろを醫いやし、我わが靈たましひを照てらし、惡あくに傾かたぶきたる我わが智慧ちゑを直なほくし給たまへ。

我わが靈たましひよ、歎息たんそくし、中ちゆう心しんより淚なみだを流ながし、終をはりの前まへに己おのれの爲ために泣なきて、慰なぐさめられぬ憂うれひの未いまだ爾なんぢに及およばざる先さきに主しゆに呼よべ、慈じ憐れんなる主しゆよ、爾なんぢの使徒しとの祈き禱たうに因よりて我われを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、昔むかし少せう者しやを焚やかざりし爐ゐろりは爾なんぢの產さんを預よ象しやうせり。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、使徒等しとら及および衆しゆう預よ言者げんしやと偕ともに「ゲエンナ」の火ひより我われを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

又

イルモス 火ひの爐ゐろりの中うちにエウレイの少者せうしやに降くだりて焰ほのほを露つゆに變へんぜし神かみを、造物ざうぶつは主しゆとして歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

神かみより縛しばり及および釋とく權けんを受うけし神しん智ちなる神しん父ぷニコライよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが惡あくの縲絏なはめを釋とき、甘あまんじて人ひとと爲なりし主宰しゆさいの神聖しんせいなる愛あいに我われを繫つなぎ給たまへ。

聖せいなるニコライよ、爾なんぢの神聖しんせいなる眷顧かへりみにて晝ひるに夜よるに我われを眷かへりみて、我わが卑微ひびなる靈たましひの爲ために途みちを平たひらかにし、我われを凶きよう惡者あくしやの逼せまる誘惑いざなひに惱なやまされぬ者ものとして護まもり給たまへ。

昔むかし少者せうしやを苦くるしき死しより救すくひしニコライよ、我われに神聖しんせいなる援助たすけの手てを授さづけて、惡敵あくてきの侵害しんがいより護まもり給たまへ、我わが爾なんぢを慈じ憐れんなる轉達者てんたつしやとして尊たふとまん爲ためなり。

神かみよ、爾なんぢが世せ界かいを審判しんぱんせん爲ために畏おそるべき寶はう座ざに坐ざする時とき、爾なんぢの僕ぼくと訟うつたへを爲なす毋なかれ。ニコライの祈き禱たうに由よりて、我われを救すくはるる者ものの分ぶんに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 神かみの母はゝよ、爾なんぢは性せいに超こゆる爾なんぢの產さんを以もつて我われ等ら大おほいにして數かぞへ難がたき惡あくに因よりて小ちひさくなりし者ものを大おほいなる者ものと爲なせり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの豐ゆたかなる憐あはれみを我われ等らの中うちに大おほいなる者ものと顯あらはし給たまへ。

第九歌頌

イルモス 無む原げんの父ちゝの子こ、神かみと主しゆは、童貞女どうていぢよより人體じんたいを取とり、我われ等らに現あらはれて、昧くらまされし者ものを明あかし、散ちらされし者ものを集あつめ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら讚さん美びたる生しやう神女しんぢよを崇あがめ歌うたふ。

光くわう榮えいなる使徒しと、福ふくたる使徒しと、救世主きうせいしゆの門もん徒と、睿えい智ちなる傳道でんだう師しよ、我われを凡およその惱なやみ、凡およその怒いかり、凡およその罪つみ、凡およその誘いざなひ、及および諸もろもろの菑害わざはひより脫のがれしめ給たまへ。二次。

我われ定罪ていざいせられし者もの、我われ迷まよひし者もの、爾なんぢの誡いましめを輕かろんじて、惡あく鬼きの誘惑いざなひに從したがひし者ものを、主しゆよ、爾なんぢの使徒しとの祈き禱たうに因よりて還かへし給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ治ぢし難がたき靈たましひ、罪過ざいくわの中うちに葬はうむられし良りやう心しん、汚けがれたる心こゝろ、昧くらみたる思念おもひを齎もたらして、爾なんぢに呼よぶ、使徒等しとらに因よりて爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われを宥なだめ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、使徒等しとらは爾なんぢの子こを全ぜん世せ界かいに神かみ及および人ひととして傳つたへたり。故ゆゑに彼かれ等らと偕ともに祈いのりて、信しんを以もつて爾なんぢを讚ほめ揚あぐる者ものが審判しんぱんの畏おそるべき日ひに苦くるしみより脫のがれんことを求もとめ給たまへ。

又

イルモス 食しよくに緣よりて甚はなはだしく朽きう壞くわいに陷おちいりしアダムを、言いひ難がたき智慧ちゑを以もつて改あらためん爲ために神かみより來きたりし神かみ言ことば、我われ等らの爲ために測はかり難がたく聖せいなる童貞女どうていぢよより身みを取とりし主しゆを、我われ等ら信者しんじやは同心どうしんに歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

睿えい智ちなるニコライよ、我われ爾なんぢを成聖者せいせいしやの則のり、溫柔をんじうの模かたとして知しる。聖せいにせられし父ちゝよ、日日ひびに我われを擾みだす諸慾しよよく諸難しよなんの暴風あらしを鎭しづめ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを惱なやまされぬ者ものとして護まもり給たまへ。

ミラ城じやうの睿えい智ちなる首しゆ成聖者せいせいしやよ、爾なんぢは慈じ憐れんに因よりて地ちに注そゝがれし神聖しんせいなる香料かうれうを盈みつる聖せいにせられし器うつはとして、我われ等ら衆しゆうの心こゝろを薰かをらせ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて誘惑いざなひの惡臭あくしうを拂はらひ給たまへ。

神しん父ぷニコライょ、我わが善ぜんなる轉達者てんたつしやとして、爾なんぢは多おほくの見みえざる敵てきに苦くるしめらるる我わが靈たましひを慰なぐさめ、爾なんぢは詭き譎けつの者ものの晝ひるに夜よるに我われに勸すゝむる無む量りやうの誘惑いざなひを止とゞめ給たまへ。

畏おそるべき主宰しゆさいの日ひは近ちかづきて門もんの側かたはらにあり、嗚呼あゝ靈たましひよ、多おほくの罪つみを抱いだきて何なにをか爲なさん。終をはりの前まへに痛つう悔くわいして、熱切ねつせつに主しゆに呼よべ、爾なんぢの成聖者せいせいしやニコライの祈き禱たうに由よりて我われを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 主しゆよ、審判しんぱんせんとする時とき我われを宥なだめ、我われを宥なだめて、火ひに我われを定罪ていざいする毋なかれ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ。ハリストスよ、爾なんぢを生うみし童貞女どうていぢよと、衆おほくの使徒しと、及および光くわう榮えいなるニコライは之これを爾なんぢに祈いのる。

次ぎて「常に福にして」及び躬拜。小聯禱、光耀歌、常例の聖詠。

挿句くづけに使徒の讚頌スティヒラ、第二調。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは首しゆたる使徒しと等らの名なを世せ界かいに大おほいなる者ものと爲なせり。蓋けだし彼かれ等らは天てんの事ことを習ならひて、地ち上じやうの者ものに言いひ難がたき醫治いやしを與あたへたり、彼かれ等らの影かげすらも諸しよ病びやうを痊いやせり。漁者ぎよしやより出いでし者ものは奇き跡せきを行おこなひ、イウデヤ人じんより出いでし者ものは恩おん寵ちようの敎をしへを宣傳せんでんせり。慈じ憐れんなる主しゆよ、彼かれ等らに由よりて我われ等らに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸しよ撲ぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我われ等ら常つねに不義ふぎなる行おこなひに攻せめられて、爾なんぢ眞まことの神かみに趨はしり附つき、爾なんぢの門もん徒との聲こゑを爾なんぢに奉たてまつりて云いふ、夫ふう子しよ、我われ等らを救すくへ、殆ほとんど亾ほろぶ。祈いのる、今いまも爾なんぢが使徒しとの祈き禱たうに因よりて、多おほくの慈じ憐れんを以もつて、人人ひとびとの罪つみを顧かへりみずして、彼かれ等らを覆おほひて、患くわん難なんより救すくふことを我われ等らの諸敵しよてきに示しめし給たまへ。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

ハリストスよ、爾なんぢの聖人せいじんの大數たいすうは爾なんぢに祈いのる、人ひとを愛あいする主しゆとして我われ等らを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 神かみの母はゝよ、我わが盡ことごとくの恃たのみを爾なんぢに負おはしむ、我われを爾なんぢの覆おほひの下したに守まもり給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」、聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び聯禱。次に第一時課、常例の聖詠、及び發放詞。

 木曜日の聖体礼儀に

木曜日の眞福詞、第二調。

我われ等ら爾なんぢに盜賊たうぞくの聲こゑを奉たてまつりて祈いのる、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

睿えい智ちなる使徒等しとらよ、爾なんぢ等らは地ちの極はてを巡めぐりて、人人ひとびとを誘惑いうわくと邪敎じやけうとの黑暗くらやみより救すくひ給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

救世主きうせいしゆの門もん徒とよ、爾なんぢ等らは恩おん寵ちようの網あみを以もつて巧たくみに衆しゆう人じんを虛誕きよたんの深處ふかみより擧あげ給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

馳はすべき程みちを盡つくして、信しんを守まもりし主しゆの受難者じゆなんしやを、我われ等ら信者しんじやは心こゝろを合あはせて歌うたはん。

光榮 我われ等らは父ちゝと均ひとしく行かう爲ゐする子こを聖神せいしんと偕ともに傳つたへて、造つくられざる三者さんしやを歌うたはん。

今も 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは使徒しとの美譽ほまれ、受難者じゆなんしやの裝飾かざり、世せ界かいの拯救すくひなり。

 木曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十字架の讚頌スティヒラ、第二調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢ十じふ字架じかに釘ていせられしに、日ひは覩みて畏おそれに因よりて昧くらみ、殿でんの幔まくは裂さけ、地ちは震ふるひ、磐いはは慄をのゝきて崩くづれたり、己おのれの造成主ざうせいしゆ及および神かみが甘あまんじて木きの上うへに非義ひぎに苦くるしみを受うけ、不ふ法者はふしやより辱はづかしめらるるを見みるに勝たへざればなり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢ木きに擧あげられしに、至いたりて凶きよう惡あくなる蛇へびは全まつたく地ちに仆たふされ、遍あまねく傷きずつけられて臥ふし、先さきに定罪ていざいせられしアダムは詛のろひより釋とかれて救すくはる。故ゆゑに我われ等らも祈いのる、慈じ憐れんなる主しゆよ、我われ等ら衆しゆうを救すくひて、爾なんぢの國くにに入いるを得えしめ給たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

罪つみなき者ものよ、爾なんぢ十じふ字架じかに上あげられ、戈ほこにて脅わきを刺さされて辱はづかしめられしに、日ひは之これを觀みるに勝たへずして隱かくれ、地ちは震ふるひ、磐いはは畏おそれに由よりて裂さけ、衆しゆう造物ざうぶつは呼よべり、救世主きうせいしゆ人ひとを愛あいする言ことばよ、光くわう榮えいは衆しゆう人じんの救すくひと爲なりし爾なんぢの十じふ字架じかに歸きす。

次ぎて月課經の聖人の讚頌スティヒラ。若し月課經なくば、次の十字架生神女の讚頌を歌ふ。第二調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

イイススよ、婚姻こんいんに與あづからざる者ものは爾なんぢが十じふ字架じかの木きに擧あげられしを見みて、哭なきて云いへり、甘愛かんあいなる子こよ、何なんぞ我われ爾なんぢを生うみし者ものを獨ひとり遺のこしたる。無む原げんなる父ちゝの近ちかづき難がたき光ひかりよ、速すみやかに光くわう榮えいを獲えよ、爾なんぢの神聖しんせいなる苦くるしみを讚榮さんえいする者ものも神聖しんせいなる光くわう榮えいを受うけん爲ためなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

童貞女どうていぢよは生命せいめいの主しゆが木きの上うへに死しして、戈ほこにて其その脇わきの痛いたく刺ささるるを見みて、哭なきて呼よべり、吾わが子こ及および神かみよ、恩おん寵ちように悖もとる會くわいは何なんぞ是かくの如ごとく爾なんぢに報むくいたる、嗚呼あゝ主宰しゆさいよ、爾なんぢが此この苦くるしみを受うくるを見みて、我われ悲かなしみに勝たへずして心こゝろ裂さかる。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

夫をつとを識しらざる童貞女どうていぢよは其その子この木きより下おろされて、氣息いきなき人ひとの如ごとく地ちに置おかるるを見みて、懷むねに抱いだきて、其その口くちと目めとに接吻せつぷんして、彼かれに呼よべり、萬ばん衆しゆうを生いかす主しゆなるに、我われ今いま如何いかんぞ其聲そのこゑなくして動うごかざるを見みる、誠まことに大おほいなる奇き跡せきなる哉かな。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 無む玷てんなる牝め羊ひつじは其その羔こひつじの甘あまんじて人ひとの如ごとく屠ほふりの爲ために牽ひかるるを見みて、哭なきて云いへり、ハリストスよ、爾なんぢを生うみし我われを爾なんぢは今いま子こなき者ものと爲なす、衆しゆう人じんの救主きうしゆよ、何なんぞ斯かく爲なしたる。然しかれども人ひとを愛あいする主しゆよ、我われは智慧ちゑ及および言ことばに超こゆる爾なんぢの至し大だいなる仁じん慈じを歌か頌しよう讚榮さんえいす。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン、我わが助たすけは天てん地ちを造つくりし主しゆより來きたる。

句 我われ目めを擧あげて山やまを望のぞむ、我わが助たすけは彼處かしこより來きたらん。

次に「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第二調。

ペトルを海うみに救すくひしハリストス救世主きうせいしゆよ、十じふ字架じかの力ちからを以もつて我われを救すくへ、神かみよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

