『八調経』第一調

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土曜日(スボタ)

 「スボタ」の小晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に四句を立てて、八調經オクトイホの主日の讚頌スティヒラ三章を歌ふ、其第一は二次、第一調。克肖なる吾が神父ダマスクのイオアンの作。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

聖せいなる主しゆよ、我わが晩くれの禱いのりを納いれて、我われ等らに罪つみの赦ゆるしを與あたへ給たまへ、爾なんぢは獨ひとり世せ界かいに復ふく活くわつを顯あらはしし者ものなればなり。

人人ひとびとよ、シオンを廻めぐり、之これを圍かこみて、是この中うちに死しより復ふく活くわつせし主しゆに光くわう榮えいを歸きせよ、彼かれは我われ等らを不ふ法はふより救すくひし吾わが神かみなればなり。

人人ひとびとよ、來きたれ、歌うたひてハリストスを拜をがみ、其その死しより復ふく活くわつせしを讚榮さんえいせん、彼かれは敵てきの誘惑いざなひより世せ界かいを救すくひし吾わが神かみなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞。定理歌ドグマティク。

兄弟けいていよ、今日こんにちは童貞どうていの慶けい賀がなり。造物ざうぶつは喜よろこぶべし、人類じんるゐは樂たのしむべし、蓋けだし聖せいなる生しやう神女しんぢよ、童貞どうていの無垢むくなる寶たからは我われ等らを呼よび集あつめたり。彼かれは第だい二にのアダムの靈れい智ちなる樂園らくゑん、二に性せいの結合けつがふの寶藏はうざう、救すくひを爲なす和わ睦ぼくの成じやう就じゆ、言ことばが實じつに人體じんたいに配偶はいぐうせし宮みや、ヘルワィムの上うへに在ある者ものを身みと共ともに乘のせし輕かろき雲くもなり。ハリストス神かみよ、彼かれの祈き禱たうに因よりて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。提綱ポロキメン、「主は王たり」、其句と共に。「主よ、我を守り、罪なくして此の晩」の後に司祭聯禱を誦せず、我等直に主日の挿句くづけの讚頌スティヒラを歌ふ、次の如し。

ハリストスよ、爾なんぢの苦くるしみにて我われ等らは苦くるしみを免まぬかれ、爾なんぢの復ふく活くわつにて我われ等らは淪滅ほろびより救すくはれたり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

至聖なる生神女の他の讚頌スティヒラ

句 我われ爾なんぢの名なを萬世ばんせいに誌しるさしめん。

童貞女どうていぢよ・母はゝ・生しやう神女しんぢよマリヤ、世せ界かいの轉達てんたつよ、爾なんぢは萬世ばんせいに讚榮さんえいせらる。少女せうぢよよ、爾なんぢは實じつに父ちゝと同どう無む原げんなる子こ、聖神せいしんと同どう永在えいざいなる主しゆを身みにて生うみ給たまへり。彼かれに我われ等らの救すくはれんことを禱いのり給たまへ。

句 女ぢよよ、之これを聽きき、之これを觀み、爾なんぢの耳みゝを傾かたぶけよ。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ等ら不ふ慮りよの葘害わざはひに圍かこまるる者ものは、獨ひとり爾なんぢを轉達者てんたつしやと有たもちて、感謝かんしやの心こゝろを懷いだきて呼よぶ、至し聖せいなる神かみの聘女よめよ、我われ等らを救すくひ給たまへ、爾なんぢは世せ界かいの避所かくれが、我わが族やからの防護まもりなればなり。

句 民みん中ちゆうの富とめる者ものは爾なんぢの顏かんばせを拜をがまん。

神かみの母はゝよ、爾なんぢの產さんに因よりて世せ界かいは新あらたにせられたり。至し淨じやうなる少女せうぢよ、信者しんじやの救すくひ、敬虔けいけんに爾なんぢに禱いのる者ものの眠ねむらざる轉達者てんたつしやよ、爾なんぢを歌うたふ衆しゆう人じんの爲ために息やめずして切せつに禱いのり給たまへ。

光榮、今も、定理歌ドグマティク、同調。

童貞女どうていぢよよ、預よ言者げんしやは爾なんぢを永在えいざいなる光ひかりの雲くもと名なづけたり。蓋けだし雨あめが羊ひつじの毛けに降くだりし如ごとく、爾なんぢより父ちゝの言ことばは降くだり給たまへり、爾なんぢより輝かゞやきしハリストス我わが神かみは世せ界かいを照てらし、迷惑まよひを兦ほろぼし給たまへり。至し聖せいなる者ものよ、祈いのる、爾なんぢを眞まことの生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる我われ等らの爲ために息やめずして切せつに彼かれに禱いのり給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に主日の讚詞トロパリ。光榮、今も、其生神女讚詞。小聯禱。發放詞。

 「スボタ」の大晩課

首誦聖詠の後に常例の聖詠經の誦文。

「主よ、爾に籲ぶ」に十句を立てて、八調經オクトイホの主日の讚頌スティヒラ三章、アナトリイの四章、月課經ミネヤの三章或は六章を歌ふ。若し聖人の祭日ならば、光榮、月課經の、今も、本調の第一の生神女讚詞。

八調經の主日の讚頌スティヒラ、第一調。

句 我わが靈たましひを獄ひとやより引ひき出いだして、我われに爾なんぢの名なを讚榮さんえいせしめ給たまへ。

聖せいなる主しゆよ、我わが晩くれの禱いのりを納いれて、我われ等らに罪つみの赦ゆるしを與あたへ給たまへ、爾なんぢは獨ひとり世せ界かいに復ふく活くわつを顯あらはしし者ものなればなり。

句 爾なんぢ恩おんを我われに賜たまはん時とき、義ぎ人じんは我われを環めぐらん。

人人ひとびとよ、シオンを廻めぐり、之これを圍かこみて、是この中うちに死しより復ふく活くわつせし主しゆに光くわう榮えいを歸きせよ、彼かれは我われ等らを不ふ法はふより救すくひし吾わが神かみなればなり。

句 主しゆよ、我われ深ふかき處ところより爾なんぢに呼よぶ。主しゆよ、我わが聲こゑを聽きき給たまへ。

人人ひとびとよ、來きたれ、歌うたひてハリストスを拜をがみ、其その死しより復ふく活くわつせしを讚榮さんえいせん、彼かれは敵てきの誘惑いざなひより世せ界かいを救すくひし吾わが神かみなればなり。

又讚頌スティヒラ、總主敎パトリアルフアナトリイの作、第一調。

句 願ねがはくは爾なんぢの耳みゝは我わが禱いのりの聲こゑを聽きき納いれん。

諸天しよてんは樂たのしめ、地ちの基もとゐは角らつぱを吹ふけ、諸山しよざんは歡よろこびて呼よべ、蓋けだし視みよ、エムマヌイルは我われ等らの罪つみを十じふ字架じかに釘ていせり、生いのちを賜たまひ、アダムを復ふく活くわつせしめし者ものは死しを殺ころせり、人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

甘あまんじて我われ等らの爲ために身みにて十じふ字架じかに釘ていせられ、苦くるしみを受うけ、葬はうむられ、死しより復ふく活くわつせし主しゆを歌うたひて曰いはん、ハリストスよ、正敎せいけうを以もつて爾なんぢの敎けう會くわいを堅かため、我われ等らの生命いのちを平安へいあんならしめ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

ハリストス我わが神かみよ、我われ等ら不ふ當たうなる者ものは生命いのちを籠こむる爾なんぢの墓はかの前まへに立たちて、爾なんぢの言いひ難がたき慈じ憐れんに讚榮さんえいを奉たてまつる。蓋けだし爾なんぢは、罪つみなき者ものよ、世せ界かいに復ふく活くわつを賜たまはん爲ために、十じふ字架じかと死しとを受うけ給たまへり、人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

父ちゝと同どう無む原げん・同どう永在えいざいなる言ことば、言いひ難がたく童貞女どうていぢよの胎たいより出いでて、我われ等らの爲ために甘あまんじて十じふ字架じかと死しとを受うけ、光くわう榮えいの中うちに復ふく活くわつせし者ものを歌うたひて曰いはん、生命いのちを賜たまふ主しゆ、我わが靈たましひの救きう者しやよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

他の讚頌スティヒラ、至聖なる生神女に捧ぐ、アモレイのパウェルの作、月課經ミネヤの讚頌の無き所、或は「リティヤ」に歌ふ所の者。

讚頌スティヒラ、第一調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

聖せいなる衆しゆう軍ぐんより聖せいにして一切いつさいの造物ざうぶつより尊たふとき生しやう神女しんぢよ、世せ界かいの女宰ぢよさい、救世主きうせいしゆを生うみし者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らを諸もろもろの罪つみと疾病やまひと災禍わざはひより救すくひ給たまへ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

慈じ憐れんの門もんなる少女せうぢよよ、切せつに爾なんぢに祈いのる、我わが卑微ひびなる靈たましひを棄すつるなく、速すみやかに憐あはれみを垂たれて、之これを我わが諸罪しよざいの淵ふちより救すくひ給たまへ。潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの恩おん寵ちようを新あらたにして、我われの上うへに輝かゞやかし給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

女宰ぢよさいよ、爾なんぢは神かみを人人ひとびとに合あはせ給たまへり、爾なんぢは獨ひとり死しに屬ぞくする性せいを神聖しんせいなる不ふ朽きうに升のぼせたり。爾なんぢは地ち上じやうの者ものに救すくひを流ながし給たまへり。爾なんぢ、生しやう神女しんぢよよ、我われ等らを諸もろもろの苦く難なんより脫のがれしめ給たまへ。

光榮、月課經の。今も、生神女讚詞。

人ひとより生うまれて主宰しゆさいを生うみし全ぜん世せ界かいの光くわう榮えいと天てんの門もんなる童貞女どうていぢよマリヤ、諸天しよてん使しの歌うた、諸しよ信者しんじやの飾かざりなる者ものを讚ほめ歌うたふべし。彼かれは天てんと均ひとしく、神かみの宮みやと均ひとしき者ものとして顯あらはれたり、彼かれは仇あだの隔へだてを破やぶりて和わ睦ぼくを締むすび、國くにを開ひらけり。我われ等らは彼かれを信しんの固かためと爲なし、彼かれより生うまれし主しゆを扞ふせぎ衞まもる者ものと爲なす。勇いさめよ、神かみの民たみよ、勇いさめよ、主しゆは敵てきに勝かたん、全能者ぜんのうしやなればなり。

聖入。「穩なる光」。本日の提綱ポロキメンを歌ふ、主しゆは王わうたり、彼かれは威ゐ嚴げんを衣きたり。句、主しゆは能のう力りよくを衣き、又また之これを帶おびにせり。句、故ゆゑに世せ界かいは堅けん固ごにして動うごかざらん。句、主しゆよ、聖德せいとくは爾なんぢの家いへに屬ぞくして永遠えいゑんに至いたらん。

次ぎて常例の聯禱。「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。「我等主の前に吾が晩の禱」。髙聲の後本堂の讚頌スティヒラを歌ひて、前院に出で、熱衷公禱リティヤを行ふ。此の中にアモレイのパワェルの讚頌、或は聖務長の示す所を歌ふ。常例の祝文の後堂に入る、其時次の讚頌を歌ふ。第一調。

ハリストスよ、爾なんぢの苦くるしみにて我われ等らは苦くるしみを免まぬかれ、爾なんぢの復ふく活くわつにて我われ等らは淪滅ほろびより救すくはれたり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

又讚頌スティヒラ

句 主しゆは王わうたり、彼かれは威ゐ嚴げんを衣きたり。

造物ざうぶつは喜よろこぶべし、諸天しよてんは樂たのしむべし、諸民しよみんは樂たのしみて手てを拍うつべし。蓋けだし吾わが救世主きうせいしゆハリストスは我われ等らの罪つみを十じふ字架じかに釘ていし、死しを殺ころして、我われ等らに生いのちを賜たまひ、萬族ばんぞくの原げん祖そたる陷おちいりしアダムを復ふく活くわつせしめ給たまへり。人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

句 故ゆゑに世せ界かいは堅けん固ごにして動うごかざらん。

悟さとり難がたき主しゆよ、爾なんぢは天てん地ちの王わうにして、仁愛じんあいに因よりて甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせられたり。地ぢ獄ごくは下しもに爾なんぢを迎むかへて哀かなしみ、義ぎ人じん等らの靈たましひは爾なんぢを接うけて喜よろこび、アダムは爾なんぢ造成主ざうせいしゆを最いと下しもなる處ところに見みて復ふく活くわつせり。嗚呼あゝ奇き蹟せきや、萬有ばんいうの生命いのちは如何いかんぞ死しを嘗なめたる、是これ世せ界かいを照てらさんと欲ほつせし故ゆゑなり。此これに由よりて世せ界かいは呼よびて云いふ、死しより復ふく活くわつせし主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆよ、聖德せいとくは爾なんぢの家いへに屬ぞくして永遠えいゑんに至いたらん。

攜香女けいかうぢよは香料かうれうを攜たづさへ、急いそぎ且かつ哭なきて爾なんぢの墓はかに至いたりしに、爾なんぢの至し淨じやうなる體たいを得えずして、天てん使しに因よりて新あたらしき至し榮えいなる奇き蹟せきを知しりて、使徒等しとらに謂いへり、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまふ主しゆは復ふく活くわつし給たまへり。

光榮、若し之あらば、月課經の。若しなくば、

光榮、今も、生神女讚詞

視みよ、イサイヤの預よ言げん應かなひて、童貞女どうていぢよは子こを生うめり、生うみし後のちも生うむ前まへの如ごとく童貞女どうていぢよなり、生うまれし者ものは神かみなるに因よる、故ゆゑに天性てんせいは改あらため易かへられたり。嗚呼あゝ神かみの母はゝよ、爾なんぢの諸僕しよぼくが爾なんぢの堂だうに獻さゝぐる祈き禱たうを棄すつる勿なかれ、惠めぐみ深ふかき主しゆを爾なんぢの手てに抱いだきし者ものとして、爾なんぢの諸僕しよぼくを憐あはれみて、我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に、

主日の讚詞トロパリ、第一調。

救世主きうせいしゆよ、イウデヤの人ひと墓はかを封ふうじて、兵卒へいそつ爾なんぢの潔いさぎよき軀みを守まもる時とき、爾なんぢは三みつ日目かめに復ふく活くわつして、世せ界かいに生命いのちを賜たまへり。故ゆゑに天軍てんぐんは爾なんぢ生命いのちを施ほどこす主しゆに呼よべり、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの復ふく活くわつに歸きし、光くわう榮えいは爾なんぢの國くにに歸きす、獨ひとり人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの慮おもんぱかりに歸きす。

生神女讚詞

童貞女どうていぢよよ、ガウリイルが爾なんぢに慶よろこべよと告つげし時とき、其聲そのこゑに從したがひて萬有ばんいうの主宰しゆさいは爾なんぢ聖せいなる約櫃やくひつに身みを取とり給たまへり、義ぎなるダワィドの言いひしが如ごとし。爾なんぢの造成主ざうせいしゆを姙はらみて、爾なんぢは天てんより廣ひろき者ものと現あらはれたり。光くわう榮えいは爾なんぢに入いりし者ものに歸きし、光くわう榮えいは爾なんぢより出いでし者ものに歸きし、光くわう榮えいは爾なんぢの產さんにて我われ等らを釋とき給たまひし者ものに歸きす。

其他の次第。「主は神なり」にも同讚詞トロパリ。

 「スボタ」の晩堂課

司祭誦す、「我等の神は恒に崇め讚めらる」。誦經者、我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。「天の王」。聖三祝文。「天に在す」の後に、主憐めよ、十二次。光榮、今も、「來れ、我等の王」、三次。第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて」。第六十九聖詠、「神よ、速に我を救へ」。第百四十二聖詠、「主よ、我が禱を聆き」。其後、「至高きには光榮神に歸し」。「主よ、爾は世世に我等の避所」。「主よ、我等を守り、罪なくして此の夜」。次ぎて、「我信ず一の神」。

其後至聖なる生神女の規程カノンを歌ふ。第一調。

第一歌頌

イルモス イズライリは苦くるしき奴ど隷れいより脫のがれて、涉わたられぬ處ところを陸くがの如ごとくに過とほれり、敵てきの溺おぼるるを見みて、恩主おんしゆたる神かみ、高たかき臂ひぢを以もつて奇き蹟せきを行おこなふ者ものに歌うたを奉たてまつる、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

附唱 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

萬有ばんいうの女王によわうよ、天てん使しの首しゆ品ひんは驚おどろき懼おそれて爾なんぢを讚ほめ揚あげ、凡およその智慧ちゑは爾なんぢを仁じん慈じなる造物主ざうぶつしゆの母はゝとして歌うたふ、爾なんぢはハリストスを生うみて、一切いつさいの讚さん美びの量りやうに超こえたればなり。

我われ不ふ當たうの者ものは甚はなはだしき攻擊こうげきに苦くるしめられ、諸敵しよてきに惱なやまされて、淚なみだと共ともに呼よぶ、慈じ憐れんに富とめる者ものよ、上うへより爾なんぢの手てを我われに伸のべて、我われを援たすけ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて無ぶ難なんに生いのちを度わたらしめ給たまへ。

光榮 生しやう神女しんぢよよ、慈じ憐れんの治ち療れうを以もつて我わが靈たましひの隱ひそかなる罪過ざいくわを醫いやし、肉體にくたいの進擊しんげきを鎭しづめ、諸敵しよてきの戈ほこと矢やとを返かへして、强つよく彼かれ等らの心こゝろに刺さし給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよの胎たいはハリストスを生うみて、古いにしへの兇殺ひとごろしの草くさ場ばを絕たやせり。故ゆゑに、至し淨じやうなる者ものよ、今いま造物ざうぶつ皆みな生いかされしに因よりて喜よろこびて、同心どうしんに爾なんぢの子こ及および神かみを讚ほめ歌うたふ。

第三歌頌

イルモス 死しすべき者ものは己おのれの智慧ちゑと富とみとを以もつて誇ほこるべからず、主しゆを信しんずる信しんを以もつて誇ほこりて、正たゞしくハリストス神かみに呼よびて、常つねに歌うたふべし。主宰しゆさいよ、爾なんぢの誡いましめの石いしに我われを固かため給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、大おほいなるイアコフは昔むかし途みちに眠ねむりて梯かけはしに緣よりて上うへより地ちに諸天しよてん使しの降くだるを見みて驚おどろき、寤さめ興おきて、明あきらかに爾なんぢを天てんの門もんとして預よ見けんせり。

我われ不ふ當たうなる者ものは迷まよひて諸難しよなんに遇あひ、艱難かんなんの暴風あらしに惱なやまされて呼よぶ、哀かなしい哉かな我われや、神かみを生うみて、我われ等らの角つのを高たかくせし者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを救すくひ給たまへ。

光榮 嗚呼あゝ萬有ばんいうの王わう、吾わがハリストスイイススよ、天てんより强つよき手てを伸のべて、有形いうけい無む形けいの敵てきの首かうべを爾なんぢの母はゝを正たゞしく生しやう神女しんぢよと傳つたふる者ものの足そく下かに置おき給たまへ。

今も 慈じ憐れんに富とめる童貞女どうていぢよよ、イサイヤは昔むかし神しん゜の爇炭やけずみに潔きよめられて、明あきらかに爾なんぢの胎たいより子この生うまれんことを呼よべり。爾なんぢは末すゑの時ときに於おいて我わが爲ために夫をつとなくして之これを生うみ給たまへり。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、昔むかしアウワクムは爾なんぢの奇き妙めうなる風聲おとづれを聞ききて、懼おそれて呼よべり、神かみは南みなみより來きたり、聖せいなる者ものは樹こ蔭かげ繁しげき山やまより來きたりて、其その膏あぶらつけられし者ものを救すくはん。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

神かみの母はゝよ、睿えい智ちなる王わうは爾なんぢ女をんなの中うちに美うるはしくして最いと尊たふとき者ものが野のより出いづる如ごとく出いでて、子こハリストスを手てに抱いだくを預よ象しやうして、呼よべり、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

慈じ愛あいなる者ものよ、我われに爾なんぢの耳みゝを傾かたぶけ、我われの憂患うれひと菑害わざはひの多おほきとを見みよ。女宰ぢよさいよ、我われ今いま爾なんぢに靈たましひの目めを注そゝぎて、淚なみだと共ともに膝ひざを屈かゞめて、祈いのりて呼よぶ、我われを擾みだす侵害しんがいを鎭しづめ給たまへ。

光榮 嗚呼あゝ慈じ憐れんに富とめる者ものよ、我われ爾なんぢの僕ぼくは爾なんぢを壞やぶられぬ垣かきと識しりて、今いま祈いのりて、爾なんぢに趨はしり附つき、敵てきの矢やを幼兒をさなごの玩ぐわん具ぐの如ごとく無む效かうの者ものと爲なす。故ゆゑに歡よろこびて呼よぶ、神かみの母はゝよ、光くわう榮えいは爾なんぢの產さんに歸きす。

今も 童貞女どうていぢよよ、聖神せいしんの臨のぞむに因よりて至し上じやう者しやの能ちからは爾なんぢを蔭おほへり。其時そのとき性せいに超こえて、萬有ばんいうの主しゆは神かみの性せいを易かへずして、體からだと靈たましひとを生いける者ものとして己おのれに合あはせ給たまへり。

第五歌頌

イルモス ハリストスよ、我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろに爾なんぢの入いらざる光ひかりを輝かゞやかして、智慧ちゑに超こゆる平安へいあんを我われ等らに與あたへ給たまへ、我われ等らが爾なんぢの光ひかりに由よりて無知むちの夜よより日ひに趨はしりて、爾なんぢ人ひとを愛あいする主しゆを讚榮さんえいせん爲ためなり。

讚さん美びたる者ものよ、昔むかしダニイルは爾なんぢを神聖しんせいなる截きられざる山やまと預よ見けんして、明あきらかに爾なんぢよりハリストス救世主きうせいしゆ、神產しんさんの石いしの截きられんことを呼よべり。神かみの聘女よめよ、我われ等ら信者しんじやは今いま彼かれを尊たふとみて、爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

我われ不ふ當たうなる爾なんぢの役者えきしやは多おほくの誘惑いざなひに陷おちいりて、心こゝろの痛いたみと淚なみだとを以もつて切せつに禱いのりて呼よぶ、神かみの母はゝよ、卑微ひびなる我われを圍かこめる艱難かんなんより脫のがれしめて、我われを樂たのしみに滿みて給たまへ。

光榮 慾よくに與あづからずしてハリストスを生うみし仁じん慈じなる者ものよ、爾なんぢの力ちからある祈き禱たうを以もつて我わが諸慾しよよくの荒あれたる海うみを鎭しづめ給たまへ、我わが今いまより生命いのちの餘よ日じつを靈たましひの安靜あんせいの中うちに送おくりて、歌うたを以もつて爾なんぢを讚ほめ揚あげん爲ためなり。

今も 嗚呼あゝ至いたりて福さいはひなる童貞女どうていぢよよ、言いへ、如何いかに爾なんぢの手てに神かみを抱いだく、如何いかに其その手てを以もつて萬物ばんぶつを持たもつ者ものを乳ちにて養やしなふ。言いへり、我われはハリストス神かみを生うみて、アダムと原げん母ぼとの債おひめを除のぞきて、產さんの後のちにも潔淨いさぎよきに止とゞまる。

第六歌頌

イルモス 我われ全身ぜんしん無む量りやうの慾よくに圍かこまれて、諸惡しよあくの淵ふちに陷おちいれり。祈いのる、神かみよ、曩さきにイオナを救すくひし如ごとく、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげて、信しんに由よりて我われに無む慾よくを賜たまへ、我わが讚さん美びの聲こゑと眞實しんじつの神しん゜とを以もつて爾なんぢを祭まつらん爲ためなり。

永遠えいゑんの子こは父ちゝの懷ふところの座ざを離はなれずして、母はゝの懷ふところに在あり。世世よよの先さきより父ちゝと偕ともに在います者ものは末すゑの時ときに童貞女どうていぢよの胎たいより出いでて、言いひ難がたき仁じん慈じを以もつて萬ばん衆しゆうを不死ふしの生命いのちに升のぼせ給たまへり。

哀かなしい哉かな、我われ惡あく事じに因よりて敵てきの械かせに縛しばられて、地ぢ獄ごくの門もんに墜おちたり。潔いさぎよき神女しんぢよよ、天てんより現あらはれて、前まへに立たち、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて爾なんぢの役者えきしやを起おこして、爾なんぢの神聖しんせいなる產さんを歌うたふ者ものに援助たすけの手てを授さづけ給たまへ。

光榮 我われ不ふ當たうの者もの滅兦ほろびの穴あなに陷おちいりて、多おほくの猛獸まうじうは我われを環めぐる。女宰ぢよさいよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて石いしを除のぞきて、爾なんぢの僕ぼくを害がいなく護まもり給たまへ、爾なんぢは隅石すみいしたるハリストスを爾なんぢの胎たいに宿やどしたればなり。

今も 童貞女どうていぢよよ、昔むかし預よ言者げんしやの神聖しんせいなる會くわいは爾なんぢの產さんの狀さまを像かたどりて、爾なんぢハリストスを生うみし者ものを、光ひかる雲くもと燈ともしび、壺つぼと筵えん、天てんの露つゆと餅ぱんと「マンナ」、門もんと寶はう座ざと宮みや、杖つゑと樂園らくゑんと爲なせり。

主憐めよ。三次、光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第一調。

我われ等ら皆みな爾なんぢが神かみの母はゝにして、產さんの後のちにも實じつに童貞女どうていぢよと現あらはれしを識しりて、愛あいを以もつて爾なんぢの仁じん慈じに趨はしり附つく。蓋けだし我われ等ら罪つみなる者ものは爾なんぢを轉達者てんたつしやとして有たもち、爾なんぢ獨ひとり純じゆん潔けつなる者ものを患くわん難なんの中うちに拯救すくひとして獲えたり。

第七歌頌

イルモス 昔むかし敬虔けいけんに由よりて明あきらかに聖せいなる者ものと現あらはれし少者せうしやは、婚筵こんえんの宮みやを過とほるが如ごとく、爐ゐろりの堪たへ難がたき焰ほのほを涉わたり、聲こゑを合あはせて歌うたを歌うたへり、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

萬有ばんいうの女王によわうよ、永在えいざいの者ものは爾なんぢの過とほられぬ門もんを過とほりて、產さんの後のちにも爾なんぢの潔いさぎよき童貞どうていを全まつたくして護まもり給たまへり。故ゆゑに我われ等ら呼よぶ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我われ靈たましひを殺ころす患くわん難なんの爐ゐろりに投なげられて、七倍しちばいの焰ほのほに焚やかる。慈じ愛あいなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて親みづから我われに露つゆを降くだして、呼よばしめ給たまへ、吾わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

光榮 我われ諸慾しよよく及および間斷たえまなき誘惑いざなひと憂患うれひとの中うちに老おいて、我わが生いのちの西にしに至いたり、諸德しよとくに與あづからず、怠惰おこたりに囓かまれて、爾なんぢに呼よぶ、地ち上じやうの者ものの慰藉なぐさめなる女宰ぢよさいよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

今も 潔いさぎよき母はゝ童貞女どうていぢよよ、我われ等ら地ち上じやうの者ものは一體いつたいに於おいて三者さんしやに忠ちゆう信しんに奉ほう事じし、爾なんぢを身みにて神かみを生うみし者ものと傳つたへて、敬虔けいけんに歌うたふ、吾わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

第八歌頌

イルモス 昔むかし火ひと露つゆとの爐ゐろりは天然てんねんに超こゆる奇き蹟せきの象かたちを示しめせり、蓋けだし火ひは少者せうしやを焚やかずして、ハリストスの童貞女どうていぢよよりの種たねなき神聖しんせいなる產さんを顯あらはせり。故ゆゑに我われ等ら歌うたひて呼よばん、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

童貞女どうていぢよよ、司し祭さいの眞實しんじつなる言ことばは爾なんぢの產さんを象かたどれり、蓋けだし爾なんぢは實じつに神かみの言ことばを生うみて、神かみが過とほり給たまひし童貞どうていの門もんは啓ひらかざりき。故ゆゑに我われ等ら喜よろこびて、職しよくとして爾なんぢ生しやう神女しんぢよを同心どうしんに歌うたひて、潔いさぎよき者ものを萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

至いたりて潔いさぎよき者ものよ、神聖しんせいなる火ひを以もつて我わが靈たましひの中うちに生しやうじたる棘いばらを焚やき、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを諸德しよとくの爲ために起おこして、果みを結むすびてハリストスに獻けんぜしめ給たまへ。蓋けだし爾なんぢより常つねに活いける花はなは生しやうじて、一切いつさいの造物ざうぶつを飾かざれり。故ゆゑに我われ等ら潔いさぎよき神かみの母はゝを萬世ばんせいに尊たふとむ。

光榮 神かみの母はゝよ、我われに諸しよ病びやうの中うちに疾とく醫治いやしを與あたへ給たまへ。蓋けだし我われ不ふ當たうの者ものは憂愁いうしう患くわん難なんに陷おちいりて、泣なきて爾なんぢの遄すみやかなる援助たすけを呼よぶ。故ゆゑに至し淨じやうなる者ものよ、急いそぎて我われを凡およその苦くるしみより脫のがれしめて救すくひ給たまへ、我わが爾なんぢの產さんを崇あがめ讚ほめて歌うたはん爲ためなり。

今も 童貞女どうていぢよよ、昔むかし芽めを出いだしたるアアロンの杖つゑは爾なんぢを像かたどれり、蓋けだし爾なんぢ獨ひとり夫をつとなく、天てんの雨あめを腹はらに受うけて、芽めを生しやうじ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな樂たのしみて、宜よろしきに合かなひて爾なんぢ生しやう神女しんぢよを同心どうしんに歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

第九歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよの祕ひ密みつは言いひ難がたし、蓋けだし彼かれは天てんと現あらはれ、ハリストス神かみ全能者ぜんのうしやのヘルワィムの寶はう座ざ及および光ひかりを放はなつ宮みやと現あらはれたり。我われ等ら敬虔けいけんに彼かれを生しやう神女しんぢよとして崇あがめ讚ほむ。

童貞女どうていぢよの祕ひ密みつは至し榮えいなり、蓋けだし天てん上じやうの大おほいなる者もの等らが容いるる能あたはざりし主しゆを彼かれは其その腹はらに容いれ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら集あつまりて彼かれを讚さん美びし、樂たのしみて忠ちゆう信しんに崇あがめ讚ほむ。

無な玷てんなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら地ち上じやうの者ものは獨ひとり爾なんぢを天てんより高たかき者もの、神かみの曙あけぼの、ヘルワィムの寶はう座ざ、宮みや、及および聖せいなる榻とこと見みて、讚ほめ揚あげて、爾なんぢが潔いさぎよき胎たいより生うみ給たまひしハリストス吾わが神かみを崇あがめ讚ほむ。

光榮 多おほくの危き難なんは我われを環めぐり、甚はなはだしき攻擊こうげきは我われに逼せまり、諸しよ病びやう諸罪しよざいは我われを穴あなに陷おとしいれたり。故ゆゑに我わが靈たましひの憂うれひの中うちに爾なんぢに祈いのる、至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われに援助たすけを獲えしめ給たまへ。

今も ハリストスよ、潔いさぎよき神女しんぢよの祈き禱たうに因よりて世せ界かいを穩おだやかにせよ。敵てきの力ちからを忠ちゆう信しんなる諸しよ王わうの足そく下かに斃たふし、之これに因よりて絕たえざる平安へいあんを致いたして、世世よよに之これを護まもり給たまへ。

次ぎて「常に福にして」。聖三祝文。「天に在す」の後に本調の小讚詞コンダク。主憐めよ、四十次。祝文、「何の日何の時にも」。主憐めよ、三次。光榮、今も、「ヘルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て福を降せ。次ぎて祝文、「穢なく誘はるるなく」。其他常例の如し。發放詞幷に赦罪。

日曜日(主日)

 主日の朝、夜半課

司祭、「我等の神は恒に崇め讚めらる」。誦經者誦す、「アミン」。我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。「天の王」。聖三祝文。「至聖三者」。「天に在す」。司祭、「蓋國と權能」。主憐めよ、十二次。光榮、今も、「來れ我らの王」、三次。第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて」。

次ぎて生を施す聖三者の規程カノン。其冠詞は、惟一なる三日の神性よ、爾を歌ふ、ミトロファンの作。

第一歌頌

イルモス 死しせざる主しゆよ、勝かちを獲うる爾なんぢの右みぎの手ては、神かみに適かなふが如ごとく、能力ちからにて光くわう榮えいを顯あらはせり、其その全能ぜんのうなるに因よりて、敵てきを滅ほろぼし、イズライリ人じんの爲ために新あらたなる深水ふかみの路みちを開ひらきたればなり。

附唱 至し聖せいなる三者さんしや我われ等らの神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

惟一ゆゐいちの三さん位ゐなる本原ほんげん、始はじめなき、永在えいざいなる、萬有ばんいうの造成者ざうせいしや、悟さとられぬ者ものを、セラフィム等らは默もださずして讚榮さんえいす、凡およその民たみも歌うたを以もつて忠ちゆう信しんに彼かれを尊たふとむ。

初はじめに人ひとを造つくりし主しゆよ、爾なんぢは人人ひとびとに惟一ゆゐいちにして三さん光くわうなる爾なんぢの神性しんせいを現あらはさん爲ために爾なんぢの像ざうに循したがひて之これを造つくりて、之これに智慧ちゑと、言ことばと、神しん゜とを賜たまへり、人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮 父ちゝよ、爾なんぢは神元しんげんなる三さん位ゐに惟一ゆゐいちの權柄けんぺいの屬ぞくするを上うへより示しめして、爾なんぢと均ひとしく行かう爲ゐする子こ及および神しん゜に言いへり、我われ等ら降くだりて、彼かれ等らの言語ことばを淆みださん。

今も、生神女讚詞 睿えい智ちなる者もの等らは像かたどりて云いへり、智慧ちゑは生うまれざる父ちゝなり、同どう無む原げんの言ことばは同どう一性いつせいの子こなり、聖神せいしんは童貞女どうていぢよの内うちに言ことばの爲ために身みを造つくりし者ものなり。

第三歌頌

イルモス 獨ひとり人ひとの性せいの弱よわきを知しりて、憐あはれみを以もつて之これを衣きたる者ものよ、我われの上うへよりの力ちからを帶おびて、爾なんぢに呼よばしめ給たまへ、人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいの生いける宮みやは聖せいなり。

爾なんぢは神性しんせいに於おいて惟一ゆゐいちにして、昔むかし明あきらかにアウラアムに三さん位ゐの者ものと現あらはれて、形象かたちを以もつて神學しんがくの大おほいなる眞しん理りを示しめし給たまへり。我われ等ら醇じゆん正せいに爾なんぢ一いち元げんなる三さん光くわうの神かみを歌うたふ。

父ちゝよ、神かみに適かなふが如ごとく無む窮きゆうに爾なんぢより生うまれたる變易へんえきなき子こは光ひかりよりする光ひかりとして輝かゞやき、神聖しんせいなる神しん゜も光ひかりとして出いで給たまへり。我われ等ら醇じゆん正せいに惟一ゆゐいちなる神性しんせいの三さん位ゐの光くわう明みやうに伏拜ふくはいして、之これを讚榮さんえいす。

光榮 惟一者ゆゐいちしや三者さんしや、萬ばん性せいより上うへにして、言いひ難がたく、悟さとり難がたき主しゆを無む形けいの者ものは讚榮さんえいして、聖三せいさんの聲こゑを以もつて默もださざる讚さん美びを奉たてまつる。我われ等らも同一どういつの聲こゑを以もつて心こゝろを合あはせて三さん位ゐなる主しゆを讚ほめ歌うたふ。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、時ときより上うへなる者ものは時ときに及およびて種たねなく爾なんぢより出いで、見みえざる主しゆは我われ等らに似にたる者ものと爲なりて、父ちゝと、子こと、聖神せいしんとの惟一ゆゐいちなる性せい、惟一ゆゐいちなる權柄けんぺいを敎をしへたり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚榮さんえいす。

主憐めよ、三次。

坐誦讚詞セダレン、第一調。

我われ等ら皆みな父ちゝと子こ及および同尊どうそんにして義ぎなる神しん゜に伏拜ふくはいせん。光くわう榮えいは造つくられざる三者さんしや、至いたりて神聖しんせいなる能のう力りよくに歸きす、無む形けいの者ものの品ひん位ゐは之これを讚榮さんえいす。我われ等ら地ちに生うまるる者ものも今日こんにち畏おそれを以もつて醇じゆん正せいに之これを讚ほめ揚あぐ。

光榮、今も、生神女讚詞 婚姻こんいんに與あづからざる讚さん美びたるマリヤ、失望しつばうする人ひとの避所かくれが、神かみの居處すまひよ、我われ等ら常つねに諸惡しよあくの無ぶ道だうに迷まよひて、至し仁じんなる主しゆを怒いからしむる者ものを痛つう悔くわいの途みちに向むかはしめ給たまへ。

第四歌頌

イルモス アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢ、神かみの恩おん寵ちように覆おほはるる山やまを見みて、イズライリの聖せいなる者ものが我われ等らを救すくひ改あらためん爲ために、爾なんぢより出いづるを預よ言げんせり。

三日さんじつの神元しんげんよ、爾なんぢの神功しんこうの光くわう照せうの煇煌かゞやきにて我われを照てらし給たまへ、我わが心こゝろの目めにて智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの神聖しんせいなる光くわう明みやうの華麗くわれいを仰あふぎ、之これに與あづかることの甘かん美びを感想かんさうせん爲ためなり。

主しゆよ、爾なんぢは始はじめに萬ばん事じを行おこなふ爾なんぢの言ことばと爾なんぢの口くちの同どう一性いつせいの氣きとを以もつて天てん及および其その全軍ぜんぐんを造つくりて、神性しんせいの三さん光くわうの獨一どくいつの權けんを以もつて萬有ばんいうを宰つかさどり給たまふ。

光榮 萬ばん事じを宰さい制せいする全能ぜんのうの三者さんしや、混淆こんかうせざる惟一者ゆゐいちしやよ、我われを爾なんぢの像ざうと肖せうとに循したがひて造つくりしに因よりて、我われを照てらして、爾なんぢの聖せいにして仁愛じんあい且かつ純じゆん全ぜんなる旨むねを行おこなふを敎をしへ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは聖三者せいさんしやの一いつ、神元しんげんなる子こを生うみ給たまへり。彼かれは我われ等らの爲ために爾なんぢより身みを取とりて、三日さんじつの神性しんせいの暮くれざる光ひかりと輝かゞやきとを以もつて地ちに生うまるる者ものを照てらし給たまふ。

第五歌頌

イルモス 己おのれの降臨かうりんの光ひかりにて世せ界かいの極はてを照てらし、己おのれの十じふ字架じかにて之これを輝かゞやかししハリストスよ、爾なんぢが智慧ちゑの光ひかりにて正たゞしく爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろを照てらし給たまへ。

爾なんぢの華麗くわれいの近ちかづき難がたき光くわう線せんにて天てん使しの首しゆ品ひんを直たゞちに輝かゞやかす獨一どくいつ有權いうけんなる聖三者せいさんしやよ、爾なんぢの光明くわうみやうを以もつて醇じゆん正せいに爾なんぢを歌うたふ者ものを照てらし給たまへ。

單一たんいつなる三日さんじつの神元しんげんよ、爾なんぢが仁じん慈じに因よりて生いのちを賜たまひし性せいは今いま爾なんぢを歌うたひて、諸もろもろの罪つみと誘惑いざなひ、菑害わざはひと憂愁うれひより脫のがれしめんことを求もとむ。

光榮 父ちゝと、子こと、聖神せいしん、惟一ゆゐいちの神性しんせい、分わかれ、又また分わかれざる者もの、見みゆると見みえざる萬物ばんぶつの惟一ゆゐいちの神かみを我われ等ら信しんを以もつて讚榮さんえいす。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、諸しよ預よ言者げんしやの言語ことばは皆みな爾なんぢの言いひ難がたく解とき難がたき產さんを預あらかじめ錄しるせり。我われ等ら斯この產さんを單一たんいつにして三日さんじつなる神性しんせいの奧あう義ぎに導みちびく者ものなりと知しれり。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの淵ふちは我われ等らを圍かこめり、脫のがれしむる者ものなし、我われ等らは屠と所しよの羊ひつじの如ごとし。吾わが神かみよ、爾なんぢの民たみを救すくへ、爾なんぢは弱よわる者ものの力ちからと更新あらためなればなり。

永在えいざいなる三者さんしやよ、爾なんぢは意旨いしの同どう一いつに於おいて同等どうとうの能力ちからを有たもつ、爾なんぢは單一たんいつにして分わかれざる惟一者ゆゐいちしやなり。爾なんぢの能力ちからを以もつて我われ等らを護まもり給たまへ。二次

光榮 悟さとられぬ三者さんしやよ、爾なんぢは仁じん慈じなるに因よりて己おのれの意旨いしを以もつて萬世ばんせいを無むより出いだし、亦また人ひとをも造つくれり。今いまも我われを凡およその危き難なんより救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ・神かみの聘女よめよ、爾なんぢは入いらざる日ひ、全能ぜんのうを以もつて大おほいなる光くわう體たいを造つくりて排列はいれつせし者ものの家いへと爲なれり。今いまも我われを諸慾しよよくの昏昧くらみより救すくひ給たまへ。

主憐めよ、三次。

坐誦讚詞セダレン、第一調。

聖せいなる三者さんしや、分わかれざる性せい、截きられずして三さん位ゐに截きらるれども、神性しんせいに於おいて分わかるるなく止とゞまる主しゆに我われ等ら地ち上じやうの者ものは畏おそれを以もつて伏拜ふくはいし、造物主ざうぶつしゆ及および主宰しゆさいとして至し仁じんなる神かみを讚榮さんえいす。

光榮、今も、生神女讚詞 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我わが不ふ當たうなる靈たましひを治をさめ、其その罪つみの多おほきに因よりて淪滅ほろびの深ふか處みに跌つまづきしを憐あはれみ、畏おそるべき死しの時ときにも我われを罪つみする惡あく鬼きと凡およその苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを見みて屬神ぞくしんの爐ゐろりと爲なす、蓋けだし先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみは、三人みたりの少者せうしやを救すくひし如ごとく、斯かく爾なんぢの腹はらに於おいて全ぜん世せ界かいを改あらため給たまへり。

神かみの言ことば、全能者ぜんのうしや神かみの同どう一性いつせいの輝煌かゞやきよ、爾なんぢが約やくせし如ごとく、仁じん慈じなるに因よりて、爾なんぢの父ちゝ及および聖神せいしんと共ともに我われの内うちに神功しんこうの住居すまひを爲なして、我われを惡あく鬼きと諸慾しよよくとの爲ために畏おそるべき者ものと現あらはし給たまへ。二次。

光榮 主宰しゆさいよ、爾なんぢは己おのれの仁じん慈じの海うみを我われ等らに示しめさん爲ために、爾なんぢの子こを我わが卑微ひびに遣つかはして、我われ等らを變へんじて初始はじめの光明くわうみやうに囘かへせり。今いまも神聖しんせいなる神しん゜を以もつて我われを敎をしへ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、ヘルワィムの寶はう座ざに舁になはるる萬有ばんいうの王わうは爾なんぢの童貞どうていの腹はらに入いりて、人ひとを愛あいする主しゆなるに因よりて、衆しゆうを壞滅ほろびより救すくへり。今いまも爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われを護まもり給たまへ。

第八歌頌

イルモス 昔むかし火ひと露つゆとの爐ゐろりは天然てんねんに超こゆる奇き蹟せきの象かたちを示しめせり、蓋けだし火ひは少者せうしやを焚やかずして、ハリストスの童貞女どうていぢよよりの種たねなき神聖しんせいなる產さんを顯あらはせり。故ゆゑに我われ等ら歌うたひて呼よばん、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

萬有ばんいうの主しゆ、三さん位ゐなる全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは神功しんこうの瞬またゝきを以もつて天てんを幔まくの如ごとくに張はり、又また爾なんぢの全ぜん力りよくの手てを以もつて地ちの重おもきを懸かけたり。人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢに於おける愛あいと信しんとを以もつて爾なんぢの諸僕しよぼくをも堅かため給たまへ、我われ等らが切せつに爾なんぢを世世よよに讚榮さんえいせん爲ためなり。二次。

光榮 位ゐにては三日さんじつの光ひかり、性せいにては惟一ゆゐいちの神かみよ、爾なんぢの神元しんげんなる光ひかりを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものを照てらして、常つねに爾なんぢの輝かゞやける光明くわうみやうを仰あふがしめ給たまへ、我わが之これに因よりて爾なんぢの甘かん美びにして、光ひかりを施ほどこす、至いたりて盛さかんなる光くわう榮えいに飽あかせられて、醇じゆん正せいに爾なんぢを世世よよに讚ほめ揚あげん爲ためなり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの子こは變易へんえきなく人ひとの性せいを受うけて、至し大だいなる仁じん慈じに因よりて、之これを古いにしへの朽きう壞くわいより救すくひて、天てんに上のぼせ給たまへり。我われ等ら感謝かんしやの心こゝろを懷いだきて彼かれに歌うたふ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

第九歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、燃もゆれども燒やかれぬ棘いばらは爾なんぢが潔いさぎよき產さんの象かたちを顯あらはせり。祈いのる、今いまも我われ等らを攻せめ圍かこむ誘惑いざなひの爐ゐろりを撲うち滅けして、常つねに爾なんぢを崇あがめさせ給たまへ。

至し聖せいなる一體いつたいの三者さんしや、造物ざうぶつの救主きうしゆよ、形體けいたい及および神しん゜靈れいなる爾なんぢの諸僕しよぼくを敵てきの惡謀あくぼうと攻擊こうげきより救すくひて、常つねに爾なんぢの牧群ぼくぐんを害がいなく護まもり給たまへ。二次

光榮 三日さんじつにして一いち元げんなる全能ぜんのうの神かみよ、爾なんぢは己おのれの大仁だいじん慈じの無む量りやうなる深ふかみを示しめさん爲ために、我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくに救すくひを施ほどこす誡命いましめを賜たまへり、我われ等らを之これを行おこなふに堪たへさせ給たまへ。

生神女讚詞 神元しんげんなる三さん位ゐに於おいて惟一者ゆゐいちしやと確信かくしんせらるる神かみよ、我われ等らの禱いのりを眷かへりみて、爾なんぢの諸僕しよぼくに、至し淨じやうにして讚さん美びたる神かみの母はゝの祈き禱たうに因よりて、慰藉なぐさめを與あたへ給たまへ。

次に聖三者の規程カノンの後に主日每に誦する所のグリゴリイ・シナイトの聖三者讚詞、「爾神言を讚榮するは誠に當れり」、本書の末に載す。及び其他夜半課の式、幷に發放詞。

 主日の早課

六段の聖詠畢りて「主は神なり」、第一調に依りて歌ひ、後主日の讚詞トロパリ二次、生神女讚詞一次、大晩課に載す。次ぎて聖詠經の常例の誦文。

第一の誦文の後に主日の坐誦讚詞セダレン、第一調。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの墓はかを守まもる兵卒へいそつは女をんな等たちに現あらはれて復ふく活くわつを傳つたふる天てん使しの光輝かゞやきに因よりて死しせし如ごとくなれり。我われ等ら爾なんぢ朽きう壞くわいを滅ほろぼす者ものを讚榮さんえいし、爾なんぢ墓はかより復ふく活くわつせし我われ等らの惟一ゆゐいちの神かみに伏拜ふくはいす。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて、爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる毋なかれ。

鴻恩こうおんの主しゆ、生命いのちを施ほどこす有能いうのう者しやよ、爾なんぢは甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせられ、死し者しやとして墓はかに置おかれて、爾なんぢの死しを以もつて權柄けんぺいを破やぶり給たまへり。蓋けだし地ぢ獄ごくの門衞かどもりは爾なんぢを畏おそれて慄をのゝき、爾なんぢは古こ世せいより死しせし者ものを己おのれと偕ともに起おこし給たまへり、獨ひとり人ひとを慈いつくしむ主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 我われ等ら皆みな爾なんぢを神かみの母はゝ、產さんの後のちにも實じつに童貞女どうていぢよなりと知しりて、愛あいを以もつて爾なんぢの慈じ憐れんに趨はしり附つく。蓋けだし我われ等ら罪つみなる者ものは爾なんぢを轉達てんたつとして有たもち、爾なんぢ獨ひとり純じゆん潔けつなる者ものを誘いう感かんの中うちに救すくひとして得えたり。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第一調。

女をんな等たち朝あさ早はやく墓はかに來きたり、天てん使しの顯現あらはれを見みて慄をのゝけり。墓はかは生命いのちを輝かゞやかし、奇き蹟せきは彼かれ等らを驚おどろかせり、故ゆゑに彼かれ等らは往ゆきて門もん徒とに復ふく活くわつを傳つたへたり。ハリストスは獨ひとり有能いうのう有權いうけんなる者ものとして、地ぢ獄ごくを虜とりこにし、朽くちたる者ものを皆みな己おのれと偕ともに起おこし、十じふ字架じかにて定罪ていざいの畏懼おそれを解とき給たまへり。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き迹せきを傳つたへん。

萬有ばんいうの生命いのちよ、爾なんぢは十じふ字架じかに釘ていせられたり、不死ふしの主しゆよ、爾なんぢは死し者しやの中うちに入いりたり、救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは三みつ日目かめに復ふく活くわつして、アダムを己おのれと偕ともに朽きう壞くわいより起おこし給たまへり。故ゆゑに天軍てんぐんは爾なんぢ生いのちを施ほどこす主しゆに呼よべり、ハリストスよ、光くわう榮えいは爾なんぢの神聖しんせいなる苦くるしみに歸きす、光くわう榮えいは爾なんぢの復ふく活くわつに歸きす、獨ひとり人ひとを愛いつくしむ主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの寬くわん容ように歸きす。

光榮、今も、生神女讚詞 マリヤ、主宰しゆさいの尊たふとき住居すまひよ、我われ等ら甚はなはだしき失望しつばうと、諸罪しよざいと、憂患うれひとの淵ふちに陷おちいりし者ものを起おこし給たまへ。蓋けだし爾なんぢは罪つみなる者ものの守護まもりと、扶助たすけと、堅けん固ごなる轉達てんたつにして、爾なんぢの諸僕しよぼくを救すくひ給たまふ。

次ぎて「道に玷なくして」。其後諸讚詞トロパリ、「救世主よ、天使の軍」、本書の末に載す。次に小聯禱。

應答歌イパコイ、第一調

盜賊たうぞくの悔くやみは樂園らくゑんを奪うばひ、攜香女けいかうぢよの哀かなしみは喜よろこびを知しらせたり、蓋けだし爾なんぢ、ハリストス神かみよ、復ふく活くわつして、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまへり。

品第詞ステペンナ。第一倡和詞アンティフォン、第一調。每句復唱す。

我わが憂うれひの時とき、我われの痛歎なげきを聽きき給たまへ、主しゆよ、我われ爾なんぢに呼よぶ。

野のに居をりて虛むなしき世よの外ほかに在ある者ものには恒つねに神聖しんせいなる望のぞみあり。

光榮 聖神せいしんには父ちゝ及および子こと均ひとしき尊敬そんけいと光くわう榮えいとは適かなふ。故ゆゑに我われ等ら同一どういつ權能けんのうの聖三者せいさんしやを歌うたはん。

今も、同上。

第二倡和詞

神かみよ、爾なんぢは我われを爾なんぢの律法りつぱふの山やまに登のぼせたり。諸德しよとくにて我われを飾かざり給たまへ、我わが爾なんぢを歌うたはん爲ためなり。

言ことばよ、爾なんぢの右みぎの手てに我われを取とりて、我われを蔭おほひ、我われを守まもり給たまへ、罪つみの火ひが我われを焚やかざらん爲ためなり。

光榮 聖神せいしんに因よりて凡およその造物ざうぶつは新あらたにせられて、復また初はじめの狀さまに還かへる、父ちゝ及および言ことばと均ひとしく有能いうのうなればなり。

今も、同上。

第三倡和詞

人ひと我われに向むかひて、主しゆの家いへに往ゆかんと云いふ時とき、我わが神しん゜は樂たのしみ、心こゝろも共ともに喜よろこぶ。

ダワィドの家いへには大おほいなる畏懼おそれあり、蓋けだし彼處かしこに寶はう座ざは立たてられて、地ち上じやうの萬族ばんぞく萬民ばんみんは審判しんぱんせられん。

光榮 聖神せいしんには父ちゝ及および子こと均ひとしき尊敬そんけい、伏拜ふくはい、光くわう榮えい、權柄けんぺいを歸きすること當然たうぜんなり、蓋けだし聖三者せいさんしやは性せいにて惟一ゆゐいちなり、唯たゞ位ゐにては然しからず。

今も、同上。

提綱ポロキメン、第一調。

主しゆ曰いはく、我われ今いま興おき、執とらへられんとする者ものを危あやふからざる處ところに置おかん。

句 主しゆの言ことばは淨きよき言ことばなり。

「凡そ呼吸ある者は」。順序の早課福音經。

ハリストスの復ふく活くわつを見みて、聖せいなる主しゆイイスス獨ひとり罪つみなき者ものを拜をがむべし。ハリストスよ、我われ等ら爾なんぢの十じふ字架じかを拜をがみ、爾なんぢの聖せいなる復ふく活くわつを歌うたひ讚ほむ、爾なんぢは我われ等らの神かみなればなり、爾なんぢの外ほか他たの神かみを知しらず、唯たゞ爾なんぢの名なを稱となふ。信者しんじやよ、皆みな來きたりて、ハリストスの聖せいなる復ふく活くわつを拜をがむべし、十じふ字架じかにて歡喜よろこびは全ぜん世せ界かいに臨のぞみたればなり。我われ等ら恒つねに主しゆを讚ほめ揚あげて、其その復ふく活くわつを崇あがめ歌うたはん、主しゆは十じふ字架じかに釘くぎうたるるを忍しのびて、死しを以もつて死しを滅ほろぼししに因よる。

第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて」。

光榮 使徒しとの祈き禱たうに依よりて、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我われ等らの多おほくの罪つみを淨きよめ給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに依よりて、憐あはれみ深ふかき主しゆよ、我われ等らの多おほくの罪つみを淨きよめ給たまへ。

次ぎて、第六調 神かみよ、爾なんぢの大おほいなる憐あはれみに因よりて我われを憐あはれみ、爾なんぢが惠めぐみの多おほきに因よりて我われの不ふ法はふを抹けし給たまへ。

讚頌スティヒラ 預あらかじめ言いひし如ごとく、イイスス墓はかより復ふく活くわつして、我われ等らに永遠えいゑんの生命いのちと大おほいなる憐あはれみとを賜たまへり。

「神よ、爾の民を救ひ」。

高聲、「爾が獨生子の仁慈と慈憐と」。

規程カノン四篇、主日の、讚詞トロパリ四章、十字架復活の、三章、生神女の、三章、月課經ミネヤの、四章。若し聖人の祭ならば、聖人の、六章、十字架復活の、二章、生神女の、二章。

主日の規程カノン、第一調

第一歌頌

イルモス 死しせざる主しゆよ、勝かちを獲うる爾なんぢの右みぎの手ては、神かみに適かなふが如ごとく、能力ちからにて光くわう榮えいを顯あらはせり、其その全能ぜんのうなるに因よりて、敵てきを滅ほろぼし、イズライリ人じんの爲ために新あらたなる深水ふかみの路みちを開ひらきたればなり。

附唱 主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの聖せいなる復ふく活くわつに歸きす。

讚詞トロパリ 元始はじめに至し淨じやうなる手てにて神かみの力ちからを以もつて我われを土つちより作つくりし主しゆは、十じふ字架じかに手てを伸のべて、童貞女どうていぢよより取とりし我わが朽くち易やすき身みを土つちより喚よび起おこせり。二次。

光榮 神聖しんせいなる吹噓いきを以もつて我われに靈たましひを入いれし主しゆは、我わが爲ために殺ころされ、靈たましひを死しに付わたして、我われを永遠えいゑんの鎖くさりより解とき、己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめて、不ふ朽きうの榮さかえを賜たまへり。

今も、生神女讚詞 恩おん寵ちようの泉いづみよ、慶よろこべ、天てんの梯かけはしと門もんよ、慶よろこべ、燈臺とうだいと金こがねの壺つぼ、及および截きられざる山やま、生命いのちを賜たまふハリストスを世せ界かいの爲ために生うみし者ものよ、慶よろこべ。