常つねに爾なんぢの諸しよ恩おんを樂たのしむ者ものは十じふ字架じかに釘ていせらるべしと呼よべり、義ぎ人じん等らを殺ころす者ものは恩主おんしゆに代かへて犯罪者はんざいしやを赦ゆるさんことを乞こへり。爾なんぢは、ハリストスよ、苦くるしみを受うけて我われ等らを救すくはんと欲ほつして、默もだして彼かれ等らの殘忍ざんにんを忍しのび給たまへり、人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは地ち上じやうの樂たのしみを愛あいせずして、天てん上じやうの福樂ふくらくを獲え、諸天しよてん使しの同どう住ぢゆう者しやと爲なれり。主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 救世主きうせいしゆよ、不ふ法はふの人人ひとびとが爾なんぢ萬ばん衆しゆうの生命いのちたる者ものを木きに擧あげし時とき、潔いさぎよくして至いたりて無む玷てんなる爾なんぢの母はゝは前まへに立たちて、哭なきて呼よべり、吾わが甘愛かんあいなる子こ、吾わが目めの光ひかりよ、嗚呼あゝ如何いかんぞ爾なんぢは地ちを水みづの上うへに懸かけし主しゆなるに、犯罪者はんざいしやの間あひだに十じふ字架じかに定罪ていざいせらるるを忍しのびたる。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び發放詞。

 木曜日の晩堂課

至聖なる生神女に奉る祈禱の規程カノン、第二調。

第一歌頌

イルモス 全まつたく備そなはれる力ちからは昔むかしファラオンの全軍ぜんぐんを深水ふかみに敷しき、人體じんたいを取とりし言ことば、讚榮さんえいせらるる主しゆは萬よろづの惡あくを致いたす罪つみを滅ほろぼし給たまへり、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

神かみは爾なんぢを女をんなの中うちに美うるはしき者もの、全まつたく善ぜんなる者もの、無む玷てんなる者ものと選えらびて、爾なんぢの無む玷てんなる腹はらに入いり給たまへり。至いたりて無む玷てんなる者ものよ、彼かれに爾なんぢを歌うたふ衆しゆう人じんを諸罪しよざいの玷けがれより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは、聖詠せいえいに言いへる如ごとく、皇くわう后ごうとして爾なんぢの腹はらより輝かゞやきし王わうの右みぎに立たてり。至いたりて無む玷てんなる者ものよ、彼かれに應報むくいの日ひに於おいて我われを右みぎに立たつ者ものと爲なさんことを祈いのり給たまへ。

光榮 天てんの雨あめを生うみし者ものは不ふ當たうなる行おこなひに由よりて枯かれたる人ひとの性せいを全まつたく新あらたにせり。故ゆゑに祈いのる、神かみの聘女よめよ、吾わが靈たましひの枯かれたる畝うねを繁しげく實みのらしむる者ものと爲なし給たまへ。

今も 潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、我われ等らは知ち識しきの樹きに殺ころされて、智慧ちゑに超こえて爾なんぢより生しやうぜし生命いのちの樹きたるハリストス神かみに由よりて永遠えいゑんの生命いのちに召めされたり。勇いさみを以もつて彼かれに吾わが靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

第三歌頌

イルモス 主しゆよ、荒あれ地ちの如ごとく實みを結むすばざる異い邦はうの敎けう會くわいは、爾なんぢの來きたるに因よりて、百合ゆりの如ごとく華はなさけり、我わが心こゝろは此これに緣よりて固かためられたり。

至し淨じやうなる者ものよ、造物主ざうぶつしゆは我われ人ひとを衣きて、爾なんぢの腹はらより出いでて、多おほくの惡あく事じに因よりて裸ら體たいとなりたる者ものに不ふ朽きうの衣ころもを賜たまへり。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢは至いたりて尊たふとき神かみ言ことばを生うみ給たまへり。彼かれに熱切ねつせつに祈いのりて、逸樂いつらくの穢けがれを患うれふる我わが卑微ひびなる靈たましひを宥なだめんことを求もとめ給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、我わが靈たましひの傷きずを醫いやし、蛇へびの毒どくに惱なやまされたる吾わが卑微ひびなる心こゝろを爾なんぢの効驗かうけんある治ち療れうを以もつて醫いやし給たまへ。

今も 女宰ぢよさいよ、母はゝとして爾なんぢの子この前まへに勇いさみを有たもちて、迫害はくがいせらるる人人ひとびとの爲ために助たすけを求もとめ、不ふ法はふの者ものの驕傲おごりを滅ほろぼし給たまへ。

第四歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよに藉よりて來きたりし者ものは使し者しやに非あらず、天てん使しに非あらず、主しゆ親みづから人體じんたいを取とりて、我われ全まつたき人ひとを救すくひ給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

女宰ぢよさいよ、我われに傷しやう感かんの滴したゝりを注そゝぎて、我わが心こゝろの熱ねつと我わが憂うれひとを悉ことごとく退しりぞけ、有いう害がいなる攻擊こうげきを防ふせき給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ逸樂いつらくの武器ぶきに傷きずつけられ、病やみて臥ふす者ものを棄すつる毋なかれ。十じふ字架じかに釘ていせられし爾なんぢの子こ我わが神かみの戈ほこと血ちとを以もつて我われを痊いやし給たまへ。

光榮 凡およその主宰しゆさいの恩おん寵ちように富とまされたる純じゆん潔けつなる者ものよ、痛いたく貧まづしくなりたる我われに神聖しんせいなる恩おん寵ちようを得えしめ給たまへ、我わが爾なんぢを善ぜんなる我われの保護ほご者しやとして崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

今も 婚姻こんいんに與あづからざる少女せうぢよよ、父ちゝの光ひかりなるハリストスは爾なんぢの腹はらより輝かゞやき出いでて、十じふ字架じかに釘ていせられて全ぜん地ちを照てらし、惡あく鬼きの幽闇くらやみを滅ほろぼし給たまへり。

第五歌頌

イルモス ハリストス神かみよ、爾なんぢは神かみと人ひととの中保者なかだちと爲なれり、主宰しゆさいよ、我われ等らは爾なんぢに依よりて、無智むちの闇やみより光ひかりの原もとなる爾なんぢの父ちゝに就つくを得えたればなり。

生命いのちの途みちを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、我われ無智むちにして無ぶ道だう及および誘惑いざなひの坎あなに墜おとされたる者ものを今いま直なほき途みちに向むかはしめ給たまへ。

我われ無知むちにして神かみの睿えい智ちより離はなれ、諸慾しよよくの遠とほき路みちに迷まよひて、放蕩はうたうに生せい活くわつせり。潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われを返かへして、爾なんぢの宥なだめを以もつて救すくひ給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢの活いける水みづを我われ罪つみの炎ほのほに焚やかれ、惡あく鬼きの攻擊こうげきに燃もやさるる爾なんぢの僕ぼくに飮のませ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、イサイヤの預よ言げんせし如ごとく、視みよ、爾なんぢは言ことばに超こえて腹はらの内うちにハリストス神かみを宿やどし、性せいに超こえて神かみの母はゝとして之これを生うみ給たまへり。

第六歌頌

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、將しやう來らいの審判しんぱんに於おいて我われを惡あく鬼きの悅よろこびと爲なす勿なかれ、審判者しんぱんしや爾なんぢの子こに慈じ憐れんを以もつて我われを見みんことを祈いのり給たまへ。

主しゆよ、我われ邪よこしまなる思おもひと不ふ潔けつなる行おこなひとを以もつて爾なんぢを怒いからしし者ものを我わが爲ために爾なんぢに祈いのる爾なんぢの母はゝの祈き禱たうに由よりて憐あはれみて救すくひ給たまへ。

光榮 審判者しんぱんしや及および萬有ばんいうの神かみを生うみし讚さん美びたる女宰ぢよさいよ、我われ罪つみに因よりて自おのづから定罪ていざいせられし者ものを定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢが性せいに超こえて身みを以もつて生うみしイイスス救世主きうせいしゆに爾なんぢの諸僕しよぼくの患くわん難なんより救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第二調。

ハリストスよ、童貞女どうていぢよ爾なんぢの母はゝは爾なんぢ十じふ字架じかに懸かけられて死しせし者ものを覩みて、痛いたく泣なきて曰いへり、吾わが子こよ、此この奇異きいなる祕ひ密みつは何なにぞや、衆しゆうに永遠えいゑんの生命いのちを賜たまふ者ものは如何いかんぞ甘あまんじて十じふ字架じかに耻はづべき死しを以もつて死しする。

第七歌頌

イルモス 不ふ法はふなる虐者しへたげびとの神かみに戾もとる命令めいれいは高たかき焰ほのほを起おこしたれども、讚ほめ歌うたはるるハリストスは敬虔けいけんの少者せうしやに屬神ぞくしんの露つゆを降くだし給たまへり。

我わが力ちからと歌うたと救すくひ、堅けん固ごなる保護ほごと破やぶられぬ墻かきたる女宰ぢよさいよ、我われと戰たゝかふ惡あく鬼き、常つねに我われを殺ころさんと謀はかる者ものに勝かち給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは童貞どうていの血ちより身みを取とりし神かみを生うみて、人類じんるゐを神成しんせいし給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ諸慾しよよくに汚けがされ、敵てきの惡謀あくぼうに因よりて朽きう壞くわいせし者ものを救すくひ給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつなる者ものよ、爐ゐろりは爾なんぢの產さんを預よ象しやうせり、蓋けだし少者せうしやを焚やかざりき、止とゞめられぬ火ひの爾なんぢの胎たいに於おけるが如ごとし。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、爾なんぢの諸僕しよぼくを永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは獨ひとり童貞女どうていぢよに止とゞまりて、至し淨じやうなる降孕みごもりと不ふ朽きうなる產さんとを顯あらはせり、蓋けだし萬有ばんいうの神かみにして人ひとと成なりしハリストスを信者しんじやの救すくひ及および贖しよく罪ざいの爲ために妊はらみ給たまへり。

第八歌頌

イルモス 昔むかしワワィロンの火ひの爐ゐろりは神かみの命めいによりて其その勢いきほひを分わかち、ハルデイを焦こがして、信者しんじやを凉すゞしくせり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよと歌うたへばなり。

吾わが靈たましひよ、惡あくに遠とほざかりて善ぜんを慕したひ、神聖しんせいなる行おこなひを慮おもんぱかれ、蓋けだし仁じん慈じ慈じ憐れんなる神かみの母はゝ、衆しゆう人じんの耻はぢを得えざる保護ほご者しやは爾なんぢの爲ために祈いのる。

至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、爾なんぢは人類じんるゐの古いにしへの定罪ていざいの縛なはめを解ときたり。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、我わが心こゝろの凡およその惡あくの縛なはめを解ときて、造成主ざうせいしゆを愛あいする神聖しんせいなる愛あいを以もつて我われを縛しばり給たまへ。

光榮 父ちゝの光くわう榮えいの光ひかりを生うみし生しやう神女しんぢよよ、罪惡ざいあくの耻はぢを患うれふる我わが心こゝろを照てらして、我われを永在えいざいの光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なし給たまへ、我わが信しんを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

今も 神かみの母はゝよ、至し上じやう者しやは爾なんぢより身みを取とりて、我われ等らに眞まことの義ぎの日ひと顯あらはれて、神性しんせいの光くわう線せんを以もつて萬有ばんいうを照てらし給たまへり、我われ等ら彼かれを讚ほめ歌うたふ。

第九歌頌

イルモス 無む原げんの父ちゝの子こ、神かみと主しゆは、童貞女どうていぢよより人體じんたいを取とり、我われ等らに現あらはれて、昧くらまされし者ものを明あかし、散ちらされし者ものを集あつめ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら讚さん美びたる生しやう神女しんぢよを崇あがめ歌うたふ。

至し淨じやうなる者ものよ、アダムは死しを交まじへたる食しよくを嘗なめて、木きの苦にがみに害がいせられたり、爾なんぢの子こは木きに釘ていせられて、不死ふしの甘あまみを流ながし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

少女せうぢよよ、爾なんぢは王わうたるハリストス、地ぢ獄ごくの國くにを破やぶりし主しゆを言いひ難がたく生うみたる女王によわうなり。彼かれに爾なんぢを尊たふとむ衆しゆう人じんが上うへなる國くにに入いるを得えんことを熱切ねつせつに祈いのり給たまへ。

光榮 慈じ憐れんなる主しゆの母はゝにして慈じ憐れんなる女宰ぢよさいよ、逸樂いつらくの慾よくに迫害はくがいせらるる我わが卑微ひびなる心こゝろに慈じ憐れんを垂たれて、我われを痛つう悔くわいの善ぜんなる門もんに入いれ給たまへ。

今も 言ことばよ、爾なんぢは十じふ字じ架かに擧あげられて死し者しやと爲なり、此これを以もつて蛇へびを殺ころせり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、惡あしき行おこなひに殺ころされたる吾わが靈たましひを憐あはれみて、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに因よりて之これを生いかし給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。聖三祝文、「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

金曜日

  金曜日の早課

第一の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第二調。

ハリストス神かみよ、爾なんぢは救すくひを地ちの中なかに作なし、十じふ字架じかに爾なんぢの至し淨じやうなる手てを伸のべて、萬民ばんみんを集あつめて呼よばしむ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

主しゆよ、敵てきが木きの生しやうずる食しよくを以もつてアダムを虜とりこにせし如ごとく、斯かく爾なんぢは親みづから十じふ字架じかの木きと爾なんぢの苦くるしみとを以もつて敵てきを虜とりこにせり、第だい二にのアダムとして爾なんぢは殊ことに迷まよひし者ものを尋たづね、死しせし者ものを生いかさん爲ために來きたりたればなり。神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 ハリストスよ、童貞女どうていぢよ爾なんぢの母はゝは爾なんぢ十じふ字架じかに懸かけられて死しせし者ものを覩みて、痛いたく泣なきて曰いへり、吾わが子こよ、此この奇異きいなる祕ひ密みつは何なにぞや、衆しゆうに永遠えいゑんの生命いのちを賜たまふ者ものは如何いかんぞ甘あまんじて十じふ字架じかに耻はづべき死しを以もつて死しする。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第二調。

主しゆよ、爾なんぢが我われ等ら不ふ當たうの者ものに爾なんぢの仁じん慈じに因よりて賜たまひし生命いのちを施ほどこす十じふ字架じかを我われ等ら祈き禱たうの中うちに爾なんぢに捧さゝぐ。獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆよ、生しやう神女しんぢよに因よりて、皇くわう帝ていと爾なんぢの城邑まちとを救すくひて、平安へいあんを與あたへ給たまへ。

句 神かみ我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

仁じん慈じなるハリストス神かみよ、我われ等ら爾なんぢの至し淨じやうなる聖像せいざうに伏拜ふくはいして、我わが諸罪しよざいの赦ゆるしを求もとむ。蓋けだし爾なんぢは其その造つくりし者ものを敵てきの奴ど隷れいより救すくはん爲ために、甘あまんじて身みにて十じふ字架じかに升のぼり給たまへり。故ゆゑに我われ等ら感謝かんしやして爾なんぢに呼よぶ、世せ界かいを救すくはん爲ために來きたりし我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは衆しゆう人じんを欣喜よろこびに滿みて給たまへり。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 聖人せいじん等らは世よに在ありて爾なんぢ雲くもを以もつて天てんを覆おほふ主しゆを己おのれの衣ころもと爲なして、不ふ法者はふしやより受うくる苦くるしみを忍しのび、偶像ぐうざうの迷まよひを空むなしくせり。救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて、我われ等らをも見みえざる敵てきより脫のがれしめて救すくひ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 ハリストスよ、種たねなく爾なんぢを生うみし者ものは爾なんぢの十じふ字架じかの側かたはらに立たち、非義ひぎに苦くるしみを受うくるを見みるに忍しのびずして、欷歔すゝりなきして爾なんぢに呼よべり、至いたりて甘愛かんあいなる子こ、性せいに於おいて苦くるしみに與あづからざる者ものよ、如何いかんぞ苦くるしみを受うくる。我われ爾なんぢの至し大だいなる仁じん慈じを歌うたふ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第二調。

甘あまんじて我われ等らの爲ために苦くるしみを受うれし主しゆよ、我われ盜賊たうぞくの如ごとく承うけ認とめて、爾なんぢ至し善ぜんの者ものに呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われを憶おもひて、彼かれと偕ともに我われを算かぞへ給たまへ。

爾なんぢの十じふ字架じかを以もつて地ち上じやうの者ものを照てらし、罪つみある者ものを痛つう悔くわいに召めし給たまひし善よき牧者ぼくしやよ、我われを爾なんぢの群ぐんより遠とほざくる勿なかれ。獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主宰しゆさいよ、我われ迷まよひし者ものを尋たづねて、爾なんぢの聖せいなる群ぐんに合あはせ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 潔いさぎよき女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら皆みな爾なんぢの子この尊たふとき十じふ字架じかに護まもられて、輙たやすく敵てきの凡およその攻擊こうげきに勝かつ。故ゆゑに爾なんぢを神かみの母はゝ、獨ひとり我わが靈たましひの恃賴たのみなる者ものとして宜よろしきに合かなひて崇あがめ讚ほむ。

尊貴にして生命を施す十字架の規程カノン、其冠詞は、十字架は樹てられて惡鬼の誘は墜ちたり。イオシフの作。第二調。

第一歌頌

イルモス 選えらばれたるイズライリは曾かつて履ふまれぬ、常つねならぬ、海うみの路みちを足あしを濡ぬらさずして過とほりて呼よべり、主しゆに謳うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

言ことばよ、爾なんぢは十じふ字架じかに釘くぎうたるる辱はづかしめを受うけ給たまへり、爾なんぢの自じ由いうなる苦くるしみを讚榮さんえいする衆しゆう人じんを貴たふとくせんと欲ほつしたればなり。

天てんを慢まんの如ごとく張はりたる救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに手てを伸のべて、此これを以もつて諸民しよみん諸しよ族ぞく、爾なんぢの自じ由いうなる苦くるしみを讚榮さんえいする者ものを抱いだき給たまへり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは十じふ字架じかを肩かたに任になひ、熱心ねつしんに十じふ字架じかに釘ていせられしハリストスに從したがひて、其その神聖しんせいなる苦くるしみに效ならへり。

致命者讚詞 凱旋がいせんの致ち命者めいしや、見神者けんしんしやよ、天軍てんぐんは爾なんぢ等らの苦くるしみを見みて歌か頌しようし、惡あく鬼きの大數たいすうは哭なけり。

生神女讚詞 女宰ぢよさいよ、尊たふとき預よ言者げんしやの言ことばは應かなへり、蓋けだし爾なんぢが己おのれの子この十じふ字架じかに釘ていせられしを見みし時とき、劍つるぎは爾なんぢの心こゝろを貫つらぬけり。

又至聖なる生神女の規程カノン、第二調。

第一歌頌

イルモス 人人ひとびとよ、來きたりて、海うみを分わかちて、エギペトの奴ど隷れいより引ひき出いだしし民たみを過とほらせしハリストス神かみに歌うたを歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

無む慾よくの泉いづみを生うみし獨ひとり神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる少女せうぢよよ、慾よくに傷きずつけられし我われを醫いやして、永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

獨ひとり神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我われを肉體にくたいの病やまひより護まもり、吾わが靈たましひの不ふ當たうなる慾よくを醫いやし、我われを永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ母はゝよ、我われ今いま爾なんぢの仁じん慈じの下もとに趨はしり附つく、爾なんぢの僕ぼくを靈たましひの病やまひ、心こゝろを害がいする慾よく、及および永遠えいゑんの火ひより救すくひ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢは我われの篤あつき保護ほごなり、我われ爾なんぢに趨はしり附つきて助たすけを蒙かうむり、靈たましひの救すくひを得う、爾なんぢは神かみの母はゝとして衆しゆう人じんを救すくふを能よくすればなり。

第三歌頌

イルモス 爾なんぢ我われを信しんの石いしに堅かたく立たて、我わが口くちを啓ひらきて我わが敵てきに對むかはしめ給たまへり。蓋けだし我わが神しん゜は樂たのしみて歌うたへり、吾わが神かみと侔ひとしく聖せいなるはなく、主しゆよ、爾なんぢの外ほかに義ぎなるはなし。

木きに懸かゝれる不ふ朽きうの葡ぶ萄だうたるイイスス、吾わが靈たましひの贖しよく罪主ざいしゆは、神聖しんせいなる甘味あまみを滴したゝらせて、人人ひとびとの心こゝろを樂たのしましめ、恩おん寵ちようにて惡あくの醉ゑひを醒さます。

慈じ憐れん多おほきイイススよ、爾なんぢは甘あまんじて木きに擧あげられて、悉ことごとく惡あく魔まの惡業あくげふを墜おとし、迷まよへる智慧ちゑに由よりて滅亡ほろびに陷おちいりし人人ひとびとを擧あげ給たまへり。

致命者讚詞 神かみを愛あいする愛あいの火ひに燃もゆる勇敢ゆうかんなる者ものは不死ふしの賜たまもの、終をはりなき悅よろこび、入いらざる光ひかりを受うけんことを望のぞみて、火ひを畏おそれず、死しを忌いまざりき。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやは己おのれの血ちを以もつて美うるはしく朱袞しゆこん衣いを染そめて之これを衣き、右みぎの手てに帝てい笏しやくの如ごとく神聖しんせいなる十じふ字架じかを執とりて、主しゆと偕ともに常つねに王わうたるなり。

生神女讚詞 神かみの聘女よめ少女せうぢよよ、無む形けいの品ひん位ゐは爾なんぢを尊たふとむ。蓋けだし爾なんぢは身みを取とりし萬有ばんいうの主宰しゆさい、木きに緣よりて縛しばられし衆しゆうを解とき、信者しんじやを己おのれの愛あいに繫つなぎし者ものを生うみ給たまへり。

又 イルモス同上

童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢは無む原げんの王わう、爾なんぢより身みを取とりし者ものを生うみ給たまへり。其その人ひとを愛あいする主しゆなるに因よりて、彼かれに爾なんぢの僕ぼくを諸もろもろの憂うれひ及および將しやう來らいの定罪ていざいより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

永生えいせいの泉いづみを生うみし者ものよ、爾なんぢの神聖しんせいなる力ちからを以もつて我わが心こゝろの惑まどひを釋とき、傷きずを痊いやし、痛いたみを去さらしめ、傷しやう感かんの流ながれを我われに予あたへ給たまへ。

至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、惡あく鬼きの攻擊こうげきと失望しつばうとに因よりて傷いためる吾わが靈たましひを醫いやし、痛つう悔くわいの淚なみだを我わが心こゝろに與あたへ、我わが主宰しゆさいを畏おそるる畏おそれを其中そのうちに入いれ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、我われ怠惰おこたりの中うちに我わが生命いのちを費つひやし、慾よくにて吾わが心こゝろを汚けがしし者ものは靈たましひの傷しやう感かんを抱いだき、爾なんぢに來きたりて祈いのる、痛つう悔くわいの範のりを以もつて我われを導みちびき、我われを宥なだめて救すくひ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよに藉よりて來きたりし者ものは使し者しやに非あらず、天てん使しに非あらず、主しゆ親みづから人體じんたいを取とりて、我われ全まつたき人ひとを救すくひ給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

地ちを水みづの上うへに懸かけし全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは十じふ字架じかに懸かけられ、戈ほこを以もつて脅わきを刺さされて、血ちと水みづとを滴したゝらせ給たまへり、衆しゆう人じんの贖しよく罪ざいの爲ためなり。

ハリストスよ、爾なんぢの脅わきの刺さされしに、吾わが病やまひは愈いやされ、手てを以もつて頰ほゝの批うたれしに、我われ自じ由いうを獲え、膽いを嘗なめしに、我われ逸樂いつらくの食しよくの毒どくより救すくはれたり。

致命者讚詞 神聖しんせいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは詭き譎けつなる蛇へびを傷きずにて掩おほひ、常つねに救世主きうせいしゆの泉いづみより恩おん寵ちようを流ながして、我わが心こゝろの傷きずを醫いやし給たまふ。

致命者讚詞 至いたりて尊たふとき見神者けんしんしや受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは血ちを流ながす傷きずを受うけ、十じふ字架じかに舒のべられ、皮かはを剥はがれたるに、惡敵あくてきの全ぜん體たいに傷きずを被かうむらせたり。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、至し上じやう者しやは爾なんぢの至いたりて潔いさぎよき血ちより身みを取とり給たまへり。爾なんぢは其その非義ひぎに木きに擧あげらるるを見みて、歎息たんそくして哭なき、其その仁じん慈じを讚さん頌しようせり。

又

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、爾なんぢは我われ迷まよへる者ものを尋たづねて、我われにまで至いたればなり。故ゆゑに慈じ憐れん深ふかき主しゆよ、我われに於おける爾なんぢの大おほいなる寬くわん容ようを讚榮さんえいす。

誠まことに讚さん美びたる者ものよ、我われ爾なんぢ至いたりて讚さん美びたる神かみ言ことばを性せいに超こえて生うみし者ものを歌うたひて祈いのる、我わが卑微ひびなる靈たましひの病やまひを醫いやし、我われを畏おそるべき定罪ていざいより脫のがれしめ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、常つねに爾なんぢの豐ゆたかなる慈じ憐れんを我われ等らに注そゝぎて、不ふ能のうを醫いやし、靈たましひの諸慾しよよくを止とゞめ、我わが心こゝろの諸罪しよざいと多た病びやうとの縛なはめを解とき給たまへ。

我われ諸慾しよよくを以もつて靈たましひを汚けがせり。至し淨じやうなる者ものの爲ために至いたりて潔いさぎよき居處すまひと爲なりし神かみの母はゝよ、我われを潔きよめて、痛つう悔くわいの光ひかりに導みちびき、我われを將しやう來らいの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢに祈いのる、我わが智慧ちゑを照てらし、肉體にくたいの望のぞみを制せいし、我わが慾よくの心こゝろの浪なみを鎭しづめて、神聖しんせいなる港みなとに著つかしめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス イサイヤに爇炭やけずみとして現あらはれし日ひは童貞女どうていぢよの腹はらより黑暗くらやみに迷まよひし者ものに輝かゞやきて、神かみを知しる知ち識しきの光くわう照せうを賜たまふ。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは慈じ憐れんに因よりて十じふ字架じかに擧あげられて、我われを惡あくの深處ふかみより引ひき出いだし、甘あまんじて辱はづかしめを受うけて、我われを尊たふとくして父ちゝと偕ともに坐ざせしめ給たまへり。

花はなを以もつて全ぜん地ちに冠かうむらする言ことばよ、爾なんぢは棘いばらを冠かうむりて、我わが諸慾しよよくの棘いばらを根ねより絕たち、爾なんぢの智慧ちゑを我われの中うちに栽うゑ給たまふ。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らの中うちに神かみの弱よわきは人ひとの强つよきに過すぐるに由よりて、爾なんぢ等らは戰たゝかひに勇いさみて、惡あく鬼きの軍ぐんを潰つひやし給たまへり。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは地ち上じやうに大おほいに心勞しんらうして、天てん上じやうに大おほいなる光くわう榮えいを獲え、爾なんぢ等らを尊たふとむ我われ等らを大おほいなる患くわん難なんより救すくひ給たまふ。

生神女讚詞 誠まことに至し淨じやうなる者ものよ、天てんに於おいて神かみに合かなふが如ごとくヘルワィムの肩かたに荷になはるる主しゆ、爾なんぢの手てに坐ざせし者ものは十じふ字架じかに釘ていせられて、衆しゆう人じんを朽きう壞くわいより救すくひ給たまへり。

又

イルモス 幽闇くらやみに居をる者ものの光くわう照せう、失望しつばうする者ものの救きう贖しよくたるハリストス我わが救主きうしゆよ、我われ爾なんぢ平安へいあんの王わうに朝あさの祈禱いのりを奉たてまつる。爾なんぢの光ひかりを以もつて我われを照てらし給たまへ、我われ爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

萬有ばんいうの實在じつざいの生命いのちを生うみし純じゆん潔けつなる女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、詭き譎けつの者ものの惡謀あくぼうと誘惑いうわくとに殺ころされし我われを生いかし給たまへ、我わが敬虔けいけんにして爾なんぢ讚さん美びたる者ものを歌うたはん爲ためなり。

羔こひつじ及および牧者ぼくしやの母はゝと現あらはれし童貞女どうていぢよよ、惡風あくふうに迷まよひし我われを牧ぼくして、審判しんぱんの日ひに於おいて右みぎなる羊ひつじに合あはせられんことを得えしめ給たまへ、我わが爾なんぢの救すくひの恩おん寵ちようを歌うたはん爲ためなり。