又十字架復活の規程カノン

第一歌頌、同調

イルモス 「ハリストス生る」。

附唱 主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかと復ふく活くわつに歸きす。

ハリストスは人體じんたいを取とりて我われを神成しんせいし、ハリストスは卑ひくくなりて我われを高たかくし、ハリストス生命いのちを賜たまふ主しゆは身みにて苦くるしみを受うけて我われを苦くるしみより解とき給たまふ。故ゆゑに我われ感謝かんしやの歌うたを奉たてまつる、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

ハリストスは十じふ字架じかに釘ていせられて我われを上のぼせ、ハリストスは殺ころされて我われを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめ、ハリストスは我われに生命いのちを賜たまふ。故ゆゑに我われ樂たのしみて手てを拍うちて、救世主きうせいしゆに凱歌かちうたを奉たてまつる、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは神かみを孕はらめり、至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは童貞どうていに於おいてハリストスを生うめり。彼かれは爾なんぢより身みを取とりて、一いち位ゐ二に性せいの獨生どくせい子しと識しらる、光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

又至聖なる生神女の規程カノン

第一歌頌、同調

イルモス 「死せざる主よ、勝を獲る爾の右の手」。

附唱 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ等らを救すくひ給たまへ。

我われ等らの不ふ能のうは爾なんぢに適かなふ何なんの歌うたをか爾なんぢに奉たてまつらん、唯たゞ悅よろこばしむる歌うた、ガウリイルが奧あう妙めうに我われ等らに敎をしへし者ものなり、生しやう神しん童貞女どうていぢよ、聘女よめならぬ母はゝよ、慶よろこべ。

我われ等ら信者しんじやは永貞えいてい童女どうぢよ、上うへなる軍ぐんの王わうの母はゝに最いと淨きよき心こゝろより熱切ねつせつに呼よばん、生しやう神しん童貞女どうていぢよ、聘女よめならぬ母はゝよ、慶よろこべ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの悟さとり難がたき產さんの奧あう義ぎの淵ふちは量はかられず。故ゆゑに我われ等ら疑うたがひなき信しんを以もつて切せつに爾なんぢに歌うたを奉たてまつりて云いふ、生しやう神しん童貞女どうていぢよ、聘女よめならぬ母はゝよ、慶よろこべ。

次ぎて月課經ミネヤの規程カノン。

共頌カタワシヤ、「我が口を開きて」。

第三歌頌

イルモス 獨ひとり人ひとの性せいの弱よわきを知しりて、憐あはれみを以もつて之これを衣きたる者ものよ、我われに上うへよりの力ちからを帶おびて、爾なんぢに呼よばしめ給たまへ、人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいの生いける宮みやは聖せいなり。

仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢは我われの神かみにして、陷おちいりし者ものを憐あはれみて、甘あまんじて我われに降くだり、十じふ字架じかに釘ていせらるるを以もつて我われを升のぼせて、爾なんぢに呼よばしめ給たまふ、人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいの生いける宮みやは聖せいなり。

本原ほんげんの生命いのちたる主宰しゆさいハリストスよ、爾なんぢは慈じ憐れんなる神かみにして、我われ朽くちたる者ものを衣き、死しに屬ぞくする塵ちりに下くだりて、死しの權けんを滅ほろぼし、三みつ日目かめに死しより復ふく活くわつして、我われに朽くちざるを衣きせ給たまへり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは至し聖神せいしんに因よりて神かみを孕はらみて、燒やかれざる者ものと止とゞまれり、蓋けだし立法者りつぱふしやモイセイに顯あらはれし棘いばらは爾なんぢ堪たへ難がたき火ひを受うけし者ものの燃もえて燒やかれざるを明あきらかに前兆ぜんてうせり。

又 イルモス 「世の無き前に分離なく父より」。

己おのれの肩かたに迷まよへる羊ひつじを任になひて、木きを以もつて其その罪つみを滅ほろぼししハリストス神かみに呼よばん、我われ等らの角つのを高たかくせし主しゆよ、爾なんぢは聖せいなり。

大おほいなる牧者ぼくしやハリストスを地ぢ獄ごくより上のぼせて、其その聖せい務むに因よりて使徒等しとらを以もつて嚴おごそかに諸民しよみんを牧ぼくせし主しゆに、我われ等ら信者しんじやは眞實しんじつと神聖しんせいなる神しん゜とを以もつて務つとむべし。

童貞女どうていぢよより種たねなく甘あまんじて身みを取とりし子こ、生うみし者ものを產さんの後のちに神聖しんせいなる力ちからを以もつて潔いさぎよき童貞女どうていぢよと護まもりし者もの、萬有ばんいうの上うへに在ある神かみに呼よばん、主しゆよ、爾なんぢは聖せいなり。

又 イルモス 「獨人の聖の弱きを知りて」。

童貞女どうていぢよよ、我われ等ら預よ言者げんしやの言ことばに循したがひて、正たゞしく爾なんぢを輕かろき雲くもと稱となふ。蓋けだし主しゆは爾なんぢに抱いだかれて、エギペトの迷惑まよひの手造しゆざうを滅ほろぼして、之これに事つかふる者ものを照てらさん爲ために來きたり給たまへり。

讚さん美びたる者ものよ、預よ言者げんしやの會くわいは爾なんぢを實じつに封ふうじたる泉いづみ、閉とぢたる門もんと稱となへて、爾なんぢが產さんの後のちにも守まもりし童貞どうていの徵しるしを明あきらかに我われ等らの爲ために像かたどれり。

至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、至し上じやうの智慧ちゑを能よくするに循したがひて悟さとるに堪たへたるガウリイルは爾なんぢに欣よろこばしき報信おとづれを攜たづさへたり、明あきらかに言ことばの降孕はらみを知しらせ、言いひ難がたき產さんを傳つたふる者ものなり。

第四歌頌

イルモス アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢ、神かみの恩おん寵ちように覆おほはるる山やまを見みて、イズライリの聖せいなる者ものが我われ等らを救すくひ改あらためん爲ために、爾なんぢより出いづるを預よ言げんせり。

斯この救主きうしゆ、エドムより出いで、棘いばらの冠かんむりを冠かうむり、血ちに染そみたる衣ころもを衣き、木きに懸かかれる者ものは誰たれぞ、是これイズライリの聖せいなる者もの、我われ等らを救すくひ改あらたむる主しゆなり。

頑かたましき人人ひとびとよ、視みて愧はづべし、蓋けだし爾なんぢ等らが無智むちに因よりてピラトの命めいを乞こひて、犯罪者はんざいしやとして十じふ字架じかに懸かけし者ものは死しの力ちからを破やぶりて、神かみに適かなふが如ごとく墓はかより復ふく活くわつせり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、我われ等ら爾なんぢが生命いのちの樹きなるを識しる、蓋けだし爾なんぢより生しやうぜし者ものは人ひとの死しを致いたす果くだものに非あらず、乃すなはち永ながき生命いのちの樂たのしみにして、爾なんぢを歌うたふ我われ等らを救すくふ者ものなり。

又 イルモス 「イエッセイの根より生ぜし枝」。

斯この美うるはしき者もの、エドムより出いで、其その衣ころもの赤あかきはワォソルの葡ぶ萄だうに染そみたるが如ごとき者ものは誰たれぞ、神かみとしては美うるはしく、人ひととしては肉體にくたいの血ちに赤あかみたる衣ころもを衣きたる者ものなり。我われ等ら信者しんじやは彼かれに歌うたふ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの能力ちからに歸きす。

ハリストスは將しやう來らいの福ふくの司し祭さい長ちやうと現あらはれて、我われ等らの罪つみを滅ほろぼし、己おのれの血ちを以もつて更さらに美うるはしく、更さらに全ぜん備びなる幕まくに入いる奇き妙めうなる途みちを示しめして、我われ等らの前ぜん驅くとして聖所せいしよに入いり給たまへり。

生神女讚詞 讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために現あらはれし新あらたなるアダムよりエワの古いにしへの債おひめめを赦ゆるさんことを求もとめ得えたり。蓋けだし潔いさぎよき降孕はらみに因よりて己おのれに智ちあり靈たましひある肉體にくたいを合あはせたるハリストスは爾なんぢより出いで給たまへり、二に性せいにして一いち位ゐなる主しゆなり。

又 イルモス 「アウワクムは先知の目にて」。

天てんよ、奇き蹟せきを聽きけ、地ちよ、耳みゝを傾かたぶけよ、蓋けだし塵ちりなる陷おちいりたるアダムの女むすめは神かみ己おのれの造成主ざうせいしゆの爲ために母はゝと爲なるに定さだめられたり、我われ等らの拯救すくひ及および改易あらための爲ためなり。

讚さん美びたる者ものよ、我われ等ら大おほいにして畏おそるべき爾なんぢの祕ひ密みつを歌うたふ。蓋けだし永在えいざいの者ものは天てん上じやうの品ひん位ゐより隱ひそみて、雨あめが羊ひつじの毛けに於おける如ごとく爾なんぢに降くだり給たまへり、爾なんぢを歌うたふ我われ等らの救すくひの爲ためなり。

諸聖しよせいの聖せいなる讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢより異い邦民はうみんの期望のぞみ、信者しんじやの拯救すくひなる贖しよく罪主ざいしゆ、生いのちを施ほどこす主しゆは輝かゞやき出いでたり。爾なんぢの諸僕しよぼくの救すくはれんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

第五歌頌

イルモス 己おのれの降臨かうりんの光ひかりにて世せ界かいの極はてを照てらし、己おのれの十じふ字架じかにて之これを輝かゞやかししハリストスよ、爾なんぢが智慧ちゑの光ひかりにて正たゞしく爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろを照てらし給たまへ。

イウデヤ人じんは大おほいなる羊ひつじの牧者ぼくしや及および主しゆを十じふ字架じかの木きにて殺ころしたれども、彼かれは地ぢ獄ごくに葬はうむられたる死し者しやを羊ひつじの如ごとく死しの權けんより救すくひ給たまへり。

ハリストス吾わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかにて和わ睦ぼくを福音ふくいんし、虜とりこに赦ゆるしを傳つたへ、權けんある者ものを辱はづかしめ、爾なんぢの神聖しんせいなる復ふく活くわつを以もつて其その裸ら體たいにして貧まづしくなりたるを顯あらはし給たまへり。

生神女讚詞 讚さん美びたる者ものよ、切せつに爾なんぢに求もとむる者ものの禱いのりを斥しりぞくる毋なかれ。至し淨じやうなる者ものよ、之これを受うけて、爾なんぢの子こなる神かみ、一ひとりの恩主おんしゆに捧さゝげ給たまへ、我われ等ら爾なんぢを轉達者てんたつしやとして得えたればなり。

又 イルモス 「和平の神、仁慈の父よ」。

嗚呼あゝ神かみの智慧ちゑの富とみと深ふかみや。智ち者しやを執とらふる主しゆは其その惡謀あくばうより我われ等らを救すくへり、蓋けだし甘あまんじて身みの弱よわきを以もつて苦くるしみを受うけて、己おのれの力ちからを以もつて死し者しやを活いかして、之これを起おこし給たまへり。

實在じつざいの神かみハリストスは我われ等らの爲ために肉體にくたいに合がつし、十じふ字架じかに釘ていせられ、死しし、葬はうむられ、又また復ふく活くわつし、己おのれの肉體にくたいと偕ともに嚴おごそかに父ちゝに升のぼり、之これと偕ともに來きたりて、敬虔けいけんに彼かれに事つかふる者ものを救すくはん。

生神女讚詞 諸しよ聖せいの聖せいなる潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは諸しよ聖せいの聖せいにして、衆しゆうを聖せいにするハリストス贖しよく罪主ざいしゆを生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ萬物ばんぶつの造成者ざうせいしやの母はゝたる者ものを萬有ばんいうの女王によわう及および女宰ぢよさいとして傳つたふ。

又 イルモス 「己の降臨の光にて」。

生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、天てんの軍ぐんは爾なんぢを見みて樂たのしみ、人人ひとびとの會くわいは彼かれ等らと共ともに喜よろこぶ、蓋けだし爾なんぢの產さんに因よりて合あはせられたり。我われ等ら宜よろしきに合かなひて之これを讚榮さんえいす。

人人ひとびとの舌したと思念おもひとは實じつに人類じんるゐの飾かざりなる者ものの讚さん美びに動うごくべし。童貞女どうていぢよは前まへに立たちて、信しんを以もつて彼かれの奇き蹟せきを歌うたふ者ものを明あきらかに榮えいし給たまふ。

睿えい智ち者しやの歌か頌しようと讚さん美びとは神かみの母はゝ童貞女どうていぢよに捧さゝげらるべし、蓋けだし彼かれは至いたりて神聖しんせいなる光くわう榮えいの宮みやと爲なれり。我われ等ら宜よろしきに合かなひて彼かれを讚榮さんえいす。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの淵ふちは我われ等らを圍かこめり、脫のがれしむる者ものなし、我われ等らは屠と所しよの羊ひつじの如ごとし。吾わが神かみよ、爾なんぢの民たみを救すくへ、爾なんぢは弱よわる者ものの力ちからと更新あらためなればなり。

主しゆハリストスよ、我われ等らは始はじめて造つくられし者ものの愆あやまちにて痛いたく傷きずつけられ、爾なんぢが我われ等らの爲ために受うけし傷きずにて愈いやされたり、爾なんぢは弱よわる者ものの力ちからと更新あらためなればなり。

全能ぜんのうの主しゆよ、爾なんぢは己おのれの權けんにて衆しゆうを呑のむ鯨くぢらの力ちからを破やぶり、之これを殺ころして、我われ等らを地ぢ獄ごくより引ひき上あげたり、爾なんぢは生命いのちと光ひかりと復ふく活くわつなればなり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我わが族やからの原げん祖そは罪つみに因よりて失うしなひしエデムを爾なんぢに因よりて復また之これを得えて、爾なんぢの爲ために樂たのしむ、爾なんぢは產さんの前まへにも產さんの後のちにも潔いさぎよき者ものなればなり。

又 イルモス 「海の猛獸はイオナを」。

無む慾よく無む形けいの智慧ちゑなるハリストス神かみは人ひとの智ち慧ゑ、卽すなはち神かみの性せいと肉體にくたいの麤笨あらきとを接合せつがふせしむる者ものに合あはせられ、變易へんえきなくして我われ全ぜん人じんと全まつたく合一がふいつになれり、十じふ字架じかに釘ていせられて、我われ陷おちいりたる全ぜん人じんに救すくひを賜たまはん爲ためなり。

昔むかしアダムは神かみたらんとする望のぞみに欺あざむかれて、躓つまづきて仆たふれたり。今いま言ことばに合あはせらるるに因よりて神成しんせいせられて興おき、苦くるしみに因よりて苦くるしみなきを得え、子ことして父ちゝ及および聖神せいしんと偕ともに寶はう座ざに坐ざして讚榮さんえいせらる。

生神女讚詞 義ぎを以もつて王わうたる神かみは無む原げんなる父ちゝの懷ふところを離はなれずして、潔いさぎよき少女せうぢよの懷ふところに入いり、先さきに母はゝなく生うまれし者ものは父ちゝなくして人體じんたいを取とり給たまふ、其その來歷らいれきは畏おそるべくして、悟さとり難がたく、言いひ難がたし。

又 イルモス 「今を限の淵は」。

永貞えいてい童女どうぢよよ、天てんの品ひん位ゐは僕ぼくとして爾なんぢの子この前まへに立たち、宜よろしきに合かなひて爾なんぢの種たねなき產さんを奇きとす、爾なんぢは產さんの前まへにも產さんの後のちにも潔いさぎよき者ものなればなり。

至いたりて潔いさぎよき者ものよ、先さきに無む形けいなる言ことば、其その旨むねを以もつて一切いつさいを行おこなひ、全能者ぜんのうしやとして無む形けいの軍ぐんを無むより有いうと爲なしし主しゆは爾なんぢより身みを取とり給たまへり。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、爾なんぢが生いのちを施ほどこす產さんにて敵てきは殺ころされ、地ぢ獄ごくは明あきらかに踐ふまれ、我われ等ら桎梏かせに在ある者ものは解とかれたり。故ゆゑに我われ呼よぶ、我わが心こゝろの慾よくを滅ほろぼし給たまへ。

小讚詞コンダク、第一調。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは神かみなるに因よりて光くわう榮えいの中うちに墓はかより復ふく活くわつし、世せ界かいをも共ともに復ふく活くわつせしめ給たまへり。人ひとの性せいは爾なんぢを神かみとして讚ほめ歌うたひ、死しは滅ほろぼされ、アダムは樂たのしみ、エワは今いま縛なはめより釋とかれて、歡よろこびて呼よぶ、ハリストスよ、爾なんぢは衆しゆう人じんに復ふく活くわつを賜たまふ主しゆなり。

同讚詞イコス  我われ等ら三みつ日目かめに復ふく活くわつせし主しゆを全能ぜんのうの神かみとして歌うたはん。彼かれは地ぢ獄ごくの門もんを破やぶり、古こ世せいよりの死し者しやを墓はかより起おこし、嘉よみせし如ごとく、攜香女けいかうぢよに現あらはれて、先まづ彼かれ等らに慶よろこべよと云いひ、獨ひとり生命いのちを施ほどこす主しゆとして、使徒等しとらに歡喜よろこびを報しらせ給たまへり。故ゆゑに女をんな等たちは信しんを以もつて門もん徒とに勝しよう利りの表章しるしを福音ふくいんし、地ぢ獄ごくは呻うめき、死しは泣なき、世せ界かいは樂たのしみ、衆しゆうは共ともに悅よろこぶ、蓋けだし爾なんぢは、ハリストスよ、衆しゆう人じんに復ふく活くわつを賜たまへり。

第七歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを見みて屬神ぞくしんの爐ゐろりと爲なす、蓋けだし先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみは、三人みたりの少者せうしやを救すくひし如ごとく、斯かく爾なんぢの腹はらに於おいて全ぜん世せ界かいを改あらため給たまへり。

地ちは畏おそれ、日ひは隱かくれ、光ひかりは暗くらみ、殿でんの神聖しんせいなる幔まくは裂さけ、石いしは碎くだけたり、義ぎなる者ものにして、先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみが十じふ字架じかに懸かゝり給たまへばなり。

爾なんぢは援助たすけなき者ものの如ごとくなりて、甘あまんじて我われ等らの爲ために傷きずつけられ、死しに付わたされたれども、萬よろづの者ものを釋とき、權能けんのうの手てを以もつて己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめ給たまへり、先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみなればなり。

生神女讚詞 常じやう生せいの水みづの泉いづみよ、慶よろこべ、樂たのしみの天堂てんだうよ、慶よろこべ、信者しんじやの垣かきよ、慶よろこべ、婚姻こんいんに與あづからざる者ものよ、慶よろこべ、全ぜん世せ界かいの歡喜よろこびよ、慶よろこべ、先せん祖ぞの崇あがめ讚ほめらるる神かみが爾なんぢに依よりて我われ等らに輝かゞやきたればなり。

又 イルモス 「偕に敬虔に養はれし少者は」。

昔むかし弟おとうとを殺ころしし手てに由よりてアワェリの血ちに赤あかく染そみたる地ちは詛のろはれたり、今いま爾なんぢの神かみたる血ちを注そゝがれ、祝しゆく福ふくせられて、樂たのしみて呼よぶ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

神かみに逆さかふイウデヤの民たみはハリストスを殺ころしし狂きやう暴ばうの爲ために泣なくべし、異い邦民はうみんは樂たのしみて、手てを拍うちて呼よぶべし、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

視みよ、輝かゞやける天てん使しは攜香女けいかうぢよに呼よべり、來きたりて、ハリストスの復ふく活くわつの表章しるしなる布ぬの及および墓はかを見みて呼よべ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

又 イルモス 「生神女よ、我等信者は爾を見て」。

生しやう神女しんぢよよ、イアコフは豫知よちして梯かけはしを爾なんぢなりと悟さとれり、蓋けだし先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみは、嘉よみせし如ごとく、爾なんぢに緣よりて地ちに現あらはれて、人人ひとびとと偕ともに住すまひ給たまへり。

潔いさぎよき者ものよ、慶よろこべ、爾なんぢより量はかり難がたき仁じん慈じに因よりて、實じつにアダムの皮ひ肉にく、卽すなはち我われ全まつたき人ひとを衣きたる牧者ぼくしやは出いで給たまへり、此これ先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみなり。

永遠えいゑんなる神かみは爾なんぢの潔いさぎよき血ちに由よりて實じつに新あらたなるアダムと爲なり給たまへり。彼かれに今いま我われ古ふるびたる者ものを新あらたにせんことを祈いのり給たまへ、蓋けだし我われ呼よぶ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

第八歌頌

イルモス イズライリの少者せうしやは爐ゐろりに在ありて、坩堝るつぼに在あるが如ごとく、敬虔けいけんの美うるはしきを以もつて黃こ金がねよりも明あきらかに輝かゞやきて云いへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

己おのれの旨むねに循したがひて萬物ばんぶつを造つくり、又また之これを變化へんくわし、己おのれの苦くるしみにて死しの蔭かげを易かへて永遠えいゑんの生命いのちと爲なす神かみの言ことばよ、我われ等ら悉ことごとくの造物ざうぶつは絕たえず爾なんぢを主しゆとして歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

ハリストスよ、爾なんぢは地ぢ獄ごくの門もん及および其その防固かための中うちに哀かなしみと苦くるしみとを滅ほろぼして、三みつ日目かめに墓はかより復ふく活くわつし給たまへり。悉ことごとくの造物ざうぶつは絕たえず爾なんぢを主しゆとして歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

生神女讚詞 種たねなくして性せいに超こえて神聖しんせいなる輝かゞやきに由よりて最いと貴たふとき眞珠しんじゆなるハリストスを生うみし者ものを歌うたひて呼よばん、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

又 イルモス 「露を出す爐」。

人人ひとびとよ、來きたりて、至し淨じやうなる足あしの立たちし處ところ、衆しゆう人じんの救すくひの爲ために木きの上うへにハリストスの生いのちを施ほどこす神聖しんせいなる手ての伸のべられし處ところに伏拜ふくはいして、生命いのちの墓はかを環めぐりて歌うたはん、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

神かみを殺ころししイウデヤ人じんの至いたりて不ふ法はふなる讒言ざんげんは露あらはれたり、蓋けだし彼かれ等らが惑まどはす者ものと名なづけし主しゆは有能いうのう者しやとして無智むちの封印ふういんを辱はづかしめて起おき給たまへり。故ゆゑに我われ等ら歡よろこびて歌うたはん、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

聖三者讚詞 至し淨じやうなるセラフィム等らは聖三せいさんの歌うたを以もつて惟一ゆゐいちの主しゆを讚さん美びして、僕ぼくに適かなふが如ごとく畏おそれを以もつて三さん位ゐの神性しんせいを讚榮さんえいす。彼かれ等らと偕ともに我われ等らも敬虔けいけんに歌うたはん、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

又 イルモス 「イズライリの少者は爐に在りて」。

新娶者はなむこの出いづる如ごとく、萬有ばんいうの主宰しゆさいハリストスが出いで給たまひし輝かゞやける宮みやを我われ等ら皆みな歌うたひて呼よばん、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

神かみの至し榮えいなる寶はう座ざよ、慶よろこべ、信者しんじやの垣かきよ、慶よろこべ、爾なんぢに依よりて幽暗くらやみに在ある者ものに光ひかりなるハリストスは輝かゞやけり。故ゆゑに彼かれ等ら爾なんぢを讚さん美びして呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

我われ等らの救すくひの起き原げん者しやなる主しゆを生うみし讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、衆しゆうの爲ために禱いのり給たまへ。蓋けだし皆みな切せつに呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、附唱と共に、「ヘルワィムより尊く」。

第九歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、燃もゆれども燒やかれぬ棘いばらは爾なんぢが潔いさぎよき產さんの象かたちを顯あらはせり。祈いのる、今いまも我われ等らを攻せめ圍かこむ誘惑いざなひの爐ゐろりを撲うち滅けして、常つねに爾なんぢを崇あがめさせ給たまへ。

嗚呼あゝ不ふ法はふ不ふ順じゆんの民たみよ、何なんぞ惡あしきを謀はかりて、不義ふぎ不ふ虔けんの者ものを義ぎと爲なし、義ぎなる光くわう榮えいの主しゆを木きに懸かけんことを定さだめたる。我われ等ら宜よろしきに合かなひて彼かれを崇あがめ讚ほむ。

救世主きうせいしゆ、世よの罪つみを任になひし玷きずなき羔こひつじよ、我われ等ら爾なんぢ三みつ日目かめに復ふく活くわつせし者ものを父ちゝ及および爾なんぢの神聖しんせいなる神しん゜と偕ともに讚榮さんえいし、光くわう榮えいの主しゆと傳つたへて崇あがめ讚ほむ。

生神女讚詞 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの尊たふとき血ちにて得えたる爾なんぢの民たみを救すくひ、皇くわう帝ていに敵てきに對たいして能力ちからを賜たまひ、爾なんぢの諸しよ敎けう會くわいに平安へいあんを與あたへ給たまへ、生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに因よりてなり。

又 イルモス 「我奇異にして至榮なる祕密」。

主しゆよ、爾なんぢの十じふ字架じかは爾なんぢの言いひ難がたき能力ちからに因よりて榮えいを獲えたり、蓋けだし爾なんぢの弱よわきは衆しゆうの爲ために力ちからに超こゆる者ものと顯あらはれたり。此これにて强つよき者ものは地ちに仆たふされたり、卑いやしき者ものは天てんに升のぼせらる。

ハリストスよ、畏おそるべき我われ等らの死しは殺ころされたり、蓋けだし爾なんぢは地ぢ獄ごくに在ある者ものに現あらはれて、死しよりの復ふく活くわつを賜たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを生命いのちと復ふく活くわつ、及および本原ほんげんの光ひかりと歌うたひて崇あがめ讚ほむ。

聖三者讚詞 無む原げん無む極きよくなる性せいは三みつの神元しんげんの位ゐに於おいて識しらる、父ちゝと、子こと、聖神せいしんとの中うちに惟一ゆゐいちの神性しんせいなり。敬虔けいけんなる皇くわう帝ていは之これを賴たのみて救すくはる。

又 イルモス 「生神女よ、燃ゆれども燒かれぬ棘」。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは神かみの先せん祖ぞたる預よ言者げんしやダワィドの根ねより生しやうぜり、然しかれども爾なんぢは實じつにダワィドにも榮えいを被かうむらせたり、預よ言げんせられし光くわう榮えいの主しゆを生うみたればなり。我われ等ら宜よろしきに合かなひて彼かれを崇あがめ讚ほむ。

嗚呼あゝ至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの光くわう榮えいの大おほいなるは凡およその讚さん美びの法はふに超こゆ。然しかれども女宰ぢよさいよ、寬くわん容ようにして爾なんぢの不ふ當たうなる諸僕しよぼくより愛あいを以もつて爾なんぢに捧さゝぐる讚歌ほめうたを受うけ給たまへ。

嗚呼あゝ智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの奇き蹟せきや、蓋けだし爾なんぢは、純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、獨ひとり日ひよりも輝かゞやきて、衆しゆうに爾なんぢの悟さとり難がたき產さんの新あらたなる奇き蹟せきを顯あらはし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

共頌カタワシヤの後のちに小聯禱。次ぎて主しゆ我われ等らの神かみは聖せいなり。三次。早課の差遣詞エクサポスティラリイ。

「凡そ呼吸ある者」に主日の讚頌スティヒラ、第一調。

句 彼かれ等らの爲ために記しるされし審判しんぱんを行おこなはん爲ためなり、斯この榮さかえは其その悉ことごとくの聖人せいじんに在あり。

百四十九聖詠を讀み畢りて此の末節を歌ふ。

ハリストスよ、我われ等ら爾なんぢが救すくひを施ほどこす苦くるしみを歌うたひ、爾なんぢの復ふく活くわつを讚榮さんえいす。

句 神かみを其その聖所せいしよに讚ほめ揚あげよ、彼かれを其その有いう力りよくの穹蒼おほぞらに讚ほめ揚あげよ。

十じふ字架じかを忍しのびて、死しを空むなしくし、死しより復ふく活くわつせし主しゆよ、我われ等らの生命いのちを平安へいあんならしめ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり全能ぜんのうの主しゆなればなり。

句 其その權能けんのうに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ、其その至いと嚴おごそかなるに依よりて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

地ぢ獄ごくを虜とりこにし、爾なんぢの復ふく活くわつにて人ひとを復ふく活くわつせしめしハリストスよ、我われ等らに潔いさぎよき心こゝろを以もつて爾なんぢを歌うたひ、爾なんぢを讚榮さんえいするに堪たへさせ給たまへ。

句 角らつぱの聲こゑを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、琴きんと瑟しつとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

ハリストスよ、我われ等ら爾なんぢが神かみに合かなふ寬くわん容ようを讚榮さんえいして、爾なんぢを歌うたふ。爾なんぢは童貞女どうていぢよより生うまれて、父ちゝに離はなれざりき、人ひととして苦くるしみを受うけ、甘あまんじて十じふ字架じかを忍しのび、宮みやより出いづるが如ごとく墓はかより復ふく活くわつし給たまへり、世せ界かいを救すくはん爲ためなり。主しゆよ光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

又讚頌スティヒラ、アナトリイの作、同調。

句 皷つゞみと舞まひとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、絃いとと簫せうとを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ。

爾なんぢが十じふ字架じかの木きに釘ていせられし時とき、敵てきの權けんは滅ほろぼされ、造物ざうぶつは爾なんぢを畏おそるるに因よりて戰ふるひ、地ぢ獄ごくは爾なんぢの力ちからにて虜とりこにせられたり。爾なんぢは死し者しやを墓はかより復ふく活くわつせしめ、盜賊たうぞくの爲ために樂園らくゑんを開ひらき給たまへり。ハリストス我わが神かみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 和くわ聲せいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、大聲たいせいの鈸ばつを以もつて彼かれを讚ほめ揚あげよ、凡およそ呼吸いきある者ものは主しゆを讚ほめ揚あげよ。

尊たふとき女をんな等たちは泣なきて急いそぎて爾なんぢの墓はかに詣いたり、墓はかの開ひらけたるを觀み、天てん使しより新あらたなる至し榮えいの奇き蹟せきを知しりて、使徒等しとらに報しらせて云いへり、主しゆは復ふく活くわつして、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまへり。

句 主しゆ我わが神かみよ、起おきて爾なんぢの手てを擧あげよ、苦くるしめらるる者ものを永ながく忘わするる毋なかれ。

ハリストス神かみよ、我われ等らは爾なんぢの苦くるしみの神聖しんせいなる傷きず、又またシオンに在ありし主宰しゆさいの聖せい務む、世よの末すゑに神妙しんめうに現あらはれし者ものに伏拜ふくはいす、蓋けだし爾なんぢ義ぎの日ひは幽暗くらやみに寢いぬる者ものを照てらして、暮くれざる光ひかりに向むかはしめ給たまへり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆよ、我われ心こゝろを盡つくして爾なんぢを讚ほめ揚あげ、爾なんぢが悉ことごとくの奇き蹟せきを傳つたへん。

亂らんを好このむエウレイの族ぞくよ、耳みゝを傾かたぶけよ、ピラトに來きたりし者もの等らは何處いづこにか在ある、守まもる兵卒へいそつは言いふべし、墓はかの印いんは何處いづこにか在ある、葬はうむられし者ものは何處いづこにか移うつされたる、賣うられぬ者ものは何處いづこにか賣うられたる、寶たからは如何いかんぞ盜ぬすまれたる。不ふ法はふなるイウデヤ人じんは何なんぞ救世主きうせいしゆの起おくるを讒言ざんげんする。死し者しやの中うちに自じ由いうなる者ものは復ふく活くわつして、世せ界かいに大おほいなる憐あはれみを賜たまふ。

光榮 早課の福音の讚頌スティヒラ。

今も 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは至いたりて讚さん美びたる者ものなり、爾なんぢに身みを取とりし主しゆは地ぢ獄ごくを虜とりこにし、アダムを喚よび起おこし、詛のろひを壞やぶり、エワを釋ゆるし、死しを滅ほろぼし、我われ等らを生いかせり。故ゆゑに我われ等ら歌うたひて呼よぶ、斯かく行おこなひ給たまひしハリストス神かみは崇あがめ讚ほめらる、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

大詠頌。次ぎて復活の讚詞トロパリ。

今いま救すくひは世せ界かいに及およべり。我われ等ら墓はかより復ふく活くわつせし吾わが生命いのちの首かしらなる主しゆに歌うたふ、其その死しにて死しを滅ほろぼし、我われ等らに勝しよう利りと大おほいなる慈じ憐れんとを賜たまへばなり。

發放詞

 主日の聖体礼儀に

聖體禮儀リトゥルギヤには代式の眞福詞、第一調。

敵てきは食しよく物もつを以もつてアダムを樂園らくゑんより引ひき出いだし、ハリストスは十じふ字架じかを以もつて盜賊たうぞくを其中そのうちに入いれ給たまへり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを懷おもひ給たまへと呼よべばなり。

句 心こゝろの淸きよき者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみを見みんとすればなり。

我われ爾なんぢの苦くるしみに伏拜ふくはいし、アダム及および盜賊たうぞくと共ともに復ふく活くわつを讚揚さんやうし、朗ほがらかなる聲こゑにて爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを憶おもひ給たまへ。

句 和わ平へいを行おこなふ者ものは福さいはひなり、彼かれ等ら神かみの子こと名なづけられんとすればなり。

罪つみなき者ものよ、爾なんぢは甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせられて、墓はかに藏をさめられたれども、神かみなるに由よりて復ふく活くわつし、アダムを己おのれと偕ともに起おこし給たまへり、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを懷おもひ給たまへと呼よべばなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの者ものなればなり。

爾なんぢの肉體にくたいの殿でんを三みつ日目かめの葬はうむりの後のちに復ふく活くわつせしめしハリストス神かみよ、爾なんぢはアダムとアダムよりする者ものとを己おのれと偕ともに復ふく活くわつせしめ給たまへり、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われ等らを憶おもひ給たまへと呼よべばなり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

ハリストス神かみよ、攜香女けいかうぢよは淚なみだを垂たれて、朝あさ早はやく爾なんぢの墓はかに來きたりしに、白しろき衣ころもを着きて坐ざせる天てん使しに逢あひたり、彼かれは呼よべり、何なにを尋たづぬるか、ハリストス復ふく活くわつせり、今いまより泣なく勿なかれ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

主しゆよ、爾なんぢの使徒しとは命めいぜられし山やまに來きたり、爾なんぢ救世主きうせいしゆを見みて伏拜ふくはいせり。爾なんぢ彼かれ等らを萬民ばんみんに敎をしへを傳つたへ、洗禮せんれいを授さづけん爲ために遣つかはし給たまへり。

光榮 聖三者讚詞 我われ等ら父ちゝに伏拜ふくはいし、子こを讚榮さんえいし、聖神せいしんを共ともに讚さん頌しようして、呼よびて云いはん、至し聖せいなる三者さんしやよ、我われ等ら衆しゆう人じんを救すくひ給たまへ。

今も ハリストスよ、爾なんぢの民たみは祈き禱たうの中うちに爾なんぢの母はゝを轉達てんたつとして爾なんぢに捧さゝぐ。仁じん慈じなる主しゆよ、彼かれの禱いのりに因よりて爾なんぢの惠めぐみを我われ等らに垂たれて、爾なんぢ墓はかより我われ等らに輝かゞやきし主しゆを讚榮さんえいせしめ給たまへ。

提綱ポロキメン、第一調。

主しゆよ、我われ等ら爾なんぢを賴たのむが如ごとく、爾なんぢの憐あはれみを我われ等らに垂たれ給たまへ。

句 義ぎ人じんよ、主しゆの爲ために喜よろこべ、讚榮さんえいするは義ぎ者しやに適かなふ。

「アリルイヤ」、願ねがはくは我わが爲ために仇あだを復かへし、我われに諸民しよみんを從したがはしむる神かみは讚さん頌しようせられん。

句 大おほいなる救すくひを王わうに施ほどこし、憐あはれみを爾なんぢの膏あぶらつけられし者ものダワィド、及および其その裔すゑに世世よよに垂たるる者ものよ、我われ爾なんぢの名なに歌うたはん。

 主日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に主宰に奉る傷感の讚頌スティヒラ、第一調

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

全能ぜんのうの主しゆよ、爾なんぢは仁じん慈じに因よりて爾なんぢの言ことばと神しん゜とを以もつて萬物ばんぶつを出いだし、次つぎに我われ靈れい智ちなる生物いきものを造つくり給たまへり、我わが爾なんぢの聖せいなる名なを讚榮さんえいせん爲ためなり。然しかれども我われは却かへりて我わが耻はづべき行おこなひを以もつて常つねに之これを瀆けがす。祈いのる、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

不ふ當たうなる靈たましひよ、爾なんぢの神聖しんせいなる良りやう族ぞくと不ふ朽きうなる本國ほんごくとを知しりて、善行ぜんかうを以もつて恒つねに之これに到いたらんことを務つとめよ。朽きう壞くわいする者ものは一いつも爾なんぢを誘いざなふべからず、爾なんぢは上うへに屬ぞくす、肉體にくたいは塵ちりにして朽くつ、下しもなる者ものは上かみなる者ものに勝かつべからず。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

吾わが至いたりて不ふ當たうなる靈たましひよ、至し仁じんなる主しゆに詣いたり、熱あつき淚なみだを以もつて之これに就つき、爾なんぢの行おこなひし事ことを審判しんぱんより前まへに悉ことごとく告解こくかいし、主しゆが未いまだ爾なんぢの爲ために門もんを閉とぢざる前さきに、造成主ざうせいしゆを己おのれの爲ために慈じ憐れんの者ものと爲なして、赦免ゆるしを獲えよ。

又無形軍の讚頌スティヒラ

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

無む形けいの諸天しよてん使し、神かみの寶はう座ざの前まへに立たち、彼處かしこの光ひかりに照てらされて、常つねに光ひかりを放はなつ第だい二にの光ひかりたる者ものよ、我わが靈たましひに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはんことをハリストスに祈いのり給たまへ、

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

第一だいいちの生命いのちより實じつに滅ほろびざる生命いのちを受うけし不死ふしの諸天しよてん使しよ、爾なんぢ等らは永在えいざいの光くわう榮えい及および永久えいきうの睿えい智ちの至し福ふく至し聖せいなる實見者じつけんしやと爲なりて、光ひかりに滿みたされて、至いたりて明あきらかなる燈ともしびと現あらはる。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

天てん使し首しゆ、差さ役えき、首しゆ領りやう、寶はう座ざ、主しゆ制せい、六翼りくよくのセラフィム、神聖しんせいなる多た目もくのヘルワィム、智慧ちゑの器うつはたる者もの、能のう力りよく、及および至いたりて神聖しんせいなる權柄けんぺいよ、我わが靈たましひに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはんことをハリストスに祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 無む玷てんなるマリヤ、凡およその智慧ちゑに超こえて神かみの母はゝと爲なりし至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの至いたりて能力ちからある轉達てんたつを以もつて、我われ多おほくの罪つみに圍かこまれて狹せばめらるる者ものを痛つう悔くわいの廣ひろきに向むかはしめ給たまへ、爾なんぢは能よくせざる所ところなき主しゆの母はゝとして、之これを能よくすればなり。

次ぎて「穩なる光」。其後提綱ポロキメン、主しゆの諸僕しよぼく、夜や中ちゆう主しゆの家いへに立たつ者ものよ、今いま主しゆを崇あがめ讚ほめよ。句、爾なんぢの手てを擧あげ、聖所せいしよに向むかひて主しゆを崇あがめ讚ほめよ。

次ぎて「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。及び聯禱。

次ぎて挿句くづけに傷感の讚頌スティヒラ、第一調。

救世主きうせいしゆよ、我わが罪つみの淵ふちは深ふかし、我われ罪惡ざいあくの爲ために甚はなはだしく沈しづめらるるに因よりて、ペトルに於おけるが如ごとく、神かみよ、我われに手てを授さづけて、我われを救すくひ、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

神かみ救世主きうせいしゆよ、我われ惡あしき思おもひと行おこなひとに於おいて定罪ていざいせられしに因よりて、我われに反正はんせいの意い念ねんを與あたへて、爾なんぢに呼よばしめ給たまへ、仁じん慈じなる恩主おんしゆよ、我われを救すくひ、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らょ憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり。我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

主しゆよ、衆しゆう聖人せいじん及および生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢの平安へいあんを我われ等らに與あたへ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり仁じん慈じの廣ひろき主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 天てんの品ひん位ゐの歡喜よろこび、地ち上じやうに人人ひとびとの堅けん固ごなる轉達てんたつ、至いたりて潔いさぎよき生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢに趨はしり附つく我われ等らを救すくひ給たまへ、我われ等ら神かみに亞つぎて爾なんぢに憑恃たのみを負おはせたればなり。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ。光榮、今も、生神女讚詞。其後聯禱、及び發放詞。

 主日の晩堂課

司祭誦す、「我等の神は恒に崇め讚めらる」。誦經者、「アミン」。我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。「天の王」。其他常例の如し。

次ぎて至聖なる生神女に奉る祈禱の規程カノン、第一調。

第一歌頌

イルモス 死しせざる主しゆよ、勝かちを獲うる爾なんぢの右みぎの手ては、神かみに適かなふが如ごとく、能力ちからにて光くわう榮えいを顯あらはせり、其その全能ぜんのうなるに因よりて、敵てきを滅ほろぼし、イズライリ人じんの爲ために新あらたなる深水ふかみの路みちを開ひらきたればなり。

至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢは言いひ難がたく神かみを孕はらみ、性せいに超こえて地ちの者ものを諸罪しよざいより救すくふ主しゆを生うみ給たまへり。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、我われを多おほくの罪つみより脫のがれしめ給たまへ。

我われ無む數すうの罪つみに因よりて憂患うれひ及および菑害わざはひの海うみに沈しづめらる。純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの力ちからある嚮きやう導だうと祈き禱たうとを以もつて我われを痛つう悔くわいの神聖しんせいなる平穩へいをんに向むかはしめ給たまへ。

光榮 吾わが生しやう涯がいの守しゆ護ご者しやたる潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、我われを多おほくの菑害わざはひより救すくひ、我われを將しやう來らいの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ、我わが感謝かんしやの歌うたを爾なんぢに奉たてまつらん爲ためなり。

今も 造成主ざうせいしゆ及および贖しよく罪主ざいしゆ吾わが神かみの純じゆん潔けつなる母はゝよ、間斷たえまなき誘惑いざなひと患くわん難なんの暴風あらしとを鎭しづめて、我われに拯救すくひの恩おん寵ちようと潔淨きよめとを與あたへ給たまへ。

第三歌頌

イルモス 獨ひとり人ひとの性せいの弱よわきを知しりて、憐あはれみを以もつて之これを衣きたる者ものよ、我われに上うへよりの力ちからを帶おびて、爾なんぢに呼よばしめ給たまへ、人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいの生いける宮みやは聖せいなり。

生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢの潔いさぎよき像すがたの顯見あらはれは、諸天しよてん使しには愛あいすべく、人人ひとびとには救すくひを施ほどこし、惡あく鬼きには畏おそるべし。我われ等ら信しんを以もつて之これを尊たふとみ、接吻せつぷんして、靈たましひを光くわう照せうす。

純じゆん潔けつなる者ものよ、造成者ざうせいしや及および主しゆは爾なんぢの童貞どうていの血ちを以もつて己おのれの肉體にくたいを造つくり給たまへり。彼かれに我われ不ふ當たうなる行おこなひに因よりて朽くちたる者ものを其その言いひ難がたき慈じ憐れんを以もつて宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

光榮 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われ爾なんぢを生命いのちの守しゆ護ご者しや及および壞やぶられぬ垣かきとして獲えて、禱いのる、終をはりの後のちにも我わが爲ために庇護ひご及および勝かたれぬ保護ほご者しやと爲なりて、我われを神かみの前まへに攜たづさへ、我われに永遠えいゑんの生命いのちと光くわう榮えいとを與あたへ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢの胎孕はらみは種たねなく、產さんは不ふ朽きうなり、生うまれし者ものは人ひとの墜おちたる性せいを喚よび起おこす神かみなればなり、故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを實まことの生しやう神女しんぢよとして崇あがめ歌うたふ。

第四歌頌

イルモス アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢ、神かみの恩おん寵ちように覆おほはるる山やまを見みて、イズライリの聖せいなる者ものが我われ等らを救すくひ改あらためん爲ために、爾なんぢより出いづるを預よ言げんせり。

敵てきの行動かうどうと惡あしき風習ならはしとに因よりて止とゞめ難がたき進行すゝみは我われを惡あくに引ひく。女宰ぢよさいよ、我われを助たすけ給たまへ、凶きよう惡者あくしやが終をはりに至いたるまで我われを攻擊こうげきして、死しを以もつて我われに痛つう悔くわいの途みちを斷たたざらん爲ためなり。

我われ放蕩はうたうと罪過ざいくわとに我わが生命いのちの時ときを費つひやせり、今いまも諸慾しよよくは我わが卑いやしき靈たましひを此これ等らに引ひく。神かみを生うみし童貞女どうていぢよよ、我われを助たすけ給たまへ。

光榮 純じゆん潔けつなる者ものよ、我われの憂うれひの聲こゑ、我わが靈たましひの深ふか處みより嘆息たんそくして爾なんぢに揚あぐる者ものを聽ききて、我われ不ふ當たうの者ものが思念おもひと無智むちなる風習ならはしとを以もつて行おこなひし罪債おひめの赦ゆるしを我われに與あたへ給たまへ。

今も 世せ界かいの女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我われを助たすけ給たまへ。最いと凶きよう惡あくなる敵てきは我われを神かみより離はなす惡あしき記き憶おくと思念おもひとを以もつて甚はなはだしく我われを惱なやます。我われを棄すつる毋なかれ、遺のこす毋なかれ。

第五歌頌

イルモス 己おのれの降臨かうりんの光ひかりにて世せ界かいの極はてを照てらし、己おのれの十じふ字架じかにて之これを輝かゞやかししハリストスよ、爾なんぢが智慧ちゑの光ひかりにて正たゞしく爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろを照てらし給たまへ。

視みよ、我われ救すくひの爲ために備そなはりたる佑助たすけを獲えたり。故ゆゑに爾なんぢに俯ふ伏ふくして、淚なみだと共ともに呼よぶ、生しやう神女しんぢよよ、我われを敵てきの矢や及および將しやう來らいの詰問きつもんより脫のがれしめ給たまへ。

至し聖せいなる生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは我われの防固かためなり、爾なんぢは我われの美譽ほまれと、歡喜よろこびと、守しゆ護ご者しや、我われの防護ふせぎと、避所かくれがと、勝かたれぬ轉達者てんたつしやなり。故ゆゑに爾なんぢの僕ぼくを救すくひ給たまへ。

光榮 至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、諸慾しよよくに汚けがされたる我わが不ふ當たうなる靈たましひを爾なんぢの神聖しんせいなる祈き禱たうの淸灑そゝぎを以もつて淨きよめて、之これに爾なんぢの救すくひの光くわう潔けつなる衣ころもを與あたへ給たまへ。

今も ハリストス神かみの母はゝよ、爾なんぢは我わが生命いのちに於おいて我われの爲ために堅けん固ごなる舵師かぢとりにして、我われを多おほくの攻擊こうげきの騷擾あらだちより脫のがれしむ。爾なんぢに祈いのる、我わが逝世せいせいの時ときにも現あらはれて我われを救すくひ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの淵ふちは我われ等らを圍かこめり、脫のがれしむる者ものなし、我われ等らは屠と所しよの羊ひつじの如ごとし。吾わが神かみよ、爾なんぢの民たみを救すくへ、爾なんぢは弱よわる者ものの力ちからと更新あらためなればなり。

聘女よめならぬ聘女よめ、至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、爾なんぢの手てを我われに伸のべて、我われ至いたりて不ふ當たうなる者ものが無智むちと我わが靈たましひの慾よくとを以もつて蓄たくはへたる諸惡しよあくの深處ふかみより我われを引ひき出いだし給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、立たちて、爾なんぢの僕ぼく、其その憑恃たのみを神かみと共ともに爾なんぢの勝かたれぬ保護ほごに負おはしむる者ものを助たすけ給たまへ、敵てきが力ちからを獲えて、我われを執とらへて滅ほろぼさざらん爲ためなり。

光榮 病やむ者ものの醫師いし、墜おつる者ものの興起おこり、罪つみを犯おかす者ものの潔淨きよめたる生しやう神女しんぢよよ、我われ爾なんぢに祈いのり、淚なみだと共ともに俯ふ伏ふくして爾なんぢに呼よぶ、有能いうのうなるに因よりて、親みづから我われ兦ほろぶる者ものを救すくひ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、我われの卑いやしき靈たましひを憐あはれみ、急いそぎて之これを凶きよう惡者あくしやより出いだし給たまへ、蓋けだし彼かれは務つとめて、我わが多おほくの怠惰おこたりの爲なしし諸しよ惡あくに因よりて、之これを淵ふちに墜おとさんと欲ほつす。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第一調

潔いさぎよき永貞えいてい童女どうぢよよ、我われ等ら爾なんぢを主しゆに禱いのる者ものとして獲えて、爾なんぢの聖せい殿でんに趨はしり附つきて、爾なんぢに援助たすけを乞こふ。我われ等ら爾なんぢを讚さん美びする者ものを惡あく鬼きの奸計かんけいと、苛苦くるしめと、畏おそるべき定罪ていざいより救すくひ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを見みて屬神ぞくしんの爐ゐろりと爲なす、蓋けだし先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみは、三人みたりの少者せうしやを救すくひし如ごとく、斯かく爾なんぢの腹はらに於おいて全ぜん世せ界かいを改あらため給たまへり。

惟一ゆゐいち無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢは主宰しゆさいの爲ために神聖しんせいなる幕まくと爲なりて、之これを胎たいに孕はらみ、之これを身みにて生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等らを諸もろもろの慾よくと疾病やまひと、憂患うれひと、罪債おひめより救すくひ給たまへ、多おほくの權けんと能ちからとを有たもち給たまへばなり。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、我わが至いたりて不ふ當たうなる靈たましひの堪たへ難がたき痛いたみを止とゞめ、我わが多おほくの罪つみの濁にごれる浪なみを涸からして、眞まことの歡喜よろこびを我われに予あたへ給たまへ、爾なんぢは我われの爲ために避所かくれが及および拯救すくひなればなり。

光榮 女宰ぢよさいよ、我われ救すくひの憑恃たのみを悉ことごとく爾なんぢに負おはせたり。蓋けだし爾なんぢを扶助たすけと、折をられぬ柱はしらと、堅固かためと、動うごきなき基もとゐとして獲えて、爾なんぢに依よりて國くにを受うけんことを望のぞむ。

今も 潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、爾なんぢは光くわう榮えいの日ひの曙あけぼのと爲なれり。爾なんぢに緣よりて現あらはれし者ものは衆しゆうを幽暗くらやみと、無智むちと、惡臭あくしうの諸罪しよざいより解とき給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、外ほかの暗やみより我われを解とき給たまへ。

第八歌頌

イルモス イズライリの少者せうしやは爐ゐろりに在ありて、坩堝るつぼに在あるが如ごとく、敬虔けいけんの美うるはしきを以もつて黃こ金がねよりも明あきらかに輝かゞやきて云いへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

生しやう神女しんぢよよ、諸惡しよあくの動揺うごきは甚はなはだしく我わが靈たましひを擾みだす。穩靜をんせいと平安へいあんとの起き原げん者しや及および賦予ふよ者しやを生うみし潔いさぎよき者ものよ、我われを平安へいあんに治をさめて、穩靜をんせいなる喜よろこびと樂たのしみとに滿みたし給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは救世主きうせいしゆ、萬有ばんいうの主宰しゆさいを生うみて、我われ等らの爲ために救すくひの轉達者てんたつしやと現あらはれたり。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、我われの卑微ひびなる靈たましひを救すくひに堪たへさせて、正たゞしく爾なんぢを萬世ばんせいに讚さん頌しようせしめ給たまへ。

光榮 萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ神かみを言いひ難がたく孕はらみし者ものよ、我われを朽きう壞くわいと諸もろもろの誘惑いざなひより救すくひて、常つねに呼よばしめ給たまへ、其その悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ神かみを生うみ給たまへり。彼かれに祈いのりて、絕たえず爾なんぢの光くわう榮えいを歌うたふ者ものの諸罪しよざいを潔きよめて、之これに憂愁いうしうと艱難かんなん、定罪ていざいと永火えいくわよりの救すくひを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、燃もゆれども燒やかれぬ棘いばらは爾なんぢが潔いさぎよき產さんの象かたちを顯あらはせり。祈いのる、今いまも我われ等らを攻せめ圍かこむ誘惑いざなひの爐ゐろりを撲うち滅けして、常つねに爾なんぢを崇あがめさせ給たまへ。

純じゆん潔けつなる神かみの母はゝよ、爾なんぢの慈じ憐れんなる懷ふところを我わが爲ために啓ひらきて、我われを擾みだして滅ほろぼさんと謀はかる無む形けいの狼おほかみの口くちより逃のがれしめ給たまへ。祈いのる、我われ爾なんぢの僕ぼくを憐あはれみ、辱はぢを蒙かうむりて歸かへらしむる毋なかれ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、我わが生しやう涯がいの保護ほご者しや及および堅けん固ごなる防禦ふせぎと爲なりて、我われを多おほくの災禍わざはひと憂患うれひより脫のがれしめ、又また我われを永遠えいゑんの火ひより救すくひ給たまへ。

光榮 獨ひとり病びやう者しやの醫治いやし、獨ひとり陷おちいりし者ものの提起おこし、獨ひとり神かみに導みちびく嚮きやう導だう者しや、獨ひとり永福えいふくの代求だいきう者しやたる女宰ぢよさいよ、我われ獨ひとり衆しゆうに超こえて罪つみを犯おかしし者ものを憐あはれみ給たまへ。

今も 生しやう神女しんぢよ、讚さん美びたる女宰ぢよさいよ、今いま我われの淚なみだと共ともに奉たてまつる禱いのりを受うけて、我わが行おこなひし諸罪しよざい諸惡しよあくの赦ゆるしを與あたへ給たまへ、我われ甚はなはだしき失望しつばうに因よりて全まつたく滅ほろぶればなり。

次ぎて「常に福にして」。其他常例の如し、及び發放詞。

月曜日

 月曜日の早課

第一の誦文の後に傷感の坐誦讚詞セダレン、第一調。

不ふ法はふに於おいて妊はらまれたる我われ放蕩はうたうの者ものは敢あへて天てんの高たかきを仰あふぐを得えず。唯たゞ爾なんぢの仁愛じんあいを恃たのみて呼よぶ、神かみよ、我われを潔きよめ、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

若もし義ぎ者しや僅わづかに救すくひを得えば、我われ罪人ざいにんは何處いづこにか立たたん。我われ終しゆう日じつの苦く勞らうと暑あつさとを忍しのばざりき。然しかれども神かみよ、我われを第十一だいじふいち時じの傭やとひ工びとに加くはへて、我われを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよ、天てんには祝しゆく福ふくせられ、地ちには讚榮さんえいせらるる聘女よめならぬ聘女よめよ、慶よろこべ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第一調。

救世主きうせいしゆよ、急いそぎて父ちゝの懷ふところを我わが爲ために啓ひらき給たまへ、我われ爾なんぢの洪恩こうおんの費つひやされぬ富とみを見みて、放蕩はうたうに我わが生いのちを費つひやせり。今いま我われの貧まづしくなりたる心こゝろを棄すつる毋なかれ、蓋けだし我われ傷しやう感かんの情じやうを以もつて爾なんぢに呼よぶ、主しゆよ、我われ爾なんぢの前まへに罪つみを獲えたり、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

至いたりて義ぎなる審判者しんぱんしやよ、爾なんぢの審判しんぱん座ざは畏おそるべく、審判しんぱんは義ぎなり、我わが行おこなひは甚はなはだ惡あし。慈じ憐れんなる主宰しゆさいよ、爾なんぢ憐あはれみて我われを救すくひ、苦くるしみを免まぬかれしめ、左ひだりの分ぶんより脫のがれしめて、爾なんぢの右みぎに立たつに堪たへさせ給たまへ。

次ぎて致命者讚詞。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

主しゆよ、光くわう榮えいなる受難者じゆなんしやは爾なんぢより苦くるしみの報はう賞しやうたる尊たふとき榮えい冠くわんにて飾かざられたり、蓋けだし瘡痍きずを忍しのぶを以もつて不ふ法はふの者ものに勝かち、神聖しんせいなる能力ちからを以もつて天てんより勝しよう利りを獲えたり。救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて我われをも見みえざる敵てきより脫のがれしめて、我われを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我わが不ふ當たうなる靈たましひを治をさめ、其その罪つみの多おほきに因よりて淪滅ほろびの深處ふかみに跌つまづきしを憐あはれみ、畏おそるべき死しの時ときにも我われを罪つみする惡あく鬼きと凡およその苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