少女せうぢよよ、祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを慾よくの昏昧くらみ、惡敵あくてきの攻擊こうげきより來きたる誘惑いざなひ、罪つみを犯おかす者ものの爲ために備そなへらるる將しやう來らいの永遠えいゑんの苦くるしみより救すくひ給たまへ。

全ぜん世せ界かいを照てらす惟一ゆゐいちの神かみの言ことばの入いり給たまひし神かみの聘女よめよ、祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われに眞まことの痛つう悔くわいの光ひかりを照てらし、我わが慾よくの幽暗くらやみを拂はらふ救すくひの光くわう線せんを我われに輝かゞやかし給たまへ。

第六歌頌

イルモス 主宰しゆさいよ、傷いためる靈たましひより祈禱いのりの言ことばの聲こゑを聞ききて、我われを諸難しよなんより脫のがれしめ給たまへ、爾なんぢは獨ひとり我われ等らの救すくひの緣由ゆゑんなればなり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは背せを以もつて撻むちうつに、爾なんぢの頰ほゝを以もつて批うつに、面おもてを以もつて唾つばきせらるるに任まかせて、知しると知しらずして爾なんぢの前まへに多おほく罪つみを犯おかしし我われを救すくひ給たまへり。

ハリストス我わが神かみよ、爾なんぢは羔こひつじの如ごとく屠ほふられん爲ために牽ひかれて、無む形けいの狼おほかみの毒どく齒ばに囓かまれて死しせし者ものを復また生命いのちに升のぼせ給たまへり。光くわう榮えいは爾なんぢの釘殺ていさつに歸きす。

致命者讚詞 主宰しゆさいの致ち命者めいしやは法はふを守まもりて、法はふに悖もとる者ものの不ふ法はふの命めいに服ふくせずして、死しして將しやう來らいの生命いのちを受うけたり。

致命者讚詞 聖人せいじん等らは喜よろこびて敵てきの首しゆ領りやうと戰たゝかひ、神聖しんせいなる武器ぶきを以もつて之これに勝かちて、神かみより勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけたり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、神かみは人ひとを神成しんせいせん爲ために爾なんぢより生うまれ、十じふ字架じかに釘ていせられて死しを嘗なめ、昔むかし我われを殺ころしし者ものを十じふ字架じかにて殺ころし給たまへり。

又

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

讚さん美びたる者ものよ、我われ今いま爾なんぢに趨はしり附つく、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを守まもりて救すくひ給たまへ、爾なんぢは衆しゆうを堅かたむる者ものの母はゝとして、欲ほつする所ところ能よくせざるなければなり。

生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、我われ憂患うれひの暴風あらしに擾みだされ、侵害しんがいの浪なみに溺おぼらさるる爾なんぢの僕ぼくを救すくひ給たまへ。

我われ無慈悲むじひ及および姦かん惡あくなる者ものに爾なんぢの慈じ憐れんを蒙かうむらせて、我われを將しやう來らいの苦くるしみ及および永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは世よの罪つみを任になふ至し淨じやうなる羔こひつじを孕はらみて生うみ給たまへり、我われに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを絕たえず彼かれに祈いのり給たまへ。

第七歌頌

イルモス 不ふ法はふなる虐者しへたげびとの神かみに戾もとる命令めいれいは高たかき焰ほのほを起おこしたれども、讚ほめ歌うたはるるハリストスは敬虔けいけんの少者せうしやに屬神ぞくしんの露つゆを降くだし給たまへり。

衆しゆう人じんの復ふく活くわつなる言ことばよ、爾なんぢは十じふ字架じかに擧あげられて、我われ罪つみに因よりて陷おちいりし者ものを興おこし、我われを陷おとしいれし敵てきを倒たふして、之これを殺ころせり。光くわう榮えいは爾なんぢの權柄けんぺいに歸きす。

ハリストスよ、爾なんぢ釘ていせられしに、釘くぎを以もつて原げん祖その罪つみを十じふ字架じかに打うち付つけ、葦あしにて擊うたれしに、此これを以もつて衆しゆう人じんの爲ために自じ由いうを書しるせり。光くわう榮えいは我われ等らを諸慾しよよくの黑暗くらやみより脫のがれしめし爾なんぢの苦くるしみに歸きす。

致命者讚詞 ハリストスの凱旋がいせんの大だい致ち命者めいしやは殺人者ひとごろしの不ふ潔けつなる手てにて肉體にくたいを斬きられ、靈たましひを以もつては神かみに離はなれず、勇敢ゆうかんの劍つるぎにて詭き譎けつなる敵てきを斬きり殺ころせり。

致命者讚詞 十じふ字架じかに釘ていせられしハリストスを破やぶられぬ固かためと有たもつ勝かたれぬ軍ぐんは迫害者はくがいしやの軍ぐんを滅ほろぼし、苦くるしみを受うけて、勝しよう利りの榮えい冠くわんたる永遠えいゑんの福樂ふくらくの生命いのちを獲えたり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは王わうの活いける宮みや、及および火ひの狀さまの寶はう座ざと現あらはれたり、之これに坐ざして彼かれは衆しゆう人じんを始はじめの墮だ落らくより起おこして、父ちゝと偕ともに坐ざする尊そん貴きを賜たまへり。

又 イルモス同上

實在じつざいの生命いのちたる主しゆ、死しを以もつて死しを滅ほろぼしし者ものを我われ等らの爲ために生うみし潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、吾わが心こゝろの諸慾しよよくを殺ころして、我われに淚なみだの泉いづみを與あたへ給たまへ、我わが常つねに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢを恃たのむ我われの爲ために耻はぢを得えざる冀望のぞみ、堅けん固ごなる恃賴たのみ、壞やぶられぬ墻かき、帲幪おほひ及および扶助たすけと爲なりて、我われを痛つう悔くわいと傷しやう感かんとの光ひかりに導みちびき給たまへ。

爾なんぢの僕ぼくが惡あく鬼きの凡およその侵害しんがい、憂患うれひ、定罪ていざい、及および永遠えいゑんの火ひより救すくはれんことを爾なんぢの子こに祈いのり給たまへ、我わが信しんを以もつて常つねに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは獨ひとり童貞女どうていぢよに止とゞまりて、至し淨じやうなる降孕みごもりと不ふ朽きうなる產さんとを顯あらはせり、蓋けだし萬有ばんいうの神かみにして人ひとと成なりしハリストスを信者しんじやの救すくひ及および贖しよく罪ざいの爲ために妊はらみ給たまへり。

第八歌頌

イルモス 三重みへに福ふくたる少者せうしやは金こがねの像ざうを顧かへりみずして、變易かはりなき活いける神かみの像かたちを見みて、焰ほのほの中うちに歌うたへり、造ざうを受うけし萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐべし。

慈じ憐れんなる主しゆよ、畏おそれなく不ふ法はふを行おこなふ頑陋かたくななる人人ひとびとは、不ふ法者はふしやを義ぎと爲なす爾なんぢを犯罪者はんざいしやの間あひだに木きに擧あげて釘ていせり、然しかれども萬物ばんぶつは爾なんぢを神かみ及および主宰しゆさいと讚榮さんえいして、爾なんぢの恒忍ごうにんを讚ほめ歌うたふ。

ハリストスよ、爾なんぢは木きに釘ていせられて、血ちに染そみたる爾なんぢの指ゆびを以もつて、昔むかし惡あく鬼きに獻さゝげられて獻さゝぐる者ものを害がいする血ちを拭のごへり。故ゆゑに萬物ばんぶつは爾なんぢ萬ばん衆しゆうの神かみを讚榮さんえいして、爾なんぢの仁愛じんあいを讚ほめ歌うたふ。

致命者讚詞 活いける水みづに滿みたされたる致ち命者めいしやは其その血ちの神聖しんせいなる流ながれにて迷まよひの川かはを涸からし、撓たわまざる信しんを以もつて呼よべり、造ざうを受うけし萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに彼かれを讚ほめ揚あぐべし。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らの無む量りやうの血ちは邪敎じやけうの火ひを滅けし、エㇽリンの多た神しんの迷まよひを亾ほろぼし、衆しゆう信者しんじやを照てらして歌うたはしむ、萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに彼かれを讚ほめ揚あぐべし。

生神女讚詞 諸しよ預よ言者げんしや及および致ち命者めいしやの裝さう飾しよくなる無む玷てんの牝め羊ひつじは爾なんぢ無む原げんなる言ことばが羔こひつじの如ごとく木きに擧あげられしを見みて、痛いたく哭なきて曰いへり、造ざうを受うけし萬物ばんぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あぐべし。

又

イルモス 火ひの爐ゐろりの中うちにエウレイの少者せうしやに降くだりて、焰ほのほを露つゆに變へんぜし神かみを、造物ざうぶつは主しゆとして歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

ハリスティアニン等らの避所かくれが及および扶ふ助者じよしやなる至いたりて潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ常つねに諸難しよなん及および詭き譎けつなる惡あく鬼きの多おほくの攻擊こうげきに圍かこまるる者ものを我わが憂うれひの中うちに棄すつる勿なかれ。

威ゐ嚴げんなる轉達者てんたつしやよ、爾なんぢに祈いのる者ものの聲こゑを忘わすれずして、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて彼かれ等らを凡およその病やまひ凡およその危難あやふきより脫のがれしめ給たまへ、爾なんぢの母はゝたる祈き禱たうは神かみを傾かたぶくればなり。

祝しゆく福ふくせられし潔いさぎよき少女せうぢよよ、今いま我わが諸慾しよよくの烈はげしき暴風あらしを鎭しづめ、卑微ひびなる我われを絕たえず攻せむる無む形けいの諸敵しよてきに勝かち給たまへ、我わが信しんを以もつて爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

獨ひとり神かみの母はゝ、信者しんじやの轉達者てんたつしやよ、終をはりの時ときに於おいて我われを誘惑いざなひの爐ゐろり、諸罪しよざいの焰ほのほ、諸慾しよよくの火ひ、「ゲエンナ」、及および惡あく鬼きの侵害しんがいより脫のがれしめ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの位くらゐに合かなひて能よく爾なんぢを讚さん美びする舌したなし、天てん上じやうの智慧ちゑも如何いかに爾なんぢを歌か頌しようするを知しらず、唯たゞ爾なんぢ、仁じん慈じの者ものとして、我われ等らの信しんを納いれ給たまへ、我われ等らの熱切ねつせつなる愛あいを知しればなり、蓋けだし爾なんぢはハリスティアニン等らの轉達てんたつなり、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

言ことばよ、昔むかしイサアクは爾なんぢの苦くるしみを預よ象しやうせん爲ために縛しばられ、又また預よ象しやうとして牡を羊ひつじは縛しばられし者ものを解ときたるに、實じつに不ふ自じ由いうなる祭祀まつりは釋ゆるされたり、蓋けだし爾なんぢは自じ由いうにして祭祀まつりに獻けんぜられしに、我われ等らは諸惡しよあくより解とかれたり。

人ひとの子こより至いたりて美うるはしきハリストスよ、爾なんぢは姿容すがたもなく威ゐ嚴げんもなくして、苦くるしめられ、十じふ字架じかの木きに懸かけられて、全ぜん人類じんるゐの醜みにくきを妝よそほひ給たまへり。惟一ゆゐいち慈じ憐れんなる主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの仁愛じんあいに歸きす。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは上うへなるシオンに住すむ者ものと爲なりて、天てん使しの同どう住ぢゆう者しやとして彼かれ等らと同尊どうそんなる者ものと顯あらはれ、致ち命めいの榮えい冠くわんを冠かうむりて、冢ちよう子しの敎けう會くわいを美うるはしく飾かざり、神聖しんせいなる光ひかりを以もつて輝かゞやき給たまふ。

致命者讚詞 主しゆの聖せいなる致ち命者めいしや、大おほいに爾なんぢ等らを愛あいせし者ものの至し愛あいなる友ともよ、我われを肉體にくたいに於おける有いう害がいの愛あいより脫のがれしめ、凡およそ爾なんぢの記き憶おくを行おこなふ者ものの爲ために成聖せいせい、光くわう照せう、及および諸罪しよざいの赦ゆるしを求もとめ給たまへ。

生神女讚詞 光くわう體たいは爾なんぢ義ぎの日ひが甘あまんじて十じふ字架じかに擧あげられしを覩みて、其その常つねの美うるはしきを變へんじ、童貞女どうていぢよは童貞どうていの門もん徒とと偕ともに哭なきて呼よべり、嗚呼あゝ哀かなしい哉かな、斯この奇異きいなる顯現あらはれは何なにぞや。

又

イルモス 無む原げんの父ちゝの子こ、神かみと主しゆは、童貞女どうていぢよより人體じんたいを取とり、我われ等らに現あらはれて、昧くらまされし者ものを明あかし、散ちらされし者ものを集あつめ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら讚さん美びたる生しやう神女しんぢよを崇あがめ歌うたふ。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは智慧ちゑ及および言ことばに超こえて、人ひとを愛あいする主しゆ、獨ひとり慈じ憐れん多おほき者ものを生うみ給たまへり。彼かれに審判しんぱんの畏おそるべき時ときに於おいて爾なんぢの僕ぼくを永遠えいゑんの火ひより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

神かみの聘女よめよ、我われ等ら爾なんぢを歌うたひ、信しんを以もつて讚榮さんえいし、常つねに爾なんぢの神聖しんせいなる帲幪おほひの下したに趨はしり附つく者ものに、我われ等らを苦くるしむる諸罪しよざい諸慾しよよくの解とかるるを天てんより與あたへて、我われ等らを定罪ていざい及および永苦えいくより脫のがれしめ給たまへ。

我われを殺ころしし罪つみの果みは、見みれば美うるはしく、味あぢはへば最いと苦にがし、我われ飽あくまで之これを食くらひて、畏おそるべき審判しんぱんを俟まつ。至し聖せいなる童貞女どうていぢよ母はゝよ、我われを之これより脫のがれしめ給たまへ。

慈じ憐れんなる主しゆの母はゝにして慈じ憐れんなる女宰ぢよさいよ、逸樂いつらくの慾よくに迫害はくがいせらるる我わが卑微ひびなる心こゝろに慈じ憐れんを垂たれて、我われを痛つう悔くわいの善ぜんなる門もんに入いれ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、小聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第二調。

ハリストス神かみよ、爾なんぢは十じふ字架じかの木きを我われ等ら爾なんぢを信しんずる者ものの爲ために生命せいめいの樹きと爲なし、此これを以もつて死しの權けんを秉とる者ものを虛むなしくして、罪つみに因よりて殺ころされし者ものを生いかし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに呼よぶ、衆しゆう人じんの恩者おんしや主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

ハリストス神かみよ、アダムの貧まづしくなりしに因よりて爾なんぢは甘あまんじて貧まづしくなり、童貞女どうていぢよより身みを取とりて地ちに來きたり、我われ等らを敵てきの奴ど隷れいより救すくはん爲ために釘殺ていさつを受うけ給たまへり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 嗚呼あゝ受難者じゆなんしや致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らはハリストスの爲ために死しに至いたるまで苦くるしみを受うけしに因よりて、爾なんぢ等らの靈たましひは天てんに神かみの手てに在あり、爾なんぢ等らの不ふ朽きうの體たいは全ぜん世せ界かいに尊たふとまれ、諸しよ司し祭さい諸しよ王わうは之これに伏拜ふくはいし、我われ等ら人人ひとびと皆みな悅よろこびて同心どうしんに呼よぶ、聖人せいじんの寢ねむりは主しゆの目めの前まへに貴たつとし。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 無む玷てんなる牝め羊ひつじは其その羔こひつじの甘あまんじて人ひとの如ごとく屠ほふりの爲ために牽ひかるるを見みて、哭なきて云いへり、ハリストスよ、爾なんぢを生うみし我われを爾なんぢは今いま子こなき者ものと爲なす、衆しゆう人じんの救主きうしゆよ、何なんぞ斯かく爲なしたる。然しかれども人ひとを愛あいする主しゆよ、我われは智慧ちゑ及および言ことばに超こゆる爾なんぢの至し大だいなる仁じん慈じを歌か頌しよう讚榮さんえいす。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」、聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、聯禱、第一時課、常例の聖詠、及び發放詞。

  金曜日の聖体礼儀に

金曜日の眞福詞、第二調。

我われ等ら爾なんぢに盜賊たうぞくの聲こゑを奉たてまつりて祈いのる、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

恒忍ごうにんなる主宰しゆさいよ、爾なんぢは甘あまんじて棘いばらの冠かんむりを冠かうむりて惡あくの棘いばらを根ねより絕たやし給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

罪つみなき者ものよ、爾なんぢは髑髏されかうべの處ところに釘ていせられて、凶きよう惡者あくしやの首かうべを碎くだき、衆しゆう人じんを救すくひ給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは毁やぶられて、敵てきの一切いつさいの力ちからを毁やぶり、勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけ給たまへり。

光榮 我われ等ら信者しんじやは神聖しんせいなる血ちの濺そゝぐを以もつて光くわう照せうせられて、三さん位ゐの中うちに惟一ゆゐいちの神性しんせいを尊たふとむ。

今も 純じゆん潔けつなる者ものはハリストスが羔こひつじの如ごとく木きに懸かけられしを覩みて、泣なき號さけびて彼かれを讚榮さんえいせり。

  金曜日の晩課

「スボタ」の奉事の始及び晩課と早課との式。此等に關する規定は皆第一調に載す。

「主よ爾に籲ぶ」に聖致命者と成聖者と克肖者との讚頌スティヒラ。第二調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは肉體にくたいを傷きずつくるに任まかせ、烈はげしき苦く難なんと苦くるしき死しとを忍しのびて、窘逐者きんちくしやを辱はづかしめ、實じつに偶像ぐうざうの尊たふときを滅ほろぼして、ハリストス惟一ゆゐいちの神かみ及および主宰しゆさいを傳つたへたり。光くわう榮えいなる榮えい冠くわん者しやよ、今いま爾なんぢ等らは天てん使しの品ひん位ゐと偕ともに彼かれの前まへに立たち給たまふ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

又上の讚頌スティヒラ、「至りて讚たる致命者よ」、を誦す。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

福ふくたる者ものよ、爾なんぢ等らは地ちに現あらはれし言ことばの聖せいなる傳道でんだう師しと爲なりて、衆しゆう人じんに敬虔けいけんを敎をしへ、神聖しんせいなる正敎せいけうを述のべて、異い端たんを遠とほくハリストスの敎けう會くわいより逐おへり。故ゆゑに聖三者せいさんしやの聖せい務む者しやとして衆しゆうを永遠えいゑんの生命いのちの居處すまひに入いれ給たまへ。

又致命者の讚頌スティヒラ。同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは地ち上じやうの樂たのしみを愛あいせずして、天てん上じやうの福樂ふくらくを獲え、諸天しよてん使しの同どう住ぢゆう者しやと爲なれり。主しゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

聖せい致ち命者めいしやの我われ等らの爲ために祈いのりてハリストスを歌うたふに、凡およその迷謬まよひは熄やみ、人ひとの族やからは信しんを以もつて救すくはる。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

致ち命者めいしやの會くわいは窘逐者きんちくしやに敵てきして曰いへり、我われ等らは萬軍ばんぐんの王わうの兵へい士しなり、爾なんぢ等ら火ひ及および種種しゆじゆの苦くるしみに我われ等らを付わたすとも、聖三者せいさんしやの力ちからを諱いまざらん。

光榮、今も、生神女讚詞

恩おん寵ちよう來きたりて、法はふ律りつの影かげは去されり。蓋けだし燃もゆる棘いばらの焚やけざりし如ごとく、童貞女どうていぢよは生うみし後のちも永ながく童貞女どうていぢよなり。焰ほのほの柱はしらの代かはりに義ぎの日ひは出いでて光ひかる、モイセイの代かはりに我わが靈たましひの救きう者しやハリストスは現あらはれたり。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン、我わが神かみ我われを憐あはれむ者ものは我われに先さきだたん。

句 我わが神かみよ、我われを我わが敵てきより援たすけ、我われを攻せむる者ものより護まもり給たまへ。次に「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。

挿句くづけに讚頌スティヒラ、第二調。

聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らが信しんを以もつて得えたる光くわう榮えいは大おほいなり、蓋けだし唯たゞ苦くるしみの中うちに敵てきに勝かちしのみならず、死しせし後のちにも惡あく鬼きを逐おひ、病びやう者しやを醫いやす。靈體れいたいの醫師いしよ、主しゆに我われ等らの靈たましひを憐あはれまんことを祈いのり給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。

死者の讚頌スティヒラ

ハリストス神かみよ、花はなの凋しぼむが如ごとく、影かげの過すぎ去さるが如ごとく、凡およその人ひとは壞やぶらる、然しかれども箛らつぱの鳴ならん時とき、地ち震ふるひ、死し者しや皆みな興おきて爾なんぢを迎むかへん。主宰しゆさいよ、其時そのとき我われ等らより遷うつしし爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを爾なんぢの聖せいなる住處すまひに入いれ給たまへ。

句 彼かれ等らの靈たましひは福ふくに居をらん。

死者の讚頌

嗚呼あゝ靈たましひが體からだに別わかるる時とき、苦く勞らう如何いか許ばかりぞ、噫嘻あゝ斯この時とき、涕なみだを流ながすこと幾何いくばくぞ、唯たゞ之これを憐あはれむ者ものなし、天てん使等しらに目めを擧あぐるも祈いのるに驗しるしなく、人人ひとびとに手てを伸のぶるも扶たすくる者ものなし。故ゆゑに我わが愛あいすべき兄弟けいていよ、我われ等らの生いのちの短みぢかきを念おもひて、世よを逝さりし者ものに安息あんそくを、我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことをハリストスに求もとむべし。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを災禍わざはひより救すくひ給たまへ、我われ等ら皆みな爾なんぢを破やぶられぬ墻かき及および轉達てんたつとして、神かみの次つぎに爾なんぢに趨はしり附つけばなり。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。及び發放詞。

  金曜日の晩堂課

至聖なる生神女に奉る祈禱の規程カノン。第二調。

第一歌頌

イルモス 人人ひとびとよ、來きたりて海うみを分わかちて、エギペトの奴ど隷れいより引ひき出いだしし民たみを過とほらせしハリストス神かみに歌うたを歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

生命いのちの首かしら及および主しゆを生うみし潔いさぎよき童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢは生命いのちの泉いづみと爲なりて、信しんを以もつて爾なんぢを讚揚さんやうする衆しゆう人じんの生命いのちを潤うるほし給たまふ。

無む垢く無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢを生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものは爾なんぢを保固かため及および慈じ憐れんなる轉達者てんたつしやとして獲えて、生命いのちの暴風あらしより救すくはる。

光榮 不死ふしの生命いのちを生うみし獨ひとり神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる少女せうぢよよ、諸慾しよよくに傷きずつけられし我われを醫いやして、永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめ給たまへ。

今も 信者しんじやの避所かくれが、爾なんぢに趨はしり附つく者ものの有能いうのうの扶助たすけたる永貞えいてい童女どうぢよよ、我われ等らを凡およその危き難なん及および敵てきの侵害しんがいより救すくひ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 木きを以もつて罪つみを殺ころしし主しゆよ、我われ等らを爾なんぢの中うちに堅かためて、爾なんぢを畏おそるる畏おそれを我われ等ら、爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろに植うゑ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢを實じつに黃金こがねの香かう爐ろ、「マンナ」の壺つぼ、神聖しんせいなる山やま、神かみの美うるはしき宮みやと稱となふ。

言ことばの殿でん及および聖せいにせられし居處すまひたる至し聖せいなる生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、常つねに我わが爲ために諸罪しよざいの潔淨きよめと爲なり給たまへ。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、地ち上じやうの者ものの舌したも、無む形けいの者ものの智慧ちゑも爾なんぢの產さんを述のぶる能あたはず、爾なんぢは天性てんせい及および智慧ちゑに超こえて造成主ざうせいしゆを生うみたればなり。

今も 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、信しんを以もつて爾なんぢに趨はしり附つきて、爾なんぢを神かみの母はゝと承うけ認とむる者ものの爲ために保固かためと避所かくれが及および庇覆おほひと爲なり給たまへ。

第四歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ爾なんぢの光くわう榮えいなる攝せつ理りを聞ききて、爾なんぢの悟さとり難がたき能力ちからを讚榮さんえいせり。

生しやう神女しんぢよよ、我われ等らハリスティアニン等らは爾なんぢを大おほいなる援助たすけとして獲えたり。我われ等らを甚はなはだしき患くわん難なんより脫のがれしめ給たまへ。

婚姻こんいんに與あづからざる女宰ぢよさい、神かみを胎内たいないに孕はらみし者ものよ、我われ等ら衆しゆうを葘害わざはひ及および憂患うれひより救すくひ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを敵てきの侵害しんがいに於おいて壞やぶられぬ墻かき及および有能いうのうなる憑恃たのみとして獲えたり。

今も 女宰ぢよさいよ、我われ等らは爾なんぢの祈き禱たうを堅けん固ごなる基もとゐとして獲えて、諸もろもろの憂患うれひより援たすけらる。

第五歌頌

イルモス 光ひかりを賜たまひ、世世よよを造つくりし主しゆよ、爾なんぢの誡いましめの光ひかりの中うちに我われ等らを導みちびき給たまへ、我われ等ら爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

神かみの母はゝよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢより種たねなく身みを取とりて生うまれし子この眞まことの神かみ及および實じつ性せいの人ひとなるを知しれり。故ゆゑに爾なんぢを讚榮さんえいす。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら信者しんじやは信しんを以もつて常つねに爾なんぢの庇覆おほひ及および保護ほごの下もとに趨はしり附つきて、爾なんぢに依よりて凡およその敵てきの侵害しんがいより救すくはる。

光榮 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ等らを誘惑いざなひと擾みだれたる意思おもひ、凡およその怒いかりと凡およその罪つみ、饑き饉きんと疫えき病びやう、及および永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

今も 我われ等らの轉達者てんたつしやと拯救すくひと恃賴たのみなるハリスティアニン等らの女宰ぢよさい、讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、愛あいを以もつて常つねに忠ちゆう信しんに爾なんぢを歌か頌しようする者ものを救すくひ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

己おのれの旨むねを以もつて萬物ばんぶつを造つくりし主しゆは其その旨むねを以もつて婚姻こんいんに與あづからざる者ものの胎内たいないに入いりて、朽きう壞くわいを以もつて病やめる者ものを、慈じ憐れんなるに因よりて、不ふ朽きうにて富とまし給たまへり。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは天てん上じやうの軍ぐんより上うへにして聖せいなり、容いれられぬ言ことばを性せいに超こえて爾なんぢの胎内たいないに容いれたればなり。

光榮 女宰ぢよさいよ、我われ生命いのちの道みちに迷まよひて、屢しばしば罪つみの無ぶ道だうに入いる者ものを、痛つう悔くわいの道みちに向むかはしめ給たまへ。

今も 潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、我われ等ら爾なんぢに恃賴たのみを負おはせし爾なんぢの諸僕しよぼくの祈き禱たうを棄すつる勿なかれ、爾なんぢは靈たましひの爲ために避所かくれが及および潔淨きよめなればなり。

次ぎて主憐めよ、三次、光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第二調。

生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは種たねなく言ことばを孕はらみて、新あらたなる嬰兒をさなご、惟一ゆゐいちの子こハリストス、爾なんぢの造成主ざうせいしゆを生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

第七歌頌

イルモス 黃金こがねの偶像ぐうざうがデイルの野のに奉ほう事じせられし時とき、爾なんぢの三人みたりの少者せうしやは神かみに逆さかふ命めいを顧かへりみずして、火ひの中なかに投なげられ、凉すゞしくせられて歌うたへり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる女宰ぢよさいよ、爾なんぢは至し聖神せいしんの力ちからに因よりて、神父かみちゝと一性いつせいなる子こ、身みを取とりし者ものを生うみ給たまへり。彼かれに絕たえず祈いのりて、身みにて神かみを生うみし者ものは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ我われ等らに慈じ憐れんを垂たれ給たまはんことを求もとめ給たまへ。

墮だ落らくする者ものの更新あらため、罪つみを犯おかす者ものの拯救すくひたる婚姻こんいんに與あづからざる至し淨じやう至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、我われ放蕩はうたうの者ものを救すくへ、爾なんぢの子こに、身みにて神かみを生うみし者ものは崇あがめ讚ほめらると呼よぶ者ものを救すくひ給たまへ。