又坐誦讚詞セダレン、第三の「カフィズマ」の誦文の時。第一調。

至いたりて洪恩こうおんなる主しゆよ、我われ無智むちにして爾なんぢより離はなれ、常つねに無智むちの慾よくに役えきして、放蕩はうたうに吾わが生いのちを費つひやせり。慈じ憐れんなる父ちゝよ、諸天しよてん使しの祈き禱たうに因よりて、我われを蕩たう子しの如ごとく受うけて、我われを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 無む形けいの軍ぐんに超こゆる少女せうぢよ、天てんの品ひん位ゐに勝まさりて獨ひとり彼かれ等らより宜よろしきに合かなふ讚さん美びを受うくる純じゆん潔けつなる者ものよ、諸天しよてん使しと偕ともに爾なんぢの子こに、我われ獨ひとり定罪ていざいせられし者ものが諸慾しよよくの苛虐くるしめより救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

傷感の規程カノン、其冠詞は、言よ、我が諸罪の汚を滌ひ給へ。イオシフ師の作。第一調。

第一歌頌

イルモス 死しせざる主しゆよ、勝かちを獲うる爾なんぢの右みぎの手ては、神かみに適かなふが如ごとく、能力ちからにて光くわう榮えいを顯あらはせり、其その全能ぜんのうなるに因よりて、敵てきを滅ほろぼし、イズライリ人じんの爲ために新あらたなる深水ふかみの路みちを開ひらきたればなり。

ハリストスよ、爾なんぢに祈いのる、我わが罪つみの多おほきを爾なんぢの慈じ憐れんの多おほきに因よりて滅ほろぼして、我われに反正はんせいの念おもひを與あたへ給たまへ、我わが智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの仁じん慈じを讚榮さんえいせん爲ためなり。

神かみの言ことばよ、爾なんぢは慈じ憐れんの多おほきに因よりて、地ちに肉體にくたいを取とりし人ひとと現あらはれ給たまへり。故ゆゑに人ひとに超こえて罪つみを犯おかしし我われ、今いま痛つう悔くわいを以もつて爾なんぢの洪恩こうおんに俯ふ伏ふくする者ものを受うけ給たまへ。

次ぎて致命者讚詞 讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは甘あまんじて苦くるしみを受うけしハリストスの苦く難なん及および死しに效ならひて、多た種しゆの苦く難なんと死しとを忍しのべり。故ゆゑに常つねに光くわう榮えいなる者ものよ、爾なんぢ等らは不死ふしの生命いのちを受うけ給たまへり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは神聖しんせいなる愛あいの火ひを盛さかんに己おのれの衷うちに有たもちて、火ひを畏おそれず、苦く難なんの熱切ねつせつなる忍耐にんたいにて多た神しんの凡およその物質ぶつしつを燒やき盡つくせり。

生神女讚詞 讚さん美びたる童貞女どうていぢよ、神かみの聘女よめよ、無む形けいの者ものの品ひん位ゐは我われ等らと共ともに爾なんぢを歌か頌しようす、蓋けだし爾なんぢは限かぎられぬ者ものを爾なんぢの腹はらに身みを取とりし者ものとして生うみて、產さんの前まへの如ごとく童貞女どうていぢよに止とゞまり給たまへり。

又無形軍の規程カノン、其冠詞は、諸天使に奉る第一の歌。フェオファン師の作。第一調。

第一歌頌

同「イルモス」

主宰しゆさいの寶はう座ざの前まへに嚴おごそかに立たつ至し聖せいなる天てん使しよ、父ちゝと同どう無む原げんの者もの、其その大おほいなる議事ぎじの使し者しやに、我われ爾なんぢ等らを歌うたふ者ものに言ことばを嘘ふき入いれんことを祈いのり給たまへ。二次。

神元しんげんなる光ひかりの鏡かゞみ、三日さんじつの燈ともしびの輝煌かゞやきを、悟さとり得うるに循したがひて、己おのれの衷うちに受うくる天てん使しの品ひん位ゐを、神かみの智慧ちゑは先まづ思念おもひに置おきて、造成ざうせいし給たまへり。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、神かみとして上うへなる軍ぐんの首しゆ品ひんを飾かざりし者ものは婚姻こんいんに與あづからざる爾なんぢの腹はら、セラフィムより上うへなる者ものに入いりて、變易へんえきなくして肉體にくたいと成なり給たまへり。

第三歌頌

イルモス 獨ひとり人ひとの性せいの弱よわきを知しりて、憐あはれみを以もつて之これを衣きたる者ものよ、我われに上うへよりの力ちからを帶おびて、爾なんぢに呼よばしめ給たまへ、人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいの生いける宮みやは聖せいなり。

嗚呼あゝ靈たましひよ、起たちて行ゆき、爾なんぢの造成主ざうせいしゆ、爾なんぢの隱ひそかなる事ことを一切いつさい知しる者ものの前まへに呼よびて、痛つう悔くわいの果みを示しめせ、洪恩こうおんの主しゆが爾なんぢを憐あはれみて、永遠えいゑんの火ひより救すくはん爲ためなり。

獨ひとり仁じん慈じなる主しゆよ、我われ稅ぜい吏りの如ごとく畏おそれを以もつて爾なんぢに呼よぶ、我われを潔きよめ、潔きよめて救すくひ給たまへ、我われ罪つみの多おほきに引ひかれ、罪惡ざいあくの重おもきに屈かゞめられ、無む量りやうの耻はぢに滿みたされたり。

致命者讚詞 眞まことの智慧ちゑと知ち識しきとに滿みたされたる致ち命者めいしやはエㇽリンの智慧ちゑを愚ぐと爲ならしめ、其その智慧ちゑの奸惡よこしまを滅ほろぼし、勇いさましく苦くるしみを忍しのびて、宜よろしきに合かなひて勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけて喜よろこぶ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやは性せいに於おいて惟一者ゆゐいちしや、位ゐに於おいて三者さんしやを承うけ認みとめて、神聖しんせいなる信しんを以もつて多た神しんの迷まよひを滅ほろぼし、燈ともしびと現あらはれて、恩おん寵ちようの光くわう線せんにて衆しゆう人じんの心こゝろを照てらし給たまふ。

生神女讚詞 至し聖せい至し潔けつなる神かみの聘女よめよ、爾なんぢは聖者せいしやの中うちに息いこふ者もの、父ちゝと同どう無む原げんなる子こ及および言ことば、敬虔けいけんに彼かれを讚榮さんえいする者ものを聖神せいしんを以もつて聖せいにする主しゆを潔いさぎよく生うみ給たまへり。

又 同「イルモス」

神元しんげんの光ひかりに直たゞちに近ちかづくセラフィム等らは優ゆたかに之これに饜あかせられ、其その受うけたる元始はじめの光明くわうみやうにて盛さかんに輝かゞやきて、第だい二にの光ひかりと現あらはる。二次。

信者しんじやよ、我われ等ら諸天しよてん使しの光明くわうみやうを歌うたはんと欲ほつして、淸きよき智慧ちゑ、潔いさぎよき口くちを以もつて彼かれ等らに由よりて神かみより賜たまはる佑助たすけを切せつに求もとめん、願ねがはくは我われ等らは其その光くわう照せうを受うけん。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、永在えいざいの智慧ちゑを宜よろしきに合かなひて悟さとるを得えたるガウリイルは欣よろこばしき報信おとづれを爾なんぢに攜たづさへて、明あきらかに爾なんぢに言ことばを孕はらまんことを知しらせ、爾なんぢの言いひ難がたき產さんを傳つたへたり。

第四歌頌

イルモス アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢ、神かみの恩おん寵ちように覆おほはるる山やまを見みて、イズライリの聖せいなる者ものが我われ等らを救すくひ改あらためん爲ために、爾なんぢより出いづるを預よ言げんせり。

吾わが不ふ當たうなる靈たましひよ、我われ爾なんぢ惡あく事じを行おこなひて、善ぜん事じを爲なさざる者ものを誰たれにか譬たとへん。反正はんせいして、爾なんぢの爲ために甘あまんじて貧まづしくなりたる者ものに呼よべ、心こゝろを知しる主しゆよ、我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

反正はんせいする者ものの爲ために痛つう悔くわいを定さだめし仁じん慈じなる救世主きうせいしゆよ、我わが生いのちの終をはらざる前さきに之これを我われに與あたへ給たまへ。主宰しゆさいよ、嘗かつて爾なんぢの足あしに接吻せつぷんする淫いん婦ぷに於おけるが如ごとく、我われに傷しやう感かんと歎息たんそくとを與あたへ給たまへ。

致命者讚詞 屬神ぞくしんの水みづに盈みたされたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは神かみの瞬またゝきに由よりて活いける水みづの川かはと現あらはれて、ハリストスの氣いきを以もつて迷まよひの濁にごれる流ながれを涸からし、信者しんじやの意思おもひに飮のませたり。

致命者讚詞 神聖しんせいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らの勳いさをしは大おほいなり、蓋けだし爾なんぢ等らは火ひと劍つるぎと悉ことごとくの烈はげしき苦くるしみとを忍しのび給たまへり、神かみの言ことばよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて、信しんを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものを至し大だいにる永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 生うまれざる父ちゝより世よの無なき先さきに生うまれたる子こは、童貞女どうていぢよよ、爾なんぢより身みを取とりて、時ときの中うちに生うまれたり、蓋けだし日ひ及および歲としより上うへなる慈じ憐れんの主しゆは地ちに生うまるる者ものの時ときに屬ぞくする仇あだを退しりぞけんことを望のぞみ給たまへり。

又 同「イルモス」

寶はう座ざは第一だいいちの讚さん頌しようを奉たてまつり、直たゞちに神かみの光ひかりを受うけて此これにて輝かゞやくヘルワィム及およびセラフィムは聖せい務むを行おこなひて、今いま歌うたふ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。二次。

聖せいなるセラフィムは息やめざる三聖さんせいの聲こゑを以もつて神性しんせいの三さん位ゐなる惟一者ゆゐいちしやを歌うたひて、神學しんがくの至し上じやうなる奧あう義ぎを顯あらはし、醇じゆん正せいなる敎をしへを傳つたふ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、萬物ばんぶつより至いたりて上うへなる者もの、智慧ちゑに超こえて地ちに奇き蹟せきを行おこなふ主しゆは爾なんぢの童貞どうていの至し淨じやうなる腹はらに入いり給たまへり。

第五歌頌

イルモス 己おのれの降臨かうりんの光ひかりにて世せ界かいの極はてを照てらし、己おのれの十じふ字架じかにて之これを輝かゞやかししハリストスよ、爾なんぢが智慧ちゑの光ひかりにて正たゞしく爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろを照てらし給たまへ。

義ぎなる主しゆよ、我われ諸慾しよよくの朽きう壞くわいに陷おちいりて、爾なんぢの義ぎなる審判しんぱんを恐おそる。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、我われを義ぎとする善ぜん事じを行おこなはん爲ために我われを堅かため給たまへ。

我わが神かみ造成主ざうせいしゆよ、爾なんぢは吾わが心こゝろの顯あらはれずして隱ひそかなる事ことを知しる。主しゆよ、審判しんぱんの時とき、爾なんぢが萬ばん衆しゆうを審判しんぱんする爲ために來きたらん日ひに我われを定罪ていざいする勿なかれ。

致命者讚詞 聖せいなる捧神者ほうしんしやは火ひに焚やかれて、己おのれの神聖しんせいなる愛あいの燃もゆるを示しめせり。故ゆゑに將しやう來らいの福ふくの望のぞみに凉すゞしくせられて樂たのしめり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは福樂ふくらくの望のぞみに堅かためられて、最いと勇いさましく百ひやく體たいの割さかるるを忍しのび、弱よわまざる忍耐にんたいの筋すぢにて惡謀者あくぼうしやを縛しばれり。

生神女讚詞 神かみの聘女よめよ、能のう辯べんの口くちは爾なんぢの產さんの言いひ難がたき奇き蹟せきを述のぶる能あたはず、蓋けだし爾なんぢは悟さとられぬ者ものを生うみ、其その手てに萬物ばんぶつを有たもつ主しゆを抱いだき給たまふ。

又 同「イルモス」

神聖しんせいなる愛あいに燃もゆる主しゆ制せい、權柄けんぺい、能のう力りよくの品ひん位ゐは默もださざる口くちを以もつて神元しんげんなる惟一ゆゐいちの性せい及および能力ちからを歌か頌しようす。二次。

天てん使し首しゆ、差さ役えき、首しゆ領りやうの品ひん位ゐは無む數すうの軍ぐんと偕ともに聖神せいしんに宰つかさどられて、惟一ゆゐいちの三さん位ゐなる輝かゞやける神性しんせいを尊たふとまんことを明あきらかに敎をしへらる。

生神女讚詞 至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、爾なんぢは凡およその天てん使しの美うるはしきに超こえて飾かざられたり。蓋けだし諸天しよてん使しの造成者ざうせいしや及および主しゆを孕はらみて、言いひ難がたく爾なんぢの血ちより身みを取とりし者ものを生うみ給たまへり。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの淵ふちは我われ等らを圍かこめり、脫のがれしむる者ものなし、我われ等らは屠と所しよの羊ひつじの如ごとし。吾わが神かみよ、爾なんぢの民たみを救すくへ、爾なんぢは弱よわる者ものの力ちからと更新あらためなればなり。

醫師いしなるハリストスよ、吾わが心こゝろの慾よくを醫いやし給たまへ。吾わがイイススよ、傷しやう感かんの淚なみだにて我われを凡およその汚けがれより滌あらひ給たまへ、我わが爾なんぢの慈じ憐れんを歌うたひて崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

ハリストスよ、我われ滅兦ほろびの途みちに迷まよひて、諸罪しよざいの隍ほりに陷おちいる者ものを返かへして、爾なんぢの尊たふとき誡命いましめの迷まよはざる途みちに向むかはしめ給たまへ、我わが爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

致命者讚詞 榮えい冠くわんを冠かうむれる光くわう榮えいなる主しゆの致ち命者めいしや、實じつに價あたひ貴たふとき石いしなる者ものは石いしに擊うたれて、生命いのちの石いしを諱いまず、偶像ぐうざうの石いしを祭まつらざりき。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは信しんの犂すきを以もつて靈たましひを新あらたにし、神聖しんせいなる神しん゜に因よりて苦難くるしみの百ひやく倍ばいの穗ほを生しやうじて、福樂ふくらくの糧かてを獲えたり。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる至し淨じやうなる童貞女どうていぢよ、女をんなの中うちに祝しゆく福ふくせられたる者ものよ、爾なんぢは火焰くわえんの役者えきしやの火ひを生うみて、彼かれ等らより上うへなる者ものと爲なり、一切いつさいの造物ざうぶつに超こゆる者ものと現あらはれたり。

又 同「イルモス」

人ひとを愛あいする主しゆハリストスよ、無む形けいの者ものの品ひん位ゐは爾なんぢが光くわう榮えいの寶はう座ざの前まへに立たちて、絕たえざる天てん使しの聲こゑを以もつて爾なんぢを尊たふとむ、爾なんぢは彼かれ等らの能力ちから及および歌頌うたなればなり。二次。

諸天しよてん使しは測はかり難がたき華麗くわれいたる爾なんぢの顏かんばせ、神聖しんせいなる爾なんぢの光明くわうみやうの奇異きいなる美び麗れいを覩みて照てらさる、爾なんぢは彼かれ等らの光ひかり及および歡喜よろこびなればなり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、先さきに身みなき言ことば、全能ぜんのうなるに因よりて、己おのれの旨むねに循したがひて萬有ばんいうを造つくり、無む形けいの者ものの軍ぐんを無むより有いうと爲なしし主しゆは爾なんぢより身みを取とり給たまへり。

第七歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを見みて屬神ぞくしんの爐ゐろりと爲なす、蓋けだし先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみは、三人みたりの少者せうしやを救すくひし如ごとく、斯かく爾なんぢの腹はらに於おいて全ぜん世せ界かいを改あらため給たまへり。

昔むかしダニイルは德とくを同棲どうせい者しやと有たもちて獅しゝを制せいせり。嗚呼あゝ靈たましひよ、之これに效ならひ、常つねに獅しゝの如ごとく吼ほえて爾なんぢを執とらへんと欲ほつする者ものを、絕たえず神かみを仰あふぐを以もつて無む效かうの者ものと爲なせ。

主しゆよ、我われ多おほくの淫いんを以もつて甚はなはだしく靈たましひを汚けがせり。無む上じやうなる慈じ憐れんを有たもつハリストスよ、我われを蕩たう子しの如ごとく受うけて憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ歌うたふ、先せん祖ぞの尊たふとまるる神かみは崇あがめ讚ほめらる。

致命者讚詞 勝かたれぬ致ち命者めいしやはハリストスの法はふにて强つよく堅かためられて、不ふ法者はふしやの謀はかりごとを破やぶり、法はふの爲ために死しを致いたして歌うたへり、先せん祖ぞの尊たふとまるる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

致命者讚詞 神かみを己おのれの前まへに見みし主しゆの致ち命者めいしやは聖三せいさんの光ひかりに照てらされて、明あきらかに苦くるしみの暗やみ、誘惑いざなひの霧きりを拂はらひて歌うたへり、先せん祖ぞの尊たふとまるる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、性せいの法はふは爾なんぢに於おいて新あらたにせらる、蓋けだし爾なんぢは肉體にくたいの法はふに超こえてハリストス立法者りつぱふしやを生うみ給たまへり。彼かれは法はふを立たてて、凡およそ先せん祖ぞの尊たふとまるる神かみは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものを救すくひ給たまふ。

又 同「イルモス」

光ひかりの父ちゝより輝かゞやきし無む原げんの光ひかりなる主宰しゆさいよ、爾なんぢは光ひかりたる天てん使しの軍ぐんを爾なんぢの入いらざる輝かゞやきを受うくる鏡かゞみとして造つくり給たまへり。爾なんぢは先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみなり。

萬有ばんいうの主しゆよ、爾なんぢは人類じんるゐに諸天しよてん使しを傍そはしめて、明あきらかに之これを救すくふ。蓋けだし爾なんぢは悉ことごとくの信者しんじや、醇じゆん正せいに爾なんぢ先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみを歌うたふ者ものに彼かれ等らを傍そはしめ給たまへり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢの諸しよ奇き蹟せき、神かみに適かなふ作爲しわざを舌した及および智慧ちゑは述のぶる能あたはず。蓋けだし爾なんぢ先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみは天てんの軍ぐんの悉ことごとくの華麗くわれいを輝かゞやかし給たまへり。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、先さきに母はゝなく父ちゝより生うまれし子こは、我われ等らの爲ために我われ等らに肖にたる者ものと爲ならんと欲ほつして、父ちゝなく爾なんぢより身みを取とり給たまへり。無む形けいの軍ぐんは今いま彼かれに奉ほう事じし、先せん祖ぞの尊たふとまるる神かみとして崇あがめ讚ほむ。

第八歌頌

イルモス イズライリの少者せうしやは爐ゐろりに在ありて、坩堝るつぼに在あるが如ごとく、敬虔けいけんの美うるはしきを以もつて黃こ金がねよりも明あきらかに輝かゞやきて云いへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

我わが贖しよく罪主ざいしゆ、慈じ憐れんなるハリストスよ、今いま我われを圍かこむ罪つみの黑暗くらやみと諸もろもろの誘惑いざなひより我われを脫のがれしめ給たまへ。蓋けだし我われ呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

ハリストスよ、爾なんぢが光くわう榮えいの中うちに來きたりて、世せ界かいを審判しんぱんせん時ときに、我われをも爾なんぢの選えらびたる者ものと偕ともに立たつに堪たへさせ給たまへ。蓋けだし我われ呼よびて云いふ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやはハリストスの地ちに遷うつれり、蓋けだし地ちに在ありて多おほくの勳いさをしを立たてて、天てんの生命いのちを獲えて歌うたふ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

致命者讚詞 勝かちを獲えたる致ち命者めいしやとして爾なんぢ等らは朽きう壞くわいの身みを脫ぬぎて、不死ふしの衣ころもたるハリストスを衣きて、高たかき處ところより呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、諸しよ預よ言者げんしやの聖せいにせられし聲こゑは遙はるかに爾なんぢが萬有ばんいうを造つくりし神かみの母はゝと爲ならんことを預よ言げんせり。我われ等ら彼かれに歌うたふ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

又 同「イルモス」

三日さんじつの光ひかりに近ちかく立たちて、其その華麗くわれいの光くわう線せんに照てらさるる天てん使しの軍ぐんに效ならひて、我われ等ら信者しんじやは歌うたはん、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

萬善ばんぜんの泉いづみたる神元しんげんの能力ちからは第一だいいちの光ひかりを受うくる第だい二にの光ひかりを無むより有いうと爲なし給たまへり。彼かれ等ら呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

第一だいいちの智慧ちゑたる造成主ざうせいしゆは己おのれに近ちかづく無む形けいなる天てん使しの諸もろもろの智慧ちゑを造つくり給たまへり。彼かれ等ら呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは言ことばに超こえて世世よよの先さきに父ちゝより生うまれし子こ、言いひ難がたく身みを取とりし者ものを我われ等らの爲ために生うみ給たまへり。我われ等ら彼かれに呼よぶ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

第九歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、燃もゆれども燒やかれぬ棘いばらは爾なんぢが潔いさぎよき產さんの象かたちを顯あらはせり。祈いのる、今いまも我われ等らを攻せめ圍かこむ誘惑いざなひの爐ゐろりを撲うち滅けして、常つねに爾なんぢを崇あがめさせ給たまへ。

恒忍ごうにんの主しゆよ、我われハナネヤの婦をんなの如ごとく爾なんぢに呼よぶ、言ことばよ、我われを憐あはれみ給たまへ、我われ惡あく鬼きの攻擊こうげきに惱なやまされ、無知むちにして不ふ法はふの事ことを行おこなひ、神かみを畏おそるる寅畏おそれを感かんぜざる靈たましひを有たもてばなり。

主しゆよ、吾わが靈たましひの足あしを爾なんぢの誡命いましめの石いしに立たて、耻はづるなくして我われを仆たふさんと謀はかる蛇へびを仆たふして、我われを其その惡業あくげふより救すくひ給たまへ、爾なんぢは仁じん慈じにして憐あはれみ深ふかき主しゆなればなり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは旣すでに誘惑いざなひの浪なみたつ水みづと劇はげしき痛苦いたみの颶風あらしとを度わたり、上うへなる國くにの港みなとに至いたりて、神聖しんせいなる平穩へいをんを樂たのしむ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは暮くれざる光ひかりを見みるに堪たふる者ものと爲なりて、冢ちよう子しの敎けう會くわいの中うちに天てん使しの會くわいと共ともに喜よろこぶ。彼かれ等らと偕ともに生命いのちを施ほどこす主しゆに我われ等らの爲ために祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 尊たふとき聖せい物ぶつの櫃ひつたる生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは萬物ばんぶつを保たもつ者ものを保たもち、萬ばん衆しゆうに糧かてを賜たまふ者ものに乳ちを哺のます。智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの祕ひ密みつは大おほいにして畏おそるべき哉かな。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢを讚揚さんやうす。

又 同「イルモス」

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは言いひ難がたき爾なんぢの光くわう榮えいに與あづかる者ものとして、諸もろもろの無む形けいの智慧ちゑを造つくり給たまへり。今いまも彼かれ等らに因よりて爾なんぢの民たみ、信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢに趨はしり附つく者ものを護まもり給たまへ、我われ等らが絕たえず爾なんぢ主宰しゆさいを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

全能者ぜんのうしやよ、願ねがはくは爾なんぢは平安へいあんの天てん使し、爾なんぢの群ぐんを保護ほごし、神しん智ちの敎をしへを護まもり、爾なんぢの力ちからを以もつて悉ことごとくの異い端たんを滅ほろぼす者ものを遣つかはし給たまはん、爾なんぢは平安へいあんと愛あいとの起き原げん者しやなればなり。

全まつたく甘かん美びたる歌か頌しようせらるる天てんの甘かん美びなる光くわう照せうを爾なんぢの諸しよ敎けう會くわいに敷しきて、之これを衆しゆう人じんの嗣し業げふと爲なし給たまへ、我われ等らが絕たえず爾なんぢ救世主きうせいしゆを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、天てん使しの品ひん位ゐは今いま默もださずして爾なんぢの產さんを尊たふとみ、班はん列れつに立たてて彼かれを仰あふぎ、樂たのしみに滿みてられて、絕たえず爾なんぢ生しやう神女しんぢよを崇あがめ讚ほむ。

次ぎて「常に福にして」。小聯禱及び光耀歌。次に常例の聖詠。

挿句くづけに傷感の讚頌スティヒラ、第一調。

靈たましひよ、他たの世せ界かいは爾なんぢを待まつ、審判者しんぱんしやは爾なんぢの隱ひそかなる事ことと甚はなはだしき諸罪しよざいとを顯あらはさん、故ゆゑに此これ等らに耽ふける勿なかれ、速すみやかに審判者しんぱんしやに向むかひて呼よべ、神かみよ、我われを潔きよめ、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あいひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我わが救世主きうせいしゆよ、罪惡ざいあくの怠惰おこたりにて縛しばられたる我われを棄すつる勿なかれ。我わが思おもひを痛つう悔くわいの爲ために起おこし、我われを爾なんぢの葡ぶ萄園だうゑんの善よき工人はたらきびとと顯あらはし、我われに第十一だいじふいち時じの報むくいと大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 人人ひとびと皆みな來きたりて、歌か頌しようと屬神ぞくしんの詩賦しふとを以もつてハリストスの受難者じゆなんしやを尊たふとまん。彼かれ等らは世せ界かいの燈ともしび、敎をしへの傳道でんだう師し、信者しんじやの爲ために醫治いやしを注そゝぐ所ところの常つねに流ながるる泉いづみなり。ハリストス我わが神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて爾なんぢの世せ界かいに平安へいあん、我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 聖せいなる衆しゆう軍ぐんより聖せいにして、一切いつさいの造物ざうぶつより尊たふとき生しやう神女しんぢよ、世せ界かいの女宰ぢよさい、救世主きうせいしゆを生うみし者ものよ、仁じん慈じなるに因よりて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らを數かぞへ難がたき罪つみ及および災禍わざはひより救すくひ給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ、及び聯禱、次ぎて發放詞。第一時課、及び最後の發放詞。

 月曜日の聖体礼儀に

月曜日の眞福詞、第一調。

敵てきは食しよく物もつを以もつてアダムを樂園らくゑんより引ひき出いだし、ハリストスは十じふ字架じかを以もつて盜賊たうぞくを其中そのうちに入いれ給たまへり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを憶おもひ給たまへと呼よべばなり。

句 義ぎの爲ための窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

ハリストス神かみよ、爾なんぢの慈じ憐れんに因よりて我われに傷しやう感かんの泉いづみ、我われを無む數すうの惡あくの諸もろもろの汚けがれより潔きよむる者ものを與あたへて、恩主おんしゆよ、我われを爾なんぢの國くにに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

ハリストスよ、我われ等ら爾なんぢの天てん使しの品ひん位ゐを祈き禱たうの中うちに爾なんぢに進すゝむ。至し仁じんなる主しゆとして、彼かれ等らに因よりて我われ等らを救すくひ、宥なだめ、我われ等らが知しると知しらずして行おこなひし諸罪しよざいを意おもふ勿なかれ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは己おのれの血ちの流ながれにて無む形けいのファラオンを溺おぼらせり、今いまは奇き蹟せきの流ながれを注そゝぎて、諸しよ病びやうの淵ふちを涸からす。故ゆゑに爾なんぢ等ら讚さん美びせらる。

光榮 我われ等ら信者しんじや皆みな父ちゝに伏拜ふくはいし、子こを讚榮さんえいし、至し聖神せいしんを歌か頌しようし、呼よびて云いはん、至し聖せいなる三者さんしやよ、我われ等ら衆しゆうを救すくひ給たまへ。

今も、生神女讚詞 永久えいきうの光ひかりを生うみし純じゆん潔けつなる者ものよ、常つねに惡あく鬼きの侵害しんがいに昏くらまさるる吾わが靈たましひを光ひかりに導みちびきて、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて將しやう來らいの火ひを免まぬかれしめ給たまへ。

 月曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に讚頌スティヒラ。第一調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん。然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

主しゆよ、我われ生しやう涯がいを耻はづるなく放蕩はうたうに費つひやしし不ふ當たうの者ものは、蕩たう子しの如ごとく、傷しやう感かんの情じやうを以もつて呼よぶ、天てんの父ちゝよ、我われ罪つみを獲えたり、我われを潔きよめて救すくひ、恣ほしいまゝに爾なんぢより離はなれて、結果けつくわなき行おこなひに由よりて今いま貧まづしくなりたる我われを退しりぞくる勿なかれ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

ハリストスよ、爾なんぢは富とめる者ものにして、貧まづしくなりて、人人ひとびとを不死ふしと光くわう照せうとに富とまし給たまへり。故ゆゑに世せ上じやうの逸樂いつらくに因よりて貧まづしくなりたる我われを德とくに富とまし、貧まづしきラザリと共ともになして、富とめる者ものの苦くるしみ、及および我われの前まへに在ある地ぢ獄ごくより脫のがれしめ給たまへ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

主しゆよ、我われ甚はなはだしく惡あく事じに富とめる者ものと爲なり、食しよくを嗜たしみ、存命ぞんめいの時ときに善よきを受うけて、地獄ゲエンナに定罪ていざいせられたり。我わが飢ううる智慧ちゑを、ラザリの如ごとく、顧かへりみずして、爾なんぢに適かなふ神聖しんせいなる行おこなひの門もんの前まへに投とうぜり。主しゆよ、我われを憐あはれみ給たまへ。

又、前驅の讚頌スティヒラ

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

奇異きいなる預よ言者げんしや、ハリストスの授洗者じゆせんしや及および前ぜん驅くよ、爾なんぢに祈いのる、惡業あくげふに因よりて涸かれたる吾わが心こゝろに、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、常つねに流ながるる淚なみだの川かはを注そゝがしめ給たまへ、我われ多た病びやうの者ものが爾なんぢに救すくはれて、爾なんぢを大おほいなる者ものと爲なしし主しゆを崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

福ふくたる預よ言者げんしやよ、我われ吾わが生いのちの悉ことごとくの憑恃たのみを爾なんぢに負おはしめて、爾なんぢに禱いのる、世せ界かいの無む數すうの罪つみを任になふハリストスイイススに洗せんを授さづけしイオアンよ、我わが心こゝろを潔きよめて、我われを救すくはんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

恩おん寵ちようの睿えい智ちなる傳道でんだう師し、萬民ばんみんに悔くわい改かいを傳つたへし神聖しんせいなる前ぜん驅くよ、我わが至いたりて不ふ當たうなる昏くらまされし靈たましひに悔くわい改かいに居をりて、常つねに主しゆの旨むねを行おこなふを得えしめ給たまへ、我わが信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

光榮、今も、生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、全ぜん世せ界かいの罪つみを任になふ羔こひつじ、至し大だいなる前ぜん驅くが衆しゆう人じんに傳つたへし者ものに、審判しんぱんの時ときに於おいて我われ不ふ當たうの者ものに山羊やぎの分ぶんを脫のがれしめて、我われを右みぎの綿羊ひつじに加くはへんことを前ぜん驅くと共ともに祈いのり給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。聯禱。其後「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第一調。

救世主きうせいしゆよ、我わが罪つみの淵ふちは深ふかし、我われ罪惡ざいあくの爲ために甚はなはだしく沈しづめらるるに因よりて、ペトルに於おけるが如ごとく、神かみよ、我われに手てを授さづけて、我われを救すくひ、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

神かみ救世主きうせいしゆよ、我われ惡あしき思おもひと行おこなひとに於おいて定罪ていざいせられしに因よりて、我われに反正はんせいの意い念ねんを與あたへて、爾なんぢに呼よばしめ給たまへ、仁じん慈じなる恩主おんしゆよ、我われを救すくひ、我われを憐あはれみ給たまへ。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり。我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らが裁判さいばんの時ときに顯あらはしし承認うけとめは惡あく鬼きの力ちからを辱はづかしめ、人人ひとびとを迷まよひより解ときたり。故ゆゑな首くびの斬きらるるに、爾なんぢ等ら呼よべり、人ひとを愛あいする主しゆよ、願ねがはくは吾わが靈たましひの祭まつりは爾なんぢの前まへに嘉よく納いれらるる者ものと爲ならん、我われ等ら爾なんぢを愛あいして、暫ざん時じの生命いのちを重おもんぜざればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、モイセイは預よ言者げんしやの目めにて燃もゆれども焚やかれぬ棘いばらの中うちに爾なんぢに於おける奧あう義ぎを觀みたり、神性しんせいの火ひは爾なんぢ潔いさぎよき者ものの胎たいを焚やかざりしに因よる。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢ、我わが神かみの母はゝに、世せ界かいの爲ために平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを求もとめんことを祈いのる。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び發放詞。

 月曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第一調。

第一歌頌

イルモス 我われ等ら皆みな凱歌かちうたを以もつて、高たかき手てにて神妙しんめうなる奇き蹟せきを行おこなひて、イズライリを救すくひし神かみに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

至し聖せい至し潔けつなる童貞女どうていぢよ、天てん使等しらの莊飾かざり、聖神せいしんの器うつは、無む原げんなる父ちゝの無む玷てんの聘女よめ、神かみの言ことばの母はゝよ、慶よろこべ。

生しやう神女しんぢよ・女宰ぢよさいよ、爾なんぢは王わう族ぞくより出いでたる女むすめ、身みにて王わうなる神かみを生うみて、彼かれと共ともに王わうたる者ものにして女王によわうなり。

光榮 純じゆん潔けつなるマリヤよ、聖詠せいえい者しやダワィドは爾なんぢの產さんを歌うたひ、イサイヤは爾なんぢの至し淨じやうなる胎たいを歌か頌しようし、ハリスティアニン等らは爾なんぢが生うみし者ものを讚榮さんえいす。

今も 童貞女どうていぢよ・神かみの聘女よめよ、敎けう會くわいは純じゆん正せいなる敎をしへと神聖しんせいなる諸しよ事じとを以もつて爾なんぢの產さんを傳つたへ、爾なんぢの子この人體じんたいを形かたどる聖像せいざうに伏拜ふくはいす。

第三歌頌

イルモス 工こう師しが棄すてたる石いしは屋隅をくぐうの首石しゆせきと爲なれり、此この石いしの上うへにハリストスは異い邦はうより贖あがなひし敎けう會くわいを堅かため給たまへり。

至し淨じやうなるマリヤよ、爾なんぢは童貞どうていの光くわう榮えいを有たもち、聖神せいしんの恩おん寵ちように妝よそほはれて、生しやう神女しんぢよと現あらはれたり。新あらたにして最いと深ふかき奧密あうみつなる哉かな。如何いかにして爾なんぢは身みにて神かみを生うみて、童貞女どうていぢよに止とゞまる。

主しゆよ、爾なんぢが爲なしし作爲わざは孰たれか能よく述のべん、蓋けだし彼かの爾なんぢが苦くるしみの中うちに子こを生うまんと詛のろひし者もの、爾なんぢは斯この者ものの子こと爲なり給たまへり。故ゆゑに陷おちいりし女をんなの性せいは生しやう神女しんぢよに依よりて爾なんぢ神かみの爲ために悅よろこぶ。

光榮 至し淨じやうなるマリヤ、惟一ゆゐいちの生しやう神女しんぢよよ、世せ界かいの諸罪しよざいの暴風あらしは爾なんぢに依よりて鎭しづまる。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを救すくひの港みなとと有たもち、讚さん美びして、爾なんぢの偉ゐ大だいなるを歌うたふ。

今も 潔いさぎよき母はゝよ、昔むかし諸しよ預よ言者げんしやは歌うたひて云いへり、爾なんぢ童貞女どうていぢよは期とき屆いたりて、期ときに限かぎられぬ者もの、聖三者せいさんしやの一いち位ゐなるハリストス我わが神かみ言ことばを言ことばに超こえて生うまん。敎けう會くわいは彼かれの聖像せいざうを尊たふとむ。

第四歌頌

イルモス 預よ言者げんしやアウワクムよ、爾なんぢは神しん゜にて言ことばが人體じんたいを取とるを預よ見けんして、傳つたへて呼よべり、年としの邇ちかづく時とき爾なんぢは識しられん、期きの屆いたる時とき爾なんぢは顯あらはれん、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

神聖しんせいなる預よ言者げんしやの七倍しちばい明あきらかなる鏡かゞみは多た方はうに爾なんぢを像かたどれり。我われ等らは表徵しるしの實體じつたいになりたるを見みて、爾なんぢが實じつに生しやう神女しんぢよたるを信しんず。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ等らは宜よろしきに合かなひて爾なんぢ實じつに神かみの母はゝたる者ものを尊たふとみて讚榮さんえいし、律法りつぱふと預よ言者げんしやとの中うちに傳つたへられし爾なんぢに適かなふ歌うたを奉たてまつる、恩おん寵ちようを蒙かうむれる者もの、慶よろこべよ、主しゆは爾なんぢと偕ともにす。

光榮 視みよ、アウワクムの見みたる神聖しんせいなる山やま、諸德しよとくの繁しげりたる蔭かげなる生しやう神女しんぢよは世せ界かいに輝かゞやけり。我われ等ら昔むかし犯罪はんざいに由よりて神かみに離はなれたる者ものは彼かれに由よりて亦また近ちかづくを得えたり。

今も 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢを讚さん美びするに勝たへたる舌したは福さいはひなり。醇じゆん正せいの敎をしへと敬虔けいけんの行おこなひとを以もつて爾なんぢの子こが人體じんたいを取とりしことを讚榮さんえいする民たみは福さいはひなり。

第五歌頌

イルモス ハリストス神かみよ、我われ等らは夜よより寤さめて、爾なんぢ我われ等らの爲ために貧まづしくなり、身みにて十じふ字架じかと死しとを忍しのびし主しゆを讚ほめ歌うたふ。

生しやう神女しんぢよ・女宰ぢよさいよ、焚やかれぬ棘いばらは爾なんぢに於おける祕ひ密みつをモイセイに顯あらはせり、蓋けだし神性しんせいの火ひは爾なんぢの物性ぶつせいの胎たいを焚やかざりき。

潔いさぎよき生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら爾なんぢ神かみの言ことばの母はゝを歌か頌しようし、言ことばの禮物れいもつを爾なんぢに捧さゝげて、爾なんぢが嘉よみして之これを受うけんことを求もとむ。

光榮 至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、汚けがれたる口くちよりする讚さん美びを斥しりぞくる勿なかれ、地ち上じやうには宜よろしきに合かなひて爾なんぢを歌か頌しようするを能よくする者もの無なければなり。

今も 童貞女どうていぢよより生うまれし者ものは二に性せいにして一いち位ゐなり、無む形けいの神かみ、又また甘あまんじて我われ等らの爲ために人人ひとびとに肖にたる者ものと爲なりし人ひとなり。

第六歌頌

イルモス 我われ預よ言者げんしやイオナに效ならひて籲よぶ、仁じん慈じなる者ものよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより援たすけよ、世せ界かいの救主きうしゆよ、我われ光くわう榮えいは爾なんぢに歸きすと籲よぶ者ものを救すくひ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、預よ言者げんしやは爾なんぢを見みて、屬神ぞくしんの七しち光くわうの燈ともしび、明あきらかに爾なんぢの内うちに輝かゞやける聖神せいしんの行動かうどうを示しめす者ものと爲なす。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは實じつに生いのちを施ほどこす木きと現あらはれて、爾なんぢの果みにて詭き譎けつなる蛇へびを殺ころし、人人ひとびとの爲ために生命いのちたるハリストス神かみを生うみ給たまへり。

光榮 我わが神かみの潔いさぎよき母はゝよ、汚けがれたる口くちより爾なんぢに捧さゝぐる讚さん美びは美うるはしからず、然しかれども我わが靈たましひの熱望ねつばうを見みて、之これを受うけ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、不ふ法はふの者ものは正敎せいけうの會くわいが爾なんぢの聖像せいざうに接吻せつぷんするを見みて、苦にがき不ふ信しんに擾みださる。

主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第一調。

潔いさぎよき者ものよ、我わが不ふ當たうなる生命いのちを治をさめよ。至いたりて無む玷てんなる者ものよ、多おほくの罪つみに因よりて淪滅ほろびの深處ふかみに跌つまづきし靈たましひを憐あはれみ、死しの時ときにも我われを讒ざんする惡あく鬼きと畏おそるべき詰問きつもんより脫のがれしめ給たまへ。

第七歌頌

イルモス 救世主きうせいしゆよ、火ひは爐ゐろりの中うちに在ある爾なんぢの少者せうしやに觸ふれず、彼かれ等らを懼おそれしめざりき、其時そのとき三人さんにん口くちを一いつにして、歌か頌しよう祝しゆく讚さんして言いへり、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

神かみの聘女よめよ、爾なんぢは諸德しよとくに飾かざられ、童貞どうていの光くわう榮えいと尊そん貴きとに妝よそほはるる者ものと顯あらはれしに、爾なんぢの華麗くわれいは實じつに最いと美うるはしく輝かゞやけり、之これを慕したふ主しゆは爾なんぢを己おのれの爲ために神聖しんせいなる母はゝと選えらび給たまへり。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは實じつに直なほき杖つゑ、最いと尊たふとき杖つゑと顯あらはれたり、故ゆゑに神かみの言ことばの果みを生しやうじ給たまへり。アアロンの杖つゑは遠とほくより明あきらかに斯この奇き蹟せきを像かたどれり。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、我われ多おほくの肉體にくたいの慾よくにて體からだと言ことばと靈たましひとを汚けがしし者ものは如何いかにして爾なんぢが諸德しよとくの華麗くわれいを歌うたはん、我われ惑まどひて畏おそる。然しかれども爾なんぢ親みづから爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが爲ために佑助たすけと爲なり給たまへ。

今も ハリストスよ、我われ爾なんぢが身みを取とりしことの合成がふせいを尊たふとみて、之これを形かたどる聖像せいざうに神かみに適かなふが如ごとく伏拜ふくはいす。蓋けだし爾なんぢは永遠えいゑんの神かみにして、童貞女どうていぢよに藉よりて實體じつたいの人ひとと爲なり、全まつたき二に性せいを有たもち給たまへり。

第八歌頌

イルモス 諸天しよてん使しと悉ことごとくの軍ぐんとが造物ざうぶつ者しや及および主しゆとして畏おそるる者ものを、司し祭さいよ、歌か頌しようし、少者せうしやよ、讚榮さんえいし、人人ひとびとよ、崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

世せ界かいが淪滅ほろびより救すくはれし神かみの聖せい事じは歌うたはるべし、昔むかし陷おちいりし者ものは皆みな起おきよ、マリヤが拯救すくひなるハリストスを生うみたればなり。

至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを歌うたふ、孰たれか爾なんぢ實じつに慈じ憐れんにして我わが靈たましひの憑恃たのみなる者ものを讚榮さんえいせざらん。故ゆゑに至し聖せいなる者ものよ、我わが禱いのりを納いれ給たまへ。

光榮 信者しんじやよ、今いま歌うたひて祝いはへ、天てん使等しら及および人人ひとびとよ、共ともに讚榮さんえいせよ、蓋けだし惡あく魔まは仆たふれ、失望しつばうは消きえたり、マリヤが我われ等らの爲ために拯救すくひの憑恃たのみを生うみたればなり。

今も 瞽者めしひよ、神性しんせいを像かたどる勿なかれ、謊いつはる勿なかれ、其その單一たんいつ、無む形けいにして、見みるべからざる者ものなればなり。然しかれども我われ其その身みの像ざうを形かたどりて、之これに伏拜ふくはいし、信しんを以もつて主しゆを生うみし童貞女どうていぢよを讚榮さんえいす。

第九歌頌

イルモス 光ひかりを放はなつ雲くも、萬有ばんいうの主しゆが雨あめの天てんより羊ひつじの毛けに降くだるが如ごとく降くだり、始はじめなき者ものが身みを取とりて我われ等らの爲ために人ひとと爲なりし所以ゆゑんの者ものを、我われ等ら皆みな我わが神かみの潔いさぎよき母はゝとして崇あがめ讚ほむ。

至し聖せいなるマリヤ、萬物ばんぶつの大おほいなる奇き蹟せきよ、慶よろこべ、ダワィドの女むすめ、主しゆの母はゝよ、慶よろこべ、ガウリイルの歌うたよ、慶よろこべ、地ちに在ある衆しゆう罪人ざいにんの爲ために避所かくれがと堅固かためと援助たすけなる者ものよ、慶よろこべ。

奇異きいなるイオアキム及および神聖しんせいなるアンナは聖神せいしんに感かんぜられて歌か頌しようし、感謝かんしやの歌うたを奉たてまつる、其その生うみし女むすめマリヤが地ちに於おいて造物主ざうぶつしゆの母はゝと爲なるを見みればなり。神かみよ、彼かれの祈き禱たうに因よりて我われ等ら衆しゆうを救すくひ給たまへ。

光榮 嗚呼あゝ至し聖せいなる童貞女どうていぢよ、至し上じやうの神かみの母はゝよ、爾なんぢの產さんは地ち上じやうに罪つみある卑微ひびの者ものの爲ために救すくひなり。我われ等ら爾なんぢに因よりて信しんを以もつて救すくはれたり、爾なんぢ今いまも世世よよの生命いのちにも我われを救すくひ給たまふ。

今も 我われ身みを取とりたれども變易へんえきせざりし言ことばを知しる、故ゆゑに醇じゆん正せいに彼かれを二に性せい一いち位ゐに歌か頌しようして、彼かれを眞まことの神かみ及および人ひとと傳つたへて、歌うたを奉たてまつる。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。聖三祝文。其他常例の如し、及び發放詞。

火曜日

 火曜日の早課

六段の聖詠の後「主は神なり」に、若し之あらば、聖人の讚詞トロパリ。光榮、今も、生神女讚詞、讚詞トロパリの調に依る。若しなくば、本日の讚詞トロパリ。光榮、今も、其生神女讚詞。

第一の誦文の後に痛悔の坐誦讚詞セダレン、第一調。

不ふ法はふに於おいて妊はらまれたる我われ放蕩はうたうの者ものは敢あへて天てんの高たかきを仰あふぐを得えず。唯たゞ爾なんぢの仁愛じんあいを恃たのみて呼よぶ、神かみよ、我われ罪人ざいにんを潔きよめ、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

若もし義ぎ者しや僅わづかに救すくひを得えば、我われ終しゆう日じつの苦く勞らうと暑あつさとを忍しのばざりし罪人ざいにんは何處いづこにか立たたん。然しかれども神かみよ我われを第十一だいじふいち時じの傭やとひ工びとに加くはへて、我われを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、天てんに於おいて母はゝなく生うまれし子こを、爾なんぢは地ちに於おいて智慧ちゑと言ことばとに超こえて父ちゝなく生うみ給たまへり。彼かれに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第一調。

救世主きうせいしゆよ、急いそぎて父ちゝの懷ふところを我わが爲ために啓ひらき給たまへ、我われ爾なんぢの洪恩こうおんの費つひやされぬ富とみを見みて、放蕩はうたうに我わが生いのちを費つひやせり。主しゆよ、今いま我われの貧まづしくなりたる心こゝろを棄すつる毋なかれ、蓋けだし我われ傷しやう感かんの情じやうを以もつて爾なんぢに呼よぶ、父ちゝよ、我われ天てん及および爾なんぢの前まへに罪つみを獲えたり、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢの憤いきどほりを以もつて我われを責せむる毋なかれ、爾なんぢの怒いかりを以もつて我われを罰ばつする毋なかれ。

義ぎ人じん等らの敵てきはイオフの諸德しよとくの富とみを見みて、穿うがちて盜ぬすまんと惡謀あくぼうを運めぐらしたれども、肉體にくたいの柱はしらを折くじきて、屬神ぞくしんの財寶たからを盜ぬすまざりき、無む玷てんの者ものの靈たましひが武器ぶきを執とれるを見みたればなり、然しかれども我われを裸ら體たいにして虜とりこにせり。救世主きうせいしゆよ、急いそぎて、終をはりに至いたらざる先さきに我われを詭き譎けつの者ものより援たすけて、我われを救すくひ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは善よき軍ぐん士しとして、同心どうしんに信しんじて、苛虐者くるしめびとの威嚇おどしを畏おそれざりき。尊たふとき十じふ字架じかを任になひ、熱心ねつしんを抱いだきてハリストスに來きたり、馳はすべき程みちを盡つくして、天てんより勝しよう利りを獲えたり。光くわう榮えいは爾なんぢ等らを堅かためし者ものに歸きす、光くわう榮えいは爾なんぢ等らに榮えい冠くわんを冠かうむらせし者ものに歸きす、光くわう榮えいは爾なんぢ等らを以もつて衆しゆうに醫治いやしを施ほどこす者ものに歸きす。

光榮、今も、生神女讚詞 主しゆよ、爾なんぢはニネワィヤ人じんの失望しつばうに先さきだちて、報はうぜられたる懲戒こらしを過すごし、爾なんぢの慈じ憐れんは怒いかりに勝かてり。今いまは爾なんぢの民たみ爾なんぢの群ぐんを憐あはれみて、權能けんのうの手てを以もつて我われ等らの敵てきを仆たふし、生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに由よりて爾なんぢの慈じ憐れんを我われ等らに垂たれ給たまへ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第一調。

慈じ憐れんの多おほきイイススよ、我わが意念おもひは盜賊たうぞくに執とらはれ、智慧ちゑは盜ぬすまれ、吾わが靈たましひは諸罪しよざいに傷きずつけられたり、我われ醫いやされずして臥ふす。求もとむ、前ぜん驅くの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢの慈じ憐れんを注そゝぎて、吾わが靈たましひの甚はなはだしき傷きずを醫いやし給たまへ。

昔むかしイオルダンの流ながれを以もつて全ぜん世せ界かいの潔淨きよめたる者ものに洗せんを授さづけしイオアンよ、多おほくの罪つみに溺おぼれたる我われを引ひき上あげて、諸もろもろの汚けがれより洗あらひ、嘉よく納いれらるる轉達者てんたつしやとして、常つねに我わが爲ために人ひとを愛あいする主しゆに祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 聘女よめならぬ潔いさぎよき生しやう神しん童貞女どうていぢよ、獨ひとり信者しんじやの轉達者てんたつしや及および帲幪おほひなる少女せうぢよよ、凡およそ爾なんぢに憑恃たのみを負おはしむる者ものを諸もろもろの菑害わざはひと憂愁うれひと劇はげしき誘惑いざなひより脫のがれしめて、爾なんぢの神聖しんせいなる祈き禱たうを以もつて我われ等らの靈たましひを救すくひ給たまへ。

痛悔の規程カノン、其冠詞は、ハリストスよ、我が言の禱を受け給へ。イオシフの作。第一調。

第一歌頌

イルモス 我われ等ら皆みな凱歌かちうたを以もつて、高たかき手てにて神妙しんめうなる奇き蹟せきを行おこなひて、イズライリを救すくひし神かみに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

主しゆよ、我われ罪つみの諸慾しよよくに役えきせらるる者ものは爾なんぢに趨はしり附つく、我われを此これ等らより解ときて、熱ねつ切せつに爾なんぢの慈じ憐れんを讚榮さんえいする者ものと爲なし給たまへ。

我われ不ふ當たうの者ものは罪つみの戈ほこに傷きずつけられて死しせり、敵てきは我わが臥ふすを見みて樂たのしむ。死し者しやを復ふく活くわつせしむる主しゆよ、我われを活いかして救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやの會くわいは、肉體にくたいを衣きて其その苦くるしみにて朽きう壞くわいを滅ほろぼししハリストスを己おのれの百ひやく體たいを以もつて榮えいして、自みづからも榮えいせられたり。

致命者讚詞 正敎せいけうの柱はしら及および垣かきたる光くわう榮えいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは敵てきの攻擊こうげきに動うごかされずして止とゞまれり。神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて、我われ等ら衆しゆうを憐あはれみ給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは火ひの狀さまの寶はう座ざとして造物主ざうぶつしゆを乘のせ、生いける宮みや、麗うるはしき殿でんとして變易へんえきと混淆こんかうとの外ほかに我われ等らと均ひとしくなりし王わうを容いれ給たまへり。

又聖なる大預言者前驅イオアンの規程カノン、其冠詞は、福たる者よ、爾に呼ぶ者の聲を聞き給へ。第一調。

第一歌頌

同「イルモス」 

福ふくたる前ぜん驅くよ、爾なんぢは言ことばの聲こゑたりき、故ゆゑに爾なんぢに向むかふ我われ等らの聲こゑを納いれて、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われ等らを諸惡しよあくより脫のがれしめ給たまへ。

爾なんぢは朝あさの如ごとく、日ひの如ごとく輝かゞやきて、四し極きよくを照てらし、凶きよう惡あくなる諸神しよしん゜を昏くらます。故ゆゑに我われ等らの靈たましひより昏黑くらやみを掃はらひ給たまへ。

福ふくたる前ぜん驅くよ、爾なんぢは來きたり給たまふ吾わが生命いのちを死し者しやに傳つたへたり。故ゆゑに我われを殺ころす諸慾しよよくを殺ころして、我われを神聖しんせいなる光ひかりに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 時ときに限かぎられぬ神かみを時とき屆いたりて人體じんたいを取とりし者ものとして生うみ給たまひし獨ひとり至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、我わが至いたりて不ふ當たうなる靈たましひの時とき每ごとの諸慾しよよくを醫いやし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 工こう師しが棄すてたる石いしは屋隅をくぐうの首石しゆせきと爲なれり。此この石いしの上うへにハリストスは異い邦はうより贖あがなひし敎けう會くわいを堅かため給たまへり。

我わが弱よわきを衣きたる慈じ憐れんの多おほきハリストス救世主きうせいしゆよ、我われの弱よわきを見み、我わが靈たましひの甚はなはだしき醜貌しうばうを見み、我わが聲こゑを聆きき納いれて、其その醜みにくきを美うるはしきに變へんじ給たまへ。

蕩たう子しを救すくひし仁じん慈じなるイイススよ、我われ獨ひとり爾なんぢの救すくひの法はふを犯おかし、無知むちにして凡およその罪つみを遂とげ、意念おもひにて爾なんぢより離はなれて疏うとんぜられし者ものを救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、無む形けい者しやの品ひん位ゐは實じつに爾なんぢ等らの勇ゆう毅きに驚おどろきたり。如何いかにして爾なんぢ等らは裁判さいばん座ざの前まへに至し榮えいに苦くるしみを受うけ、肉體にくたいにて仆たふれて、神聖しんせいなる力ちからを以もつて無む形けいの敵てきを悉ことごとく仆たふしたる。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは猶なほ傷きずの血ちに赤あかく染そめられ、猶なほ血ちの滴したゝりに濕うるほされて、喜よろこびて不死ふしの王わうたる主しゆの前まへに榮えい冠くわんを冠かうむれる勝しよう利り者しやとして立たち給たまへり。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、父ちゝが萬世ばんせいの先さきに生うみし子こを、爾なんぢは夫をつとの誘いざなひを識しらずして生うみ、養育者やういくしやたる主しゆを養やしなひ給たまへり。至し榮えいなる奇き蹟せき、新あたらしき祕ひ密みつなる哉かな。故ゆゑに衆しゆう信者しんじやの靈たましひは爾なんぢを讚榮さんえいす。

又 同「イルモス」

胎たいの荒あれて生うまざる者ものより神妙しんめうに生うまれし前ぜん驅くよ、爾なんぢは神聖しんせいなる行おこなひの繁しげき果みを結むすぶ者ものと現あらはれたり。故ゆゑに全まつたく結果けつくわなき吾わが心こゝろを善よき果みを結むすぶ者ものと爲なし給たまへ、我わが中ちゆう心しんより常つねに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

福ふくたる者ものよ、惡あしき意念おもひにて弱よわりたる吾わが心こゝろを天てんの糧かてにて養やしなひて之これを堅かため、我われに務つとめて洪恩こうおんなる神かみの望のぞみを行おこなはしめ給たまへ、我わが中ちゆう心しんより常つねに爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

福ふくたる預よ言者げんしやよ、爾なんぢは世せ界かいの罪つみを任になふ羔こひつじを傳つたへたり。祈いのる、我わが罪つみの重おもき任にを輕かろくして、諸慾しよよくの汚けがれを潔きよむる痛つう悔くわいを我われに與あたへ給たまへ。