光榮 禍わざはひに遭あひ、憂うれひに苦くるしむ者ものの爲ために堅けん固ごなる避所かくれが、威ゐ嚴げんなる轉達者てんたつしや、壞やぶられぬ墻かきたる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの子こに奉たてまつる祈き禱たうを以もつて爾なんぢの諸僕しよぼくを多た種しゆの誘惑いざなひより救すくひ給たまへ。

今も 信者しんじやの惟一ゆゐいちの恃賴たのみ及および佑助たすけなる神かみの母はゝよ、哀かなしみに沈しづめられ、諸方しよはうより攻せめられ、諸しよ病びやうを患うれふる爾なんぢの諸僕しよぼく、靈たましひの愛あいを以もつて爾なんぢに趨はしり附つく者ものを急いそぎて助たすけ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 火ひの爐ゐろりの中うちにエウレイの少者せうしやに降くだりて、焰ほのほを露つゆに變へんぜし神かみを、造物ざうぶつは主しゆとして歌うたひて、萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめよ。

生命いのちの水みづを生うみし者ものとして實まことの生せい活くわつの泉いづみたる生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、罪つみの焰ほのほに焚やかれたる吾わが靈たましひに露つゆを注そゝぎ給たまへ、我わが爾なんぢを萬世ばんせいに崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

生命いのちの首かしらハリストス我わが神かみを生うみし惟一ゆゐいちの女宰ぢよさい、崇あがめ讚ほめらるる潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、殺ころされて死し及および朽きう壞くわいの塵ちりに下くだされたる者ものを爾なんぢ起おこし給たまへり。

光榮 潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、我われを永遠えいゑんの火ひ及および定罪ていざいより脫のがれしめ、我われを惡あくを爲なす人人ひとびと、我われを躓つまづかしめんと謀はかる者ものより援たすけ給たまへ、我わが常つねに爾なんぢ萬物ばんぶつに讚さん美びせらるる者ものを敬虔けいけんに讚さん美びせん爲ためなり。

今も 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、至し上じやうの神かみは爾なんぢより身みの形かたちを受うけたる者ものとして見みられたり。彼かれに我われ等ら惡あくの中うちに棲すみて永遠えいゑんの苦くるしみに慄をのゝく者ものを憐あはれまんことを絕たえず祈いのり給たまへ。

第九歌頌

イルモス 食しよくに緣よりて甚はなはだしく朽きう壞くわいに陷おちいりしアダムを、言いひ難がたき智慧ちゑを以もつて改あらためん爲ために神かみより來きたりし神かみ言ことば、我われ等らの爲ために測はかり難がたく聖せいなる童貞女どうていぢよより身みを取とりし主しゆを、我われ等ら信者しんじやは同心どうしんに歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

爾なんぢより身みを取とりし仁じん慈じなる神かみを言いひ難がたく生うみたる惟一ゆゐいちの少女せうぢよよ、我われを神聖しんせいなる仁じん慈じを蒙かうむるに勝たふる者ものと爲なして、愛あいを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいする者ものを將しやう來らいの焰ほのほ及および凡およその苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

讚さん美びたる者ものよ、我われ等ら皆みな獨ひとり爾なんぢを堅けん固ごなる轉達者てんたつしやと恃賴たのみ、垣墻かきと基址もとゐ、確たしかなる庇覆おほひと破やぶられぬ城しろ、穩おだやかなる港みなとと堅かたき避所かくれがとして得えて救すくはる。

光榮 光ひかりを生うみし童貞女どうていぢよ、讚さん美びたる女宰ぢよさいよ、吾わが靈たましひの雲くもを拂はらひて、我われに救すくひを爲なす仁愛じんあい、言いひ難がたく爾なんぢの至し聖せいなる腹はらより輝かゞやき出いでて萬民ばんみんを照てらしし者ものを明あきらかに見みるを得えしめ給たまへ。

今も 神聖しんせいなる光ひかりを生うみし少女せうぢよよ、諸慾しよよくの多おほくの侵害しんがいと惡敵あくてきの謀はかりごととに昧くらまされたる吾わが心こゝろを照てらし給たまへ。童貞女どうていぢよよ、我われを罪つみの汚けがれより潔きよむる淚なみだの點滴したゝりを常つねに我われに與あたへ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び其他常例の如し、幷に發放詞。

土曜日(スボタ)

 「スボタ」の早課

第一の誦文の後に致命者の坐誦讚詞セダレン、第二調。

聖人せいじん等らは世よに在ありて爾なんぢ雲くもを以もつて天てんを覆おほふ主しゆを己おのれの衣ころもと爲なして、不ふ法者はふしやより受うくる苦くるしみを忍しのび、偶像ぐうざうの迷まよひを空むなしくせり。救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて、我われ等らをも見みえざる敵てきより脫のがれしめて救すくひ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

使徒しと、致ち命者めいしや及および預よ言者げんしや、成聖者せいせいしや、克肖者こくせうしや及および義ぎ人じん等ら、善よき戰たゝかひを戰たゝかひ、信しんを守まもりし者ものよ、祈いのる、爾なんぢ等らは救世主きうせいしゆの前まへに勇いさみを有たもちて、其その仁じん慈じなるに因よりて、彼かれに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

句 彼かれ等らの靈たましひは福ふくに居をらん。

神かみとして死しせし者もの及および生いける者ものを其その權内けんないに有たもち給たまふ生命いのちを施ほどこす仁愛じんあいの主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの禱いのりを納いれ、爾なんぢの慈じ憐れんを顯あらはして、爾なんぢが遷うつしし靈たましひ、爾なんぢを賴たのめる者ものに赦免ゆるしを與あたへ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じにして至し善ぜんなる主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの奧あう義ぎは皆みな智慧ちゑに超こゆ、皆みな至し榮えいなり。貞潔ていけつの封ふうぜられ、童貞どうていの守まもらるるに、爾なんぢは實じつの母はゝと知しられて、眞まことの神かみを生うみ給たまへり。彼かれに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第二調。

ハリストス神かみよ、爾なんぢは至し善ぜんなる主しゆとして、爾なんぢの聖者せいしやを黃金こがねよりも耀かゞやく者ものと爲なし、爾なんぢの克肖者こくせうしやの榮さかえを顯あらはせり。仁じん慈じなる主しゆとして、彼かれ等らの祈き禱たうを納いれて、我われ等らの生命いのちを平安へいあんならしめ給たまへ。獨ひとり聖者せいしやの中うちに休いこふ主しゆよ、我われ等らの禱いのりを香かう爐ろの香かをりの如ごとく升のぼらしめ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

主しゆの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らの血ちを呑のみし地ちは福さいはひなり、爾なんぢ等らの體たいを受うけし殿でんは聖せいなり、蓋けだし爾なんぢ等らは審判しんぱんに於おいて敵てきを辱はづかしめ、ハリストスを勇いさましく傳つたへたり。祈いのる、其その至し善ぜんの主しゆなるに因よりて彼かれに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを求もとめ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。

主しゆよ、爾なんぢ至し仁じんなるに因よりて爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを記き念ねんして、其その生しやう涯がい犯おかしし罪つみを悉ことごとく赦ゆるし給たまへ。蓋けだし罪つみなき者ものあらず、唯たゞ爾なんぢは罪つみなし、且かつ爾なんぢは遷うつされし者ものに安息あんそくを與あたふることを能よくするなり。

光榮、今も、生神女讚詞 贖しよく罪主ざいしゆ及および救世主きうせいしゆハリストスを生うみし生しやう神しん童貞女どうていぢよマリヤよ、彼かれの仁じん慈じに、諸しよ使徒しと、致ち命者めいしや、預よ言者げんしや、克肖者こくせうしや、及および神品しんぴん致ち命者めいしやと偕ともに祈いのりて、我われ等らに諸罪しよざいの潔淨きよめ及および大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

聖致命者、成聖者、克肖者、及び死者の規程カノン、其冠詞は、神の諸僕近者に讚美を歸す。イオシフ師の作。第二調。

第一歌頌

イルモス 靈たましひよ、モイセイの歌うたを採とりて籲よべ、佑たすけ護まもる者もの顯あらはれて、我わが救すくひと爲なれり、彼かれは吾わが神かみなり、我われ彼かれを讚ほめ揚あげん。

致命者の
受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは恒忍ごうにんを以もつて甚はなはだしき窘逐きんちく及および烈はげしき創痍きずを受うけて、神聖しんせいなる力ちからを以もつて地ちの四し極きよくより凡およその迷まよひを逐おひ拂はらへり。

成聖者の
神かみの聖せい務む者しや及および成聖者せいせいしや、神しん゜靈れいの光ひかりにて明あきらかに輝かゞやき、敬虔けいけんに滿みてられたる者ものは衆しゆう人じんを敬虔けいけんの光ひかりに導みちびき給たまふ。

克肖者の
克肖者こくせうしやは傲慢がうまんなる智慧ちゑを卑ひくくして、善ぜんなる地ちに至いたり、神かみの恩おん寵ちように擧あげられて、常つねに悉ことごとくの謙けん卑ぴの者ものを助たすけ給たまふ。

死者の
光榮 至し仁じんなる我わが神かみよ、爾なんぢが暫ざん時じの生命いのちより遷うつしし爾なんぢの信しんなる諸僕しよぼくを、至いたりて輝かゞやける光ひかり及および永遠えいゑんの樂たのしみに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 神かみの母はゝよ、禁きん食しよく勤勞きんらうして、恒忍ごうにんを以もつて惡敵あくてきに勝かちし尊そん貴きなる女をんな等たちは喜よろこびて爾なんぢの前まへに立たち給たまふ。

又死者の規程カノン、月課經の規程なき時に序を逐ひて之を歌ふ。其冠詞は、死せし者に第二の歌を綴る。第二調。

第一歌頌

イルモス 己おのれの神聖しんせいなる命めいを以もつて涉わたられぬ、濤なみたつ海うみを涸からし、イズライリ民みんを導みちびきて慿かちわたりせしめし主しゆに歌うたはん、彼かれ嚴おごそかに光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

附唱 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢは己おのれの死しを以もつて死しを蹈ふみ破やぶりて、神聖しんせいなる生命いのちの常住じやうぢゆうを流ながし給たまへり。之これを寢ねむりし者ものの靈たましひに予あたへて、爾なんぢの致ち命者めいしやの祈き禱たうに由よりて彼かれ等らの諸罪しよざいを赦ゆるし給たまへ。

附唱 主しゆよ、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。

常つねに敬虔けいけんを懷いだきて爾なんぢを承うくる者ものに絕たえず豐ゆたかなる慈じ憐れんを流ながす主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢの家いへ、爾なんぢの奇異きいなる幕まくに於おいて爾なんぢの諸僕しよぼくに安息あんそくの處ところを與あたへ給たまへ、爾なんぢは慈じ憐れんの主しゆなればなり。

光榮 ハリストスよ、爾なんぢは有能いうのうを以もつて死しに勝かちて、之これを縛しばり、人類じんるゐを之これより救すくひ給たまへり。今いまも慈じ憐れんなるに因よりて、寢ねむりし者ものを其その囹圄ひとやより脫のがれしめて、彼かれ等らを爾なんぢの光ひかりに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

今も 神かみの母はゝ女宰ぢよさいよ、我わが動うごける靈たましひを堅かためて、之これに爾なんぢの聖せいにせられし腹はらより生うまれて、地ぢ獄ごくの昏くらき國くにを滅ほろぼしし主しゆの神聖しんせいなる誡いましめを行おこなはしめ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 諸善しよぜんを耕作かうさくし、諸德しよとくを培養ばいやうする神かみよ、爾なんぢの慈じ憐れんに因よりて、實みを結むすばざる我わが智慧ちゑを實みを結むすぶ者ものと顯あらはし給たまへ。

嗚呼あゝ受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らはハリストスを愛あいする愛あいの火ひに燃もやされて、全能ぜんのうなる聖神せいしんの灌そゝぐを以もつて苦くるしみの火燄ほのほを滅けし給たまへり。

ハリストスの至し聖せいなる成聖者せいせいしや及および克肖者こくせうしやの尊そん貴きなる會くわいよ、我われ等ら衆しゆうの爲ために人ひとを愛あいする神かみに祈いのり給たまへ。

神聖しんせいなる預よ言者げんしやの聖せいにせられし會くわいは崇あがめられ、忍耐にんたいして苦くるしみを受うけし女をんなの大數たいすうは光くわう榮えいを獲えたり。

光榮 ハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに殺ころされて、死し者しやに不死ふしを賜たまへり、之これを信しんを以もつて世よを去さりて爾なんぢに逝ゆきし者ものに獲えしめ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢより生うまれし神かみに、諸しよ預よ言者げんしや及および聖せいなる女をんな等たちと偕ともに、今いま熱切ねつせつに我われ等らに慈じ憐れんを垂たれんことを祈いのり給たまへ。

又

イルモス 爾なんぢ我われを信しんの石いしに堅かたく立たて、我わが口くちを啓ひらきて我わが敵てきに對むかはしめ給たまへり。蓋けだし我わが神しん゜は樂たのしみて歌うたへり、吾わが神かみと侔ひとしく聖せいなるはなく、主しゆよ、爾なんぢの外ほかに義ぎなるはなし。

慈じ憐れんに富とめる主しゆよ、信しんに於おいて寢ねむりし者ものを爾なんぢの致ち命者めいしやと偕ともに爾なんぢの華くわ美びの光明くわうみやうにて照てらさるるを得えしめ給たまへ。蓋けだし主しゆよ、爾なんぢは我われ等らの神かみにして、爾なんぢの外ほかに義ぎなるはなし。

慈じ憐れんなる主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくをして安息あんそくの處ところに、爾なんぢの選えらびたるアウラアムの懷ふところに居をるを得えしめ給たまへ。蓋けだし彼かれ等らは爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢは我われ等らの神かみにして、爾なんぢの外ほかに義ぎなるはなし。