生神女讚詞 生しやう神女しんぢよよ、人體じんたいを取とりて生うまれし言ことばは爾なんぢに依よりて全まつたきアダムを衣き給たまへり。女宰ぢよさいよ、彼かれに我われ等らを諸もろもろの患くわん難なんと永遠えいゑんの火ひより脫のがれしめんことを祈いのり給たまへ。

第四歌頌

イルモス 預よ言者げんしやアウワクムよ、爾なんぢは神しん゜にて言ことばが人體じんたいを取とるを預よ見けんして、傳つたへて呼よべり、年としの邇ちかづく時とき爾なんぢは識しられん、期きの屆いたる時とき爾なんぢは顯あらはれん、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

ハリストスよ、爾なんぢが我われに賜たまひし富とみを我われ不ふ當たうの事ことを爲なして惡あしく費つひやし、裸ら體たいと爲なりて耻はづべき行おこなひを衣きたり。故ゆゑに爾なんぢに呼よぶ、神聖しんせいなる恩おん寵ちようを以もつて我われに傷しやう感かんの情じやうを與あたへて、初始はじめの衣ころもにて我われを飾かざり給たまへ。

ハリストスよ、我われ無知むちにして降くだり、甚はなはだしく陷おちいり、劇はげしく病やみて地ちに臥ふす。陷おちいりし者ものを起おこす主しゆよ、我われを起おこして、我わが心こゝろを救すくひを施ほどこす痛つう悔くわいの石いしに堅かため給たまへ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは十じふ字架じかに擧あげられしハリストスに效ならひて、傷きずを受うけて共ともに樂たのしみ、血ちの雲くもにて拜偶像はいぐうざうの雲くもを散ちらして、醫治いやしの流ながれを注そゝぎ給たまふ。

致命者讚詞 神聖しんせいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは救すくひの望のぞみに導みちびかれて、苦く難なんの海うみ、苦く痛つうの浪なみを涉わたり、上うへなる港みなとに着つきて、凡およその樂たのしみに滿みてられたり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよ・神かみの母はゝよ、天てん使しの軍ぐんは、如何いかにして見みえざる主しゆが爾なんぢに藉よりて我われ等らと侔ひとしく容姿すがたの見みゆる者ものと爲なりたるを見みて、驚おどろきたり。信しんを以もつて爾なんぢを讚揚さんやうする衆しゆうに救すくひを得えしめんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

又 同「イルモス」

肉體にくたいの裸はだかなるを以もつて己おのれの爲ために救すくひの衣ころもを織おりたる主しゆの授洗者じゆせんしやよ、祈いのる、凡およその善ぜん事じに裸はだかなりし我われに義ぎと樂たのしみとの衣ころもを衣きせ給たまへ。

甘味あまみの川かはたるイイスス、生命いのちを賜たまふ主しゆをイオルダンの流ながれの中うちに沈しづめし前ぜん驅くよ、慾よくの火ひに焚やかるる我われに救すくひの滴したゝりを注そゝぎ給たまへ、我わが職しよくとして爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

天てん使しに非あらず、中ちゆう保はう者しやに非あらず、主しゆ親みづから地ちに來きたりて、我われ等らを救すくひ給たまへり。福ふくたる者ものよ、爾なんぢは彼かれの爲ために直なほき途みちを備そなへたり、今いま我わが爲ために天國てんこくに往ゆかしむる途みちを示しめさんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは悟さとり難がたく爾なんぢの内うちに入いり給たまひし神かみの聖せいにせられし殿でんと顯あらはれたり。彼かれに我われ等らを罪つみの汚けがれより潔きよめんことを祈いのり給たまへ、我われ等らが聖神せいしんの殿でん及および居處きよしよと爲ならん爲ためなり。

第五歌頌

イルモス 神かみの子こよ、爾なんぢの平安へいあんを我われ等らに與あたへ給たまへ、蓋けだし我われ等らは爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらず、爾なんぢの名なを唱となふ、爾なんぢは生せい死し者しやの神かみなればなり。

洪恩こうおんにして恒忍ごうにんなる主宰しゆさいよ、我われ多おほくの甚はなはだしき罪つみに滿みてられたり。定罪ていざいせられし我われを憐あはれみて、爾なんぢの顏かんばせより退しりぞくる勿なかれ。

ハリストスよ、爾なんぢは歎息たんそくせし稅ぜい吏りを義ぎと爲なせり。我われも彼かれに效ならひて、膺むねを拊うちて爾なんぢに呼よぶ、獨ひとり慈じ憐れんにして洪恩こうおんなる主しゆよ、我われを潔きよめ給たまへ。

致命者讚詞 主しゆよ、爾なんぢの聖者せいしやは迷まよはざる光くわう體たいと現あらはれて、迷まよひの深ふかき夜よるを掃はらひて、全ぜん地ちを奇き蹟せきの光明くわうみやうにて照てらせり。

致命者讚詞 主宰しゆさいよ、最いと尊たふとき石いしたる致ち命者めいしやは爾なんぢ生命いのちの石いしを愛あいして、苦くるしみを以もつて仆たふれて、凡およその迷まよひの建造たてものを仆たふしたり。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは聖三者せいさんしやの一いつを二ふたつの旨むね一ひとつの位くらゐを有たもつ者ものとして生うみ給たまへり。彼かれに我われ等ら衆しゆうの救すくはれんことを切せつに祈いのり給たまへ。

又 同「イルモス」

古いにしへのイリヤの如ごとく野のに住すまひしハリストスの至し福ふくなる前ぜん驅くよ、罪つみに由よりて荒あれ野のと爲なりたる吾わが心こゝろを淨きよめて、德とくの華はなを開ひらく者ものと爲なし給たまへ。

信者しんじやの爲ために動うごかされぬ柱はしら、壞やぶられぬ垣かきたるハリストスの大おほいなる前ぜん驅くよ、詭き譎けつの者ものの惡謀あくばうに動うごかさるる我わが思念おもひを動うごきなき者ものと爲なし給たまへ。

福ふくたる者ものよ、地ち上じやうに輝かゞやきし光ひかりよりする光ひかりは爾なんぢの聲こゑを以もつて死し者しやに福音ふくいんせられしに、幽暗くらやみに居をる者ものは照てらされたり。我われ甚はなはだしく昧くらまされし者ものをも照てらし給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、ダワィドは爾なんぢ潔いさぎよき童貞女どうていぢよを女王によわうとして傳つたふ。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、我われを天てんの國くにの嗣よつぎと爲なし給たまへ、我わが爾なんぢを讚さん美びせん爲ためなり。

第六歌頌

イルモス 我われ預よ言者げんしやイオナに效ならひて籲よぶ、仁じん慈じなる者ものよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより援たすけよ、世せ界かいの救主きうしゆよ、我われ光くわう榮えいは爾なんぢに歸きすと籲よぶ者ものを救すくひ給たまへ。

我わが不ふ當たうなる靈たましひの骨ほねは折をれたり、我われ夥おびたゞしき逸樂いつらくの重量おもみにて傴かゞまれり。獨ひとり衆しゆう人じんの援助たすけなるハリストスよ、我われを助たすけ給たまへ。

我われ慾よくの暴風あらしに打うたれ、諸罪しよざいの海うみに陷おちいりて、爾なんぢに呼よぶ、全能ぜんのうのハリストスよ、爾なんぢの有いう力りよくなる手てを以もつて我われを引ひき上あげて救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 聖せいなる受難者じゆなんしやの大數たいすうは無む形けいの敵てきの千萬せんまんを蹈ふみて、天てん上じやうの靈れい智ち者しやの千萬せんまんに加くはへられたり。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは無む神しんの淵ふちを涸からして、甘かん美びの川かはを嗣し業げふとして獲えたり。求もとむ、我わが溢あふれたる罪つみを涸からし給たまへ。

生神女讚詞 成聖せいせいの幕まくたるマリヤよ、逸樂いつらくに汚けがれたる我わが不ふ當たうなる靈たましひを聖せいにして、我われを神聖しんせいなる光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

又 同「イルモス」

地ち上じやうに悔くわい改かいを傳つたへし授洗者じゆせんしやよ、我われに光ひかりに至いたらしむる悔くわい改かいの途みちを示しめして、我われを迷まよひの淵ふちより脫のがれしめ給たまへ。

淵ふちを川かはの流ながれに沈しづめしハリストスの前ぜん驅く傳道でんだう師しよ、我わが慾よくの淵ふちを涸からして、我われに淚なみだの泉いづみを與あたへ給たまへ。

主しゆの前ぜん驅くよ、靈たましひの諸しよ病びやう、體からだの諸慾しよよく、度ど生せいの艱難かんなん、及および諸もろもろの誘惑いざなひと憂愁うれひより我われを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、我われ爾なんぢ神かみの母はゝ、女をんなの中うちに讚さん美びたる者ものに切せつに祈いのる、我われを棄すつる勿なかれ、我われを憐あはれみて、凡およその害がいより全まつたうして護まもり給たまへ。

第七歌頌

イルモス 救世主きうせいしゆよ、火ひは爐ゐろりの中うちに在ある爾なんぢの少者せうしやに觸ふれず、彼かれ等らを懼おそれしめざりき、其時そのとき三人さんにん口くちを一いつにして、歌か頌しよう祝しゆく讚さんして言いへり、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

イオフは忍耐にんたいに慣なれて、堅かたく建たてられたる柱はしらの如ごとく、凶きよう惡者あくしやの悉ことごとくの攻擊こうげきに動うごかされずして止とゞまれり。嗚呼あゝ靈たましひよ、常つねに彼かれに效ならひて、聊いさゝかも艱難かんなんの中うちに倦うむこと勿なかれ。

肉體にくたいの逸樂いつらくに勝かたれて、我われ智ちなる者ものは無智むちと爲なれり。言ことばを以もつて淫いん婦ぷを救すくひし神かみの言ことばよ、我われ不ふ當たうの者ものを救すくひ給たまへ、我わが爾なんぢの仁じん慈じを歌うたひて崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

致命者讚詞 身みを以もつて我われ等らの爲ために苦くるしみを受うけし主しゆの血ちにて贖あがなはれたる睿えい智ちなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは熱心ねつしんを抱いだきて甘あまんじて彼かれの爲ために己おのれの血ちを流ながせり。故ゆゑに絕たえず彼かれと偕ともに王わうたり。

致命者讚詞 睿えい智ち者しやよ、爾なんぢ等らは聖せいにせられし苦く難なんを建たつるを以もつてハリストス、惟一ゆゐいちの王わう及および主しゆの喜よろこびて息いこひ給たまふ宮みやと現あらはれたり。彼かれは爾なんぢ等らを天てんの居處すまひに至いたらしめ給たまへり。

生神女讚詞 讚さん美びたる者ものよ、ハリストスは萬族ばんぞくの中うちより獨ひとり爾なんぢを、至し尊そん至し潔けつなる者ものとして、己おのれの居處すまひに選えらびて、爾なんぢより日ひの如ごとく輝かゞやきて、全ぜん地ちを照てらし給たまへり。

又 同「イルモス」

舊新きうしん約やくの至いたりて善ぜん良りやうにして光くわう榮えいなる轉達者てんたつしやたる授洗者じゆせんしやよ、萬有ばんいうを新あらたにする主しゆイイススの前まへに轉達てんたつして、我われ罪つみに由よりて全まつたく古ふるびたる者ものを新あらたにせんことを祈いのり給たまへ。

ハリストスの前ぜん驅く及および授洗者じゆせんしやよ、爾なんぢは地ち上じやうに悔くわい改かいの法はふを立たつる者ものと現あらはれたり。爾なんぢの祈き禱たうを以もつて衆しゆうを堅かためて、之これを行おこなはしめ給たまへ、我われ等らが常つねに行おこなへる無む數すうの惡あくより救すくはれん爲ためなり。

睿えい智ち者しやよ、爾なんぢは節制せつせいを盡つくし、狹せまき路みちを過とほりて、見神けんしんの光ひかれる恩おん寵ちようにて盛さかんに輝かゞやかされたり。ハリストスに禱いのりて、我われ等らにも之これを樂たのしまんことを得えしめ給たまへ。

我われ等ら信者しんじやは聖三者せいさんしやの惟一ゆゐいちの神性しんせい、無む原げんなる父ちゝと、子こと、聖神せいしん、惟一ゆゐいちの王わうたる性せい、惟一ゆゐいちの權柄けんぺい、惟一ゆゐいちの元始げんし、及および我われ等らを活いかす生命いのちを讚榮さんえいす。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、禱いのりを神かみに奉たてまつりて、彼かれが我われ等らの愆尤あやまち及および無む數すうの罪つみを顧かへりみずして、我われ等らを永遠えいゑんの苦くるしむる火ひより脫のがれしめんことを求もとめ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 諸しよ天てん使しと悉ことごとくの軍ぐんとが造物ざうぶつ者しや及および主しゆとして畏おそるる者ものを、司し祭さいよ、歌か頌しようし、少者せうしやよ、讚榮さんえいし、人人ひとびとよ、崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

詭き譎けつなる蛇へびは惡あしき勸誘すゝめを以もつて我われを悉ことごとくの德とくより裸はだかに爲なせり。救世主きうせいしゆよ、今いま我われを其その惡業あくげふより裸はだかにして、諸德しよとくの衣ころもにて飾かざり給たまへ。

人類じんるゐを審判しんぱんする爲ために來きたらんとする義ぎなる審判者しんぱんしやよ、畏おそるべき時ときに於おいて我われを定罪ていざいして地ぢ獄ごくの火ひに遣つかはす勿なかれ、我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

致命者讚詞 至いたりて讚さん美びたる主しゆの受難者じゆなんしやよ、患くわん難なんも、苦く痛つうも、劍つるぎも、火ひも、慈じ憐れんに由よりて爾なんぢ等らを愛あいせしハリストスを愛あいする愛あいより敢あへて爾なんぢ等らを離はなす能あたはざりき。

致命者讚詞 勇敢ゆうかんなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは肉體にくたいを以もつて肉體にくたいなき敵てきと戰たゝかひて、之これを斃たふせり。今いまは肉體にくたいなき者ものと共ともに樂たのしみて、我わが靈たましひと體からだとの苦くるしみを醫いやし給たまふ。

生神女讚詞 神かみの母はゝよ、萬物ばんぶつを植ううる者ものは爾なんぢを花はなとして度ど生せいの溪たにに得えて、爾なんぢの中うちに入いりて、諸德しよとくと潔けつ淨じやうとの芳かうばしき香かを以もつて今いま我われ等らを薰かをらせ給たまふ。

又 同「イルモス」

主しゆよ、我われ獨ひとり地ちに生うまれし衆しゆう人じんに超こえて罪つみを犯おかし、獨ひとり爾なんぢの法はふの違ゐ反者はんしやと爲なれり。祈いのる、前ぜん驅くに由よりて我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

大おほいなる議事ぎじの天てん使しを四し極きよくに傳つたふる授洗じゆせんイオアンよ、爾なんぢは習俗ならはしを以もつて天てん使しと均ひとしき者ものと現あらはれたり。故ゆゑに我われ等ら歌うたを以もつて爾なんぢを萬世ばんせいに讚榮さんえいす。

ハリストスの首かうべを水みづの中なかに沈しづめし福ふくたる者ものよ、爾なんぢは首かうべを非義ひぎに斬きられたり。祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等ら衆しゆうを堅かためて、實じつに有いう害がいなる詭き譎けつの者ものの首かうべを蹈ふましめ給たまへ。

生神女讚詞 獨ひとり人類じんるゐの轉達者てんたつしやなる童貞女どうていぢよよ、我われを甚はなはだしき諸罪しよざい、及および火ひの苦くるしみと、外そとの幽暗くらやみと、切齒はがみと、死しせざる蟲むしより脫のがれしめ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 光ひかりを放はなつ雲くも、萬有ばんいうの主しゆが雨あめの天てんより羊ひつじの毛けに降くだるが如ごとく降くだり、始はじめなき者ものが身みを取とりて我われ等らの爲ために人ひとと爲なりし所以ゆゑんの者ものを、我われ等ら皆みな我わが神かみの潔いさぎよき母はゝとして崇あがめ讚ほむ。

視みよ、痛つう悔くわいと潔いさぎよき行おこなひとの時ときなり、視みよ、晝ひるなり。我わが靈たましひよ、光ひかりの行おこなひを爲なせ、慾よくの暗やみより逃のがれ、惡あしき煩悶もだえの眠ねむりを退しりぞけよ、神聖しんせいなる光ひかりに與あづかる者ものと爲ならん爲ためなり。

我われ稅ぜい吏りの如ごとく歎息たんそくし、淫いん婦ぷの如ごとく泣なき、盜賊たうぞくの如ごとく爾なんぢに呼よぶ、洪恩こうおんなる主しゆよ、我われを念おもひ給たまへ、蕩たう子しの如ごとく籲よぶ、我われ罪つみを獲えたり、ハナネヤの婦をんなの如ごとく爾なんぢに俯ふ伏ふくして求もとむ、慈じ憐れんなるハリストスよ、我われを棄すつる勿なかれ。

致命者讚詞 忍耐にんたいして體からだを傷きず及および殘忍ざんにんなる死しに付わたしし主しゆの至いたりて讚さん美びたる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは實じつに體からだの苦くるしみ及および靈たましひの痛いたみの醫師いしと現あらはれたり。故ゆゑに常つねに讚さん美びせらる。

致命者讚詞 ハリストスの睿えい智ちなる受難者じゆなんしやの忍耐にんたいは日ひの光ひかりよりも盛さかんに輝かゞやけり。彼かれ等らは恩おん寵ちようを以もつて幽暗くらやみの魁かしらを滅ほろぼし、無む神しんの夜よるを散さんじ、信者しんじやの心こゝろを照てらし給たまへり。

生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの聖せいなる腹はらより輝かゞやきて、地ちの極はてを照てらしし言ことばの光くわう明めいなる光くわう線せんを以もつて、逸樂いつらくの暗やみと諸慾しよよくの怠惰おこたりとに因よりて昧くらまされし吾わが靈たましひを照てらし給たまへ、我わが信しんを以もつて爾なんぢを歌か頌しようせん爲ためなり。

又 同「イルモス」

視みよ、度ど生せいの暗やみに在ある者ものに輝かゞやける燈ともしび、視みよ、衆しゆう人じんに春はるを報はうずる聲こゑの美うるはしき燕つばめ、ハリストスの大おほいなる前ぜん驅く、舊新きうしん約やくの中ちゆう保はう者しやなり。願ねがはくは我われ等らは彼かれの祈き禱たうに因よりて常つねに護まもられん。

前ぜん驅くよ、多おほくの罪つみを有たもてる我われは爾なんぢ新娶者はなむこの友ともを今いま彼かれの前まへに祈き禱者たうしやとして進すゝめて、爾なんぢに呼よぶ、至し福ふくなる者ものよ、我われに債おひめの赦ゆるしを予あたへ、怠惰おこたりに由よりて全まつたく滅きえたる吾わが靈たましひの燈ともしびを燃もやし給たまへ。

前ぜん驅くよ、無む形けいの天てん使しと偕ともに、尊たふとき使徒しとと偕ともに、聖せいなる受難者じゆなんしやと偕ともに、又また預よ言者げんしやと偕ともに絕たえず至し仁じんなる神かみに祈いのりて、我われ等ら常つねに爾なんぢを慈じ憐れんなる轉達者てんたつしやとして有たもつ者ものに永遠えいゑんの福ふくを獲えしめんことを求もとめ給たまへ。

美うるはしき燕つばめ、尊たふとき鶯うぐひす、最いと好よき鴿はと、野のを愛あいする鳩やまばと、主しゆの授洗者じゆせんしや、野のの植しよく物ぶつよ、荒あれ野のと爲なりて實みを結むすばざる吾わが靈たましひを善ぜんの實みを繁しげく結むすぶ者ものと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、爾なんぢはヘルワィムの寶はう座ざの如ごとく、萬有ばんいうを載のする者ものを載のせ、我われ等らを養やしなふ者ものを養やしなふ。潔いさぎよき者ものよ、絕たえず彼かれに祈いのりて、爾なんぢの牧群ぼくぐんが常つねに地ぢ震しん、疫えき病びやう、外ぐわい攻こう、及および諸もろもろの患くわん難なんより救すくはれんことを求もとめ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。小聯禱、光耀歌、及び常例の聖詠。

挿句くづけに痛悔の讚頌スティヒラ、第一調。

靈たましひよ、他たの世せ界かいは爾なんぢを待まつ、審判者しんぱんしやは爾なんぢの隱ひそかなる事ことと甚はなはだしき諸罪しよざいとを顯あらはさん。故ゆゑに此これ等らに耽ふける勿なかれ、速すみやかに審判者しんぱんしやに向むかひて呼よべ、神かみよ、我われを潔きよめ、我われを救すくひ給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

我わが救世主きうせいしゆよ、罪惡ざいあくの怠惰おこたりにて縛しばられたる我われを棄すつる勿なかれ。我わが思おもひを痛つう悔くわいの爲ために起おこし、我われを爾なんぢの葡ぶ萄園だうゑんの善よき工人はたらきびとと顯あらはし、我われに第十一だいじふいち時じの報むくいと大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 大おほいなる王わうの此この軍ぐん士し等らは苛虐者くるしめびとの命めいに逆さかひ、勇ゆう毅きにして苦くるしみを輕かろんじ、一切いつさいの迷まよひを踐ふみて、宜よろしきに合かなひて榮えい冠くわんを冠かうむれり。今いま救世主きうせいしゆに我われ等らの靈たましひの爲ために平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを求もとむ。

光榮、今も、生神女讚詞 我われ諸罪しよざいを以もつて淫いん婦ぷと蕩たう子しとに勝まさり、盜賊たうぞくと稅ぜい吏りとニネワィヤ人じんとに超こえたり。嗚呼あゝ、我われ如何いかにせん、我われ不ふ當たうの者ものは如何いかに苦くるしみを脫のがれん。潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢに俯ふ伏ふくす、爾なんぢの子こが彼かれ等らを救すくひし如ごとく、爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われを宥なだめ給たまへ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」。讚詞トロパリ、聯禱、及び發放詞。次に第一時課、常例の聖詠、其他、及び最後の發放詞。

 火曜日の聖体礼儀に

火曜日の眞福詞、第一調。

敵てきは食しよく物もつを以もつてアダムを樂園らくゑんより引ひき出いだし、ハリストスは十じふ字架じかを以もつて盜賊たうぞくを其中そのうちに入いれ給たまへり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき我われを憶おもひ給たまへと呼よべばなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

神かみよ、我われ日日ひびに罪つみを行おこなひ、爾なんぢの戒いましめを犯おかす者ものを正たゞしきに反かへして、苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ、我わが爾なんぢ人ひとを愛あいする主しゆの言いひ難がたき慈じ憐れんを讚榮さんえいせん爲ためなり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

神かみの前ぜん驅くよ、爾なんぢは光ひかれる雲くもより言いひ難がたく我われ等らに輝かゞやきし暮くれざる光ひかりに先さきだつ燈臺とうだいと現あらはれたり。常つねに彼かれに我われ等らの靈たましひを憐あはれみて救すくはんことを祈いのり給たまへ。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

致命者讚詞 讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは種種しゆじゆの苦くるしみを忍しのびて、天てん上じやうの福ふくを受うくるに勝たふる者ものと爲なり給たまへり。故ゆゑに常つねに衆しゆう人じんより讚さん頌しようせらる。

光榮 我われ等ら皆みな三さん位ゐに於おいて惟一ゆゐいちの截きられざる神性しんせいを知しる、父ちゝと、子こと、生せい活くわつの神しん゜、始はじめなく、混淆まじりなく、世世よよに永在えいざいする惟一ゆゐいちの神かみなり。

今も 永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢは產さんの前まへの如ごとく、產さんの後のちに潔いさぎよき者ものとして護まもられたり、身みにて神かみを生うみたればなり。至し淨じやうなる者ものよ、祈いのる、彼かれに我われ等らを靈たましひと體からだとの苦くるしみより救すくはんことを求もとめ給たまへ。

 火曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に十字架の讚頌スティヒラ、第一調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

ハリストス神かみよ、爾なんぢは人ひととして十じふ字架じかに釘ていせられて、人ひとの性せいを神成しんせいし、惡あくの張本もとたる蛇へびを殺ころし、慈じ憐れんの主しゆとして、詛のろひと爲なりて、我われ等らを木きに緣よる詛のろひより釋ときたり。爾なんぢは衆しゆうに降福かうふくと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはん爲ために來き給たまへり。

句 我われ主しゆを望のぞみ我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

洪恩こうおんなる主宰しゆさいよ、爾なんぢは一切いつさいの尊そん貴きより最高いとたかき者ものにして、甘あまんじて耻ち辱じよくを受うけ、木きに釘ていせられて耻はづべき死しを忍しのび給たまへり。之これに由よりて人類じんるゐは不死ふしを獲え、初始はじめの生命いのちを受うけたり、爾なんぢ全能者ぜんのうしやが身みにて死ししたればなり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

最いと尊たふとき十じふ字架じか、衆しゆう信者しんじやの潔淨きよめ、諸しよ王わうの權柄けんぺいよ、爾なんぢに伏拜ふくはいして、ハリストスを讚榮さんえいする衆しゆう人じんを聖せいにせよ。主しゆは言いひ難がたき慈じ憐れんに由よりて、爾なんぢの上うへに至し淨じやうなる手てを伸のべて、地ちの四し極きよくを一いつに集あつめ給たまへり。

又、生神女の讚頌スティヒラ、第一調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

潔いさぎよき母はゝよ、爾なんぢは己おのれの子こ及および神かみの十じふ字架じかの側かたはらに立たちて、其その恒忍ごうにんを覩みて、哭なきて云いへり、甘愛かんあいなる子こよ、哀かなしい哉かな、神かみの言ことばよ、何なんぞ非義ひぎに此この苦くるしみを受うくる、人類じんるゐを救すくはん爲ためなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

夫をつとに與あづからざる聘女よめよ、爾なんぢは十じふ字架じかの側かたはらに立たちて、苦くるしみに傷きずつけられて呼よべり、吾わが子こ、神かみの言ことばよ、爾なんぢを生うみし我われを子こなき者ものと爲なす勿なかれ、父ちゝと同どう永在えいざいなる獨一どくいつ子しよ、我われを獨ひとり遺のこす毋なかれ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

言ことばよ、爾なんぢが不義ふぎの定さだめに因よりて十じふ字架じかに釘ていせらるるに、童貞女どうていぢよは哭なきて痛いたましく呼よべり、我わが爾なんぢを生うみし時とき、聊いさゝかも苦くるしみを覺おぼえざりき、如何いかんぞ、今いま苦くるしみを受うくる。哀かなしい哉かな、人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ爾なんぢが十じふ字架じかに擧あげられしを覩みるに忍しのびず。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 潔いさぎよき母はゝよ、爾なんぢは昔むかし爾なんぢの子こ及および主宰しゆさいが十じふ字架じかに手てを伸のべ、脅わきの戈ほこにて刺ささるるを見みる時とき、號泣がうきふして呼よべり、哀かなしい哉かな、人人ひとびとを苦くるしみより釋とき給たまふ仁愛じんあいの主しゆよ、如何いかんぞ苦くるしみを受うくる。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」、及び聯禱。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第一調。

十じふ字架じかは髑髏されかうべの處ところに樹たてられて、我われ等らの爲ために不死ふしの花はなを發ひらけり、救世主きうせいしゆの脅わきより常つねに流ながるる泉いづみに因よりてなり。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

救世主きうせいしゆの尊たふとき十じふ字架じかは我われ等らの爲ために壞やぶられぬ垣かきなり、我われ等ら皆みな彼かれを恃たのみて救すくはるればなり。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 嗚呼あゝ聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らの貿易ぼうえきは善ぜんなる哉かな、蓋けだし血ちを與あたへて、天てんの者ものを嗣つぎ、暫ざん時じ苦くるしみて、永遠えいゑんに樂たのしむ。實じつに爾なんぢ等らの貿易ぼうえきは善ぜんなり、朽きう壞くわいの者ものを棄すてて、不ふ朽きうの者ものを受うけたればなり。今いま諸天しよてん使しと偕ともに祝いはひて、絕たえず一體いつたいの聖三者せいさんしやを歌うたふ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 無む玷てんなる童貞女どうていぢよは羔こひつじが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、哭なきて呼よべり、我わが甘愛かんあいなる子こよ、何なんぞ是これ新あらたにして至し榮えいなる顯現あらはれや、如何いかんぞ手てに萬有ばんいうを有たもつ者ものは身みにて木きに釘ていせらるる。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ、及び發放詞。

 火曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第一調。

第一歌頌

イルモス 死しせざる主しゆよ、勝かちを獲うる爾なんぢの右みぎの手ては、神かみに適かなふが如ごとく、能力ちからにて光くわう榮えいを顯あらはせり、其その全能ぜんのうなるに因よりて、敵てきを滅ほろぼし、イズライリ人じんの爲ために新あらたなる深水ふかみの路みちを開ひらきたればなり。

純じゆん潔けつなる少女せうぢよよ、天てんの軍ぐんにも悟さとられぬ者ものは爾なんぢの身みより身みを取とりて、初始はじめの犯罪はんざいに因よりて朽くちたる身みを新あらたにし給たまへり。

信者しんじやよ、言ことばに超こえて神かみの言ことばの母はゝと爲なりし者ものを歌うたを以もつて讚さん美びせん。蓋けだし斯この至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよは地ち上じやうの者ものの爲ために莊飾かざりと顯あらはれ、凡およそ罪つみを行おこなふ者ものの爲ために轉達者てんたつしやと爲なり給たまへり。

光榮 母はゝ・永貞えいてい童女どうぢよよ、爾なんぢは天てんよりも廣ひろき者ものと顯あらはれたり、萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆを容いれたればなり。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我われを凡およそ死しを致いたす狹せまき事ことより援たすけ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、患くわん難なんの浪なみに打うたるる我われ等らに援助たすけを與あたへ、我われ等らの惡敵あくてきの高慢たかぶりを墜おとし、敬虔けいけんに爾なんぢを讚榮さんえいする衆しゆうに救すくひを施ほどこし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 獨ひとり人ひとの性せいの弱よわきを知しりて、憐あはれみを以もつて之これを衣きたる者ものよ、我われに上うへよりの力ちからを帶おびて、爾なんぢに呼よばしめ給たまへ、人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいの生いける宮みやは聖せいなり。

充じゆう滿まんの者ものは我われ等らの爲ために虛むなしくせられ、始はじめなき者ものは、至いたりて無む玷てんなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢより始はじめを受うけ、見みえざる者ものは見みられ、萬有ばんいうを養やしなふ者ものは乳ちにて養やしなはる、人人ひとびとを新あらたにせんと謀はかり給たまへばなり。

婚姻こんいんに與あづからざる童貞女どうていぢよよ、我われ等らの苦痛いたみを醫いやし給たまへ、爾なんぢは醫いやしを施ほどこす主しゆ、恩おん寵ちようを以もつて我われ等らに生いのちに入いる門もんを示しめしし者ものを生うみたればなり、彼かれに爾なんぢの諸僕しよぼくを憐あはれみて救すくはんことを絕たえず祈いのり給たまへ。

光榮 至し聖せいにして讚さん美びたる童貞女どうていぢよ、獨ひとり性せいに超こえて人ひとの性せいを神成しんせいせし純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢより生うまれし者ものに我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしと永遠えいゑんの歡喜よろこびとを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、我われ怠慢おこたりに生いのちを費つひやして、爾なんぢに俯ふ伏ふくす。爾なんぢが常つねに神かみに捧さゝぐる祈き禱たうを以もつて我わが智慧ちゑを起おこして、痛つう悔くわいの光くわう照せうを以もつて我われ全まつたく昧くらまされし者ものを照てらし給たまへ、我わが信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

第四歌頌

イルモス アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢ、神かみの恩おん寵ちように覆おほはるる山やまを見みて、イズライリの聖せいなる者ものが我われ等らを救すくひ改あらためん爲ために、爾なんぢより出いづるを預よ言げんせり。

潔いさぎよき者ものよ、我われ等ら爾なんぢを言ことばの神聖しんせいなる宮みやとして知しる。彼かれは身みにて爾なんぢの中うちに入いりて、慾よくに由よりて朽くちたる我われ等らを新あらたにし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ神かみの母はゝを尊たふとみて、爾なんぢより生うまれし者ものを讚榮さんえいす。

童貞女どうていぢよよ、身みを取とり給たまふ言ことばは爾なんぢの腹はらに入いりて、先さきに人ひとの性せいの中うちに入いりたる詛のろひを遠とほざけ、己おのれの神聖しんせいなる體合たいがふを以もつて神かみに適かなふが如ごとく之これを神成しんせいし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを歌か頌しようす。

光榮 純じゆん潔けつなる者ものよ、アダムは朽くつる果みを嘗なめし時ときより死しに服ふくせり、今いまは爾なんぢの產さんに由よりて生いかされて、樂園らくゑんの居處すまひに入いれらる。故ゆゑに我われ等ら職しよくとして爾なんぢを歌か頌しようす。

今も 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは不死ふしの泉いづみたるハリストス神かみを生うみて、死しの流ながれを停とゞめたり。神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、彼かれに我わが靈たましひを殺ころしし諸慾しよよくを醫いやして、我われを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

第五歌頌

イルモス 己おのれの降臨かうりんの光ひかりにて世せ界かいの極はてを照てらし、己おのれの十じふ字架じかにて之これを輝かゞやかししハリストスよ、爾なんぢが智慧ちゑの光ひかりにて正たゞしく爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろを照てらし給たまへ。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、入いらざる日ひは爾なんぢの腹はらより輝かゞやき出いでて、全まつたく黑暗くらやみを散さんじ、神かみを識しる知ち識しきを以もつて地ちを照てらせり。故ゆゑに我われ等ら醇じゆん正せいに爾なんぢを歌か頌しようす。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ等ら天てん使しの聲こゑを以もつて爾なんぢに呼よぶ、慶よろこべよ。蓋けだし爾なんぢは大おほいなる議事ぎじの天てん使し、父ちゝと同どう無む原げんの者もの、人ひとを救すくはん爲ために肉體にくたいと成なりし言ことばを生うみ給たまへり。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、主しゆは爾なんぢの腹はらに入いりて、敬虔けいけんに彼かれを信しんずる者ものを敵てきの權けんより救すくひ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな大おほいなる聲こゑにて爾なんぢ至し淨じやうなる者ものを歌か頌しようす。

今も 純じゆん潔けつなる者ものよ、主宰しゆさいは我われを衣きて、爾なんぢより出いでて、朽くちたる性せいを神成しんせいし給たまへり。神かみの母はゝよ、彼かれに我われを凡およその罪つみより裸はだかにせんことを祈いのり給たまへ。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの淵ふちは我われ等らを圍かこめり、脫のがれしむる者ものなし、我われ等らは屠と所しよの羊ひつじの如ごとし。吾わが神かみよ、爾なんぢの民たみを救すくへ、爾なんぢは弱よわる者ものの力ちからと更新あらためなればなり。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは種たねなく神かみを胎内たいないに孕はらみて、神妙しんめうなる產さんの後のちに童貞女どうていぢよに止とゞまれり。故ゆゑに至し淨じやうなる者ものよ、我われ等ら爾なんぢに因よりて詛のろひより脫のがれし者ものは歌うたを以もつて爾なんぢを讚榮さんえいす。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢはイアコフの見みし梯かけはし、樹こ蔭かげ繁しげき山やま、神聖しんせいなる光ひかりの光くわう明めいの雲くも、獨ひとり神かみの過とほりし門もん、女をんなの中うちに祝しゆく福ふくせられし者ものなり。

光榮 婚姻こんいんに與あづからざる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは天然てんねんの法はふの外ほかに實じつ性せいの神かみの言ことば、我われ等らの痛傷いたみを醫いやす者ものを生うみ給たまへり。彼かれに我われ等ら衆しゆうを救すくはんことを切せつに祈いのり給たまへ。

今も 至し聖せい至し榮えい至し潔けつなる者ものよ、我われ諸罪しよざいに由よりて病やめる我わが靈たましひを捧さゝげて、爾なんぢに呼よぶ、爾なんぢの轉達てんたつを以もつて我われを醫いやして救すくひ給たまへ、我わが爾なんぢの保護ほごを歌うたひて崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第一調。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの轉達てんたつを有たもち、爾なんぢの祈き禱たうにて艱難かんなんより救すくはれ、爾なんぢの子この十じふ字架じかにて何處いづこにも護まもられて、我われ等ら皆みな職しよくとして敬虔けいけんに爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

第七歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを見みて屬神ぞくしんの爐ゐろりと爲なす、蓋けだし先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみは、三人みたりの少者せうしやを救すくひし如ごとく、斯かく爾なんぢの腹はらに於おいて全ぜん世せ界かいを改あらため給たまへり。

至し淨じやう至し潔けつなる者ものよ、律法りつぱふの影かげと、神言しんげんを宣のぶる先せん知ち者しやの觀くわん察さつとは明あきらかに爾なんぢの種たねなき產さんを預よ言げんせり。我われ等ら之これを歌うたひて、先せん祖ぞの崇あがめ讚ほめらるる神かみを尊たふとむ。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは衆しゆう信者しんじやを照てらし、惡あくの夜よを退しりぞくる東旭あさひを生うみ給たまへり。故ゆゑに我われ等ら先せん祖ぞの崇あがめ讚ほめらるる神かみを尊たふとむ。

光榮 純じゆん潔けつなる者ものよ、昔むかし焚やかれぬ棘いばらは爾なんぢの腹はらを象かたどれり、蓋けだし神性しんせいの火ひは聊いさゝかも爾なんぢを焚やかざりき。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、潔いさぎよき者ものよ、滅きえざる火ひより我われを救すくひ給たまへ、我わが默もださずして爾なんぢの偉ゐ大だいなるを歌うたはん爲ためなり。

今も 神かみの母はゝ、信者しんじやの援助たすけ、罪つみを犯おかす者ものの潔淨きよめ、萬善ばんぜんの賦予ふよ者しやよ、我われ泣なきて爾なんぢに來きたり、俯ふ伏ふくして我わが諸罪しよざいの赦ゆるしを求もとむる者ものを慈じ憐れんを以もつて受うけ給たまへ。

第八歌頌

イルモス イズライリの少者せうしやは爐ゐろりに在ありて、坩堝るつぼに在あるが如ごとく、敬虔けいけんの美うるはしきを以もつて黃こ金がねよりも明あきらかに輝かゞやきて云いへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ掲げよ。

童貞女どうていぢよよ、律法りつぱふの預よ象しやうと觀くわん察さつとは明あきらかに爾なんぢ潔いさぎよき主しゆの母はゝを預よ言げんせり。我われ等ら今いま事ことの應かなへるを見みて、同心どうしんに爾なんぢを歌うたひて萬世ばんせいに崇あがめ讚ほむ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢは比倫たぐひなく神妙しんめうなる華麗くわれいにて飾かざられたり、蓋けだし神かみの言ことば、信しんを以もつて彼かれを萬世ばんせいに讚さん頌しようする衆しゆうの心こゝろを神聖しんせいなる美び麗れいにて妝よそほふ者ものを生うみ給たまへり。

光榮 純じゆん潔けつなる者ものよ、諸しよ預よ言者げんしやは聖せいなる聲こゑを以もつて遠とほくより爾なんぢが主宰しゆさい神かみの母はゝと爲ならんことを述のべたり。我われ等ら皆みな彼かれに呼よぶ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて彼かれを世世よよに讚ほめ揚あげよ。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは美うるはしき者もの、至いたりて善ぜんなる者ものにして、竝ならびなく美うるはしく、限かぎりなく善ぜんなるハリストスを潔いさぎよく生うみ給たまへり。我われ等ら皆みな彼かれに呼よぶ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて彼かれを世世よよに讚ほめ揚あげよ。

第九歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、燃もゆれども燒やかれぬ棘いばらは爾なんぢが潔いさぎよき產さんの象かたちを顯あらはせり。祈いのる、今いまも我われ等らを攻せめ圍かこむ誘惑いざなひの爐ゐろりを撲うち滅けして、常つねに爾なんぢを崇あがめさせ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、先さきに定罪ていざいせられし地ち上じやうの者ものの性せいは、爾なんぢが性せいに超こゆる神聖しんせいなる產さんに因よりて不死ふしを獲え、曩さきの美うるはしきを受うけて、欣よろこばしき歌うたを以もつて同どう一いつに爾なんぢを歌うたふ。

尊たふとき成聖せいせいの匱ひつたる生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは萬有ばんいうを載のする者ものを載のせ、萬ばん衆しゆうに糧かてを予あたふる者ものを乳ちにて養やしなふ。智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの祕ひ密みつは大おほいにして畏おそるべき哉かな。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、我われ怠慢おこたりの暗やみに臥ふす者ものに今いま光ひかりを輝かゞやかして、我われを昧くらます諸慾しよよくの意念おもひを拂はらひ、深ふかき平安へいあんを我わが靈たましひの内うちに入いれ給たまへ、我わが爾なんぢ純じゆん潔けつなる者ものを常つねに讚榮さんえいせん爲ためなり。

今も 純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ公こう平へいなる審判しんぱん、知しらざる所ところなき審判者しんぱんしやを畏おそる、諸慾しよよくに耽ふけり、怠惰おこたりに生いのちを耗つひやして、無む數すうの罪つみを犯おかしたればなり。生しやう神女しんぢよよ、我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜、聖三祝文、「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

水曜日

 水曜日の早課

第一の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第一調。

ハリストスよ、爾なんぢ十じふ字架じかに釘ていせられしに、暴ばう虐ぎやくは滅ほろび、敵てきの力ちからは蹈ふまれたり、天てん使しに非あらず、人ひとに非あらずして、主しゆよ、爾なんぢ親みづから我われ等らを救すくひ給たまひしに因よる。光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ等ら爾なんぢの十じふ字架じかの木きに伏拜ふくはいす。蓋けだし爾なんぢは、萬ばん衆しゆうの生命いのちよ、其その上うへに釘ていせられて、信しんを以もつて爾なんぢに就つきし盜賊たうぞくの爲ために樂園らくゑんを啓ひらき、爾なんぢを承うけ認みとめて、主しゆよ、我われを憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものを福樂ふくらくに勝たへさせ給たまへり。救世主きうせいしゆよ、彼かれの如ごとく我われ等らをも受うけ給たまへ、我われ等ら衆しゆう罪つみを犯おかせり、爾なんぢの慈じ憐れんに因よりて我われ等らを棄すつる勿なかれと呼よべばなり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 恒忍ごうにんなる言ことばよ、牝め羊ひつじは羔こひつじたる爾なんぢが十じふ字架じかに盜賊たうぞくと共ともに釘ていせられて、戈ほこにて脅わきを刺ささるるを見みて、母はゝとして呼よびて云いへり、我わがイイススよ、斯この驚おどろくべく畏おそるべき祕ひ密みつ、言いひ難がたく行おこなはるる者ものは何なにぞ、像かたどり難がたき神かみよ、如何いかんぞ墓はかに隱かくるる。吾わが甘愛かんあいなる子こよ、爾なんぢを生うみし我われを遺すつる毋なかれ。

第二の「カフィズマ」の後に坐誦讚詞セダレン、第一調。

主しゆよ、爾なんぢの民たみを救すくひ、爾なんぢの業げふに福ふくを降くだせ、我わが皇くわう帝ていに敵てきに勝かたしめ、爾なんぢの十じふ字架じかにて爾なんぢの住處すまひを守まもり給たまへ。

句 神かみ、我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

十じふ字架じかの武器ぶきは昔むかし敬虔けいけんなるコンスタンティン帝ていに、戰たゝかひの時ときに敵てきに對たいして、信しんに由よる勝かたれぬ勝かちと顯あらはれたり。仇敵きうてきの軍ぐんは之これに慄をのゝく、此これ信者しんじやの爲ためには救すくひ、パワェルの爲ためには誇ほこりと爲なれり。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 人ひとを愛あいする主しゆよ、祈いのる、聖せいなる者ものが爾なんぢの爲ために受うけし痛傷いたみに由よりて、我われ等らの悉ことごとくの痛傷いたみを醫いやし給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの轉達てんたつを有たもち、爾なんぢの祈き禱たうにて難難かんなんより救すくはれ、爾なんぢの子この十じふ字架じかにて何處いづこにも護まもられて、我われ等ら皆みな職しよくとして敬虔けいけんに爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第一調。

言ことばよ、日ひは爾なんぢ光くわう榮えいの日ひが大だい慈じ憐れんに由よりて、甘あまんじて十じふ字架じかの木きに身みにて懸かけられしを覩みる時とき、狂きやう妄ばうに忍しのびずして晦くらみたり。祈いのる、イイススよ、我わが昧くらまされし靈たましひを爾なんぢの近ちかづき難がたき光ひかりを以もつて照てらして、我われを救すくひ給たまへ。

洪恩こうおんなる主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかの上うへに手てを伸のべて、爾なんぢより遠とほく在ありし異い邦民はうみんを集あつめ給たまへり、爾なんぢの多おほくの仁じん慈じを讚榮さんえいせん爲ためなり。祈いのる、爾なんぢの嗣し業げふを眷かへりみて、我われ等らと戰たゝかふ者ものを爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかにて斃たふし給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 無む玷てんなる牝め羊ひつじは羔こひつじ及および牧者ぼくしやが木きに懸かけられて死しせしを見みて、哭なきて言いひ、母はゝとして呼よべり、吾わが子こ、至し仁じんなる神かみよ、如何いかにして我われ言ことばに超こゆる爾なんぢの謙卑へりくだりと自じ由いうなる苦くるしみとを忍しのばん。

尊貴にして生命を施す十字架の規程カノン、其冠詞は、我苦を受けし主宰の十字架に由りて救はる。イオシフの作。第一調。

第一歌頌

イルモス イズライリは苦くるしき奴ど隷れいより脫のがれて、涉わたられぬ處ところを陸くがの如ごとくに過とほれり。敵てきの溺おぼるるを見みて、恩主おんしゆたる神かみ、高たかき臂ひぢを以もつて奇き蹟せきを行おこなふ者ものに歌うたを奉たてまつる、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

ハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに擧あげられて、陷おちいりし人ひとを己おのれと偕ともに擧あげ、悉ことごとくの敵てきの力ちからを墜おとし給たまへり。故ゆゑに言ことばよ、我われ爾なんぢ苦くるしみを受うけて、我われを諸もろもろの苦くるしみより救すくひし者ものの苦くるしみを歌うたふ。

神聖しんせいなる行爲しわざの栽培者さいばいしやよ、爾なんぢ光くわう榮えいの主しゆにして、人ひとに光くわう榮えいを冠かうむらせし者ものは、棘いばらを冠かうむらせられたり、荊棘いばらを生しやうずる我われ等らの性せいを善よき果みを結むすぶ者ものと爲なさん爲ためなり。

致命者讚詞 法はふの爲ために苦くるしみを受うけし聖者せいしやの至し聖せいなる會くわいは、聖せいなる血ちの流ながれを以もつて一切いつさいの造物ざうぶつを聖せいにし、惡あく鬼きに捧さゝぐる汚けがらはしき祭まつりを神父かみちゝに因よりて滅ほろぼせり。

致命者讚詞 至し聖せいなる致ち命者めいしやよ、苦く難なんの雲くもは爾なんぢ等らの忍耐にんたいの勳功いさをしを隱かくさざりき。故ゆゑに爾なんぢ等らは日ひの光くわう線せんよりも盛さかんに顯あらはれて、明あきらかに救すくひの光ひかりを輝かゞやかせり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢが戈ほこにて己おのれの子この刺ささるるを見みる時とき、劍つるぎは爾なんぢの靈たましひを貫つらぬけり、此これ信者しんじやの爲ために樂園らくゑんに入いる聖入せいにふを禁きんずる劍つるぎを退しりぞくる者ものが刺さされたればなり。

又、至聖なる生神女の規程カノン、第一調。

第一歌頌

イルモス 死しせざる主しゆよ、勝かちを獲うる爾なんぢの右みぎの手ては、神かみに適かなふが如ごとく、能力ちからにて光くわう榮えいを顯あらはせり、其その全能ぜんのうなるに因よりて、敵てきを滅ほろぼし、イズライリ人じんの爲ために新あらたなる深水ふかみの路みちを開ひらきたればなり。

罪つみの汚けがれを洗あらひ去さる泉いづみを生うみし純じゆん潔けつなる者ものよ、我われに靈たましひの淚なみだの流ながれを與あたへて、我わが生いのちを痛つう悔くわいに向むかはしめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは身みを取とる神かみを生うみて、造物ざうぶつより最高いとたかき者ものと爲なれり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、諸慾しよよくの泥どろより我われを起おこして、無む慾よくの神聖しんせいなる高處たかみに升のぼせ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、祈いのる、審判しんぱんの日ひに我わが爲ために慈じ憐れんなる者ものと顯あらはれ給たまへ。至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの庇蔭おほひの下したに趨はしり附つく我われを畏おそるべき左ひだりの方かたに立たつことと甚はなはだしき苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ。

至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、罪つみの黑暗くらやみに蔽おほはれて陷おちいりし我われを起おこして、汚けがらはしき行おこなひを洗あらふべき淚なみだの雨あめを我われに與あたへ給たまへ、我われ等ら獨ひとり爾なんぢを保護ほご者しやと有たもてばなり。

第三歌頌

イルモス 死しすべき者ものは己おのれの智慧ちゑと富とみとを以もつて誇ほこるべからず、主しゆを信しんずる信しんを以もつて誇ほこりて、正たゞしくハリストス神かみに呼よびて、常つねに歌うたふべし、主宰しゆさいよ、爾なんぢの誡いましめの石いしに我われを固かため給たまへ。

我わがイイススよ、不ふ法はふの者ものは爾なんぢ始はじめに手てを以もつて言いひ難がたく人ひとを造つくりし者ものの手てと足あしとを穿うがてり。唯たゞ爾なんぢは、ハリストス神かみよ、苦くるしみを以もつて衆しゆうを諸もろもろの苦くるしみ及および朽きう壞くわいより釋とき給たまへり。

月つき及および日ひは停とゞまるべしとイイスス呼よびて、十じふ字架じかの上うへに身みにて苦くるしみを受うけし主宰しゆさい、其その苦くるしみにて光くわう體たいを晦くらます者ものを像かたどれり。此これに因よりて幽闇くらやみの凶きよう惡あくなる魁かしらは辱はづかしめられたり。

致命者讚詞 光くわう榮えいなる致ち命者めいしやは勇いさましく苦痛いたみを忍しのび、傷きずつけられて、强つよく蛇へびワェリアルに傷きずつけたり。故ゆゑに神かみの指麾しきに因よりて、恒つねに吾わが靈たましひの痛傷いたみを醫いやし給たまふ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは苦くるしみと勇敢いさみとを以もつて惡あく鬼きの宮みやと寺てらとを壞こぼち、恩おん寵ちようを以もつて己おのれの爲ために至し榮えいにして父ちゝと、子こと、聖神せいしんとの居處すまひなる殿でんを建たて給たまへり。

生神女讚詞 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは人ひとの子こより美うるはしき者ものが苦くるしみの時ときに姿容すがたもなく威ゐ嚴げんもなきを見みて、痛いたましく呼よびて云いへり、哀かなしい哉かな、衆しゆう人じんを苦くるしみより救すくはんと欲ほつする子こよ、如何いかんぞ苦くるしみを受うくる。

又

イルモス 獨ひとり人ひとの性せいの弱よわきを知しりて、憐あはれみを以もつて之これを衣きたる者ものよ、我われに上うへよりの力ちからを帶おびて、爾なんぢに呼よばしめ給たまへ、人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいの生いける宮みやは聖せいなり。

萬有ばんいうの王わうたる主しゆの殿でんと爲なりし至し淨じやうなる者ものよ、靈たましひを滅ほろぼす盜賊たうぞくの巢すと爲なりし我われを其その苦惱なやみより引ひき出いだして、神聖しんせいなる神しん゜の潔いさぎよき居處すまひと現あらはし給たまへ。二次。

生しやう神女しんぢよ、仁じん慈じの穩おだやかなる海うみたるハリストス我わが神かみを生うみし讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、祈いのる、我われに淚なみだの雨あめを遣つかはして、我わが惡あしき行おこなひの流ながれを涸からし給たまへ。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる者ものよ、我われ等らの爲ために堅固かためと動うごかざる柱はしら、盾たてと勝かたれぬ武器ぶき、無む形けいの敵てきの隊たいを我われ等らより退しりぞくる者ものと爲なり給たまへ、我われ等ら信しんと愛あいとを以もつて爾なんぢ至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよを尊たふとめばなり。

第四歌頌

イルモス ハリストスよ、昔むかしアウワクムは爾なんぢの奇き妙めうなる風聲おとづれを聞ききて、懼おそれて呼よべり、神かみは南みなみより來きたり、聖せいなる者ものは樹こ蔭かげ繁しげき山やまより來きたりて、其その膏あぶらつけられし者ものを救すくはん。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

ハリストスよ、爾なんぢは痛傷いたみと瘡痍きずとを忍しのびて、我わが心こゝろの瘡痍きずを醫いやし、苦にがき膽いを嘗なめて、逸樂いつらくの甘かん味みの害がいを除のぞき、木きの上うへに釘ていせられて、古いにしへの詛のろひを滅ほろぼし給たまへり。

恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢは十じふ字架じかに擧あげられて、爾なんぢより遠とほく離はなれたる異い邦民はうみんを近ちかづかしめ、中ちゆう保はう者しやとして中ちゆう間かんに立たち、地ちの中なかに耻はづべき苦くるしみを忍しのびて、我われ等らを父ちゝと和わ睦ぼくせしめ給たまへり。

致命者讚詞 神福しんぷくたる者ものよ、爾なんぢ等らの血ちの海うみに無む形けいのファラオンは其その悉ことごとくの軍ぐんと共ともに陷おちいりて溺おぼれたり。故ゆゑに爾なんぢ等らは救すくはれて歡喜よろこびを以もつて許約きよやくの地ちに來きたりて、天てんの國民こくみんと爲なれり。

致命者讚詞 福ふくたる者ものはハリストスの苦くるしみに感激かんげきして、其その尊たふとき身みにて諸もろもろの苦くるしみを受うくるに勝たふる者ものと爲なれり。故ゆゑに彼かれ等らを歌うたひて、常つねに讚ほめ揚あぐる者ものの靈たましひと體からだとの慾よくを絕たち給たまふ。

生神女讚詞 ハリストスよ、爾なんぢを生うみし者ものは不義ふぎなる屠殺ほふりを見みて、哭なきて爾なんぢに呼よべり、義ぎなる子こ、昔むかし違ゐ反はんに因よりて定罪ていざいせられて、朽きう壞くわいに陷おちいりし者ものを義ぎとせんと欲ほつする主しゆよ、如何いかにして非義ひぎに定罪ていざいせられたる。

又

イルモス アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢ、神かみの恩おん寵ちように覆おほはるる山やまを見みて、イズライリの聖せいなる者ものが我われ等らを救すくひ改あらためん爲ために爾なんぢより出いづるを預よ言げんせり。

仁じん慈じなる者ものよ、我われ惡あく鬼きの誘惑いざなひにて强つよく神かみの誡いましめより引ひき離はなさるる者ものを棄すつる勿なかれ。祈いのる、至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの慈じ憐れんに趨はしり附つく我われを憐あはれみて、其その誘惑いざなひに惱なやまされざる者ものと爲なし給たまへ。二次。

獨ひとり慈じ憐れんなるハリストスを生うみし者ものの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢを賴たのむ者ものを憐あはれみ、宥なだめ、爾なんぢの誡いましめの光ひかりに導みちびきて、永遠えいゑんの生命いのちを得えしめ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、祈いのる、我われ寢いねて死しし、失望しつばうの柩ひつぎに臥ふし、我わが罪つみの鐵梏てつかせにて縛しばられたる者ものを、爾なんぢの眠ねむらざる祈き禱たうを以もつて起おこして、痛つう悔くわいに向むかはしめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス ハリストスよ、我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろに爾なんぢの入いらざる光ひかりを輝かゞやかして、智慧ちゑに超こゆる平安へいあんを我われ等らに與あたへ給たまへ、我われ等らが爾なんぢの光ひかりに由よりて無知むちの夜よより日ひに趨はしりて、爾なんぢ人ひとを愛あいする主しゆを讚榮さんえいせん爲ためなり。

救世主きうせいしゆよ、日ひは爾なんぢ地ちを水みづの上うへに懸かけし者ものが裸はだかにして木きに懸かかれるを覩みて、光ひかりより裸はだかになり、磐いはは十じふ字架じかが磐いはの上うへに立たてられしに感かんじて、畏懼おそれに因よりて裂さけ、基もとゐは震ふるへり。

恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢは木きに擧あげられ、釘くぎにて打うち着つけられて、指ゆびは血ちに塗まみれ、戈ほこにて肋あばらを刺さされて、アダムの傷きず、其その肋あばら骨ぼねに聽ききて、之これを造つくりし主しゆに背そむきしに由よりて獲えたる者ものを醫いやし給たまへり。