光榮 獨一どくいつ仁愛じんあいなる主宰しゆさいよ、爾なんぢの旨むねを以もつて暫ざん時じの生命いのちより遷うつしし爾なんぢの諸僕しよぼく、燈ともしびを執とれる者ものを天てん上じやうの宮みやに、彼處かしこに入いりし智さとき處女しよぢよと偕ともに居をるを得えしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは生いのちを施ほどこす主しゆを生うみて、我われ殺ころされて土つちに歸かへされたる者ものを興おこして、至いたりて下しもなる地ぢ獄ごくより上のぼせ給たまへり。故ゆゑに我われ信しんを以もつて爾なんぢ生しやう神女しんぢよを讚榮さんえいし、爾なんぢ讚さん美びたる者ものを崇あがめ讚ほむ。

第四歌頌

イルモス 預よ言者げんしやは爾なんぢが童貞女どうていぢよより生うまるるを預よ見けんして、傳つたへて呼よべり、ハリストスよ、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、蓋けだし爾なんぢは南みなみより、樹こ蔭かげ繁しげき聖山せいざんより來き給たまへり。

至し榮えいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは善よくハリストスの苦くるしみに效ならひて多た種しゆの苦くるしみに身みを委ゆだね、喜よろこびて永遠えいゑんの報むくいに目めを注そゝげり、爾なんぢ等らは此これを受うけて常つねに讚さん美びせらる。

司し祭さい諸しよ長ちやうは神しん゜の法はふを守まもりて、睿えい智ちを以もつて人人ひとびとを牧ぼくし、至いたりて巧たくみなる舵師かぢとりとして彼かれ等らを神聖しんせいなる港みなとに導みちびき、自みづからも世せ俗ぞくの累わづらひより移うつりて、平安へいあんの生命いのちに至いたれり。

神しん父ぷ等らよ、爾なんぢ等らは地ちに在ありて己おのれを寄き寓者ぐうしやと爲なし、常つねに天てんを望のぞみて生いのちを度わたり、禁きん食しよくの勞らうを以もつてハリストスの力ちからに依よりて肉慾にくよくを制せいし給たまへり。

主宰しゆさい言ことばよ、爾なんぢが暫ざん時じの生命いのちより移うつしし大數たいすうの人人ひとびと、正敎せいけうを守まもりて爾なんぢに奉ほう事じせし者ものを救すくはるる衆しゆうの數すうに加くはへて、永遠えいゑんの生命いのちを獲えしめ給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる女宰ぢよさい神かみの母はゝよ、尊たふとき女をんな等たちは神聖しんせいなる死しの狀じやうを佩おび、實じつに終をはりなき生命いのちを慕したひて、爾なんぢに依よりて之これを得えて、我われ等らの爲ために爾なんぢの子こ及および神かみに祈いのる。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、預よ言者げんしやアウワクムは爾なんぢ諸德しよとくにて飾かざられたる者ものを樹こ蔭かげ繁しげき山やまとして見みたり、神かみは言いひ難がたく是これより現あらはれて、其その德とくを以もつて天てんを覆おほひ、人ひとの族やからを朽きう壞くわいより救すくひ給たまへり。

又

イルモス 主しゆよ、我われ爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし風聲おとづれを聞ききて懼おそれたり、爾なんぢは我われ迷まよへる者ものを尋たづねて、我われにまで至いたればなり。故ゆゑに慈じ憐れん深ふかき主しゆよ、我われに於おける爾なんぢの大おほいなる寬くわん容ようを讚榮さんえいす。

ハリストスよ、信しんと愛あいと正敎せいけうの智慧ちゑとを以もつて世よを度わたりし爾なんぢの諸僕しよぼくに、爾なんぢの深ふかき仁愛じんあいと選えらばれたる致ち命者めいしやの祈き禱たうとに因よりて、智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの光くわう榮えいを蒙かうむらしめ給たまへ。

主しゆハリトスよ、爾なんぢは甘味あまみの絕たえず流ながるる泉いづみを有たもちて、選えらばれたる者ものに常つねに之これを飮のましむ、彼かれ等らと偕ともに今いまも爾なんぢに移うつされたる者ものに爾なんぢの言いひ難がたき慈じ憐れんに因よりて之これを飮のむを得えしめ給たまへ。

光榮 主宰しゆさいよ、爾なんぢは生いける者ものを主つかさどる、死しせし者ものも爾なんぢの權内けんないに在あり、地ちに還かへりて塵ちりと爲なりし者ものを爾なんぢは己おのれの力ちからを以もつて復ふく活くわつせしむ。故ゆゑに救世主きうせいしゆよ、爾なんぢに遷うつりし者ものを爾なんぢの庭にはに居をらしめ給たまへ。

今も 神かみを生うみし者もの、惟一ゆゐいちの母はゝ童貞女どうていぢよよ、爾なんぢはエワの傷いたみを醫いやし、古いにしへの困こん苦くを除のぞけり、蓋けだし罪過ざいくわに由よりて墮だ落らくせし我われ等らを改あらたむることを能よくする造成主ざうせいしゆを生うみ給たまへり。

第五歌頌

イルモス 我わが救世主きうせいしゆよ、我わが靈たましひの黑暗くらやみを掃はらひて、爾なんぢの誡いましめの光ひかりにて我われを照てらし給たまへ、爾なんぢ獨ひとり平安へいあんの王わうなればなり。

慈じ憐れんの主しゆよ、勇敢ゆうかんなる受難者じゆなんしやは爾なんぢを愛あいして、一切いつさい世せ俗ぞくの事ことを惡にくみ、己おのれを棄すてて、身みを苦くるしみに委ゆだねたり。

成聖者せいせいしや、預よ言者げんしや、克肖こくせうなる捧神者ほうしんしやよ、爾なんぢ等らは神しん゜靈れいの光くわう線せんを以もつて世せ界かいを照てらして、諸慾しよよくの暗やみを除のぞき給たまふ。

克肖こくせうなる神しん父ぷ、預よ言者げんしや、司し祭さい諸しよ長ちやう、及および常つねに光くわう榮えいなる女をんな等たちは爾なんぢ萬有ばんいうの主宰しゆさいに我われ等らの爲ために熱切ねつせつに祈いのる。

光榮 言ことばよ、爾なんぢに祈いのる、我われ等らより受うけし者ものを爾なんぢの選えらびたる者ものの會くわいに加くはへて、天てん上じやうの生命いのちに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

今も 致ち命者めいしやと克肖者こくせうしやと義ぎ人じん等らとの譽ほまれなる至いたりて潔いさぎよき童貞女どうていぢよ母はゝよ、我われ等らを凶きよう惡者あくしやの凡およその毒害どくがいより脫のがれしめ給たまへ。

又

イルモス 光ひかりを賜たまひ、世世よよを造つくりし主しゆよ、爾なんぢの誡いましめの光ひかりの中うちに我われ等らを導みちびき給たまへ、我われ等ら爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらざればなり。

仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢは我われ等ら殺ころされて、朽きう壞くわいの中うちに入いれられし者ものを地ぢ獄ごくの暗くらき囹圄ひとやより出いだし、上のぼせて聖せいなる天てん使しの軍ぐんに合あはせ給たまへり。

我われ等らを救すくはん爲ために來きたりしハリストスよ、今いま敬虔けいけんを抱いだきて爾なんぢに遷うつされし者ものを受うけて、獨ひとり仁じん慈じの主しゆなるに因よりて、之これをアウラアムの懷ふところにラザリと偕ともに居をらしめ給たまへ。

光榮 主宰しゆさいよ、爾なんぢは曩さきに和わ睦ぼくの媒なかだち及および轉達者てんたつしやと爲なりて、我わが多た年ねんの永ながき不ふ和わを釋とき給たまへり、今いまも爾なんぢの諸僕しよぼくを宥なだめて安息あんそくせしめ給たまへ。

今も 神かみの母はゝよ、爾なんぢを賴たのむ者ものは爾なんぢの帲幪おほひの下したに救すくはる、蓋けだし爾なんぢは我われ等らの爲ために生命いのちを施ほどこす主しゆ、其その旨むねに由よりて萬ばん衆しゆうを生いかす者ものを生うみ給たまへり。

第六歌頌

イルモス 救世主きうせいしゆよ、我われ罪つみの深處ふかみに圍かこまれ、世せ俗ぞくの淵ふちに沈しづめらる。求もとむ、イオナを猛獸まうじうより救すくひし如ごとく、我われをも諸慾しよよくより引ひき上あげて救すくひ給たまへ。

受難者じゆなんしやは堅けん固ごなる心こゝろを以もつて敵てきと戰たゝかひて、之これを殪たふし、神かみより勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけて、今いま地ちに生うまるる衆しゆう人じんの爲ために熱切ねつせつに祈いのる。

我われ等らは忠ちゆう信しんに神かみの成聖者せいせいしやを尊たふとみ、彼かれの克肖者こくせうしやを讚さん美びせん、蓋けだし彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて、凡およその忿怒いかり、憂愁うれひ、及および敵てきの惡謀あくぼうより救すくはる。

女をんなの神聖しんせいなる會くわいは苦くるしみを受うけ、禁きん食しよくを以もつて神かみの悅よろこびを得えて、天國てんこくを繼つぎたり。神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて爾なんぢの世せ界かいを宥なだめ給たまへ。

光榮 人ひとを土つちより造つくりしハリストス、生命いのちを施ほどこす主しゆよ、我われ等らより移うつしし者ものを安やすんぜしめて、彼かれ等らに罪惡ざいあくの赦ゆるしを與あたへ給たまへ、爾なんぢは慈じ憐れんにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

今も 讚さん美びたる聖せい生しやう神女しんぢよよ、我われ等らの志念おもひを聖せいにし、智慧ちゑを堅かため、爾なんぢを讚榮さんえい讚さん頌しようする我われ等らを凶きよう惡者あくしやの矢やに傷きずつけられぬ者ものとして護まもり給たまへ。

又

イルモス 我われ罪つみの淵ふちに溺おぼれて、爾なんぢが憐あはれみの量はかり難がたき淵ふちに呼よぶ、神かみよ、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆよ、地ちより移うつしし者ものを爾なんぢの全能ぜんのうの旨むねを以もつて言いひ難がたき神聖しんせいなる光くわう照せう、致ち命者めいしやの會くわいの在ある處ところに入いらしめ給たまへ。二次。

光榮 主宰しゆさいよ、斯この世よを離はなれたる者ものを爾なんぢの言いひ難がたき光ひかりに移うつりし者ものと爲なし、之これを安息あんそくせしめて、爾なんぢの光くわう榮えいの華くわ美びに照てらさるるを得えしめ給たまへ。

今も 生せいと死しとを司つかさどる神かみを生うみし至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、熱心ねつしんに爾なんぢに呼よぶ衆しゆうを助たすくる者ものと爲なり給たまへ。

第七歌頌

イルモス 少者せうしやは爐ゐろりの中うちにヘルワィムに效ならひて、祝いはひて呼よべり、神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、蓋けだし眞實しんじつと義ぎ判はんとに緣よりて、悉ことごとく之これを我われ等らの諸罪しよざいの爲ために降くだせり、爾なんぢは萬世ばんせいに歌うたはれ、讚ほめ揚あげらる。

聖せいなる者ものは我われ等らの罪つみの爲ために苦くるしみを受うけし神かみを實じつに愛あいするに因よりて、凡およその烈はげしき苦くるしみの誘惑いざなひを忍しのびて、忍耐にんたいを以もつて敵てきを斃たふせり。言ことばよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて、我われ等ら衆しゆう、爾なんぢを讚榮さんえいする者ものを諸もろもろの誘惑いざなひ及および葘害わざはひより救すくひ給たまへ。

輝かゞやける成聖者せいせいしや、克肖者こくせうしや、及および預よ言者げんしや、神品しんぴん致ち命者めいしやの光くわう榮えいなる大數たいすう、苦く難なんと禁きん食しよくとを以もつて雄雄ををしく輝かゞやきし聖せいなる女をんなの聖せいにせられし會くわいよ、常つねに我われ等らの爲ために神かみに禱いのりを奉たてまつりて、我われ等らを憐あはれまんことを求もとめ給たまへ。

ハリストス恩主おんしゆよ、致ち命者めいしやの大數たいすうの祈き禱たうに因よりて、我われ滅ほろびし者ものを諸もろもろの憂愁うれひ、葘害わざはひ、烈はげしき誘惑いざなひ、悉ことごとくの罪つみ、及および苦惱なやみより救すくひ給たまへ。

光榮 人ひとを愛あいするハリストスよ、疾病やまひと歎息なげきと悲哀かなしみとの遠とほざかれる處ところ、爾なんぢの顏かんばせの光ひかりの輝かゞやく處ところ、聖人せいじんの會くわいの今いま樂たのしむ處ところに、爾なんぢに移うつりし衆しゆう人じんの靈たましひを入いれて、爾なんぢ獨ひとり慈じ憐れんなる主しゆとして彼かれ等らの悉ことごとくの罪過ざいくわを問とふこと勿なかれ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、致ち命者めいしやと、克肖こくせうなる神しん父ぷと、諸しよ預よ言者げんしや及および聖せいなる女をんな等たちと偕ともに獨ひとり聖者せいしやの中うちに息いこひ給たまふ主しゆに祈いのりて、我われ等ら衆しゆう聖せいなる聲こゑを以もつて萬世ばんせいに爾なんぢを讚榮さんえいする者ものを聖せいにせんことを求もとめ給たまへ。

又

イルモス 不ふ法はふなる虐者しへたげびとの神かみに戾もとる命令めいれいは高たかき焰ほのほを起おこしたれども、讚ほめ歌うたはるるハリストスは敬虔けいけんの少者せうしやに屬神ぞくしんの露つゆを降くだし給たまへり。

在あらざる所ところなき主しゆよ、爾なんぢは昔むかし誘いざなはれたる人類じんるゐを救すくはん爲ために降くだり給たまへり。故ゆゑに致ち命者めいしやは爾なんぢに祈いのる、救世主きうせいしゆよ、地ちより移うつしし者ものを溫柔をんじうなる者ものの地ちに安息あんそくせしめ給たまへ。

獨ひとり死し者しやの中うちに自じ由いうたりしハリストスよ、爾なんぢは死しの權けんを滅ほろぼし給たまへり。主宰しゆさいよ、今いまも罪つみに由よる死しより爾なんぢの諸僕しよぼくを救すくひて、彼かれ等らを爾なんぢの國くにを嗣つぐ者ものと爲なし給たまへ。