致命者讚詞 致ち命者めいしやの大數たいすうは樂園らくゑんと顯あらはれて、其中そのうちに生命せいめいの樹きたるハリストスを有たもてり。彼かれ等らはハリストスの爲ために勇いさましく耻はづべき死しを忍しのびて、食しよくを以もつて原げん祖そを殺ころしし蛇へびを神聖しんせいなる力ちからにて殺ころせり。

致命者讚詞 ハリストスの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは血ちの滴したゝりを以もつて無む神しんの淵ふちを涸からし、奇き蹟せきの神聖しんせいなる流ながれにて靈たましひと體からだとの諸慾しよよくの流ながれを塞ふさぐ。故ゆゑに宜よろしきに合かなひて讚さん美びせらる。

生神女讚詞 無む玷てんなる者ものはハリストスが甘あまんじて木きに擧あげられしを覩みて、驚おどろきて、哭なきて呼よべり、吾わが子こ及および神かみよ、我われ產さんの時ときに苦くるしみを免まぬかれたり、今いま不ふ法はふの者ものより爾なんぢが非義ひぎに釘ていせらるるを覩みて、痛いたく苦くるしむ。

又

イルモス 己おのれの降臨かうりんの光ひかりにて世せ界かいの極はてを照てらし、己おのれの十じふ字架じかにて之これを輝かゞやかししハリストスよ、爾なんぢが智慧ちゑの光ひかりにて正たゞしく爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろを照てらし給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、多おほくの罪つみの河かはは我われを衝つきて、吾わが靈たましひの家いへを倒たふせり。列れつ祖その改易あらためなる生しやう神女しんぢよよ、我われ爾なんぢの僕ぼくを起おこし給たまへ。二次。

女宰ぢよさいよ、我われ不ふ當たうの者もの、諸慾しよよくの沼ぬまに陷おちいりて、多おほくの罪つみの暴風あらしに溺おぼらさるる者ものに手てを授さづけ、我われを引ひき上あげて、痛つう悔くわいの港みなとに向むかはしめ給たまへ。

祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われに靈たましひの汚けがれの潔淨きよめを賜たまひ、我われを體からだの諸しよ病びやうより醫いやし、我われを圍かこめる甚はなはだしき煩悶もだえより援たすけ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ全身ぜんしん無む量りやうの慾よくに圍かこまれて、諸惡しよあくの淵ふちに陷おちいれり。祈いのる、神かみよ、曩さきにイオナを救すくひし如ごとく、我われを淪滅ほろびより引ひき上あげて、信しんに由よりて我われに無む慾よくを賜たまへ、我わが讚さん美びの聲こゑと眞實しんじつの神しん゜とを以もつて爾なんぢを祭まつらん爲ためなり。

人ひとを愛あいする主しゆよ、モイセイは手てを上うへに擧あげし時とき、爾なんぢ木きの上うへに手てを伸のべて、凶きよう惡者あくしやの有いう害がいなる權けんを滅ほろぼしし者ものの苦くるしみを像かたどれり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを贖しよく罪ざい者しや及および主しゆなりと識しりて、崇あがめ歌うたふ。

ハリストスよ、爾なんぢ木きに擧あげられ死しを忍しのびて、我われ等らを殺ころしし者ものを殺ころし、爾なんぢの手ての造物ざうぶつを活いかし給たまへり。戈ほこにて脅わきを刺さされて、爾なんぢ二ふたつの旨むねを有たもつ者ものとして歌か頌しようせらるる主しゆは赦罪しやざいの二ふたつの川かはを流ながし給たまへり。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らの死しは主しゆの前まへに尊たふとし、爾なんぢ等らは己おのれの尊たふとき苦くるしみにて主しゆを讚榮さんえいし、凶きよう惡あくなるワェリアル、苛虐くるしめを盡つくして爾なんぢ等ら衆しゆうを倒たふさんと謀はかりし者ものを辱はづかしめたり。

致命者讚詞 睿えい智ちなる者ものよ、爾なんぢ等らは靈たましひを全まつたくして己おのれを悉ことごとくの苦くるしみに付わたして、全まつたき人じん性せいを衣きたる主しゆの爾なんぢ等らに賜たまふ援助たすけを得えたり。故ゆゑに百ひやく體たい寸斷すんだんせられ、火ひに擲なげうたれて樂たのしめり。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせられしを見みて呼よべり、子こよ、見みる所ところの驚おどろくべき顯見あらはれは何なにぞ、病びやう者しやの苦くるしみを醫いやすハリストスよ、如何いかにして斯かくの如ごとき苦くるしみを忍しのぶ、諸敵しよてきは爾なんぢ恩主おんしゆに其その受うけたる恩おん寵ちようの爲ために何なにをか報むくいたる。

又

イルモス 今いまを限かぎりの淵ふちは我われ等らを圍かこめり、脫のがれしむる者ものなし、我われ等らは屠と所しよの羊ひつじの如ごとし。吾わが神かみよ、爾なんぢの民たみを救すくへ、爾なんぢは弱よわる者ものの力ちからと更新あらためなればなり。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの種たねなき胎たいより生うまれし者ものの戈ほこを以もつて我わが罪つみの書券かきつけを破やぶり、爾なんぢの神聖しんせいなる庇蔭おほひに趨はしり附つく我われを選えらばれたる者ものの書しよに錄しるさるるに勝たふる者ものと爲なし給たまへ。二次。

ハリストスよ、爾なんぢを生うみし者ものの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢの諸僕しよぼくを潔きよめ、獨ひとり仁じん慈じなる主しゆとして諸罪しよざいの赦ゆるしを降くだし給たまへ、爾なんぢは凡およそ爾なんぢを賴たのむ者ものの救主きうしゆ及および贖しよく罪主ざいしゆなればなり。

生命いのちを賜たまふ主しゆを生うみし至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、我われ諸慾しよよくに殺ころされし者ものを今いま爾なんぢの祈き禱たうを以もつて生いかして、惡敵あくてきに勝かつ者ものと顯あらはし給たまへ、我われ等らは獨ひとり爾なんぢを神かみの前まへに我われ等らを助たすくる者ものとして有たもてばなり。

第七歌頌

イルモス 昔むかし敬虔けいけんに由よりて明あきらかに聖せいなる者ものと現あらはれし少者せうしやは、婚筵こんえんの宮みやを過とほるが如ごとく、爐ゐろりの堪たへ難がたき焰ほのほを涉わたり、聲こゑを合あはせて歌うたを歌うたへり、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我わがイイススよ、我われ敵てきの奴ど隷れいと爲なりし者ものを釋とかんと欲ほつして、爾なんぢは主宰しゆさいにして奴ど隷れいより打だ擊げきを受うけ、十じふ字架じかに釘ていせられて、我われを救すくひて歌うたはしむ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

仁じん慈じなる主しゆよ、爾なんぢ釘ていせられしに、萬物ばんぶつは震ふるひ、爾なんぢ戈ほこにて刺さされしに、敵てきは全ぜん體たいに傷きずを受うけ、傷きずつけられしアダムは愈いえて呼よべり、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

致命者讚詞 十じふ字架じかにて衞まもらるる受難者じゆなんしやの光くわう榮えいなる軍ぐんは恩おん寵ちようを以もつて敵てきの隊たいを滅ほろぼし、勝しよう利りの榮えい冠くわんを受うけて呼よべり、吾わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

致命者讚詞 火ひよりも至いたりて强つよき熱心ねつしんを獲えたる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは火ひに投とうぜられて、焚やかれずして、拜偶像はいぐうざうの敎をしへを焚やきて呼よべり、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの產さんは至し榮えいにして萬世ばんせいを生うみ、十じふ字架じかに擧あげられて、陷おちいりし者ものを偕ともに擧あげ、天てんの居きよ住ぢゆう者しやと爲なして呼よばしむ、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

又

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを見みて屬神ぞくしんの爐ゐろりと爲なす、蓋けだし先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみは、三人みたりの少者せうしやを救すくひし如ごとく、斯かく爾なんぢの腹はらに於おいて全ぜん世せ界かいを改あらため給たまへり。

至し淨じやうなる者ものよ、生命いのちの泉いづみを生うみし者ものとして、生いのちを施ほどこす手てを以もつて我わが死しせし靈たましひを起おこして、我われを心こゝろの傷しやう感かんを以もつて呼よぶに勝たふる者ものと爲なし給たまへ、先せん祖ぞの尊たふとまるる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。二次。

世世よよの先さきなる神かみは甘あまんじて爾なんぢの潔いさぎよき血ちより新あらたなるアダムとして生うまれ給たまへり。彼かれに今いま我われ古ふるびたる者ものを新あらたにせんことを祈いのり給たまへ、蓋けだし我われ呼よぶ、我わが先せん祖ぞの尊たふとまるる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 敵てきは慾よくの道みちを以もつて來きたりて、無む慙ざんに我わが卑微ひびなる靈たましひを執とらへんと欲ほつす。至し淨じやうなる者ものよ、其その惡謀あくぼうを破やぶりて、我われを宥なだめ給たまへ、蓋けだし我われ歌うたふ、先せん祖ぞの尊たふとまるる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

第八歌頌

イルモス 昔むかし火ひと露つゆとの爐ゐろりは天然てんねんに超こゆる奇き蹟せきの象かたちを示しめせり、蓋けだし火ひは少者せうしやを焚やかずして、ハリストスの童貞女どうていぢよよりの種たねなき神聖しんせいなる產さんを顯あらはせり。故ゆゑに我われ等ら歌うたひて呼よばん、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

命めいを以もつて天てんを張はりたる者ものは甘あまんじて十じふ字架じかに擧あげられ、慾よくに由よりて跌つまづきし始はじめて造つくられたるアダムを起おこさんと欲ほつする者ものは釘くぎにて著つけられたり。故ゆゑに我われ等ら歌うたひて呼よぶ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

神かみの言ことばよ、石いしの如ごとく心こゝろの頑かたくななる會くわいは爾なんぢ石いしたる者ものを磐いはに樹たてたる十じふ字架じかに擧あげしに、山やまは動うごき、地ちは震ふるへり。搖うごける靈たましひは神聖しんせいなる生命いのちに堅かためられて恒つねに呼よぶ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

致命者讚詞 聖せいなる受難者じゆなんしやは勇いさましく裸ら體たいにして苦くるしみを受うけ、傷きずに覆おほはれて、己おのれの爲ために救すくひの衣ころもを織おりたり。故ゆゑに歌うたひて呼よぶ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやは無む情じやうに鐵搭くまでにて搔かかれ、無む慙ざんに寸斷すんだんせられ、種種しゆじゆの苦くるしみに遇あはせられて、偶像ぐうざうに祭まつりを捧さゝげず、信者しんじやの爲ために勇敢いさみの柱はしらと顯あらはれて呼よべり、悉ことごとくの造物ざうぶつはハリストスを崇あがめて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

生神女讚詞 爾なんぢを惡にくむ無智むちの會くわいが爾なんぢを地ちより去さらんと定さだめし後のち、我われ子こなき者ものと爲なりて哀かなしみ、母はゝとして心こゝろ痛いためりと、夫をつとに與あづからざる者ものは昔むかし爾なんぢが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて呼よべり。イイススよ、彼かれと共ともに造物ざうぶつは爾なんぢ衆しゆうの贖しよく罪主ざいしゆを世世よよに讚榮さんえいす。

又

イルモス イズライリの少者せうしやは爐ゐろりに在ありて、坩堝るつぼに在あるが如ごとく、敬虔けいけんの美うるはしきを以もつて黃こ金がねよりも明あきらかに輝かゞやきて云いへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

光ひかりの門もんなる潔いさぎよき者ものよ、我わが心こゝろの眼めを照てらして、諸慾しよよくの雲くもと深ふかき暗やみとを散ちらし給たまへ、我わが歌うたはん爲ためなり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを歌うたひて、世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。二次。

潔いさぎよき女宰ぢよさい、純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢを神かみの母はゝとして呼よぶ衆しゆう人じんの爲ために絕たえず祈いのりて、歌うたはしめ給たまへ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

救すくひの緣由ゆゑんたるハリストスを言いひ難がたく生うみし讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、衆しゆうの爲ために祈いのりて、切せつに呼よばしめ給たまへ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、及び躬拜。

第九歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよの祕ひ密みつは言いひ難がたし、蓋けだし彼かれは天てんと現あらはれ、ハリストス神かみ全能者ぜんのうしやのヘルワィムの寶はう座ざ及および光ひかりを放はなつ宮みやと現あらはれたり。我われ等ら敬虔けいけんに彼かれを生しやう神女しんぢよとして崇あがめ讚ほむ。

救世主きうせいしゆよ、善ぜん智ちなる盜賊たうぞくは昔むかし爾なんぢ無む量りやうの水みづの上うへに地ちを懸かけし者ものが木きに懸かけられしを見みて、信しんを以もつて爾なんぢに呼よべり、我われを憶おもひ給たまへと。彼かれと偕ともに我われ等らは敬虔けいけんに爾なんぢの苦くるしみを讚榮さんえいす。

イイススよ、爾なんぢは十じふ字架じかに釘ていせられて、地ちの基もとゐを震ふるはせ、戈ほこにて刺さされて、不死ふしの滴したゝりなる血ち及および水みづ、人類じんるゐを諸慾しよよくより潔きよむる者ものを流ながし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを歌うたひて崇あがめ讚ほむ。

致命者讚詞 聖せいなる勇敢ゆうかん者しやは苦くるしみの中うちに樂たのしみて、互たがひに甘味あまみを勸すゝむるが如ごとく、相あひ勵はげまして呼よべり、視みよ、ハリストスは騁はすべき途みちを啓ひらけり、今いま其その愛あいする者ものに榮えい冠くわんを與あたへ給たまふ。

致命者讚詞 衆しゆう信者しんじやは慶けい賀がして、勝かたれぬ致ち命者めいしやの無む數すうの苦くるしみと傷きずとを尊たふとむ。此これ等らに由よりて受難者じゆなんしやは疾やまひなき生命いのちと永遠えいゑんの福樂ふくらくとを受うくるに堪たふる者ものと爲なれり。

生神女讚詞 人ひとを愛あいする言ことばを言いひ難がたく生うみし少女せうぢよは、彼かれが甘あまんじて人人ひとびとより苦くるしめらるるを見みて、呼よべり、是これ何なにぞや、苦くるしみに與あづからざる神かみは苦くるしみを受うく、信しんを以もつて彼かれに伏拜ふくはいする者ものを苦くるしみより脫のがれしめん爲ためなり。

又

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、燃もゆれども燒やかれぬ棘いばらは爾なんぢが潔いさぎよき產さんの象かたちを顯あらはせり。祈いのる、今いまも我われ等らを攻せめ圍かこむ誘惑いざなひの爐ゐろりを撲うち滅けして、常つねに爾なんぢを崇あがめさせ給たまへ。

讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、我わが諸罪しよざいの重おもき任にを取とりて、我われに爾なんぢの子こ及および神かみの至いたりて輕かろき軛くびきを負おはしめて、上うへなる完くわん全ぜんに登のぼらしむる途みちを履ふむに勝たふる者ものと爲なし給たまへ。二次。

純じゆん潔けつなる者ものよ、我われハリストスの降臨かうりんの畏おそるべき日ひを思おもひて慄をのゝく、吾わが一いつ生しやうは罪つみの中うちに終をはり、吾わが靈たましひは慾よくに充みちたればなり。我われを憐あはれみて、彼かの時ときに定罪ていざいを免まぬかれしめ給たまへ。

至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、爾なんぢの不ふ當たうなる僕ぼくの禱いのりを受うけて、我わが靈たましひと體からだとの騷擾みだれを深ふかき穩靜をんせいに變へんじ給たまへ、我わが救すくはれて爾なんぢを讚さん美びせん爲ためなり。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。小聯禱、光耀歌。次に常例の聖詠。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第一調。

我われ等らは爾なんぢ身みにて木きの上うへに釘ていせられて、我われ等らに生命いのちを賜たまひし者ものを、救世主きうせいしゆ及および主宰しゆさいとして、絕たえず歌うたふ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

ハリストスよ、爾なんぢの十じふ字架じかに因よりて諸天しよてん使し及および人人ひとびとは一いつの牧群ぼくぐんと爲なり、天てんと地ちとは一いつの會くわいに於おいて樂たのしみて呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、憂患うれひも、困苦くるしみも、飢渴うゑも、窘逐せめも、創痍きずも、猛獸まうじうの猛たけきも、刀劍つるぎも、烈はげしき火ひも爾なんぢ等らを神かみより離はなすこと能あたはざりき。爾なんぢ等らは更さらに彼かれを愛あいする愛あいを燃もやして、他た人にんの身みに在あるが如ごとく鬪たゝかひて、性せいを忘わすれ、死しを顧かへりみざりき。故ゆゑに宜よろしき合かなひて、爾なんぢ等らの苦くるしみの報むくいを受うけ、天國てんこくの嗣よつぎと爲なれり。息やめずして我わが靈たましひの爲ために祈いのり給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 神かみの言ことばよ、牝め羊ひつじたる爾なんぢの無む玷てんの母はゝは爾なんぢの十じふ字架じかの側かたはらに立たちて、哭なきて呼よべり、哀かなしい哉かな、子こよ、如何いかんぞ十じふ字架じかに死しする、哀かなしい哉かな、我わが甘あまき光ひかり、衆しゆう人じんより最いと美うるはしき者ものよ、爾なんぢの美び麗れいは今いま何處いづこにか隱かくれたる。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」、聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。司祭聯禱を誦す、及び發放詞。次に第一時課、常例の聖詠、及び最後の發放詞。

 水曜日の聖体礼儀に

水曜日の眞福詞、第一調

敵てきは食しよく物もつを以もつてアダムを樂園らくゑんより引ひき出いだし、ハリストスは十じふ字架じかを以もつて盜賊たうぞくを其中そのうちに入いれ給たまへり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき、我われを憶おもひ給たまへと呼よべばなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

仁じん慈じなるハリストスよ、爾なんぢは耻はづべき苦くるしみを忍しのびて、我われ等らの悉ことごとくの耻はぢを除のぞき、爾なんぢの降臨かうりんに伏拜ふくはいする我われ等らを上うへなる國くにに與あづかる者ものと爲なし給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

ハリストスよ、爾なんぢはアダムの裸ら體たいを覆おほひて、自みづから裸ら體たいと爲なり、十じふ字架じかに上あがりて、我われ等らを惡あくの深處ふかみより上あげ給たまへり。故ゆゑに言ことばよ、我われ等ら爾なんぢの聖せいなる降臨かうりんを讚榮さんえいす。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは己おのれの聖せいなる傷きずにて惡あく鬼きの大數たいすうに傷きずつけ、恩おん寵ちようを以もつて恒つねに人人ひとびとの傷きずと痛いたみとを實じつに醫いやし給たまふ。

光榮 聖三者せいさんしやは切せつに之これを尊たふとみて、其その分わかれざる權柄けんぺいを有たもつ者ものなるを識しる衆しゆう人じんを照てらし給たまふ。我われ等ら彼かれに呼よばん、聖三者せいさんしやよ、愛あいを以もつて爾なんぢを歌うたふ者ものを救すくひ給たまへ。

今も 純じゆん潔けつなる者ものは十じふ字架じかの側かたはらに立たち、ハリストスが身みにて釘ていせられしを見みて、歎息たんそくして呼よべり、光くわう榮えいの主しゆ、慈じ憐れんなる者ものよ、爾なんぢの美び麗れいは今いま何處いづこにか隱かくれたる。

 水曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に聖使徒の讚頌スティヒラ、第一調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

光くわう榮えいなる使徒しと、神かみに召めされたるハリストスの門もん徒と、世せ界かいの敎けう師しよ、爾なんぢ等らは主しゆ神かみ及および人人ひとびとの中ちゆう保はう者しやに遇あひて、神かみに合かなふが如ごとく彼かれに就つき、彼かれを神かみ及および完くわん全ぜんなる人ひととして明あきらかに世せ界かいに傳つたへたり。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

至いたりて睿えい智ちなる使徒しと、神かみに召めされたるハリストスの門もん徒と、世せ界かいの敎けう師しよ、爾なんぢ等らの祈き禱たうを以もつて、神聖しんせいなる敎をしへを謹つゝしみて聽きかん爲ために我われを堅かため、常つねに狹せまき路みちを行ゆくを我われに助たすけ給たまへ、我わが最いと廣ひろき樂園らくゑんの居處すまひに至いたるを得えん爲ためなり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

首しゆ座ざたるペトル、及およびパワェル、イアコフ、アンドレイ及およびフィリップ、シモン、ワルフォロメイ及およびフォマ、福音ふくいんを錄しるししマトフェイ及およびイオアン、マルコ及およびルカ、神かみに選えらばれたる會くわいを、他たの七しち十じふ人にんと偕ともに、言ことばの實見者じつけんしや及および傳道でんだう者しやとして崇あがめ歌うたふ。

又、大なる成聖者及び奇蹟者ニコライの讚頌スティヒラ、第一調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

敎けう會くわいの花はなを飛とび繞めぐる天てん使しの上うへなる巢すの雛ひなたる三重みへに福さいはひなるニコライよ、爾なんぢは常つねに患くわん難なん及および誘いう感かんの中うちに在ある衆しゆう人じんの爲ために神かみに呼よびて、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて彼かれ等らを救すくひ給たまふ。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

至いたりて聖せいにせられし神しん父ぷよ、爾なんぢは天てんの華麗くわれいを巡めぐり視みて、聖人せいじん等らの莊嚴おごそかなる光くわう榮えいを盡ことごとく悟さとれり。故ゆゑに我われ等らにも天てんの事ことを顯あらはし、我わが心こゝろを勵はげまして、地ち上じやうの諸しよ事じより天てんに向むかはしめ給たまふ。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

捧神ほうしんなる神しん父ぷよ、爾なんぢは聖せいにせられし衣ころもの裝さう飾しよくを己おのれの盛德せいとくを以もつて更さらに輝かゞやける者ものと爲なせり。故ゆゑに我われ等らの爲ためにも聖せい務むを行おこなひて、ハリストスに因よりて光くわう榮えいなる奇き蹟せきを以もつて我われ等らを諸難しよなんより救すくひ給たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞 神かみの母はゝよ、我われ諸罪しよざいの海うみに荒あらさるる者ものは平穩へいをんの港みなとなる爾なんぢの至いたりて潔いさぎよき祈き禱たうに趨はしり附つきて爾なんぢに呼よぶ、純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの强つよき手てを爾なんぢの僕ぼくに伸のべて、我われを救すくひ給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。其後「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。及び聯禱。

挿句くづけに使徒の讚頌スティヒラ、第一調。

使徒しとの調てう和わしたる簫せう、聖神せいしんに動うごかさるる者ものは、惡あく鬼きの汚けがらはしき祭まつりを虛むなしくして、惟一ゆゐいちの主しゆを傳つたへ、異い邦民はうみんを偶像ぐうざうの迷まよひより脫のがれしめて、一性いつせいなる三者さんしやに伏拜ふくはいせんことを敎をしへたり。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

ベトル及およびパワェルを同心どうしんに崇あがめ讚ほめ、ルカ、マトフェイ、マルコ、イオアン、アンドレイ、フォマ、ワルフォロメイ、シモン、カナニト、イアコフ、フィリップ及および悉ことごとくの門もん徒との會くわいを宜よろしきに合かなひて讚ほめ揚あぐべし。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、地ちは爾なんぢ等らを隱かくさず、天てんは爾なんぢ等らを受うけたり、樂園らくゑんの門もんは爾なんぢ等らの爲ために啓ひらかれ、爾なんぢ等らは其内そのうちに入いりて、生命せいめいの樹きを以もつて慰なぐさむ。我われ等らの靈たましひに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはんことをハリストスに祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 先せん祖ぞの喜悅よろこび、使徒しとと致ち命者めいしやとの歡樂たのしみ、我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくの庇蔭おほひなる童貞女どうていぢよよ、慶よろこべ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ及び發放詞。

 水曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第一調。

第一歌頌

イルモス 我われ等ら皆みな凱歌かちうたを以もつて、高たかき手てにて神妙しんめうなる奇き蹟せきを行おこなひて、イズライリを救すくひし神かみに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

神かみの母はゝよ、棘いばらは爾なんぢを像かたどれり、蓋けだし爾なんぢは實じつに堪たへ難がたき火ひを宿やどして、焚やかれずして止とゞまれり。故ゆゑに我われ等ら敬信けいしんの聲こゑを以もつて常つねに爾なんぢを讚さん頌しようす。

至し淨じやうなる者ものよ、神かみ言ことばは人ひとを衣きて、悟さとり難がたく爾なんぢより生うまれ給たまへり。故ゆゑに凡およそ呼吸いきある者ものは爾なんぢを讚榮さんえいし、爾なんぢに伏拜ふくはいし、職しよくとして爾なんぢを尊たふとむ。

光榮 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは地ちの四し極きよくを持たもつ言いひ難がたき言ことばを孕はらみて、之これを生うみ給たまへり。切せつに彼かれに我われ等らを憐あはれまんことを祈いのり給たまへ。

今も 時ときに限かぎられぬ神かみを時とき屆いたりて人體じんたいを取とりし者ものとして生うみ給たまひし獨ひとり至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、我わが慾よくに耽ふける靈たましひの時とき每ごとの諸慾しよよくを醫いやし給たまへ。

第三歌頌

イルモス 第だい二にの天てんを水みづの上うへに固かため、地ちを水みづに基もとづけし全能ぜんのうのハリストス神かみよ、願ねがはくは我わが心こゝろは爾なんぢの旨むねに固かためられん。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、神かみは人類じんるゐを神成しんせいせん爲ために言ことば及および智慧ちゑに超こえて、爾なんぢに依よりて人ひとと爲なり給たまへり。故ゆゑに我われ等ら信者しんじやは同心どうしんに爾なんぢを讚揚さんやうす。

神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる潔いさぎよき者ものよ、性せいに於おいて像かたどられぬ主しゆは爾なんぢより身みを取とりて像かたどられたり。彼かれに爾なんぢを讚さん美びする者ものの靈たましひを宥なだめて照てらさんことを絕たえず祈いのり給たまへ。

光榮 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよ、信者しんじやの扶ふ助者じよしやよ、我わが果みを結むすばざる思念おもひの荒あれたるを盡ことごとく除のぞきて、我わが靈たましひを諸德しよとくの果みを結むすぶ者ものと顯あらはし給たまへ。

今も 我われ等らの爲ために暮くれざる光ひかりを生うみし至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われを凡およその侵害しんがい、蛇へびの多おほくの誘惑いざなひ、永遠えいゑんの火ひ及および幽暗くらやみより脫のがれしめ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 預よ言者げんしやアウワクムよ、爾なんぢは神しん゜にて言ことばが人體じんたいを取とるを預よ見けんして、傳つたへて呼よべり、年としの邇ちかづく時とき爾なんぢは識しられん、期きの屆いたる時とき爾なんぢは顯あらはれん、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

至し聖せいなる女宰ぢよさいよ、ハリストスは爾なんぢの至し淨じやうなる胎たいに入いり、靈たましひある身みを受うけて、我われ等らを神成しんせいし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢ潔いさぎよき母はゝ、女宰ぢよさい、世せ界かいの扶ふ助者じよしやを醇じゆん正せいに歌か頌しようす。

聖せいなる生しやう神女しんぢよ、人人ひとびとに似にんと欲ほつせし至し聖せいなる主しゆを身みにて生うみし者ものよ、我われ等らを聖せいにし給たまへ。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等ら衆しゆうを天てんの國くにに與あづかる者ものと顯あらはし給たまへ。

光榮 生しやう神しん童貞女どうていぢよ、無む玷てんの幕まくなる者ものよ、諸罪しよざいに汚けがされし我われを今いま爾なんぢの洪恩こうおんの潔いさぎよき灑そゝぎにて淨きよめ、我われに援助たすけの手てを授さづけて、呼よばしめ給たまへ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの能力ちからに歸きす。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは智慧ちゑに超こえて爾なんぢの中うちに入いりし神かみの爲ために聖せいにせられし殿でんと顯あらはれたり。彼かれに我わが諸罪しよざいの汚けがれを淨きよめんことを祈いのり給たまへ、我われ等らが聖神せいしんの殿でん及および居處すまひとならん爲ためなり。

第五歌頌

イルモス 神かみの子こよ、爾なんぢの平安へいあんを我われ等らに與あたへ給たまへ、蓋けだし我われ等らは爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらず、爾なんぢの名なを唱となふ、爾なんぢは生せい死し者しやの神かみなればなり。

昔むかしエデムの中うちに惡あしき食しよくは我われを死し者しやと爲なせり。生命いのちを生うみし潔いさぎよき者ものよ、其時そのとき木きに緣よりて死しせし者ものを生いかし給たまへ、我わが爾なんぢを讚榮さんえいして歌か頌しようせん爲ためなり。

純じゆん潔けつなる者ものよ、我われを甚はなはだしき菑害わざはひより救すくひ、汚けがらはしき諸慾しよよくより起おこし、愛あいを以もつて爾なんぢを尊たふとむ者ものを惡あく鬼きに執とらはれて害がいせらるることより脫のがれしめ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき童貞女どうていぢよ母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを雲くもと、樂園らくゑんと、光ひかりの門もん、筵えんと、羊ひつじの毛けと、世せ界かいの甘かん味みなる「マンナ」を内うちに籠こむる壺つぼとして識しる。

今も 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢは慈じ憐れんに因よりて人ひとと爲なりし神かみエムマヌイルを生うみ給たまへり。潔いさぎよき者ものよ、其その仁愛じんあいの主しゆなるに因よりて、彼かれに罪つみを犯おかしし人人ひとびとを宥なだめんことを祈いのり給たまへ。

第六歌頌

イルモス ハリストス神かみ、人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ爾なんぢに籲よぶ、預よ言者げんしやイオナを救すくひし如ごとく、我わが生命いのちを淪滅ほろびより引ひき上あげ給たまへ、生命せいめいと不ふ朽きうと能のう力りよくとは爾なんぢに在あればなり。

爾なんぢ仁じん慈じ無む玷てんの幕まくなる者ものに祈いのる、我われ多おほくの罪つみに汚けがされたる者ものを爾なんぢの轉達てんたつを以もつて凡およその汚けがれより滌あらひ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ度ど生せいの諸難しよなんの浪なみたつ海うみに荒あらさるる者ものの爲ために舵師かぢとりと爲なりて、救すくひの港みなとに導みちびきて、我われを救すくひ給たまへ。

光榮 意念おもひの騷擾あらだち、諸慾しよよくの攻擊せめ、諸罪しよざいの深處ふかみは我わが不ふ當たうなる靈たましひを溺おぼらす。聖せいなる女宰ぢよさいよ、我われを援たすけ給たまへ。

今も 成聖せいせいの幕まくたる神かみの聘女よめマリヤよ、逸樂いつらくに汚けがされたる吾わが不ふ當たうなる靈たましひを聖せいにして、我われを神聖しんせいなる光くわう榮えいに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第一調。

童貞女どうていぢよ及および聖三者せいさんしやの一いち位ゐの養育者やういくしや、美うるはしき樂園らくゑん、地ち上じやうの者ものの拯救すくひよ、敬虔けいけんに爾なんぢを歌か頌しようする者ものを爾なんぢの庇護おほひにて救すくひ給たまへ。蓋けだし爾なんぢは諸しよ預よ言者げんしやを以もつて言いひし者ものを生うみ、萬有ばんいうを持たもつ者ものを手てに抱いだき給たまへり、ハリストス神かみの母はゝなればなり。

第七歌頌

イルモス 救世主きうせいしゆよ、火ひは爐ゐろりの中うちに在ある爾なんぢの少者せうしやに觸ふれず、彼かれ等らを懼おそれしめざりき、其時そのとき三人さんにん口くちを一いつにして、歌か頌しよう祝しゆく讚さんして言いへり、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

潔いさぎよき神かみの母はゝよ、原始はじめなき父ちゝの子こは爾なんぢの腹はらに入いりて、原始はじめを受うけたり、神かみなるに因よりて、我われ等ら彼かれに伏拜ふくはいする者ものを幽暗くらやみの惡あく原げんより脫のがれしめん爲ためなり。

神聖しんせいなる諸德しよとくに妝よそほはれたる潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは父ちゝと同どう無む原げんなる言ことば、實じつに其その諸德しよとくを以もつて天てんを蔽おほへる者ものを生うみ給たまへり。彼かれに我われ等らを宥なだめんことを常つねに祈いのり給たまへ。

光榮 神かみの母はゝ童貞女どうていぢよよ、我われ等らの意念おもひを聖せいにし、我われ等ら衆しゆうの靈たましひを堅かためて、善ぜんなる戒いましめを行おこなはしめ給たまへ、無む原げんなる父ちゝの言ことば、爾なんぢより身みを取とりし主しゆの言いひ難がたき慈じ憐れんに因よりてなり。

今も 至いたりて無む玷てんなる者ものよ、多おほくの慾よくにて殺ころされし我わが智慧ちゑを生いかして、我われを神かみの悅よろこぶ所ところを行おこなはん爲ために堅かため給たまへ、我わが爾なんぢハリスティアニン等らの保護ほご者しや及および倚賴たのみなる者ものを常つねに崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

第八歌頌

イルモス 諸天しよてん使しと悉ことごとくの軍ぐんとが造物ざうぶつ者しや及および主しゆとして畏おそるる者ものを、司し祭さいよ、歌か頌しようし、少者せうしやよ、讚榮さんえいし、人人ひとびとよ、崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われ等ら爾なんぢを、祝しゆく讚さんせられて神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる生しやう神女しんぢよと識しる者ものは、神かみに捧さゝぐる爾なんぢの眠ねむらざる祈き禱たうに因よりて、諸もろもろの誘惑いざなひより救すくはる。

至し淨じやうなる者ものよ、肉體にくたいなき者ものは神かみに適かなふが如ごとく爾なんぢより肉體にくたいを取とり給たまふ、我わが肉體にくたいの慾よくを殺ころして、罪つみに殺ころされし吾わが靈たましひを生いかさんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

光榮 塵土ちりのアダムの毁傷いたみを醫いやしし救世主きうせいしゆ及および神かみを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、甚はなはだしく病やめる吾わが靈たましひの創痍きずを醫いやさんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、惡あくの深處ふかみに臥ふす我われを起おこして、今いま我われと戰たゝかふ諸敵しよてき、不ふ當たうなる逸樂いつらくを以もつて我わが靈たましひを殘そこなふ者ものに勝かち給たまへ。祈いのる、我われを棄すつる勿なかれ、憐あはれみて我われを救すくひ給たまへ。

第九歌頌

イルモス 光ひかりを放はなつ雲くも、萬有ばんいうの主しゆが雨あめの天てんより羊ひつじの毛けに降くだるが如ごとく降くだり、始はじめなき者ものが身みを取とりて我われ等らの爲ために人ひとと爲なりし所以ゆゑんの者ものを、我われ等ら皆みな我わが神かみの潔いさぎよき母はゝとして崇あがめ讚ほむ。

父ちゝより輝かゞやける神聖しんせいなる光ひかりを生うみし淸淨しやうじやう無垢むくなる者ものよ、度ど生せいの誘惑いざなひに昧くらまされて、諸敵しよてきの哂わらひと爲なりし我わが靈たましひを宥なだめて、救すくひを致いたす痛つう悔くわいの光ひかりに與あづからしめ給たまへ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、イサイヤは爾なんぢを光ひかれる雲くもと見みたり、義ぎの日ひは此これより我われ等らに輝かゞやきて、奧密あうみつに造物ざうぶつを照てらせり。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢ女をんなの中うちに至いたりて美うるはしき者ものを歌か頌しようす。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、我われ罪つみに耽ふけりて怠惰おこたりに生いのちを送おくる者ものは公平こうへいなる審判しんぱんに慄をのゝく。童貞女どうていぢよ・神かみの聘女よめよ、爾なんぢの聖せいなる祈き禱たうを以もつて我われを其時そのときに定罪ていざいせらるるなく護まもり給たまへ、我わが常つねに爾なんぢを保護ほご者しやとして讚さん美びせん爲ためなり。

今も 童貞女どうていぢよよ、我われ地ち上じやうに多おほくの罪つみを行おこなひし者ものは審判しんぱん及および爾なんぢの子この見みざる所ところなき目めに慄をのゝく。故ゆゑに爾なんぢに呼よぶ、至いたりて慈じ憐れんなる潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、我われを助たすけて、定罪ていざいせらるるなく其時そのときの危き難なんより脫のがれしめ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。聖三祝文、「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

木曜日

 木曜日の早課

第一の誦文の後に使徒の坐誦讚詞セダレン、第一調。

全ぜん世せ界かいの睿えい智ちなる漁者ぎよしや、神かみより恩おん寵ちようを受うけし者ものよ、今いまも我われ等らの爲ために祈いのり給たまへ。蓋けだし我われ等ら呼よぶ、主しゆよ、聖せい使徒しとに因よりて皇くわう帝ていと爾なんぢの城邑まちとを救すくひ、我われ等らの靈たましひを圍かこめる諸惡しよあくより解とき給たまへ。

句 其聲そのこゑは全ぜん地ちに傳つたはり、其その言ことばは地ちの極はてに至いたる。

ハリストスの美び音おんの角らつぱ、無む神しんの海うみを亂みだしし馬うま、深處ふかみよりするが如ごとく人人ひとびとを引ひき出いだして、聖神せいしんの恩おん寵ちようを以もつて救すくひの神聖しんせいなる港みなとに着つかしむる睿えい智ちなる使徒しとを、我われ等ら信者しんじやは歌うたを以もつて尊たふとむべし。

光榮、今も、生神女讚詞 信者しんじやよ、我われ等ら壞やぶられぬ垣かきとして生しやう神女しんぢよマリヤを獲えて、來きたりて彼かれに叩拜こうはい俯ふ伏ふくせん。彼かれは己おのれより生うまれし者ものの前まへに勇敢いさみを有たもち、祈いのりて、我われ等らの靈たましひを怒いかり及および死しより救すくひ給たまふ。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第一調。

漁者ぎよしやは十じふ字架じかの杖つゑを以もつて辯論者べんろんしやの言語ことばの緻ち密みつなる網あみを裂さきて、異い邦民はうみんに敬虔けいけんにして爾なんぢ眞まことの神かみを讚榮さんえいすることを敎をしへたり。故ゆゑに我われ等らは爾なんぢ彼かれ等らを堅かためし主しゆに歌うたを奉たてまつりて呼よぶ、光くわう榮えいは父ちゝ及および子こに歸きす、光くわう榮えいは同どう一性いつせいの神しん゜に歸きす、光くわう榮えいは彼かれ等らを以もつて世せ界かいを照てらしし神かみに歸きす。

句 主しゆよ、諸天しよてんは爾なんぢの奇異きいなる事わざを讚榮さんえいせん。

全福ぜんぷくなる使徒等しとらよ、時ときに與あづからずして光ひかりより輝かゞやきし光ひかりは時とき屆いたりて身みにて地ちに現あらはれ、爾なんぢ等らを以もつて世せ界かいを照てらし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢ等らの神聖しんせいなる敎をしへに照てらされて、爾なんぢ等らの聖せいなる記き憶おくを尊たふとむ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 我われ等ら皆みな愛あいを抱いだき、信しんを以もつてハリストスの致ち命者めいしやに來きたりて、彼かれ等らに祈いのらん。蓋けだし彼かれ等らは我わが救すくひの爲ために求もとむ、彼かれ等らは恩おん寵ちようの醫治いやしを流ながす、彼かれ等らは惡あく鬼きの隊たいを退しりぞく、敎をしへの守しゆ護ご者しやなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 ハリスティアニン等らの倚賴たのみたる至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢが智慧ちゑと言語ことばとに超こえて生うみし神かみに爾なんぢを歌か頌しようする者ものの爲ために絕たえず祈いのりて、信しんと愛あいとを以もつて恒つねに爾なんぢを讚揚さんやうする我われ等らに悉ことごとくの罪つみの赦ゆるし及および生命いのちの改易あらためを賜たまはんことを求もとめ給たまへ。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第一調。

靈れい智ちなる光くわう體たい、救世主きうせいしゆの光くわう明めいなる門もん徒とよ、爾なんぢ等らは火ひの如ごとく神聖しんせいなる敎をしへを以もつて全ぜん地ちを照てらせり。故ゆゑに我われ祈いのる、全福ぜんぷくなる者ものよ、幽暗くらやみに在ある吾わが靈たましひを爾なんぢ等らの輝かゞやける光くわう線せんにて照てらし給たまへ。

成聖者せいせいしや神しん父ぷニコライよ、爾なんぢは有形いうけいにミラに居をりて、無む形けいに屬神ぞくしんの香料かうれうを抹ぬられたる者ものと現あらはれたり。故ゆゑに爾なんぢの奇き蹟せきの香料かうれうを以もつて世せ界かいを薰かをらせ、爾なんぢに於おける芳かうばしき歌か頌しようと爾なんぢの記き憶おくとを以もつて永遠えいゑんに流ながるる香料かうれうを注そゝぎ給たまふ。

光榮、今も、生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、諸しよ預よ言者げんしやは明あきらかに爾なんぢを神かみの母はゝとして預よ象しやうし、神聖しんせいなる使徒しとは爾なんぢを世せ界かいに傳つたへ、我われ等らは信しんぜり。故ゆゑに我われ等ら皆みな敬虔けいけんに爾なんぢを尊たふとみて歌うたひ、常つねに眞まことの生しやう神女しんぢよと稱となふ。

聖使徒の規程カノン、フェオファンの作。第一調。

第一歌頌

イルモス 死しせざる主しゆよ、勝かちを獲うる爾なんぢの右みぎの手ては、神かみに適かなふが如ごとく、能力ちからにて光くわう榮えいを顯あらはせり、其その全能ぜんのうなるに因よりて、敵てきを滅ほろぼし、イズライリ人じんの爲ために新あらたなる深水ふかみの路みちを開ひらきたればなり。

光くわう榮えいにして光くわう明めいなる使徒しとよ、爾なんぢ等らは三日さんじつの光ひかりの神聖しんせいなる光くわう線せんに照てらされて宜よろきに合かなひて諸神しよしんと名なづけられたり。故ゆゑに我われ等ら職しよくとして信しんを以もつて爾なんぢ等らを尊たふとむ。二次。
使徒しとよ、爾なんぢ等らは慈じ憐れんに因よりて肉體にくたいを以もつて地ちに現あらはれし言ことばの嘉よみする役者えきしや、又また其その一切いつさいの誡命いましめの忠ちゆう信しんなる實行者じつかうしやと爲なれり。故ゆゑに常つねに尊たふとまる。

常つねに福さいはひなる者ものよ、至し聖神せいしんの光くわう明めいなる光くわう線せんを以もつて、我われ諸罪しよざいの暗やみに蔽おほはるる者ものを全まつたく照てらして、痛つう悔くわいの途みちに向むかはしめ給たまへ。

生神女讚詞 使徒等しとらの悅よろこびなる神かみの母はゝ、至いたりて潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、彼かれ等らの中うちに神かみに適かなふが如ごとく言いひし者ものの母はゝとして、彼かれ等らと偕ともに我われを地ぢ獄ごくの火ひより脫のがれしめんことを祈いのり給たまへ。

又、我が聖神父奇蹟者ニコライの規程カノン、其冠詞は、ニコライよ、我爾に第一の歌を奉る。イオシフの作。第一調。

第一歌頌

イルモス 我われ等ら皆みな凱歌かちうたを以もつて、高たかき手てにて神妙しんめうなる奇き蹟せきを行おこなひて、イズライリを救すくひし神かみに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

義ぎなる榮えい冠くわんに飾かざられて、恩おん寵ちようの寶はう座ざの前まへに立たてるニコライよ、今いま歌うたを以もつて忠ちゆう信しんに爾なんぢを飾かざる者ものを爾なんぢの祈き禱たうにて常つねに救すくひ給たまへ。

醫治いやしの恩おん寵ちようを受うけし全福ぜんぷくなるニコライよ、祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが靈たましひの傷きずを癒いやして、我われに逼せまる諸もろもろの誘惑いざなひより救すくひ給たまへ。

ニコライよ、祈いのる、爾なんぢの强つよき祈き禱たうを以もつて諸罪しよざいに因よりて弱よわりたる吾わが靈たましひを醫いやして、我われを惡あくを嗜たしむ者ものの度ど生せいより脫のがれしめ給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの光ひかりにて我わが智慧ちゑの昏昧くらみを退しりぞけて、我われを永遠えいゑんの暗やみより救すくひ給たまへ、我わが常つねに爾なんぢの偉ゐ大だいなるを歌うたはん爲ためなり。

第三歌頌

イルモス 獨ひとり人ひとの性せいの弱よわきを知しりて、憐あはれみを以もつて之これを衣きたる者ものよ、我われに上うへよりの力ちからを帶おびて、爾なんぢに呼よばしめ給たまへ、人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいの生いける宮みやは聖せいなり。

至し福ふくにして神聖しんせいなる使徒しとよ、獨ひとり見みえざる神かみは肉體にくたいを取とりて見みらるる者ものと爲なり、爾なんぢ等らを選えらびて門もん徒とと爲なし、爾なんぢ等らは彼かれの名な及および至し大だいなる光くわう榮えいを全ぜん世せ界かいに傳つたへ給たまへり。二次。

ハリストスよ、我われ獨ひとり爾なんぢの前まへに罪つみを犯おかし、獨ひとり爾なんぢの前まへに不ふ法はふを行おこなひ、惡あく事じを以もつて靈たましひを汚けがせり。獨ひとりう寬くわん容ようなるイイススよ、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われを淨きよめて救すくひ給たまへ、爾なんぢの睿えい智ちなる使徒しとの禱いのりに因よりてなり。

至いたりて讚さん美びたる使徒しとよ、爾なんぢ等らは慈じ憐れんなる者ものとして、我われを諸慾しよよくの汚けがれの苦にがみと諸罪しよざいの苦にがみより救すくひ、己おのれの心こゝろに神聖しんせいなる甘あまみを慰なぐさむ者ものとして、我わが靈たましひに痛つう悔くわいの慰なぐさめを與あたへ給たまへ。

生神女讚詞 婚姻こんいんに與あづからざる童貞女どうていぢよよ、無む形けいなる役者えきしやと共ともに、悉ことごとくの上うへなる軍ぐんと共ともに、致ち命者めいしや及および使徒しとと共ともに、爾なんぢが己おのれの潔いさぎよき血ちより身みを取とりし者ものとして生うみたるハリストスに爾なんぢの諸僕しよぼくの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

又

イルモス 第だい二にの天てんを水みづの上うへに固かため、地ちを水みづに基もとづけし全能ぜんのうのハリストス神かみよ、願ねがはくは我わが心こゝろは爾なんぢの旨むねに固かためられん。

司し祭さい長ちやう等らの飾かざり、聖神せいしんの馨香けいかうたる睿えい智ちなるニコライよ、我われ愛あいを以もつて祈いのる、爾なんぢの馨かうばしき祈き禱たうにて我わが心こゝろの惡臭あくしうの諸慾しよよくを遠とほざけ給たまへ。

ハリストスよ、我われ怠惰おこたりの中うちに我わが生いのちを費つひやして、爾なんぢの畏おそるべき審判しんぱんに慄をのゝく、之これに及およびて我われを辱はづかしむる勿なかれ、ニコライの聖せいにせられし轉達てんたつに因よりてなり。

神聖しんせいなる恩おん寵ちようにて飾かざられたる全福ぜんぷくなる成聖者せいせいしや神しん父ぷニコライよ、常つねに爾なんぢの庇蔭おほひの下したに趨はしり附つく者ものを種種しゆじゆの誘惑いざなひ及および菑害わざはひより救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 我われ等らの爲ために暮くれざる光ひかりを生うみし至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われを凡およその侵害しんがい、蛇へびの多おほくの誘惑いざなひ、永遠えいゑんの火ひ及および幽暗くらやみより脫のがれしめ給たまへ。

第四歌頌

イルモス アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢ、神かみの恩おん寵ちように覆おほはるる山やまを見みて、イズライリの聖せいなる者ものが我われ等らを救すくひ改あらためん爲ために、爾なんぢより出いづるを預よ言げんせり。

神かみに選えらばれたる使徒しと、ハリストスの馬うまたる者ものよ、爾なんぢ等らは己おのれの騁はするを以もつて無む神しんと不ふ信しんとの海うみを亂みだして、無む形けいの敵てきを溺おぼらし、溺おぼらされたる人人ひとびとを救すくひの爲ために引ひき出いだせり。二次。

聖神せいしんの光ひかりの器うつはたる神福しんぷくなる聖せい使徒等しとらよ、諸慾しよよくの器うつはと爲なりし我わが昧くらまされたる靈たましひを痛つう悔くわいの光ひかりにて照てらし給たまへ。

至いたりて讚さん美びたる使徒等しとら、生命いのちの水みづを雨ふらしし雲くもよ、諸慾しよよくの旱ひでりに由よりて枯かれたる我わが靈たましひを神かみの恩おん寵ちようを以もつて潤うるほして、救すくひを爲なす諸德しよとくの穗ほを生せい長ちやうせしめ給たまへ。

生神女讚詞 諸しよ預よ言者げんしや、讚さん美びたる使徒しと、致ち命者めいしやよ、贖しよく罪主ざいしゆの母はゝと偕ともに切せつに祈いのりて、我われ等らが諸罪しよざいと永遠えいゑんの苦くるしみ、諸もろもろの誘惑いざなひと菑害わざはひと憂患うれひより救すくはれんことを求もとめ給たまへ。

又

イルモス 預よ言者げんしやアウワクムよ、爾なんぢは神しん゜にて言ことばが人體じんたいを取とるを預よ見けんして、傳つたへて呼よべり、年としの邇ちかづく時とき爾なんぢは識しられん、期きの屆いたる時とき爾なんぢは現あらはれん、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

神かみの一切いつさいの誡命いましめの實行者じつかうしやたる成聖者せいせいしや神しん父ぷニコライよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らに救すくひに導みちびく地ち上じやうの法はふを守まもらんことを助たすけて、我われ等らに逼せまる諸もろもろの誘惑いざなひを免まぬかれしめ給たまへ。

馳はすべき程みちを盡つくしてハリストスに就つきたる捧神者ほうしんしや神しん父ぷニコライよ、我われ等らの途みちを彼かれに向むかはしめ給たまへ、我われ等らが無ぶ道だうの迷まよひを逃のがれて、救すくひを致いたす全ぜん備びに至いたらん爲ためなり。

神聖しんせいなる儆醒けいせいを以もつて敵てきの悉ことごとくの惡謀あくぼうを眠ねむらせし睿えい智ちなる神しん父ぷニコライよ、我われ等ら衆しゆう覺さめ興おきて、神かみを歌か頌しようし、爾なんぢを轉達者てんたつしやとして彼かれに進すゝむる者ものに神かみの恩おん寵ちようを得えしめ給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、預よ言者げんしやは神かみの神しん゜に感かんぜられて、爾なんぢを樹こ蔭かげ繁しげき山やまと像かたどれり。生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら多おほくの罪つみの暑熱あつさに疲つかれたる者ものを今いま爾なんぢの庇蔭おほひと恩おん寵ちようとを以もつて凉すゞしくし給たまへ。

第五歌頌

イルモス 己おのれの降臨かうりんの光ひかりにて世せ界かいの極はてを照てらし、己おのれの十じふ字架じかにて之これを輝かゞやかししハリストスよ、爾なんぢが智慧ちゑの光ひかりにて正たゞしく爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろを照てらし給たまへ。

至し榮えいなる使徒しとよ、爾なんぢ等らは甘味あまみと美うるはしき樂たのしみとを滴したゝらす山やま、敵てきの都すべての苦味にがみを除のぞき、信者しんじやを慰なぐさむる者ものと現あらはれたり。二次。

言ことばの神聖しんせいなる使徒しとよ、爾なんぢ等らは己おのれに屬ぞくする者ものに來きたりしハリストスを受うけて、熱心ねつしんに之これに就つきたり。祈いのる、踈うとき者ものの害がいより我われを救すくひ給たまへ。

洪恩こうおんなる主しゆよ、爾なんぢの神聖しんせいなる降臨かうりんと、苦くるしみと、墓はかよりの復ふく活くわつとを世せ界かいに傳つたへし者ものの祈き禱たうに因よりて、我わが靈たましひの隱かくれたる傷きずを醫いやし給たまへ。

生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、爾なんぢより肉體にくたいを取とりて生うまれし神かみ言ことばに無む形けいの衆しゆう軍ぐんと共ともに祈いのりて、爾なんぢの諸僕しよぼくが無知むちなる行おこなひと肉體にくたいの諸慾しよよくより解とかれんことを求もとめ給たまへ。

又

イルモス 人ひとを愛あいする主宰しゆさい、ハリストス我わが神かみよ、朝あさに爾なんぢが誡いましめの定さだめの事ことを考かんがふる我われ等らを永遠えいゑんの明あきらかなる光ひかりにて照てらし給たまへ。

成聖者せいせいしや神しん父ぷニコライよ、爾なんぢは主しゆの庭にはに植うゑられて、實みの繁しげき橄欖樹かんらんじゆの如ごとく、爾なんぢの功勞こうらうの油あぶらたる恩おん寵ちようにて今いま衆しゆうの面おもてを潤うるほし給たまふ。

神しん父ぷニコライよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために今いま禱いのりを捧さゝげ給たまへ、我われ等らが諸罪しよざいの赦ゆるしを受うけて、凡およそ我われ等らを圍かこむ患くわん難なんと困こん苦くより脫のがれん爲ためなり。

聖せいなるニコライよ、爾なんぢ主しゆの前まへに善ぜんなる轉達者てんたつしやに祈いのる、我われ等らを援助たすけなく遺のこさずして、爾なんぢの熱切ねつせつなる祈き禱たうを以もつて我われ等らを救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 ハリストスの光くわう明めいの殿でんたる神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる少女せうぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らをも父ちゝと、子こと、聖神せいしんの爲ために殿でんと爲なして、聖せいなる事ことを行おこなはしめ給たまへ。

第六歌頌

イルモス 今いまを限かぎりの淵ふちは我われ等らを圍かこめり、脫のがれしむる者ものなし、我われ等らは屠と所しよの羊ひつじの如ごとし。吾わが神かみよ、爾なんぢの民たみを救すくへ、爾なんぢは弱よわる者ものの力ちからと更新あらためなればなり。

嗚呼あゝ神福しんぷくなる使徒しとよ、爾なんぢ等らは言ことばの網あみを以もつて異い邦民はうみんを捕とらへて、人人ひとびとの爲ために現あらはれし嚮きやう導だう者しやを知しる知ち識しきに就つかしめたり。彼かれに熱切ねつせつに世せ界かいの爲ために祈いのり給たまへ。二次。

我わが卑微ひびなる靈たましひ、不ふ當たうなる靈たましひ、悔くいざる靈たましひよ、悔くいてハリストスに呼よべ、我われ罪つみを犯おかせり、人ひとを愛あいする主宰しゆさいよ、至し仁じんなるを以もつて、爾なんぢの使徒しとの祈き禱たうに因よりて我われを潔きよめ給たまへ。

昔むかしイズライリの爲ために磐いはより水みづを流ながしし全能ぜんのうなるハリストスよ、憐あはれみ深ふかき主しゆなるを以もつて、爾なんぢの使徒しとの祈き禱たうに因よりて我わが昏昧くらみを解ときて、淚なみだの流ながれを捧さゝげしめ給たまへ、我わが爾なんぢの仁じん慈じを歌うたひて崇あがめ讚ほめん爲ためなり。

生神女讚詞 至し聖せいなる童貞女どうていぢよよ、仁じん慈じに因よりて爾なんぢより甘あまんじて生うまれ給たまひし者ものに、其その造物主ざうぶつしゆ及および神かみなるを以もつて、常つねに憑恃たのみを爾なんぢに負おはしむる者ものを誘いう感かん及および患くわん難なんより救すくはんことを祈いのり給たまへ。

又

イルモス 我われ預よ言者げんしやイオナに效ならひて籲よぶ、仁じん慈じなる者ものよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより援たすけよ。世せ界かいの救主きうしゆよ、我われ光くわう榮えいは爾なんぢに歸きすと籲よぶ者ものを救すくひ給たまへ。

慈じ憐れんの多おほきハリストスよ、ニコライの祈き禱たうに因よりて我わが惡あくの多おほきを遠とほざけて、常つねに罪つみの浪なみに荒あらさるる我わが生いのちを治をさめ給たまへ。

睿えい智ちなるニコライよ、爾なんぢは敵てきを踐ふみて之これに勝かてり。爾なんぢを神聖しんせいなる轉達者てんたつしやとして獲えたる我われ等らをも爾なんぢの祈き禱たうを以もつて堅かためて、之これを破やぶらしめ給たまへ。

ミラ城じやうの人人ひとびとの爲ために眞實しんじつなる司し祭首さいしゆたりし神しん父ぷニコライよ、我われ等らの靈たましひの感覺かんかくを薰かをらせて、常つねに我われ等らと戰たゝかふ惡臭あくしうの諸慾しよよくを遠とほざけ給たまへ。

生神女讚詞 神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる潔いさぎよき者ものよ、ハリストスは爾なんぢに大おほいなる事ことを成なせり。常つねに彼かれに其その豐ゆたかなる慈じ憐れんを我われ等らの中うちに大おほいにせんことを祈いのり給たまへ。

第七歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを見みて屬神ぞくしんの爐ゐろりと爲なす、蓋けだし先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみは、三人みたりの少者せうしやを救すくひし如ごとく、斯かく爾なんぢの腹はらに於おいて全ぜん世せ界かいを改あらため給たまへり。

門もん徒とよ、生命いのちの泉いづみたる主しゆイイススは、全ぜん地ちに神かみを識しる知ち識しきの水みづを飮のましむる川かはとして爾なんぢ等らを遺のこして、歌うたはしめたり、尊たふとまるる先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。二次。

門もん徒とよ、爾なんぢ等らは心こゝろの中うちに無む形けいの火ひたる神聖しんせいなるハリストスの恩おん寵ちようを有たもちて、無む神しんの物質ぶつしつを焚やきたり。祈いのる、我われ、尊たふとまるる先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらると、呼よぶ者ものの物質ぶつしつの諸慾しよよくを焚やき給たまへ。

主しゆ神かみよ、爾なんぢの光くわう榮えいなる門もん徒との祈き禱たうに因よりて我われを火ひの苦くるしみより拯すくひて、爾なんぢの顏かんばせより退しりぞくる毋なかれ、蓋けだし我われ痛つう悔くわいして呼よぶ、尊たふとまるる先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

生神女讚詞 不ふ朽きうにして童貞女どうていぢよ神かみの母はゝより生うまれし主しゆよ、我われを朽きう壞くわいせしむる罪つみと慾よくより救すくひ給たまへ、爾なんぢは凡およそ尊たふとまるる先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらると歌うたふ者ものに不ふ朽きうを賜たまへばなり。

又

イルモス 救世主きうせいしゆよ、火ひは爐ゐろりの中うちに在ある爾なんぢの少者せうしやに觸ふれず、彼かれ等らを懼おそれしめざりき、其時そのとき三人さんにん口くちを一いつにして、歌か頌しよう祝しゆく讚さんして言いへり、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

睿えい智ちなるニコライよ、爾なんぢの熱心ねつしんなる祈き禱たうを以もつて、我わが心こゝろの足あしを光くわう明めいなる神かみの誡いましめの石いしに堅かたく立たてて、絕たえず我われを惡あくの魁かしらなる敵てきの惡謀あくばうより救すくひ給たまへ。

衆しゆう信者しんじやの保護ほご者しや、成聖者せいせいしやの基もとゐなる聖せいにせられしニコライよ、我われ等らの爲ために多おほくの罪つみの赦ゆるさるること、度ど生せいの危あやふき網あみと種種しゆじゆの誘惑いざなひより解とかるることを求もとめ給たまへ。

用もちゐん爲ために受うけたる賚タラントを藏かくしし惡あしき僕ぼくは我われにして、彼處かしこの審判しんぱんを畏おそる。萬有ばんいうの神かみ審判者しんぱんしやよ、其時そのときに及およびて、聖せいニコライの祈き禱たうに因よりて、我われを定罪ていざいする勿なかれ。

生神女讚詞 至し聖せい至し潔けつなる者ものよ、爾なんぢの諸僕しよぼくは常つねに晝ひるに夜よるに傷いためる意念おもひを以もつて祈いのりて、爾なんぢ潔いさぎよき者ものの祈き禱たうに因よりて、我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまはんことを求もとむ。

第八歌頌

イルモス イズライリの少者せうしやは爐ゐろりに在ありて、坩堝るつぼに在あるが如ごとく、敬虔けいけんの美うるはしきを以もつて黃こ金がねよりも明あきらかに輝かゞやきて云いへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

使徒しとよ、大おほいなる日ひは爾なんぢ等らを光くわう線せんの如ごとく全ぜん地ちに發はつして、衆しゆうを輝かゞやかして、信しんを以もつて歌うたはしむ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。二次。

靈れい智ちなる牧者ぼくしやとし、牧者ぼくしやの羔こひつじとし、羔こひつじたる我われ等らの贖しよく罪主ざいしゆハリストスの羊ひつじとして、神かみを見みし使徒等しとらよ、我われを無む形けいの狼おほかみより脫のがして、救すくはるる者ものの分ぶんを得えしめんことを絕たえず祈いのり給たまへ。

至いたりて不ふ當たうなる靈たましひよ、歎息たんそくして主しゆに呼よべ、我われ衆しゆうに超こえて罪つみを犯おかし、甚はなはだしく不ふ法はふを爲なせり。洪恩こうおんなる主しゆよ、善よく受うけらるる使徒しとの祈き禱たうに由よりて、我われを淫いん婦ぷの如ごとく、稅ぜい吏りの如ごとく、盜賊たうぞくの如ごとく潔きよめて、救すくひ給たまへ。

生神女讚詞 神かみの母はゝよ、天てん使しと偕ともに、使徒しと及および致ち命者めいしやと偕ともに、預よ言者げんしやと偕ともにハリストスに祈いのりて、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよと、呼よぶ者ものを救すくはんことを求もとめ給たまへ。

又

イルモス 諸天しよてん使しと悉ことごとくの軍ぐんとが造物ざうぶつ者しや及および主しゆとして畏おそるる者ものを、司し祭さいよ、歌か頌しようし、少者せうしやよ、讚榮さんえいし、人人ひとびとよ、崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

ニコライよ、爾なんぢは神聖しんせいなる諸德しよとくの山やまに立たちて、高かう尙しやうなる奇き蹟せきの顯見あらはれを以もつて四し極きよくに知しらるる者ものと爲なれり。故ゆゑに凡およその民たみは爾なんぢを萬世ばんせいに尊たふとむ。

克肖者こくせうしやよ、爾なんぢは神聖しんせいなる甘味あまみを嘗なめて、慾よくと逸樂いつらくとの苦味にがみを惡にくめり。ハリストスに祈いのりて、我われ等らを此これ等らより脫のがれしめて、我われ等らに逼せまる諸もろもろの誘惑いざなひを防ふせぎ給たまへ。

動うごかされぬ柱はしらにして、信者しんじやの固かためたる全福ぜんぷくなるニコライよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、我われ常つねに度ど生せいの困難こんなんと惡あく鬼きの攻擊こうげきとに動うごかさるる者ものを固かため給たまへ。

生神女讚詞 萬ばん衆しゆうの醫師いしを生うみし至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、ハリストスに祈いのりて、我わが心こゝろの諸慾しよよくを愈いやして、我われを義ぎ者しやの分ぶんに與あづかる者ものと爲なし給たまへ。

次ぎて生神女の歌を歌ふ、「我が靈は主を崇め」、及び躬拜。

第九歌頌

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、燃もゆれども燒やかれぬ棘いばらは爾なんぢが潔いさぎよき產さんの象かたちを顯あらはせり。祈いのる、今いまも我われ等らを攻せめ圍かこむ誘惑いざなひの爐ゐろりを撲うち滅けして、常つねに爾なんぢを崇あがめさせ給たまへ。

福ふくたる者ものよ、爾なんぢ等らは聖神せいしんの神妙しんめうに輝かゞやける燈臺とうだいと現あらはれて、尊たふとくして睿えい智ちなる傳敎でんけうの光ひかりにて全ぜん地ちを照てらして、偶像ぐうざうの幽暗くらやみを退しりぞけ給たまへり。二次。

光くわう榮えいなる使徒しとよ、爾なんぢ等らは神聖しんせいなる葡ぶ萄樹だうじゆの枝えだと爲なり、神聖しんせいなる房ふさを生せい長ちやうせしめて、救すくひの酒さけを流ながせり。故ゆゑに我われを諸慾しよよくの醉ゑひより脫のがれしめ給たまへ。

吾わがハリストスよ、我われ不ふ當たうの者ものは彼かの爾なんぢの畏おそるべき審判しんぱんを思おもひて慄をのゝく、蓋けだし今いま耻はづべく忌いまはしき行おこなひに溺おぼれて、審判しんぱんの前さきに定罪ていざいせられたり。祈いのる、爾なんぢの諸しよ使徒しとの祈き禱たうに因よりて我われを宥なだめ給たまへ。

生神女讚詞 純じゆん潔けつなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢ獨ひとり身みを取とりし言ことばを生うみて、人人ひとびとを神成しんせいし給たまへり。潔いさぎよき者ものよ、使徒しと及および致ち命者めいしやと偕ともに、信しんを以もつて爾なんぢを尊たふとみて讚さん美びする我われ等らの爲ために彼かれに祈いのり給たまへ。

又

イルモス 光ひかりを放はなつ雲くも、萬有ばんいうの主しゆが雨あめの天てんより羊ひつじの毛けに降くだるが如ごとく降くだり、始はじめなき者ものが身みを取とりて我われ等らの爲ために人ひとと爲なりし所以ゆゑんの者ものを、我われ等ら皆みな我わが神かみの潔いさぎよき母はゝとして崇あがめ讚ほむ。

神しん父ぷよ、我われ等ら爾なんぢをハリストスの成聖者せいせいしや、輝かゞやける星ほし、奇き蹟せきの實行者じつかうしや、醫治いやしの泉いづみ、憂うれひに在ある者ものの扶ふ助者じよしや、患くわん難なんの中うちに爾なんぢを呼よぶ者ものの最いと篤あつき保護ほご者しやとして、屬神ぞくしんの歌うたを以もつて崇あがめ讚ほむ。

ニコライよ、我われ等ら爾なんぢ大おほいなる牧ぼく師し、一切いつさいに於おいて牧ぼく師し長ちやうハリストスに效ならふ者ものに切せつに祈いのる、聖せいなる高處たかみより爾なんぢの諸僕しよぼくを牧ぼくして、常つねに諸もろもろの度ど生せいの患くわん難なんより救すくひ給たまへ。

嗚呼あゝ吾わが靈たましひよ、終をはりは已すでに近ちかづけり、何なんぞ怠おこたる、胡爲なんすれぞ神かみの悅よろこぶ所ところの如ごとく度ど生せいせんことを務つとめざる。是これより務つとめて興おきて呼よべ、人ひとを愛あいする主しゆよ、我われを宥なだめ、仁じん慈じなるを以もつて、ニコライの祈き禱たうに因よりて我わが生いのちを治をさめ給たまへ。

生神女讚詞 神聖しんせいなる光ひかりを生うみし純じゆん潔けつなる者ものよ、我われ凶きよう惡者あくしやの種種しゆじゆの誘惑いざなひに昧くらまされ、氣き倦うみて度ど生せいし、神かみを怒いからする者ものを照てらして、善よき行おこなひに導みちびき給たまへ、爾なんぢは一切いつさいの善ぜん事じの緣由ゆゑんなればなり。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。小聯禱、光耀歌、常例の聖詠。

挿句くづけに使徒の讚頌スティヒラ、第一調。

光くわう榮えいなる諸しよ使徒しと、全ぜん地ちを照てらしし者ものよ、常つねに神かみに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

句 主しゆよ、夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

ペトル及およびパワェルを同心どうしんに崇あがめ讚ほめ、ルカ、マトフェイ、マルコ、イオアン、アンドレイ、フォマ、ワルフォロメイ、シモン、カナニト、イアコフ、フィリップ及および悉ことごとくの門もん徒との會くわいを宜よろしきに合かなひて讚ほめ揚あぐべし。

句 願ねがはくは主しゆ吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、主しゆの爲ために樂たのしめ、蓋けだし爾なんぢ等らは善よき戰たゝかひを戰たゝかへり。諸しよ王わうに逆さかひ、苛虐者くるしめびとに勝かち、火ひをも、劍つるぎをも、爾なんぢ等らの體からだを食くらふ猛獸まうじうをも畏おそれざりき。諸天しよてん使しと偕ともにハリストスに歌うたを捧さゝげて、天てんより榮えい冠くわんを受うけたり。世せ界かいに平安へいあん、我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、慶よろこべ、全ぜん世せ界かいの榮譽ほまれよ、慶よろこべ、恩おん寵ちようを蒙かうむれる至し淨じやうなる神かみの母はゝよ、慶よろこべ。

次ぎて「至上者よ、主を讚榮し」、聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ。聯禱、及び發放詞。次ぎて第一時課、常例の聖詠、及び最後の發放詞。

 木曜日の聖体礼儀に

木曜日の眞福詞。第一調。

敵てきは食しよく物もつを以もつてアダムを樂園らくゑんより引ひき出いだし、ハリストスは十じふ字架じかを以もつて盜賊たうぞくを其中そのうちに入いれ給たまへり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき、我われを憶おもひ給たまへと呼よべばなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

爾なんぢ等らは己おのれの敎をしへの神聖しんせいなる光くわう線せんにて四し極きよくを照てらして、甚はなはだしき無む神しんの昏昧くらみを散さんじ、入いらざる光ひかりに移うつりて、常つねに讚さん美びせらる。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを僞いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

ハリストスの門もん徒とよ、爾なんぢ等らを智ちならしむる父ちゝと一體いつたいなる睿えい智ちを有たもちて、爾なんぢ等らは傳道でんだうの愚ぐを以もつて世せ界かいを智ちならしめて、神かみを知しる知ち識しきに就つかしめ給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

致命者讚詞 至いたりて讚さん美びたるハリストスの受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは無む形けいの者ものの如ごとく苦くるしみを忍しのびて、勇いさましく凡すべての無む形けいの敵てきに勝かてり。故ゆゑに宜よろしきに合かなひて世世よよに讚揚さんやうせらる。

光榮 我われ等ら信者しんじやは聖三者せいさんしやなる父ちゝと、子こと、義ぎなる神しん゜、分わかれず、離はなれず、同どう一いつ寶はう座ざたる惟一者ゆゐいちしやに伏拜ふくはいして呼よばん、聖せい、聖せい、聖せいなる哉かな至いたりて尊たふとき三者さんしやや。

今も 至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢが預よ言げんせし如ごとく、我われ等ら爾なんぢを讚さん美びす、蓋けだし爾なんぢは身みを取とりし神かみ、使徒しとの會くわいの傳つたへし主しゆを生うみ給たまへり。歌うたはるる者ものよ、彼かれ等らと偕ともに我われ等らの爲ために諸罪しよざいの赦ゆるしを求もとめ給たまへ。

 木曜日の晩課

「主よ爾に籲ぶ」に尊貴にして生命を施す十字架の讚頌スティヒラ。第一調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はうを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

ハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに爾なんぢの至し淨じやうなる手てを伸のべて、爾なんぢより遠とほく離はなれたる者ものを呼よびて、己おのれの側かたはらに立たて給たまへり。故ゆゑに我われ爾なんぢに祈いのる、慾よくの囚とりこと爲なりし我われを釋ときて、我われに諸慾しよよくの汚けがれを潔きよむる痛つう悔くわいを予あたへ給たまへ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

人ひとを愛あいするハリストスよ、爾なんぢは己おのれの至し淨じやうなる手てを十じふ字架じかに擧あげて、爾なんぢの指ゆびを血ちに染そめたり、爾なんぢの神聖しんせいなる手ての工作わざたるアダム、犯罪はんざいに因よりて死しの國くにに囚とらはれたる者ものを釋とかんと欲ほつしたればなり。全能者ぜんのうしやよ、爾なんぢは己おのれの權けんを以もつて彼かれを起おこし給たまへり。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

無む原げんなる救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは性せいに於おいて變易へんえきなく、神性しんせいに於おいて苦くるしみに與あづからざる者ものにして、苦くるしみを忍しのべり、罪つみなきハリストスよ、爾なんぢは犯罪者はんざいしやと偕ともに十じふ字架じかに釘ていせられたり。日ひは狂きやう妄ばうに勝たへずして晦くらみ、地ちは盡ことごとく震ふるへり、爾なんぢを世せ界かいの造成者ざうせいしやと知しりたればなり。

又、十字架生神女の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

昔むかし無む玷てんなる童貞女どうていぢよは種たねなき腹はらより生うみし者ものが木きに在あるを覩みて、心こゝろの刺ささるるに忍しのびず、痛いたく歎なげきて云いへり、萬物ばんぶつを手てに持たもつ者ものは如何いかにして十じふ字架じかに擧あげられたる、人類じんるゐを救すくはんと欲ほつする者ものは如何いかんぞ定罪ていざいせられたる。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

又、同讚頌スティヒラを誦すべし。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

至し淨じやうなる者ものは云いへり、嗚呼あゝ無む原げんなる父ちゝの言いひ難がたき子こよ、我われは吾わが產さんの十じふ字架じかに在あるを覩みて、恩おんを知しらざる人人ひとびとが何なにに由よりて此これ等らを爾なんぢに報むくいたるを曉さとらず。然しかれども爾なんぢは、慈じ憐れんなる者ものよ、己おのれの造物ざうぶつを救すくはん爲ために來きたりしに因よりて、恒忍ごうにんを以もつて一切いつさいを忍しのび給たまふ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 童貞女どうていぢよは哭なきて云いへり、最いと甘あまき子こよ、爾なんぢは木きに上あげられ、膽いと醋すとを嘗なめて、アダムの古いにしへの食しよくの苦にがきを甘あまくし給たまへり。故ゆゑに義ぎなる審判者しんぱんしやよ、全能者ぜんのうしやなるに因よりて復ふく活くわつして、爾なんぢの醫いやしを施ほどこす苦くるしみを以もつて我われの苦にがきを甘あまくし給たまへ。

次ぎて「穩なる光」。本日の提綱ポロキメン。次に「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」、及び聯禱。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第一調。

十じふ字架じかは髑髏されかうべの處ところに樹たてられて、我われ等らの爲ために不死ふしの花はなを發ひらけり、救世主きうせいしゆの脅わきより常つねに流ながるる泉いづみに因よりてなり。

句 天てんに居をる者ものよ、我われ目めを擧あげて爾なんぢを望のぞむ。視みよ、僕ぼくの目め主しゆ人じんの手てを望のぞみ、婢ひの目め主しゆ婦ふの手てを望のぞむが如ごとく、我われ等らの目めは主しゆ我わが神かみを望のぞみて、其その我われ等らを憐あはれむを俟まつ。

救世主きうせいしゆの尊たふとき十じふ字架じかは我われ等らの爲ために壞やぶられぬ垣かきなり、我われ等ら皆みな彼かれを恃たのみて救すくはるればなり。

句 主しゆよ、我われ等らを憐あはれみ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、蓋けだし我われ等らは侮あなどりに饜あき足たれり、我われ等らの靈たましひは驕おごる者ものの辱はづかしめと誇ほこる者ものの侮あなどりとに饜あき足たれり。

致命者讚詞 主しゆよ、衆しゆう聖人せいじん及および生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢの平安へいあんを我われ等らに與あたへ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり洪恩こうおんの主しゆなればなり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 ハリストスよ、童貞女どうていぢよは爾なんぢが非義ひぎに屠ほふらるるを覩みて、哭なきて爾なんぢに呼よべり、最いと甘あまき子こよ、如何いかにして義ぎなき苛虐くるしめを受うくる、全ぜん地ちを水みづの上うへに懸かけし者ものは如何いかにして木きに懸かゝれる。慈じ憐れんの深ふかき恩主おんしゆよ、祈いのる、我われ爾なんぢの母はゝ及および婢しもめを獨ひとりにして遺のこす勿なかれ。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ、及び發放詞。

 木曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第一調。

第一歌頌

イルモス イズライリは苦くるしき奴ど隷れいより脫のがれて、涉わたられぬ處ところを陸くがの如ごとくに過とほれり。敵てきの溺おぼるるを見みて、恩主おんしゆたる神かみ、高たかき臂ひぢを以もつて奇き蹟せきを行おこなふ者ものに歌うたを奉たてまつる、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我われ吾わが罪つみの多おほきと審判者しんぱんしやに對たいする答こたへとを思おもひて、失望しつばうに陷おちいる。祈いのる、爾なんぢ我われの爲ために神聖しんせいなる轉達者てんたつしやと爲なりて、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて審判者しんぱんしやを和やわらげ給たまへ。

ハリスティアニン等らの避所かくれが、陷おちいる者ものの提起おこし、罪つみを犯おかす者ものの潔淨きよめたる至し淨じやうなる者ものよ、我われに畏おそるべき詰問きつもんと滅きえざる火ひとを逃のがれしめて、永遠えいゑんの生命いのちを與あたへ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、我われ等ら信者しんじや皆みな獨ひとり爾なんぢを堅けん固ごなる保護ほご者しやとして獲えたり、爾なんぢ神かみを生うみ給たまひしに因よる。故ゆゑに爾なんぢの言ことばの如ごとく、我われ等ら地ちの諸しよ族ぞく皆みな讚歌ほめうたを以もつて爾なんぢを讚揚さんやうす。

今も 至し淨じやう至し潔けつなる者ものは造物主ざうぶつしゆ及および己おのれの子こを十じふ字架じかに覩みて、驚おどろきに勝たへずして云いへり、子こよ、是これ何なにぞ、不ふ虔けんの者ものは爾なんぢが彼かれ等らに施ほどこしし諸善しよぜんの爲ために、如何いかんぞ惡あくを爾なんぢに報むくいたる。

第三歌頌

イルモス 世よの無なき前さきに分離わかれなく父ちゝより生うまれし子こ、末すゑの日ひに種たねなく童貞女どうていぢよより身みを受うけしハリストス神かみに呼よばん、我われ等らの角つのを高たかくせし主しゆよ、爾なんぢは聖せいなり。

預よ言者げんしやは皆みな爾なんぢ神かみの母はゝを至し榮えいなる預よ徵ちようを以もつて傳つたへたり。我われ等ら明あきらかに其その應かなひたるを見みて、信しんじて、爾なんぢに因よりて神聖しんせいなる平穩へいをんを得えんことを求もとむ。

世せ界かいの女宰ぢよさい、信者しんじやの救すくひ及および防護まもりなる潔いさぎよき者ものよ、心こゝろの深處ふかみより發はつする我わが歎息たんそくと淚なみだの流ながれとを受うけて、多おほくの罪つみに縛しばられたる我われを解ときて救すくひ給たまへ。

光榮 至し淨じやう至し潔けつなる者ものよ、母はゝとしてハリストス神かみに勇敢いさみを有たもちて、我われ等らが諸敵しよてきと種種しゆじゆの艱難なやみより救すくはれんことを常つねに祈いのりて、感謝かんしやの心こゝろを抱いだきて、彼かれを讚榮さんえいするを得えしめ給たまへ。

今も 至し淨じやうなる者ものは己おのれの子こが十じふ字架じかに擧あげられしを見みて、歎息たんそくし、心こゝろの痛いたみに於おいて呼よびて曰いへり、子こよ、爾なんぢの賜たまものに饜あきたりし不ふ虔けん不ふ法はふの者ものは何なにをか爾なんぢに爲なしたる。

第四歌頌

イルモス イエッセイの根ねより生しやうぜし枝えだ及および其その花はななる讚さん美びたるハリストスよ、爾なんぢは童貞女どうていぢよより出いで給たまへり。形かたちなき者もの且かつ神かみよ、爾なんぢは夫をつとに適ゆかざる者ものより身みを取とりて、樹こ蔭かげ繁しげき山やまより來き給たまへり。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

純じゆん潔けつなる者ものよ、凶きよう惡あくなる敵てきの我われに對たいする殘忍ざんにんと惡謀あくぼうとを破やぶり、爾なんぢの堅けん固ごなるを我われに衣きせて、常つねに害がいなく、動うごきなく、欣よろこばしく爾なんぢを歌か頌しようする者ものとして、全まつたくして護まもり給たまへ。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、慾よくに溺おぼるる我われは、肉體にくたいの法はふに勝かたれて、不義ふぎ不ふ法はふの事ことを行おこなひ、敢あへて目めを擧あげて爾なんぢを視みるを得えず。然しかれども爾なんぢは慈じ憐れんの法はふを以もつて我われ不ふ當たうの者ものを救すくひ、我われを救すくひ給たまへ。

光榮 女宰ぢよさいよ、我われ等ら信者しんじやは獨ひとり爾なんぢを神かみと偕ともに耻はぢを得えざる憑恃たのみ及および防護まもりとして有たもつ。爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等らを見みゆると見みえざる諸敵しよてき、艱難なやみと諸もろもろの誘惑いざなひより救すくひ給たまへ、我わが絕たえず爾なんぢを讚榮さんえいせん爲ためなり。

今も 純じゆん潔けつなる者ものは種たねなくして生うみし子こが十じふ字架じかに釘ていせられしを見みて、母はゝとして哭なき、呼よびて云いへり、吾わが子こよ、此この我わが見みる所ところの爾なんぢに於おける新あらたにして至し榮えいなる悟さとり難がたき奇き蹟せきは何なにぞ。

第五歌頌

イルモス 和わ平へいの神かみ、仁じん慈じの父ちゝよ、爾なんぢ我われ等らに和わ平へいを賜たまふ爾なんぢの大おほいなる議事ぎじの使し者しやを遣つかはし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら神かみを知しる光ひかりに導みちびかれて、夜よ過すぎて朝あさに爾なんぢ人ひとを愛あいする主しゆを崇あがめ讚ほむ。

爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために眠ねむらずして禱いのり、篤あつく之これを保護ほごする童貞女どうていぢよよ、我われ等ら度ど生せいの諸もろもろの患くわん難なんに遇あふ者ものを速すみやかに援たすけて、救すくひ給たまへ、我われ等らが悲哀かなしみに囓かまれて亾ほろびざらん爲ためなり。

神かみの居處すまひたるマリヤよ、我われ汚けがらはしき行おこなひに由よりて惡あく鬼きの居處すまひと爲なりて、其その狂きやう妄ばうなる旨むねを行おこなふ者ものを、痛つう悔くわいに由よりて神かみの居處すまひと爲なし給たまへ。

光榮 慈じ憐れんなる者もの且かつ神かみの母はゝなるに因よりて、靈たましひにも體からだにも諸罪しよざいの慾よくを痛いたく病やめる我われ等らを醫いやし給たまへ、爾なんぢは實じつに靈體れいたいの大おほいなる醫師いしハリストス、生命いのちの盡つきざる泉いづみを生うみたればなり。

今も 至いたりて無む玷てんなる者ものは子こが十じふ字架じかの木きに在あるを覩みて、心こゝろ裂さかれ、淚なみだと共ともに呼よべり、吾わが子こよ、我われ新あらたなる奇き蹟せきを見みて、爾なんぢの恒忍ごうにんに驚おどろく、無む罪ざいの者ものにして如何いかんぞ非義ひぎなる死しを忍しのぶ。

第六歌頌

イルモス 海うみの猛獸まうじうはイオナを受うけしまま產兒うまれごの如ごとく腹はらより出いだせり。童貞女どうていぢよに入いりて身みを受うけし言ことばは其その傷きずなきを守まもりて通とほれり、蓋けだし自みづから壞やぶれに從したがはず、生うみし者ものをも忮そこなはずして守まもり給たまへり。

至し聖せいなる神かみの聘女よめよ、爾なんぢは萬善ばんぜんの馨香けいかうを以もつて全ぜん地ちを薰かをらせし屬神ぞくしんの香料かうれうたる神性しんせいの器うつはと爲なり給たまへり。故ゆゑに爾なんぢの祈き禱たうの芳かうばしきを以もつて吾わが靈たましひより諸罪しよざいの惡臭あくしうを盡ことごとく拂はらひ給たまへ。

逸樂いつらくの火ひは甚はなはだしく我われを燒やき、我わが卑微ひびなる心こゝろを惱なやまし、我われを不義ふぎ不ふ法はふを行おこなふ者ものと爲なす。神聖しんせいなる火ひを生うみし神かみの聘女よめ、我わが拯救すくひなる者ものよ、速すみやかに之これを滅けし給たまへ。

光榮 讚さん美びたる童貞女どうていぢよ、神かみの母はゝよ、我われ等ら正敎せいけうを以もつて爾なんぢを實じつに生しやう神女しんぢよと承うけ認とむる者ものを見みゆると見みえざる諸敵しよてきの侵害しんがいより脫のがれしめて、護まもり給たまへ、爾なんぢは萬有ばんいうを造つくりし主しゆを生うみしに因よりて、常つねに權能けんのうを有たもち給たまへばなり。

今も 至いたりて無む玷てんなる者ものは十じふ字架じかの側かたはらに立たち、己おのれの子こが身みにて懸かゝれるを覩みて、悲哀かなしみにて心こゝろを焦こがし、淚なみだを流ながして呼よべり、子こよ、衆しゆう人じんに於おける爾なんぢの慈じ憐れんは實じつに言いひ難がたし。

次ぎて主憐めよ、三次。光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第一調。

無む玷てんなる牝め羊ひつじは羔こひつじ及および牧者ぼくしやが木きに懸かけられて死しせしを見みて、哭なきて言いひ、母はゝとして呼よべり、吾わが子こ、至し仁じんなる神かみよ、如何いかにして我われ言ことばに超こゆる爾なんぢの謙卑へりくだりと自じ由いうなる苦くるしみとを忍しのばん。

第七歌頌

イルモス 偕ともに敬虔けいけんに養やしなはれし少者せうしやは、不ふ虔けんの命めいを顧かへりみずして、火ひの嚇おどしを恐おそれず、乃すなはち焰ほのほの中うちに立たちて歌うたへり、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

我われ惡あく鬼きの攻擊こうげきと誘いう感かんとに堪たへず、肉體にくたいの逸樂いつらくの焰ほのほが我わが智慧ちゑを昧くらませばなり。祈いのる、聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我われ憑恃たのみを爾なんぢに負おはせし者ものを棄すつる勿なかれ。

聘女よめならぬ童貞女どうていぢよ、至し聖せいなる神かみの聘女よめ・女宰ぢよさいよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我わが諸罪しよざいの縛なはめを解とき、我われをハリストスの愛あいに配あはせて、諸德しよとくの果みを結むすばしめ給たまへ。

光榮 潔いさぎよきマリヤよ、爾なんぢは世よに在ある悉ことごとくのハリスティアニンの爲ために防護まもりと垣墻かきと耻はぢを得えざる避所かくれがなり。故ゆゑに我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢを尊たふとみて、ハリストスに呼よぶ、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

今も 至し聖せいなる童貞女どうていぢよは己おのれの子こが十じふ字架じかに懸かゝれるを覩みて、驚駭おどろきに勝たへずして云いへり、我われ爾なんぢ生命いのちの首かしら及および生命いのちを賜たまふ者ものの殺ころされしを見みて、如何いかんぞ之これを忍しのばん。

第八歌頌

イルモス 昔むかし火ひと露つゆとの爐ゐろりは天然てんねんに超こゆる奇き蹟せきの象かたちを示しめせり、蓋けだし火ひは少者せうしやを焚やかずして、ハリストスの童貞女どうていぢよよりの種たねなき神聖しんせいなる產さんを顯あらはせり。故ゆゑに我われ等ら歌うたひて呼よばん、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

世せ界かいの女宰ぢよさい生しやう神女しんぢよよ、我われ肉體にくたいの逸樂いつらくと世せ俗ぞくの愛あい着ぢやくとに因よりて、惡あくの深處ふかみに溺おぼれて亾ほろぶる者ものを、獨ひとり爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて引ひき上あげ給たまへ、潔いさぎよき者ものよ、我われ他たに救すくひの望のぞみなく、全身ぜんしん失望しつばうに陷おちいりたればなり。

言いひ難がたき狀さまにて神かみを生うみし者ものよ、爾なんぢは衆しゆう人じんの救すくひなり。生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢは信者しんじやの援助たすけ、瞽者めしひの相てびき、陷おちいる者ものの提起おこしなり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢを讚揚さんやうしてハリストスに呼よぶ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

光榮 神かみの母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを至いたりて堅けん固ごなる垣かきとして獲えて、我われ等らの救すくひの憑恃たのみを爾なんぢに負おはしめたり。爾なんぢの諸僕しよぼくの爲ために港みなと及および壞やぶられぬ垣かきと爲なりて、絕たえず呼よばしめ給たまへ、悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめて世世よよに彼かれを讚ほめ揚あげよ。

今も 潔いさぎよく生うみし者ものは爾なんぢを十じふ字架じかに覩みて、母はゝの心こゝろ裂さかれ、多おほくの淚なみだを流ながし、痛いたく歎なげきて呼よべり、吾わが子こよ、我われ產さんの時ときに苦くるしみを免まぬかれしに、今いま爾なんぢの姿容すがたの華榮みばえなきを見みて、苦くるしみに堪たへず。

第九歌頌

イルモス 童貞女どうていぢよの祕ひ密みつは言いひ難がたし、蓋けだし彼かれは天てんと現あらはれ、ハリストス神かみ全能者ぜんのうしやのヘルワィムの寶はう座ざ及および光ひかりを放はなつ宮みやと現あらはれたり。我われ等ら敬虔けいけんに彼かれを生しやう神女しんぢよとして崇あがめ讚ほむ。

我われ不ふ當たうの者ものは忌いまはしき慾よくを以もつて吾わが心こゝろを擾みだし、靈たましひを滅ほろぼす慾よくを以もつて體からだを汚けがせり。至し淨じやう至し潔けつなる者ものよ、爾なんぢ慈じ憐れんの多おほきを以もつて我われを潔きよめ給たまへ。

潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、我われ爾なんぢの外ほかに避所かくれがを得えず、地ち上じやうに他たの堅けん固ごなる保護まもり及および庇蔭おほひを識しらず。故ゆゑに熱心ねつしんに爾なんぢに趨はしり附つきて、爾なんぢに依よりて諸罪しよざいの赦ゆるしを得えんことを求もとむ。

光榮 讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢは今いま慈じ憐れんを以もつて上うへより爾なんぢの諸僕しよぼくを瞰のぞみて、敬虔けいけんの敎をしへの中うちに之これを護まもり、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、爾なんぢを實まことの潔いさぎよき生しやう神女しんぢよとして尊たふとむ我われ等らを諸もろもろの危き難なんより救すくひ給たまふ。

今も 人ひとを愛あいする主しゆよ、種たねなく爾なんぢを生うみし者ものは爾なんぢが十じふ字架じかの木きに懸かゝれるを覩みて呼よべり、吾わが子こ及および全能ぜんのうなる神かみよ、人人ひとびとを救すくはんと欲ほつして、如何いかんぞ今いま十じふ字架じかに釘ていせられたる。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。聖三祝文、「天に在す」の後に讚詞トロパリ。其他常例の如し、及び發放詞。

金曜日

 金曜日の早課

第一の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第一調。

ハリストスよ、爾なんぢ十じふ字架じかに釘ていせられしに暴ばう虐ぎやくは滅ほろび、敵てきの力ちからは蹈ふまれたり、天てん使しに非あらず、人ひとに非あらずして、主しゆよ、爾なんぢ親みづから我われ等らを救すくひ給たまひしに因よる。光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 主しゆ我わが神かみを崇あがめ讚ほめ、其その足あし凳だいに伏ふし拜をがめよ、是これ聖せいなり。

人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ等ら爾なんぢの十じふ字架じかの木きに伏拜ふくはいす。蓋けだし爾なんぢは、萬ばん衆しゆうの生命いのちよ、其その上うへに釘ていせられて、信しんを以もつて爾なんぢに就つきし盜賊たうぞくの爲ために樂園らくゑんを啓ひらき、爾なんぢを承うけ認みとめて、主しゆよ、我われを憶おもひ給たまへと呼よぶ者ものを福樂ふくらくに勝たへさせ給たまへり。救世主きうせいしゆよ、彼かれの如ごとく我われ等らをも受うけ給たまへ、我われ等ら衆しゆう罪つみを犯おかせり、爾なんぢの慈じ憐れんに因よりて我われ等らを棄すつる勿なかれと呼よべばなり。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 無む玷てんなる牝め羊ひつじは羔こひつじ及および牧者ぼくしやが木きに懸かけられて死しせしを見みて、哭なきて言いひ、母はゝとして呼よべり、吾わが子こ、至し仁じんなる神かみよ、如何いかにして我われ言ことばに超こゆる爾なんぢの謙卑へりくだりと自じ由いうなる苦くるしみとを忍しのばん。

第二の誦文の後に十字架の坐誦讚詞セダレン、第一調。

十じふ字架じかの武器ぶきは昔むかし敬虔けいけんなるコンスタンティン帝ていに、戰たゝかひの時ときに敵てきに對たいして、信しんに由よる勝かたれぬ勝かちと顯あらはれたり。仇敵きうてきの軍ぐんは之これに慄をのゝく、此これ信者しんじやの爲ためには救すくひ、パワェルの爲ためには誇ほこりと爲なれり。

句 神かみ、我わが古こ世せいよりの王わうは救すくひを地ちの中なかに作なせり。

昔むかし塵土ちりを以もつてアダムを造つくりし洪恩こうおんの主しゆよ、爾なんぢは塵土ちりの手てにて頰ほゝを打うたれ、十じふ字架じかに釘ていせらるると、汚辱はづかしめと、創痍きずとを忍しのべり。嗚呼あゝ奇き蹟せきや、嗚呼あゝ多おほくの爾なんぢの恒忍ごうにんや。主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの生いのちを施ほどこす苦くるしみに歸きす、爾なんぢは此これを以もつて我われ等らを救すくひ給たまへり。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

致命者讚詞 主しゆよ、光くわう榮えいなる受難者じゆなんしやは爾なんぢより苦くるしみの報はう賞しやうたる尊たふとき榮えい冠くわんにて飾かざられたり、蓋けだし創痍きずを忍しのぶを以もつて不ふ法はふの者ものに勝かち、神聖しんせいなる能力ちからを以もつて天てんより勝しよう利りを獲えたり。救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて、我われ等らをも見みえざる敵てきより脫のがれしめて、我われ等らを救すくひ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 ハリストスよ、純じゆん潔けつなる母はゝは爾なんぢが十じふ字架じかに上あげられて死しせしを覩みて呼よべり、父ちゝ及および聖神せいしんと同どう無む原げんなる吾わが子こよ、斯この爾なんぢの言いひ難がたき攝せつ理りは何なにぞ、洪恩こうおんなる主しゆよ、爾なんぢは此これを以もつて爾なんぢの至し淨じやうなる手ての造物ざうぶつを救すくひ給たまへり。

第三の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第一調。

言ことばよ、日ひは爾なんぢ光くわう榮えいの日ひが大だい慈じ憐れんに由よりて、甘あまんじて十じふ字架じかの木きに身みにて懸かけられしを覩みる時とき、狂きやう妄ばうに忍しのびずして晦くらみたり。祈いのる、イイススよ、我わが昧くらまされし靈たましひを爾なんぢの近ちかづき難がたき光ひかりを以もつて照てらして、我われを救すくひ給たまへ。

洪恩こうおんなる主しゆよ、爾なんぢは甘あまんじて十じふ字架じかに釘ていせられて、我われ等らの朽くちたる性せいを神成しんせいし、殺人ひとごろしなる蛇へびを殺ころせり。祈いのる、爾なんぢの尊たふとき十じふ字架じかを以もつて正敎せいけうを平安へいあんの中うちに堅かため、異い端者たんしやの興おこるを止とゞめ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、我われ等ら爾なんぢの保護ほごを獲えて、爾なんぢの祈き禱たうに由よりて患くわん難なんより救すくはれ、爾なんぢの子この十じふ字架じかにて常つねに諸方しよはうに護まもらる、故ゆゑに皆みな職しよくとして敬虔けいけんに爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

尊貴にして生命を施す十字架の規程カノン、其冠詞は、我主宰の尊き苦を崇め讚む。イオシフ師の作。第一調。

第一歌頌

イルモス 我われ等ら凱歌かちうたを以もつて、エギペトにモイセイを助たすけて、彼かれを以もつてファラオンを全軍ぜんぐんと偕ともに溺おぼらしし神かみに謳うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

性せいに於おいて苦くるしみに與あづからざる言ことばよ、爾なんぢは我われ等らの爲ために苦くるしみを忍しのび、盜賊たうぞくと偕ともに十じふ字架じかに釘ていせられて、惡あくの魁かしらたる蛇へびを殺ころし、爾なんぢに伏拜ふくはいする者ものを救すくひ給たまへり。

東ひがしの東ひがしたるイイススよ、爾なんぢは西にしなる我われ等らの退しりぞけられたる性せいに來きたり給たまへり。日ひは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせらるるを見みて、己おのれの光ひかりを隱かくせり。

致命者讚詞 光くわう榮えいなる受難者じゆなんしやよ、爾なんぢ等らは巧たくみに暫ざん時じの死しを以もつて永遠えいゑんの生命いのちに易かへて、天國てんこくを獲えたり。故ゆゑに讚榮さんえい讚さん美びせらる。

致命者讚詞 聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは勇いさましくハリストスの苦くるしみに效ならひて、奧密あうみつなる行動かうどうを以もつて地ち上じやうの者ものの苦くるしみを醫いやし、言ことばを以もつて惡あく鬼きを遠とほざけ給たまふ。

生神女讚詞 牝め羊ひつじは羔こひつじたるハリストスが十じふ字架じかに上あげられしを見みて、歎なげきて呼よべり、無む原げんなる子こ、恒忍ごうにんの主しゆよ、爾なんぢの華麗くわれいは何處いづこにか隱かくれたる。

又、至聖なる生神女の規程カノン、第一調。

第一歌頌

イルモス 我われ等ら皆みな凱歌かちうたを以もつて、高たかき手てにて神妙しんめうなる奇き蹟せきを行おこなひて、イズライリを救すくひし神かみに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

時ときに限かぎられぬ神かみを時とき屆いたりて人體じんたいを取とりし者ものとして生うみ給たまひし獨ひとり至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、我わが至いたりて不ふ當たうなる靈たましひの時とき每ごとの諸慾しよよくを醫いやし給たまへ。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、慈じ憐れんの者ものとして、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて、我わが靈たましひの毁傷きず、心こゝろの迷惑まどひ、思おもひの昏昧くらみ、智慧ちゑの屈くつ從じゆうを除のぞき給たまへ。

光ひかりたる我わが贖しよく罪主ざいしゆを生うみし至し淨じやうなる者ものよ、我われを幽昧くらやみと永遠えいゑんの苦くるしみより脫のがれしめ給たまへ、我わが救すくはれて爾なんぢの仁じん慈じを歌か頌しようせん爲ためなり。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ諸罪しよざいの海うみに溺おぼれ、諸慾しよよくの暴風あらしに打うたるる者ものは爾なんぢの平穩へいをんを呼よぶ、我われを救すくひ給たまへ、爾なんぢは信者しんじやの港みなとなればなり。

第三歌頌

イルモス 第だい二にの天てんを水みづの上うへに固かため、地ちを水みづに基もとづけし全能ぜんのうのハリストス神かみよ、願ねがはくは我わが心こゝろは爾なんぢの旨むねに固かためられん。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは十じふ字架じかに手てを伸のべ、神聖しんせいなる指ゆびを血ちに染そめて、爾なんぢの手ての造工しわざたるアダムを兇殺ひとごろしの手てより救すくひ給たまへり、獨ひとり仁じん慈じにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

主宰しゆさいよ、爾なんぢは戈ほこを以もつて脅わき腹はらを刺さされて、肋あばら骨ぼねに由よる躓つまづきを起おこし、木きに擧あげられて、昔むかし木きの果みに由よりて患くわん難なんに遭あひし者ものを善ぜん智ちなる盜賊たうぞくと偕ともに樂園らくゑんに入いれ給たまへり。

致命者讚詞 敎けう會くわいの固かため、正敎せいけうの前まへ柱ばしら、敵てきを滅ほろぼしし者もの、主しゆの致ち命者めいしやを、我われ等ら潔いさぎよき念おもひを以もつて歌か頌しようして讚さん美びすべし。

致命者讚詞 無む形けいの葡ぶ萄樹だうじゆの神聖しんせいなる枝えだたる致ち命者めいしやは、我われ等らの爲ために衆しゆう信者しんじやの心こゝろを樂たのしましむる忍耐にんたいの酒さけを流ながす房ふさを生しやうじたり。

生神女讚詞 至いたりて讚さん美びたる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの腹はらの果みは祝しゆく福ふくせられたり。彼かれは木きの果みに由よりて朽くちたる我われ等らを、己おのれの十じふ字架じかに由よりて、神聖しんせいなる恩おん寵ちようを以もつて、不ふ朽きうに與あづかる者ものと爲なし給たまへり。

又 同「イルモス」

至し聖せいなる生しやう神女しんぢよ、信者しんじやの扶ふ助者じよしやよ、我わが果みを結むすばざる思念おもひの荒あれたるを盡ことごとく除のぞきて、我わが靈たましひを諸德しよとくの果みを結むすぶ者ものと顯あらはし給たまへ。

我われ等らの爲ために永遠えいゑんの光ひかりを生うみし至いたりて無む玷てんなる者ものよ、我われを凡およその侵害しんがい、蛇へびの多おほくの誘惑いざなひ、永遠えいゑんの火ひ及および幽暗くらやみより脫のがれしめ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ畏おそるべき審判しんぱんに於おいて答こたふべきことなきに因よりて、彼かの滅きえざる火ひに定罪ていざいせられん。至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、急いそぎて我われ爾なんぢの僕ぼくを救すくひ給たまへ。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、神かみは人類じんるゐを神成しんせいせん爲ために爾なんぢに依よりて、言ことばと思おもひとに超こえて人ひとと爲なり給たまへり。故ゆゑに我われ等ら衆しゆう信者しんじやは同心どうしんに爾なんぢを讚揚さんやうす。

第四歌頌

イルモス 預よ言者げんしや言いへり、主しゆよ、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれ、爾なんぢの作爲わざを悟さとりて、爾なんぢの力ちからを讚榮さんえいせり。

恩者おんしやなる主しゆよ、爾なんぢは義ぎなる立法者りつぱふしやにして、罪犯者ざいはんしやと偕ともに算かぞへられて、木きに擧あげられたり、衆しゆうを義ぎと爲なさん爲ためなり。

爾なんぢ日ひなる者ものが十じふ字架じかに擧あげらるるを見みて、天てん使しの衆しゆう軍ぐんは驚おどろき、幽暗くらやみの首しゆ領りやうは勝かたれたり。

致命者讚詞 屬神ぞくしんの諸しよ恩おん賜しの中うちより醫治いやしの恩おん賜しを汲くみたる致ち命者めいしやは、神かみの恩おん寵ちようを以もつて、衆しゆうの爲ために靈たましひを滅ほろぼす慾よくを洗あらふ。

致命者讚詞 受難者じゆなんしやは怠惰おこたりの眠ねむりを去さりて、神聖しんせいなる儆醒けいせいと信しんとを以もつて猛獸まうじうの奮迅ふんじんを眠ねむらせて、喜よろこびて苦くるしみを受うけたり。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよは哭なきて云いへり、哀かなしい哉かな子こよ、是これ何なにぞ、如何いかにして我われ爾なんぢ生命いのちを賜たまふ者ものが木きに擧あげられて、非義ひぎに殺ころさるるを見みる。

又

イルモス 預よ言者げんしやアウワクムよ、爾なんぢは神しん゜にて言ことばが人體じんたいを取とるを預よ見けんして、傳つたへて呼よべり、年としの邇ちかづく時とき爾なんぢは識しられん、期きの屆いたる時とき爾なんぢは顯あらはれん、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

生しやう神しん童貞女どうていぢよ、無む玷てんの幕まくなる者ものよ、諸罪しよざいに汚けがされし我われを爾なんぢの洪恩こうおんの潔いさぎよき灑そゝぎにて淨きよめ、我われに援助たすけの手てを授さづけて、呼よばしめ給たまへ、潔いさぎよき神かみの聘女よめよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは智慧ちゑに超こえて爾なんぢの中うちに入いりし神かみの爲ために聖せいにせられし殿でんと顯あらはれたり。彼かれに我わが諸罪しよざいの汚けがれを淨きよめんことを祈いのり給たまへ、我われ等らが聖神せいしんの殿でん及および居處すまひとならん爲ためなり。

生しやう神女しんぢよ、獨ひとり慈じ憐れんの泉いづみを生うみし者ものよ、我われを憐あはれみて、我わが靈たましひの甚はなはだしき毁傷いたみと心こゝろの迷惑まどひとを解とき、終をはりの至いたらざる先さきに我われに淚なみだの流ながれと感かん傷しやうと諸罪しよざいの赦ゆるしとを與あたへ給たまへ。

聖せいなる生しやう神女しんぢよ、人人ひとびとに似にんと欲ほつせし至し聖せいなる主しゆを身みにて生うみし者ものよ、我われ等らを聖せいにし給たまへ。至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢの祈き禱たうを以もつて我われ等ら衆しゆうを天てんの國くにに與あづかる者ものと顯あらはし給たまへ。

第五歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主宰しゆさい、ハリストス我わが神かみよ、朝あさに爾なんぢが誡いましめの定さだめの事ことを考かんがふる我われ等らを永遠えいゑんの明あきらかなる光ひかりにて照てらし給たまへ。

萬ばん衆しゆうの審判者しんぱんしや、獨ひとり慈じ憐れんなる主しゆハリストス我わが神かみよ、爾なんぢは身みにて十じふ字架じかに擧あげられて、爾なんぢを識しらざる諸民しよみんを爾なんぢを識しる知ち識しきに召めし給たまへり。

義ぎなる主しゆよ、爾なんぢ不義ふぎなる審判しんぱんに立たちしに、先さきに定罪ていざいせられしアダムは義ぎとせられて呼よぶ、恒忍ごうにんなる主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせらるることに歸きす。

致命者讚詞 致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは神かみの植うゑ附つけし樂園らくゑんの如ごとき者ものと顯あらはれたり、爾なんぢ等らの尊たふとき苦くるしみは、芳かうばしき花はなの如ごとく、衆しゆう信者しんじやの靈たましひを薰かをらす。

致命者讚詞 美うるはしき花はな及および繁しげき實みの樹きたる主しゆの致ち命者めいしや、信しんの不死ふしの果みを盛さかんに生しやうじ、姦かん惡あくの根ねを絕たやしし者ものを我われ等ら歌か頌しようせん。

生神女讚詞 凋しぼまざる花はなを開ひらきし尊たふとき杖つゑたる者ものは彼かれが木きに擧あげらるるを見みて呼よべり、主宰しゆさいよ、我われを子こなき者ものと爲なす勿なかれ。

又

イルモス 神かみの子こよ、爾なんぢの平安へいあんを我われ等らに與あたへ給たまへ、蓋けだし我われ等らは爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらず、爾なんぢの名なを唱となふ、爾なんぢは生せい死し者しやの神かみなればなり。

昔むかしエデムの中うちに惡あしき食しよくは我われを死し者しやと爲なせり。生命いのちを生うみし潔いさぎよき者ものよ、其時そのとき木きに緣よりて死しせし我われを今いま生いかして、感かん傷しやうを與あたへ給たまへ。

純じゆん潔けつなる者ものよ、我われを甚はなはだしき葘害わざはひより救すくひ、諸慾しよよくの汚けがれより起おこし、爾なんぢの不ふ當たうなる僕ぼくを惡あく鬼きに執とらはれて害がいせらるることより脫のがれしめ給たまへ。

至し潔けつ至し淨じやうなる者ものよ、我わが靈たましひの眸子ひとみを照てらして、常つねに我われに神聖しんせいなる光明くわうみやうと爾なんぢの光くわう榮えいとを仰あふがしめ給たまへ、我わが慈じ憐れんと永遠えいゑんの光くわう榮えいとを獲えん爲ためなり。

潔いさぎよき童貞女どうていぢよ母はゝよ、我われ等ら爾なんぢを雲くもと、樂園らくゑんと、光ひかりの門もん、筵えんと、羊ひつじの毛けと、世せ界かいの甘かん味みなる「マンナ」を内うちに籠こむる壺つぼとして識しる。

第六歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢは預よ言者げんしやを鯨くぢらより救すくへり。祈いのる、我われをも罪惡ざいあくの深處ふかみより引ひき上あげ給たまへ。

一切いつさいの尊そん貴きより最高いとたかきハリストスよ、爾なんぢは汚辱はづかしめを忍しのびて、十じふ字架じかに擧あげられたり、人人ひとびとを尊そん貴きなる者ものと爲なさん爲ためなり。

ハリストス、吾わが至し仁じんなる神かみよ、爾なんぢは葦あしにて擊うたれて、我われ詭き譎者けつしやの奴ど隷れいと爲なりたる者ものの爲ために釋とかるることを記しるす。

致命者讚詞 聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは苦くるしみの病やまひにて病やまひなき終をはりに就つきて、言いひ難がたき欣喜よろこびを獲えたり。

致命者讚詞 睿えい智ちなる者ものよ、爾なんぢ等らはハリストスを愛あいする愛あいの爇炭やけずみに燃もやされたり、故ゆゑに火ひに擲なげうたれて焚やかれざりき。

生神女讚詞 爾なんぢは產さんの前まへの如ごとく、產さんの後のちにも純じゆん潔けつなる者ものとして止とゞまれり、木きにて人ひとを救すくひし神かみを生うみたればなり。

又

イルモス 我われ預よ言者げんしやイオナに效ならひて籲よぶ、仁じん慈じなる者ものよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより援たすけよ。世せ界かいの救主きうしゆよ、我われ光くわう榮えいは爾なんぢに歸きすと籲よぶ者ものを救すくひ給たまへ。

爾なんぢ仁じん慈じ無む玷てんの幕まくなる者ものに祈いのる、我われ多おほくの罪つみに汚けがされたる者ものを爾なんぢの轉達てんたつを以もつて凡およその汚けがれより滌あらひ給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ度ど生せいの諸難しよなんの浪なみたつ海うみに荒あらさるる者ものの爲ために舵師かぢとりと爲なりて、永遠えいゑんの港みなとに導みちびきて、我われを救すくひ給たまへ。

意念おもひの騷擾あらだち、諸慾しよよくの攻擊せめ、諸罪しよざいの深處ふかみは我わが不ふ當たうなる靈たましひを溺おぼらす。聖せいなる女宰ぢよさいよ、我われを援たすけ給たまへ。

成聖せいせいの幕まくたる神かみの聘女よめマリヤよ、逸樂いつらくに汚けがされたる吾わが不ふ當たうなる靈たましひを聖せいにし給たまへ。

第七歌頌

イルモス 救世主きうせいしゆよ、爐ゐろりは露つゆを注そゝがれ、少者せうしやは樂たのしみて歌うたへり、先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

爾なんぢは十じふ字架じかに釘ていせられて造物ざうぶつを震ふるはせ、殺ころされて蛇へびを殺ころし給たまへり。ハリストス、我わが先せん祖ぞの神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

恒忍ごうにんなる主しゆは膽いを飮のませられて、我われ甘あまき食しよくに緣よりて樂園らくゑんの糧かてを奪うばはれたる者ものの爲ために救すくひの甘味あまみを流ながし給たまふ。

致命者讚詞 致ち命者めいしやは鐵搭くまでにて搔かかれて、死しに屬ぞくする者ものの麤笨あらきを去さりて、神かみより神聖しんせいなる華麗くわれいを受うけ給たまへり。

致命者讚詞 勇敢ゆうかんなる致ち命者めいしやは其その苦くるしみを以もつてハリストスの至し淨じやうなる苦くるしみに傚ならひて、敵てきより受うくる傷きずを輙たやすく忍しのび給たまへり。

生神女讚詞 無む玷てんなる生しやう神女しんぢよは主しゆの十じふ字架じかに釘ていせらるるを見みて云いへり、吾わが子こよ、哀かなしい哉かな、信者しんじやの生命いのち及および憑恃たのみよ、如何いかんぞ死しする。

又

イルモス 救世主きうせいしゆよ、火ひは爐ゐろりの中うちに在ある爾なんぢの少者せうしやに觸ふれず、彼かれ等らを懼おそれしめざりき、其時そのとき三人さんにん口くちを一いつにして、歌か頌しよう祝しゆく讚さんして言いへり、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

至し淨じやうなる神かみの聘女よめよ、諸慾しよよくに汚けがされたる吾わが靈たましひを聖せいにし給たまへ。潔いさぎよき者ものよ、我わが智慧ちゑの囚とらはれを釋とき、心こゝろの迷惑まどひ、惡あく鬼きの侵害しんがいを速すみやかに除のぞき給たまへ。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、肉體にくたいの慾よくに殺ころされし我わが智慧ちゑを生いかして、我われを神かみの悅よろこぶ所ところを行おこなはん爲ために堅かため給たまへ、我わが爾なんぢを讚さん美びして、常つねに爾なんぢの慈じ憐れんを讚榮さんえいせん爲ためなり。