光榮 ハリストスよ、爾なんぢの多おほくの言いひ難がたき慈じ憐れん及および爾なんぢの仁愛じんあいの無む量りやうの淵ふちに由よりて、移うつされし者ものに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへて、爾なんぢの恩おん寵ちようにて彼かれ等らを潔きよめられし者ものと顯あらはし給たまへ。

今も 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは神聖しんせいなる光くわう榮えいの燈ともしびと爲なれり、神しん゜と肉にくとを以もつて我われ等らに現あらはれて、其その神性しんせいの光ひかりにて地ぢ獄ごくの暗やみを除のぞきし主しゆの輝煌かゞやきを顯あらはしたればなり。

第八歌頌

イルモス 昔むかしシナイ山ざんに於おいて棘いばらの中うちにモイセイに童貞女どうていぢよの奇き跡せきを預あらかじめ示しめしし者ものを尊たふとみ歌うたひ、崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

主しゆの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らの血ちの灌注そゝぎは萬物ばんぶつを聖せいにし、迷惑まよひの流ながれを涸からし、信者しんじやの靈たましひを豐ゆたかに潤うるほせり。

禁きん食しよく者しやの群ぐん、成聖者せいせいしや、聖せいなる女をんな、及および光くわう榮えいなる預よ言者げんしやの會くわいは、地ち上じやうに神しん゜を以もつて天てん使しの如ごとく生いのちを度わたりて、諸天しよてん使しと同尊どうそんなる者ものと現あらはれたり。

主しゆの受難者じゆなんしや、司し祭さい諸しよ長ちやう、諸しよ預よ言者げんしや、大數たいすうの克肖者こくせうしや及および聖せいなる女をんなよ、我われ等ら衆しゆう爾なんぢ等らを崇あがめ讚ほむる者ものを敵てきの矢やより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 救世主きうせいしゆよ、爾なんぢが我われ等らより受うけし者ものをアウラアムの懷ふところに居をらしめ、悉ことごとくの選えらびたる者ものと偕ともに安息あんそくせしめて、彼かれ等ら衆しゆうに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ、爾なんぢは至いたりて慈じ憐れんなる主しゆなればなり。

今も 潔いさぎよき神かみの母はゝよ、聖せいなる諸しよ預よ言者げんしや、致ち命者めいしや、克肖者こくせうしや、聖せいなる女をんな及および神品しんぴん致ち命者めいしやと偕ともに救世主きうせいしゆに我われ等らを宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

又

イルモス 昔むかしワワィロンの火ひの爐ゐろりは神かみの命めいによりて其その勢いきほひを分わかち、ハルデイを焦こがして、信者しんじやを凉すゞしくせり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめよと歌うたへばなり。

爾なんぢは不死ふしの者ものとして、地ぢ獄ごくに下くだるを以もつて我われ等らに諸敵しよてきの死しを顯あらはし、神聖しんせいなる力ちからを以もつて、不死ふしの主しゆよ、爾なんぢは永生えいせいの門もんを啓ひらき給たまへり。爾なんぢの致ち命者めいしやは宜よろしきに合かなひて今いま此これに入いるを得えたり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは人ひとを愛あいする者ものとして移うつされし者ものの耻はづべき罪惡ざいあくを潔きよめて、彼かれ等らに爾なんぢの神しん゜靈れいの華くわ美びを樂たのしむを得えしめ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり罪つみに與あづからざる者ものと顯あらはれたればなり。

光榮 ハリストスよ、爾なんぢは死しの塵ちりに陷おちいりし我われ等らを改あらためて、爾なんぢの死しを以もつて生命いのちと、永生えいせいの糧かてと、永遠えいゑんの悅よろこびとを賜たまへり。之これを今いま移うつされし者ものに得えしめ給たまへ、爾なんぢは慈じ憐れんなる主しゆなればなり。

今も 神かみの母はゝよ、爾なんぢの產さんの奧密あうみつは大おほいにして畏おそるべし、蓋けだし爾なんぢは神かみを生うみ給たまへり、死しは彼かれに勝たへざりき、墓はかは留とゞめざりき。故ゆゑに至し淨じやうなる者ものよ、我われ等ら萬族ばんぞくは爾なんぢを讚榮さんえいす。

第九歌頌

イルモス 我われ等ら信者しんじやは、父ちゝより永遠えいゑんに光ひかれる言ことばを身みにて測はかり難がたく孕はらみし者ものを、息やめざる歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは苦くるしみに對たいして堅けん固ご、敵てきに對たいして有能いうのうなる者ものと顯あらはれて、法はふに遵したがひて苦くるしみを受うけ、勝しよう利りを獲えて、神かみより榮えい冠くわんを冠かうむらせられたり。

至し榮えいなる司し祭さい諸しよ長ちやうよ、爾なんぢ等らは神かみの聖せい務む者しやとして、善よき牧者ぼくしやに效ならひて、克よく其その羊群やうぐんを牧ぼくし給たまへり。

我われ等らは克肖者こくせうしや、禁きん食しよく者しや、及および聖せいにせられし預よ言者げんしや、竝ならびに苦くるしみを受うけ、禁きん食しよくを以もつて敵てきを斃たふしし女をんなの大數たいすうを尊たふとまん。

光榮 ハリストスよ、爾なんぢの聖者せいしやの至し榮えいなる大數たいすうは絕たえず爾なんぢに祈いのる、主しゆよ、信しんに於おいて移うつしし者ものを永遠えいゑんの生命いのちに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

今も 洪恩こうおんなる神かみを身みにて生うみし潔いさぎよき母はゝ童貞女どうていぢよよ、衆しゆう聖人せいじんと偕ともに彼かれに我われ等らを諸難しよなんより救すくはんことを常つねに祈いのり給たまへ。

又

イルモス 日ひより前さきに光ひかり輝かゞやきし神かみ、肉體にくたいにて我われ等らに臨のぞみし者ものを、貞潔ていけつの腹はらより言いひ難がたく生うみし讚さん美びたる至淨いときよき生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

生せい死し者しやを己おのれの權内けんないに有たもち給たまふ生命いのちの首かしらたる主宰しゆさいよ、地ちより爾なんぢに移うつりし者ものに天てんの嗣し業げふ、及および爾なんぢの聖者せいしやと至し榮えいなる受難者じゆなんしやとの光くわう照せうを與あたへ給たまへ。

昔むかし我われに存在そんざいを與あたへ、後のち又また更さらに善よき存在そんざいを賜たまひし生命いのちの首かしらたる言ことばよ、慈じ憐れんなる主しゆとして、移うつりし爾なんぢの諸僕しよぼくを太たい祖そアウラアムの慕したふべき懷ふところに居をらしめ給たまへ。

光榮 我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは全まつたく甘味あまみ及および光明ひかり、全まつたく飽あかされぬ望のぞみなり。絕たえず爾なんぢを讚榮さんえいして寢ねむりし者ものに爾なんぢの永生えいせいの糧かてを與あたへ、赦罪しやざいの水みづを飮のましめ給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら信者しんじやは神かみより感かんぜられたる爾なんぢの言ことばに從したがひて、今いま宜よろしきに合かなひて爾なんぢを讚さん美びす、蓋けだし童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢは獨ひとり地ち上じやうの者ものの爲ために死しの力ちからを破やぶりし神かみを生うみ給たまへり。

次ぎて「常に福にして」、小聯禱、本日の光耀歌、及び常例の聖詠。

「凡そ呼吸ある者」に致命者の讚頌スティヒラ、第二調。

嗚呼あゝ受難者じゆなんしや致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らはハリストスの爲ために死しに至いたるまで苦くるしみを受うけしに因よりて、爾なんぢ等らの靈たましひは天てんに神かみの手てに在あり、爾なんぢ等らの不ふ朽きうの體たいは全ぜん世せ界かいに尊たふとまれ、諸しよ司し祭さい諸しよ王わうは之これに伏拜ふくはいし、我われ等ら人人ひとびと皆みな悅よろこびて同心どうしんに呼よぶ、聖人せいじんの寢ねむりは主しゆの目めの前まへに貴たつとし。

嗚呼あゝ受難者じゆなんしや致ち命者めいしやよ、凡およその城邑まちと地ち方はうとは爾なんぢ等らの不ふ朽きうの體たいを尊たふとむ、蓋けだし爾なんぢ等らは法はふに遵したがひて苦くるしみを忍しのびて、天てんの榮えい冠くわんを受うけたり。故ゆゑに爾なんぢ等らは成聖者せいせいしやの譽ほまれ、諸しよ王わうの勝しよう利り、諸しよ敎けう會くわいの裝さう飾しよくなり。

聖せいなる致ち命者めいしやはハリストスの十じふ字架じかを勝かたれぬ武器ぶきと執とりて、惡あく魔まの力ちからを悉ことごとく滅ほろぼし、天てんの榮えい冠くわんを承うけて、我われ等らの爲ために垣墻かきと爲なりて、常つねに我われ等らの爲ために祈いのり給たまふ。

死者の讚頌スティヒラ 嗚呼あゝ靈たましひが體からだに別わかるる時とき、苦く勞らう如何いか許ばかりぞ、噫嘻あゝ斯この時とき、涕なみだを流ながすこと幾何いくばくぞ、唯たゞ之これを憐あはれむ者ものなし、天てん使等しらに目めを擧あぐるも祈いのるに驗しるしなく、人人ひとびとに手てを伸のぶるも扶たすくる者ものなし。故ゆゑに我わが愛あいすべき兄弟けいていよ、我われ等らの生いのちの短みぢかきを念おもひて、世よを逝さりし者ものに安息あんそくを、我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことをハリストスに求もとむべし。

光榮、今も、生神女讚詞 來きたりて、皆みな默もださざる歌うたを以もつて光ひかりの母はゝを讚榮さんえいせん、彼かれは我われ等らの救すくひを生うみたればなり、彼かれ獨ひとり、萬有ばんいうより上うへなる主しゆ、世よの先さきより在います神かみを生うみし者ものに慶よろこべよを獻さゝげん。陷おちいりしエワを興おこしし者ものよ、慶よろこべ、婚姻こんいんに與あづからざる至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、慶よろこべ。

挿句くづけに死者の讚頌スティヒラ、第二調。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは生命いのちを施ほどこす爾なんぢの死しを以もつて死しの力ちからと朽きう壞くわいとを滅ほろぼし、衆しゆうに永遠えいゑんの生命いのちを流ながし、地ち上じやうの死し者しやに復ふく活くわつを賜たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、人ひとを愛あいする救世主きうせいしゆよ、信しんを以もつて爾なんぢに移うつりし者ものを安やすんぜしめて、之これに爾なんぢの不ふ朽きうの光くわう榮えいを獲えしめ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。

ハリストスよ、爾なんぢは人人ひとびとを爾なんぢの神聖しんせいなる國くにに與あづかる者ものと爲なさん爲ために十じふ字架じかに釘ていせらるるを忍しのび、甘あまんじて死しを受うけ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの慈じ憐れんに由よりて、信しんを以もつて爾なんぢに移うつりし者ものを爾なんぢの國くにに與あづかる者ものと爲なして、甘かん味みなる華くわ美びを樂たのしましめ給たまへ。

句 彼かれ等らの靈たましひは福ふくに居をらん。

至し仁じんなる主しゆよ、爾なんぢは己おのれの造物ざうぶつを救すくはんと欲ほつして、喜よろこびて爾なんぢの定制ていせいの實じつに畏おそるべき奧密あうみつを行おこなひ、爾なんぢの尊そん貴きなる血ちの價あたひを以もつて全ぜん世せ界かいを贖あがなひ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら祈いのる、信しんを以もつて爾なんぢに移うつりし者ものに衆しゆう聖人せいじんと偕ともに救すくひを得えしめ給たまへ。

句 彼かれ等らの記き憶おくは世世よよに在あらん。

ハリストスよ、古こ世せいよりの死し者しやは慄をのゝきて爾なんぢの畏おそるべき審判しんぱん座ざの前まへに立たち、爾なんぢの義ぎなる審判しんぱんを待まちて、神聖しんせいなる擬ぎ定ていを受うく。救世主きうせいしゆよ、其時そのとき信しんを以もつて爾なんぢに移うつりし爾なんぢの諸僕しよぼくを聖者せいしやの會くわい及および言いひ難がたき歡喜よろこびの在ある處ところに安やすんぜしめ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 神かみの聘女よめ、女宰ぢよさいよ、我わが靈たましひが肉體にくたいの縛しばりを解ときて此この世よの生命いのちより離はなれん時とき、我われの保護ほごと爲なりて、無む形けいの敵てきの謀はかりごとを破やぶり、其その殘酷ざんこくに我われを囓かまんと欲ほつする口くちを摧くだき給たまへ、我わが留とゞめられずして空くう中ちゆうに立たてる黑暗くらやみの君きみを過すぎん爲ためなり。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」、及び其他。第一時課幷に發放詞。

 「スボタ」の聖体礼儀に

「スボタ」の眞福詞、第二調。

我われ等ら爾なんぢに盜賊たうぞくの聲こゑを奉たてまつりて祈いのる、主しゆよ、爾なんぢの國くにに於おいて我われ等らを憶おもひ給たまへ。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

ハリストスの苦くるしみに效ならひし致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは常つねに人人ひとびとの諸もろもろの苦くるしみを醫いやし給たまふ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

預よ言者げんしやと偕ともに使徒しと、克肖者こくせうしやと偕ともに聖せい敎けう師等しらは善よく萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆの悅よろこびを得えたり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

人ひとを愛あいする主しゆよ、祈いのる、信しんを以もつて世よを逝さりし爾なんぢの悉ことごとくの僕ぼくを爾なんぢの衆しゆう聖人せいじんと偕ともに居をらしめ給たまへ。

光榮 嗚呼あゝ永在えいざいの聖三者せいさんしやよ、爾なんぢを尊たふとむ衆しゆう人じんを宥なだめて、常つねに之これを敵てきの誘惑いざなひ及および罟あみより脫のがれしめ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ等らの禱いのりを顧かへりみて、爾なんぢの諸僕しよぼくを諸もろもろの災禍わざはひ及および憂愁うれひより救すくひ給たまへ。

第二調 終

コメントする