獨ひとり神かみを生うみし童貞女どうていぢよ母はゝよ、我わが肉體にくたいの慾よくを殺ころし、吾わが靈たましひの汚けがれを速すみやかに洗あらひ、我われを詭き譎けつなる惡あく鬼きの苛虐くるしめより脫のがれしめて、救すくひ給たまへ。

神聖しんせいなる諸德しよとくに妝よそほはれたる潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは父ちゝと同どう無む原げんなる言ことば、實じつに其その諸德しよとくを以もつて天てんを蔽おほへる者ものを生うみ給たまへり。彼かれに我われ等らを宥なだめんことを常つねに祈いのり給たまへ。

第八歌頌

イルモス 爐ゐろりの中うちに歌か頌しようせし少者せうしやを救すくひて、烈はげしき焰ほのほを露つゆに變へんぜしハリストス神かみを歌うたひて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせられし時とき、造物ざうぶつは震ふるへり、日ひは光くわう線せんを停とゞめ、磐いはは裂さけ、地ぢ獄ごくは爾なんぢの權能けんのうに勝たへずして、急いそぎて其その虜とりこを還かへせり。

洪恩こうおんなる主しゆよ、爾なんぢは遠とほざけられし者ものの定罪ていざいの爲ために定罪ていざいを受うけ、裸はだかなるを覺おぼえし者ものの爲ために裸はだかにして木きに懸かゝりたり。爾なんぢの權能けんのうと恒忍ごうにんとは大おほいなる哉かな。

致命者讚詞 無む形けいの者ものの同どう住ぢゆう者しやたるハリストスの軍ぐん士しは十じふ字架じかを鎧よろひの如ごとく具ぐ足そくし、敵てきと戰たゝかひて、美うるはしき足あしにて之これを蹈ふみたり。

致命者讚詞 勇敢ゆうかんなる者ものは鐵梏てつかせにて裁判所さいばんじよの中なかに立たち、百ひやく體たい寸斷すんだんせられて、迷謬まよひの造築たてものを毁こぼち、惡あく鬼きの祭壇さいだんを壞やぶれり。

生神女讚詞 天てんより高たかき者ものは惟一ゆゐいち至し上じやう者しやが木きに擧あげられて、敵てきの驕傲おごりを倒たふすを見みて、高聲かうせいにて彼かれを歌か頌しようせり。

又

イルモス 諸天しよてん使しと悉ことごとくの軍ぐんとが造物ざうぶつ者しや及および主しゆとして畏おそるる者ものを、司し祭さいよ、歌か頌しようし、少者せうしやよ、讚榮さんえいし、人人ひとびとよ、崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

至し淨じやうなる者ものよ、肉體にくたいなき者ものは神かみに適かなふが如ごとく爾なんぢより肉體にくたいを取とり給たまふ。我わが肉體にくたいの慾よくを殺ころして、罪つみに殺ころされし吾わが靈たましひを生いかさんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、爾なんぢは塵土ちりのアダムの毁傷いたみを醫いやす救世主きうせいしゆ及および神かみを生うみ給たまへり。甚はなはだしく病やめる吾わが靈たましひの創痍きずを醫いやさんことを彼かれに祈いのり給たまへ。

潔いさぎよき者ものよ、惡あくの深處ふかみに臥ふす我われを起おこして、今いま我われと戰たゝかふ敵てきに勝かち給たまへ。至し淨じやうなる者ものよ、不ふ當たうなる逸樂いつらくにて殘そこなはれたる我わが靈たましひを棄すてずして、我われを憐あはれみて救すくひ給たまへ。

至し淨じやうなる者ものよ、我われ等ら爾なんぢを、祝しゆく讚さんせられて神かみの恩おん寵ちようを蒙かうむれる生しやう神女しんぢよと識しる者ものは、神かみに捧さゝぐる爾なんぢの眠ねむらざる祈き禱たうに因よりて、諸もろもろの誘惑いざなひより救すくはる。

次ぎて生神女の歌、「我が靈は主を崇め」、及び躬拜。

第九歌頌

イルモス モイセイが見みし焚やかれぬ棘いばら、イアコフが見みし活いける梯かけはし、ハリストス我わが神かみが過とほりし天てんの門もんたる潔いさぎよき母はゝよ、我われ等ら歌うたを以もつて爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

嗚呼あゝ如何いかんぞ不ふ順じゆんの民たみは爾なんぢを十じふ字架じかに付わたしたる。獨ひとり恒忍ごうにんなる主しゆよ、爾なんぢが甘あまんじて貧まづしくなりて、苦くるしみを受うけ給たまひしは、陷おちいりしアダムの子し孫そんを悉ことごとく苦くるしみより救すくはん爲ためなり。

ハリストスよ、爾なんぢが身みにて耻はづべき十じふ字架じかの釘殺ていさつを受うけしは、無知むちなる慾よくに汚けがされて、古いにしへの華麗うるはしきを失うしなひし人ひとを尊たふとき者ものと爲なさん爲ためなり。光くわう榮えいは智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの慈じ憐れんに歸きす。

致命者讚詞 入いらざる日ひハリストスよ、爾なんぢは夙つとに爾なんぢに奉ほう事じして苦くるしみの暗やみを過すぎたる者ものを、爾なんぢの指麾しきを以もつて爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいと光くわう照せうとの光ひかりに導みちびき給たまへり。求もとむ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らを照てらし給たまへ。

致命者讚詞 聖せいにせられし致ち命者めいしやの隊たいは無む形けいの萬まん萬まんの敵てきに勝かち、聖せいなる萬まん萬まんの軍ぐんに合あはせられて、全能者ぜんのうしやの指麾しきを以もつて常つねに吾わが靈たましひの萬まん萬まんの苦くるしみを醫いやし給たまふ。

生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、身みにて爾なんぢより輝かゞやきし光ひかりの光くわう照せうを以もつて我わが智慧ちゑを輝かゞやかし、心こゝろを照てらして、罪つみの暗やみを逐おひ、我わが煩悶もだえの幽暗くらやみを盡ことごとく掃はらひ給たまへ。

又

イルモス 光ひかりを放はなつ雲くも、萬有ばんいうの主しゆが雨あめの天てんより羊ひつじの毛けに降くだるが如ごとく降くだり、始はじめなき者ものが身みを取とりて我われ等らの爲ために人ひとと爲なりし所以ゆゑんの者ものを、我われ等ら皆みな我わが神かみの潔いさぎよき母はゝとして崇あがめ讚ほむ。

潔いさぎよき者ものよ、我われ罪つみに耽ふけりて怠惰おこたりに生いのちを送おくる者ものは公平こうへいなる審判しんぱんに慄をのゝく。至し淨じやうなる神かみの聘女よめよ、爾なんぢの聖せいなる祈き禱たうを以もつて我われを其時そのときに定罪ていざいせらるるなく護まもり給たまへ、我わが常つねに爾なんぢを我われの轉達者てんたつしやとして讚さん美びせん爲ためなり。

童貞女どうていぢよよ、我われ地ち上じやうに多おほくの罪つみを行おこなひし者ものは審判しんぱん及および爾なんぢの子この見みざる所ところなき目めに慄をのゝく。故ゆゑに爾なんぢに呼よぶ、至いたりて慈じ憐れんなる潔いさぎよき女宰ぢよさいよ、我われを助たすけて、其時そのときの患くわん難なんより脫のがれしめて、我われを救すくひ給たまへ。

生しやう神女しんぢよよ、審判しんぱんの日ひは如何いかにか畏おそるべき、應答こたへは如何いかにか難かたき、患くわん難なんは如何いかにか苦くるしき、至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、其時そのとき孰たれか能よく立たたん。潔いさぎよき者ものよ、我わが多た慾よくなる靈たましひを憐あはれみて、終をはりの至いたらざる先さきに我われに赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

父ちゝより輝かゞやける神聖しんせいなる光ひかりを生うみし淸淨しやうじやう無垢むくなる者ものよ、度ど生せいの誘惑いざなひに昧くらまされて、諸敵しよてきの哂わらひと爲なりし我わが靈たましひを宥なだめて、救すくひを致いたす痛つう悔くわいの光ひかりに與あづからしめ給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び躬拜。小聯禱、光耀歌。次に常例の聖詠。

挿句くづけに十字架の讚頌スティヒラ、第一調。

我われ等らは爾なんぢ身みにて木きの上うへに釘ていせられて、我われ等らに生命いのちを賜たまひし者ものを、救世主きうせいしゆ及および主宰しゆさいとして絕たえず歌うたふ。

句 主しゆよ夙つとに爾なんぢの憐あはれみを以もつて我われ等らに飽あかしめよ、然しかせば我われ等ら生しやう涯がい歡よろこび樂たのしまん。

爾なんぢ我われ等らを撲うちし日ひ、我われ等らが禍わざはひに遭あひし年としに代かへて、我われ等らを樂たのしましめ給たまへ。願ねがはくは爾なんぢの工作わざは爾なんぢの諸僕しよぼくに著あらはれ、爾なんぢの光くわう榮えいは其その諸しよ子しに著あらはれん。

ハリストスよ、爾なんぢの十じふ字架じかに因よりて諸天しよてん使し及および人人ひとびとに一いつの牧群ぼくぐんと爲なり、天てんと地ちとは一いつの會くわいに於おいて樂たのしみて呼よぶ、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。

句 願ねがはくは主しゆ、吾わが神かみの惠めぐみは我われ等らに在あらん、願ねがはくは我わが手ての工作わざを我われ等らに助たすけ給たまへ、我わが手ての工作わざを助たすけ給たまへ。

致命者讚詞 人人ひとびと皆みな來きたりて、歌か頌しようと屬神ぞくしんの詩賦しふとを以もつてハリストスの受難者じゆなんしやを尊たふとまん。彼かれ等らは世せ界かいの燈ともしび、敎をしへの傳道でんだう師し、信者しんじやの爲ために醫治いやしを注そゝぐ所ところの常つねに流ながるる泉いづみなり。ハリストス我わが神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて爾なんぢの世せ界かいに平安へいあん、我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、十字架生神女讚詞 牝め羊ひつじたる純じゆん潔けつなる女宰ぢよさいは羔こひつじが美うるはしき姿容すがたなく、華榮みばえなくして十じふ字架じかに在あるを覩みて、哭なきて云いへり、哀かなしい哉かな、最いと甘あまき者ものよ、爾なんぢの華榮みばえは何いづこにか隱かくれたる、最愛いとあいすべき吾わが子こよ、華麗くわれいは何いづこにか在ある、爾なんぢの姿容すがたの輝かゞやける恩おん寵ちようは何いづこにか在ある。

 金曜日の聖体礼儀に

金曜日の眞福詞、第一調。

敵てきは食しよく物もつを以もつてアダムを樂園らくゑんより引ひき出いだし、ハリストスは十じふ字架じかを以もつて盜賊たうぞくを其中そのうちに入いれ給たまへり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき、我われを憶おもひ給たまへと呼よべばなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

罪つみなきハリストスよ、爾なんぢは十じふ字架じかに釘ていせられて、衆しゆう人じんの罪つみを取とり、脅わきを刺さされて、救すくひの泉いづみなる水みづと血ちとを流ながして、朽くちたる者ものを生いかし給たまへり。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事こと譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

洪恩こうおんなる主しゆイイスス神かみよ、爾なんぢは木きに釘ていせられて、アダムの苦くるしき意念おもひを悉ことごとく去さり、爾なんぢの尊たふとき傷きずにて惡あく鬼きの大數たいすうに傷きずつけ給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

致命者讚詞 甘あまんじて身みにて苦くるしみを受うけし主しゆの苦くるしみに效ならひたる光くわう榮えいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは常つねに屬神ぞくしんの力ちからを以もつて醫いやし難がたき苦くるしみを醫いやし、人人ひとびとより諸しよ病びやうを退しりぞけ給たまふ。

光榮 我われ等らは同どう能のう同尊どうそんなる三者さんしやを讚榮さんえいし、無む原げんなる神父かみちゝと、子こと、聖神せいしん、惟一ゆゐいちにして三さん位ゐなる神元しんげんを熱信ねつしんに崇あがめ讚ほむ。

今も ハリストス神かみよ、身みにて爾なんぢを生うみし者ものは爾なんぢが十じふ字架じかに釘ていせられしを見みて、哭なきて云いへり、嗚呼あゝ吾わが子こよ、法はふに戾もとるエウレイの會くわいは何なにをか爾なんぢに報むくいたる。

「スボタ」の奉神礼の規程

 「主は神なり」を歌う時

「主は神なり」を歌ふ時の「スボタ」の晩課早課及び聖體禮儀リトゥルギヤの奉事の事。
金曜日には、晩課の常例の誦文の後に、「主よ、爾に籲ぶ」に月課經ミネヤの聖人の讚頌スティヒラ六章を歌ふ。光榮、若し之あらば、聖人の自調。若しなくば、光榮、今も、本調の第一の生神女讚詞。挿句くづけに八調經オクトイホの本調の致命者讚詞三章。光榮、若し之あらば、聖人の。若しなくば、光榮、今も、生神女讚詞。次に「主宰よ、今爾の言に循ひて云云」、及び聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞トロパリ。光榮、今も、本調の生神女讚詞。聯禱及び發放詞。

知るべし。若し使徒の一、或は大聖人の一、或は讚詞トロパリのあらざる聖人に遇はずば、「主は神なり」を歌はずして、「アリルイヤ」を第二調に据りて歌ふ。早課に六聖詠の後に「主は神なり」を歌ふ、聖人の讚詞トロパリの調に据る、及び其讚詞二次。光榮、今も、第一の生神女讚詞、聖人の讚詞トロパリの調に据る。次に第十六「カフィズマ」、「主我が主に謂へり云云」を誦文す、常例の如し。誦文の後に聯禱。八調經の致命者の二坐誦讚詞セダレン、第一及び第二。光榮、今も、本調の第一の生神女讚詞。竝に誦讀。其後「ネポロチニ」「道に玷なくして云云」を歌ふ。此の時司祭爐儀を行ふ。「ネポロチニ」の後に致命者の二坐誦讚詞セダレン、第三及び第四、竝に死者讚詞。光榮、今も、生神女讚詞。又誦讀。及び第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて云云」。次に規程カノン三篇を歌ふ、卽月課經ミネヤの聖人の、「イルモス」と共に六章、「イルモス」二次、讚詞トロパリ四章(蓋「スボタ」に於ては常に此の規程カノンを先にす)、其後聖人の堂の四章、終に八調經オクトイホの致命者の四章。蓋死者の規程カノンは金曜日の晩堂課に歌ふ。規程には歌頌、「主に歌はん」を附唱す。第三歌頌の後に月課經ミネヤの聖人の坐誦讚詞セダレン。光榮、今も、生神女讚詞。第六歌頌の後に、若し之あらば、聖人の小讚詞コンダク及び同讚詞イコス。幷に祭日略解プロログを讀む。第九歌頌の後に光耀歌、先に若し之あらば、聖人の。次に光榮、八調經の。今も、生神女讚詞。若しなくば、八調經の光耀歌、卽「神として死者と生者とを司り云云」。光榮、今も、「生神女よ、我等は爾を以て誇り云云」。「凡そ呼吸ある者」に八調經の讚頌スティヒラを歌はずして挿句くづけに之を歌ふ。若し「凡そ呼吸ある者」に聖人の讚頌なくば、其時誦す、「主我等の神よ、光榮は爾に歸す云云」。若し「凡そ呼吸ある者」に聖人の讚頌あらば、其時「主我等の神よ、光榮は爾に歸す云云」を誦せずして、讚頌の後直に誦す、「光榮は爾我等に光を顯しし主に歸す」。「至高には光榮神に歸し云云」。其後聯禱、「我等の朝の禱を增して主に獻らん云云」。次に挿句くづけの讚頌スティヒラを歌ふ、卽八調經の「凡そ呼吸ある者」の三の致命者讚詞、第一、第二、第三を常例の附唱と共に歌ふ、其一「主よ、夙に爾の憐を以て我等に饜かしめよ云云」、其二「願はくは主吾が神の惠は我等に在らん云云」。一を措く。第四の死者讚詞はダマスキンの作。光榮、若之あらば、聖人の自調。若しなくば、光榮、今も、其生神女讚詞。「スボタ」の挿句くづけの讚頌スティヒラは之を用ゐず、此れ唯大齋の下記の「スボタ」の早課に歌ふ、卽第二第三第四の「スボタ」に、或は「アリルイヤ」を歌ふに遇ふ時なり。其時挿句くづけの讚頌スティヒラを其死者の附唱と共に歌ふ。次に「至上者よ、主を讚榮し云云」、及び聖三祝文。「天に在す」の後に聖人の讚詞。光榮、今も、早課の生神女讚詞、聖人の讚詞の調に据る。聯禱、第一時課、發放詞、萬壽詞。之を終へて後前院に於て熱衷公禱リティヤを歌ふ、常例の如し。

聖體禮儀リトゥルギヤに眞福詞は八調經オクトイホの六章。若し聖體禮儀リトゥルギヤに聖人の歌頌あらば、其時聖人の第三歌頌四章、及び八調經オクトイホの本調の四章。聖入の後に諸讚詞を誦すること次の如し、ハリストス或は生神女の堂ならば、先に堂の讚詞。次に本日の讚詞、「使徒、致命者、及び預言者云云」。其後順序の聖人の讚詞トロパリ、及び其小讚詞コンダク。若し讚詞及び小讚詞を有つ他の聖人あらば、之を誦せよ。若し「スボタ」に一の聖人にも讚詞或は小讚詞なくば、其時本日の讚詞の後に死者の爲の讚詞を誦す、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。若し聖人或いは聖女の堂ならば、「スボタ」に此の堂の讚詞を誦せず、蓋衆聖人は本日の讚詞の中に唱へられたり。光榮、小讚詞、「ハリストスよ。爾が諸僕の靈を諸聖人と偕に云云」。今も、「主よ、全世界は捧神なる致命者を云云」。
若し聖人或いは聖女の堂ならば、其時聖入の後に諸讚詞トロパリを誦すること次の如し、先に本日の、「使徒、致命者、及び預言者云云」、次に順序の聖人の讚詞トロパリ及び小讚詞コンダク。若し之なくば、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。光榮、「ハリストスよ、爾の諸僕の靈を諸聖人と偕に云云」。今も、「主よ、全世界は捧神なる致命者を云云」。ハリストス或は生神女の堂ならば、祭前期及び祭後期の外、同じく終に堂の小讚詞にあらずして、此の本日の小讚詞、今も、「主よ、全世界云云」を誦す。蓋「スボタ」に於てはハリストス及び生神女の堂の小讚詞を用ゐず、唯若し大聖人に遇はば、其時、今も、生神女の堂の小讚詞。生神女の堂の小讚詞あらずば「ハリスティアニン等の辱を得ざる轉達云云」を誦す。提綱ポロキメン、使徒、アリルイヤ、福音經、及び領聖詞は先に聖人の、次に本日の、蓋使徒及び福音經は主の祭日の外、常に聖人のを先にす。「スボタ」に「主は神なり」の歌はるる時、常に斯の奉事を行ふ。若し「スボタ」に主宰の祭日に遇はば其時必祭日の全奉事を歌ふ。

 「アリルイヤ」を歌う時

金曜日の晩課に第十八「カフィズマ」を誦文す。次に「主よ、爾に籲ぶ」に月課經ミネヤの聖人の讚頌スティヒラ三章、八調經オクトイホの致命者讚詞三、卽第二第三第四なり、第一を措く。光榮、今も、本調の主日の生神女讚詞。「穩なる光」。其後提綱ポロキメン。次に「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩云云」。挿句くづけに第一の致命者讚詞、及び死者讚詞二、ダマスクのイオアン師の作。光榮、今も、生神女讚詞。次に「主宰よ、今爾の言に循ひて云云」、及び聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞、第二調、「使徒、致命者及び預言者云云」。光榮、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。今も、生神女讚詞、「言い難き光の聖なる母よ云云」。聯禱及び發放詞。幷に常例の如く前院に出づ。

早課には、常例の始及び六聖詠の後に、「主は神なり」に代へて、第二調に据りて「アリルイヤ」を歌ふこと三次。次に第一句、「主よ、爾が選び近づけし者は福なり」。第二句、「彼等の記憶は世世に在らん」。第三句、「彼等の靈は福に居らん」。讚詞トロパリ、第二調、「使徒、致命者、及び預言者云云」、二次。光榮、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。今も、生神女讚詞、「言い難き光の聖なる母よ云云」。次に第十六「カフィズマ」。常例の聯禱。其後八調經の致命者の三坐誦讚詞セダレンの中第二及び第三を誦す、第一を措く。次に句、「神よ、爾は爾の聖所に於て嚴なり」、幷に第四の致命者の坐誦讚詞を誦す。第一の生神女讚詞を措く。次に句、「主よ、爾が選び近づけし者は福なり」、幷に本調の死者の坐誦讚詞を誦す。光榮、今も、第二の生神女讚詞。幷に誦讀。其後直に「道に玷なくして云云」、附唱、「主よ、爾は崇め讚めらる云云」と共に第二調に据りて歌ふ。「カフィズマ」を二段に分つ。第一段の後には光榮、今も、を誦せずして、次の句を歌ふ、「若し爾の律法我の慰とならざりしならば云云」、三次。幷に司祭(輔祭あらば輔祭)寢りし者の爲に聯禱を誦す、「我等復又云云」。詠隊、主憐めよ、一次。又、「寢りし神の諸僕(某)の靈の安息の爲云云」。詠隊、主憐めよ、一次。「主神が彼等の靈を云云」。詠隊、主憐めよ、一次。「彼等に神の憐と天國と云云」。詠隊、主賜へよ。輔祭、主に禱らん。司祭、「諸の靈神゜と諸の肉體との神云云」。詠隊、主憐めよ、四十次。高聲、「蓋爾は、ハリストス我等の神よ云云」。詠隊、「アミン」。次に第二段を歌ふ、「我爾に屬す、我を救ひ給へ云云」。附唱、「救世主よ、我を救ひ給へ」。終は、「願はくは我が靈生きて爾を讚榮せん云云」、三次。次に「主よ、爾は崇め讚めらる云云」。竝に安息の爲の讚詞を歌ふ、「聖人の群は生命の泉と云云」、其他。畢りて後に司祭或は輔祭上に記しし安息の爲の聯禱を誦して、寢りし者を記憶す。詠隊、主憐めよ、四十次を歌ひて、司祭が祝文、「諸の靈神゜と諸の肉體との神云云」を誦し畢るに至る。高聲の後に坐誦讚詞、第五調、「我が救世主よ、爾の諸僕を義人等と偕に云云」。光榮、今も、生神女讚詞、「童貞女より世界に輝き云云」。幷に誦讀。第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて云云」。次に規程カノン、先に月課經ミネヤの、「イルモス」と共に六章、次に本堂の四章、及び八調經の第一の規程四章。第三歌頌の後に常例の聯禱。小讚詞コンダク及び坐誦讚詞セダレンは月課經の。幷に誦讀。第六歌頌の後に小讚詞、第八調、「ハリストスよ、爾の諸僕の靈を諸聖人と偕に云云」、及び同讚詞イコス、幷に祭日略解プロログ。第九歌頌の後に八調經の光耀歌。「凡そ呼吸ある者」に致命者讚詞四章。光榮、死者讚詞。今も、生神女讚詞。挿句くづけに死者の讚頌スティヒラ、フェオファン師の作。光榮、今も、生神女讚詞。次に「至上者よ、主を讚榮し云云」、及び聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、第二調、「使徒、致命者、及び預言者云云」。光榮、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。今も、生神女讚詞、「言い難き光の聖なる母よ云云」。幷に聯禱。次に司祭、「永在の主ハリストス我等の神は云云」。詠隊、「神よ、我が今上皇帝云云」。第一時課、發放詞。時課には讚詞、「使徒、致命者、及び預言者云云」。光榮、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。今も、時課の生神女讚詞。「天に在す」の後に小讚詞、「ハリストスよ、爾が諸僕の靈を諸聖人と偕に云云」。幷に發放詞。

聖體禮儀リトゥルギヤに、眞福詞は八調經の六章。聖入の後に讚詞トロパリ、「使徒、致命者、及び預言者云云」。幷に「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕の靈を記憶し云云」。光榮、小讚詞、「ハリストスよ、爾が諸僕の靈を諸聖人と偕に云云」。今も、生神女讚詞、「生神女、聘女ならぬ聘女、信者の救よ云云」。提綱ポロキメン、第六調、「義人よ、主の爲に喜び樂しめ」。句、「不法を赦され、罪を蔽はれたる人は福なり」。安息の爲に提綱、「彼等の靈は福に居らん」。使徒は「スボタ」の順序の誦讀、又安息の爲の。「アリルイヤ」、第八調、「義人は呼ぶに云云」。句、「主よ、爾が選び近づけし者は福ひなり云云」。福音經は「スボタ」の順序の誦讀、又安息の爲の。領聖詞は「義人よ、主の爲に喜べ云云」、又、安息の爲の、「主よ、爾が選び近づけし者は福なり云云」。

 死者祈祷礼儀

金曜日晩課の發放詞の後、司祭は祭袍フェロニを、輔祭は祭衣スティハリを衣、香爐及び乳香を執りて、前院に出づ、幇堂者ほうだうしや燭臺を持して前行す、衆彼等に隨ふ。前院には擡上に糖飯たうはんの置けるあり、司祭、我等の神は祝讚せらる云云と誦して、糖飯の四周に爐儀を行ふ。誦經第九十聖詠至上者の覆の下に居る者は云云を誦す。(若し晩課或は早課の後にあらずして、他の時に行はば、始は常例の如し、卽聖三祝文、「天に在す」の後に司祭高聲、「蓋國及び權能」、次に主憐めよ、十二次、光榮、今も、來れ、我等の王神に叩拜せん、三次、後第九十聖詠。)畢りて後光榮、今も、「アリルイヤ」三次、幷に死者の聯禱。

我われ等ら安あん和わにして主しゆに禱いのらん。

詠隊 主憐めよ。

上うへより降くだる安あん和わと我われ等らが靈たましひの救すくひの爲ために主しゆに禱いのらん。

福ふくたる記き憶おくに於おいて移うつりし者ものの諸罪しよざいの赦ゆるしの爲ために主しゆに禱いのらん。

常つねに記き憶おくせらるる神かみの諸僕しよぼく(某)の安息あんそくと、平穩へいをんと、福ふくたる記き憶おくの爲ために主しゆに禱いのらん。

彼かれ等らに凡およそ自じ由いうと不ふ自じ由いうとの罪つみの赦ゆるさるるが爲ために主しゆに禱いのらん。

彼かれ等らが定罪ていざいせられずして光くわう榮えいの主しゆの畏おそるべき寶はう座ざの前まへに立たつが爲ために主しゆに禱いのらん。

哭なき哀かなしみてハリストスより慰藉なぐさめを受うくるを望のぞむ者ものの爲ために主しゆに禱いのらん。

彼かれ等らが凡およその病やまひと、悲かなしみと、歎息なげきより釋とかれて、神かみの顏かんばせの光ひかりの輝かゞやく處ところに入いれらるるが爲ために主しゆに禱いのらん。

主しゆ我わが神かみが彼かれ等らの靈たましひを光ひかる處ところ、茂しげき草くさ場ば、安息あんそくの處ところ、衆しゆう義ぎ人じんの居をる處ところに入いるるが爲ために主しゆに禱いのらん。

彼かれ等らがアウラアムと、イサアクと、イアコフとの懷ふところに算かぞへ置おかるるが爲ために主しゆに禱いのらん。

我われ等ら諸もろもろの憂愁うれひと、忿怒いかりと、危難あやふきとを免まぬかるるが爲ために主しゆに禱いのらん。

神かみよ、爾なんぢの恩おん寵ちようを以もつて我われ等らを佑たすけ救すくひ憐あはれみ護まもれよ。

彼かれ等ら及および我われ等ら衆しゆう人じんの爲ために神かみの憐あはれみと、天國てんこくと、諸罪しよざいの赦ゆるしとを求もとめて、悉ことごとくの我われ等らの生命いのちを以もつてハリストス神かみに委ゐ託たくせん。

詠隊 主しゆ爾なんぢに。

司祭高聲 蓋けだし爾なんぢは、ハリストス我われ等らの神かみよ、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼく、常つねに記き憶おくせらるる斯この聖堂せいだうの建立者こんりふしや、我われ等らの諸しよ父ふ及および兄弟けいてい、此この處ところと諸方しよはうとに葬はうむられたる正敎せいけうのハリスティアニン等らの復ふく活くわつと、生命せいめいと、安息あんそくなり。我われ等ら光くわう榮えいを爾なんぢと、爾なんぢの無む原げんの父ちゝと、至し聖せい至し善ぜんにして生いのちを施ほどこす爾なんぢの神しん゜とに獻けんず、今いまも何時いつも世世よよに、「アミン」。

次ぎて「アリルイヤ」三次、第八調。句を誦すること次の如し。

第一句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。
第二句 彼かれ等らの記き憶おくは世世よよに在あらん。
第三句 彼かれ等らの靈たましひは福ふくに居をらん。

次に讚詞トロパリ、第八調。

惟一ゆゐいちの造成主ざうせいしゆ、深ふかき智慧ちゑと仁じん慈じとを以もつて萬ばん事じを治をさめ、衆しゆう人じんに益えきある事ことを賜たまふ主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ、蓋けだし彼かれ等らは爾なんぢ造物主ざうぶつしゆと造成主ざうせいしゆと我わが神かみに恃賴たのみを負おはせたればなり。二次。

光榮、今も、生神女讚詞 生しやう神女しんぢよ、聘女よめならぬ聘女よめ、信者しんじやの救すくひよ、我われ等らは爾なんぢを垣墻かきと港みなと、及および爾なんぢが生うみし神かみの前まへに嘉よく納いれらるる祈き禱者たうしやとして有たもつ。

其後第十七「カフィズマ」「道に玷なくして」、附唱、主よ、爾の諸僕の靈を憶ひ給へ、第二調に依りて歌ふ。左列詠隊第二句を歌ふ。斯く兩詠隊更かはるがはる相續ぎて以下の句を歌ふ。「カフィズマ」を二段に分つ、第一段の後には光榮、今もを誦せずして、直に次の句を誦す。

若もし爾なんぢの律法りつぱふ我われの慰なぐさめとならざりしならば、我われは我わが禍わざはひの中うちに兦ほろびしならん。我われ永ながく爾なんぢの命めいを忘わすれざらん、爾なんぢ此これを以もつて我われを生いかせばなり。三次。

次に司祭(輔祭あらば輔祭)先に寢りし者の爲に聯禱を誦す。

我われ等ら復また又また安あん和わにして主しゆに禱いのらん。

詠隊 主憐めよ。

又また寢ねむりし神かみの諸僕しよぼく(某)の靈たましひの安息あんそくの爲ため、及および彼かれ等らに凡およそ自じ由いうと不ふ自じ由いうとの罪つみの赦ゆるされんが爲ために禱いのる。

詠隊 主憐めよ。

主しゆ神かみが彼かれ等らの靈たましひを諸しよ義ぎ人じんの安息あんそくする所ところに入いれ給たまはんことを禱いのる。

詠隊 主憐めよ。

彼かれ等らに神かみの憐あはれみと天國てんこくと諸罪しよざいの赦ゆるしとを賜たまはんことをハリストス我わが死しせざる王わう及および神かみに求もとむ。

詠隊 主賜へよ。

輔祭 主に禱らん。

詠隊 主憐めよ。四十次。

司祭祝文を默誦す。

諸もろもろの靈神れいしん゜と諸もろもろの肉體にくたいとの神かみ、死しを滅ほろぼし、惡あく魔まを虛むなしくし、爾なんぢの世せ界かいに生命いのちを賜たまひし主しゆよ、爾なんぢ親みづから寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼく(某)の靈たましひを光ひかる處ところ、茂しげき草くさ場ば、平安へいあんの處ところ、病やまひと悲かなしみと歎息なげきとの遠とほざかりし處ところに安息あんそくせしめ、善ぜんにして人ひとを愛あいする神かみなるに因よりて、彼かれ等らが或あるひは言ことば、或あるひは行おこなひ、或あるひは思おもひにて犯おかしし悉ことごとくの罪つみを赦ゆるし給たまへ。蓋けだし人ひと一ひとりも生いきて罪つみを行おこなはざる者ものなし、唯たゞ爾なんぢは罪つみなし、爾なんぢの義ぎは永遠えいゑんの義ぎ、爾なんぢの言ことばは眞實しんじつなり。

高聲、蓋爾は、ハリストス我等の神よ、寢りし爾の諸僕云云

兩詠隊第二段の諸句を更かはるがはる歌ふ、附唱、主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。終りて後に句、願ねがはくは我わが靈たましひ生いきて云云。終に至るまで歌ふこと三次。

次に安息の爲の諸讚詞トロパリ、第五調に依りて歌ふ。

附唱 主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

聖人せいじんの群むれは生命いのちの泉いづみと天堂てんだうの門もんとを得えたり、願ねがはくは我われも痛つう悔くわいを以もつて道みちを得えんことを。我われは兦ほろびし羊ひつじなり、救世主きうせいしゆよ、我われを呼よび返かへして救すくひ給たまへ。

主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

神かみの羔こひつじを傳つたへ、己おのれも羔こひつじの如ごとく屠ほふられて、老おいざる永久えいきうの生命いのちに移うつりし聖せいなる致ち命者めいしやよ、我われ等らに罪債おひめの赦ゆるしを賜たまはんことを切せつに祈いのり給たまへ。

主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

狹せまく苦くるしき路みちを過とほりて、生いける中うち十じふ字架じかを衡くびきの如ごとく負おひ、信しんじて我われに從したがひし衆しゆう人じんよ、來きたりて、爾なんぢ等らの爲ために備そなへたる褒はう賞しやうと天てんの榮えい冠くわんとを樂たのしめよ。

主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

我われは罪惡ざいあくの創きずを負おへども、爾なんぢが言いひ難がたき光くわう榮えいの像かたちなり。主宰しゆさいよ、爾なんぢの造つくりし者ものに憐あはれみを垂たれ、爾なんぢの惠めぐみにて淨きよめ、切せつに望のぞめる生しやう國こくを我われに與あたへて、我われを復また樂園らくゑんに住すむ者ものと爲なし給たまへ。

主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

昔むかし我われを無むより造つくりて、爾なんぢが神かみたる像かたちにて飾かざり、戒いましめを犯おかすに因よりて復また我われを我わが出いでし地ちに歸かへしし主しゆよ、我われを神かみの肖すがたに適かなふ位くらゐに升のぼせ、古いにしへの華麗くわれいを以もつて我われを改あらため給たまへ。

主しゆよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる、爾なんぢの誡いましめを我われに訓をしへ給たまへ。

神かみよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを安やすんぜしめて、聖人せいじんの群むれと義ぎ人じんが日ひの如ごとく光ひかれる樂園らくゑんに入いれ給たまへ。爾なんぢの眠ねむりし諸僕しよぼくを安やすんぜしめて、其その悉ことごとくの過あやまちを思おもふ勿なかれ。

光榮、聖三者讚詞 一ひとつの神性しんせいの三みつの光ひかりを敬つゝしみ歌うたひて呼よぶ、無む原げんの父ちゝと、同どう無む原げんの子こと、聖神せいしんよ、爾なんぢは聖せいなり。我われ等ら信しんを以もつて爾なんぢに勤つとむる者ものを照てらして、永遠えいゑんの火ひを免まぬかれしめ給たまへ。

今も、生神女讚詞 衆しゆう人じんの救すくひの爲ために身みにて神かみを生うみし潔いさぎよき者ものよ、慶よろこべ、人ひとの族やからは爾なんぢに因よりて救すくひを得えたり。潔いさぎよくして讚さん美びたる生しやう神女しんぢよよ、願ねがはくは我われ等ら爾なんぢに因よりて樂園らくゑんを得えんことを。

次ぎて「アリルイヤ」、三次。其後聯禱、司祭寢りし者を記憶す、上に「ネポロチニ」の中間に記ししが如し。若し「ネポロチニ」を歌はずば其時「アリルイヤ」の後に讚詞トロパリ、「惟一の造成主」、及び其生神女讚詞を歌ひて、直に「主よ、爾は崇め讚めらる、」竝に讚詞トロパリ、「聖人の群は」、其他。後に司祭寢りし者を記憶す、上に示ししが如し。

高聲の後に死者の坐誦讚詞セダレン、第五調。

我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくを義ぎ人じん等らと偕ともに安やすんぜしめて、錄しるしし如ごとく、之これを爾なんぢの庭にはに居をらしめ給たまへ。爾なんぢの仁じん慈じなるに因よりて、其その自じ由いうと自じ由いうならざる、其その凡およそ知しると知しらざる罪つみを恕ゆるし給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 童貞女どうていぢよより世せ界かいに輝かゞやき、彼かれを以もつて光ひかりの諸しよ子しを顯あらはししハリストス神かみよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ。

次ぎて第五十聖詠、「神よ、爾の大なる憐に因りて」。

其後八調經の中にある本調の死者の規程カノン、四句を立つ。第三歌頌の後に「イルモス」及び聯禱、司祭は寢りし者を記憶す、上に「ネポロチニ」の中間に記ししが如し。高聲、「蓋爾は、ハリストス我等の神よ」。

次ぎて坐誦讚詞セダレン、第六調。

誠まことに物もの皆みな虛むなし、生命いのちは影かげなり、夢ゆめなり、凡およそ地ちに生うまれし者ものは徒いたづらに忙いそがはし、聖書せいしよに云いひしが如ごとく、我われ等ら全ぜん地ちを獲うるも遂つひに墓はかに入いらん、彼處かしこには諸しよ王わうと貧まづしき者ものと共ともに在あり。故ゆゑにハリストス神かみよ、世よを逝さりし爾なんぢの諸僕しよぼくを安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 至し聖せいなる生しやう神女しんぢよよ、我わが生いける中うち我われを棄すつる勿なかれ、我われを人ひとの轉達てんたつに委ゆだぬる勿なかれ、親みづから我われを護まもりて救すくひ給たまへ。

第六歌頌の後に「イルモス」及び聯禱、司祭寢りし者を記憶す、前に示ししが如し。高聲、「蓋爾は、ハリストス我等の神よ」。

次ぎて小讚詞コンダク、第八調。

ハリストスよ、爾なんぢが諸僕しよぼくの靈たましひを諸聖人しよせいじんと偕ともに、疾やまひも悲かなしみも歎なげきもなくして、終をはりなき生命いのちのある處ところに安やすんぜしめ給たまへ。

同讚詞イコス 人ひとを造つくりし主しゆよ、爾なんぢは獨ひとり死しせざる者ものなり、我われ等ら地ちの者ものは、土つちより造つくられて、復また土つちに逝ゆかん、爾なんぢ我われを造つくりし主しゆの命めいじて我われに言いひしが如ごとし、爾なんぢ土つちにして土つちに歸かへらんと。我われ等ら人人ひとびと皆みな彼處かしこに往ゆき、墓はかの上うへに哭なきて歌うたひて云いはん、「アリルイヤ」、「アリルイヤ」、「アリルイヤ」。

第九歌頌の後に司祭誦す、生しやう神女しんぢよ及および光ひかりの母はゝを歌うたを以もつて讚ほめ揚あげん。詠隊、主しゆよ、諸神しよしん゜と義ぎ人じん等らの靈たましひとは爾なんぢを崇あがめ讚ほめん。竝に第九歌頌の「イルモス」を歌ふ。次に聖三祝文、「天に在す」の後に下の讚詞トロパリを歌ふ、第四調。

人ひとを愛あいする救世主きうせいしゆよ、死しせし義ぎ人じん等らの靈たましひと偕ともに爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめて、彼かれ等らを爾なんぢに在ある福樂ふくらくの生命いのちに護まもり給たまへ。

讚詞トロパリ、同調。

主しゆよ、爾なんぢの諸聖人しよせいじんの安息あんそくする處ところに爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮 爾なんぢは地ぢ獄ごくに降くだりて繫つながれし者ものの鎖くさりを釋ときたる神かみなり、親みづから爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひをも安やすんぜしめ給たまへ。

今も、生神女讚詞 獨ひとり潔いさぎよく玷きずなき童貞女どうていぢよ、種たねなくして神かみを生うみし者ものよ、彼かれ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

次に司祭(輔祭あらば輔祭)聯禱を誦す。

神かみよ、爾なんぢ神かみよ、爾なんぢの大おほいなる憐あはれみに因よりて我われ等らを憐あはれめよ、爾なんぢに禱いのる、聆きき納いれて憐あはれめよ。

詠隊 主しゅ憐あはれめよ。三次。

又また寢ねむりし神かみの諸僕しよぼく(某)の靈たましひの安息あんそくの爲ため、及および彼かれ等らに凡およそ自じ由いうと不ふ自じ由いうとの罪つみの赦ゆるされんが爲ために禱いのる。

詠隊 主しゅ憐あはれめよ。三次。

主しゆ神かみが彼かれ等らの靈たましひを諸しよ義ぎ人じんの安息あんそくする處ところに入いれ給たまはんことを禱いのる。

詠隊 主しゅ憐あはれめよ。三次。

彼かれ等らに神かみの憐あはれみと天國てんこくと諸罪しよざいの赦ゆるしとを賜たまはんことをハリストス我わが死しせざる王わう及および神かみに求もとむ。

詠隊 主しゅ賜たまへよ。

輔祭 主しゅに禱いのらん。

司祭祝文、「諸の靈神゜と諸の肉體との神」。斯の中に古世より死せし吾が諸父兄弟、此處と諸方とに葬られたる正敎のハリスティアニン等を記憶す。高聲、「蓋爾は、ハリストス我等の神よ」。

次ぎて司祭或は輔祭誦す、睿えい智ち。詠隊、「ヘルワィムより尊く」。司祭、ハリストス、神かみ我われ等らの恃たのみよ、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす、光くわう榮えいは爾なんぢに歸きす。詠隊、光榮、今も、主しゅ憐あはれめよ。三次。福ふくを降くだせ。

司祭發放詞を誦す、

死しより復ふく活くわつせしハリストス我われ等らの眞まことの神かみは、其その至し淨じやうなる母はゝ、光くわう榮えいにして讚さん美びたる聖せい使徒しと、克肖こくせう捧神ほうしんなる吾わが諸神しよしん父ぷ、及および諸聖人しよせいじんの祈き禱たうに因よりて、我われ等らに別わかれし其その諸僕しよぼくの靈たましひを諸しよ義ぎ人じんの住所すまひに入いれ、アウラアムの懷ふところに安やすんぜしめ、諸しよ義ぎ人じんの列れつに加くはへ、及および我われ等らを憐あはれみ給たまはん、善ぜんにして人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

發放詞の後に輔祭高聲にして誦す。

主しゆよ、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼく(某)に其その福ふくたる寢ねむりに永遠えいゑんの安息あんそくを與あたへて、彼かれ等らに永遠えいゑんの記き憶おくを爲なし給たまへ。

詠隊歌ふ、永遠えいゑんの記き憶おく。三次。

輔祭のなき處には詠隊歌ふ、寢ねむりし神かみの諸僕しよぼく(某)に永遠えいゑんの記き憶おく。

斯の祈禱禮儀は每金曜日に行ふべし、其時寢りし我が諸父兄弟の記憶の爲に糖飯を備ふ。

 

 多燭詞ある聖人に遇う時

「スボタ」に多燭詞ポリエレイある聖人に遇ふ時の奉事の事

金曜日の晩課に、第一「カフィズマ」「惡人の謀に行かず云云」の第一倡和詞アンティフォンを歌うたふ。「主よ、爾に籲ぶ」に聖人の讚頌スティヒラ六章。光榮、聖人の自調。今も、本調の第一の生神女讚詞。

若し徹夜禱ある大聖人にして聖務長が徹夜禱を行はんと欲せば、次の如し。

小晩課に聖人の讚頌スティヒラ四章を歌ふ。光榮、聖人の自調。今も、常例の生神女讚詞、聖人の調に据る。挿句くづけに聖人の讚頌。光榮、若し之あらば、聖人の。若しなくば、光榮、今も、生神女讚詞。聖三祝文の後に聖人の讚詞トロパリ。光榮、今も、生神女讚詞、本調に据る。小聯禱、主日の晩課に指定せしが如し、幷に發放詞。

大晩課には、「惡人の謀に行かず」の後に「主よ、爾に籲ぶ」に聖人の讚頌スティヒラ八章。光榮、聖人の。今も、本調の第一の生神女讚詞。若し祭前期或は祭後期ならば、「主よ、爾に籲ぶ」に祭日の讚頌スティヒラ三、及び聖人の五。光榮、聖人の。今も、本調の生神女讚詞。聖入。本日の提綱ポロキメン。聖人の喩言パリミヤ三篇。熱衷公禱リティヤに本堂の、及び聖人の讚頌スティヒラ。光榮、聖人の。今も、生神女讚詞、聖人或は祭日の調に据る。挿句くづけには聖人の讚頌。光榮、聖人の。今も、生神女讚詞、聖人或は祭日の調に据る。餅の祝福の時に聖人の讚詞、二次、及び「生神童貞女よ、慶べよ云云」、一次。「願はくは主の名は崇め讚められて云云」を歌ふこと三次。第三十三聖詠、「我何の時にも主を讚め揚げん云云」、終は「唯主を尋ぬる者は何の幸福にも缺くるなし」。聖人の傳を讀む。

早課には、「主は神なり」に聖人の讚詞、二次。光榮、今も、本調の第一の生神女讚詞。若し祭前期或は祭後期ならば、祭日の讚詞、二次。光榮、聖人の。今も、祭日の。次に第十六「カフィズマ」。聯禱。聖人の坐誦讚詞セダレン、二次。光榮、今も、生神女讚詞。幷に誦讀。其後第十七「カフィズマ」、「道に玷なくして云云」。之を誦する時、司祭爐儀を行はずして、多燭詞ポリエレイの時に行ふ。次に聖人の坐誦讚詞セダレン、二次。光榮、今も、生神女讚詞。幷に誦讀。其後聖人の多燭詞、及び坐誦讚詞、二次。光榮、今も、生神女讚詞。幷に誦讀。品第詞ステペンナ、第四調の第一倡和詞アンティフォン。聖人の提綱ポロキメン。「凡そ呼吸ある者」。福音經。第五十聖詠。畢りて後聖人の讚頌スティヒラ。次に「神よ、爾の民を救ひ云云」。司祭高聲、「爾が獨生子の仁慈と慈憐云云」。詠隊、「アミン」。其後生神女の規程カノン、「イルモス」と共に六章を歌ふ、「イルモス」二次、讚詞トロパリ四章。若しハリストス或は生神女の堂、又若し祭前期或は祭後期ならば、同じく規程「イルモス」と共に六章を歌ひ、幷に聖人の八章を歌ふ。共頌カタワシヤは規定の如し。第三歌頌の後に祭前期或は祭日の小讚詞コンダク。次に聖人の坐誦讚詞セダレン、二次。光榮、今も、其生神女讚詞、或は祭日の。第六歌頌の後に聖人の小讚詞コンダク及び同讚詞イコス。次に祭日略解プロログを讀む。第九歌頌の後に聖人の光耀歌、二次。光榮、今も、其生神女讚詞、或は祭日の。「凡そ呼吸ある者」に聖人の讚頌四章。若し祭後期ならば、「凡そ呼吸ある者」に六章、卽當日の挿句くづけの祭日の三、及び聖人の三なり。光榮、聖人の自調。今も、生神女讚詞、聖人の、或は祭日の調に据る。大詠頌。次に聖人の讚詞。光榮、今も、本調の主日の生神女讚詞、或は祭日の。聯禱、發放詞、及び第一時課。第一時課に聖人の讚詞トロパリ。若し祭前期或は祭後期ならば祭日の讚詞。光榮、聖人の。今も、時課の生神女讚詞。「天に在す」の後に聖人の小讚詞コンダク。若し祭前期或は祭後期ならば、祭日の小讚詞を更かはるがはる誦す。最後の發放詞。

聖體禮儀リトゥルギヤには、眞福詞は聖人の、第三及び第六歌頌。若し祭後期ならば、祭日の順序の歌頌、及び聖人の第六歌頌。聖入の後にハリストスの、或は生神女の堂の讚詞、次に本日の聖人の。光榮、其小讚詞。今も、生神女の堂の。生神女の堂のあらざる所には、今も、「ハリスティアニン等の辱を得ざる轉達云云」。祭前期或は祭後期ならば、今も、祭前期の、或は祭日の小讚詞。若し主の祭の祭前期或は祭後期にして、堂がハリストスのならば、其時堂の讚詞及び小讚詞を誦せずして、祭前期或は祭後期の讚詞及び小讚詞を誦す。生神女の堂のは主の祭の祭前期或は祭後期に誦せず。聖人の提綱ポロキメン、使徒、アリルイヤ、福音經、及び領聖詞は徹夜禱の聖人の。若し多燭詞ポリエレイあらば、本日のをも加ふ。

金曜日(続き)

 金曜日の晩課

「主よ、爾に籲ぶ」に聖致命者と成聖者と克肖者との讚頌スティヒラ、第一調。

句 主しゆよ、若もし爾なんぢ不ふ法はふを糾たゞさば、主しゆよ、孰たれか能よく立たたん、然しかれども爾なんぢに赦ゆるしあり、人ひとの爾なんぢの前まへに敬つゝしまん爲ためなり。

致ち命者めいしやの凱旋がいせんは大おほいなる哉かな、彼かれ等らは勇いさましく苦くるしみを受うけて、己おのれの血ちの流ながれにて惡あく鬼きの大數たいすうを溺おぼらし、諸もろもろの汚けがらはしき祭まつりを止とゞめ、偶像ぐうざうの迷まよひを破やぶれり。今いまは我われ等らの靈たましひに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはんことをハリストスに祈いのり給たまふ。

句 我われ主しゆを望のぞみ、我わが靈たましひ主しゆを望のぞみ、我われ彼かれの言ことばを恃たのむ。

聖せいにせられし諸しよ牧ぼく師しは睿えい智ちなる言ことばと敎をしへとを以もつて、衆しゆう人じんに惟一ゆゐいちの神性しんせいの中うちに三さん位ゐを讚榮さんえいして、敬つゝしみて位ゐを混淆こんかうするなく分ぶん離りするなからんことを敎をしへたり。今いまは我われ等らの靈たましひに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはんことを祈いのり給たまふ。

句 我わが靈たましひ主しゆを待まつこと、番人ばんにんの旦あさを待まち、番人ばんにんの旦あさを待まつより甚はなはだし。

克肖者こくせうしやの會くわいは肉體にくたいの慾よくを眠ねむらせ、希望のぞみを制せいし、天てん使しと均ひとしき度ど生せいを顯あらはせり。故ゆゑに今いま天てんの居處すまひに樂たのしみて、我われ等らの靈たましひに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはんことをハリストスに祈いのり給たまふ。

又、致命者の讚頌スティヒラ、同調。

句 願ねがはくはイズライリは主しゆを恃たのまん、蓋けだし憐あはれみは主しゆにあり、大おほいなる贖あがなひも彼かれにあり、彼かれはイズライリを其その悉ことごとくの不ふ法はふより贖あがなはん。

主しゆよ、衆しゆう聖人せいじん及および生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢの平安へいあんを我われ等らに與あたへ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり洪恩こうおんの主しゆなればなり。

句 萬民ばんみんよ、主しゆを讚ほめ揚あげよ、萬族ばんぞくよ、彼かれを崇あがめ讚ほめよ。

聖せいなる者ものよ、裁判さいばんに於おける爾なんぢ等らの承認うけとめは惡あく魔まの力ちからを辱はづかしめ、人人ひとびとを迷まよひより解ときたり。故ゆゑに爾なんぢ等らは首くびの斬きらるる時とき呼よべり、人ひとを愛あいする主しゆよ、願ねがはくは我わが靈たましひの祭まつりは爾なんぢの前まへに嘉よく納いれられんことを、我われ等ら爾なんぢを愛あいして、暫ざん時じの生命いのちを顧かへりみざればなり。

句 蓋けだし彼かれが我われ等らに施ほどこす憐あはれみは大おほいなり、主しゆの眞實しんじつは永ながく存そんす。

嗚呼あゝ聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らの貿易ぼうえきは善ぜんなる哉かな、蓋けだし血ちを與あたへて、天てんの者ものを嗣つぎ、暫ざん時じ苦くるしみて、永遠えいゑんに歡よろこぶ。實じつに爾なんぢ等らの貿易ぼうえきは善ぜんなり、朽きう壞くわいの者ものを棄すてて、不ふ朽きうの者ものを受うけたればなり。今いま諸天しよてん使しと偕ともに祝いはひて、絕たえず一體いつたいの聖三者せいさんしやを歌うたふ。

光榮、今も、生神女讚詞 人ひとより生うまれて主宰しゆさいを生うみし全ぜん世せ界かいの光くわう榮えいと天てんの門もんなる童貞女どうていぢよマリヤ、諸天しよてん使しの歌うた、諸信者しよしんじやの飾かざりなる者ものを讚ほめ歌うたふべし。彼かれは天てんと均ひとしく、神かみの宮みやと均ひとしき者ものとして顯あらはれたり、彼かれは仇あだの隔へだてを破やぶりて和わ睦ぼくを締むすび、國くにを開ひらけり。我われ等らは彼かれを信しんの固かためと爲なし、彼かれより生うまれし主しゆを扞ふせぎ衞まもる者ものと爲なす。勇いさめよ、神かみの民たみよ、勇いさめよ、主しゆは敵てきに勝かたん、全能者ぜんのうしやなればなり。

次ぎて「穩なる光」。

挿句くづけに致命者讚詞、第一調。

至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、地ちは爾なんぢ等らを隱かくさず、天てんは爾なんぢ等らを受うけたり、樂園らくゑんの門もんは爾なんぢ等らの爲ために啓ひらかれ、爾なんぢ等らは其内そのうちに入いりて、生命せいめいの樹きを以もつて慰なぐさむ。我われ等らの靈たましひに平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを賜たまはんことをハリストスに祈いのり給たまへ。

死者の讚頌スティヒラ

孰いづれの生命いのちの喜よろこびか哀かなしみを閒まじへざらん、孰いづれの榮さかえか變かはりなく地ちに住とゞまらん、皆みな影かげよりも儚はかなく、皆みな夢ゆめよりも虛むなし、瞬またゝく間ひまに死しは皆みな之これを奪うばふ。ハリストスよ、爾なんぢが顏かんばせの光ひかりと爾なんぢが美び麗れいの樂たのしみとの處ところに選えらびし者ものを安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢは人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

死者の讚頌スティヒラ

獨ひとり不死ふしなる者ものよ、人人ひとびとの中うちに一いつも罪つみなき者ものなし。唯たゞ爾なんぢは罪つみなし、故ゆゑに洪恩こうおんなる神かみとして、爾なんぢの諸僕しよぼくを天てん使しの品ひん位ゐと共ともに光ひかりの中うちに入いれ給たまへ。爾なんぢの慈じ憐れんに由よりて不ふ法はふを顧かへりみずして、彼かれ等らに赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 神かみの聘女よめよ、諸しよ預よ言者げんしやが傳つたへし爾なんぢの產さんの大だい事じは實じつに智慧ちゑに超こえて神妙しんめうなり。讚さん美びたる者ものよ、爾なんぢの受孕みごもりと產さんとは皆みな至し榮えいにして曉さとり難がたく、言いひ難がたし、神かみは仁じん慈じなるに因よりて、此これを以もつて世せ界かいを救すくひ給たまへり。

次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文。「天に在す」の後に讚詞トロパリ、及び發放詞。

 金曜日の晩堂課

至聖なる生神女の規程カノン、第一調。

第一歌頌

イルモス 我われ等ら皆みな凱歌かちうたを以もつて、高たかき手てにて神妙しんめうなる奇き蹟せきを行おこなひて、イズライリを救すくひし神かみに歌うたはん、彼かれ光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

至し淨じやうなる生しやう神女しんぢよよ、爾なんぢを呼よぶ者ものの爲ために爾なんぢは救すくひの港みなと及および庇蔭おほひなり。故ゆゑに我われも靈たましひを全まつたくして熱切ねつせつに爾なんぢに呼よぶ、女宰ぢよさいよ、我われを救すくひ給たまへ。

至し淨じやうなるマリヤ、造成主ざうせいしゆの母はゝよ、慈じ憐れん寬くわん容ようなる者ものとして、諸慾しよよく諸罪しよざいに朽くちたる我わが卑微ひびなる靈たましひを醫いやし給たまへ。

光榮 聘女よめならぬ聘女よめ・女宰ぢよさいよ、常つねに爾なんぢの庇蔭おほひに趨はしり附つく者ものの爲ために絕たえず我わが造成主ざうせいしゆ及および神かみに祈いのりて、我われに憐あはれみを垂たれ給たまはんことを求もとめ給たまへ。

今も 王わうの活いける宮みや及および火ひの狀さまの寶はう座ざよ、聖せいなる致ち命者めいしや及および使徒しとと偕ともに、我われ等らを諸難しよなんより救すくはんことを常つねにハリストスに祈いのり給たまへ。

第三歌頌

イルモス 工こう師しが棄すてたる石いしは屋隅をくぐうの首石しゆせきと爲なれり。此この石いしの上うへにハリストスは異い邦はうより贖あがなひし敎けう會くわいを堅かため給たまへり。

女宰ぢよさいよ、諸罪しよざいの暗やみは我わが心こゝろを圍かこむ、我われ敢あへて目めを擧あげて天てんを視みるを得えず。故ゆゑに呼よぶ、ハリストスの戒いましめを以もつて我わが靈たましひの智慧ちゑと心こゝろとを照てらし給たまへ。

我われ爾なんぢの神聖しんせいなる像ざうを仰あふぎて、原像げんざうなる爾なんぢ主宰しゆさいの至し淨じやうなる母はゝを尊たふとみ、之これに接吻せつぷんし、之これに伏拜ふくはいして、爾なんぢ及および爾なんぢの子こを讚榮さんえいす。

光榮 童貞女どうていぢよよ、我わが肉體にくたいの不ふ當たうなる望のぞみを制せいし、諸慾しよよくの焰ほのほを滅ほろぼし給たまへ。詭き譎けつなる蛇へびは此これ等らに由よりて諸罪しよざいの緻ち密みつなる網あみを編あみて、我われを執とらへて滅ほろぼさんと欲ほつす。

今も 生しやう神女しんぢよよ、言ことばは爾なんぢに藉よりてアダムを衣きて、全まつたき人じん性せいを有たもちて出いでたり。彼かれに祈いのりて、我われ等らを諸慾しよよく諸難しよなん及および永遠えいゑんの火ひより救すくはんことを求もとめ給たまへ。

第四歌頌

イルモス 預よ言者げんしやアウワクムよ、爾なんぢは神しん゜にて言ことばが人體じんたいを取とるを預よ見けんして、傳つたへて呼よべり、年としの邇ちかづく時とき爾なんぢは識しられん、期きの屆いたる時とき爾なんぢは現あらはれん、主しゆよ、光くわう榮えいは爾なんぢの力ちからに歸きす。

萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ及および贖しよく罪主ざいしゆを生うみし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは言いひ難がたき能のう力りよくと勝かたれぬ堅けん固ごとを有たもちて、信しんを以もつて爾なんぢに就つく者ものを救すくひ給たまふ。故ゆゑに我われ爾なんぢに呼よぶ、世せ界かいの女宰ぢよさいよ、我われを援たすけ給たまへ。

女宰ぢよさいよ、我われと戰たゝかふ無む形けいなる屬神ぞくしんの敵てき、常つねに我わが不ふ當たうなる心こゝろを攻せむる者ものを仆たふして、神聖しんせいなる穩靜をんせいと平安へいあんとを與あたへ給たまへ、我わが喜よろこびて爾なんぢを歌か頌しようせん爲ためなり。

光榮 憑恃たのみなき者ものの憑恃たのみ、貧まづしき者ものの扶助たすけ、泣なく者ものの慰藉なぐさめ、罪つみを犯おかす者ものの潔淨きよめ、迷まよふ者ものの嚮導みちびき、病やむ者ものの醫師いし、陷おちいる者ものの提起おこしなる生しやう神女しんぢよよ。我われ等らを救すくひ給たまへ。

今も 讚さん美びたる潔いさぎよき童貞女どうていぢよマリヤ、獨ひとり衆しゆう人じんを詛のろひより釋ときし者ものよ、爾なんぢの腹はらより出いでし主しゆに使徒しと、致ち命者めいしや、預よ言者げんしやと偕ともに祈いのりて、爾なんぢを歌うたふ者ものの靈たましひを救すくはんことを求もとめ給たまへ。

第五歌頌

イルモス 神かみの子こよ、爾なんぢの平安へいあんを我われ等らに與あたへ給たまへ、蓋けだし我われ等らは爾なんぢの外ほかに他たの神かみを識しらず、爾なんぢの名なを唱となふ、爾なんぢは生せい死し者しやの神かみなればなり。

女宰ぢよさいよ、我われを患くわん難なんと憂愁いうしうと、肉體にくたいの諸慾しよよくとの深處ふかみより救すくひて、我わが靈たましひを神聖しんせいなる平穩へいをんに護まもり給たまへ。

至いたりて無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢは我わが生しやう涯がいに於おいて我わが爲ために熱心ねつしんにして堅けん固ごなる守護まもりなり。故ゆゑに爾なんぢに祈いのる、我わが死後しごにも爾なんぢの豐ゆたかなる慈じ憐れんを我われに垂たれ給たまへ。

光榮 萬有ばんいうの造成主ざうせいしゆ及および贖しよく罪主ざいしゆを生うみし者ものよ、吾わが心こゝろを焦こがして不ふ當たうなる行おこなひに引ひく肉體にくたいの諸慾しよよくより我われを脫のがれしめ給たまへ。

今も 屬神ぞくしんなる成聖せいせいの處ところと顯あらはれし女宰ぢよさい童貞女どうていぢよよ、我われ全ぜん人じんを聖せいにして、睿えい智ちなる聖せい使徒しとと偕ともに我われを救すくはんことを祈いのり給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ預よ言者げんしやイオナに效ならひて籲よぶ、仁じん慈じなる者ものよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより援たすけよ。世せ界かいの救主きうしゆよ、我われ光くわう榮えいは爾なんぢに歸きすと籲よぶ者ものを救すくひ給たまへ。

童貞女どうていぢよ母はゝよ、爾なんぢは我わが生いける時ときに我われを護まもりて、諸難しよなんより救すくひ給たまふ。爾なんぢ我わが地ちを去さる時ときにも爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われを永遠えいゑんの生命いのちに移うつし給たまへ。

慈じ憐れんなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは壞やぶられぬ墻かきなり、爾なんぢは確たしかなる庇蔭おほひなり、爾なんぢは爾なんぢの僕ぼくの堅けん固ごなる轉達者てんたつしやなり。故ゆゑに我われ常つねに爾なんぢを籲よぶ。

光榮 神かみの前まへに祈き禱たうの勇敢いさみを獲えたる慈じ憐れんなる生しやう神女しんぢよよ、我われ熱心ねつしんに爾なんぢの庇蔭おほひに趨はしり附つきて、萬有ばんいうの神かみの母はゝよ、我われを憐あはれみ給たまへと、呼よぶ者ものを棄すつる勿なかれ。

今も ハリストスよ、我われを退しりぞくる勿なかれ、救世主きうせいしゆよ、我われを諱いむ勿なかれ。身みにて爾なんぢを生うみし童貞女どうていぢよは爾なんぢの使徒しとと預よ言者げんしや及および受難者じゆなんしやと偕ともに我わが爲ために爾なんぢに祈いのる。

次ぎて主憐めよ、三次、光榮、今も、

坐誦讚詞セダレン、第一調。

至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、諸しよ預よ言者げんしやは爾なんぢを永在えいざいなる神かみの光ひかりの雲くもと、約匱やくひつと、燈臺とうだいと、壺つぼと、截きられざる山やまとして預よ言げんせり。蓋けだし末すゑの時ときに於おいて爾なんぢよりハリストス我わが神かみは、父ちゝの嘉よみせし如ごとく、種たねなくして出いで給たまへり。

第七歌頌

イルモス 救世主きうせいしゆよ、火ひは爐ゐろりの中うちに在ある爾なんぢの少者せうしやに觸ふれず、彼かれ等らを懼おそれしめざりき、其時そのとき三人さんにん口くちを一いつにして、歌か頌しよう祝しゆく讚さんして言いへり、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

至し淨じやうなる女宰ぢよさいよ、我われ諸罪しよざいと肉體にくたいの逸樂いつらくとに耽ふけりて、淪滅ほろびの深處ふかみに墜おとさるる者ものを、急いそぎて爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて救すくひ給たまへ。

衆しゆう信者しんじやの避所かくれがと有能いうのうの庇蔭おほひと拯救すくひなる生しやう神女しんぢよよ、我われを造成主ざうせいしゆに導みちびく者ものと爲なりて、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて我われに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

光榮 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは歡喜よろこびなるハリストスを生うみて、詛のろひを滅ほろぼせり。至いたりて無む玷てんなる者ものよ、爾なんぢの力ちからを以もつて、罪つみに由よりて我われに及およびたる詛のろひをも釋ときて、我われに歡喜よろこびを與あたへ給たまへ。

今も 至し聖せい至し潔けつなる者ものよ、我われ等ら爾なんぢの諸僕しよぼくは晝ひるも夜よるも常つねに傷いためる意念おもひを以もつて爾なんぢに祈いのる、爾なんぢの祈き禱たうに由よりて我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

第八歌頌

イルモス 諸天しよてん使しと悉ことごとくの軍ぐんとが造物ざうぶつ者しや及および主しゆとして畏おそるる者ものを、司し祭さいよ、歌か頌しようし、少者せうしやよ、讚榮さんえいし、人人ひとびとよ、崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

聖せいなる童貞女どうていぢよ、世せ界かいの扶ふ助者じよしやよ、起たちて急いそぎ、故ゆゑなく我われ等らを擾みだし、我われ等らを侵おかす諸敵しよてきと戰たゝかひて、爾なんぢの力ちからを顯あらはし給たまへ。

慈じ憐れんなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは神聖しんせいなる爾なんぢの產さんにて世せ界かいを死し及および朽きう壞くわいより救すくひ給たまへり。今いまも爾なんぢの祈き禱たうに因よりて、我われ等ら爾なんぢを讚さん美びする者ものを諸慾しよよくより逃のがして、救すくひ給たまへ。

光榮 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの能のう力りよくは大おほいにして言いひ難がたし、神聖しんせいなる洪恩こうおんと慈じ憐れんとは大おほいにして盡つくし難がたし。故ゆゑに我われ等ら實じつに爾なんぢを籲よぶ者ものを救すくひ給たまへ。

今も 童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは活いける葡ぶ萄樹だうじゆとして、我われ等らの爲ために熟じゆくしたる房ふさ、赦免しやめんの酒さけを流ながして、罪つみの醉ゑひを醒さます者ものを生うみ給たまへり。

第九歌頌

イルモス 光ひかりを放はなつ雲くも、萬有ばんいうの主しゆが雨あめの天てんより羊ひつじの毛けに降くだるが如ごとく降くだり、始はじめなき者ものが身みを取とりて我われ等らの爲ために人ひとと爲なりし所以ゆゑんの者ものを、我われ等ら皆みな我わが神かみの潔いさぎよき母はゝとして崇あがめ讚ほむ。

女宰ぢよさいよ、我われ生命いのちの海うみに肉體にくたいの逸樂いつらくに甚はなはだしく荒あらさるる者ものは爾なんぢに俯ふ伏ふくして呼よぶ、爾なんぢに趨はしり附つく我われを憐あはれみ、救すくひの手てを我われに授さづけて、淪滅ほろびの深處ふかみより脫のがれしめ給たまへ。

童貞女どうていぢよよ、我われ爾なんぢの前まへに我わが罪つみを承うけ認とめ、爾なんぢの顏かんばせの前まへに我わが耻はぢを顯あらはして、靈たましひより呼よぶ、至し淨じやうなる者ものよ、我われを憐あはれみて宥なだめ給たまへ、我われ神かみと共ともに爾なんぢに堅かたき憑恃たのみを負おはせたればなり。

光榮 我われ爾なんぢ種たねなく造成主ざうせいしゆ及および主宰しゆさいを生うみし者ものに靈たましひより呼よびて、熱心ねつしんに祈いのる、至し聖せい至し仁じんなる生しやう神女しんぢよよ、我われを多おほくの罪つみの朽きう壞くわいより救すくひて、滅きえざる火ひを免まぬかれしめ給たまへ。

今も 過とほられぬ戸と、樂園らくゑんの門もん、救すくはるる者ものの途みち、救きう贖しよくの嚮きやう導だうたる潔いさぎよき者ものよ、致ち命者めいしやと預よ言者げんしや、義ぎ者しやと克肖者こくせうしや、及および神聖しんせいなる使徒しとと偕ともに我われ等らの靈たましひの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

次ぎて「常に福にして」、及び其他常例の如し、幷に發放詞。

土曜日(スボタ)

 「スボタ」の早課

第一の誦文の後に致命者の坐誦讚詞セダレン、第一調。

主しゆよ、光くわう榮えいなる受難者じゆなんしやは爾なんぢより苦くるしみの報はう賞しやうたる尊たふとき榮えい冠くわんにて飾かざられたり、蓋けだし創痍きずを忍しのぶを以もつて不ふ法はふの者ものに勝かち、神聖しんせいなる能力ちからを以もつて天てんより勝しよう利りを獲えたり。

救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて、我われ等らをも見みえざる敵てきより脫のがれしめて、我われ等らを救すくひ給たまへ。

句 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

聖せいなる者ものよ、爾なんぢ等らは善よき軍ぐん士しとして、同心どうしんに信しんじて、苛虐者くるしめびとの威嚇おどしを畏おそれざりき。尊たふとき十じふ字架じかを任になひ、熱心ねつしんを抱いだきてハリストスに來きたり、馳はすべき程みちを盡つくして、天てんより勝しよう利りを獲えたり。光くわう榮えいは爾なんぢ等らを堅かためし者ものに歸きす、光くわう榮えいは爾なんぢ等らに榮えい冠くわんを冠かうむらせし者ものに歸きす、光くわう榮えいは爾なんぢ等らを以もつて衆しゆうに醫治いやしを施ほどこす者ものに歸きす。

句 彼かれ等らの靈たましひは福ふくに居をらん。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢに移うつりし者ものを明あかるき處ところに、義ぎ人じんの會くわいに安やすんぜしめ給たまへ、彼かれ等ら爾なんぢに憑恃たのみを負おはせたればなり。人ひとを愛あいする主しゆよ、我われ等らが記き憶おくを行おこなふ諸しよ父ふ諸しよ子しの爲ために禱いのりを納いれて、彼かれ等らを義ぎと爲なし給たまへ、爾なんぢは慈じ憐れん深ふかき主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 童貞女どうていぢよよ、ガウリイルが爾なんぢに慶よろこべよと告つげし時とき、其聲そのこゑに從したがひて萬有ばんいうの主宰しゆさいは爾なんぢ聖せいなる約㙺やくひつに身みを取とり給たまへり、義ぎなるダワィドの言いひしが如ごとし。爾なんぢの造成主ざうせいしゆを姙はらみて、爾なんぢは天てんより廣ひろき者ものと現あらはれたり。光くわう榮えいは爾なんぢに入いりし者ものに歸きし、光くわう榮えいは爾なんぢより出いでし者ものに歸きし、光くわう榮えいは爾なんぢの產さんにて我われ等らを釋とき給たまひし者ものに歸きす。

第二の誦文の後に坐誦讚詞セダレン、第一調。

人ひとを愛あいする主しゆよ、祈いのる聖せいなる者ものが爾なんぢの爲ために受うけし創痍きずに由よりて、我われ等らの悉ことごとくの毁傷いたみと痛苦くるしみとを醫いやし給たまへ。

句 義ぎ人じんには憂うれひ多おほし、然しかれども主しゆは之これを悉ことごとく免まぬかれしめん。

我われ等ら皆みな愛あいを抱いだき、信しんを以もつてハリストスの致ち命者めいしやに來きたりて、彼かれ等らに祈いのらん。蓋けだし彼かれ等らは我わが救すくひの爲ために求もとむ、彼かれ等らは恩おん寵ちようの醫治いやしを流ながす、彼かれ等らは惡あく鬼きの隊たいを退しりぞく、敎をしへの守しゆ護ご者しやなればなり。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。

ハリストスよ、爾なんぢは死しの權けんを空むなしくして、地ち上じやうの者ものに不ふ朽きうを流ながし給たまへり、爾なんぢを信しんずる者ものは死しせずして、常つねに爾なんぢに依よりて生いく。故ゆゑに主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめて、之これを爾なんぢの聖者せいしやと共ともに入いれ、生しやう神女しんぢよの祈き禱たうに因よりて、之これに赦免しやめんと復ふく活くわつとを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 獨ひとり人類じんるゐの堅けん固ごにして熱心ねつしんなる轉達者てんたつしやたる生しやう神しん童貞女どうていぢよよ、預よ言者げんしやと致ち命者めいしや、成聖者せいせいしやと修齋者しゆさいしや、及および克肖者こくせうしやと偕ともに、爾なんぢが性せいに超こえて生うみし神かみ言ことばに衆しゆう人じんを救すくはんことを息やめずして祈いのり給たまへ。

聖致命者、成聖者、克肖者、及び死者の規程カノン、其冠詞は、神を愛せし者に神聖なる歌を捧ぐ。イオシフ師の作。第一調。

第一歌頌

イルモス 火ひ柱ばしらと雲くも柱ばしらとを以もつてイズライリを導みちびきし者ものは、神かみとして海うみを分わかち、ファラオンの兵車いくさぐるまを淵ふちにて覆おほへり。我われ等ら凱歌かちうたを謳うたはん、彼かれ獨ひとり光くわう榮えいを顯あらはしたればなり。

致命者の
神聖しんせいなる受難者じゆなんしやは敬虔けいけんの盾たてに蔽おほはれて、戰たゝかひに進すゝみ、敵てきの悉ことごとくの力ちからを滅ほろぼして、彼かれ等らを堅かためしハリストスに凱歌かちうたを謳うたへり。

成聖者の
神聖しんせいなる牧ぼく師しは機き密みつの草くさ場ばに神かみの群ぐんを牧ぼくして、聖せいなる言ことばの杖つゑを以もつて狼おほかみを逐おひ、欣よろこびて大おほいなる牧ぼく師しの在います天てんの牢をりに入いり給たまへり。

克肖者の
修齋ものいみと困難こんなんとを以もつて、神かみの指麾しきに依よりて、肉體にくたいの慾よくを殺ころしし克肖者こくせうしやよ、爾なんぢ等らは死しして後のちに生いく。我われ等らの爲ために死し者しやたりしハリストスに我われ等らを宥なだめんことを常つねに祈いのり給たまへ。

光榮 爾なんぢは死し者しやと爲なりて、死し者しやに爾なんぢの神聖しんせいなる復ふく活くわつと不死ふしの生命いのちとを賜たまへり。信しんを以もつて朽きう壞くわいの度ど生せいより移うつりし者ものを爾なんぢの國くにに與あづかる者ものと爲なし給たまへ、爾なんぢは獨ひとり仁じん慈じにして、慈じ憐れん深ふかき主しゆなればなり。

生神女讚詞 ハリストスの愛あいに傷きずつけられし致ち命者めいしやと、神かみより榮えい冠くわんを受うけし女をんな等たちと、衆しゆう克肖者こくせうしやとは、爾なんぢ至し潔けつにして女をんなの中うちに純じゆん美びなる者ものを忠ちゆう信しんに至し尊そんなる女王によわうとして喜よろこびて尊たふとむ。

又死者の規程カノン、月課經の規程なき時に序を逐ひて之を歌ふ、或は死者の祈禱に糖飯クティヤを供する時に之を歌ふ。其冠詞は、信を以て寢りし者の爲に第一の歌を捧ぐ。

第一歌頌

イルモス 死しせざる主しゆよ、勝かちを獲うる爾なんぢの右みぎの手ては、神かみに適かなふが如ごとく、能力ちからにて光くわう榮えいを顯あらはせり、其その全能ぜんのうなるに因よりて、敵てきを滅ほろぼし、イズライリ人じんの爲ために新あらたなる深水ふかみの路みちを開ひらきたればなり。

附唱 神かみよ、爾なんぢは爾なんぢの聖所せいしよに於おいて嚴おごそかなり。

不死ふしの主しゆよ、爾なんぢは己おのれの死しを以もつて死しの門もんと柱はしらとを破やぶれり。主宰しゆさいよ、爾なんぢの受難者じゆなんしやの祈き禱たうに因よりて、寢ねむりし者ものの爲ために智慧ちゑに超こゆる不死ふしの門もんを啓ひらき給たまへ。

附唱 主しゆよ、寢ねむりし爾なんぢの諸僕しよぼくの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。

我われ等らに神聖しんせいなる生命いのちを得えしめん爲ために、爾なんぢは死しに降くだり、其その牢獄らうごくを破やぶりて、我われ等らを彼處かしこより引ひき出いだせり。生命いのちを賜たまふ主しゆよ、今いま移うつされし者ものを安やすんぜしめ給たまへ。

光榮 爾なんぢは我われの朽きう壞くわい及および死しに屬ぞくする者ものを取とり、之これに不ふ朽きうを衣きせて、終をはりなき福ふくたる生命いのちに升のぼせ給たまへり、其中そのうちに爾なんぢの受うけし者ものを安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢは洪恩こうおんの主しゆなればなり。

生神女讚詞 信者しんじやよ、神かみよりする神かみの言ことばを生うみし者ものを歌か頌しようせん、蓋けだし彼かれ純じゆん潔けつなる者ものは死し者しやの爲ために生命いのちの途みちと爲なれり。我われ等ら彼かれを神かみを受うけし者もの及および生しやう神女しんぢよとして讚榮さんえいせん。

第三歌頌

イルモス 第だい二にの天てんを水みづの上うへに固かため、地ちを水みづに基もとづけし全能ぜんのうのハリストス神かみよ、願ねがはくは我わが心こゝろは爾なんぢの旨むねに固かためられん。

聖せいにせられし大數たいすうの致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは多おほくの苦くるしみを受うけて、多おほくの福ふくを獲えたり。故ゆゑに爾なんぢ等らの祈き禱たうを以もつて我わが無む數すうの惡あくを淨きよめ給たまへ。

成聖者せいせいしやは義ぎなる恩おん寵ちようを衣き、美うるはしき樂たのしみなる克肖者こくせうしやの會くわいを集あつめて、無む形けいの役者えきしやに似にたる者ものと爲なれり。

ハリストスの預よ言者げんしや、神聖しんせいなる致ち命者めいしや、聖せいにせられし女をんな等たちの會くわいは勇いさましく困難こんなんを忍しのびて、修齋しゆさいを以もつて光くわう榮えいを獲えたり。救世主きうせいしゆよ、彼かれ等らの祈き禱たうに因よりて衆しゆうに爾なんぢの慈じ憐れんを垂たれ給たまへ。

光榮 爾なんぢの手てを以もつて己おのれの旨むねに循したがひて人ひとを土つちより造つくりしハリストスよ、信しんに在ありて我われ等らより移うつりし爾なんぢの諸僕しよぼくに天てんの福樂ふくらくを獲えしめ給たまへ。

生神女讚詞 婚姻こんいんに與あづからざる神かみの母はゝよ、衆しゆう人じんの祈き願ぐわんを我わが造成主ざうせいしゆ神かみ、爾なんぢの胎たいより生うまれし者ものに攜たづさへて、我われ等らに諸難しよなんより全まつたく救すくはるるを得えしめ給たまへ。

又

イルモス 獨ひとり人ひとの性せいの弱よわきを知しりて、憐あはれみを以もつて之これを衣きたる者ものよ、我われに上うへよりの力ちからを帶おびて、爾なんぢに呼よばしめ給たまへ、人ひとを慈いつくしむ主しゆよ、爾なんぢの言いひ難がたき光くわう榮えいの生いける宮みやは聖せいなり。

獨ひとり仁じん慈じなる主しゆ、獨ひとり慈じ憐れん深ふかき主しゆとして、敬虔けいけんを抱いだきて爾なんぢに逝ゆきし者ものを天てんの居處すまひに、言いひ難がたき歡喜よろこびと慰藉なぐさめとのある處ところに、致ち命者めいしやの會くわいの樂たのしむ處ところに安やすんぜしめ給たまへ。

我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは獨ひとり地ちに在ありて罪つみなき者ものと現あらはれ、爾なんぢは慈じ憐れんの主しゆとして世せ界かいの罪つみを任になひ給たまへり。人ひとを愛あいする主しゆよ、信しんを抱いだきて此この世よより移うつりし者ものの靈たましひを爾なんぢの諸聖人しよせいじんの第宅だいたくに、天堂てんだうの福樂ふくらくに安やすんぜしめ給たまへ。

光榮 爾なんぢは死しの權けんを滅ほろぼして、衆しゆう信者しんじやの爲ために終をはりなき生命いのちを流ながし給たまへり。人ひとを愛あいする主しゆよ、敬虔けいけんを抱いだきて逝さりし者ものに之これを獲えしめ、彼かれ等らの無む數すうの愆尤あやまちを顧かへりみずして、其その諸罪しよざいを赦ゆるし給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき者ものよ、爾なんぢは種たねなく孕はらみて永在えいざいの言ことばを生うみ給たまへり。彼かれは肉體にくたいを以もつて我われ等らに來きたりて、死しの力ちからを滅ほろぼし、其その慈じ憐れんに因よりて死しせし者ものに復ふく活くわつと永遠えいゑんの生命いのちとを賜たまふ。

第四歌頌

イルモス 預よ言者げんしや言いへり、主しゆよ、我われ爾なんぢの風聲おとづれを聞ききて懼おそれ、爾なんぢの作爲わざを悟さとりて、爾なんぢの力ちからを讚榮さんえいせり。

致ち命者めいしやは勇敢ゆうかんの心こゝろを以もつて種種しゆじゆの苦くるしみを忍しのびて、無む玷てんなる羊ひつじの子この如ごとく、衆しゆう人じんの爲ために屠ほふられし生命いのちたるハリストスに薦すゝめられたり。

神かみの言ことばに敎をしへらるる成聖者せいせいしやは神聖しんせいなる口くちと爲なりて、人人ひとびとの靈たましひを凶きよう惡者あくしやの口くちより逃のがし給たまへり。我われ等ら敬虔けいけんにして彼かれ等らを尊たふとむ。

克肖こくせうなる聖神せいしん父ぷ等らは神聖しんせいなる神しん゜に依よりて力ちからを獲えて、恩おん寵ちようを以もつて大おほいに詭き譎けつなる諸神しよしん゜に勝かてり。

光榮 甘あまんじて木きの上うへに殺ころされし我われ等らの生命いのちたる仁愛じんあいなる主しゆよ、信しんを抱いだきて移うつりし者ものに永遠えいゑんの生命いのちを獲えしめ給たまへ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、女をんなの會くわいは爾なんぢを扶ふ助者じよしやと有たもちて、勇いさましく苦く難なんを忍しのびて、主しゆを棄すてざりき、聖せいなる者ものは肉體にくたいの逸樂いつらくに勝かたれざりき。

又

イルモス アウワクムは先せん知ちの目めにて爾なんぢ、神かみの恩おん寵ちように覆おほはるる山やまを見みて、イズライリの聖せいなる者ものが我われ等らを救すくひ改あらためん爲ために、爾なんぢより出いづるを預よ言げんせり。

ハリストスよ、爾なんぢは死し者しやの中うちに入いりて、爾なんぢの勝かたれぬ力ちからを以もつて地ぢ獄ごくを殺ころせり。獨ひとり自じ由いうの主しゆとして、聖せいなる致ち命者めいしやの祈き禱たうに由よりて、敬けい信しんの人ひとの靈たましひを地ぢ獄ごくの定罪ていざいより釋とき給たまへ。

爾なんぢは萬有ばんいうの主宰しゆさいとして、己おのれの屠ほふらるるを以もつてアダムの子し孫そんの諸罪しよざいに適かなふ贖あがなひを爲なし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢの洪恩こうおんに祈いのる、移うつされし者ものに諸罪しよざいの赦ゆるしを與あたへて、彼かれ等らを安やすんぜしめ給たまへ。

光榮 我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢは墓はかに藏をさめられて、墓はかに住すまはん爲ために定さだめられし死し者しやを神かみとして復ふく活くわつせしめ給たまへり。今いまは移うつされし者ものに永在えいざいの生命いのちを獲えしめ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

生神女讚詞 至いたりて無む玷てんなる女宰ぢよさい、神かみの母はゝよ、人類じんるゐは爾なんぢの產さんに由よりて救すくはれたり、蓋けだし爾なんぢは我われ等らの爲ために實在じつざいの生命いのちを生うみ給たまへり。彼かれは死しを滅ほろぼして、死しせし者ものを生命いのちに上のぼせ給たまふ。

第五歌頌

イルモス 人ひとを愛あいする主宰しゆさいハリストス我わが神かみよ、朝あさに爾なんぢが誡いましめの定さだめの事ことを考かんがふる我われ等らを永遠えいゑんの明あきらかなる光ひかりにて照てらし給たまへ。

致ち命者めいしやよ、爾なんぢ等らは敬虔けいけんを鎧よろひと爲なして、敵てきの箭やに傷きずつけられぬ者ものと顯あらはれ、恩おん寵ちように由よりて勝しよう利り者しやと爲なりて、榮えい冠くわんを受うけ給たまへり。

主しゆは神聖しんせいなる香膏にほひあぶらを其その成聖者せいせいしやに抹ぬりたるに、彼かれ等らは敬虔けいけんを以もつて信者しんじやの大數たいすうを牧ぼくして、天てんの牢をりに導みちびき給たまへり。

聖せいなる神品しんぴん致ち命者めいしや及および悉ことごとくの克肖者こくせうしやよ、爾なんぢ等らは屬神ぞくしんの法はふを守まもりて、天國てんこくに與あづかる者ものと爲なりて、宜よろしきに合かなひて讚榮さんえいせらる。

光榮 主宰しゆさい主しゆよ、今いま爾なんぢの命めいを以もつて移うつしし者ものを諸聖人しよせいじんと共ともに爾なんぢの國くにに入いるに勝たふる者ものと爲なして、彼かれ等らが行おこなひし諸罪しよざいを念おもふ毋なかれ。

生神女讚詞 至し淨じやうなる者ものよ、修齋ものいみと困難こんなんとを以もつて天てんの光くわう榮えいを得えたる女をんな等たちは、爾なんぢを轉達者てんたつしやと有たもちて、蛇へびの權けんを破やぶれり。

又

イルモス 己おのれの降臨かうりんの光ひかりにて世せ界かいの極はてを照てらし、己おのれの十じふ字架じかにて之これを輝かゞやかししハリストスよ、爾なんぢが智慧ちゑの光ひかりにて正たゞしく爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろを照てらし給たまへ。

生命いのちを賜たまふ主しゆよ、爾なんぢは死しの毒どくより醫いやす者ものにして、死しを受うけて死しの刺はりを鈍にぶくし給たまへり。致ち命者めいしやの祈き禱たうに因よりて、爾なんぢが受うけし者ものを自みづから安やすんぜしめ給たまへ。

人人ひとびとを死し及および朽きう壞くわいより解とき給たまひし主しゆよ、信しんに在ありて移うつされし者ものの靈たましひを爾なんぢの聖者せいしやの第宅だいたくに、凡およその憂うれひの退しりぞきし處ところ、樂たのしみの在ある處ところに入いれ給たまへ。

光榮 主宰しゆさいよ、爾なんぢは己おのれと偕ともに十じふ字架じかに懸かけられし者ものの爲ために樂園らくゑんを開ひらきし如ごとく、今いま信しんに在ありて爾なんぢに移うつりし者ものの靈たましひを受うけて、彼かれ等らに冢ちよう子しの敎けう會くわいに居をらんことを獲えしめ給たまへ。

生神女讚詞 憑恃たのみを爾なんぢに負おはしむる者ものを救すくひ給たまふ讚さん美びたる純じゆん潔けつなる者ものよ、爾なんぢの子こに於おける母はゝたる勇敢いさみを以もつて、我われ等らを神かみの旨むねの穩おだやかなる港みなとに導みちびき給たまへ。

第六歌頌

イルモス 我われ預よ言者げんしやイオナに效ならひて籲よぶ、仁じん慈じなる者ものよ、我わが生命いのちを淪滅ほろびより援たすけよ。世せ界かいの救主きうしゆよ、我われ光くわう榮えいは爾なんぢに歸きすと籲よぶ者ものを救すくひ給たまへ。

聖せいなる致ち命者めいしやよ、爾なんぢは多おほくの創痍きずにて殺ころされて、眞實しんじつの生命いのちを嗣つぎたり。我われ等ら衆しゆうの救すくはれんことを祈いのり給たまへ。

ハリストスの至し榮えいなる軍ぐん士し及および睿えい智ちなる成聖者せいせいしやよ、爾なんぢ等らは地ちに在ありて輝かゞやける星ほしと識しられて、敬虔けいけんの光ひかりを以もつて信者しんじやを照てらし給たまへり。

捧神ほうしんなる修齋者しゆさいしやよ、爾なんぢ等らは節制せつせいと謙遜けんそんとを以もつて肉にくの念おもひを殺ころして、地ち上じやうの旅客たびびと及および天てんの住ぢゆう民みんと顯あらはれ給たまへり。

光榮 人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢが移うつしし信者しんじやを爾なんぢの暮くれざる光ひかりと眞實しんじつの樂たのしみとに與あづかる者ものと爲なして、彼かれ等らを諸聖者しよせいしやの會くわいに加くはへ給たまへ。

生神女讚詞 讚さん美びたる神かみの母はゝよ、勇いさましく苦く難なんを忍しのび、篤あつく齋ものいみせし者ものは、聖詠せいえいに言いへる如ごとく、爾なんぢに從したがひて萬有ばんいうの王わうたるハリストスに進すゝめられたり。

又

イルモス 今いまを限かぎりの淵ふちは我われ等らを圍かこめり、脫のがれしむる者ものなし、我われ等らは屠と所しよの羊ひつじの如ごとし。吾わが神かみよ、爾なんぢの民たみを救すくへ、爾なんぢは弱よわる者ものの力ちからと更新あらためなればなり。

慈じ憐れんなる主しゆよ、移うつされし者ものに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまひて、彼かれ等らに爾なんぢが顏かんばせの光ひかりの輝かゞやきて、爾なんぢの受難者じゆなんしやを照てらす所ところに永遠えいゑんの樂たのしみを與あたへ給たまへ。

爾なんぢの脅わきより流ながれし血ちを以もつて世せ界かいを贖あがなひしハリストスよ、信しんに在ありて寢ねむりし者ものを爾なんぢの尊たふとき苦くるしみにて救すくひ給たまへ、爾なんぢは衆しゆう人じんの爲ために己おのれを價あたひとして付わたし給たまひしに因よる。

至し淨じやうなる手てを以もつて始はじめて我われを造つくりて、靈たましひを與あたへ、惡あくに陷おちいりし者ものを復また至いたりて美うるはしく新あらたにせし主しゆよ、親みづから今いま移うつりし者ものの靈たましひを安やすんぜしめ給たまへ。

光榮 主しゆよ、爾なんぢに於おける信しんに在ありて寢ねむりし者ものに爾なんぢの至いたりて光くわう明めいなる宮みやに入いるを得えしめ、仁じん慈じ慈じ憐れん洪恩こうおんなる主しゆとして、彼かれ等らの諸罪しよざいを念おもふ毋なかれ。

生神女讚詞 讚さん美びたる潔いさぎよき者ものよ、我われ等ら爾なんぢを歌うたふ、蓋けだし爾なんぢに因よりて我われ等ら幽暗くらやみと死しの蔭かげとに在ある者ものに入いらざる義ぎの日ひは輝かゞやけり。爾なんぢは我われ等らの救すくひの轉達者てんたつしやと爲なり給たまへり。

第七歌頌

イルモス 救世主きうせいしゆよ、火ひは爐ゐろりの中うちに在ある爾なんぢの少者せうしやに觸ふれず、彼かれ等らを懼おそれしめざりき。其時そのとき三人さんにん口くちを一いつにして、歌か頌しよう祝しゆく讚さんして言いへり、我わが先せん祖ぞの神かみは崇あがめ讚ほめらる。

金きんが火ひに試こゝろみらるる如ごとく、致ち命者めいしやは悉ことごとくの苦くるしみに試こゝろみられて、神聖しんせいなる愛あいに於おいて純じゆん金きんよりも更さらに明あきらかに光ひかる者ものと顯あらはれて、天てんの寶はう藏ざうに納をさめられたり。

祭まつりを司つかさどる者ものと爲なり、神聖しんせいなる役者えきしやと爲なりし聖せいなる成聖者せいせいしやは、皆みな神かみに無む血けつの祭まつりを捧さゝげ、善よく人人ひとびとを牧ぼくして、大おほいなる牧者ぼくしやの在います所ところに入いり給たまへり。

克肖者こくせうしやは肉體にくたいの慾よくに服ふくせず、無む慾よくを奧密あうみつの衣ころもの如ごとく衣きて、諸天しよてん使しの同どう住ぢゆう者しやと爲なれり。ハリストスよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて我われ等らを諸もろもろの誘惑いざなひより救すくひ給たまへ。

光榮 恩主おんしゆなるハリストスよ、信しんに在ありて我われ等らより移うつりし者ものを奧密あうみつの樂たのしみの處ところ、爾なんぢが顏かんばせの光ひかりの輝かゞやく處ところに住すまはせて、敬虔けいけんに爾なんぢの仁じん慈じを讚榮さんえいせしめ給たまへ。

生神女讚詞 至し聖せい至し潔けつなる者ものよ、聖せいなる女をんな等たちは爾なんぢを己おのれの莊飾かざりと爲なして、諸天しよてん使しと共ともに欣よろこばしく祝いはひ、多おほくの慈じ憐れんに由よりて身みにて爾なんぢより生うまれし神かみ言ことばを讚榮さんえいす。

又

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、我われ等ら信者しんじやは爾なんぢを見みて屬神ぞくしんの爐ゐろりの爲なす、蓋けだし先せん祖ぞの尊たふとまれて崇あがめ讚ほめらるる神かみは、三人みたりの少者せうしやを救すくひし如ごとく、斯かく爾なんぢの腹はらに於おいて全ぜん世せ界かいを改あらため給たまへり。

ハリストスよ、世よの暴風あらしより爾なんぢに移うつりし者ものを爾なんぢの至し淨じやうなる光くわう榮えいの光ひかりを以もつて照てらして、彼かれ等らに致ち命者めいしやと偕ともに爾なんぢに呼よぶを得えしめ給たまへ、先せん祖ぞの尊たふとまるる神かみよ、爾なんぢは崇あがめ讚ほめらる。

アダムの造成主ざうせいしゆよ、爾なんぢは實じつに新あらたなるアダムと爲なりて、獨ひとりアダムの詛のろひを滅ほろぼし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら爾なんぢに祈いのる、ハリストスよ、移うつされし者ものを天堂てんだうの福樂ふくらくに安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢ獨ひとり慈じ憐れんの主しゆなればなり。

光榮 神かみとして獨ひとり我われ等らの性せいの弱よわきを知しるハリストス、先せん祖ぞの崇あがめ讚ほめらるる神かみよ、仁じん慈じ慈じ憐れんの主しゆなるに因よりて、移うつしし者ものを悉ことごとく爾なんぢが顏かんばせの入いらざる光ひかりの輝かゞやく處ところに住すまはせ給たまへ。

生神女讚詞 潔いさぎよき神かみの母はゝよ、律法りつぱふの影かげと古いにしへの預よ象しやうとは爾なんぢの產さんに由よりて過すぎたり、蓋けだし爾なんぢは我われ等らの爲ために神聖しんせいなる恩おん寵ちようの光ひかりを輝かゞやかせり。之これに由よりて我われ等ら古いにしへの債おひめを解とかれて、尊たふとまるる神かみを崇あがめ讚ほむ。

第八歌頌

イルモス 諸天しよてん使しと悉ことごとくの軍ぐんとが造物ざうぶつ者しや及および主しゆとして畏おそるる者ものを、司し祭さいよ、歌か頌しようし、少者せうしやよ、讚榮さんえいし、人人ひとびとよ、崇あがめて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

致ち命者めいしやは皆みな靈妙れいめうに神聖しんせいなる神しん゜の火ひに凉すゞしくせられて、獅しゝの開ひらきたる口くちを害がいなく過すぎ、沸たぎれる鑊かまを勇いさましく過とほり給たまへり。

ハリストス神かみよ、爾なんぢは己おのれの預よ言者げんしやに遠とほき事ことを預よ知しするを賜たまひて、爾なんぢの成聖者せいせいしやをも神妙しんめうなる睿えい智ち者しやと爲なし給たまへり。彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて熱切ねつせつに爾なんぢを歌うたふ者ものの心こゝろを照てらし給たまへ。

克肖こくせうなる修齋者しゆさいしやは世よの爲ために己おのれを釘ていして、古こ世せいより聖せいを以もつて義ぎを以もつて神かみの悅よろこびを爲なしし悉ことごとくの者ものと偕ともに天てん上じやうの生命いのちを嗣つぎ給たまへり。

光榮 神かみに合かなふが如ごとく人ひとを土つちより造つくりし主しゆよ、地ちより移うつしし信者しんじやに、爾なんぢが仁じん慈じなるに因よりて、天堂てんだうの福樂ふくらくを獲えしめて、彼かれ等らが行おこなひし諸罪しよざいを念おもふ毋なかれ。

生神女讚詞 潔いさぎよき童貞女どうていぢよよ、困難こんなんを忍しのびし女をんな等たちは爾なんぢを女をんなの中うちに純じゆん美びにして無む玷てんなる者ものと尊たふとみて、爾なんぢの諸僕しよぼくが諸難しよなんより救すくはれん爲ために爾なんぢと偕ともに神かみに禱いのりを奉たてまつる。

又

イルモス イズライリの少者せうしやは爐ゐろりに在ありて、坩堝るつぼに在あるが如ごとく、敬虔けいけんの美うるはしきを以もつて黃こ金がねよりも明あきらかに輝かゞやきて云いへり、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

爾なんぢの寢ねむりし諸僕しよぼくの汚けがれを悉ことごとく爾なんぢの仁愛じんあいの露つゆを以もつて洗あらひて、彼かれ等らに歌うたを以もつて爾なんぢを歌うたはしめ給たまへ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、彼かれを歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢが移うつし給たまひし信者しんじやを、受難者じゆなんしやの祈き禱たうに由よりて、信しんを以もつて義ぎと爲なして、右みぎに立たつ者ものと顯あらはして、歌うたはしめ給たまへ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、彼かれを歌うたひて萬世ばんせいに讚ほめ揚あげよ。

光榮 死しと生せいとの一切いつさいの權けんを有たもち給たまふ主しゆよ、信しんに在ありて寢ねむりし者ものを爾なんぢの光くわう照せうを蒙かうむる者ものと爲なして、歌うたはしめ給たまへ、主しゆの悉ことごとくの造物ざうぶつは主しゆを崇あがめ讚ほめ、彼かれを歌うたひて世世よよに讚ほめ揚あげよ。

生神女讚詞 至し淨じやう至し潔けつなる童貞女どうていぢよよ、爾なんぢは我われ等らの救すくひと、終をはりなき生命いのちと、光くわう照せうとの轉達者てんたつしやと爲なり給たまへり。故ゆゑに我われ等ら悉ことごとくの造物ざうぶつは常つねに爾なんぢを崇あがめて、萬世ばんせいに讚ほめ揚あぐ。

次ぎて生神女の歌、「我が靈は主を崇め」、及び他の句、其附唱と共に。

第九歌頌

イルモス 生命いのちを容いれし常つねに流ながるる泉いづみ、恩おん寵ちようの光ひかりを施ほどこす燈ともしび、活いける殿でん、無む玷てんなる幕まく、天てん地ちより廣ひろき者ものたる生しやう神女しんぢよを我われ等ら信者しんじやは崇あがめ讚ほむ。

聖せいにせられし致ち命者めいしやの聖せいなる戰たゝかひ、其その苦くるしみと傷きず、釘てい刑けいと放逐はうちく、及および福ふくたる屠殺ほふりを、我われ等ら喜よろこびて尊たふとまん、此これ等らを以もつて聖せいなる者ものはハリストスの嗣よつぎと爲なり給たまへり。

神聖しんせいなる役者えきしやは神かみの司し祭さい等らとして義ぎを衣き、聖せいに於おいて世よを度わたり、齋ものいみの中うちに生いのちを終をへて、ハリストスを崇あがめ讚ほめて悅よろこぶ。

諸しよ預よ言者げんしやは主しゆの神聖しんせいなる口くちと爲なりて、衆しゆう人じんに其その光ひかりを傳つたへたり。彼かれ等らと偕ともに今いま勳いさをしを立たて、齋ものいみを以もつて神かみの悅よろこびを獲えたる女をんな等たちも樂たのしむ。

光榮 萬物ばんぶつの上うへに王わうたる能力ちからよ、地ちより移うつしし者ものを爾なんぢの諸聖者しよせいしやと偕ともに爾なんぢの國くにに與あづかる者ものと顯あらはし、其その行おこなひし諸罪しよざいを、萬有ばんいうの神かみよ、爾なんぢの至し大だいなる仁じん慈じに因よりて念おもふ毋なかれ。

生神女讚詞 神聖しんせいなる光ひかり、時ときに限かぎられぬ者ものを生うみし童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの祈き禱たうに因よりて我われの時とき每ごとの諸罪しよざいを解とき、常つねに怠惰おこたりに暗くらまされたる我わが智慧ちゑを照てらし給たまへ、我わが歌うたひて忠ちゆう信しんに爾なんぢを讚ほめ揚あげん爲ためなり。

又

イルモス 生しやう神女しんぢよよ、燃もゆれども燒やかれぬ棘いばらは爾なんぢが潔いさぎよき產さんの象かたちを顯あらはせり。祈いのる、今いまも我われ等らを攻せめ圍かこむ誘惑いざなひの爐ゐろりを撲うち滅けして、常つねに爾なんぢを崇あがめさせ給たまへ。

慈じ憐れん深ふかき主しゆよ、仁愛じんあい仁じん慈じなる神かみとして、爾なんぢの造物ざうぶつを宥なだめ、信しんに在ありて暫ざん時じの生命いのちより移うつされし者ものを爾なんぢの諸聖者しよせいしやの居處すまひに、衆しゆう致ち命者めいしやの樂たのしむ處ところに安やすんぜしめ給たまへ。

人ひとを愛あいする主しゆ、爾なんぢの諸僕しよぼくの罪過ざいくわに大おほいに勝かつ慈じ憐れんの淵ふちを有たもつ者ものよ、選えらびし者ものを受うけて、之これをアウラアムの懷ふところに安やすんぜしめ、ラザリと偕ともに爾なんぢの光ひかりの中うちに住すまはせ給たまへ。

光榮 人類じんるゐの爲ために贖しよく罪主ざいしゆ及および救主きうしゆと爲なりし者ものよ、今いま我われ等らより移うつしし者ものを、恩主おんしゆとして、十じふ字架じかに因よりて、神聖しんせいなる歡喜よろこびと、不ふ朽きうの生命いのちと、光くわう明めいなる樂たのしみとを受うくるに勝たふる者ものと爲なし給たまへ。

生神女讚詞 嗚呼あゝ智慧ちゑに超こゆる爾なんぢの奇き蹟せきや、蓋けだし爾なんぢ獨ひとり、至し淨じやうなる童貞女どうていぢよよ、日ひの下したに在ある衆しゆう人じんに爾なんぢの悟さとり難がたき產さんの新あらたなる奇き蹟せきを顯あらはし給たまへり。故ゆゑに我われ等ら皆みな爾なんぢを崇あがめ讚ほむ。

次ぎて「常に福にして」、及び小聯禱、光耀歌、常例の聖詠。

「凡そ呼吸ある者」に致命者の讚頌スティヒラ、第一調。

人人ひとびと皆みな來きたりて、歌か頌しようと屬神ぞくしんの詩賦しふとを以もつてハリストスの受難者じゆなんしやを尊たふとまん。彼かれ等らは世せ界かいの燈ともしび、敎をしへの傳道でんだう師し、信者しんじやの爲ために醫治いやしを注そゝぐ所ところの常つねに流ながるる泉いづみなり。ハリストス我わが神かみよ、彼かれ等らの祈き禱たうに由よりて爾なんぢの世せ界かいに平安へいあん、我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを與あたへ給たまへ。

大おほいなる王わうの此この軍ぐん士等しらは苛虐者くるしめびとの命めいに逆さかひ、勇ゆう毅きにして苦くるしみを輕かろんじ、一切いつさいの迷まよひを踐ふみて、宜よろしきに合かなひて榮えい冠くわんを冠かうむれり。今いま救世主きうせいしゆに我われ等らの靈たましひの爲ために平安へいあんと大おほいなる憐あはれみとを求もとむ。

至いたりて讚さん美びたる致ち命者めいしやよ、憂患うれひも、困苦くるしみも、飢渴うゑも、窘逐せめも、創痍きずも、猛獸まうじうの猛たけきも、刀劍つるぎも、烈はげしき火ひも爾なんぢ等らを神かみより離はなすこと能あたはざりき。爾なんぢ等らは更さらに彼かれを愛あいする愛あいを燃もやして、他た人にんの身みに在あるが如ごとく鬪たゝかひて、性せいを忘わすれ、死しを顧かへりみざりき。故ゆゑに宜よろしきに合かなひて爾なんぢ等らの功勞こうらうの報むくいを受うけ、天國てんこくの嗣よつぎと爲なれり。我わが靈たましひの爲ためにハリストスに祈いのり給たまへ。

致ち命者めいしやよ、主しゆの爲ために樂たのしめ、蓋けだし爾なんぢ等らは善よき戰たゝかひを戰たゝかへり。諸しよ王わうに逆さかひ、苛虐者くるしめびとに勝かち、火ひをも、劍つるぎをも、爾なんぢ等らの體からだを食くらふ猛獸まうじうをも畏おそれざりき。諸天しよてん使しと偕ともにハリストスに歌うたを捧さゝげて、天てんより榮えい冠くわんを受うけたり。世せ界かいに平安へいあん、我われ等らの靈たましひに大おほいなる憐あはれみを賜たまはんことを祈いのり給たまへ。

死者の讚頌スティヒラ

我わが救世主きうせいしゆよ、爾なんぢが衆しゆう人じんの復ふく活くわつなることを、爾なんぢは行おこなひを以もつて著あらはす。言ことばよ、爾なんぢは言ことばを以もつてラザリを死し者しやの中うちより起おこし給たまへり。死し者しやが墓はかより復ふく活くわつし、地ぢ獄ごくの門もんが破やぶられし時とき、其時そのとき死しは人人ひとびとの爲ために寢ねむりと現あらはれたり。己おのれの造つくりし物ものを定罪ていざいせん爲ためにあらずして、之これを救すくはん爲ために來きたりし主しゆよ、選えらびし者ものを安やすんぜしめ給たまへ、爾なんぢ人ひとを愛あいする主しゆなればなり。

光榮、今も、生神女讚詞 聖せいなる生しやう神しん童貞女どうていぢよ、全ぜん世せ界かいの潔いさぎよき器うつは、滅きえざる燈ともしび、容いれ難がたき者ものの包容所いれどころ、毁こぼたれぬ殿でんよ、慶よろこべ、世よの罪つみを任になひし神かみの羔こひつじを生うみし者ものよ、慶よろこべ。

挿句くづけに死者の讚頌スティヒラ、フェオファン師の作。第一調。

救世主きうせいしゆよ、我われ等ら爾なんぢに祈いのる、移うつりし者ものを爾なんぢの欣よろこばしき共きよう與よに任たへさせて、彼かれ等らを爾なんぢの聖者せいしやと偕ともに義ぎ人じん等らの居處すまひに、天てんの第宅だいたくに入いれ給たまへ。爾なんぢの慈じ憐れんに由よりて其その諸罪しよざいを念おもはずして、之これに安息あんそくを與あたへ給たまへ。

句 主しゆよ、爾なんぢが選えらび近ちかづけし者ものは福さいはひなり。

救世主きうせいしゆよ、爾なんぢの許約きよやくせし所ところは見みゆる者ものに超こえて、目め未いまだ見みず、耳みゝ未いまだ聞きかず、人ひとの心こゝろに未いまだ曾かつて入いらざる者ものなり。主宰しゆさいよ、我われ等ら爾なんぢに祈いのる、爾なんぢに移うつりし者ものを爾なんぢの欣よろこばしき共きよう與よを受うくるに任たへさせて、之これに永遠えいゑんの生命いのちを與あたへ給たまへ。

句 彼かれ等らの靈たましひは福ふくに居をらん。

人ひとを愛あいする主しゆよ、爾なんぢの諸僕しよぼくは爾なんぢの十じふ字架じかの爲ために樂たのしみ、爾なんぢの十じふ字架じかを賴たのみて爾なんぢに移うつれり。今いま彼かれ等らに爾なんぢの十じふ字架じかに由より、世せ界かいの生命いのちの爲ために流ながしし血ちに由よりて、罪過ざいくわの釋とかるるを賜たまひ、爾なんぢの慈じ憐れんを以もつて其その諸罪しよざいを赦ゆるしして、爾なんぢの顏かんばせの光ひかりにて照てらし給たまへ。

句 彼かれ等らの記き憶おくは世世よよに在あらん。

獨ひとり不死ふしなる者ものよ、人人ひとびとの中うちに一いつも罪つみなき者ものなし、唯たゞ爾なんぢは罪つみなし。故ゆゑに洪恩こうおんなる神かみとして、爾なんぢの諸僕しよぼくを天てん使しの品ひん位ゐと共ともに光ひかりの中うちに入いれ給たまへ。爾なんぢの慈じ憐れんに由よりて、不ふ法はふを顧かへりみずして、彼かれ等らに赦ゆるしを與あたへ給たまへ。

光榮、今も、生神女讚詞 母はゝ・童貞女どうていぢよよ、爾なんぢの產さんたるハリストスに祈いのりて、爾なんぢの諸僕しよぼく、爾なんぢを實じつに生しやう神女しんぢよなりと傳つたへて、敬虔けいけんの言ことばを以もつて祝しゆく讚さんせし者ものに諸罪しよざいの赦ゆるしを賜たまひて、其國そのくにに於おいて聖者せいしやの光くわう照せうと福樂ふくらくとを獲えしめんことを求もとめ給たまへ。

 「スボタ」の聖体礼儀に

「スボタ」の眞福詞、第一調。

敵てきは食しよく物もつを以もつてアダムを樂園らくゑんより引ひき出いだし、ハリストスは十じふ字架じかを以もつて盜賊たうぞくを其中そのうちに入いれ給たまへり、主しゆよ、爾なんぢの國くにに來きたらん時とき、我われを憶おもひ給たまへと呼よべばなり。

句 義ぎの爲ために窘逐きんちくせらるる者ものは福さいはひなり、天國てんこくは彼かれ等らの有ものなればなり。

イイスス神かみよ、受難者じゆなんしや、成聖者せいせいしや、睿えい智ちなる婦女をんな、及および至し榮えいなる預よ言者げんしやの無む數すうの多おほきは爾なんぢに祈いのる。我われ等らに諸罪しよざいの赦ゆるしと大おほいなる憐あはれみとを與あたへ給たまへ。

句 人ひと我われの爲ために爾なんぢ等らを詬のゝしり、窘逐きんちくし、爾なんぢ等らの事ことを譌いつはりて諸もろもろの惡あしき言ことばを言いはん時ときは、爾なんぢ等ら福さいはひなり。

馳はすべき程みちを盡つくししハリストスの至いたりて聖せいにせられし受難者じゆなんしやは、聖せいなる成聖者せいせいしや及および預よ言者げんしやと偕ともに、天てんの城邑まちに住すまひて、諸天しよてん使しと偕ともに樂たのしむに勝たふる者ものと爲なり給たまへり。

句 喜よろこび樂たのしめよ、天てんには爾なんぢ等らの賞むくい多おほければなり。

ハリストスよ、移うつしし者ものを暮くれざる光ひかりに入いれて、洪恩こうおんなる神かみとして彼かれ等らの諸罪しよざいを念おもふ毋なかれ、我われ等らが爾なんぢ恩主おんしゆの無む數すうの慈じ憐れんを讚榮さんえいせん爲ためなり。

光榮 我われ等ら衆しゆう信者しんじやは父ちゝに伏拜ふくはいし、子こを讚榮さんえいし、至し聖神せいしんを歌か頌しようせん。一體いつたいの三者さんしや、惟一ゆゐいちなる神かみよ、我われ等ら爾なんぢを籲よぶ者ものを憶おもひ給たまへ。

今も 潔いさぎよき者ものよ、我われ等ら爾なんぢを廣ひろき宮みや、光くわう榮えいの寶はう座ざ、光ひかる雲くもと讚ほめ歌うたひて祈いのる、爾なんぢの神聖しんせいなる祈き禱たうを以もつて、我わが靈たましひより暗くらき雲くもを拂はらひ給たまへ。

第一調 終

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